説明

光半導体素子及び光半導体素子保護層形成用組成物

【課題】半導体層の側面からの出射光を効率的に利用することができる、例えばLEDの輝度向上を実現しうる光半導体素子を提供する。
【解決手段】光半導体素子は、支持基板18の上方に半導体層11が形成され、半導体層11の側面に絶縁層14が形成され、半導体層11の側方に絶縁層14を介して保護層17が形成されてなる。保護層17は、(A)一般式:(R1PSi(X)4-P[式中、R1は炭素数が1〜12である非加水分解性の有機基、Xは加水分解性基、およびpは0〜3の整数である。]で示される加水分解性シラン化合物、その加水分解物、及びその縮合物から選択される一つ以上の化合物を含有する組成物の硬化物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光半導体素子、及び、該光半導体素子の構成部分である保護層を形成するための組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、半導体層の側面を保護するための保護膜の支持体として、特定のポリイミド樹脂からなる樹脂層を形成させてなる、発光素子である半導体素子が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−186959号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記の特許文献1に記載された半導体素子は、ポリイミド樹脂からなる樹脂層を含むため、透明性及び耐光性が不十分であり、半導体層の側面からの放射光に対して輝度を低減させるという問題がある。
また、半導体素子の構成部分の材料には、優れた耐熱性も求められる。
そこで、本発明は、透明性及び耐光性に優れる保護層を備えているため、半導体層の側面からの出射光を効率的に利用することができ、LEDの輝度向上を実現しうる光半導体素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、半導体層の側方の保護層の材料として、特定の組成物を用いれば、前記の目的を達成しうることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下の[1]〜[10]を提供するものである。
[1] 支持基板と、前記支持基板の上方に形成された半導体層と、前記半導体層の上面に形成された電極と、前記半導体層の側方に形成された保護層と、を備え、前記保護層が、下記(A)成分を含有する保護層形成用組成物の硬化物であることを特徴とする光半導体素子。
(A)下記の一般式(1)で示される加水分解性シラン化合物、その加水分解物、およびその縮合物からなる群から選択される少なくとも一つの化合物
(R1PSi(X)4-P (1)
[一般式(1)中、R1は炭素数が1〜12である非加水分解性の有機基、Xは加水分解性基、およびpは0〜3の整数である。R1およびXは、各々、複数の基が存在する場合、各基は同じであっても異なってもよい。]
[2] 前記保護層形成用組成物が、シリカ粒子を含む、前記[1]に記載の光半導体素子。
[3] 前記保護層が、前記半導体層の側面に形成された絶縁層を介して形成されたものである、前記[1]又は[2]に記載の光半導体素子。
[4] 前記絶縁層が、二酸化ケイ素からなる層である、前記[3]に記載の光半導体素子。
[5] 前記保護層を形成する硬化物は、厚みが2μmの場合に、波長400nmの光を照射したときの光の透過率が95%以上のものである、前記[1]〜[4]のいずれかに記載の光半導体素子。
[6] 前記保護層を形成する硬化物は、250℃で30分間加熱した場合の加熱の前後の各時点で波長400nmの光を照射したときの光の透過率の低下が、10%未満のものである、前記[5]に記載の光半導体素子。
[7] 前記保護層を形成する硬化物は、60℃で、放射照度28W/m(波長270〜700nm、ピーク波長313nm)の紫外線を168時間照射した場合の照射の前後の各時点で波長400nmの光を照射したときの光の透過率の低下が、10%未満のものである、前記[5]又は[6]に記載の光半導体素子。
[8] 前記保護層形成用組成物がさらに(B)光酸発生剤を含有する、前記[1]〜[7]のいずれかに記載の発光素子。
[9] 前記[1]〜[8]のいずれかに記載の光半導体素子の保護層を形成するための組成物であって、下記(A)成分を含有することを特徴とする光半導体素子保護層形成用組成物。
(A)下記の一般式(1)で示される加水分解性シラン化合物、その加水分解物、およびその縮合物からなる群から選択される少なくとも一つの化合物
(R1PSi(X)4-P (1)
[一般式(1)中、R1は炭素数が1〜12である非加水分解性の有機基、Xは加水分解性基、およびpは0〜3の整数である。R1およびXは、各々、複数の基が存在する場合、各基は同じであっても異なってもよい。]
[10] 前記保護層形成用組成物がさらに(B)光酸発生剤を含有する、前記[9]に記載の発光素子。
【発明の効果】
【0006】
本発明の光半導体素子は、半導体層の側方に、特定の組成物の硬化物からなる保護層を備えており、該保護層が、透明性、耐光性及び耐熱性に優れているため、例えばLEDの側面からの出射光を効率的に利用することができるなど、発光素子として高い性能を有する。
また、本発明の光半導体素子は、前記の保護層を備えているため、長期に亘って、半導体層の側面からの電流のリークやショートの発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の光半導体素子の一例を示す断面図である。
【図2】本発明の光半導体素子の一例の製造方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の光半導体素子の実施形態の一例について、図を参照しながら説明する。なお、本発明において、光半導体素子(以下、「半導体素子」と略すことがある。)とは、半導体層を1つ含むものと、半導体層を2つ以上含むものの両方を包含する概念を有する。
また、本発明において、光半導体素子とは、半導体層の周囲に形成される保護層、絶縁層等の各部を含むものである。
図1中、支持基板18の上方に複数の半導体層11が互いに離間して形成されている。支持基板18の上には、コンタクト層19、金属拡散防止層20、金属層21が積層されている。金属層21と各半導体層11の間には、金属層16、金属拡散防止層15、金属拡散防止層13、p電極12が介在している。各半導体層11の上面には、n電極22が形成されている。これら各部の詳細は、後述する。
