説明

偏心測定装置

【課題】 中空円筒の偏心測定装置において、確実でかつ高精度な偏心測定装置を実現することを可能とする。
【解決手段】 半導体レーザー投光装置9を被測定物1の出射面付近を照射する位置に設置する。被測定物1に当たった半導体レーザー光10は、光スペックルパターンを発生させる。このスペックルパターンをカメラ5で撮影し、画像処理検査装置6でこの画像を処理すれば、回転の有無を判定できる。カメラ5および画像処理検査装置6は偏心の測定にも利用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中空円筒の偏心測定に係り、特に光ファイバ用フェルール等の高精度の偏心測定に好適な偏心測定装置に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
例えば、光ファイバ用フェルールでは、中心の孔と外周の偏心が限度を越えるフェルールを用いると光ファイバの光軸ずれのために端面の反射が大きくなり結合損失が増大する。そのため、光ファイバ用フェルールでは、偏心量の測定が不可欠であった。
一般に、光ファイバ用フェルール等の中空円筒の孔偏心を測定する装置は、フェルールを外径基準で回転させる回転装置、フェルールの孔を照明する照明装置、フェルールの孔画像を撮影するカメラ、カメラで撮影した画像から孔の偏心を画像処理により測定する画像処理装置から構成され、非回転状態のフェルールの孔の画像と外径基準で回転させた孔の画像の中心座標の差異によって偏心を測定し、良否判定を行っている。(例えば、特許文献1)
【0003】
この装置において、何らかの原因でフェルールが回転していない場合には、孔の偏心はゼロと測定され誤測定が起こる問題があった。この対策として、偏心が一定値より低い場合、フェルールが回転していないと判断し、不良品と判定するようにしているが、偏心が、非常に良好なフェルールを不良品と判定する問題が残っている。
【0004】
【特許文献1】特開2004−61274号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記問題に対応するためには、フェルールの回転を確実に検出する手段が必要となるが、フェルール自体が小径で、しかも、装置には回転装置等が設置されているため回転検出手段を設置するスペースがほとんどない。本発明は、この問題を解決するためになされたもので、単純な構成で、フェルールの回転を検出できるフェルール等の小型円筒形状の偏心測定装置の回転検出を提供することに関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を達成するために請求項1記載の発明によれば、中空円筒の孔と外周の偏心を中空円筒を回転させながら孔画像をカメラで撮影し、該孔画像の位置の変化から偏心量を測定する装置において、前記中空円筒にレーザー光を照射しレーザー光による光スペックルの変化を検出するによって回転の有無を検出する手段を設けたことを特徴とする。中空円筒にレーザー光を照射すると、スペックルパターン(干渉縞)が発生する。
スペックルパターンは、物体の表面にレーザー光を照射することにより発生する物体表面の凹凸に対応した乱反射で、物体の移動によりそのスペックルパターンが、平行移動する性質があり、この性質を利用して、移動検出などに利用されている。
円筒が回転している場合には、スペックルパターンは、回転に応じて変化する。これに対して回転していない場合にはスペックルパターンは、変化しない。このスペックルパターンの変化によって回転の有無を検出できる。具体的には、後述するCCDカメラなどのカメラ画像変化や光電子増倍管(Photomultiplier Tube)などの光センサで検知し、センサの信号変化を検出すれば、回転の有無が検出できる。即ち、スペックルを観察、検出でききる手段であれば適用できるものである。 また、照射するレーザー光としては、波長400nm〜700nmの半導体レーザーで安全性を考慮して、クラス2以下のものが好適に利用できる。クラス分けは、JIS C6801「レーザ安全用語」に準拠する。以上のように、基本的には、レーザー光を照射する手段とスペックルを検出できる手段を付加するのみで済むので、既存の装置に簡便に追加できる。
【0007】
また、請求項2記載の発明によれば、中空円筒にレーザー光を照射しレーザー光による光スペックル画像をカメラで撮影し、このスペックル画像により回転の有無を検出することを特徴とする。カメラ撮影されたスペックル画像は、回転に応じて変化するため、その画像変化から回転の有無が検出できる。具体的には、画像をモニター表示させ、オペレータによって判別する方法が簡便な方法として適用できる。
