内燃機関の排気浄化のための制御装置
【課題】制御装置は、触媒成分と酸素吸蔵物質とを有する触媒を備えた内燃機関に適用される。
【解決手段】制御装置は、触媒の最大酸素吸蔵量Cmaxが所定の閾値Cmaxref以下であるとき、酸素吸蔵量回復運転を行う。酸素吸蔵量回復運転は、触媒導入ガスの酸素濃度を空気と燃料とが理論空燃比にて燃焼したときに生じるガスの酸素濃度である基準酸素濃度よりもリッチ側の酸素濃度とするリッチ運転を、リッチ運転が行われた後の最大酸素吸蔵量がリッチ運転が行われる前の最大酸素吸蔵量よりも小さくないと判定されるまで行うこと、および、触媒導入ガスの酸素濃度を基準酸素濃度よりもリーン側の酸素濃度とするリーン運転を行うこと、を含む。
【解決手段】制御装置は、触媒の最大酸素吸蔵量Cmaxが所定の閾値Cmaxref以下であるとき、酸素吸蔵量回復運転を行う。酸素吸蔵量回復運転は、触媒導入ガスの酸素濃度を空気と燃料とが理論空燃比にて燃焼したときに生じるガスの酸素濃度である基準酸素濃度よりもリッチ側の酸素濃度とするリッチ運転を、リッチ運転が行われた後の最大酸素吸蔵量がリッチ運転が行われる前の最大酸素吸蔵量よりも小さくないと判定されるまで行うこと、および、触媒導入ガスの酸素濃度を基準酸素濃度よりもリーン側の酸素濃度とするリーン運転を行うこと、を含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の燃焼室から排出されるガス(排ガス)を浄化するための触媒を備えた内燃機関の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関の排ガスには種々の成分が含まれている。そのため、触媒が長期間に亘って使用されると、排ガスに含まれるそれら成分に起因して触媒の排ガス浄化性能が低下する場合がある(以下、触媒の排ガス浄化性能が低下することを「触媒が劣化する」とも称呼する。)。
【0003】
例えば、従来の内燃機関の制御装置の一つ(以下、「従来装置」と称呼する。)は、排ガスに含まれる硫黄成分(SOxなど)が触媒に吸蔵されることによって触媒が劣化した場合、排ガスの酸素濃度を増減することを繰り返すことにより、触媒に吸蔵された硫黄成分を除去するようになっている(例えば、特許文献1を参照。)。このように、従来から、触媒が劣化する原因の一つである硫黄成分を触媒から除去することが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−108076号公報
【発明の概要】
【0005】
排ガスに含まれる硫黄成分によって触媒が劣化する理由について、以下に説明する。
内燃機関に適用される触媒の例として、三元触媒およびNOx吸蔵還元触媒などが挙げられる。これら触媒は、触媒の温度が所定の活性温度以上であり、かつ、浄化される対象である排ガスの酸素濃度が所定の酸素濃度(理論空燃比の混合気が燃焼した際に生じる排ガスの酸素濃度)であるとき、その排ガスに含まれる未燃物(HCなど)の酸化反応および窒素酸化物(NOx)の還元反応を促進し、これらを高い浄化率にて同時に浄化することができる。以下、便宜上、三元触媒およびNOx吸蔵還元触媒などを単に「触媒」と総称する。
【0006】
上記触媒は、一般に、酸素吸蔵物質(CeO2−ZrO2など)を含む担体(Al2O3など)と、その担体に担持された触媒成分(PtおよびRhなどの貴金属)と、を有する。この触媒成分によって構成される活性点(触媒活性点)において、上述した未燃物と窒素酸化物との酸化還元反応(すなわち、排ガスの浄化)が促進される。さらに、この触媒活性点において、酸素吸蔵物質による酸素の吸蔵および放出が促進される。具体的に述べると、酸素吸蔵物質は、排ガスの酸素濃度が上記所定の酸素濃度よりも高いとき(すなわち、リーン側の酸素濃度であるとき)排ガスに含まれる過剰な酸素を吸蔵し、排ガスの酸素濃度が上記所定の酸素濃度よりも低いとき(すなわち、リッチ側の酸素濃度であるとき)吸蔵されている酸素を上記酸化反応のために放出する。これにより、触媒成分における酸素濃度が上記所定の酸素濃度に一致するように調節される。
【0007】
このように、触媒成分は触媒活性点を構成することによって「排ガスの浄化」および「酸素吸蔵物質の働き(酸素の吸蔵および放出)」を促進し、酸素吸蔵物質は触媒成分における酸素濃度を調節することによって「排ガスの浄化」を補助する。
【0008】
ところが、酸素吸蔵物質には、酸素だけではなく排ガスに含まれる硫黄成分(SOxなど)が吸蔵される場合がある。さらに、触媒成分には、種々の原因によって硫黄成分(Sなど)が吸着する場合がある。酸素吸蔵物質に硫黄成分が吸蔵されると、その硫黄成分によって本来吸蔵されるべき酸素が吸蔵されることが妨げられるので、触媒が吸蔵し得る酸素の量が減少する。さらに、触媒成分に硫黄成分が吸着すると、触媒活性点が硫黄成分によって覆われるので、排ガスの浄化および酸素吸蔵物質の働きを促進することができる触媒活性点(以下、「有効触媒活性点」とも称呼する。)の数が減少する。これらの結果、触媒の排ガス浄化性能が低下する。以上が排ガスに含まれる硫黄成分によって触媒が劣化する理由である。
【0009】
触媒が劣化すると、その触媒は本来の排ガス浄化性能を発揮することができない。その結果、排ガスに含まれる未燃物および窒素酸化物が十分に低減されない場合があるという問題がある。
【0010】
本発明の目的は、上記課題に鑑み、触媒に吸着・吸蔵された硫黄成分を適切に除去することにより、触媒の劣化を適切に解消することができる内燃機関の制御装置を提供することにある。
【0011】
上記課題を解決するための本発明による制御装置は、内燃機関の燃焼室から排出されるガス(排ガス)を浄化する触媒を備えた内燃機関に適用される。この触媒は、触媒成分と酸素吸蔵物質とを有する。
【0012】
上記触媒は、上述したように排ガスを浄化することができる触媒であればよく、特に制限されない。上記触媒として、例えば、触媒成分と、酸素吸蔵物質を含む担体と、を有する公知の三元触媒が採用され得る。さらに、上記触媒として、例えば、触媒成分と、酸素吸蔵物質およびNOx吸蔵物質を含む担体と、を有する公知のNOx吸蔵還元触媒が採用され得る。上記触媒は、例えば、内燃機関の排気通路に設けられ得る。
【0013】
なお、上記触媒成分は、排ガスの浄化を促進すること(未燃物と窒素酸化物との酸化還元反応の反応速度を速めること)ができる成分であればよく、特に制限されない。触媒成分として、例えば、白金(Pt)およびロジウム(Rh)などの貴金属が採用され得る。さらに、上記酸素吸蔵物質は、酸素を吸蔵することができる物質であればよく、特に制限されない。酸素吸蔵物質として、例えば、酸化セリウム(セリア。CeO2)および酸化ジルコニウム(ZrO2)などが採用され得る。
【0014】
なお、上記「ガスを浄化する」とは、ガスに含まれる未燃物および窒素酸化物などの浄化対象物質の少なくとも一部をそのガスから除去することを意味し、必ずしも浄化対象物質の全てをそのガスから除去することを意味しない。
【0015】
上記触媒を備えた内燃機関に適用される本発明の制御装置は、最大酸素吸蔵量取得手段と、酸素吸蔵量回復手段と、を備える。
【0016】
より具体的に述べると、上記最大酸素吸蔵量取得手段は、「前記触媒に吸蔵され得る酸素の最大量」である最大酸素吸蔵量を取得するようになっている。
【0017】
上述したように、触媒に含まれる酸素吸蔵物質は、酸素を吸蔵することができる。この酸素吸蔵物質に吸蔵され得る酸素の量は、酸素吸蔵物質そのものが有する特性などに起因して定まる上限量(以下、便宜上、「内的な上限量」とも称呼する。)を有する。一方、上述したように、酸素吸蔵物質の働き(酸素の吸蔵および放出)は、触媒成分によって促進されている。よって、酸素吸蔵物質に吸蔵され得る酸素の量は、触媒成分が有する特性などに起因して定まる上限量(以下、便宜上、「外的な上限量」とも称呼する。)をも有する。
【0018】
したがって、酸素吸蔵物質に吸蔵され得る酸素の「実際の」上限量は、上述した「内的な上限量」および「外的な上限量」の双方に基づいて定まる。本発明における「最大酸素吸蔵量」は、この「実際の上限量」に相当する。
【0019】
この最大酸素吸蔵量を取得する方法は、特に制限されない。例えば、「酸素を全く吸蔵していない(すなわち、酸素吸蔵量がゼロである)触媒の酸素吸蔵量を最大量とするために必要なガスの量と、そのガスの酸素濃度と、に基づいて最大酸素吸蔵量を取得する」公知の方法などが採用され得る。
【0020】
上記最大酸素吸蔵量は、排ガスに含まれる種々の成分に起因して減少する場合がある。触媒の最大酸素吸蔵量が減少する原因の一つとして、排ガスに含まれる硫黄成分が触媒に吸着・吸蔵することが挙げられる。
【0021】
より具体的に述べると、硫黄成分(SOxなど)が「酸素吸蔵物質に吸蔵される」と、酸素が酸素吸蔵物質に吸蔵されることが妨げられるので、上記「内的な上限量」が減少する。一方、硫黄成分(Sなど)が「触媒成分に吸着する」と、有効触媒活性点の数が減少するので、上記「外的な上限量」が減少する。すなわち、酸素吸蔵物質に吸蔵された硫黄成分および触媒成分に吸着した硫黄成分の双方により、触媒の最大酸素吸蔵量が減少する。
【0022】
そのため、触媒の最大酸素吸蔵量が減少したとき、内的な上限量および外的な上限量の双方が回復(増大)されれば、最大酸素吸蔵量が適切に回復(増大)され得る。より具体的に述べると、触媒に硫黄成分が吸着・吸蔵することによって触媒の最大酸素吸蔵量が減少したとき、「硫黄成分が存在する部位(すなわち、酸素吸蔵物質および触媒成分の双方、または、それらのいずれか一方)」が把握されるとともに、「その部位に適した方法」によってその部位から硫黄成分が除去されれば、最大酸素吸蔵量が適切に回復(増大)され得る。本発明の酸素吸蔵量回復手段は、この考え方に基づき、触媒の最大酸素吸蔵量を回復させる。
【0023】
より具体的に述べると、上記酸素吸蔵量回復手段は、前記最大酸素吸蔵量が所定の閾値以下であるとき、下記(A)に示す運転および下記(B)に示す運転を含む「酸素吸蔵量回復運転」を行うようになっている。なお、後述するように、下記(A)に示す運転は「酸素吸蔵物質に吸蔵された硫黄成分を除去するための運転」であり、下記(B)に示す運転は「触媒成分に吸着した硫黄成分を除去するための運転」である。
【0024】
(A)前記触媒に導入されるガスである触媒導入ガスの酸素濃度を「空気と燃料とが理論空燃比にて燃焼したときに生じるガスの酸素濃度である基準酸素濃度」よりもリッチ側の酸素濃度とする「リッチ運転」。
このリッチ運転は、当該リッチ運転が行われる「前」の前記最大酸素吸蔵量である「第1最大酸素吸蔵量」と当該リッチ運転が行われた「後」の前記最大酸素吸蔵量である「第2最大酸素吸蔵量」とが等しくなるまで、または、前記第1最大酸素吸蔵量よりも前記第2最大酸素吸蔵量が大きくなるまで、行われる。
【0025】
(B)前記触媒導入ガスの酸素濃度を前記基準酸素濃度よりもリーン側の酸素濃度とする「リーン運転」。
このリーン運転は、上記(A)に示すリッチ運転によって「前記第1最大酸素吸蔵量と前記第2最大酸素吸蔵量とが等しくなったとき、または、前記第1最大酸素吸蔵量よりも前記第2最大酸素吸蔵量が大きくなったとき」に行われる。
【0026】
上記「基準酸素濃度よりもリッチ側の酸素濃度」とは、上記基準酸素濃度よりも低い酸素濃度を意味する。一方、上記「基準酸素濃度よりもリーン側の酸素濃度」とは、上記基準酸素濃度よりも高い酸素濃度を意味する。以下、基準酸素濃度よりもリッチ側の酸素濃度を単に「リッチ側酸素濃度」とも称呼し、基準酸素濃度よりもリーン側の酸素濃度を単に「リーン側酸素濃度」とも称呼する。
【0027】
上記「リッチ運転」は、触媒導入ガスの酸素濃度がリッチ側酸素濃度である運転であればよく、特に制限されない。リッチ運転として、例えば、内燃機関の混合気の空燃比を理論空燃比よりもリッチ側の空燃比とする運転(いわゆる、燃料増量運転)が採用され得る。さらに、リッチ運転として、例えば、燃焼室から排出されるガスに再び燃料を噴射する(いわゆる、排気添加を行う)運転が採用され得る。一方、上記「リーン運転」は、触媒導入ガスの酸素濃度がリーン側酸素濃度である運転であればよく、特に制限されない。リーン運転として、例えば、燃焼室へ燃料を供給しない運転(いわゆる、フューエルカット運転)が採用され得る。
【0028】
上記「酸素吸蔵量回復運転」によって触媒の最大酸素吸蔵量が適切に回復(増大)される理由について、以下に説明する。
【0029】
発明者は、触媒に吸着・吸蔵された硫黄成分が触媒から排出されるメカニズムを検討するべく、種々の考察および実験などを行った。発明者によるこれら種々の考察および実験などによれば、「触媒に吸着・吸蔵された硫黄成分の挙動」と「排ガスの酸素濃度」との間には密接な関係があることが確認された。具体的に述べると、まず、酸素吸蔵物質に吸蔵されている硫黄成分は、排ガスの酸素濃度がリッチ側酸素濃度である場合に触媒成分に向けて移動して触媒成分に吸着する、ことが確認された。さらに、触媒成分に吸着している硫黄成分は、排ガスの酸素濃度がリーン側酸素濃度である場合に排ガス中に放出される、ことが確認された。すなわち、酸素吸蔵物質に吸蔵されている硫黄成分は、酸素吸蔵物質から排ガス中に直接には放出されず、触媒成分を経由して排ガス中に放出される、ことが確認された。加えて、上記「内的な上限量」が最大酸素吸蔵量に及ぼす影響よりも上記「外的な上限量」が最大酸素吸蔵量に及ぼす影響が大きい、ことが確認された。
【0030】
上記確認された事項を考慮し、本発明の酸素吸蔵量回復手段は、酸素吸蔵量回復運転として、まず「リッチ運転」を行う(上記(A))。
【0031】
リッチ運転が行われると、酸素吸蔵物質に硫黄成分が「吸蔵されている」場合、上述したように硫黄成分は触媒成分に向けて移動して触媒成分に吸着する。すなわち、リッチ運転により、酸素吸蔵物質に吸蔵された硫黄成分が除去される。換言すると、リッチ運転は、「酸素吸蔵物質に吸蔵された硫黄を除去するために適した運転」である。
【0032】
このとき、「酸素吸蔵物質に吸蔵されている硫黄成分」の量が減少するので、酸素吸蔵物質が吸蔵し得る酸素の量が増大する。よって、「内的な上限量」が増大する。ところが、このとき、酸素吸蔵物質から触媒成分へと移動した硫黄成分の量だけ「触媒成分に吸着している硫黄成分」の量が増大するので、有効触媒活性点の数が減少する。よって、「外的な上限量」が減少する。すなわち、この場合、内的な上限量が増大しても外的な上限量が減少する。上述したように、外的な上限量は、内的な上限量よりも最大酸素吸蔵量に大きな影響を及ぼす。よって、これらの結果、触媒の最大酸素吸蔵量は「減少」する。
【0033】
これに対し、酸素吸蔵物質に硫黄成分が「吸蔵されていない」場合、または、「硫黄成分が移動し得る領域が触媒成分上に存在しない」場合、リッチ運転が行われても、「内的な上限量」は変化しない。さらに、この場合、「外的な上限量」も変化しない。これらの結果、触媒の最大酸素吸蔵量は実質的に「変化しない」。
【0034】
したがって、リッチ運転を行う「前」の最大酸素吸蔵量(第1最大酸素吸蔵量)よりもリッチ運転を行った「後」の最大酸素吸蔵量(第2最大酸素吸蔵量)が「小さい」場合、「酸素吸蔵物質に吸蔵されていた硫黄成分の少なくとも一部が酸素吸蔵物質から除去された」と言える。これに対し、第1最大酸素吸蔵量よりも第2最大酸素吸蔵量が「小さくない」場合、「触媒成分に移動可能な最大の量の硫黄成分が酸素吸蔵物質から触媒成分に移動された(すなわち、酸素吸蔵物質に吸蔵されていた全ての硫黄成分が酸素吸蔵物質から除去された、または、硫黄成分が移動し得る領域が触媒成分上に存在しない)」と言える。換言すると、リッチ運転により、「硫黄成分が存在する部位」が把握される。
【0035】
上述したように、酸素吸蔵物質に吸蔵されている硫黄成分は、触媒成分を経由して排ガス中に放出される。そのため、出来る限り多量の酸素吸蔵物質に吸蔵されている硫黄成分が触媒成分に向けて移動された後に触媒成分上から硫黄成分が除去されると、内的な上限量および外的な上限量が適切に(例えば、短時間にて)回復され得ると考えられる。そこで、上記酸素吸蔵量回復手段は、リッチ運転を「第1最大酸素吸蔵量よりも第2最大酸素吸蔵量が小さくない状態となるまで(換言すると、第1最大酸素吸蔵量と第2最大酸素吸蔵量とが等しくなるまで又は第1最大酸素吸蔵量よりも第2最大酸素吸蔵量が大きくなるまで)」行った後、「リーン運転」を行う(上記(B))。なお、「第1最大酸素吸蔵量よりも第2最大酸素吸蔵量が大きくなる」場合の例については、後述される。
【0036】
リーン運転が行われると、上述したように、「触媒成分に吸着している硫黄成分」は排ガス中に放出される。すなわち、リーン運転により、触媒成分に吸着した硫黄成分が除去される。換言すると、リーン運転は、「触媒成分に吸着した硫黄成分を除去するために適した運転」である。
【0037】
このとき、「触媒成分に吸着している硫黄成分」の量が減少するので、有効触媒活性点の数が増大する。よって、「外的な上限量」が増大する。なお、このとき、「内的な上限量」は実質的に変化しない。これらの結果、触媒の最大酸素吸蔵量は「増大(回復)」する。
【0038】
このように、本発明の酸素吸蔵量回復手段は、リッチ運転を行うことによって出来る限り多量の「酸素吸蔵物質に吸蔵されている硫黄成分」を触媒成分へと移動させた後、リーン運転を行うことによって「触媒成分に吸着している硫黄成分」を排ガス中に放出させる。すなわち、本発明の酸素吸蔵量回復手段は、硫黄成分が存在する部位を把握するとともに(すなわち、リッチ運転の前後の最大酸素吸蔵量を比較することにより、酸素吸蔵物質および触媒成分のいずれに硫黄成分が存在するかを把握するとともに)、その部位に適した方法(リッチ運転またはリーン運転)によってその部位から硫黄成分を除去することができる。したがって、本発明の制御装置は、触媒に吸着・吸蔵された硫黄成分を適切に除去することができるので、触媒の最大酸素吸蔵量を適切に回復させる(すなわち、触媒の劣化を適切に解消する)ことができる。
【0039】
本発明の制御装置の一の態様として、
前記酸素吸蔵量回復手段は、上記(A)に示す運転として下記(A’)に示す運転を行い、上記(B)に示す運転として下記(B’)に示す運転を行う、ように構成され得る。
【0040】
(A’)「前記リッチ運転を「所定の期間」だけ行った後に、前記第1最大酸素吸蔵量と前記第2最大酸素吸蔵量とを比較する」ことを、前記第1最大酸素吸蔵量と前記第2最大酸素吸蔵量とが等しいと判定されるまで又は前記第1最大酸素吸蔵量よりも前記第2最大酸素吸蔵量が大きいと判定されるまで「繰り返す」運転。
(B’)前記第1最大酸素吸蔵量と前記第2最大酸素吸蔵量とが等しいと判定された後または前記第1最大酸素吸蔵量よりも前記第2最大酸素吸蔵量が大きいと判定された後に行われる、前記リーン運転。
【0041】
上述したように、上記(A)に示す運転により、「触媒成分に移動可能な最大の量」の硫黄成分が酸素吸蔵物質から触媒成分に移動される。その結果、触媒の状態が「第1最大酸素吸蔵量よりも第2最大酸素吸蔵量が小さくない」状態となる。ここで、「触媒成分に移動可能な最大の量」の硫黄成分を酸素吸蔵物質から触媒成分に移動させ得る適度なリッチ運転の程度(リッチ運転が行われる際の触媒導入ガスの酸素濃度、および、リッチ運転が行われる期間など)は、例えば、実験などによって取得されたマップに基づいて定められ得る。
【0042】
ところが、この「適度なリッチ運転の程度」は、内燃機関の構成、酸素吸蔵物質の種類、触媒成分の種類、および、触媒の構成などによっては容易に定められない場合がある。
【0043】
そこで、本態様の制御装置は、上記(A’)に示すように「リッチ運転を所定の期間だけ行うことを繰り返す」ようになっている。リッチ運転が行われると、所定の量の硫黄成分が酸素吸蔵物質から触媒成分に向けて移動される。よって、このリッチ運転を繰り返せば、いずれかの時点にて「触媒成分に移動可能な最大の量」の硫黄成分が酸素吸蔵物質から触媒成分に移動される。そして、上記(A’)に示すリッチ運転が行われた後に上記(B’)に示すリーン運転が行われることにより、上記同様、触媒成分に吸着している硫黄成分が排ガス中に放出される。
【0044】
このように、本態様の制御装置は、上記「適度なリッチ運転の程度」を容易に定められない場合であっても、簡便に「触媒成分に移動可能な最大の量」の硫黄成分を酸素吸蔵物質から触媒成分に移動させることができる。
【0045】
さらに、本発明の制御装置の他の態様の一つとして、
前記酸素吸蔵量回復手段は、
「前記酸素吸蔵量回復運転を行う前」に前記リーン運転を行う、ように構成され得る。
【0046】
上述したように、リーン運転を行うと、触媒成分に吸着している硫黄成分の量が減少するので、「触媒成分に移動可能な硫黄成分の量」が増大する。そこで、本態様の制御装置は、酸素吸蔵量回復運転を行う「前」にリーン運転を行うようになっている。これにより、酸素吸蔵量回復運転におけるリッチ運転が行われるときに「酸素吸蔵物質から触媒成分に向けて移動し得る硫黄成分の量」が、増大する。
【0047】
これにより、本態様の制御装置は、酸素吸蔵物質に吸蔵されている硫黄成分をより効率良く除去することができるので、触媒の最大酸素吸蔵量をより効率良く回復(増大)させることができる。
【0048】
ところで、酸素吸蔵量回復運転を行う「前」にリーン運転を行うと、第1最大酸素吸蔵量よりも第2最大酸素吸蔵量が「大きく」なる場合がある。具体的に述べると、例えば、触媒成分および酸素吸蔵物質の「双方」に硫黄成分が存在している触媒の最大酸素吸蔵量が「C1」である、と仮定する。この最大酸素吸蔵量C1は、「第1最大酸素吸蔵量(リッチ運転が行われる前の最大酸素吸蔵量)」に相当する。
【0049】
まず、この触媒に対して酸素吸蔵量回復運転が行われる「前」にリーン運転が行われると、触媒成分から硫黄成分が除去されるので、最大酸素吸蔵量は「C1以上のC2」となる。なお、例えば、酸素吸蔵物質が酸素を全く吸蔵することができない程度に硫黄成分を吸蔵している場合(すなわち、内的な上限量がゼロである場合)、リーン運転が行われても最大酸素吸蔵量は変化しないので、C1とC2とは一致する。次いで、酸素吸蔵量回復運転におけるリッチ運転が行われると、硫黄成分が触媒成分に移動するので、最大酸素吸蔵量は「C2よりも小さいC3」となる。この最大酸素吸蔵量C3は、「第2最大酸素吸蔵量(リッチ運転が行われた後の最大酸素吸蔵量)」に相当する。
【0050】
このとき、例えば、リーン運転が行われる前の時点において内的な上限量よりも外的な上限量が過度に小さい場合(例えば、有効触媒活性点の数が極めて少ない場合)、リーン運転が行われることによって外的な上限量が顕著に増大するので(例えば、有効触媒活性点の数が顕著に増加するので)、C1よりもC2が極めて大きくなる。そして、このリーン運転の後にリッチ運転が行われることにより、C2は減少してC3となる。ここで、C1からC2への増大の程度が、C2からC3への減少の程度よりも大きければ、C1(第1最大酸素吸蔵量)よりもC3(第2最大酸素吸蔵量)が大きくなる。
【0051】
このように、リーン運転が行われる前の時点において酸素吸蔵物質に吸蔵されていた硫黄成分の量と、その時点において触媒成分に吸着していた硫黄成分の量と、の関係(すなわち、内的な上限量と外的な上限量との関係)によっては、第1最大酸素吸蔵量(C1)よりも第2最大酸素吸蔵量(C3)が「大きく」なる場合がある。
【0052】
ところで、上述したように、本発明の制御装置は、「触媒に吸着・吸蔵された硫黄成分の挙動」と「排ガスの酸素濃度」との関係に着目し、触媒に吸着・吸蔵された硫黄成分を除去するようになっている。発明者によるさらなる種々の考察および実験などによれば、触媒に吸着・吸蔵された硫黄成分の挙動は、排ガスの酸素濃度だけではなく「触媒の温度」の影響をも受けることが確認された。
【0053】
具体的に述べると、触媒の温度が「特定の温度範囲内にある(例えば、第1温度以上第2温度以下である)」ときに排ガスの酸素濃度が「リッチ側酸素濃度」である場合、酸素吸蔵物質に吸蔵された硫黄成分が触媒成分に向けて効率良く移動する、ことが確認された。さらに、触媒の温度が「上記特定の温度範囲内の特定の温度以上である(例えば、第1温度と第2温度の間の第3温度以上である)」ときに排ガスの酸素濃度が「リーン側酸素濃度」である場合、触媒成分上に存在する硫黄成分が効率良く排ガス中に放出される、ことが確認された。
【0054】
上記確認された事項を考慮し、本態様の制御装置は、酸素吸蔵量回復運転を行う。具体的に述べると、上述した本発明の制御装置の他の態様の一つとして、
前記酸素吸蔵量回復手段は、
触媒が下記(C−1)および(C−2)に示す特性を有する触媒であるとき、
前記触媒の温度が「下記第3温度以上であり且つ下記第2温度以下」である場合に前記酸素吸蔵量回復運転を行う、ように構成され得る。
【0055】
(C−1)前記触媒の温度が「第1温度以上第2温度以下」であるときに前記触媒導入ガスの酸素濃度が前記基準酸素濃度よりも「リッチ側」の酸素濃度である場合、前記酸素吸蔵物質に吸蔵された硫黄成分が前記触媒成分に向けて移動する。
(C−2)前記触媒の温度が前記第1温度と前記第2温度の間の「第3温度以上」であるときに前記触媒導入ガスの酸素濃度が前記基準酸素濃度よりも「リーン側」の酸素濃度である場合、前記触媒成分上に存在する前記硫黄成分が前記触媒導入ガス中に放出される。
【0056】
上記第1温度、上記第2温度および上記第3温度は、触媒を構成する物質などに応じて定まる値であって、あらかじめ実験などによって取得され得る。
【0057】
なお、上記(C−1)の特性は、触媒の温度が同特性に示される温度範囲(第1温度以上第2温度以下)に含まれる場合、触媒の温度が同温度範囲に含まれない場合よりも効率良く酸素吸蔵物質に吸蔵された硫黄成分が触媒成分に向けて移動されることを意味する。すなわち、上記(C−1)の特性は、触媒の温度が同温度範囲に含まれない場合に酸素吸蔵物質に吸蔵された硫黄成分が触媒成分に向けて全く移動しないことを意味するものではない。
【0058】
上記同様、上記(C−2)の特性は、触媒の温度が同特性に示される温度範囲(第3温度以上)に含まれる場合、触媒の温度が同温度範囲に含まれない場合よりも効率良く触媒成分上に存在する硫黄成分が排ガス中に放出されることを意味する。すなわち、上記(C−2)の特性は、触媒の温度が同温度範囲に含まれない場合に触媒成分上に存在する硫黄成分が排ガス中に全く放出されないことを意味するものではない。
【0059】
上述したように、本発明の酸素吸蔵量回復手段は、酸素吸蔵物質に吸蔵されている硫黄成分を触媒成分を経由して排ガス中に放出させる、ようになっている(上記(A)および上記(B)を参照。)。ところが、触媒が上記(C−1)および(C−2)の特性を有するとき、酸素吸蔵物質に吸蔵された硫黄成分が効率良く触媒成分に移動される触媒の温度範囲(第1温度以上第2温度以下)と、触媒成分上に存在する硫黄成分が効率良く排ガス中に放出される触媒の温度範囲(第3温度以上)と、は一致しない場合がある(図6を参照。)。
【0060】
そこで、本態様の制御装置は、それら温度範囲が「一致する」場合(すなわち、触媒の温度が第3温度以上であり且つ第2温度以下である場合)、酸素吸蔵量回復運転を行うようになっている。これにより、本態様の制御装置は、触媒に吸着・吸蔵されている硫黄成分をより効率良く除去することができるので、触媒の最大酸素吸蔵量をより効率良く回復することができる。
【0061】
さらに、本発明の制御装置の他の態様の一つとして、
酸素吸蔵量回復手段は、触媒の最大酸素吸蔵量の大きさに応じて、「リッチ運転を行う際の触媒導入ガスの酸素濃度」を調整するように構成され得る。
【0062】
例えば、前記酸素吸蔵量回復手段は、
前記最大酸素吸蔵量が「第1の値」であるときに前記リッチ運転を行う場合の前記触媒導入ガスの酸素濃度である「第1酸素濃度」が、前記最大酸素吸蔵量が「前記第1の値よりも大きい第2の値」であるときに前記リッチ運転を行う場合の前記触媒導入ガスの酸素濃度である「第2酸素濃度と同一」または「前記第2酸素濃度よりもリッチ側の酸素濃度」である、ように構成され得る。
【0063】
このように、触媒の最大酸素吸蔵量が小さいほど「リッチ運転を行う際の触媒導入ガスの酸素濃度」を上記基準酸素濃度からリッチ側に離れる酸素濃度に設定することにより(すなわち、第1酸素濃度を第2酸素濃度よりもリッチ側の酸素濃度とすることにより)、触媒に吸着・吸蔵された硫黄成分をさらに効率良く除去することができる。一方、触媒の最大酸素吸蔵量の大小にかかわらずリッチ運転を行う際の触媒導入ガスの酸素濃度を変化させないことにより(すなわち、第1酸素濃度を第2酸素濃度と同一の酸素濃度とすることにより)、触媒に吸着・吸蔵された硫黄成分を除去する処理をより簡便に行うことができる。
【0064】
さらに、本発明の制御装置の他の態様の一つとして、
酸素吸蔵量回復手段は、触媒の最大酸素吸蔵量の大きさに応じて、「リーン運転を行う際の触媒導入ガスの酸素濃度」を調整するように構成され得る。
【0065】
例えば、前記酸素吸蔵量回復手段は、
前記最大酸素吸蔵量が「第3の値」であるときに前記リーン運転を行う場合の前記触媒導入ガスの酸素濃度である「第3酸素濃度」が、前記最大酸素吸蔵量が「前記第3の値よりも大きい第4の値」であるときに前記リーン運転を行う場合の前記触媒導入ガスの酸素濃度である「第4酸素濃度と同一」または「前記第4酸素濃度よりもリーン側の酸素濃度」である、ように構成され得る。
【0066】
このように、触媒の最大酸素吸蔵量が小さいほど「リーン運転を行う際の触媒導入ガスの酸素濃度」を上記基準酸素濃度からリーン側に離れる酸素濃度に設定することにより(すなわち、第3酸素濃度を第4酸素濃度よりもリーン側の酸素濃度とすることにより)、触媒に吸着・吸蔵された硫黄成分をさらに効率良く除去することができる。一方、触媒の最大酸素吸蔵量の大小にかかわらずリーン運転を行う際の触媒導入ガスの酸素濃度を変化させないことにより(すなわち、第3酸素濃度を第4酸素濃度と同一の酸素濃度とすることにより)、触媒に吸着・吸蔵された硫黄成分を除去する処理をより簡便に行うことができる。
【0067】
上述したように、本発明の制御装置は、所定の特性を有する触媒を備えた内燃機関において、触媒の最大酸素吸蔵量が減少したとき、出来る限り多量の酸素吸蔵物質に存在する硫黄成分を触媒成分に向けて移動させるとともにその硫黄成分を触媒成分から排ガス中に排出する運転(酸素吸蔵量回復運転)を行うようになっている。
【0068】
換言すると、本発明による制御装置は、
内燃機関の燃焼室から排出されるガスを浄化する触媒であって、触媒成分と酸素吸蔵物質とを有し、該触媒に導入されるガスである触媒導入ガスの酸素濃度が空気と燃料とが理論空燃比にて燃焼したときに生じるガスの酸素濃度である基準酸素濃度よりもリッチ側の酸素濃度であるときに前記酸素吸蔵物質に吸蔵された硫黄成分が前記触媒成分に向けて移動し、かつ、前記触媒導入ガスの酸素濃度が前記基準酸素濃度よりもリーン側の酸素濃度であるときに前記触媒成分上に存在する前記硫黄成分が前記触媒導入ガス中に放出される触媒、を備えた内燃機関に適用される。
【0069】
さらに、換言すると、この制御装置は、
前記触媒に吸蔵され得る酸素の最大量である最大酸素吸蔵量を取得する最大酸素吸蔵量取得手段と、
前記最大酸素吸蔵量が所定の閾値以下であるとき、
前記触媒導入ガスの酸素濃度を前記基準酸素濃度よりもリッチ側の酸素濃度とする「リッチ運転」を「前記触媒成分に移動可能な最大の量の硫黄成分が前記酸素吸蔵物質から前記触媒成分に移動するまで」行うこと、および、「前記触媒成分に移動可能な最大の量の硫黄成分が前記酸素吸蔵物質から前記触媒成分に移動したとき」に前記触媒導入ガスの酸素濃度を前記基準酸素濃度よりもリーン側の酸素濃度とする「リーン運転」を行うこと、を含む「酸素吸蔵量回復運転」を行う酸素吸蔵量回復手段と、を備えるように構成される。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の第1実施形態に係る制御装置が適用される内燃機関の概略図である。
【図2】図1に示した上流側酸素濃度センサの出力値と、空燃比と、の関係を示すグラフである。
【図3】図1に示した下流側酸素濃度センサの出力値と、空燃比と、の関係を示すグラフである。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る制御装置の作動を示す概略フローチャートである。
【図5】触媒の最大酸素吸蔵量を取得する際における、触媒上流側空燃比と、下流側酸素濃度センサの出力値と、酸素吸蔵量と、の関係を示すタイムチャートである。
【図6】触媒の温度と、排ガスの空燃比(酸素濃度)と、触媒に吸着・吸蔵された硫黄成分の主な挙動と、の関係を示す概略図である。
【図7】本発明の第1実施形態に係る制御装置のCPUが実行するルーチンを示したフローチャートである。
【図8】本発明の第1実施形態に係る制御装置のCPUが実行するルーチンを示したフローチャートである。
【図9】本発明の第1実施形態に係る制御装置のCPUが実行するルーチンを示したフローチャートである。
【図10】本発明の第1実施形態に係る制御装置のCPUが実行するルーチンを示したフローチャートである。
【図11】本発明の第1実施形態に係る制御装置のCPUが実行するルーチンを示したフローチャートである。
【図12】本発明の第2実施形態に係る制御装置のCPUが実行するルーチンを示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0071】
以下、本発明による内燃機関の制御装置の各実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0072】
(第1実施形態)
<装置の概要>
図1は、本発明の第1実施形態に係る制御装置(以下、「第1装置」とも称呼する。)を内燃機関10に適用したシステムの概略構成を示している。内燃機関10は、4サイクル火花点火式多気筒(4気筒)機関である。図1は、複数の気筒のうちの一の気筒の断面のみを示している。なお、他の気筒もこの一の気筒と同様の構成を備えている。以下、便宜上、「内燃機関10」を単に「機関10」とも称呼する。
【0073】
この機関10は、シリンダブロック部20、シリンダブロック部20の上部に固定されるシリンダヘッド部30、シリンダブロック部20に空気と燃料との混合気を導入するための吸気系統40、および、シリンダブロック部20から排出されるガス(排ガス)を機関10の外部に放出するための排気系統50、を備えている。
【0074】
シリンダブロック部20は、シリンダ21、ピストン22、コンロッド23、および、クランクシャフト24、を有している。ピストン22はシリンダ21内を往復動し、ピストン22の往復動がコンロッド23を介してクランクシャフト24に伝達され、これにより同クランクシャフト24が回転するようになっている。シリンダ21の内壁面、ピストン22の上面およびシリンダヘッド部30の下面は、燃焼室25を画成している。
【0075】
シリンダヘッド部30は、燃焼室25に連通した吸気ポート31、吸気ポート31を開閉する吸気弁32、吸気弁32を駆動するインテークカムシャフトを有するとともに同インテークカムシャフトの位相角およびリフト量を連続的に変更する可変吸気タイミング装置33、可変吸気タイミング装置33のアクチュエータ33a、燃料を吸気ポート31内に噴射するインジェクタ34、燃焼室25に連通した排気ポート35、排気ポート35を開閉する排気弁36、排気弁36を駆動するエキゾーストカムシャフト37、点火プラグ38、および、点火プラグ38に与える高電圧を発生するイグニッションコイルを含むイグナイタ39、を有している。
【0076】
なお、機関10は、インジェクタ34に代えて、または、インジェクタ34とは別に、燃料を燃焼室25内に直接噴射する筒内インジェクタ(図示省略。)を備えるように構成され得る。
【0077】
吸気系統40は、吸気ポート31を介してそれぞれの気筒に連通されたインテークマニホールド41、インテークマニホールド41の上流側の集合部に接続された吸気管42、吸気管42の端部に設けられたエアクリーナ43、吸気管42の開口面積(開口断面積)を変更することができるスロットル弁(吸気絞り弁)44、および、指示信号に応じてスロットル弁44を回転駆動するスロットル弁アクチュエータ44a、を有している。吸気ポート31、インテークマニホールド41および吸気管42は、吸気通路を構成している。
【0078】
排気系統50は、排気ポート35を介してそれぞれの気筒に連通されたエキゾーストマニホールド51、エキゾーストマニホールド51の下流側の集合部に接続された排気管52、および、排気管52に設けられた排ガス浄化用触媒53、を有している。排気ポート35、エキゾーストマニホールド51および排気管52は、排気通路を構成している。以下、排ガス浄化用触媒53を、単に「触媒53」とも称呼する。
【0079】
