説明

光素子の樹脂封止成形方法及びこれに用いられる小型透明樹脂タブレット

【課題】発光ダイオードチップ等の光素子を透明樹脂材料にて効率良く封止成形するための樹脂封止成形方法とこの方法に用いられる小型の透明樹脂タブレットを提供する。
【解決手段】透明樹脂材料にて外径Dが17mm以下となる小型の透明樹脂タブレット12を形成すると共に、その長さL方向に所要形状の空隙部120を形成する。空隙部120は、その長さL方向に、外径Dに対して0.25〜0.50倍となる内径φの貫通穴121として、複数個の貫通穴123・124として、貫通穴(122)の断面形状を傾斜面状に形成し、更に、一端部を閉塞した状態の有底孔部125として、両端部を閉塞した状態の中空部126として形成する。小型透明樹脂タブレット12を成形用型の樹脂供給部に供給すると、該小型の透明樹脂タブレットは該樹脂供給部からの受熱効率の向上及び加熱溶融化作用の均等化が図られているため、迅速に且つ効率良く加熱溶融化される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光ダイオード(Light Emitting Diode)チップ等の光素子を透明樹脂材料にて封止成形(パッケージ)するための光素子の樹脂封止成形方法とこの方法に用いられる小型の透明樹脂タブレットに係り、特に、樹脂封止成形用型内に搬送供給した小型透明樹脂タブレットの各部位に対する受熱効率の向上を図ると共に、その加熱溶融化作用の均等化を図ることができるように改善したものに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体チップの樹脂封止成形には、通常、トランスファ成形法が採用されている。
この成形法においては、樹脂封止成形用型のキャビティ部に半導体チップをセットし、高周波誘電加熱器等にて予備加熱した大型の熱硬化性樹脂タブレットを型内のポット(樹脂材料供給部)内に供給すると共に、該樹脂タブレットをポット内にて更に加熱且つ加圧して溶融化し、その溶融樹脂材料をランナやゲート等の樹脂通路部を通してキャビティ部に移送することにより、該キャビティ部内の半導体チップを樹脂封止成形するようにしている。
一方、小型の樹脂タブレット(所謂、スモールタブレット)を用いるマルチプランジャ方式を採用したトランスファ成形法においては、大型の樹脂タブレットに較べてその加熱溶融化作用が容易であるために、直接、予備加熱しない常温(例えば、室温等)の小型樹脂タブレットをポット内に供給すると共に、該ポット内においてその加熱溶融化を行うようにしている。
しかしながら、ポット内に供給した常温の樹脂タブレットは該ポットの内周面側からの加熱作用を受けてその外表面側から内部へと順次に加熱溶融化されるものであるため、その外径が大きくなるほどその内部が溶融化し難いと云った問題がある。
【0003】
このような問題を改善するものとして、小型樹脂タブレットの軸心部を中空状に形成することによって、該小型樹脂タブレットに対する単位体積当りの伝熱面積が大きくなるようにした樹脂タブレットが提案されている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
これによると、軸心部が中空状に形成されていない小型樹脂タブレットに較べて、単位体積当りの表面積が拡大されてポット内における伝熱面積が増大することにより、その加熱溶融化を促進する効果が期待される。
ところで、このような小型樹脂タブレットは、樹脂量が一定であり、また、その取扱が簡易である等の利点を有しているが、例えば、ポット内への搬送供給時や保管時等において欠損(破損)部が発生してその樹脂量を減少させるようなことが無いように、所要の保形性(耐久性)を備えている必要がある。
しかしながら、上記特許文献1及び特許文献2には、小型樹脂タブレットの中空部をどのような設定基準によって形成すれば該小型樹脂タブレットに対して所要の保形性を付与することができるか、については開示されていない。
