説明

光反応性有機高分子ゲート絶縁膜組成物及びこれを利用した有機薄膜トランジスタ

【課題】有機高分子組成物に微細パターンが可能な光架橋の特性を付与しながら電気的特性を向上させることができる有機高分子ゲート絶縁膜組成物を提供する。
【解決手段】本発明による光反応性有機高分子ゲート絶縁膜組成物は、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルフェノール、及びこれらの共重合体よりなる群から選択された絶縁性有機高分子と、二重結合を2つ以上含む架橋用単量体と、光開始剤とを含み、有機薄膜トランジスタは、上記組成物で形成されたセミ相互侵入高分子網目(semi-interpenetrating polymer network)ゲート絶縁膜を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光反応性有機高分子ゲート絶縁膜組成物及びこれを利用した有機薄膜トランジスタに関し、より詳細には、微細パターンが可能な光反応性有機高分子ゲート絶縁膜組成物及びこれを利用した有機薄膜トランジスタに関する。
【背景技術】
【0002】
有機材料を利用した有機薄膜トランジスタは、材料の多様な合成方法、成形及び加工の容易性、柔軟性、低価の生産費などの長所を有するので、新しい電気電子素材として機能性電子素子及び光素子など、広範囲な分野で活発な研究がなされている。
【0003】
現在、有機薄膜トランジスタは、プラスチック基盤型の能動型有機電気発光素子の駆動素子、スマートカード、インベントリタグ(inventory tag)用プラスチックチップに高い活用度が予想されるので、世界有数の企業体と研究所、大学などで研究されている。このような有機薄膜トランジスタの性能は、電界移動度、点滅比、移動度、サブスレショルドスロープ(subthreshold slope)などとして評価している。また、上記有機薄膜トランジスタの性能は、有機活性膜の結晶化度、有機絶縁膜と有機活性膜界面の電荷特性、有機絶縁膜の薄膜特性、ソース/ドレイン電極と有機活性膜界面のキャリア注入能力などに影響を受ける。このような特性を改善するために、多様な方法が試みされている。
【0004】
有機薄膜トランジスタのゲート絶縁膜として使われるためには、電気伝導率(electrical conductivity)が低く、且つ耐電率(breakdown field)特性の高い素材が要求される。現在、有機薄膜トランジスタのゲート絶縁膜としてシリコン酸化膜を使用しているが、無機絶縁膜の場合、膜形成温度が高温なので、有機薄膜トランジスタに適用される場合、使用された基板(特に、プラスチック基板)及び前工程で基板上に形成された他の膜質(以下、“先工程膜”という)の物理的/化学的性質に影響を及ぼし、トランジスタの特性に影響を及ぼすことができる。したがって、低温工程が可能で、先工程膜に影響を最小化することができる新しい有機ゲート絶縁膜に関する研究が活発に進行中にある。
【0005】
【特許文献1】大韓民国特許登録第10-0606655号
【特許文献2】大韓民国特許登録第10-0668407号
【特許文献3】大韓民国特許登録第10-0572854号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
現在使用されている有機絶縁膜としては、ポリイミド(大韓民国特許公開第2003−0016981号)、ポリビニルアルコール(大韓民国特許公開第2002−0084427号)、ポリ(ビニルフェノール−マレイミド)(大韓民国特許公開第2004−0028010号)、フォトアクリルなどが挙げられるが、既存の無機絶縁膜を代替する程度の素子特性を示したものではない。したがって、高効率の有機薄膜トランジスタを具現するためには、有機活性膜素材の開発だけでなく、基板及び先工程膜に影響を及ぼさなく、且つ単純化された工程で薄膜形成が可能な素子特性に優れる有機ゲート絶縁膜の開発が切実に求められる。
【0007】
ここに、本発明者らは、有機薄膜トランジスタを高効率で具現するための有機高分子ゲート絶縁膜に対する研究を進行しながら、ゲート絶縁膜素材としてポリメチルメタクリレート、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルフェノール、またはこれらの共重合体のような絶縁特性に優れる高分子、2つ以上の二重結合を有する架橋用単量体、光開始剤、そして熱開始剤を適正な溶媒に溶解した混合組成物を利用すれば、微細パターンが可能で、電気的特性を進めることができるセミ相互侵入高分子網目からなる薄膜を形成することができ、これを有機薄膜トランジスタに利用する場合、素子特性を向上させることを知見し、これを基盤にして本発明を完成した。
【0008】
したがって、本発明の目的は、有機高分子組成物に微細パターンが可能な光架橋の特性を付与しながら電気的特性を向上させることができる有機高分子ゲート絶縁膜組成物を提供することにある。
【0009】
本発明の他の目的は、上記有機高分子ゲート絶縁膜を含めて、素子の特性を向上させた有機薄膜トランジスタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、本発明は、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルフェノール、及びこれらの共重合体よりなる群から一種以上選択された絶縁性有機高分子と、2つ以上の二重結合を有する架橋用単量体と、光開始剤とを含む有機高分子ゲート絶縁膜組成物を提供する。
【0011】
上記の他の目的を達成するために、本発明は、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルフェノール、及びこれらの共重合体よりなる群から一種以上選択された絶縁性有機高分子と、2つ以上の二重結合を有する架橋用単量体及び光開始剤を含む有機高分子ゲート絶縁膜組成物を溶媒中に溶解させて形成した有機高分子ゲート絶縁膜とを含む有機薄膜トランジスタを提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明による光反応性有機高分子ゲート絶縁膜組成物及びこれを利用した有機薄膜トランジスタは、次のような効果を有する。
【0013】
第一に、本発明による光反応性有機高分子ゲート絶縁膜組成物は、光リソグラフィ工程が可能な高分子膜を形成する。
【0014】
第二に、本発明による光反応性有機高分子ゲート絶縁膜組成物は、低温光リソグラフィ工程で微細パターン化され、先工程膜に及ぶ影響を最小化する。
【0015】
第三に、本発明による有機薄膜トランジスタは、光反応性有機高分子ゲート絶縁膜を適用することによって、先工程膜の選択性を高めることができ、したがって、その構造が多様化されることができる。
【0016】
第四に、本発明による光反応性有機高分子ゲート絶縁膜組成物は、湿式工程を利用して形成するので、大面積の基板上に有機薄膜トランジスタを製造することが良好である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の一側面によれば、本発明は、絶縁性有機高分子、2つ以上の二重結合を有する架橋用単量体及び光開始剤を含む光反応性有機高分子ゲート絶縁膜組成物を提供する。
【0018】
上記絶縁性有機高分子は、下記化学式1乃至4で表示されるポリメチルメタクリレート、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルフェノール、またはこれらの共重合体から一種以上選択されることが好ましい。
【0019】
【化1】