触媒53は、酸素吸蔵物質としてセリア・ジルコニア共触媒(CeO2−ZrO2)などを含む担体としてのアルミナなどのセラミクスと、触媒成分としての白金およびロジウムなどの貴金属と、から構成される三元触媒である。この触媒53は、触媒の温度がその活性温度以上であり、かつ、触媒53に導入される排ガスの酸素濃度が「理論空燃比の混合気が燃焼した際に生じる排ガスの酸素濃度」である場合、排ガス中の未燃物(HCなど)と窒素酸化物(NOx)との酸化還元反応を促進し、これらを高い浄化率にて同時に浄化することができる。
【0080】
機関10の外部には、機関10に加速要求および要求トルクなどを入力するためのアクセルペダル61が設けられている。アクセルペダル61は、機関10の操作者によって操作される。
【0081】
さらに、機関10は、複数のセンサを備えている。
具体的に述べると、第1装置は、吸入空気量センサ71、スロットル弁開度センサ72、カムポジションセンサ73、クランクポジションセンサ74、水温センサ75、上流側酸素濃度センサ76、下流側酸素濃度センサ77、および、アクセル開度センサ78、を備えている。
【0082】
吸入空気量センサ71は、吸気通路(吸気管42)に設けられている。吸入空気量センサ71は、吸気管42内を流れる空気の質量流量である吸入空気量(すなわち、機関10に吸入される空気の質量)に応じた信号を出力するようになっている。この信号に基づき、吸入空気量Gaの測定値が取得される。
【0083】
スロットル弁開度センサ72は、スロットル弁44の近傍に設けられている。スロットル弁開度センサ72は、スロットル弁44の開度に応じた信号を出力するようになっている。この信号に基づき、スロットル弁開度TAが取得される。
【0084】
カムポジションセンサ73は、可変吸気タイミング装置33の近傍に設けられている。カムポジションセンサ73は、インテークカムシャフトが90°回転する毎に(すなわち、クランクシャフト24が180°回転する毎に)一つのパルスを有する信号を出力するようになっている。この信号に基づき、インテークカムシャフトの回転位置(カムポジション)の測定値が取得される。
【0085】
クランクポジションセンサ74は、クランクシャフト24の近傍に設けられている。クランクポジションセンサ74は、クランクシャフト24が10°回転する毎に幅の狭いパルスを有する信号を出力するとともに、クランクシャフト24が360°回転する毎に幅の広いパルスを有する信号を出力するようになっている。これら信号に基づき、クランクシャフト24の単位時間あたりの回転数の測定値(以下、単に「機関回転速度NE」とも称呼する。)が取得される。
【0086】
水温センサ75は、シリンダ21に設けられている冷却水の通路に設けられている。水温センサ75は、冷却水の温度に応じた信号を出力するようになっている。この信号に基づき、冷却水の温度THWの測定値が取得される。
【0087】
上流側酸素濃度センサ76は、触媒53の上流側の排気通路(エキゾーストマニホールド51の集合部の近傍または集合部よりも下流側)に設けられている。上流側酸素濃度センサ76は、公知の限界電流式の酸素濃度センサである。上流側酸素濃度センサ76は、触媒53に導入される排ガスの酸素濃度に応じた信号を出力するようになっている。
【0088】
以下、排ガスの酸素濃度を「排ガスの空燃比」とも、排ガスの酸素濃度が理論空燃比の混合気が燃焼した際に生じる排ガスの酸素濃度であることを「排ガスの空燃比が理論空燃比である」とも、称呼する。さらに、以下、理論空燃比よりもリッチ側の空燃比を「リッチ空燃比」とも、理論空燃比よりもリーン側の空燃比を「リーン空燃比」とも、称呼する。
【0089】
より具体的に述べると、排ガスの空燃比が「リッチ空燃比」であるとは、排ガスに「排ガスに含まれる未燃物を全て酸化するために必要な量よりも少ない量の酸素」が含まれている状態を表す。一方、排ガスの空燃比が「リーン空燃比」であるとは、排ガスに「排ガスに含まれる未燃物を全て酸化するために必要な量よりも多い量の酸素」が含まれている状態を表す。さらに、排ガスの空燃比が「理論空燃比」であるとは、排ガスに「排ガスに含まれる未燃物を全て酸化するために必要な量の酸素」が含まれている状態を表す。
【0090】
この上流側酸素濃度センサ76は、図2に示すように、測定対象であるガスの空燃比に応じた電圧であるVabyfsを出力するようになっている。出力値Vabyfsは、排ガスの空燃比が理論空燃比であるときに値Vstoichに一致する。さらに、排ガスの空燃比が増大するにつれて(すなわち、空燃比が理論空燃比からリーン側に離れた空燃比になるにつれて)、出力値Vabyfsは増大する。この出力値Vabyfsに基づき、触媒53に導入される排ガスの空燃比が取得される。以下、触媒53に導入される排ガスの空燃比を「触媒上流側空燃比abyfs」とも称呼する。さらに、以下、図2に示す出力値Vabyfsと空燃比A/Fとの関係は「テーブルMapabyfs」とも称呼される。
【0091】
再び図1を参照すると、下流側酸素濃度センサ77は、触媒53の下流側の排気通路に設けられている。下流側酸素濃度センサ77は、公知の起電力式(濃淡電池型)の酸素濃度センサである。下流側酸素濃度センサ77は、触媒53から排出される排ガスの酸素濃度(空燃比)に応じた信号を出力するようになっている。
【0092】
この下流側酸素濃度センサ77は、図3に示すように、測定対象であるガスの空燃比に応じた電圧であるVoxsを出力するようになっている。出力値Voxsは、排ガスの空燃比がリッチ空燃比であるときに最大値(例えば、約0.9V)となり、排ガスの空燃比がリーン空燃比であるときに最小値(例えば、約0.1V)となり、排ガスの空燃比が理論空燃比であるとき最大値と最小値とのほぼ中間の電圧(例えば、約0.5V)となる。さらに、出力値Voxsは、排ガスの空燃比がリッチ空燃比からリーン空燃比へ変化するときに最大値から最小値へ急変し、排ガスの空燃比がリーン空燃比からリッチ空燃比へ変化するときに最小値から最大値へ急変する。この出力値Voxsに基づき、触媒53から排出される排ガスの空燃比が取得される。以下、触媒53から排出される排ガスの空燃比を「触媒下流側空燃比oxs」とも称呼する。
【0093】
再び図1を参照すると、アクセル開度センサ78は、アクセルペダル61に設けられている。アクセル開度センサ78は、アクセルペダル61の開度に応じた信号を出力するようになっている。この信号に基づき、アクセルペダル開度Accpが取得される。
【0094】
さらに、機関10は、電子制御装置80を備えている。
電子制御装置80は、CPU81、CPU81が実行するプログラム、テーブル(マップ)および定数などをあらかじめ記憶したROM82、CPU81が必要に応じて一時的にデータを格納するRAM83、電源が投入された状態でデータを格納すると共に格納したデータを電源が遮断されている間も保持するバックアップRAM84、ならびに、ADコンバータを含むインターフェース85を有する。CPU81、ROM82、RAM83、RAM84およびインターフェース85は、互いにバスで接続されている。
【0095】
インターフェース85は、上記各センサと接続され、CPU81にそれらセンサから出力される信号を伝えるようになっている。さらに、インターフェース85は、可変吸気タイミング装置33のアクチュエータ33a、インジェクタ34、イグナイタ39およびスロットル弁アクチュエータ44aなどと接続され、CPU81の指示に応じてそれらに指示信号を送るようになっている。
【0096】
<装置の作動の概要>
以下、機関10に適用される第1装置の作動の概要について、図4を参照しながら説明する。図4は、第1装置の作動の概要を示す概略フローチャートである。
【0097】
第1装置は、触媒53に導入される排ガスの空燃比(触媒上流側空燃比abyfs)を理論空燃比stoichに一致させる「通常運転」が行われているとき、図4のステップ410において触媒53の「最大酸素吸蔵量Cmax」を取得する。そして、第1装置は、その最大酸素吸蔵量Cmaxが所定の参照値Cmaxref以下である場合、ステップ420にて「No」と判定する。そして、この場合、第1装置は、「触媒53の最大酸素吸蔵量を回復させるための運転(酸素吸蔵量回復運転)」を行う。
【0098】
具体的に述べると、第1装置は、ステップ430に進み、触媒上流側空燃比abyfsをリッチ空燃比richとする「リッチ運転」を行う。第1装置は、リッチ運転を所定の期間だけ行った後に「通常運転」を再開するとともに、ステップ440において触媒53の最大酸素吸蔵量Cmaxを再び取得する。そして、第1装置は、ステップ450において、リッチ運転を行った「後」の最大酸素吸蔵量Cmaxがリッチ運転を行う「前」の最大酸素吸蔵量Cmaxよりも小さいか否かを判定する。以下、便宜上、リッチ運転を行う前の最大酸素吸蔵量を「第1最大酸素吸蔵量」と、リッチ運転を行った後の最大酸素吸蔵量を「第2最大酸素吸蔵量」とも称呼する。
【0099】
第2最大酸素吸蔵量が第1最大酸素吸蔵量よりも「小さい」場合、第1装置は、ステップ450にて「Yes」と判定し、接続指標Aを経由してステップ430に進み、再びリッチ運転を行う。このように、第1装置は、第2最大酸素吸蔵量が第1最大酸素吸蔵量よりも「小さくない」と判定されるまで、「リッチ運転を所定の期間だけ行った後、第2最大酸素吸蔵量と第1最大酸素吸蔵量とを比較する」ことを繰り返す。
【0100】
そして、第1装置は、第2最大酸素吸蔵量が第1最大酸素吸蔵量よりも「小さくない」と判定されると(すなわち、第1装置がステップ450にて「No」と判定すると)、ステップ460に進み、触媒上流側空燃比abyfsをリーン空燃比leanとする「リーン運転」を行う。その後、第1装置は、リーン運転を所定の期間だけ行った後、リーン運転を中止するとともに通常運転を再開する。以上が第1装置の作動の概要である。
【0101】
<触媒の最大酸素吸蔵量の取得方法>
以下、第1装置における最大酸素吸蔵量Cmaxの取得方法について、より詳細に説明する。
【0102】
第1装置は、通常運転が行われているとき、後述する「最大酸素吸蔵量取得条件」が成立すれば、触媒53の最大酸素吸蔵量Cmaxを取得するための制御(以下、「最大酸素吸蔵量取得制御」とも称呼する。)を行う。この「最大酸素吸蔵量取得制御」について、図5に示すタイムチャートを参照しながら説明する。
【0103】
このタイムチャートにおける時刻t1よりも前の期間においては、「通常運転」が行われている。すなわち、この期間において、触媒上流側空燃比abyfsは、理論空燃比stoichに一致するように制御されている。図5に示した例においては、便宜上、この期間において、下流側酸素濃度センサ77の出力値Voxsはリッチ空燃比richを示す値であり、触媒53の酸素吸蔵量OSAはゼロ近傍の所定値である、と仮定されている。なお、この所定値は、時刻t1よりも前に行われていた運転に応じて定まる値である。
【0104】
時刻t1にて「最大酸素吸蔵量取得条件」が成立すると、「最大酸素吸蔵量取得制御」が開始される。具体的に述べると、第1装置は、時刻t1にて、触媒上流側空燃比abyfsがリーン空燃比leanとなるように機関10を制御する。例えば、第1装置は、時刻t1において機関10にフューエルカット運転を行わせる。
【0105】
これにより、時刻t1において触媒上流側空燃比abyfsはリーン空燃比leanとなる。このとき、リーン空燃比leanの排ガス(すなわち、理論空燃比stoichの排ガスよりも酸素濃度が高い排ガス)が触媒53に導入されるので、触媒53はこの排ガスに含まれる酸素を吸蔵する。そのため、触媒53の酸素吸蔵量OSAは、時刻t1以降において時間が経過するにつれて増大する。一方、このとき、触媒53が排ガスに含まれる酸素を吸蔵するので、触媒53から排出される排ガスには酸素が実質的に含まれない。よって、時刻t1以降においても、下流側酸素濃度センサ77の出力値Voxsはリッチ空燃比richを示す値に維持される。
【0106】
なお、実際には、触媒上流側空燃比abyfsがリーン空燃比leanとなる制御が開始されてから、リーン空燃比leanの排ガスが上流側酸素濃度センサ76に到達するまで、には所定の時間長さを要する。そのため、実際には、時刻t1からその所定の時間長さが経過した後の時点にて、触媒導入ガスの酸素濃度abyfsがリーン空燃比leanとなる。しかし、本説明においては、理解が容易になるように、触媒導入ガスの酸素濃度abyfsは時刻t1においてリーン空燃比leanとなると仮定されている。以下、同様に、触媒上流側空燃比abyfsを変更する制御が開始されてからその空燃比の排ガスが上流側酸素濃度センサ76に到達するまでの時間長さはゼロである、と仮定して説明を続ける。
【0107】
その後、時刻t2において、触媒53の酸素吸蔵量OSAは最大酸素吸蔵量Cmaxに到達する。このとき、触媒53は排ガスに含まれる酸素を吸蔵することができないので、触媒53から排出される排ガスに酸素が含まれ始める。よって、時刻t2において、下流側酸素濃度センサ77の出力値Voxsはリーン空燃比leanを表す値となる。
【0108】
時刻t2において、第1装置は、触媒上流側空燃比abyfsがリッチ空燃比richとなるように機関10を制御する。例えば、第1装置は、時刻t2において、燃料噴射量を通常運転が行われる場合の燃料噴射量よりも増大させる運転を機関10に行わせる。
【0109】
これにより、時刻t2において触媒上流側空燃比abyfsはリッチ空燃比richとなる。このとき、リッチ空燃比richの排ガス(すなわち、理論空燃比stoichの排ガスよりも酸素濃度が低い排ガス)が触媒53に導入されるので、触媒53は吸蔵されている酸素を排ガスの酸化還元反応のために放出する。そのため、触媒53の酸素吸蔵量OSAは、時刻t2以降において時間が経過するにつれて減少する。一方、このとき、触媒53に吸蔵されている酸素によって排ガスの酸化還元反応が行われるので、触媒導入ガスに含まれる酸素(未燃酸素)は、排ガスの酸化還元反応において消費されない。そのため、触媒導入ガスに含まれる酸素(未燃酸素)は、触媒53から排出される排ガス中に残存する。よって、時刻t2以降においても、下流側酸素濃度センサ77の出力値Voxsはリーン空燃比leanを示す値に維持される。
【0110】
その後、時刻t3において、触媒53の酸素吸蔵量OSAはゼロに到達する。このとき、触媒53には酸素が吸蔵されていないので、触媒導入ガスに含まれる酸素(未燃酸素)が排ガスの酸化還元反応において消費される。そのため、触媒導入ガスに含まれる酸素(未燃酸素)は、触媒53から排出される排ガス中に残存しない。よって、触媒53から排出される排ガスには実質的に酸素が含まれない。したがって、時刻t3において、排ガスの空燃比はリッチ空燃比richを表す値となる。
【0111】
時刻t3以降において、第1装置は、「通常運転」を再開する。これにより、時刻t3以降、触媒上流側空燃比abyfsは理論空燃比stoichに一致するように制御される。なお、時刻t3以降における下流側酸素濃度センサ77の出力値Voxsおよび触媒53の酸素吸蔵量OSAは、機関10の運転状態に応じた値となる。
【0112】
上記各運転を行った後、第1装置は、下記(1)式および下記(2)式に従い、触媒53の最大酸素吸蔵量Cmaxを算出する。下記(1)式において、数値0.23は標準状態における空気の酸素濃度(重量パーセント濃度)を、Fsumは単位時間Δt内における燃料噴射量Fの積算値を、abyfsaveは触媒上流側空燃比abyfsの単位時間Δt内の平均値を、stoichは理論空燃比を、表す。下記(2)式において、同式の右辺はΔO2を時刻t2から時刻t3までの範囲において時間tについて積分した値の絶対値を表す。なお、公知のように、標準状態とは、温度がゼロ℃(273.15K)であり且つ圧力が1bar(105Pa)である状態を意味する。
【0113】
ΔO2=0.23×Fsum×(abyfsave−stoich) ・・・(1)
Cmax=|Σ[t=t2,t3](ΔO2)| ・・・(2)
【0114】
上記(1)式の右辺から明らかなように、上記(1)式により、「単位時間あたりに触媒53に導入される排ガスに含まれる酸素量ΔO2を、理論空燃比の排ガスに含まれる酸素量を基準として表した値」が算出される。簡便に述べると、ΔO2は、理論空燃比の排ガスに含まれる酸素量を基準とする酸素の過剰量または不足量を表す値である。なお、酸素量が過剰であればΔO2は正の値となり、酸素量が不足していればΔO2は負の値となる。換言すると、ΔO2が正の値であればΔO2は単位時間あたりに触媒53に「吸蔵」される酸素量を表し、ΔO2が負の値であればΔO2は単位時間あたりに触媒53から「放出」される(排ガスの酸化還元反応において消費される)酸素量を表す。
【0115】
よって、上記(2)式に示すように、時刻t2(酸素吸蔵量OSAが最大値である時点)から時刻t3(酸素吸蔵量OSAがゼロである時点)までの範囲においてΔO2を時間tについて積分することにより、触媒53の最大酸素吸蔵量Cmaxが算出される。
【0116】
なお、上記説明から明らかなように、「酸素吸蔵量OSAがゼロである時点」から「酸素吸蔵量OSAが最大値である時点」までの範囲においてΔO2を時間tについて積分することによっても、触媒53の最大酸素吸蔵量Cmaxが算出され得る。以上が、第1装置における最大酸素吸蔵量Cmaxの取得方法である。
【0117】
<触媒の最大酸素吸蔵量の回復方法>
第1装置は、上述したように取得された触媒53の最大酸素吸蔵量Cmaxが所定の参照値Cmaxref以下である場合、触媒53の特性に基づいて「最大酸素吸蔵量を回復させるための運転(酸素吸蔵量回復運転)」を行う。以下、触媒53の特性および酸素吸蔵量回復運転について、より詳細に説明する。
【0118】
1.触媒の特性
上述したように、触媒53の酸素吸蔵物質に排ガスに含まれる硫黄成分(SOxなど)が吸蔵されるとともに、触媒53の触媒成分に硫黄成分(Sなど)が吸着することにより、触媒53の最大酸素吸蔵量が減少する場合がある。発明者による種々の考察および実験などによれば、「排ガスの空燃比」と「触媒の温度」と「触媒に吸着・吸蔵された硫黄成分の挙動」との間には、密接な関連があることが確認された。この関連につき、図6を参照しながらより詳細に説明する。
【0119】
図6は、排ガスの空燃比と、触媒の温度と、触媒に吸着・吸蔵された硫黄成分の主な挙動と、の関係を示す概略図である。図6に示すように、触媒53は下記(1)〜(4)に示す特性を有することが確認された。下記特性(1)〜(4)において、活性温度T0、第1温度T1、第2温度T2および第3温度T3は、触媒53を構成する物質などに応じて定まる値であって、あらかじめ実験などによって取得され得る。
【0120】
(1)触媒53の温度TempCが活性温度T0以上第1温度T1以下であるとき、排ガスの空燃比A/Fがリーン空燃比leanである場合、触媒53に導入されるガスに含まれる硫黄成分が顕著に酸素吸蔵物質OSMに吸蔵される。
(2)触媒53の温度TempCが第1温度T1以上第2温度T2以下であるとき、排ガスの空燃比A/Fがリッチ空燃比richである場合、酸素吸蔵物質OSMに吸蔵された硫黄成分が触媒成分CCに向けて効率良く移動する。このとき、触媒成分CCに向けて移動した硫黄成分は、触媒成分CCに硫黄原子(S)の状態にて吸着する。
(3)触媒53の温度TempCが第1温度T1と第2温度T2の間の第3温度T3以上であるとき、排ガスの空燃比A/Fがリーン空燃比leanである場合、触媒成分CC上に存在する硫黄成分が効率良く排ガス中に放出される。このとき、硫黄成分は、硫黄酸化物(SOx)の状態にて排ガス中に放出される。
(4)触媒53の温度TempCが第2温度T2よりも高いとき、排ガスの空燃比A/Fがリッチ空燃比richである場合、触媒成分CC上に存在する硫黄成分が効率良く排ガス中に放出される。このとき、硫黄成分は、硫化水素(H2S)の状態にて排ガス中に放出される。
【0121】
なお、特性(3)および特性(4)に示す条件(硫黄成分が触媒成分CCから排ガス中に放出される条件)が成立しないとき、排ガス中の硫黄成分は触媒成分CCに硫黄原子(S)の状態にて吸着し得ると考えられる。触媒成分CCに吸着した硫黄成分は、酸素吸蔵物質OSMから触媒成分CCに移動した硫黄成分と同様、特性(3)および特性(4)に示す条件が成立するときに触媒成分CCから排ガス中に放出されると考えられる。
【0122】
ところで、特性(1)は、触媒53の温度TempCが同関係に示される温度範囲(活性温度T0以上第1温度T1以下)に含まれる場合、触媒53の温度TempCが同温度範囲に含まれない場合よりも顕著に硫黄成分が酸素吸蔵物質OSMに吸蔵されることを意味する。すなわち、特性(1)は、触媒53の温度TempCが同温度範囲に含まれない場合に硫黄成分が酸素吸蔵物質OSMに全く吸蔵されないことを意味するものではない。
【0123】
さらに、特性(2)は、触媒53の温度TempCが同関係に示される温度範囲(第1温度T1以上第2温度T2以下)に含まれる場合、触媒53の温度TempCが同温度範囲に含まれない場合よりも効率良く酸素吸蔵物質OSMに吸蔵された硫黄成分が触媒成分CCに向けて移動されることを意味する。すなわち、特性(2)は、触媒53の温度TempCが同温度範囲に含まれない場合に酸素吸蔵物質OSMに吸蔵された硫黄成分が触媒成分CCに向けて全く移動しないことを意味するものではない。同様に、特性(3)および特性(4)は、触媒53の温度TempCがそれぞれの関係に示される温度範囲に含まれる場合、触媒53の温度TempCがそれら温度範囲に含まれない場合よりも効率良く触媒成分CC上に存在する硫黄成分が排ガス中に放出されることを意味する。すなわち、特性(3)および特性(4)は、触媒53の温度TempCがそれら温度範囲に含まれない場合に硫黄成分が触媒成分CC上から全く放出されないことを意味するものではない。
【0124】
2.酸素吸蔵量回復運転
上述したように、触媒53の担体に含まれる酸素吸蔵物質OSMに吸蔵された硫黄成分は、所定の条件(上記特性(2)を参照。)が成立するとき、酸素吸蔵物質OSMから触媒成分CCに向けて効率良く移動する。そして、触媒成分CC上に存在する硫黄成分は、所定の条件(上記特性(3)および上記特性(4)を参照。)が成立するとき、排ガス中に効率良く放出される。すなわち、酸素吸蔵物質OSMに吸蔵された硫黄成分は、酸素吸蔵物質OSMからガス中に直接には放出されず、触媒成分CCを経由して排ガス中に放出される。
【0125】
そこで、第1装置は、上記特性(1)〜(4)のうちの特に「排ガスの空燃比」と「硫黄成分の挙動」との関係に着目し、酸素吸蔵量回復運転を行う。
【0126】
具体的に述べると、第1装置は、触媒53の最大酸素吸蔵量Cmaxが所定の参照値Cmaxref以下である場合、下記(a)および下記(b)の運転を行う。
【0127】
(a)第1装置は、まず、触媒上流側空燃比abyfsをリッチ空燃比richとする「リッチ運転」を行う。第1装置は、このリッチ運転を、リッチ運転が行われる「前」の最大酸素吸蔵量(第1最大酸素吸蔵量)とリッチ運転が行われた「後」の最大酸素吸蔵量(第2最大酸素吸蔵量)とが等しくなるまで、または、第1最大酸素吸蔵量よりも第2最大酸素吸蔵量が大きくなるまで、行う。
より具体的に述べると、第1装置は、「リッチ運転を所定の期間だけ行った後に第1最大酸素吸蔵量と第2最大酸素吸蔵量とを比較する」ことを、第1最大酸素吸蔵量と第2最大酸素吸蔵量とが等しいと判定されるまで、または、第1最大酸素吸蔵量よりも第2最大酸素吸蔵量が大きいと判定されるまで、繰り返す。
【0128】
(b)第1装置は、第1最大酸素吸蔵量と第2最大酸素吸蔵量とが等しいと判定された後または第1最大酸素吸蔵量よりも第2最大酸素吸蔵量が大きいと判定された後、触媒上流側空燃比abyfsをリーン空燃比leanとする「リーン運転」を行う。
【0129】
上記運転(a)における「所定の期間」は、吸入空気量Gaに基づいて定められる。具体的に述べると、第1装置は、リッチ運転が行われている期間における吸入空気量Gaを積算するとともに、その積算量Garsum(以下、「リッチガス積算量Garsum」とも称呼する。)が所定の閾値積算量Garsumth以上となるまでリッチ運転を継続する。この「リッチ運転が開始されてから、リッチガス積算量Garsumが閾値積算量Garsumth以上となるまで、の期間」が上記「所定の期間」に相当する。
【0130】
なお、第1装置は、リッチガス積算量Garsumが閾値積算量Garsumth以上となった後、リッチ運転を中止するとともに通常運転を再開する。リッチガス積算量Garsumは、触媒53に吸着・吸蔵されている硫黄成分の量および機関10のドライバビリティなどを考慮した適値に設定され得る。
【0131】
上記運転(a)において、リッチ運転が行われると、酸素吸蔵物質OSMに吸蔵されている硫黄成分は、触媒成分CCに向けて移動するとともに触媒成分CCに吸着する。そのため、酸素吸蔵物質OSMに吸蔵されている硫黄成分の量が減少するとともに、触媒成分CCに吸着する硫黄成分の量が増大する。そのため、酸素吸蔵物質OSMが吸蔵し得る酸素の量(すなわち、内的な上限量)は増大するものの、有効触媒活性点の数(すなわち、外的な上限量)が減少する。その結果、触媒の最大酸素吸蔵量Cmaxは減少する。
【0132】
さらに、上記運転(a)において、リッチ運転が行われることが繰り返されると、リッチ運転が行われる毎に酸素吸蔵物質OSMに吸蔵されている硫黄成分が触媒成分CCに向けて移動する。そのため、リッチ運転が行われる毎に最大酸素吸蔵量Cmaxは減少する。そして、リッチ運転が行われても最大酸素吸蔵量Cmaxが減少しなくなったとき(すなわち、第1最大酸素吸蔵量と第2最大酸素吸蔵量とが等しくなるとき又は第1最大酸素吸蔵量よりも第2最大酸素吸蔵量が大きくなるとき)、酸素吸蔵物質OSMに吸蔵されていた硫黄成分の全てが既に触媒成分CCに移動している、または、硫黄成分が移動し得る領域が触媒成分CC上に存在しない、と考えられる。
【0133】
次いで、リッチ運転が行われても最大酸素吸蔵量Cmaxが減少しなくなるまでリッチ運転が行われた後、上記運転(b)におけるリーン運転が行われる。リーン運転が行われると、触媒成分CCに吸着している硫黄成分が排ガス中に放出される。これにより、有効触媒活性点の数が増大するので、触媒53の最大酸素吸蔵量Cmaxが回復する。
【0134】
第1装置は、上記運転(b)におけるリーン運転が行われている期間における吸入空気量Gaを積算するとともに、その積算量Galsum(以下、「リーンガス積算量Galsum」とも称呼する。)が所定の閾値積算量Galsumth以上となるまでリーン運転を継続する。なお、第1装置は、リーンガス積算量Galsumが閾値積算量Galsumth以上となった後、リーン運転を中止するとともに通常運転を再開する。リーンガス積算量Galsumは、触媒成分CCに吸着していた硫黄成分が十分に除去されたと判断し得る適値に設定され得る。以上が第1装置における酸素吸蔵量回復運転である。
【0135】
<空燃比制御>
次いで、第1装置の実際の作動について説明する前に、上述した通常運転、リッチ運転およびリーン運転を行うための空燃比制御について説明する。
【0136】
第1装置における空燃比制御は、上流側酸素濃度センサ76の出力値Vabyfsに基づいて得られる上流側空燃比(触媒導入ガスの空燃比)abyfsを上流側目標空燃比abyfrに一致させるための「メインフィードバック制御」、および、下流側酸素濃度センサ77の出力値Voxsを下流側目標出力値Voxsrefに一致させるための「サブフィードバック制御」から構成される。
【0137】
より具体的に述べると、まず、上流側酸素濃度センサ76の出力値Vabyfsが、「下流側酸素濃度センサ77の出力値Voxsと下流側目標出力値Voxsrefとの差である出力偏差量DVoxsを小さくするように算出されたサブフィードバック量Vafsfb」により補正される。次いで、この補正によって得られた「フィードバック制御用出力値Vabyfc」がテーブルMapabyfs(図2を参照。)に適用されることにより、「フィードバック制御用空燃比(補正検出空燃比)abyfsc」が算出される。そして、このフィードバック制御用空燃比abyfscと「上流側目標空燃比abyfr」とが一致するように、燃料噴射量Fiが制御される。以下、この空燃比制御をより詳細に説明する。
【0138】
なお、この空燃比制御においては、現時点(時点k)における所定のパラメータの値と、現時点よりも過去の時点(時点k−N)における所定のパラメータの値と、が用いられる。以下、特に注釈が付されることなくそれらパラメータの値が記載されている場合、それら値は現時点(時点k)における値を表す。
【0139】
1.メインフィードバック制御
まず、第1装置が行うメインフィードバック制御について説明する。
第1装置は、下記(4)式に従い、フィードバック制御用出力値Vabyfcを算出する。下記(4)式において、Vabyfsは上流側酸素濃度センサ76の出力値を、Vafsfbは下流側酸素濃度センサ77の出力値Voxsに基づいて算出されるサブフィードバック量を、表す。サブフィードバック量Vafsfbの算出方法は後述される。
【0140】
Vabyfc=Vabyfs+Vafsfb ・・・(4)
【0141】
次いで、第1装置は、下記(5)式に従い、上記フィードバック制御用出力値VabyfcをテーブルMapabyfs(図2を参照。)に適用することにより、フィードバック制御用空燃比abyfscを決定する。
【0142】
abyfsc=Mapabyfs(Vabyfc) ・・・(5)
【0143】
次いで、第1装置は、下記(6)式に従い、現時点(時点k)にて気筒内に吸入される空気の量である筒内吸入空気量Mc(k)を現時点(時点k)における上流側目標空燃比abyfr(k)によって除算することにより、基本燃料噴射量Fbaseを算出する。上流側目標空燃比abyfr(k)の算出方法は後述される。
【0144】
Fbase=Mc(k)/abyfr(k) ・・・(6)
【0145】
上記筒内吸入空気量Mcは、各気筒において吸気行程が行われる毎に、その時点の吸入空気量Gaと機関回転速度NEとに基づいて算出される。例えば、筒内吸入空気量Mcは、吸入空気量Gaに対して一次遅れ処理を施した値を機関回転速度NEで除算することによって算出される。この筒内吸入空気量Mcは、吸気行程が行われる各時点(時点k−N、・・・、時点k−1、時点k、時点k+1、・・・)と関連付けられたデータとして、RAM83内に格納される。なお、筒内吸入空気量Mcは、公知の吸入空気量モデル(吸気通路における空気の挙動を模して構築されたモデル)によって算出されてもよい。
【0146】
次いで、第1装置は、下記(7)式に従い、上記基本燃料噴射量Fbaseをメインフィードバック量DFiによって補正する(基本燃料噴射量Fbaseにメインフィードバック量DFiを加える)ことにより、最終燃料噴射量Fiを算出する。そして、第1装置は、最終燃料噴射量Fiだけの燃料を吸気行程が行われる気筒のインジェクタ34から噴射させる。メインフィードバック量DFiの算出方法は後述される。
【0147】
Fi=Fbase+DFi ・・・(7)
【0148】
上記(7)式におけるメインフィードバック量DFiは、以下のように算出される。
まず、第1装置は、下記(8)式に従い、現時点よりもNサイクル前の時点(時点k−N)における筒内吸入空気量Mc(k−N)を上記フィードバック制御用空燃比(補正検出空燃比)abyfscにて除算することにより、現時点よりもNサイクル前の時点において燃焼室25に供給された燃料の量である「筒内燃料供給量Fc(k−N)」を算出する。
【0149】
Fc(k−N)=Mc(k−N)/abyfsc ・・・(8)
【0150】
なお、上記(8)式においては、現時点からNサイクル前の筒内吸入空気量Mc(k−N)を(現時点における)フィードバック制御用空燃比abyfscで除算することにより、現時点からNサイクル前の筒内燃料供給量Fc(k−N)を算出している。これは、燃焼室25内で燃焼された混合気が上流側酸素濃度センサ76に到達するまでにNサイクルに相当する時間を要するからである。
【0151】
次いで、第1装置は、下記(9)式に従い、現時点からNサイクル前の筒内吸入空気量Mc(k−N)を現時点からNサイクル前の上流側目標空燃比abyfr(k−N)で除算することにより、現時点からNサイクル前の「目標筒内燃料供給量Fcr(k−N)」を算出する。
【0152】
Fcr(k−N)=Mc(k−N)/abyfr(k−N) ・・・(9)
【0153】
次いで、第1装置は、下記(10)式に従い、現時点からNサイクル前の目標筒内燃料供給量Fcr(k−N)から筒内燃料供給量Fc(k−N)を減算することにより、「筒内燃料供給量偏差DFc」を算出する。この筒内燃料供給量偏差DFcは、「Nサイクル前の時点で筒内に供給された燃料の過不足分」を表す。
【0154】
DFc=Fcr(k−N)−Fc(k−N) ・・・(10)
【0155】
次いで、第1装置は、下記(11)式に従い、メインフィードバック量DFiを算出する。下記(11)式において、Gpはあらかじめ設定された比例ゲインを、Giはあらかじめ設定された積分ゲインを、KFBは所定の係数を、SDFcは筒内燃料供給量偏差DFcの積分値を、表す。
【0156】
DFi=(Gp・DFc+Gi・SDFc)・KFB ・・・(11)
【0157】
上記(10)式および上記(11)式に示すように、第1装置は、フィードバック制御用空燃比abyfscと上流側目標空燃比abyfrとに基づく比例積分制御によってメインフィードバック量DFiを算出する。このメインフィードバック量DFiは、上記(7)式に示すように基本燃料噴射量Fbaseに加算される。これにより、最終燃料噴射量Fiが算出される。以上が第1装置が行うメインフィードバック制御である。
【0158】
2.サブフィードバック制御
次いで、第1装置が行うサブフィードバック制御について説明する。
第1装置は、下記(12)式に従い、下流側目標出力値Voxsrefから現時点の下流側酸素濃度センサ77の出力値Voxsを減算することにより、出力偏差量DVoxsを算出する。なお、第1装置においては、触媒53の排ガス浄化性能を考慮し、下流側目標出力値Voxsrefとして「理論空燃比よりもわずかにリッチ側の空燃比に対応する値」が採用される。
【0159】
DVoxs=Voxsref−Voxs ・・・(12)
【0160】
次いで、第1装置は、下記(13)式に従い、サブフィードバック量Vafsfbを算出する。下記(13)式において、Kpはあらかじめ設定された比例ゲイン(比例定数)を、Kiはあらかじめ設定された積分ゲイン(積分定数)を、SDVoxsは出力偏差量DVoxsの積分値を、表す。
【0161】
Vafsfb=Kp・DVoxs+Ki・SDVoxs ・・・(13)
【0162】
上記(12)式および上記(13)式に示すように、第1装置は、下流側酸素濃度センサ77の出力値Voxsと下流側目標出力値Voxsrefとに基づく比例積分制御によってサブフィードバック量Vafsfbを算出する。このサブフィードバック量Vafsfbは、上記(4)式に示すように、上流側酸素濃度センサ76の出力値Vabyfsに加算される。これにより、フィードバック制御用出力値Vabyfcが算出される。以上が第1装置が行うサブフィードバック制御である。
【0163】
3.空燃比制御の総括
上述したように、第1装置は、上流側酸素濃度センサ76の出力値Vabyfsにサブフィードバック量Vafsfbを加算することによって出力値Vabyfsを補正し、この補正によって得られたフィードバック制御用出力値Vabyfc(=Vabyfs+Vafsfb)に基づいてフィードバック制御用空燃比abyfscを算出する。そして、第1装置は、算出されたフィードバック制御用空燃比abyfscと、上流側目標空燃比abyfrと、が一致するように、燃料噴射量Fiを算出する。
【0164】
その結果、上流側空燃比(触媒導入ガスの空燃比)abyfsが上流側目標空燃比abyfrに近づくとともに、下流側酸素濃度センサ77の出力値Voxsが下流側目標出力値Voxsrefに近づく。換言すると、触媒53の上流側の空燃比および下流側の空燃比の双方が、それぞれの目標値に近づけられる。以上が第1装置が行う空燃比制御である。
【0165】
<実際の作動>
以下、第1装置の実際の作動について説明する。
第1装置において、CPU81は、図7〜図11にフローチャートによって示した各ルーチンを所定のタイミング毎に繰り返し実行するようになっている。CPU81は、これらルーチンにおいて、リッチ運転フラグXRICH、リーン運転フラグXLEANおよび回復運転実行中フラグXRECを用いる。
【0166】
リッチ運転フラグXRICHは、その値が「0」であるとき、触媒53の状態がリッチ運転を行うべき状態でないことを表す。リッチ運転フラグXRICHは、その値「1」であるとき、触媒53の状態がリッチ運転を行うべき状態であることを表す。
【0167】
