内燃機関のエンジン性能を最適化する方法
【課題】内燃機関における条件を制御するために排気ガス再循環を制御する方法を提供する。
【解決手段】圧縮解放ブレーキおよび(または)排気ブレーキを提供しうる内燃機関のブレーキ装置において、各種のエンジン作動速度においてエンジンブレーキを最適化するために排気ガス再循環事象と吸気弁事象との間の重なりを制御する方法と装置とが開示されている。最適化は排気ガス再循環に対して排気弁の開閉を選択的に進めたり、遅らせることによって達成しうる。排気弁の開閉は例えば排気マニホルドの圧力、排気マニホルドの温度、シリンダ圧力およびまたはシリンダの温度のようなエンジンのパラメータのモニタされたレベルに応答して実行しうる。各種のエンジンのパラメータはモニタし得る。排気ガスの再循環の制御はモニタされたパラメータが所定のレベルを上回らないようにモニタされたパラメータに応答しうる。
【解決手段】圧縮解放ブレーキおよび(または)排気ブレーキを提供しうる内燃機関のブレーキ装置において、各種のエンジン作動速度においてエンジンブレーキを最適化するために排気ガス再循環事象と吸気弁事象との間の重なりを制御する方法と装置とが開示されている。最適化は排気ガス再循環に対して排気弁の開閉を選択的に進めたり、遅らせることによって達成しうる。排気弁の開閉は例えば排気マニホルドの圧力、排気マニホルドの温度、シリンダ圧力およびまたはシリンダの温度のようなエンジンのパラメータのモニタされたレベルに応答して実行しうる。各種のエンジンのパラメータはモニタし得る。排気ガスの再循環の制御はモニタされたパラメータが所定のレベルを上回らないようにモニタされたパラメータに応答しうる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に内燃機関(ICE)のための排気ガス流量制御の分野に関する。詳しくは、本発明はエンジンの圧力、温度およびNOx排出を制御するために排気ガスの再循環を制御する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ICEを通しての排気ガスの流量制御は車両のエンジンブレーキを提供するために使用されてきた。エンジンブレーキは排気ブレーキ、圧縮解放型式のブレーキおよび(または)前記2種類のブレーキのいずれかの組み合わせを含みうる。そのようなブレーキの根底を成す一般的な原理はピストンの運動を遅らせることによりエンジンが接続されている車両の制動を促進するためにエンジンの往復運動するピストンによって発生するガス圧縮を利用することである。
【0003】
排気ブレーキは例えばトラックやバスのような特に大型車両の制動を促進する上で有用であることが知られている。排気ブレーキは、排気マニホルドの下流における排気系統を制限することにより排気マニホルドを含む排気系統において発生する排気ガス背圧を増大させることが出来る。そのような制限は過給機、開放および閉鎖可能バタフライ弁、あるいは排気系統を部分的に、あるいは完全に閉塞するその他の何れかの手段の形態をとりうる。
【0004】
排気マニホルドの圧力を増大させることにより、排気ブレーキも排気ストロークの終わりにおいてエンジンシリンダ内の残留圧力を増大させる。シリンダの圧力増大は、後続の上昇行程においてピストンが受ける抵抗を増大させる。ピストンの抵抗が増大する結果クランクシャフトを介してピストンに接続しうる車両の駆動系列を制動する。
【0005】
排気系統における制限が、制限を可変とすることに伴う費用と当該系統の複雑さとによって完全に行われるか、あるいは完全に行われないように排気ブレーキが提供されてきた。これらの排気ブレーキは排気制動の時点でエンジンの速度に比例するレベルのブレーキ作用を発生させる。エンジンの速度が速くなればなるほど、排気マニホルドとシリンダとにおけるガスの圧力と温度とが大きくなる。圧力および温度がより高くなると、その結果シリンダにおけるピストンの上昇行程に対する抵抗、従って制動を増大させる。
【0006】
排気系統とエンジンとは無制限の温度および圧力レベルに耐えることは出来ないので、排気ブレーキに対する制限は、エンジンの定格の最大速度での作動が許容し得ない程の高圧と高温を排気系統および(または)エンジンにおいて発生させないように設計する必要がある。最高温度および圧力以下、および定格の最大速度以下のエンジン速度における最大ブレーキ以下となるように制限がもくろまれてきた。従って、定格の最大エンジン速度において最大の排気制動を提供するように設計された一定寸法を有する排気制限を使用した最大のエンジン速度以下で排気制動の増大を実現する装置と方法とに対する要求がある。
【0007】
圧縮解放ブレーキ、すなわちリターダは排気ブレーキと関連して、あるいは独立して使用可能である。圧縮解放リターダは少なくとも一時的に(例えば、圧縮点火型の)内燃機関のシリンダを空気圧縮機に変換する。リターダはエンジンのピストンの運動をシリンダ内で発生した圧縮力に対抗させることによりエンジンの運動エネルギを熱エネルギに変換する。圧縮解放事象はピストンが上昇行程を通して運動し、ピストンの上方運動に対抗するシリンダ内の気体を圧縮することによって開始しうる。ピストンが上昇行程の頂点に近づくと、排気弁は開放し、圧縮を「解放」することによってピストンが、その後の運動エネルギを発生させる下降行程の跳ね返り時に圧縮熱発生の上昇行程において蓄えられた熱を再捕捉しないようにする。このようにして、ピストンの運動エネルギは熱エネルギに変換され。排気系統を通してエンジンから運ばれ、その結果エンジンの運動エネルギと関連のエンジンのブレーキとを低下させる。
【0008】
エンジンのサイクル毎にエンジンのシリンダにおける圧縮解放事象を繰返すことによって、エンジンは制動馬力を発生させ、車両を制動し易くする。このため運転者が車両を操縦し易くし、車両の常用ブレーキの摩耗を著しく低下させる。適正に設計され、調整された圧縮解放リターダはポジテイブパワーにおいてエンジンによって発生する作動馬力の殆どの部分である遅延馬力を発生させることが出来る。
【0009】
従来技術による圧縮解放エンジンリターダの一例が参考のために本明細書に含めている、カミンズ(Cummins)に対する特許文献1の米国特許第3,220,392号(1965年11月)に開示されている。例えばカミンズによるリターダのようなエンジンリターダは圧縮解放事象を実行するために排気弁の作動を制御するのに市販の油圧系統を採用している。これらの油圧系統はエンジンの既存の弁作動装置、例えば、カムシャフトを備えたエンジンの回転カムによって駆動され、かつ動力を加えることが出来る。エンジンがポジテイブパワーを発生しているときは、油圧系統は弁制御装置から外されるので、解放事象は何ら発生しない。圧縮解放遅延が望ましい場合には、油圧系統は排気弁と係合し圧縮解放事象を提供する。
【0010】
ボルボ社(Volvo AB)に対して譲渡され、本明細書において参考ために含めている「4ストロ―ク内燃機関のエンジン制動」(Engine Braking a Four Stroke Internal Combustion Engine)という名称のゴバート(Gobert)に対する特許文献2の米国特許第5,146,890号は追加の排気ガスがシリンダ、すなわち排気ガス再循環系統内へ流入しうるようにするために圧縮解放事象の前に排気弁を開放することにより圧縮解放リターダの制動動力を増大する装置を開示している。ゴバートによる装置においては、排気弁は排気ガスがシリンダ内へ再循環するように所定の一定量まで開放するように制限されている。ゴバートによる装置は固定クリアランス装置を採用している。従って、ゴバートによる装置は再循環のために排気弁を開放し、閉鎖し、そして上昇させることは、エンジンが最大速度で作動していると達成される温度や圧力がエンジンの熱および圧力負荷限度を上回らないように固定する必要があるという点で従来技術による排気ブレーキと同じである。温度と圧力(従って制動)は最大のエンジン速度未満の際に潜在的に可能性のあるものより低いものとなる。
【0011】