また、中空部が形成されている小型樹脂タブレットを予備加熱しない状態でポット内に供給し且つ該ポット内にてその加熱溶融化を行う場合においても、該小型樹脂タブレットの各部位における加熱溶融化作用を効率良く且つ均等に行うことができないような場合があるが、これは、該小型樹脂タブレットの大きさや中空部形状の寸法設定、例えば、小型樹脂タブレットの外径寸法とその外径寸法に対する中空部内径等の寸法設定に基因する問題があるものと考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭56−031004号公報(第4図等)
【特許文献2】特開平05−345331号公報(図2等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、予備加熱しない常温の小型透明樹脂タブレットを樹脂封止成形用型のポット内に供給した場合において、該小型透明樹脂タブレットの各部位における受熱効率の向上と加熱溶融化作用の均等化を図ることができるように改善し、これにより、該小型透明樹脂タブレットの加熱溶融化を迅速に且つ確実に行うと共に、その透明溶融樹脂材料にて光素子を効率良く樹脂封止成形する方法を提供することを目的とするものである。
また、本発明は、上記した樹脂封止成形方法に用いられる小型透明樹脂タブレットの形状を一定の設定条件下にて形成することによって、所要の保形性を備えることができると共に、樹脂量が一定となり且つその取扱が簡易となる小型透明樹脂タブレットを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記した課題を解決するための請求項1に係る発明は、光素子の樹脂封止成形用型における成形キャビティ部内に光素子をセットすると共に、この成形キャビティ部内に透明樹脂材料を充填して前記光素子を透明樹脂パッケージ内に封止成形する光素子の樹脂封止成形方法であって、前記成形用型における成形キャビティ部に光素子を装着した基板を供給する基板供給工程と、前記成形用型における樹脂供給部に予備加熱しない小型の透明樹脂タブレットを供給する樹脂供給工程と、前記成形用型の少なくとも成形キャビティ部と樹脂供給部及び前記成形キャビティ部と前記樹脂供給部との間を連通接続させる樹脂通路部を減圧する型内空間部の減圧工程と、前記樹脂供給工程にて供給された樹脂供給部内の小型の透明樹脂タブレットに前記成形用型に備えた加熱手段による加熱作用を加えて加熱膨張させる樹脂加熱膨張工程と、前記樹脂加熱膨張工程において加熱膨張する前記小型の透明樹脂タブレットから流出した空気や水分及び前記加熱膨張作用時に発生する燃焼ガスを前記型内空間部から排出する型内空間部の排気工程と、前記樹脂加熱膨張工程及び排気工程を経て前記小型の透明樹脂タブレットを加熱溶融化する樹脂溶融化工程と、前記樹脂溶融化工程にて加熱溶融化された小型の透明樹脂材料を前記樹脂通路部を通して前記成形キャビティ部内へ注入充填する樹脂充填工程と、前記樹脂充填工程にて注入充填された前記成形キャビティ部内の溶融透明樹脂材料に所定の樹脂圧を加えて成形した透明樹脂パッケージ内に前記光素子を封止成形する樹脂封止成形工程とを備え、
前記小型の透明樹脂タブレットとして、その外径(D)が17mm以下であり、且つ、その外径(D)とその長さ(L)との比L/Dが1以上であり、更に、その長さ(L)方向における所要範囲に所要形状の空隙部を形成したものを用いることを特徴とする。
【0007】
また、前記の課題を解決するための請求項2に係る発明は、前記した小型透明樹脂タブレットの空隙部が、外径(D)に対して 0.25 〜 0.50 倍となる内径(φ)の貫通穴から形成されていることを特徴とする。
【0008】
また、前記の課題を解決するための請求項3に係る発明は、前記した小型透明樹脂タブレットの空隙部が、相互に均等の内径(φ1)及び/又は不均等の内径(φ2)として設けられた複数個の貫通穴から形成されていることを特徴とする。
【0009】
また、前記の課題を解決するための請求項4に係る発明は、前記した貫通穴の断面形状が、前記樹脂タブレットの長さ(L)方向に向かって順次に拡開する傾斜面状に形成されていることを特徴とする。
【0010】
また、前記の課題を解決するための請求項5に係る発明は、前記した小型透明樹脂タブレットの空隙部が、一方側の端部を閉塞した状態の有底孔部として形成されていることを特徴とする。
【0011】
また、前記の課題を解決するための請求項6に係る発明は、前記した小型透明樹脂タブレットの空隙部が、両端部を閉塞した状態の中空部として形成されていることを特徴とする請求項1に記載の光素子の樹脂封止成形方法。