リーン運転フラグXLEANは、その値が「0」であるとき、触媒53の状態がリーン運転を行うべき状態でないことを表す。リーン運転フラグXLEANは、その値「1」であるとき、触媒53の状態がリーン運転を行うべき状態であることを表す。
【0168】
回復運転実行中フラグXRECは、その値が「0」であるとき、酸素吸蔵量回復運転が実行中でないことを表す。回復運転実行中フラグXRECは、その値が「1」であるとき、酸素吸蔵量回復運転が実行中であることを表す。
【0169】
リッチ運転フラグXRICHの値、リーン運転フラグXLEANの値および回復運転実行中フラグXRECの値は、機関10を搭載した車両の工場出荷時およびサービス点検実施時などにおいて触媒53に異常がないことが確認された際に電子制御装置80に対して所定の操作がなされたとき、初期値としての「0」に設定されるようになっている。
【0170】
以下、CPU81が実行する各ルーチンについて説明する。
まず、現時点において、リッチ運転フラグXRICHの値、リーン運転フラグXLEANの値および回復運転実行中フラグXRECの値の全ては「0」に設定されていると仮定する。以下、便宜上、この仮定を「初期設定仮定」とも称呼する。
【0171】
CPU81は、機関10が始動されると、所定時間が経過する毎に、図7にフローチャートによって示した「触媒温度推定ルーチン」を繰り返し実行するようになっている。CPU81は、このルーチンにより、触媒の温度TempCを取得する。
【0172】
具体的に述べると、CPU81は、所定のタイミングにて図7のステップ700から処理を開始してステップ710に進み、現時点が機関10の始動直後であるか否かを判定する。現時点が機関10の始動直後であれば、CPU81は、ステップ710にて「Yes」と判定してステップ720に進む。これに対し、現時点が機関10の始動直後でなければ、CPU81は、ステップ710にて「No」と判定してステップ730に進む。ここで、「現時点が機関10の始動直後である」と仮定して、説明を続ける。
【0173】
上記仮定に従うと、CPU81は、ステップ720に進む。CPU81は、ステップ720にて、「始動時冷却水温THWSと、触媒温度TempCと、の関係」をあらかじめ定めた始動時触媒温度推定関数f(THWS)に、現時点における冷却水温THWSを適用することにより、現時点における触媒の温度TempCを取得(推定)する。
【0174】
始動時触媒温度推定関数f(TWS)において、触媒の温度TempCは、始動時冷却水温THWSが増大するにつれて増大するように定められる。
【0175】
次いで、CPU81は、ステップ730に進む。CPU81は、ステップ730にて、「筒内吸入空気量Mcと、機関回転速度NEと、排気温度Texと、の関係」をあらかじめ定めた排気温度テーブルMapTex(Mc,NE)に現時点における筒内吸入空気量Mcおよび機関回転速度NEを適用することにより、現時点における排気温度Texを取得(推定)する。
【0176】
次いで、CPU81はステップ740に進む。CPU81は、ステップ740にて、下記(14)式に従って触媒の温度TempCを更新・取得する。下記(14)式において、αは0よりも大きく且つ1よりも小さい定数を、TempC(k)は更新される前の触媒の温度TempCを、TempC(k+1)は更新された後の触媒の温度TempCを、表す。
【0177】
TempC(k+1)=α・TempC(k)+(1−α)・Tex ・・・(14)
【0178】
ステップ740の処理を実行した後、CPU81は、ステップ795に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0179】
さらに、CPU81は、所定時間が経過する毎に、図8にフローチャートによって示した「第1最大酸素吸蔵量回復ルーチン」を繰り返し実行するようになっている。CPU81は、このルーチンにより、触媒53の最大酸素吸蔵量Cmaxを取得するとともに、取得された最大酸素吸蔵量Cmaxが参照値Cmaxref以下である場合、最大酸素吸蔵量を回復させるために如何なる運転を実行するか(すなわち、リッチ運転およびリーン運転のいずれを実行するか)を決定する。
【0180】
具体的に述べると、CPU81は、所定のタイミングにて図8のステップ800から処理を開始してステップ805に進み、リーン運転フラグXLEANの値が「0」であるか否かを判定する。上記初期設定仮定に従うと、現時点におけるリーン運転フラグXLEANの値は「0」であるので、CPU81は、ステップ805にて「Yes」と判定してステップ810に進む。
【0181】
CPU81は、ステップ810にて、リッチ運転フラグXRICHの値が「0」であるか否かを判定する。上記初期設定仮定に従うと、現時点におけるリッチ運転フラグXRICHの値は「0」であるので、CPU81は、ステップ810にて「Yes」と判定してステップ815に進む。
【0182】
CPU81は、ステップ815にて、後述する「最大酸素吸蔵量取得条件」が成立しているとき、上記(1)式および上記(2)式に従って現時点における触媒53の最大酸素吸蔵量Cmaxを取得する。なお、CPU81は、最大酸素吸蔵量取得条件が成立しないとき、同条件が成立するまで本ステップにて待機する。
【0183】
最大酸素吸蔵量取得条件について具体的に述べると、CPU81は、以下の条件a−1〜a−3の全てが成立したとき、最大酸素吸蔵量取得条件が成立すると判定する。換言すると、CPU81は、条件a−1〜a−3のうちの少なくとも1つが成立しないとき、最大酸素吸蔵量取得条件が成立しないと判定する。
【0184】
(条件a−1)冷却水の温度THWが所定の閾値以上である。
(条件a−2)スロットル弁開度TAの単位時間あたりの変化量が所定の閾値以下である。
(条件a−3)図示しない車速センサによって取得される車速の単位時間あたりの変化量が所定の閾値以下である。
【0185】
条件a−1に係る所定の閾値は、機関10の暖機が完了していると判断し得る適値に設定される。条件a−2および条件a−3に係る所定の閾値は、機関10が定常運転されていると判断し得る適値に設定される。
【0186】
以下、現時点において最大酸素吸蔵量取得条件が「成立している」と仮定して説明を続ける。この仮定に従うと、CPU81は、ステップ815にて触媒53の最大酸素吸蔵量Cmaxを取得して、ステップ820に進む。CPU81は、ステップ820にて、ステップ815にて取得された最大酸素吸蔵量Cmaxを、「現時点の最大酸素吸蔵量Cmaxnow」に格納する。
【0187】
次いで、CPU81は、ステップ825に進む。CPU81は、ステップ825にて、回復運転実行中フラグXRECの値が「0」であるか否かを判定する。上記初期設定仮定に従うと、現時点における回復運転実行中フラグXRECの値は「0」であるので、CPU81は、ステップ825にて「Yes」と判定してステップ830に進む。
【0188】
次いで、CPU81は、ステップ830に進む。CPU81は、ステップ830にて、現時点の最大酸素吸蔵量Cmaxnowが参照値Cmaxrefよりも大きいか否かを判定する。参照値Cmaxrefは、酸素吸蔵量回復運転を行う必要があると判断し得る適値に設定される。参照値Cmaxrefは、例えば、「新品状態の触媒53が使用され始めてから現時点までの期間において触媒53に導入された排ガスの総量と、最大酸素吸蔵量の参照値Cmaxrefと、の関係」をあらかじめ定めたマップなどに基づいて決定され得る。
【0189】
ここで、第1装置が実行する運転を以下の2つの場合に場合を分けて説明する。
(場合1)触媒53の最大酸素吸蔵量Cmaxが参照値Cmaxrefよりも大きい場合
(場合2)触媒53の最大酸素吸蔵量Cmaxが参照値Cmaxref以下である場合
以下、説明を続ける。
【0190】
(場合1)触媒53の最大酸素吸蔵量Cmaxが参照値Cmaxrefよりも大きい場合
この場合、CPU81は、ステップ830にて「Yes」と判定してステップ895に進み、本ルーチンを一旦終了する。
【0191】
さらに、CPU81は、任意の気筒のクランク角度が吸気行程前の所定クランク角度(例えば、排気上死点前90度クランク角)θfに一致する毎に、図9にフローチャートによって示した「燃料噴射制御ルーチン」を繰り返し実行するようになっている。CPU81は、このルーチンにより、最終燃料噴射量Fiを決定するとともに、その最終燃料噴射量Fiだけの燃料をインジェクタ34から噴射させる。以下、便宜上、クランク角が上記所定クランク角θfに一致する吸気行程前の気筒を、「燃料噴射気筒」とも称呼する。
【0192】
具体的に述べると、CPU81は、所定のタイミングにて図9のステップ900から処理を開始してステップ910に進み、リーン運転フラグXLEANの値が「0」であるか否かを判定する。現時点におけるリーン運転フラグXLEANの値は「0」であるので、CPU81は、ステップ910にて「Yes」と判定してステップ920に進む。
【0193】
CPU81は、ステップ920にて、リッチ運転フラグXRICHの値が「0」であるか否かを判定する。現時点におけるリッチ運転フラグXRICHの値は「0」であるので、CPU81は、ステップ920にて「Yes」と判定してステップ930に進む。
【0194】
CPU81は、ステップ930にて、上流側目標空燃比abyfr(k)に「理論空燃比stoich」を格納する。次いで、CPU81は、ステップ930に続くステップ940〜ステップ970の処理を順に実行する。ステップ940〜ステップ970にて実行される処理は、以下の通りである。
【0195】
ステップ940:CPU81は、吸入空気量Gaと機関回転速度NEとに基づき、燃料噴射気筒に吸入される空気の量である筒内吸入空気量Mc(k)を取得する。
ステップ950:CPU81は、上記(6)式に従い、基本燃料噴射量Fbaseを算出する。
ステップ960:CPU81は、上記(7)式に従い、基本燃料噴射量Fbaseをメインフィードバック量DFiによって補正することにより、最終燃料噴射量Fiを算出する。
ステップ970:CPU81は、最終燃料噴射量Fiの燃料を噴射するよう、燃料噴射気筒に設けられているインジェクタ34に指示を与える。
【0196】
ステップ970の処理を実行した後、CPU81は、ステップ995に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0197】
上述した各処理によって最終燃料噴射量Fiが算出されるとともに、その最終燃料噴射量Fiだけの燃料が燃料噴射気筒に噴射される。これにより、上流側目標空燃比abyfrが理論空燃比stoichに設定された「通常運転」が実行される。
【0198】
さらに、CPU81は、任意の気筒のクランク角度が吸気行程前の所定クランク角度θgに一致する毎に、図10にフローチャートによって示した「メインフィードバック量算出ルーチン」を繰り返し実行するようになっている。CPU81は、このルーチンにより、メインフィードバック量DFiを算出する。
【0199】
具体的に述べると、CPU81は、所定のタイミングにて図10のステップ1000から処理を開始してステップ1005に進み、「触媒上流側空燃比abyfsを上流側目標空燃比abyfrに一致させるフィードバック制御を行い得る条件(メインフィードバック制御条件)」が成立しているか否かを判定する。より具体的に述べると、CPU81は、ステップ1005にて、下記条件b−1〜b−5の全てが成立したとき、メインフィードバック制御条件が成立すると判定する。換言すると、CPU81は、下記条件b−1〜b−5のうちの少なくとも1つが成立しないとき、メインフィードバック制御条件が成立しないと判定する。
【0200】
(条件b−1)触媒の温度TempCが所定の閾値以上である。
(条件b−2)冷却水温THWが所定の閾値以上である。
(条件b−3)吸入空気量Gaが所定の閾値以下ある。
(条件b−4)上流側酸素濃度センサ76が活性化している。
(条件b−5)最終燃料噴射量Fiをゼロとする運転(フューエルカット運転)が実行中ではない。
【0201】
条件b−1に係る所定の閾値は、触媒53が活性化していると判断し得る適値に設定される。条件b−2に係る所定の閾値は、機関10の暖機が完了していると判断し得る適値に設定される。条件b−3に係る所定の閾値は、機関10の負荷が過大ではないと判断し得る適値に設定される。条件b−4は、メインフィードバック制御にて上流側酸素濃度センサ76の出力値Vabyfsが用いられるために設けられている条件である。条件b−5は、フューエルカット運転中は燃料噴射量を変化させることができないために設けられている条件である。よって、例えば、機関10が暖機運転されている期間中およびフューエルカット運転が実行されている期間中などにおいては、上記メインフィードバック制御条件は成立しない。
【0202】
現時点においてメインフィードバック制御条件が「成立しない」場合、CPU81は、ステップ1005にて「No」と判定してステップ1010に進む。CPU81は、ステップ1010にて、メインフィードバック量DFiにゼロを格納する。
【0203】
次いで、CPU81は、ステップ1015に進む。CPU81は、ステップ1015にて、筒内燃料供給量偏差DFcの積分値SDFcにゼロを格納する。その後、CPU81は、ステップ1095に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0204】
このように、メインフィードバック制御条件が成立しない場合、メインフィードバック量DFiはゼロに設定される。そのため、この場合、上述した「メインフィードバック量DFiによる基本燃料噴射量Fbaseの補正」は行われない(図9のステップ960を参照。)。
【0205】
次いで、CPU81は、任意の気筒のクランク角度が吸気行程前の所定クランク角度θhに一致する毎に、図11にフローチャートによって示した「サブフィードバック量算出ルーチン」を繰り返し実行するようになっている。CPU81は、このルーチンにより、サブフィードバック量Vafsfbを算出する。
【0206】
具体的に述べると、CPU81は、所定のタイミングにて図11のステップ1100から処理を開始してステップ1110に進み、「下流側酸素濃度センサ77の出力値Voxsを下流側目標出力値Voxsrefに一致させるサブフィードバック制御を行い得る条件(サブフィードバック制御条件)」が成立しているか否かを判定する。より具体的に述べると、CPU81は、ステップ1110にて、下記条件c−1〜c−3の全てが成立したとき、サブフィードバック制御条件が成立すると判定する。換言すると、CPU81は、下記条件c−1〜c−3のうちの少なくとも1つが成立しないとき、サブフィードバック制御条件が成立しないと判定する。
【0207】
(条件c−1)上記メインフィードバック条件が成立している。
(条件c−2)上流側目標空燃比abyfrが理論空燃比stoichに設定されている。
(条件c−3)下流側酸素濃度センサ77が活性化している。
【0208】
条件c−1および条件c−2は、サブフィードバック制御は通常運転が実行されている際に上記メインフィードバック制御と並行して実行される制御であるために設けられている条件である。条件c−3は、サブフィードバック制御にて下流側酸素濃度センサ77の出力値Voxsが用いられるために設けられている条件である。よって、例えば、機関10が暖機運転されている期間中、フューエルカット運転が実行されている期間中、ならびに、リッチ運転およびリーン運転が実行されている期間中などにおいては、上記サブフィードバック制御条件は成立しない。
【0209】
上述したように現時点においてメインフィードバック制御条件が成立していないので、サブフィードバック制御条件は成立しない(条件c−1を参照。)。そのため、CPU81は、ステップ1110にて「No」と判定してステップ1120に進む。CPU81は、ステップ1120にて、サブフィードバック量Vafsfbにゼロを格納する。
【0210】
次いで、CPU81は、ステップ1020に進む。CPU81は、ステップ1020にて、出力偏差量DVoxsの積分値SDVoxsにゼロを格納する。その後、CPU81は、ステップ1195に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0211】
このように、サブフィードバック制御条件が成立しない場合、サブフィードバック量Vafsfbはゼロに設定される。そのため、この場合、後述する「サブフィードバック量Vafsfbによる上流側酸素濃度センサ76の出力値Vabyfsの補正」は行われない(図10のステップ1020を参照。)。
【0212】
したがって、現時点においてメインフィードバック制御条件が成立しない場合、メインフィードバック量DFiがゼロに設定されるとともに、サブフィードバック量Vafsfbがゼロに設定される。そのため、吸入空気量Ga、機関回転速度NEおよび上流側目標空燃比abyfrに基づいて定められる基本燃料噴射量Fbaseの燃料が、燃料噴射気筒に噴射される(図9のステップ940〜ステップ970を参照。)。
【0213】
これに対し、現時点においてメインフィードバック制御条件が「成立する」場合、CPU81は、図10のステップ1000から処理を開始してステップ1005に進むと、ステップ1005にて「Yes」と判定する。次いで、CPU81は、ステップ1005に続くステップ1020〜ステップ1050の処理をこの順に実行する。ステップ1020〜ステップ1050にて実行される処理は、以下の通りである。
【0214】
ステップ1020:CPU81は、上記(4)式に従い、フィードバック制御用出力値Vabyfcを算出する。なお、上述したように、現時点におけるサブフィードバック量Vafsfbはゼロである。
ステップ1025:CPU81は、上記(5)式に従い、フィードバック制御用空燃比abyfscを決定する。
ステップ1030:CPU81は、上記(8)式に従い、現時点よりもNサイクル前の時点における筒内燃料供給量Fc(k−N)を算出する。
ステップ1035:CPU81は、上記(9)式に従い、現時点よりもNサイクル前の時点における目標筒内燃料供給量Fcr(k−N)を算出する。
ステップ1040:CPU81は、上記(10)式に従い、筒内燃料供給量偏差DFcを算出する。
ステップ1045:CPU81は、上記(11)式に従い、メインフィードバック量DFiを算出する。第1装置において、係数KFBとして「1」が採用される。筒内燃料供給量偏差DFcの積分値SDFcは、現時点までの筒内燃料供給量偏差DFcの値が積算された値である(下記ステップ1050を参照。)。
ステップ1050:CPU81は、現時点における筒内燃料供給量偏差DFcの積分値SDFcに上記ステップ1040にて取得された筒内燃料供給量偏差DFcを加算することにより、新たな筒内燃料供給量偏差の積分値SDFcを算出(更新)する。
【0215】
ステップ1050の処理を実行した後、CPU81は、ステップ1095に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0216】
上述した各処理により、メインフィードバック量DFiが比例積分制御により算出される(ステップ1045を参照。)。そして、このメインフィードバック量DFiを用いて最終燃料噴射量Fiが補正される(図9のステップ960を参照。)。
【0217】
さらに、CPU81は、所定のタイミングにて図11のステップ1100から処理を開始すると、ステップ1110に進む。現時点にてサブフィードバック制御条件が成立しなければ、CPU81は、ステップ1110にて「No」と判定し、ステップ1120およびステップ1130を経由してステップ1195に進み、本ルーチンを一旦終了する。この場合、上述したように、サブフィードバック量Vafsfbは算出されない。
【0218】
これに対し、現時点にてサブフィードバック制御条件が成立していれば、CPU81は、ステップ1110にて「Yes」と判定してステップ1140に進む。以下、現時点にてサブフィードバック制御条件が「成立している」と仮定して説明を続ける。
【0219】
上記仮定に従うと、CPU81は、ステップ1110に続くステップ1140〜ステップ1160の処理をこの順に実行する。ステップ1140〜ステップ1160にて実行される処理は、以下の通りである。
【0220】
ステップ1140:CPU81は、上記(12)式に従い、出力偏差量DVoxsを算出する。第1装置においては、触媒53の排ガス浄化性能を考慮し、下流側目標出力値Voxsrefとして理論空燃比よりもわずかにリッチ側の空燃比に対応する値が採用される。
ステップ1150:CPU81は、上記(13)式に従い、サブフィードバック量Vafsfbを算出する。第1装置において、比例ゲインKpおよび積分ゲインKiとして、あらかじめ定められた適値が採用される。
ステップ1160:CPU81は、現時点における出力偏差量の積分値SDVoxsに上記ステップ1140にて取得した出力偏差量DVoxsを加算することにより、新たな出力偏差量の積分値SDVoxsを算出(更新)する。
【0221】
ステップ1160の処理を実行した後、CPU81は、ステップ1195に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0222】
上述した各処理により、サブフィードバック量Vafsfbが比例積分制御によって算出される(ステップ1150を参照。)。そして、このサブフィードバック量Vafsfbを用いて上流側酸素濃度センサ76の出力値Vabyfsが補正される(図10のステップ1020を参照。)。さらに、補正されたフィードバック制御用出力値Vabyfcに基づいてメインフィードバック量DFiが算出されるとともに(図10のステップ1045を参照。)、このメインフィードバック量DFiを用いて最終燃料噴射量Fiが補正される(図9のステップ960を参照。)。
【0223】
以上、説明したように、触媒53の最大酸素吸蔵量Cmaxが参照値Cmaxrefよりも小さい場合、触媒上流側空燃比abyfsを理論空燃比stoichに一致させる「通常運転」が行われる。
【0224】
(場合2)触媒53の最大酸素吸蔵量Cmaxが参照値Cmaxref以下である場合
この場合、CPU81は、図8のステップ830に進むと、ステップ830にて「No」と判定してステップ835に進む。
【0225】
CPU81は、ステップ835にて、回復運転実行中フラグXRECの値に「1」を格納する。
【0226】
次いで、CPU81は、ステップ840に進む。CPU81は、ステップ840にてリッチ運転フラグXRICHの値に「1」を格納する。
【0227】
次いで、CPU81は、ステップ845に進む。CPU81は、ステップ845にて、後述する「リッチ運転」が開始された時点から現時点までに機関10に導入された吸入空気量Gaの積算量(リッチガス積算量Garsum)が、所定の閾値積算量Garsumth以上であるか否かを判定する。
【0228】
上記リッチガス積算量Garsumは、機関10が始動される際に初期値としてのゼロに設定されるようになっている。さらに、上記リッチガス積算量Garsumは、触媒53に吸着・吸蔵されている硫黄成分の量および機関10のドライバビリティなどを考慮した適値に設定されている。
【0229】
現時点は未だリッチ運転が行われていないので、リッチガス積算量Garsumは上記初期値(ゼロ)である。そのため、CPU81は、ステップ845にて「No」と判定してステップ895に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0230】
このとき、リッチ運転フラグXRICHの値が「0」から「1」に変更されたので(上記ステップ840)、CPU81は、所定のタイミングにて図9のステップ900から処理を開始すると、ステップ910を経由してステップ920に進み、ステップ920にて「No」と判定してステップ980に進む。
【0231】
CPU81は、ステップ980にて、上流側目標空燃比abyfr(k)にリッチ空燃比richを格納する。
【0232】
次いで、CPU81は、ステップ980に続くステップ940〜ステップ970の処理を順に実行し、ステップ995に進んで本ルーチンを一旦終了する。これら処理により、最終燃料噴射量Fiの燃料が燃料噴射気筒に噴射される。これにより、上流側目標空燃比abyfrがリッチ空燃比richに設定された「リッチ運転」が開始される。
【0233】
さらに、CPU81は、図10に示すルーチンおよび図11に示すルーチンを実行し、空燃比のフィードバック制御を行う。ただし、このとき、サブフィードバック制御条件は成立しないので(条件c−2を参照。)、サブフィードバック量Vafsfbはゼロに設定される(図11のステップ1110〜ステップ1130を参照。)。そして、図10に示すルーチンによって算出されるメインフィードバック量DFiにより、最終燃料噴射量Fiが補正される(図9のステップ960を参照。)。その結果、触媒上流側空燃比abyfsがリッチ空燃比richに一致する。すなわち、リッチ運転が継続される。
【0234】
リッチ運転が継続されると、酸素吸蔵物質OSMに吸蔵されている硫黄成分は、時間が経過するにつれて触媒成分CCに向けて移動する。リッチ運転が実行されている期間、CPU81は、図示しない「リッチガス積算ルーチン」を実行することにより、リッチ運転が開始された時点から現時点までに機関10に導入された吸入空気量Gaを積算する。これにより、CPU81は、リッチガス積算量Garsumを取得する。
【0235】
CPU81は、リッチ運転が実行されている期間中の所定のタイミングにて図8のステップ800から処理を開始すると、現時点におけるリーン運転フラグXLEANの値は「0」であるので、ステップ805を経過してステップ810に進む。そして、現時点におけるリッチ運転フラグXRICHの値は「1」であるので、CPU81は、ステップ810にて「No」と判定してステップ845に進む。
【0236】
このとき、現時点におけるリッチガス積算量Garsumが閾値積算量Garsumthよりも小さければ、CPU81は、ステップ845にて「No」と判定し、ステップ895に進んで本ルーチンを一旦終了する。その結果、上述したように図9〜図11のルーチンに示す処理が実行され、リッチ運転が継続される。
【0237】
これに対し、現時点におけるリッチガス積算量Garsumが閾値積算量Garsumth以上であれば、CPU81は、図8のステップ845にて「Yes」と判定してステップ850に進む。
【0238】
CPU81は、ステップ850にて、リッチ運転フラグXRICHの値に「0」を格納してステップ855に進む。
【0239】
CPU81は、ステップ855にて、現時点の最大酸素吸蔵量Cmaxnowを「リッチ運転前の最大酸素吸蔵量Cmaxold」に格納する。その後、CPU81は、ステップ895に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0240】
このとき、リッチ運転フラグXRICHの値が「1」から「0」に変更されたので(上記ステップ850)、CPU81は、所定のタイミングにて図9のステップ900から処理を開始すると、ステップ910を経由してステップ920に進み、ステップ920にて「Yes」と判定してステップ930に進む。CPU81は、ステップ930にて上流側目標空燃比abyfr(k)に理論空燃比stoichを設定する。次いで、CPU81は、ステップ940〜ステップ970の処理を順に実行する。これにより、リッチ運転が中止されるとともに、「通常運転」が再開される。
【0241】
このように、「通常運転」が実行されているときに触媒53の最大酸素吸蔵量Cmaxが参照値Cmaxref以下である場合、「リッチ運転」が開始される。さらに、リッチガス積算量Garsumが閾値積算量Garsumth以上となるまで、リッチ運転が継続される。そして、リッチガス積算量Garsumが閾値積算量Garsumth以上となると(すなわち、閾値積算量Garsumthだけの排ガスが触媒53に流入すると)、リッチ運転は中止され、通常運転が再開される。これにより、触媒53の酸素吸蔵物質OSMに吸蔵された硫黄成分の少なくとも一部が触媒成分CCに向けて移動する。
【0242】
なお、リッチガス積算量Garsumの値は、リッチ運転が中止されるときに上記「リッチガス積算ルーチン」によってゼロに設定される(リセットされる)ようになっている。
【0243】
上述したようにリッチ運転が行われた後に通常運転が再開されたとき、CPU81は、所定のタイミングにて図8のステップ800から処理を開始すると、リーン運転フラグXLEANの値およびリッチ運転フラグXRICHの値の双方が「0」であるので、ステップ805およびステップ810を経由してステップ815に進む。そして、CPU81は、ステップ815にて現時点における(すなわち、リッチ運転が行われた後の)最大酸素吸蔵量Cmaxを取得する。次いで、CPU81は、ステップ820にてその最大酸素吸蔵量Cmaxを「現時点の最大酸素吸蔵量Cmaxnow」に格納し、ステップ825に進む。現時点における回復運転実行中フラグXRECの値は「1」であるので、CPU81は、ステップ825にて「No」と判定し、ステップ860に進む。
【0244】
CPU81は、ステップ860にて、「現時点の(リッチ運転後の)最大酸素吸蔵量Cmaxnow」が「リッチ運転前の最大酸素吸蔵量Cmaxold」よりも小さいか否かを判定する。
【0245】
ここで、第1装置が実行する運転を以下の2つの場合に場合を分けて説明する。
(場合2−1)現時点の最大酸素吸蔵量Cmaxnowがリッチ運転前の最大酸素吸蔵量Cmaxoldよりも小さい場合
(場合2−2)現時点の最大酸素吸蔵量Cmaxnowがリッチ運転前の最大酸素吸蔵量Cmaxoldよりも小さくない場合
以下、説明を続ける。
【0246】
(場合2−1)現時点の最大酸素吸蔵量Cmaxnowがリッチ運転前の最大酸素吸蔵量Cmaxoldよりも小さい場合
上述したように、リッチ運転が行われると、酸素吸蔵物質OSMに吸蔵されている硫黄成分が触媒成分CCに向けて移動して触媒成分CCに吸着することにより、触媒53の最大酸素吸蔵量Cmaxが減少する。よって、リッチ運転を行っても最大酸素吸蔵量Cmaxが減少しない場合(すなわち、現時点の最大酸素吸蔵量Cmaxnowがリッチ運転前の最大酸素吸蔵量Cmaxoldよりも「小さくない」場合)、触媒成分CCに移動可能な最大の量の硫黄成分が酸素吸蔵物質OSMから触媒成分CCに移動された、と考えられる。逆に言うと、現時点の最大酸素吸蔵量Cmaxnowがリッチ運転前の最大酸素吸蔵量Cmaxoldよりも「小さい」場合、酸素吸蔵物質OSMから触媒成分CCにさらに硫黄成分が移動可能である、と考えられる。
【0247】
そこで、この場合、CPU81は、再び「リッチ運転」を行う。具体的に述べると、CPU81は、ステップ860にて「Yes」と判定してステップ840に進む。CPU81は、ステップ840にてリッチ運転フラグXRICHの値に「1」を格納する。次いで、CPU81は、ステップ845に進む。現時点におけるリッチガス積算量Garsumの値は前回のリッチ運転の後にリセットされたゼロであるので、CPU81は、ステップ845にて「No」と判定し、ステップ895に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0248】
このとき、リッチ運転フラグXRICHの値が「0」から「1」に変更されたので(上記ステップ840)、CPU81は、所定のタイミングにて図9のステップ900から処理を開始すると、ステップ910およびステップ920を経由してステップ980に進み、上流側目標空燃比abyfr(k)にリッチ空燃比richを格納する。
【0249】
次いで、CPU81は、ステップ980に続くステップ940〜ステップ970の処理を順に実行し、ステップ995に進んで本ルーチンを一旦終了する。これにより、「リッチ運転」が開始される。さらに、CPU81は、図10に示すルーチンおよび図11に示すルーチンを実行する。これにより、リッチ運転が継続される。
【0250】
その後、CPU81は、上記同様、リッチガス積算量Garsumが閾値積算量Garsumth以上となるまでリッチ運転を継続し、リッチガス積算量Garsumが閾値積算量Garsumth以上となるとリッチ運転を中止して通常運転を再開する。
【0251】
通常運転が再開されると、CPU81は、所定のタイミングにて図8のステップ800を実行し、ステップ860にて「現時点の(リッチ運転後の)最大酸素吸蔵量Cmaxnow」が「リッチ運転前の最大酸素吸蔵量Cmaxold」よりも小さいか否かを再び判定する。そして、現時点の最大酸素吸蔵量Cmaxnowがリッチ運転前の最大酸素吸蔵量Cmaxoldよりも「小さい」場合、CPU81は、上記同様、再びリッチ運転を行う。
【0252】
このように、CPU81は、「リッチ運転を所定の期間(リッチガス積算量Garsumが閾値積算量Garsumth以上となるまでの期間)だけ行った後、現時点の最大酸素吸蔵量Cmaxnowとリッチ運転前の最大酸素吸蔵量Cmaxoldとを比較すること」を繰り返す。
【0253】
リッチ運転は、現時点の最大酸素吸蔵量Cmaxnowがリッチ運転前の最大酸素吸蔵量Cmaxoldよりも「小さくない」と判定されるまで(すなわち、図8のステップ860にて「No」と判定されるまで)、繰り返される。以下、現時点の最大酸素吸蔵量Cmaxnowがリッチ運転前の最大酸素吸蔵量Cmaxoldよりも「小さくない」と判定された場合(上記場合(2−2)に相当。)について説明する。
【0254】
(場合2−2)現時点の最大酸素吸蔵量Cmaxnowがリッチ運転前の最大酸素吸蔵量Cmaxoldよりも小さくない場合
上述したようにリッチ運転が繰り返されると、リッチ運転が行われる毎に酸素吸蔵物質OSMに吸蔵されている硫黄成分が触媒成分CCに向けて移動する。そして、この場合2−2においては、触媒成分CCに移動可能な最大の量の硫黄成分が酸素吸蔵物質OSMから触媒成分CCに移動されている、と考えられる。
【0255】
そこで、この場合、CPU81は「リーン運転」を行う。具体的に述べると、CPU81は、図8のステップ860に進むと、ステップ860にて「No」と判定してステップ865に進む。
【0256】
CPU81は、ステップ865にてリーン運転フラグXLEANの値に「1」を格納する。
【0257】
次いで、CPU81は、ステップ870に進む。CPU81は、ステップ870にて、後述する「リーン運転」が開始された時点から現時点までに機関10に導入された吸入空気量Gaの積算量(リーンガス積算量Galsum)が、所定の閾値積算量Galsumth以上であるか否かを判定する。
【0258】
上記リーンガス積算量Galsumは、機関10が始動される際に初期値としてのゼロに設定されるようになっている。さらに、上記リーンガス積算量Galsumは、触媒成分CCに吸着していた硫黄成分が十分に除去されたと判断し得る適値に設定されている。
【0259】
現時点は未だリーン運転が行われていないので、リーンガス積算量Galsumは上記初期値(ゼロ)である。そのため、CPU81は、ステップ870にて「No」と判定してステップ895に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0260】
このとき、リーン運転フラグXLEANの値が「0」から「1」に変更されたので(上記ステップ865)、CPU81は、所定のタイミングにて図9のステップ900から処理を開始すると、ステップ910にて「No」と判定してステップ990に進む。
【0261】
CPU81は、ステップ990にて、上流側目標空燃比abyfr(k)にリーン空燃比leanを格納する。
【0262】
次いで、CPU81は、ステップ990に続くステップ940〜ステップ970の処理を順に実行し、ステップ995に進んで本ルーチンを一旦終了する。これら処理により、最終燃料噴射量Fiの燃料が燃料噴射気筒に噴射される。これにより、上流側目標空燃比abyfrがリーン空燃比leanに設定された「リーン運転」が開始される。
【0263】
さらに、CPU81は、図10に示すルーチンおよび図11に示すルーチンを実行し、空燃比のフィードバック制御を行う。ただし、このとき、サブフィードバック制御条件は成立しないので(条件c−2を参照。)、サブフィードバック量Vafsfbはゼロに設定される(図11のステップ1110〜ステップ1130を参照。)。そして、図10に示すルーチンによって算出されるメインフィードバック量DFiにより、最終燃料噴射量Fiが補正される(図9のステップ960を参照。)。その結果、触媒上流側空燃比abyfsがリーン空燃比leanに一致する。すなわち、リーン運転が継続される。
【0264】
