説明

光半導体装置用反射型ダイボンド材及び光半導体装置

【課題】光半導体素子を強固に接合することができるだけでなく、光半導体素子からの光を効率よく反射することができ、光の利用効率を高めることができ、さらに硬化物の耐熱性に優れている光半導体装置用反射型ダイボンド材を提供する。
【解決手段】分子内に環状エーテル含有基を有するシリコーン樹脂と、結晶構造がルチル型の酸化チタンと、環状エーテル含有基と反応可能な熱硬化剤とを含む光半導体装置用反射型ダイボンド材、並びに半導体装置用反射型ダイボンド材を用いて光半導体素子が接合されている光半導体装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば発光ダイオード(LED)素子のような光半導体素子をダイボンディングするのに用いられる光半導体装置用反射型ダイボンド材及び該光半導体装置用反射型ダイボンド材によりダイボンディングが行われている光半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、発光ダイオード(LED)素子のような光半導体素子が、表示装置の光源等に広く用いられている。下記の特許文献1には、LED素子が基板上に実装された光半導体装置が開示されている。特許文献1では、LED素子は基板の上面にダイボンド材を用いて接合されている。ダイボンド材は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂に水素添加して得られた脂環式エポキシ樹脂からなる熱硬化性樹脂を主体とし、加熱により硬化され、LED素子を基板の上面に接合している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−256603号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記ダイボンド材は、LED素子の下面だけでなく、LED素子の周囲の領域に及んでいることもある。他方、LED素子から生じた光の中には、基板側に進む光も存在する。従って、LED素子の周囲に及んでいるダイボンド材に到達した光を反射することができれば、該反射光をも利用することができる。従って、LED素子から生じた光の利用効率を高めることができる。
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のダイボンド材は、LED素子から生じた光が到達したとしても、該光を効率よく反射するものではなかった。従って、光の利用効率を高めることが困難であった。
【0006】
加えて、半田リフロー時の温度のような200℃以上の高温の環境にさらされると、黄変を生じたり、基板やリード電極との接着力が低下したりすることがあった。
【0007】
本発明の目的は、光半導体素子からの光を反射させることができ、光半導体素子において生じた光の利用効率を高めることができ、かつ光半導体素子を基板等に強固に接合することができ、さらに耐熱性に優れた硬化物を与える光半導体装置用反射型ダイボンド材及び該光半導体装置用反射型ダイボンド材を用いて光半導体素子が接合されている光半導体装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る光半導体装置用反射型ダイボンド材は、分子内に環状エーテル含有基を有するシリコーン樹脂と、結晶構造がルチル型の酸化チタンと、環状エーテル含有基と反応可能な熱硬化剤とを含む。
【0009】
本発明に係る光半導体装置用反射型ダイボンド材では、好ましくは、前記酸化チタンが、該酸化チタン5gを純粋100mlに加えた液を加熱し、5分間沸騰させた後、23℃に達するまで静置し、沸騰処理液を得、得られた沸騰処理液に、沸騰により蒸発した水量の水を加えて水量を100mlとしたときの液のpHが6.2以上、11以下の値を示す酸化チタンである。この場合には、光半導体装置用反射型ダイボンド材の黄変等が生じがたく、かつ基板に対する接着性をより一層高めることができる。
【0010】
本発明に係る光半導体装置用反射型ダイボンド材の他の特定の局面では、前記酸化チタンが、塩基性金属酸化物及び塩基性金属水酸化物のうち少なくとも1種により被覆されている。この場合には、酸化チタンの表面が塩基性であるため、高温下による着色劣化等をより一層抑制することができる。
【0011】
好ましくは、前記塩基性金属酸化物及び塩基性金属水酸化物を構成している金属元素が、マグネシウム、ジルコニウム、セリウム、ストロンチウム、アンチモン、バリウム及びカルシウムからなる群から選択された少なくとも一種である。この場合には、高温にさらされた際の着色による劣化をより一層抑制することができ、基板等に対する密着性をより一層高めることができる。
【0012】
より好ましくは、前記酸化チタンが、酸化ジルコニウム及び酸化珪素のうち少なくとも一方を含む被覆材料により被覆されている。この場合には、高温にさらされた際の着色による劣化をより一層抑制することができ、基板等に対する密着性をより一層高めることができる。
【0013】
本発明における光半導体装置用反射型ダイボンド材の別の特定の局面では、分子内に環状エーテル含有基を有するシリコーン樹脂は、平均組成式が下記一般式(1)で表される樹脂成分を含有し、かつ前記環状エーテル含有基の含有量が0.1モル%〜50モル%の範囲にある。
【0014】
【化1】

【0015】
一般式(1)中、a、b、及びcは、それぞれa/(a+b+c)=0〜0.3、b/(a+b+c)=0.3〜1.0、c/(a+b+c)=0〜0.5を満たし、R〜Rは、少なくとも1個が環状エーテル含有基を表し、前記環状エーテル含有基以外のR〜Rは、直鎖状若しくは分岐状の炭素数1〜8の炭化水素或いはそのフッ素化物を表し、これらは、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0016】
分子内に環状エーテル含有基を有するシリコーン樹脂が、上記特定のシリコーン樹脂である場合は、製造に際しての光半導体装置用反射型ダイボンド材の塗布時の粘度を低めることができ、塗布が容易であり、かつ硬化後には、光半導体素子を基板に強固に密着させることができるとともに、硬化物の耐熱性をより一層高めることができる。
【0017】
本発明に係る光半導体装置は、光半導体素子と、基板又はリード電極と、前記光半導体素子を前記基板又はリード電極に接合している本発明に係る光半導体装置用反射型ダイボンド材とを備える。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る光半導体装置用反射型ダイボンド材によれば、分子内に環状エーテル含有基を有するシリコーン樹脂と、結晶構造がルチル型の酸化チタンと、環状エーテル含有基と反応可能な熱硬化剤とを含むため、硬化物が白色を呈し、LED素子のような光半導体素子からの光が到達した場合に該光を高い効率で反射させる。従って、光半導体素子の光の利用効率を高めることができる。加えて、基板等に光半導体素子を強固に接合することができるとともに、硬化物が耐熱性に優れているため、例えば半田リフロー時等のような高温下にさらされたとしても、着色による劣化が生じがたくかつ基板等に対する密着性の低下も生じがたい。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態に係る光半導体装置を示す正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の詳細を説明する。
【0021】
〔分子内に環状エーテル含有基を有するシリコーン樹脂〕
本発明で用いられる上記分子内に環状エーテル含有基を有するシリコーン樹脂としては、環状エーテル含有基を有する限り特に限定されない。上記環状エーテル含有基としては、例えば、グリシジル含有基、エポキシシクロヘキシル含有基、オキセタン含有基などが挙げられる。
【0022】
上記平均組成式が上記一般式(1)で表される樹脂とは、本発明の光半導体装置用ダイボンド材が上記式(1)で表される樹脂成分のみを含有する樹脂だけでなく、種々の構造の樹脂成分を含有する混合物であり、含有する樹脂成分の組成の平均をとると上記式(1)で表される樹脂も含まれる。
