説明

光導波路構造体の製造方法及び製造装置

【課題】気泡の混入を抑制しながら、曲面上に形成された溝にコア材料を均一に充填できるようにして、気泡混入の少ない高品質の光導波路(曲線導波路)が効率良く、かつ、簡便に得られるようにする。
【解決手段】光導波路構造体の製造方法を、曲面2上に曲面2の一端から他端まで延びる溝3を有するクラッド構造体1を作製する工程と、溝3の一端側又は他端側の曲面2上に液状コア材料4を滴下する工程と、液状コア材料4が滴下された側の溝3を含む曲面2に弾性体9の一部を接触させた後、溝3の反対側へ向けて弾性体9を変形させながら溝3に液状コア材料4を充填していく工程とを含むものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光通信などに用いる光導波路構造体に関し、例えばレーザダイオードなどの光素子と例えば光ファイバなどの伝送媒体とを結合するのに好適の光導波路構造体の製造方法及び製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、例えば面発光レーザやフォトダイオード(フォトディテクタ)などの面型光素子を備える多チャンネル光トランシーバ(例えば波長多重多チャンネル光トランシーバ)の開発が進められている。
例えば多チャンネル光トランシーバなどの光モジュールにおいて、面発光レーザやフォトダイオードなどの面型光素子を使用する場合、面型光素子の光入射面又は光出射面は実装基板に対して平行になるため、実装基板に対して垂直に光を入射又は出射させることになる。
【0003】
一方、このような光モジュールにおいては、小型化、薄型化を図ることが必要である。
小型化、薄型化を図るためには、光ファイバ(光ファイバアレイ)を実装基板に対して平行に配置するのが望ましい。この場合、光ファイバの端面と面型光素子の光入射面又は光出射面とは略直角の位置関係になる。
このため、基板上に実装された面型光素子の光入射面又は光出射面に対して垂直に入射又は出射する光の経路(光路)を略90度曲げて、光ファイバと面型光素子とを光学的に接続することが必要になる。
【0004】
そこで、例えば光トランシーバなどの装置内の狭いスペースで光の経路を急峻に曲げるために、略直角の曲面上に光導波路(曲線導波路)を有する光導波路構造体を用い、面型光素子に対して入射又は出射する光を、曲面に沿って導いて、光ファイバアレイに結合させる技術が提案されている(例えば特許文献1の図27,図28参照)。
この特許文献1では、このような光導波路構造体の製造方法として、曲面上に液状コア材料を滴下し、その上にフィルムを貼り付け、シリコンゴムのような柔らかい素材を用いて一定の圧力で押さえ付けることによって液状コア材料を薄く延ばし、紫外線照射によって硬化させることが記載されている(例えば段落0082〜0084、図41、図42参照)。
【特許文献1】特開2005−115346号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、光通信などに用いる場合、曲面上に形成される溝の断面積は0.05mm角以下になるのが一般的であり、また、溝の長さは数mm以上に及ぶため、気泡を混入させずに液状コア材料を均一に溝内に充填するのは困難である。
本発明は、このような課題に鑑み創案されたもので、気泡の混入を抑制しながら、曲面上に形成された溝にコア材料を均一に充填できるようにして、気泡混入の少ない高品質の光導波路(曲線導波路)が効率良く、かつ、簡便に得られるようにした、光導波路構造体の製造方法及び製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このため、本発明の光導波路構造体の製造方法は、曲面上に曲面の一端から他端まで延びる溝を有するクラッド構造体を作製する工程と、溝の一端側又は他端側の曲面上に液状コア材料を滴下する工程と、液状コア材料が滴下された側の溝を含む曲面に弾性体の一部を接触させた後、溝の反対側へ向けて弾性体を変形させながら溝に液状コア材料を充填していく工程とを含むことを特徴としている。
【0007】
