説明

光コネクタ

【課題】縦横寸法差が少ない非横長扁平の断面形状で成形歪みが生じにくくコネクタ面積を狭くできる光コネクタを提供する。
【解決手段】光コネクタ31は光路変更型であり、光路変更する反射面36を有し、反射光が通過する光コネクタの一方の面31aに例えば嵌合ピン33が設けられ、嵌合ピンは一方の面の各光入出路の中心を通る直線を挟んで互いに反対側に設けられ、嵌合ピンは直線上における光入出路列の中心に関して点対称に配置されている。光入出路列の両側に嵌合ピンを有して横長扁平な光コネクタと比較して、光コネクタの横寸法を小さく縦寸法を大きくでき、縦横寸法差の少ない非横長扁平の断面形状にできる。成形歪みが生じにくい形状となり、光ファイバ穴の位置精度低下を防止できる。光入出路配列の自由度が向上し、光コネクタが小型になり光コネクタの高密度実装が可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、光ファイバを伝搬する光の方向を変更する光路変更型の光コネクタ、特に当該光コネクタの位置決め用凸部あるいは位置決め用凹部と接続相手側の位置決め用凹部あるいは位置決め用凸部との嵌合により位置決めされる光コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
図9は、光ファイバを伝搬する光の方向を変更する光路変更型の光コネクタではないが、嵌合ピン位置決め方式の一般的な光コネクタ1を示す。
光コネクタ1は樹脂成形品であり、一列に並ぶ複数の光ファイバ穴2の両側、すなわち光ファイバ穴列の両側に嵌合穴3を配置する(特許文献1)。
2つの嵌合穴3の位置は、光ファイバ穴中心を結ぶ直線L上の位置、あるいは、光ファイバ穴中心を結ぶ直線Lから片側(上側又は下側)に若干変位させた所に位置する。5は光ファイバテープ心線である。光ファイバテープ心線5の各光ファイバ5aを光ファイバ穴2に挿通固定している。6はゴムブーツである。なお、この光コネクタ1はJIS C 5981に規定されるF12形多心光ファイバコネクタ(MTコネクタ)に概ね相当する。
【特許文献1】特開2007−033491 多心光コネクタ及びその組立方法
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この種の従来の光コネクタ1は、嵌合穴の位置が光ファイバ穴列の両側にあるため、総じて光コネクタは横長扁平である。
このため次の問題が生じる。
(1)樹脂成形後に樹脂が硬化収縮するが、その際に発生する収縮歪み(反り)により光ファイバ穴の位置精度が低下し易い。
(2)標準的なMT光コネクタの横幅は決まっているが、大径の嵌合穴が左右に存在するため光ファイバ穴数を増やすことができない。
光ファイバ穴数を増やすために光ファイバ穴列を上下に2段以上設けた2次元型光コネクタは、光ファイバ穴列が一段の一次元型光コネクタと比較して高精度化が難しく製作コストも高くなる。
(3)標準的なMT光コネクタは横長扁平で横幅が大きいから、光電気複合基板等の搭載基板上に複数の光コネクタを横並び配列すると、光コネクタ全体が占める横幅が広くなってしまうが縦幅は変わらない。
このため基板設計の自由度がなくなり光コネクタの高密度化実装できない。
【0004】
上記では、いわゆるMT光コネクタについて述べたが、光ファイバを伝搬する光の方向を変更する光路変更型の光コネクタの場合でも、従来の光路変更型の光コネクタでは、嵌合穴あるいは嵌合ピンの位置が光入出路列の両側(光ファイバ穴列の両側でもある)にあるため、総じて光コネクタは横長扁平であり、上記(1)〜(3)と同様な問題がある。
【0005】
0004
本発明は、光ファイバを伝搬する光の方向を変更する光コネクタにおいて、多心化が容易で製作コストが安く、しかも光ファイバ穴の位置精度が良好であり、光コネクタの搭載基板上で光コネクタの取付個数や位置の制約が少なく高密度実装可能な光コネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための請求項1の発明は、光ファイバを伝搬する光の方向を変更する光コネクタであり、
