説明

光硬化性フィルムおよび成形品の製造方法

【課題】表面粘着性が低減されており保存安定性および印刷適合性などに優れ、かつ、成形性にも優れる光硬化性フィルム、およびこの光硬化性フィルムを用いた成形品の製造方法を提供すること。
【解決手段】光硬化性樹脂組成物層(A)および基材フィルム層(B)を少なくとも有する光硬化性フィルムであって;この光硬化性樹脂組成物層(A)は、重量平均分子量が100000〜150000であり、ガラス転移温度が70〜100℃である、アクリル樹脂(a)、および光重合性多官能モノマー(b)を含み;但しこのアクリル樹脂(a)は、(メタ)アクリロイル基を含まないことを条件とし、および;このアクリル樹脂(a)およびこの光重合性多官能モノマー(b)の重量比(a)/(b)は83/17〜52/48である;光硬化性フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光硬化性フィルムおよびこれを用いた成形品の製造方法に関する。より詳しくは、本発明は、表面粘着性が低減されており保存安定性および印刷適合性などに優れ、かつ、成形性にも優れる光硬化性フィルム、およびこの光硬化性フィルムを用いた、表面硬度・耐擦傷性に優れる成形品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
成形物を加飾する方法の1つとして、加飾層を有するフィルムを成形物表面に設ける方法が挙げられる。このような加飾成形品の成型方法としては、例えば、
・加飾層を有するフィルムを金型内に挿入しておき、そしてこの金型に溶融樹脂を注入して、樹脂の射出成形時の熱、圧力により加飾層を有するフィルムと樹脂とを一体化させる方法(インモールド法などと言われる)、なおこの方法においては、光硬化性フィルムをその軟化点以上に軟化させ、射出成形用金型に設けられた吸引孔を通じて真空吸引することにより光硬化性フィルムを金型形状に追従させることができ、あるいは、光硬化性フィルムを成形せずに、成形樹脂の射出圧により、光硬化性フィルムの成形及び成形樹脂との一体化を同時に行うこともできる、
・加飾層を有するフィルムを、真空成形などにより予め立体形状に賦形しておき、次いで成形したフィルムを金型内に挿入し、溶融樹脂を流動状態の樹脂を型内に射出して樹脂と賦形したフィルムとを一体化する方法(インサートモールド法などと言われる)、
・加飾層を有するフィルムを、成形物の表面に設ける方法であって、チャンバーボックス内の減圧および加圧によって、加飾層を有するフィルムを成形物表面に被覆する方法(3次元加飾工法、TOM(Three dimension Overlay Method)工法などと言われる)、
などが挙げられる。このような方法によって、意匠性に優れる加飾成形品を得ることができる。
【0003】
ところで成形品においては、成形品表面の耐擦傷性および耐磨耗性の向上もまた求められている。そして成形品表面の耐擦傷性および耐磨耗性を向上させる方法として、例えば、上記のような加飾層を有するフィルムの最表面に、耐擦傷性および耐磨耗性に優れた、良好な硬度を有する表面保護層を設けたものを用いて、上記インモールド法またはインサートモールド法により加飾成形品を成形する方法が挙げられる。例えば特開2007−291380号公報(特許文献1)には、電離放射線硬化性樹脂および(メタ)アクリル酸メチルを含むポリマーを含む樹脂組成物を架橋硬化した表面保護層を有する加飾シートが開示されている。しかしながらこのような加飾シート(加飾フィルム)は、表面保護層の硬度が高く耐擦傷性および耐磨耗性に優れる一方で、表面保護層の硬度が高いことから成形品に対する形状追従性が劣り、深絞り成形に適さないという問題がある。
【0004】
成形品表面の耐擦傷性および耐磨耗性を向上させる他の方法として、熱および光硬化性樹脂組成物を含む表面保護層を、加熱により半硬化させたフィルムを用いる方法が挙げられる。例えば特開2000−79796号公報(特許文献2)には、熱および活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の熱反応体でなる表面保護層を有するインサート成形品製造用積層フィルムが記載されている。このようなフィルムを用いてインサートモールド法などを行い、そして成形後に表面保護層を光硬化させることによって、成形品に対する形状追従性が良好であり、かつ、良好な硬度を有する表面保護層を設けることができる。しかしながらこのように表面保護層を半硬化させる方法は、半硬化時にタックが残り、加飾層やプライマー層の形成時に異常が発生したり、加熱による半硬化を発現させるためにイソシアネートを含有することによる貯蔵安定性に劣るという問題がある。
【0005】
成形品表面の耐擦傷性および耐磨耗性を向上させる他の方法として、光硬化性樹脂組成物を含む表面保護層を有する光硬化性シートを用いて、インサートモールド法などにより成形を行い、得られた成形品に光を照射して光硬化させる方法が挙げられる。例えば特開2004−35818号公報(特許文献3)には、側鎖にラジカル重合性不飽和基を有する熱可塑性樹脂(a−1)、光重合開始剤(a−2)および無機微粒子(a−3)を含み、(a−1)以外の架橋性化合物を実質的に含まない光硬化性樹脂組成物の層を含む光硬化性シートが記載されている。しかしながら、このようにラジカル重合性不飽和基の濃度が高い場合、光硬化時の体積収縮が大きく、成形後の光硬化工程において得られるハードコート層にワレが生じるおそれがある。
【0006】
【特許文献1】特開2007−291380号公報
【特許文献2】特開2000−79796号公報
【特許文献3】特開2004−35818号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記従来の問題を解決するものであり、その目的とするところは、成形品に対する形状追従性に優れ、かつ、良好な表面硬度を有する成形品を得ることができ、さらに表面粘着性が低減されており保存性および印刷適合性などに優れる、光硬化性フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、
光硬化性樹脂組成物層(A)および基材フィルム層(B)を少なくとも有する光硬化性フィルムであって、
この光硬化性樹脂組成物層(A)は、
重量平均分子量が100000〜150000であり、ガラス転移温度が70〜100℃である、アクリル樹脂(a)、
光重合性多官能モノマー(b)、および
光重合開始剤(c)
を含み、
但しこのアクリル樹脂(a)は、(メタ)アクリロイル基を含まないことを条件とし、および
このアクリル樹脂(a)およびこの光重合性多官能モノマー(b)の重量比(a)/(b)は83/17〜52/48である、
光硬化性フィルム、を提供するものであり、これにより上記目的が達成される。
【0009】
上記アクリル樹脂(a)は、水酸基価10〜50mgKOH/gであるのがより好ましい。
【0010】
上記光硬化性樹脂組成物層(A)がさらに、下記式(I):
【化1】