従来技術は、またスレーブピストンと該スレーブピストンによって開放する排気弁との間のクリアランスの量を変更する装置を開示している。例えば、本発明の出願人はクリアランスを変更し、そのため弁の開放時間を進めるために使用しうる以下述べる従来技術によるクリランス装置を認識している。「リセットオートラッシュ機構を備えたエンジンリターダ」(Engine Retarder With Reset Auto−Lash Mechanism)という名称のマイストリック(Meistrick)に対する特許文献3の米国特許第4,706,625号(1987年11月)、「自動クリップスレーブピストン」(Self−Clipping Slave Piston)という名称のフー(Hu)に対する特許文献4の米国特許第5,161,501号(1992年11月10日)、「エンジンブレーキタイミング制御機構」(Engine Brake Timing Control Mechanism)という名称のカスタ(Custer)に対する特許文献5の米国特許第5,186,141号(1992年11月10日)、および「圧縮解放エンジンリターダクリップ弁」(Compression Release Engine Retarder Clip Valve)という名称のフー(Hu)に対する特許文献6の米国特許第5,201,290号(1993年4月13日)であって全て参考のために本明細書に含めている.弁の開放時間を進める弁クリアランス調整装置が存在しているが、そのような装置は(i)弁をより早く開放し、より遅く閉鎖し、リフトを増すこと、あるいは(ii)弁をより遅く開放し、より早く閉鎖し、リフトを減少することに限定されている。クリアランス調整装置は弁が開閉する時間を独立して制御出来ず、そのため各種のエンジン速度において最適制動と相容しうるエンジンにおける温度および圧力制御のために最適の排気ガス再循環を得る必要がある。
【特許文献1】米国特許第3,220,392号明細書
【特許文献2】米国特許第5,146,890号明細書
【特許文献3】米国特許第4,706,625号明細書
【特許文献4】米国特許第5,161,502号明細書
【特許文献5】米国特許第5,186,141号明細書
【特許文献6】米国特許第5,201.290号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従来技術における方法や装置のいずれも各種の速度においてエンジンを制動するために排気ガス再循環を最適化するために相互に独立して排気弁の開閉が制御可能であることを教示あるいは示唆していない。更に、背圧の選択された各種レベルによって排気ガス再循環(すなわち、排気圧力調節−EPR)を制御することも教示されていない。排気ガス再循環の量が排気弁の開閉とは独立して制御することによって制御された場合(ゴバートによる特許においてはないことであるが)、排気マニホルドおよびエンジンシリンダにおける圧力および温度のレベルは何れかのエンジン速度において最適のエンジン制動度が達成されるように保持することが出来る。車両は典型的に、いずれかの、かつ全てのエンジン速度において制動を行なう必要があるので、エンジンのシリンダまで再循環される排気ガスの量を制御する装置および方法に対する要求がある。
【0013】
従来技術による方法あるいは装置は排気ガス再循環のための排気弁の開閉は、例えば温度、圧力及びエンジン速度のような各種のエンジンのパラメータのレベルが調整可能なようにそれらのパラメータのレベルに応答して制御可能であることを教示してもいないし、示唆もしていない。従って、何れかのエンジン速度に対してそのようなパラメータの「限度の押し上げる」エンジンブレーキのレベルを達成しうるように、例えば、温度、圧力、エンジン速度等の一つ以上のエンジンパラメータに従って排気ガス再循環を制御する必要がある。そのようなパラメータをモニタし、そのようなパラメータのモニタされたレベルに応答して排気ガス再循環を制御することにより、何れかのエンジン速度に対して最大許容圧力および温度(従って、最大制動)を達成することが出来る。
【0014】
その他の排気ガス再循環装置や方法は再循環のために排気弁が開放している時と、吸気のために吸気弁が開放している時間との間の重なりを変更することのインパクトを認識していなかった。排気弁はピストンの降下吸気ストロークにおいて吸気弁が開放している時間に排気ガスの再循環のために排気弁を開放することが出来る。そのため、吸気弁はブレーキ作用の間排気マニホルドからシリンダ内へ逆流している高圧のガスの出口を提供する。吸気弁と排気弁との開放の重なりを変更することによって、排気マニホルドとシリンダとの圧力と温度とはエンジンのNOx排出と共に制御可能である。
【0015】
吸気弁と排気弁との開放の重なり変更は、またエンジンブレーキによって発生するノイズのレベルを調整するように制御可能である。前記重なりを減少することにより吸気弁を通るガスの流量および流れ時間とを減少させ、従ってエンジンの吸気装置から放出されるノイズのレベルを減少させる。
【0016】
従来技術の開示から、圧縮解放遅延ブレーキおよび排気ブレーキの有効性を増し、かつ最適化するために排気ガス再循環のための排気弁の開閉を制御する方法に対する顕著な要求が残っていることが明らかである。更に、また広範囲のエンジン作動パラメータおよび条件に亘って機能を発揮しうる装置に対する顕著な要求も残っている。特に、それらが使用されるエンジンの定格最大速度以下の作動速度における性能を最適化するために圧縮ブレーキ装置と排気ブレーキ装置とを「同調」させる必要性が残っている。
【0017】
(発明の目的)
従って、本発明の目的は内燃機関における条件を制御するために排気ガス再循環を制御する方法と装置とを提供することである。
【0018】
本発明の別の目的は排気弁が開放するときと前記弁が排気ガス再循環のために閉鎖されるときとを独立して制御する方法と装置とを提供することである。
【0019】
本発明の更に別の目的は排気ガス再循環を制御することによって内燃機関内の温度を制御する方法と装置とを提供することである。
【0020】
本発明の更に別の目的は排気ガス再循環を制御することによって内燃機関内の圧力を制御する方法と装置とを提供することである。
【0021】
本発明の更に別の目的は排気ガス再循環を制御することによってエンジンブレーキの間内燃機関から放出されるノイズを制御する方法と装置とを提供することである。
【0022】
本発明の更に別の目的は多数のエンジン速度においてエンジンブレーキを最適化する方法と装置とを提供することである。
【0023】
本発明の更に別の目的は排気ガス再循環の制御に貢献する手段として排気圧力調整方法と装置とを提供することである。
【0024】
本発明の範囲に入るその他の目的は本発明から派生する全ての変更を含み、本開示を精査し、開示された本発明を実践するとその結果当該技術分野の専門家には明らかとなる。
【課題を解決するための手段】
【0025】
前記目的に対応して、本発明の出願人は排気ガス再循環事象と吸気弁事象とを使用して内燃機関における排気ガスパラメータを制御する新規で、経済的な方法であって、(a)エンジンにおいて排気ガスの背圧を発生する段階と、(b)排気ガスパラメータレベルをモニタする段階と、(c)前記パラメータのレベルに応答して排気ガス再循環事象を実行する段階とを含み、前記排気ガスパラメータが排気ガス再循環事象と吸気弁事象との間の重なり時間を選択的に変更することのみ、あるいは排気ガス背圧を選択的に変更することと組み合わせることによって排気ガスパラメータが制御されることを特徴とする方法を開発した。
【0026】
前述の全体的な説明並びに以下の詳細説明の双方は単に例であって、請求された本発明を制限するものでないことを理解すべきである。参考のために本明細書に組み込み、本明細書の一部を構成する添付図面は本発明のある実施例を示し、詳細説明と共に本発明の原理を説明するのに供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明の実施例において、図1に示すエンジン20はエンジンが制動のために使用されている時間ピストン45がその中で繰返し上下に往復運動しうるシリンダ40を有しうる。シリンダ40の頂部において、少なくとも1個の吸気弁32と1個の排気弁34とがある。吸気弁32と排気弁34とはそれぞれ吸気ガス通路22と排気ガス通路24と連通するように開閉しうる。排気ガス通路24は排気マニホルド26と連通し、該排気マニホルドは、またその他の排気ガス通路(図示せず)からの入力を有しうる。排気マニホルド26の下流にはマニホルド26からの排気ガスの流れを制限するように選択的に作動しうる排気ガス制限手段70を設けることが出来る。排気制限手段70は図示のように排気管における過給機あるいはバタフライ弁72のような各種の手段によって提供しうる。
【0028】