また、本発明の光導波路構造体の製造装置は、曲面上に曲面の一端から他端まで延びる溝を有するクラッド構造体を、曲面を上にして保持するステージと、クラッド構造体の曲面の曲率半径よりも大きい曲率半径を有する曲面を備える弾性体を先端に有し、弾性体の曲面がステージ上に保持されたクラッド構造体の曲面に対向するように所定間隔をあけて配置される押当ヘッドと、弾性体の曲面がクラッド構造体の曲面に押し当てられるように押当ヘッドを駆動する駆動装置とを備えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
したがって、本発明の光導波路構造体の製造方法及び製造装置によれば、気泡の混入を抑制しながら、曲面上に形成された溝にコア材料を均一に充填でき、気泡混入の少ない高品質の光導波路(曲線導波路)が効率良く、かつ、簡便に得られるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面により、本発明の実施の形態にかかる光導波路構造体の製造方法及び製造装置について、図1〜図4を参照しながら説明する。
ここでは、まず、本実施形態にかかる光導波路構造体の製造方法の概略を説明し、その後に、本光導波路構造体の製造方法及び製造装置について、より具体的に説明する。
本光導波路構造体の製造方法は、図3に示すような各工程を含む。
【0010】
まず、図3に示すように、曲面2上に、曲面2の一端から他端まで延びる溝(導波路用溝;細溝)3を有する曲面構造体(クラッド構造体)1を、例えばオレフィン系ポリマ(ポリオレフィン;透明なクラッド材料からなる透明部材)を用い、モールド成型によって作製する。つまり、予め曲面2上に溝3が形成されている曲面構造体(モールド母材;モールド光導波路)1を作製する。
【0011】
次に、図3に示すように、溝3の一端側又は他端側の曲面2上に液状コア材料(導波路コア液;例えばUVエポキシ樹脂;紫外線硬化性樹脂材料)4を滴下する。
次いで、図3に示すように、液状コア材料4が滴下された側からクラッドフィルム(カバーフィルム;例えばオレフィン系フィルム)5をラミネートしていきながら、同時に、溝3に液状コア材料4を充填していく。
【0012】
その後、図3に示すように、紫外線を照射して液状コア材料(樹脂)4を硬化させる。
このようにして、曲面2上にチャネル状の光導波路(曲線導波路)6を備える光導波路構造体(ポリマを主材料とするポリマ光導波路)7を製造する。
より具体的には、本光導波路構造体7は、図1に示すようなプロセスフローにしたがって製造される。
【0013】
まず、図1に示すように、上述のように構成される曲面構造体(モールド母材;図3参照)1を、例えばポリオレフィンを用いてモールド成型によって作製する。
一方、図1に示すように、例えばオレフィン系フィルムを定型打ち抜き(パンチ)して、所定の大きさ・形状のクラッドフィルム5を作製する。
次に、図1に示すように、ラミネート装置20のステージ21上に、曲面構造体1を配置するとともに、ラミネート装置20のシリンダ(駆動装置)22の下部に押当ヘッド8をセットする。
【0014】
ここでは、押当ヘッド8の先端に備えられる弾性体(例えばゴム状の素材;シリコーンゴム)9の曲面10(実際には弾性体9の曲面10に吸着されたフィルム5の表面)が曲面構造体1の曲面2に対向するように、ステージ21上に配置された曲面構造体1の上方に所定間隔をあけて押当ヘッド8が配置される。
また、曲面構造体1をステージ21上に配置する前又は後に、ディスペンサ(定量ディスペンサ;液体コア材料滴下装置)によって、曲面構造体1の溝3の一端側又は他端側の曲面2上に所定量のコア液(例えばUVエポキシ樹脂;透明ポリマ液;透明液体)4を滴下する。
【0015】
さらに、ラミネート装置20のシリンダ22の下部に押当ヘッド8をセットする前又は後に、押当ヘッド8の先端に備えられる弾性体9の表面にクラッドフィルム5を真空吸着させて保持する。
ここで、弾性体9は、図2に示すように、曲面構造体1の曲面(凸面)2に対応する曲面(凹面)10を備える(凹状弾性体)。ここでは、弾性体9の曲面10は、図2に示すように、曲面構造体1の曲面2の曲率半径よりも大きい曲率半径を有する。