[式中、Xは、ポリエーテル骨格を有するポリオール化合物の両末端の水酸基を除いた残基を示す。]
で示される構造を有する、両末端それぞれに少なくとも1つの(メタ)アクリレート基を有するポリエーテル骨格含有ウレタン(メタ)アクリレート(d)を含むのが好ましい。
【0011】
本発明はさらに、上記光硬化性フィルムの基材フィルム層(B)上にさらに、プライマー層および加飾層の少なくとも1種が形成されている、光硬化性フィルムも提供する。
【0012】
本発明はまた、上記光硬化性フィルムの光硬化性樹脂組成物層(A)上にさらに、プライマー層および加飾層の少なくとも1種が形成されている、光硬化性フィルムも提供する。
【0013】
本発明はさらに、下記工程
上記光硬化性フィルムを、光硬化性樹脂組成物層(A)が金型の内壁面と対面するように配置し挿入する、光硬化性フィルム挿入工程、
金型を閉じて溶融樹脂を金型内に射出し、次いで射出した樹脂を固化させることにより、光硬化性フィルムが表面に配置された成形品を形成する、成形品形成工程、および
得られた成形品に活性エネルギー線を照射し、成形品表面の光硬化性樹脂組成物層(A)を硬化させる、硬化工程、
を包含する、上記光硬化性フィルムを用いる成形品の製造方法も提供する。
【0014】
本発明はまた、下記工程
上記光硬化性フィルムを、基材フィルム層(B)が金型の内壁面と対面するように配置し挿入する、光硬化性フィルム挿入工程、
金型を閉じて溶融樹脂を金型内に射出し、次いで射出した樹脂を固化させることにより、基材フィルム層(B)が表面に配置された成形品を形成する、成形品形成工程、
得られた成形品に活性エネルギー線を照射し、基材フィルム層(B)の下層である光硬化性樹脂組成物層(A)を硬化させる、硬化工程、および
成形品表面に存在する基材フィルム層(B)を取り除く、基材フィルム除去工程、
を包含する、上記光硬化性フィルムを用いる成形品の製造方法も提供する。
【0015】
本発明はまた、下記工程
上記光硬化性フィルムを、チャンバーボックス内において、光硬化性樹脂組成物層(A)が最表面となるように成形物の表面に配置させる、光硬化性フィルム配置工程、
チャンバーボックスを減圧し、光硬化性フィルムを成形物に追従させる、光硬化性フィルム成形工程、
チャンバーボックス内を光硬化性フィルム側から加圧し、光硬化性フィルムによって被覆された成形品を得る、被覆工程、および
得られた成形品に活性エネルギー線を照射し、成形品表面の光硬化性樹脂組成物層(A)を硬化させる、硬化工程、
を包含する、上記光硬化性フィルムを用いる成形品の製造方法も提供する。
【0016】
本発明はまた、下記工程
上記光硬化性フィルムを、チャンバーボックス内において、基材フィルム層(B)が最表面となるように成形物の表面に配置させる、光硬化性フィルム配置工程、
チャンバーボックスを減圧し、光硬化性フィルムを成形物に追従させる、光硬化性フィルム成形工程、
チャンバーボックス内を光硬化性フィルム側から加圧し、光硬化性フィルムによって被覆された成形品を得る、被覆工程、
得られた成形品に活性エネルギー線を照射し、基材フィルム層(B)の下層である光硬化性樹脂組成物層(A)を硬化させる、硬化工程、および
成形品表面に存在する基材フィルム層(B)を取り除く、基材フィルム除去工程、
を包含する、上記光硬化性フィルムを用いる成形品の製造方法も提供する。
【0017】
本発明はさらに、上記成形品の製造方法によって得られる成形品も提供する。
【発明の効果】
【0018】
本発明の光硬化性フィルムに含まれる光硬化性樹脂組成物層(A)は、光硬化性フィルムの状態においては、未硬化の状態である。そのため、成形品に対する形状追従性に優れているという利点を有する。そしてこの光硬化性樹脂組成物層(A)はさらに、未硬化の状態であっても、アクリル樹脂(a)がもつ高い重量平均分子量と高いガラス転移温度の効果により表面粘着性が低減されているという利点がある。そのため、光硬化性フィルム保管時における、光硬化性樹脂組成物層(A)の他の基材などへの転移の発生が低減されているという利点がある。さらに光硬化性樹脂組成物層(A)の表面粘着性が低減されていることによって、この光硬化性樹脂組成物層(A)の上に、例えば印刷層、蒸着層またはプライマー層などを設ける操作が容易となる、つまり印刷適合性が優れる、という利点もある。そしてこの光硬化性樹脂組成物層(A)は、光硬化後は、良好な硬度を有するハードコートとなる。そのため、成形品の耐磨耗性および耐擦傷性を向上できるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
光硬化性フィルム
本発明の光硬化性フィルムは、光硬化性樹脂組成物層(A)および基材フィルム層(B)を少なくとも有する光硬化性フィルムである。そしてこの光硬化性樹脂組成物層(A)は、
重量平均分子量が100000〜150000であり、ガラス転移温度が70〜100℃である、アクリル樹脂(a)
光重合性多官能モノマー(b)、および
光重合開始剤(c)
が含まれる。ここでアクリル樹脂(a)は、(メタ)アクリロイル基を含まないことを条件としており、またアクリル樹脂(a)および光重合性多官能モノマー(b)の重量比(a)/(b)は83/17〜52/48である。そしてこの光硬化性樹脂組成物層(A)は、成形後に光硬化させることによって、高い硬度を有するハードコート層となる。以下、光硬化性樹脂組成物層(A)に含まれる各成分について順次説明する。
【0020】
アクリル樹脂(a)
本発明の光硬化性フィルムを構成する光硬化性樹脂組成物層(A)に含まれるアクリル樹脂(a)は、
重量平均分子量が100000〜150000であり、ガラス転移温度が70〜100℃であること、および
アクリル樹脂(a)には、(メタ)アクリロイル基が含まれないこと、
を条件とするものである。
そして本発明の光硬化性フィルムにおいては、光硬化性樹脂組成物層(A)にこのようなアクリル樹脂(a)が含まれることによって、光硬化性樹脂組成物層(A)が光硬化前の状態であっても、表面粘着性が低く良好に保存することができ、さらに光硬化性樹脂組成物層(A)が光硬化前の状態であっても、アクリル樹脂(a)として10〜50mgKOH/gの水酸基価を有する材料を選択することによって光硬化性樹脂組成物層(A)の上に形成された加飾層および/またはプライマー層との間の密着性をさらに改善することができることとなるという利点がある。
【0021】
アクリル樹脂(a)は、上記条件を満たすものであれば特に制限なく用いることができる。上記条件を満たすアクリル樹脂(a)として、例えば、スチレンまたはスチレンのα−、o−、m−、p−アルキル、アルコキシ、ハロゲン、ハロアルキル、ニトロ、シアノ、アミド、エステルにより置換された置換誘導体;ブタジエン、イソプレン、ネオプレン等のオレフィン類;o−、m−、p−ヒドロキシスチレンまたはこれらのアルキル、アルコキシ、ハロゲン、ハロアルキル、ニトロ、シアノ、アミド、エステルもしくはカルボキシにより置換された置換誘導体;ビニルヒドロキノン、5−ビニルピロガロール、6−ビニルピロガロール、1−ビニルフロログリシノール等のポリヒドロキシビニルフェノール類;メタクリル酸またはアクリル酸のメチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、sec−ブチル、ter−ブチル、ペンチル、ネオペンチル、イソアミルヘキシル、シクロヘキシル、アダマンチル、アリル、プロパギル、フェニル、ナフチル、アントラセニル、アントラキノニル、ピペロニル、サリチル、シクロヘキシル、ベンジル、フェネシル、クレシル、イソボロニル、トリフェニルメチル、ジシクロペンタニル、クミル、3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピル、3−(N,N−ジメチルアミノ)エチル、フリルもしくはフルフリルエステル;メタクリル酸またはアクリル酸のアニリドもしくはアミド、またはN,N−ジメチル、N,N−ジエチル、N,N−ジプロピル、N,N−ジイソプロピルもしくはアントラニルアミド;アクリロニトリル、アクロレイン、メタクリロニトリル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、N−ビニルピロリドン、ビニルピリジン、酢酸ビニル、N−フェニルマレインイミド、N−(4−ヒドロキシフェニル)マレインイミド、N−メタクリロイルフタルイミド、N−アクリロイルフタルイミド;などの、重合性不飽和モノマーを、1種またはそれ以上用いることによって、調製することができる。
【0022】
アクリル樹脂(a)の調製においては、N−メチロールアクリルアミド、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレートなどの水酸基を有する不飽和モノマーを、さらに用いてもよい。これらの水酸基を有する不飽和モノマーを用いてアクリル樹脂(a)を調製することによって、アクリル樹脂(a)中に水酸基を導入することができる。
【0023】
アクリル樹脂(a)の調製にはまた、必要に応じて、グリシジル(メタ)アクリレート、β−メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキサニル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテルなどの、エポキシ基含有不飽和モノマーを用いてもよい。これらのエポキシ基含有不飽和モノマーを用いてアクリル樹脂(a)を調製することによって、アクリル樹脂(a)中にエポキシ基を導入することができる。
【0024】
アクリル樹脂(a)は、上記のような不飽和モノマーを、必要に応じて溶媒に溶解し、そして必要に応じて加熱し、重合開始剤を加えて共重合させることによって、調製することができる。アクリル樹脂(a)の共重合反応においては、必要に応じて連鎖移動剤を用いることができる。なおアクリル樹脂(a)の調製において用いることができる、重合開始剤、溶媒および連鎖移動剤は、当業者に通常用いられるものを用いることができる。
【0025】
不飽和二重結合含有アクリル共重合体の共重合において用いることができる溶媒として、例えばエタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、エチレングリコール等のアルコール類、アセトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−ブトキシエタノール等のセルソルブ類、2−(2−メトキシエトキシ)エタノール、2−(2−エトキシエトキシ)エタノール、2−(2−ブトキシエトキシ)エタノール等のカルビトール類、メチルアセテート、エチルアセテート、n−ブチルアセテート、エチルラクテート、n−ブチルラクテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールジアセテート、グリセリントリアセテート等のエステル類、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル等が挙げられる。これらの溶媒の使用量は、反応原料であるモノマー総量100重量部当たり、好ましくは20〜1000重量部である。
【0026】
アクリル樹脂(a)の共重合において用いることができる重合開始剤としては、一般的にラジカル重合開始剤として知られているものが使用でき、例えば2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス−(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)などのアゾ化合物;ベンゾイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、t−ブチルペルオキシピバレート、1,1’−ビス−(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、ターシャルブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエートなどの有機過酸化物;および過酸化水素が挙げられる。ラジカル重合開始剤として過酸化物を用いる場合には、過酸化物を還元剤とともに用いてレドックス型開始剤として用いてもよい。
【0027】
アクリル樹脂(a)の共重合において用いることができる連鎖移動剤としては、n−ブチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ブチルメルカプタン、チオグリコール酸エチル、チオグリコール酸2−エチルヘキシル、2−メルカプトエタノール等のメルカプタン類、クロロホルム、四塩化炭素、四臭化炭素等のハロゲン化アルキル類等を挙げることができる。なお共重合は、例えば60〜150℃で3〜48時間撹拌することによって行うことができる。
【0028】
本発明において、アクリル樹脂(a)の重量平均分子量は、100000〜150000である。この重量平均分子量は、100000〜130000であるのがより好ましい。なお本明細書における重量平均分子量は、ポリスチレン換算による重量平均分子量を意味する。アクリル樹脂(a)の重量平均分子量が上記範囲であることによって、アクリル樹脂(a)が含まれる光硬化性樹脂組成物層(A)が光硬化前の状態であっても、表面粘着性が低く良好に保存することができ、さらに光硬化性樹脂組成物層(A)が光硬化前の状態であっても印刷などの加工を行うことができることとなるという利点がある。さらに、アクリル樹脂(a)の重量平均分子量が上記範囲であることによって、光硬化性樹脂組成物層(A)を光硬化することによって得られるハードコート層の耐磨耗性および耐擦傷性が高いレベルで維持されることとなるという利点もある。
【0029】
本発明におけるアクリル樹脂(a)はまた、ガラス転移温度が70〜100℃である。アクリル樹脂(a)のガラス転移温度が上記範囲であることによって、アクリル樹脂(a)が含まれる光硬化性樹脂組成物層(A)が光硬化前の状態であっても、表面粘着性が低く良好に保存することができ、さらに光硬化性樹脂組成物層(A)が光硬化前の状態であっても印刷などの加工を行うことができることとなるという利点がある。また、成形品の製造時における金型剥離性が良好なものとなるという利点もある。なお本明細書におけるアクリル樹脂(a)のガラス転移温度の測定は、示差走査熱量測定装置を用いたDSC法によって測定することができる。
【0030】
また本発明のアクリル樹脂(a)は、(メタ)アクリロイル基を有さないことを条件とする。アクリル樹脂(a)が(メタ)アクリロイル基が有さないということは、アクリル樹脂(a)が光硬化に関与する不飽和基を持たないということであり、光硬化性樹脂組成物層(A)が光硬化する場合においても、光重合性多官能モノマー(b)および必要に応じたポリエーテル骨格含有ウレタン(メタ)アクリレート(d)等との光硬化反応に関与せず、ハードコート層中にそのまま共存することとなる。そしてアクリル樹脂(a)がそのまま存在することによって、ハードコート層に応力緩和機能が付されることとなる。これにより、得られるハードコート層においてワレの発生を防止することができるという利点がある。
【0031】
アクリル樹脂(a)は、水酸基価が10〜50mgKOH/gであるのがより好ましい。アクリル樹脂(a)の水酸基価が上記範囲であることによって、光硬化性樹脂組成物層(A)と基材フィルム層(B)との密着性がより向上するという利点がある。アクリル樹脂(a)の水酸基価が前記の好ましい範囲を下回ると密着性を改善する効果が得られない場合があり、好ましい範囲を上回ると得られる塗膜の耐湿性が低下する恐れがあり好ましくない。
【0032】
光重合性多官能モノマー(b)
本発明における光硬化性樹脂組成物層(A)には、光重合性多官能モノマー(b)が含まれる。光重合性多官能モノマー(b)が含まれることによって、光硬化性樹脂組成物層(A)が良好な光硬化性を有することとなり、かつ、得られるハードコート層の機械的強度(耐磨耗性および耐擦傷性など)が高まることとなる。光重合性多官能モノマー(b)は、一分子中に2個以上の光重合性基を有する化合物であることが好ましく、光重合性多官能モノマー(b)として、分子中に2個以上の(メタ)アクリレート基を有する化合物であることがさらに好ましい。特に、光重合性多官能モノマー(b)として、3個以上の(メタ)アクリレート基を有する化合物が好ましい。
【0033】
光重合性多官能モノマー(b)としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレートなどのアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート;ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートなどの低分子量ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートまたはそのアルキレンオキシド変成体;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジまたはトリまたはテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタまたはヘキサ(メタ)アクリレートなどのポリオールポリ(メタ)アクリレートまたはそのアルキレンオキサイド変成体;イソシアヌル酸アルキレンオキシド変成体のジまたはトリ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらの光重合性多官能モノマー(b)は、1種を単独で用いてもよく、また2種以上を併用してもよい。
【0034】
光重合性多官能モノマー(b)として、一分子中に3個またはそれ以上の(メタ)アクリレート基を有するモノマーを用いるのが好ましい。このようなモノマーを用いることによって、得られるハードコート層の機械的強度をより高めることができる。好ましい光重合性多官能モノマー(b)として、例えばペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールプロパンEO変性トリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートなどが挙げられる。
【0035】
本発明における光硬化性樹脂組成物層(A)において、上記アクリル樹脂(a)および光重合性多官能モノマー(b)の重量比(a)/(b)は、83/17〜52/48であることを条件とする。重量比(a)/(b)が上記範囲を超える場合、すなわちアクリル樹脂(a)の量が上記範囲より多い場合は、得られるハードコート層の硬度が低下することとなる。また、重量比(a)/(b)が上記範囲未満である場合、すなわち光重合性多官能モノマー(b)の量が上記範囲より多い場合は、光硬化性樹脂組成物層(A)の表面粘着性が増大し、光硬化性の保存安定性および印刷適合性などが劣ることとなる。
【0036】
光重合開始剤(c)
本発明における光硬化性樹脂組成物層(A)には、光重合開始剤(c)が含まれる。光重合開始剤(c)が存在することによって、紫外線などの活性エネルギー線照射に対する光硬化性樹脂組成物層(A)の光硬化性が向上することとなる。光重合開始剤(c)として、光ラジカル重合開始剤(c−1)および光カチオン重合開始剤(c−2)が挙げられる。
【0037】
光ラジカル重合開始剤(c−1)の例として、例えば、アルキルフェノン系光重合開始剤、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤、チタノセン系光重合開始剤、オキシムエステル系重合開始剤などが挙げられる。アルキルフェノン系光重合開始剤として、例えば2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ヒロドキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノンなどが挙げられる。アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤として、例えば2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイドなどが挙げられる。チタノセン系光重合開始剤として、例えば、ビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウムなどが挙げられる。オキシムエステル系重合開始剤として、例えば、1.2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(0−アセチルオキシム)、オキシフェニル酢酸、2−[2−オキソ−2−フェニルアセトキシエトキシ]エチルエステル、2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチルエステルなどが挙げられる。さらには、ベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸メチル、2,4−ジエチルチオキサントン、2−エチルアントラキノン、カンファーキノンなどの水素引き抜き型開始剤を用いることもできる。これらの光ラジカル重合開始剤(c−1)は、1種を単独で用いてもよく、また2種以上を併用してもよい。
【0038】
上記光ラジカル重合開始剤(c−1)のうち、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1および2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オンなどがより好ましく用いられる。
【0039】
光カチオン重合開始剤(c−2)の具体例として、例えばジアリールヨードニウム塩類、トリアリールスルホニウム塩類などが挙げられる。ジアリールヨードニウム塩類として具体的には、ジフェニルヨードニウム、4,4’−ジクロロジフェニルヨードニウム、4,4’−ジメトキシジフェニルヨードニウム、4,4’−ジターシャリーブチルジフェニルヨードニウム、3,3’−ジニトロジフェニルヨードニウムなどのジアリールヨードニウムの、テトラフルオロボレート、ヘキサフルオロホスフェート、ヘキサフルオロアルセネート、ヘキサフルオロアンチモネート、トリフルオロメタンスルホネート、9,10−ジメトキシアントラセン−2−スルホネート等が挙げられる。トリアリールスルホニウム塩類として具体的には、トリフェニルスルホニウム、4−ターシャリーブチルトリフェニルスルホニウム、トリス(4−メチルフェニル)スルホニウム、トリス(4−メトキシフェニル)スルホニウム、4−チオフェニルトリフェニルスルホニウムなどのスルホニウムのテトラフルオロボレート、ヘキサフルオロホスフェート、ヘキサフルオロアルセネート、ヘキサフルオロアンチモネート、トリフルオロメタンスルホネート、9,10−ジメトキシアントラセン−2−スルホネート等が挙げられる。これらを単独で使用してもよく、また2種以上を併用してもよい。
【0040】
光重合開始剤(c)に光ラジカル重合開始剤(c−1)が含まれることによって、光重合性多官能モノマー(b)の光硬化性が向上することとなる。そして光重合開始剤(c)にさらに光カチオン重合開始剤(c−2)が含まれることによって、アクリル樹脂(a)がエポキシ基を含む場合におけるカチオン重合性が向上することとなる。これにより、酸素による重合阻害を受けにくくなりハードコート表面の硬度や耐擦傷性を向上させることができるという利点がある。このように本発明においては、光重合開始剤(c)として、光ラジカル重合開始剤(c−1)および光カチオン重合開始剤(c−2)を含むものを用いるのがより好ましい。なお本発明においては、光重合開始剤(c)として、光ラジカル重合開始剤(c−1)および光カチオン重合開始剤(c−2)は、それぞれ単独で使用することも、併用する事も可能である。
【0041】
ポリエーテル骨格含有ウレタン(メタ)アクリレート(d)
本発明における光硬化性樹脂組成物層(A)は、必要に応じて、ポリエーテル骨格含有ウレタン(メタ)アクリレート(d)を含んでもよい。光硬化性樹脂組成物層(A)に、ポリエーテル骨格含有ウレタン(メタ)アクリレート(d)が含まれることによって、耐指紋性が向上したハードコート層が得られるという利点がある。なお本明細書における「耐指紋性」とは、ハードコート層の表面上に指紋跡がつかない、または指紋跡がついたとしても簡単に拭き取ることができるという性質を意味する。
【0042】
本発明における光硬化性樹脂組成物層(A)において、必要に応じて用いることができるポリエーテル骨格含有ウレタン(メタ)アクリレート(d)は、
(i)分子の両末端それぞれに少なくとも1つの(メタ)アクリレート基を有すること、
(ii)下記式(I):
【0043】
【化2】