【0023】
下記の一般式(1)で表される樹脂中に(a)より求められるフェニル基含有比率が15モル%〜60モル%であることが好ましい。
【0024】
上記一般式(1)のシリコーン樹脂中に含まれる、R〜Rの少なくとも1個は、フェニル基であり、かつ、フェニル基の比率が15〜60モル%である。フェニル基の比率が15モル%に満たないと、接着強度が不充分なことがあり、60モル%を超えると剥離が発生しやすくなる。より好ましい下限は20モル%であり、より好ましい上限は55モル%である。
【0025】
なお、本明細書において、上記フェニル基の比率とは、上記シリコーン樹脂成分の平均組成物中に含まれる上記フェニル基の比率である。具体的には、下記式(a)を用いて求められた比率である。
【0026】
フェニル基含有比率(モル%)=(平均組成が一般式(1)で表される樹脂の1分子あたりに含まれるフェニル基の平均個数×フェニル基の分子量/平均組成が一般式(1)で表される樹脂成分の平均分子量)×100 ・・・式(a)
上記一般式(1)中、R〜Rの少なくとも1個は、環状エーテル含有基を表す。
【0027】
上記環状エーテル含有基としては特に限定されず、例えば、グリシジル含有基、エポキシシクロヘキシル含有基、またはオキセタン含有基等の環状エーテル基が挙げられる。なかでも、グリシジル含有基及び/又はエポキシシクロヘキシル含有基が好適である。
【0028】
なお、本明細書において環状エーテル含有基とは、少なくとも骨格の一部に環状エーテル基を含む官能基である。上記環状エーテル含有基は、例えば、環状エーテル基を骨格に含み、アルキル基やアルキルエーテル基等の他の骨格も含む官能基であってもよい。
【0029】
上記グリシジル含有基としては特に限定されず、例えば、2,3−エポキシプロピル基、3,4−エポキシブチル基、4,5−エポキシペンチル基、2−グリシドキシエチル基、3−グリシドキシプロピル基または4−グリシドキシブチル基等が挙げられる。
【0030】
上記エポキシシクロヘキシル含有基としては特に限定されず、例えば、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル基、または3−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピル基等が挙げられる。
【0031】
上記シリコーン樹脂においては、上記環状エーテル含有基の含有比率の好ましい下限は0.1モル%、好ましい上限は50モル%である。上記環状エーテル含有基の含有比率が0.1モル%未満であると、上記シリコーン樹脂と後述する熱硬化剤との反応性が著しく低下し、本発明の光半導体装置用ダイボンド材の硬化性が不充分となることがある。上記環状エーテル含有基の含有比率が50モル%を超えると、上記シリコーン樹脂と熱硬化剤との反応に関与しない環状エーテル含有基が増え、本発明の光半導体装置用ダイボンド材の耐熱性が低下することがある。上記環状エーテル含有基の含有比率のより好ましい下限は1モル%、より好ましい上限は40モル%であり、更に好ましい下限は5モル%、更に好ましい上限は30モル%である。
【0032】
なお、本明細書において、上記環状エーテル含有基の比率とは、上記シリコーン樹脂成分の平均組成物中に含まれる上記環状エーテル含有基の比率である。具体的には、下記式(b)に基づいて求めた比率である。
【0033】
環状エーテル含有基の比率(モル%)=(平均組成が一般式(1)で表される樹脂の1分子あたりに含まれる環状エーテル含有基の平均個数×環状エーテル含有基の分子量/平均組成が一般式(1)で表される樹脂成分の平均分子量)×100 ・・・式(b)
上記一般式(1)で表されるシリコーン樹脂において、上記環状エーテル含有基以外のR〜Rは、直鎖状若しくは分岐状の炭素数1〜8の炭化水素基或いはそのフッ素化物を表す。
【0034】
上記直鎖状若しくは分岐状の炭素数1〜8の炭化水素としては特に限定されず、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、t−ペンチル基、イソへキシル基、シクロヘキシル基、またはフェニル基が挙げられる。
【0035】
上記一般式(1)で表されるシリコーン樹脂において、(RSiO2/2)で表される構造単位(以下、二官能構造単位ともいう)は、下記一般式(1−2)で表される構造、すなわち、二官能構造単位中のケイ素原子に結合した酸素原子の1つがヒドロキシル基又はアルコキシ基を構成する構造を含む。
【0036】
【化2】

【0037】
上記一般式(1−2)中、Xは、OH又はORを表し、ORは、直鎖状又は分岐状の炭素数1〜4のアルコキシ基を表す。
【0038】
また、上記一般式(1)で表されるシリコーン樹脂において、(RSiO3/2)で表される構造単位(以下、三官能構造単位ともいう)は、下記一般式(1−3)又は(1−4)で表される構造、すなわち、三官能構造単位中のケイ素原子に結合した酸素原子の2つがそれぞれヒドロキシル基若しくはアルコキシ基を構成する構造、又は、三官能構造単位中のケイ素原子に結合した酸素原子の1つがヒドロキシル基若しくはアルコキシ基を構成する構造を含む。
【0039】
【化3】

【0040】
上記一般式(1−3)及び(1−4)中、Xは、OH又はORを表し、ORは、直鎖状又は分岐状の炭素数1〜4のアルコキシ基を表す。
【0041】
上記一般式(1−2)〜(1−4)において、直鎖状若しくは分岐状の炭素数1〜4のアルコキシ基としては特に限定されず、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、n−ブトキシ基、イソプロポキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基またはt−ブトキシ基が挙げられる。
【0042】
また、上記一般式(1)中、aは、a/(a+b+c)の下限が0、上限が0.3の関係を満たす数値である。a/(a+b+c)が0.3を超えると、本発明の光半導体装置用ダイボンド材の耐熱性が悪くなったり、剥離が発生しやすくなることがある。より好ましい上限は0.25であり、さらに好ましくは0.2である。
【0043】
また、上記一般式(1)中、bは、b/(a+b+c)の下限が0.3、上限が1.0の関係を満たす数値である。b/(a+b+c)が0.3未満であると、本発明の光半導体装置用ダイボンド材の硬化物が硬くなりすぎ、クラックが発生することがある。より好ましい下限は0.4であり、より好ましい上限は0.95であり、さらに好ましい下限は0.5であり、さらに好ましい上限は0.9である。
【0044】
また、上記一般式(1)中、cは、c/(a+b+c)の下限が0、上限が0.5の関係を満たす数値である。0.5を超えると、本発明の光半導体装置用ダイボンド材としての適正な粘度を維持するのが困難になったり、密着性が低下する場合がある。より好ましい下限は0.05、より好ましい上限は0.4であり、さらに好ましい下限は0.1、さらに好ましい上限は0.35である。
【0045】
上記一般式(1)で表されるシリコーン樹脂について、テトラメチルシラン(以下、TMS)を基準に29Si−核磁気共鳴分析(以下、NMR)を行うと、置換基の種類によって若干の変動は見られるものの、上記一般式(1)の(RSiO1/2で表される構造単位に相当するピークは+10〜0ppm付近に現れ、上記一般式(1)の(RSiO2/2及び(1−2)の二官能構造単位に相当する各ピークは−10〜−50ppm付近に現れ、上記一般式(1)の(RSiO3/2、(1−3)及び(1−4)の三官能構造単位に相当する各ピークは−50〜−80ppm付近に現れる。
【0046】
従って、29Si−NMRを測定し、それぞれのシグナルのピーク面積を比較することによって一般式(1)の比率を測定することが可能である。
【0047】
但し、上記TMSを基準にした29Si−NMR測定で上記一般式(1)の官能構造単位の見分けがつかない場合は、29Si−NMR測定結果だけではなく、H−NMRや19F−NMRで測定した結果を必要に応じて用いることにより構造単位の比率を見分けることができる。
【0048】
