説明

光ファイバアップジャケット用液状硬化性樹脂組成物

【課題】隣接被覆層との剥離性に優れ、光ファイバアップジャケット用材料に適した液状硬化性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】(メタ)アクリロイル基を2個以上有するウレタン(メタ)アクリレート、反応性希釈剤、重合開始剤および一般式(1)で示される(D1)〜(D3)から選択される一以上の(メタ)アクリロイル基を1個有するウレタン(メタ)アクリレート化合物を含有する光ファイバアップジャケット用液状硬化性樹脂組成物。


(D1)R1はメチル基、R2、R3は2価の有機基、R4は1価の有機基(D2)R1は水素原子、R2、R3は2価の有機基、R4は分子量1500以上のポリオール残基(D3)R1は水素原子またはメチル基、R2、R3は2価の有機基、R4は分子量1000〜30000のシリコーン残基

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバ素線の表面に塗布後硬化して使用するアップジャケット用液状硬化性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバの製造においては、ガラスファイバを熱溶融紡糸し、保護補強を目的として樹脂被覆が施されている。この過程を線引きと称し、樹脂被覆としては、光ファイバの表面にまず柔軟な第一次の被覆層を設け、その外側に剛性の高い第二次の被覆層を設けた構造が知られている。また、これらの樹脂被覆を施された光ファイバ素線を実用に供するため平面上に複数並べて結束材料で固めテープ状被覆層を設けた構造が知られている。この第一次の被覆層を形成するための樹脂組成物をソフト材、第二次の被覆層を形成するための樹脂組成物をハード材、テープ状の被覆層を形成するための樹脂組成物をテープ材と称している。
【0003】
光ファイバ素線の外径は通常250μm程度であるが、手作業による作業性を改善する目的で、この外周をさらに別の樹脂層で被覆して外径を500μm程度に増大させることが行われている。このような樹脂被覆層を通常アップジャケット層といい、アップジャケット層を有する光ファイバ素線をアップジャケット心線という。アップジャケット層自体は光学的特性を要するものではないため、特に透明性は必要とされず、着色を付して目視による識別性を付与することもある。アップジャケット層は、光ファイバ素線の結線作業等を行う場合に、容易に、かつ、下層にある一次被覆層や二次被覆層を破損させずに剥離できることが重要な特性である。
【0004】
このようなアップジャケット層を含めた光ファイバ用被覆材として用いられる硬化性樹脂には、塗布性に優れ高速で線引き可能なこと;十分な強度、柔軟性を有すること;耐熱性に優れること;耐候性に優れること;酸、アルカリなどに対する耐性に優れること;耐油性に優れていること;吸水、吸湿性が低いこと;耐候性に優れていること水素ガス発生量が少ないこと;液状で保存安定性が良好なことなどの特性が要求されている。
【0005】
しかし、従来のアップジャケット用材料では、アップジャケット層がその上層であるテープ材層や下層である一次被覆層や二次被覆層と強固に接着しているため、テープ層を剥離してアップジャケット心線を露出させる際にアップジャケット層が破損したり、アップジャケット心線からアップジャケット層を剥離させる際に一次被覆層や二次被覆層を破損させることが多かった。このため、光ファイバの接続作業の作業性が低下しているという問題があった。
【0006】
かかる剥離性を改善したアップジャケット用液状硬化性樹脂組成物としては、3種類のポリシロキサン化合物を配合した組成物(特許文献1)、および樹脂材料中に有機または無機材料からなる粒子を配合した組成物(特許文献2、3)が報告されている。
【特許文献1】特開平10−287717号公報
【特許文献2】特開平9−324136号公報
【特許文献3】特開2000−273127号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記組成物により形成されたアップジャケット層の剥離性は十分とはいえなかった。
本発明の目的は、光ファイバ被覆材としての機能に優れ、かつ隣接被覆層との剥離性に優れた光ファイバアップジャケット用液状硬化性樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで本発明者はウレタン(メタ)アクリレートを含有する液状硬化性樹脂組成物に種々の成分を配合して、その硬化物の光ファイバ被覆層としての機能および剥離性について検討してきたところ、(メタ)アクリロイル基を1個有するウレタン(メタ)アクリレートを配合すれば、かかる目的が達成できることを見出した。
【0009】
すなわち、本発明は(A)(メタ)アクリロイル基を2個以上有するウレタン(メタ)アクリレート、(B)反応性希釈剤、(C)重合開始剤および(D)下記一般式(1)で示される(D1)〜(D3)から選択される一以上の(メタ)アクリロイル基を1個有するウレタン(メタ)アクリレート化合物を含有する光ファイバアップジャケット用液状硬化性樹脂組成物を提供する。
【0010】
【化1】

【0011】
(D1)上記式(1)中、R1は、メチル基であり、R2およびR3は、各々独立に、2価の有機基であり、R4は、1価の有機基である。
(D2)上記式(1)中、R1は、水素原子であり、R2およびR3は、各々独立に、2価の有機基であり、R4は、分子量1500以上のポリオール残基である。
(D3)上記式(1)中、R1は、水素原子またはメチル基であり、R2およびR3は、各々独立に、2価の有機基であり、R4は、分子量1000〜30000のシリコーン残基である。
【発明の効果】
【0012】
本発明樹脂組成物により得られる光ファイバアップジャケット層は、十分な強度、耐候性等の機能を有し、かつその剥離性に優れていることから、光ファイバ接続作業の作業性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の(A)成分であるウレタン(メタ)アクリレートは、ポリオール、ジイソシアネートおよび水酸基含有(メタ)アクリレートとを反応させることにより製造される。すなわち、ジイソシアネートのイソシアネート基を、ポリオールの水酸基および水酸基含有(メタ)アクリレートの水酸基と、それぞれ反応させることにより製造される。(A)成分は、通常、ポリオールの両末端の水酸基が、それぞれジイソシアネートの一方のイソシアネート基と結合し、ジイソシアネートの他方のイソシアネート基が水酸基含有(メタ)アクリレートの水酸基と結合した構造を有している。
【0014】
この反応としては、例えばポリオール、ジイソシアネートおよび水酸基含有(メタ)アクリレートを一括に仕込んで反応させる方法;ポリオールおよびジイソシアネートを反応させ、次いで水酸基含有(メタ)アクリレートを反応させる方法;ジイソシアネートおよび水酸基含有(メタ)アクリレートを反応させ、次いでポリオールを反応させる方法;ジイソシアネートおよび水酸基含有(メタ)アクリレートを反応させ、次いでポリオールを反応させ、最後にまた水酸基含有(メタ)アクリレートを反応させる方法等が挙げられる。