【0012】
前記した課題を解決するための請求項7に係る発明は、光素子の樹脂封止成形用型における成形キャビティ部内にセットした光素子を透明樹脂パッケージ内に封止成形するための光素子の樹脂封止成形方法に用いられる小型の透明樹脂タブレットであって、
前記樹脂タブレットの外径(D)が17mm以下であり、且つ、その外径(D)とその長さ(L)との比L/Dが1以上であり、更に、その長さ(L)方向における所要範囲に所要形状の空隙部が形成されていることを特徴とする。
【0013】
また、前記の課題を解決するための請求項8に係る発明は、前記した小型透明樹脂タブレットの空隙部が、外径(D)に対して 0.25 〜 0.50 倍となる内径(φ)の貫通穴から形成されていることを特徴とする。
【0014】
また、前記の課題を解決するための請求項9に係る発明は、前記した小型透明樹脂タブレットの空隙部が、相互に均等の内径(φ1)及び/又は不均等の内径(φ2)として設けられた複数個の貫通穴から形成されていることを特徴とする。
【0015】
また、前記の課題を解決するための請求項10に係る発明は、前記した貫通穴の断面形状が、前記樹脂タブレットの長さ(L)方向に向かって順次に拡開する傾斜面状に形成されていることを特徴とする。
【0016】
また、前記の課題を解決するための請求項11に係る発明は、前記した小型透明樹脂タブレットの空隙部が、一方側の端部を閉塞した状態の有底孔部として形成されていることを特徴とする。
【0017】
また、前記の課題を解決するための請求項12に係る発明は、前記した小型透明樹脂タブレットの空隙部が、両端部を閉塞した状態の中空部として形成されていることを特徴とする請求項7に記載の小型の透明樹脂タブレット。
【発明の効果】
【0018】
本発明においては、樹脂封止成形用型のポット内に供給した小型透明樹脂タブレットを効率良く加熱膨張及び加熱溶融化することができると共に、これに加えて、型内空間部を効率良く減圧及び排気し、更に、透明溶融樹脂材料をキャビティ部内へ注入充填し且つ該樹脂材料に所定の樹脂圧を加えて成形した透明樹脂パッケージ内に光素子を効率良く封止成形することができる。
【0019】
また、本発明の小型透明樹脂タブレットを予備加熱をしない状態で樹脂成形温度に加熱した状態の樹脂封止成形用型のポット内に供給した場合、該小型透明樹脂タブレットの各部位における受熱効率を向上させることができると共に、その加熱溶融化作用の均等化を図ることができる。
更に、前記した設定条件下により形成された本発明の小型透明樹脂タブレットは所要の保形性を備えているため、その樹脂量が一定となり且つその取扱いが簡易となる。
【0020】
また、本発明の小型透明樹脂タブレットにおいては、空隙部の各部位における受熱効率の向上とその加熱溶融化作用の均等化を図ることができるのみならず、その保形性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る光素子の樹脂封止成形方法を実施するための樹脂封止成形装置の概略図で、図1(1) はその全体構成を概略的に示す正面図、図1(2) は成形用の型を構成する上型(固定型)及び下型(可動型)の要部を拡大して示す縦断面図である。
【図2】本発明に係る光素子の樹脂封止成形方法に用いられる小型の透明樹脂タブレットを示す概略図で、図2(1) は小型透明樹脂タブレットの全体形状を示す一部切欠斜視図、図2(2) 乃至図2(5) は、いずれも小型透明樹脂タブレットの他の形状例を示す一部切欠斜視図である。
【図3】本発明に係る光素子の樹脂封止成形方法の説明図で、図3(1) は成形用の型の型締状態を示す縦断面図であり、小型透明樹脂タブレットの樹脂加熱膨張工程と型内空間部の減圧工程及び排気工程の説明図、図3(2) はその要部の拡大図である。
【図4】図3に対応する説明図で、図4(1) は小型透明樹脂タブレットの樹脂溶融化工程及び樹脂充填工程の説明図、図4(2) はその要部の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、図を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。
【実施例】
