説明

光反射シート

【課題】石油資源由来の樹脂を使用することなく、優れた光反射性を有する光反射シートを提供する。
【解決手段】本発明に係る光反射シートは、ポリ乳酸樹脂、酸化チタン、及び酸化チタン以外の無機フィラーを含有すると共に前記酸化チタンの含有量が5〜15質量%、前記無機フィラーの含有量が10〜30質量%である熱可塑性樹脂材料から押出成形により形成される。このため、ポリ乳酸樹脂という非石油系樹脂を用いて光反射シートを作製することができ、しかもこの光反射シートは優れた光反射性を有すると共に、充分な剛性をも有するようになる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源からの光を反射する光反射シートに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光源からの光を反射して出射光量を増大させるための光反射シートは、例えば液晶表示装置や照明装置などの種々の分野で使用されている。このように光反射シートを使用することで、光源からの発光光量を増大させることなく出射光量を増大し、省電力化や光源からの発熱量の抑制などを図っている。
【0003】
このような光反射シートとしては、従来、例えば特許文献1に開示されているようなものが提案されている。この特許文献1には、ポリプロピレン樹脂と、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化チタン等の無機充填材とを含む樹脂組成物に延伸助剤を配合し、これをシート状に成形した後、延伸することで、多孔性樹脂シートからなる光反射体を得ることが開示されている。
【0004】
しかし、消費電力の抑制や光源からの発熱量の抑制などのためには、光反射シートに更なる光反射性の向上が求められている。
【0005】
また、光反射シートは従来、ポリプロピレン等の石油資源由来の樹脂から作製されているため、環境に対する負荷が問題となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−174213号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、石油資源由来の樹脂を使用することなく、優れた光反射性を有する光反射シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る光反射シートは、ポリ乳酸樹脂、酸化チタン、及び酸化チタン以外の無機フィラーを含有すると共に前記酸化チタンの含有量が5〜15質量%、前記無機フィラーの含有量が10〜30質量%である熱可塑性樹脂材料から押出成形により形成されることを特徴とする。
【0009】
このため、ポリ乳酸樹脂という非石油系樹脂を用いて光反射シートを作製することができ、しかもこの光反射シートは優れた光反射性を有すると共に、充分な剛性をも有するようになって変形が抑制される。
【0010】
本発明においては、前記熱可塑性樹脂材料が、酸化防止剤を含有することが好ましい。この場合、光反射シートが光と熱に曝された際の、光反射シートの変色を抑制することができる。
【0011】
また、本発明においては、光反射シートの光反射率が90%以上であることが好ましい。この光反射率は、光反射シートに波長550nmの光を照射した場合の前記光の反射率の測定値である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、光反射シートに優れた光反射性を付与することができて、光源から照射された光を光反射シートで反射する際に光源の発光強度を抑制しつつ反射光の強度を向上することができて省エネルギー化を達成することができ、しかも非石油系の樹脂であるポリ乳酸から形成されることから、石油資源の使用を削減することができ、環境保護問題の解決に寄与することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。
【0014】
本実施形態に係る光反射シートは、ポリ乳酸樹脂、酸化チタン、及び酸化チタン以外の無機フィラーを含有する熱可塑性樹脂材料から形成される。
【0015】
ポリ乳酸は、その重量平均分子量が6万〜10万の範囲にあることが好ましいが、これに限定されるものではない。尚、前記重量平均分子量は、溶媒(移動相)としてクロロホルムを用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより求められる、標準ポリスチレン換算の重量平均分子量である。
【0016】
