説明

内燃機関の燃料噴射制御装置

【課題】 フューエルカット、及び、触媒劣化抑制のための当該フューエルカットの禁止を、より適切に行う。
【解決手段】 内燃機関(2)の燃料噴射制御装置(6)は、排気ガス浄化用の触媒(53)の温度を取得する触媒温度取得部(60、66)と、所定のフューエルカット条件が成立した場合であって触媒(53)の温度が所定温度より高いときにフューエルカットを禁止にするフューエルカット禁止部(60)と、機関回転数の変化量を取得する回転数変化量取得部(60、63)と、この変化量が所定量より大きくなった場合にフューエルカットの禁止を解除するフューエルカット禁止解除部(60)と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の燃料噴射制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、この種の装置は、燃費向上や車速の適切な制御(特に減速)のために、いわゆるフューエルカットを行うようになっている。ここで、フューエルカットとは、内燃機関の運転中にて、燃焼室内への燃料供給が(一時的に)停止されることをいう。このフューエルカットは、所定のフューエルカット条件(例えばアクセルオフで機関回転数が所定値以上)が成立した場合に実行される。
【0003】
フューエルカットが実行されると、かなり酸素濃度の高い(リーンな)排気ガスが、排気通路を通過する。このとき、当該排気通路に介装された触媒(いわゆる三元触媒:酸素吸蔵機能によりHC、CO、及びNOxを浄化することができる排気ガス浄化用触媒)において酸素吸蔵反応が急激に生じることで、当該触媒が急激に発熱する。したがって、触媒温度が高い状態で、フューエルカットが行われると、触媒が過熱状態となり、これにより当該触媒の劣化(いわゆるシンタリング:触媒に担持されている白金等の貴金属粒子の高温下の粒成長)が生じてしまう可能性がある。
【0004】
そこで、所定のフューエルカット条件が成立している場合であっても触媒温度が高いときに、触媒劣化の抑制のために、フューエルカットを禁止する技術が、従来提案されている(例えば特開2004−50878号公報等)。
【特許文献1】特開2004−50878号公報
【発明の開示】
【0005】
本発明は、フューエルカット、及び、触媒劣化抑制のための当該フューエルカットの禁止を、より適切に行い得る、内燃機関の燃料噴射制御装置を提供するものである。
【0006】
<構成>
本発明の内燃機関の燃料噴射制御装置(以下、単に「噴射制御装置」と称する。)は、触媒温度取得部と、フューエルカット禁止部と、を備えている。なお、「部」は「手段」とも言い換え得る(例えば「触媒温度取得手段」等:以下同様)。
【0007】
前記触媒温度取得部は、排気ガス浄化用の触媒(上述の三元触媒)の温度を取得するようになっている。この温度取得は、排気通路や前記触媒に装着された温度センサを用いた温度検出、又は、吸入空気流量等のパラメータを用いたオンボード推定によって行われ得る。前記フューエルカット禁止部は、所定のフューエルカット条件が成立した場合であって、前記触媒温度取得部により取得された前記温度が所定温度より高いときに、フューエルカットを禁止にするようになっている。本発明の特徴は、前記噴射制御装置が、さらに、以下の構成を備えたことにある。
【0008】
※本発明の噴射制御装置は、回転数変化量取得部と、フューエルカット禁止解除部と、を備えている。ここで、前記回転数変化量取得部は、機関回転数の変化量を取得するようになっている。また、前記フューエルカット禁止解除部は、前記機関回転数の前記変化量が所定量より大きくなった場合に、前記フューエルカットの禁止を解除するようになっている。
【0009】
・前記噴射制御装置は、さらに、車速取得部と、連結状態判定部と、を備え得る。ここで、前記車速取得部は、前記内燃機関が搭載された車両の速度(車速)を取得するようになっている。なお、この車両には、マニュアルトランスミッション装置が設けられ得る。また、前記連結状態判定部は、前記機関回転数と前記車速との比に基づいて、前記内燃機関と前記車両の駆動軸(プロペラシャフトあるいはドライブシャフト)との連結状態を判定するようになっている。
【0010】
・前記フューエルカット禁止解除部は、前記連結状態判定部にて前記連結状態がニュートラル状態であることが判定された場合であって、前記機関回転数の前記変化量が正の前記所定量より大きいときに、前記フューエルカットの禁止を解除するようになっていてもよい。
【0011】