半導体層11同士の間には、保護層17が形成されている。また、半導体層11の側面等と保護層17の間に、二酸化ケイ素等の材質からなる絶縁層14が形成されている。なお、本明細書において、絶縁層とは、半導体層の側面からの電流のリークまたはショートの発生を防止するための層状体を意味する。
保護層17は、絶縁層14の有無にかかわらず、通常、半導体層11同士の間に空隙を生じさせないように形成される。
絶縁層14及び保護層17を形成する理由は、次のとおりである。
互いに離間した複数の半導体層11を形成するためのダイシングの際に、半導体層11の側面に、金属粉等が付着し、この金属粉等が原因となって、電流のリークやショートが発生することがある。その防止のために、半導体層11の側面に、絶縁層14を形成させるのである。
一方、絶縁層14のみを形成した場合には、レーザーリフトオフの後に、絶縁層14を支持するための支持体がないため、絶縁層14に割れや欠けが生じることがあった。このような割れや欠けの防止のために、絶縁層14の側方に、さらに保護層17を形成するのである。
なお、本発明の光半導体素子は、絶縁層14を省略して、保護層17のみを備えたものとすることも可能である。この場合、保護層17が、電流のリークやショートの発生を防止する機能を有する。
【0009】
本発明において、保護層17は、下記(A)成分、及び、必要に応じて下記(B)成分を含有する保護層形成用組成物の硬化物である。以下、保護層形成用組成物について説明する。
(A)下記の一般式(1)で示される加水分解性シラン化合物、その加水分解物、およびその縮合物からなる群から選択される少なくとも一つの化合物
(R1PSi(X)4-P (1)
[一般式(1)中、R1 は炭素数が1〜12である非加水分解性の有機基、Xは加水分解性基、およびpは0〜3の整数である。R1およびXは、各々、複数の基が存在する場合、各基は同じであっても異なってもよい。]
(B)光酸発生剤
【0010】
一般式(1)中のXで表される加水分解性基は、通常、無触媒、過剰の水の共存下、室温(25℃)〜100℃の温度範囲内で加熱することにより、加水分解されてシラノール基を生成することができる基、もしくはシロキサン縮合物を形成することができる基を指す。また、一般式(1)中の添え字pは0〜3の整数であるが、より好ましくは0〜2の整数であり、特に好ましくは1である。ただし、一般式(1)で示される加水分解性シラン化合物の加水分解物において、一部未加水分解の加水分解性基が残っていても良く、その場合、加水分解性シラン化合物と加水分解物との混合物となる。
【0011】
また、加水分解性シラン化合物の加水分解物というときは、加水分解反応によりアルコキシ基がシラノール基に変わった化合物ばかりでなく、一部のシラノール基同士が縮合した部分縮合物をも意味している。さらに、加水分解性シラン化合物は、保護層形成用組成物を配合する時点で加水分解されている必要は必ずしもなく、光照射する段階で、少なくとも一部の加水分解性基が加水分解されていれば良い。すなわち、加水分解性シラン化合物を予め加水分解せずに使用した場合には、事前に水を添加して、加水分解性基を加水分解させ、シラノール基を生成することにより、保護層形成用組成物を放射線硬化させて保護層17を形成させることができる。
【0012】
一般式(1)中の有機基R1は、非加水分解性である1価の有機基の中から選ぶことができる。このような非加水分解性の有機基として、非重合性の有機基および重合性の有機基あるいはいずれか一方の有機基を選ぶことができる。なお、有機基R1における非加水分解性とは、加水分解性基Xが加水分解される条件において、そのまま安定に存在する性質であることを意味する。
【0013】
ここで、非重合性の有機基R1としては、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基、炭素数6〜12のアリ−ル基、炭素数7〜12のアラルキル基等が挙げられる。これらは、直鎖状、分岐状、環状あるいはこれらの組み合わせであっても良い。また、非重合性の有機基R1は、ヘテロ原子を含む構造単位とすることも好ましい。そのような構造単位としては、エーテル結合、エステル結合、スルフィド結合等を例示することができる。ただし、ヘテロ原子を含む場合、放射線硬化性を阻害することがないことから非塩基性であることが好ましい。
【0014】
また、重合性の有機基R1としては、分子中にラジカル重合性の官能基およびカチオン重合性の官能基あるいはいずれか一方の官能基を有する有機基であることが好ましい。ラジカル重合性の官能基としては、炭素原子数2〜10のアルケニル基、炭素原子数2〜10のアルキニル基等が挙げられる。また、カチオン重合性の官能基としては、オキシラニル基、オキセタニル基等のエポキシ基が挙げられる。このような官能基を有機基R1中に導入することにより、ラジカル重合やカチオン重合を併用して、保護層形成用組成物をより速く硬化させることができる。特に、カチオン重合性の官能基、例えば、オキセタン基やエポキシ基を有機基R1に導入すると、光酸発生剤によって硬化反応を同時に生じさせることができることから、保護層形成用組成物をより速く硬化させることができる。
【0015】
一般式(1)における加水分解性基Xは、水素原子、炭素数1〜12のアルコキシ基、ハロゲン原子、アミノ含有基およびカルボキシル基等が挙げられる。炭素数1〜12のアルコキシ基の好ましい例として、メトキシ基やエトキシ基等が挙げられる。ハロゲン原子の好ましい例として、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等が挙げられる。アミノ含有基の好ましい例として、アミノ基、ジメチルアミノ基等が挙げられる。カルボキシル基の好ましい例として、アセトキシ基、プチロイルオキシ基等が挙げられる。
【0016】
一般式(1)で表される加水分解性シラン化合物(単に、シラン化合物と称する場合がある。)の具体例を説明する。
非重合性の有機基R1を有するシラン化合物としては、以下のものが挙げられる。
4個の加水分解性基で置換されたシラン化合物としては、テトラクロロシラン、テトラアミノシラン、テトラアセトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラブトキシシラン、テトラフェノキシシラン、テトラベンジロキシシラン、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン等が挙げられる。
【0017】