【0015】
ここで好ましく用いられるポリオールとしては、例えばポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリカプロラクトンポリオールおよびその他のポリオールが挙げられる。これらのポリオールの各構造単位の重合様式には特に制限されずランダム重合、ブロック重合、グラフト重合のいずれであってもよい。ポリエーテルポリオールとしては、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリヘキサメチレングリコール、ポリヘプタメチレングリコール、ポリデカメチレングリコールあるいは二種以上のイオン重合性環状化合物を開環共重合させて得られる脂肪族ポリエーテルポリオール等が挙げられる。上記イオン重合性環状化合物としては、例えばエチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブテン−1−オキシド、イソブテンオキシド、3,3−ビスクロロメチルオキセタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、3−メチルテトラヒドロフラン、ジオキサン、トリオキサン、テトラオキサン、シクロヘキセンオキシド、スチレンオキシド、エピクロルヒドリン、グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル、アリルグリシジルカーボネート、ブタジエンモノオキシド、イソプレンモノオキシド、ビニルオキセタン、ビニルテトラヒドロフラン、ビニルシクロヘキセンオキシド、フェニルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、安息香酸グリシジルエステル等の環状エーテル類が挙げられる。また、上記イオン重合性環状化合物と、エチレンイミン等の環状イミン類、β−プロピオラクトン、グリコール酸ラクチド等の環状ラクトン酸、あるいはジメチルシクロポリシロキサン類とを開環共重合させたポリエーテルポリオールを使用することもできる。上記二種以上のイオン重合性環状化合物の具体的な組み合わせとしては、例えばテトラヒドロフランとプロピレンオキシド、テトラヒドロフランと2−メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロフランと3−メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロフランとエチレンオキシド、プロピレンオキシドとエチレンオキシド、ブテン−1−オキシドとエチレンオキシド、テトラヒドロフラン、ブテン−1−オキシド、エチレンオキシドの3元重合体等を挙げることができる。これらのイオン重合性環状化合物の開環共重合体はランダムに結合していてもよいし、ブロック状の結合をしていてもよい。
【0016】
これらの脂肪族ポリエーテルポリオールは、例えばPTMG650、PTMG1000、PTMG2000(以上、三菱化学製)、PPG−400、PPG1000、PPG2000、PPG3000、EXCENOL720、1020、2020(以上、旭硝子ウレタン製)、PEG1000、ユニセーフDC1100、DC1800(以上、日本油脂製)、PPTG2000、PPTG1000、PTG400、PTGL2000(以上、保土谷化学製)、Z−3001−4、Z−3001−5、PBG2000A、PBG2000B(以上、第一工業製薬製)等の市販品としても入手することができる。
【0017】
さらに、ポリエーテルポリオールとしては、例えばビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加ポリオール、ビスフェノールFのアルキレンオキサイド付加ポリオール、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールF、水添ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加ポリオール、水添ビスフェノールFのアルキレンオキサイド付加ポリオール、ハイドロキノンのアルキレンオキサイド付加ポリオール、ナフトハイドロキノンのアルキレンオキサイド付加ポリオール、アントラハイドロキノンのアルキレンオキサイド付加ポリオール、1,4−シクロヘキサンポリオールおよびそのアルキレンオキサイド付加ポリオール、トリシクロデカンポリオール、トリシクロデカンジメタノール、ペンタシクロペンタデカンポリオール、ペンタシクロペンタデカンジメタノール等の環式ポリエーテルポリオールが挙げられる。これらの中で、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加ポリオール、トリシクロデカンジメタノールが好ましい。これらのポリオールは、例えばユニオールDA400、DA700、DA1000、DB400(以上、日本油脂製)、トリシクロデカンジメタノール(三菱化学製)等の市販品として入手することもできる。その他、環式ポリエーテルポリオールとしては、キレンオキシド付加ポリオール、ビスフェノールFのアルキレノキシド付加ポリオール、1,4−シクロヘキサンポリオールのアルキレノキシド付加ポリオールなどが挙げられる。
【0018】
ポリエステルポリオールとしては、例えば二価アルコールと二塩基酸とを反応して得られるポリエステルポリオールなどが挙げられる。上記二価アルコールとしては、例えばエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、テトラメチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、1,6−ヘキサンポリオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、3−メチル−1,5−ペンタンポリオール、1,9−ノナンポリオール、2−メチル−1,8−オクタンポリオール等が挙げられる。二塩基酸としては、例えばフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、マレイン酸、フマール酸、アジピン酸、セバシン酸等の二塩基酸を挙げることができる。市販品としてはクラポールP−2010、PMIPA、PKA−A、PKA−A2、PNA−2000(以上、クラレ製)等が入手できる。
【0019】
また、ポリカーボネートポリオールとしては、例えばポリテトラヒドロフランのポリカーボネート、1,6−ヘキサンポリオールのポリカーボネート等が挙げられ、市販品としてはDN−980、981、982、983(以上、日本ポリウレタン製)、PC−8000(米国PPG製)、PC−THF−CD(BASF製)等が挙げられる。
【0020】