上記シリコーン樹脂は、アルコキシ基を0.5〜10モル%含有することが好ましい。このようなアルコキシ基が含有されていると、耐熱性や耐光性が飛躍的に向上する。これはシリコーン樹脂中にアルコキシ基が含有されていることにより、硬化速度を飛躍的に向上させることができるため、硬化時での熱劣化が防止できているためと考えられる。
【0049】
また、このように硬化速度が飛躍的に高められることにより、硬化促進剤を添加する場合には比較的少ない添加量でも充分な硬化性が得られるようになる。
【0050】
アルコキシ基の含有量が0.5モル%未満であると、硬化速度が充分に得られず耐熱性が悪くなることがあり、10モル%を超えると、シリコーン樹脂や組成物の貯蔵安定性が悪くなったり、耐熱性が悪くなることがある。アルコキシ基の含有量のより好ましい下限は1モル%であり、より好ましい上限は5モル%である。
【0051】
なお、本明細書において、上記アルコキシ基の含有量は、上記シリコーン樹脂成分の平均組成物中に含まれる上記アルコキシ基の量を意味する。
【0052】
上記シリコーン樹脂はシラノール基を含有しないほうが好ましい。シラノール基はポリマーの貯蔵安定性を著しく悪化させるほか、樹脂組成物としたときの貯蔵安定性も著しく悪くなるために好ましくない。このようなシラノール基は、真空化で加熱することで減少させることが可能であり、シラノール基の量は赤外分光法を用いて測定可能である。
【0053】
本発明の光半導体装置用ダイボンド材において、上記シリコーン樹脂の数平均分子量(Mn)の好ましい下限は1000、好ましい上限は5万である。上記シリコーン樹脂の数平均分子量(Mn)が1000未満であると、熱硬化時に揮発成分が多くなり、硬化後による膜減りが多くなり好ましくない。上記シリコーン樹脂の数平均分子量(Mn)が5万を超えると、粘度調節が困難になるため好ましくない。上記シリコーン樹脂の数平均分子量(Mn)のより好ましい下限は1500、より好ましい上限は15000である。
【0054】
なお、本明細書において、数平均分子量(Mn)とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いてポリスチレンをスタンダードとして求めた値であり、Waters社製の測定装置(カラムとして昭和電工社製 Shodex GPC LF−804(長さ300mm)を2本用い、測定温度が40℃、流速が1mL/min、溶媒としてテトラヒドロフラン、標準物質としてポリスチレンを用いる)を用いて測定した値を意味する。
【0055】
上記シリコーン樹脂を合成する方法としては特に限定されず、例えば、(1)SiH基を有するシリコーン樹脂と、環状エーテル含有基を有するビニル化合物のハイドロシリレーション反応により置換基を導入する方法、または(2)シロキサン化合物と環状エーテル含有基を有するシロキサン化合物とを縮合反応させる方法等が挙げられる。
【0056】
上記方法(1)において、ハイドロシリレーション反応とは、必要に応じて触媒の存在下、SiH基とビニル基とを反応させる方法である。
【0057】
上記SiH基を有するシリコーン樹脂としては、分子内にSiH基を含有し、上記環状エーテル含有基を有するビニル化合物を反応させた後、上述した一般式(1)で表される構造となるようなものを使用すればよい。
【0058】
上記環状エーテル含有基を有するビニル化合物としては、分子内に1個以上の環状エーテル含有基を有するビニル化合物であれば特に限定されず、例えば、ビニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレートまたはビニルシクロヘキセンオキシドなどのエポキシ基含有化合物が挙げられる。
【0059】
上記方法(2)において、シロキサン化合物としては、例えば、下記一般式(2)、(3)、(4)のシロキサン単位を持つアルコキシシラン又はその部分加水分解物が挙げられる。
【0060】
【化4】

【0061】
上記一般式(2)〜(4)中、R22〜R27は、直鎖状若しくは分岐状の炭素数1〜8の炭化水素或いはそのフッ素化物を表し、ORは、直鎖状又は分岐状の炭素数1〜4のアルコキシ基を表す。
【0062】
上記一般式(2)〜(4)中、R22〜R27が直鎖状若しくは分岐状の炭素数1〜8の炭化水素である場合、具体的には、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、t−ペンチル基、イソへキシル基、シクロヘキシル基またはフェニル基が挙げられる。
【0063】
また、上記一般式(2)〜(4)中、ORで表される直鎖状若しくは分岐状の炭素数1〜4のアルコキシ基は、具体的には、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、n−ブトキシ基、イソプロポキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基またはt−ブトキシ基等が挙げられる。
【0064】
上記一般式(2)で表される化合物としては、具体的には例えば、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリフェニルメトキシシランまたはトリフェニルエトキシシランが挙げられる。
【0065】
上記一般式(3)で表される化合物としては、具体的には例えば、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、イソプロピル(メチル)ジメトキシシラン、シクロヘキシル(メチル)ジメトキシシランまたはメチル(フェニル)ジメトキシシランが挙げられる。
【0066】
上記一般式(4)で表される化合物としては、具体的には例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシランまたはフェニルトリメトキシシランが挙げられる。
【0067】
上記環状エーテル含有基を有するシロキサン化合物としては、例えば、下記一般式(5)、(6)または(7)で表される環状エーテル含有基を有するアルコキシシラン又はその部分加水分解物が挙げられる。
【0068】
【化5】

【0069】
上記一般式(5)、(6)及び(7)中、R28、R29、R30の少なくとも一つ、R31及び/又はR32、R33は環状エーテル含有基であり、環状エーテル含有基以外のR28、R29、R30、R31、R32は、炭素数1〜8の炭化水素或いはそのフッ素化物を表し、ORは、直鎖状又は分岐状の炭素数1〜4のアルコキシ基を表す。
【0070】
一般式(5)、(6)及び(7)中、R28、R29、R30の少なくとも一つ、R31及び/又はR32、R33で表される環状エーテル含有基としては特に限定されず、例えば、グリシジル含有基、エポキシシクロヘキシル含有基、オキセタン含有基が挙げられる。なかでも、グリシジル含有基及び/又はエポキシシクロヘキシル含有基が好適である。
【0071】
上記グリシジル含有基としては特に限定されず、例えば、2,3−エポキシプロピル基、3,4−エポキシブチル基、4,5−エポキシペンチル基、2−グリシドキシエチル基、3−グリシドキシプロピル基または4−グリシドキシブチル基が挙げられる。
【0072】
上記エポキシシクロヘキシル含有基としては特に限定されず、例えば、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル基または3−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピル基が挙げられる。
【0073】
上記一般式(5)及び(6)中、環状エーテル含有基以外のR28、R29、R30、R31、R32は、具体的には、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、t−ペンチル基、イソへキシル基、シクロヘキシル基またはフェニル基が挙げられる。
【0074】
また、上記一般式(5)、(6)及び(7)中、ORで表される直鎖状若しくは分岐状の炭素数1〜4のアルコキシ基は、具体的には、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、n−ブトキシ基、イソプロポキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基またはt−ブトキシ基が挙げられる。