本発明のエンジンブレーキ装置と方法とにおいて、エンジン20は排気ガス再循環のために排気弁を開放するための作動副装置300を含みうる。エンジンは、また吸気弁作動副装置350を含みうる。吸気事象と排気事象とのために吸気弁と排気弁とを開放するための数種の副装置が知られており、本発明は本発明の出願人あるいは他の人によって開発された、そのような副装置および(または)新規の装置のいずれかを使用しうるものと考えられる。
【0029】
排気弁34の作動は必要に応じて副装置300によって制御され排気ガス再循環のために弁を開放可能である。副装置300は共通のレールからあるいはロストモーション装置から弁を開放する力を発生させる手段を限定的ではないが含む各種の油圧、油圧―機械的および電磁作動手段から構成しうる。これらの型式の装置の多くは当該技術分野において周知であり、本発明に使用するのに適している。更に、本発明を実行するために使用される作動副装置300は電子制御可能である。
【0030】
作動副装置300および350は、排気マニホルド26および(または)シリンダ40の圧力および(または)温度のレベルが、シリンダ40、弁32および34並びにマニホルド26を構成する材料によって決定される所定の限度を上回ることがないように制御装置600によって制御可能である。制御装置600はコンピュータを含み、かつシリンダ40、排気マニホルド26または排気装置のいずれかのその他の部分への、例えば電気配線あるいはガス通路のような何れかの接続手段130を介してプローブすなわちポート610に接続可能である。制御装置600は、また該制御装置がエンジンの速度および(または)その他のエンジンのパラメータを測定可能とする例えばタコメータのような適当なエンジン要素900にも接続しうる。
【0031】
プローブすなわちポート610は制御装置600にシリンダ40、マニホルド26および(または)排気装置のその他の何れかの部分における温度および(または)圧力を指示するために使用しうる。エンジンの要素900は制御装置600にエンジン20の速度の決定を与えるのに使用しうる。
【0032】
エンジンブレーキの間、排気制限手段70は排気ガスの背圧を増大するように閉鎖、あるいは部分的に閉鎖しうる。増大した背圧は排気ガス再循環事象を実行することにより制動のためにシリンダ内のガスのチャージを増大するために使用し得る。
【0033】
排気ガス再循環の間、ガスの流れは排気マニホルド26からエンジンのシリンダ40内へ反転し、かつ吸気弁32を通して吸気通路22へ戻りうる。排気弁および吸気弁を通してのガスのこの逆流の制御は装置の排気圧力のプロフィールと、その結果の、吸気時シリンダに送られる質量チャージとを決定する。質量チャージはシリンダ内のガスの圧力と温度とが大きければ大きいほど、高温と高圧とにより対抗されるので往復運動しているピストン45によって達成される制動の大きさが大きくなるので圧縮解放遅延ブレーキに影響を与えうる。
【0034】
引続き図1を参照すると、制御装置600は、プローブ610および(または)エンジンの要素900から受け取る温度、圧力および(または)エンジン速度の検出値に従った排気ガス再循環の間排気弁34の開放時間、閉鎖時間およびリフトの大きさを変更しうる。排気マニホルドにおける排気ガス圧力が排気圧力と温度とに対するエンジンの作動限度を上回らないように排気ガスの再循環制御が保持される。これらの限度はエンジンの形態とエンジンの製造元での公差によってエンジン毎に変動しうる。好適な制御方案は排気ガス圧力および(または)排気ガス温度を検出し、排気圧力と温度とをエンジンの限度内に保つように排気ガス再循環パラメータ、すなわち排気弁の開放時間、閉鎖時間および弁の開度の大きさを調整することである。
【0035】
図1と図2とを参照すると、吸気弁32の開度が200の部分(図2)によって、排気ガス再循環のための排気弁34の開きが202の部分によって指示されている。203の部分はシリンダ40から燃焼ガスを排出するための排気弁34の開きを示し、205の部分は圧縮解放事象のための排気弁34の開きを示している。
【0036】
エンジン20は排気ブレーキと圧縮開放ブレーキとによって発生する温度と圧力レベルとに無制限に耐えることは出来ないので、排気マニホルド26、シリンダ40あるいはその他の要素とにおける温度や圧力のレベルが制御装置600によってモニタされるエンジンの限度を上回らないように排気ガス再循環が実行される。排気ガス再循環の間の排気弁34の開閉のタイミングと大きさとを制御することにより、排気ブレーキと圧縮開放ブレーキの量は何れのエンジン速度に対しても最大にしうる。詳しくは、測定された圧力と温度レベルに応答して弁の運動のタイミングおよびリフトの大きさを制御することによりいずれのエンジン速度においても最大量のエンジンブレーキが実現しうるように保証する。
【0037】
吸気弁の開き(200の部分)と排気弁34の排気ガス再循環のための開き(202の部分)との重なり部分(図2のハッチングした領域204によって示す)の量を調整することにより。シリンダのチャージの制御された部分はシリンダ40を通して吸気通路22内へ連続して戻りうる。この吸気弁32を通る逆流が排気マニホルド26において望ましい排気背圧が保たれうるようにし、そのため排気マニホルドの圧力と温度とを制御する手段を提供する。
【0038】
図1を改めて参照すると、再循環のために排気弁34の閉鎖を遅らせる(頂部死点により近くまで遅らせる)ことにより、シリンダのガスの質量の制御された部分は圧縮ストロークの間ピストン45の上方運動によって排気弁34を通ってマニホルド26内へ強制的に戻されうる。特に、ある場合には、ピストンがその圧縮ストロークの半分を完了した後まで排気ガス再循環事象を継続させることが有利である。いずれにしても、少なくとも圧縮ストロークの顕著な部分が完了するまでは排気ガス再循環事象が継続するようにすることも有利である。圧縮ストロークの顕著な部分EGRが継続する非限定的な例が図7および図11に提供されている。排気ガス再循環事象の終わりにおいて排気弁34が閉鎖した後残りの質量は圧縮ストロークの間圧縮され、後続の圧縮解放事象すなわち排気ストロークの間排気マニホルド内へ解放しうる。
【0039】
吸気弁と排気弁との解放の重なりが大きければ大きいほど、より高圧の排気マニホルド26から吸気弁32を通してガスが逆流することによりシリンダ40において発生しうる圧力が低くなり、従って、圧縮解放ブレーキに対してシリンダ40に残りうるガスの質量は小さくなる。排気弁34が解放されているクランク角度が進むとすれば、重なりも増大しうる。重なりが増大すると排気背圧(すなわち排気マニホルド圧)を減少させ、および(または)全ての弁が閉鎖した後シリンダ40に捕捉されているガスの質量を減少させ得る。逆に、開放クランク角度が遅れると、前記重なりを減少させ、従って排気マニホルド圧および(または)シリンダに捕捉されたガスの質量を増大させ得る。従って、クランク角度を進めたり、遅らせたりすることによって排気ブレーキのために利用しうる排気マニホルドの圧力(および関連した温度)および(または)圧縮解放ブレーキのために使用しうるシリンダガスの質量を制御することが出来る。
【0040】
排気弁343が閉鎖されるクランク角度の進みや遅れを少し調整するだけでは排気背圧に対して適当な効果を有していない、従って実現される排気ブレーキにレベルに対して殆ど効果がないものと考えられる。しかしながら、シリンダに捕捉されるガスの質量は排気弁の閉鎖に対してクランク角度によって影響を受けず、従って排気弁閉鎖のためのクランク角度は実現される圧縮解放ブレーキのレベルに対して影響を与える。
【0041】
従って、(エンジンの構成要素が増大した圧力や温度に耐えうることを前提として)各種のエンジン速度において圧縮解放ブレーキのレベルを上げるには、捕捉されたガスの質量を閉鎖クランク角度を進めることによって増大すればよい。圧縮解放ブレーキのレベルを下げるには、排気弁閉鎖のクランク角度を遅らせることによって捕捉されたガスの質量を減少させることが出来る。このように、排気ガス再循環事象を変更することによって、固定時間の圧縮解放ブレーキ事象によって可変の圧縮解放ブレーキを達成することが出来る。
【0042】
排気ガス再循環のための排気弁の開き202の大きさ(すなわち、排気弁のリフト)は、また各種のエンジン速度に対して排気ブレーキおよび(または)圧縮解放ブレーキを最適化するために制御可能である。リフトの減少は、シリンダ内に捕捉されたガスの質量を低下させ、また排気背圧に対する影響も及ぼしうる。