・前記噴射制御装置は、さらに、スロットル開度補正部をさらに備え得る。このスロットル開度補正部は、前記連結状態判定部にて前記連結状態がニュートラル状態であることが判定された場合であって、前記機関回転数の前記変化量が正の前記所定量より大きいときに、当該ニュートラル状態における前記フューエルカットの禁止中のスロットル開度を減少補正するようになっている。
【0012】
<効果>
上述の構成を備えた本発明の噴射制御装置においては、前記フューエルカット条件が成立していても、前記触媒の前記温度が前記所定温度よりも高い場合、通常は前記フューエルカットが禁止される。
【0013】
但し、この場合であっても、前記機関回転数の前記変化量が前記所定量より大きくなったとき(例えば、前記機関回転数の上昇量が正の前記所定量を超えたとき)には、前記フューエルカットの禁止が解除される。
【0014】
すなわち、例えば、前記車両の運転者の操作によるシフトダウン動作(クラッチミート)時には、前記機関回転数が一旦大きく上昇する。また、前記車両が比較的急な下り坂を走行中に、車速が上昇すると、前記機関回転数が相当程度上昇する。
【0015】
あるいは、前記フューエルカットの禁止中のニュートラル状態にて、前記機関回転数が不意に上昇することがあり得る。かかる回転上昇は、吸入空気流量の測定誤差等のために筒内吸入空気量が過剰になることによって発生する。このような不意な回転数上昇は、前記車両の乗員に不快感を与える。
【0016】
そこで、触媒劣化抑制のための前記フューエルカットの禁止の条件が成立している場合であっても、上述のように前記機関回転数の前記変化量が大きい(前記機関回転数の上昇が所定程度を超える)ときには、(前記フューエルカットの禁止中であっても)かかる禁止が解除される。これにより、迅速な減速が行われたり、不快な回転数上昇が抑制されたりする。
【0017】
このように、本発明によれば、前記フューエルカット、及び、触媒劣化抑制のための当該フューエルカットの禁止が、より適切に行われ得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態(本願の出願時点において出願人が最良と考えている実施形態)について、図面を参照しつつ説明する。なお、以下の実施形態に関する記載は、法令で要求されている明細書の記載要件(記述要件・実施可能要件)を満たすために、本発明の具体化の単なる一例を、可能な範囲で具体的に記述しているものにすぎない。よって、後述するように、本発明が、以下に説明する実施形態の具体的構成に何ら限定されるものではないことは、全く当然である。実施形態に対する変形例(modification)の例示は、当該実施形態の説明中に挿入されると、首尾一貫した実施形態の説明の理解が妨げられるので、末尾にまとめて記載されている。
【0019】
<車両の全体構成>
図1は、本発明の一実施形態が適用された車両1の全体構成を概略的に示す図である。この車両1には、内燃機関2が搭載されている。内燃機関2は、シリンダブロック2a、シリンダヘッド2b、及びこれらに収容された各種の部品群から構成されている。また、車両1には、動力伝達部3、吸気系統4、排気系統5、制御装置6、等が搭載されている。以下、車両1の各部の構成について、さらに詳細に説明する。
【0020】
<<内燃機関>>
ロワーケースやオイルパン等を含むシリンダブロック2aは、シリンダヘッド2bとともに、内燃機関2の本体部分(エンジンブロック)を構成する部材である。
【0021】
シリンダブロック2aには、シリンダ21が形成されている。シリンダ21内には、ピストン22が、往復移動可能に収容されている。シリンダ21及びピストン22の下方には、クランクシャフト23が回転可能に支持されつつ収容されている。クランクシャフト23は、ピストン22の往復移動に基づいて回転駆動されるように、コンロッド24を介して、クランクシャフト23と連結されている。
【0022】
シリンダブロック2aの上端部には、シリンダヘッド2bが固定されている。シリンダヘッド2bの下端面(シリンダブロック2aと対向する面)には、凹部が形成されている。この凹部は、シリンダ21の上端部に対応する位置に設けられている。この凹部の内側の空間と、ピストン22の頂面よりも上側のシリンダ21の内側の空間と、によって、燃焼室CCが形成されている。
【0023】
シリンダヘッド2bには、燃焼室CCと連通するガス通路である吸気ポート25及び排気ポート26が形成されている。また、シリンダヘッド2bには、吸気ポート25及び排気ポート26を開閉するための動弁機構27が設けられている。この動弁機構27には、吸気ポート25を開閉する吸気バルブ27a、排気ポート26を開閉する排気バルブ27b、及びこれら吸気バルブ27aや排気バルブ27bを所定のタイミングで開閉動作させるための機構を備えている。