【0075】
上記一般式(5)で表される化合物としては、具体的には例えば、3−グリシドキシプロピル(ジメチル)メチルメトキシシランまたは2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル(ジメチル)メトキシシランが挙げられる。
【0076】
上記一般式(6)で表される化合物としては、具体的には例えば、3−グリシドキシプロピル(メチル)ジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピル(メチル)ジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピル(メチル)ジブトキシシラン、2,3−エポキシプロピル(メチル)ジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル(メチル)ジメトキシシランまたは2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル(メチル)ジエトキシシランが挙げられる。
【0077】
上記一般式(7)で表される化合物としては、具体的には例えば、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランまたは2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシランが挙げられる。
【0078】
上記方法(2)において、上記シロキサン化合物と環状エーテル含有基を有するシロキサン化合物とを縮合反応させる具体的な方法としては、例えば、上記シロキサン化合物と環状エーテル含有基を有する化合物とを水、及び、酸又は塩基性触媒の存在下で反応させてシリコーン樹脂を合成する方法が挙げられる。
【0079】
上記水の配合量としては、上記シロキサン化合物と上記環状エーテル含有基を有するシロキサン化合物中のケイ素原子に結合したアルコキシ基を加水分解できる量であれば特に限定されず、適宜調整される。
【0080】
上記酸性触媒は、上記シロキサン化合物と環状エーテル含有基を有するシロキサン化合物とを反応させるための触媒であり、例えば、無機酸、有機酸、これらの酸無水物又は誘導体が挙げられる。
【0081】
上記無機酸としては、例えば、リン酸、ホウ酸または炭酸が挙げられる。
【0082】
上記有機酸としては、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、フマル酸、マレイン酸またはオレイン酸が挙げられる。
【0083】
上記塩基性触媒は、上記シロキサン化合物と環状エーテル含有基を有するシロキサン化合物とを反応させるための触媒であり、例えば、アルカリ金属の水酸化物、アルカリ金属のアルコキシドまたはアルカリ金属のシラノール化合物が挙げられる。
【0084】
上記アルカリ金属の水酸化物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムまたは水酸化セシウムが挙げられる。
【0085】
上記アルカリ金属のアルコキシドとしては、例えば、ナトリウム−t−ブトキシド、カリウム−t−ブトキシドまたはセシウム−t−ブトキシドが挙げられる。
【0086】
上記アルカリ金属のシラノール化合物としては、例えば、ナトリウムシラノレート化合物、カリウムシラノレート化合物またはセシウムシラノレート化合物が挙げられる。
なかでも、カリウム系触媒及びセシウム系触媒が好適である。
【0087】
本発明の光半導体装置用ダイボンド材において、上述した樹脂以外に、本発明の効果を妨げない範囲で他の硬化性化合物を含有してもよい。そのような化合物としては例えば、アミノ基、ウレタン基、イミド基、水酸基、カルボキシル基またはエポキシ基を有する化合物が挙げられる。中でも、エポキシ化合物が好ましい。エポキシ化合物としては特に限定はされず、従来公知の種々のエポキシ化合物を用いることができる。
【0088】
上記その他の硬化性化合物の配合量としては特に限定はされないが、好ましい上限は、上述したシリコーン樹脂の合計100重量部に対して10重量部である。より好ましい上限は5重量部、更に好ましい上限は3重量部、特に好ましい上限は1重量部である。
【0089】
〔結晶構造がルチル型の酸化チタン〕
本発明に係る光半導体装置用反射型ダイボンド材は、反射性を高めるために、結晶構造がルチル型の酸化チタンを含んでいる。また、ルチル型酸化チタンが含有されていることにより、光半導体装置用反射型ダイボンド材が光にさらされたとしても、黄変等の着色による劣化が生じがたい。
【0090】
好ましくは、酸化チタンは、該酸化チタン5gを純粋100mlに加えた液を加熱し、5分間沸騰させた後、23℃に達するまで静置し、沸騰処理液を得、得られた沸騰処理液に、沸騰により蒸発した水量の水を加えて水量を100mlとしたときの液のpHが6.2以上、11以下の値を示す酸化チタンであることが望ましい。得られた液のpHは、JIS Z8802の7に記載された操作に準拠して測定することができる。
【0091】
上記pHは、より好ましくは、7.0以上、さらに好ましくは7.4以上であり、最も好ましくは8.1以上である。それによって、光半導体装置用反射型ダイボンド材の劣化をより一層抑制することができる。上記煮沸法により測定されたpHの上限値は、より好ましくは10.0以下であり、さらに好ましくは9.0以下である。それによって、光半導体装置用反射型ダイボンド材のポットライフを長くすることができる。
【0092】
少なくとも1種の酸化チタンが塩基性金属酸化物もしくは塩基性金属水酸化物で被覆されて表面が塩基性とされていることが好ましい。上記酸化チタンの表面が塩基性であると、高温化での黄変をより一層抑制できるため好ましい。
【0093】
塩基性金属酸化物もしくは塩基性金属水酸化物としては、マグネシウム、ジルコニウム、セリウム、ストロンチウム、アンチモン、バリウムまたはカルシウムなどの金属の化合物が挙げられる。なかでも、高温に晒されたときに黄変する恐れを少なくできるので、酸化チタンを被覆する材料に酸化ジルコニウムが含まれていることが好ましい。
【0094】
酸化チタンの被覆方法としては、被覆する酸化チタンを水または水を主成分とする媒液中に分散させる方法があげられる。この際に、酸化チタンの凝集程度に応じて、サンドミル、ボールミル等の湿式粉砕機を用いて、予備粉砕を行ってもよい。スラリーのpHは、酸化チタンによって適宜設定することが好ましいが、例えば酸化チタンであればpHは9以上であることが好ましい。次に、スラリー中に被覆する金属の水溶性塩を添加する。その後、中和、固液分離、乾燥及び乾式粉砕を実施し、これによって、被覆された酸化チタンを得ることができる。
【0095】
上記酸化チタンは、酸化チタン表面の塩基性を高めるために、酸化チタンの酸性部位と反応することができる化合物を含有することが好ましい。また、酸化チタンの塩基性を高めるために、酸化チタンの酸性部位と反応することができる化合物が表面に存在する酸化チタンを含有することが好ましい。酸化チタンの酸性部位と反応することができる化合物としては、(1)トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ジトリメチロールプロパン、トリメチロールプロパンエトキシレート、もしくはペンタエリスリトール等の多価アルコール、(2)モノエタノールアミン、モノプロパノールアミンジエタノールアミン、ジプロパノールアミン、トリエタノールアミン、もしくはトリプロパノールアミン等のアルカノールアミン、(3)クロロシランまたは(4)アルコキシシランが挙げられる。
【0096】
酸化チタンの酸性部位と反応することができる化合物が塩基性化合物であれば、酸化チタンの塩基性をより高めることができ、好ましい。このような好ましい塩基性化合物としては、アルカノールアミンが挙げられる。
【0097】