[式中、Xは、ポリエーテル骨格を有するポリオール化合物の両末端の水酸基を除いた残基を示す。]
で示される構造を有すること、を条件とするものである。このポリエーテル骨格含有ウレタン(メタ)アクリレート(d)はさらに、
(iii)水トレランスが6.0ml以下であり、溶解性パラメータが12以下である、
ことが好ましい。これらの条件を満たすことによって、より良好な耐指紋性が発現することとなる。
【0044】
ポリエーテル骨格含有ウレタン(メタ)アクリレート(d)が、上記式(I)で示される、ウレタン結合を介したポリエーテル構造を有することによって、優れた耐指紋性が得られることとなる。またポリエーテル骨格含有ウレタン(メタ)アクリレート(d)が、両末端それぞれに少なくとも1つの(メタ)アクリレート基を有することによって、良好な耐擦傷性が得られることとなる。
【0045】
なおポリエーテル骨格含有ウレタン(メタ)アクリレート(d)のウレタン(メタ)アクリレートは、分枝構造を有していてもよい。そしてこの場合において「両末端」とは、分子鎖が最長となる状態における両方の末端を意味する。そしてこのような分枝構造を有する場合は、分枝鎖の末端においても少なくとも1つの(メタ)アクリレート基を有してもよい。
【0046】
上記式(I)で示される構造を有する、両末端それぞれに少なくとも1つの(メタ)アクリレート基を有するポリエーテル骨格含有ウレタン(メタ)アクリレート(d)として、例えば、ポリエーテル骨格を有するポリオール化合物(i)とポリイソシアネート(ii)と水酸基含有(メタ)アクリレートモノマー(iii)との反応物が挙げられる。
【0047】
ポリエーテル骨格を有するポリオール化合物(i)としては、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ジブチレングリコール、ポリブチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、ビスフェノールAポリエトキシジオール、ポリカプロラクトン、および、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、エチレンオキサイド/プロピレンオキサイドのブロックまたはランダム共重合の少なくとも1種の構造を有する、ポリエーテルポリオール;トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ポリトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ポリペンタエリスリトール、ソルビトール、マンニトール、グリセリン、ポリグリセリン、ポリテトラメチレングリコールなどの多価アルコールをポリエーテル変性した、ポリエーテル骨格を含む多価アルコール;上記ポリエーテルポリオールと無水マレイン酸、マレイン酸、フマール酸、無水イタコン酸、イタコン酸、アジピン酸、イソフタル酸などの多塩基酸との縮合物であるポリエステルポリオール;ポリエーテルポリオールをカプロラクトン変性したカプロラクトン変性ポリオール;などが挙げられる。
【0048】
ポリイソシアネート(ii)としては、例えば、芳香族系、脂肪族系、脂環式系などのポリイソシアネートが挙げられ、中でもトリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水添化ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリフェニルメタンポリイソシアネート、変性ジフェニルメタンジイソシアネート、水添化キシリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、フェニレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、リジントリイソシアネート、ナフタレンジイソシアネートなどのポリイソシアネート或いはこれらポリイソシアネートの三量体化合物、ビューレット型ポリイソシアネート、水分散型ポリイソシアネート、またはこれらポリイソシアネートとポリオールの反応生成物などを挙げることができる。
【0049】
水酸基含有(メタ)アクリレートモノマー(iii)は、(メタ)アクリレート基を1つ有する単官能モノマーであってもよく、(メタ)アクリレート基を2またはそれ以上有する多官能モノマーであってもよい。単官能モノマーとして、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェート、2−(メタ)アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシプロピルフタレート、カプロラクトン変性2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどを挙げることができる。多官能モノマーとして、例えば、2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイロキシプロピル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートなどを挙げることができる。
【0050】
両末端それぞれに少なくとも1つの(メタ)アクリレート基を有する、ポリエーテル骨格含有ウレタン(メタ)アクリレート(d)は、ポリエーテル骨格を有するポリオール化合物(i)、ポリイソシアネート(ii)および水酸基含有(メタ)アクリレートモノマー(iii)を反応させることによって調製することができる。この調製において、例えばポリエーテル骨格を有するポリオール化合物(i)、ポリイソシアネート(ii)および水酸基含有(メタ)アクリレートモノマー(iii)を一度に反応させてもよく、あるいは、例えばポリエーテル骨格を有するポリオール化合物(i)とポリイソシアネート(ii)とを反応させた後、水酸基含有(メタ)アクリレートモノマー(iii)を反応させてもよい。
【0051】
ポリエーテル骨格を有するポリオール化合物(i)とポリイソシアネート(ii)との反応は、ポリオール化合物(i)の水酸基1当量に対して、ポリイソシアネート(ii)のイソシアネート基1.1〜2.5当量を反応させるのが好ましく、1.3〜2.0当量を反応させるのが特に好ましい。反応温度は、70〜100℃が好ましく、反応時間は、1〜20時間程度が好ましい。このポリオール化合物(i)とポリイソシアネート(ii)との反応においては、ブチルチンジラウレートのような金属系触媒または1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7のようなアミン系触媒などを用いて、反応を促進させるのがより好ましい。
【0052】
ポリエーテル骨格を有するポリオール化合物(i)、ポリイソシアネート(ii)および水酸基含有(メタ)アクリレートモノマー(iii)を一度に反応させる場合においては、水酸基含有(メタ)アクリレートモノマー(iii)の量は、ポリイソシアネート(ii)1当量に対して1.0〜1.5当量を用いるのが好ましく、1.0〜1.3当量用いるのがより好ましい。反応温度は、60〜100℃が好ましく、反応時間は、1〜20時間であるのが好ましい。
【0053】
また、ポリエーテル骨格を有するポリオール化合物(i)とポリイソシアネート(ii)とを反応させた後、水酸基含有(メタ)アクリレートモノマー(iii)を反応させる場合においては、ポリオール化合物(i)およびポリイソシアネート(ii)の反応物のイソシアネート基1当量に対して、水酸基含有(メタ)アクリレートモノマー(iii)の水酸基0.95〜1.5当量を反応させるのが好ましく、1.0〜1.1当量を反応させるのが特に好ましい。反応温度は、60〜100℃が好ましく、反応時間は、1〜20時間であるのが好ましい。
【0054】
両末端それぞれに少なくとも1つの(メタ)アクリレート基を有する、ポリエーテル骨格含有ウレタン(メタ)アクリレート(d)は、重量平均分子量が3000〜50000であるのがより好ましい。なおここでいう平均分子量は、重量平均分子量であり、ポリスチレンを標準として用いて、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)の測定結果から算出することができる。
【0055】
本発明においては、ポリエーテル骨格含有ウレタン(メタ)アクリレート(d)として、水トレランスが6.0ml以下であり、溶解性パラメータが12以下であるものがより好ましく用いられる。成分(d)の水トレランスが6.0ml以下であり、溶解性パラメータが12以下であることによって、良好な耐指紋性が得られることとなる。
【0056】
水トレランスとは親水性の度合を評価するものであり、その値が高いほど親水性が高いことを意味する。上記水トレランスの測定方法は、23℃の条件下で、100mlビーカー内に上記ウレタン変性ポリエステル樹脂0.5gをテトラヒドロフラン10mlに混合して分散させ、この混合物にビュレットを用い、イオン交換水を徐々に加え、この混合物が白濁を生じるまでに要するイオン交換水の量(ml)を測定する。このイオン交換水の量(ml)を水トレランスと定義する。
【0057】
溶解性パラメータ(solubility parameter、SP値と略記することもある。)とは、溶解性の尺度となるものである。SP値は数値が大きいほど極性が高く、数値が小さいほど極性が低いことを示す。なおポリエーテル骨格含有ウレタン(メタ)アクリレート(d)が2種以上の混合物である場合のSP値は、各成分の溶解性パラメータの平均値をSP値とする。
【0058】
SP値は次の方法によって実測することができる[参考文献:SUH、CLARKE、J.P.S.A−1、5、1671〜1681(1967)]。
【0059】
測定温度:20℃
サンプル:樹脂0.5gを100mlビーカーに秤量し、良溶媒10mlをホールピペットを用いて加え、マグネティックスターラーにより溶解する。
溶媒:
良溶媒…ジオキサン、アセトンなど
貧溶媒…n−ヘキサン、イオン交換水など
濁点測定:50mlビュレットを用いて貧溶媒を滴下し、濁りが生じた点を滴下量とする。
【0060】
ポリエーテル骨格含有ウレタン(メタ)アクリレート(d)のSP値δは次式によって与えられる。
【0061】
【数1】

【数2】

【数3】

【0062】
Vi:溶媒の分子容(ml/mol)
φi:濁点における各溶媒の体積分率
δi:溶媒のSP値
ml:低SP貧溶媒混合系
mh:高SP貧溶媒混合系
【0063】
ポリエーテル骨格含有ウレタン(メタ)アクリレート(d)の水トレランスが6.0ml以下であり、溶解性パラメータが12以下であることによって、良好な耐指紋性が得られることとなる理由は、理論に拘束されるものではないが以下のように考えられる。ポリエーテル骨格含有ウレタン(メタ)アクリレート(d)はウレタン基を有しているため、局部的に極性が高い部分構造を持つ。一方、ポリエーテル骨格含有ウレタン(メタ)アクリレート(d)は、水トレランスが6.0ml以下であることによって、分子全体としては、極性が低い化合物であるということとなる。ここで、指紋を形成する脂質成分は長鎖脂肪酸であるとされており、長鎖脂肪酸はアルキル基による疎水部分と親水性を有するカルボキシル基から構成される。耐指紋性を向上させるには指紋を構成する脂質成分へのなじみ性を高くしてやればよいと考えられ、このことから上記のように局部的に極性が高い部位(ウレタン基)と分子全体として極性が低い性質を有するポリエーテル骨格含有ウレタン(メタ)アクリレート(d)を用いることで、良好な耐指紋性を付与できたものと考えられる。溶解性パラメータについても同様である。溶解性パラメータが12以下であることによって、極性の高いウレタン(メタ)アクリレートであるポリエーテル骨格含有ウレタン(メタ)アクリレート(d)は、分子全体としては極性の低い化合物であるということとなる。そしてこれにより、指紋跡を構成する脂質成分へのなじみ性が高くなり、耐指紋性が向上することとなると考えられる。なお、水トレランスが6.0ml以下であることと溶解性パラメータを12以下とすることはいずれも分子全体として極性が低い性質を示すものである。一方で、本発明は上記理論によって全て解明できるものではなく、水トレランスが6.0ml以下であること、溶解性パラメータが12以下であること、ならびにウレタン基をもつことによる局部的に極性が高い部分構造を持つという性質を、全て兼ね備えたポリエーテル骨格含有ウレタン(メタ)アクリレート(d)を用いることによって、耐指紋性の向上が達成されることとなる。
【0064】
なお、本発明におけるポリエーテル骨格含有ウレタン(メタ)アクリレート(d)のより好ましい例として、例えば下記式で示されるポリエーテル骨格含有ウレタン(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0065】
【化3】

