説明

光源装置

【課題】半導体レーザ素子とレンズとの光軸位置の調整を容易にかつ高精度に行うことができる光源装置を得ること。
【解決手段】LD19が各々嵌め込まれて固定される穴を有する筒形状の複数のLDホルダ20と、LDホルダ20に固定された複数のLD19が通過するための複数の貫通穴を有し、LD19が固定された複数のLDホルダ20が、各貫通穴と各LDホルダ20の穴とが接続されるように一方の主面側に当接されるとともに、他方の主面側に各貫通穴に対応して複数のレンズが配される平板状のベース1と、ベース1と各LDホルダ20とが互いに当接する当接部位の外側の角隅部に配されて、ベース1とLDホルダ20とを固定する接着剤21a、21bと、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、映像表示装置などに用いられる光源装置に関し、特に、複数の半導体レーザ素子から射出されるレーザ光を合成して光ファイバなどに集光し、所定の光出力を得る光源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の半導体レーザ素子から出射されるレーザ光を合成し、光ファイバ等に集光して所定の光出力を得る光源装置は、ヒートブロック上に配列固定された複数のチップ状の半導体レーザと、各半導体レーザに対応して設けられたコリメータレンズアレイと、これらによって生成されたコリメータ光束を1本の光ファイバに集光させる一つの集光レンズと、これら合波光学系を気密封止するための箱状のパッケージとを備えて構成されていた。
【0003】
この種の光源装置では、複数の半導体レーザ素子から出射されるレーザ光を光ファイバに集光させるためには、半導体レーザ素子、コリメータレンズアレイ、集光レンズ及びファイバの各々が所定の位置精度で、かつ傾きが正確に合った状態で固定されていなければならない。このような各部品の固定を実現するために、高精度に作成された各部品の傾きをレーザオートコリメータで計測しながら、メカニカルハンドによって精密に位置決めして接着固定する構造が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
また、発振波長が350〜450nmの半導体レーザ素子を使用した場合、合波光学系を固定する接着剤などの有機ガス(アウトガス)成分が、発光部や光学部品に堆積し、レーザ特性を劣化させる。この対策として、パッケージ内の有機ガスの濃度を1000ppm未満に規定し、かつ酸素濃度が1〜100ppmを含む不活性ガスで封止した光源装置が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−284851号公報(第7頁、第1図)
【特許文献2】特許第4115732号公報(第5頁、第2図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の光源装置は、半導体レーザ素子、コリメータレンズアレイ、集光レンズ及びファイバ等の各部品を、傾きを計測しながら個別に位置調整を行って組み立てるため、半導体レーザ素子一つ当たり複数回の位置決めを行わなければならず、組み立ての作業性が良くないという問題があった。
【0007】
また、部品同士の接合面に接着剤が介在するため、位置決めした部品が接着剤の硬化に伴ってずれてしまう可能性がある。従って、各部品を非常に高精度に作成する必要があって高価になるにも関わらず、各レーザ素子とレンズとの位置ズレや光学的なズレ(光軸傾きや収差等)を最適に調整できず、結合効率が低下するという問題もある。しかも、紫外線硬化型の接着剤を使用する場合には、接合する部品の一方が紫外線透過性を有していなければならず、材料に制約を伴う。
【0008】
さらに、光学系を気密封止する必要があり、パッケージ内の有機ガスの濃度を管理し、かつ、不活性ガスで封止する必要があるため、さらに高価になって組み立て性が悪くなるという問題があり、安価な民生機器に対しての適用が難しいという問題があった。