前記光コネクタは、前記光ファイバを伝搬する光の方向を変更する反射面を有し、
前記反射面で反射された反射光が通過する前記光コネクタの一方の面には、位置決め用凸部あるいは位置決め用凹部が設けられ、
前記位置決め用凸部あるいは位置決め用凹部は、前記一方の面の各光入出路の中心を通る直線Mを挟んで互いに反対側に設けられ、
前記位置決め用凸部あるいは位置決め用凹部は、直線M上における光入出路列の中心Qに関して点対称に配置されていることを特徴とする。
【0007】
請求項2は、請求項1において、前記反射面が傾斜面であり、前記光コネクタには前記光ファイバの光軸と向かい合う傾斜面が設けられていること特徴とする。
【0008】
請求項3は、請求項2において、前記傾斜面を、前記光コネクタの内側面に有することを特徴とする
【0009】
請求項4は、請求項2において、前記傾斜面を、前記光コネクタの外側面に有することを特徴とする。
【0010】
請求項5は、請求項1において、前記反射面で反射された反射光が通過する前記光コネクタの一方の面には前記2つの位置決め用凸部が形成されており、前記前記2つの位置決め用凸部を結んだ線分は、前記直線Mに対して垂直であることを特徴とする。
【0011】
請求項6は、請求項1〜5のいずれか1項において、前記位置決め用凸部が丸棒状のピンであることを特徴とする。
【0012】
請求項7は、請求項1〜5のいずれか1項において、前記位置決め用凹部が丸棒状のピンが嵌合される穴であることを特徴とする。
【0013】
請求項8は、請求項6において、前記位置決め用凸部が前記光コネクタに一体成形された樹脂製のピンであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1の発明の光コネクタによれば、嵌合穴(位置決め用凹部)又は嵌合ピン(位置決め用凸部)が、各光入出路の中心を結ぶ直線Mを挟んで互いに反対側にあり、かつ、直線M上の光入出路全体の配列中心(直線M上における光入出路列の中心)Qに関して点対称に配置されているので、次の効果が得られる。
(1)光入出路列の両側に嵌合穴(又は嵌合ピン)を有して横長扁平な光コネクタと比較して、光コネクタの横寸法(横幅、幅寸法W)を小さく縦寸法(縦幅、奥行き寸法D)を大きくすることができ、縦横寸法差があまり大でない非横長扁平の断面形状にできる。
これにより光入出路配列の自由度が向上するとともに、光コネクタが小型になるため光コネクタの高密度実装が可能になる。
(2)大径の嵌合穴または嵌合ピンが、光入出路列を挟む両側に設けられ(各光入出路の中心を通る直線Mを挟んで互いに反対側に設けられ)ているため、規定された光コネクタ横幅内おいては同じ光入出路列内の光入出路数(したがって、光ファイバ穴数)を増やせる。
したがって、規定された光コネクタ横幅内に一定の光入出路数の光コネクタを設計する場合に、従来であれば2次元型光コネクタとしなければならないところを、一次元型光コネクタとして設計することができる。つまり、一次元型光コネクタと光入出路数(したがって、光ファイバ穴数)が同数の2次元型光コネクタと比較すれば、一次元型光ネクタのほうが高精度品の製造が容易であり製造コストを安くできる。
(3)縦横寸法差があまり大でないから、樹脂成形の際に生ずる不均一な硬化収縮等による成形歪みが生じにくく、光ファイバ穴の位置精度が低下することを防止できる。
(4)2つの嵌合穴(又は嵌合ピン)の中心と光ファイバ穴に対応する光入出路の配列中心とが一致することにより、温度変化による膨張・収縮の変化の中心も一致するため、温度変化による穴位置(又はピン位置)の変化による影響を小さくできる。
(5)嵌合ピンや嵌合穴の位置を接続面の各隅部に配置し光ファイバ穴列に対応する光入出路列と離すことにより、嵌合ピン径に比べて極めて小径な光ファイバ穴の成形精度、配列ピッチ精度を向上することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を実施した光コネクタについて図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0016】