さらにポリカプロラクトンポリオールとしては、例えばε−カプロラクトンと、例えばエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、テトラメチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、1,2−ポリブチレングリコール、1,6−ヘキサンポリオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,4−ブタンポリオール等の2価のポリオールとを反応させて得られるポリカプロラクトンポリオールが挙げられる。これらのポリオールは、プラクセル205、205AL、212、212AL、220、220AL(以上、ダイセル化学工業製)等の市販品として入手することができる。
【0021】
上記以外の他のポリオールも数多く使用することができる。このような他のポリオールとしては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンポリオール、1,5−ペンタンポリオール、1,6−ヘキサンポリオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジシクロペンタジエンのジメチロール化合物、トリシクロデカンジメタノール、β−メチル−δ−バレロラクトン、ヒドロキシ末端ポリブタジエン、ヒドロキシ末端水添ポリブタジエン、ヒマシ油変性ポリオール、ポリジメチルシロキサンの末端ポリオール化合物、ポリジメチルシロキサンカルビトール変性ポリオール等が挙げられる。
【0022】
また上記したようなポリオールを併用する以外にも、ポリオールとともにジアミンを併用することも可能である。このようなジアミンとしては、例えばエチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、パラフェニレンジアミン、4,4'−ジアミノジフェニルメタン等のジアミンやヘテロ原子を含むジアミン、ポリエーテルジアミン等が挙げられる。
【0023】
これらのポリオールのうち、ポリエーテルポリオール、特に脂肪族ポリエーテルポリオールが好ましい。具体的には、ポリプロピレングリコールや、ブテン−1−オキシドとエチレンオキシドとの共重合体が好ましい。これらのポリオールは、PPG−400、PPG1000、PPG2000、PPG3000、EXCENOL720、1020、2020(以上、旭硝子ウレタン(株))。ブテン−1−オキシドとエチレンオキシドとの共重合体であるジオールは、EO/BO500、EO/BO1000、EO/BO2000、EO/BO3000、EO/BO4000(以上、第一工業製薬製)などの市販品として入手できる。
【0024】
ジイソシアネートとしては、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、1,3−キシリレンジイソシアネート、1,4−キシリレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、3,3'−ジメチル−4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3'−ジメチルフェニレンジイソシアネート、4,4'−ビフェニレンジイソシアネート、1,6−ヘキサンジイソシアネート、イソフォロンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ビス(2−イソシアネートエチル)フマレート、6−イソプロピル−1,3−フェニルジイソシアネート、4−ジフェニルプロパンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、2,5(または2,6)−ビス(イソシアネートメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン等が挙げられる。特に、2,4−トリレンジイソシアネート、イソフォロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)等が好ましい。
【0025】
これらのジイソシアネートは、単独あるいは二種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0026】
水酸基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェニルオキシプロピル(メタ)アクリレート、1,4−ブタンポリオールモノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリロイルフォスフェート、4−ヒドロキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンポリオールモノ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールモノ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、下記式(2)または(3)
【0027】
【化2】

【0028】
(式中、R5は水素原子またはメチル基を示し、nは1〜15の数を示す)
で表される(メタ)アクリレート等が挙げられる。また、アルキルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、グリシジル(メタ)アクリレート等のグリシジル基含有化合物と、(メタ)アクリル酸との付加反応により得られる化合物を使用することもできる。これら水酸基含有(メタ)アクリレートのうち、特に、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等が好ましい。
【0029】
これらの、水酸基含有(メタ)アクリレート化合物は、単独であるいは二種類以上組み合わせて用いることができる。
【0030】
ポリオール、ジイソシアネートおよび水酸基含有(メタ)アクリレートの使用割合は、ポリオールに含まれる水酸基1当量に対してジイソシアネートに含まれるイソシアネート基が1.1〜3当量、水酸基含有(メタ)アクリレートの水酸基が0.2〜1.5当量となるようにするのが好ましい。
【0031】
これらの化合物の反応においては、例えばナフテン酸銅、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸亜鉛、ジブチル錫ジラウレート、トリエチルアミン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、2,6,7−トリメチル−1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン等のウレタン化触媒を、反応物の総量100重量部に対して0.01〜1重量部用いるのが好ましい。また、反応温度は、通常10〜90℃、特に30〜80℃で行うのが好ましい。
【0032】