【0043】
図2に示すものと同じ事象を同じ参照数字が指示する図3を参照すると、閉鎖時間A、閉鎖時間B、およびリフトの大きさCの変形が、二つの排気ガス再循環事象202aおよび202bの間に示されている。しかしながら、本発明は開放時間Aの進みに閉鎖時間Bの遅れ、およびリフトの増大Cが伴う必要があるという状態に限定されない。開放時間および閉鎖時間並びにリフトは相互に独立して調整可能であることが認められる。
【0044】
図2および図3に示すものと同じ事象を同じ参照数字が指示する図4を参照すると、ある場合には、排気ガス再循環事象202はエンジンのシリンダに対して所望の再循環量を提供するように吸気事象200内で全体的に発生するように排気ガス再循環事象202を進めうることが判る。このようなモードにおいて、ポジテイブパワーの間のNOx生成はシリンダのチャージを適当に希釈するので調整可能である。
【0045】
制御された排気ガス再循環は開閉点およびEGR事象の開放の大きさを選択的に変更することによって排気圧調整手段として使用しうる。
【0046】
「排気ブレーキへの適用」−排気圧調整(EPR)は低いエンジン速度で高い排気圧が発生しうるようにしながらエンジンの背圧の上限を保つ上で排気ブレーキ装置において有用である。EPRは固定された排気ブレーキを可変の排気ブレーキに効果的に変換する。更に、シリンダにおいて質量が追加されるため実質的な圧縮解放部分をブレーキ作用に追加することが出来る。
【0047】
図5はEPRの無い標準的な排気ブレーキサイクルのための吸気弁および排気弁リフト事象を示す。図6を参照すると、本装置に対する排気背圧が圧力―容積線図の下部分において拡大した領域によって指示するように、サイクルのガス交換部分におけるポンピング作業の量を増大させている。本装置において、排気弁ばねは排気マニホルドからシリンダまで何ら逆流がないようにするのに十分予負荷されている。十分な予負荷が無い場合には排気圧がばねの力を上回り排気弁を一時的に開放すると逆流が発生しうる。この排気弁の非制御開放、すなわち自然の「弁浮動」はそれが発生すると圧力を解放し、排気背圧に対する上限を設定する。一般に、弁浮動はより高いエンジン速度においてのみ発生し、弁の着座速度が極めて速いため望ましくないものと考えられている。
【0048】
図7に示す装置は排気圧調整のための制御された排気解放を組み込んでいる。通常の排気制限より小さい制限が使用され、排気圧はEPRによって制御される。EPの開放、閉鎖および持続時間は最大許容背圧が高いエンジン速度において超過しないように、一方遅い速度(図8に示す)においてより高い背圧を維持するように各エンジン速度において動的に調整される。排気ブレーキの性能は2通りの利点がある。逆流の間にシリンダに対して追加の質量がチャージされることによってシリンダ圧が著しく増大するが図7でハッチングで示すように通常の排気弁開放時にその後の圧縮ブローダウンの間解放される。また、より高い排気圧を保つことが出来るため低いエンジン速度において制動パワーを増大させることが出来る。
【0049】
「圧縮解放ブレーキへの適用」―圧縮解放ブレーキは一般にエンジンのシリンダをチャージするため過給機のブースト圧によって左右される。排気圧調整により逆流によってシリンダをチャージすることは圧縮解放エンジンブレーキに対しては極めて効果的である。排気ブレーキと組み合わせて圧縮解放することによって過給機の応答が鈍い特にエンジンの低速および中間速度において全体の制動効果を大いに高める。
【0050】
図9は標準的な解放エンジンブレーキサイクルである。圧縮のための初期シリンダ圧(図10に示す)は過給機によって提供される。過給機のブースト圧はエンジン速度が低下し、従って制動パワーが落ちると急速に低下する。
【0051】
図11は圧縮解放ブレーキとEPR装置との組み合わせに関連した弁のリフトを示す。EPRと組み合わせた圧縮解放は排気圧のみによって変わる。排気圧は適当な排気制限により低いエンジン速度において高いレベルに保たれ、エンジンの速度が増すにつれて装置の負荷限度に対応するようにEPR制御方案により調整される。圧縮解放による利点と排気ブレーキ効果とが組み合わされて(図12)図10において達成された制動パワーを上回る。
【0052】
「ポジテイブパワーに対する適用」―内燃機関における排気ガス再循環はあるエンジン速度と負荷においては望ましいものでNOx放射制御を助勢する。本明細書の開示の装置もまたこの用途に対して適用可能である。EPR事象は全体的に制御可能、すなわち必要に応じてオン、オフあるいは変更可能であるので、本装置はエンジンの制動作動およびパワー作動の双方において有利に使用可能である。
【0053】
当該技術分野の専門家には本発明の範囲あるいは精神から逸脱することなく弁作動副装置300を作動させる装置に対して各種の修正や変更が可能なることは明らかである。例えば、EGRはこの目的に対して提供された主排気弁あるいは補助排気弁によって提供可能である。また、当該技術分野の専門家には本発明の範囲あるいは精神から逸脱することなく排気ガス再循環弁開放事象の開放、閉鎖および開きの大きさの制御において各種の修正および変更が可能なことも明らかである。このように、本発明は、特許請求の範囲およびそれらの均等物に入るのであれば本発明の変更や修正も網羅する意図である。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】エンジンシリンダ、排気系統、および排気ガス再循環制御装置の概略断面図である。
【図2】吸気弁と排気弁との開きの重なりを示す弁リフト対クランク角度との関係を示すグラフである。
【図3】排気ガス再循環中の排気弁の開放および閉鎖時間並びにリフトの可変性を示す、弁リフト対クランク角度のグラフである。
【図4】吸気事象内での排気ガス再循環事象の発生を示す、弁リフト対クランク角度のグラフである。
【図5】標準的な排気ブレーキサイクルに対する排気弁と吸気弁のリフトを示すグラフである。
【図6】図5に示す標準的な排気ブレーキサイクルに対する圧力−容積を示すグラフである。
【図7】標準的な排気ブレーキサイクルと排気圧力調整事象に対する排気弁と吸気弁のリフトを示すグラフである。
【図8】図7に示すEPRによる標準的な排気ブレーキサイクルに対する排気ブレーキ性能を示すグラフである。
【図9】標準的な圧縮解放ブレーキサイクルに対する排気弁および吸気弁のリフトを示すグラフである。
【図10】図9に示す標準的な圧縮解放ブレーキサイクルに対する排気ブレーキの性能を示すグラフである。
【図11】EPRによる圧縮解放ブレーキに対する排気弁および吸気弁のリフトを示すグラフである。
【図12】図11に示すRPRによる圧縮解放ブレーキに対する排気ブレーキの性能を示すグラフである。
【符号の説明】
【0055】
30 内燃機関
32 吸気弁
34 排気ガス再循環
600 温度、
610 シリンダの温度、圧力
900 モニタされるパラメータ
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に内燃機関(ICE)のための排気ガス流量制御の分野に関する。詳しくは、本発明はエンジンの圧力、温度およびNOx排出を制御するために排気ガスの再循環を制御する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ICEを通しての排気ガスの流量制御は車両のエンジンブレーキを提供するために使用されてきた。エンジンブレーキは排気ブレーキ、圧縮解放型式のブレーキおよび(または)前記2種類のブレーキのいずれかの組み合わせを含みうる。そのようなブレーキの根底を成す一般的な原理はピストンの運動を遅らせることによりエンジンが接続されている車両の制動を促進するためにエンジンの往復運動するピストンによって発生するガス圧縮を利用することである。
【0003】
排気ブレーキは例えばトラックやバスのような特に大型車両の制動を促進する上で有用であることが知られている。排気ブレーキは、排気マニホルドの下流における排気系統を制限することにより排気マニホルドを含む排気系統において発生する排気ガス背圧を増大させることが出来る。そのような制限は過給機、開放および閉鎖可能バタフライ弁、あるいは排気系統を部分的に、あるいは完全に閉塞するその他の何れかの手段の形態をとりうる。
【0004】