【0009】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、半導体レーザ素子とレンズとの光軸位置の調整を容易にかつ高精度に行うことができる光源装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、ステムの一方側に半導体レーザが配され他方側に該半導体レーザへの給電端子が配された複数のレーザモジュールを有し、該複数の半導体レーザモジュールから発せられたレーザ光を集光して出射させる光源装置であって、レーザモジュールが夫々嵌め込まれて固定される穴を有する筒形状の複数のホルダと、ホルダに固定された複数のレーザモジュールが通過するための複数の貫通穴を有し、レーザモジュールが固定された複数のホルダが、各貫通穴と各ホルダの穴とが接続されるように一方の主面側に当接されるとともに、他方の主面側に各貫通穴に対応して複数のレンズが配される平板状のベースと、ベースと各ホルダとが互いに当接する当接部位の外側の角隅部に配されて、ベースとホルダとを固定する接着剤と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、当接面に沿ってホルダを摺動させることでレンズの光軸と半導体レーザの光軸との位置調整を容易にかつ高精度に行い、ベースの当接面上のホルダとの当接部分に隣接する領域とホルダの側面とにまたがるように配置した接着剤でホルダを確実にベースへ固定できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、本発明にかかる光源装置の実施の形態の構成を示す断面図である。
【図2】図2は、本発明にかかる光源装置の実施の形態の構成を示す底面図である。
【図3】図3は、本発明にかかる光源装置の実施の形態の構成を示す分解図である。
【図4a】図4aは、実施の形態のLDホルダの詳細な構成を示す斜視図である。
【図4b】図4bは、実施の形態のLDホルダの詳細な構成を示す斜視図である。
【図5】図5は、実施の形態のLDが圧入されたLDホルダをベースに接着固定した後の拡大図である。
【図6】図6は、実施の形態のLDが圧入されたLDホルダをベースに接着固定した後の拡大図である。
【図7】図7は、実施の形態のLD−Iの調整、固定方法を示す斜視図である。
【図8】図8は、実施の形態のLD−Iの調整、固定方法を示す底面図である。
【図9】図9は、実施の形態のLD−IIIの調整、固定方法を示す斜視図である。
【図10】図10は、実施の形態のLD−IIIの調整、固定方法を示す底面図である。
【図11】図11は、実施の形態の接着剤追加塗布及び硬化方法の説明図である。
【図12】図12は、実施の形態のアウトガス吸引方法の説明図である。
【図13】図13は、実施の形態の光源装置全体の構成を示す分解図である。
【図14】図14は、実施の形態の光源装置全体の構成を示す組立後の斜視図である。
【図15】図15は、実施の形態の光源装置全体の構成を示す断面図である。
【図16】図16は、実施の形態のフレキシブルプリント基板の構成を示す図である。
【図17】図17は、実施の形態のフレキシブルプリント基板のはんだ付け方法を示す断面図である。
【図18】図18は、実施の形態のフレキシブルプリント基板のはんだ付け方法を示す底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明にかかる光源装置の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0014】
実施の形態
図1〜3は、本発明にかかる光源装置の実施の形態の構成を示す図であり、図1は断面図、図2は底面図、図3は分解図である。なお、図1に示す断面は、図2における線分1−1での断面である。
【0015】
ベース1は、アルミダイキャスト製であり、中心及びこれを中心点とする円周上には合計7個の段付き穴1a〜1gが円周上では等間隔に、外周部には寸法が異なる半円状の切り欠き部1h、1iが高精度に加工されている。ここで、切り欠き部1h、1iの中心は、中央に配置された段付き穴1dの中心に対して非対称である。7個の段付き穴1a〜1gのそれぞれには、第1のコリメータレンズ2、第1の間座3、第2のコリメータレンズ4が嵌め込まれ、第2のコリメータレンズ4はベース1の上面1jよりも僅かに出っ張るように配置されている。板バネ5は、バネ用ステンレス鋼(SUS301)をエッチング加工することによって、ベース1の7個の段付き穴1a〜1gに対応した位置にジンバルバネ状のバネ部が、ベース1の切り欠き部1h、1iに対応した部分に切り欠き部5a、5bが設けられた平板状に形成されている。拘束板6は、板バネ5よりも厚いステンレス材(SUS304)をプレス加工することによって、ベース1の7個の段付き穴1a〜1gに対応した穴と、ベース1の切り欠き部1h、1iに対応した切り欠き部6a、6bとが形成された平板状であり、バネ部以外の部分が変形しないように板バネ5を押さえる。板バネ5及び拘束板6は、ベース1の切り欠き部1h、1iを基準にそれぞれの切り欠き部5a、5bと6a、6bとを一致させてベース1の上面1jに押さえつけるように複数のネジ7によって偏りなく固定されている。切り欠き部1h、1iは、中央に配置された段付き穴1dの中心に対して非対称に配置されているため、板バネ5及び拘束板6の裏表も一意的に決まり、バリや部品の平面度によって板バネ5及び拘束板6が浮いたり、ずれたりしないように構成されている。以上のような構成により、第1のコリメータレンズ2、第1の間座3及び第2のコリメータレンズ4からなるコリメータレンズ群は、振動、衝撃が加わってもずれが発生しないようにかつ高精度にベース1に固定されている。また、接着剤を使用していないため、異物を取り除くなどの目的で分解する必要が生じた場合でも全ての部品を再利用可能に分解できるとともに、接着剤のアウトガスによって第1のコリメータレンズ2や第2のコリメータレンズ4などの光学部品を汚染することがない。