水酸基含有(メタ)アクリレートの一部をイソシアネート基に付加しうる官能基を持った化合物で置き換えて用いることもできる。例えば、γ−メルカプトトリメトキシシラン、γ−アミノトリメトキシシランなどを挙げることができる。これらの化合物を使用することにより、ガラス等の基材への密着性を高めることができる。
【0033】
また、本発明の液状硬化性樹脂組成物には、さらに、ジイソシアネート1モルに対して水酸基含有(メタ)アクリレート化合物2モルを反応させたウレタン(メタ)アクリレートを配合することもできる。かかるウレタン(メタ)アクリレートとしては、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートと2,4−トリレンジイソシアネートの反応物、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートと2,5(または2,6)−ビス(イソシアネートメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタンの反応物、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとイソフォロンジイソシアネートの反応物、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートと2,4−トリレンジイソシアネートの反応物、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートとイソフォロンジイソシアネートの反応物が挙げられる。
【0034】
これら(A)成分であるウレタン(メタ)アクリレートは、(A)、(B)および(C)成分の合計量に対して、通常30〜90質量%配合されるが、好ましくは35〜85質量%配合され、特に好ましくは40〜80質量%配合される。30質量%未満では弾性率の温度依存性が大きく、90質量%を超えると液状硬化性樹脂組成物の粘度が高くなることがある。
【0035】
(B)成分である反応性希釈剤としては、重合性単官能化合物または重合性多官能化合物を用いることができる。このような、単官能性化合物としては、例えばN−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム等のビニル基含有ラクタム;イソボルニル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート等の脂環式構造含有(メタ)アクリレート;、ベンジル(メタ)アクリレート、4−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルホリン、ビニルイミダゾール、ビニルピリジン等が挙げられる。さらに、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、イソブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、t−オクチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、7−アミノ−3,7−ジメチルオクチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシブチルビニルエーテル、ラウリルビニルエーテル、セチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、下記式(4)〜(7)で表される化合物を挙げることができる。
【0036】
【化3】

【0037】
(式中、R6は水素原子またはメチル基を示し、R7は炭素数2〜6、好ましくは2〜4のアルキレン基を示し、R8は水素原子または炭素数1〜12、好ましくは1〜9のアルキル基を示し、rは0〜12、好ましくは1〜8の数を示す)
【0038】
【化4】

【0039】
(式中、R9は水素原子またはメチル基を示し、R10は炭素数2〜8、好ましくは2〜5のアルキレン基を示し、R11は水素原子またはメチル基を示し、pは好ましくは1〜4の数を示す。)
【0040】
【化5】

【0041】
(式中、R12、R13、R14およびR15は互いに独立で、HまたはCH3であり、qは1〜5の整数である)
【0042】
これら重合性単官能化合物のうちN−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム等のビニル基含有ラクタム、イソボルニル(メタ)アクリレート、ラウリルアクリレートが好ましい。
【0043】
これら重合性単官能化合物の市販品としてはIBXA(大阪有機化学工業製)、アロニックスM−111、M−113、M114、M−117、TO−1210(以上、東亞合成製)を使用することができる。
【0044】
また重合性多官能化合物としては、例えばトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリオキシエチル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジイルジメチレンジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンポリオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンポリオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルの両末端(メタ)アクリル酸付加体、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ポリエステルジ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのエチレンオキサイドまたはプロピレンオキサイドの付加体のポリオールのジ(メタ)アクリレート、水添ビスフェノールAのエチレンオキサイドまたはプロピレンオキサイドの付加体のポリオールのジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのジグリシジルエーテルに(メタ)アクリレートを付加させたエポキシ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジビニルエーテルおよび下記式(8)
【0045】
【化6】

【0046】
(ここで、R16およびR17は互いに独立に水素原子またはメチル基であり、そしてmは1〜100の数である)
で表わされる化合物等が挙げられる。
【0047】
これら重合性多官能化合物のうち、上記式(8)で表わされる化合物例えばエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジイルジメチレンジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイドを付加させたビスフェノールAのジ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イアオシアヌレートトリ(メタ)アクリレートが好ましい。