排気マニホルドの圧力を増大させることにより、排気ブレーキも排気ストロークの終わりにおいてエンジンシリンダ内の残留圧力を増大させる。シリンダの圧力増大は、後続の上昇行程においてピストンが受ける抵抗を増大させる。ピストンの抵抗が増大する結果クランクシャフトを介してピストンに接続しうる車両の駆動系列を制動する。
【0005】
排気系統における制限が、制限を可変とすることに伴う費用と当該系統の複雑さとによって完全に行われるか、あるいは完全に行われないように排気ブレーキが提供されてきた。これらの排気ブレーキは排気制動の時点でエンジンの速度に比例するレベルのブレーキ作用を発生させる。エンジンの速度が速くなればなるほど、排気マニホルドとシリンダとにおけるガスの圧力と温度とが大きくなる。圧力および温度がより高くなると、その結果シリンダにおけるピストンの上昇行程に対する抵抗、従って制動を増大させる。
【0006】
排気系統とエンジンとは無制限の温度および圧力レベルに耐えることは出来ないので、排気ブレーキに対する制限は、エンジンの定格の最大速度での作動が許容し得ない程の高圧と高温を排気系統および(または)エンジンにおいて発生させないように設計する必要がある。最高温度および圧力以下、および定格の最大速度以下のエンジン速度における最大ブレーキ以下となるように制限がもくろまれてきた。従って、定格の最大エンジン速度において最大の排気制動を提供するように設計された一定寸法を有する排気制限を使用した最大のエンジン速度以下で排気制動の増大を実現する装置と方法とに対する要求がある。
【0007】
圧縮解放ブレーキ、すなわちリターダは排気ブレーキと関連して、あるいは独立して使用可能である。圧縮解放リターダは少なくとも一時的に(例えば、圧縮点火型の)内燃機関のシリンダを空気圧縮機に変換する。リターダはエンジンのピストンの運動をシリンダ内で発生した圧縮力に対抗させることによりエンジンの運動エネルギを熱エネルギに変換する。圧縮解放事象はピストンが上昇行程を通して運動し、ピストンの上方運動に対抗するシリンダ内の気体を圧縮することによって開始しうる。ピストンが上昇行程の頂点に近づくと、排気弁は開放し、圧縮を「解放」することによってピストンが、その後の運動エネルギを発生させる下降行程の跳ね返り時に圧縮熱発生の上昇行程において蓄えられた熱を再捕捉しないようにする。このようにして、ピストンの運動エネルギは熱エネルギに変換され。排気系統を通してエンジンから運ばれ、その結果エンジンの運動エネルギと関連のエンジンのブレーキとを低下させる。
【0008】
エンジンのサイクル毎にエンジンのシリンダにおける圧縮解放事象を繰返すことによって、エンジンは制動馬力を発生させ、車両を制動し易くする。このため運転者が車両を操縦し易くし、車両の常用ブレーキの摩耗を著しく低下させる。適正に設計され、調整された圧縮解放リターダはポジテイブパワーにおいてエンジンによって発生する作動馬力の殆どの部分である遅延馬力を発生させることが出来る。
【0009】
従来技術による圧縮解放エンジンリターダの一例が参考のために本明細書に含めている、カミンズ(Cummins)に対する特許文献1の米国特許第3,220,392号(1965年11月)に開示されている。例えばカミンズによるリターダのようなエンジンリターダは圧縮解放事象を実行するために排気弁の作動を制御するのに市販の油圧系統を採用している。これらの油圧系統はエンジンの既存の弁作動装置、例えば、カムシャフトを備えたエンジンの回転カムによって駆動され、かつ動力を加えることが出来る。エンジンがポジテイブパワーを発生しているときは、油圧系統は弁制御装置から外されるので、解放事象は何ら発生しない。圧縮解放遅延が望ましい場合には、油圧系統は排気弁と係合し圧縮解放事象を提供する。
【0010】
ボルボ社(Volvo AB)に対して譲渡され、本明細書において参考ために含めている「4ストロ―ク内燃機関のエンジン制動」(Engine Braking a Four Stroke Internal Combustion Engine)という名称のゴバート(Gobert)に対する特許文献2の米国特許第5,146,890号は追加の排気ガスがシリンダ、すなわち排気ガス再循環系統内へ流入しうるようにするために圧縮解放事象の前に排気弁を開放することにより圧縮解放リターダの制動動力を増大する装置を開示している。ゴバートによる装置においては、排気弁は排気ガスがシリンダ内へ再循環するように所定の一定量まで開放するように制限されている。ゴバートによる装置は固定クリアランス装置を採用している。従って、ゴバートによる装置は再循環のために排気弁を開放し、閉鎖し、そして上昇させることは、エンジンが最大速度で作動していると達成される温度や圧力がエンジンの熱および圧力負荷限度を上回らないように固定する必要があるという点で従来技術による排気ブレーキと同じである。温度と圧力(従って制動)は最大のエンジン速度未満の際に潜在的に可能性のあるものより低いものとなる。
【0011】
従来技術は、またスレーブピストンと該スレーブピストンによって開放する排気弁との間のクリアランスの量を変更する装置を開示している。例えば、本発明の出願人はクリアランスを変更し、そのため弁の開放時間を進めるために使用しうる以下述べる従来技術によるクリランス装置を認識している。「リセットオートラッシュ機構を備えたエンジンリターダ」(Engine Retarder With Reset Auto−Lash Mechanism)という名称のマイストリック(Meistrick)に対する特許文献3の米国特許第4,706,625号(1987年11月)、「自動クリップスレーブピストン」(Self−Clipping Slave Piston)という名称のフー(Hu)に対する特許文献4の米国特許第5,161,501号(1992年11月10日)、「エンジンブレーキタイミング制御機構」(Engine Brake Timing Control Mechanism)という名称のカスタ(Custer)に対する特許文献5の米国特許第5,186,141号(1992年11月10日)、および「圧縮解放エンジンリターダクリップ弁」(Compression Release Engine Retarder Clip Valve)という名称のフー(Hu)に対する特許文献6の米国特許第5,201,290号(1993年4月13日)であって全て参考のために本明細書に含めている.弁の開放時間を進める弁クリアランス調整装置が存在しているが、そのような装置は(i)弁をより早く開放し、より遅く閉鎖し、リフトを増すこと、あるいは(ii)弁をより遅く開放し、より早く閉鎖し、リフトを減少することに限定されている。クリアランス調整装置は弁が開閉する時間を独立して制御出来ず、そのため各種のエンジン速度において最適制動と相容しうるエンジンにおける温度および圧力制御のために最適の排気ガス再循環を得る必要がある。
【特許文献1】米国特許第3,220,392号明細書
【特許文献2】米国特許第5,146,890号明細書
【特許文献3】米国特許第4,706,625号明細書
【特許文献4】米国特許第5,161,502号明細書
【特許文献5】米国特許第5,186,141号明細書
【特許文献6】米国特許第5,201.290号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従来技術における方法や装置のいずれも各種の速度においてエンジンを制動するために排気ガス再循環を最適化するために相互に独立して排気弁の開閉が制御可能であることを教示あるいは示唆していない。更に、背圧の選択された各種レベルによって排気ガス再循環(すなわち、排気圧力調節−EPR)を制御することも教示されていない。排気ガス再循環の量が排気弁の開閉とは独立して制御することによって制御された場合(ゴバートによる特許においてはないことであるが)、排気マニホルドおよびエンジンシリンダにおける圧力および温度のレベルは何れかのエンジン速度において最適のエンジン制動度が達成されるように保持することが出来る。車両は典型的に、いずれかの、かつ全てのエンジン速度において制動を行なう必要があるので、エンジンのシリンダまで再循環される排気ガスの量を制御する装置および方法に対する要求がある。
【0013】