【0024】
さらに、シリンダヘッド2bには、インジェクタ28が装着されている。インジェクタ28は、燃料混合気を燃焼室CC内に供給するために、吸気ポート25内に燃料を噴射するようになっている。
【0025】
<<動力伝達部>>
動力伝達部3は、内燃機関2の運転時に生じるクランクシャフト23の回転駆動力を駆動輪31に伝達するように構成されている。この駆動輪31は、ドライブシャフト32、デファレンシャルギヤ機構33、及びプロペラシャフト34を介して、マニュアルトランスミッション装置35と接続されている。
【0026】
マニュアルトランスミッション装置35は、クランクシャフト23の回転駆動力をプロペラシャフト34に伝達し得るように、クラッチ機構35aや変速機構35b等を備えている。クラッチ機構35a及び変速機構35bは、周知の通り、運転者による図示しないクラッチペダルやシフトレバーの操作によって動作するようになっている。また、本実施形態においては、変速機構35bは、減速比の異なる1速から4速までの4つのギヤ列を備えている。
【0027】
<<吸排気系統>>
吸気系統4は、吸気管41と、エアフィルタ42と、スロットルバルブ43と、を備えている。インテークマニホールドを含む吸気管41は、吸気ポート25とともに吸気通路を形成するものであって、吸気ポート25に連通するように設けられている。この吸気管41には、エアフィルタ42が介装されている。吸気管41における、エアフィルタ42と吸気ポート25との間の位置には、スロットルバルブ43が介装されている。スロットルバルブ43は、吸気通路の開口断面積を可変とするように設けられていて、スロットルバルブアクチュエータ43aによって駆動されるようになっている。
【0028】
排気系統5は、エキゾーストマニホールド51と、排気管52と、上流側触媒53と、下流側触媒54と、を備えている。エキゾーストマニホールド51は、排気ポート26に連通するように設けられている。排気管52は、排気ポート26及びエキゾーストマニホールド51とともに排気通路を構成するものであって、エキゾーストマニホールド51に接続されている。この排気管52には、上流側触媒53及び下流側触媒54が介装されている。上流側触媒53及び下流側触媒54は、いわゆる三元触媒であって、下流側触媒54は上流側触媒53よりも排気ガスの流動方向における下流側に配置されている。
【0029】
<制御装置の構成>
本発明の噴射制御装置の一実施形態に係る制御装置6は、インジェクタ28からの燃料噴射状態やスロットルバルブ43の開度を含む内燃機関2の運転状態を制御するように、以下の通りに構成されている。
【0030】
制御装置6は、エンジン電子コントロールユニット(ECU)60を備えている。本発明の触媒温度取得部、フューエルカット禁止部、回転数変化量取得部、フューエルカット禁止解除部、車速取得部、連結状態判定部、及びスロットル開度補正部を構成するECU60は、CPU60aと、ROM60bと、RAM60cと、バックアップRAM60dと、インターフェース60eと、双方向バス60fと、を備えている。CPU60a、ROM60b、RAM60c、バックアップRAM60d、及びインターフェース60eは、双方向バス60fによって互いに接続されている。
【0031】
ROM60bには、CPU60aにより実行されるルーチン(プログラム)の他に、このルーチンの実行の際に用いられるテーブル(マップ)やパラメータ等が、予め格納されている。RAM60cは、CPU60aによりルーチンが実行される際に、必要に応じてデータを一時的に格納し得るように構成されている。バックアップRAM60dは、電源が投入された状態でCPU60aによりルーチンが実行される際にデータを格納するとともに、この格納されたデータを電源遮断後も保持し得るように構成されている。
【0032】
インターフェース60eは、後述する各種センサと電気的に接続されていて、これらからの信号をCPU60aに伝達し得るように構成されている。また、インターフェース60eは、インジェクタ28やスロットルバルブアクチュエータ43a等の動作部と電気的に接続されていて、これらの動作部を動作させるための動作信号をCPU60aからこれらの動作部に伝達し得るように構成されている。すなわち、ECU60は、上述の各種センサ等からの信号を受け取るとともに、当該信号に応じたCPU60aの演算結果に基づいて、上述の動作信号を各動作部に送出するように構成されている。
【0033】
<<各種センサ>>