【0048】
これら重合性多官能化合物の市販品として例えば、ユピマーUV、SA1002(以上、三菱化学製)、アロニックスM−215、M−315、M−325(以上東亞合成製)を使用することができる。
アローニックスTO−1210(東亞合成製)を使用することが出来る。
【0049】
これらの(B)反応性希釈剤は、(A)、(B)および(C)成分の合計量に対して、通常1〜70質量%配合されるが、好ましくは10〜70質量%であり、特に好ましくは20〜60質量%である。1質量%未満であると硬化性を損ねる可能性があり、70質量%をこえると低粘度による塗布形状の変化が起き、塗布が安定しない。
【0050】
さらに、本発明の液状硬化性樹脂組成物は、(C)成分として重合開始剤を含有する。重合開始剤としては、熱重合開始剤または光開始剤を用いることができる。
【0051】
本発明の液状硬化性樹脂組成物が熱硬化性の場合には、通常、過酸化物、アゾ化合物等の熱重合開始剤が用いられる。具体的には、例えばベンゾイルパーオキサイド、t−ブチル−オキシベンゾエート、アゾビスイソブチロニトリル等が挙げられる。
【0052】
また、本発明の液状硬化性樹脂組成物が光硬化性の場合には、光重合開始剤を用い、必要に応じて、さらに光増感剤を併用するのが好ましい。ここで、光重合開始剤としては、例えば1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、キサントン、フルオレノン、ベンズアルデヒド、フルオレン、アントラキノン、トリフェニルアミン、カルバゾール、3−メチルアセトフェノン、4−クロロベンゾフェノン、4,4'−ジメトキシベンゾフェノン、4,4'−ジアミノベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、チオキサントン、ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルホリノ−プロパン−1−オン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォフフィンオキシド;IRGACURE184、369、651、500、907、CGI1700、CGI1750、CGI1850、CG24−61;Darocure1116、1173(以上、チバ・スペシャルティー・ケミカルズ製);LucirinTPO(BASF製);ユベクリルP36(UCB製)等が挙げられる。また、光増感剤としては、例えばトリエチルアミン、ジエチルアミン、N−メチルジエタノールアミン、エタノールアミン、4−ジメチルアミノ安息香酸、4−ジメチルアミノ安息香酸メチル、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル;ユベクリルP102、103、104、105(以上、UCB製)等が挙げられる。
【0053】
本発明の液状硬化性樹脂組成物を熱および紫外線を併用して硬化させる場合には、前記熱重合開始剤と光重合開始剤を併用することもできる。(C)重合開始剤は、(A)、(B)および(C)成分の合計量に対して、0.1〜10質量%、特に0.3〜7質量%配合するのが好ましい。
【0054】
本発明の液状硬化性樹脂組成物は、さらに、(D)成分として(D)下記一般式(1)で示される(D1)〜(D3)から選択される一以上の(メタ)アクリロイル基を1個有するウレタン(メタ)アクリレート化合物を含有する。
【0055】
【化7】

【0056】
(D1)上記式(1)中、R1は、メチル基であり、R2およびR3は、各々独立に、2価の有機基であり、R4は、1価の有機基である。
(D2)上記式(1)中、R1は、水素原子であり、R2およびR3は、各々独立に、2価の有機基であり、R4は、分子量1500以上のポリオール残基である。
(D3)上記式(1)中、R1は、水素原子またはメチル基であり、R2およびR3は、各々独立に、2価の有機基であり、R4は、分子量1000〜30000のシリコーン残基である。
当該(D)成分は、本発明の樹脂組成物を用いて形成された光ファイバアップジャケット層の隣接する層からの剥離性向上効果を得るうえで重要である。(D)成分が上記(D1)〜(D3)から選択される一以上の(メタ)アクリロイル基を1個有するウレタン(メタ)アクリレート化合物であることにより、経時的に安定した剥離性を得ることができる。
【0057】
前記(D1)成分は、ジイソシアネートの一方のイソシアネート基に水酸基含有メタクリレートをウレタン結合させ、かつ、他方のイソシアネート基に水酸基を有する有機化合物をウレタン結合させることにより得られる。水酸基を有する有機化合物は、特に限定されないが、ポリオールが好ましい。(D1)成分に用いる水酸基を有する有機化合物には特に分子量の制限はない。前記(D2)成分は、ジイソシアネートの一方のイソシアネート基に水酸基含有アクリレートをウレタン結合させ、かつ、他方のイソシアネート基に分子量1500以上のポリオールとをウレタン結合させることにより得られる。また、前記(D3)成分は、ジイソシアネートの一方のイソシアネート基に水酸基含有(メタ)アクリレートをウレタン結合させ、かつ、他方のイソシアネート基に分子量1000〜30000の水酸基を有するシリコーン化合物とをウレタン結合させることにより得られる。
【0058】
前記(D1)成分の製造に用いられる水酸基含有メタクリレートおよびジイソシアネートは、前記(A)成分の製造に用いられるもののうちアクリロイル基でなくメタクリロイル基を有するものが使用できる。(D2)成分の製造に用いられる水酸基含有アクリレートおよびジイソシアネートは、前記(A)成分の製造に用いられるもののうち、アクリロイル基を有するものが使用できる。
【0059】
(D1)成分の製造に用いられるポリオールの分子量には、特に制限はないが、1000以上が好ましいが、さらに好ましい分子量は1500〜10000であり、特に好ましくは2000〜8000である。
(D2)成分の製造に用いられるポリオールの分子量は1500以上であるが、好ましい分子量は1500〜10000であり、さらに好ましくは2000〜8000である。
【0060】
(D1)成分および(D2)成分の製造に用いられるポリオールとしては、例えばポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリカプロラクトンポリオールおよびその他のポリオールが挙げられる。これらのポリオールの各構造単位の重合様式には特に制限されずランダム重合、ブロック重合、グラフト重合のいずれであってもよい。
【0061】