リーン運転が継続されると、触媒成分CC上に存在している硫黄成分が時間が経過するにつれて排ガス中に放出される。リーン運転が実行されている期間、CPU81は、図示しない「リーンガス積算ルーチン」を実行することにより、リーン運転が開始された時点から現時点までに機関10に導入された吸入空気量Gaを積算する。これにより、CPU81は、リーンガス積算量Galsumを取得する。
【0265】
CPU81は、リーン運転が実行されている期間中の所定のタイミングにて図8のステップ800から処理を開始すると、現時点におけるリーン運転フラグXLEANの値は「1」であるので、ステップ805にて「No」と判定してステップ870に進む。
【0266】
このとき、現時点におけるリーンガス積算量Galsumが閾値積算量Galsumthよりも小さければ、CPU81は、ステップ870にて「No」と判定し、ステップ895に進んで本ルーチンを一旦終了する。その結果、上述したように図9〜図11のルーチンに示す各処理が実行されるので、リーン運転が継続される。
【0267】
これに対し、現時点におけるリーンガス積算量Galsumが閾値積算量Galsumth以上であれば、CPU81は、図8のステップ870にて「Yes」と判定してステップ875に進む。
【0268】
CPU81は、ステップ875にて、リーン運転フラグXLEANの値に「0」を格納してステップ880に進む。
【0269】
CPU81は、ステップ880にて、回復運転実行中フラグXRECの値に「0」を設定する。その後、CPU81は、ステップ895に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0270】
このとき、リーン運転フラグXLEANの値が「1」から「0」に変更されたので(上記ステップ875)、CPU81は、所定のタイミングにて図9のステップ900から処理を開始すると、ステップ910にて「Yes」と判定してステップ930に進む。CPU81は、ステップ930にて上流側目標空燃比abyfr(k)に理論空燃比stoichを設定する。次いで、CPU81は、ステップ940〜ステップ970の処理を順に実行する。これにより、リーン運転が中止されるとともに、「通常運転」が再開される。
【0271】
このように、リッチ運転が行われた「後」の最大酸素吸蔵量Cmaxnowがリッチ運転が行われる「前」の最大酸素吸蔵量Cmaxoldよりも「小さくない」場合、「リーン運転」が開始される。さらに、リーンガス積算量Galsumが閾値積算量Galsumth以上となるまで、リーン運転が継続される。そして、リーンガス積算量Galsumが閾値積算量Galsumth以上となると(すなわち、閾値積算量Galsumthだけの排ガスが触媒53に流入すると)、リーン運転は中止され、通常運転が再開される。これにより、触媒53の触媒成分CCに吸着した硫黄成分が排ガス中に放出される。その結果、触媒53の最大酸素吸蔵量Cmaxが回復(増大)する。
【0272】
なお、リーンガス積算量Galsumの値は、リーン運転が中止されるときに上記「リーンガス積算ルーチン」によってゼロに設定される(リセットされる)ようになっている。
【0273】
ところで、リッチ運転が行われた後に通常運転が再開されたとき、CPU81は、所定のタイミングにて図8のステップ800から処理を開始すると、現時点におけるリーン運転フラグXLEANの値、リッチ運転フラグXRICHの値および回復運転実行中フラグXRECの値の全ては「0」であるので、CPU81は、ステップ805〜ステップ825を経由してステップ830に進む。そして、CPU81は、現時点の最大酸素吸蔵量Cmaxnowが参照値Cmaxrefよりも大きければ「通常運転」を継続し、現時点の最大酸素吸蔵量Cmaxnowが参照値Cmaxref以下であれば再び「酸素吸蔵量回復運転」を行う。このように、CPU81は、触媒53の最大酸素吸蔵量Cmaxが参照値Cmaxrefよりも大きくなるまで、酸素吸蔵量回復運転を繰り返す。
【0274】
以上、場合1と場合2とに場合を分けて説明したように、第1装置は、触媒53の最大酸素吸蔵量Cmaxが参照値Cmaxrefよりも大きい場合、「通常運転」を行う。一方、第1装置は、触媒53の最大酸素吸蔵量Cmaxが参照値Cmaxref以下である場合、「酸素吸蔵量回復運転」を行う。具体的に述べると、第1装置は、まず、リッチ運転が行われた後の最大酸素吸蔵量Cmaxnowがリッチ運転が行われる前の最大酸素吸蔵量Cmaxoldよりも「小さくない」と判定されるまで、リッチ運転を行う。次いで、第1装置は、そのリッチ運転が行われた後にリーン運転を行う。
【0275】
その結果、リッチ運転によって出来る限り多量の「酸素吸蔵物質OSMに吸蔵されている硫黄成分」が触媒成分CCへと移動された後、リーン運転によって「触媒成分CCに吸着している硫黄成分」が排ガス中に放出されることとなる。換言すると、第1装置は、硫黄成分が存在する部位を把握するとともに(すなわち、リッチ運転の前後の最大酸素吸蔵量を比較することにより、酸素吸蔵物質OSMおよび触媒成分CCのいずれに硫黄成分が存在するかを把握するとともに)、その部位に適した方法(リッチ運転またはリーン運転)によってその部位から硫黄成分を除去することができる。したがって、第1装置は、触媒53に吸着・吸蔵された硫黄成分を適切に除去することにより、触媒53の最大酸素吸蔵量Cmaxを適切に回復(増大)させることができる。
【0276】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態に係る制御装置(以下、「第2装置」とも称呼する。)について説明する。
【0277】
<装置の概要>
第2装置は、第1装置が適用される機関10と同様の構成を有する機関(図1を参照。以下、便宜上、「機関10」と称呼する。)に適用される。そこで、第2装置が適用される装置の概要についての説明は、省略される。
【0278】
<装置の作動の概要>
第2装置は、「触媒の温度TempC」をも考慮して触媒53の最大酸素吸蔵量を回復させるための運転(酸素吸蔵量回復運転)を行う点において、第1装置と相違する。
【0279】
より具体的に述べると、第2装置は、触媒53に導入される排ガスの空燃比(触媒上流側空燃比abyfs)を理論空燃比stoichに一致させる「通常運転」が行われているとき、触媒53の「最大酸素吸蔵量Cmax」を取得する。そして、第2装置は、その最大酸素吸蔵量Cmaxが所定の参照値Cmaxref以下であるとき、触媒53の温度TempCが所定の温度範囲(T3≦TempC≦T2)に「含まれる」場合に限り、第1装置と同様の酸素吸蔵量回復運転を行う。以上が第2装置の作動の概要である。
【0280】
<触媒の最大酸素吸蔵量の取得方法>
第2装置は、第1装置と同様の方法によって触媒53の最大酸素吸蔵量Cmaxを取得する。そこで、第2装置における触媒53の最大酸素吸蔵量Cmaxの取得方法についての説明は、省略される。
【0281】
<触媒の最大酸素吸蔵量の回復方法>
第2装置は、第1装置と同様の考え方に基づき、リッチ運転とリーン運転とを組み合わせることによって触媒53の最大酸素吸蔵量Cmaxを回復する。ところが、上述した触媒53の特性(2)および特性(3)に示すように、酸素吸蔵物質OSMに吸蔵された硫黄成分が触媒成分CCに向けて効率良く移動される温度(第1温度T1以上第2温度T2以下)と、触媒成分CC上に存在する硫黄成分が排ガス中に効率良く放出される温度(第3温度T3以上)と、は一致しない場合がある。
【0282】
そこで、第2装置は、触媒53の温度TempCが「酸素吸蔵物質OSMに吸蔵された硫黄成分が触媒成分CCに向けて効率良く移動される温度であり、かつ、触媒成分CC上に存在する硫黄成分が排ガス中に効率良く放出される温度」である場合において、酸素吸蔵量回復運転を行う。換言すると、第2装置は、上述した触媒53の特性(1)〜(4)のうちの「排ガスの空燃比」と「触媒の温度」と「硫黄成分の挙動」との関係に着目し、酸素吸蔵量回復運転を行う。
【0283】
具体的に述べると、第2装置は、触媒53の最大酸素吸蔵量Cmaxが所定の参照値Cmaxref以下である場合、触媒の温度TempCが「第3温度T3以上であり且つ第2温度T2以下である温度範囲(T3≦TempC≦T2)」に含まれれば、下記(a)または下記(b)の運転を行う。なお、下記運転(a)は第1装置における運転(a)と同一であり、下記運転(b)は第1装置における運転(b)と同一である。
【0284】
(a)第2装置は、まず、リッチ運転を、リッチ運転が行われる「前」の最大酸素吸蔵量(第1最大酸素吸蔵量)とリッチ運転が行われた「後」の最大酸素吸蔵量(第2最大酸素吸蔵量)とが等しくなるまで、または、第1最大酸素吸蔵量よりも第2最大酸素吸蔵量が大きくなるまで、行う。
より具体的に述べると、第2装置は、「リッチ運転を所定の期間だけ行った後に第1最大酸素吸蔵量と第2最大酸素吸蔵量とを比較する」ことを、第1最大酸素吸蔵量と第2最大酸素吸蔵量とが等しいと判定されるまで、または、第1最大酸素吸蔵量よりも第2最大酸素吸蔵量が大きいと判定されるまで、繰り返す。
【0285】
(b)第2装置は、第1最大酸素吸蔵量と第2最大酸素吸蔵量とが等しいと判定された後または第1最大酸素吸蔵量よりも第2最大酸素吸蔵量が大きいと判定された後、「リーン運転」を行う。
【0286】
なお、上記運転(a)における「所定の期間」は、第1装置と同様、「リッチ運転が開始されてからリッチガス積算量Garsumが閾値積算量Garsumth以上となるまでの期間」である。さらに、上記運転(b)のリーン運転は、第1装置と同様、リーンガス積算量Galsumが所定の閾値積算量Galsumth以上となるまで、継続される。
【0287】
第2装置は、リーンガス積算量Galsumが閾値積算量Galsumth以上となった後、リーン運転を中止するとともに通常運転を再開する。以上が第2装置における触媒53の最大酸素吸蔵量Cmaxの回復方法である。
【0288】
<空燃比制御>
第2装置は、第1装置と同様の方法によって排ガスの空燃比を制御し、通常運転、リッチ運転およびリーン運転を行う。そこで、第2装置における空燃比制御についての説明は、省略される。
【0289】
<実際の作動>
以下、第2装置の実際の作動について説明する。
第2装置において、CPU81は、図7、図9〜図12にフローチャートによって示した各ルーチンを所定のタイミング毎に繰り返し実行するようになっている。CPU81は、これらルーチンにおいて、第1装置と同様のリッチ運転フラグXRICH、リーン運転フラグXLEANおよび回復運転実行中フラグXRECを用いる。
【0290】
以下、CPU81が実行する各ルーチンについて説明する。
第2装置は、CPU81が、図8に示すフローチャートに代えて図12に示すフローチャートを実行する点についてのみ、第1装置と相違している。そこで、以下、この相違点を中心として説明を加える。
【0291】
CPU81は、第1装置と同様、図7のルーチンを所定時間が経過する毎に繰り返し実行する。すなわち、第2装置は、排気温度Texに基づいて触媒の温度TempCの温度を取得(推定)する。
【0292】
さらに、CPU81は、所定時間が経過する毎に、図12にフローチャートによって示した「第2最大酸素吸蔵量回復ルーチン」を繰り返し実行するようになっている。CPU81は、このルーチンにより、触媒53の最大酸素吸蔵量Cmaxを取得するとともに、取得された最大酸素吸蔵量Cmaxが参照値Cmaxref以下である場合、最大酸素吸蔵量を回復させるために如何なる運転を実行するか(すなわち、リッチ運転およびリーン運転のいずれを実行するか)を決定する。
【0293】
図12に示したルーチンは、「ステップ1210が含まれている」点のみにおいて、図8に示したルーチンと相違している。そこで、図12において図8に示したステップと同一の処理を行うためのステップには、図8のそのようなステップに付された符号と同一の符号が付されている。これらステップについての詳細な説明は、適宜省略される。
【0294】
図12のルーチンについて具体的に述べると、CPU81は、所定のタイミングにて図12のステップ1200から処理を開始したとき、上記初期設定仮定に従うと、ステップ805〜ステップ825を経由してステップ830に進む。
【0295】
CPU81は、ステップ830にて、現時点の最大酸素吸蔵量Cmaxnow(ステップ815にて取得された最大酸素吸蔵量Cmax)が参照値Cmaxrefよりも大きい場合、「Yes」と判定してステップ1295に進んで本ルーチンを一旦終了する。この場合、第1装置と同様、図9〜図11のルーチンが実行されることによって「通常運転」が行われる。
【0296】
これに対し、現時点の最大酸素吸蔵量Cmaxnowが参照値Cmaxref以下である場合、CPU81は、図8のステップ830にて「No」と判定してステップ1210に進む。CPU81は、ステップ1210にて、触媒53の温度TempCが「第3温度T3以上であり且つ第2温度T2以下である温度範囲(T3≦TempC≦T2)」に含まれるか否かを判定する。現時点における触媒の温度TempCがこの温度範囲に「含まれない」場合、CPU81は、ステップ1210にて「No」と判定し、ステップ1295に進んで本ルーチンを一旦終了する。この場合、上記同様、CPU81が図9〜図11に示すルーチンを実行することによって「通常運転」が行われる。
【0297】
このように、触媒53の最大酸素吸蔵量Cmaxが参照値Cmaxref以下であっても、触媒の温度TempCが上記温度範囲(T3≦TempC≦T2)に「含まれない」場合、酸素吸蔵量回復運転(リッチ運転およりリーン運転)は行われない。
【0298】
これに対し、現時点における触媒の温度TempCが上記温度範囲(T3≦TempC≦T2)に「含まれる」場合、CPU81は、図12のステップ1210にて「Yes」と判定する。その後、CPU81は、ステップ835〜ステップ845を経由してステップ1295に進み、本ルーチンを一旦終了する。これにより、リッチ運転フラグXRICHの値が「1」に設定される(ステップ840を参照。)。この場合、第1装置と同様、図9〜図11に示すルーチンが実行されることによって「リッチ運転」が行われる。
【0299】
このように、触媒53の最大酸素吸蔵量Cmaxが参照値Cmaxref以下であり、かつ、触媒の温度TempCが上記温度範囲(T3≦TempC≦T2)に「含まれる」場合、酸素吸蔵量回復運転のうちのリッチ運転が行われる。
【0300】
その後、CPU81は、第1装置と同様に図12のステップ805、ステップ810、ステップ845およびステップ1295の処理を繰り返すことにより、リッチガス積算量Garsumが閾値積算量Garsumth以上となるまでリッチ運転を継続する。そして、CPU81は、リッチガス積算量Garsumが閾値積算量Garsumth以上となると、リッチ運転を中止して通常運転を再開する。
【0301】
次いで、CPU81は、所定のタイミングにて図8のステップ800から処理を開始すると、リーン運転フラグXLEANの値およびリッチ運転フラグXRICHの値は「0」であり、回復運転実行中フラグXRECの値は「1」であるので、ステップ805〜ステップ825を経由してステップ860に進む。
【0302】
CPU81は、ステップ860にて、現時点の最大酸素吸蔵量Cmaxnowがリッチ運転前の最大酸素吸蔵量Cmaxoldよりも「小さい」場合、「Yes」と判定する。その後、CPU81は、ステップ840およびステップ845を経由してステップ1295に進み、本ルーチンを一旦終了する。これにより、リッチ運転フラグXRICHの値が「1」に設定されるので(ステップ840を参照。)、再び「リッチ運転」が行われる。
【0303】
このように、CPU81は、第1装置と同様、「リッチ運転を所定の期間だけ行った後、現時点の最大酸素吸蔵量Cmaxnowとリッチ運転前の最大酸素吸蔵量Cmaxoldとを比較すること」を繰り返す。そして、リッチ運転が繰り返されることによって最大酸素吸蔵量Cmaxが徐々に減少し、現時点の最大酸素吸蔵量Cmaxnowがリッチ運転前の最大酸素吸蔵量Cmaxoldよりも「小さくない」と判定された場合(すなわち、ステップ860にて「No」と判定された場合)、CPU81はステップ865に進む。その後、CPU81は、ステップ865およびステップ870を経由してステップ1295に進み、本ルーチンを一旦終了する。これにより、リーン運転フラグXLEANの値が「1」に設定される(ステップ865を参照。)。この場合、第1装置と同様、図9〜図11に示すルーチンが実行されることによって「リーン運転」が行われる。
【0304】
その後、CPU81は、第1装置と同様に図12のステップ805、ステップ870およびステップ1295の処理を繰り返すことにより、リーンガス積算量Galsumが閾値積算量Galsumth以上となるまでリーン運転を継続する。そして、CPU81は、リーンガス積算量Galsumが閾値積算量Galsumth以上となると、リーン運転を中止して通常運転を再開する。
【0305】
このように、第2装置は、触媒53の最大酸素吸蔵量Cmaxが参照値Cmaxrefよりも大きい場合、「通常運転」を行う。一方、第2装置は、触媒53の最大酸素吸蔵量Cmaxが参照値Cmaxref以下であり、かつ、触媒の温度TempCが上記温度範囲(T3≦TempC≦T2)に「含まれる」場合、第1装置と同様の「酸素吸蔵量回復運転」を行う。具体的に述べると、第2装置は、リッチ運転が行われた後の最大酸素吸蔵量Cmaxnowがリッチ運転が行われる前の最大酸素吸蔵量Cmaxoldよりも「小さくない」と判定されるまで、リッチ運転を行う。次いで、第2装置は、そのリッチ運転が行われた後にリーン運転を行う。
【0306】
その結果、リッチ運転によって出来る限り多量の「酸素吸蔵物質OSMに吸蔵されている硫黄成分」が効率良く触媒成分CCへと移動された後、リーン運転によって「触媒成分CCに吸着している硫黄成分」が効率良く排ガス中に放出されることとなる。第2装置は、この酸素吸蔵量回復運転を「触媒53の温度TempCが、酸素吸蔵物質OSMに吸蔵された硫黄成分が効率良く触媒成分CCに移動される温度であり且つ触媒成分CC上に存在する硫黄成分が効率良く排ガス中に放出される温度である場合(すなわち、T3≦TempC≦T2である場合)」に行う。したがって、第2装置は、触媒53に吸着・吸蔵された硫黄成分を効率良く除去することにより、触媒53の最大酸素吸蔵量Cmaxを効率良く回復(増大)させることができる。
【0307】
ところで、上述した第1装置および第2装置の説明から明らかなように、リーン運転が行われている期間、リーン運転フラグXLEANの値は「1」に維持されている。そのため、第1装置および第2装置のいずれにおいても、CPU81は、その期間中に図8のステップ800から処理を開始してステップ805に進むと、ステップ805にて「No」と判定する。よって、リーン運転が行われている期間、触媒53の最大酸素吸蔵量Cmaxを取得すること(ステップ815)は禁止される。
【0308】
上記同様、リッチ運転が行われている期間、リッチ運転フラグXRICHの値は「1」に維持されている。そのため、第1装置および第2装置のいずれにおいても、CPU81は、その期間中に図8のステップ800から処理を開始してステップ805を経由してステップ810に進むと、ステップ810にて「No」と判定する。よって、リッチ運転が行われている期間、触媒53の最大酸素吸蔵量Cmaxを取得することは禁止される。
【0309】
これは、最大酸素吸蔵量Cmaxを取得する際に排ガスの空燃比が変化させられるため(図6を参照。)、最大酸素吸蔵量Cmaxを取得するための空燃比制御によって酸素吸蔵量回復運転(リッチ運転またはリーン運転)が妨げられることを避けるためである。
【0310】
なお、酸素吸蔵量回復運転が終了すれば、リッチ運転フラグXRICHの値およびリーン運転フラグXLEANの値は再び「0」に設定されるので(図8のステップ850およびステップ875、図12のステップ850およびステップ875を参照。)、最大酸素吸蔵量Cmaxを取得すること(図8のステップ815)が再び可能となる。
【0311】
<実施形態の総括>
以上、説明したように、本発明の各実施形態に係る制御装置(第1装置および第2装置)は、
触媒成分CCと酸素吸蔵物質OSMとを有する触媒53を備えた内燃機関10に適用される。
【0312】
この制御装置は、
前記触媒53に吸蔵され得る酸素の最大量である最大酸素吸蔵量Cmaxを取得する最大酸素吸蔵量取得手段(図8および図12のステップ815)を備える。
【0313】
さらに、この制御装置は、
前記最大酸素吸蔵量Cmaxが所定の閾値Cmaxref以下であるとき(図8および図12のステップ830にて「No」と判定されるとき)、
前記触媒53に導入されるガスである触媒導入ガスの酸素濃度を「空気と燃料とが理論空燃比にて燃焼したときに生じるガスの酸素濃度である基準酸素濃度(理論空燃比stoichに相当。)」よりもリッチ側の酸素濃度richとするリッチ運転を、「該リッチ運転が行われる前の前記最大酸素吸蔵量である第1最大酸素吸蔵量Cmaxoldと前記リッチ運転が行われた後の前記最大酸素吸蔵量である第2最大酸素吸蔵量Cmaxnowとが等しくなるまで」又は「前記第1最大酸素吸蔵量よりも前記第2最大酸素吸蔵量が大きくなるまで」(図8および図12のステップ860にて「No」と判定されるまで)行うこと、
および、
「前記第1最大酸素吸蔵量Cmaxoldと前記第2最大酸素吸蔵量Cmaxnowとが等しくなったとき」又は「前記第1最大酸素吸蔵量Cmaxoldよりも前記第2最大酸素吸蔵量Cmaxnowが大きくなったとき」に前記触媒導入ガスの酸素濃度を前記基準酸素濃度stoichよりもリーン側の酸素濃度leanとするリーン運転を行うこと、
を含む「酸素吸蔵量回復運転」を行う酸素吸蔵量回復手段(図8〜図12のルーチンを参照。)を備える。
【0314】
具体的に述べると、この制御装置において、
前記酸素吸蔵量回復手段は、
「前記リッチ運転を所定の期間だけ(リッチガス積算量Garsumが閾値積算量Garsumth以上となるまで)行った後に前記第1最大酸素吸蔵量Cmaxoldと前記第2最大酸素吸蔵量Cmaxnowとを比較する」ことを、前記第1最大酸素吸蔵量Cmaxoldと前記第2最大酸素吸蔵量Cmaxnowとが等しいと判定されるまで又は前記第1最大酸素吸蔵量Cmaxoldよりも前記第2最大酸素吸蔵量Cmaxnowが大きいと判定されるまで繰り返すとともに(図8および図12のステップ805、ステップ810およびステップ845の処理を繰り返す。)、
前記第1最大酸素吸蔵量Cmaxoldと前記第2最大酸素吸蔵量Cmaxnowとが等しいと判定された後または前記第1最大酸素吸蔵量Cmaxoldよりも前記第2最大酸素吸蔵量Cmaxnowが大きいと判定された後に(図8および図12のステップ860にて「No」と判定された後に)前記リーン運転を行うことにより、前記酸素吸蔵量回復運転を行う、ようになっている。
【0315】
さらに、第2装置において、
前記触媒53は、
該触媒53の温度が「第1温度T1以上第2温度T2以下」であるときに前記触媒導入ガスの酸素濃度が前記基準酸素濃度stoichよりもリッチ側の酸素濃度richである場合、前記酸素吸蔵物質OSMに吸蔵された硫黄成分が前記触媒成分CCに向けて移動し(上記特性(2)を参照。)、
かつ、
該触媒53の温度が「前記第1温度T1と前記第2温度T2の間の第3温度T3以上」であるときに前記触媒導入ガスの酸素濃度が前記基準酸素濃度stoichよりもリーン側の酸素濃度leanである場合、前記触媒成分CC上に存在する前記硫黄成分が前記触媒導入ガス中に放出される(上記特性(3)を参照。)、触媒53である。
【0316】
このとき、前記酸素吸蔵量回復手段は、
前記触媒53の温度が「前記第3温度T3以上であり且つ前記第2温度T2以下」である場合(図12のステップ1210にて「Yes」と判定される場合)、前記酸素吸蔵量回復運転を行う、ようになっている。
【0317】
換言すると、本発明の各実施形態に係る制御装置は、
触媒成分CCと酸素吸蔵物質OSMとを有する触媒53であって、触媒導入ガスの酸素濃度が基準酸素濃度stoichよりもリッチ側の酸素濃度richであるときに前記酸素吸蔵物質OSMに吸蔵された硫黄成分が前記触媒成分CCに向けて移動し、かつ、前記触媒導入ガスの酸素濃度が前記基準酸素濃度stoichよりもリーン側の酸素濃度leanであるときに前記触媒成分CC上に存在する前記硫黄成分が前記触媒導入ガス中に放出される触媒53、を備えた内燃機関に適用され、
前記触媒53に吸蔵され得る酸素の最大量である最大酸素吸蔵量Cmaxを取得する最大酸素吸蔵量取得手段(ステップ815)と、
前記最大酸素吸蔵量Cmaxが所定の閾値Cmaxref以下であるとき、
前記触媒導入ガスの酸素濃度を前記基準酸素濃度stoichよりもリッチ側の酸素濃度richとするリッチ運転を、前記触媒成分CCに移動可能な最大の量の硫黄成分が前記酸素吸蔵物質OSMから前記触媒成分CCに移動するまで行うこと、および、前記触媒成分CCに移動可能な最大の量の硫黄成分が前記酸素吸蔵物質OSMから前記触媒成分CCに移動したときに前記触媒導入ガスの酸素濃度を前記基準酸素濃度stoichよりもリーン側の酸素濃度leanとするリーン運転を行うこと、を含む酸素吸蔵量回復運転を行う酸素吸蔵量回復手段と、を備えている。
【0318】
本発明は上記各実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。
【0319】
例えば、第1装置および第2装置は、「リッチ運転を繰り返す」ことにより、触媒成分CCに移動可能な最大の量の硫黄成分を酸素吸蔵物質OSMから触媒成分CCに移動させるようになっている。しかし、本発明の制御装置におけるリッチ運転は、「触媒成分に移動可能な最大の量の硫黄成分を酸素吸蔵物質から触媒成分に移動させる」ことができる運転であればよく、特に制限されない。例えば、本発明の制御装置は、「触媒成分に移動可能な最大の量の硫黄成分を酸素吸蔵物質OSMから触媒成分CCに移動させる」ことができるリッチ運転の程度(リッチ運転を行う期間の長さ、触媒導入ガスの酸素濃度)をあらかじめ確認し、そのリッチ運転を「1回のみ」行うように構成され得る。
【0320】
さらに、本発明の制御装置においては、前記酸素吸蔵量回復手段は、「酸素吸蔵量回復運転を行う前」にリーン運転を行う、ように構成され得る。これにより、酸素吸蔵量回復運転が行われる前に触媒成分CC上に存在する硫黄成分が除去されるので、酸素吸蔵量回復運転を行う際により効率良く最大酸素吸蔵量Cmaxが回復され得る。
【0321】
さらに、本発明の制御装置において、酸素吸蔵量回復手段は、最大酸素吸蔵量Cmaxの大きさに応じてリッチ空燃比richおよびリーン空燃比leanを調節するように構成され得る。
【0322】
例えば、酸素吸蔵量回復手段は、最大酸素吸蔵量Cmaxが小さくなるにつれてリッチ空燃比richが理論空燃比stoichからリッチ側に離れるように(すなわち、排ガスの空燃比が小さくなるように)リッチ空燃比richを調整するように構成され得る。
【0323】
具体的に述べると、酸素吸蔵量回復手段は、
前記最大酸素吸蔵量Cmaxが「第1の値」であるときに前記リッチ運転を行う場合の前記触媒導入ガスの酸素濃度である第1酸素濃度が、前記最大酸素吸蔵量Cmaxが前記第1の値よりも大きい第2の値であるときに前記リッチ運転を行う場合の前記触媒導入ガスの酸素濃度である第2酸素濃度と同一または前記第2酸素濃度よりもリッチ側の酸素濃度richである、ように構成され得る。
【0324】
また、例えば、酸素吸蔵量回復手段は、最大酸素吸蔵量Cmaxが大きくなるにつれてリーン空燃比leanが理論空燃比stoichからリーン側に離れるように(すなわち、排ガスの空燃比が大きくなるように)リーン空燃比leanを調整するように構成され得る。
【0325】
具体的に述べると、酸素吸蔵量回復手段は、
前記最大酸素吸蔵量Cmaxが第3の値であるときに前記リーン運転を行う場合の前記触媒導入ガスの酸素濃度である第3酸素濃度が、前記最大酸素吸蔵量Cmaxが前記第3の値よりも大きい第4の値であるときに前記リーン運転を行う場合の前記触媒導入ガスの酸素濃度である第4酸素濃度と同一または前記第4酸素濃度よりもリーン側の酸素濃度である、ように構成され得る。
【0326】
上述したようにリッチ空燃比richまたはリーン空燃比leanが調整されることにより、触媒53に吸着・吸蔵された硫黄成分がさらに効率良く排除され得る。
【0327】
さらに、本発明の制御装置は、触媒53の温度TempCが活性温度T0よりも低い場合に酸素吸蔵量回復運転を行わない(禁止する)ように構成され得る。これは、触媒53の温度TempCが活性温度T0よりも低い場合、触媒53の温度TempCが活性温度T0以上である場合に比べて排ガスの浄化率が小さいためである。
【0328】
加えて、本発明の制御装置は、リッチ運転を実行する際にスロットル弁開度TAを減少させるとともに、リーン運転を実行する際にスロットル弁開度TAを増大させる、ように構成され得る。これにより、リッチ運転またはリーン運転が実行される際に出力トルクが大きく変動することが抑制され、ドライバビリティが低下することが防がれる。
【0329】
さらに、第1装置および第2装置は、リーンガス積算量Galsumが閾値積算量Galsumth以上となるまでリーン運転を継続するようになっている。しかし、本発明の制御装置は、リーンガス積算量Galsumの大きさにかかわらず、機関10の運転状態に応じてリーン運転を中止するように構成され得る。例えば、触媒53の温度TempCが所定温度よりも低い温度となった場合、および、冷却水の温度THWが所定温度よりも低い温度となった場合などにおいて、リーン運転が中止され得る。
【0330】
さらに、第1装置および第2装置は、リッチガス積算量Garsumに基づいてリッチ運転を中止するか否かを判断し、リーンガス積算量Galsumに基づいてリーン運転を中止するか否かを判断するようになっている。しかし、本発明の制御装置は、触媒53に吸着・吸蔵された硫黄成分の量に関連する所定のパラメータに基づき、リッチ運転およびリーン運転を中止するか否かを判断するように構成され得る。
【0331】
さらに、第1装置および第2装置は、三元触媒を備えた機関(火花点火式機関)に適用されている。しかし、本発明の制御装置は、NOx吸蔵還元触媒を備えた機関(例えば、ディーゼル機関)に適用され得る。
【0332】
さらに、第1装置および第2装置は、1のみの触媒を備えている。しかし、本発明の制御装置は、複数の触媒を備える機関に適用され得る。
【0333】
さらに、第1装置および第2装置は、上流側目標空燃比abyfrをリーン空燃比leanに設定することによってリーン運転を行うようになっている。ここで、本発明の制御装置は、リーン運転として「フューエルカット運転」を行うように構成され得る。
【0334】
さらに、第1装置および第2装置は、触媒53の最大酸素吸蔵量Cmaxを上記(1)式および上記(2)式に従って算出している(図5を参照。)。しかし、本発明の制御装置が触媒の最大酸素吸蔵量を取得する方法は、この方法に限定されない。例えば、本発明の制御装置は、触媒に吸着・吸蔵されている硫黄成分の量に基づいて触媒の最大酸素吸蔵量を算出するように構成され得る。
【符号の説明】
【0335】
10…内燃機関、25…燃焼室、34…インジェクタ、52…吸気管、53…触媒、76…上流側酸素濃度センサ、77…下流側酸素濃度センサ、80…電子制御装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の燃焼室から排出されるガス(排ガス)を浄化するための触媒を備えた内燃機関の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関の排ガスには種々の成分が含まれている。そのため、触媒が長期間に亘って使用されると、排ガスに含まれるそれら成分に起因して触媒の排ガス浄化性能が低下する場合がある(以下、触媒の排ガス浄化性能が低下することを「触媒が劣化する」とも称呼する。)。
【0003】
例えば、従来の内燃機関の制御装置の一つ(以下、「従来装置」と称呼する。)は、排ガスに含まれる硫黄成分(SOxなど)が触媒に吸蔵されることによって触媒が劣化した場合、排ガスの酸素濃度を増減することを繰り返すことにより、触媒に吸蔵された硫黄成分を除去するようになっている(例えば、特許文献1を参照。)。このように、従来から、触媒が劣化する原因の一つである硫黄成分を触媒から除去することが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−108076号公報
【発明の概要】
【0005】
排ガスに含まれる硫黄成分によって触媒が劣化する理由について、以下に説明する。
内燃機関に適用される触媒の例として、三元触媒およびNOx吸蔵還元触媒などが挙げられる。これら触媒は、触媒の温度が所定の活性温度以上であり、かつ、浄化される対象である排ガスの酸素濃度が所定の酸素濃度(理論空燃比の混合気が燃焼した際に生じる排ガスの酸素濃度)であるとき、その排ガスに含まれる未燃物(HCなど)の酸化反応および窒素酸化物(NOx)の還元反応を促進し、これらを高い浄化率にて同時に浄化することができる。以下、便宜上、三元触媒およびNOx吸蔵還元触媒などを単に「触媒」と総称する。
【0006】
上記触媒は、一般に、酸素吸蔵物質(CeO2−ZrO2など)を含む担体(Al2O3など)と、その担体に担持された触媒成分(PtおよびRhなどの貴金属)と、を有する。この触媒成分によって構成される活性点(触媒活性点)において、上述した未燃物と窒素酸化物との酸化還元反応(すなわち、排ガスの浄化)が促進される。さらに、この触媒活性点において、酸素吸蔵物質による酸素の吸蔵および放出が促進される。具体的に述べると、酸素吸蔵物質は、排ガスの酸素濃度が上記所定の酸素濃度よりも高いとき(すなわち、リーン側の酸素濃度であるとき)排ガスに含まれる過剰な酸素を吸蔵し、排ガスの酸素濃度が上記所定の酸素濃度よりも低いとき(すなわち、リッチ側の酸素濃度であるとき)吸蔵されている酸素を上記酸化反応のために放出する。これにより、触媒成分における酸素濃度が上記所定の酸素濃度に一致するように調節される。
【0007】
このように、触媒成分は触媒活性点を構成することによって「排ガスの浄化」および「酸素吸蔵物質の働き(酸素の吸蔵および放出)」を促進し、酸素吸蔵物質は触媒成分における酸素濃度を調節することによって「排ガスの浄化」を補助する。
【0008】
ところが、酸素吸蔵物質には、酸素だけではなく排ガスに含まれる硫黄成分(SOxなど)が吸蔵される場合がある。さらに、触媒成分には、種々の原因によって硫黄成分(Sなど)が吸着する場合がある。酸素吸蔵物質に硫黄成分が吸蔵されると、その硫黄成分によって本来吸蔵されるべき酸素が吸蔵されることが妨げられるので、触媒が吸蔵し得る酸素の量が減少する。さらに、触媒成分に硫黄成分が吸着すると、触媒活性点が硫黄成分によって覆われるので、排ガスの浄化および酸素吸蔵物質の働きを促進することができる触媒活性点(以下、「有効触媒活性点」とも称呼する。)の数が減少する。これらの結果、触媒の排ガス浄化性能が低下する。以上が排ガスに含まれる硫黄成分によって触媒が劣化する理由である。
【0009】
触媒が劣化すると、その触媒は本来の排ガス浄化性能を発揮することができない。その結果、排ガスに含まれる未燃物および窒素酸化物が十分に低減されない場合があるという問題がある。
【0010】
本発明の目的は、上記課題に鑑み、触媒に吸着・吸蔵された硫黄成分を適切に除去することにより、触媒の劣化を適切に解消することができる内燃機関の制御装置を提供することにある。
【0011】
上記課題を解決するための本発明による制御装置は、内燃機関の燃焼室から排出されるガス(排ガス)を浄化する触媒を備えた内燃機関に適用される。この触媒は、触媒成分と酸素吸蔵物質とを有する。
【0012】
上記触媒は、上述したように排ガスを浄化することができる触媒であればよく、特に制限されない。上記触媒として、例えば、触媒成分と、酸素吸蔵物質を含む担体と、を有する公知の三元触媒が採用され得る。さらに、上記触媒として、例えば、触媒成分と、酸素吸蔵物質およびNOx吸蔵物質を含む担体と、を有する公知のNOx吸蔵還元触媒が採用され得る。上記触媒は、例えば、内燃機関の排気通路に設けられ得る。
【0013】
なお、上記触媒成分は、排ガスの浄化を促進すること(未燃物と窒素酸化物との酸化還元反応の反応速度を速めること)ができる成分であればよく、特に制限されない。触媒成分として、例えば、白金(Pt)およびロジウム(Rh)などの貴金属が採用され得る。さらに、上記酸素吸蔵物質は、酸素を吸蔵することができる物質であればよく、特に制限されない。酸素吸蔵物質として、例えば、酸化セリウム(セリア。CeO2)および酸化ジルコニウム(ZrO2)などが採用され得る。
【0014】
