説明

内燃機関の圧縮空気供給方法及び内燃機関

【課題】ターボチャージャを備え、過渡時に蓄圧された圧縮空気を供給する内燃機関において、圧縮空気を吸気通路に供給する際にNOxの排出量の増加を抑制することができる内燃機関の圧縮空気供給方法及び内燃機関を提供する。
【解決手段】ターボチャージャ15を備え、過渡時に蓄圧された圧縮空気A+Gを吸気マニホールド11aに供給する内燃機関10の圧縮空気供給方法において、蓄圧室20の圧縮空気A+Gの酸素濃度を外気の酸素濃度よりも低下させて、この低酸素濃度の圧縮空気A+Gを過渡時に前記吸気マニホールド11aに供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、過給システムにおいて、過渡運転時にターボラグが発生して必要な空気量を確保できなくなって排気性能が悪化するのを防止するために、予め蓄圧した圧縮空気を吸気マニホールドに導入して過渡運転時の空気量の不足を補うことができる内燃機関の圧縮空気供給方法及び内燃機関に関する。
【背景技術】
【0002】
図6に示すようなターボチャージャ15を用いているエンジン(内燃機関)10Xの過給システムにおいては、ターボチャージャ15のタービン15bが排気ガスGにより駆動されて、このタービン15bの回転によって回転するコンプレッサ15aにより、空気Aをより多くシリンダ内に導入できるため、エンジン10Xの出力トルクの向上と、排気ガスGの有害成分の低減を行うことができる。
【0003】
しかしながら、このターボ式の過給システムでは、過渡運転時に、ターボラグが発生して、推移する回転速度及び負荷(アクセル開度)で必要となる燃料に対して、供給できる空気量が少なくなって必要な空気量の確保ができず、出力トルク及び排気性能が悪化するという問題がある。
【0004】
このターボラグのときの現象の一例を図7〜図9に示す。図7及び図8に示すように回転速度と燃料噴射量を約2秒間で遷移させた。このとき、回転速度及び燃料噴射量の増加に伴い、必要となる空気量も増加するが、図9に示すようにコンプレッサの出口圧の増加のスピードは、ターボラグにより追いつかず、必要とする空気量を確保できない。そのために、回転速度、燃料噴射量に対して必要となる空気量がシリンダ内へ導入されなくなり、このターボラグによる空気量の不足から、エンジン出力が低下すると共に、EGRができないことによりNOx排出量が増加する。
【0005】
このターボラグによる出力の低下と排気性能の悪化に対して、スーパーチャージャを用いたり、圧縮空気用コンプレッサ等で予め蓄圧した圧縮空気を吸気通路上に導入したりして、過渡運転時の空気量の不足を補う方法がある。
【0006】
この蓄圧した圧縮空気を用いる方法では、図10に示すように、圧縮空気用コンプレッサ19で圧縮された圧縮空気Aを蓄圧室20に蓄えて、急加速、発進時等で回転速度と出力トルクが急激に変わるときに、図11に示すように、流路切換弁17を蓄圧室20側に切替えて蓄圧室20から圧縮空気Aを供給して過給補助を行う。この方法を用いることで、図12に示すように、この方法を用いない場合(細線B)に対して、この方法を用いた場合(太線A)は、コンプレッサ出口圧を迅速に増加して、ターボラグを改善するので、図13に示すように、出力トルクを改善できる。
【0007】
この過給補助を行う例として、吸気通路におけるスロットルより上流側に配在されたモータ駆動のコンプレッサを有する電動過給機を備え、アイドル時や減速時等に、電動過給機により吸気を加圧して圧縮し、この加圧された圧縮空気を吸気通路におけるコンプレッサとスロットルとの間に形成される蓄圧部に蓄えておき、加速時等の大きなトルクが必要とされるとき、蓄えられている圧縮空気を用いて過給を行うようになし、もって、小排気量であっても大きな出力を得るとともに、特に低回転時のターボラグを無くして。運転性、応答性、燃費等を向上させる電動過給機付きエンジンが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0008】