3個の加水分解性基で置換されたシラン化合物としては、メチルトリクロロシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリイソプロポキシシラン、エチルトリブトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ペンタフルオロフェニルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、d3−メチルトリメトキシシラン、ノナフルオロブチルエチルトリメトキシシラン、トリフルオロメチルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0018】
2個の加水分解性基で置換されたシラン化合物としては、ジメチルジクロロシラン、ジメチルジアミノシラン、ジメチルジアセトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジブチルジメトキシシラン等が挙げられる。
1個の加水分解性基で置換されたシラン化合物としては、トリメチルクロロシラン、ヘキサメチルジシラザン、トリメチルシラン、トリブチルシラン、トリメチルメトキシシラン、トリブチルエトキシシラン等が挙げられる。
【0019】
重合性の有機基を有するシラン化合物としては、非加水分解性の有機基であるR1の中に重合性の有機基を含むシラン化合物、加水分解性基であるXの中に重合性の有機基を含むシラン化合物のいずれかを用いることができる。
【0020】
具体的に、非加水分解性の有機基であるR1の中に重合性の有機基を含むシラン化合物としては、(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、グリシジロキシトリメトキシシラン、3−(3−メチル−3−オキセタンメトキシ)プロピルトリメトキシシラン、オキサシクロヘキシルトリメトキシシラン等を挙げることができる。
【0021】
また、加水分解性基であるXの中に重合性の有機基を含むシラン化合物の例としては、テトラ(メタ)アクリロキシシラン、テトラキス[2−(メタ)アクリロキシエトキシ]シラン、テトラグリシジロキシシラン、テトラキス(2−ビニロキシエトキシ)シラン、テトラキス(2−ビニロキシブトキシ)シラン、テトラキス(3−メチル−3−オキセタンメトキシ)シラン、メチルトリ(メタ)アクリロキシシラン、メチル[2−(メタ)アクリロキシエトキシ]シラン、メチル−トリグリシジロキシシラン、メチルトリス(3−メチル−3−オキセタンメトキシ)シランを挙げることができる。これらは、1種単独または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0022】
加水分解性シラン化合物の加水分解物における分子量について説明する。かかる分子量は、移動相にテトラヒドロフランを使用したゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、GPCと略記する。)を用い、ポリスチレン換算の重量平均分子量として測定することができる。
【0023】
加水分解物の重量平均分子量は、通常500〜10,000の範囲内の値とすることが好ましい。該重量平均分子量の値が500未満の場合、保護層の形成時の成形性が低下する傾向があり、一方、10,000を超えると、放射線硬化性が低下する傾向がある。したがって、より好ましくは、加水分解物の重量平均分子量は、1,000〜5,000の範囲内の値である。
また、上記(A)成分の含有割合は、保護層形成用組成物における固形分全体を100質量%とした場合に5〜100質量%であることが好ましく、より好ましくは15〜100質量%、更に好ましくは30〜100質量%、特に好ましくは30〜70質量%である。この含有割合が上記数値範囲内である場合には、十分な透明性、耐光性、耐熱性及び密着性を得ることができる。
【0024】
(B)成分である光酸発生剤は、光等のエネルギー線(放射線)を照射することにより、(A)成分である加水分解性シラン化合物を放射線硬化(架橋)可能な酸性活性物質を放出することができる化合物と定義される。保護層形成用組成物に(B)成分を含む場合には、保護層はパターニング性に優れているため、例えば、保護層と電極との境界に関して高い寸法精度を有し、安定した性能を発揮することができる。なお、光酸発生剤を分解させて、カチオンを発生するために照射する光エネルギー線としては、可視光、紫外線、赤外線、X線、α線、β線、γ線等を挙げることができる。ただし、一定のエネルギーレベルを有し、硬化速度が大(速く)であり、しかも照射装置が比較的安価で小型な観点から、紫外線を使用することが好ましい。
【0025】
また、(B)光酸発生剤とともに、後述するラジカル発生剤を併用することも好ましい。中性の活性物質であるラジカルは、シラノール基の縮合反応を促進することはないが、(A)成分中にラジカル重合性の官能基を有する場合に、かかる官能基の重合を促進させることができる。したがって、保護層形成用組成物をより効率的に硬化させることができる。
【0026】
次に、(B)光酸発生剤の種類を説明する。(B)光酸発生剤としては、一般式(2)で表される構造を有するオニウム塩(第1群の化合物)や、一般式(3)で表される構造を有するスルフォン酸誘導体(第2群の化合物)を挙げることができる。
【0027】
[R2a3b4c5dW]+m[MZm+n]-m (2)
[一般式(2)中、カチオンはオニウムイオンであり、WはS、Se、Te、P、As、Sb、Bi、O、I、Br、Clまたは−N≡Nであり、R2、R3、R4およびR5は同一または異なる有機基であり、a、b、cおよびdはそれぞれ0〜3の整数であって、(a+b+c+d)−mはWの価数に等しい。また、Mはハロゲン化物錯体[MXm+n]の中心原子を構成する金属またはメタロイドであり、例えばB、P、As、Sb、Fe、Sn、Bi、Al、Ca、In、Ti、Zn、Sc、V、Cr、Mn、またはCoである。Zは、例えばF、Cl、Br等のハロゲン原子またはアリール基であり、mはハロゲン化物錯体イオンの正味の電荷であり、nはMの原子価である。]
【0028】
s−〔S(=O)2−R6t (3)
[一般式(3)中、Qは1価もしくは2価の有機基、R6は炭素数1〜12の1価の有機基、添え字sは0又は1、添え字tは1又は2である。]
【0029】
まず、第1群の化合物であるオニウム塩は、光を受けることにより酸性活性物質を放出することができる化合物である。このような第1群の化合物のうち、より有効なオニウム塩は芳香族オニウム塩であり、特に好ましくは下記一般式(4)で表されるジアリールヨードニウム塩である。
[R7−Ar1−I+−Ar2−R8][Y-] (4)
[一般式(4)中、R7およびR8は、それぞれ1価の有機基であり、同一でも異なっていてもよく、R7およびR8の少なくとも一方は炭素数が4以上のアルキル基を有しており、Ar1およびAr2はそれぞれ芳香族基であり、同一でも異なっていてもよく、Y-は1価の陰イオンであり、周期律表3族、5族のフッ化物陰イオンもしくは、ClO4-、CF3−SO3-から選ばれる陰イオンである。]