なお、上記「ガスを浄化する」とは、ガスに含まれる未燃物および窒素酸化物などの浄化対象物質の少なくとも一部をそのガスから除去することを意味し、必ずしも浄化対象物質の全てをそのガスから除去することを意味しない。
【0015】
上記触媒を備えた内燃機関に適用される本発明の制御装置は、最大酸素吸蔵量取得手段と、酸素吸蔵量回復手段と、を備える。
【0016】
より具体的に述べると、上記最大酸素吸蔵量取得手段は、「前記触媒に吸蔵され得る酸素の最大量」である最大酸素吸蔵量を取得するようになっている。
【0017】
上述したように、触媒に含まれる酸素吸蔵物質は、酸素を吸蔵することができる。この酸素吸蔵物質に吸蔵され得る酸素の量は、酸素吸蔵物質そのものが有する特性などに起因して定まる上限量(以下、便宜上、「内的な上限量」とも称呼する。)を有する。一方、上述したように、酸素吸蔵物質の働き(酸素の吸蔵および放出)は、触媒成分によって促進されている。よって、酸素吸蔵物質に吸蔵され得る酸素の量は、触媒成分が有する特性などに起因して定まる上限量(以下、便宜上、「外的な上限量」とも称呼する。)をも有する。
【0018】
したがって、酸素吸蔵物質に吸蔵され得る酸素の「実際の」上限量は、上述した「内的な上限量」および「外的な上限量」の双方に基づいて定まる。本発明における「最大酸素吸蔵量」は、この「実際の上限量」に相当する。
【0019】
この最大酸素吸蔵量を取得する方法は、特に制限されない。例えば、「酸素を全く吸蔵していない(すなわち、酸素吸蔵量がゼロである)触媒の酸素吸蔵量を最大量とするために必要なガスの量と、そのガスの酸素濃度と、に基づいて最大酸素吸蔵量を取得する」公知の方法などが採用され得る。
【0020】
上記最大酸素吸蔵量は、排ガスに含まれる種々の成分に起因して減少する場合がある。触媒の最大酸素吸蔵量が減少する原因の一つとして、排ガスに含まれる硫黄成分が触媒に吸着・吸蔵することが挙げられる。
【0021】
より具体的に述べると、硫黄成分(SOxなど)が「酸素吸蔵物質に吸蔵される」と、酸素が酸素吸蔵物質に吸蔵されることが妨げられるので、上記「内的な上限量」が減少する。一方、硫黄成分(Sなど)が「触媒成分に吸着する」と、有効触媒活性点の数が減少するので、上記「外的な上限量」が減少する。すなわち、酸素吸蔵物質に吸蔵された硫黄成分および触媒成分に吸着した硫黄成分の双方により、触媒の最大酸素吸蔵量が減少する。
【0022】
そのため、触媒の最大酸素吸蔵量が減少したとき、内的な上限量および外的な上限量の双方が回復(増大)されれば、最大酸素吸蔵量が適切に回復(増大)され得る。より具体的に述べると、触媒に硫黄成分が吸着・吸蔵することによって触媒の最大酸素吸蔵量が減少したとき、「硫黄成分が存在する部位(すなわち、酸素吸蔵物質および触媒成分の双方、または、それらのいずれか一方)」が把握されるとともに、「その部位に適した方法」によってその部位から硫黄成分が除去されれば、最大酸素吸蔵量が適切に回復(増大)され得る。本発明の酸素吸蔵量回復手段は、この考え方に基づき、触媒の最大酸素吸蔵量を回復させる。
【0023】
より具体的に述べると、上記酸素吸蔵量回復手段は、前記最大酸素吸蔵量が所定の閾値以下であるとき、下記(A)に示す運転および下記(B)に示す運転を含む「酸素吸蔵量回復運転」を行うようになっている。なお、後述するように、下記(A)に示す運転は「酸素吸蔵物質に吸蔵された硫黄成分を除去するための運転」であり、下記(B)に示す運転は「触媒成分に吸着した硫黄成分を除去するための運転」である。
【0024】
(A)前記触媒に導入されるガスである触媒導入ガスの酸素濃度を「空気と燃料とが理論空燃比にて燃焼したときに生じるガスの酸素濃度である基準酸素濃度」よりもリッチ側の酸素濃度とする「リッチ運転」。
このリッチ運転は、当該リッチ運転が行われる「前」の前記最大酸素吸蔵量である「第1最大酸素吸蔵量」と当該リッチ運転が行われた「後」の前記最大酸素吸蔵量である「第2最大酸素吸蔵量」とが等しくなるまで、または、前記第1最大酸素吸蔵量よりも前記第2最大酸素吸蔵量が大きくなるまで、行われる。
【0025】
(B)前記触媒導入ガスの酸素濃度を前記基準酸素濃度よりもリーン側の酸素濃度とする「リーン運転」。
このリーン運転は、上記(A)に示すリッチ運転によって「前記第1最大酸素吸蔵量と前記第2最大酸素吸蔵量とが等しくなったとき、または、前記第1最大酸素吸蔵量よりも前記第2最大酸素吸蔵量が大きくなったとき」に行われる。
【0026】
上記「基準酸素濃度よりもリッチ側の酸素濃度」とは、上記基準酸素濃度よりも低い酸素濃度を意味する。一方、上記「基準酸素濃度よりもリーン側の酸素濃度」とは、上記基準酸素濃度よりも高い酸素濃度を意味する。以下、基準酸素濃度よりもリッチ側の酸素濃度を単に「リッチ側酸素濃度」とも称呼し、基準酸素濃度よりもリーン側の酸素濃度を単に「リーン側酸素濃度」とも称呼する。
【0027】
上記「リッチ運転」は、触媒導入ガスの酸素濃度がリッチ側酸素濃度である運転であればよく、特に制限されない。リッチ運転として、例えば、内燃機関の混合気の空燃比を理論空燃比よりもリッチ側の空燃比とする運転(いわゆる、燃料増量運転)が採用され得る。さらに、リッチ運転として、例えば、燃焼室から排出されるガスに再び燃料を噴射する(いわゆる、排気添加を行う)運転が採用され得る。一方、上記「リーン運転」は、触媒導入ガスの酸素濃度がリーン側酸素濃度である運転であればよく、特に制限されない。リーン運転として、例えば、燃焼室へ燃料を供給しない運転(いわゆる、フューエルカット運転)が採用され得る。
【0028】
上記「酸素吸蔵量回復運転」によって触媒の最大酸素吸蔵量が適切に回復(増大)される理由について、以下に説明する。
【0029】
発明者は、触媒に吸着・吸蔵された硫黄成分が触媒から排出されるメカニズムを検討するべく、種々の考察および実験などを行った。発明者によるこれら種々の考察および実験などによれば、「触媒に吸着・吸蔵された硫黄成分の挙動」と「排ガスの酸素濃度」との間には密接な関係があることが確認された。具体的に述べると、まず、酸素吸蔵物質に吸蔵されている硫黄成分は、排ガスの酸素濃度がリッチ側酸素濃度である場合に触媒成分に向けて移動して触媒成分に吸着する、ことが確認された。さらに、触媒成分に吸着している硫黄成分は、排ガスの酸素濃度がリーン側酸素濃度である場合に排ガス中に放出される、ことが確認された。すなわち、酸素吸蔵物質に吸蔵されている硫黄成分は、酸素吸蔵物質から排ガス中に直接には放出されず、触媒成分を経由して排ガス中に放出される、ことが確認された。加えて、上記「内的な上限量」が最大酸素吸蔵量に及ぼす影響よりも上記「外的な上限量」が最大酸素吸蔵量に及ぼす影響が大きい、ことが確認された。
【0030】
上記確認された事項を考慮し、本発明の酸素吸蔵量回復手段は、酸素吸蔵量回復運転として、まず「リッチ運転」を行う(上記(A))。
【0031】
リッチ運転が行われると、酸素吸蔵物質に硫黄成分が「吸蔵されている」場合、上述したように硫黄成分は触媒成分に向けて移動して触媒成分に吸着する。すなわち、リッチ運転により、酸素吸蔵物質に吸蔵された硫黄成分が除去される。換言すると、リッチ運転は、「酸素吸蔵物質に吸蔵された硫黄を除去するために適した運転」である。
【0032】
このとき、「酸素吸蔵物質に吸蔵されている硫黄成分」の量が減少するので、酸素吸蔵物質が吸蔵し得る酸素の量が増大する。よって、「内的な上限量」が増大する。ところが、このとき、酸素吸蔵物質から触媒成分へと移動した硫黄成分の量だけ「触媒成分に吸着している硫黄成分」の量が増大するので、有効触媒活性点の数が減少する。よって、「外的な上限量」が減少する。すなわち、この場合、内的な上限量が増大しても外的な上限量が減少する。上述したように、外的な上限量は、内的な上限量よりも最大酸素吸蔵量に大きな影響を及ぼす。よって、これらの結果、触媒の最大酸素吸蔵量は「減少」する。
【0033】
これに対し、酸素吸蔵物質に硫黄成分が「吸蔵されていない」場合、または、「硫黄成分が移動し得る領域が触媒成分上に存在しない」場合、リッチ運転が行われても、「内的な上限量」は変化しない。さらに、この場合、「外的な上限量」も変化しない。これらの結果、触媒の最大酸素吸蔵量は実質的に「変化しない」。
【0034】
したがって、リッチ運転を行う「前」の最大酸素吸蔵量(第1最大酸素吸蔵量)よりもリッチ運転を行った「後」の最大酸素吸蔵量(第2最大酸素吸蔵量)が「小さい」場合、「酸素吸蔵物質に吸蔵されていた硫黄成分の少なくとも一部が酸素吸蔵物質から除去された」と言える。これに対し、第1最大酸素吸蔵量よりも第2最大酸素吸蔵量が「小さくない」場合、「触媒成分に移動可能な最大の量の硫黄成分が酸素吸蔵物質から触媒成分に移動された(すなわち、酸素吸蔵物質に吸蔵されていた全ての硫黄成分が酸素吸蔵物質から除去された、または、硫黄成分が移動し得る領域が触媒成分上に存在しない)」と言える。換言すると、リッチ運転により、「硫黄成分が存在する部位」が把握される。
【0035】
上述したように、酸素吸蔵物質に吸蔵されている硫黄成分は、触媒成分を経由して排ガス中に放出される。そのため、出来る限り多量の酸素吸蔵物質に吸蔵されている硫黄成分が触媒成分に向けて移動された後に触媒成分上から硫黄成分が除去されると、内的な上限量および外的な上限量が適切に(例えば、短時間にて)回復され得ると考えられる。そこで、上記酸素吸蔵量回復手段は、リッチ運転を「第1最大酸素吸蔵量よりも第2最大酸素吸蔵量が小さくない状態となるまで(換言すると、第1最大酸素吸蔵量と第2最大酸素吸蔵量とが等しくなるまで又は第1最大酸素吸蔵量よりも第2最大酸素吸蔵量が大きくなるまで)」行った後、「リーン運転」を行う(上記(B))。なお、「第1最大酸素吸蔵量よりも第2最大酸素吸蔵量が大きくなる」場合の例については、後述される。
【0036】
リーン運転が行われると、上述したように、「触媒成分に吸着している硫黄成分」は排ガス中に放出される。すなわち、リーン運転により、触媒成分に吸着した硫黄成分が除去される。換言すると、リーン運転は、「触媒成分に吸着した硫黄成分を除去するために適した運転」である。
【0037】
このとき、「触媒成分に吸着している硫黄成分」の量が減少するので、有効触媒活性点の数が増大する。よって、「外的な上限量」が増大する。なお、このとき、「内的な上限量」は実質的に変化しない。これらの結果、触媒の最大酸素吸蔵量は「増大(回復)」する。
【0038】
このように、本発明の酸素吸蔵量回復手段は、リッチ運転を行うことによって出来る限り多量の「酸素吸蔵物質に吸蔵されている硫黄成分」を触媒成分へと移動させた後、リーン運転を行うことによって「触媒成分に吸着している硫黄成分」を排ガス中に放出させる。すなわち、本発明の酸素吸蔵量回復手段は、硫黄成分が存在する部位を把握するとともに(すなわち、リッチ運転の前後の最大酸素吸蔵量を比較することにより、酸素吸蔵物質および触媒成分のいずれに硫黄成分が存在するかを把握するとともに)、その部位に適した方法(リッチ運転またはリーン運転)によってその部位から硫黄成分を除去することができる。したがって、本発明の制御装置は、触媒に吸着・吸蔵された硫黄成分を適切に除去することができるので、触媒の最大酸素吸蔵量を適切に回復させる(すなわち、触媒の劣化を適切に解消する)ことができる。
【0039】
本発明の制御装置の一の態様として、
前記酸素吸蔵量回復手段は、上記(A)に示す運転として下記(A’)に示す運転を行い、上記(B)に示す運転として下記(B’)に示す運転を行う、ように構成され得る。
【0040】
(A’)「前記リッチ運転を「所定の期間」だけ行った後に、前記第1最大酸素吸蔵量と前記第2最大酸素吸蔵量とを比較する」ことを、前記第1最大酸素吸蔵量と前記第2最大酸素吸蔵量とが等しいと判定されるまで又は前記第1最大酸素吸蔵量よりも前記第2最大酸素吸蔵量が大きいと判定されるまで「繰り返す」運転。
(B’)前記第1最大酸素吸蔵量と前記第2最大酸素吸蔵量とが等しいと判定された後または前記第1最大酸素吸蔵量よりも前記第2最大酸素吸蔵量が大きいと判定された後に行われる、前記リーン運転。
【0041】
上述したように、上記(A)に示す運転により、「触媒成分に移動可能な最大の量」の硫黄成分が酸素吸蔵物質から触媒成分に移動される。その結果、触媒の状態が「第1最大酸素吸蔵量よりも第2最大酸素吸蔵量が小さくない」状態となる。ここで、「触媒成分に移動可能な最大の量」の硫黄成分を酸素吸蔵物質から触媒成分に移動させ得る適度なリッチ運転の程度(リッチ運転が行われる際の触媒導入ガスの酸素濃度、および、リッチ運転が行われる期間など)は、例えば、実験などによって取得されたマップに基づいて定められ得る。
【0042】
ところが、この「適度なリッチ運転の程度」は、内燃機関の構成、酸素吸蔵物質の種類、触媒成分の種類、および、触媒の構成などによっては容易に定められない場合がある。
【0043】
そこで、本態様の制御装置は、上記(A’)に示すように「リッチ運転を所定の期間だけ行うことを繰り返す」ようになっている。リッチ運転が行われると、所定の量の硫黄成分が酸素吸蔵物質から触媒成分に向けて移動される。よって、このリッチ運転を繰り返せば、いずれかの時点にて「触媒成分に移動可能な最大の量」の硫黄成分が酸素吸蔵物質から触媒成分に移動される。そして、上記(A’)に示すリッチ運転が行われた後に上記(B’)に示すリーン運転が行われることにより、上記同様、触媒成分に吸着している硫黄成分が排ガス中に放出される。
【0044】
このように、本態様の制御装置は、上記「適度なリッチ運転の程度」を容易に定められない場合であっても、簡便に「触媒成分に移動可能な最大の量」の硫黄成分を酸素吸蔵物質から触媒成分に移動させることができる。
【0045】
さらに、本発明の制御装置の他の態様の一つとして、
前記酸素吸蔵量回復手段は、
「前記酸素吸蔵量回復運転を行う前」に前記リーン運転を行う、ように構成され得る。
【0046】
上述したように、リーン運転を行うと、触媒成分に吸着している硫黄成分の量が減少するので、「触媒成分に移動可能な硫黄成分の量」が増大する。そこで、本態様の制御装置は、酸素吸蔵量回復運転を行う「前」にリーン運転を行うようになっている。これにより、酸素吸蔵量回復運転におけるリッチ運転が行われるときに「酸素吸蔵物質から触媒成分に向けて移動し得る硫黄成分の量」が、増大する。
【0047】
これにより、本態様の制御装置は、酸素吸蔵物質に吸蔵されている硫黄成分をより効率良く除去することができるので、触媒の最大酸素吸蔵量をより効率良く回復(増大)させることができる。
【0048】
ところで、酸素吸蔵量回復運転を行う「前」にリーン運転を行うと、第1最大酸素吸蔵量よりも第2最大酸素吸蔵量が「大きく」なる場合がある。具体的に述べると、例えば、触媒成分および酸素吸蔵物質の「双方」に硫黄成分が存在している触媒の最大酸素吸蔵量が「C1」である、と仮定する。この最大酸素吸蔵量C1は、「第1最大酸素吸蔵量(リッチ運転が行われる前の最大酸素吸蔵量)」に相当する。
【0049】
まず、この触媒に対して酸素吸蔵量回復運転が行われる「前」にリーン運転が行われると、触媒成分から硫黄成分が除去されるので、最大酸素吸蔵量は「C1以上のC2」となる。なお、例えば、酸素吸蔵物質が酸素を全く吸蔵することができない程度に硫黄成分を吸蔵している場合(すなわち、内的な上限量がゼロである場合)、リーン運転が行われても最大酸素吸蔵量は変化しないので、C1とC2とは一致する。次いで、酸素吸蔵量回復運転におけるリッチ運転が行われると、硫黄成分が触媒成分に移動するので、最大酸素吸蔵量は「C2よりも小さいC3」となる。この最大酸素吸蔵量C3は、「第2最大酸素吸蔵量(リッチ運転が行われた後の最大酸素吸蔵量)」に相当する。
【0050】
このとき、例えば、リーン運転が行われる前の時点において内的な上限量よりも外的な上限量が過度に小さい場合(例えば、有効触媒活性点の数が極めて少ない場合)、リーン運転が行われることによって外的な上限量が顕著に増大するので(例えば、有効触媒活性点の数が顕著に増加するので)、C1よりもC2が極めて大きくなる。そして、このリーン運転の後にリッチ運転が行われることにより、C2は減少してC3となる。ここで、C1からC2への増大の程度が、C2からC3への減少の程度よりも大きければ、C1(第1最大酸素吸蔵量)よりもC3(第2最大酸素吸蔵量)が大きくなる。
【0051】
このように、リーン運転が行われる前の時点において酸素吸蔵物質に吸蔵されていた硫黄成分の量と、その時点において触媒成分に吸着していた硫黄成分の量と、の関係(すなわち、内的な上限量と外的な上限量との関係)によっては、第1最大酸素吸蔵量(C1)よりも第2最大酸素吸蔵量(C3)が「大きく」なる場合がある。
【0052】
ところで、上述したように、本発明の制御装置は、「触媒に吸着・吸蔵された硫黄成分の挙動」と「排ガスの酸素濃度」との関係に着目し、触媒に吸着・吸蔵された硫黄成分を除去するようになっている。発明者によるさらなる種々の考察および実験などによれば、触媒に吸着・吸蔵された硫黄成分の挙動は、排ガスの酸素濃度だけではなく「触媒の温度」の影響をも受けることが確認された。
【0053】
具体的に述べると、触媒の温度が「特定の温度範囲内にある(例えば、第1温度以上第2温度以下である)」ときに排ガスの酸素濃度が「リッチ側酸素濃度」である場合、酸素吸蔵物質に吸蔵された硫黄成分が触媒成分に向けて効率良く移動する、ことが確認された。さらに、触媒の温度が「上記特定の温度範囲内の特定の温度以上である(例えば、第1温度と第2温度の間の第3温度以上である)」ときに排ガスの酸素濃度が「リーン側酸素濃度」である場合、触媒成分上に存在する硫黄成分が効率良く排ガス中に放出される、ことが確認された。
【0054】
上記確認された事項を考慮し、本態様の制御装置は、酸素吸蔵量回復運転を行う。具体的に述べると、上述した本発明の制御装置の他の態様の一つとして、
前記酸素吸蔵量回復手段は、
触媒が下記(C−1)および(C−2)に示す特性を有する触媒であるとき、
前記触媒の温度が「下記第3温度以上であり且つ下記第2温度以下」である場合に前記酸素吸蔵量回復運転を行う、ように構成され得る。
【0055】
(C−1)前記触媒の温度が「第1温度以上第2温度以下」であるときに前記触媒導入ガスの酸素濃度が前記基準酸素濃度よりも「リッチ側」の酸素濃度である場合、前記酸素吸蔵物質に吸蔵された硫黄成分が前記触媒成分に向けて移動する。
(C−2)前記触媒の温度が前記第1温度と前記第2温度の間の「第3温度以上」であるときに前記触媒導入ガスの酸素濃度が前記基準酸素濃度よりも「リーン側」の酸素濃度である場合、前記触媒成分上に存在する前記硫黄成分が前記触媒導入ガス中に放出される。
【0056】
上記第1温度、上記第2温度および上記第3温度は、触媒を構成する物質などに応じて定まる値であって、あらかじめ実験などによって取得され得る。
【0057】
なお、上記(C−1)の特性は、触媒の温度が同特性に示される温度範囲(第1温度以上第2温度以下)に含まれる場合、触媒の温度が同温度範囲に含まれない場合よりも効率良く酸素吸蔵物質に吸蔵された硫黄成分が触媒成分に向けて移動されることを意味する。すなわち、上記(C−1)の特性は、触媒の温度が同温度範囲に含まれない場合に酸素吸蔵物質に吸蔵された硫黄成分が触媒成分に向けて全く移動しないことを意味するものではない。
【0058】
上記同様、上記(C−2)の特性は、触媒の温度が同特性に示される温度範囲(第3温度以上)に含まれる場合、触媒の温度が同温度範囲に含まれない場合よりも効率良く触媒成分上に存在する硫黄成分が排ガス中に放出されることを意味する。すなわち、上記(C−2)の特性は、触媒の温度が同温度範囲に含まれない場合に触媒成分上に存在する硫黄成分が排ガス中に全く放出されないことを意味するものではない。
【0059】
上述したように、本発明の酸素吸蔵量回復手段は、酸素吸蔵物質に吸蔵されている硫黄成分を触媒成分を経由して排ガス中に放出させる、ようになっている(上記(A)および上記(B)を参照。)。ところが、触媒が上記(C−1)および(C−2)の特性を有するとき、酸素吸蔵物質に吸蔵された硫黄成分が効率良く触媒成分に移動される触媒の温度範囲(第1温度以上第2温度以下)と、触媒成分上に存在する硫黄成分が効率良く排ガス中に放出される触媒の温度範囲(第3温度以上)と、は一致しない場合がある(図6を参照。)。
【0060】
そこで、本態様の制御装置は、それら温度範囲が「一致する」場合(すなわち、触媒の温度が第3温度以上であり且つ第2温度以下である場合)、酸素吸蔵量回復運転を行うようになっている。これにより、本態様の制御装置は、触媒に吸着・吸蔵されている硫黄成分をより効率良く除去することができるので、触媒の最大酸素吸蔵量をより効率良く回復することができる。
【0061】
さらに、本発明の制御装置の他の態様の一つとして、
酸素吸蔵量回復手段は、触媒の最大酸素吸蔵量の大きさに応じて、「リッチ運転を行う際の触媒導入ガスの酸素濃度」を調整するように構成され得る。
【0062】
例えば、前記酸素吸蔵量回復手段は、
前記最大酸素吸蔵量が「第1の値」であるときに前記リッチ運転を行う場合の前記触媒導入ガスの酸素濃度である「第1酸素濃度」が、前記最大酸素吸蔵量が「前記第1の値よりも大きい第2の値」であるときに前記リッチ運転を行う場合の前記触媒導入ガスの酸素濃度である「第2酸素濃度と同一」または「前記第2酸素濃度よりもリッチ側の酸素濃度」である、ように構成され得る。
【0063】
このように、触媒の最大酸素吸蔵量が小さいほど「リッチ運転を行う際の触媒導入ガスの酸素濃度」を上記基準酸素濃度からリッチ側に離れる酸素濃度に設定することにより(すなわち、第1酸素濃度を第2酸素濃度よりもリッチ側の酸素濃度とすることにより)、触媒に吸着・吸蔵された硫黄成分をさらに効率良く除去することができる。一方、触媒の最大酸素吸蔵量の大小にかかわらずリッチ運転を行う際の触媒導入ガスの酸素濃度を変化させないことにより(すなわち、第1酸素濃度を第2酸素濃度と同一の酸素濃度とすることにより)、触媒に吸着・吸蔵された硫黄成分を除去する処理をより簡便に行うことができる。
【0064】
さらに、本発明の制御装置の他の態様の一つとして、
酸素吸蔵量回復手段は、触媒の最大酸素吸蔵量の大きさに応じて、「リーン運転を行う際の触媒導入ガスの酸素濃度」を調整するように構成され得る。
【0065】
例えば、前記酸素吸蔵量回復手段は、
前記最大酸素吸蔵量が「第3の値」であるときに前記リーン運転を行う場合の前記触媒導入ガスの酸素濃度である「第3酸素濃度」が、前記最大酸素吸蔵量が「前記第3の値よりも大きい第4の値」であるときに前記リーン運転を行う場合の前記触媒導入ガスの酸素濃度である「第4酸素濃度と同一」または「前記第4酸素濃度よりもリーン側の酸素濃度」である、ように構成され得る。
【0066】
このように、触媒の最大酸素吸蔵量が小さいほど「リーン運転を行う際の触媒導入ガスの酸素濃度」を上記基準酸素濃度からリーン側に離れる酸素濃度に設定することにより(すなわち、第3酸素濃度を第4酸素濃度よりもリーン側の酸素濃度とすることにより)、触媒に吸着・吸蔵された硫黄成分をさらに効率良く除去することができる。一方、触媒の最大酸素吸蔵量の大小にかかわらずリーン運転を行う際の触媒導入ガスの酸素濃度を変化させないことにより(すなわち、第3酸素濃度を第4酸素濃度と同一の酸素濃度とすることにより)、触媒に吸着・吸蔵された硫黄成分を除去する処理をより簡便に行うことができる。
【0067】
上述したように、本発明の制御装置は、所定の特性を有する触媒を備えた内燃機関において、触媒の最大酸素吸蔵量が減少したとき、出来る限り多量の酸素吸蔵物質に存在する硫黄成分を触媒成分に向けて移動させるとともにその硫黄成分を触媒成分から排ガス中に排出する運転(酸素吸蔵量回復運転)を行うようになっている。
【0068】
換言すると、本発明による制御装置は、
内燃機関の燃焼室から排出されるガスを浄化する触媒であって、触媒成分と酸素吸蔵物質とを有し、該触媒に導入されるガスである触媒導入ガスの酸素濃度が空気と燃料とが理論空燃比にて燃焼したときに生じるガスの酸素濃度である基準酸素濃度よりもリッチ側の酸素濃度であるときに前記酸素吸蔵物質に吸蔵された硫黄成分が前記触媒成分に向けて移動し、かつ、前記触媒導入ガスの酸素濃度が前記基準酸素濃度よりもリーン側の酸素濃度であるときに前記触媒成分上に存在する前記硫黄成分が前記触媒導入ガス中に放出される触媒、を備えた内燃機関に適用される。
【0069】
さらに、換言すると、この制御装置は、
前記触媒に吸蔵され得る酸素の最大量である最大酸素吸蔵量を取得する最大酸素吸蔵量取得手段と、
前記最大酸素吸蔵量が所定の閾値以下であるとき、
前記触媒導入ガスの酸素濃度を前記基準酸素濃度よりもリッチ側の酸素濃度とする「リッチ運転」を「前記触媒成分に移動可能な最大の量の硫黄成分が前記酸素吸蔵物質から前記触媒成分に移動するまで」行うこと、および、「前記触媒成分に移動可能な最大の量の硫黄成分が前記酸素吸蔵物質から前記触媒成分に移動したとき」に前記触媒導入ガスの酸素濃度を前記基準酸素濃度よりもリーン側の酸素濃度とする「リーン運転」を行うこと、を含む「酸素吸蔵量回復運転」を行う酸素吸蔵量回復手段と、を備えるように構成される。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の第1実施形態に係る制御装置が適用される内燃機関の概略図である。
【図2】図1に示した上流側酸素濃度センサの出力値と、空燃比と、の関係を示すグラフである。
【図3】図1に示した下流側酸素濃度センサの出力値と、空燃比と、の関係を示すグラフである。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る制御装置の作動を示す概略フローチャートである。
【図5】触媒の最大酸素吸蔵量を取得する際における、触媒上流側空燃比と、下流側酸素濃度センサの出力値と、酸素吸蔵量と、の関係を示すタイムチャートである。
【図6】触媒の温度と、排ガスの空燃比(酸素濃度)と、触媒に吸着・吸蔵された硫黄成分の主な挙動と、の関係を示す概略図である。
【図7】本発明の第1実施形態に係る制御装置のCPUが実行するルーチンを示したフローチャートである。
【図8】本発明の第1実施形態に係る制御装置のCPUが実行するルーチンを示したフローチャートである。
【図9】本発明の第1実施形態に係る制御装置のCPUが実行するルーチンを示したフローチャートである。
【図10】本発明の第1実施形態に係る制御装置のCPUが実行するルーチンを示したフローチャートである。
【図11】本発明の第1実施形態に係る制御装置のCPUが実行するルーチンを示したフローチャートである。
【図12】本発明の第2実施形態に係る制御装置のCPUが実行するルーチンを示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0071】
以下、本発明による内燃機関の制御装置の各実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0072】
(第1実施形態)
<装置の概要>
図1は、本発明の第1実施形態に係る制御装置(以下、「第1装置」とも称呼する。)を内燃機関10に適用したシステムの概略構成を示している。内燃機関10は、4サイクル火花点火式多気筒(4気筒)機関である。図1は、複数の気筒のうちの一の気筒の断面のみを示している。なお、他の気筒もこの一の気筒と同様の構成を備えている。以下、便宜上、「内燃機関10」を単に「機関10」とも称呼する。
【0073】
この機関10は、シリンダブロック部20、シリンダブロック部20の上部に固定されるシリンダヘッド部30、シリンダブロック部20に空気と燃料との混合気を導入するための吸気系統40、および、シリンダブロック部20から排出されるガス(排ガス)を機関10の外部に放出するための排気系統50、を備えている。
【0074】
シリンダブロック部20は、シリンダ21、ピストン22、コンロッド23、および、クランクシャフト24、を有している。ピストン22はシリンダ21内を往復動し、ピストン22の往復動がコンロッド23を介してクランクシャフト24に伝達され、これにより同クランクシャフト24が回転するようになっている。シリンダ21の内壁面、ピストン22の上面およびシリンダヘッド部30の下面は、燃焼室25を画成している。
【0075】
シリンダヘッド部30は、燃焼室25に連通した吸気ポート31、吸気ポート31を開閉する吸気弁32、吸気弁32を駆動するインテークカムシャフトを有するとともに同インテークカムシャフトの位相角およびリフト量を連続的に変更する可変吸気タイミング装置33、可変吸気タイミング装置33のアクチュエータ33a、燃料を吸気ポート31内に噴射するインジェクタ34、燃焼室25に連通した排気ポート35、排気ポート35を開閉する排気弁36、排気弁36を駆動するエキゾーストカムシャフト37、点火プラグ38、および、点火プラグ38に与える高電圧を発生するイグニッションコイルを含むイグナイタ39、を有している。
【0076】
なお、機関10は、インジェクタ34に代えて、または、インジェクタ34とは別に、燃料を燃焼室25内に直接噴射する筒内インジェクタ(図示省略。)を備えるように構成され得る。
【0077】
吸気系統40は、吸気ポート31を介してそれぞれの気筒に連通されたインテークマニホールド41、インテークマニホールド41の上流側の集合部に接続された吸気管42、吸気管42の端部に設けられたエアクリーナ43、吸気管42の開口面積(開口断面積)を変更することができるスロットル弁(吸気絞り弁)44、および、指示信号に応じてスロットル弁44を回転駆動するスロットル弁アクチュエータ44a、を有している。吸気ポート31、インテークマニホールド41および吸気管42は、吸気通路を構成している。
【0078】
排気系統50は、排気ポート35を介してそれぞれの気筒に連通されたエキゾーストマニホールド51、エキゾーストマニホールド51の下流側の集合部に接続された排気管52、および、排気管52に設けられた排ガス浄化用触媒53、を有している。排気ポート35、エキゾーストマニホールド51および排気管52は、排気通路を構成している。以下、排ガス浄化用触媒53を、単に「触媒53」とも称呼する。
【0079】
触媒53は、酸素吸蔵物質としてセリア・ジルコニア共触媒(CeO2−ZrO2)などを含む担体としてのアルミナなどのセラミクスと、触媒成分としての白金およびロジウムなどの貴金属と、から構成される三元触媒である。この触媒53は、触媒の温度がその活性温度以上であり、かつ、触媒53に導入される排ガスの酸素濃度が「理論空燃比の混合気が燃焼した際に生じる排ガスの酸素濃度」である場合、排ガス中の未燃物(HCなど)と窒素酸化物(NOx)との酸化還元反応を促進し、これらを高い浄化率にて同時に浄化することができる。
【0080】
機関10の外部には、機関10に加速要求および要求トルクなどを入力するためのアクセルペダル61が設けられている。アクセルペダル61は、機関10の操作者によって操作される。
【0081】
さらに、機関10は、複数のセンサを備えている。
具体的に述べると、第1装置は、吸入空気量センサ71、スロットル弁開度センサ72、カムポジションセンサ73、クランクポジションセンサ74、水温センサ75、上流側酸素濃度センサ76、下流側酸素濃度センサ77、および、アクセル開度センサ78、を備えている。
【0082】
吸入空気量センサ71は、吸気通路(吸気管42)に設けられている。吸入空気量センサ71は、吸気管42内を流れる空気の質量流量である吸入空気量(すなわち、機関10に吸入される空気の質量)に応じた信号を出力するようになっている。この信号に基づき、吸入空気量Gaの測定値が取得される。
【0083】
スロットル弁開度センサ72は、スロットル弁44の近傍に設けられている。スロットル弁開度センサ72は、スロットル弁44の開度に応じた信号を出力するようになっている。この信号に基づき、スロットル弁開度TAが取得される。
【0084】
カムポジションセンサ73は、可変吸気タイミング装置33の近傍に設けられている。カムポジションセンサ73は、インテークカムシャフトが90°回転する毎に(すなわち、クランクシャフト24が180°回転する毎に)一つのパルスを有する信号を出力するようになっている。この信号に基づき、インテークカムシャフトの回転位置(カムポジション)の測定値が取得される。
【0085】
クランクポジションセンサ74は、クランクシャフト24の近傍に設けられている。クランクポジションセンサ74は、クランクシャフト24が10°回転する毎に幅の狭いパルスを有する信号を出力するとともに、クランクシャフト24が360°回転する毎に幅の広いパルスを有する信号を出力するようになっている。これら信号に基づき、クランクシャフト24の単位時間あたりの回転数の測定値(以下、単に「機関回転速度NE」とも称呼する。)が取得される。
【0086】
水温センサ75は、シリンダ21に設けられている冷却水の通路に設けられている。水温センサ75は、冷却水の温度に応じた信号を出力するようになっている。この信号に基づき、冷却水の温度THWの測定値が取得される。
【0087】
上流側酸素濃度センサ76は、触媒53の上流側の排気通路(エキゾーストマニホールド51の集合部の近傍または集合部よりも下流側)に設けられている。上流側酸素濃度センサ76は、公知の限界電流式の酸素濃度センサである。上流側酸素濃度センサ76は、触媒53に導入される排ガスの酸素濃度に応じた信号を出力するようになっている。
【0088】
以下、排ガスの酸素濃度を「排ガスの空燃比」とも、排ガスの酸素濃度が理論空燃比の混合気が燃焼した際に生じる排ガスの酸素濃度であることを「排ガスの空燃比が理論空燃比である」とも、称呼する。さらに、以下、理論空燃比よりもリッチ側の空燃比を「リッチ空燃比」とも、理論空燃比よりもリーン側の空燃比を「リーン空燃比」とも、称呼する。
【0089】
より具体的に述べると、排ガスの空燃比が「リッチ空燃比」であるとは、排ガスに「排ガスに含まれる未燃物を全て酸化するために必要な量よりも少ない量の酸素」が含まれている状態を表す。一方、排ガスの空燃比が「リーン空燃比」であるとは、排ガスに「排ガスに含まれる未燃物を全て酸化するために必要な量よりも多い量の酸素」が含まれている状態を表す。さらに、排ガスの空燃比が「理論空燃比」であるとは、排ガスに「排ガスに含まれる未燃物を全て酸化するために必要な量の酸素」が含まれている状態を表す。
【0090】
この上流側酸素濃度センサ76は、図2に示すように、測定対象であるガスの空燃比に応じた電圧であるVabyfsを出力するようになっている。出力値Vabyfsは、排ガスの空燃比が理論空燃比であるときに値Vstoichに一致する。さらに、排ガスの空燃比が増大するにつれて(すなわち、空燃比が理論空燃比からリーン側に離れた空燃比になるにつれて)、出力値Vabyfsは増大する。この出力値Vabyfsに基づき、触媒53に導入される排ガスの空燃比が取得される。以下、触媒53に導入される排ガスの空燃比を「触媒上流側空燃比abyfs」とも称呼する。さらに、以下、図2に示す出力値Vabyfsと空燃比A/Fとの関係は「テーブルMapabyfs」とも称呼される。
【0091】
再び図1を参照すると、下流側酸素濃度センサ77は、触媒53の下流側の排気通路に設けられている。下流側酸素濃度センサ77は、公知の起電力式(濃淡電池型)の酸素濃度センサである。下流側酸素濃度センサ77は、触媒53から排出される排ガスの酸素濃度(空燃比)に応じた信号を出力するようになっている。
【0092】
この下流側酸素濃度センサ77は、図3に示すように、測定対象であるガスの空燃比に応じた電圧であるVoxsを出力するようになっている。出力値Voxsは、排ガスの空燃比がリッチ空燃比であるときに最大値(例えば、約0.9V)となり、排ガスの空燃比がリーン空燃比であるときに最小値(例えば、約0.1V)となり、排ガスの空燃比が理論空燃比であるとき最大値と最小値とのほぼ中間の電圧(例えば、約0.5V)となる。さらに、出力値Voxsは、排ガスの空燃比がリッチ空燃比からリーン空燃比へ変化するときに最大値から最小値へ急変し、排ガスの空燃比がリーン空燃比からリッチ空燃比へ変化するときに最小値から最大値へ急変する。この出力値Voxsに基づき、触媒53から排出される排ガスの空燃比が取得される。以下、触媒53から排出される排ガスの空燃比を「触媒下流側空燃比oxs」とも称呼する。
【0093】
再び図1を参照すると、アクセル開度センサ78は、アクセルペダル61に設けられている。アクセル開度センサ78は、アクセルペダル61の開度に応じた信号を出力するようになっている。この信号に基づき、アクセルペダル開度Accpが取得される。
【0094】
さらに、機関10は、電子制御装置80を備えている。
電子制御装置80は、CPU81、CPU81が実行するプログラム、テーブル(マップ)および定数などをあらかじめ記憶したROM82、CPU81が必要に応じて一時的にデータを格納するRAM83、電源が投入された状態でデータを格納すると共に格納したデータを電源が遮断されている間も保持するバックアップRAM84、ならびに、ADコンバータを含むインターフェース85を有する。CPU81、ROM82、RAM83、RAM84およびインターフェース85は、互いにバスで接続されている。