図1に参考例の光コネクタ11を斜視図で示す。
なお、以下の説明で位置決め用凸部を嵌合ピン、位置決め用凹部を嵌合穴として説明する。
しかし、位置決め用凸部、位置決め用凹部とは、2つの部材を位置決めする機能を持った構造物の総称であるから実施例には限定されない。
この光コネクタ11は、樹脂で一体成形された嵌合ピン位置決め方式の多心光コネクタである。
相手側光コネクタとの接続面となる接続端面11aに横一列に並ぶ複数の光ファイバ穴12が開口している。
これら光ファイバ穴12の上下には、光ファイバ穴12の列を挟んで光ファイバ穴12よりも径が大きい2つの位置決め用の嵌合穴13が開口している。
Lは光ファイバ穴12の中心を結び、接続端面11aの上面と下面の中央を水平に横切った直線である。
この2つの嵌合穴13は直線Lに対して上下反対側に開口している。
直線Lの中央は、光ファイバ穴の配列の中心Pである、
この中心Pは、接続端面11aの左右方向における中央にもなっている。
2つの大きな嵌合穴13は、光ファイバ穴12の配列の中心Pに関して点対称に配置されている。
2つの嵌合穴13の開口中心を結んだ直線をLとするとLはLに対して垂直である。
14は光コネクタの本体部分(胴部)よりも幾分か縦横幅が広い鍔部(フランジ部)であり、胴部のフランジ側の端面は開口端である。
この開口端より光コネクタの内側は接着剤充填空間となる中空部である。
光コネクタ11の上下面のいずれかには、前記中空部と外部を連絡する接着剤充填用の窓(図示しない)が開口する場合がある。
前記中空部より接続端面側の前方は樹脂充実部である。
この樹脂充実部には、光コネクタ接続方向(光コネクタの長手方向、光ファイバ挿入方向)に沿って複数の光ファイバ穴12が貫通している。
光コネクタ11に光ファイバを成端するには、まず、先端被覆を除去した光ファイバテープ心線5を、鍔部14側の開口端から光コネクタ内部に挿入する。
光ファイバテープ心線(光ファイバ)5の各光ファイバ5aを、前記中空部と連通する光ファイバ穴12に挿入し終わったら、次に中空部に接着剤を充填して光ファイバ5aを光コネクタに接着する。
光ファイバ5aの先端を細径の光ファイバ穴12にガイドするために、一般的なMT光コネクタ(MTコネクタ、MTフェルール、MT光フェルールともいう)で採用されているガイド構造が採用できる。
6は光コネクタから延出する光ファイバテープ心線5の根元を保護するゴム製のブーツである。
ブーツ6は、光ファイバ5の保護のために必要に応じて採用できる。
【0017】
この光コネクタ11は、図9に示した横長扁平な標準形状のMTコネクタとは異なり、2つの嵌合穴13は光ファイバ穴列を挟んだ上下に位置している。
光コネクタの横幅が規定され大きく出来ない場合、嵌合穴の位置を上下に変更することにより、光ファイバ穴列の横幅を増やすことができるから光ファイバの収容心数を増やすことができる。
例えば、標準形状のMT光コネクタは横幅が規定されているために、大径の嵌合穴13の存在により光ファイバ穴の数を増やすことができないが、嵌合穴の位置変更により光ファイバの収容心数を増やすことができる。
光コネクタが標準形状でない場合にも、この配列により、図示の通り光コネクタの横寸法(幅寸法)Wを狭く、縦寸法(高さ寸法)Hを広くできるから、縦横寸法差があまり大でない非横長で扁平な形状にすることができる。
収容される光ファイバ数を増やすため光ファイバ穴列を2段以上の2次元配列にした2次元配列型の多心光コネクタは、一次元型の光コネクタに比較して成形精度を維持することが難しくなり、製造コストが高くなるという問題がある。
したがって、一次元配列のままで同列内の光ファイバ穴数を増やすことができれば安価で精度の良い多心光コネクタが実現できるという利点がある。
また、光コネクタの接続端面が非横長で扁平な形状なため、光コネクタが搭載される回路基板の設計自由度が向上し光コネクタの高密度実装が可能になるという利点もある。
例えば、光電気回路基板上に光コネクタ11を複数個横並びに搭載した場合と、同心数のMTコネクタを複数個横並びに搭載した場合を比較すると、横に並べられた光コネクタ11が占める横幅は、同じ個数のMTコネクタを横に並べた場合よりも狭くなる。