【0016】
鏡筒8は、アルミニウムを切削加工して形成されており、内部には第1の集光レンズ9、第2の間座10、第2の集光レンズ11が嵌め込まれ、これらはネジリング12によってネジ固定される。第2の間座10及びネジリング12は黄銅製である。ネジリング12の側面の中央部分には、凹部12aが設けられており、鏡筒8に側面からネジ止めされる止めネジ13の先端が凹部12aに挿入されることによって、緩まないようにして鏡筒8に固定される。また、鏡筒8の上面には、黄銅製のレセプタクル14がネジ15によって固定され、光ファイバ16の着脱ができるようになっている。以上のような構成により、第1の集光レンズ9、第2の間座10及び第2の集光レンズ11からなる集光レンズ群は、振動、衝撃が加わってもずれが発生しないようにかつ高精度にベース1に固定されている。また、接着剤を使用していないため、異物を取り除くなどの目的で分解する必要が生じた場合でも、ネジリング12のネジ部を傷付けることがなく、全ての部品を再利用可能に分解できるとともに、接着剤のアウトガスによって第1の集光レンズ9や第2の集光レンズ11、光ファイバ16などの光学部品を汚染することがない。
【0017】
スペーサ17は、ガラスファイバ入りのポリカーボネイトの成型物であり、ベース1が嵌め込まれる円筒部の内側にはベース1の切り欠き部1h、1iに対応した凸部17a、17bが、円筒部の外側には鏡筒8に設けられた切り欠き部8aに対応した凸部17cがそれぞれ設けられている。スペーサ17には、ベース1及び鏡筒8が高精度に位置決めされた状態で、これらの回転も規制できるように導電性を有する4本のネジ18によって締結され、光源モジュール24が構成される。スペーサ17は、ベース1や鏡筒8に比べて熱伝導率が十分に低いため、ベース1と鏡筒8との間は、熱は伝わりにくくなっているが、導電性を有するネジ18によって締結されているため電気的には導通している。
【0018】
半導体レーザ(以下、LD(Laser Diode))19は、波長が445nmの青色光を発する光源である。LD19は、光軸回転方向(偏光方向)のLDホルダ20に対する相対的な向きが7個全てで同じとしてLDホルダ20に圧入固定されている。LD19及びLDホルダ20は、コリメータレンズ群に対応してそれぞれ7個ある。以下の説明において、LD19を区別する必要がある場合には、LD−I〜LD−VIIと、LDホルダ20を区別する必要がある場合にはLDホルダ−I〜LDホルダ−VIIと表記する。詳細については後述するが、LD19が圧入されたLDホルダ20の上面20aは、ベース1の底面1kと当接するように配置され、この当接面に沿って各LD19の光軸と各コリメータレンズ群の光軸とを所要の位置に調整し、アクリル系紫外線硬化型の接着剤21a、21bでLDホルダ20をベース1に接着固定する。
【0019】
金属製の鏡筒8をプラスチック製のスペーサ17を介して導電性を有するネジ18でベース1に固定することにより、LD19のグランドは、LDホルダ20、ベース1及びネジ18を介して鏡筒8と電気的に接続されるため、LD19を高周波でパルス駆動する際の不要輻射の発生を抑制できる。なお、鏡筒8は、プラスチック製のスペーサ17を介して、後述するペルチェモジュール34に導電性を有するネジを用いて固定してもよい。
【0020】
図4a、図4bは、LDホルダ20の詳細な構成を示す斜視図である。LDホルダ20は略円筒形状であり、外周面には、内面穴20lの中心軸に対して対称な2対の切り欠き部20b、20c及び20d、20eを有する。またLDホルダ20は、ベース1との当接面である上面20aの反対側の下面20fには、LD19の光軸に対して対称な2対の穴部20h、20i及び20j、20kと段落とし部20gとを有する。穴部20h〜20kは、穴部20h、20iの各々の中心を結ぶ線と穴部20j、20kの各々の中心を結ぶ線とが直交するように設けられている。なお、LDホルダ20の円筒内面である内面穴20lは、LD19が挿入される圧入穴20mよりも径が一回り大きい。
