説明

傾き検査装置及び傾き検査方法

【課題】基板に散ったハンダやゴミ等による基板の傾きの誤認識を防ぐこと。
【解決手段】傾き検査装置10は、所定の範囲を撮像領域として、部品が取り付けられる基板2を撮像するカメラが出力する撮像領域の画像より、基板2及び部品の表面の高さを基板2の全域にわたって測定して高さ情報を得る高さ測定部12を備える。また、撮像領域の画像に含まれる基板2の色と、基板2に配置される部材の色と、を異なる2色で表現する2値化情報に基づいて、基板2の色によって表現される箇所に少なくとも3点の測定点を指定する測定点指定部13を備える。また、測定点毎に測定される高さ情報に基づいて、所定の平面に対する基板2の傾きを計算する傾き計算部14を備える。また、基板2の傾きに基づいて高さ情報の補正量を求め、基板2の表面の全域にわたって高さ情報を補正する傾き補正部15と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、基板に部品を実装する製造工程において、水平面に対する基板の傾きを検査する場合に適用して好適な傾き検査装置及び傾き検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品実装機により基板上に電子部品を実装したとき、従来は、電子部品をリフローハンダまたは接着剤で基板に取り付け、硬化後検査機などの別装置で実装状態の確認を行なっていた。
【0003】
また、装着ノズルにより真空力で電子部品を吸着したとき、その吸着位置は必ずしも部品の中心とは限らず、また電子部品の角度も実装機のXY座標軸からずれることがあった。この電子部品の吸着状態を検査するために、従来は複数台のカメラを用いて電子部品を撮像し、取り込んだ画像の輝度情報から中心や座標軸に対するずれを計算し、補正を行なっていた。またはレーザスポット光を用いた3次元測長器により部品の一部を測長し、その3次元情報から補正計算を行なうこともあった。
【0004】
また、基板に設置される部品の高さを測定する3D基板検査機を用いて、対象物(部品)の高さを測定する際には、その高さを測定する基準の位置を指定する必要がある。この指定としては、ハンダ等が形成されていない基板上の3点を指定し、その高さ情報から基板の傾きを計算する方法が用いられていた。また、一般的にはユーザが任意の基準面の位置を指定(ティーチング)する作業を行う必要があった。
【0005】
特許文献1には、基板の高さを検出する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−30793号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、従来の技術を用いても、検査対象に応じて変化する基準面の指定を検査対象毎に手作業で行う必要があったため、データの作成に時間を要していた。また、基板には密に部品が設置されるため、わずかな量のハンダやゴミ等が基板に散る場合があり、指定した基板の基準面にハンダやゴミ等が付着すると、検査対象の基板の傾きを誤認識する可能性があり、信頼性が低かった。
【0008】
本発明はこのような状況に鑑みて成されたものであり、基板に散ったハンダやゴミ等による基板の傾きの誤認識を防ぐことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、所定の範囲を撮像領域として、部品が取り付けられる基板を撮像するカメラが出力する撮像領域の画像より、基板及び部品の表面の高さを基板の全域にわたって測定して高さ情報を得る。
次に、撮像領域の画像に含まれる基板の色と、基板に配置される部材の色と、を異なる2色で表現する2値化情報に基づいて、基板の色によって表現される箇所に少なくとも3点の測定点を指定する。
そして、測定点毎に測定される高さ情報に基づいて、所定の平面に対する基板の傾きを計算し、基板の傾きに基づいて高さ情報の補正量を求め、基板の表面の全域にわたって高さ情報を補正するものである。
【0010】
このようにしたことで、製造工程において、所定の平面に対する基板の傾きを検査することが可能となる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、基板及び基板に配置される部材を2色で表現する2値化情報に基づいて、基板の色によって特定される部分における少なくとも3点の測定点を指定し、この3点の測定点対応する高さ情報に基づいて、基板の傾きを計算する。そして、計算された基板の傾きに基づいて、基板の各部における高さ情報を補正することによって、基板に散ったハンダやゴミ等による傾きの影響を除くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施の形態における傾き検査装置の内部構成例を示すブロック図である。