なお、嵌合穴13を光ファイバ穴列の上下に開口すると、光コネクタ1の高さ寸法(幅)Hは同心数の標準的なMTコネクタよりも大となる。
しかし、もともと標準形状のMTコネクタは上下側面間の幅が広くなっているから、この部分に嵌合穴13を形成しても、嵌合穴を形成するために必要な幅の増分はそれほど大きくは無い。
このように、総じて光コネクタ11の接続端面11aは、標準的なMTコネクタの接続端面1aよりも小面積となるため光コネクタを小型化できる。
また、実装密度の向上以外にも、縦横寸法差を小さくできるから、樹脂成形の際に生ずる不均一な硬化収縮等による成形歪みが生じにくく、光ファイバ穴12の位置精度が低下することを防止できるという利点がある。
さらにまた、2つの嵌合穴の中心とファイバ穴の配列の中心とが一致することにより、樹脂成形の際に生ずる不均一な硬化収縮等による成形歪みが生じにくくなる。
なおまたさらに、温度変化による穴位置の変化を小さくできるという利点もある。
【実施例2】
【0018】
図2に他の参考例の光コネクタ21を斜視図で示す。
この光コネクタ21は、上記実施例と同様な光コネクタであり、接続端面21aには、横一列に並ぶ複数の光ファイバ穴22と、光ファイバ穴22よりも大径な2つの嵌合穴23が開口している。
位置決め用の2つの嵌合穴23は、直線Lに対して互いに上下反対側で、かつ、接続端面の中央近傍から離れた角隅部分に開口している。
この2つの嵌合穴23は配列中心Pに関して点対称であり、中心を結んだ直線Lは直線Lに対して90°以外の適宜設定された角度θで傾斜している。
つまり、図1の実施例は、直線Lの直線Lに対する角度θが90°の場合である。
この光コネクタ21においても図1と同様な効果が得られるが、嵌合穴と光ファイバ穴列との位置関係を適宜変更できるという利点を有する。
また、嵌合穴の位置を接続端面の各隅部に配置して光ファイバ穴列と相対的に離すことにより、嵌合ピン径に比べて極めて小径な光ファイバ穴や配列ピッチの成形精度を向上できるという利点を有する。
【実施例3】
【0019】
図3〜図5に本発明の一実施例の光コネクタ31を示す。
図3は、光コネクタ31及びこの光コネクタが実装される位置決め台42の斜視図を示し、図4は、光コネクタ31を位置決め台42に実装した状態で示す横断面図である。
この光コネクタ31は光路変更型の光コネクタである。
この光コネクタ31は概ね角形の形状であり、基板面42に取り付けられる横一列(図4で紙面垂直方向)に定間隔で並ぶ複数の光素子41の光軸と、光コネクタ本体に取り付けられた横一列(図4で紙面垂直方向)に定間隔で並ぶ複数の光ファイバ35を伝搬する光の光軸とを反射部36により結合させる光コネクタである。
この光コネクタを、光路変換用の光コネクタあるは光路変更用の光フェルールと呼ぶ場合があるが、呼称は特に限定されない。
本発明の各実施例では、反射部36(反射面ともいう)として、光コネクタ内部に形成された内側面、あるいは光コネクタの外側面に設けられた傾斜面を採用しいる。
本発明の実施例では、光コネクタ31は位置決め台42の取付面42aに搭載される。
取付面42aの表面には、受発光素子等の光素子が配置されている。
受発光素子とは、例えばPDアレイ、ビクセル等であり、これら受発光素子の光軸は取付面42aに対して概ね垂直である。
取付面42aには光素子を挟んで2箇所の嵌合穴43が形成されている。
これら嵌合穴43には後述の嵌合ピン33が嵌合する。
位置決め台42は、受発光素子のサポート部材であり、回路基板等の表面に配置され、回路基板等に形成された回路パターンと電気的に接続されている。
本実施例では、位置決め台42は断面コ字型の枠体である。
しかし、位置決め台42の形状は種々変形があり実施例には限定されない。
光コネクタ31の底面(接続面ともいう)31aから垂直に突出する2本の嵌合ピン33は、光コネクタ31と受発光素子を精密位置決めをするための、位置決め凸部である。
取付面42aの2つの嵌合穴43の配列ピッチ(間隔)は、光コネクタ側の2本の嵌合ピンの配列ピッチと同じである。