これらのうち、(D1)および(D2)成分に用いられるポリエーテルポリオールとしては、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリヘキサメチレングリコール、ポリヘプタメチレングリコール、ポリデカメチレングリコールあるいは二種以上のイオン重合性環状化合物を開環共重合させて得られる脂肪族ポリエーテルポリオール等が挙げられる。上記イオン重合性環状化合物としては、例えばエチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブテン−1−オキシド、イソブテンオキシド、3,3−ビスクロロメチルオキセタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、3−メチルテトラヒドロフラン、ジオキサン、トリオキサン、テトラオキサン、シクロヘキセンオキシド、スチレンオキシド、エピクロルヒドリン、グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル、アリルグリシジルカーボネート、ブタジエンモノオキシド、イソプレンモノオキシド、ビニルオキセタン、ビニルテトラヒドロフラン、ビニルシクロヘキセンオキシド、フェニルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、安息香酸グリシジルエステル等の環状エーテル類が挙げられる。また、上記イオン重合性環状化合物と、エチレンイミン等の環状イミン類、β−プロピオラクトン、グリコール酸ラクチド等の環状ラクトン酸、あるいはジメチルシクロポリシロキサン類とを開環共重合させたポリエーテルポリオールを使用することもできる。上記二種以上のイオン重合性環状化合物の具体的な組み合わせとしては、例えばテトラヒドロフランとプロピレンオキシド、テトラヒドロフランと2−メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロフランと3−メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロフランとエチレンオキシド、プロピレンオキシドとエチレンオキシド、ブテン−1−オキシドとエチレンオキシド、テトラヒドロフラン、ブテン−1−オキシド、エチレンオキシドの3元重合体等を挙げることができる。これらのイオン重合性環状化合物の開環共重合体はランダムに結合していてもよいし、ブロック状の結合をしていてもよい。
【0062】
これらの脂肪族ポリエーテルポリオールは、例えばPTMG2000(三菱化学製)、PPG2000、PPG3000、PPG4000、PPG10000、EXCENOL2020(以上、旭硝子ウレタン製)、DC1800(日本油脂製)、PPTG2000、PTGL2000(以上、保土谷化学製)、PBG2000A、PBG2000B(以上、第一工業製薬製)等の市販品としても入手することができる。
【0063】
さらに、ポリエーテルポリオールとしては、例えばビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加ポリオール、ビスフェノールFのアルキレンオキサイド付加ポリオール、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールF、水添ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加ポリオール、水添ビスフェノールFのアルキレンオキサイド付加ポリオール、ハイドロキノンのアルキレンオキサイド付加ポリオール、ナフトハイドロキノンのアルキレンオキサイド付加ポリオール、アントラハイドロキノンのアルキレンオキサイド付加ポリオール、1,4−シクロヘキサンポリオールおよびそのアルキレンオキサイド付加ポリオール、トリシクロデカンポリオール、トリシクロデカンジメタノール、ペンタシクロペンタデカンポリオール、ペンタシクロペンタデカンジメタノール等の環式ポリエーテルポリオールが挙げられる。その他、環式ポリエーテルポリオールとしては、キレンオキシド付加ポリオール、ビスフェノールFのアルキレノキシド付加ポリオール、1,4−シクロヘキサンポリオールのアルキレノキシド付加ポリオールなどが挙げられる。
【0064】
これらのポリオールのうち、特に例えばメチル基、エチル基に代表されるアルキル基等の側鎖を有するポリエーテルポリオールが好ましい。具体的には、ポリプロピレングリコールや、ブテン−1−オキシドとエチレンオキシドとの共重合体が好ましい。これらのポリプロピレングリコールは、PPG2000、PPG3000、EXCENOL2020(以上、旭硝子ウレタン(株))などの市販品として入手できる。ブテン−1−オキシドとエチレンオキシドとの共重合体であるジオールは、EO/BO2000、EO/BO3000、EO/BO4000(以上、第一工業製薬製)などの市販品として入手できる。
【0065】
(D3)成分の製造に用いられる水酸基含有(メタ)アクリレートとしては、一方の末端に、例えば3−(2’−ヒドロキシエトキシ)プロピル基、3−(2’,3’−ジヒドロキシプロピルオキシ)プロピル基、3−(2’−エチル−2’−ヒドロキシメチル−3−ヒドロキシ)プロピル基および3−(2’−ヒドロキシ−3’−イソプロピルアミノ)プロピル基等の有機基を有し、他方の末端にトリメチルシリルオキシ基等の非反応性の有機基を有するポリジメチルシロキサンのような、片末端に水酸基を有するシリコーン化合物が挙げられる。これらは単独でまたは2種以上を組み合せて用いられる。
【0066】
(D3)成分の製造に用いられる水酸基含有シリコーン化合物の平均分子量は、1000〜30000であるが、より好ましい平均分子量は1000〜20000であり、さらに1000〜15000が好ましい。
【0067】
当該シリコーン化合物としては、ポリエーテル変性シリコーンが特に好ましい。ポリエーテル変性シリコーンとしては、少なくとも1個のケイ素原子に基HO−(R14O)s−R15−(ここで、R14は炭素数2〜4のアルキレン基を示し(ここでR14は2種以上のアルキレン基が混在していてもよい)、R15は炭素数2〜12のアルキレン基を示し、sは1〜20の数を示す)が結合しているポリジメチルシロキサン化合物が好ましい。このうちR14としては、エチレン基、プロピレン基が好ましく、特にエチレン基が好ましい。当該シリコーン化合物の市販品としては、例えば上記の如き片末端に水酸基を有するシリコーン化合物は、例えば、サイラプレーンFM−0411、FM−0421、FM−0425、FM−D411、FM−D421、FM−D425(以上、チッソ(株)製)、TSL9105(東芝シリコーン(株)製)、信越シリコーンX−22−170A、X−22−170B、X−22−170D、X−22−176B、X−22−176D、X−22−176DX、X−22−178A、X−22−178B(以上、信越化学工業(株)製)、SF8428;ジメチルポリシロキサンポリオキシアルキレン共重合体(側鎖OH含有)等の市販品としても入手することができる。
【0068】
