説明

光コヒーレンストモグラフィーの構成機器の較正方法

【課題】波長走査型OCTやフーリエドメインOCT等の光断層画像化装置の波長走査型光源、モノクロメーター、分光器等の較正を、オシロスコープや干渉フィルター等の特殊機材を使用するすることなく行えるようにする。
【解決手段】時間的に波長を走査する波長走査型光源2を有する光コヒーレンストモグラフィーの波長走査型光源2を較正する場合に、光コヒーレンストモグラフィーにより波長走査型光源2をモニタリングしてスペクトル干渉信号を時間信号として検出し、このスペクトル干渉信号から走査波長の時間依存性を求め、波長走査型光源2の走査波長の時間依存特性を較正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光コヒーレンストモグラフィーの構成機器の較正方法に関し、特に、波長走査型光コヒーレンストモグラフィーの波長走査型光源又はモノクロメーターの較正方法に関し、さらに、フーリエドメイントモグラフィー及び偏光感受型光コヒーレンストモグラフィーの分光器の較正方法に関する。
【背景技術】
【0002】
医療分野等で用いられる非破壊断層計測技術の1つとして、時間的に低コヒーレンスな光をプローブ(探針)として用いる光断層画像化法「光コヒーレンストモグラフィー」(OCT)がある(特許文献1参照)。OCTは、光を計測プローブとして用いるため、被計測物体の屈折率分布、分光情報、偏光情報(複屈折率分布)等が計測できるという利点がある。
【0003】
基本的なOCT43は、マイケルソン干渉計を基本としており、その原理を図6で説明する。光源44から射出された光は、コリメートレンズ45で平行化された後に、ビームスプリッター46により参照光と物体光に分割される。物体光は、物体アーム内の対物レンズ47によって被計測物体48に集光され、そこで散乱・反射された後に再び対物レンズ47、ビームスプリッター46に戻る。
【0004】
一方、参照光は参照アーム内の対物レンズ49を通過した後に参照鏡50によって反射され、再び対物レンズ49を通してビームスプリッター46に戻る。このようにビームスプリッター46に戻った物体光と参照光は、物体光とともに集光レンズ51に入射し光検出器52(フォトダイオード等)に集光される。
【0005】
OCTの光源44は、時間的に低コヒーレンスな光(異なった時刻に光源から出た光同士は極めて干渉しにくい光)の光源を利用する。時間的低コヒーレンス光を光源としたマイケルソン型の干渉計では、参照アームと物体アームの距離がほぼ等しいときにのみ干渉信号が現れる。この結果、参照アームと物体アームの光路長差(τ)を変化させながら、光検出器52で干渉信号の強度を計測すると、光路長差に対する干渉信号(インターフェログラム)が得られる。
【0006】
そのインターフェログラムの形状が、被計測物体48の奥行き方向の反射率分布を示しており、1次元の軸方向走査により被計測物体48の奥行き方向の構造を得ることができる。このように、OCT43では、光路長走査により、被計測物体48の奥行き方向の構造を計測できる。
【0007】
このような軸方向の走査のほかに、横方向の機械的走査を加え、2次元の走査を行うことで被計測物体の2次元断面画像が得られる。この横方向の走査を行う走査装置としては、被計測物体を直接移動させる構成、物体は固定したままで対物レンズをシフトさせる構成、被計測物体も対物レンズも固定したままで、対物レンズの瞳面付近においたガルバノミラーの角度を回転させる構成等が用いられている。
【0008】
以上の基本的なOCTが発展したものとして、光源の波長を走査してスペクトル干渉信号を得る波長走査型OCT(Swept Source OCT、略して「SS−OCT」という。)と、分光器を用いてスペクトル信号を得るスペクトルドメインOCTがあり、後者としてフーリエドメインOCT(Fourier Domain OCT、略して「FD−OCT」という。特許文献2参照)、及び偏光感受型OCT(Polarization-Sensitive OCT、略して「PS−OCT」という。特許文献3参照)がある。
【0009】