【0021】
図5、図6は、LD19が圧入されたLDホルダ20をベース1に接着固定した後の拡大図である。LD19は標準のφ5.6mmのCANパッケージであり、ステムの切り欠き部19aや通電用リード19bを有し、レーザ光は出射窓19cから出射される。LD19の発光点19dは、LDホルダ20の上面20aの高さと一致するように構成されており、光軸位置調整の際にLDホルダ20に傾きが生じても発光点19dの光軸と垂直方向の位置ずれ発生量が最小に抑えられるようになっている。これにより、調芯作業性と製品信頼性とを向上させている。また、LDホルダ20は、LD19が圧入されたとき、LD19の切り欠き部19aによってLDホルダ20の内面穴20lとの間に貫通穴22が形成されるようになっている。つまり、LD19がLDホルダ20に圧入され、ベース1に接着固定された状態では、ベース1の段付き穴1a〜1g及び第1のコリメータレンズ2とLDホルダ20とLD19とによって構成される小室23は、貫通穴22によって外気と繋がるように構成されている。LDホルダ20を固定する接着剤21aは、LDホルダ20の外周側面である切り欠き部20b、20cとベース1の底面1kとにまたがるようにLD19の光軸に対してほぼ対称に4点配置されている。また、接着剤21bは、LDホルダ20の外周側面である切り欠き部20d、20eとベース1の底面1kとにまたがるようにLD19の光軸に対してほぼ対称に配置される。また、図2に示すように、LDホルダ−III〜VIIは、段落ち部20gが同じ方向を向くように配置されているが、LDホルダ−Iは90度、LDホルダ−IIは−90度回転した向きで配置されている。光源モジュール24は以上のように構成されている。
【0022】
略円筒形状のLDホルダ20が中心軸に対して対称に切り欠き部20b、20c及び20d、20eを備え、切り欠き部20b〜20eに接着剤21a、21bを配置することにより、接着しろの増加を抑え、光軸間隔を狭くして装置全体の小型化を図ることができる。さらに、LD19の光軸に対してほぼ対称に複数箇所に接着剤を配置するため、接着剤が硬化収縮や線膨張しても、それらが互いに相殺され、LDホルダ20に位置ズレを発生させない。これにより、光源装置の歩留まりを向上させることができる。
【0023】
次に、動作について説明する。LD19から出射される発散光25aは、第1のコリメータレンズ2及び第2のコリメータレンズ4を有するコリメータレンズ群で平行光25bに変換され、第1の集光レンズ9及び第2の集光レンズ11を有する集光レンズ群でφ400μmの光ファイバ16の端面に集光される。しかしながら、全ての部品精度、組立位置精度は設計中心値から誤差を持っているため、集光点25cが光ファイバ16の端面からずれて損失が発生し、光ファイバ16に入射される光量が低下してしまうことがある。ここで、LD19を光軸と直交する方向に移動させると平行光25bの光軸が傾き、集光点25cを光軸と直交する方向に移動させることができるため、LD19の位置を光軸と直交する方向に調整することにより、LD19の発光点19dの位置ズレ、第1のコリメータレンズ2a〜2g及び第2のコリメータレンズ4a〜4gの光軸位置ズレ、第1の集光レンズ9及び第2の集光レンズ11の傾き、レセプタクル14の位置ズレ等を吸収して、集光点25cを光ファイバ16の端面に合わせることが可能となる。
【0024】
次に、図7〜図10を用いて、調整、固定方法について説明する。可動ブロック26は、不図示の電動微動台によってXYZ方向に駆動され、Z方向に移動可能な先端が尖った2本の調整ピン27a、27bと接着剤を硬化させるための紫外線(以下、UV光(Ultraviolet)を照射する2本のUVファイバ28a、28bが固定されている。ここで、2本の調整ピン27a、27bは、LDホルダ20をベース1の底面1k(図7や図9における+Z方向)に押し付けるように独立して弾性的に支持されている。この時調整ピン27a、27bの押し付ける力は、LDホルダ20がベース1の底面1kから浮かずにしかも当接面においてスムーズに動くようにそれぞれ約0.05N(5g重)に設定している。また、UVファイバ28a、28bは、LDホルダ20の1対の切り欠き部20b、20cとその付近のベース1の底面1kとにスポットで照射されるように配置している。また、LD19には電流を供給するための不図示のソケットが取り付けられ、LD19を所定の電流値で発光できるようになっている。
【0025】