【0095】
インターフェース85は、上記各センサと接続され、CPU81にそれらセンサから出力される信号を伝えるようになっている。さらに、インターフェース85は、可変吸気タイミング装置33のアクチュエータ33a、インジェクタ34、イグナイタ39およびスロットル弁アクチュエータ44aなどと接続され、CPU81の指示に応じてそれらに指示信号を送るようになっている。
【0096】
<装置の作動の概要>
以下、機関10に適用される第1装置の作動の概要について、図4を参照しながら説明する。図4は、第1装置の作動の概要を示す概略フローチャートである。
【0097】
第1装置は、触媒53に導入される排ガスの空燃比(触媒上流側空燃比abyfs)を理論空燃比stoichに一致させる「通常運転」が行われているとき、図4のステップ410において触媒53の「最大酸素吸蔵量Cmax」を取得する。そして、第1装置は、その最大酸素吸蔵量Cmaxが所定の参照値Cmaxref以下である場合、ステップ420にて「No」と判定する。そして、この場合、第1装置は、「触媒53の最大酸素吸蔵量を回復させるための運転(酸素吸蔵量回復運転)」を行う。
【0098】
具体的に述べると、第1装置は、ステップ430に進み、触媒上流側空燃比abyfsをリッチ空燃比richとする「リッチ運転」を行う。第1装置は、リッチ運転を所定の期間だけ行った後に「通常運転」を再開するとともに、ステップ440において触媒53の最大酸素吸蔵量Cmaxを再び取得する。そして、第1装置は、ステップ450において、リッチ運転を行った「後」の最大酸素吸蔵量Cmaxがリッチ運転を行う「前」の最大酸素吸蔵量Cmaxよりも小さいか否かを判定する。以下、便宜上、リッチ運転を行う前の最大酸素吸蔵量を「第1最大酸素吸蔵量」と、リッチ運転を行った後の最大酸素吸蔵量を「第2最大酸素吸蔵量」とも称呼する。
【0099】
第2最大酸素吸蔵量が第1最大酸素吸蔵量よりも「小さい」場合、第1装置は、ステップ450にて「Yes」と判定し、接続指標Aを経由してステップ430に進み、再びリッチ運転を行う。このように、第1装置は、第2最大酸素吸蔵量が第1最大酸素吸蔵量よりも「小さくない」と判定されるまで、「リッチ運転を所定の期間だけ行った後、第2最大酸素吸蔵量と第1最大酸素吸蔵量とを比較する」ことを繰り返す。
【0100】
そして、第1装置は、第2最大酸素吸蔵量が第1最大酸素吸蔵量よりも「小さくない」と判定されると(すなわち、第1装置がステップ450にて「No」と判定すると)、ステップ460に進み、触媒上流側空燃比abyfsをリーン空燃比leanとする「リーン運転」を行う。その後、第1装置は、リーン運転を所定の期間だけ行った後、リーン運転を中止するとともに通常運転を再開する。以上が第1装置の作動の概要である。
【0101】
<触媒の最大酸素吸蔵量の取得方法>
以下、第1装置における最大酸素吸蔵量Cmaxの取得方法について、より詳細に説明する。
【0102】
第1装置は、通常運転が行われているとき、後述する「最大酸素吸蔵量取得条件」が成立すれば、触媒53の最大酸素吸蔵量Cmaxを取得するための制御(以下、「最大酸素吸蔵量取得制御」とも称呼する。)を行う。この「最大酸素吸蔵量取得制御」について、図5に示すタイムチャートを参照しながら説明する。
【0103】
このタイムチャートにおける時刻t1よりも前の期間においては、「通常運転」が行われている。すなわち、この期間において、触媒上流側空燃比abyfsは、理論空燃比stoichに一致するように制御されている。図5に示した例においては、便宜上、この期間において、下流側酸素濃度センサ77の出力値Voxsはリッチ空燃比richを示す値であり、触媒53の酸素吸蔵量OSAはゼロ近傍の所定値である、と仮定されている。なお、この所定値は、時刻t1よりも前に行われていた運転に応じて定まる値である。
【0104】
時刻t1にて「最大酸素吸蔵量取得条件」が成立すると、「最大酸素吸蔵量取得制御」が開始される。具体的に述べると、第1装置は、時刻t1にて、触媒上流側空燃比abyfsがリーン空燃比leanとなるように機関10を制御する。例えば、第1装置は、時刻t1において機関10にフューエルカット運転を行わせる。
【0105】
これにより、時刻t1において触媒上流側空燃比abyfsはリーン空燃比leanとなる。このとき、リーン空燃比leanの排ガス(すなわち、理論空燃比stoichの排ガスよりも酸素濃度が高い排ガス)が触媒53に導入されるので、触媒53はこの排ガスに含まれる酸素を吸蔵する。そのため、触媒53の酸素吸蔵量OSAは、時刻t1以降において時間が経過するにつれて増大する。一方、このとき、触媒53が排ガスに含まれる酸素を吸蔵するので、触媒53から排出される排ガスには酸素が実質的に含まれない。よって、時刻t1以降においても、下流側酸素濃度センサ77の出力値Voxsはリッチ空燃比richを示す値に維持される。
【0106】
なお、実際には、触媒上流側空燃比abyfsがリーン空燃比leanとなる制御が開始されてから、リーン空燃比leanの排ガスが上流側酸素濃度センサ76に到達するまで、には所定の時間長さを要する。そのため、実際には、時刻t1からその所定の時間長さが経過した後の時点にて、触媒導入ガスの酸素濃度abyfsがリーン空燃比leanとなる。しかし、本説明においては、理解が容易になるように、触媒導入ガスの酸素濃度abyfsは時刻t1においてリーン空燃比leanとなると仮定されている。以下、同様に、触媒上流側空燃比abyfsを変更する制御が開始されてからその空燃比の排ガスが上流側酸素濃度センサ76に到達するまでの時間長さはゼロである、と仮定して説明を続ける。
【0107】
その後、時刻t2において、触媒53の酸素吸蔵量OSAは最大酸素吸蔵量Cmaxに到達する。このとき、触媒53は排ガスに含まれる酸素を吸蔵することができないので、触媒53から排出される排ガスに酸素が含まれ始める。よって、時刻t2において、下流側酸素濃度センサ77の出力値Voxsはリーン空燃比leanを表す値となる。
【0108】
時刻t2において、第1装置は、触媒上流側空燃比abyfsがリッチ空燃比richとなるように機関10を制御する。例えば、第1装置は、時刻t2において、燃料噴射量を通常運転が行われる場合の燃料噴射量よりも増大させる運転を機関10に行わせる。
【0109】
これにより、時刻t2において触媒上流側空燃比abyfsはリッチ空燃比richとなる。このとき、リッチ空燃比richの排ガス(すなわち、理論空燃比stoichの排ガスよりも酸素濃度が低い排ガス)が触媒53に導入されるので、触媒53は吸蔵されている酸素を排ガスの酸化還元反応のために放出する。そのため、触媒53の酸素吸蔵量OSAは、時刻t2以降において時間が経過するにつれて減少する。一方、このとき、触媒53に吸蔵されている酸素によって排ガスの酸化還元反応が行われるので、触媒導入ガスに含まれる酸素(未燃酸素)は、排ガスの酸化還元反応において消費されない。そのため、触媒導入ガスに含まれる酸素(未燃酸素)は、触媒53から排出される排ガス中に残存する。よって、時刻t2以降においても、下流側酸素濃度センサ77の出力値Voxsはリーン空燃比leanを示す値に維持される。
【0110】
その後、時刻t3において、触媒53の酸素吸蔵量OSAはゼロに到達する。このとき、触媒53には酸素が吸蔵されていないので、触媒導入ガスに含まれる酸素(未燃酸素)が排ガスの酸化還元反応において消費される。そのため、触媒導入ガスに含まれる酸素(未燃酸素)は、触媒53から排出される排ガス中に残存しない。よって、触媒53から排出される排ガスには実質的に酸素が含まれない。したがって、時刻t3において、排ガスの空燃比はリッチ空燃比richを表す値となる。
【0111】
時刻t3以降において、第1装置は、「通常運転」を再開する。これにより、時刻t3以降、触媒上流側空燃比abyfsは理論空燃比stoichに一致するように制御される。なお、時刻t3以降における下流側酸素濃度センサ77の出力値Voxsおよび触媒53の酸素吸蔵量OSAは、機関10の運転状態に応じた値となる。
【0112】
上記各運転を行った後、第1装置は、下記(1)式および下記(2)式に従い、触媒53の最大酸素吸蔵量Cmaxを算出する。下記(1)式において、数値0.23は標準状態における空気の酸素濃度(重量パーセント濃度)を、Fsumは単位時間Δt内における燃料噴射量Fの積算値を、abyfsaveは触媒上流側空燃比abyfsの単位時間Δt内の平均値を、stoichは理論空燃比を、表す。下記(2)式において、同式の右辺はΔO2を時刻t2から時刻t3までの範囲において時間tについて積分した値の絶対値を表す。なお、公知のように、標準状態とは、温度がゼロ℃(273.15K)であり且つ圧力が1bar(105Pa)である状態を意味する。
【0113】
ΔO2=0.23×Fsum×(abyfsave−stoich) ・・・(1)
Cmax=|Σ[t=t2,t3](ΔO2)| ・・・(2)
【0114】
上記(1)式の右辺から明らかなように、上記(1)式により、「単位時間あたりに触媒53に導入される排ガスに含まれる酸素量ΔO2を、理論空燃比の排ガスに含まれる酸素量を基準として表した値」が算出される。簡便に述べると、ΔO2は、理論空燃比の排ガスに含まれる酸素量を基準とする酸素の過剰量または不足量を表す値である。なお、酸素量が過剰であればΔO2は正の値となり、酸素量が不足していればΔO2は負の値となる。換言すると、ΔO2が正の値であればΔO2は単位時間あたりに触媒53に「吸蔵」される酸素量を表し、ΔO2が負の値であればΔO2は単位時間あたりに触媒53から「放出」される(排ガスの酸化還元反応において消費される)酸素量を表す。
【0115】
よって、上記(2)式に示すように、時刻t2(酸素吸蔵量OSAが最大値である時点)から時刻t3(酸素吸蔵量OSAがゼロである時点)までの範囲においてΔO2を時間tについて積分することにより、触媒53の最大酸素吸蔵量Cmaxが算出される。
【0116】
なお、上記説明から明らかなように、「酸素吸蔵量OSAがゼロである時点」から「酸素吸蔵量OSAが最大値である時点」までの範囲においてΔO2を時間tについて積分することによっても、触媒53の最大酸素吸蔵量Cmaxが算出され得る。以上が、第1装置における最大酸素吸蔵量Cmaxの取得方法である。
【0117】
<触媒の最大酸素吸蔵量の回復方法>
第1装置は、上述したように取得された触媒53の最大酸素吸蔵量Cmaxが所定の参照値Cmaxref以下である場合、触媒53の特性に基づいて「最大酸素吸蔵量を回復させるための運転(酸素吸蔵量回復運転)」を行う。以下、触媒53の特性および酸素吸蔵量回復運転について、より詳細に説明する。
【0118】
1.触媒の特性
上述したように、触媒53の酸素吸蔵物質に排ガスに含まれる硫黄成分(SOxなど)が吸蔵されるとともに、触媒53の触媒成分に硫黄成分(Sなど)が吸着することにより、触媒53の最大酸素吸蔵量が減少する場合がある。発明者による種々の考察および実験などによれば、「排ガスの空燃比」と「触媒の温度」と「触媒に吸着・吸蔵された硫黄成分の挙動」との間には、密接な関連があることが確認された。この関連につき、図6を参照しながらより詳細に説明する。
【0119】
図6は、排ガスの空燃比と、触媒の温度と、触媒に吸着・吸蔵された硫黄成分の主な挙動と、の関係を示す概略図である。図6に示すように、触媒53は下記(1)〜(4)に示す特性を有することが確認された。下記特性(1)〜(4)において、活性温度T0、第1温度T1、第2温度T2および第3温度T3は、触媒53を構成する物質などに応じて定まる値であって、あらかじめ実験などによって取得され得る。
【0120】
(1)触媒53の温度TempCが活性温度T0以上第1温度T1以下であるとき、排ガスの空燃比A/Fがリーン空燃比leanである場合、触媒53に導入されるガスに含まれる硫黄成分が顕著に酸素吸蔵物質OSMに吸蔵される。
(2)触媒53の温度TempCが第1温度T1以上第2温度T2以下であるとき、排ガスの空燃比A/Fがリッチ空燃比richである場合、酸素吸蔵物質OSMに吸蔵された硫黄成分が触媒成分CCに向けて効率良く移動する。このとき、触媒成分CCに向けて移動した硫黄成分は、触媒成分CCに硫黄原子(S)の状態にて吸着する。
(3)触媒53の温度TempCが第1温度T1と第2温度T2の間の第3温度T3以上であるとき、排ガスの空燃比A/Fがリーン空燃比leanである場合、触媒成分CC上に存在する硫黄成分が効率良く排ガス中に放出される。このとき、硫黄成分は、硫黄酸化物(SOx)の状態にて排ガス中に放出される。
(4)触媒53の温度TempCが第2温度T2よりも高いとき、排ガスの空燃比A/Fがリッチ空燃比richである場合、触媒成分CC上に存在する硫黄成分が効率良く排ガス中に放出される。このとき、硫黄成分は、硫化水素(H2S)の状態にて排ガス中に放出される。
【0121】
なお、特性(3)および特性(4)に示す条件(硫黄成分が触媒成分CCから排ガス中に放出される条件)が成立しないとき、排ガス中の硫黄成分は触媒成分CCに硫黄原子(S)の状態にて吸着し得ると考えられる。触媒成分CCに吸着した硫黄成分は、酸素吸蔵物質OSMから触媒成分CCに移動した硫黄成分と同様、特性(3)および特性(4)に示す条件が成立するときに触媒成分CCから排ガス中に放出されると考えられる。
【0122】
ところで、特性(1)は、触媒53の温度TempCが同関係に示される温度範囲(活性温度T0以上第1温度T1以下)に含まれる場合、触媒53の温度TempCが同温度範囲に含まれない場合よりも顕著に硫黄成分が酸素吸蔵物質OSMに吸蔵されることを意味する。すなわち、特性(1)は、触媒53の温度TempCが同温度範囲に含まれない場合に硫黄成分が酸素吸蔵物質OSMに全く吸蔵されないことを意味するものではない。
【0123】
さらに、特性(2)は、触媒53の温度TempCが同関係に示される温度範囲(第1温度T1以上第2温度T2以下)に含まれる場合、触媒53の温度TempCが同温度範囲に含まれない場合よりも効率良く酸素吸蔵物質OSMに吸蔵された硫黄成分が触媒成分CCに向けて移動されることを意味する。すなわち、特性(2)は、触媒53の温度TempCが同温度範囲に含まれない場合に酸素吸蔵物質OSMに吸蔵された硫黄成分が触媒成分CCに向けて全く移動しないことを意味するものではない。同様に、特性(3)および特性(4)は、触媒53の温度TempCがそれぞれの関係に示される温度範囲に含まれる場合、触媒53の温度TempCがそれら温度範囲に含まれない場合よりも効率良く触媒成分CC上に存在する硫黄成分が排ガス中に放出されることを意味する。すなわち、特性(3)および特性(4)は、触媒53の温度TempCがそれら温度範囲に含まれない場合に硫黄成分が触媒成分CC上から全く放出されないことを意味するものではない。
【0124】
2.酸素吸蔵量回復運転
上述したように、触媒53の担体に含まれる酸素吸蔵物質OSMに吸蔵された硫黄成分は、所定の条件(上記特性(2)を参照。)が成立するとき、酸素吸蔵物質OSMから触媒成分CCに向けて効率良く移動する。そして、触媒成分CC上に存在する硫黄成分は、所定の条件(上記特性(3)および上記特性(4)を参照。)が成立するとき、排ガス中に効率良く放出される。すなわち、酸素吸蔵物質OSMに吸蔵された硫黄成分は、酸素吸蔵物質OSMからガス中に直接には放出されず、触媒成分CCを経由して排ガス中に放出される。
【0125】
そこで、第1装置は、上記特性(1)〜(4)のうちの特に「排ガスの空燃比」と「硫黄成分の挙動」との関係に着目し、酸素吸蔵量回復運転を行う。
【0126】
具体的に述べると、第1装置は、触媒53の最大酸素吸蔵量Cmaxが所定の参照値Cmaxref以下である場合、下記(a)および下記(b)の運転を行う。
【0127】
(a)第1装置は、まず、触媒上流側空燃比abyfsをリッチ空燃比richとする「リッチ運転」を行う。第1装置は、このリッチ運転を、リッチ運転が行われる「前」の最大酸素吸蔵量(第1最大酸素吸蔵量)とリッチ運転が行われた「後」の最大酸素吸蔵量(第2最大酸素吸蔵量)とが等しくなるまで、または、第1最大酸素吸蔵量よりも第2最大酸素吸蔵量が大きくなるまで、行う。
より具体的に述べると、第1装置は、「リッチ運転を所定の期間だけ行った後に第1最大酸素吸蔵量と第2最大酸素吸蔵量とを比較する」ことを、第1最大酸素吸蔵量と第2最大酸素吸蔵量とが等しいと判定されるまで、または、第1最大酸素吸蔵量よりも第2最大酸素吸蔵量が大きいと判定されるまで、繰り返す。
【0128】
(b)第1装置は、第1最大酸素吸蔵量と第2最大酸素吸蔵量とが等しいと判定された後または第1最大酸素吸蔵量よりも第2最大酸素吸蔵量が大きいと判定された後、触媒上流側空燃比abyfsをリーン空燃比leanとする「リーン運転」を行う。
【0129】
上記運転(a)における「所定の期間」は、吸入空気量Gaに基づいて定められる。具体的に述べると、第1装置は、リッチ運転が行われている期間における吸入空気量Gaを積算するとともに、その積算量Garsum(以下、「リッチガス積算量Garsum」とも称呼する。)が所定の閾値積算量Garsumth以上となるまでリッチ運転を継続する。この「リッチ運転が開始されてから、リッチガス積算量Garsumが閾値積算量Garsumth以上となるまで、の期間」が上記「所定の期間」に相当する。
【0130】
なお、第1装置は、リッチガス積算量Garsumが閾値積算量Garsumth以上となった後、リッチ運転を中止するとともに通常運転を再開する。リッチガス積算量Garsumは、触媒53に吸着・吸蔵されている硫黄成分の量および機関10のドライバビリティなどを考慮した適値に設定され得る。
【0131】
上記運転(a)において、リッチ運転が行われると、酸素吸蔵物質OSMに吸蔵されている硫黄成分は、触媒成分CCに向けて移動するとともに触媒成分CCに吸着する。そのため、酸素吸蔵物質OSMに吸蔵されている硫黄成分の量が減少するとともに、触媒成分CCに吸着する硫黄成分の量が増大する。そのため、酸素吸蔵物質OSMが吸蔵し得る酸素の量(すなわち、内的な上限量)は増大するものの、有効触媒活性点の数(すなわち、外的な上限量)が減少する。その結果、触媒の最大酸素吸蔵量Cmaxは減少する。
【0132】
さらに、上記運転(a)において、リッチ運転が行われることが繰り返されると、リッチ運転が行われる毎に酸素吸蔵物質OSMに吸蔵されている硫黄成分が触媒成分CCに向けて移動する。そのため、リッチ運転が行われる毎に最大酸素吸蔵量Cmaxは減少する。そして、リッチ運転が行われても最大酸素吸蔵量Cmaxが減少しなくなったとき(すなわち、第1最大酸素吸蔵量と第2最大酸素吸蔵量とが等しくなるとき又は第1最大酸素吸蔵量よりも第2最大酸素吸蔵量が大きくなるとき)、酸素吸蔵物質OSMに吸蔵されていた硫黄成分の全てが既に触媒成分CCに移動している、または、硫黄成分が移動し得る領域が触媒成分CC上に存在しない、と考えられる。
【0133】
次いで、リッチ運転が行われても最大酸素吸蔵量Cmaxが減少しなくなるまでリッチ運転が行われた後、上記運転(b)におけるリーン運転が行われる。リーン運転が行われると、触媒成分CCに吸着している硫黄成分が排ガス中に放出される。これにより、有効触媒活性点の数が増大するので、触媒53の最大酸素吸蔵量Cmaxが回復する。
【0134】
第1装置は、上記運転(b)におけるリーン運転が行われている期間における吸入空気量Gaを積算するとともに、その積算量Galsum(以下、「リーンガス積算量Galsum」とも称呼する。)が所定の閾値積算量Galsumth以上となるまでリーン運転を継続する。なお、第1装置は、リーンガス積算量Galsumが閾値積算量Galsumth以上となった後、リーン運転を中止するとともに通常運転を再開する。リーンガス積算量Galsumは、触媒成分CCに吸着していた硫黄成分が十分に除去されたと判断し得る適値に設定され得る。以上が第1装置における酸素吸蔵量回復運転である。
【0135】
<空燃比制御>
次いで、第1装置の実際の作動について説明する前に、上述した通常運転、リッチ運転およびリーン運転を行うための空燃比制御について説明する。
【0136】
第1装置における空燃比制御は、上流側酸素濃度センサ76の出力値Vabyfsに基づいて得られる上流側空燃比(触媒導入ガスの空燃比)abyfsを上流側目標空燃比abyfrに一致させるための「メインフィードバック制御」、および、下流側酸素濃度センサ77の出力値Voxsを下流側目標出力値Voxsrefに一致させるための「サブフィードバック制御」から構成される。
【0137】
より具体的に述べると、まず、上流側酸素濃度センサ76の出力値Vabyfsが、「下流側酸素濃度センサ77の出力値Voxsと下流側目標出力値Voxsrefとの差である出力偏差量DVoxsを小さくするように算出されたサブフィードバック量Vafsfb」により補正される。次いで、この補正によって得られた「フィードバック制御用出力値Vabyfc」がテーブルMapabyfs(図2を参照。)に適用されることにより、「フィードバック制御用空燃比(補正検出空燃比)abyfsc」が算出される。そして、このフィードバック制御用空燃比abyfscと「上流側目標空燃比abyfr」とが一致するように、燃料噴射量Fiが制御される。以下、この空燃比制御をより詳細に説明する。
【0138】
なお、この空燃比制御においては、現時点(時点k)における所定のパラメータの値と、現時点よりも過去の時点(時点k−N)における所定のパラメータの値と、が用いられる。以下、特に注釈が付されることなくそれらパラメータの値が記載されている場合、それら値は現時点(時点k)における値を表す。
【0139】
1.メインフィードバック制御
まず、第1装置が行うメインフィードバック制御について説明する。
第1装置は、下記(4)式に従い、フィードバック制御用出力値Vabyfcを算出する。下記(4)式において、Vabyfsは上流側酸素濃度センサ76の出力値を、Vafsfbは下流側酸素濃度センサ77の出力値Voxsに基づいて算出されるサブフィードバック量を、表す。サブフィードバック量Vafsfbの算出方法は後述される。
【0140】
Vabyfc=Vabyfs+Vafsfb ・・・(4)
【0141】
次いで、第1装置は、下記(5)式に従い、上記フィードバック制御用出力値VabyfcをテーブルMapabyfs(図2を参照。)に適用することにより、フィードバック制御用空燃比abyfscを決定する。
【0142】
abyfsc=Mapabyfs(Vabyfc) ・・・(5)
【0143】
次いで、第1装置は、下記(6)式に従い、現時点(時点k)にて気筒内に吸入される空気の量である筒内吸入空気量Mc(k)を現時点(時点k)における上流側目標空燃比abyfr(k)によって除算することにより、基本燃料噴射量Fbaseを算出する。上流側目標空燃比abyfr(k)の算出方法は後述される。
【0144】
Fbase=Mc(k)/abyfr(k) ・・・(6)
【0145】
上記筒内吸入空気量Mcは、各気筒において吸気行程が行われる毎に、その時点の吸入空気量Gaと機関回転速度NEとに基づいて算出される。例えば、筒内吸入空気量Mcは、吸入空気量Gaに対して一次遅れ処理を施した値を機関回転速度NEで除算することによって算出される。この筒内吸入空気量Mcは、吸気行程が行われる各時点(時点k−N、・・・、時点k−1、時点k、時点k+1、・・・)と関連付けられたデータとして、RAM83内に格納される。なお、筒内吸入空気量Mcは、公知の吸入空気量モデル(吸気通路における空気の挙動を模して構築されたモデル)によって算出されてもよい。
【0146】
次いで、第1装置は、下記(7)式に従い、上記基本燃料噴射量Fbaseをメインフィードバック量DFiによって補正する(基本燃料噴射量Fbaseにメインフィードバック量DFiを加える)ことにより、最終燃料噴射量Fiを算出する。そして、第1装置は、最終燃料噴射量Fiだけの燃料を吸気行程が行われる気筒のインジェクタ34から噴射させる。メインフィードバック量DFiの算出方法は後述される。
【0147】
Fi=Fbase+DFi ・・・(7)
【0148】
上記(7)式におけるメインフィードバック量DFiは、以下のように算出される。
まず、第1装置は、下記(8)式に従い、現時点よりもNサイクル前の時点(時点k−N)における筒内吸入空気量Mc(k−N)を上記フィードバック制御用空燃比(補正検出空燃比)abyfscにて除算することにより、現時点よりもNサイクル前の時点において燃焼室25に供給された燃料の量である「筒内燃料供給量Fc(k−N)」を算出する。
【0149】
Fc(k−N)=Mc(k−N)/abyfsc ・・・(8)
【0150】
なお、上記(8)式においては、現時点からNサイクル前の筒内吸入空気量Mc(k−N)を(現時点における)フィードバック制御用空燃比abyfscで除算することにより、現時点からNサイクル前の筒内燃料供給量Fc(k−N)を算出している。これは、燃焼室25内で燃焼された混合気が上流側酸素濃度センサ76に到達するまでにNサイクルに相当する時間を要するからである。
【0151】
次いで、第1装置は、下記(9)式に従い、現時点からNサイクル前の筒内吸入空気量Mc(k−N)を現時点からNサイクル前の上流側目標空燃比abyfr(k−N)で除算することにより、現時点からNサイクル前の「目標筒内燃料供給量Fcr(k−N)」を算出する。
【0152】
Fcr(k−N)=Mc(k−N)/abyfr(k−N) ・・・(9)
【0153】
次いで、第1装置は、下記(10)式に従い、現時点からNサイクル前の目標筒内燃料供給量Fcr(k−N)から筒内燃料供給量Fc(k−N)を減算することにより、「筒内燃料供給量偏差DFc」を算出する。この筒内燃料供給量偏差DFcは、「Nサイクル前の時点で筒内に供給された燃料の過不足分」を表す。
【0154】
DFc=Fcr(k−N)−Fc(k−N) ・・・(10)
【0155】
次いで、第1装置は、下記(11)式に従い、メインフィードバック量DFiを算出する。下記(11)式において、Gpはあらかじめ設定された比例ゲインを、Giはあらかじめ設定された積分ゲインを、KFBは所定の係数を、SDFcは筒内燃料供給量偏差DFcの積分値を、表す。
【0156】
DFi=(Gp・DFc+Gi・SDFc)・KFB ・・・(11)
【0157】
上記(10)式および上記(11)式に示すように、第1装置は、フィードバック制御用空燃比abyfscと上流側目標空燃比abyfrとに基づく比例積分制御によってメインフィードバック量DFiを算出する。このメインフィードバック量DFiは、上記(7)式に示すように基本燃料噴射量Fbaseに加算される。これにより、最終燃料噴射量Fiが算出される。以上が第1装置が行うメインフィードバック制御である。
【0158】
2.サブフィードバック制御
次いで、第1装置が行うサブフィードバック制御について説明する。
第1装置は、下記(12)式に従い、下流側目標出力値Voxsrefから現時点の下流側酸素濃度センサ77の出力値Voxsを減算することにより、出力偏差量DVoxsを算出する。なお、第1装置においては、触媒53の排ガス浄化性能を考慮し、下流側目標出力値Voxsrefとして「理論空燃比よりもわずかにリッチ側の空燃比に対応する値」が採用される。
【0159】
DVoxs=Voxsref−Voxs ・・・(12)
【0160】
次いで、第1装置は、下記(13)式に従い、サブフィードバック量Vafsfbを算出する。下記(13)式において、Kpはあらかじめ設定された比例ゲイン(比例定数)を、Kiはあらかじめ設定された積分ゲイン(積分定数)を、SDVoxsは出力偏差量DVoxsの積分値を、表す。
【0161】
Vafsfb=Kp・DVoxs+Ki・SDVoxs ・・・(13)
【0162】
上記(12)式および上記(13)式に示すように、第1装置は、下流側酸素濃度センサ77の出力値Voxsと下流側目標出力値Voxsrefとに基づく比例積分制御によってサブフィードバック量Vafsfbを算出する。このサブフィードバック量Vafsfbは、上記(4)式に示すように、上流側酸素濃度センサ76の出力値Vabyfsに加算される。これにより、フィードバック制御用出力値Vabyfcが算出される。以上が第1装置が行うサブフィードバック制御である。
【0163】
3.空燃比制御の総括
上述したように、第1装置は、上流側酸素濃度センサ76の出力値Vabyfsにサブフィードバック量Vafsfbを加算することによって出力値Vabyfsを補正し、この補正によって得られたフィードバック制御用出力値Vabyfc(=Vabyfs+Vafsfb)に基づいてフィードバック制御用空燃比abyfscを算出する。そして、第1装置は、算出されたフィードバック制御用空燃比abyfscと、上流側目標空燃比abyfrと、が一致するように、燃料噴射量Fiを算出する。
【0164】
その結果、上流側空燃比(触媒導入ガスの空燃比)abyfsが上流側目標空燃比abyfrに近づくとともに、下流側酸素濃度センサ77の出力値Voxsが下流側目標出力値Voxsrefに近づく。換言すると、触媒53の上流側の空燃比および下流側の空燃比の双方が、それぞれの目標値に近づけられる。以上が第1装置が行う空燃比制御である。
【0165】
<実際の作動>
以下、第1装置の実際の作動について説明する。
第1装置において、CPU81は、図7〜図11にフローチャートによって示した各ルーチンを所定のタイミング毎に繰り返し実行するようになっている。CPU81は、これらルーチンにおいて、リッチ運転フラグXRICH、リーン運転フラグXLEANおよび回復運転実行中フラグXRECを用いる。
【0166】
リッチ運転フラグXRICHは、その値が「0」であるとき、触媒53の状態がリッチ運転を行うべき状態でないことを表す。リッチ運転フラグXRICHは、その値「1」であるとき、触媒53の状態がリッチ運転を行うべき状態であることを表す。
【0167】
リーン運転フラグXLEANは、その値が「0」であるとき、触媒53の状態がリーン運転を行うべき状態でないことを表す。リーン運転フラグXLEANは、その値「1」であるとき、触媒53の状態がリーン運転を行うべき状態であることを表す。
【0168】
回復運転実行中フラグXRECは、その値が「0」であるとき、酸素吸蔵量回復運転が実行中でないことを表す。回復運転実行中フラグXRECは、その値が「1」であるとき、酸素吸蔵量回復運転が実行中であることを表す。
【0169】
リッチ運転フラグXRICHの値、リーン運転フラグXLEANの値および回復運転実行中フラグXRECの値は、機関10を搭載した車両の工場出荷時およびサービス点検実施時などにおいて触媒53に異常がないことが確認された際に電子制御装置80に対して所定の操作がなされたとき、初期値としての「0」に設定されるようになっている。
【0170】
以下、CPU81が実行する各ルーチンについて説明する。
まず、現時点において、リッチ運転フラグXRICHの値、リーン運転フラグXLEANの値および回復運転実行中フラグXRECの値の全ては「0」に設定されていると仮定する。以下、便宜上、この仮定を「初期設定仮定」とも称呼する。
【0171】
CPU81は、機関10が始動されると、所定時間が経過する毎に、図7にフローチャートによって示した「触媒温度推定ルーチン」を繰り返し実行するようになっている。CPU81は、このルーチンにより、触媒の温度TempCを取得する。
【0172】
具体的に述べると、CPU81は、所定のタイミングにて図7のステップ700から処理を開始してステップ710に進み、現時点が機関10の始動直後であるか否かを判定する。現時点が機関10の始動直後であれば、CPU81は、ステップ710にて「Yes」と判定してステップ720に進む。これに対し、現時点が機関10の始動直後でなければ、CPU81は、ステップ710にて「No」と判定してステップ730に進む。ここで、「現時点が機関10の始動直後である」と仮定して、説明を続ける。
【0173】
上記仮定に従うと、CPU81は、ステップ720に進む。CPU81は、ステップ720にて、「始動時冷却水温THWSと、触媒温度TempCと、の関係」をあらかじめ定めた始動時触媒温度推定関数f(THWS)に、現時点における冷却水温THWSを適用することにより、現時点における触媒の温度TempCを取得(推定)する。
【0174】
始動時触媒温度推定関数f(TWS)において、触媒の温度TempCは、始動時冷却水温THWSが増大するにつれて増大するように定められる。
【0175】
次いで、CPU81は、ステップ730に進む。CPU81は、ステップ730にて、「筒内吸入空気量Mcと、機関回転速度NEと、排気温度Texと、の関係」をあらかじめ定めた排気温度テーブルMapTex(Mc,NE)に現時点における筒内吸入空気量Mcおよび機関回転速度NEを適用することにより、現時点における排気温度Texを取得(推定)する。
【0176】
次いで、CPU81はステップ740に進む。CPU81は、ステップ740にて、下記(14)式に従って触媒の温度TempCを更新・取得する。下記(14)式において、αは0よりも大きく且つ1よりも小さい定数を、TempC(k)は更新される前の触媒の温度TempCを、TempC(k+1)は更新された後の触媒の温度TempCを、表す。
【0177】
TempC(k+1)=α・TempC(k)+(1−α)・Tex ・・・(14)
【0178】
ステップ740の処理を実行した後、CPU81は、ステップ795に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0179】
さらに、CPU81は、所定時間が経過する毎に、図8にフローチャートによって示した「第1最大酸素吸蔵量回復ルーチン」を繰り返し実行するようになっている。CPU81は、このルーチンにより、触媒53の最大酸素吸蔵量Cmaxを取得するとともに、取得された最大酸素吸蔵量Cmaxが参照値Cmaxref以下である場合、最大酸素吸蔵量を回復させるために如何なる運転を実行するか(すなわち、リッチ運転およびリーン運転のいずれを実行するか)を決定する。
【0180】
具体的に述べると、CPU81は、所定のタイミングにて図8のステップ800から処理を開始してステップ805に進み、リーン運転フラグXLEANの値が「0」であるか否かを判定する。上記初期設定仮定に従うと、現時点におけるリーン運転フラグXLEANの値は「0」であるので、CPU81は、ステップ805にて「Yes」と判定してステップ810に進む。
【0181】
CPU81は、ステップ810にて、リッチ運転フラグXRICHの値が「0」であるか否かを判定する。上記初期設定仮定に従うと、現時点におけるリッチ運転フラグXRICHの値は「0」であるので、CPU81は、ステップ810にて「Yes」と判定してステップ815に進む。
【0182】
CPU81は、ステップ815にて、後述する「最大酸素吸蔵量取得条件」が成立しているとき、上記(1)式および上記(2)式に従って現時点における触媒53の最大酸素吸蔵量Cmaxを取得する。なお、CPU81は、最大酸素吸蔵量取得条件が成立しないとき、同条件が成立するまで本ステップにて待機する。
【0183】
最大酸素吸蔵量取得条件について具体的に述べると、CPU81は、以下の条件a−1〜a−3の全てが成立したとき、最大酸素吸蔵量取得条件が成立すると判定する。換言すると、CPU81は、条件a−1〜a−3のうちの少なくとも1つが成立しないとき、最大酸素吸蔵量取得条件が成立しないと判定する。
【0184】
(条件a−1)冷却水の温度THWが所定の閾値以上である。
(条件a−2)スロットル弁開度TAの単位時間あたりの変化量が所定の閾値以下である。
(条件a−3)図示しない車速センサによって取得される車速の単位時間あたりの変化量が所定の閾値以下である。
【0185】
条件a−1に係る所定の閾値は、機関10の暖機が完了していると判断し得る適値に設定される。条件a−2および条件a−3に係る所定の閾値は、機関10が定常運転されていると判断し得る適値に設定される。
【0186】
以下、現時点において最大酸素吸蔵量取得条件が「成立している」と仮定して説明を続ける。この仮定に従うと、CPU81は、ステップ815にて触媒53の最大酸素吸蔵量Cmaxを取得して、ステップ820に進む。CPU81は、ステップ820にて、ステップ815にて取得された最大酸素吸蔵量Cmaxを、「現時点の最大酸素吸蔵量Cmaxnow」に格納する。
【0187】
次いで、CPU81は、ステップ825に進む。CPU81は、ステップ825にて、回復運転実行中フラグXRECの値が「0」であるか否かを判定する。上記初期設定仮定に従うと、現時点における回復運転実行中フラグXRECの値は「0」であるので、CPU81は、ステップ825にて「Yes」と判定してステップ830に進む。