【0023】
図1(1) は光素子の樹脂封止成形装置の全体構成を概略的に示しており、図1(2) はその成形用型部を拡大して示している。
この樹脂封止成形装置は、基盤1と、該基盤上の四隅部に立設されたタイバー2と、該タイバーの上端部に装設された固定板3と、該固定板の下部に上型断熱板4を介して装着された上型プレート5と、該上型プレートに装設された樹脂封止成形用上型6(固定型)と、該上型の下方位置においてタイバー2に嵌装された可動板7と、該可動板の上部に下型断熱板8を介して装着された下型プレート9と、該下型プレートに装設された樹脂封止成形用下型10(可動型)と、基盤1上に装設されて可動板7を上下方向へ昇降移動させることにより上下両型6・10の対向面を接合し或はこれを離反させることができるように設けられたサーボモータ等による型開閉機構11等から構成されており、また、上記した上型プレート5及び下型プレート9には該上型及び下型を加熱するためのヒータ(図示なし)等が配設されている。
【0024】
次に、上記成形用の型を構成する上下両型6・10について詳述する。
上記したように、上型6は上方位置の固定上型プレート5に装着された固定型であり、下型10は該上型の下方位置に対設された可動型である。
また、図1(2) に示すように、下型10には、例えば、シリコーン樹脂等の透光性を有する小型透明樹脂タブレット12の供給部及び溶融部となるポット101 が設けられており、また、このポット101 には該ポット内に供給された小型透明樹脂タブレット12を加圧するためのプランジャ102 が嵌装されている。
更に、上記プランジャ102 の上下駆動機構(図示なし)が配置されており、該上下駆動機構によって該プランジャを上昇駆動させ且つポット101 内の小型透明樹脂タブレット12を所定の設定樹脂圧にて加圧すると共に、後述するように、小型透明樹脂タブレット12に対する加圧作用及び上記ヒータによる加熱作用とによって該小型透明樹脂タブレットを加熱溶融化し且つその溶融樹脂材料を成形キャビティ側へ加圧移送することができるように設けられている。
また、下型の型面には発光ダイオードチップ等の光素子13を装着した基板14をセットするための凹所103 が設けられており、また、この下型凹所103 の位置と対応する上型6の型面には成形用のキャビティ601 が設けられており、また、下型ポット101 の位置と対応する上型6の型面にはカル602 が設けられている。更に、カル602 とキャビティ601 との間はゲート603 を介して連通接続されている。
なお、図中の符号604 は上型6の型面に形成した適宜なエアベントであって、上記した成形キャビティ601 側と連通接続されている。
【0025】
また、上下両型6・10は、後述する樹脂成形時において適宜なシール部材151 にて外気と遮断することができるように設けられており、更に、このシール部材151 による外気遮断範囲内と外部とは真空モータ等の適宜な減圧機構15を介して連通接続されている。
従って、この減圧機構15を作動させて上記外気遮断範囲内を減圧すると、該外気遮断範囲内の空気は強制的に外部へ排気されるため、該外気遮断範囲内に存在する空気や水分及び樹脂成形時に発生する燃焼ガス類16も外部へ同時に排出されるように設けられている。
【0026】
図2(1) 乃至図2(5) には、本発明に係る小型の透明樹脂タブレット12の形状例を示している。そして、その外径Dは17mm以下となるように形成されており、且つ、その外径Dとその長さLとの比L/Dは1以上となるように形成されている。更に、その長さL方向における所要範囲には所要形状の空隙部120 が形成されている。
【0027】
次に、上記した小型の透明樹脂タブレット12の寸法形状について詳述する。
小型の透明樹脂タブレット12は、上述したように、シリコーン樹脂等の透光性を有する樹脂材料を固化成形したものであり、成形時において所要の保形性が付与されている。
図2(1) に示す樹脂タブレットは、その外径Dが17mm以下として成形された小型の透明樹脂タブレット12(スモールタブレット)であり、マルチプランジャ方式を採用したトランスファ成形法において用いることができる。ここで、外径Dを17mm以下に設定したのは、17mmを超える外径の樹脂タブレットにおいてはポット101 における受熱効率が低くなってその加熱溶融化を迅速に行い難いことと、ポット101 における加熱溶融化作用の均等化を図り難くなるため、17mmを超える外径の樹脂タブレットは、大型の樹脂タブレットと同様に、予備加熱を行った後にポット101 に搬送供給しなければならないと云った実情から定めたものである。