【0030】
また、第2群の化合物としての一般式(3)で表されるスルフォン酸誘導体の例を示すと、ジスルホン類、ジスルホニルジアゾメタン類、ジスルホニルメタン類、スルホニルベンゾイルメタン類、イミドスルホネート類、ベンゾインスルホネート類、1−オキシ−2−ヒドロキシ−3−プロピルアルコールのスルホネート類、ピロガロールトリスルホネート類、ベンジルスルホネート類を挙げることができる。また、一般式(3)で表されるスルフォン酸誘導体のうち、より好ましくはイミドスルホネート類であり、さらに好ましくはイミドスルホネートのうち、トリフルオロメチルスルホネート誘導体である。
【0031】
(B)光酸発生剤の添加量(含有割合)について説明する。(B)光酸発生剤の添加量は、特に制限されるものではないが、(A)成分100質量部に対して、好ましくは0.1〜15質量部、より好ましくは0.5〜10質量部である。
該添加量が0.1質量部未満では、放射線硬化性が低下し、十分な硬化速度が得られない傾向がある。一方、該添加量が15質量部を超えると、得られる硬化物の耐光性や耐熱性が低下する傾向がある。該添加量が0.5〜10質量部であると、放射線硬化性と得られる硬化物の耐光性等とのバランスが、より良好となる。
【0032】
本発明の保護層形成用組成物は、(C)有機溶媒を配合することによって組成物の保存安定性を向上させ、かつ適当な粘度を付与することができ、均一な厚さを有する保護層17を形成することができる。
【0033】
(C)有機溶媒としては、エーテル系有機溶媒、エステル系有機溶媒、ケトン系有機溶媒、炭化水素系有機溶媒、アルコール系有機溶媒等が挙げられる。通常、大気圧下での沸点が50〜200℃の範囲内の値を有し、各成分を均一に溶解させることのできる有機溶媒を用いることが、好ましい。
このような(C)有機溶媒としては、例えば脂肪族炭化水素系溶媒、芳香族炭化水素系溶媒、モノアルコール系溶媒、多価アルコール系溶媒、ケトン系溶媒、エーテル系溶媒、エステル系溶媒、含窒素系溶媒、含硫黄系溶媒等を用いることができる。これらの(C)有機溶媒は、一種単独あるいは二種以上を組み合わせて用いられる。
【0034】
これらの(C)有機溶媒の中では、アルコール類およびケトン類が好ましい。組成物の保存安定性をより向上させることができるためである。また、より好ましい有機溶媒としては、プロピレングリコールモノメチルエーテル、乳酸エチル、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、トルエン、キシレン、およびメタノールからなる群より選択される少なくとも一つの化合物が挙げられる。
【0035】
また、(C)有機溶媒の種類は、好ましくは、組成物の塗布方法を考慮して選択される。例えば、均一な厚さを有する硬化物が容易に得られることから、スピンコート法を用いることが好ましいが、その場合に使用する有機溶媒としては、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類;エチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート等のエチレングリコールアルキルエーテルアセテート類;乳酸エチル、2−ヒドロキシプロピオン酸エチル等のエステル類;ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル等のジエチレングリコール類;メチルイソブチルケトン、2−ヘプタノン、シクロヘキサノン、メチルアミルケトン等のケトン類等を使用することが好ましく、特にエチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、乳酸エチル、メチルイソブチルケトンおよびメチルアミルケトンを使用することが好ましい。
【0036】
(C)成分の添加量は、(A)成分100質量部に対して、好ましくは1〜800質量部、より好ましくは10〜700質量部、特に好ましくは30〜600質量部である。該添加量が1〜800質量部の範囲内であれば、組成物の保存安定性を向上させ、かつ適当な粘度を付与することができ、均一な厚さを有する保護層を形成することができる。
【0037】
なお、(C)有機溶媒の添加方法は、特に制限されるものではないが、例えば、(A)成分を製造する際に添加してもよいし、(A)成分と(B)成分を混合する際に添加してもよい。
【0038】
さらに、本発明の目的や効果を損なわない範囲において、酸拡散制御剤(以下、(D)成分ともいう。)、反応性希釈剤、ラジカル発生剤(光重合開始剤)、光増感剤、金属アルコキシド、無機微粒子、脱水剤、レベリング剤、重合禁止剤、重合開始助剤、濡れ性改良剤、界面活性剤、可塑剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、帯電防止剤、シランカップリング剤、高分子添加剤等を配合させることも好ましい。
【0039】
(D)成分の酸拡散制御剤は、光照射によって光酸発生剤から生じた酸性活性物質の被膜中における拡散を制御し、非照射領域での硬化反応を抑制する作用を有する化合物と定義される。ただし、定義上、光酸発生剤と区別するため、(D)成分の酸拡散制御剤は、酸発生機能を有しない化合物である。
このような酸拡散制御剤を添加することにより、光硬化性組成物を効果的に硬化して、パターン精度を向上させることができる。
【0040】
(D)成分の酸拡散制御剤の種類としては、形成工程中の露光や加熱処理によって塩基性が変化しない含窒素有機化合物が好ましい。
このような含窒素有機化合物としては、例えば、下記一般式(5)で表される化合物が挙げられる。
NR1011 (5)
[一般式(5)中、R、R10およびR11はそれぞれ独立して、水素原子、置換もしくは非置換のアルキル基、置換もしくは非置換のアリール基、または置換もしくは非置換のアラルキル基を表す。]
【0041】
また、別の含窒素有機化合物としては、同一分子内に窒素原子を2個有するジアミノ化合物や、窒素原子を3個以上有するジアミノ重合体、あるいは、アミド基含有化合物、ウレア化合物、含窒素複素環化合物等を挙げることができる。