波長走査型OCTは、高速波長スキャニングレーザーにより光源の波長を変え、スペクトル信号と同期取得された光源走査信号を用いて干渉信号を最配列し、信号処理を加えることで3次元光断層画像を得るものである。なお、光源の波長を変える手段として、モノクロメーターを利用したものでも、波長走査型OCTとして利用可能である。
【0010】
フーリエドメインOCTは、被計測物体からの反射光の波長スペクトルを、スペクトロメーター(スペクトル分光器)で取得し、このスペクトル強度分布に対してフーリエ変換することで、実空間(OCT信号空間)上での信号を取り出すことを特徴とするものであり、このフーリエドメインOCTは、奥行き方向の走査を行う必要がなく、x軸方向の走査を行うことで被計測物体の断面構造を計測可能である。
【0011】
偏光感受型OCTは、フーリエドメインOCTと同様に、被計測物体からの反射光の波長スペクトルをスペクトル分光器で取得するものであるが、入射光及び参照光をそれぞれ1/2波長板、1/4波長板等を通して水平直線偏光、垂直直線偏光、45°直線偏光、円偏光として、被計測物体からの反射光と参照光を重ねて1/2波長板、1/4波長板等を通して、例えば水平偏光成分だけをスペクトル分光器に入射させて干渉させ、物体光の特定偏光状態をもつ成分だけを取り出してフーリエ変換するものである。この偏光感受型OCTも、奥行き方向の走査を行う必要がない。
【特許文献1】特開2002−310897号公報
【特許文献2】特開平11−325849号公報
【特許文献3】特開2004−028970号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
波長走査型OCT(モノクロメーター利用したものを含む)における時間信号、あるいはFD−OCTでは分光器からの空間信号のフーリエ変換が被計測物体の深さ方向の散乱分布、すなわち光断層像となる。正確な光断層像を得るためにはもとの信号は光の波数(2π/波長)について等間隔である必要がある。
【0013】
一般に波長走査光源や分光器は波長に対して線型に設計することが多い。また、その線型性は完全ではなく、較正は困難である。この較正や波数への変換を行わないと、得られる光断層画像の解像力は著しく低下し、また、深さ方向の線型性も失われてしまう。従って光源の走査特性や分光器の出力を波数に較正する事が必要不可欠である。
【0014】
そして、フーリエドメインOCT及び偏光感受型OCTでは広帯域光源を用い、その出力光を、分光器において回折格子で分光し受光素子(CCD)でスペクトル干渉信号を得る構成であるが、分光信号と深さ情報を線形に保つための較正が必要であり、具体的には、分光器の受光素子の較正をするが必要である。
【0015】
従来、これら波長走査型光源、モノクロメーター、分光器等の較正には、オシロスコープや干渉フィルター等の特殊機材が必要であった。本発明は、これらの較正を、特殊機材を使用することなく、波長走査型OCT、フーリエドメインOCT及び偏光感受型OCT等の光断層画像化測定器そのもので行えるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は上記課題を解決するために、時間的に波長を走査する波長走査型光源を有する光コヒーレンストモグラフィーの前記波長走査型光源を較正する較正方法において、
前記光コヒーレンストモグラフィーにより前記波長走査型光源をモニタリングしてスペクトル干渉信号を時間信号として検出し、該スペクトル干渉信号から走査波長の時間依存性を求め、前記波長走査型光源の走査波長の時間依存特性を較正することを特徴とする較正方法を提供する。
【0017】
前記スペクトル干渉信号をフーリエ変換し、周波数成分の1次のピークを検出し、切り出し、その部分のみ逆フーリエ変換し、スペクトル信号空間にもどし、その複素周波数信号の位相情報を取り出し、2πの不確定性をアンラッピングし、多項式関数でフィッティングを行い、該関数から走査波長の時間依存特性を較正することが好ましい。
【0018】
前記スペクトル干渉信号をヒルベルト変換し、前記干渉スペクトル干渉信号との比の逆正接をとることにより、位相情報を取り出し、2πの不確定性をアンラッピングし、多項式数でフィッティングを行い、該関数から掃引特性の時間依存特性を較正することが好ましい。