LD19及びLDホルダ20が固定される前の光源モジュール24は、固定ブロック29にガタ無く取り付けられている。なお、構成の理解を容易とするために、固定ブロック29は図7、図9中では破線で示し、その影に位置する部材を透過して示している。また、レセプタクル14には光ファイバ16が取り付けられ、光ファイバ16の反対側の端面から出射されるレーザ光は光パワーメータ30で受光されるようになっている。
【0026】
まずLD−Iを調整、固定する際は、図7、図8に示すように、LD19を圧入したLDホルダ20をセッティングし、1対の穴部20h、20iに調整ピン27a、27bを挿入する。このときLDホルダ20の段落とし部20gは、図8において右側(+X方向)を向くようにセッティングされている。この状態でLD−Iに所定の電流値の電流を通電し、光ファイバ16から出射されるレーザパワーが最大になるように可動ブロック26をXY方向に移動させ、予め計算して求めた規格のパワーよりも大きくなっていることを確認し、接着剤21aをLDホルダ20の外周面の切り欠き部20b、20cとベース1の底面1kとにまたがるようにLD19の光軸に対して4ヶ所塗布し、UVファイバ28a、28bからUV光を照射して硬化させる。以上のように、接着剤21aには遮る物が無く確実にUV光を照射し硬化させることが可能で、しかも接着剤21aはLDホルダ20に対称に塗布されているため、接着剤の硬化収縮や線膨張によるLDホルダ20のズレは発生しにくい。また、LDホルダ20に傾きが生じても、発光点19dの位置ずれは発生しにくいように構成されているため、調整時に光パワーメータ30の値がばらつかず調整作業性が良いとともに、LDホルダ20の傾きに対しても集光点19dの位置が変化しにくく、より信頼性の高い光源装置を提供できる。
【0027】
次に、LD−IIを調整、固定する場合は、図8に示すように接着固定されたLD−Iの左隣に、LD19を圧入したLDホルダ20を、段落とし部20gが左側(−X方向)を向くようにセッティングし、LD−Iと同様に調整、固定する。
【0028】
LD−IIIを固定する場合は、図9、図10に示すように、固定ブロック29を反時計回りに90度回転させた状態でLD19を圧入したLDホルダ20を段落とし部20gが図10において右側(+X方向)を向くようにセッティングし、1対の穴部20h、20iに調整ピン27a、27bを挿入して、LD−Iと同様に調整、固定する。LD−IV〜LD−VIIについても同様である。上記の方法では、LD−III〜LD−VIIを調整、固定する際に固定ブロック29を反時計回りに90度回転させるが、固定ブロックを回転させずに、1対の穴部20j、20kに調整ピン27a、27bを挿入しても同様の調整、固定が可能である。
【0029】
LD−I〜LD−VIIの調整、固定が終了したら、光源モジュール24は調整装置から降ろし、図11に示すように7個のLDホルダ20に対して接着剤21aと同じ種類の接着剤21bをLDホルダ20の外周側面である切り欠き部20d、20eとベース1の底面1kとにまたがるように2点塗布し、7個のLDホルダ20にまとめてUV光を照射して硬化させる。このように、接着剤21bをLDホルダ20に対称に追加塗布、硬化させたため、接着剤21bの硬化収縮によるLDホルダ20の位置ズレが発生しなくなるとともに、LDホルダ20の接着強度を高めることができる。また、接着剤21a、21bは、ベース1とLDホルダ20との当接面近傍で、LD19が固定されたLDホルダ20に対称に配置されているため、接着剤21a、21bの線膨張によるLDホルダ20のずれ及びLD19の光軸位置ずれや光軸の傾きもほとんど発生しないように固定されている。ここで図2に示すようにLDホルダ20のうちLD−III〜LD−VIIは段落ち部20gが同じ方向を向くように配置されているが、LD−Iは90度、LD−IIは逆方向に90度回転した向きで配置されているため、LD19の偏光方向が一定でなく、光ファイバ16に入射されるレーザ光の偏光方向が混ざるため、画像表示したときの映像の色むら(ユニフォミティ)を抑制できる。すなわち、LDホルダ20に対しては偏光方向を揃えて各LD19を圧入し、LDホルダ20の一部の向きを変えてベース1に固定することにより、LD19の偏光方向が混ざり、映像の色むらを抑制される。
【0030】
鏡筒8が固定されたベース1と、LD19が固定されたLDホルダ20との当接面に沿ってレンズとLD19の光軸の位置を調整するため、調整作業を1ヶ所に集約できるとともに、部品寸法や光学特性のばらつきを吸収し、最適位置に調芯可能である。すなわち、LD19が固定されたLDホルダ20を、各光学部品(第1のコリメータレンズ2、第2のコリメータレンズ4、第1の集光レンズ9、第2の集光レンズ11など)が固定されたベース1に対して当接面内で相対的に移動させることにより、1回の位置決め作業でLD19の光軸の位置を調整できる。また、ベース1の当接面とLDホルダ20の側面とで接着するため、LDホルダ20やベース1が紫外線透過性を有していなくても確実な固定が可能となり、耐久性が向上する。さらに、LDホルダ20の下面20fに設けられた位置調整用の凹部(穴部20h〜20k)に調整装置の調整ピン27a、27bを押し当てて位置調整を行うため、ミクロンオーダの位置調整を容易に行えるとともに、接着剤に調整冶具の影が入ることが無く、確実に紫外線を照射できる。