【図2】本発明の一実施の形態における基板に設置された各部品の例を示す断面視した説明図である。
【図3】本発明の一実施の形態における基板と、各部品を2値化表示した例を示す断面視した説明図である。
【図4】本発明の一実施の形態における表示部に表示された基板と部品の例を示す説明図である。
【図5】本発明の一実施の形態における傾き測定を行う際の測定点を指定する例を示す説明図である。
【図6】本発明の一実施の形態における傾き検査方法の例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、発明を実施するための最良の形態(以下実施の形態とする。)について説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.一実施の形態(基板の傾きを検査して、傾きと認識された部分の影響を補正する例)
2.変形例
【0014】
<1.一実施の形態>
[基板の傾きを検査して、傾きと認識された部分の影響を補正する例]
【0015】
以下、本発明の一実施の形態について、添付図面を参照して説明する。本実施の形態では、基板の傾きを検査して、基板に付着したゴミ等の影響を除いた上で水平面に対する基板の傾きを検査する傾き検査装置10に適用した例について説明する。
【0016】
図1は、本例の傾き検査装置10の内部構成例を示す。
始めに、傾き検査装置10を含む傾き検査システム1は、測定対象物として用いられる基板2のカラー画像を撮像するカメラ3と、カメラ3が撮像したカラー画像等を表示する表示部4を備える。基板2の大きさは、例えば、300mm×220mmとしている。また、1回の撮像動作でカメラ3が基板2を撮像する撮像領域の範囲は、例えば、30mm×50mmとしている。
【0017】
また、傾き検査システム1は、基板2の傾きを検査して、基板2の傾きを補正する傾き検査装置10と、傾き検査装置10に対して、ユーザが表示部4を見ながら所定の操作指示を与える操作部5と、後述する高さ情報等を記録する記録部6と、を備える。記録部6には、RAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)等の大容量の記録装置が用いられる。
【0018】
次に、傾き検査装置10は、カメラ3から入力するカラー画像に対して、ユーザが操作部5を用いて行った抽出指示に基づいて指示された位置の色を抽出する色抽出部11を備える。色抽出部11が行う色の抽出は、一般的な画像ソフトに用いられるスポイト機能を用いて行われる。色抽出部11は、ユーザが指定した位置における基板2と部品(本例では、ハンダ)の2色に基づいて、カラー画像を2値化した2値画像を出力する。2値化する際の色はユーザが適宜決めることが可能である。そして、色抽出部11が抽出した2値画像は、傾き検査装置10の外部に設けられた記録部6に記録される。ただし、色抽出部11は、2値画像を表示するための2値化情報を後述する高さ測定部12にそのまま出力することもできる。
【0019】
また、傾き検査装置10は、色抽出部11から入力する2値画像に基づいて、カメラ3が備える撮像素子のピクセル毎に、基板2と部品の高さを求める高さ測定部12を備える。このとき求められる高さは、撮像領域内における高さの範囲を0〜255とする相対的な値となる。また、傾き検査装置10は、高さ測定部12によって測定された高さデータに基づいて、基板2の傾きを測定する3点の測定点を指定する測定点指定部13と、3点の測定点に基づいて基板2の傾き量を計算する傾き計算部14と、を備える。ここで、測定点指定部13が3点の測定点を指定するのは、三脚において3点を地面(水平面)に接触させると、地面に対するカメラ3の傾きを求めることができるのと同様の効果を得るためである。
【0020】
また、傾き検査装置10は、傾き計算部14によって計算された傾き量に基づいて、2値画像の傾きを補正し、傾きを補正した後の補正後データと検査結果を出力する傾き補正部15を備える。傾き補正部15が出力する補正後データと検査結果は、記録部6に記録される。
【0021】
次に、各部の動作を説明する。
始めに、カメラ3は、所定の範囲を撮像領域として部品(後述するパッド21,ハンダ22を含む。)が取り付けられる基板2を測定対象物として撮像する。カメラ3には、基板2のカラー画像を出力するフルカラーカメラが用いられる。次に、高さ測定部12は、カメラ3から得る撮像領域の画像より、基板2及び部品の表面の高さを高さ情報として基板2の全域にわたって測定する。基板2には、高さが異なる各種の部品が設置されており、カラー画像には、基板2と部品の画像が含まれる。カメラ3が出力したカラー画像は、表示部4に表示され、ユーザが基板2や部品の色を確認することが可能である。ユーザは、表示部4に表示された画像を見ながら、操作部5を操作して、傾き検査装置10に所定の指示を与えることができる。