[式中、Rは、ポリエーテル骨格を有するポリオール化合物(i)の両末端の水酸基を除いた残基であり、Rはポリイソシアネート(ii)の両末端のイソシアネート基を除いた残基であり、RおよびRは、同一であっても異なってよい、水酸基含有(メタ)アクリレートモノマー(iii)の水酸基を除いた残基であり、およびnは1〜60の整数である。]
このポリエーテル骨格含有ウレタン(メタ)アクリレート(d)は、重量平均分子量が3000〜50000であるのがより好ましい。また上記nは1〜60の整数であるのがより好ましく、1〜30の整数であるのがより好ましい。
【0066】
なお、本発明における光硬化性樹脂組成物層(A)に含まれるアクリル樹脂(a)は(メタ)アクリロイル基を含まないものである一方で、上記ポリエーテル骨格含有ウレタン(メタ)アクリレート(d)は両末端に(メタ)アクリレート基を有するものが好ましく用いられることとなる理由として、理論に拘束されるものではないが以下の通りであると考えられる。ポリエーテル骨格含有ウレタン(メタ)アクリレート(d)はポリエーテル骨格というソフトセグメントを有していることから、良好な耐擦傷性を得るためには両末端それぞれに少なくとも1つの(メタ)アクリレート基を有することが求められることとなる、という理由によるものである。
【0067】
光硬化性樹脂組成物層(A)の調製
本発明の光硬化性フィルムを構成する光硬化性樹脂組成物層(A)は、上記成分(a)および(b)、そして必要に応じた成分(c)、(d)を含む光硬化性樹脂組成物を、下記する基材フィルム層(B)の上に塗布することによって、調製することができる。
【0068】
光硬化性樹脂組成物層(A)に含まれるアクリル樹脂(a)および光重合性多官能モノマー(b)の重量比(a)/(b)は、上記の通り83/17〜52/48である。そして光硬化性樹脂組成物層(A)にさらにポリエーテル骨格含有ウレタン(メタ)アクリレート(d)が含まれる場合は、アクリル樹脂(a)および光重合性多官能モノマー(b)の総重量100重量部に対して1〜10重量部含まれるのが好ましい。ポリエーテル骨格含有ウレタン(メタ)アクリレート(d)の量が上記範囲より少ない場合は、成分(d)添加による耐指紋性向上効果が十分でないおそれがある。またポリエーテル骨格含有ウレタン(メタ)アクリレート(d)の量が上記範囲を超える場合は、耐擦傷性または耐溶剤性などが低下するおそれがある。また光重合開始剤(c)が含まれる場合の含有量は、アクリル樹脂(a)および光重合性多官能モノマー(b)、そして必要に応じたポリエーテル骨格含有ウレタン(メタ)アクリレート(d)の総重量100重量部に対して0.1〜20重量部であるのが好ましい。光重合開始剤(c)の量が上記範囲を超える場合は、得られるハードコート層の物理的強度が劣ることとなるおそれがある。
【0069】
光硬化性樹脂組成物層(A)にはさらに、必要に応じて、光重合開始助剤、帯電防止剤、重合禁止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、消泡剤、レベリング剤、顔料などの通常用いられる添加剤が含まれていてもよい。例えば、好ましく用いることができる紫外線吸収剤の例として、サリシレート系紫外線吸収剤(フェニルサリシレート、p−オクチルフェニルサリシレート、p−t−ブチルフェニルサリシレートなど);ベンゾフェノン系紫外線吸収(2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノンなど);ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−tert−アミル−5’−イソブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−イソブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−イソブチル−5’−プロピルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(1,1,3,3−テトラメチル)フェニル]ベンゾトリアゾールなど);置換アクリロニトリル系紫外線吸収剤(2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリル酸エチル、2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリル酸2−エチルヘキシルなど);などが挙げられる。また、好ましく用いることができる光重合開始助剤として、例えば4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、ジブチルエタノールアミン、メチルジエタノールアミンなどが挙げられる。
【0070】
光硬化性樹脂組成物層(A)は、上記成分(a)および(b)、そして必要に応じた成分(c)、(d)を含む光硬化性樹脂組成物を調製し、これを基材フィルム層(B)上に塗布することによって形成される。光硬化性樹脂組成物は、上記成分(a)および(b)、そして必要に応じた成分(c)、(d)そして添加剤などを混合することによって調製することができる。光硬化性樹脂組成物の調製においては、必要に応じて、希釈溶媒としての有機溶媒を用いてもよい。
【0071】
用いることができる希釈溶媒としての有機溶媒として、例えば、トルエン、キシレンなどの芳香族系溶媒;ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ミネラルスピリットなどの脂肪族系溶媒;メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶媒;ジエチルエーテル、イソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、アニソール、フェネトールなどのエーテル系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソプロピル、エチレングリコールジアセテートなどのエステル系溶媒;ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドンなどのアミド系溶媒;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブなどのセロソルブ系溶媒;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテートなどのエーテルエステル系溶媒;メタノール、エタノール、プロパノールなどのアルコール系溶媒;ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルムなどのハロゲン系溶媒;などが挙げられる。これらの溶媒は単独で用いてもよく、また混合して用いてもよい。
【0072】
こうして調製した光硬化性樹脂組成物を、基材フィルム層(B)に塗布することによって、光硬化性樹脂組成物層(A)が得られることとなる。光硬化性樹脂組成物を基材フィルム層(B)に塗布する方法として、例えば、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、オフセット印刷法等の公知の印刷方法、または、ブレードコート法、ロッドコート法、ロールドクターコート法、ナイフコート法、コンマコート法、リバースロールコート法、トランスファーロールコート法、キスロールコート法、カーテンコート法、ディップコート法などの公知の塗布方法などが挙げられる。次いで、光硬化性樹脂組成物を塗布した後、必要に応じて乾燥処理などを行ってもよい。ここで乾燥処理は、当業者に知られた公知の方法および条件により行うことができる。
【0073】
光硬化性樹脂組成物層(A)の膜厚は、得られる成形品および成型方法に応じて種々選択することができ、例えば1〜100μm、より好ましくは5〜50μmの範囲などで適宜選択することができる。
【0074】
基材フィルム層(B)は、光硬化性フィルムにおいては、光硬化性樹脂組成物層(A)を担持するための基材として機能する。そして本発明の光硬化性フィルムを構成する基材フィルム層(B)においては、光硬化性樹脂組成物層(A)と同様に、金型形状または成形物形状に対する追従性などの機能が必要とされる。
【0075】
基材フィルム層(B)は、20℃における破断強度の下限値が10kg/cm以上であるのが好ましく、50kg/cm以上であるのがさらに好ましい。また、破断強度の上限値は、200kg/cm以下であるのが好ましく、100kg/cm以下であるのがより好ましい。破断強度が10kg/cm未満であると、成型品の製造の際に基材フィルム層(B)の層厚が不均一となるおそれがある。また破断強度が200kg/cmを超える場合は、成型品の加飾を行う際に、成型品の三次元形状に対して追随性が低下するおそれがある。
【0076】
ここで破断強度(kg/cm)とは、テンシロンAGS−100A(商品名、島津製作所製)を用いて、20℃の温度条件下、50mm/minの引張速度にて、上記基材フィルム層(B)を引張り、該基材フィルム層(B)が破断したときに付与されていた単位面積当たりの力とする。
【0077】
上記基材フィルム層(B)は、20℃における破断伸び率が50%以上であることが好ましく、100%以上であるとより好ましい。破断伸び率が50%以上であれば、成型品の三次元形状に対して優れた追従性が発揮されるので、良好な加飾を行うことが可能になる。
【0078】
上記破断伸び率(%)は、上記破断強度測定に使用したテンシロンAGS−100Aを用いて決定される。すなわち、20℃の温度条件下、50mm/minの引張速度にて、上記基材フィルム層(B)を引っ張り、基材フィルム層(B)が破断させる。そして、破断する時の基材フィルム層(B)の長さを、引っ張る前の基材フィルム層(B)の長さと比較することによって、上記破断伸び率を決定する。
【0079】
基材フィルム層(B)は、上記性能を満たすものであれば、材質や形態等は特に限定されない。基材フィルム層(B)の具体例として、例えば、
ノバクリア(登録商標)SG007(商品名、三菱化学社製)、ディアクレール(登録商標)シリーズ(三菱樹脂社製)、ソフトシャイン(登録商標)シリーズ、コスモシャイン(登録商標)シリーズ(東洋紡績社製)などのポリエステル系フィルム;
オピュラン(登録商標)TPXシリーズ(三井化学社製)、トレファン(登録商標)シリーズ(東レ合成フィルム社製)、テフレックス(登録商標)シリーズ(帝人デュポンフィルム社製)などのポリオレフィン系フィルム;
アクリプレン(登録商標)シリーズ(三菱レイヨン社製)等のアクリル系フィルム;などを挙げることができる。これらのうち、ソフトシャイン(登録商標)シリーズ(東洋紡績社製)およびテフレックス(登録商標)シリーズ(帝人デュポンフィルム社製)などは特に形状追従性が高く、より好ましく用いることができる。
【0080】
基材フィルム層(B)としてはさらに、単一フィルム、共押出しフィルム、ラミネートフィルム、剥離処理が施されてなる剥離処理フィルムなどを挙げることができる。ここで剥離処理フィルムに施されている剥離処理は、特に限定されるものではないが、シリコーン系処理、非シリコーン系処理、ウレタン樹脂コーティング処理、メラミン樹脂系コーティング処理などが挙げられる。
【0081】
基材フィルム層(B)の層厚は、得られる成形品および成型方法に応じて種々選択することができ、例えば1〜500μm、より好ましくは20〜250μmの範囲などで適宜選択することができる。
【0082】
光硬化性フィルム
本発明の光硬化性フィルムは、光硬化性樹脂組成物層(A)および基材フィルム層(B)を少なくとも有するものである。そしてこの光硬化性フィルムは、必要に応じて、基材フィルム層(B)上にさらに、プライマー層および加飾層の少なくとも1種が形成されていてもよく、または、光硬化性樹脂組成物層(A)上にさらに、プライマー層および加飾層の少なくとも1種が形成されていてもよい。
【0083】
本発明の光硬化性フィルムが有してもよいプライマー層は、印刷層、基材フィルム層(B)または光硬化性樹脂組成物層(A)と、成形品を構成する成分(樹脂成分または各種金属など)との密着性を高める性質のものであれば、任意の成分を用いることができる。例えば、成形品を構成する成分がポリアクリル系樹脂の場合は、ポリアクリル系樹脂などが好ましく用いることができる。また、成形品を構成する成分がポリフェニレンオキシド・ポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、スチレン共重合体系樹脂、ポリスチレン系ブレンド樹脂の場合は、これらの樹脂と親和性のあるポリアクリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂などが好ましく用いることができる。さらに、成形品を構成する成分がポリプロピレン系樹脂等のポリオレフィン系樹脂である場合には、塩素化ポリオレフィン樹脂、塩素化エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、環化ゴム、クマロンインデン樹脂、ブロックイソシアネートを用いた熱硬化型ウレタン樹脂などが好ましく用いることができる。また、例えば、成形品を構成する成分が、アルミニウム、鉄、銅あるいはこれらの合金、またはステンレスなどの金属である場合は、水酸基や酸性基を含有したアクリル樹脂やエポキシ樹脂などが好ましく用いることができる。
【0084】
本発明の光硬化性フィルムが有してもよい加飾層は、成形品表面に、模様、文字または金属光沢などの加飾を施す層である。このような加飾層として、例えば印刷層または蒸着層などが挙げられる。印刷層および蒸着層はいずれも、成形品表面に加飾を施すための層である。本発明においては、加飾層として印刷層または蒸着層の何れかのみを設けてもよく、あるいは印刷層および蒸着層の両方を設けてもよい。また印刷層は複数の層から構成される層であってもよい。
【0085】
印刷層は、成形品表面に模様および/または文字などの加飾を施すものである。印刷層として、例えば、木目、石目、布目、砂目、幾何学模様、文字、全面ベタ等からなる絵柄が挙げられる。印刷層の材料としては、塩化ビニル/酢酸ビニル系共重合体等のポリビニル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリエステルウレタン系樹脂、セルロースエステル系樹脂、アルキッド樹脂、塩素化ポリオレフィン系樹脂等の樹脂をバインダーとし、適切な色の顔料または染料を着色剤として含有する着色インキを用いるとよい。印刷層に用いられるインキの顔料としては、例えば、次のものが使用できる。通常、顔料として、黄色顔料としてはポリアゾ等のアゾ系顔料、イソインドリノン等の有機顔料や黄鉛等の無機顔料、赤色顔料としてはポリアゾ等のアゾ系顔料、キナクリドン等の有機顔料や弁柄等の無機顔料、青色顔料としてはフタロシアニンブルー等の有機顔料やコバルトブルー等の無機顔料、黒色顔料としてはアニリンブラック等の有機顔料、白色顔料としては二酸化チタン等の無機顔料が使用できる。
【0086】
印刷層に用いられるインキの染料としては、本発明の効果を損なわない範囲で、各種公知の染料を使用することができる。また、インキの印刷方法としては、オフセット印刷法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法等の公知の印刷法やロールコート法、スプレーコート法等の公知のコート法を用いるのがよい。この際、本発明におけるように、低分子量の架橋性化合物を使用するのではなく、ポリマー同士を架橋させる構成の光硬化性樹脂組成物を用いた場合には、表面に粘着性が無く、印刷時のトラブルが少なく、歩留まりが良好である。
【0087】
蒸着層は、アルミニウム、ニッケル、金、白金、クロム、鉄、銅、インジウム、スズ、銀、チタニウム、鉛、亜鉛等の群から選ばれる少なくとも一つの金属、またはこれらの合金もしくは化合物を使用して、真空蒸着法やスパッタリング法、イオンプレーティング法、鍍金法等の方法により形成することができる。
【0088】
これら加飾のための印刷層や蒸着層は、所望の成形品の表面外観が得られるよう、成形時の伸張度合いに応じて、通常用いられる方法により適宜その厚みを選択することができる。
【0089】
本発明の光硬化性フィルムの1態様として、
(1)光硬化性樹脂組成物層(A)および基材フィルム層(B)を有する光硬化性フィルム、
が挙げられる。
そして本発明の光硬化性フィルムにおける、プライマー層および/または加飾層を有する態様として、以下の6種類の態様が挙げられる。
(2)プライマー層、基材フィルム層(B)および光硬化性樹脂組成物層(A)がこの順に積層された光硬化性フィルム。この光硬化性フィルムは、基材フィルム(B)の一方の面に光硬化性樹脂組成物層(A)を設け、かつ基材フィルム(B)の他の一方の面にプライマー層を設けることによって調製される。ここで光硬化性樹脂組成物層(A)およびプライマー層は、どちらを先に設けてもよい。
(3)プライマー層、光硬化性樹脂組成物層(A)および基材フィルム層(B)がこの順に積層された光硬化性フィルム。この光硬化性フィルムは、基材フィルム層(B)に光硬化性樹脂組成物層(A)を設け、次いでプライマー層を設けることによって調製される。
(4)加飾層、基材フィルム層(B)および光硬化性樹脂組成物層(A)がこの順に積層された光硬化性フィルム。この光硬化性フィルムは、基材フィルム(B)の一方の面に光硬化性樹脂組成物層(A)を設け、かつ基材フィルム(B)の他の一方の面に加飾層を設けることによって調製される。ここで光硬化性樹脂組成物層(A)および加飾層は、どちらを先に設けてもよい。
(5)加飾層、光硬化性樹脂組成物層(A)および基材フィルム層(B)がこの順に積層された光硬化性フィルム。この光硬化性フィルムは、基材フィルム層(B)に光硬化性樹脂組成物層(A)を設け、次いで加飾層を設けることによって調製される。
(6)プライマー層、加飾層、基材フィルム層(B)および光硬化性樹脂組成物層(A)がこの順に積層された光硬化性フィルム。この光硬化性フィルムは、基材フィルム(B)の一方の面に光硬化性樹脂組成物層(A)を設け、かつ基材フィルム(B)の他の一方の面に加飾層およびプライマー層をこの順で設けることによって調製される。ここで光硬化性樹脂組成物層(A)、そして加飾層およびプライマー層からなる層は、どちらを先に設けてもよい。
(7)プライマー層、加飾層、光硬化性樹脂組成物層(A)および基材フィルム層(B)がこの順に積層された光硬化性フィルム。この光硬化性フィルムは、基材フィルム層(B)に光硬化性樹脂組成物層(A)を設け、さらに加飾層およびプライマー層をこの順で設けることによって調製される。
【0090】