【0019】
前記波長走査型光源は、モノクロメーターによる波長を走査をするものであてもよい。
【0020】
本発明は上記課題を解決するために、参照光と被計測物体からの反射光の波長スペクトルを、分光器でスペクトル干渉信号として取得し、該スペクトル干渉信号をフーリエ変換し実空間上での信号を取り出すフーリエドメイン光コヒーレンストモグラフィーの前記分光器を較正する較正方法において、前記フーリエドメイン光コヒーレンストモグラフィーにより前記分光器をモニタリングしてスペクトル干渉信号から波長の分光器において空間的に展開された波長成分の分布状態を求め、分光特性の空間分布を較正することを特徴とする較正方法を提供する。
【0021】
前記フーリエドメイン光コヒーレンストモグラフィーは、入射光及び参照光をそれぞれ水平直線偏光、垂直直線偏光、45°直線偏光又は円偏光して、被計測物体からの反射光と参照光を重ねて、これらの偏光のうち特定の偏光成分だけをスペクトル分光器に入射させて干渉させ、物体光の特定偏光状態をもつ成分だけを取り出してフーリエ変換する偏光感受型のフーリエドメイン光コヒーレンストモグラフィーであることが好ましい。
【0022】
前記スペクトル干渉信号をフーリエ変換し、周波数成分の1次のピークを検出し、切り出し、その部分のみ逆フーリエ変換し、スペクトル信号空間にもどし、その複素周波数信号の位相情報を取り出し、2πの不確定性をアンラッピングし、多項式関数でフィッティングを行い、該関数から波長の空間分布特性を較正することが好ましい。
【0023】
前記スペクトル干渉信号をヒルベルト変換し、前記干渉スペクトル干渉信号との比の逆正接をとることにより、位相情報を取り出し、2πの不確定性をアンラッピングし、多項式数でフィッティングを行い、該関数から掃引特性の空間分布特性を較正することが好ましい。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係る光コヒーレンストモグラフィーの構成機器の較正方法よれば波長走査型光源、モノクロメーター、分光器等の較正において、オシロスコープや干渉フィルター等の特殊機材を使用することなく、波長走査型OCT、フーリエドメインOCT及び偏光感受型OCT等の光断層画像化測定器そのもので行える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明に係る光コヒーレンストモグラフィーの構成機器の較正方法を実施するための最良の形態を実施例に基づき図面を参照して、以下説明する。
【実施例1】
【0026】
図1は、本発明の実施例1の較正方法の対象である波長走査型OCT1の全体構成を示す図である。波長走査型光源2から出射された出力光を、ファイバ3を通してファイバカップラー4に送る。この出力光を、ファイバカップラー4において、ファイバ5を通して被計測物体6への照射する物体光と、ファイバ7を通して固定参照鏡8に照射する参照光に分割する。
【0027】
物体光は、ファイバ5、レンズ9、角度が可変な走査鏡10及びレンズ11を介して、被計測物体6(較正時には反射鏡)に照射、反射され、同じルートでファイバカップラー4に戻る。参照光は、ファイバ7、レンズ12及びレンズ13を介して固定参照鏡8に照射、反射されて同じルートでファイバカップラー4に戻る。
【0028】
そして、これらの物体光と参照光はファイバカップラー4で重ねられ、ファイバ14を通して光検知器15(PD(フォトダイオード)等のポイントセンサが使用される。)に送られ、スペクトル干渉信号として検出され、コンピュータ16に取り込まれる。光検知器15における検知出力に基づいて、被計測物体6の奥行き方向(A方向)と走査鏡10の走査方向(B方向)の断面画像が形成される。17はコンピュータ16に接続されたディスプレーである。
【0029】
ここで、波長走査型光源2は、時間的に波長を変化させて走査する光源であり、即ち波長が時間依存性を有する光源である。これにより、参照鏡8を走査(移動。Aスキャン)することなく、 被計測物体6の奥行き方向の反射率分布を得て奥行き方向の構造を取得することができ、1次方向の走査(Bスキャン)をするだけで、二次元の断層画像を形成することができる。