酸化チタンは、その平均粒子径が0.6μm以下であることが好ましいが、これに限定されるものではない。尚、この平均粒径は、レーザー回折・散乱式粒度分析計(日機装株式会社製のマイクロトラックMT3000IIシリーズなど)などを用いたレーザー回折散乱法により測定される値である。熱可塑性樹脂材料中の酸化チタンの含有量は、5〜15質量%の範囲とする。このように酸化チタンの含有量を5質量%以上とすることで、光反射シートに非常に優れた光反射性を付与することができ、この含有量が5質量%未満であれば光反射シートに充分な光反射性が付与されなくなってしまう。また、この含有量が15質量%以下であれば、光反射シートに非常に優れた光反射性を付与することができる。一方、この含有量が15質量%より多くなると、光反射シートの光反射性の向上が頭打ちになって、不必要な酸化チタンを使用することによる製造コストの増大を招くと共に、光反射シートの比重が増大してこの光反射シートが設けられた装置の軽量化を阻害してしまい、また、光反射シートが脆くなって衝撃により割れ等の破損が生じやすくなるおそれがある。
【0017】
また、酸化チタン以外の無機フィラーとしては、例えば炭酸カルシウム、硫酸バリウム等の粒子が挙げられる。光反射シートの光反射性を阻害しないようにするためには、前記無機フィラーの白色度が90%以上であることが好ましい。
【0018】
熱可塑性樹脂材料中の前記無機フィラーの含有量は10〜40質量%の範囲とする。この含有量が10質量%以上であることで、剛性の高い光反射シートを得ることができ、この含有量が10質量%に満たないと光反射シートの剛性が充分ではなくなる。また、この含有量が40質量%以下であることで、熱可塑性樹脂材料の高い成形性を確保することができ、この含有量が40質量%を超えると成形性が悪化して、押出成形などで光反射シートを形成することが困難になってしまう。
【0019】
また、熱可塑性樹脂材料中には酸化防止剤を含有させることが好ましい。酸化防止剤としては、例えば日本チバガイギー株式会社製のイルガノックス1010(2,2−ビス[[[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル]オキシ]メチル]プロパン−1,3−ジオール1,3−ビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオナート])など、適宜のものを使用することができる。酸化防止剤を含有する熱可塑性樹脂材料から光反射シートを形成することで、この光反射シートが光源からの光や熱に曝された場合の変色を低減することができ、長期に亘って優れた光反射性を維持することができるようになる。熱可塑性樹脂材料中の酸化防止剤の含有量は、ポリ乳酸100質量部に対して0.1〜1.0質量部の範囲であることが好ましい。
【0020】
また、熱可塑性樹脂材料中には、上記のような成分のほか、本発明の目的に反しない範囲で、結晶核剤、光安定剤、熱安定剤、滑剤、分散剤、紫外線吸収剤、蛍光増白剤等の他の添加剤を含有させてもよい。
【0021】
熱可塑性樹脂材料は、上記のような成分を配合し、適宜の手法で混合することで調製される。これらの成分を混合する方法としては、リボンブレンダー、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、タンブラーミキサー等を用いて混合する方法が挙げられる。また、これらの成分を混合した後、ルーダーを用いて混練、溶融押出して溶融ストランドを形成し、これを冷却した後、切断してペレット状にしてもよい。
【0022】
熱可塑性樹脂材料を光反射シートに成形する方法としては、押出成形法が採用される。このため、光反射シートの薄肉化が可能となるってコストダウンを図ることができると共に、大面積の光反射シートを得ることが可能となって光反射シートの使用用途が広がるようになる。
【0023】
この光反射シートの厚みは適宜設定されるが、特に0.5〜3mmの範囲であることが好ましい。この厚みが0.5mmに満たないと光反射シートが光を透過させやすくなって光反射性が低下するおそれがあり、またこの厚みが3mmより大きくなるとコストアップや光反射シートの重量の増大化を招くおそれがある。
【0024】
このようにして得られる光反射シートは、ポリ乳酸からなるマトリックス内に、酸化チタンと無機フィラーとが分散した構造を有している。この光反射シートは優れた光反射性を発揮し、光反射率が90%以上の光反射シートを得ることが可能となる。
【実施例】
【0025】
以下、本発明の具体的な実施例を提示することで、本発明を更に詳述する。