本発明の光硬化性フィルムが有する光硬化性樹脂組成物層(A)は、表面粘着性が低減されており保存性に優れるという特徴を有している。そのため、例えば上記(1)、(2)、(4)および(6)の態様のように、光硬化性樹脂組成物層(A)が光硬化性フィルム表面に露出している態様であっても、優れた保存性が発揮されるという利点がある。
また、上記(3)の態様のように、光硬化性樹脂組成物層(A)の上にプライマー層を設ける場合においても、光硬化性樹脂組成物層(A)の表面粘着性が低減されていることから、プライマー層を良好に設けることができる。
さらに、上記(5)および(7)の態様のように、光硬化性樹脂組成物層(A)の上にさらに加飾層を設ける場合においてもまた、光硬化性樹脂組成物層(A)の表面粘着性が低減されていることから、印刷層および/または蒸着層を好適に設けることができ、印刷適合性および/または蒸着適合性に優れているという利点がある。
本発明の光硬化性フィルムはさらに、何れの態様においても、光硬化性樹脂組成物層(A)が未硬化の状態であることから、成形品に対する形状追従性に優れているという特徴を有している。さらに、成形後に光硬化性樹脂組成物層(A)を光硬化させることによって、優れた硬度を有し、耐磨耗性および耐擦傷性に優れたハードコート層が得られるという利点も有している。本発明の光硬化性フィルムを用いることによって、成形品に対する形状追従性、そして耐磨耗性および耐擦傷性の向上という、相反する性能が両立できることとなるという利点を有する。
【0091】
成形品および成形品の製法方法
本発明の成形品は、上記光硬化性フィルムを用いて調製される成形品である。本発明の光硬化性フィルムは、優れた形状追従性を有する点から、特に3次元の形状を有する成形物に対して好適に用いることができる。本発明の光硬化性フィルムを用いて調製される成形品の調製方法として、例えば以下の方法が挙げられる:
・樹脂等の射出成形の際に、光硬化性フィルムを金型内に挿入しておき、そしてこの金型に溶融樹脂を注入して、光硬化性フィルムと樹脂とを一体化させる方法(インモールド法)、
・光硬化性フィルムを、真空成形などにより予め立体形状に成形しておき、次いで成形したフィルムを金型内に挿入し、溶融樹脂を流動状態の樹脂を型内に射出して樹脂と成形したフィルムとを一体化する方法(インサートモールド法)、
・光硬化性フィルムを、成形物の表面に設ける方法であって、チャンバーボックス内の減圧および加圧によって、光硬化性フィルムを成形物表面に被覆する方法(TOM工法)。
上記方法のうち、インモールド法およびインサートモールド法はいずれも、射出成形における工法の一種である。
【0092】
成形品の製造方法の一例である、上記インモールド法について説明する。インモールド法によって成形品を製造する場合の一例として、上記(1)、(2)、(4)または(6)の態様の光硬化性フィルムを用いる場合が挙げられる。
【0093】
この場合において、まず、上記(1)、(2)、(4)または(6)の態様の光硬化性フィルムの光硬化性樹脂組成物層(A)が、金型の内壁面と対面するように配置し挿入する(光硬化性フィルム挿入工程)。このように挿入することによって、光硬化性フィルムにおける光硬化性樹脂組成物層(A)とは反対側の層が、成形物を構成する樹脂成分と接することとなる。
【0094】
ここで、必要に応じて、光硬化性フィルムを成形することができる。例えば、ホットパック等の加熱手段により、光硬化性フィルムをその軟化点以上に軟化させ、射出成形用金型に設けられた吸引孔を通じて真空吸引することにより、光硬化性フィルムを金型形状に追従させることができる(光硬化性フィルム成形工程)。なお、光硬化性フィルムを成形せずに、後述する成形樹脂の射出圧により、光硬化性フィルムの成形及び成形樹脂との一体化を同時に行うことも可能である。この際、光硬化性フィルムを予め予備加熱して軟化させておくことも可能である。
【0095】
その後、金型を閉じて、溶融樹脂を金型内に射出し、次いで射出した樹脂を固化させることにより、光硬化性フィルムが表面に配置された成形品が形成されることとなる(成形品形成工程)。こうして得られた成形品に活性エネルギー線を照射し、成形品表面の光硬化性樹脂組成物層(A)を硬化させる(硬化工程)ことによって、光硬化性樹脂組成物層(A)が硬化し、ハードコート層が得られることとなる。
【0096】
なお、上記(1)、(2)、(4)または(6)の態様の光硬化性フィルムを用いて、インサートモールド法によって成型品を製造する場合においては、上記光硬化性フィルム成形工程を行わず、その代わりに、光硬化性フィルムを金型に挿入する前に、光硬化性フィルムを金型の内壁面に沿うように予め成形する、光硬化性フィルムプレ成形工程が行われることとなる。光硬化性フィルムを金型の内壁面に沿うように予め成形する方法として、例えば、真空成形法、圧空成形法、熱せられたゴムを押し付ける押圧成形法、プレス成形法などの公知の成形方法が挙げられる。これらの方法などによって、光硬化性フィルムを予め所望の形状に成形しておき、不要な部分を除去した後に、射出成形用金型に装填してもよい。
【0097】
なお、(1)、(2)、(4)または(6)の態様の光硬化性フィルムを用いて、上記のようにインモールド法またはインサートモールド法によって成形する態様は、基材フィルム(B)を含む光硬化性フィルム全てが成形品を構成することとなることから、インモールドラミネーション(IML)技術による態様ということもできる。
【0098】
次に、上記(1)、(3)、(5)または(7)の態様の光硬化性フィルムを用いてインモールド法により成形品を製造する場合における製造方法を記載する。この場合においては、上記光硬化性フィルム挿入工程において、上記(1)、(3)、(5)または(7)の態様の光硬化性フィルムを、基材フィルム層(B)が金型の内壁面と対面するように配置し挿入する(光硬化性フィルム挿入工程)。このように挿入することによって、光硬化性フィルムにおける基材フィルム層(B)とは反対側の層が、成形物を構成する樹脂成分と接することとなる。ここで、必要に応じて、光硬化性フィルムを成形してもよい(光硬化性フィルム成形工程)。この工程の詳細は上記と同様である。
【0099】
次いで、金型を閉じて溶融樹脂を金型内に射出し、次いで射出した樹脂を固化させることにより、基材フィルム層(B)が表面に配置された成形品が形成される(成形品形成工程)。この工程の詳細は、上記と同様である。次いで、こうして得られた成形品に活性エネルギー線を照射し、基材フィルム層(B)の下層である光硬化性樹脂組成物層(A)を硬化させる(硬化工程)ことによって、光硬化性樹脂組成物層(A)が硬化し、ハードコート層が得られることとなる。次いで、成形品表面に存在する基材フィルム層(B)を取り除く(基材フィルム除去工程)ことによって、ハードコート層が最表面に設けられた成形品が得られることとなる。
【0100】
なお、上記(1)、(3)、(5)または(7)の態様の光硬化性フィルムを用いて、インサートモールド法によって成型品を製造する場合においては、上記光硬化性フィルム成形工程を行わず、その代わりに、上記と同様の光硬化性フィルムプレ成形工程が行われることとなる。
【0101】
このように、(1)、(3)、(5)または(7)の態様の光硬化性フィルムを用いて、上記のようにインモールド法またはインサートモールド法によって成形する態様は、成形品を調製した後に基材フィルム(B)が取り除かれることから、インモールドデコレーション(IMD)技術による態様ということもできる。
【0102】
上記インモールド法またはインサートモールド法などの射出成形において、成形物の製造に用いることができる樹脂としては、特に限定されるものではなく、射出成形可能な全ての樹脂を用いることができる。このような樹脂としては、例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリブテン系樹脂、ポリメチルペンテン系樹脂、エチレン−プロピレン共重合体樹脂、エチレン−プロピレン−ブテン共重合体樹脂、オレフィン系熱可塑性エラストマー等のオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ABS(アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン系共重合体)系樹脂、AS(アクリロニトリル/スチレン系共重合体)系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂等の汎用の熱可塑性または熱硬化性樹脂を挙げることができる。また、ポリフェニレンオキシド・ポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリカーボネート変性ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂等の汎用エンジニアリング樹脂やポリスルホン系樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂、ポリフェニレンオキシド系樹脂、ポリエーテルイミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、液晶ポリエステル系樹脂、ポリアリル系耐熱樹脂等のスーパーエンジニアリング樹脂を使用することもできる。さらに、ガラス繊維や無機フィラー(タルク、炭酸カルシウム、シリカ、マイカ等)等の補強材、ゴム成分等の改質剤を添加した複合樹脂や各種変性樹脂を使用することができる。
【0103】
上記硬化工程において、光硬化性組成物を硬化されるために照射する活性エネルギー線としては、電子線、紫外線、X線、γ線などの活性エネルギー線を挙げることができる。なお本明細書において「光硬化性」とは、紫外線または可視光などの狭義の光のみならず、電子線、γ線などの活性エネルギー線などの照射によって硬化する性質を含むものとする。照射条件は、光硬化性樹脂組成物層(A)の硬化特性に応じて適宜設定することができる。照射量は、通常100〜10000mJ/cm程度である。この硬化によって、光硬化性樹脂組成物層(A)が硬化し、優れた硬度を有するハードコート層が表面に形成された成形品を得ることができる。
【0104】
これらの射出成形を用いた製造方法では、成形物を構成する溶融樹脂が固化する際に、一般に光硬化性フィルムと成形物とが付着することとなるため、光硬化性フィルムにおいてプライマー層の存在は必須ではない。一方で、光硬化性フィルムと成形物との付着性をより向上させることを目的として、プライマー層を設けてもよい。また、上記では成形品の製造方法として、インモールド法またはインサートモールド法などの射出成形を用いた製造方法について説明したが、射出成形の代わりにブロー成形を用いることも可能である。
【0105】
次に、成形品の製造方法の他の一例である、TOM工法について説明する。このTOM工法においては、一般に、加熱手段を備えた、減圧可能なチャンバーボックスが用いられる。そしてこの減圧可能なチャンバーボックスは、特定の箇所において、減圧状態から大気圧に開放する手段を有しているのがより好ましい。TOM工法において用いることができるチャンバーボックスとして、例えば特開2005−262501号公報または特開2006−007422号公報に記載の、公知のチャンバーボックスを用いることができる。なお、本発明で用いることができるチャンバーボックスの一例を、図5に示す。
【0106】
TOM工法によって成形品を製造する場合の一例として、上記(2)または(6)の態様の光硬化性フィルムを用いる場合が挙げられる。この場合においては、まず、上記(2)または(6)の態様の光硬化性フィルムを、図5に示されるようなチャンバーボックス内において、光硬化性樹脂組成物層(A)が最表面となるように成形物の表面に配置させる(光硬化性フィルム配置工程)。このように配置することによって、光硬化性フィルムにおける光硬化性樹脂組成物層(A)とは反対側の層が、成形物と接することとなる。ここでいう「成形物」は、特に限定されるものではなく、例えば、自動車構成部品、携帯情報端末、家庭用電気製品、家具、室内調度品などを構成する、樹脂成形物または金属成形物などが挙げられる。
【0107】
次いで、チャンバーボックスを減圧し、光硬化性フィルムを成形物に追従させる(光硬化性フィルム成形工程)。ここの成形工程においては、必要に応じて、光硬化性フィルムを加熱手段によって加熱してもよい。加熱手段として、例えば、近赤外線ヒーターまたは遠赤外線ヒーターなどが挙げられる。より具体的には、上チャンバーボックス(35)を降下させて上下チャンバーボックス(31)(35)を密閉状態にし、上下チャンバーボックス内を減圧した後、ヒーター(39)を用いて光硬化性フィルムを加熱する。加熱した光硬化性フィルムに向かって、下チャンバーボックス(31)内のテーブル(32)に設置した成型物(33)を上昇させ、光硬化性フィルム(34)を成型物(33)に追従させる。
【0108】
そして、チャンバーボックス内を光硬化性フィルム側から加圧することによって、光硬化性フィルムによって被覆された成形品が得られることとなる(被覆工程)。より具体的には、上チャンバーボックス(35)のみを大気圧状態に戻し光硬化性フィルム(34)と成型物(33)を強く密着させる事によって光硬化性フィルムによって被覆された成形品が得られることとなる。この際、上チャンバーボックス(35)を加圧する事により、光硬化性フィルムと成型体を強く密着させる事も可能である。
【0109】
次に、得られた成形品に活性エネルギー線を照射し、成形品表面の光硬化性樹脂組成物層(A)を硬化させる(硬化工程)ことによって、光硬化性樹脂組成物層(A)が硬化し、成形品表面にハードコート層が形成されることとなる。なお硬化条件は、上記射出成形において述べた条件と同様である。
【0110】
このように上記(2)または(6)の態様の光硬化性フィルムを用いて、上記のようにTOM工法によって成形品を得る態様は、基材フィルム(B)を含む光硬化性フィルム全てが成形品を構成することとなることから、インモールドラミネーション(IML)技術による態様ということもできる。
【0111】
TOM工法によって成形品を製造する場合の他の一例として、上記(3)または(7)の態様の光硬化性フィルムを用いる場合が挙げられる。この場合においては、まず、上記(3)または(7)の態様の光硬化性フィルムを、基材フィルム層(B)が最表面となるように成形物の表面に配置させる(光硬化性フィルム配置工程)。このように配置することによって、光硬化性フィルムにおける基材フィルム層(B)とは反対側の層が、成形物と接することとなる。その後の光硬化性フィルム成型工程、被覆工程および硬化工程は、上記と同様に行うことができる。
【0112】
次いで、成形品表面に存在する基材フィルム層(B)を取り除く(基材フィルム除去工程)ことによって、ハードコート層が最表面に設けられた成形品が得られることとなる。このように上記(3)または(7)の態様の光硬化性フィルムを用いて、上記のようにTOM工法によって成形品を得る態様は、成形品を調製した後に基材フィルム(B)が取り除かれることから、インモールドデコレーション(IMD)技術による態様ということもできる。
【0113】
なお、上記(1)〜(7)の光硬化性フィルムの態様およびこれらの光硬化性フィルムを用いて得られる成形品の断面の態様を示す概略説明図を、図1〜4に示す。
【実施例】
【0114】
以下の実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。実施例中、「部」および「%」は、ことわりのない限り、重量基準による。
【0115】
製造例1 アクリル樹脂(a−1)の製造
メチルメタクリレート1020.2g、エチルアクリレート86.2g、ヒドロキシエチルメタクリレート63.4g、グリシジルメタクリレート130gからなる混合物を混合した。この混合物を、攪拌羽根、窒素導入管、冷却管および滴下漏斗を備えた5000ml反応容器中の、窒素雰囲気下で80℃に加温したメチルイソブチルケトン1040gにターシャリーブチルペルオキシ−2−エチルヘキサエート3.4gを含むメチルイソブチルケトンの263.4g溶液と同時に3時間かけて等速滴下し、その後、1時間、80℃で反応させた。
その後、ターシャリーブチルペルオキシ−2−エチルヘキサエート3.4gを含むプロピレングリコールモノメチルエーテル590g溶液を滴下して、80℃で30分反応させた後、不揮発分が35%となるようにメチルイソブチルケトンを加えた。
得られたアクリル樹脂(a−1)は、重量平均分子量130000、ガラス転移温度(Tg)83℃であった。なお本明細書の実施例において、重量平均分子量はGPC測定によるポリスチレン換算値である。またガラス転移温度の測定は、DSC法により測定した。
また得られたアクリル樹脂(a−1)の水酸基価は21mgKOH/gであった。
【0116】
製造例2 アクリル樹脂(a−2)の製造
メチルメタクリレート933.5g、エチルアクリレート163.2g、ヒドロキシエチルメタクリレート60.3g、グリシジルメタクリレート130gからなる混合物を混合した。この混合物を、攪拌羽根、窒素導入管、冷却管および滴下漏斗を備えた5000ml反応容器中の、窒素雰囲気下で80℃に加温したメチルイソブチルケトン1040gにターシャリーブチルペルオキシ−2−エチルヘキサエート3.4gを含むメチルイソブチルケトンの263.4g溶液と同時に3時間かけて等速滴下し、その後、1時間、80℃で反応させた。
その後、ターシャリーブチルペルオキシ−2−エチルヘキサエート3.4gを含むプロピレングリコールモノメチルエーテル590g溶液を滴下して、80℃で30分反応させた後、不揮発分が35%となるようにメチルイソブチルケトンを加えた。
得られたアクリル樹脂(a−2)は、重量平均分子量125000、ガラス転移温度(Tg)73℃であった。
また得られたアクリル樹脂(a−2)の水酸基価は20mgKOH/gであった。
【0117】
製造例3 アクリル樹脂(a−3)の製造
メチルメタクリレート1027.8g、エチルアクリレート66.8g、ヒドロキシエチルメタクリレート75.4g、グリシジルメタクリレート130gからなる混合物を混合した。この混合物を、攪拌羽根、窒素導入管、冷却管および滴下漏斗を備えた5000ml反応容器中の、窒素雰囲気下で80℃に加温したメチルイソブチルケトン1040gにターシャリーブチルペルオキシ−2−エチルヘキサエート3.4gを含むメチルイソブチルケトンの263.4g溶液と同時に3時間かけて等速滴下し、その後、1時間、80℃で反応させた。
その後、ターシャリーブチルペルオキシ−2−エチルヘキサエート3.4gを含むプロピレングリコールモノメチルエーテル590g溶液を滴下して、80℃で30分反応させた後、不揮発分が35%となるようにメチルイソブチルケトンを加えた。
得られたアクリル樹脂(a−3)は、重量平均分子量100000、ガラス転移温度(Tg)85℃であった。