酸化チタンを塩基性化合物で表面処理する方法としては、(1)上記化合物を添加した酸化チタンを流体エネルギー粉砕機、衝撃粉砕機等の乾式粉砕機を用いて粉砕する方法、(2)ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー等の高速攪拌機等を用いて、乾式粉砕した後の酸化チタンを上記化合物と攪拌、混合する方法、(3)酸化チタンの水性スラリーに上記化合物を添加し撹拌する方法が挙げられる。特に、(1)の方法は、酸化チタンの粉砕と上記化合物による表面処理とを同時に行うことができ好ましい。乾式粉砕機としては、流体エネルギー粉砕機が好ましく、ジェットミルなどの旋回式粉砕機がより好ましい。
【0098】
光半導体装置用反射型ダイボンド材100重量%中の酸化チタンの含有量は、3重量%以上、80重量%以下であることが好ましい。3重量%未満では、反射性を高めることが困難となることがあり、80重量%を超えるとダイボンディングが困難となることがある。より好ましい下限は10重量%であり、より好ましい上限は75重量%である。
【0099】
〔熱硬化剤〕
本発明の光半導体装置用反射型ダイボンド材は、上記環状エーテル含有基と反応する熱硬化剤(以下、単に熱硬化剤ともいう)を含有する。
【0100】
上記熱硬化剤としては、上記シリコーン樹脂の環状エーテル含有基と反応可能なものであれば特に限定されず、例えば、エチレンジアミン、トリエチレンペンタミン、ヘキサメチレンジアミン、ダイマー酸変性エチレンジアミン、N−エチルアミノピペラジン、イソホロンジアミンなどの脂肪族アミン、メタフェニレンジアミン、パラフェニレンジアミン、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェノルスルホン、4,4’−ジアミノジフェノルメタン、4,4’−ジアミノジフェノルエーテルなどの芳香族アミン、メルカプトプロピオン酸エステル、エポキシ樹脂の末端メルカプト化合物などのメルカプタン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD、ビスフェノールS、テトラメチルビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールF、テトラメチルビスフェノールAD、テトラメチルビスフェノールS、テトラブロモビスフェノールA、テトラクロロビスフェノールA、テトラフルオロビスフェノールA、ビフェノール、ジヒドロキシナフタレン、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、4,4−(1−(4−(1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル)フェニル)エチリデン)ビスフェノール、フェノールノボラック、クレゾールノボラック、ビスフェノールAノボラック、臭素化フェノールノボラック、臭素化ビスフェノールAノボラックなどのフェノール樹脂、これらフェノール樹脂の芳香環を水素化したポリオール、ポリアゼライン酸無水物、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物、ノルボルナン−2,3−ジカルボン酸無水物、メチル−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物、メチル−ノルボルナン−2,3−ジカルボン酸無水物、シクロヘキサン−1,2,3−トリカルボン酸−1,2無水物、シクロヘキサン−1,2,4−トリカルボン酸−1,2無水物などの脂環式酸無水物、3−メチルグルタル酸無水物などの分岐していてもよい炭素数1〜8のアルキル基を有する3−アルキルグルタル酸無水物、2−エチル−3−プロピルグルタル酸無水物などの分岐していてもよい炭素数1〜8のアルキル基を有する2,3−ジアルキルグルタル酸無水物、2,4−ジエチルグルタル酸無水物、2,4−ジメチルグルタル酸無水物などの分岐していてもよい炭素数1〜8のアルキル基を有する2,4−ジアルキルグルタル酸無水物等のアルキル置換グルタル酸無水物、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸などの芳香族酸無水物、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾールなどのイミダゾール及びその塩類、脂肪族アミン、芳香族アミン、及び/又はイミダゾールとエポキシ樹脂との反応により得られるアミンアダクト、アジピン酸ジヒドラジドなどのヒドラジン、ジメチルベンジルアミン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7などの第3級アミンまたはトリフェニルホスフィンなどの有機ホスフィン、ジシアンジアミドが挙げられる。これらの熱硬化剤は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0101】
上記熱硬化剤のなかでも、耐熱性を高めるため、脂環式酸無水物類、アルキル置換グルタル酸無水物類、芳香族酸無水物類等の酸無水物が好ましく、より好ましくは、脂環式酸無水物類、アルキル置換グルタル酸無水物類であり、特に好ましくは、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、ノルボルナン−2,3−ジカルボン酸無水物、メチル−ノルボルナン−2,3−ジカルボン酸無水物、シクロヘキサン−1,2,3−トリカルボン酸−1,2無水物、シクロヘキサン−1,2,4−トリカルボン酸−1,2無水物、または2,4−ジエチルグルタル酸無水物である。
【0102】
上記熱硬化剤の配合量としては特に限定されないが、上記シリコーン樹脂100重量部に対して、好ましい下限は1重量部、好ましい上限は200重量部である。この範囲であると、本発明の光半導体装置用反射型ダイボンド材は、充分に架橋反応が進行し、耐熱性及び耐光性に優れるとともに、透湿度が充分に低いものとなる。より好ましい下限は5重量部、より好ましい上限は120重量部である。
【0103】
〔硬化促進剤〕
本発明の光半導体装置用反射型ダイボンド材は、更に、硬化促進剤を含有することが好ましい。
【0104】
上記硬化促進剤としては特に限定されず、例えば、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール類;1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7等の第3級アミン類及びその塩類;トリフェニルホスフィン等のホスフィン類;トリフェニルホスホニウムブロマイド等のホスホニウム塩類;アミノトリアゾール類、オクチル酸錫、ジブチル錫ジラウレート等の錫系、オクチル酸亜鉛等の亜鉛系、アルミニウム、クロム、コバルト、ジルコニウム等のアセチルアセトナート等の金属触媒類等が挙げられる。これらの硬化促進剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0105】
上記硬化促進剤の配合量としては特に限定されないが、上記シリコーン樹脂100重量部に対して、好ましい下限は0.01重量部、好ましい上限は5重量部である。0.01重量部未満であると、上記硬化促進剤を添加する効果が得られず、5重量部を超えると、硬化物の着色や耐熱性、耐光性の低下が著しくなるため好ましくない。より好ましい下限は0.05重量部であり、より好ましい上限は1.5重量部である。
【0106】
〔その他の成分〕
本発明に係る光半導体装置用反射型ダイボンド材は、紫外線吸収剤、酸化防止剤、溶剤、着色剤、充填剤、消泡剤、表面処理剤、難燃剤、粘度調節剤、分散剤、分散助剤、表面改質剤、可塑剤、防黴剤、レベリング剤、安定剤、カップリング剤、タレ防止剤又は蛍光体等を含有してもよい。
【0107】
〔調製方法及び使用方法〕
本発明に係る光半導体装置用反射型ダイボンド材は、上記各成分を攪拌混合した後、例えば3本ロールを用いて均一に混合することにより調製することができる。
【0108】
使用に際しては、基板等に、あるいは光半導体素子の接合面に光半導体装置用反射型ダイボンド材を塗布し、光半導体素子を基板に張り合わせた後、加熱すればよい。加熱条件は、特に限定されないが、100℃〜170℃の温度、5分〜5時間程度であればよい。
【0109】