【0030】
波長走査型光源2は、その光の波長が時間依存性を有し、これを模擬的に時間軸と波長のグラフで示すと図2(a)に示すとおりである。本発明は、この図2(a)に示すような予め決められた時間従属性を示す特性から、波長走査型光源2の特性が変化していないか、較正を行うものである。なお、本発明とは直接関連はないが、較正結果に応じて二次元の断層画像を修正することができる。
【0031】
本発明の実施例1の波長走査型光源2の較正方法では、波長走査型OCT1により波長走査型光源2をモニタリングしてスペクトル干渉信号を時間信号として検出する。ここで、波長走査型OCT1による波長走査型光源2のモニタリングは、次のように行う。
【0032】
即ち、波長走査型OCT1において、 被計測物体6に替えて反射鏡(図示せず。)を設置し、波長走査型光源2の出力光(走査波長の時間依存性をν(t)とする。)を、ファイバカップラー4で物体光(光の強度P)と参照光(光の強度P)に分割して、それぞれ反射鏡と固定参照鏡8に照射、反射させて、ファイバカップラー4に戻して重ね合わせ、これを光検知器15で検知して、スペクトル干渉信号を時間信号として検出する。その際、物体側と参照側に光路差(z)をつけておく。このスペクトル干渉信号(I)を時間信号として検出したデータは、時間と光の強度データであり、これを、模擬的に示すと、図2(b)に示すようなデータとなる。
【0033】
このようなモニタリングで得られたスペクトル干渉信号(時間に対する光の強度のデータ)(式1参照)をコンピュータ16に取り込む。
【0034】
【数1】

【0035】
そして、このスペクトル干渉信号を、コンピュータ16のCPUの演算機能を利用して、フーリエ変換を行い(式2参照)、図2(c)に示すようなフーリエ変換データを得る。
【0036】
【数2】

【0037】
このフーリエ変換データのうち、1次のピーク部分を検出して、その周囲を適当な周波数範囲で切り出して、これを逆フーリエ変換を行い(式3参照)、解析信号(I’)(複素数)を得る。
【0038】
【数3】

【0039】
この解析信号は、図2(d)に示すように、時間に対する位相情報として示される(式4参照)が、位相成分は2πで折返しがあるので、アンラッピング後、多項式など適当な関数でフィッティングを行い(式5参照)、図2(f)に模擬的に示すような、走査波長の時間依存性を示す関数として求められる。a0〜3、b0〜3は、フィッティングで決まる定数である。
【0040】
【数4】

【0041】
【数5】

【0042】
以上のようにして、スペクトル干渉信号から走査波長の時間依存性(ν(t))を求められるが、この関数について、図2(a)に示す波長走査型光源2の特性と比較して、波長走査型光源2の時間依存特性の較正が行われる。
【0043】
なお、上記の方法では、前記スペクトル干渉信号は、コンピュータ16のCPUの演算機能を利用して、フーリエ変換を行い、その1次のピーク部分を逆フーリエ変換を行い、解析信号(複素数)を得た(これを本明細書では、「フーリエ変換法」という。)が、スペクトル干渉信号をヒルベルト変換したもの(I)を虚部とし前記スペクトル干渉信号を実部として解析信号(複素数)を得てもよい。
【0044】
要するに、スペクトル干渉信号(式6参照)をヒルベルト変換し(式7参照)、このスペクトル干渉信号との比の逆正接をとることにより(式8参照)、位相情報を取り出してもよい(これを本明細書では、「ヒルベルト変換法」という。)。
【0045】
【数6】

【0046】
【数7】

【0047】
【数8】

【実施例2】
【0048】
図3は、FD−OCT18の全体構成を示す図である。広帯域光源19、低コヒーレンス干渉計20、及び分光器(スペクトロメーター)21とを備えている。このFD−OCT18は、低コヒーレンス干渉の原理を用いて奥行き方向の分解能を得ているため、光源として、SLD( スーパールミネツセントダイオード)や超短パルスレーザー等の広帯域光源19が用いられる。