また得られたアクリル樹脂(a−3)の水酸基価は25mgKOH/gであった。
【0118】
比較製造例1 アクリル樹脂(a−4)の製造
メチルメタクリレート390.0g、イソブチルアクリレート780.0g、ヒドロキシエチルメタクリレート65.0g、グリシジルメタクリレート65.0gからなる混合物を混合した。この混合物を、攪拌羽根、窒素導入管、冷却管および滴下漏斗を備えた5000ml反応容器中の、窒素雰囲気下で90℃に加温したメチルイソブチルケトン1040gにターシャリーブチルペルオキシ−2−エチルヘキサエート3.4gを含むメチルイソブチルケトンの263.4g溶液と同時に3時間かけて等速滴下し、その後、1時間、90℃で反応させた。
その後、ターシャリーブチルペルオキシ−2−エチルヘキサエート3.4gを含むプロピレングリコールモノメチルエーテル590g溶液を滴下して、90℃で30分反応させた後、不揮発分が35%となるようにメチルイソブチルケトンを加えた。
得られたアクリル樹脂(a−4)は、重量平均分子量120000、ガラス転移温度(Tg)63℃であった。また得られたアクリル樹脂(a−4)の水酸基価は22mgKOH/mgであった。
【0119】
比較製造例2 アクリル樹脂(a−5)の製造
メチルメタクリレート104.0g、エチルアクリレート28.0g、スチレン928.0g、ヒドロキシエチルメタクリレート135.7g、グリシジルメタクリレート104.0gからなる混合物を混合した。この混合物を、攪拌羽根、窒素導入管、冷却管および滴下漏斗を備えた5000ml反応容器中の、窒素雰囲気下で100℃に加温したメチルイソブチルケトン1040gにターシャリーブチルペルオキシ−2−エチルヘキサエート3.4gを含むメチルイソブチルケトンの263.4g溶液と同時に3時間かけて等速滴下し、その後、1時間、100℃で反応させた。
その後、ターシャリーブチルペルオキシ−2−エチルヘキサエート3.4gを含むプロピレングリコールモノメチルエーテル590g溶液を滴下して、100℃で30分反応させた後、不揮発分が35%となるようにメチルイソブチルケトンを加えた。
得られたアクリル樹脂(a−5)は、重量平均分子量87000、ガラス転移温度(Tg)86℃であった。また得られたアクリル樹脂(a−5)の水酸基価は43mgKOH/mgであった。
【0120】
比較製造例4 アクリル樹脂(a−7)の製造
撹拌装置、冷却管、滴下ロートおよび窒素導入管を備えた反応装置に、グリシジルメタアクリレート(以下、GMAという)175部、メチルメタクリレート(以下、MMAという)75部、ラウリルメルカプタン1.3部、酢酸ブチル1000部および2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(以下、AIBNという)7.5部を仕込んだ後、窒素気流下に約1時間かけて系内温度が約90℃になるまで昇温し、1時間保温した。次いで、あらかじめGMA525部、MMA225部、ラウリルメルカプタン3.7部およびAIBN22.5部からなる混合液を仕込んだ滴下ロートより、窒素気流下に混合液を約2時間かけて系内に滴下し、3時間同温度に保温後、AIBN10部を仕込み、1時間保温した。その後、120℃に昇温し、2時間保温した。60℃まで冷却後、窒素導入管を空気導入管につけ替え、アクリル酸(以下、AAという)355部、メトキノン2.0部およびトリフェニルフォスフィン5.4部を仕込み混合した後、空気バブリング下にて、110℃まで昇温した。同温度にて8時間保温後、メトキノン1.4部を仕込み、冷却して、不揮発分が50重量%となるよう酢酸エチルを加えた。
得られたアクリル樹脂(a−7)は、重量平均分子量18000、ガラス転移温度(Tg)70℃であった。
【0121】
比較製造例5 アクリル樹脂(a−8)の製造
イソボロニルメタクリレート187.2g、メチルメタクリレート2.8g、メタクリル酸10.0gからなる混合物を混合した。この混合物を、攪拌羽根、窒素導入管、冷却管および滴下漏斗を備えた1000ml反応容器中の、窒素雰囲気下で80℃に加温したプロピレングリコールモノメチルエーテル360gにターシャリーブチルペルオキシ−2−エチルヘキサエート1.0gを含むプロピレングリコールモノメチルエーテルの80.0g溶液と同時に3時間かけて等速滴下し、その後、1時間、80℃で反応させた。
その後、ターシャリーブチルペルオキシ−2−エチルヘキサエート0.2gを含むプロピレングリコールモノメチルエーテル17g溶液を滴下して、80℃で30分反応させた。
その反応溶液にテトラブチルアンモニウムブロマイド1.5gとハイドロキノン0.1gを含む6gのプロピレングリコールモノメチルエーテル溶液を加え、空気バブリングしながら、さらに4−ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル24.4gとプロピレングリコールモノメチルエーテル5.0gの溶液を1時間かけて滴下し、その後5時間かけて更に反応させた。
重量平均分子量100000、Tg:85℃の、不飽和結合含有アクリル共重合体を得た。
【0122】
実施例1
光硬化性樹脂組成物(1)の調製
攪拌機を備えた容器に、製造例1のアクリル樹脂(a−1)285重量部、多官能アクリレート(b)であるアロニックスM402(ジペンタエリスリトールペンタアクリレートおよびジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物、官能数約5.5、東亞合成株式会社製)20重量部、光重合開始剤(c)であるイルガキュア−184D(1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、チバガイギー社製) 8重量部、および溶媒であるメチルイソブチルケトンを不揮発分が40%となるように加えて、60分間撹拌し、光硬化性樹脂組成物を得た。
【0123】
プライマー層、加飾層、光硬化性樹脂組成物層(A)および基材フィルム層(B)がこの順に積層された光硬化性フィルム(構成1)の製造
基材フィルムとして、厚さ38μmのポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムを用いた。この基材フィルムの片面に、メラミン樹脂系剥離剤をグラビアコート法にて1μmの厚さに塗布し、メラミン樹脂系コーティング処理を施した。なおこのポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムは、光硬化性樹脂組成物層(A)形成時の加熱および延伸に対して耐性を有するものである。
基材フィルムのメラミン樹脂系コーティング処理を施した面に、上記で得られた光硬化性樹脂組成物を、コンマコーターを用いて塗布し、次いで乾燥機にて80℃で60秒間乾燥させ、膜厚10μmの光硬化性樹脂組成物層(A)を形成した。
次いで、得られた光硬化性樹脂組成物層(A)の上に、印刷層としてのウレタンインキ層(下地色層)およびアクリルインキ層(図柄層)を、グラビア印刷法によって順次形成した。次いで、プライマー層として、アクリル樹脂を含む粘着層をグラビア印刷法により形成して、光硬化性フィルムを得た。
【0124】
プライマー層、基材フィルム層(B)および光硬化性樹脂組成物層(A)がこの順に積層された光硬化性フィルム(構成2)の製造
基材フィルムとして、厚さ50μmのポリエチレンテレフタレート樹脂フィルム(商品名ソフトシャイン(登録商標)、東洋紡績株式会社製)を用いた。
基材フィルム上に、上記で得られた光硬化性樹脂組成物を、コンマコーターを用いて塗布し、次いで乾燥機にて80℃で60秒間乾燥させ、膜厚10μmの光硬化性樹脂組成物層(A)を形成した。
次いで、得られた光硬化性樹脂組成物層(A)とは反対の面の基材フィルム上に、プライマー層として、アクリル樹脂を含む粘着層をグラビア印刷法により形成して、光硬化性フィルムを得た。
【0125】
実施例2
多官能アクリレート(b)であるアロニックスM402の量を表1に記載の量に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、光硬化性樹脂組成物を調製した。
得られた光硬化性樹脂組成物を用いて、実施例1と同様にして2種類の光硬化性フィルムを製造した。
【0126】
実施例3
多官能アクリレート(b)であるアロニックスM402の量を表1に記載の量に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、光硬化性樹脂組成物を調製した。
得られた光硬化性樹脂組成物を用いて、実施例1と同様にして2種類の光硬化性フィルムを製造した。
【0127】
実施例4
製造例1のアクリル樹脂(a−1)の代わりに製造例2のアクリル樹脂(a−2)を用いたこと以外は、実施例2と同様にして、光硬化性樹脂組成物を調製した。
得られた光硬化性樹脂組成物を用いて、実施例1と同様にして2種類の光硬化性フィルムを製造した。
【0128】
実施例5
製造例1のアクリル樹脂(a−1)の代わりに製造例3のアクリル樹脂(a−3)を用いたこと以外は、実施例2と同様にして、光硬化性樹脂組成物を調製した。
得られた光硬化性樹脂組成物を用いて、実施例1と同様にして2種類の光硬化性フィルムを製造した。
【0129】
実施例6
表1に示される実施例2の光硬化性樹脂組成物の配合にさらに、ポリエーテル骨格含有ウレタン(メタ)アクリレート(d)であるKAYARAD UX−6101(日本化薬(株)社製、両末端それぞれに少なくとも1つの(メタ)アクリレート基を有するポリエーテル骨格含有ウレタンアクリレート、水トレランス3.5ml、溶解性パラメータ10.8)5重量部を加えたこと以外は、実施例2と同様にして、光硬化性樹脂組成物を調製した。
得られた光硬化性樹脂組成物を用いて、実施例1と同様にして2種類の光硬化性フィルムを製造した。
【0130】
実施例7
多官能アクリレート(b)であるアロニックスM402の量を表2に記載の量に変更しさらに、ポリエーテル骨格含有ウレタン(メタ)アクリレート(d)であるKAYARAD UX−6101(日本化薬(株)社製、両末端それぞれに少なくとも1つの(メタ)アクリレート基を有するポリエーテル骨格含有ウレタンアクリレート、水トレランス3.5ml、溶解性パラメータ10.8)5重量部を加えたこと以外は、実施例1と同様にして、光硬化性樹脂組成物を調製した。
得られた光硬化性樹脂組成物を用いて、実施例1と同様にして2種類の光硬化性フィルムを製造した。
【0131】
比較例1
多官能アクリレート(b)であるアロニックスM402の量を表2に記載の量に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、光硬化性樹脂組成物を調製した。
得られた光硬化性樹脂組成物を用いて、実施例1と同様にして2種類の光硬化性フィルムを製造した。
【0132】
比較例2
多官能アクリレート(b)であるアロニックスM402の量を表2に記載の量に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、光硬化性樹脂組成物を調製した。
得られた光硬化性樹脂組成物を用いて、実施例1と同様にして2種類の光硬化性フィルムを製造した。
【0133】
比較例3
製造例1のアクリル樹脂(a−1)の代わりに比較製造例1のアクリル樹脂(a−4)を用いたこと以外は、実施例2と同様にして、光硬化性樹脂組成物を調製した。
得られた光硬化性樹脂組成物を用いて、実施例1と同様にして2種類の光硬化性フィルムを製造した。
【0134】
比較例4
製造例1のアクリル樹脂(a−1)の代わりに比較製造例2のアクリル樹脂(a−5)を用いたこと以外は、実施例2と同様にして、光硬化性樹脂組成物を調製した。
得られた光硬化性樹脂組成物を用いて、実施例1と同様にして2種類の光硬化性フィルムを製造した。
【0135】
比較例5
攪拌機を備えた容器に、比較製造例3のアクリル樹脂(a−6)を75重量部、および多官能アクリレート(b)である、4官能のウレタンアクリレートであるダイセルサイテック製EBECRYL8210を25重量部、イルガキュア−184Dを8重量部加えて、60分間撹拌し、光硬化性樹脂組成物を得た。
【0136】
プライマー層、加飾層、硬化樹脂層および基材フィルム層(B)がこの順に積層された積層フィルムの製造
基材フィルムとして、厚さ38μmのポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムを用いた。この基材フィルムの片面に、メラミン樹脂系剥離剤をグラビアコート法にて1μmの厚さに塗布し、メラミン樹脂系コーティング処理を施した。
基材フィルムのメラミン樹脂系コーティング処理を施した面に、上記で得られた光硬化性樹脂組成物を、コンマコーターを用いて塗布し、次いで乾燥機にて80℃で60秒間乾燥させた。こうして得られた層に、高圧水銀灯にて300mJ/cmの紫外線照射を行い、硬化樹脂層を形成した。
得られた硬化樹脂層の上に、印刷層としてのウレタンインキ層(下地色層)およびアクリルインキ層(図柄層)を、グラビア印刷法によって順次形成した。次いで、プライマー層として、アクリル樹脂を含む粘着層をグラビア印刷法により形成して、積層フィルムを得た。
【0137】
プライマー層、基材フィルム層(B)および硬化樹脂層がこの順に積層された積層フィルムの製造
基材フィルムとして、厚さ50μmのポリエチレンテレフタレート樹脂フィルム(商品名ソフトシャイン(登録商標)、東洋紡績株式会社製)を用いた。
基材フィルム上に、上記で得られた光硬化性樹脂組成物を、コンマコーターを用いて塗布し、次いで乾燥機にて80℃で60秒間乾燥させた。こうして得られた層に、高圧水銀灯にて300mJ/cmの紫外線照射を行い、硬化樹脂層を形成した。
次いで、得られた硬化樹脂層とは反対の面の基材フィルム上に、プライマー層として、アクリル樹脂を含む粘着層をグラビア印刷法により形成して、光硬化性フィルムを得た。
【0138】
比較例6
攪拌機を備えた容器に、比較製造例4のアクリル樹脂(a−7)200重量部、1,6−ヘキサンジイソシアネート3量体(商品名コロネートHX、日本ポリウレタン工業株式会社製)5部および光重合開始剤(c)であるイルガキュア−184D(1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、チバガイギー社製)5重量部を加えて撹拌し、熱架橋性光硬化性樹脂組成物を得た。
【0139】
プライマー層、加飾層、硬化性樹脂層および基材フィルム層(B)がこの順に積層された積層フィルムの製造
基材フィルムとして、厚さ38μmのポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムを用いた。この基材フィルムの片面に、メラミン樹脂系剥離剤をグラビアコート法にて1μmの厚さに塗布し、メラミン樹脂系コーティング処理を施した。
基材フィルムのメラミン樹脂系コーティング処理を施した面に、上記で得られた熱架橋性光硬化性樹脂組成物を、コンマコーターを用いて塗布した。次いで80℃で60秒間加熱し、乾燥させた。
こうして得られた樹脂層の上に、印刷層としてのウレタンインキ層(下地色層)およびアクリルインキ層(図柄層)を、グラビア印刷法によって順次形成した。次いで、プライマー層として、アクリル樹脂を含む粘着層をグラビア印刷法により形成して、積層フィルムを得た。
【0140】
プライマー層、基材フィルム層(B)および硬化性樹脂層がこの順に積層された積層フィルムの製造
基材フィルムとして、厚さ50μmのポリエチレンテレフタレート樹脂フィルム(商品名ソフトシャイン(登録商標)、東洋紡績株式会社製)を用いた。
基材フィルム上に、上記で得られた光硬化性樹脂組成物を、コンマコーターを用いて塗布した。次いで80℃で60秒間加熱し、乾燥させた。
次いで、得られた樹脂層とは反対の面の基材フィルム上に、プライマー層として、アクリル樹脂を含む粘着層をグラビア印刷法により形成して、光硬化性フィルムを得た。
【0141】
比較例7
比較例6で調製した熱架橋性光硬化性樹脂組成物を用いて、以下の条件により半架橋させて、光硬化性フィルムを調製した。
【0142】
プライマー層、加飾層、半架橋樹脂層および基材フィルム層(B)がこの順に積層された積層フィルムの製造
基材フィルムとして、厚さ38μmのポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムを用いた。この基材フィルムの片面に、メラミン樹脂系剥離剤をグラビアコート法にて1μmの厚さに塗布し、メラミン樹脂系コーティング処理を施した。
基材フィルムのメラミン樹脂系コーティング処理を施した面に、上記で得られた熱架橋性光硬化性樹脂組成物を、コンマコーターを用いて塗布した。次いで80℃で20秒間加熱し、半ば架橋させた。
こうして得られた半架橋樹脂層の上に、印刷層としてのウレタンインキ層(下地色層)およびアクリルインキ層(図柄層)を、グラビア印刷法によって順次形成した。次いで、プライマー層として、アクリル樹脂を含む粘着層をグラビア印刷法により形成して、積層フィルムを得た。
【0143】
プライマー層、基材フィルム層(B)および半架橋樹脂層がこの順に積層された積層フィルムの製造
基材フィルムとして、厚さ50μmのポリエチレンテレフタレート樹脂フィルム(商品名ソフトシャイン(登録商標)、東洋紡績株式会社製)を用いた。
基材フィルム上に、上記で得られた光硬化性樹脂組成物を、コンマコーターを用いて塗布した。次いで150℃で20秒間加熱し、半ば架橋させた。
次いで、得られた半架橋樹脂層とは反対の面の基材フィルム上に、プライマー層として、アクリル樹脂を含む粘着層をグラビア印刷法により形成して、光硬化性フィルムを得た。
【0144】
比較例8
製造例1のアクリル樹脂(a−1)の代わりに比較製造例5のアクリル樹脂(a−8)を用いたこと以外は、実施例2と同様にして、光硬化性樹脂組成物を調製した。
得られた光硬化性樹脂組成物を用いて、実施例1と同様にして2種類の光硬化性フィルムを製造した。
【0145】
比較例9
多官能アクリレート(b)であるアロニックスM402の量を表4に記載の量に変更したこと以外は、比較例8と同様にして、光硬化性樹脂組成物を調製した。
得られた光硬化性樹脂組成物を用いて、実施例1と同様にして2種類の光硬化性フィルムを製造した。
【0146】
上記実施例および比較例について、下記評価を行った。
【0147】
光硬化性樹脂組成物層(A)の評価
タック性
厚さ100μmのPETフィルム(東洋紡コスモシャイン)の易接着面に、各実施例および比較例で製造した光硬化性樹脂組成物を、硬化後の厚さが5μmになるように塗布し、所定の条件で乾燥を行い、光硬化性樹脂組成物層(A)を有する光硬化性フィルムを得た。
得られた光硬化性フィルムに、PETフィルムを押し付けた後、PETフィルムの剥がれ具合によりタックフリー性を評価した。評価は付着・粘着の無いものを○、付着・粘着のあるものを×とした。