含窒素有機化合物の具体例としては、例えば、n−ヘキシルアミン、n−ヘプチルアミン、n−オクチルアミン、n−ノニルアミン、n−デシルアミン等のモノアルキルアミン類;ジ−n−ブチルアミン、ジ−n−ペンチルアミン、ジ−n−ヘキシルアミン、ジ−n−ヘプチルアミン、ジ−n−オクチルアミン、ジ−n−ノニルアミン、ジ−n−デシルアミン等のジアルキルアミン類;トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、トリ−n−ペンチルアミン、トリ−n−ヘキシルアミン、トリ−n−ヘプチルアミン、トリ−n−オクチルアミン、トリ−n−ノニルアミン、トリ−n−デシルアミン等のトリアルキルアミン類;アニリン、N−メチルアニリン、N,N−ジメチルアニリン、2−メチルアニリン、3−メチルアニリン、4−メチルアニリン、4−ニトロアニリン、ジフェニルアミン、トリフェニルアミン、1−ナフチルアミン等の芳香族アミン類;エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン類等を挙げることができる。
なお、酸拡散制御剤は、一種単独で使用することもできるし、あるいは二種以上を混合して使用することもできる。
【0042】
(D)酸拡散制御剤の添加量は、(A)成分100質量部に対して、好ましくは0.001〜15質量部、より好ましくは0.001〜10質量部、更に好ましくは0.005〜5質量部である。該添加量が0.001質量部未満では、プロセス条件によっては、保護層17のパターン形状や寸法再現性が低下することがある。該添加量が15質量部を超えると、(A)成分の光硬化性が低下することがある。
【0043】
また、保護層形成用組成物は、(E)成分として、コロイダルシリカ、アエロジル、ガラス等のシリカ粒子を含有することが好ましい。
上記シリカ粒子の表面は、上記(A)加水分解性シラン化合物、その加水分解物、およびその縮合物からなる群から選択される少なくとも一つの化合物との親和性や相溶性を高める等のために、疎水化処理されていてもよい。
また、上記シリカ粒子の形状は、特に限定されず、球状、楕円形状、偏平状、ロッド状、繊維状等とすることができる。
上記シリカ粒子の平均粒径は、好ましくは1〜500nm、より好ましくは5〜200nm、更に好ましくは10〜100nm、特に好ましくは10〜40nmである。該平均粒径が上記数値範囲内であると、放射線に対する透明性、アルカリ溶解性等に優れる。
上記シリカ粒子は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
なお、この平均粒径は、光散乱流動分布測定装置(大塚電子社製、型番「LPA−3000」)を用いて、シリカ粒子の分散液を常法に従って希釈して測定した値である。また、この平均粒径は、シリカ粒子の分散条件により制御することができる。
また、上記シリカ粒子中のナトリウムの含有率は、好ましくは1ppm以下、より好ましくは0.5ppm以下、更に好ましくは0.1ppm以下である。該含有率が1ppm以下である場合には、得られる樹脂組成物中のナトリウムの含有率を1ppm以下とすることができる。
なお、疎水化シリカ中のナトリウムの含有率は、原子吸光計(パーキネルマー製、型番「Z5100」)等により測定することができる。
上記シリカ粒子の含有割合は、上記(A)成分を100質量部とした場合に、好ましくは10〜500質量部、より好ましくは20〜300質量部、更に好ましくは40〜200質量部、特に好ましくは60〜150質量部である。この含有割合が上記数値範囲内にあると、好適なチキソトロピー性を有し、半導体層の側面を十分に被覆することができる。
また、上記シリカ粒子の含有割合は、保護層形成用組成物における固形分全体を100質量%とした場合に、好ましくは5〜90質量%、より好ましくは15〜80質量%、更に好ましくは30〜70質量%である。この含有割合が上記数値範囲内である場合には、十分なチキソトロピー性を得ることができ、半導体層の側面を十分に被覆することができる。
なお、この保護層形成用組成物は、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の炭酸塩;硫酸バリウム、硫酸カルシウム等の硫酸塩;リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム等のリン酸塩;炭化物;窒化物等の他の無機粒子を含有していてもよい。
【0044】
保護層17を形成するにあたり、保護層形成用組成物は、(F)成分として、脱水剤を含有することもできる。このように脱水剤を添加することにより、保護層形成用組成物の放射線硬化反応を促進させるとともに、保護層形成用組成物の保存安定性をより向上させることができる。
保護層形成用組成物に使用される脱水剤は、化学反応により水を水以外の物質に変化させる化合物、または、水を物理吸着または包接することにより、水が放射線硬化性および保存安定性に影響を与えないようにするための化合物と定義される。
すなわち、このような脱水剤を含有することにより、保護層形成用組成物の耐光性や耐熱性を損なうことなく、保存安定性や放射線硬化性という相反する特性を向上させることができる。この理由として、外部から浸入してくる水を、脱水剤が有効に吸収することによって、保護層形成用組成物の保存安定性が向上し、一方、放射線硬化反応である縮合反応においては、生成した水を順次に脱水剤が有効に吸収することによって、保護層形成用組成物の放射線硬化性が向上することによると考えられる。
【0045】
また、保護層形成用組成物中に、(G)成分として、(A)成分以外の加水分解性シリル基含有ビニル系重合体を含有することもできる。このように(A)成分以外の加水分解性シリル基含有ビニル系重合体を含むことにより、硬化時の収縮を低減することができ、クラック発生を有効に防止することができる。
また、保護層形成用組成物中に、(H)成分として、反応性希釈剤を含有することが好ましい。このように反応性希釈剤を含むことにより、保護層17の硬化収縮を低減させたり、あるいは保護層17の機械的強度を調節することができる。したがって、保護層17の靭性や耐クラック性を向上させることができる。
【0046】
次に、本発明の光半導体素子の一例の製造方法を説明する。
図2中、まず、サファイア基板10上に、半導体層11を形成する(図2中の(a))。半導体層11は、例えば、III族窒化物半導体からなる。半導体層11は、サファイア基板10側をn層、その上部にMQW層、さらにその上部に、p層の構成である。
次に、半導体層11に対して、サファイア基板10の表面10aが露出するまでドライエッチングして溝50を形成し、互いに離間した複数の半導体層11を形成させる(図2中の(b))。
次に、p電極12をリフトオフ法によって半導体層11の上面の所定の領域に形成し、さらに、p電極12を覆うように金属拡散防止層13を形成させる(図2中の(c))。p電極12には、例えば、Ag−Pd−Cuを用いることができる。金属拡散防止層13には、例えば、Ti/Ni/Au/Alからなる多層膜を用いることができる。層厚は、例えば、Tiが100nm、Niが500nm、Auが100nm、Alが3nmである。 なお、図2中の(a)〜(c)の工程に代えて、先に半導体層11の上面の所定の位置にp電極12、金属拡散防止層13を形成した後に、半導体層11をサファイア基板10が露出するまでドライエッチングして、互いに離間した複数の半導体層11を形成させてもよい。