【0022】
ハンダが印刷された基板2において、通常、ハンダは灰色(無彩色)が使われ、基板2には緑や青などの有彩色が使われることが多い。カメラ3にフルカラーカメラを用いることにより、色抽出部11は、カメラ3が出力するカラーの情報を取得することができ、基板部分を容易に識別することができる。そして、基板2上の有彩色箇所を抽出し、抽出した箇所を基板部分、すなわち、ゼロ基準面として高さ測定に使用する。
【0023】
このとき、色抽出部11は、表示部4に表示される撮像領域の画像に対して、基板2の一部が指示された場合に、指示された位置における基板から抽出した色が含まれる基板2上の各部を所定の色で塗りつぶした画像を出力する。また、色抽出部11は、基板2の色以外の色によって表現される箇所を所定の色とは異なる色で塗りつぶした画像を出力する。そして、色抽出部11は、これらの出力した画像を2色で塗り分けた2値画像として表示部4に表示させ、2値画像から求まる基板2の表面における2値化情報を高さ測定部12に出力する。
【0024】
ここで、RGBの2値化情報では、有彩色の場合、RGBの3つの2値化情報の輝度値の最大と最小の差が大きくなる。反対に、無彩色の場合には最大と最小の差が小さくなる。この特徴を利用し、基板部分とハンダ部分を明確に区別し、ゼロ基準面を設定する。
【0025】
次に、測定点指定部13は、撮像領域の画像に含まれる基板2の色と、基板2に配置される部材の色と、を異なる2色で表現する2値化情報に基づいて、基板2の色によって表現される箇所に少なくとも3点の測定点を指定する。3点の測定点は、撮像領域の画像の縦方向又は横方向における互いに最も離れた箇所に指定される。具体的には、測定点指定部13は、撮像領域における四つ角のうち、一つの角に第1の測定点を指定した場合に、第1の測定点に対して、縦方向又は横方向における互いに最も離れた箇所に第2及び第3の測定点を指定する(後述する図5参照)。
【0026】
次に、傾き計算部14は、測定点毎に測定される高さ情報に基づいて、三角関数等を用いて所定の平面に対する基板2の傾きを計算する。本例では、所定の平面を「水平面」としている。また、傾き計算部14は、カメラ3が1回の撮像を行う度に基板2の傾きを計算する。そして、傾き補正部15は、基板2の傾きに基づいて高さ情報の補正量を求め、基板2の表面の全域にわたって高さ情報を補正する。ここで、ピクセル毎に基板2の高さ情報が求められている。ここで、例えば、高さ情報から求められる測定点の高さが“80”,“85”,“90”であって、基板2の中心に取り付けられた部品又はハンダの高さが“150”である場合を想定する。このとき、傾き補正部15は、基板2の中心の高さが“85”であることが測定点の平均計算によって求まるため、この部分における基板2の傾きに相当する高さ“85”を減ずる補正を行う。
【0027】
図2は、基板2と取り付け部材を断面視した例取り付けを示す。
基板2には、BGA(Ball grid array)部品やコンデンサ等の部品が搭載されるパッド21と、パッド21と部品を接続するハンダ22が設けられる。パッド21とハンダ22は、基板2に部品を取り付ける取り付け部材として用いられる。また、基板2上にはソルダレジスト20が形成されており、パッド21を露出すると共に図示しない配線を覆っている。
【0028】
このように、基板2には、部材を載せるパッド21と、パッド21上に形成され、部材を接合するハンダ22と、パッド21及びハンダ22を露出した状態で基板2を覆うソルダレジスト20とが形成される。そして、色抽出部11は、ソルダレジスト20の色を指定する場合に、ユーザが指定した位置における一定の範囲内の色を平均して求めた色が含まれる撮像領域の画像における該当箇所を所定の色で塗りつぶし、表示部4に2値画像を表示させる。
【0029】
図3は、2値画像として表された基板2の表示例を示す。
次に、2値画像として表された基板2の表示例について、図3を参照して説明する。
本例の色抽出部11は、ソルダレジスト20を青色とし、パッド21、ハンダ22、基板2等のソルダレジスト20以外の部分を黒のように色を分けた2値画像を表示部4に表示する。このように表示することによって、基板2の表面に対応する部分を明確に識別することができる。
【0030】
図4は、2値画像が表示される表示画面7の例を示す。
図4Aは、2値化前の撮像領域25の表示例を示す。