(D1)、(D2)および(D3)成分の製造においては、例えばナフテン酸銅、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸亜鉛、ジブチル錫ジラウレート、トリエチルアミン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、2,6,7−トリメチル−1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン等のウレタン化触媒を、反応物の総量100重量部に対して0.01〜1重量部用いるのが好ましい。また、反応温度は、通常10〜90℃、特に30〜80℃で行うのが好ましい。
【0069】
(D)成分の配合量は、アップジャケット層の剥離性および強度や耐候性の点から、(A)、(B)、(C)および(D)成分の合計量に対し1〜50質量%、さらに1〜30質量%、特に5〜30質量%が好ましい。
【0070】
また、本願発明の液状硬化性樹脂組成物には、(E)難燃剤を添加することもできる。(E)難燃剤としては、公知のものであれば特に限定されるものではないが、ハロゲン系(臭素、塩素系)、リン系、窒素系またはシリコーン系の難燃剤を挙げることができる。
【0071】
臭素系難燃剤としては、テトラブロモビスフェノールA(TBBPA)、デカブロモジフェニルオキサイド、ホキサブロモシクロドデカン、トリブロモフェノール、エチレンビステトラブロモフタルイミド、TBBPAポリカーボネートオリゴマー、臭素化ポリスチレン、TBBPAエポキシオリゴマー、TBBPAビスブロモプロピルエーテル、エチレンビスペンタブロモジフェノール、ペンタブロモベンジルアクリレート、ヘキサブロモベンゼン、臭素化芳香族トリアジン等を挙げることができる。
【0072】
リン系難燃剤としては、リン酸エステル、含ハロゲンリン酸エステル、ポリリン酸アンモニウム、赤リン系、ホスファフェナントレン系等を挙げることができる。
【0073】
塩素系難燃剤としては、塩素化パラフィン、パークロロシクロペンタデカン、クロレンド酸等を挙げることができる。
【0074】
(E)難燃剤の配合量は、(A)、(B)、(C)および(D)成分の合計量100質量部中に、1〜50質量部配合されることが好ましく、さらに好ましくは1〜30質量部、特に好ましくは1〜20質量部配合されることが好ましい。1.0質量部未満であると、難燃効果が不十分であり、50質量部を越えると、難燃剤が硬化物中からブリードアウトしたり、アップジャケット層としての弾性特性等に悪影響を与えるため好ましくない。
【0075】
本発明の組成物には、必要に応じて本発明の液状硬化性樹脂組成物の特性を損なわない範囲で各種添加剤、例えば、酸化防止剤、着色剤、紫外線吸収剤、光安定剤、シランカップリング剤、熱重合禁止剤、レベリング剤、界面活性剤、保存安定剤、可塑剤、滑剤、溶媒、フィラー、老化防止剤、濡れ性改良剤、塗面改良剤等を配合することができる。
【0076】
なお、本発明の液状硬化性樹脂組成物は、熱および/または放射線によって硬化されるが、ここで放射線とは、赤外線、可視光線、紫外線、X線、電子線、α線、β線、γ線等をいう。
【0077】
本発明の液状硬化性組成物の硬化物は、好ましくは200MPa〜500MPaのヤング率を示すのが好ましい。また、アップジャケット層を形成するには膜厚120〜330μmに被覆するのが好ましい。
【実施例】
【0078】
次に実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明は何らこれら実施例に限定されるものではない。
【0079】
[合成例1:(A)ウレタンアクリレートオリゴマーの調製]
撹拌機を備えた反応容器に、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール0.124g、トルエンジイソシアネート131.77g、ジブチル錫ジラウレート0.212gを仕込み、これらを撹拌しながら液温度が20℃〜15℃になるまで氷冷した。ヒドロキシエチルアクリレート114.02gをゆっくりと滴下し、液温が35℃以下になるように制御しながら2時間撹拌して反応させた。次に、上記の混合物に数平均分子量2000のポリテトラエメチレングリコール(PTMG2000、三菱化学製)199.37g、数平均分子量400のポリエチレングリコールビスフェノールAエーテル(ユニオールDA400、日本油脂製)69.78g、ジブチル錫ジラウレート0.200gを加え、1時間室温で撹拌後、油浴にて65℃で2時間拡販した。残留イソシアネートが0.1重量%以下になった時を反応終了とした。以上により、ポリエチレングリコールビスフェノールAエーテルの両末端水酸基にトルエンジイソシアネートを介してヒドロキシエチルアクリレートが結合したウレタンアクリレートオリゴマー(A−1とする。)、ポリテトラエメチレングリコールの両末端水酸基にトルエンジイソシアネートを介してヒドロキシエチルアクリレートが結合したウレタンアクリレートオリゴマー(A−2とする)、およびトルエンジイソシアネートの2つのイソシアネート基にヒドロキシエチルアクリレートが結合したウレタンアクリレートオリゴマー(A−3とする)の3種類の(A)ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの混合溶液を得た。
【0080】
[合成例2:(D1)メタクリロイル基を1個有するウレタンメタアクリレートの調製1]
撹拌機を備えた反応容器に、イソボルニルアクリレート230.57g、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール0.184g、トルエンジイソシアネート102.63g、ジブチル錫ジラウレート0.615gを仕込み、これらを撹拌しながら液温度が15℃以下になるまで氷冷した。ここへ、2−ヒドロキシルエチルメタクリレート76.69gをゆっくりと温度が25℃以上にならないように注意しながら滴下し、20℃で2時間撹拌した。その後、数平均分子量1000のプロピレンオキサイドの開環重合体589.26gを加え、液温を50℃にしながら2時間撹拌して反応させ、残留イソシアネートが0.1重量%以下になった時を反応終了とした。得られた(D1)成分を、「D1−1」とする。
【0081】
[合成例3:(D1)メタクリロイル基を1個有するウレタンメタアクリレートの調製2]
合成例2の数平均分子量1000のプロピレンオキサイドの開環重合体に替えて、数平均分子量2000のプロピレンオキサイドの開環重合体607.44gを用いた他は合成例2と同様にして(D1)成分を合成した。得られた(D1)成分を、「D1−2」とする。
【0082】
[合成例4:(D2)アクリロイル基を1個有するウレタンアクリレートの調製3]
撹拌機を備えた反応容器に、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール0.184g、トルエンジイソシアネート31.20g、ジブチル錫ジラウレート0.615gを仕込み、これらを撹拌しながら液温度が15℃以下になるまで氷冷した。ここへ、2−ヒドロキシルエチルアクリレート20.80gをゆっくりと温度が25℃以上にならないように注意しながら滴下し、20℃で2時間撹拌した。その後、数平均分子量4000のプロピレンオキサイドの開環重合体716.57gを加え、液温を50℃にしながら2時間撹拌して反応させ、残留イソシアネートが0.1重量以下となったときを反応終了とした。ここへ、50℃でイソボルニルアクリレート230.57gを加えて1時間撹拌し、目的のアクリロイル基を1個有するウレタンアクリレートを得た。得られた(D2)成分を、「D2−1」とする。