【0047】
次に、CVD法により、二酸化ケイ素からなる絶縁層14を、サファイア基板10の表面10a、半導体層11の端面11a、p電極12の形成されていない半導体層11の上面11b、金属拡散防止層13の一部、に連続して形成する(図2中の(d))。
絶縁層14の層厚は、例えば、100nm〜500nmである。絶縁層14の材質としては、二酸化ケイ素以外に、例えば、Si34(窒化ケイ素)、ZrO2 (酸化ジルコニウム)、NbO(酸化ニオブ)、Al23(酸化アルミニウム)等を用いることができる。なお、絶縁層14は、少なくとも半導体層11の側面11aに形成されていればよい。
【0048】
次に、金属拡散防止層13と絶縁層14の上に、金属拡散防止層15を形成し、さらに、金属拡散防止層15の上に金属層16を形成する(図2中の(e))。
金属拡散防止層15は、例えば、Ti/Ni/Auの多層膜である。この場合、層厚は、例えば、Tiが100nm、Niが500nm、Auが50nmである。
金属層16は、例えば、Sn20%のAu−Snからなる。層厚は例えば3μmである。
金属層16の材質の他の例として、Au−Si層、Ag−Sn−Cu層、Sn−Bi層などの金属共晶層や、Au層、Sn層、Cu層などを用いることができる。
金属拡散防止層15及び金属層16は、フォトリソグラフィによって所定のパターンに
形成される。
【0049】
次に、本発明で規定する特定の保護層形成用組成物からなる保護層17を、絶縁層14上に形成する(図2中の(f))。
保護層17の層厚は、半導体層11の層厚(以下、最小層厚H1とする)から、半導体層11、p電極12、金属拡散防止層13、15、金属層16を合わせた層厚よりも5μm大きい値(以下、最大層厚H2とする)までの範囲とすることが望ましい。保護層17の層厚が最小層厚H1未満では、絶縁層14の支持体としての機能が弱く、望ましくない。保護層17の層厚が最大層厚H2を超えると、次工程で支持基板18との接合が不良になる場合があり、望ましくない。
保護層17は、少なくとも各半導体層11間の空間の幅L1の範囲に形成されていることが望ましい。L1より狭い幅であると、絶縁層14の支持体としての機能が弱くなり、望ましくない。また、保護層17は、最大でも各半導体層11上の各金属拡散防止層13を離間する幅L2よりも狭い幅であることが望ましい。L2よりも広い幅で形成されていると、次工程での支持基板18との接合によって保護層17がつぶれ、横に拡がった場合に余裕がないことがあり、望ましくない。
【0050】
次に、支持基板18の上面にコンタクト層19、金属拡散防止層20、金属層21を形成し、金属層16が形成された面と金属層21が形成された面を、例えば、300℃、30kgf/cm2 の条件下で熱プレスして接合する(図2中の(g))。
支持基板18の材質として、例えば、Si、GaAs、Cu、Cu−W等を用いることができる。
コンタクト層19は、例えば層厚300nmのAlからなる。金属拡散防止層20は、金属拡散防止層15と同一の材質によって形成することができる。金属層21は、金属層16と同一の材質によって形成することができる。
金属拡散防止層13、15、20は、金属層16、21の金属が、金属拡散防止層13、15、20を超えて拡散するのを防止するための層である。
【0051】
次に、レーザーリフトオフにより、サファイア基板10を分離除去する(図2中の(h))。レーザーの照射は、例えば、波長248nmのKrFレーザーを、0.7J/cm2 以上の条件で、サファイア基板10側からウェハに光照射することによって行なう。このレーザー照射によって、サファイア基板10と半導体層11の接合面において半導体層11を溶融させることで、サファイア基板10を分離除去することができる。この除去後、表面11cを塩酸で洗浄し、さらに50℃のKOH水溶液によりウェットエッチングすることで、表面を平坦化する。
このレーザーリフトオフの後において、保護層17は絶縁層14の支持体として機能する。つまり、絶縁層14の割れや欠けによって半導体層11の側面11aが露出し、電流のリークやショートが発生することを防止することができる。
【0052】
次に、V/Al/Ti/Ni/Auからなる格子状のn電極22を、サファイア基板10と接合していた側の表面11c上に形成する(図2中の(i))。膜厚は、例えば、Vが15nm、Alが150nm、Tiが30nm、Niが500nm、Auが500nmである。その後、ダイシング工程を経て、支持基板18上に形成されたn電極22側の表面11cを光取り出し面とする個々の半導体素子が得られる。
なお、III族窒化物半導体で構成された半導体素子に限らず、GaAsやGaPなど、III−V族半導体で構成された半導体素子に対しても、本発明は適用できる。また、n電極のパターンは、格子状に限らず、ストライプ状など、上面からの光取り出しを阻害しないパターンであればよい。
【実施例】
【0053】
以下、本発明を実施例によってさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら制限されるものではない。
【0054】
〔(A)成分の調製〕
〔合成例1〕
撹拌機、還流管付のフラスコに、メチルトリメトキシシラン(45.70g)、テトラエトキシシラン(12.33g)、1−メトキシ−2−プロパノール(19.56g)、およびシュウ酸(0.03g)を添加、攪拌した後、溶液の温度を60℃に加熱した。次いで、蒸留水(22.38g)を滴下し、滴下終了後、溶液を100℃にて3時間攪拌した。そして、減圧下で濃縮を行い、最終的に固形分を70質量%に調整した(A)成分の1−メトキシ−2−プロパノール溶液を得た。これを「A−1」とする。
〔合成例2〕
撹拌機、還流管付のフラスコに、メチルトリメトキシシラン(20.17g)、トリフルオロメチルトリエトキシシラン(7.18g)、フェニルトリメトキシシラン(29.36g)、1−メトキシ−2−プロパノール(25.48g)、およびシュウ酸(0.04g)を添加、攪拌した後、溶液の温度を60℃に加熱した。次いで、蒸留水(17.77g)を滴下し、滴下終了後、溶液を100℃にて3時間攪拌した。そして、減圧下で濃縮を行い、最終的に固形分を70質量%に調整した(A)成分の1−メトキシ−2−プロパノール溶液を得た。これを「A−2」とする。
【0055】
〔合成例3〕