また、その外径Dとその長さLとの比L/Dは1以上に設定されている。ここで、L/Dを1以上に設定したのは、小型樹脂タブレットをポット101 に搬送供給する場合における搬送効率、例えば、爪搬送機構や吸着搬送機構等を介して小型樹脂タブレット搬送し且つこれをポット101 内に供給する場合の搬送供給効率や、保管時における取扱いの容易性等を考慮して決定したものである。
また、その長さL方向に、その外径Dに対して 0.25 〜 0.50 倍となる内径φの貫通穴121(120)が形成されている。ここで、貫通穴121 の内径φを外径Dの 0.25 〜 0.50 倍として設定したのは、外径Dの 0.25 倍よりも小さい場合は該貫通穴からの受熱効率が低くなってその加熱溶融化を迅速に行い難いことと、外径Dの 0.50 倍を超える場合は、例えば、一定の樹脂量を確保するためにその長さLを長尺状に形成しなければならないのでその取扱いが不便となること、或は、肉薄状の樹脂タブレット形状となってその保形性を低下させる等の問題が発生し易くなると云う実情から定めたものである。
【0028】
図2(2) に示す樹脂タブレットは、貫通穴122(120)の断面形状が、長さL方向に向かって(同図例では、その下側に向かって)順次に拡開する傾斜面状に形成されている。貫通穴122 の断面形状を傾斜面状に形成することによって単位体積当りの伝熱面積を増加することができると共に、このような傾斜面は、例えば、樹脂材料の固化成形時に採用される樹脂タブレットの抜き勾配を利用することができるのでその形成は容易である。
【0029】
図2(3) に示す樹脂タブレットは、図2(1) に示す樹脂タブレットと同様に、その外径Dが17mm以下であり、且つ、その外径Dとその長さLとの比L/Dが1以上であり、更に、その長さL方向には、相互に均等の内径φ1として形成した貫通穴123(120)、及び/又は、不均等の内径φ2として形成した貫通穴124(120)を配設して設けられた複数個の貫通穴123 ・124 が設けられている。
上記貫通穴の配設態様は、例えば、均等内径φ1の貫通穴123 の複数個を相互に所要の間隔を保って配設するようにしてもよく、また、図2(3) に示すように、樹脂タブレットの軸心部に大き目の貫通穴124 を形成すると共に、該貫通穴の周辺部に小さ目の貫通穴123 の複数個を所要の間隔を保って配設するようにしてもよい。
このように、複数個の貫通穴123 ・124 を配設する場合は、該樹脂タブレットに対する単位体積当りの伝熱面積が増加するため受熱効率を更に向上させることができる。
なお、図2(3) に示す樹脂タブレットの貫通穴123 及び貫通穴124 の断面形状を、図2(2) に示す樹脂タブレットの貫通穴122 と同様に、長さL方向に向かって順次に拡開する傾斜面状に形成しても差し支えない。
【0030】
図2(4) に示す小型の透明樹脂タブレット12は、上記した空隙部120 が、例えば、図2(1) に示すような内径φの貫通穴121(120)の一方側の端部(同図例では、底部側)を閉塞したような状態の有底孔部125(120)として形成されている場合を示している。
この場合は、一端部(底部側)の保形性が向上すると云った利点がある。
なお、この小型透明樹脂タブレット12はその一端部が閉塞された状態に形成されているが、その上下両面にはポット101 内のプランジャ102 による加圧力と型側からの加熱作用とが加えられるので、該小型透明樹脂タブレットに対する受熱効率とその加熱溶融化作用の均等化作用を阻害することはない。
【0031】
図2(5) に示す小型の透明樹脂タブレット12は、上記した空隙部120 が、例えば、図2(1) に示すような内径φの貫通穴121(120)の両端部(同図例では、その上下両端部)を閉塞したような状態の中空部126(120)として形成されている場合を示している。
小型透明樹脂タブレット12にこのような中空部126 から成る空隙部120 を設けた場合は、該樹脂タブレット全体の保形性が向上すると云った利点がある。