【0083】
[合成例5:(D3)(メタ)アクリロイル基を1個有するウレタンアクリレートの調製4]
撹拌機を備えた反応容器に、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール0.024g、FM0411(ジメチルポリシロキサンポリオキシアルキレン共重合体(分子量1170)、チッソ株式会社)79.911g,トルエンジイソシアネート11.986g、ジブチル錫ジラウレート0.08gを仕込み、これらを撹拌しながら液温度が15℃以下になるまで氷冷した。ここへ、2−ヒドロキシルエチルメタクリレート7.991gをゆっくりと温度が25℃以上にならないように注意しながら滴下し、20℃で2時間撹拌した。液温を50℃にしながら2時間撹拌して反応させ、残留イソシアネートが0.1重量以下となったときを反応終了とし目的の(メタ)アクリロイル基を1個有するウレタンアクリレートを得た。得られた(D3)成分を、「D3−1」とする。
【0084】
[合成例6:(D3)(メタ)アクリロイル基を1個有するウレタンアクリレートの調製5]
合成例6において、2−ヒドロキシルエチルメタクリレートに替えて、2−ヒドロキシルエチルアクリレートを用いた他は、合成例6と同様にして合成を行った。得られた(D3)成分を、「D3−2」とする。
【0085】
[比較合成例1:(D)成分以外の(メタ)アクリロイル基を1個有するウレタンアクリレートの調製1]
合成例2において、2−ヒドロキシルエチルメタクリレートに替えて2−ヒドロキシルエチルアクリレートを用いた以外は合成例2と同様にして合成を行った。得られた(メタ)アクリロイル基を1個有するウレタンアクリレートを「D1’−1」とする。
【0086】
実施例1〜8および比較例1〜3
表1に示す組成の各成分を撹拌機を備えた反応容器に仕込み、液温度を50℃に制御しながら2時間撹拌し、液状硬化性樹脂組成物を得た。
【0087】
試験例
前記実施例および比較例で得た液状硬化性樹脂組成物を以下のような方法で硬化させ、試験片を作製し、下記の各評価を行った。
【0088】
1.ヤング率
250μm厚のアプリケーターバーを用いてガラス板上に液状硬化性樹脂組成物を塗布し、これを空気下で1J/cm2のエネルギーの紫外線で照射して硬化してヤング率測定用フィルムを得た。このフィルムから延伸部が幅6mm、長さ25mmとなるように短冊状サンプルを作成して、温度23℃、湿度50%で引っ張り試験を行った。引っ張り速度は1mm/minで2.5%歪みでの抗張力からヤング率を求めた。
【0089】
2.剥離性
ガラスファイバーに、一次被覆材(R1164;JSR株式会社製)、二次被覆材(R3180;JSR株式会社製)、インキ材(FS青インキ;株式会社ティーアンドケイ東華)をリワインダーモデル(吉田工業株式会社製)を用いて塗布および紫外線硬化した作製した外径250μmの光ファイバ素線に対して、表1に示した各硬化性組成物を同装置を用いてさらに塗布および紫外線硬化してアップジャケット層を被覆し、外径500μmのアップジャケット心線を作製してこれを測定試料とした。
図1に示すように、アップジャケット心線の末端から3cmの個所をホットストリッパー(古河電気工業株式会社製)で保持し、引っ張り試験機(島津製作所株式会社製)を用いて速度50m/minで引っ張り、アップジャケット層を引き抜く際の被覆除去応力(図2に示す最大応力)を測定した。測定は、アップジャケット心線の製造直後(「製造直後の被覆除去応力」という。)に測定した。
【0090】
得られた結果を表1に示す。表1中の各成分の配合量は質量部である。
【0091】
【表1】

【0092】
PPG4000;分子量4000のポリプロピレングリコール、旭硝子ウレタン製
SH28PA;ジメチルポリシロキサンポリオキシアルキレン共重合体(分子量約3700)、東レダウコーニング株式会社
【0093】
表1から明らかなように、(メタ)アクリロイル基を1個有するウレタン(メタ)アクリレートを含有する本発明の樹脂組成物で形成された硬化物は、光ファイバ被覆材として良好な性質を有し、かつ剥離性が良好であることからアップジャケット用組成物として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】引っ張り試験機の概略図を示す。
【図2】被覆除去時の応力挙動概略図を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)(メタ)アクリロイル基を2個以上有するウレタン(メタ)アクリレート、
(B)反応性希釈剤、
(C)重合開始剤および
(D)下記一般式(1)で示される(D1)〜(D3)から選択される一以上の(メタ)アクリロイル基を1個有するウレタン(メタ)アクリレート化合物
を含有する光ファイバアップジャケット用液状硬化性樹脂組成物。
【化1】

(D1)上記式(1)中、R1は、メチル基であり、R2およびR3は、各々独立に、2価の有機基であり、R4は、1価の有機基である。
(D2)上記式(1)中、R1は、水素原子であり、R2およびR3は、各々独立に、2価の有機基であり、R4は、分子量1500以上のポリオール残基である。
(D3)上記式(1)中、R1は、水素原子またはメチル基であり、R2およびR3は、各々独立に、2価の有機基であり、R4は、分子量1000〜30000のシリコーン残基である。
【請求項2】
前記(D1)および(D2)において、上記式(1)のR4が、ポリプロピレングリコール残基である請求項1に記載の光ファイバアップジャケット用液状硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の光ファイバアップジャケット用液状硬化性樹脂組成物に放射線を照射して得られる光ファイバアップジャケット層。
【請求項4】
請求項3に記載の光ファイバアップジャケット層を有するアップジャケット心線。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−119559(P2006−119559A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−347424(P2004−347424)
【出願日】平成16年11月30日(2004.11.30)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【出願人】(303043450)デーエスエム アイピー アセット ビー ヴイ (5)
【氏名又は名称原語表記】DSM IP Assets B.V.
【住所又は居所原語表記】Het Overloon 1 6411 TE Heerlen, The Netherlands
【Fターム(参考)】