しかしながら、その一方で、図14に示すように、この方法を用いない場合(細線B)に対して、この方法を用いた場合(太線A)では、圧縮空気を吸気通路上に導入している間、NOxの排出は悪化するという問題がある。
【0009】
つまり、通常運転時においては、NOxの低減にはEGR(排気再循環)が有効であるが、過渡時に蓄圧した圧縮空気を吸気通路に導入した場合は、図15に示すように、「タービン入口圧/コンプレッサ出口圧」、即ち、「排気通路の圧力/吸気通路の圧力」が1.0より小さくなる場合があり、即ち、吸気通路の圧力が排気通路の圧力よりも高く(吸気通路の圧力>排気通路の圧力)なる場合があり、流体(排気ガス)は圧力の高い方から低い方へとしか流れないので、EGRを行うことができない。そのため、NOxの排出量が増加する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特表2005−085611号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記の状況を鑑みてなされたものであり、その目的は、ターボチャージャを備え、過渡時に蓄圧された圧縮空気を供給する内燃機関において、過渡期に圧縮空気をシリンダに供給する際にNOxの排出量の増加を抑制することができる内燃機関の圧縮空気供給方法及び内燃機関を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記のような目的を達成するための本発明の内燃機関の圧縮空気供給方法は、ターボチャージャを備え、過渡時に蓄圧された圧縮空気を吸気マニホールドに供給する内燃機関の圧縮空気供給方法において、蓄圧室の圧縮空気の酸素濃度を外気の酸素濃度よりも低下させて、この低酸素濃度の圧縮空気を過渡時に前記吸気マニホールドに供給することを特徴とする方法である。この方法によれば、過渡期に圧縮空気を吸気マニホールドに供給する際に、低酸素濃度の圧縮空気を供給することができ、過渡期におけるNOxの排出量の増加を抑制することができる。
【0013】
上記の内燃機関の圧縮空気供給方法において、空気と内燃機関の排気通路からの排気ガスとを、前記蓄圧室に供給する圧縮空気を発生させる圧縮空気用コンプレッサに供給することで、前記蓄圧室の圧縮空気の酸素濃度を外気の酸素濃度よりも低下させる方法を採用すると、容易に、過渡時に低酸素濃度の圧縮空気を吸気マニホールドに供給することができるようになる。
【0014】
上記の内燃機関の圧縮空気供給方法において、前記圧縮空気用コンプレッサに供給される圧縮空気の酸素濃度を検出して、前記酸素濃度が上限酸素濃度値よりも高いときには、前記排気通路からの排気ガスの流量を増加して前記圧縮空気用コンプレッサに供給し、前記酸素濃度が下限酸素濃度値よりも低いときには、前記排気通路からの排気ガスの流量を減少して前記圧縮空気用コンプレッサに供給する方法を採用すると、容易に、蓄圧室の圧縮空気の酸素濃度を外気の酸素濃度よりも低下させることができ、それと共に、蓄圧室の圧縮空気の酸素濃度を略一定にすることができるので、過渡期におけるシリンダ内の酸素濃度を容易に制御することができるようになる。
【0015】
そして、上記のような目的を達成するための本発明の内燃機関は、ターボチャージャを備え、圧縮空気を発生させる圧縮空気用コンプレッサと発生させた圧縮空気を蓄える蓄圧室を備えた分岐吸気通路を、内燃機関の吸気通路に流路切換弁を介して接続して、過渡時に蓄圧された圧縮空気を吸気マニホールドに供給する内燃機関において、前記圧縮空気用コンプレッサの入口側を外気に連通する第1連通路と、前記圧縮空気用コンプレッサの入口側を内燃機関の排気通路に連通する第2連通路とを設けて、外気と排気ガスの両方を前記圧縮空気用コンプレッサに供給可能に構成し、更に、前記第2連通路に前記圧縮空気用コンプレッサに供給される排気ガスの流量を調整する流量調整弁を設けて構成される。
【0016】
この構成によれば、絞り弁等の流量調整弁の操作により、空気と排気ガスとを圧縮空気用コンプレッサに供給することができ、過渡期に、流路切換弁の操作により低酸素濃度の圧縮空気を吸気マニホールドに供給することができて、過渡期におけるNOxの排出量の増加を抑制することができる。