【0020】
【化2】

【0021】
【化3】

【0022】
【化4】

【0023】
上記式中、上記高分子の重合度は、使用目的または用途によって決定されることができ、少なくとも重合度50以上であり、好ましくは、重合度100乃至1000である。
【0024】
上記共重合体としては、これらに限定されるわけではないが、ポリ(メチルメタクリレート−ランダム−ビニルアルコール)、ポリ(メチルメタクリレート−ランダム−ビニルピロリドン)、ポリ(メチルメタクリレート−ランダム−ビニルフェノール)、ポリ(ビニルアルコール−ランダム−ビニルピロリドン)、及びポリ(ビニルピロリドン−ランダム−ビニルフェノール)を含み、これらの共重合の割合は、1/99から99/1まで可能である。
【0025】
上記絶縁性有機高分子は、組成物の全体重量に基礎して1重量%以上含むことができ、好ましくは、5乃至50重量%含まれる。
【0026】
上記2つ以上の二重結合を有する架橋用単量体としては、下記の化学式5乃至8で表示されるものから選択されることが好ましい:
【0027】
【化5】

【0028】
【化6】

【0029】
【化7】

【0030】
【化8】

【0031】
上記式中、
【0032】
【化9】

【0033】
であり、
R″は、−H、−CH、−CHCHなどである。
【0034】
上記2つ以上の二重結合を有する架橋用単量体として、より好ましくは、下記式のペンタエリスリトールテトラアクリレート、またはジペンタエリスリトールヘキサアクリレートである:
【0035】
【化10】