また、この小型透明樹脂タブレット12はその両端部が閉塞された状態に形成されているが、その上下両面には、図2(4) に示す有底孔部125(120)を設けたものと同様に、ポット101 内のプランジャ102 による加圧力と型側からの加熱作用とが加えられることになるため、該小型透明樹脂タブレットに対する受熱効率とその加熱溶融化作用の均等化作用を阻害することはない。
なお、上記中空部126 は加熱溶融化作用を得られ難い小型透明樹脂タブレット12の中心部に形成されているため該小型透明樹脂タブレット全体の受熱効率を向上させることができる。更に、該小型透明樹脂タブレットの各部位に対する受熱作用の均等化を図ることができるので、この各部位に対する受熱作用の均等化に伴ってその加熱溶融化作用の均等化を図ることができる。
【0032】
次に、上記した小型の透明樹脂タブレット12を用いて基板14上に装着した光素子13を樹脂封止成形する場合について詳述する。
まず、図1(2) に示す上下両型6・10の型開時において、搬送機構17を介して該上下両型間に光素子13を装着した基板14と小型透明樹脂タブレット12を搬送供給する基板供給工程と、成形用型におけるポット101 に予備加熱しない小型の透明樹脂タブレット12を供給する樹脂供給工程とを行う。
次に、図3(1) に示すように上下両型6・10を型締めすると共に、成形用型の少なくとも成形キャビティ601 部とポット101 及び成形キャビティ601 部とポット101 との間を連通接続させるカル602 及びゲート603 から成る樹脂通路部を減圧する型内空間部の減圧工程と、ポット101 内の小型透明樹脂タブレット12に成形用型に備えた加熱手段による加熱作用を加えて加熱膨張させる樹脂加熱膨張工程と、加熱膨張する小型透明樹脂タブレット12から流出した空気や水分及び加熱膨張作用時に発生する燃焼ガス類16を外部へ排出する型内空間部の排気工程とを行う。
上記した型内空間部(ポット101 と成形キャビティ601 部及びカル602 とゲート603 )の減圧工程では、シール部材151 による外気遮断範囲内の空気が上下両型6・10の型面間やエアベント604 を通して強制的に外部へ排気されている。
また、上記樹脂加熱膨張工程では、予備加熱しない状態の小型透明樹脂タブレット12を樹脂成形温度(例えば、150℃〜180℃)に加熱した状態のポット101 内に供給するので、小型透明樹脂タブレット12はこれに設けられた貫通穴(121・122・123・124)を介して各部位に対する受熱効率が向上されていることとも相俟って、図3(2) に拡大して示すように、迅速に且つ効率良く加熱膨張されることになる。
そして、上記排気工程では、外気遮断範囲内の空気の外部排気時において、該外気遮断範囲内に存在する空気中の水分及び小型透明樹脂タブレット12の加熱膨張時等に発生する燃焼ガス類16も外部へ同時に排出されることになる。
次に、上記した樹脂加熱膨張工程及び排気工程を経て小型透明樹脂タブレット12を加熱溶融化する樹脂溶融化工程と、加熱溶融化された透明樹脂材料127 を上記した樹脂通路部(カル602 及びゲート603 )を通して成形キャビティ601 部内へ注入充填する樹脂充填工程を行う。
上記樹脂溶融化工程では、図4(1) 及び(2) に示すように、加熱膨張し且つガス類16が外部に排出された状態の小型透明樹脂タブレット12はプランジャ102 による加圧力を受けながら更に加熱されることによって溶融化し透明樹脂材料127 となるが、このとき、小型透明樹脂タブレット12は、上記したように、その貫通穴(121・122・123・124)を介して各部位に対する受熱効率が向上されて迅速に且つ効率良く加熱膨張されるため、その各部位における加熱溶融化作用も均等化されて迅速に且つ効率良く加熱溶融化される。
また、上記樹脂充填工程では、プランジャ102 の加圧力によって透明樹脂材料127 が樹脂通路部(602・603)内を流動して移送され、成形キャビティ601 部内に充填される。
次に、成形キャビティ601 部内の溶融透明樹脂材料127 に所定の樹脂圧を加えて成形したボイド(気泡)等を含まない透明樹脂パッケージ内に光素子13を封止成形する樹脂封止成形工程を行う。