従来技術による方法あるいは装置は排気ガス再循環のための排気弁の開閉は、例えば温度、圧力及びエンジン速度のような各種のエンジンのパラメータのレベルが調整可能なようにそれらのパラメータのレベルに応答して制御可能であることを教示してもいないし、示唆もしていない。従って、何れかのエンジン速度に対してそのようなパラメータの「限度の押し上げる」エンジンブレーキのレベルを達成しうるように、例えば、温度、圧力、エンジン速度等の一つ以上のエンジンパラメータに従って排気ガス再循環を制御する必要がある。そのようなパラメータをモニタし、そのようなパラメータのモニタされたレベルに応答して排気ガス再循環を制御することにより、何れかのエンジン速度に対して最大許容圧力および温度(従って、最大制動)を達成することが出来る。
【0014】
その他の排気ガス再循環装置や方法は再循環のために排気弁が開放している時と、吸気のために吸気弁が開放している時間との間の重なりを変更することのインパクトを認識していなかった。排気弁はピストンの降下吸気ストロークにおいて吸気弁が開放している時間に排気ガスの再循環のために排気弁を開放することが出来る。そのため、吸気弁はブレーキ作用の間排気マニホルドからシリンダ内へ逆流している高圧のガスの出口を提供する。吸気弁と排気弁との開放の重なりを変更することによって、排気マニホルドとシリンダとの圧力と温度とはエンジンのNOx排出と共に制御可能である。
【0015】
吸気弁と排気弁との開放の重なり変更は、またエンジンブレーキによって発生するノイズのレベルを調整するように制御可能である。前記重なりを減少することにより吸気弁を通るガスの流量および流れ時間とを減少させ、従ってエンジンの吸気装置から放出されるノイズのレベルを減少させる。
【0016】
従来技術の開示から、圧縮解放遅延ブレーキおよび排気ブレーキの有効性を増し、かつ最適化するために排気ガス再循環のための排気弁の開閉を制御する方法に対する顕著な要求が残っていることが明らかである。更に、また広範囲のエンジン作動パラメータおよび条件に亘って機能を発揮しうる装置に対する顕著な要求も残っている。特に、それらが使用されるエンジンの定格最大速度以下の作動速度における性能を最適化するために圧縮ブレーキ装置と排気ブレーキ装置とを「同調」させる必要性が残っている。
【0017】
(発明の目的)
従って、本発明の目的は内燃機関における条件を制御するために排気ガス再循環を制御する方法と装置とを提供することである。
【0018】
本発明の別の目的は排気弁が開放するときと前記弁が排気ガス再循環のために閉鎖されるときとを独立して制御する方法と装置とを提供することである。
【0019】
本発明の更に別の目的は排気ガス再循環を制御することによって内燃機関内の温度を制御する方法と装置とを提供することである。
【0020】
本発明の更に別の目的は排気ガス再循環を制御することによって内燃機関内の圧力を制御する方法と装置とを提供することである。
【0021】
本発明の更に別の目的は排気ガス再循環を制御することによってエンジンブレーキの間内燃機関から放出されるノイズを制御する方法と装置とを提供することである。
【0022】
本発明の更に別の目的は多数のエンジン速度においてエンジンブレーキを最適化する方法と装置とを提供することである。
【0023】
本発明の更に別の目的は排気ガス再循環の制御に貢献する手段として排気圧力調整方法と装置とを提供することである。
【0024】
本発明の範囲に入るその他の目的は本発明から派生する全ての変更を含み、本開示を精査し、開示された本発明を実践するとその結果当該技術分野の専門家には明らかとなる。
【課題を解決するための手段】
【0025】
前記目的に対応して、本発明の出願人は排気ガス再循環事象と吸気弁事象とを使用して内燃機関における排気ガスパラメータを制御する新規で、経済的な方法であって、(a)エンジンにおいて排気ガスの背圧を発生する段階と、(b)排気ガスパラメータレベルをモニタする段階と、(c)前記パラメータのレベルに応答して排気ガス再循環事象を実行する段階とを含み、前記排気ガスパラメータが排気ガス再循環事象と吸気弁事象との間の重なり時間を選択的に変更することのみ、あるいは排気ガス背圧を選択的に変更することと組み合わせることによって排気ガスパラメータが制御されることを特徴とする方法を開発した。
【0026】
前述の全体的な説明並びに以下の詳細説明の双方は単に例であって、請求された本発明を制限するものでないことを理解すべきである。参考のために本明細書に組み込み、本明細書の一部を構成する添付図面は本発明のある実施例を示し、詳細説明と共に本発明の原理を説明するのに供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明の実施例において、図1に示すエンジン20はエンジンが制動のために使用されている時間ピストン45がその中で繰返し上下に往復運動しうるシリンダ40を有しうる。シリンダ40の頂部において、少なくとも1個の吸気弁32と1個の排気弁34とがある。吸気弁32と排気弁34とはそれぞれ吸気ガス通路22と排気ガス通路24と連通するように開閉しうる。排気ガス通路24は排気マニホルド26と連通し、該排気マニホルドは、またその他の排気ガス通路(図示せず)からの入力を有しうる。排気マニホルド26の下流にはマニホルド26からの排気ガスの流れを制限するように選択的に作動しうる排気ガス制限手段70を設けることが出来る。排気制限手段70は図示のように排気管における過給機あるいはバタフライ弁72のような各種の手段によって提供しうる。
【0028】
本発明のエンジンブレーキ装置と方法とにおいて、エンジン20は排気ガス再循環のために排気弁を開放するための作動副装置300を含みうる。エンジンは、また吸気弁作動副装置350を含みうる。吸気事象と排気事象とのために吸気弁と排気弁とを開放するための数種の副装置が知られており、本発明は本発明の出願人あるいは他の人によって開発された、そのような副装置および(または)新規の装置のいずれかを使用しうるものと考えられる。
【0029】
排気弁34の作動は必要に応じて副装置300によって制御され排気ガス再循環のために弁を開放可能である。副装置300は共通のレールからあるいはロストモーション装置から弁を開放する力を発生させる手段を限定的ではないが含む各種の油圧、油圧―機械的および電磁作動手段から構成しうる。これらの型式の装置の多くは当該技術分野において周知であり、本発明に使用するのに適している。更に、本発明を実行するために使用される作動副装置300は電子制御可能である。
【0030】
作動副装置300および350は、排気マニホルド26および(または)シリンダ40の圧力および(または)温度のレベルが、シリンダ40、弁32および34並びにマニホルド26を構成する材料によって決定される所定の限度を上回ることがないように制御装置600によって制御可能である。制御装置600はコンピュータを含み、かつシリンダ40、排気マニホルド26または排気装置のいずれかのその他の部分への、例えば電気配線あるいはガス通路のような何れかの接続手段130を介してプローブすなわちポート610に接続可能である。制御装置600は、また該制御装置がエンジンの速度および(または)その他のエンジンのパラメータを測定可能とする例えばタコメータのような適当なエンジン要素900にも接続しうる。
【0031】
プローブすなわちポート610は制御装置600にシリンダ40、マニホルド26および(または)排気装置のその他の何れかの部分における温度および(または)圧力を指示するために使用しうる。エンジンの要素900は制御装置600にエンジン20の速度の決定を与えるのに使用しうる。
【0032】
エンジンブレーキの間、排気制限手段70は排気ガスの背圧を増大するように閉鎖、あるいは部分的に閉鎖しうる。増大した背圧は排気ガス再循環事象を実行することにより制動のためにシリンダ内のガスのチャージを増大するために使用し得る。
【0033】
排気ガス再循環の間、ガスの流れは排気マニホルド26からエンジンのシリンダ40内へ反転し、かつ吸気弁32を通して吸気通路22へ戻りうる。排気弁および吸気弁を通してのガスのこの逆流の制御は装置の排気圧力のプロフィールと、その結果の、吸気時シリンダに送られる質量チャージとを決定する。質量チャージはシリンダ内のガスの圧力と温度とが大きければ大きいほど、高温と高圧とにより対抗されるので往復運動しているピストン45によって達成される制動の大きさが大きくなるので圧縮解放遅延ブレーキに影響を与えうる。
【0034】