2本の嵌合ピン33を2つの嵌合穴43に挿入して嵌合することにより、光コネクタ31を位置決め台42に位置決め固定できる。
光コネクタ31と位置決め台42の位置決めが完了すれば、取付面42aの表面に配置された複数の光素子(受発光素子、受光素子又は発光素子)41と、光コネクタ31に取り付けられた複数の光ファイバの光軸が整合する。
図4に基づいてさらに詳しく説明する。
32は光コネクタ内部を紙面左右方向に貫通する光ファイバ挿入穴である。
この光ファイバ挿入穴32は、接続面31a(取付面42a)と平行である。
光ファイバ挿入穴32の一端は光コネクタ下端部の切欠き部31bに開口し、他端は凹所36に開口している。
光ファイバ挿入穴32には、先端の樹脂被覆を除去した光ファイバ35が、切欠き部31bから挿入されている。
凹所36は、紙面垂直方向から見て断面が概ね三角形である。凹所36は紙面上下方向に延在する垂直面と紙面上下方向に対して傾斜した傾斜面36aにより構成されている。
傾斜面36aは、光ファイバ35の端面と向かい合った傾斜面であり、紙面垂直方向に対して45°傾いている。
傾斜面の表面は銀等の金属メッキによってミラー面とすることができる。
凹所36に挿入された光ファイバ35の先端部は垂直面と面一になるか、あるいは凹所36内に多少突出する場合がある。
受発光素子41の光軸が取付面42aに対して垂直な場合、光ファイバ35の入出射光はミラー面で反射して直角に向きを変え、受発光素子41に入出射して光結合する。
すなわち、光コネクタ31を位置決め台42に位置決めすると、ミラー面により光素子41の光軸と前記光ファイバ35を伝搬する光の光軸とが直交する。
光ファイバを固定する部分である複数の光ファイバ挿入穴32は、紙面垂直方向に向かって定間隔で配列されている。
しかし、このような複数の微細な光ファイバ挿入穴は、金型や製造工程が複雑であるから、穴を形成せずに光ファイバを蓋で抑えるだけの簡易な構造を採用することができる。
例えば、光ファイバ穴32の代わりの位置決め構造として、断面V形状の複数のV溝を長手方向に沿って光コネクタ31の底面に形成し、これらV溝内に光ファイバを載置し、透明ガラス等の蓋で光ファイバを押さえ込むこともできる。
透明ガラス等の蓋の先端は、V溝が存在する領域だけでなくをV溝から延在させて凹所36の開口領域まで延在できる。
この場合、開口領域は透明なガラスで封止できるが、ガラスの蓋で閉塞された凹所36の内部は、光ロスが生じない光学接着材にて封止されている。
ただし、V溝で光ファイバを位置決めし、蓋で押さえつけて固定する構造は周知であるから詳述しない。
図5は光コネクタ31の接続面(底面)31aを示す。
光入出路の領域となる凹所36が紙面の左右方向に長く開口している。
凹所36の内側には、各光ファイバ35から入射出する光の光路断面が、紙面左右方向に横一列に並んでいる(特に図示しない)。
これら光路断面はスポット状であり、光入出路ともいう場合もある。
光路断面の中心を結ぶ直線をMで示す。
【0020】
前記直線M上の光入出路全体の配列中心(直線M上における光入出路列の中心)をQとする。
2つの嵌合ピン33は、直線Mを挟んで互いに反対側に位置し、かつ、配列中心Qに関して点対称の位置である。
一方、上記実施例と同様に、位置決め台42の光コネクタ31との対峙面(取付面42a)には複数の光素子(光受発光素子)41が、光コネクタ31側の光ファイバ35列と同ピッチで一列に並んでいる。
光素子41の中心を横一列に結ぶ直線をM(図示しない)とすると、位置決め台42の2つの嵌合穴43は直線Mを挟んで互いに反対側に位置し、配列中心Qに関して点対称の位置である。
このため、光コネクタ31の2つの嵌合ピン33を基板42側の2つの嵌合穴43に挿入すると、光コネクタ31の接続面31aにおいて横一列に並ぶ複数の光入出路を結ぶ直線Mと、基板42側の光素子41の中心を横一列に結ぶ直線Mとが一致する。
基板42側の光素子41の光軸と光コネクタ31側の光ファイバ35を伝搬する光の光軸とが整合すると、光コネクタ31の各光ファイバ35と基板42側の各光素子41とが正しく光接続される。