【0016】
また、弾性体9は、クラッドフィルム5を吸着するための真空吸着穴11を備える。そして、この真空吸着穴11にコネクタを介して真空ポンプが接続され、弾性体9の表面にクラッドフィルム5を真空吸着させることができるようになっている。
ここで、本光導波路構造体の製造装置としてのラミネート装置20は、図1に示すように、曲面構造体1を曲面2を上にして(曲面2を凸状に)保持するステージ21と、上記の弾性体9を先端に有し、上述のように配置される押当ヘッド8と、弾性体9の曲面10が曲面構造体1の曲面2に押し当てられるように押当ヘッド8を駆動するシリンダ(駆動装置)22とを備えるものとして構成される。
【0017】
また、ステージ21は、コア液4に光(ここでは紫外線)を照射するための開口部23を備える。そして、この開口部23を介して光源(ここではUV光源)からの光(ここでは紫外線)がコア液に照射されるようになっている。なお、ラミネート装置20は、コア液4に光を照射する光源を備えるものとして構成しても良いし、別に設けられる光源に接続するようにしても良い。
【0018】
なお、ラミネート装置は、ステージ上に保持された曲面構造体の曲面上の溝にコア液を滴下するコア液滴下装置(液状コア材料滴下装置;ディスペンサ)を備えるものとして構成するのが好ましいが、これを備えないものとして構成しても良い。また、ラミネート装置20は、弾性体9の真空吸着穴11に接続され、クラッドフィルム5を真空吸着するための真空吸着装置(真空ポンプを含む)を備えるものとして構成するのが好ましいが、これを備えないものとして構成しても良い。
【0019】
ここでは、図1に示すように、溝3の一端側の曲面2上に滴下されたコア液4が溝3の一端側に溜まるように、ステージ21の所定角度(ここでは45度)傾斜した傾斜面上にブロック24を設け、ステージ21上に曲面構造体1を所定角度(ここでは45度)傾斜させて保持できるようになっている。
そして、図1に示すように、シリンダ22を駆動して押当ヘッド8を下降させ、弾性体9の曲面10(実際には弾性体9の曲面10に吸着されたフィルム5の表面)を曲面構造体1の曲面2に押し当てる。これにより、まず最初に、コア液4が滴下された側の溝3を含む曲面2に弾性体9の一部(弾性体9の曲面10の一端)が接触し、その後、押圧されるにしたがって、溝3の反対側へ向けて弾性体9が変形し、弾性体9の曲面10が徐々に曲面構造体1の曲面2に当たっていき、これにより、クラッドフィルム5が貼り付けられながら、溝3にコア液4が充填されていくことになる(コア液充填工程)。
【0020】
その後、図1に示すように、光源として例えばフレキUV光源を用いて、曲面構造体1の裏面側から、ラミネート装置20のステージ21に形成されている開口部23を通して紫外線を照射してコア液4を硬化させる。これにより、下部クラッドとしての曲面構造体1の曲面2上に形成された曲線状のコア4をカバーするように、上部クラッドとしてのクラッドフィルム5が貼り付けられて、曲線光導波路6を有する光導波路構造体7が形成されることになる。
【0021】
なお、このようにして作製される光導波路構造体7は、例えば、入力された電気信号を光信号に変換し、アレイ状の光ファイバを介して送信する機能(光送信機)と、光ファイバアレイを介して入力された光信号を電気信号に変換して受信する機能(光受信機)とを備える多チャンネル光トランシーバに用いられる。
この場合、多チャンネル光トランシーバは、例えば図4に示すように、プリント基板(回路基板)30と、表面に入射面を有する複数の面型受光素子[ここではフォトダイオード(フォトディテクタ;PD;Photo detector)]からなる面型受光素子アレイ(PDアレイチップ)31と、表面に出射面を有する複数の面型発光素子[ここでは面発光レーザ;VCSEL(Vertical-Cavity Surface−Emitting Laser)]からなる面型発光素子アレイ(VCSELアレイチップ)32と、ドライバIC35と、レシーバIC36と、複数の曲線導波路6を備える光導波路構造体7とを備えるものとして構成される。なお、ここでは、送信側4チャンネル、受信側4チャンネルの光トランシーバを例に挙げている。