引続き図1を参照すると、制御装置600は、プローブ610および(または)エンジンの要素900から受け取る温度、圧力および(または)エンジン速度の検出値に従った排気ガス再循環の間排気弁34の開放時間、閉鎖時間およびリフトの大きさを変更しうる。排気マニホルドにおける排気ガス圧力が排気圧力と温度とに対するエンジンの作動限度を上回らないように排気ガスの再循環制御が保持される。これらの限度はエンジンの形態とエンジンの製造元での公差によってエンジン毎に変動しうる。好適な制御方案は排気ガス圧力および(または)排気ガス温度を検出し、排気圧力と温度とをエンジンの限度内に保つように排気ガス再循環パラメータ、すなわち排気弁の開放時間、閉鎖時間および弁の開度の大きさを調整することである。
【0035】
図1と図2とを参照すると、吸気弁32の開度が200の部分(図2)によって、排気ガス再循環のための排気弁34の開きが202の部分によって指示されている。203の部分はシリンダ40から燃焼ガスを排出するための排気弁34の開きを示し、205の部分は圧縮解放事象のための排気弁34の開きを示している。
【0036】
エンジン20は排気ブレーキと圧縮開放ブレーキとによって発生する温度と圧力レベルとに無制限に耐えることは出来ないので、排気マニホルド26、シリンダ40あるいはその他の要素とにおける温度や圧力のレベルが制御装置600によってモニタされるエンジンの限度を上回らないように排気ガス再循環が実行される。排気ガス再循環の間の排気弁34の開閉のタイミングと大きさとを制御することにより、排気ブレーキと圧縮開放ブレーキの量は何れのエンジン速度に対しても最大にしうる。詳しくは、測定された圧力と温度レベルに応答して弁の運動のタイミングおよびリフトの大きさを制御することによりいずれのエンジン速度においても最大量のエンジンブレーキが実現しうるように保証する。
【0037】
吸気弁の開き(200の部分)と排気弁34の排気ガス再循環のための開き(202の部分)との重なり部分(図2のハッチングした領域204によって示す)の量を調整することにより。シリンダのチャージの制御された部分はシリンダ40を通して吸気通路22内へ連続して戻りうる。この吸気弁32を通る逆流が排気マニホルド26において望ましい排気背圧が保たれうるようにし、そのため排気マニホルドの圧力と温度とを制御する手段を提供する。
【0038】
図1を改めて参照すると、再循環のために排気弁34の閉鎖を遅らせる(頂部死点により近くまで遅らせる)ことにより、シリンダのガスの質量の制御された部分は圧縮ストロークの間ピストン45の上方運動によって排気弁34を通ってマニホルド26内へ強制的に戻されうる。特に、ある場合には、ピストンがその圧縮ストロークの半分を完了した後まで排気ガス再循環事象を継続させることが有利である。いずれにしても、少なくとも圧縮ストロークの顕著な部分が完了するまでは排気ガス再循環事象が継続するようにすることも有利である。圧縮ストロークの顕著な部分EGRが継続する非限定的な例が図7および図11に提供されている。排気ガス再循環事象の終わりにおいて排気弁34が閉鎖した後残りの質量は圧縮ストロークの間圧縮され、後続の圧縮解放事象すなわち排気ストロークの間排気マニホルド内へ解放しうる。
【0039】
吸気弁と排気弁との解放の重なりが大きければ大きいほど、より高圧の排気マニホルド26から吸気弁32を通してガスが逆流することによりシリンダ40において発生しうる圧力が低くなり、従って、圧縮解放ブレーキに対してシリンダ40に残りうるガスの質量は小さくなる。排気弁34が解放されているクランク角度が進むとすれば、重なりも増大しうる。重なりが増大すると排気背圧(すなわち排気マニホルド圧)を減少させ、および(または)全ての弁が閉鎖した後シリンダ40に捕捉されているガスの質量を減少させ得る。逆に、開放クランク角度が遅れると、前記重なりを減少させ、従って排気マニホルド圧および(または)シリンダに捕捉されたガスの質量を増大させ得る。従って、クランク角度を進めたり、遅らせたりすることによって排気ブレーキのために利用しうる排気マニホルドの圧力(および関連した温度)および(または)圧縮解放ブレーキのために使用しうるシリンダガスの質量を制御することが出来る。
【0040】
排気弁343が閉鎖されるクランク角度の進みや遅れを少し調整するだけでは排気背圧に対して適当な効果を有していない、従って実現される排気ブレーキにレベルに対して殆ど効果がないものと考えられる。しかしながら、シリンダに捕捉されるガスの質量は排気弁の閉鎖に対してクランク角度によって影響を受けず、従って排気弁閉鎖のためのクランク角度は実現される圧縮解放ブレーキのレベルに対して影響を与える。
【0041】
従って、(エンジンの構成要素が増大した圧力や温度に耐えうることを前提として)各種のエンジン速度において圧縮解放ブレーキのレベルを上げるには、捕捉されたガスの質量を閉鎖クランク角度を進めることによって増大すればよい。圧縮解放ブレーキのレベルを下げるには、排気弁閉鎖のクランク角度を遅らせることによって捕捉されたガスの質量を減少させることが出来る。このように、排気ガス再循環事象を変更することによって、固定時間の圧縮解放ブレーキ事象によって可変の圧縮解放ブレーキを達成することが出来る。
【0042】
排気ガス再循環のための排気弁の開き202の大きさ(すなわち、排気弁のリフト)は、また各種のエンジン速度に対して排気ブレーキおよび(または)圧縮解放ブレーキを最適化するために制御可能である。リフトの減少は、シリンダ内に捕捉されたガスの質量を低下させ、また排気背圧に対する影響も及ぼしうる。
【0043】
図2に示すものと同じ事象を同じ参照数字が指示する図3を参照すると、閉鎖時間A、閉鎖時間B、およびリフトの大きさCの変形が、二つの排気ガス再循環事象202aおよび202bの間に示されている。しかしながら、本発明は開放時間Aの進みに閉鎖時間Bの遅れ、およびリフトの増大Cが伴う必要があるという状態に限定されない。開放時間および閉鎖時間並びにリフトは相互に独立して調整可能であることが認められる。
【0044】
図2および図3に示すものと同じ事象を同じ参照数字が指示する図4を参照すると、ある場合には、排気ガス再循環事象202はエンジンのシリンダに対して所望の再循環量を提供するように吸気事象200内で全体的に発生するように排気ガス再循環事象202を進めうることが判る。このようなモードにおいて、ポジテイブパワーの間のNOx生成はシリンダのチャージを適当に希釈するので調整可能である。
【0045】
制御された排気ガス再循環は開閉点およびEGR事象の開放の大きさを選択的に変更することによって排気圧調整手段として使用しうる。
【0046】
「排気ブレーキへの適用」−排気圧調整(EPR)は低いエンジン速度で高い排気圧が発生しうるようにしながらエンジンの背圧の上限を保つ上で排気ブレーキ装置において有用である。EPRは固定された排気ブレーキを可変の排気ブレーキに効果的に変換する。更に、シリンダにおいて質量が追加されるため実質的な圧縮解放部分をブレーキ作用に追加することが出来る。
【0047】
図5はEPRの無い標準的な排気ブレーキサイクルのための吸気弁および排気弁リフト事象を示す。図6を参照すると、本装置に対する排気背圧が圧力―容積線図の下部分において拡大した領域によって指示するように、サイクルのガス交換部分におけるポンピング作業の量を増大させている。本装置において、排気弁ばねは排気マニホルドからシリンダまで何ら逆流がないようにするのに十分予負荷されている。十分な予負荷が無い場合には排気圧がばねの力を上回り排気弁を一時的に開放すると逆流が発生しうる。この排気弁の非制御開放、すなわち自然の「弁浮動」はそれが発生すると圧力を解放し、排気背圧に対する上限を設定する。一般に、弁浮動はより高いエンジン速度においてのみ発生し、弁の着座速度が極めて速いため望ましくないものと考えられている。
【0048】
図7に示す装置は排気圧調整のための制御された排気解放を組み込んでいる。通常の排気制限より小さい制限が使用され、排気圧はEPRによって制御される。EPの開放、閉鎖および持続時間は最大許容背圧が高いエンジン速度において超過しないように、一方遅い速度(図8に示す)においてより高い背圧を維持するように各エンジン速度において動的に調整される。排気ブレーキの性能は2通りの利点がある。逆流の間にシリンダに対して追加の質量がチャージされることによってシリンダ圧が著しく増大するが図7でハッチングで示すように通常の排気弁開放時にその後の圧縮ブローダウンの間解放される。また、より高い排気圧を保つことが出来るため低いエンジン速度において制動パワーを増大させることが出来る。