上記光半導体素子としては特に限定されず、例えば、上記光半導体素子が発光ダイオードである場合、例えば、基板上に半導体材料を積層して形成したものが挙げられる。この場合、半導体材料としては、例えば、GaAs、GaP、GaAlAs、GaAsP、AlGaInP、GaN、InN、AlN、InGaAlN、SiC等が挙げられる。
上記基板としては、例えば、サファイア、スピネル、SiC、Si、ZnO、GaN単結晶等が挙げられる。また、必要に応じ基板と半導体材料の間にバッファー層が形成されていてもよい。上記バッファー層としては、例えば、GaN、AlN等が挙げられる。
【0110】
本発明の光半導体装置は、具体的には、例えば、発光ダイオード装置、半導体レーザー装置、フォトカプラ等が挙げられる。このような本発明の光半導体装置は、例えば、液晶ディスプレイ等のバックライト、照明、各種センサー、プリンター、コピー機等の光源、車両用計測器光源、信号灯、表示灯、表示装置、面状発光体の光源、ディスプレイ、装飾
、各種ライトまたはスイッチング素子等に好適に用いることができる。
【0111】
〔光半導体装置〕
本発明に係る光半導体装置は、発光素子が本発明の光半導体装置用反射型ダイボンド材を介してリード電極に接合されている構造を有する。図1は、光半導体装置の一実施形態を示す正面断面図である。
【0112】
光半導体装置1は、略中央にテーパー状の開口部を有するハウジング2と、発光素子3とを備える。ハウジング2は、一対のリード電極4を有し、これらリード電極4の一端部がハウジング2の底部に露出され、他端部がハウジング2外に延設されるように設けられている。
【0113】
発光素子3は、ハウジング2に設けられたリード電極4に、本組成物の硬化物である光半導体装置用反射型ダイボンド材5によって固定されている。また、発光素子3に設けられたボンディングパッド(不図示)とリード電極4とがボンディングワイヤ6で電気的に接続されており、これらの一体化物が封止剤7で封止されている。
【0114】
光半導体装置用反射型ダイボンド材5は、図1に示すように、発光素子3の底部からはみ出してその周囲を囲むように塗布されても、または、発光素子3からはみ出さないように塗布されてもよく、任意である。光半導体装置用反射型ダイボンド材5の膜厚は、10〜100μmの範囲であることが好ましい。
【0115】
光半導体装置1では、発光素子3を駆動すると、破線Aで示すように光が発せられる。この場合、発光素子3からリード電極4の上面とは反対側すなわち上方に照射される光だけでなく、光半導体装置用反射型ダイボンド材5に到達した光が矢印Bで示すように反射される光もある。光半導体装置用反射型ダイボンド材5は、白色であり、上記光を高い効率で反射させる。従って、矢印Bで示す反射光も利用されるので、発光素子3の光の利用効率を高めることができる。
【0116】
以下、本発明の具体的な実施例及び比較例を挙げることにより、本発明の効果を明らかにする。
【0117】
(合成例1)
2000mLの温度計、滴下装置付セパラブルフラスコに、ジメチルジメトキシシランを750g、及び3−グリシドキシプロピル(メチル)ジメトキシシランを150g入れ、50℃で攪拌した。その中に水酸化カリウム1.9gと水250gとからなる水溶液をゆっくりと滴下し、滴下し終わってから50℃で6時間攪拌した。その中に、酢酸2.1gを入れ、減圧下で揮発成分を除去し、酢酸カリウムをろ過してポリマーを得た。得られたポリマーをヘキサン/水を用いて洗浄を行い、減圧下で揮発成分を除去し、ポリマーAを得た。
【0118】
ポリマーAの分子量はMn=11000、Mw=25000であり、29Si−NMRより
(MeSiO2/20.90(EpMeSiO2/2 0.10
であり、3−グリシドキシプロピル基含有量は14モル%、エポキシ等量は760g/eq.であることを確認した。
【0119】
なお、分子量は、ポリマーA(10mg)にテトラヒドロフラン(1mL)を入れ溶解するまで攪拌し、Waters社製の測定装置(カラム:昭和電工社製 Shodex GPC LF−804(長さ300mm)×2本、測定温度:40℃、流速:1mL/min、溶媒:テトラヒドロフラン、標準物質:ポリスチレン)を用いてGPC測定により測定した。また、エポキシ当量は、JIS K−7236に準拠して求めた。
【0120】
(合成例2)
2000mLの温度計、滴下装置付セパラブルフラスコに、ジメチルジメトキシシランを440g、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランを160g入れ50℃で攪拌した。その中に水酸化カリウム1.2gと水170gとからなる水溶液をゆっくりと滴下し、滴下し終わってから50℃で6時間攪拌した。その中に、酢酸1.3gを入れ、減圧下で揮発成分を除去し、酢酸カリウムをろ過してポリマーを得た。得られたポリマーをヘキサン/水を用いて洗浄を行い、減圧下で揮発成分を除去し、ポリマーBを得た。
【0121】
ポリマーBの分子量はMn=2300、Mw=4800であり、29Si−NMRより(MeSiO2/20.84(EpSiO3/20.16
であり、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル基含有量は22モル%、エポキシ等量は550g/eq.であることを確認した。
【0122】
なお、ポリマーBの分子量及びエポキシ当量合成例1と同様にして求めた。
【0123】
(合成例3)
1000mLの温度計、滴下装置及び攪拌機付セパラブルフラスコに、トリメチルメトキシシランを23g、ジメチルジメトキシシランを180g、フェニルトリメトキシシランを100g、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランを100g入れ50℃で攪拌した。その中に水酸化カリウム0.7gと水107gとからなる水溶液をゆっくりと滴下し、滴下し終わってから50℃で6時間攪拌した。その中に、酢酸0.8gを入れ、減圧下で揮発成分を除去し、酢酸カリウムをろ過してポリマーCを得た。
【0124】
ポリマーCの分子量はMn=2200であり、29Si−NMRより
(MeSiO1/20.08(MeSiO2/20.58(PhSiO3/20.19(EpSiO3/20.15
であり、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル基の比率は19モル%、フェニル基の比率は15モル%であり、エポキシ等量は691g/eq.であることを確認した。
【0125】
なお、ポリマーCの分子量、エポキシ当量は、合成例1と同様にして求めた。
【0126】
(合成例4)
1000mLの温度計、滴下装置及び攪拌機付セパラブルフラスコに、トリメチルメトキシシランを25g、ジメチルジメトキシシランを208g、ジフェニルジメトキシシシランを71g、フェニルトリメトキシシランを58g、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランを111g入れ、50℃で攪拌した。その中に水酸化カリウム0.8gと水117gからなる水溶液をゆっくりと滴下し、滴下し終わってから50℃で6時間攪拌した。その中に、酢酸0.9gを入れ、減圧下で揮発成分を除去し、酢酸カリウムをろ過してポリマーDを得た。
【0127】
ポリマーDの分子量はMn=1800であり、29Si−NMRより
(MeSiO1/20.08(MeSiO2/20.57(PhSiO2/20.10(PhSiO3/20.10(EpSiO3/20.15
であり、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル基の比率は17モル%、フェニル基の比率は21モル%であり、エポキシ等量は723g/eq.であることを確認した。
【0128】
なお、ポリマーDの分子量、エポキシ当量は、合成例1と同様にして求めた。
【0129】
(合成例5)
1000mLの温度計、滴下装置及び攪拌機付セパラブルフラスコに、ジメチルジメトキシシランを254g、ジフェニルジメトキシシシランを106g、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランを111g入れ、50℃で攪拌した。その中に水酸化カリウム0.8gと水116gからなる水溶液をゆっくりと滴下し、滴下し終わってから50℃で6時間攪拌した。その中に、酢酸0.9gを入れ、減圧下で揮発成分を除去し、酢酸カリウムをろ過してポリマーEを得た。