【0017】
また、上記の内燃機関において、内燃機関の制御装置が、前記流量調整弁の弁開度を制御して前記圧縮空気用コンプレッサに供給される排気ガスの流量を調整して、前記蓄圧室に蓄える圧縮空気の酸素濃度を予め設定した範囲内にする制御と、過渡時に前記流路切換弁を前記吸気通路側から前記分岐吸気通路側に切り替えて前記蓄圧室の圧縮空気を前記吸気マニホールドに供給する制御を行うように構成されると、比較的簡単な構成と制御により、低酸素濃度の圧縮空気を蓄圧室に蓄えることができると共に、この低酸素濃度の圧縮空気を過渡時に吸気マニホールドに供給することができ、NOxの排出量の増加を抑制することができる。
【0018】
また、上記の内燃機関において、内燃機関の制御装置が、前記圧縮空気用コンプレッサの入口側に設けた酸素濃度センサで前記圧縮空気用コンプレッサに供給される圧縮空気の酸素濃度を検出して、検出された酸素濃度が上限酸素濃度値よりも高いときには、前記流量調整弁の弁開度を増加して排気ガスの流量を増やして前記圧縮空気用コンプレッサに供給し、検出された酸素濃度が下限酸素濃度値よりも低いときには、前記流量調整弁の弁開度を減少して排気ガスの流量を減らして前記圧縮空気用コンプレッサに供給する制御を行うように構成されると、容易に、蓄圧室の圧縮空気の酸素濃度を外気の酸素濃度よりも低下させることができると共に、蓄圧室の圧縮空気の酸素濃度を略一定にすることができるので、過渡期におけるシリンダ内の酸素濃度を容易に制御することができるようになる。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る内燃機関の空気供給方法及び内燃機関によれば、ターボチャージャを備え、過渡時に蓄圧された圧縮空気を供給する内燃機関において、過渡期に圧縮空気をシリンダに供給する際に低酸素濃度の圧縮空気を供給できるので、過渡期におけるNOxの排出量の増加を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施の形態における空気を供給する過給器付きの内燃機関の構成を示す図で、外気を吸気マニホールドに供給している場合を示す。
【図2】図1の内燃機関において、蓄圧された低酸素濃度の圧縮空気を吸気マニホールドに供給している場合を示す。
【図3】流量調整弁の制御フローの一例を示す図である。
【図4】実施例と比較例1と比較例2の過渡運転時におけるNOx排出量の時間的変化を示す図である。
【図5】実施例と比較例1と比較例2の過渡運転時におけるエンジン出力のトルクの時間的変化を示す図である。
【図6】従来技術の過給器付きエンジンの構成を示す図である。
【図7】従来技術の過給器付きエンジンの過渡運転時におけるエンジン回転数の時間的変化を示す図である。
【図8】従来技術の過給器付きエンジンの過渡運転時における燃料噴射量の時間的変化を示す図である。
【図9】従来技術の過給器付きエンジンの過渡運転時におけるターボチャージャのコンプレッサの出口圧の時間的変化を示す図である。
【図10】従来技術の圧縮空気を供給する過給器付きエンジンの構成を示す図で、圧縮空気を供給していない状態を示す図である。
【図11】図10の圧縮空気を供給する過給器付きエンジンの構成を示す図で、圧縮空気を供給している状態を示す図である。
【図12】従来技術の過給器付きエンジンと従来技術の圧縮空気を供給する過給器付きエンジンの過渡運転時におけるターボチャージャのコンプレッサの出口圧の時間的変化を示す図である。
【図13】従来技術の過給器付きエンジンと従来技術の圧縮空気を供給する過給器付きエンジンの過渡運転時におけるエンジン出力トルクの時間的変化を示す図である。
【図14】従来技術の過給器付きエンジンと従来技術の圧縮空気を供給する過給器付きエンジンの過渡運転時におけるNOx排出量の時間的変化を示す図である。
【図15】従来技術の過給器付きエンジンと従来技術の圧縮空気を供給する過給器付きエンジンの過渡運転時における「タービン入口圧/コンプレッサ出口圧」の時間的変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る実施の形態の内燃機関の圧縮空気供給方法及び内燃機関について、図面を参照しながら説明する。