【0008】
また、請求項3記載の発明によれば、レーザー光による光スペックル画像を撮影するカメラと、偏心測定のための孔画像を撮影するカメラが同一であることを特徴とする。回転検出のためのカメラと偏心測定のためのカメラを共用できるため、より単純な構成で回転の有無を検出できるする。
【0009】
また、請求項4記載の発明によれば、レーザー光による光スペックル画像を画像処理することにより回転の有無を検出することを特徴とする。画像処理により、光スペックル画像の状態が変化した場合に柔軟な対応が可能になる。たとえば、レーザー光の強度変動により光スペックル画像の濃度等が変化した場合にも、画像の濃度を一定となるよう自動補正し、対応することにより、安定した回転検出ができる。また、画像領域全体から回転検出に適する領域を設定し、この領域のみを利用して回転検出に利用することもできる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、フェルール等の小型円筒形状の偏心測定装置において、単純な構成で確実に回転の有無を検出できるため、高精度な偏心測定が可能となるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の実施の形態につき、以下に実施例を用いて説明する。
【実施例】
【0012】
図1は、本発明の回転検出部を備えていない偏心測定装置の概要を示す図である。 光ファイバ用フェルールなどの中空円筒形状の被測定物1は、被測定物が回転しても位置が変化しない例えばV形状の溝を持つ基台2に、パレットに載置された被測定物から人又はロボットにより設置される。被測定物1は、たとえばモーターで駆動されるローラー等の回転機構3に被測定物1を接触させることにより、基台2上で回転する。またハロゲン光源等を備えた照明装置4は照明の光が被測定物1の孔に入射する位置に設置される。レンズを付けたCCDカメラなどのカメラ5は、照明の光が出射する被測定物1の孔付近を撮影できる位置に設置され、回転中の孔部7を撮影する。カメラ5は、画像処理検査装置6と接続され、複数枚撮影された回転中の孔部7の画像の変化から外径に対する偏心を数値化し、ある閾値で合否判定を行ない、判定結果を出力する。
【0013】
合否判定が出た被測定物は、人又はロボットをより其台から外され、判定結果ごとにパレット等に移される。
【0014】
図2は、図1の構成の偏心測定装置において、カメラ5で撮影された孔部の画像の例である。この画像は、後述する明るい部分と暗い部分の境界の変位を効果的に捉えるために、一部を拡大して示した画像となっている。孔部7は、カメラと孔部を介して対向位置にある照明装置からの照明の光が出射するため、明るく、孔の外側部分8は暗く撮影される。
この画像から、明るい部分と暗い部分の境界をたとえば、画像入力ボードを備え、画像入力ボードから入力された画像を処理する画像処理ソフトを内臓したパソコン等の画像処理検査装置6で求め、回転中の境界の位置変動から、偏心を数値化する。
なお、フェルールの外径が精度良く成形されていることにより、回転中の孔部の画像変化のみを利用したが、非回転状態の孔部の画像と回転中の孔部の画像変化により偏心を数値化して、合否判定を行なうようにしてもよい。
【0015】
図3は、本発明の回転検出部を備えた偏心測定装置の概要を示す図である。図1の装置に、たとえば、半導体レーザー投光装置9(キーエンス社製レーザセンサLV-H32、波長650nm、Class2 のレーザー投光部のみ利用)を被測定物1の出射面付近を照射する位置に設置する。被測定物1に当たった半導体レーザー光10は、光スペックルパターンを発生させる。このスペックルパターンをカメラ5で撮影し、画像処理検査装置6でこの画像を処理すれば、回転の有無を判定できる。
具体的には、レーザ光をフェルールに照射すると照射されたレーザー光はの一部は、フェルールを通過し、孔部で反射され、複数の経路を通りカメラに入光する。レーザ光は淡色光なので、経路差(位相差)により干渉が起こり干渉縞が発生する。孔部はの部分はハロゲン光源で照明されるため、干渉縞は、実際には発生しているものの画像としては、見えない。しかしながら、孔部以外は、照明の影響がなく位ので、干渉縞が見える。
カメラ5および画像処理検査装置6は偏心の測定にも利用できることは言うまでもない。
レーザー光の照射位置は、照明装置からの光の明暗の画像を撮影するカメラにスペックルが確実に観察できるようにするために、図3のように中空円筒の先端部に孔部をよぎる角度にて照射することが望ましい。
【0016】