【0022】
そして、光導波路構造体7は、その一の端面を介してプリント基板30上に実装され、この一の端面に直交する他の端面には、複数の光ファイバからなる光ファイバアレイ(リボンファイバ)33が光学的に接続される。ここでは、光コネクタ34付きの光ファイバアレイ(リボンファイバ)33を用いている。
なお、プリント基板30は、装置側電気コネクタを介して外部装置と電気的に接続されており、電気信号が入力又は出力(電気I/O)されるようになっている。
【0023】
したがって、本実施形態にかかる光導波路構造体の製造方法及び製造装置によれば、気泡の混入を抑制しながら、曲面2上に形成された溝3にコア液(コア材料)4を均一に充填でき、気泡混入の少ない高品質の光導波路(曲線導波路)6が効率良く、かつ、簡便に得られるという利点がある。
特に、本光導波路構造体の製造方法及び製造装置によれば、曲面構造体1の曲面2に対応する曲面10を有する弾性体9を押し当ててコア液(導波路コア材料)4の充填を行なうため、コア液4が過剰に供給されて溝3の外側に漏れ出してしまうのを防止でき、曲面構造体1の曲面2上に形成された溝3にコア液4を過不足なく充填することができる。
【0024】
また、上述のように、弾性体9の形状を工夫し、かつ、接触位置を制御することによって、コア液4が曲面2上に形成された溝3の一端側から他端側へ向かって一方向に徐々に充填されていくようにコア液4の流れ・動きを制御しているため、光通信などに用いられる細溝に、粘調流体であるコア液4を気泡の混入を抑制しながら均一に充填することが可能となる。
【0025】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形することができる。
また、上述の実施形態では、液体コア材料4として、例えばUVエポキシ樹脂材料などの紫外線硬化性樹脂材料を用い、紫外線を照射して硬化させるようにしているが、これに限られるものではなく、例えば、液体コア材料として光硬化性樹脂材料を用い、光を照射して硬化させるようにしても良い。また、液体コア材料として熱硬化性樹脂材料を用い、熱を加えて硬化させるようにしても良い。
【0026】
また、上述の実施形態では、シリンダ22を駆動して押当ヘッド8を下降させて、弾性体9の曲面10を曲面構造体1の曲面2に押し当て、押圧によって弾性体9を変形させて、溝3にコア液4を充填するようにしているが、これに限られるものではなく、例えば、押当ヘッドを回転駆動しうる駆動装置を備えるものとし、この駆動装置を駆動させて押当ヘッドを回転させることによって弾性体を変形させて、溝にコア液を充填するようにしても良い。この場合、弾性体は、曲面構造体の曲面(凸面)に対応する曲面(凹面)を備えるものとして構成すれば良く、例えば、弾性体の曲面の曲率半径と曲面構造体の曲面の曲率半径とを同じにしても良い。
【実施例】
【0027】
以下、図5〜図7を参照しながら、実施例によって本発明を更に詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施例によって限定されるものではない。
本実施例では、上述の実施形態で説明した製造方法によって光導波路構造体(ポリマ光導波路)のサンプルを作製し、導波路コアに残留している気泡量(気泡発生率)を調べた。
【0028】
本実施例では、図5に示すような形状の透明曲面構造体1をモールド成型によって作製して用いた。つまり、ベース1A上に、曲率半径5.0mm(R=5.0mm)の曲面2A(1/4円弧)に直線状の平面2Bをつなげた凸面2を有し、この凸面2を構成する曲面2Aに沿って縦0.05mm×横0.05mmの大きさの8本の溝(導波路溝)3が平行に形成されたモールド成型体を曲面構造体1として用いた。溝3のピッチは0.25mm、曲面構造体1の全幅は10mmとした。また、材料はポリオレフィンを用いた。
【0029】
充填用のコア液4には紫外線硬化型のエポキシ樹脂を用いた。
コア液4が充填された溝(導波路溝)3の上部を覆うフィルム(クラッドフィルム)5にはポリオレフィン製で、厚さ0.05mmの透明フィルム(オレフィンフィルム)を幅10mm×長さ15mmに裁断して用いた。