【0022】
図1及び図2に示すように、この実施の形態の内燃機関10は、ターボチャージャ15を備えた過給器付きの内燃機関であり、エンジン本体11の吸気マニホールド11aに接続された吸気通路12と、エンジン本体11の排気マニホールド11bに接続された排気通路13とを備えている。
【0023】
この吸気通路12には、上流側から順にエアクリーナ14と、ターボチャージャ15のコンプレッサ15aとインタークーラ16とが設けられている。また、排気通路13には、ターボチャージャ15のタービン15bが設けられている。
【0024】
更に、コンプレッサ15aの上流側に流路切換弁17を介して分岐吸気通路18を設けると共に、この分岐吸気通路18に、圧縮空気用コンプレッサ19と蓄圧室(蓄圧タンク)20を設ける。この流路切換弁17は、内燃機関10の制御装置(図示しない)で、図1に示すように、コンプレッサ15aの入口側を吸気通路12のエアクリーナ14側に連通したり、図2に示すように、コンプレッサ15aの入口側を分岐吸気通路18の蓄圧室21側に連通したりするように構成される。この流路切換弁17には、例えば、シャッター式のバルブを使用し、このバルブをエアシリンダ(図示しない)により駆動するように構成し、このエアシリンダを駆動させる空気として蓄圧室20に蓄積した圧縮空気を使用する。
【0025】
更に、圧縮空気用コンプレッサ19の入口側を外気に連通する第1連通路21と、圧縮空気用コンプレッサ19の入口側を内燃機関10の排気通路13に連通する第2連通路22を設ける。この第1連通路21には上流側からサブエアクリーナ23と逆止弁24を設け、第2連絡通路22には絞り弁等で形成される流量調整弁25を設ける。更に、第1連通路21と第2連通路22が合流した下流側の圧縮空気用コンプレッサ19の入口側に酸素濃度センサ26を配置する。
【0026】
この酸素濃度センサ26の出力は内燃機関10の制御装置(図示しない)に入力され、流量調整弁25は、内燃機関10の制御装置の出力によりその弁開度を制御される。なお、流量調整弁25は単に酸素濃度センサ26の検出値に応じてその弁開度が調整されるので、比較的単純な制御で済む。従って、この制御部分だけモジュール化して、内燃機関の制御装置の一部としてもよい。
【0027】
この構成により、外気Aと排気ガスGの両方を圧縮空気用コンプレッサ19に供給することができるようになる。また、第1連通路21に設けた逆止弁24により、流量調整弁25を開いた時に排気ガスGがサブエアクリーナ23側に流出するのを防止できる。更に、第2連通路22に設けた流量調整弁25により、酸素濃度センサ26で検出した酸素濃度に従って、圧縮空気用コンプレッサ19に供給される排気ガスGの流量を調整することができるようになる。
【0028】
更に、内燃機関10の制御装置が、例えば、図3に例示する制御フローに従って、圧縮空気用コンプレッサ19の入口側に設けた酸素濃度センサ26で、圧縮空気用コンプレッサ19に供給される圧縮空気A+Gの酸素濃度C1を検出して、この検出された酸素濃度C1が上限酸素濃度値Cuよりも高い(Cu<C1)ときには、流量調整弁25の弁開度を増加して排気ガスGの流量を増やして圧縮空気用コンプレッサ19に供給し、検出された酸素濃度C1が下限酸素濃度値Cuよりも低い(C1<Cd)ときには、流量調整弁25の弁開度を減少して排気ガスGの流量を減らして圧縮空気用コンプレッサ19に供給し、検出された酸素濃度C1が下限酸素濃度値Cuと上限酸素濃度値Cuとの間にある(Cd≦C1≦Cu)ときには、流量調整弁25の弁開度を維持して排気ガスGの流量を維持して圧縮空気用コンプレッサ19に供給する制御を行うように構成される。
【0029】
この制御により、内燃機関10の制御装置が、流量調整弁25の弁開度を制御して圧縮空気用コンプレッサ19に供給される排気ガスGの流量を調整して、蓄圧室20に蓄える圧縮空気A+Gの酸素濃度を予め設定した範囲内、即ち、下限酸素濃度値Cuと上限酸素濃度値Cuとの間にする制御を行うことができる。