撹拌機、還流管付のフラスコに、メチルトリメトキシシラン(17.89g)、フェニルトリメトキシシラン(35.80g)、テトラエトキシシラン(3.42g)、1−メトキシ−2−プロパノール(24.84g)、およびシュウ酸(0.03g)を添加、攪拌した後、溶液の温度を60℃に加熱した。次いで、蒸留水(18.02g)を滴下し、滴下終了後、溶液を100℃にて3時間攪拌した。そして、減圧下で濃縮を行い、最終的に固形分を70質量%に調整した(A)成分の1−メトキシ−2−プロパノール溶液を得た。これを「A−3」とする。
【0056】
〔合成例4〕
撹拌機、還流管付のフラスコに、フェニルトリメトキシシラン(46.04g)、テトラエトキシシラン(12.09g)、1−メトキシ−2−プロパノール(25.11g)、およびシュウ酸(0.04g)を添加、攪拌した後、溶液の温度を60℃に加熱した。次いで、蒸留水(16.72g)を滴下し、滴下終了後、溶液を100℃にて3時間攪拌した。そして、減圧下で濃縮を行い、最終的に固形分を70質量%に調整した(A)成分の1−メトキシ−2−プロパノール溶液を得た。これを「A−4」とする。
〔合成例5〕
撹拌機、還流管付のフラスコに、フェニルトリメトキシシラン(69.05g)、1−メトキシ−2−プロパノール(200.01g)、およびマレイン酸(0.08g)を添加、攪拌した後、溶液の温度を60℃に加熱した。次いで、蒸留水(50.55g)を滴下し、滴下終了後、減圧下で濃縮を行い、最終的に固形分を60重量%に調整した(A)成分の1−メトキシ−2−プロパノール溶液を得た。これを「A−5」とする。
【0057】
[保護層形成用組成物「J−1」〜「J−9」の調製]
A−1(固形分および有機溶媒)56.8gに対し、光酸発生剤として1−(4,7−ジ−t−ブトキシ)−ナフチルテトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート0.2g、トリ−n−オクチルアミン0.02g、ジメチルポリシロキサン−ポリオキシアルキレン共重合体0.04g、1−メトキシ−2−プロパノール43.0gを添加し、均一に混合することにより、固形分濃度を40質量%に調整した組成物「J−1」を得た。
また、A−1に代えてA−2〜A−5を用い、かつ、各成分の配合量を表1に示す配合量に変えたこと以外は「J−1」と同様にして、組成物「J−2」〜「J−9」を調製した。
【0058】
【表1】

【0059】
[実施例1〜9]
前記の保護層形成用組成物「J−1」〜「J−9」の各々について、以下のように評価した。
<硬化時の評価>
(1)パターニング形状
半導体層を形成したサファイア基板上に、保護層形成用組成物をスピンコーターを用いて乾燥後の厚さが2μmとなるように塗布した後、80℃、5分プリベークし、次いで、コンタクトマスクアライナーを用いて、半導体層上にホールサイズ(900μm)のフォトマスクを介して、大気中で露光量が100mJ/cm2となるように紫外線を照射した。次いで、80℃、1分間、露光後ベークを行った後、現像剤として2.38質量%のTMAH水溶液を用い、室温、1分間の条件で現像し、その後、走査型電子顕微鏡を用いてフォトマスクにおけるパターンが再現されているか否かを測定した。再現されている場合を「○」、再現が不完全である場合を「×」とした。結果を表2に示す。
【0060】
<硬化膜の作製>
4インチ径の溶融石英基板上に、保護層形成用組成物をディスペンスし、厚さ約2μmになるようにスピンコート塗布し、80℃×5分間、及び250℃×60分間加熱して、硬化膜を作製した。
【0061】
<硬化膜の特性評価>
上記のようにして作製した硬化膜について、下記特性を測定し評価した。結果を表2に示す。
(2)透明性
日本分光社製の分光光度計を使用して、上記で得られた硬化膜(膜厚2μm)の波長400nmにおける透過率(%)をそれぞれ測定した。透過率が95%以上の場合を「○」、95%未満の場合を「×」とした。
(3)耐熱性
オーブンを用いて、上記硬化膜を温度250℃で30分間処理を行った。処理前後の硬化膜の透過率の低下(透過率の減少の割合)が10%未満の場合を「○」、10%を超える場合を「×」とした。
(4)耐光性
スガ試験機社製の耐候性試験機FDP(光源SUGA−FS40、放射照度28W/m(波長270−700nm、ピーク波長313nm)、試験温度60℃)を使用して、上記で得られた硬化膜の耐光性を評価した。同試験機で168時間の紫外線照射を行い、試験前後の硬化膜の透過率の低下(透過率の減少の割合)が10%未満の場合を「○」、10%を超える場合を「×」とした。
(5)密着性
碁盤目試験により密着性を評価した。評価方法はJIS−K5400に準じた。試験後に剥離が確認されなかったものは「○」、1箇所でも剥離が見られたものについては「×」とした。
【0062】
【表2】

【0063】
[実施例10〜15]
前記の保護層形成用組成物「J−1」、「J−3」〜「J−7」の各々について、以下のように評価した。
図2中の(d)で示されるように、サファイア基板10と、サファイア基板10の上面に形成された複数の半導体層11と、前記半導体層11の上面に形成されたp電極12と、p電極12を覆うように形成された金属拡散防止層13と、絶縁層14(サファイア基板10の上面10a、半導体層11の端面11a、p電極12の形成されていない半導体層11の上面11b、及び、金属拡散防止層13の一部に形成されたもの)を備えた素子を用意した。サファイア基板10の上面から金属拡散防止層13の上面までの高さは8μmであった。保護層形成用組成物をスピンコーターを用いて絶縁層14の表面における乾燥後の厚さが1μmとなるよう塗布した後、80℃、5分プリベークし、被覆層を形成した。次いで、コンタクトマスクアライナーを用いて、被覆層上にホールサイズ(900μm)のフォトマスクを介して、大気中で露光量が100mJ/cm2となるように紫外線を照射した。次いで、80℃、1分間、露光後ベークを行った後、現像剤として2.38質量%のTMAH水溶液を用い、室温、1分間の条件で現像し、保護層を形成した(実施例10〜15)。
【0064】
[実施例16〜17]
前記の保護層形成用組成物「J−8」〜「J−9」の各々について、以下のように評価した。
実施例10で準備した素子と同じ素子上に、保護層形成用組成物をスピンコーターを用いて絶縁層14の表面における乾燥後の厚さが3μmとなるよう塗布した後、200℃、20分プリベークし、被覆層を形成した。次いで、窒素で置換された拡散炉中、500℃、30分の焼成を行った。フォトレジスト(JSR社製 ELPAC THB151N)を塗布後、コンタクトマスクアライナーを用いて、被覆層上にホールサイズ(900μm)のフォトマスクを介して、大気中で露光量が100mJ/cmとなるように紫外線を照射した。次いで、80℃、1分間、露光後ベークを行った後、現像剤として2.38質量%のTMAH水溶液を用い、室温、1分間の条件で現像し、保護層を形成した(実施例16〜17)。