【0021】
この光コネクタ31は、2つの嵌合ピン33が光入出路の両側にないので、図示の通り光コネクタの横寸法(幅寸法)Wを小さくできる。
一方、嵌合ピン33が直線Mを挟んで互いに反対側にあるので、コネクタ縦寸法(奥行き寸法)Dは大きくなる。
したがって、嵌合ピンが光入出路列の両側にある構造と比較して、縦横寸法差を小さくできる。
このように、縦横寸法差があまり大でないために、嵌合ピンを光入出路の両側に配置した横長扁平な光コネクタと比較して、横寸法(幅寸法)が小さくなる。
これにより、例えば基板上に複数個横並びに設置する場合には、基板上の光コネクタが占める横幅を狭くでき、基板の設計自由度が向上する。
つまり、上記実施例にて説明したように、この光コネクタ31は、接続面31aと平行な光ファイバ穴32の列を有しており、光ファイバ穴長手方向には所定のコネクタ縦寸法Dが必要であるから、嵌合ピン33を設けたことによるコネクタ縦寸法の増分はないか、あるいは増分が有ったとしてもそれほど大きくはない。
光ファイバ穴列を左右に配置した場合と比較すれは、小型化が可能でより高密度実装が可能なため、配線設計の自由度が大幅に向上する。
また、縦横比が小さくなったため成形樹脂の硬化収縮時に発生する不均一な収縮等による歪みが生じにくく、光ファイバ穴32等の各部の成形精度が低下することを防止できる。
【0022】
なお、実施例では光コネクタ31側に嵌合ピン33、基板42側に嵌合穴43を設けたが、これとは逆に、基板42側に嵌合ピン、光コネクタ31側に嵌合穴を設ける構造とすることもできる。
ただし、光コネクタ31側に嵌合穴33を設ける場合には、嵌合穴の底が光ファイバ穴32に触れない程度の深さにするか、あるいは平面視にて光ファイバ穴32と嵌合穴33の位置が重ならないようにする(図示しない)。
このような構造とすれば、光コネクタ31側に嵌合穴を設けることができる。
また、本実施例では光コネクタの内側に凹所36を設け、この凹所の傾斜面を反射面とした。
また、凹所36を設けずに光路変更をすることもできる。
反射用の凹所を設けない場合、光コネクタ本体を光を透過する樹脂で成形し、光ファイバの入出射光が光コネクタ本体内を通過できるようにする。
光ファイバ穴の一端は光コネクタ本体の途中まで形成し、光コネクタ本体の光ファイバ光軸に対向する側面を光軸に対して45度傾斜させた傾斜面とする。
例えば、図4において光コネクタ31の左側面を傾斜させた面とする。
この傾斜面は空気と樹脂の境であるから全反射面となる。
光ファイバから出射した光は、光ファイバ穴の穴底から光コネクタ本体内に入射して、この傾斜面で全反射する。
全反射した光は樹脂内をそのまま透過して、光コネクタの取付面、つまり受光素子側の光コネクタ低面(図4では下側の面)から光コネクタ外部に出射する。
【実施例4】
【0023】
図6は本発明の他の実施例の光コネクタ51を示すもので、嵌合ピン53を前記実施例とは異ならせた位置に配置している。
この光コネクタ51は、2つの嵌合ピン53が複数の光入出路全体の配列中心Qに対して点対称に配置されている。
2つの嵌合ピン53を結んだ線は光入出路中心を結ぶ直線Mに対して角度を持ち、この角度は前記各実施例のように適宜設定できる。
この光コネクタ51を実装する基板側には、この2つの嵌合ピン53に対応する位置に嵌合穴を設ける。
この光コネクタ51においても、前記各実施例の光コネクタ31と同様な効果が得られる。
本実施例において、嵌合ピン53の代わりに位置決め部として嵌合穴を設ける場合には、図示されている嵌合ピン53の位置に嵌合穴を形成する。
この場合、嵌合穴の形成位置を大きく離すと、光ファイバ穴列上に嵌合穴が位置することを避けることができる。
光コネクタ51の厚みが小さい場合には、光ファイバ穴の底が光ファイバ穴に触れる恐れれがあるため嵌合穴の深さを十分に確保できない。
しかし、光ファイバ穴列の存在領域と嵌合穴の形成位置を平面視にて重ならないようにすれば、嵌合穴の深さの制限を緩やかにできる効果が生ずる。
【実施例5】
【0024】
図7に示した光コネクタ11’は、接続端面11aに2列に並ぶ二次元配列の複数の光ファイバ穴12を備えている。