【0030】
また、内燃機関10の制御装置が、過渡期ではない時は、図1に示すように、流路切換弁17をエアクリーナ14側の吸気通路12に切り替えて、吸気Aをコンプレッサ15a経由で吸気マニホールド11aに供給し、過渡時は、図2に示すように、流路切換弁17を分岐吸気通路18側に切り替えて蓄圧室20の圧縮空気A+Gをコンプレッサ15a経由で吸気マニホールド11aに供給する制御を行うように構成される。
【0031】
上記の構成と制御により、蓄圧室20の圧縮空気A+Gの酸素濃度を外気の酸素濃度よりも低下させて、この低酸素濃度の圧縮空気A+Gを過渡時に吸気マニホールド11aに供給する内燃機関の空気供給方法を実施することができる。
【0032】
また、空気Aと内燃機関10の排気通路13からの排気ガスGとを、蓄圧室20に供給する圧縮空気を発生させる圧縮空気用コンプレッサ19に供給することで、蓄圧室20の圧縮空気A+Gの酸素濃度を外気の酸素濃度よりも低下させる、内燃機関の圧縮空気供給方法を実施することができる。
【0033】
更に、圧縮空気用コンプレッサ19に供給される圧縮空気A+Gの酸素濃度C1を検出して、酸素濃度C1が上限酸素濃度値Cuよりも高いときには、排気通路13からの排気ガスGの流量を増加して圧縮空気用コンプレッサ19に供給し、酸素濃度C1が下限酸素濃度値Cdよりも低いときには、排気通路13からの排気ガスGの流量を減少して圧縮空気用コンプレッサ19に供給する、内燃機関の圧縮空気供給方法を実施することができる。
【0034】
従って、上記の内燃機関の圧縮空気供給方法及び内燃機関によれば、過渡期に圧縮空気を吸気マニホールド11aに供給する際に、低酸素濃度の圧縮空気A+Gを吸気マニホールド11aに供給することができ、過渡期におけるNOxの排出量の増加を抑制することができる。また、容易に、低酸素濃度の圧縮空気A+Gを過渡時に吸気マニホールド11aに供給することができるようになる。
【0035】
更に、蓄圧時の運転条件に拘らず、容易に、蓄圧室20の圧縮空気A+Gの酸素濃度を外気の酸素濃度よりも低下させることができる。また、下限酸素濃度値Cuと上限酸素濃度値Cuとの間を狭めることで、蓄圧時の運転条件に拘らず、蓄圧室20の圧縮空気A+Gの酸素濃度を略一定にすることができるので、過渡期におけるシリンダ内の酸素濃度を容易に制御することができるようになる。従って、過度に酸素濃度が低減した空気をシリンダ内に送り込んだ場合に生じるスモーク(SM)の増加を回避することができる。
【0036】
そして、過渡期に低酸素濃度の圧縮空気A+Gを吸気マニホールド11aに供給して、シリンダ内の酸素濃度を低下させることができるので、過渡運転時に圧縮空気を吸気通路上に導入した際、従来技術に比べてトルクの改善、スモークの排出の改善を行うことができる。また、EGRが使えないが、EGRを使用したのと同様に低酸素濃度の圧縮空気A+Gをシリンダ内に供給できるので、EGR同様にNOx排出の低減という作用効果を得ることができる。その上、ターボラグを短くすることで燃費、排気の悪化を防ぐことができ、更に、過給補助を行う際に使用する圧縮空気A+Gの酸素濃度を任意に設定することで、従来技術における過給補助時にEGRを実施できないという問題を解決できる。
【0037】
図4と図5に、本発明の過渡期に低酸素濃度の圧縮空気を供給する実施例(A)と、過渡期に従来技術の外気と同じ酸素濃度の圧縮空気を供給する比較例1(B)と、従来技術の過渡期に圧縮空気を供給しない比較例2(C)における、NOx排出量(図4)と、トルク(図5)を示す。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明の内燃機関の圧縮空気供給方法及び内燃機関によれば、ターボチャージャを備え、過渡時に蓄圧された圧縮空気を供給する内燃機関において、過渡期に圧縮空気をシリンダに供給する際に低酸素濃度の圧縮空気を供給できるので、過渡期におけるNOxの排出量の増加を抑制することができる。従って、自動車等に搭載した内燃機関の圧縮空気供給方法及びこの方法を実施するための内燃機関として利用できる。