【0065】
[比較例1]
ユーテック社製の2周波プラズマCVD装置を用い、シリカ源としてテトラエトキシシラン(ガス流量:0.4sccm)を用い、Arのガス流量100sccm、RF上部シャワーヘッド電力300W(27.12MHz)、下部基板電力150W(380kHz)、基板温度300℃、反応圧力10Torrとして、実施例10で準備した素子と同じ素子上に膜1μmを成膜した。
[比較例2]
ユーテック社製の2周波プラズマCVD装置を用い、シリカ源としてテトラエトキシシラン(ガス流量:2sccm)を用い、Arのガス流量100sccm、RF上部シャワーヘッド電力300W(27.12MHz)、下部基板電力150W(380kHz)、基板温度300℃、反応圧力10Torrとして、実施例10で準備した素子と同じ素子上に膜5μmを成膜した。
【0066】
<保護層形成時の評価>
(1)パターニング形状
走査型電子顕微鏡を用いてフォトマスクにおけるパターンが再現されているか否かを観察した。再現されている場合を「○」、再現が不完全である場合を「×」とした。結果を表3に示す。
(2)半導体層の側面の被覆性
走査型電子顕微鏡を用いて、半導体層の側面(端面)が被覆されているか否かを観察した。半導体層の側面が全面に亘って保護層により被覆されている場合を「○」、一部被覆されておらず露出している場合を「×」とした。結果を表3に示す。
(3)クラック耐性
走査型電子顕微鏡を用いて、形成した保護層における欠陥や割れの有無を測定した。保護層に欠陥や割れが観察されなかった場合を「○」、保護層に欠陥や割れが観察された場合を「×」とした。結果を表3に示す。
【0067】
<保護層の特性評価>
(4)アルカリ耐性
テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)/N−メチルピロリドン(NMP)/水(質量比:2/92/6)の混合溶液を80℃に加熱し、該混合溶液中に保護層が形成された素子を入れて、30分間浸漬させた後、SEMにより観察した。絶縁層14の表面における保護層の膜厚の減少率が30%未満である場合を「○」、膜厚の減少率が30%以上60%未満である場合を「△」、膜厚の減少率が70%以上である場合を「×」とした。結果を表3に示す。
【0068】
【表3】

【0069】
表3から、本発明で規定する組成物を用いて形成された保護層を有する光半導体素子は、該保護層の優れたパターニング性(形状の精度)、高い透明性、高い耐熱性、及び高い耐光性により、例えばLEDの側面からの放射光の有効利用が可能であるなど、発光素子として高い性能を期待しうることがわかる。
また、本発明の光半導体素子は、保護層が存在するため、長期に亘って半導体層からの電流のリークやショートの発生の防止を期待することができる。
【符号の説明】
【0070】
10 サファイア基板
10a 表面
11 半導体層
11a 端面(側面)
11b 上面
12 p電極
13、15、20 金属拡散防止層
14 絶縁層
16、21 金属層
17 保護層
18 支持基板
19 コンタクト層
22 n電極
50 溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持基板と、
前記支持基板の上方に形成された半導体層と、
前記半導体層の上面に形成された電極と、
前記半導体層の側方に形成された保護層と、を備え、
前記保護層が、下記(A)成分を含有する保護層形成用組成物の硬化物であることを特徴とする光半導体素子。
(A)下記の一般式(1)で示される加水分解性シラン化合物、その加水分解物、およびその縮合物からなる群から選択される少なくとも一つの化合物
(R1PSi(X)4-P (1)
[一般式(1)中、R1は炭素数が1〜12である非加水分解性の有機基、Xは加水分解性基、およびpは0〜3の整数である。R1およびXは、各々、複数の基が存在する場合、各基は同じであっても異なってもよい。]
【請求項2】
前記保護層形成用組成物が、シリカ粒子を含む、請求項1に記載の光半導体素子。
【請求項3】
前記保護層が、前記半導体層の側面に形成された絶縁層を介して形成されたものである、請求項1又は2に記載の光半導体素子。
【請求項4】
前記絶縁層が、二酸化ケイ素からなる層である、請求項3に記載の光半導体素子。
【請求項5】
前記保護層を形成する硬化物は、厚みが2μmの場合に、波長400nmの光を照射したときの光の透過率が95%以上のものである、請求項1〜4のいずれかに記載の光半導体素子。
【請求項6】
前記保護層を形成する硬化物は、250℃で30分間加熱した場合の加熱の前後の各時点で波長400nmの光を照射したときの光の透過率の低下が、10%未満のものである、請求項5に記載の光半導体素子。
【請求項7】
前記保護層を形成する硬化物は、60℃で、放射照度28W/m(波長270〜700nm、ピーク波長313nm)の紫外線を168時間照射した場合の照射の前後の各時点で波長400nmの光を照射したときの光の透過率の低下が、10%未満のものである、請求項5又は6に記載の光半導体素子。
【請求項8】
前記保護層形成用組成物がさらに(B)光酸発生剤を含有する、請求項1〜7のいずれかに記載の発光素子。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の光半導体素子の保護層を形成するための組成物であって、下記(A)成分を含有することを特徴とする光半導体素子保護層形成用組成物。
(A)下記の一般式(1)で示される加水分解性シラン化合物、その加水分解物、およびその縮合物からなる群から選択される少なくとも一つの化合物
(R1PSi(X)4-P (1)
[一般式(1)中、R1は炭素数が1〜12である非加水分解性の有機基、Xは加水分解性基、およびpは0〜3の整数である。R1およびXは、各々、複数の基が存在する場合、各基は同じであっても異なってもよい。]
【請求項10】
前記保護層形成用組成物がさらに(B)光酸発生剤を含有する、請求項9に記載の発光素子。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−146674(P2011−146674A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−172437(P2010−172437)
【出願日】平成22年7月30日(2010.7.30)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】