上述したように、カメラ3は、所定の範囲の撮像領域25で基板2を撮像する。基板2には、ソルダレジスト20がコーティングされており、パッド21とハンダ22が設置されている。そして、ソルダレジスト20の上には、飛び散ったハンダやゴミ等の汚れ23が付着している。
【0031】
ユーザは、操作部5を操作して、表示画面7に表示されるカーソル24を動かす。ここで、ユーザがソルダレジスト20の上でカーソル24を指定すると、色抽出部11は、ソルダレジスト20の色を抽出する。このとき、カーソル24は、ある程度の大きさの範囲に含まれる色を平均化して、この平均した色が含まれる部分を所定の色(本例では、青色)で塗りつぶす。ただし、ソルダレジスト20の色が撮像条件によってくすんだり、光ったりする可能性がある。この場合であっても、確実に領域を塗りつぶすため、平均した色を基準としてある程度の閾値を設け、この閾値の範囲内であれば同じ色であるとみなして、所定の色で塗りつぶしている。一方、パッド21とハンダ22の色は、ソルダレジスト20の色と異なる色(上記と同様に閾値が設けられる。)であるため、ソルダレジスト20が塗りつぶされた色とは異なる色(本例では、黒色)で塗りつぶされる。なお、この塗りつぶす処理は、カメラ3が出力する画像のピクセル単位で行われる。そして、色抽出部11は、ピクセル毎に2値化情報として高さ測定部12に送る。
なお、飛び散ったハンダやゴミ等の汚れ23は、基板色とは異なる色である。従って、図4Bに示されるように、黒色で塗りつぶされることとなる。このように飛び散ったハンダやゴミ等の汚れ23は、基板2とは異なる部分として認識されるため、基板部分だけを確実に抽出することができる。
【0032】
図5は、撮像領域に測定点を指定する例を示す。
ここでは、カメラ3が基板2の範囲のうち、4箇所を撮像して得た撮像領域25を並べて表示している。撮像領域25は、既に2値画像として表現されており、基板2(ソルダレジスト20)に該当する部分が黒色で示され、パッド21、ハンダ22に該当する部分が青色で示されている。
【0033】
測定点指定部13は、撮像領域25毎に少なくとも3点の測定点を指定する。ただし、測定点は、基板2(ソルダレジスト20)に該当する部分が指定され、かつ、撮像領域の画像の縦方向又は横方向における互いに最も離れた箇所に指定されなくてはならない。ここで、撮像領域25の横方向をx軸、縦方向をy軸とした場合に、測定点指定部13は、原点に最も近い位置(x,yの最小値)に第1の測定点26aを指定する。次に、第1の測定点26aに対して、x軸方向に最も遠くなる位置(xの最大値,yの最小値)に第2の測定点26bを指定する。最後に、第1の測定点26aに対して、y軸方向に最も遠くなる位置(xの最小値,yの最大値)に第3の測定点26cを指定する。ただし、測定点を指定する位置に、パッド21、ハンダ22に該当する部分が重なる場合に、測定点指定部13は、別に空いている基板2に該当する部分に測定点を指定する。
【0034】
なお、第1の測定点26a〜第3の測定点26cは、一定の範囲を占める大きさで設定される。このため、カーソル24が指定する位置に、たまたまソルダレジスト20に付着した汚れ等によって周囲の色と異なる色を検出した場合であっても、指定した位置の周囲の色を平均化して、ソルダレジスト20の色を誤認識する可能性を低くすることができる。
【0035】
図6は、本例の基板2の傾き検査方法の例を示す。
始めに、カメラ3が基板2を撮像する(ステップS1)。ユーザは、表示部4に表示されたカラー画像を見ながら、操作部5を操作して、基板2の色(例えば青)を手動で指定する(ステップS2)。このとき、色抽出部11は、2値画像を記録部6に記録させると共に、表示部4に2値画像を表示させる。この2値画像は、基板2の表面に対応する部分とそれ以外の部分とが異なる色で表示される。本例では、基板2の表面に対応する部分は、ソルダレジスト20の表面である。
【0036】
次に、高さ測定部12は3D計測を用いて、測定領域内の基板2の全面にわたって各部の高さを測定する(ステップS3)。ここで、高さを計測する技術には、レーザビームを絞り光プローブ式で反射位置を計測する方法(レーザ光走査法)、ライン状のビームを投影し2次元カメラで撮像し三角計測法で計測する方法(レーザ光切断法)がある。また、ハンダの各点に焦点を合わせて高さを調べる方法(合焦法)、いくつかの投影したパターンから高さを求める方法(パターン投影法、位相シフト法)等がある。ただし、本例の高さ測定部12は、位相シフト法を用いるため、この技術について説明する。
【0037】