【0026】
[実施例1乃至6、比較例1〜4]
(熱可塑性樹脂材料の調製)
各実施例及び比較例につき、表1に示す各成分から熱可塑性樹脂材料を調製した。
【0027】
表1に示されるポリ乳酸はネイチャー・ワークス社(米国)製の品番3001D、酸化チタンはTioxide社(英国)製の品番RTC−30、炭酸カルシウムは林化成株式会社製の商品名タルカンパウダーPKT、酸化防止剤は日本チバガイギー株式会社製の商品名イルガノックス1010、沈降性硫酸バリウムは堺化学工業株式会社製の品番#300、結晶核剤は日産化学工業株式会社製の商品名エコプロモートである。
【0028】
熱可塑性樹脂材料の調製時には、まずポリ乳酸に予め乾燥処理を施した上で、各成分を配合し、タンブラーミキサーで10分間混合した。得られた混合物をルーダーに通して溶融ストランドを得た。このルーダーの温度はダイス付近で200℃、投入口付近で190℃とした。この溶融ストランドを速やかに冷却槽で冷却した後、カッターで2〜4mm毎に切断し、ペレット状の熱可塑性樹脂材料を得た。
【0029】
この熱可塑性樹脂材料を2軸同方向押出混合機で、ダイス付近の温度を190℃、投入口付近の温度を170℃として、シート状に成形し、これをシーティングロールで冷却・固化することで、厚み1mmの光反射シートを得た。
【0030】
但し、比較例2においては熱可塑性樹脂材料の加熱時の流動性が悪く、成形が困難であり、光反射シートを得ることはできなかった。
【0031】
[光反射性評価]
各実施例及び比較例(比較例2を除く)につき、押出成形により得られた光反射シートから、平面視60mm×60mmの正方形状のテストピースを切り出した。このテストピースについて、JIS K7105に規定される測定法Bに準拠して、分光光度計(株式会社日立製作所製、型番U−4300)を用い、550nmの波長の光の反射率を測定した。測定位置はテストピースの中央部とした。各テストピースについて反射率を5回測定し、その最大値と最小値の中間値を最終的な測定値とした。
【0032】
[曲げ弾性評価]
各実施例及び比較例における熱可塑性樹脂材料を除湿乾燥機で120℃で4時間加熱することで乾燥処理を施した後、これを100トン射出成形機で、シリンダー温度をヘッド付近で200℃、材料投入口付近で180℃とし、金型温度を110℃、冷却時間を40秒として、射出成形することで、ISO527に規定されるテストピースを作製した。但し、比較例2においては熱可塑性樹脂材料の加熱時の流動性が悪く、成形が困難であり、テストピースを得ることはできなかった。
【0033】
このテストピースの曲げ弾性率をISO178に従って測定した。
【0034】
[耐熱耐光変色評価]
各実施例及び比較例(比較例2を除く)につき、押出成形により得られた光反射シートから、平面視60mm×60mmの正方形状のテストピースを切り出した。このテストピースに対して、70℃の雰囲気下でUV光を168時間照射した。この処理の前後のテストピース間の色差を色差光度計で測定した。
【0035】
以上の結果を表1に併せて示す。
【0036】
【表1】

【0037】
表1に示されるとおり、実施例1〜6では光反射性に優れ、曲げ弾性率が高く、且つ耐熱耐変色性に優れた光反射シートが得られた。尚、比較例4では、酸化チタンの含有量を20質量%まで増大させたものであるが、光反射性の向上が飽和してしまっており、また酸化チタンの含有量が多いことで製造コストが増大すると共に光反射シートの重量が増大してしまうものであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ乳酸樹脂、酸化チタン、及び酸化チタン以外の無機フィラーを含有すると共に前記酸化チタンの含有量が5〜15質量%、前記無機フィラーの含有量が10〜30質量%である熱可塑性樹脂材料から押出成形により形成されることを特徴とする光反射シート。
【請求項2】
前記熱可塑性樹脂材料が、酸化防止剤を含有することを特徴とする請求項1に記載の光反射シート。
【請求項3】
光反射率が90%以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の光反射シート。

【公開番号】特開2011−75903(P2011−75903A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−228262(P2009−228262)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】