図1の光コネクタにおいて、光ファイバ穴の配列が横1列の一次元配列でなく、二次元配列の場合に相当する実施例である。
前記光ファイバ穴12には光ファイバ5aの端面が露出している。
光コネクタの位置決めが、一方の光コネクタの接続端面から突出する嵌合ピンが他方の光コネクタの接続端面に形成された嵌合穴13に嵌合することにより、2つの光コネクタの光ファイバ穴が位置決めされる光コネクタである。
すなわち、位置決めのための2つの嵌合穴13(又は嵌合ピン)を、光ファイバ穴並び方向と直交する方向に互いに反対側にし、かつ、二次元配列の複数の光ファイバ穴全体の分布中心Pに関して点対称に配置した構成である。
本図において、分布中心Pは2列の光ファイバ穴列の中間で、かつ、光ファイバ穴列の長手方向の中間となる。
図1と共通する部分には同じ符号を付して説明を省略する。
この光コネクタ11’においても、図1の光コネクタ11のように光ファイバ穴列が横1列(すなわち一次元配列)の場合と同様な効果が得られる。
また、図2の光コネクタ21において、光ファイバ穴の配列を横1列の一次元配列でなく二次元配列にしてもよい。
【実施例6】
【0025】
次に光路変更型の光コネクタにおいて、光ファイバ列を2次元型にした実施例について説明する。
図8はこの光コネクタの斜視図、図9は横断面図を示す。
本実施例は、図3の光コネクタ31において、光入出路の配列が横1列の一次元配列でなく、二次元配列の場合の実施例である。
以下、図3と共通する部分には同じ符号を付して説明を省略する。
図8に示すように本実施例の光路変更型の光コネクタ31’は、2列に並ぶ二次元配列の複数の光ファイバ35を有する。
位置決めのための2つの嵌合ピン33が、光入出路の並び方向(図9で紙面と直交する方向)と直交する方向(図9で左右方向)に互いに反対側にある。
2つの嵌合ピン33(又は嵌合穴)は、二次元配列の複数の光入出路全体の分布中心に関して点対称に配置されている構成である。
この光コネクタ31’においても、図5の光コネクタ31のように光入出路列が横1列(すなわち一次元配列)の場合と同様な効果が得られる。
また、図6の光コネクタ21において、光ファイバ穴の配列を横1列の一次元配列でなく、二次元配列にしてもよい。
【0026】
上記各実施例では、光ファイバ挿入穴32が接続面31a(取付面42a)と平行な場合を図示している。
しかし、光ファイバ挿入穴の方向と取付面の面方向がなす角度は適宜設定できる。
例えば、光ファイバ挿入穴の方向が、図4中、紙面右上方向から紙面左下方向に向かって傾斜している場合もある。
このように光ファイバ挿入穴の方向が傾斜していても、反射面で臨界角を確保できれば光素子と光ファイバを光結合できる。
光ファイバ挿入穴の代わりに、断面がV形状なる複数のV溝を光コネクタの底面に形成し、これらV溝内に光ファイバを載置し、透明ガラス等の蓋で光ファイバを押さえ込む方式の場合も同様である。
【0027】
本発明において嵌合ピンとは位置決め用凸部の一実施例であり、嵌合穴とは該位置決め用凸部を受容する位置決め用凹部の一実施例である。
例えば、嵌合ピンの形状は先端がコニカルな断面円形のものが用いられるが、嵌合ピン形状は限定されず適宜形状を採用できる。
つまり、位置決め用凸部と位置決め用凹部とは、嵌合ピンや嵌合穴に限定されず位置決機能を有する構造物を総称するものである。
さらにまた、本発明において光を反射する反射面として光コネクタ本体に形成された傾斜面を実施例としているが、反射面とは光を反射する機能を有する部分を総称するものであり実施例には限定されない。
例えば、光ファイバの端面自体を傾斜加工して、必要に応じて傾斜面に反射膜を加工することもできる。この場合には光コネクタ本体には傾斜面等の構造が不用になる。
ただし、上記の光ファイバの端面を傾斜面として光ファイバ伝搬光を反射させる技術は周知であるから特に説明はしない。
【0028】
さらに、本発明で用いる光ファイバという言葉は光導波路を意味している。