【0188】
次いで、CPU81は、ステップ830に進む。CPU81は、ステップ830にて、現時点の最大酸素吸蔵量Cmaxnowが参照値Cmaxrefよりも大きいか否かを判定する。参照値Cmaxrefは、酸素吸蔵量回復運転を行う必要があると判断し得る適値に設定される。参照値Cmaxrefは、例えば、「新品状態の触媒53が使用され始めてから現時点までの期間において触媒53に導入された排ガスの総量と、最大酸素吸蔵量の参照値Cmaxrefと、の関係」をあらかじめ定めたマップなどに基づいて決定され得る。
【0189】
ここで、第1装置が実行する運転を以下の2つの場合に場合を分けて説明する。
(場合1)触媒53の最大酸素吸蔵量Cmaxが参照値Cmaxrefよりも大きい場合
(場合2)触媒53の最大酸素吸蔵量Cmaxが参照値Cmaxref以下である場合
以下、説明を続ける。
【0190】
(場合1)触媒53の最大酸素吸蔵量Cmaxが参照値Cmaxrefよりも大きい場合
この場合、CPU81は、ステップ830にて「Yes」と判定してステップ895に進み、本ルーチンを一旦終了する。
【0191】
さらに、CPU81は、任意の気筒のクランク角度が吸気行程前の所定クランク角度(例えば、排気上死点前90度クランク角)θfに一致する毎に、図9にフローチャートによって示した「燃料噴射制御ルーチン」を繰り返し実行するようになっている。CPU81は、このルーチンにより、最終燃料噴射量Fiを決定するとともに、その最終燃料噴射量Fiだけの燃料をインジェクタ34から噴射させる。以下、便宜上、クランク角が上記所定クランク角θfに一致する吸気行程前の気筒を、「燃料噴射気筒」とも称呼する。
【0192】
具体的に述べると、CPU81は、所定のタイミングにて図9のステップ900から処理を開始してステップ910に進み、リーン運転フラグXLEANの値が「0」であるか否かを判定する。現時点におけるリーン運転フラグXLEANの値は「0」であるので、CPU81は、ステップ910にて「Yes」と判定してステップ920に進む。
【0193】
CPU81は、ステップ920にて、リッチ運転フラグXRICHの値が「0」であるか否かを判定する。現時点におけるリッチ運転フラグXRICHの値は「0」であるので、CPU81は、ステップ920にて「Yes」と判定してステップ930に進む。
【0194】
CPU81は、ステップ930にて、上流側目標空燃比abyfr(k)に「理論空燃比stoich」を格納する。次いで、CPU81は、ステップ930に続くステップ940〜ステップ970の処理を順に実行する。ステップ940〜ステップ970にて実行される処理は、以下の通りである。
【0195】
ステップ940:CPU81は、吸入空気量Gaと機関回転速度NEとに基づき、燃料噴射気筒に吸入される空気の量である筒内吸入空気量Mc(k)を取得する。
ステップ950:CPU81は、上記(6)式に従い、基本燃料噴射量Fbaseを算出する。
ステップ960:CPU81は、上記(7)式に従い、基本燃料噴射量Fbaseをメインフィードバック量DFiによって補正することにより、最終燃料噴射量Fiを算出する。
ステップ970:CPU81は、最終燃料噴射量Fiの燃料を噴射するよう、燃料噴射気筒に設けられているインジェクタ34に指示を与える。
【0196】
ステップ970の処理を実行した後、CPU81は、ステップ995に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0197】
上述した各処理によって最終燃料噴射量Fiが算出されるとともに、その最終燃料噴射量Fiだけの燃料が燃料噴射気筒に噴射される。これにより、上流側目標空燃比abyfrが理論空燃比stoichに設定された「通常運転」が実行される。
【0198】
さらに、CPU81は、任意の気筒のクランク角度が吸気行程前の所定クランク角度θgに一致する毎に、図10にフローチャートによって示した「メインフィードバック量算出ルーチン」を繰り返し実行するようになっている。CPU81は、このルーチンにより、メインフィードバック量DFiを算出する。
【0199】
具体的に述べると、CPU81は、所定のタイミングにて図10のステップ1000から処理を開始してステップ1005に進み、「触媒上流側空燃比abyfsを上流側目標空燃比abyfrに一致させるフィードバック制御を行い得る条件(メインフィードバック制御条件)」が成立しているか否かを判定する。より具体的に述べると、CPU81は、ステップ1005にて、下記条件b−1〜b−5の全てが成立したとき、メインフィードバック制御条件が成立すると判定する。換言すると、CPU81は、下記条件b−1〜b−5のうちの少なくとも1つが成立しないとき、メインフィードバック制御条件が成立しないと判定する。
【0200】
(条件b−1)触媒の温度TempCが所定の閾値以上である。
(条件b−2)冷却水温THWが所定の閾値以上である。
(条件b−3)吸入空気量Gaが所定の閾値以下ある。
(条件b−4)上流側酸素濃度センサ76が活性化している。
(条件b−5)最終燃料噴射量Fiをゼロとする運転(フューエルカット運転)が実行中ではない。
【0201】
条件b−1に係る所定の閾値は、触媒53が活性化していると判断し得る適値に設定される。条件b−2に係る所定の閾値は、機関10の暖機が完了していると判断し得る適値に設定される。条件b−3に係る所定の閾値は、機関10の負荷が過大ではないと判断し得る適値に設定される。条件b−4は、メインフィードバック制御にて上流側酸素濃度センサ76の出力値Vabyfsが用いられるために設けられている条件である。条件b−5は、フューエルカット運転中は燃料噴射量を変化させることができないために設けられている条件である。よって、例えば、機関10が暖機運転されている期間中およびフューエルカット運転が実行されている期間中などにおいては、上記メインフィードバック制御条件は成立しない。
【0202】
現時点においてメインフィードバック制御条件が「成立しない」場合、CPU81は、ステップ1005にて「No」と判定してステップ1010に進む。CPU81は、ステップ1010にて、メインフィードバック量DFiにゼロを格納する。
【0203】
次いで、CPU81は、ステップ1015に進む。CPU81は、ステップ1015にて、筒内燃料供給量偏差DFcの積分値SDFcにゼロを格納する。その後、CPU81は、ステップ1095に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0204】
このように、メインフィードバック制御条件が成立しない場合、メインフィードバック量DFiはゼロに設定される。そのため、この場合、上述した「メインフィードバック量DFiによる基本燃料噴射量Fbaseの補正」は行われない(図9のステップ960を参照。)。
【0205】
次いで、CPU81は、任意の気筒のクランク角度が吸気行程前の所定クランク角度θhに一致する毎に、図11にフローチャートによって示した「サブフィードバック量算出ルーチン」を繰り返し実行するようになっている。CPU81は、このルーチンにより、サブフィードバック量Vafsfbを算出する。
【0206】
具体的に述べると、CPU81は、所定のタイミングにて図11のステップ1100から処理を開始してステップ1110に進み、「下流側酸素濃度センサ77の出力値Voxsを下流側目標出力値Voxsrefに一致させるサブフィードバック制御を行い得る条件(サブフィードバック制御条件)」が成立しているか否かを判定する。より具体的に述べると、CPU81は、ステップ1110にて、下記条件c−1〜c−3の全てが成立したとき、サブフィードバック制御条件が成立すると判定する。換言すると、CPU81は、下記条件c−1〜c−3のうちの少なくとも1つが成立しないとき、サブフィードバック制御条件が成立しないと判定する。
【0207】
(条件c−1)上記メインフィードバック条件が成立している。
(条件c−2)上流側目標空燃比abyfrが理論空燃比stoichに設定されている。
(条件c−3)下流側酸素濃度センサ77が活性化している。
【0208】
条件c−1および条件c−2は、サブフィードバック制御は通常運転が実行されている際に上記メインフィードバック制御と並行して実行される制御であるために設けられている条件である。条件c−3は、サブフィードバック制御にて下流側酸素濃度センサ77の出力値Voxsが用いられるために設けられている条件である。よって、例えば、機関10が暖機運転されている期間中、フューエルカット運転が実行されている期間中、ならびに、リッチ運転およびリーン運転が実行されている期間中などにおいては、上記サブフィードバック制御条件は成立しない。
【0209】
上述したように現時点においてメインフィードバック制御条件が成立していないので、サブフィードバック制御条件は成立しない(条件c−1を参照。)。そのため、CPU81は、ステップ1110にて「No」と判定してステップ1120に進む。CPU81は、ステップ1120にて、サブフィードバック量Vafsfbにゼロを格納する。
【0210】
次いで、CPU81は、ステップ1020に進む。CPU81は、ステップ1020にて、出力偏差量DVoxsの積分値SDVoxsにゼロを格納する。その後、CPU81は、ステップ1195に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0211】
このように、サブフィードバック制御条件が成立しない場合、サブフィードバック量Vafsfbはゼロに設定される。そのため、この場合、後述する「サブフィードバック量Vafsfbによる上流側酸素濃度センサ76の出力値Vabyfsの補正」は行われない(図10のステップ1020を参照。)。
【0212】
したがって、現時点においてメインフィードバック制御条件が成立しない場合、メインフィードバック量DFiがゼロに設定されるとともに、サブフィードバック量Vafsfbがゼロに設定される。そのため、吸入空気量Ga、機関回転速度NEおよび上流側目標空燃比abyfrに基づいて定められる基本燃料噴射量Fbaseの燃料が、燃料噴射気筒に噴射される(図9のステップ940〜ステップ970を参照。)。
【0213】
これに対し、現時点においてメインフィードバック制御条件が「成立する」場合、CPU81は、図10のステップ1000から処理を開始してステップ1005に進むと、ステップ1005にて「Yes」と判定する。次いで、CPU81は、ステップ1005に続くステップ1020〜ステップ1050の処理をこの順に実行する。ステップ1020〜ステップ1050にて実行される処理は、以下の通りである。
【0214】
ステップ1020:CPU81は、上記(4)式に従い、フィードバック制御用出力値Vabyfcを算出する。なお、上述したように、現時点におけるサブフィードバック量Vafsfbはゼロである。
ステップ1025:CPU81は、上記(5)式に従い、フィードバック制御用空燃比abyfscを決定する。
ステップ1030:CPU81は、上記(8)式に従い、現時点よりもNサイクル前の時点における筒内燃料供給量Fc(k−N)を算出する。
ステップ1035:CPU81は、上記(9)式に従い、現時点よりもNサイクル前の時点における目標筒内燃料供給量Fcr(k−N)を算出する。
ステップ1040:CPU81は、上記(10)式に従い、筒内燃料供給量偏差DFcを算出する。
ステップ1045:CPU81は、上記(11)式に従い、メインフィードバック量DFiを算出する。第1装置において、係数KFBとして「1」が採用される。筒内燃料供給量偏差DFcの積分値SDFcは、現時点までの筒内燃料供給量偏差DFcの値が積算された値である(下記ステップ1050を参照。)。
ステップ1050:CPU81は、現時点における筒内燃料供給量偏差DFcの積分値SDFcに上記ステップ1040にて取得された筒内燃料供給量偏差DFcを加算することにより、新たな筒内燃料供給量偏差の積分値SDFcを算出(更新)する。
【0215】
ステップ1050の処理を実行した後、CPU81は、ステップ1095に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0216】
上述した各処理により、メインフィードバック量DFiが比例積分制御により算出される(ステップ1045を参照。)。そして、このメインフィードバック量DFiを用いて最終燃料噴射量Fiが補正される(図9のステップ960を参照。)。
【0217】
さらに、CPU81は、所定のタイミングにて図11のステップ1100から処理を開始すると、ステップ1110に進む。現時点にてサブフィードバック制御条件が成立しなければ、CPU81は、ステップ1110にて「No」と判定し、ステップ1120およびステップ1130を経由してステップ1195に進み、本ルーチンを一旦終了する。この場合、上述したように、サブフィードバック量Vafsfbは算出されない。
【0218】
これに対し、現時点にてサブフィードバック制御条件が成立していれば、CPU81は、ステップ1110にて「Yes」と判定してステップ1140に進む。以下、現時点にてサブフィードバック制御条件が「成立している」と仮定して説明を続ける。
【0219】
上記仮定に従うと、CPU81は、ステップ1110に続くステップ1140〜ステップ1160の処理をこの順に実行する。ステップ1140〜ステップ1160にて実行される処理は、以下の通りである。
【0220】
ステップ1140:CPU81は、上記(12)式に従い、出力偏差量DVoxsを算出する。第1装置においては、触媒53の排ガス浄化性能を考慮し、下流側目標出力値Voxsrefとして理論空燃比よりもわずかにリッチ側の空燃比に対応する値が採用される。
ステップ1150:CPU81は、上記(13)式に従い、サブフィードバック量Vafsfbを算出する。第1装置において、比例ゲインKpおよび積分ゲインKiとして、あらかじめ定められた適値が採用される。
ステップ1160:CPU81は、現時点における出力偏差量の積分値SDVoxsに上記ステップ1140にて取得した出力偏差量DVoxsを加算することにより、新たな出力偏差量の積分値SDVoxsを算出(更新)する。
【0221】
ステップ1160の処理を実行した後、CPU81は、ステップ1195に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0222】
上述した各処理により、サブフィードバック量Vafsfbが比例積分制御によって算出される(ステップ1150を参照。)。そして、このサブフィードバック量Vafsfbを用いて上流側酸素濃度センサ76の出力値Vabyfsが補正される(図10のステップ1020を参照。)。さらに、補正されたフィードバック制御用出力値Vabyfcに基づいてメインフィードバック量DFiが算出されるとともに(図10のステップ1045を参照。)、このメインフィードバック量DFiを用いて最終燃料噴射量Fiが補正される(図9のステップ960を参照。)。
【0223】
以上、説明したように、触媒53の最大酸素吸蔵量Cmaxが参照値Cmaxrefよりも小さい場合、触媒上流側空燃比abyfsを理論空燃比stoichに一致させる「通常運転」が行われる。
【0224】
(場合2)触媒53の最大酸素吸蔵量Cmaxが参照値Cmaxref以下である場合
この場合、CPU81は、図8のステップ830に進むと、ステップ830にて「No」と判定してステップ835に進む。
【0225】
CPU81は、ステップ835にて、回復運転実行中フラグXRECの値に「1」を格納する。
【0226】
次いで、CPU81は、ステップ840に進む。CPU81は、ステップ840にてリッチ運転フラグXRICHの値に「1」を格納する。
【0227】
次いで、CPU81は、ステップ845に進む。CPU81は、ステップ845にて、後述する「リッチ運転」が開始された時点から現時点までに機関10に導入された吸入空気量Gaの積算量(リッチガス積算量Garsum)が、所定の閾値積算量Garsumth以上であるか否かを判定する。
【0228】
上記リッチガス積算量Garsumは、機関10が始動される際に初期値としてのゼロに設定されるようになっている。さらに、上記リッチガス積算量Garsumは、触媒53に吸着・吸蔵されている硫黄成分の量および機関10のドライバビリティなどを考慮した適値に設定されている。
【0229】
現時点は未だリッチ運転が行われていないので、リッチガス積算量Garsumは上記初期値(ゼロ)である。そのため、CPU81は、ステップ845にて「No」と判定してステップ895に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0230】
このとき、リッチ運転フラグXRICHの値が「0」から「1」に変更されたので(上記ステップ840)、CPU81は、所定のタイミングにて図9のステップ900から処理を開始すると、ステップ910を経由してステップ920に進み、ステップ920にて「No」と判定してステップ980に進む。
【0231】
CPU81は、ステップ980にて、上流側目標空燃比abyfr(k)にリッチ空燃比richを格納する。
【0232】
次いで、CPU81は、ステップ980に続くステップ940〜ステップ970の処理を順に実行し、ステップ995に進んで本ルーチンを一旦終了する。これら処理により、最終燃料噴射量Fiの燃料が燃料噴射気筒に噴射される。これにより、上流側目標空燃比abyfrがリッチ空燃比richに設定された「リッチ運転」が開始される。
【0233】
さらに、CPU81は、図10に示すルーチンおよび図11に示すルーチンを実行し、空燃比のフィードバック制御を行う。ただし、このとき、サブフィードバック制御条件は成立しないので(条件c−2を参照。)、サブフィードバック量Vafsfbはゼロに設定される(図11のステップ1110〜ステップ1130を参照。)。そして、図10に示すルーチンによって算出されるメインフィードバック量DFiにより、最終燃料噴射量Fiが補正される(図9のステップ960を参照。)。その結果、触媒上流側空燃比abyfsがリッチ空燃比richに一致する。すなわち、リッチ運転が継続される。
【0234】
リッチ運転が継続されると、酸素吸蔵物質OSMに吸蔵されている硫黄成分は、時間が経過するにつれて触媒成分CCに向けて移動する。リッチ運転が実行されている期間、CPU81は、図示しない「リッチガス積算ルーチン」を実行することにより、リッチ運転が開始された時点から現時点までに機関10に導入された吸入空気量Gaを積算する。これにより、CPU81は、リッチガス積算量Garsumを取得する。
【0235】
CPU81は、リッチ運転が実行されている期間中の所定のタイミングにて図8のステップ800から処理を開始すると、現時点におけるリーン運転フラグXLEANの値は「0」であるので、ステップ805を経過してステップ810に進む。そして、現時点におけるリッチ運転フラグXRICHの値は「1」であるので、CPU81は、ステップ810にて「No」と判定してステップ845に進む。
【0236】
このとき、現時点におけるリッチガス積算量Garsumが閾値積算量Garsumthよりも小さければ、CPU81は、ステップ845にて「No」と判定し、ステップ895に進んで本ルーチンを一旦終了する。その結果、上述したように図9〜図11のルーチンに示す処理が実行され、リッチ運転が継続される。
【0237】
これに対し、現時点におけるリッチガス積算量Garsumが閾値積算量Garsumth以上であれば、CPU81は、図8のステップ845にて「Yes」と判定してステップ850に進む。
【0238】
CPU81は、ステップ850にて、リッチ運転フラグXRICHの値に「0」を格納してステップ855に進む。
【0239】
CPU81は、ステップ855にて、現時点の最大酸素吸蔵量Cmaxnowを「リッチ運転前の最大酸素吸蔵量Cmaxold」に格納する。その後、CPU81は、ステップ895に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0240】
このとき、リッチ運転フラグXRICHの値が「1」から「0」に変更されたので(上記ステップ850)、CPU81は、所定のタイミングにて図9のステップ900から処理を開始すると、ステップ910を経由してステップ920に進み、ステップ920にて「Yes」と判定してステップ930に進む。CPU81は、ステップ930にて上流側目標空燃比abyfr(k)に理論空燃比stoichを設定する。次いで、CPU81は、ステップ940〜ステップ970の処理を順に実行する。これにより、リッチ運転が中止されるとともに、「通常運転」が再開される。
【0241】
このように、「通常運転」が実行されているときに触媒53の最大酸素吸蔵量Cmaxが参照値Cmaxref以下である場合、「リッチ運転」が開始される。さらに、リッチガス積算量Garsumが閾値積算量Garsumth以上となるまで、リッチ運転が継続される。そして、リッチガス積算量Garsumが閾値積算量Garsumth以上となると(すなわち、閾値積算量Garsumthだけの排ガスが触媒53に流入すると)、リッチ運転は中止され、通常運転が再開される。これにより、触媒53の酸素吸蔵物質OSMに吸蔵された硫黄成分の少なくとも一部が触媒成分CCに向けて移動する。
【0242】
なお、リッチガス積算量Garsumの値は、リッチ運転が中止されるときに上記「リッチガス積算ルーチン」によってゼロに設定される(リセットされる)ようになっている。
【0243】
上述したようにリッチ運転が行われた後に通常運転が再開されたとき、CPU81は、所定のタイミングにて図8のステップ800から処理を開始すると、リーン運転フラグXLEANの値およびリッチ運転フラグXRICHの値の双方が「0」であるので、ステップ805およびステップ810を経由してステップ815に進む。そして、CPU81は、ステップ815にて現時点における(すなわち、リッチ運転が行われた後の)最大酸素吸蔵量Cmaxを取得する。次いで、CPU81は、ステップ820にてその最大酸素吸蔵量Cmaxを「現時点の最大酸素吸蔵量Cmaxnow」に格納し、ステップ825に進む。現時点における回復運転実行中フラグXRECの値は「1」であるので、CPU81は、ステップ825にて「No」と判定し、ステップ860に進む。
【0244】
CPU81は、ステップ860にて、「現時点の(リッチ運転後の)最大酸素吸蔵量Cmaxnow」が「リッチ運転前の最大酸素吸蔵量Cmaxold」よりも小さいか否かを判定する。
【0245】
ここで、第1装置が実行する運転を以下の2つの場合に場合を分けて説明する。
(場合2−1)現時点の最大酸素吸蔵量Cmaxnowがリッチ運転前の最大酸素吸蔵量Cmaxoldよりも小さい場合
(場合2−2)現時点の最大酸素吸蔵量Cmaxnowがリッチ運転前の最大酸素吸蔵量Cmaxoldよりも小さくない場合
以下、説明を続ける。
【0246】
(場合2−1)現時点の最大酸素吸蔵量Cmaxnowがリッチ運転前の最大酸素吸蔵量Cmaxoldよりも小さい場合
上述したように、リッチ運転が行われると、酸素吸蔵物質OSMに吸蔵されている硫黄成分が触媒成分CCに向けて移動して触媒成分CCに吸着することにより、触媒53の最大酸素吸蔵量Cmaxが減少する。よって、リッチ運転を行っても最大酸素吸蔵量Cmaxが減少しない場合(すなわち、現時点の最大酸素吸蔵量Cmaxnowがリッチ運転前の最大酸素吸蔵量Cmaxoldよりも「小さくない」場合)、触媒成分CCに移動可能な最大の量の硫黄成分が酸素吸蔵物質OSMから触媒成分CCに移動された、と考えられる。逆に言うと、現時点の最大酸素吸蔵量Cmaxnowがリッチ運転前の最大酸素吸蔵量Cmaxoldよりも「小さい」場合、酸素吸蔵物質OSMから触媒成分CCにさらに硫黄成分が移動可能である、と考えられる。
【0247】
そこで、この場合、CPU81は、再び「リッチ運転」を行う。具体的に述べると、CPU81は、ステップ860にて「Yes」と判定してステップ840に進む。CPU81は、ステップ840にてリッチ運転フラグXRICHの値に「1」を格納する。次いで、CPU81は、ステップ845に進む。現時点におけるリッチガス積算量Garsumの値は前回のリッチ運転の後にリセットされたゼロであるので、CPU81は、ステップ845にて「No」と判定し、ステップ895に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0248】
このとき、リッチ運転フラグXRICHの値が「0」から「1」に変更されたので(上記ステップ840)、CPU81は、所定のタイミングにて図9のステップ900から処理を開始すると、ステップ910およびステップ920を経由してステップ980に進み、上流側目標空燃比abyfr(k)にリッチ空燃比richを格納する。
【0249】
次いで、CPU81は、ステップ980に続くステップ940〜ステップ970の処理を順に実行し、ステップ995に進んで本ルーチンを一旦終了する。これにより、「リッチ運転」が開始される。さらに、CPU81は、図10に示すルーチンおよび図11に示すルーチンを実行する。これにより、リッチ運転が継続される。
【0250】
その後、CPU81は、上記同様、リッチガス積算量Garsumが閾値積算量Garsumth以上となるまでリッチ運転を継続し、リッチガス積算量Garsumが閾値積算量Garsumth以上となるとリッチ運転を中止して通常運転を再開する。
【0251】
通常運転が再開されると、CPU81は、所定のタイミングにて図8のステップ800を実行し、ステップ860にて「現時点の(リッチ運転後の)最大酸素吸蔵量Cmaxnow」が「リッチ運転前の最大酸素吸蔵量Cmaxold」よりも小さいか否かを再び判定する。そして、現時点の最大酸素吸蔵量Cmaxnowがリッチ運転前の最大酸素吸蔵量Cmaxoldよりも「小さい」場合、CPU81は、上記同様、再びリッチ運転を行う。
【0252】
このように、CPU81は、「リッチ運転を所定の期間(リッチガス積算量Garsumが閾値積算量Garsumth以上となるまでの期間)だけ行った後、現時点の最大酸素吸蔵量Cmaxnowとリッチ運転前の最大酸素吸蔵量Cmaxoldとを比較すること」を繰り返す。
【0253】
リッチ運転は、現時点の最大酸素吸蔵量Cmaxnowがリッチ運転前の最大酸素吸蔵量Cmaxoldよりも「小さくない」と判定されるまで(すなわち、図8のステップ860にて「No」と判定されるまで)、繰り返される。以下、現時点の最大酸素吸蔵量Cmaxnowがリッチ運転前の最大酸素吸蔵量Cmaxoldよりも「小さくない」と判定された場合(上記場合(2−2)に相当。)について説明する。
【0254】
(場合2−2)現時点の最大酸素吸蔵量Cmaxnowがリッチ運転前の最大酸素吸蔵量Cmaxoldよりも小さくない場合
上述したようにリッチ運転が繰り返されると、リッチ運転が行われる毎に酸素吸蔵物質OSMに吸蔵されている硫黄成分が触媒成分CCに向けて移動する。そして、この場合2−2においては、触媒成分CCに移動可能な最大の量の硫黄成分が酸素吸蔵物質OSMから触媒成分CCに移動されている、と考えられる。
【0255】
そこで、この場合、CPU81は「リーン運転」を行う。具体的に述べると、CPU81は、図8のステップ860に進むと、ステップ860にて「No」と判定してステップ865に進む。
【0256】
CPU81は、ステップ865にてリーン運転フラグXLEANの値に「1」を格納する。
【0257】
次いで、CPU81は、ステップ870に進む。CPU81は、ステップ870にて、後述する「リーン運転」が開始された時点から現時点までに機関10に導入された吸入空気量Gaの積算量(リーンガス積算量Galsum)が、所定の閾値積算量Galsumth以上であるか否かを判定する。
【0258】
上記リーンガス積算量Galsumは、機関10が始動される際に初期値としてのゼロに設定されるようになっている。さらに、上記リーンガス積算量Galsumは、触媒成分CCに吸着していた硫黄成分が十分に除去されたと判断し得る適値に設定されている。
【0259】
現時点は未だリーン運転が行われていないので、リーンガス積算量Galsumは上記初期値(ゼロ)である。そのため、CPU81は、ステップ870にて「No」と判定してステップ895に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0260】
このとき、リーン運転フラグXLEANの値が「0」から「1」に変更されたので(上記ステップ865)、CPU81は、所定のタイミングにて図9のステップ900から処理を開始すると、ステップ910にて「No」と判定してステップ990に進む。
【0261】
CPU81は、ステップ990にて、上流側目標空燃比abyfr(k)にリーン空燃比leanを格納する。
【0262】
次いで、CPU81は、ステップ990に続くステップ940〜ステップ970の処理を順に実行し、ステップ995に進んで本ルーチンを一旦終了する。これら処理により、最終燃料噴射量Fiの燃料が燃料噴射気筒に噴射される。これにより、上流側目標空燃比abyfrがリーン空燃比leanに設定された「リーン運転」が開始される。
【0263】
さらに、CPU81は、図10に示すルーチンおよび図11に示すルーチンを実行し、空燃比のフィードバック制御を行う。ただし、このとき、サブフィードバック制御条件は成立しないので(条件c−2を参照。)、サブフィードバック量Vafsfbはゼロに設定される(図11のステップ1110〜ステップ1130を参照。)。そして、図10に示すルーチンによって算出されるメインフィードバック量DFiにより、最終燃料噴射量Fiが補正される(図9のステップ960を参照。)。その結果、触媒上流側空燃比abyfsがリーン空燃比leanに一致する。すなわち、リーン運転が継続される。
【0264】
リーン運転が継続されると、触媒成分CC上に存在している硫黄成分が時間が経過するにつれて排ガス中に放出される。リーン運転が実行されている期間、CPU81は、図示しない「リーンガス積算ルーチン」を実行することにより、リーン運転が開始された時点から現時点までに機関10に導入された吸入空気量Gaを積算する。これにより、CPU81は、リーンガス積算量Galsumを取得する。
【0265】
CPU81は、リーン運転が実行されている期間中の所定のタイミングにて図8のステップ800から処理を開始すると、現時点におけるリーン運転フラグXLEANの値は「1」であるので、ステップ805にて「No」と判定してステップ870に進む。
【0266】
このとき、現時点におけるリーンガス積算量Galsumが閾値積算量Galsumthよりも小さければ、CPU81は、ステップ870にて「No」と判定し、ステップ895に進んで本ルーチンを一旦終了する。その結果、上述したように図9〜図11のルーチンに示す各処理が実行されるので、リーン運転が継続される。
【0267】
これに対し、現時点におけるリーンガス積算量Galsumが閾値積算量Galsumth以上であれば、CPU81は、図8のステップ870にて「Yes」と判定してステップ875に進む。
【0268】
CPU81は、ステップ875にて、リーン運転フラグXLEANの値に「0」を格納してステップ880に進む。
【0269】
CPU81は、ステップ880にて、回復運転実行中フラグXRECの値に「0」を設定する。その後、CPU81は、ステップ895に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0270】
このとき、リーン運転フラグXLEANの値が「1」から「0」に変更されたので(上記ステップ875)、CPU81は、所定のタイミングにて図9のステップ900から処理を開始すると、ステップ910にて「Yes」と判定してステップ930に進む。CPU81は、ステップ930にて上流側目標空燃比abyfr(k)に理論空燃比stoichを設定する。次いで、CPU81は、ステップ940〜ステップ970の処理を順に実行する。これにより、リーン運転が中止されるとともに、「通常運転」が再開される。
【0271】
このように、リッチ運転が行われた「後」の最大酸素吸蔵量Cmaxnowがリッチ運転が行われる「前」の最大酸素吸蔵量Cmaxoldよりも「小さくない」場合、「リーン運転」が開始される。さらに、リーンガス積算量Galsumが閾値積算量Galsumth以上となるまで、リーン運転が継続される。そして、リーンガス積算量Galsumが閾値積算量Galsumth以上となると(すなわち、閾値積算量Galsumthだけの排ガスが触媒53に流入すると)、リーン運転は中止され、通常運転が再開される。これにより、触媒53の触媒成分CCに吸着した硫黄成分が排ガス中に放出される。その結果、触媒53の最大酸素吸蔵量Cmaxが回復(増大)する。
【0272】
なお、リーンガス積算量Galsumの値は、リーン運転が中止されるときに上記「リーンガス積算ルーチン」によってゼロに設定される(リセットされる)ようになっている。
【0273】
ところで、リッチ運転が行われた後に通常運転が再開されたとき、CPU81は、所定のタイミングにて図8のステップ800から処理を開始すると、現時点におけるリーン運転フラグXLEANの値、リッチ運転フラグXRICHの値および回復運転実行中フラグXRECの値の全ては「0」であるので、CPU81は、ステップ805〜ステップ825を経由してステップ830に進む。そして、CPU81は、現時点の最大酸素吸蔵量Cmaxnowが参照値Cmaxrefよりも大きければ「通常運転」を継続し、現時点の最大酸素吸蔵量Cmaxnowが参照値Cmaxref以下であれば再び「酸素吸蔵量回復運転」を行う。このように、CPU81は、触媒53の最大酸素吸蔵量Cmaxが参照値Cmaxrefよりも大きくなるまで、酸素吸蔵量回復運転を繰り返す。
【0274】
以上、場合1と場合2とに場合を分けて説明したように、第1装置は、触媒53の最大酸素吸蔵量Cmaxが参照値Cmaxrefよりも大きい場合、「通常運転」を行う。一方、第1装置は、触媒53の最大酸素吸蔵量Cmaxが参照値Cmaxref以下である場合、「酸素吸蔵量回復運転」を行う。具体的に述べると、第1装置は、まず、リッチ運転が行われた後の最大酸素吸蔵量Cmaxnowがリッチ運転が行われる前の最大酸素吸蔵量Cmaxoldよりも「小さくない」と判定されるまで、リッチ運転を行う。次いで、第1装置は、そのリッチ運転が行われた後にリーン運転を行う。
【0275】
その結果、リッチ運転によって出来る限り多量の「酸素吸蔵物質OSMに吸蔵されている硫黄成分」が触媒成分CCへと移動された後、リーン運転によって「触媒成分CCに吸着している硫黄成分」が排ガス中に放出されることとなる。換言すると、第1装置は、硫黄成分が存在する部位を把握するとともに(すなわち、リッチ運転の前後の最大酸素吸蔵量を比較することにより、酸素吸蔵物質OSMおよび触媒成分CCのいずれに硫黄成分が存在するかを把握するとともに)、その部位に適した方法(リッチ運転またはリーン運転)によってその部位から硫黄成分を除去することができる。したがって、第1装置は、触媒53に吸着・吸蔵された硫黄成分を適切に除去することにより、触媒53の最大酸素吸蔵量Cmaxを適切に回復(増大)させることができる。
【0276】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態に係る制御装置(以下、「第2装置」とも称呼する。)について説明する。
【0277】
<装置の概要>
第2装置は、第1装置が適用される機関10と同様の構成を有する機関(図1を参照。以下、便宜上、「機関10」と称呼する。)に適用される。そこで、第2装置が適用される装置の概要についての説明は、省略される。
【0278】
<装置の作動の概要>
第2装置は、「触媒の温度TempC」をも考慮して触媒53の最大酸素吸蔵量を回復させるための運転(酸素吸蔵量回復運転)を行う点において、第1装置と相違する。
【0279】
より具体的に述べると、第2装置は、触媒53に導入される排ガスの空燃比(触媒上流側空燃比abyfs)を理論空燃比stoichに一致させる「通常運転」が行われているとき、触媒53の「最大酸素吸蔵量Cmax」を取得する。そして、第2装置は、その最大酸素吸蔵量Cmaxが所定の参照値Cmaxref以下であるとき、触媒53の温度TempCが所定の温度範囲(T3≦TempC≦T2)に「含まれる」場合に限り、第1装置と同様の酸素吸蔵量回復運転を行う。以上が第2装置の作動の概要である。
【0280】
<触媒の最大酸素吸蔵量の取得方法>
第2装置は、第1装置と同様の方法によって触媒53の最大酸素吸蔵量Cmaxを取得する。そこで、第2装置における触媒53の最大酸素吸蔵量Cmaxの取得方法についての説明は、省略される。
【0281】
<触媒の最大酸素吸蔵量の回復方法>