【0031】
以上のようにして、LDホルダ20は接着時及び接着後のずれが発生しないように高い信頼性で接着硬化されるが、接着剤21a、21bは硬化する際にアクリレート系のモノマー(アクリル酸エステルのモノマー)をアウトガスとして発生させ、アウトガスはベース1とLDホルダ20との当接面に形成される面粗さによる数ミクロンの隙間を介して小室23の中に入り込み、ガス状となって存在している。この状態でLD19を点灯すると光子エネルギーによってアウトガスが重合し、微粒子となって周囲に付着する。この付着物は特に光子エネルギー密度が高いLD19の出射窓19cや第1のコリメータレンズ2の表面にも付着し、LD19から出射されるレーザ光の透過率が長時間かけて低下するという不具合を発生させる。これを避けるために、本実施の形態では、図12に示すように、ベース1の底面1k側を減圧装置31に密着取り付けし、7ヶ所の小室23の中に拡散しているアウトガスを貫通穴22からまとめて吸引、除去している。以上のようにして接着剤硬化時に発生するアウトガスは光路上から取り除かれ、LD19の光子エネルギーとの相互作用によって発生する汚れを抑制している。また、一般的にアクリル系UV硬化型接着剤は、熱によってもアウトガスを排出する。したがって、光源モジュール24に熱処理を行うことによって、接着剤21a、21bからのアウトガス成分を出し切る。一例を挙げると、あるアクリル系UV硬化型接着剤は、65℃、9時間の熱処理によって残存アウトガス量をUV硬化のみに比べ10%以下に減らすことができる。また、この際、接着剤21a、21bから発生したアウトガスがベース1とLDホルダ20との当接面の隙間を介して小室23の中に入り込むため、熱処理後に再び図12に示すようにベース1の底面1k側を減圧装置31に密着取り付けし、7ヶ所の小室23の中に拡散されているアウトガスを貫通穴22からまとめて吸引、除去している。以上のようにしてアウトガスは光路上から取り除かれ、LD19の光子エネルギーとの相互作用によって発生する汚れをより抑制し、LD19から出射されるレーザ光の透過率低下を防いでいる。光源モジュール24は以上のようにして調整、組立される。
【0032】
LDホルダ20をベース1に固定するための接着剤21として紫外線硬化型接着剤を用い、紫外線硬化後に熱処理を行って接着剤21からアウトガスを発生させ、ベース1の段付き穴1a〜1g及び第1のコリメータレンズ2とLDホルダ20とLD19とによって構成される小室23内のアウトガスを、貫通穴22から吸引排気することにより、アウトガスの確実な除去と、経時的にアウトガスが発生することの防止とが可能である。
【0033】
図13〜図15は、光源モジュール24に給電手段としてのフレキシブルプリント基板(FPC)32、冷却手段としての放熱ユニット36、光センサ等を組み付けた光源装置全体の構成を示す図であり、図13は分解図、図14は組立後の斜視図、図15は図14における15−15断面図である。LD19に電流を給電するためのFPC32は、耐光性や耐熱性に優れたポリイミドを材料とし、LDホルダ20の段落とし部20gを通り、LD19のアノード及びカソードである通電用リード19bにはんだ付けされている。FPC32は、詳細を図16〜図18に示すように、LD19に取り付けられる略円形のLD取り付け部32aには穴が開いたはんだ付け用のランド32bと先端には凸部32cが形成され、凸部32cがLDホルダ20の内面穴20lと弾性的に接触することにより、通電用リード19bとはんだ付け用ランド32bの穴も片側に押し付けられ(図17、図18参照)、LD取り付け部32aはLD19とはんだ付けする前でもLDホルダ20から抜けずにガタつくこと無く固定されている。このような構成により、はんだ付けするLD19が複数ある場合でも、FPC32のLD取り付け部32aはそれぞれ安定して固定されているため、容易な作業性と高い信頼性とを両立した確実なはんだ付けが可能となっている。また、貫通穴22は、FPC32の凸部32cで塞がれるため、はんだ付け時のフラックスの飛散やその煙などが小室23に入り込みにくくなり、LD19の出射窓19cや第1のコリメータレンズ2の表面に汚れが付着することを防止できる。また、LD19から出射された光の散乱光が貫通穴22から漏れ出すことも防止できるため、漏れ出した散乱光によって周辺に配置された部品から汚れの原因となる物質が発生することを抑制できる。