【0049】
「圧縮解放ブレーキへの適用」―圧縮解放ブレーキは一般にエンジンのシリンダをチャージするため過給機のブースト圧によって左右される。排気圧調整により逆流によってシリンダをチャージすることは圧縮解放エンジンブレーキに対しては極めて効果的である。排気ブレーキと組み合わせて圧縮解放することによって過給機の応答が鈍い特にエンジンの低速および中間速度において全体の制動効果を大いに高める。
【0050】
図9は標準的な解放エンジンブレーキサイクルである。圧縮のための初期シリンダ圧(図10に示す)は過給機によって提供される。過給機のブースト圧はエンジン速度が低下し、従って制動パワーが落ちると急速に低下する。
【0051】
図11は圧縮解放ブレーキとEPR装置との組み合わせに関連した弁のリフトを示す。EPRと組み合わせた圧縮解放は排気圧のみによって変わる。排気圧は適当な排気制限により低いエンジン速度において高いレベルに保たれ、エンジンの速度が増すにつれて装置の負荷限度に対応するようにEPR制御方案により調整される。圧縮解放による利点と排気ブレーキ効果とが組み合わされて(図12)図10において達成された制動パワーを上回る。
【0052】
「ポジテイブパワーに対する適用」―内燃機関における排気ガス再循環はあるエンジン速度と負荷においては望ましいものでNOx放射制御を助勢する。本明細書の開示の装置もまたこの用途に対して適用可能である。EPR事象は全体的に制御可能、すなわち必要に応じてオン、オフあるいは変更可能であるので、本装置はエンジンの制動作動およびパワー作動の双方において有利に使用可能である。
【0053】
当該技術分野の専門家には本発明の範囲あるいは精神から逸脱することなく弁作動副装置300を作動させる装置に対して各種の修正や変更が可能なることは明らかである。例えば、EGRはこの目的に対して提供された主排気弁あるいは補助排気弁によって提供可能である。また、当該技術分野の専門家には本発明の範囲あるいは精神から逸脱することなく排気ガス再循環弁開放事象の開放、閉鎖および開きの大きさの制御において各種の修正および変更が可能なことも明らかである。このように、本発明は、特許請求の範囲およびそれらの均等物に入るのであれば本発明の変更や修正も網羅する意図である。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】エンジンシリンダ、排気系統、および排気ガス再循環制御装置の概略断面図である。
【図2】吸気弁と排気弁との開きの重なりを示す弁リフト対クランク角度との関係を示すグラフである。
【図3】排気ガス再循環中の排気弁の開放および閉鎖時間並びにリフトの可変性を示す、弁リフト対クランク角度のグラフである。
【図4】吸気事象内での排気ガス再循環事象の発生を示す、弁リフト対クランク角度のグラフである。
【図5】標準的な排気ブレーキサイクルに対する排気弁と吸気弁のリフトを示すグラフである。
【図6】図5に示す標準的な排気ブレーキサイクルに対する圧力−容積を示すグラフである。
【図7】標準的な排気ブレーキサイクルと排気圧力調整事象に対する排気弁と吸気弁のリフトを示すグラフである。
【図8】図7に示すEPRによる標準的な排気ブレーキサイクルに対する排気ブレーキ性能を示すグラフである。
【図9】標準的な圧縮解放ブレーキサイクルに対する排気弁および吸気弁のリフトを示すグラフである。
【図10】図9に示す標準的な圧縮解放ブレーキサイクルに対する排気ブレーキの性能を示すグラフである。
【図11】EPRによる圧縮解放ブレーキに対する排気弁および吸気弁のリフトを示すグラフである。
【図12】図11に示すRPRによる圧縮解放ブレーキに対する排気ブレーキの性能を示すグラフである。
【符号の説明】
【0055】
30 内燃機関
32 吸気弁
34 排気ガス再循環
600 温度、
610 シリンダの温度、圧力
900 モニタされるパラメータ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸気、圧縮、燃焼および排気ストロークを提供するように往復運動するピストンを有する内燃機関のエンジン性能を最適化する方法であって、排気ガス再循環と吸気弁事象とを重ねることが実行される方法において、
前記エンジンがポジテイブパワーを発生させるモードに置かれると排気ガス再循環と吸気弁事象との重なりを増す段階と、
前記エンジンがエンジンブレーキモードに置かれると排気ガス再循環と吸気弁事象との重なりを減少させる段階とを含むことを特徴とする内燃機関のエンジン性能を最適化する方法。
【請求項2】
前記重なりを増大する段階が吸気弁事象のある部分の間排気ガス再循環全体を実行することを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
圧縮ストロークの相当な部分が完了した後排気ガス再循環を実行する段階を更に含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
エンジンの作動のポジテイブパワーおよび非ポジテイブパワーモードに応答してEGR事象を選択的にオンおよびオフする段階を含むことを特徴とするポジテイブパワーモードの間に内燃機関においてNOx制御を行なう方法。
【請求項5】
EGR事象が主排気事象内で全体的に発生することを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
EGRが排気弁開口の開閉個所および開放の大きさを選択的に変更することによって調整されることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項1】
吸気、圧縮、燃焼および排気ストロークを提供するように往復運動するピストンを有する内燃機関のエンジン性能を最適化する方法であって、排気ガス再循環と吸気弁事象とを重ねることが実行される方法において、
前記エンジンがポジテイブパワーを発生させるモードに置かれると排気ガス再循環と吸気弁事象との重なりを増す段階と、
前記エンジンがエンジンブレーキモードに置かれると排気ガス再循環と吸気弁事象との重なりを減少させる段階とを含むことを特徴とする内燃機関のエンジン性能を最適化する方法。
【請求項2】
前記重なりを増大する段階が吸気弁事象のある部分の間排気ガス再循環全体を実行することを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
圧縮ストロークの相当な部分が完了した後排気ガス再循環を実行する段階を更に含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
エンジンの作動のポジテイブパワーおよび非ポジテイブパワーモードに応答してEGR事象を選択的にオンおよびオフする段階を含むことを特徴とするポジテイブパワーモードの間に内燃機関においてNOx制御を行なう方法。
【請求項5】
EGR事象が主排気事象内で全体的に発生することを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
EGRが排気弁開口の開閉個所および開放の大きさを選択的に変更することによって調整されることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2008−286206(P2008−286206A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−191584(P2008−191584)
【出願日】平成20年7月25日(2008.7.25)
【分割の表示】特願2000−515105(P2000−515105)の分割
【原出願日】平成10年10月2日(1998.10.2)
【出願人】(505413266)ジェイコブス ビークル システムズ、インコーポレイテッド (31)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年7月25日(2008.7.25)
【分割の表示】特願2000−515105(P2000−515105)の分割
【原出願日】平成10年10月2日(1998.10.2)
【出願人】(505413266)ジェイコブス ビークル システムズ、インコーポレイテッド (31)
【Fターム(参考)】
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