【0036】
【化11】

【0037】
上記架橋用単量体は、組成物の全体重量に対して1%以上含むことができ、好ましくは、5乃至50重量%含まれる。組成物の全体重量に対して1%以上含まれる場合、微細パターンが可能で、耐化学性と耐熱性に優れるセミ相互侵入高分子網目ゲート絶縁膜を形成することができる。
【0038】
上記光開始剤物質は、組成物の全体重量に対して0.1%以上添加されると、光反応が進行されることができ、好ましくは、0.25乃至3.5重量%含まれる。
【0039】
上記ゲート絶縁膜組成物において、架橋用単量体及び光開始剤を特定の含量で含む場合、残りは、絶縁性有機高分子で満たされることが好ましい。
【0040】
上記ゲート絶縁膜組成物には、熱開始剤をさらに含めることができ、熱開始剤は、組成物100重量%に対して0.1重量部以上添加されなければならないし、好ましくは、0.25乃至3.5重量部含まれる。
【0041】
上記絶縁性有機高分子、架橋用単量体、光開始剤、または/及び熱開始剤は、溶媒、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(propylene glycol monomethyl ether acetate)中に1重量%以上の濃度で溶解させて使用されることができる。上記溶媒としては、この分野に一般的に使われる有機溶媒を使用することができ、上記高分子の濃度が1重量%以上になる場合、コーティング特性及び薄膜厚さが確保される。
【0042】
上記絶縁性有機高分子を単独重合体としてゲート絶縁膜に使用することができるが、有機絶縁膜の物理的、化学的、及び電気的特性を考慮して、他の絶縁特性に優れる単独重合体高分子と物理的にブレンド化して使用されることもできる。
【0043】
本発明による光反応性有機高分子ゲート絶縁膜組成物は、光反応性物質を使用して微細パターン可能な光特性を付与しながら、パターニング以後に熱開始剤に残存する二重結合の追加的な架橋を通じて漏洩電流を低減することによって、電気的特性をさらに向上させることができる。
【0044】
光開始剤及び熱開始剤物質については、組成物の使用目的、用途、構成要素の種類、及び量などによって適切な量を決定することができる。
【0045】
上記使用される光開始剤物質は、可視光線波長の光により活性化される物質であって、次のような物質の中から選択されることが好ましい:
【0046】
2、6−ビス(4−アジドベンジリデン(azidobenzylidene))シクロヘキサノン;
2−6−ビス(4−アジドベンジリデン)−4−メチルシクロヘキサノン;
4、4−ジアジドスチルベン(diazidostilbene)−2、2’−ジスルホン酸ジソジウム塩;
アンモニウムジクロメート;
1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−ペンチル−キトン(イルガキュア(Irgacure)907);
2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−ワン(イルガキュア184C);
2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−ワン(ダロキュア(Darocur)1173)、
イルガキュア184C 50重量%とベンゾフェノン50重量%の混合開始剤(イルガキュア500);
イルガキュア184C 20重量%とダロキュア1173 80重量%の混合開始剤(イルガキュア1000);
2−ヒドロキシ−1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−メチル−1−プロパノン(イルガキュア2959);
メチルベンゾイルホルマート(ダロキュアMBF);
アルファ、アルファ−ジメトキシ−アルファ−フェニルアセトフェノン(イルガキュア651);
2−ベンジル−2−(ジメチルアミノ)−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン(イルガキュア369);
イルガキュア369 30重量%とイルガキュア651 70重量%の混合開始剤(イルガキュア1300);
ジフェニル(2、4、6−トリメチルベンゾイル)−ホスフィンオキサイド(ダロキュアTPO);
ダロキュアTPO 50重量%とダロキュア1173 50重量%の混合開始剤(ダロキュア4265);
ホスフィンオキサイド;
フェニルビス(2、4、6−トリメチルベンゾイル)(イルガキュア819);
イルガキュア819 5重量%とダロキュア1173 95重量%の混合開始剤(イルガキュア2005);
イルガキュア819 10重量%とダロキュア1173 90重量%の混合開始剤(イルガキュア2010);
イルガキュア819 20重量%とダロキュア1173 80重量%の混合開始剤(イルガキュア2020);