ラミネート装置20は、下部に曲面構造体1を保持するステージ21を有し、上部に設けられたシリンダ22を用いて押当ヘッド8を下降させる構造のものを用いた(図1参照)。
【0030】
ここでは、溝3の一端側の曲面2上に滴下されたコア液4が溝3の一端側に溜まるように、ステージ21の45度傾斜した傾斜面上にブロック24を設け、ステージ21上に曲面構造体1を45度傾斜させて保持できるようにした(図1参照)。なお、曲面構造体1の傾斜角度はこれに限られるものではなく、曲面2上に滴下されたコア液4が溝3の一端側に溜まるような角度であれば良い。
【0031】
また、ステージ21の傾斜面上に保持された曲面構造体1の裏面側からコア液4に紫外線を照射できるように、ステージ21に開口部(窓)23を形成した(図1参照)。
押当ヘッド8の先端には、上述の実施形態で説明したような弾性体9(図1、図2参照)を取り付けた。
具体的には、押当用の弾性体9として、図6(A),(B)に示すように、比較用に2種類の形状の弾性体9A,9Bを作製した。
【0032】
一方の弾性体9Aは、図6(A)に示すように、曲面構造体1の曲面2にぴったりと嵌るように(即ち、弾性体9Aの曲面10Aの曲率半径が曲面構造体1の曲面2の曲率半径と同じになるように)、曲率半径5.0mm(R=5.0mm)の曲面10A(1/4円弧;中心角90度の円弧)に直線状の平面10Bをつなげた凹面10を有するものとした。
他方の弾性体9Bは、図6(B)に示すように、曲率半径をやや大きくして5.5mmとした曲面10C(中心角85度の円弧)に、5度の傾斜を持つ直線状の平面10Dをつなげた凹面10を有するものとした。なお、直線状の平面10Dに傾斜を持たせているのは、弾性体9Bが押圧されて変形していく際に、最後まで曲面構造体1の曲面2に徐々に押し当てられていくようにするためである。
【0033】
なお、両方とも、幅は10mmとし、長さは15mmとした。材料はシリコーンゴムを用いた。
上述のようにして作製した曲面構造体1をラミネート装置20のステージ21上に配置した。また、曲面構造体1上に、ディスペンサで0.1ccのコア液4を滴下した。さらに、上述のようにして作製したオレフィンフィルムを押当ヘッド8に真空吸着させて、シリンダ22の下部にセットした。
【0034】
なお、曲率半径5.0mmの曲面10Aを有する弾性体9Aをセットする場合は、弾性体9Aの曲面10Aを曲面構造体1の曲面2に押し当てるときに弾性体9Aの曲面10Aが曲面構造体1の曲面2に正確に嵌るように、押当ヘッド8と曲面構造体1との位置関係を調整した。
一方、曲率半径5.5mmの曲面10Cを有する弾性体9Bをセットする場合は、弾性体9Bの曲面10Cの一端が最初に接触し、押圧に従って弾性体9Bが変形して徐々に弾性体9Bの曲面10Cが曲面構造体1の曲面2に当たっていくように、押当ヘッド8と曲面構造体1との位置関係を調整した(図2参照)。
【0035】
そして、シリンダ22を下降させ、弾性体9A,9Bが曲面構造体1に押し当てられ、弾性体9A,9Bが変形して、溝3の一端側から他端側までコア液4が十分に充填される位置まで押し下げた。
最後に、弾性体9A,9Bが曲面構造体1に押し当てられた状態で、ラミネート装置20のステージ21の裏面側から紫外線を照射し、コア液4を硬化させて、図7に示すような光導波路構造体7のサンプルを完成させた。
【0036】
次に、このようにして得られた光導波路構造体7のサンプルの導波路コア4内の気泡発生率を評価した。
曲率半径5.0mmの弾性体9Aを使用した場合、サンプル10個で計80本の導波路コア4中、15本の導波路コア4に気泡が見られた。したがって、気泡発生率は19%であった。
【0037】
一方、曲率半径5.5mmの弾性体9Bを使用した場合、サンプル10個で計80本の導波路コア4中、2本の導波路コア4に気泡が見られたのみであった。したがって、気泡発生率は3%であった。