【0049】
広帯域光源19から出た光は、まずビームスプリッター22で物体光と参照光に分割される。このうち物体光は、レンズ23を通してガルバノミラー24で反射され被計測物体25を照射し、そこで反射、散乱された後に分光器21に導かれる。一方、参照光はレンズ26を通して参照鏡(平面鏡)27で反射された後に物体光と並行に分光器21に導かれる。これらの二つの光は分光器21の回折格子28によって同時に分光され、スペクトル領域で干渉し、結果、スペクトル干渉縞がCCD29によって計測される。
【0050】
このスペクトル干渉縞に対して適当な信号処理を行うことで、被計測物体25のある点における深さ方向1次元の屈折率分布の微分、つまり、反射率分布を得ることが可能となる。さらに、被計測物体25上の計測点をガルバノミラー24を駆動し1次元走査することにより2次元断層画像(FD−OCT画像)を得ることができる。
【0051】
通常のOCTでは、2次元断層画像を得るために2次元の機械的走査が必要なのに対して、1次元の機械的走査しか必要とされない。これにより、FD−OCT18では通常のOCTよりも高速な断層計測が可能となる。
【0052】
本発明の実施例2の較正方法は、分光器21を較正する方法である。分光器21に入射した光をその回折格子28で分光しCCD29で受光した場合に、CCD29の面に沿ったx軸方向に対する波長成分の分布(分光器の空間分布特性)を、図4(a)において模擬的に示す。
【0053】
この実施例2の較正方法は、このような分光器21の空間分布特性(回折格子28において空間的に展開された波長成分の分布状態)をモニタリングして求め、分光特性の空間分布を較正する方法である。これを、以下、より具体的に説明する。
【0054】
実施例2の較正方法を実施するモニタリングでは、被計測物体25の代わりに通常の平面鏡(図示せず。)の反射面を置く。そして、広帯域光源19から光をビームスプリッター22で回折格子28に向けて照射すると、物体光及び参照光は回折格子28で分光されスペクトル領域で干渉され、このスペクトル干渉縞(スペクトル干渉信号)がCCD29によって計測される。このスペクトル干渉信号の、CCD29の面に沿ったx軸方向に対す強度Tの分布(空間分布特性)を模擬的に示すと、図4(b)のようになる。
【0055】
このようなモニタリングで得られたスペクトル干渉信号(空間に対する光の強度のデータ)をコンピュータ(図示せず。)に取り込む。そして、このスペクトル干渉信号を、コンピュータのCPUの演算機能を利用して、フーリエ変換を行い、図4(c)に示すようなフーリエ変換データを得る。このフーリエ変換データのうち、1次のピーク部分を検出して、その周囲を適当な周波数範囲で切り出して、これを逆フーリエ変換を行い、解析信号(複素数)を得る。
【0056】
この解析信号は、図4(d)に示すように、空間に対する位相情報として示されるが、位相成分は2πで折返しがあるので、アンラッピング後、多項式など適当な関数でフィッティングを行い、図4(e)に模擬的に示すような、波長の空間分布性を示す関数として求められる。以上のようにして、スペクトル干渉信号から波長の空間依存性を求められるが、この関数について、図4(a)に示す分光器21の特性と比較して、分光器21の空間分布特性の較正が行われる。
【実施例3】
【0057】
図5は、実施例3のPS−FD−OCT30(偏光感受型スペクトル干渉トモグラフィー装置)の全体構成を示す図である。実施例2と同様に、広帯域光源19、低コヒーレンス干渉計31(マイケルソン干渉計)、及び分光器21(スペクトロメーター)とを備えている。具体的な構成について、以下、作用とともに説明する。
【0058】
広帯域光源19から出た光は、光ウェッジ32によりパワーを減少された後、偏光子33により水平直線偏光(以下「H」という)となる。そして、入射光の偏光状態を、1/2波長板34と1/4波長板35により、水平直線偏光(H)、垂直直線偏光(以下「V」という)、45°直線偏光(以下「P」という)及び右周り円偏光(以下「R」という)の4通りのいずれかに選択的に調整し、ビームスプリッター36で参照光と被計測物体25に入射する光とに分ける。