伸長度
厚さ50μmのPETフィルム(東洋紡ソフトシャイン)の易接着面に、各実施例および比較例で製造した電子線硬化性樹脂組成物を、硬化後の厚さが5μmになるように塗布し、所定の条件で乾燥を行い、光硬化性樹脂組成物層(A)を有する光硬化性フィルムを得た。
試験片として幅25mm、長さ120mmの試験片を切り出し、引張速度50mm/分、チャック間距離80mm、温度23℃の条件で引張試験を行い、伸度100%まで測定した。
表中の数値は、光硬化性樹脂組成物層(A)にクラックが入った引張伸度(%)を示す。なお、伸度100%においてクラックが入らなかったものは>100と表記した。
【0148】
ハードコート層の評価
ヘイズ
厚さ100μmのPETフィルム(東洋紡コスモシャイン)の易接着面に、各実施例及び比較例で製造した光硬化性樹脂組成物を、硬化後の厚さが5μmになるように塗布し、所定の条件で乾燥を行い、次いで高圧水銀灯にて300mJ/cmの紫外線照射を行い、光硬化したハードコート層を得た。
得られたハードコート層を有するフィルムのヘイズ値を、JIS K 7136に準拠して測定した。

鉛筆硬度
上記より得られたハードコート層を有するフィルムの鉛筆硬度を、JIS K 5600に準拠して測定した。
【0149】
耐指紋性評価(表3のみ)
上記より得られたハードコート層の上に、オレイン酸を1滴垂らした。次いでクリーンワイパーを用いて10往復回数拭き取った。評価試験前および評価試験後のサンプルのヘイズを、JIS K 7136に準拠して測定し、Δヘイズ値を求めた。得られたΔヘイズ値の値に従って、下記基準によって耐指紋性評価を行った。
5点:Δヘイズが0.5未満
4点:Δヘイズが0.5以上、1.0未満
3点:Δヘイズが1.0以上、3.0未満
2点:Δヘイズが3.0以上、5.0未満
1点:Δヘイズが5.0以上
【0150】
成形品外観の評価(表4のみ)
実施例2および比較例8、9で製造した光硬化性フィルムを用い、TOM法にて成形品を得た。
得られた成型体表面を目視にて確認しハードコート層のワレを評価した。
○:ワレ無し
×ワレ有。
【0151】
上記実施例および比較例の配合および評価結果を下記表に示す。なお下記表中の各成分の配合量は、固形分比率で示している。
【0152】
【表1】