このように、曲面構造体1の曲面2に対応する曲面10を備える弾性体9A,9Bを用い、弾性体9Bの曲面10Cの一端が最初に接触し、押圧に従って弾性体9Bが変形して徐々に弾性体9Bの曲面10Cが曲面構造体1の曲面2に当たっていくようにすることで、気泡発生率を抑えることができることがわかった。特に、曲面構造体1の曲面2の曲率半径よりも大きい曲率半径の曲面10Cを有する弾性体9Bを用いることで、気泡発生率を十分に低く抑えることができることがわかった。
【0038】
以下、上述の実施形態に関し、更に、付記を開示する。
(付記1)
曲面上に前記曲面の一端から他端まで延びる溝を有するクラッド構造体を作製する工程と、
前記溝の一端側又は他端側の前記曲面上に液状コア材料を滴下する工程と、
前記液状コア材料が滴下された側の前記溝を含む前記曲面に弾性体の一部を接触させた後、前記溝の反対側へ向けて前記弾性体を変形させながら前記溝に前記液状コア材料を充填していく工程とを含むことを特徴とする光導波路構造体の製造方法。
【0039】
(付記2)
前記弾性体は、曲面を備え、
前記液状コア材料充填工程が、前記弾性体の曲面が前記クラッド構造体の曲面に対向するように所定間隔をあけて前記弾性体を配置し、前記弾性体の曲面を前記クラッド構造体の曲面に押し当てることによって行なわれることを特徴とする、付記1記載の光導波路構造体の製造方法。
【0040】
(付記3)
前記弾性体の曲面が、前記クラッド構造体の曲面の曲率半径よりも大きい曲率半径を有することを特徴とする、付記2記載の光導波路構造体の製造方法。
(付記4)
前記弾性体の表面にクラッドフィルムを保持する工程を含み、
前記液状コア材料充填工程において、前記クラッドフィルムをラミネートしながら前記溝に前記液状コア材料を充填していくことを特徴とする、付記1〜3のいずれか1項に記載の光導波路構造体の製造方法。
【0041】
(付記5)
前記クラッド構造体が透明なクラッド材料からなり、
前記液状コア材料が光硬化性樹脂材料からなり、
前記液状コア材料充填工程の後に、前記クラッド構造体を通して光を照射して前記液状コア材料を硬化させることを特徴とする、付記1〜4のいずれか1項に記載の光導波路構造体の製造方法。
【0042】
(付記6)
曲面上に前記曲面の一端から他端まで延びる溝を有するクラッド構造体を、前記曲面を上にして保持するステージと、
前記クラッド構造体の曲面の曲率半径よりも大きい曲率半径を有する曲面を備える弾性体を先端に有し、前記弾性体の曲面が前記ステージ上に保持された前記クラッド構造体の曲面に対向するように所定間隔をあけて配置される押当ヘッドと、
前記弾性体の曲面が前記クラッド構造体の曲面に押し当てられるように前記押当ヘッドを駆動する駆動装置とを備えることを特徴とする光導波路構造体の製造装置。
【0043】
(付記7)
前記弾性体が、クラッドフィルムを吸着するための真空吸着穴を備えることを特徴とする、付記6記載の光導波路構造体の製造装置。
(付記8)
前記クラッド構造体が透明なクラッド材料からなり、
前記前記液状コア材料が光硬化性樹脂材料からなり、
前記ステージが、前記液状コア材料に光を照射するための開口部を備えることを特徴とする、付記6又は7記載の光導波路構造体の製造装置。
【0044】
(付記9)
前記ステージ上に保持された前記クラッド構造体の前記溝に液状コア材料を滴下する液状コア材料滴下装置を備えることを特徴とする、付記6〜8のいずれか1項に記載の光導波路構造体の製造装置。
(付記10)
前記真空吸着穴に接続される真空吸着装置を備えることを特徴とする、付記7〜9のいずれか1項に記載の光導波路構造体の製造装置。
【0045】
(付記11)
前記開口部を介して前記液状コア材料に光を照射する光源を備えることを特徴とする、付記8〜10のいずれか1項に記載の光導波路構造体の製造装置。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の一実施形態にかかる光導波路構造体の製造方法及び製造装置を説明するための図である。
【図2】本発明の一実施形態にかかる光導波路構造体の製造方法及び製造装置において用いられる弾性体及び曲面構造体(モールド)の形状及び配置を説明するための図である。
【図3】本発明の一実施形態にかかる光導波路構造体の製造方法の概略を説明するための図である。
【図4】本発明の一実施形態にかかる光導波路構造体を用いた多チャンネル光トランシーバを説明するための模式的斜視図である。