ビス(エタ5−2、4−シクロペンタジエン−1−イル)ビス[2、6−ジフルオル−3−(1H−ピロール−1−イル)フェニル]チタニウム(イルガキュア784);
【0047】
ベンゾフェノンが含有された混合開始剤(HSP 188);及びこれらの誘導体。
【0048】
上記使用される熱開始剤物質は、熱により活性化される物質であって、次のような物質の中から選択されることが好ましく、特に2次ベーキング時にラジカルが生成されることができる高温ラジカル開始剤がさらに好ましい。
【0049】
ベンゾイルパーオキサイド(Benzoyl peroxide、BP);
アセチルパーオキサイド(Acetyl peroxide、AP);
ジアウリルパーオキサイド(Diauryl peroxide、DP);
ジ−ターシャリー−ブチルパーオキサイド(di-tert-butyl peroxide、t−BTP);
クミルハイドロパーオキサイド(Cumyl hydroperoxide、CHP);
ハイドロジョンパーオキサイド(Hydrogen peroxide、HP);
ポタシウムパーオキサイド(Potassium peroxide、PP);
2、2’−アゾビスイソブチロニトリル(2、2’−Azobisisobutyronitrile、AIBN);
アゾ化合物開始剤(Azo compound);
アルキル銀(Silver alkyls)
【0050】
有機薄膜トランジスタは、基板、ゲート電極、ゲート絶縁膜、有機活性膜、及びソース−ドレイン電極が順次に積層されているか、または基板、ゲート電極、ゲート絶縁膜、ソース−ドレイン電極、及び有機活性膜が順次に積層されている構造であり、これらに限定されずに、他の構造でも適用可能である。
【0051】
上記基板としては、この分野において一般的に使用されるものが利用され、例えば、ガラス、シリコンウェーハ、プラスチックなどが使用されることができるが、これらに限定されるわけではない。
【0052】
また、上記ゲート電極は、上記基板上にこの分野において通常的に使用される方法、例えばE−ビーム法などを用いてシャドウーマスクを利用して形成され、上記ゲート電極としては、この分野において通常的に使用される金属を利用することができ、具体的な例としては、金(Au)、銀(Ag)、ニッケル(Ni)、インジウムスズ酸化物(indium-tin-oxide、ITO)、アルミニウム(Al)、チタニウム(Ti)、チタンナイトライド(TiN)、及びクロム(Cr)が含まれることができるが、これらに限定されるわけではない。
【0053】
上記ゲート絶縁膜は、上記ゲート電極上に形成され、ゲート絶縁膜は、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルフェノール、またはこれらの共重合体、2つ以上の二重結合を有する架橋型単量体、光開始剤、そして熱開始剤を適正な溶媒に溶解した混合組成物から光架橋と熱架橋を通じて製造される。
【0054】
上記光反応性有機高分子ゲート絶縁膜は、ゲート電極上に湿式工程により形成され、具体的にゲート絶縁膜組成物をスピンコーティング、ディッピング、またはプリンティングにより塗布し、次いで、ベーキングして絶縁膜を形成する。また、上記有機高分子ゲート絶縁膜は、光架橋を通じてセミ相互侵入高分子網目を形成した後、現像(developing)工程を利用してパターン化する。リソグラフィによりパターン化された架橋型有機高分子ゲート絶縁膜のイメージを図1及び図3に示した。
【0055】
有機活性膜は、上記ゲート絶縁膜上に形成され、有機活性膜を構成する物質としては、ペンタセン(pentacene)、DH6T(ジヘキシル−ヘキシチオフェン)、P3HT(ポリ(3−ヘキシチオフェン)レジオレギュラー)、F8T2(ポリ−9、9−ジオクチルフルオレン−co−ビチオフェン)、DHADT(ジヘキシルアントラ−ジチオフェン)などの通常的な物質、またはこれらの誘導体を使用することができるが、これらに限定されない。
【0056】
上記有機活性膜は、この分野において一般的に知られた条件下で上記物質を蒸着することのような方法により形成されることができる。
【0057】
また、上記ソース−ドレイン電極は、金(Au)、インジウム−錫−オキサイド(ITO)、アルミニウム(Al)、クロム(Cr)などの通常的な金属を使用することができるが、これらに限定されたわけではない。
【0058】
上記ソース−ドレイン電極は、有機活性膜上にこの分野において一般的に知られた方法を用いて形成され、好ましくは、シャドウーマスクを利用したE−ビーム法を利用して形成されることができる。
【0059】
上記基板、ゲート電極、ゲート絶縁膜、有機活性膜、及びソース−ドレイン電極のそれぞれの厚さは、この分野において使用される一般的な厚さで形成されることができる。