【0153】
【表2】

・表中、比較例3で用いた(a−4)および比較例4で用いた(a−5)のアクリル樹脂は、本発明におけるアクリル樹脂(a)の要件を満たさない樹脂である。
【0154】
【表3】

*2):比較例6は、実施例と同様に乾燥させた状態で測定した。
*3):比較例7は、加熱により半架橋させた状態で測定した。
・表中、比較例6、7で用いた(a−7)のアクリル樹脂は、本発明におけるアクリル樹脂(a)の要件を満たさない樹脂である。
【0155】
【表4】

表中、比較例8、9で用いた(a−8)のアクリル樹脂は、不飽和結合基である(メタ)アクリル基を有しており、本発明におけるアクリル樹脂(a)の要件を満たさない樹脂である。
【0156】
上記表から明らかであるように、実施例の光硬化性フィルムはいずれも、タック性および伸長性に優れており、取り扱い性および形状追従性が良好であること、そして光硬化後のハードコート層はヘイズ値が低く、かつ良好な硬度を有していること、が確認された。また表4に示されるとおり、ハードコート層におけるワレも生じておらず、得られた成形品の外観も良好であることが確認された。
また、ポリエーテル骨格含有ウレタン(メタ)アクリレート(d)を含む実施例6および7の光硬化性フィルムについては、さらに耐指紋性にも優れることが確認された。
一方、アクリル樹脂(a)および光重合性多官能モノマー(b)の重量比が本発明の範囲から外れる比較例1、2は、ハードコート層の硬度または光硬化性フィルムの取り扱い性が劣るものであった。
また本発明の要件を満たさないアクリル樹脂を用いた比較例3、4は何れも、光硬化性フィルムの取り扱い性が劣るものであった。
比較例5は、本発明の成形品の製造方法ではない方法によって成形品を製造した例である。この場合は、フィルムの形状追従性が劣るものであった。
比較例6および7は、熱架橋性光硬化性樹脂組成物を用いて光硬化性フィルムを調製した例である。この場合において、加熱による半架橋処理を行わない比較例6においては、光硬化性フィルムの取り扱い性に劣るものであった。また加熱による半架橋処理を行った比較例7においては、光硬化性フィルムの形状追従性が劣るものであった。さらに比較例6、7はいずれも、イソシアネート構造を含むにもかかわらず、耐指紋性が劣るものであった。
比較例8、9は、不飽和結合基である(メタ)アクリル基を有するアクリル樹脂を用いて光硬化性フィルムを調製した例である。この場合においては、得られる成形品にワレが生じており、外観が劣るものであった。
【産業上の利用可能性】
【0157】
本発明の光硬化性フィルムに含まれる光硬化性樹脂組成物層(A)は、光硬化性フィルムの状態においては、未硬化の状態であるため、成形品に対する形状追従性に優れているという利点を有する。そしてこの光硬化性樹脂組成物層(A)はさらに、未硬化の状態であっても、表面粘着性が低減されており、製造性および取り扱い性などに優れるという利点もある。そしてこの光硬化性樹脂組成物層(A)は、光硬化後は、良好な硬度を有するハードコートとなる。そのため、本発明の光硬化性フィルムを用いることによって、成形品に対する形状追従性、そして耐磨耗性および耐擦傷性の向上という、相反する性能が両立できることとなるという利点を有する。
【図面の簡単な説明】
【0158】
【図1】光硬化性フィルムの態様および光硬化性フィルムを用いて得られる成形品の断面の態様を示す概略説明図である。
【図2】光硬化性フィルムの態様および光硬化性フィルムを用いて得られる成形品の断面の態様を示す概略説明図である。
【図3】光硬化性フィルムの態様および光硬化性フィルムを用いて得られる成形品の断面の態様を示す概略説明図である。
【図4】光硬化性フィルムの態様および光硬化性フィルムを用いて得られる成形品の断面の態様を示す概略説明図である。
【図5】本発明で用いることができるチャンバーボックスの一例を示す概略説明図である。
【符号の説明】
【0159】
11:光硬化性樹脂組成物層、
11’:ハードコート層、
13:基材フィルム層、
15:プライマー層、
17:加飾層、
19:成形物、
31:下チャンバーボックス、
32:テーブル、
33:成形物、
34:光硬化性フィルム、
35:上チャンバーボックス、
36:減圧タンク、
37:減圧配管、
38:圧空タンク、
39:加熱手段。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光硬化性樹脂組成物層(A)および基材フィルム層(B)を少なくとも有する光硬化性フィルムであって、
該光硬化性樹脂組成物層(A)は、
重量平均分子量が100000〜150000であり、ガラス転移温度が70〜100℃である、アクリル樹脂(a)、
光重合性多官能モノマー(b)、および
光重合開始剤(c)
を含み、
但し該アクリル樹脂(a)は、(メタ)アクリロイル基を有さないことを条件とし、および
該アクリル樹脂(a)および該光重合性多官能モノマー(b)の重量比(a)/(b)は83/17〜52/48である、
光硬化性フィルム。
【請求項2】
前記アクリル樹脂(a)は、水酸基価10〜50mgKOH/gである、請求項1記載の光硬化性フィルム。
【請求項3】
前記光硬化性樹脂組成物層(A)がさらに、下記式(I):
【化1】

[式中、Xは、ポリエーテル骨格を有するポリオール化合物の両末端の水酸基を除いた残基を示す。]
で示される構造を有する、両末端それぞれに少なくとも1つの(メタ)アクリレート基を有するポリエーテル骨格含有ウレタン(メタ)アクリレート(d)を含む、請求項1または2に記載の光硬化性フィルム。
【請求項4】
請求項1〜3いずれかに記載の光硬化性フィルムの基材フィルム層(B)上にさらに、プライマー層および加飾層の少なくとも1種が形成されている、光硬化性フィルム。
【請求項5】
請求項1〜3いずれかに記載の光硬化性フィルムの光硬化性樹脂組成物層(A)上にさらに、プライマー層および加飾層の少なくとも1種が形成されている、光硬化性フィルム。
【請求項6】
請求項1〜4いずれかに記載の光硬化性フィルムを、光硬化性樹脂組成物層(A)が金型の内壁面と対面するように配置し挿入する、光硬化性フィルム挿入工程、
金型を閉じて溶融樹脂を金型内に射出し、次いで射出した樹脂を固化させることにより、光硬化性フィルムが表面に配置された成形品を形成する、成形品形成工程、および
得られた成形品に活性エネルギー線を照射し、成形品表面の光硬化性樹脂組成物層(A)を硬化させる、硬化工程、
を包含する、請求項1〜4いずれかに記載の光硬化性フィルムを用いる成形品の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜3および5のいずれかに記載の光硬化性フィルムを、基材フィルム層(B)が金型の内壁面と対面するように配置し挿入する、光硬化性フィルム挿入工程、
金型を閉じて溶融樹脂を金型内に射出し、次いで射出した樹脂を固化させることにより、基材フィルム層(B)が表面に配置された成形品を形成する、成形品形成工程、
得られた成形品に活性エネルギー線を照射し、基材フィルム層(B)の下層である光硬化性樹脂組成物層(A)を硬化させる、硬化工程、および
成形品表面に存在する基材フィルム層(B)を取り除く、基材フィルム除去工程、
を包含する、請求項1〜3および5のいずれかに記載の光硬化性フィルムを用いる成形品の製造方法。
【請求項8】
請求項1〜4いずれかに記載の光硬化性フィルムを、チャンバーボックス内において、光硬化性樹脂組成物層(A)が最表面となるように成形物の表面に配置させる、光硬化性フィルム配置工程、
チャンバーボックスを減圧し、光硬化性フィルムを成形物に追従させる、光硬化性フィルム成形工程、
チャンバーボックス内を光硬化性フィルム側から加圧し、光硬化性フィルムによって被覆された成形品を得る、被覆工程、および
得られた成形品に活性エネルギー線を照射し、成形品表面の光硬化性樹脂組成物層(A)を硬化させる、硬化工程、
を包含する、請求項1〜4いずれかに記載の光硬化性フィルムを用いる成形品の製造方法。
【請求項9】
請求項1〜3および5のいずれか記載の光硬化性フィルムを、チャンバーボックス内において、基材フィルム層(B)が最表面となるように成形物の表面に配置させる、光硬化性フィルム配置工程、
チャンバーボックスを減圧し、光硬化性フィルムを成形物に追従させる、光硬化性フィルム成形工程、
チャンバーボックス内を光硬化性フィルム側から加圧し、光硬化性フィルムによって被覆された成形品を得る、被覆工程、
得られた成形品に活性エネルギー線を照射し、基材フィルム層(B)の下層である光硬化性樹脂組成物層(A)を硬化させる、硬化工程、および
成形品表面に存在する基材フィルム層(B)を取り除く、基材フィルム除去工程、
を包含する、請求項1〜3および5のいずれかに記載の光硬化性フィルムを用いる成形品の製造方法。
【請求項10】
請求項6〜9いずれかに記載の成形品の製造方法によって得られる成形品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−143095(P2010−143095A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−323302(P2008−323302)
【出願日】平成20年12月19日(2008.12.19)
【出願人】(000230054)日本ペイント株式会社 (626)
【Fターム(参考)】