【図5】本発明の一実施例にかかる光導波路構造体の製造方法及び製造装置において用いられる曲面構造体の形状を示す模式図である。
【図6】(A),(B)は、本発明の一実施例にかかる光導波路構造体の製造方法及び製造装置において用いられる弾性体の形状を示す模式図である。
【図7】本発明の一実施例にかかる光導波路構造体の製造方法及び製造装置によって製造された光導波路構造体の断面像を示す図である。
【符号の説明】
【0047】
1 曲面構造体(クラッド構造体)
2 曲面(凸面)
2A 曲面
2B 直線状の平面
3 溝(導波路用溝)
4 液状コア材料(導波路コア液)
5 クラッドフィルム(カバーフィルム)
6 光導波路(曲線導波路)
7 光導波路構造体(ポリマ光導波路)
8 押当ヘッド
9,9A,9B 弾性体(シリコーンゴム)
10 曲面(凹面)
10A,10C 曲面
10B,10D 直線状の平面
20 ラミネート装置
21 ステージ
22 シリンダ(駆動装置)
23 開口部
24 ブロック
30 プリント基板(回路基板)
31 面型受光素子アレイ(PDアレイチップ)
32 面型発光素子アレイ(VCSELアレイチップ)
33 光ファイバアレイ(リボンファイバ)
34 光コネクタ
35 ドライバIC
36 レシーバIC

【特許請求の範囲】
【請求項1】
曲面上に前記曲面の一端から他端まで延びる溝を有するクラッド構造体を作製する工程と、
前記溝の一端側又は他端側の前記曲面上に液状コア材料を滴下する工程と、
前記液状コア材料が滴下された側の前記溝を含む前記曲面に弾性体の一部を接触させた後、前記溝の反対側へ向けて前記弾性体を変形させながら前記溝に前記液状コア材料を充填していく工程とを含むことを特徴とする光導波路構造体の製造方法。
【請求項2】
前記弾性体は、曲面を備え、
前記液状コア材料充填工程が、前記弾性体の曲面が前記クラッド構造体の曲面に対向するように所定間隔をあけて前記弾性体を配置し、前記弾性体の曲面を前記クラッド構造体の曲面に押し当てることによって行なわれることを特徴とする、請求項1記載の光導波路構造体の製造方法。
【請求項3】
前記弾性体の曲面が、前記クラッド構造体の曲面の曲率半径よりも大きい曲率半径を有することを特徴とする、請求項2記載の光導波路構造体の製造方法。
【請求項4】
前記弾性体の表面にクラッドフィルムを保持する工程を含み、
前記液状コア材料充填工程において、前記クラッドフィルムをラミネートしながら前記溝に前記液状コア材料を充填していくことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の光導波路構造体の製造方法。
【請求項5】
前記クラッド構造体が透明なクラッド材料からなり、
前記液状コア材料が光硬化性樹脂材料からなり、
前記液状コア材料充填工程の後に、前記クラッド構造体を通して光を照射して前記液状コア材料を硬化させることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の光導波路構造体の製造方法。
【請求項6】
曲面上に前記曲面の一端から他端まで延びる溝を有するクラッド構造体を、前記曲面を上にして保持するステージと、
前記クラッド構造体の曲面の曲率半径よりも大きい曲率半径を有する曲面を備える弾性体を先端に有し、前記弾性体の曲面が前記ステージ上に保持された前記クラッド構造体の曲面に対向するように所定間隔をあけて配置される押当ヘッドと、
前記弾性体の曲面が前記クラッド構造体の曲面に押し当てられるように前記押当ヘッドを駆動する駆動装置とを備えることを特徴とする光導波路構造体の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−158445(P2008−158445A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−350088(P2006−350088)
【出願日】平成18年12月26日(2006.12.26)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】