【0034】
熱伝導シート33は、厚さが0.5mmで弾性を備えたシリコン系の材料で形成されている。ペルチェモジュール34は、ペルチェ素子を備えており、ペルチェ素子に電流を流すことによって表面温度を制御可能である。熱伝導シート35は、熱伝導シート33と同様である。放熱ユニット36は、ヒートブロック36a、ヒートパイプ36b、フィン36cから構成されている。ペルチェカバー37は、スペーサ17と同様にガラスファイバ入りのポリカーボネイトの成型物であり、ベース1とペルチェモジュール34とヒートブロック36aとの位置決めができるように設計されている。4本の固定ネジ38は、ベース1側からペルチェカバー37を介し、ヒートブロック36aに均一に締め付けられる。固定ネジ38がヒートブロック36aに締め付けられることによって熱伝導シート33及び熱伝導シート35が弾性変形し、LDホルダ20、熱伝導シート33、ペルチェモジュール34、熱伝導シート35及びヒートブロック36aが密着固定される。また、ペルチェカバー37は、固定ネジ38を締め付けた状態において、ベース1に固定されているスペーサ17とヒートブロック36aとに接触するような高さに構成されており、ベース1とヒートブロック36aとはこれ以上近づけないようになっているため、固定ネジ38の過度の締め付けや、外部からの振動や衝撃によってペルチェモジュール34に過大な力が加わって破損することを防止できる。
【0035】
また、プラスチック製のペルチェカバー37を介して導電性を有する固定ネジ38でヒートブロック36aをベース1に固定することにより、ペルチェモジュール34が冷却する部分の熱容量が小さくなり、LD19の効率的な冷却が可能となる。すなわち、LD19の冷却のために必要なエネルギーを低減できる。また、LD19の長寿命化を実現できる。
【0036】
光センサモジュール39は、光センサが固定されており、鏡筒8の側面に設けられた穴8bから漏れてきたレーザ光を検出できるようにセンサホルダ40を介し、鏡筒8にネジ41によって固定されている。穴8bの位置及び径は、光センサが飽和しないように設計されている。
【0037】
光源装置の動作について説明する。まず、LD19を発光させる時は、FPC32を外部の制御基板に各LD19が直列に接続された状態で、所要の電流を通電させる。このとき、LD19は発熱するため、ベース1に固定された不図示のサーミスタの温度情報に基づき、LDホルダ20と熱伝導シート33とを介してペルチェモジュール34で所要の温度となるように冷却する。鏡筒8はスペーサ17によってベース1とは熱的に分離されるため、温度調整をする範囲の熱容量が必要以上に大きくならず、効率的な温度調整が可能である。また、ペルチェモジュール34の駆動時に熱伝導シート33とは反対側の面で発生する熱は、熱伝導シート35を介してヒートブロック36aへと伝わり、さらにヒートパイプ36bを介してフィン36cへと伝わって、空気中に放熱される。光センサモジュール39は、LD19が発光しているときに鏡筒8の内面で反射して穴8bから漏れてきたレーザ光を検出することができ、光ファイバ16から出射されているレーザパワーと比較することにより、光ファイバ16に折れや劣化などの異常が無いかを監視し、異常があった場合にはLD19に給電している電流を遮断する非常停止処理に使われる。以上のようにLD19は所要の温度、所要の電流で駆動され、光ファイバ16から正常にパワーが出射していることを監視しながら動作する。
【0038】
本実施の形態にかかる光源装置は、LD19の通電用リード19bとFPC32とを、LDホルダ20の内面穴20lの中ではんだ付けし、LDホルダ20の下面20fに熱伝導シート33を介してペルチェモジュール34を密着配置したことにより、小さいスペースでFPC32の接続ができるとともに、LD19を気密封止することなく容易かつ効率的にLD19の冷却が可能である。
【0039】
また、LD19が固定されるLDホルダ20に外気と繋がる貫通穴を設け、LDホルダの位置調整及び接着固定を行うことによりレーザ光を合成して光ファイバに集光するようにしたため、安価でありながら生産性、信頼性が高い。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明にかかる光源装置は、レーザテレビなどのリアプロジェクタ装置及びフロント投射型プロジェクタ装置などの映像装置の光源として有用である。
【符号の説明】
【0041】