光導波路には、全石英製の光ファイバ、高分子系光ファイバ(プラスチック光ファイバ)、或いはこれらが並列配置されたもの等が含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の参考例の光コネクタの斜視図である。
【図2】本発明の他の参考例の光コネクタの斜視図である。
【図3】本発明の一実施例の光コネクタ及びこの光コネクタが実装される位置決め台の斜視図である。
【図4】図3において光コネクタを位置決め台に実装した状態で示した横断面図である。
【図5】図3の光コネクタの底面図である。
【図6】本発明の他の一実施例の光コネクタの底面図である。
【図7】本発明の他の参考例の光コネクタの斜視図である。
【図8】本発明のさらに他の一実施例の光コネクタ及びこの光コネクタが実装される位置決め台の斜視図である。
【図9】図8において光コネクタを位置決め台に実装した状態で示した横断面図である。
【図10】従来の光コネクタの斜視図である。
【符号の説明】
【0030】
31、51 光コネクタ
31’ 光コネクタ
31a コネクタの底面(接続面)
32 光ファイバ穴
33、53 嵌合ピン
35 光ファイバ
36 ミラー
41 光素子
42 位置決め台(基板)
42a 取付面
43 嵌合穴
L 光ファイバ穴中心を結ぶ直線
(光コネクタ側の)光入出路中心を結ぶ直線
P 光ファイバ穴全体の配列中心(二次元配列の光ファイバ穴全体の分布中心)
Q 光入出路全体の配列中心(二次元配列の光入出路全体の分布中心)
コネクタ横寸法(幅寸法)
D コネクタ縦寸法(奥行き寸法)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバを伝搬する光の方向を変更する光コネクタであり、
前記光コネクタは、前記光ファイバを伝搬する光の方向を変更する反射面を有し、
前記反射面で反射された反射光が通過する前記光コネクタの一方の面には、位置決め用凸部あるいは位置決め用凹部が設けられ、
前記位置決め用凸部あるいは位置決め用凹部は、前記一方の面の各光入出路の中心を通る直線Mを挟んで互いに反対側に設けられ、
前記位置決め用凸部あるいは位置決め用凹部は、直線M上における光入出路列の中心Qに関して点対称に配置されていることを特徴とする光コネクタ。
【請求項2】
前記反射面が傾斜面であり、前記光コネクタには前記光ファイバの光軸と向かい合う傾斜面が設けられていること特徴とする請求項1記載の光コネクタ。
【請求項3】
前記傾斜面を、前記光コネクタの内側面に有することを特徴とする請求項2記載の光コネクタ。
【請求項4】
前記傾斜面を、前記光コネクタの外側面に有することを特徴とする請求項2記載の光コネクタ。
【請求項5】
前記反射面で反射された反射光が通過する前記光コネクタの一方の面には前記2つの位置決め用凸部が形成されており、
前記前記2つの位置決め用凸部を結んだ線分は、前記直線Mに対して垂直であることを特徴とする請求項1記載の光コネクタ。
【請求項6】
前記位置決め用凸部が丸棒状のピンであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の光コネクタ。
【請求項7】
前記位置決め用凹部が丸棒状のピンが嵌合される穴であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の光コネクタ。
【請求項8】
前記位置決め用凸部が前記光コネクタに一体成形された樹脂製のピンであることを特徴とする請求項6記載の光コネクタ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2013−47846(P2013−47846A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−246377(P2012−246377)
【出願日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【分割の表示】特願2008−234026(P2008−234026)の分割
【原出願日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】