【0060】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明が実施例に限定されるわけではない。
【0061】
実施例1
光反応性有機高分子ゲート絶縁膜組成物の製造
高誘電率有機高分子としてポリメチルメタクリレート、架橋用単量体としてジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、光開始剤としてトリメチルベンゼンジフェニルホスフィンオキサイドを1.0/1.0/0.2の重量比でプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに25重量%の割合で溶解し、有機高分子ゲート絶縁膜組成物を製造した。
【0062】
有機薄膜トランジスタの製造
まず、p−型シリコンウェーハにE−ビーム(beam)法でTi(50Å)/Au(80Å)のゲート電極をシャドウーマスクを利用して形成した。次いで、上記で製造した光反応性有機高分子ゲート絶縁膜組成物をゲート電極上にスピンコーティング3000rpmでコーティングした後、90℃で2分間ベーキングした後、2分間の紫外線(波長=365nm、350W)照射を通じて光架橋を実施した。実際光架橋を通じて生成されたゲート絶縁膜は、セミ相互侵入高分子網目からなる。このように得られた薄膜にエチルアセテート(ethylacetate)を利用して現像工程を経て微細パターンの高分子ゲート絶縁膜を形成した。その後、200℃で10分間ベーキングを実施した。最終的な有機高分子ゲート絶縁膜の厚さは、15,500Åであった。次に、ペンタセンを低真空度(<1.0×10−6torr)、基板温度70℃、蒸着比1Å/secの条件で800Å厚さで蒸着させて、ペンタセン活性膜を形成した。ペンタセン活性膜上にソース−ドレイン電極でチャンネル幅2mm、チャンネル長さ50μmの金(Au)をシャドウーマスクを利用してE−ビーム法で500Å形成した。
【0063】
試験例
微細パターンの分析
実施例1で製造された光反応性有機高分子ゲート絶縁膜組成物を光架橋し、微細パターンを作った例を図1に示した。
【0064】
有機薄膜トランジスタの素子特性分析
実施例1から製造された素子を使用してHewlett Packard社のSemiconductor parameter analyzer(HP 4156C、Agilent)を利用して電界効果移動度を測定し、その結果を図2に示した。図2の特性グラフは、典型的なトランジスタのID−VDの特性を曲線で示している。測定された電流伝達特性曲線から下記の飽和領域(saturation region)の電流式を利用して計算した。電界効果移動度は、下記の式を利用して決定した。
IDS=(WCi/2L)μ(VGS−VT)
ここで、WとLは、ソース−ドレインの広さと長さを、μ、Ci、VTは、それぞれ電界効果移動度、絶縁体のキャパシタ、しきい電圧である。
【0065】
本実施例で決定された電界効果移動度は、ポリメチルメタクリレートの誘電定数(εr)=3.1を利用して計算し、その値は、0.71cm/Vsであった。
【0066】
実施例2
光反応性有機高分子ゲート絶縁膜組成物の製造
高誘電率有機高分子としてポリメチルメタクリレート、架橋単量体としてペンタエリスリトールテトラアクリレート、光開始剤としてトリメチルベンゼンジフェニルホスフィンオキサイド、熱開始剤としてジクミルパーオキサイドを1.0/1.0/0.1/0.2の重量比でプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに25重量%の割合で溶解し、有機高分子ゲート絶縁膜組成物を製造した。
【0067】
有機薄膜トランジスタの製造
有機薄膜トランジスタは、上記実施例1と同様にして製作した。最終的な有機高分子ゲート絶縁膜の厚さは、4,000Åであった。
【0068】
有機薄膜トランジスタの素子特性分析
製作された素子は、典型的なトランジスタのID−VDの特性を示し、本実施例で決定された電界効果移動度は、0.28cm/Vsであった。
【0069】
実施例3乃至6
光反応性有機高分子ゲート絶縁膜組成物の製造
実施例1のポリメチルメタクリレートの代わりに、ポリ(メチルメタクリレート−ランダム−ビニルフェノール)(50/50モール/モール)またはポリ(メチルメタクリレート−ランダム−ビニルピロリドン)(50/50モール/モール)を利用して光反応性有機高分子ゲート絶縁膜組成物を製造した例である(下記の表1参照)。架橋単量体としては、ペンタエリスリトールトリアクリレートまたはジペンタエリスリトールヘキサアクリレートを利用し、光開始剤としてトリメチルベンゼンジフェニルホスフィンオキサイドを1.0/1.0/0.2の重量比でプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに溶解し、有機高分子ゲート絶縁膜組成物を製造した。