本実施形態の車両1には、エアフローメータ61と、スロットルポジションセンサ62と、クランクポジションセンサ63と、冷却水温センサ64と、上流側空燃比センサ65aと、下流側空燃比センサ65bと、触媒床温センサ66と、車輪速センサ67と、アクセル開度センサ68と、が設けられている。
【0034】
エアフローメータ61は、吸気管41における、エアフィルタ42よりも下流側の位置に介装されている。このエアフローメータ61は、吸気管41内を流れる吸入空気の単位時間あたりの質量流量である吸入空気流量Gaに対応する信号を出力するように構成されている。
【0035】
ECU60及びスロットルバルブアクチュエータ43aとともに本発明のスロットル開度補正部を構成するスロットルポジションセンサ62は、吸気管41における、スロットルバルブ43に対応する位置に装着されている。このスロットルポジションセンサ62は、スロットルバルブ43の回転位相であるスロットルバルブ開度TAに対応する信号を出力するように構成されている。
【0036】
ECU60とともに本発明の回転数変化量取得部を構成するクランクポジションセンサ63は、クランクシャフト23と対向するように配置されている。このクランクポジションセンサ63は、クランクシャフト23の回転角度に応じたパルスを有する波形の信号を出力するように構成されている。具体的には、クランクポジションセンサ63は、クランクシャフト23が10°回転する毎に幅狭のパルスを有するとともに、クランクシャフト23が360°回転する毎に幅広のパルスを有する信号を出力するように構成されている。すなわち、クランクポジションセンサ63の出力信号に基づいて、機関回転数Neやその変化量ΔNeが取得されるようになっている。
【0037】
冷却水温センサ64は、シリンダブロック2aに装着されている。この冷却水温センサ64は、シリンダブロック2aの内部に設けられたウォータージャケット内の冷却水の温度(冷却水温THW)に対応する信号を出力するように構成されている。
【0038】
上流側空燃比センサ65aは、上流側触媒53よりも上流側の排気通路(具体的にはエキゾーストマニホールド51における末端部であって排気管52との接続部)に装着されている。この上流側空燃比センサ65aは、排気ポート26を介して燃焼室CCから排出された排気ガスの酸素濃度に対応する電圧を出力するように構成されている。
【0039】
下流側空燃比センサ65bは、排気管52における、上流側触媒53よりも下流側であって、下流側触媒54よりも上流側の位置に装着されている。この下流側空燃比センサ65bは、上流側触媒53を経た排気ガスの酸素濃度に対応する電圧を出力するように構成されている。
【0040】
ECU60とともに本発明の触媒温度取得部を構成する触媒床温センサ66は、上流側触媒53に装着されている。この触媒床温センサ66は、上流側触媒53の温度(触媒床温Tc)に対応する出力を生じるように構成されている。
【0041】
ECU60とともに本発明の車速取得部を構成する複数の車輪速センサ67は、駆動輪31を含むすべての車輪に対応して設けられている。各車輪速センサ67は、各車輪の回転速度に対応する出力を生じるように構成及び配置されている。すなわち、ECU60は、すべての車輪速センサ67からの出力信号に基づいて、車速spdを算出するようになっている。
【0042】
アクセル開度センサ68は、運転者によって操作されるアクセルペダル81の操作量を表す信号(アクセルペダル操作量Accp)を出力するようになっている。
【0043】
<実施形態の動作の具体例>
次に、上述の構成を備えた本実施形態の制御装置6の動作(フューエルカット制御)の具体例について、フローチャートを用いて説明する。なお、以下のフローチャートの説明、及び、当該フローチャートを示す図面においては、「ステップ」は“S”と略称されているものとする。
【実施例1】
【0044】
図2は、図1に示されている制御装置6によって実行される動作の第一の具体例(フューエルカット制御動作)を示すフローチャートである。CPU60aは、図2に示されているフューエルカット制御ルーチン200を、クランク角が所定値となる毎に、繰り返し実行する。
【0045】
本ルーチンが実行されると、まず、S210にて、所定のフューエルカット条件が成立しているか否かが判定される。ここで、本例においては、フューエルカット条件は、所定の減速運転条件を含む。この減速運転条件は、(1)アクセルオフすなわちアクセルペダル操作量Accpがゼロであり、且つ(2)機関回転数Neが所定値以上である、という条件を含む。フューエルカット条件が成立していない場合(S210=No)、S220以降の処理がスキップされ、本ルーチンが一旦終了する。