【符号の説明】
【0039】
10、10X、10Y 内燃機関
11 エンジン本体
11a 吸気マニホールド
12 吸気通路
13 排気通路
15 ターボチャージャ
15a コンプレッサ
15b タービン
17 流路切換弁
18 分岐吸気通路
19 圧縮空気用コンプレッサ
20 蓄圧室
21 第1連通路
22 第2連通路
24 逆止弁
25 流量調整弁
26 酸素濃度センサ
A 外気
A+G 圧縮空気
C1 検出された酸素濃度
Cd 下限酸素濃度値
Cu 上限酸素濃度値
G 排気ガス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ターボチャージャを備え、過渡時に蓄圧された圧縮空気を吸気マニホールドに供給する内燃機関の圧縮空気供給方法において、蓄圧室の圧縮空気の酸素濃度を外気の酸素濃度よりも低下させて、この低酸素濃度の圧縮空気を過渡時に前記吸気マニホールドに供給することを特徴とする内燃機関の圧縮空気供給方法。
【請求項2】
空気と内燃機関の排気通路からの排気ガスとを、前記蓄圧室に供給する圧縮空気を発生させる圧縮空気用コンプレッサに供給することで、前記蓄圧室の圧縮空気の酸素濃度を外気の酸素濃度よりも低下させることを特徴とする請求項1記載の内燃機関の圧縮空気供給方法。
【請求項3】
前記圧縮空気用コンプレッサに供給される圧縮空気の酸素濃度を検出して、前記酸素濃度が上限酸素濃度値よりも高いときには、前記排気通路からの排気ガスの流量を増加して前記圧縮空気用コンプレッサに供給し、前記酸素濃度が下限酸素濃度値よりも低いときには、前記排気通路からの排気ガスの流量を減少して前記圧縮空気用コンプレッサに供給することを特徴とする請求項2記載の内燃機関の圧縮空気供給方法。
【請求項4】
ターボチャージャを備え、圧縮空気を発生させる圧縮空気用コンプレッサと発生させた圧縮空気を蓄える蓄圧室を備えた分岐吸気通路を、内燃機関の吸気通路に流路切換弁を介して接続して、過渡時に蓄圧された圧縮空気を吸気マニホールドに供給する内燃機関において、前記圧縮空気用コンプレッサの入口側を外気に連通する第1連通路と、前記圧縮空気用コンプレッサの入口側を内燃機関の排気通路に連通する第2連通路とを設けて、外気と排気ガスの両方を前記圧縮空気用コンプレッサに供給可能に構成し、更に、前記第2連通路に前記圧縮空気用コンプレッサに供給される排気ガスの流量を調整する流量調整弁を設けたことを特徴とする内燃機関。
【請求項5】
内燃機関の制御装置が、前記流量調整弁の弁開度を制御して前記圧縮空気用コンプレッサに供給される排気ガスの流量を調整して、前記蓄圧室に蓄える圧縮空気の酸素濃度を予め設定した範囲内にする制御と、過渡時に前記流路切換弁を前記吸気通路側から前記分岐吸気通路側に切り替えて前記蓄圧室の圧縮空気を前記吸気マニホールドに供給する制御を行うように構成されたことを特徴とする請求項4記載の内燃機関。
【請求項6】
内燃機関の制御装置が、前記圧縮空気用コンプレッサの入口側に設けた酸素濃度センサで前記圧縮空気用コンプレッサに供給される圧縮空気の酸素濃度を検出して、検出された酸素濃度が上限酸素濃度値よりも高いときには、前記流量調整弁の弁開度を増加して排気ガスの流量を増やして前記圧縮空気用コンプレッサに供給し、検出された酸素濃度が下限酸素濃度値よりも低いときには、前記流量調整弁の弁開度を減少して排気ガスの流量を減らして前記圧縮空気用コンプレッサに供給する制御を行うように構成されたことを特徴とする請求項5記載の内燃機関。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate


【公開番号】特開2012−233412(P2012−233412A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−100556(P2011−100556)
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(000000170)いすゞ自動車株式会社 (1,721)
【Fターム(参考)】