光素子13を樹脂封止成形した基板14は、上下両型6・10を再び型開きした後に、適宜な取出機構(図示なし)を介して該上下両型間から外部に取り出せばよい。
【0033】
なお、図2(4) に示す有底孔部125 が形成された小型透明樹脂タブレット12を用いる場合、及び、図2(5) に示す中空部126 が形成された小型透明樹脂タブレット12を用いる場合においても、上記した樹脂封止成形時における作用効果と実質的に同一の作用効果を得ることができる。
即ち、上記したように、これらの小型透明樹脂タブレット12に対しても、ポット101 内のプランジャ102 による加圧力と成形用型側からの加熱作用とが加えられるので、該小型透明樹脂タブレット全体の受熱効率を損なうことなく、その加熱溶融化作用の均等化を図ることができる。
更に、図2(5) に示す中空部126 が形成された小型透明樹脂タブレット12を用いる場合は、上述したように、該小型透明樹脂タブレットの各部位に対する受熱作用が均等化されるため、この各部位に対する受熱作用の均等化に伴ってその加熱溶融化作用の均等化を図ることができる。
【0034】
上記した実施例によれば、ポット101 内に供給した小型透明樹脂タブレット12を効率良く加熱膨張及び加熱溶融化することができると共に、上記した型内空間部を効率良く減圧及び排気し、更に、透明溶融樹脂材料127 をキャビティ601 部内へ注入充填し且つ該透明溶融樹脂材料に所定の樹脂圧を加えて成形した透明樹脂パッケージ内に光素子13を効率良く封止成形することができる。
また、予備加熱をしない状態の小型透明樹脂タブレット12を樹脂成形温度に加熱した状態のポット101 内に供給した場合、該小型透明樹脂タブレットの各部位における受熱効率を向上させることができると共に、その加熱溶融化作用の均等化を図ることができる。
また、加熱溶融化作用を得られ難い小型透明樹脂タブレットの中心部に中空部126 を形成した場合は、該小型透明樹脂タブレット全体の受熱効率を向上させることができるのみならず、その各部位に対する受熱作用の均等化を図ることができるため、この受熱作用の均等化に伴ってその加熱溶融化作用の均等化を図ることができる。
更に、上記した設定条件下により形成された該小型透明樹脂タブレットは所要の保形性を備えているため、その樹脂量が一定となり且つその取扱いが簡易となる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は予備加熱をしない状態の小型樹脂タブレットを樹脂成形温度に加熱した状態の樹脂供給部及び樹脂溶融部内に供給するように構成された樹脂封止成形装置を用いる他の樹脂成形技術の分野においても適用できる。
【符号の説明】
【0036】
1 基盤
2 タイバー
3 固定板
4 上型断熱板
5 上型プレート
6 上型(固定型)
601 キャビティ
602 カル
603 ゲート
604 エアベント
7 可動板
8 下型断熱板
9 下型プレート
10 下型(可動型)
101 ポット
102 プランジャ
103 凹 所
11 型開閉機構
12 小型の透明樹脂タブレット
120 空隙部
121 貫通穴
122 貫通穴
123 貫通穴
124 貫通穴
125 有低孔部
126 中空部
127 透明溶融樹脂材料
13 光素子
14 基板
15 減圧機構
151 シール部材
16 ガス類
17 搬送機構
D 外径
L 長さ
φ 内径
φ1 内径
φ2 内径
P.L パーティングライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光素子の樹脂封止成形用型における成形キャビティ部内に光素子をセットすると共に、この成形キャビティ部内に透明樹脂材料を充填して前記光素子を透明樹脂パッケージ内に封止成形する光素子の樹脂封止成形方法であって、
前記成形用型における成形キャビティ部に光素子を装着した基板を供給する基板供給工程と、
前記成形用型における樹脂供給部に予備加熱しない小型の透明樹脂タブレットを供給する樹脂供給工程と、
前記成形用型の少なくとも成形キャビティ部と樹脂供給部及び前記成形キャビティ部と前記樹脂供給部との間を連通接続させる樹脂通路部を減圧する型内空間部の減圧工程と、
前記樹脂供給工程にて供給された樹脂供給部内の小型の透明樹脂タブレットに前記成形用型に備えた加熱手段による加熱作用を加えて加熱膨張させる樹脂加熱膨張工程と、