1 ベース
1a、1b、1c、1d、1e、1f、1g 段付き穴
1h、1i、19a、20b、20c、20d、20e 切り欠き部
1j、20a 上面
1k 底面
2 第1のコリメータレンズ
3 第1の間座
4 第2のコリメータレンズ
5 板バネ
6 拘束板
7、15、18、41 ネジ
8 鏡筒
9 第1の集光レンズ
10 第2の間座
11 第2の集光レンズ
12 ネジリング
13 止めネジ
14 レセプタクル
16 光ファイバ
17 スペーサ
19 LD
19b 通電用リード
19c 出射窓
19d 発光点
20 LDホルダ
20f 下面
20g 段落とし部
20h、20i、20j、20k 穴部
20l 内面穴
20m 圧入穴
21a、21b 接着剤
22 貫通穴
23 小室
24 光源モジュール
25a 発散光
25b 平行光
25c 集光点
26 可動ブロック
27a、27b 調整ピン
28a、28b UVファイバ
29 固定ブロック
30 光パワーメータ
31 減圧装置
32 フレキシブルプリント基板(FPC)
33、35 熱伝導シート
34 ペルチェモジュール
36 放熱ユニット
36a ヒートブロック
36b ヒートパイプ
36c フィン
37 ペルチェカバー
38 固定ネジ
39 光センサモジュール
40 センサホルダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のレーザモジュールから発せられたレーザ光を集光して出射させる光源装置であって、
前記レーザモジュールが夫々嵌め込まれて固定される穴を有する筒形状の複数のホルダと、
前記ホルダに固定された複数のレーザモジュールからのレーザ光が通過するための複数の貫通穴を有し、前記レーザモジュールが固定された前記複数のホルダが、前記各貫通穴と前記各ホルダの穴とが接続されるように一方の主面側に当接されるとともに、他方の主面側に各貫通穴に対応して複数のレンズが配される平板状のベースと、
前記ベースと各ホルダとが互いに当接する当接部位の外側の角隅部に配されて、前記ベースと前記ホルダとを固定する接着剤と、
を備えることを特徴とする光源装置。
【請求項2】
前記レーザモジュールの発光点が、前記ベースの一方の主面と略同一な面上に位置することを特徴とする請求項1記載の光源装置。
【請求項3】
前記ホルダは、該ホルダの中心軸に対して対称な複数の切り欠き部を前記外側面に有し、前記切り欠き部に前記接着剤が配置されたことを特徴とする請求項1又は2記載の光源装置。
【請求項4】
前記ホルダと前記ベースとが当接した状態において前記ホルダ、前記ベース、前記レンズ及び前記レーザモジュールによって囲まれる密閉空間と、該密閉空間と前記レーザモジュールを挟んだ反対側の空間とを接続する通気路を有することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載の光源装置。
【請求項5】
前記通気路は、前記接着剤から発生し前記空間内に滞留するアウトガス、又は紫外線硬化型の前記接着剤に熱処理を施すことによって該接着剤から放出されたアウトガスを排気可能であることを特徴とする請求項4記載の光源装置。
【請求項6】
前記ホルダは、前記半導体レーザへの給電用のフレキシブルプリント基板が配置される溝部を前記ベースとの当接面とは反対側に有することを特徴とする請求項1から5のいずれか1項記載の光源装置。
【請求項7】
前記ホルダは、前記レーザモジュールの光軸を中心として軸対称に配置された複数の位置決め用凹部を前記ベースとの当接面とは反対側に有することを特徴とする請求項1から6のいずれか1項記載の光源装置。
【請求項8】
前記複数のホルダに偏光方向を揃えるように前記レーザモジュールを固定し、前記レーザモジュールが固定された複数のホルダを、偏光方向が分散されるように前記ベースに取り付けたことを特徴とする請求項1から7のいずれか1項記載の光源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4a】
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【図4b】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2011−96789(P2011−96789A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−248213(P2009−248213)
【出願日】平成21年10月28日(2009.10.28)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】