高さ測定部12は、非接触式の三次元計測方法として、位相シフト法を用いる。この技術における三次元計測装置においては、CCDカメラが用いられる。すなわち、光源と正弦波パターンのフィルタとの組み合わせからなる照射手段により、縞状の光強度分布を有する光パターンを測定物体(この場合プリント基板)に照射する。そして、基板上の点を真上に配置したCCDカメラを用いて観測する。この場合、画面上の点Pの光の強度Iは下式で与えられる。
【0038】
I=e+f・cosφ
[但し、e:直流光ノイズ(オフセット成分)、f:正弦波のコントラスト(反射率)、φ:物体の凹凸により与えられる位相]
このとき、光パターンを移動させて、位相を4段階(φ+0、φ+π/2、φ+π、φ+3π/2)に変化させ、これらに対応する強度分布I0、I1、I2、I3をもつ画像を取り込み、下記式に基づいて位置情報θを求める。
【0039】
θ=arctan{(I3−I1)/(I0−I2)}
この位置情報θを用いて、基板2上の点Pの3次元座標(X,Y,Z)が求められる。そして、各部品や取り付け部材の三次元形状として、特に高さが計測される。測定された高さの値は、カメラ3のピクセル単位で「高さ情報」として記録部6に記録される。なお、高さ情報は、カメラ3の撮像領域内で0〜255の階調で割り振られる相対的な値である。
【0040】
次に、測定点指定部13は、撮像領域ごとに基板2の青色部分の中で互いに離れた3点を自動的に指定する(ステップS4)。この指定は、上述した2値化情報に基づいて自動的に行われる。
【0041】
次に、傾き計算部14は、指定された3点の測定点において測定された3点の高さ情報の値から、撮像領域内の傾きを計算する(ステップS5)。このとき、傾き計算部14は、記録部6から読出した高さ情報に基づいて、基板2の傾きを求める。
【0042】
そして、傾き補正部15は、基板2の傾きを補正する(ステップS6)。このとき、傾き補正部15は、ハンダ22の高さ情報を傾き情報に基づいて補正することにより、基板2をゼロ基準面とした場合における、ハンダ22の基板2の表面に対する高さを求めることができる。
【0043】
以上説明した本実施の形態に係る傾き検査装置10によれば、ハンダペースト/ランド以外の領域として、例えば、ソルダレジストが塗布された領域を、基準面とした場合に、ハンダペーストの3D検査(高さを求める)を行うことが可能となる。このとき、傾き検査装置10基板2の色を抽出し、その抽出された色によって塗りつぶされた領域に指定された3点の測定点に基づいて基板2の傾きを計算する。そして、基板2の傾きに基づいて高さ情報の補正量を求め、基板2の表面の全域にわたって高さ情報を補正することができる。従来では、一定の場所を予め測定点として指定していたことにより、指定した位置に部品等が設けられたり、ゴミ等が付着していたりすると後続の傾きを計算する処理で誤った結果を得ることがあったが、本例ではこれらの影響を排除して傾きを検査できる。また、基板2部分の色を抽出するため、検査データを作成する際の労力を低減することができる。
【0044】
また、高さ測定部12は、基板2と部品等の全面にわたってカメラ3のピクセル毎に高さを測定し、高さ情報を生成する。このため、基板2に微細加工が施されていても、カメラ3の解像度に合わせた微小な領域毎に高さ情報を得ることができる。また、測定点指定部13によって指定される測定点は、撮像領域毎に基板2の色に基づいて動的に指定される。また、測定点の指定を自動化することによって、ユーザが測定点を指定する必要がなくなる。また、傾き計算部14が基板2の傾きを求め、傾き補正部15が基板2の傾きを補正するため、基板2の傾きを水平面に平行にすることができる。
【0045】
また、測定点指定部13は、3点の測定点を、撮像領域の画像の縦方向又は横方向における互いに最も離れた箇所に指定するため、測定点が近くで指定された場合に比べて、傾き計算部14による傾きを計算する処理の結果の信頼性が高まる。これにより、傾き補正部15は、基板2の傾きを正確に求めることができる。
【0046】
また、傾き計算部14は、カメラ3が1回の撮像を行う度に基板2の傾きを計算するため、一部の基板2にゴミ等が付着しても、このゴミによる影響を抑えることができる。また、表示部4に表示される2値画像によって、ソルダレジスト20が塗られた部分と、それ以外の部分とを明確に識別することができる。
【0047】
<2.変形例>
なお、本例の色抽出部11は、基板2に対して、異なる2色の2値化情報を生成し、2値画像を表示部4に表示するようにしたが、3色以上の色を指定し、この色で表現した画像を表示部4に表示するようにしてもよい。また、色抽出部11は、基板2(ソルダレジスト20)の色を抽出するようにしたが、基板2にコーティングされる他の素材の色を抽出するようにしてもよい。
【0048】