【0059】
ビームスプリッター36で分けられた参照光は、参照光光学系の2枚の1/4波長板37により、偏光状態がH、V、P、Rとなるように調整されビームスプリッター36に入射される。一方、被計測物体25に入射する光はレンズ38により被計測物体25上の1点に集光され、反射され物体光としてビームスプリッター36に向かう。ビームスプリッター36は、上記入射してくる参照光を透過させ物体光を45°反射させて、両者を重ね合わせる。
【0060】
このようにして重ね合わせられてビームスプリッター36から出てくる偏光状態がH、V、P、Rとなるように調整された参照光と、被計測物体25から反射してきた物体光は、ミラー39で反射されてから1/4波長板40及び1/2波長板41を通して偏光状態をHにされ、回折格子28、レンズ42及びCCD29からなる分光器21に入射する。
【0061】
このように特定偏光の参照光(H、V、P、Rのいずれかの偏光状態の参照光)と物体光を干渉させることにより、物体光の特定偏光成分だけがCCD29上にスペクトル干渉縞を作り、その結果、物体光のうち参照光と同じ偏光状態をもつ成分だけを信号として取り出すことができる。そして、このスペクトル干渉縞をコンピュータ(図示せず。)に取り込み、画像のy軸のある1点から横1行を抜き取って離散フーリエ変換(DFT:Discrete Fourier transform、FFT:Fast Fourier transform)により空間的なフーリエ変換を計算する。
【0062】
これにより、参照光と物体光との一次元相関信号が得られる。さらにこれらの信号強度を組み合わせてミュラー行列(Mueller matrix)を求めることにより、被計測物体25の内部の偏光情報を捉えることができる。
【0063】
この実施例3の較正方法は、分光器21を構成する方法であり、分光器21の空間分布特性をモニタリングして求め、分光特性の空間分布を較正する方法である。この実施例3の較正方法は、実施例2の分光器21の較正方法と全く同様であるから、その説明は省略する。
【0064】
以上、本発明を実施するための最良の形態を実施例に基づいて説明したが、本発明はこのような実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された技術的事項の範囲内でいろいろな実施例があることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明に係る光コヒーレンストモグラフィーの波長走査型光源、モノクロメータ、分光器等の構成機器の較正方法は光源や分光器等を設置された本体装置で較正できるようにするものであり、SS−OCT、FD−OCT、PS−FD−OCTだけでなく、眼科等の医療分野、その他工業計測の分野における非破壊断層計測技術その他の光断層画像化装置の較正機器の較正方法としても適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の実施例1の較正対象である波長走査型光源を有するSS−OCTの全体構成を示す図である。
【図2】実施例1の原理、作用を説明するための模擬的な説明図である。
【図3】本発明の実施例2の較正対象である分光器を備えたFD−OCTの全体構成を示す図である。
【図4】実施例2の原理、作用を説明するための模擬的な説明図である。
【図5】本発明の実施例3の較正対象である分光器を備えたPS−FD−OCTの全体構成を示す図である。
【図6】OCTを説明する図である。
【符号の説明】
【0067】
1 波長走査型OCT
2 波長走査型光源
3、5、7、14 ファイバ
4 ファイバカップラー
6、25、48 被計測物体
8 固定参照鏡
9、11、12、13、23、26、38、42 レンズ
10 角度が可変な走査鏡
15 光検知器
16 コンピュータ
17 ディスプレー
18 FD−OCT
19 広帯域光源
20 低コヒーレンス干渉計
21 分光器(スペクトロメーター)
22 ビームスプリッター
24 ガルバノミラー
27、50 参照鏡(平面鏡)
28 回折格子