前記樹脂加熱膨張工程において加熱膨張する前記小型の透明樹脂タブレットから流出した空気や水分及び前記加熱膨張作用時に発生する燃焼ガスを前記型内空間部から排出する型内空間部の排気工程と、
前記樹脂加熱膨張工程及び排気工程を経て前記小型の透明樹脂タブレットを加熱溶融化する樹脂溶融化工程と、
前記樹脂溶融化工程にて加熱溶融化された小型の透明樹脂材料を前記樹脂通路部を通して前記成形キャビティ部内へ注入充填する樹脂充填工程と、
前記樹脂充填工程にて注入充填された前記成形キャビティ部内の溶融透明樹脂材料に所定の樹脂圧を加えて成形した透明樹脂パッケージ内に前記光素子を封止成形する樹脂封止成形工程とを備え、
前記小型の透明樹脂タブレットとして、その外径(D)が17mm以下であり、且つ、その外径(D)とその長さ(L)との比L/Dが1以上であり、更に、その長さ(L)方向における所要範囲に所要形状の空隙部を形成したものを用いることを特徴とする光素子の樹脂封止成形方法。
【請求項2】
前記した小型透明樹脂タブレットの空隙部が、外径(D)に対して 0.25 〜 0.50 倍となる内径(φ)の貫通穴から形成されていることを特徴とする請求項1に記載の光素子の樹脂封止成形方法。
【請求項3】
前記した小型透明樹脂タブレットの空隙部が、相互に均等の内径(φ1)及び/又は不均等の内径(φ2)として設けられた複数個の貫通穴から形成されていることを特徴とする請求項1に記載の光素子の樹脂封止成形方法。
【請求項4】
前記した貫通穴の断面形状が、前記樹脂タブレットの長さ(L)方向に向かって順次に拡開する傾斜面状に形成されていることを特徴とする請求項2、又は、請求項3に記載の光素子の樹脂封止成形方法。
【請求項5】
前記した小型透明樹脂タブレットの空隙部が、一方側の端部を閉塞した状態の有底孔部として形成されていることを特徴とする請求項1に記載の光素子の樹脂封止成形方法。
【請求項6】
前記した小型透明樹脂タブレットの空隙部が、両端部を閉塞した状態の中空部として形成されていることを特徴とする請求項1に記載の光素子の樹脂封止成形方法。
【請求項7】
光素子の樹脂封止成形用型における成形キャビティ部内にセットした光素子を透明樹脂パッケージ内に封止成形するための光素子の樹脂封止成形方法に用いられる小型の透明樹脂タブレットであって、
前記樹脂タブレットの外径(D)が17mm以下であり、且つ、その外径(D)とその長さ(L)との比L/Dが1以上であり、更に、その長さ(L)方向における所要範囲に所要形状の空隙部が形成されていることを特徴とする光素子の樹脂封止成形方法に用いられる小型の透明樹脂タブレット。
【請求項8】
前記した小型透明樹脂タブレットの空隙部が、外径(D)に対して 0.25 〜 0.50 倍となる内径(φ)の貫通穴から形成されていることを特徴とする請求項7に記載の小型の透明樹脂タブレット。
【請求項9】
前記した小型透明樹脂タブレットの空隙部が、相互に均等の内径(φ1)及び/又は不均等の内径(φ2)として設けられた複数個の貫通穴から形成されていることを特徴とする請求項7に記載の小型の透明樹脂タブレット。
【請求項10】
前記した貫通穴の断面形状が、前記樹脂タブレットの長さ(L)方向に向かって順次に拡開する傾斜面状に形成されていることを特徴とする請求項8、又は、請求項9に記載の小型の透明樹脂タブレット。
【請求項11】
前記した小型透明樹脂タブレットの空隙部が、一方側の端部を閉塞した状態の有底孔部として形成されていることを特徴とする請求項7に記載の小型の透明樹脂タブレット。
【請求項12】
前記した小型透明樹脂タブレットの空隙部が、両端部を閉塞した状態の中空部として形成されていることを特徴とする請求項7に記載の小型の透明樹脂タブレット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−194977(P2010−194977A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−44942(P2009−44942)
【出願日】平成21年2月27日(2009.2.27)
【出願人】(390002473)TOWA株式会社 (192)
【Fターム(参考)】