【0130】
ポリマーEの分子量はMn=1600であり、29Si−NMRより
(MeSiO2/20.70(PhSiO2/20.15(EpSiO3/20.15
であり、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル基の比率は17モル%、フェニル基の比率は21モル%であり、エポキシ等量は742g/eq.であることを確認した。
【0131】
なお、ポリマーEの分子量、エポキシ当量は、合成例1と同様にして求めた。
【0132】
(実施例1)
上記ポリマーC100gと、酸無水物(4−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸/ヘキサヒドロ無水フタル酸=70/30、新日本理科社製、品番:リカシッドMH−700G)20gと、硬化促進剤(1、8―ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセンー7のオクチル酸塩、サンアプロ社製、品番:U−CAT SA 102)0.3gと、酸化防止剤(クラリアント社製、商品名:サンドスタブ P−EPQ)0.1gと、酸化チタン(ルチル型酸化チタン、石原産業社製、品番:CR−90)200gとを混合機に投入し、混合した後脱泡し、光半導体装置用反射型ダイボンド材を得た。
【0133】
(実施例2)
上記ポリマーC100gと、酸無水物(4−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸/ヘキサヒドロ無水フタル酸=70/30、新日本理科社製、品番:リカシッドMH−700G)20gと、硬化促進剤(1、8―ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセンー7のオクチル酸塩、サンアプロ社製、品番:U−CAT SA 102)0.3gと、酸化防止剤(クラリアント社製、商品名:サンドスタブ P−EPQ)0.1gと、酸化チタン(ルチル型酸化チタン、石原産業社製、品番:CR−50)200gとを混合機に投入し、混合した後脱泡し、光半導体装置用反射型ダイボンド材を得た。
【0134】
(実施例3)
上記ポリマーC100gと、酸無水物(4−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸/ヘキサヒドロ無水フタル酸=70/30、新日本理科社製、品番:リカシッドMH−700G)20gと、硬化促進剤(1、8―ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセンー7のオクチル酸塩、サンアプロ社製、品番:U−CAT SA 102)0.3gと、酸化防止剤(クラリアント社製、商品名:サンドスタブ P−EPQ)0.1gと、酸化チタン(ルチル型酸化チタン、石原産業社製、品番:CR−97)200gとを混合機に投入し、混合した後脱泡し、光半導体装置用反射型ダイボンド材を得た。
【0135】
(実施例4)
上記ポリマーC100gと、酸無水物(4−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸/ヘキサヒドロ無水フタル酸=70/30、新日本理科社製、品番:リカシッドMH−700G)20gと、硬化促進剤(1、8―ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセンー7のオクチル酸塩、サンアプロ社製、品番:U−CAT SA 102)0.3gと、酸化防止剤(クラリアント社製、商品名:サンドスタブ P−EPQ)0.1gと、酸化チタン(ルチル型酸化チタン、石原産業社製、品番:CR−90−2)200gとを混合機に投入し、混合した後脱泡し、光半導体装置用反射型ダイボンド材を得た。
【0136】
(実施例5)
上記ポリマーC100gと、酸無水物(4−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸/ヘキサヒドロ無水フタル酸=70/30、新日本理科社製、品番:リカシッドMH−700G)20gと、硬化促進剤(1、8―ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセンー7のオクチル酸塩、サンアプロ社製、品番:U−CAT SA 102)0.3gと、酸化防止剤(クラリアント社製、商品名:サンドスタブ P−EPQ)0.1gと、酸化チタン(ルチル型酸化チタン、石原産業社製、品番:CR−50−2)200gとを混合機に投入し、混合した後脱泡し、光半導体装置用反射型ダイボンド材を得た。
【0137】
(実施例6)
上記ポリマーC100gと、酸無水物(4−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸/ヘキサヒドロ無水フタル酸=70/30、新日本理科社製、品番:リカシッドMH−700G)20gと、硬化促進剤(1、8―ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセンー7のオクチル酸塩、サンアプロ社製、品番:U−CAT SA 102)0.3gと、酸化防止剤(クラリアント社製、商品名:サンドスタブ P−EPQ)0.1gと、酸化チタン(ルチル型酸化チタン、チタン工業社製、品番:KR−270)200gとを混合機に投入し、混合した後脱泡し、光半導体装置用反射型ダイボンド材を得た。
【0138】
(実施例7)
上記ポリマーA100gと、酸無水物(4−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸/ヘキサヒドロ無水フタル酸=70/30、新日本理科社製、品番:リカシッドMH−700G)20gと、硬化促進剤(1、8―ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセンー7のオクチル酸塩、サンアプロ社製、品番:U−CAT SA 102)0.3gと、酸化防止剤(クラリアント社製、商品名:サンドスタブ P−EPQ)0.1gと、酸化チタン(ルチル型酸化チタン、石原産業社製、品番:CR−97)200gとを混合機に投入し、混合した後脱泡し、光半導体装置用反射型ダイボンド材を得た。
【0139】
(実施例8)
上記ポリマーB100gと、酸無水物(4−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸/ヘキサヒドロ無水フタル酸=70/30、新日本理科社製、品番:リカシッドMH−700G)20gと、硬化促進剤(1、8―ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセンー7のオクチル酸塩、サンアプロ社製、品番:U−CAT SA 102)0.3gと、酸化防止剤(クラリアント社製、商品名:サンドスタブ P−EPQ)0.1gと、酸化チタン(ルチル型酸化チタン、石原産業社製、品番:CR−97)200gとを混合機に投入し、混合した後脱泡し、光半導体装置用反射型ダイボンド材を得た。
【0140】
(実施例9)
上記ポリマーD100gと、酸無水物(4−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸/ヘキサヒドロ無水フタル酸=70/30、新日本理科社製、品番:リカシッドMH−700G)20gと、硬化促進剤(1、8―ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセンー7のオクチル酸塩、サンアプロ社製、品番:U−CAT SA 102)0.3gと、酸化防止剤(クラリアント社製、商品名:サンドスタブ P−EPQ)0.1gと、酸化チタン(ルチル型酸化チタン、石原産業社製、品番:CR−97)200gとを混合機に投入し、混合した後脱泡し、光半導体装置用反射型ダイボンド材を得た。
【0141】
(実施例10)