29 CCD
30 PS−FD−OCT
31 低コヒーレンス干渉計(マイケルソン干渉計)
32 光ウェッジ
33 偏光子
34、41 1/2波長板
35、37、40 1/4波長板
36 ビームスプリッター
39 ミラー
43 OCT
44 光源
45 コリメートレンズ
46 ビームスプリッター
47 物体アーム内の対物レンズ
49 参照アーム内の対物レンズ
51 集光レンズ
52 (フォトダイオード等)光検出器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
時間的に波長を走査する波長走査型光源を有する光コヒーレンストモグラフィーの前記波長走査型光源を較正する較正方法において、
前記光コヒーレンストモグラフィーにより前記波長走査型光源をモニタリングしてスペクトル干渉信号を時間信号として検出し、該スペクトル干渉信号から走査波長の時間依存性を求め、前記波長走査型光源の走査波長の時間依存特性を較正することを特徴とする較正方法。
【請求項2】
前記スペクトル干渉信号をフーリエ変換し、周波数成分の1次のピークを検出し、切り出し、その部分のみ逆フーリエ変換し、スペクトル信号空間にもどし、その複素周波数信号の位相情報を取り出し、2πの不確定性をアンラッピングし、多項式関数でフィッティングを行い、該関数から走査波長の時間依存特性を較正することを特徴とする請求項1記載の較正方法。
【請求項3】
前記スペクトル干渉信号をヒルベルト変換し、前記干渉スペクトル干渉信号との比の逆正接をとることにより、位相情報を取り出し、2πの不確定性をアンラッピングし、多項式数でフィッティングを行い、該関数から掃引特性の時間依存特性を較正することを特徴とする請求項1記載の較正方法。
【請求項4】
前記波長走査型光源は、モノクロメーターによる波長を走査をするものであることを特徴とする請求項1記載の較正方法。
【請求項5】
参照光と被計測物体からの反射光の波長スペクトルを、分光器でスペクトル干渉信号として取得し、該スペクトル干渉信号をフーリエ変換し実空間上での信号を取り出すフーリエドメイン光コヒーレンストモグラフィーの前記分光器を較正する較正方法において、
前記フーリエドメイン光コヒーレンストモグラフィーにより前記分光器をモニタリングしてスペクトル干渉信号から波長の分光器において空間的に展開された波長成分の分布状態を求め、分光特性の空間分布を較正することを特徴とする較正方法。
【請求項6】
前記フーリエドメイン光コヒーレンストモグラフィーは、入射光及び参照光をそれぞれ水平直線偏光、垂直直線偏光、45°直線偏光又は円偏光して、被計測物体からの反射光と参照光を重ねて、これらの偏光のうち特定の偏光成分だけをスペクトル分光器に入射させて干渉させ、物体光の特定偏光状態をもつ成分だけを取り出してフーリエ変換する偏光感受型のフーリエドメイン光コヒーレンストモグラフィーであることを特徴とする請求項5記載の較正方法。
【請求項7】
前記スペクトル干渉信号をフーリエ変換し、周波数成分の1次のピークを検出し、切り出し、その部分のみ逆フーリエ変換し、スペクトル信号空間にもどし、その複素周波数信号の位相情報を取り出し、2πの不確定性をアンラッピングし、多項式関数でフィッティングを行い、該関数から波長の空間分布特性を較正することを特徴とする請求項5又は6記載の較正方法。
【請求項8】
前記スペクトル干渉信号をヒルベルト変換し、前記干渉スペクトル干渉信号との比の逆正接をとることにより、位相情報を取り出し、2πの不確定性をアンラッピングし、多項式数でフィッティングを行い、該関数から掃引特性の空間分布特性を較正することを特徴とする請求項5又は6記載の較正方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−101365(P2007−101365A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−291789(P2005−291789)
【出願日】平成17年10月4日(2005.10.4)
【出願人】(504171134)国立大学法人 筑波大学 (510)
【Fターム(参考)】