図4は被測定物1が回転していない時に、半導体レーザー光10を照射したスペックルパターンをカメラ5により撮影した例である。暗い孔の外側部分8にスペックルパターン特有の細かい濃淡部11が見られる。これに対して図5は被測定物1が回転している時に、半導体レーザー光10を照射したスペックルパターンをカメラ5により撮影した例である。回転していない時には明確であった細かい濃淡部11は不明確となる。この画像の差を画像処理により検出することは容易であり、例えば、一定以下の面積の明るい部分または暗い部分の個数をカウントする処理等で検出できる。
【0017】
図6は本発明の回転検出部を備えていない偏心測定装置の測定フローを示す図である。被測定物をセットし、回転機構をセット駆動させ、偏心を測定し、その結果により合否判断していた。この場合には、偏心が非常に小さい場合は、不良と判定してしまうことから、良品を排除してしまった。また、図7に本発明の回転検出部を備えた偏心測定装置の測定フローを示す。回転機構をセット駆動させる工程と偏心を測定する工程の間に、回転検出工程を介在させたもので、レーザー光のON・OFFおよび、回転していないケースの処理が追加されている。レーザー光のON・OFFはレーザーの電源をON・OFFでも実現できるが、ON・OFFが頻繁な場合には機械式シャッター等を用いる。また、回転していないケースでは、被測定物とV溝との間に異物が介在された場合や、回転機構との接触状態が不十分であった場合などが想定されることから、回転機構を初期状態に戻して、再び、被測定物に接触させることによって、異物が排除されるなど、回転機構を再セットすれば回転する事が多いため、回数を決めて、回転機構の再セットを行う処理を追加している。更には、回転機構を逆回転させることや、被測定物を其台から外してクリーニング機構を付与させて、被測定物を再セットするようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の回転検出部を備えていない偏心測定装置の概要を示す図である。
【図2】カメラ5で撮影された孔部の画像の例を示す図である。
【図3】本発明の回転検出部を備えた偏心測定装置の概要を示す図である。
【図4】回転していない時に、カメラ5により撮影した例を示す図である。
【図5】回転している時に、カメラ5により撮影した例を示す図である。
【図6】回転検出部を備えていない偏心測定装置の測定フローを示す図である。
【図7】回転検出部を備えた偏心測定装置の測定フローを示す図である。
【符号の説明】
【0019】
1…被測定物
2…基台
3…回転機構
4…照明装置
5…カメラ
6…画像処理検査装置
7…孔部
8…孔部の外側部分
9…半導体レーザー投光装置
10…半導体レーザー光
11…濃淡部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空円筒の孔と外周の偏心を中空円筒を回転させながら孔画像をカメラで撮影し、該孔画像の位置の変化から偏心量を測定する装置において、前記中空円筒にレーザー光を照射しレーザー光による光スペックルの変化によって回転の有無を検出する手段を設けたことを特徴とする偏心測定装置。
【請求項2】
前記中空円筒にレーザー光を照射しレーザー光による光スペックル画像をカメラで撮影し、このスペックル画像により回転の有無を検出することを特徴とする請求項1記載の偏心測定装置。
【請求項3】
前記レーザー光による光スペックル画像を撮影するカメラと、偏心測定のための孔画像を撮影するカメラが同一であることを特徴とした請求項2記載の偏心測定装置。
【請求項4】
前記レーザー光による光スペックル画像を画像処理することにより回転の有無を検出することを特徴とする請求項2又は3記載の偏心測定装置。


【図1】
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【図3】
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【図6】
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【図7】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−194626(P2006−194626A)
【公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−4214(P2005−4214)
【出願日】平成17年1月11日(2005.1.11)
【出願人】(000010087)東陶機器株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】