【0070】
有機薄膜トランジスタの製造
有機薄膜トランジスタは、上記実施例1と同様にして製作した。
【0071】
有機高分子ゲート絶縁膜の厚さは、表1に整理した。
【0072】
有機薄膜トランジスタの素子特性分析
最終的な有機高分子ゲート絶縁膜の厚さ及び本実施例で決定された電界効果移動度を表1に整理した。
【0073】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の一実施例によるポリメチルメタクリレートを基本にした有機高分子ゲート絶縁膜をリソグラフィによりパターン化した図である。
【図2】(a)および(b)は、本発明の一実施例による有機薄膜トランジスタ素子の電界効果移動度を測定したI−Vカーブを示す図である。
【図3】本発明の他の一実施例によるポリメチルメタクリレート共重合体を基本にした有機高分子ゲート絶縁膜をリソグラフィによりパターン化した図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリメチルメタクリレート、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルフェノール、及びこれらの共重合体よりなる群から一種以上選択された絶縁性有機高分子と、
2つ以上の二重結合を有する架橋用単量体と、
光開始剤と、を含む有機高分子ゲート絶縁膜組成物。
【請求項2】
熱開始剤をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の有機高分子ゲート絶縁膜組成物。
【請求項3】
前記共重合体は、ポリ(メチルメタクリレート−ランダム−ビニルアルコール)、ポリ(メチルメタクリレート−ランダム−ビニルピロリドン)、ポリ(メチルメタクリレート−ランダム−ビニルフェノール)、ポリ(ビニルアルコール−ランダム−ビニルピロリドン)、またはポリ(ビニルピロリドン−ランダム−ビニルフェノール)であることを特徴とする請求項1に記載の有機高分子ゲート絶縁膜組成物。
【請求項4】
前記架橋用単量体は、ペンタエリスリトールトリアクリレート、またはジペンタエリスリトールヘキサアクリレートであることを特徴とする請求項1に記載の有機高分子ゲート絶縁膜組成物。
【請求項5】
前記有機高分子は、組成物の全体重量に対して1%以上含まれ、架橋用単量体は、組成物の全体重量に対して1%以上含まれ、光開始剤は、組成物の全体重量に対して0.1%以上含まれることを特徴とする請求項1に記載の有機高分子ゲート絶縁膜組成物。
【請求項6】
ポリメチルメタクリレート、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルフェノール、及びこれらの共重合体よりなる群から一種以上選択された絶縁性有機高分子と、2つ以上の二重結合を有する架橋用単量体及び光開始剤を含む有機高分子ゲート絶縁膜組成物を溶媒中に溶解させて形成した有機高分子ゲート絶縁膜とを含む有機薄膜トランジスタ。
【請求項7】
前記溶媒は、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートまたはエチル−3−エトキシプロピネートであることを特徴とする請求項6に記載の有機薄膜トランジスタ。
【請求項8】
前記溶媒中にゲート絶縁膜組成物が1重量%以上の濃度で溶解されることを特徴とする請求項6に記載の有機薄膜トランジスタ。
【請求項9】
前記有機薄膜トランジスタの構造は、基板上に、ゲート電極、ゲート絶縁膜、有機活性膜、及びソース−ドレイン電極が順次に積層されている構造であることを特徴とする請求項6に記載の有機薄膜トランジスタ。
【請求項10】
前記有機薄膜トランジスタの構造は、基板上に、ゲート電極、ゲート絶縁膜、ソース−ドレイン電極、及び有機活性膜が順次に積層されている構造であることを特徴とする請求項6に記載の有機薄膜トランジスタ。
【請求項11】
前記ゲート絶縁膜は、リソグラフィ工程によりパターン化されることを特徴とする請求項6に記載の有機薄膜トランジスタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−147294(P2009−147294A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−211000(P2008−211000)
【出願日】平成20年8月19日(2008.8.19)
【出願人】(596180076)韓國電子通信研究院 (733)
【氏名又は名称原語表記】Electronics and Telecommunications Research Institute
【住所又は居所原語表記】161 Kajong−dong, Yusong−gu, Taejon korea
【Fターム(参考)】