第2装置は、第1装置と同様の考え方に基づき、リッチ運転とリーン運転とを組み合わせることによって触媒53の最大酸素吸蔵量Cmaxを回復する。ところが、上述した触媒53の特性(2)および特性(3)に示すように、酸素吸蔵物質OSMに吸蔵された硫黄成分が触媒成分CCに向けて効率良く移動される温度(第1温度T1以上第2温度T2以下)と、触媒成分CC上に存在する硫黄成分が排ガス中に効率良く放出される温度(第3温度T3以上)と、は一致しない場合がある。
【0282】
そこで、第2装置は、触媒53の温度TempCが「酸素吸蔵物質OSMに吸蔵された硫黄成分が触媒成分CCに向けて効率良く移動される温度であり、かつ、触媒成分CC上に存在する硫黄成分が排ガス中に効率良く放出される温度」である場合において、酸素吸蔵量回復運転を行う。換言すると、第2装置は、上述した触媒53の特性(1)〜(4)のうちの「排ガスの空燃比」と「触媒の温度」と「硫黄成分の挙動」との関係に着目し、酸素吸蔵量回復運転を行う。
【0283】
具体的に述べると、第2装置は、触媒53の最大酸素吸蔵量Cmaxが所定の参照値Cmaxref以下である場合、触媒の温度TempCが「第3温度T3以上であり且つ第2温度T2以下である温度範囲(T3≦TempC≦T2)」に含まれれば、下記(a)または下記(b)の運転を行う。なお、下記運転(a)は第1装置における運転(a)と同一であり、下記運転(b)は第1装置における運転(b)と同一である。
【0284】
(a)第2装置は、まず、リッチ運転を、リッチ運転が行われる「前」の最大酸素吸蔵量(第1最大酸素吸蔵量)とリッチ運転が行われた「後」の最大酸素吸蔵量(第2最大酸素吸蔵量)とが等しくなるまで、または、第1最大酸素吸蔵量よりも第2最大酸素吸蔵量が大きくなるまで、行う。
より具体的に述べると、第2装置は、「リッチ運転を所定の期間だけ行った後に第1最大酸素吸蔵量と第2最大酸素吸蔵量とを比較する」ことを、第1最大酸素吸蔵量と第2最大酸素吸蔵量とが等しいと判定されるまで、または、第1最大酸素吸蔵量よりも第2最大酸素吸蔵量が大きいと判定されるまで、繰り返す。
【0285】
(b)第2装置は、第1最大酸素吸蔵量と第2最大酸素吸蔵量とが等しいと判定された後または第1最大酸素吸蔵量よりも第2最大酸素吸蔵量が大きいと判定された後、「リーン運転」を行う。
【0286】
なお、上記運転(a)における「所定の期間」は、第1装置と同様、「リッチ運転が開始されてからリッチガス積算量Garsumが閾値積算量Garsumth以上となるまでの期間」である。さらに、上記運転(b)のリーン運転は、第1装置と同様、リーンガス積算量Galsumが所定の閾値積算量Galsumth以上となるまで、継続される。
【0287】
第2装置は、リーンガス積算量Galsumが閾値積算量Galsumth以上となった後、リーン運転を中止するとともに通常運転を再開する。以上が第2装置における触媒53の最大酸素吸蔵量Cmaxの回復方法である。
【0288】
<空燃比制御>
第2装置は、第1装置と同様の方法によって排ガスの空燃比を制御し、通常運転、リッチ運転およびリーン運転を行う。そこで、第2装置における空燃比制御についての説明は、省略される。
【0289】
<実際の作動>
以下、第2装置の実際の作動について説明する。
第2装置において、CPU81は、図7、図9〜図12にフローチャートによって示した各ルーチンを所定のタイミング毎に繰り返し実行するようになっている。CPU81は、これらルーチンにおいて、第1装置と同様のリッチ運転フラグXRICH、リーン運転フラグXLEANおよび回復運転実行中フラグXRECを用いる。
【0290】
以下、CPU81が実行する各ルーチンについて説明する。
第2装置は、CPU81が、図8に示すフローチャートに代えて図12に示すフローチャートを実行する点についてのみ、第1装置と相違している。そこで、以下、この相違点を中心として説明を加える。
【0291】
CPU81は、第1装置と同様、図7のルーチンを所定時間が経過する毎に繰り返し実行する。すなわち、第2装置は、排気温度Texに基づいて触媒の温度TempCの温度を取得(推定)する。
【0292】
さらに、CPU81は、所定時間が経過する毎に、図12にフローチャートによって示した「第2最大酸素吸蔵量回復ルーチン」を繰り返し実行するようになっている。CPU81は、このルーチンにより、触媒53の最大酸素吸蔵量Cmaxを取得するとともに、取得された最大酸素吸蔵量Cmaxが参照値Cmaxref以下である場合、最大酸素吸蔵量を回復させるために如何なる運転を実行するか(すなわち、リッチ運転およびリーン運転のいずれを実行するか)を決定する。
【0293】
図12に示したルーチンは、「ステップ1210が含まれている」点のみにおいて、図8に示したルーチンと相違している。そこで、図12において図8に示したステップと同一の処理を行うためのステップには、図8のそのようなステップに付された符号と同一の符号が付されている。これらステップについての詳細な説明は、適宜省略される。
【0294】
図12のルーチンについて具体的に述べると、CPU81は、所定のタイミングにて図12のステップ1200から処理を開始したとき、上記初期設定仮定に従うと、ステップ805〜ステップ825を経由してステップ830に進む。
【0295】
CPU81は、ステップ830にて、現時点の最大酸素吸蔵量Cmaxnow(ステップ815にて取得された最大酸素吸蔵量Cmax)が参照値Cmaxrefよりも大きい場合、「Yes」と判定してステップ1295に進んで本ルーチンを一旦終了する。この場合、第1装置と同様、図9〜図11のルーチンが実行されることによって「通常運転」が行われる。
【0296】
これに対し、現時点の最大酸素吸蔵量Cmaxnowが参照値Cmaxref以下である場合、CPU81は、図8のステップ830にて「No」と判定してステップ1210に進む。CPU81は、ステップ1210にて、触媒53の温度TempCが「第3温度T3以上であり且つ第2温度T2以下である温度範囲(T3≦TempC≦T2)」に含まれるか否かを判定する。現時点における触媒の温度TempCがこの温度範囲に「含まれない」場合、CPU81は、ステップ1210にて「No」と判定し、ステップ1295に進んで本ルーチンを一旦終了する。この場合、上記同様、CPU81が図9〜図11に示すルーチンを実行することによって「通常運転」が行われる。
【0297】
このように、触媒53の最大酸素吸蔵量Cmaxが参照値Cmaxref以下であっても、触媒の温度TempCが上記温度範囲(T3≦TempC≦T2)に「含まれない」場合、酸素吸蔵量回復運転(リッチ運転およりリーン運転)は行われない。
【0298】
これに対し、現時点における触媒の温度TempCが上記温度範囲(T3≦TempC≦T2)に「含まれる」場合、CPU81は、図12のステップ1210にて「Yes」と判定する。その後、CPU81は、ステップ835〜ステップ845を経由してステップ1295に進み、本ルーチンを一旦終了する。これにより、リッチ運転フラグXRICHの値が「1」に設定される(ステップ840を参照。)。この場合、第1装置と同様、図9〜図11に示すルーチンが実行されることによって「リッチ運転」が行われる。
【0299】
このように、触媒53の最大酸素吸蔵量Cmaxが参照値Cmaxref以下であり、かつ、触媒の温度TempCが上記温度範囲(T3≦TempC≦T2)に「含まれる」場合、酸素吸蔵量回復運転のうちのリッチ運転が行われる。
【0300】
その後、CPU81は、第1装置と同様に図12のステップ805、ステップ810、ステップ845およびステップ1295の処理を繰り返すことにより、リッチガス積算量Garsumが閾値積算量Garsumth以上となるまでリッチ運転を継続する。そして、CPU81は、リッチガス積算量Garsumが閾値積算量Garsumth以上となると、リッチ運転を中止して通常運転を再開する。
【0301】
次いで、CPU81は、所定のタイミングにて図8のステップ800から処理を開始すると、リーン運転フラグXLEANの値およびリッチ運転フラグXRICHの値は「0」であり、回復運転実行中フラグXRECの値は「1」であるので、ステップ805〜ステップ825を経由してステップ860に進む。
【0302】
CPU81は、ステップ860にて、現時点の最大酸素吸蔵量Cmaxnowがリッチ運転前の最大酸素吸蔵量Cmaxoldよりも「小さい」場合、「Yes」と判定する。その後、CPU81は、ステップ840およびステップ845を経由してステップ1295に進み、本ルーチンを一旦終了する。これにより、リッチ運転フラグXRICHの値が「1」に設定されるので(ステップ840を参照。)、再び「リッチ運転」が行われる。
【0303】
このように、CPU81は、第1装置と同様、「リッチ運転を所定の期間だけ行った後、現時点の最大酸素吸蔵量Cmaxnowとリッチ運転前の最大酸素吸蔵量Cmaxoldとを比較すること」を繰り返す。そして、リッチ運転が繰り返されることによって最大酸素吸蔵量Cmaxが徐々に減少し、現時点の最大酸素吸蔵量Cmaxnowがリッチ運転前の最大酸素吸蔵量Cmaxoldよりも「小さくない」と判定された場合(すなわち、ステップ860にて「No」と判定された場合)、CPU81はステップ865に進む。その後、CPU81は、ステップ865およびステップ870を経由してステップ1295に進み、本ルーチンを一旦終了する。これにより、リーン運転フラグXLEANの値が「1」に設定される(ステップ865を参照。)。この場合、第1装置と同様、図9〜図11に示すルーチンが実行されることによって「リーン運転」が行われる。
【0304】
その後、CPU81は、第1装置と同様に図12のステップ805、ステップ870およびステップ1295の処理を繰り返すことにより、リーンガス積算量Galsumが閾値積算量Galsumth以上となるまでリーン運転を継続する。そして、CPU81は、リーンガス積算量Galsumが閾値積算量Galsumth以上となると、リーン運転を中止して通常運転を再開する。
【0305】
このように、第2装置は、触媒53の最大酸素吸蔵量Cmaxが参照値Cmaxrefよりも大きい場合、「通常運転」を行う。一方、第2装置は、触媒53の最大酸素吸蔵量Cmaxが参照値Cmaxref以下であり、かつ、触媒の温度TempCが上記温度範囲(T3≦TempC≦T2)に「含まれる」場合、第1装置と同様の「酸素吸蔵量回復運転」を行う。具体的に述べると、第2装置は、リッチ運転が行われた後の最大酸素吸蔵量Cmaxnowがリッチ運転が行われる前の最大酸素吸蔵量Cmaxoldよりも「小さくない」と判定されるまで、リッチ運転を行う。次いで、第2装置は、そのリッチ運転が行われた後にリーン運転を行う。
【0306】
その結果、リッチ運転によって出来る限り多量の「酸素吸蔵物質OSMに吸蔵されている硫黄成分」が効率良く触媒成分CCへと移動された後、リーン運転によって「触媒成分CCに吸着している硫黄成分」が効率良く排ガス中に放出されることとなる。第2装置は、この酸素吸蔵量回復運転を「触媒53の温度TempCが、酸素吸蔵物質OSMに吸蔵された硫黄成分が効率良く触媒成分CCに移動される温度であり且つ触媒成分CC上に存在する硫黄成分が効率良く排ガス中に放出される温度である場合(すなわち、T3≦TempC≦T2である場合)」に行う。したがって、第2装置は、触媒53に吸着・吸蔵された硫黄成分を効率良く除去することにより、触媒53の最大酸素吸蔵量Cmaxを効率良く回復(増大)させることができる。
【0307】
ところで、上述した第1装置および第2装置の説明から明らかなように、リーン運転が行われている期間、リーン運転フラグXLEANの値は「1」に維持されている。そのため、第1装置および第2装置のいずれにおいても、CPU81は、その期間中に図8のステップ800から処理を開始してステップ805に進むと、ステップ805にて「No」と判定する。よって、リーン運転が行われている期間、触媒53の最大酸素吸蔵量Cmaxを取得すること(ステップ815)は禁止される。
【0308】
上記同様、リッチ運転が行われている期間、リッチ運転フラグXRICHの値は「1」に維持されている。そのため、第1装置および第2装置のいずれにおいても、CPU81は、その期間中に図8のステップ800から処理を開始してステップ805を経由してステップ810に進むと、ステップ810にて「No」と判定する。よって、リッチ運転が行われている期間、触媒53の最大酸素吸蔵量Cmaxを取得することは禁止される。
【0309】
これは、最大酸素吸蔵量Cmaxを取得する際に排ガスの空燃比が変化させられるため(図6を参照。)、最大酸素吸蔵量Cmaxを取得するための空燃比制御によって酸素吸蔵量回復運転(リッチ運転またはリーン運転)が妨げられることを避けるためである。
【0310】
なお、酸素吸蔵量回復運転が終了すれば、リッチ運転フラグXRICHの値およびリーン運転フラグXLEANの値は再び「0」に設定されるので(図8のステップ850およびステップ875、図12のステップ850およびステップ875を参照。)、最大酸素吸蔵量Cmaxを取得すること(図8のステップ815)が再び可能となる。
【0311】
<実施形態の総括>
以上、説明したように、本発明の各実施形態に係る制御装置(第1装置および第2装置)は、
触媒成分CCと酸素吸蔵物質OSMとを有する触媒53を備えた内燃機関10に適用される。
【0312】
この制御装置は、
前記触媒53に吸蔵され得る酸素の最大量である最大酸素吸蔵量Cmaxを取得する最大酸素吸蔵量取得手段(図8および図12のステップ815)を備える。
【0313】
さらに、この制御装置は、
前記最大酸素吸蔵量Cmaxが所定の閾値Cmaxref以下であるとき(図8および図12のステップ830にて「No」と判定されるとき)、
前記触媒53に導入されるガスである触媒導入ガスの酸素濃度を「空気と燃料とが理論空燃比にて燃焼したときに生じるガスの酸素濃度である基準酸素濃度(理論空燃比stoichに相当。)」よりもリッチ側の酸素濃度richとするリッチ運転を、「該リッチ運転が行われる前の前記最大酸素吸蔵量である第1最大酸素吸蔵量Cmaxoldと前記リッチ運転が行われた後の前記最大酸素吸蔵量である第2最大酸素吸蔵量Cmaxnowとが等しくなるまで」又は「前記第1最大酸素吸蔵量よりも前記第2最大酸素吸蔵量が大きくなるまで」(図8および図12のステップ860にて「No」と判定されるまで)行うこと、
および、
「前記第1最大酸素吸蔵量Cmaxoldと前記第2最大酸素吸蔵量Cmaxnowとが等しくなったとき」又は「前記第1最大酸素吸蔵量Cmaxoldよりも前記第2最大酸素吸蔵量Cmaxnowが大きくなったとき」に前記触媒導入ガスの酸素濃度を前記基準酸素濃度stoichよりもリーン側の酸素濃度leanとするリーン運転を行うこと、
を含む「酸素吸蔵量回復運転」を行う酸素吸蔵量回復手段(図8〜図12のルーチンを参照。)を備える。
【0314】
具体的に述べると、この制御装置において、
前記酸素吸蔵量回復手段は、
「前記リッチ運転を所定の期間だけ(リッチガス積算量Garsumが閾値積算量Garsumth以上となるまで)行った後に前記第1最大酸素吸蔵量Cmaxoldと前記第2最大酸素吸蔵量Cmaxnowとを比較する」ことを、前記第1最大酸素吸蔵量Cmaxoldと前記第2最大酸素吸蔵量Cmaxnowとが等しいと判定されるまで又は前記第1最大酸素吸蔵量Cmaxoldよりも前記第2最大酸素吸蔵量Cmaxnowが大きいと判定されるまで繰り返すとともに(図8および図12のステップ805、ステップ810およびステップ845の処理を繰り返す。)、
前記第1最大酸素吸蔵量Cmaxoldと前記第2最大酸素吸蔵量Cmaxnowとが等しいと判定された後または前記第1最大酸素吸蔵量Cmaxoldよりも前記第2最大酸素吸蔵量Cmaxnowが大きいと判定された後に(図8および図12のステップ860にて「No」と判定された後に)前記リーン運転を行うことにより、前記酸素吸蔵量回復運転を行う、ようになっている。
【0315】
さらに、第2装置において、
前記触媒53は、
該触媒53の温度が「第1温度T1以上第2温度T2以下」であるときに前記触媒導入ガスの酸素濃度が前記基準酸素濃度stoichよりもリッチ側の酸素濃度richである場合、前記酸素吸蔵物質OSMに吸蔵された硫黄成分が前記触媒成分CCに向けて移動し(上記特性(2)を参照。)、
かつ、
該触媒53の温度が「前記第1温度T1と前記第2温度T2の間の第3温度T3以上」であるときに前記触媒導入ガスの酸素濃度が前記基準酸素濃度stoichよりもリーン側の酸素濃度leanである場合、前記触媒成分CC上に存在する前記硫黄成分が前記触媒導入ガス中に放出される(上記特性(3)を参照。)、触媒53である。
【0316】
このとき、前記酸素吸蔵量回復手段は、
前記触媒53の温度が「前記第3温度T3以上であり且つ前記第2温度T2以下」である場合(図12のステップ1210にて「Yes」と判定される場合)、前記酸素吸蔵量回復運転を行う、ようになっている。
【0317】
換言すると、本発明の各実施形態に係る制御装置は、
触媒成分CCと酸素吸蔵物質OSMとを有する触媒53であって、触媒導入ガスの酸素濃度が基準酸素濃度stoichよりもリッチ側の酸素濃度richであるときに前記酸素吸蔵物質OSMに吸蔵された硫黄成分が前記触媒成分CCに向けて移動し、かつ、前記触媒導入ガスの酸素濃度が前記基準酸素濃度stoichよりもリーン側の酸素濃度leanであるときに前記触媒成分CC上に存在する前記硫黄成分が前記触媒導入ガス中に放出される触媒53、を備えた内燃機関に適用され、
前記触媒53に吸蔵され得る酸素の最大量である最大酸素吸蔵量Cmaxを取得する最大酸素吸蔵量取得手段(ステップ815)と、
前記最大酸素吸蔵量Cmaxが所定の閾値Cmaxref以下であるとき、
前記触媒導入ガスの酸素濃度を前記基準酸素濃度stoichよりもリッチ側の酸素濃度richとするリッチ運転を、前記触媒成分CCに移動可能な最大の量の硫黄成分が前記酸素吸蔵物質OSMから前記触媒成分CCに移動するまで行うこと、および、前記触媒成分CCに移動可能な最大の量の硫黄成分が前記酸素吸蔵物質OSMから前記触媒成分CCに移動したときに前記触媒導入ガスの酸素濃度を前記基準酸素濃度stoichよりもリーン側の酸素濃度leanとするリーン運転を行うこと、を含む酸素吸蔵量回復運転を行う酸素吸蔵量回復手段と、を備えている。
【0318】
本発明は上記各実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。
【0319】
例えば、第1装置および第2装置は、「リッチ運転を繰り返す」ことにより、触媒成分CCに移動可能な最大の量の硫黄成分を酸素吸蔵物質OSMから触媒成分CCに移動させるようになっている。しかし、本発明の制御装置におけるリッチ運転は、「触媒成分に移動可能な最大の量の硫黄成分を酸素吸蔵物質から触媒成分に移動させる」ことができる運転であればよく、特に制限されない。例えば、本発明の制御装置は、「触媒成分に移動可能な最大の量の硫黄成分を酸素吸蔵物質OSMから触媒成分CCに移動させる」ことができるリッチ運転の程度(リッチ運転を行う期間の長さ、触媒導入ガスの酸素濃度)をあらかじめ確認し、そのリッチ運転を「1回のみ」行うように構成され得る。
【0320】
さらに、本発明の制御装置においては、前記酸素吸蔵量回復手段は、「酸素吸蔵量回復運転を行う前」にリーン運転を行う、ように構成され得る。これにより、酸素吸蔵量回復運転が行われる前に触媒成分CC上に存在する硫黄成分が除去されるので、酸素吸蔵量回復運転を行う際により効率良く最大酸素吸蔵量Cmaxが回復され得る。
【0321】
さらに、本発明の制御装置において、酸素吸蔵量回復手段は、最大酸素吸蔵量Cmaxの大きさに応じてリッチ空燃比richおよびリーン空燃比leanを調節するように構成され得る。
【0322】
例えば、酸素吸蔵量回復手段は、最大酸素吸蔵量Cmaxが小さくなるにつれてリッチ空燃比richが理論空燃比stoichからリッチ側に離れるように(すなわち、排ガスの空燃比が小さくなるように)リッチ空燃比richを調整するように構成され得る。
【0323】
具体的に述べると、酸素吸蔵量回復手段は、
前記最大酸素吸蔵量Cmaxが「第1の値」であるときに前記リッチ運転を行う場合の前記触媒導入ガスの酸素濃度である第1酸素濃度が、前記最大酸素吸蔵量Cmaxが前記第1の値よりも大きい第2の値であるときに前記リッチ運転を行う場合の前記触媒導入ガスの酸素濃度である第2酸素濃度と同一または前記第2酸素濃度よりもリッチ側の酸素濃度richである、ように構成され得る。
【0324】
また、例えば、酸素吸蔵量回復手段は、最大酸素吸蔵量Cmaxが大きくなるにつれてリーン空燃比leanが理論空燃比stoichからリーン側に離れるように(すなわち、排ガスの空燃比が大きくなるように)リーン空燃比leanを調整するように構成され得る。
【0325】
具体的に述べると、酸素吸蔵量回復手段は、
前記最大酸素吸蔵量Cmaxが第3の値であるときに前記リーン運転を行う場合の前記触媒導入ガスの酸素濃度である第3酸素濃度が、前記最大酸素吸蔵量Cmaxが前記第3の値よりも大きい第4の値であるときに前記リーン運転を行う場合の前記触媒導入ガスの酸素濃度である第4酸素濃度と同一または前記第4酸素濃度よりもリーン側の酸素濃度である、ように構成され得る。
【0326】
上述したようにリッチ空燃比richまたはリーン空燃比leanが調整されることにより、触媒53に吸着・吸蔵された硫黄成分がさらに効率良く排除され得る。
【0327】
さらに、本発明の制御装置は、触媒53の温度TempCが活性温度T0よりも低い場合に酸素吸蔵量回復運転を行わない(禁止する)ように構成され得る。これは、触媒53の温度TempCが活性温度T0よりも低い場合、触媒53の温度TempCが活性温度T0以上である場合に比べて排ガスの浄化率が小さいためである。
【0328】
加えて、本発明の制御装置は、リッチ運転を実行する際にスロットル弁開度TAを減少させるとともに、リーン運転を実行する際にスロットル弁開度TAを増大させる、ように構成され得る。これにより、リッチ運転またはリーン運転が実行される際に出力トルクが大きく変動することが抑制され、ドライバビリティが低下することが防がれる。
【0329】
さらに、第1装置および第2装置は、リーンガス積算量Galsumが閾値積算量Galsumth以上となるまでリーン運転を継続するようになっている。しかし、本発明の制御装置は、リーンガス積算量Galsumの大きさにかかわらず、機関10の運転状態に応じてリーン運転を中止するように構成され得る。例えば、触媒53の温度TempCが所定温度よりも低い温度となった場合、および、冷却水の温度THWが所定温度よりも低い温度となった場合などにおいて、リーン運転が中止され得る。
【0330】
さらに、第1装置および第2装置は、リッチガス積算量Garsumに基づいてリッチ運転を中止するか否かを判断し、リーンガス積算量Galsumに基づいてリーン運転を中止するか否かを判断するようになっている。しかし、本発明の制御装置は、触媒53に吸着・吸蔵された硫黄成分の量に関連する所定のパラメータに基づき、リッチ運転およびリーン運転を中止するか否かを判断するように構成され得る。
【0331】
さらに、第1装置および第2装置は、三元触媒を備えた機関(火花点火式機関)に適用されている。しかし、本発明の制御装置は、NOx吸蔵還元触媒を備えた機関(例えば、ディーゼル機関)に適用され得る。
【0332】
さらに、第1装置および第2装置は、1のみの触媒を備えている。しかし、本発明の制御装置は、複数の触媒を備える機関に適用され得る。
【0333】
さらに、第1装置および第2装置は、上流側目標空燃比abyfrをリーン空燃比leanに設定することによってリーン運転を行うようになっている。ここで、本発明の制御装置は、リーン運転として「フューエルカット運転」を行うように構成され得る。
【0334】
さらに、第1装置および第2装置は、触媒53の最大酸素吸蔵量Cmaxを上記(1)式および上記(2)式に従って算出している(図5を参照。)。しかし、本発明の制御装置が触媒の最大酸素吸蔵量を取得する方法は、この方法に限定されない。例えば、本発明の制御装置は、触媒に吸着・吸蔵されている硫黄成分の量に基づいて触媒の最大酸素吸蔵量を算出するように構成され得る。
【符号の説明】
【0335】
10…内燃機関、25…燃焼室、34…インジェクタ、52…吸気管、53…触媒、76…上流側酸素濃度センサ、77…下流側酸素濃度センサ、80…電子制御装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の燃焼室から排出されるガスを浄化する触媒であって、触媒成分と酸素吸蔵物質とを有する触媒、を備えた内燃機関に適用され、
前記触媒に吸蔵され得る酸素の最大量である最大酸素吸蔵量を取得する最大酸素吸蔵量取得手段と、
前記最大酸素吸蔵量が所定の閾値以下であるとき、
前記触媒に導入されるガスである触媒導入ガスの酸素濃度を空気と燃料とが理論空燃比にて燃焼したときに生じるガスの酸素濃度である基準酸素濃度よりもリッチ側の酸素濃度とするリッチ運転を、該リッチ運転が行われる前の前記最大酸素吸蔵量である第1最大酸素吸蔵量と前記リッチ運転が行われた後の前記最大酸素吸蔵量である第2最大酸素吸蔵量とが等しくなるまで又は前記第1最大酸素吸蔵量よりも前記第2最大酸素吸蔵量が大きくなるまで行うこと、および、前記第1最大酸素吸蔵量と前記第2最大酸素吸蔵量とが等しくなったとき又は前記第1最大酸素吸蔵量よりも前記第2最大酸素吸蔵量が大きくなったときに前記触媒導入ガスの酸素濃度を前記基準酸素濃度よりもリーン側の酸素濃度とするリーン運転を行うこと、を含む酸素吸蔵量回復運転を行う酸素吸蔵量回復手段と、
を備えた内燃機関の排気浄化のための制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の制御装置において、
前記酸素吸蔵量回復手段は、
前記リッチ運転を所定の期間だけ行った後に前記第1最大酸素吸蔵量と前記第2最大酸素吸蔵量とを比較することを、前記第1最大酸素吸蔵量と前記第2最大酸素吸蔵量とが等しいと判定されるまで又は前記第1最大酸素吸蔵量よりも前記第2最大酸素吸蔵量が大きいと判定されるまで繰り返すとともに、前記第1最大酸素吸蔵量と前記第2最大酸素吸蔵量とが等しいと判定された後または前記第1最大酸素吸蔵量よりも前記第2最大酸素吸蔵量が大きいと判定された後に前記リーン運転を行うことにより、前記酸素吸蔵量回復運転を行う、内燃機関の排気浄化のための制御装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の制御装置において、
前記酸素吸蔵量回復手段は、
前記酸素吸蔵量回復運転を行う前に前記リーン運転を行う、内燃機関の排気浄化のための制御装置。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のうちのいずれか一項に記載の制御装置において、
前記触媒が、
該触媒の温度が第1温度以上第2温度以下であるときに前記触媒導入ガスの酸素濃度が前記基準酸素濃度よりもリッチ側の酸素濃度である場合、前記酸素吸蔵物質に吸蔵された硫黄成分が前記触媒成分に向けて移動し、かつ、
該触媒の温度が前記第1温度と前記第2温度の間の第3温度以上であるときに前記触媒導入ガスの酸素濃度が前記基準酸素濃度よりもリーン側の酸素濃度である場合、前記触媒成分上に存在する前記硫黄成分が前記触媒導入ガス中に放出される、触媒であるとき、
前記酸素吸蔵量回復手段は、
前記触媒の温度が前記第3温度以上であり且つ前記第2温度以下である場合に前記酸素吸蔵量回復運転を行う、内燃機関の排気浄化のための制御装置。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のうちのいずれか一項に記載の制御装置において、
前記酸素吸蔵量回復手段は、
前記最大酸素吸蔵量が第1の値であるときに前記リッチ運転を行う場合の前記触媒導入ガスの酸素濃度である第1酸素濃度が、前記最大酸素吸蔵量が前記第1の値よりも大きい第2の値であるときに前記リッチ運転を行う場合の前記触媒導入ガスの酸素濃度である第2酸素濃度と同一または前記第2酸素濃度よりもリッチ側の酸素濃度である、ように構成された内燃機関の排気浄化のための制御装置。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のうちのいずれか一項に記載の制御装置において、
前記酸素吸蔵量回復手段は、
前記最大酸素吸蔵量が第3の値であるときに前記リーン運転を行う場合の前記触媒導入ガスの酸素濃度である第3酸素濃度が、前記最大酸素吸蔵量が前記第3の値よりも大きい第4の値であるときに前記リーン運転を行う場合の前記触媒導入ガスの酸素濃度である第4酸素濃度と同一または前記第4酸素濃度よりもリーン側の酸素濃度である、ように構成された内燃機関の排気浄化のための制御装置。
【請求項7】
内燃機関の燃焼室から排出されるガスを浄化する触媒であって、触媒成分と酸素吸蔵物質とを有し、該触媒に導入されるガスである触媒導入ガスの酸素濃度が空気と燃料とが理論空燃比にて燃焼したときに生じるガスの酸素濃度である基準酸素濃度よりもリッチ側の酸素濃度であるときに前記酸素吸蔵物質に吸蔵された硫黄成分が前記触媒成分に向けて移動し、かつ、前記触媒導入ガスの酸素濃度が前記基準酸素濃度よりもリーン側の酸素濃度であるときに前記触媒成分上に存在する前記硫黄成分が前記触媒導入ガス中に放出される触媒、
を備えた内燃機関に適用され、
前記触媒に吸蔵され得る酸素の最大量である最大酸素吸蔵量を取得する最大酸素吸蔵量取得手段と、
前記最大酸素吸蔵量が所定の閾値以下であるとき、
前記触媒導入ガスの酸素濃度を前記基準酸素濃度よりもリッチ側の酸素濃度とするリッチ運転を、前記触媒成分に移動可能な最大の量の硫黄成分が前記酸素吸蔵物質から前記触媒成分に移動するまで行うこと、および、前記触媒成分に移動可能な最大の量の硫黄成分が前記酸素吸蔵物質から前記触媒成分に移動したときに前記触媒導入ガスの酸素濃度を前記基準酸素濃度よりもリーン側の酸素濃度とするリーン運転を行うこと、を含む酸素吸蔵量回復運転を行う酸素吸蔵量回復手段と、
を備えた内燃機関の排気浄化のための制御装置。
【請求項1】
内燃機関の燃焼室から排出されるガスを浄化する触媒であって、触媒成分と酸素吸蔵物質とを有する触媒、を備えた内燃機関に適用され、
前記触媒に吸蔵され得る酸素の最大量である最大酸素吸蔵量を取得する最大酸素吸蔵量取得手段と、
前記最大酸素吸蔵量が所定の閾値以下であるとき、
前記触媒に導入されるガスである触媒導入ガスの酸素濃度を空気と燃料とが理論空燃比にて燃焼したときに生じるガスの酸素濃度である基準酸素濃度よりもリッチ側の酸素濃度とするリッチ運転を、該リッチ運転が行われる前の前記最大酸素吸蔵量である第1最大酸素吸蔵量と前記リッチ運転が行われた後の前記最大酸素吸蔵量である第2最大酸素吸蔵量とが等しくなるまで又は前記第1最大酸素吸蔵量よりも前記第2最大酸素吸蔵量が大きくなるまで行うこと、および、前記第1最大酸素吸蔵量と前記第2最大酸素吸蔵量とが等しくなったとき又は前記第1最大酸素吸蔵量よりも前記第2最大酸素吸蔵量が大きくなったときに前記触媒導入ガスの酸素濃度を前記基準酸素濃度よりもリーン側の酸素濃度とするリーン運転を行うこと、を含む酸素吸蔵量回復運転を行う酸素吸蔵量回復手段と、
を備えた内燃機関の排気浄化のための制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の制御装置において、
前記酸素吸蔵量回復手段は、
前記リッチ運転を所定の期間だけ行った後に前記第1最大酸素吸蔵量と前記第2最大酸素吸蔵量とを比較することを、前記第1最大酸素吸蔵量と前記第2最大酸素吸蔵量とが等しいと判定されるまで又は前記第1最大酸素吸蔵量よりも前記第2最大酸素吸蔵量が大きいと判定されるまで繰り返すとともに、前記第1最大酸素吸蔵量と前記第2最大酸素吸蔵量とが等しいと判定された後または前記第1最大酸素吸蔵量よりも前記第2最大酸素吸蔵量が大きいと判定された後に前記リーン運転を行うことにより、前記酸素吸蔵量回復運転を行う、内燃機関の排気浄化のための制御装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の制御装置において、
前記酸素吸蔵量回復手段は、
前記酸素吸蔵量回復運転を行う前に前記リーン運転を行う、内燃機関の排気浄化のための制御装置。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のうちのいずれか一項に記載の制御装置において、
前記触媒が、
該触媒の温度が第1温度以上第2温度以下であるときに前記触媒導入ガスの酸素濃度が前記基準酸素濃度よりもリッチ側の酸素濃度である場合、前記酸素吸蔵物質に吸蔵された硫黄成分が前記触媒成分に向けて移動し、かつ、
該触媒の温度が前記第1温度と前記第2温度の間の第3温度以上であるときに前記触媒導入ガスの酸素濃度が前記基準酸素濃度よりもリーン側の酸素濃度である場合、前記触媒成分上に存在する前記硫黄成分が前記触媒導入ガス中に放出される、触媒であるとき、
前記酸素吸蔵量回復手段は、
前記触媒の温度が前記第3温度以上であり且つ前記第2温度以下である場合に前記酸素吸蔵量回復運転を行う、内燃機関の排気浄化のための制御装置。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のうちのいずれか一項に記載の制御装置において、
前記酸素吸蔵量回復手段は、
前記最大酸素吸蔵量が第1の値であるときに前記リッチ運転を行う場合の前記触媒導入ガスの酸素濃度である第1酸素濃度が、前記最大酸素吸蔵量が前記第1の値よりも大きい第2の値であるときに前記リッチ運転を行う場合の前記触媒導入ガスの酸素濃度である第2酸素濃度と同一または前記第2酸素濃度よりもリッチ側の酸素濃度である、ように構成された内燃機関の排気浄化のための制御装置。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のうちのいずれか一項に記載の制御装置において、
前記酸素吸蔵量回復手段は、
前記最大酸素吸蔵量が第3の値であるときに前記リーン運転を行う場合の前記触媒導入ガスの酸素濃度である第3酸素濃度が、前記最大酸素吸蔵量が前記第3の値よりも大きい第4の値であるときに前記リーン運転を行う場合の前記触媒導入ガスの酸素濃度である第4酸素濃度と同一または前記第4酸素濃度よりもリーン側の酸素濃度である、ように構成された内燃機関の排気浄化のための制御装置。
【請求項7】
内燃機関の燃焼室から排出されるガスを浄化する触媒であって、触媒成分と酸素吸蔵物質とを有し、該触媒に導入されるガスである触媒導入ガスの酸素濃度が空気と燃料とが理論空燃比にて燃焼したときに生じるガスの酸素濃度である基準酸素濃度よりもリッチ側の酸素濃度であるときに前記酸素吸蔵物質に吸蔵された硫黄成分が前記触媒成分に向けて移動し、かつ、前記触媒導入ガスの酸素濃度が前記基準酸素濃度よりもリーン側の酸素濃度であるときに前記触媒成分上に存在する前記硫黄成分が前記触媒導入ガス中に放出される触媒、
を備えた内燃機関に適用され、
前記触媒に吸蔵され得る酸素の最大量である最大酸素吸蔵量を取得する最大酸素吸蔵量取得手段と、
前記最大酸素吸蔵量が所定の閾値以下であるとき、
前記触媒導入ガスの酸素濃度を前記基準酸素濃度よりもリッチ側の酸素濃度とするリッチ運転を、前記触媒成分に移動可能な最大の量の硫黄成分が前記酸素吸蔵物質から前記触媒成分に移動するまで行うこと、および、前記触媒成分に移動可能な最大の量の硫黄成分が前記酸素吸蔵物質から前記触媒成分に移動したときに前記触媒導入ガスの酸素濃度を前記基準酸素濃度よりもリーン側の酸素濃度とするリーン運転を行うこと、を含む酸素吸蔵量回復運転を行う酸素吸蔵量回復手段と、
を備えた内燃機関の排気浄化のための制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
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【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−62774(P2012−62774A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−205448(P2010−205448)
【出願日】平成22年9月14日(2010.9.14)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月14日(2010.9.14)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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