上記ポリマーE100gと、酸無水物(4−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸/ヘキサヒドロ無水フタル酸=70/30、新日本理科社製、品番:リカシッドMH−700G)20gと、硬化促進剤(1、8―ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセンー7のオクチル酸塩、サンアプロ社製、品番:U−CAT SA 102)0.3gと、酸化防止剤(クラリアント社製、商品名:サンドスタブ P−EPQ)0.1gと、酸化チタン(ルチル型酸化チタン、石原産業社製、品番:CR−97)200gとを混合機に投入し、混合した後脱泡し、光半導体装置用反射型ダイボンド材を得た。
【0142】
(比較例1)
上記ポリマーC100gと、酸無水物(4−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸/ヘキサヒドロ無水フタル酸=70/30、新日本理科社製、品番:リカシッドMH−700G)20gと、硬化促進剤(1、8―ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセンー7のオクチル
酸塩、サンアプロ社製、品番:U−CAT SA 102)0.3gと、酸化防止剤(クラリアント社製、商品名:サンドスタブ P−EPQ)0.1gと、酸化チタン(アナタース型、シーアイ化成社製、品番:NanoTekTiO2)200gとを混合機に投入し、混合した後脱泡し、光半導体装置用反射型ダイボンド材を得た。
【0143】
(比較例2)
エポキシ樹脂(東都化成社製、品番:YD−127)100gと、酸無水物(4−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸/ヘキサヒドロ無水フタル酸=70/30、新日本理科社製、品番:リカシッドMH−700G)20gと、硬化促進剤(1、8―ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセンー7のオクチル酸塩、サンアプロ社製、品番:U−CAT SA 102)0.3gと、酸化防止剤(クラリアント社製、商品名:サンドスタブ P−EPQ)0.1gと、酸化チタン(ルチル型酸化チタン、石原産業社製、品番:CR−97)200gとを混合機に投入し、混合した後脱泡し、光半導体装置用反射型ダイボンド材を得た。
【0144】
(使用した酸化チタン)
実施例及び比較例で用いた酸化チタンの評価を表1に示す。
【0145】
【表1】

【0146】
(実施例及び比較例の評価)
(1)初期反射率
実施例及び比較例で得られた各光半導体装置用反射型ダイボンド材を150℃及び3時間の加熱条件で硬化させ、50mm×50mm×厚さ100μmの硬化物を得、該硬化物を評価サンプルとした。この評価サンプルについて、色彩・色差計(コニカミノルタ社製、品番:CR−400)を用い、Y値を測定した。
【0147】
(2)150℃×1500時間の耐熱性
上記(1)初期反射率で得られた評価サンプルを送風定温恒湿器(YAMATO社製、品番:DKM−600)を用い、150℃の温度に1500時間維持する熱処理を行った。熱処理後に、(1)初期反射率の評価で用いた色彩・色差計を用い、評価サンプルのY値を測定した。下記の式(8)で求められる評価サンプルのΔY1を求めた。ΔY1が2.0%以下の場合を◎、2.0%を超え、3.0%以下の場合を○、3.0%を超え、4.0%以下の場合を△、4.0%を超えるものを×とした。結果を下記の表2及び表3に示す。
【0148】
ΔY1=(熱処理される前の評価サンプルのY−150℃1500hの熱処理された後の評価サンプルのY)/(熱処理される前の評価サンプルのY)×100% ・・・(式8)
【0149】
(3)150℃×3000時間の耐熱性
上記(1)初期反射率で得られた評価サンプルを送風定温恒湿器(YAMATO社製、品番:DKM−600)を用い、150℃の温度に3000時間維持する熱処理を行った。熱処理後に、(1)初期反射率の評価で用いた色彩・色差計を用い、評価サンプルのY値を測定した。下記の式(9)で求められる評価サンプルのΔY2を求めた。ΔY2が2.0%以下の場合を◎、2.0%を超え、3.0%以下の場合を○、3.0%を超え、4.0%以下の場合を△、4.0%を超えるものを×とした。結果を下記の表2及び表3に示す。
【0150】
ΔY2=(熱処理される前の評価サンプルのY−150℃3000hの熱処理された後の評価サンプルのY)/(熱処理される前の評価サンプルのY)×100% ・・・(式9)
【0151】
(4)せん断競接着力
実施例及び比較例で得られた光半導体装置用反射型ダイボンド材を3mm×3mmのシリコーンウエハと、銀メッキが施された銅板(TP技研社製、品番:C1100P)との間に厚さ50μmとなるように介在させた積層体を用意し、該積層体を150℃で3時間加熱し、反射型ダイボンド材を加熱により硬化させた。次に、ダイシェア強度測定装置(アークテック社製、品番:DAGE 4000)により、接触工具を用いてシリコーンウエハに積層方向と直交する方向である横方向に力を加え、銀メッキ銅板からシリコーンウエハが剥がれる時の強度を測定し、該強度をせん断接着力とした。結果を表2及び表3に示す。
【0152】
【表2】

【0153】
【表3】

【符号の説明】
【0154】
1…光半導体装置
2…ハウジング
3…発光素子
4…リード電極
5…光半導体装置用反射型ダイボンド材
6…ボンディングワイヤ
7… 封止剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子内に環状エーテル含有基を有するシリコーン樹脂と、結晶構造がルチル型の酸化チタンと、環状エーテル含有基と反応可能な熱硬化剤とを含む、光半導体装置用反射型ダイボンド材。
【請求項2】
前記酸化チタンが、該酸化チタン5gを純粋100mlに加えた液を加熱し、5分間沸騰させた後、23℃に達するまで静置し、沸騰処理液を得、得られた沸騰処理液に、沸騰により蒸発した水量の水を加えて水量を100mlとしたときの液のpHが6.2以上、11以下の値を示す酸化チタンである、請求項1に記載の光半導体装置用反射型ダイボンド材。
【請求項3】
前記酸化チタンが、塩基性金属酸化物及び塩基性金属水酸化物のうち少なくとも1種により被覆されている、請求項1または2に記載の光半導体装置用反射型ダイボンド材。
【請求項4】
前記塩基性金属酸化物及び塩基性金属水酸化物を構成している金属元素が、マグネシウム、ジルコニウム、セリウム、ストロンチウム、アンチモン、バリウム及びカルシウムからなる群から選択された少なくとも一種である、請求項3に記載の光半導体装置用反射型ダイボンド材。
【請求項5】
前記酸化チタンが、酸化ジルコニウム及び酸化珪素のうち少なくとも一方を含む被覆材料により被覆されている、請求項1または2に記載の光半導体装置用反射型ダイボンド材。
【請求項6】
分子内に環状エーテル含有基を有するシリコーン樹脂は、平均組成式が下記一般式(1)で表される樹脂成分を含有し、かつ前記環状エーテル含有基の含有量が0.1モル%〜50モル%の範囲にある、請求項1〜5のいずれか1項に記載の光半導体装置用反射型ダイボンド材。
【化1】

一般式(1)中、a、b、及びcは、それぞれa/(a+b+c)=0〜0.3、b/(a+b+c)=0.3〜1.0、c/(a+b+c)=0〜0.5、を満たし、R〜Rは、少なくとも1個が環状エーテル含有基を表し、前記環状エーテル含有基以外のR〜Rは、直鎖状若しくは分岐状の炭素数1〜8の炭化水素或いはそのフッ素化物を表し、これらは、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の光半導体装置用反射型ダイボンド材を用いて光半導体素子が接合されている光半導体装置。

【図1】
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【公開番号】特開2011−74201(P2011−74201A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−226765(P2009−226765)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】