また、高さ測定部12と傾き計算部14は、水平面に対する基板2の高さと傾きを求めるようにしたが、垂直面や斜め方向の面に対する基板2の高さと傾きを求めるようにしてもよい。
【0049】
また、表示部4と記録部6は、傾き検査装置10の外部に出した構成としたが、傾き検査装置10が表示部4と記録部6を備える構成としても好い。また、色抽出部11は、予め基板2と部品等の色が分かっていれば、カメラ3が出力するカラー画像から自動的に色を抽出して、2値画像を生成してもよい。これにより、ユーザが撮像領域毎に色を抽出する手間を省くことができる。
【0050】
また、本発明は上述した実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した本発明の要旨を逸脱しない限りその他種々の応用例、変形例を取り得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0051】
1…傾き検査システム1、2…基板、3…カメラ、4…表示装置、5…操作部、6…記録部、10…傾き検査装置、11…色抽出部、12…測定部、13…測定点指定部、14…傾き計算部、15…傾き補正部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の範囲を撮像領域として、部品が取り付けられる基板を撮像するカメラが出力する前記撮像領域の画像より、前記基板及び前記部品の表面の高さを前記基板の全域にわたって測定して高さ情報を得る高さ測定部と、
前記撮像領域の画像に含まれる前記基板の色と、前記基板に配置される部材の色と、を異なる2色で表現する2値化情報に基づいて、前記基板の色によって表現される箇所に少なくとも3点の測定点を指定する測定点指定部と、
前記測定点毎に測定される前記高さ情報に基づいて、所定の平面に対する前記基板の傾きを計算する傾き計算部と、
前記基板の傾きに基づいて前記高さ情報の補正量を求め、前記基板の表面の全域にわたって前記高さ情報を補正する傾き補正部と、を備える
傾き検査装置。
【請求項2】
さらに、表示部に表示される前記撮像領域の画像に対して、前記基板の一部が指示された場合に、前記指示された位置における前記基板から抽出した色が含まれる前記基板上の各部を所定の色で塗りつぶした画像、及び前記基板の色以外の色によって表現される箇所を前記所定の色とは異なる色で塗りつぶした画像を2値画像として表示部に表示させ、前記2値画像から求まる前記基板の表面における2値化情報を前記高さ測定部に出力する色抽出部を備える
請求項1記載の傾き検査装置。
【請求項3】
前記測定点指定部は、前記撮像領域における四つ角のうち、一つの角に第1の測定点を指定した場合に、前記第1の測定点に対して、縦方向又は横方向における互いに最も離れた箇所に第2及び第3の測定点を指定する
請求項2記載の傾き検査装置。
【請求項4】
前記傾き計算部は、前記カメラが1回の撮像を行う度に前記基板の傾きを計算する
請求項3記載の傾き検査装置。
【請求項5】
前記基板には、前記部材を載せるパッドと、前記パッド上に形成され、前記部材を接合するハンダと、前記パッド及び前記ハンダを露出した状態で前記基板を覆うソルダレジストとが形成されており、前記色抽出部は、前記ソルダレジストの色を指定する場合に、ユーザが指定した位置における一定の範囲内の色を平均して求めた色が含まれる前記撮像領域の画像における該当箇所を前記所定の色で塗りつぶす
請求項2〜4のいずれか1項に記載の傾き検査装置。
【請求項6】
前記カメラは、前記基板のカラー画像を出力する
請求項5記載の傾き検査装置。
【請求項7】
所定の範囲を撮像領域として、部品が取り付けられる基板を撮像するカメラが出力する前記撮像領域の画像より、前記基板及び前記部品の表面の高さを前記基板の全域にわたって測定して高さ情報を得るステップと、
前記撮像領域の画像に含まれる前記基板の色と、前記基板に配置される部材の色と、を異なる2色で表現する2値化情報に基づいて、前記基板の色によって表現される箇所に少なくとも3点の測定点を指定するステップと、
前記測定点毎に測定される前記高さ情報に基づいて、所定の平面に対する前記基板の傾きを計算するステップと、
前記基板の傾きに基づいて前記高さ情報の補正量を求め、前記基板の表面の全域にわたって前記高さ情報を補正するステップと、を含む
傾き検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−232279(P2011−232279A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−105004(P2010−105004)
【出願日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】