【0046】
フューエルカット条件が成立している場合(S210=Yes)、処理がS220に進行し、触媒床温センサ66の出力によって取得された触媒床温Tcが高温であるか(所定温度Tc0より高いか)否かが判定される。なお、本具体例においては、このS220における、触媒床温センサ66の出力に基づく触媒床温TcのECU60による取得処理によって、本発明の触媒温度取得部(手段)が実現されている。
【0047】
触媒床温Tcが低温(Tc0以下)である場合(S220=No)、フューエルカットを実行しても上流側触媒53の劣化は生じない。よって、この場合、処理がS230に進行し、フューエルカットが実行され(フューエルカットの実行が許可され)、本ルーチンが一旦終了する。
【0048】
触媒床温Tcが高温である場合(S220=Yes)、処理がS240に進行し、機関回転数Neの変化量ΔNeが取得される。この変化量ΔNeは、本例においては、当該S240の処理時における機関回転数Neから、本ルーチンの起動直前の所定クランク角における機関回転数Ne0を減ずることによって取得されるものとする。したがって、変化量ΔNeが正の値である場合、本ルーチンの実行時点において機関回転数Neが上昇していることになる。なお、本具体例においては、このS240における、クランクポジションセンサ63の出力に基づく機関回転数Neの変化量ΔNeのECU60による取得処理によって、本発明の回転数変化量取得部(手段)が実現されている。
【0049】
続いて、処理がS250に進行し、機関回転数Neの変化量ΔNeが所定値αよりも小さいか否かが判定される。ここで、本例における所定値αは、機関回転数Neが上昇していることを安定的且つ確実に判定するために必要且つ十分な大きさの正の値(すなわち誤差範囲を考慮した値)であるものとする。
【0050】
触媒床温Tcが高温であり(S220=Yes)、且つ機関回転数Neの変化量ΔNeが所定値αよりも小さい場合(S250=Yes)、処理がS260に進行し、触媒保護(劣化抑制)のためにフューエルカットが禁止され、本ルーチンが一旦終了する。なお、本具体例においては、このS260におけるECU60によるフューエルカットの禁止処理によって、本発明のフューエルカット禁止部(手段)が実現されている。
【0051】
一方、触媒床温Tcが高温であっても(S220=Yes)、機関回転数Neの変化量ΔNeが所定値α以上である場合(S250=No)、本ルーチンの実行時点において機関回転数Neが上昇していることになる。
【0052】
例えば、車両1の運転者が、減速のために、シフトダウン操作を行うことがある。この運転者の操作は、運転者による車両1の減速要求であるということができる。このシフトダウン操作時(クラッチミート時)には、機関回転数Neが一旦大きく上昇する。よって、機関回転数Neの上昇判定によって、運転者による減速要求が判定される。したがって、このとき、フューエルカットを実行して車両1を確実に減速する必要がある。
【0053】
また、運転者がアクセルオフ操作をした場合であっても、車両1が比較的急な下り坂を走行中に、車速が相当程度上昇することがあり、機関回転数Neも相当程度上昇する。このときの運転者のアクセルオフ操作も、運転者による車両1の減速要求であるということができる。よって、このときも、フューエルカットを実行して車両1を確実に減速する必要がある。
【0054】
あるいは、フューエルカットの禁止中のニュートラル状態にて、機関回転数Neが不意に上昇することがあり得る。かかる回転上昇は、吸入空気流量の測定誤差(エアフローメータ61の誤差)等のために筒内吸入空気量Mcが過剰になることにより発生する。かかる誤差の発生は、製造時の各部品のバラツキや経年変化に基づくものであって、実質的に不可避であるということができる。そして、このような不意な回転数上昇は、車両1の乗員に不快感を与える。よって、このときも、フューエルカットを実行して上述のような「吹き上がり」を抑制する必要がある。
【0055】
そこで、触媒床温Tcが高温であっても(S220=Yes)、機関回転数Neの変化量ΔNeが所定値α以上である場合(S250=No)、処理がS230に進行し、フューエルカットが実行され(フューエルカットの実行禁止が解除され)、本ルーチンが一旦終了する。なお、本具体例においては、S250からS230に進行することでフューエルカットの実行禁止が解除される処理によって、本発明のフューエルカット禁止解除部(手段)が実現されている。
【実施例2】
【0056】
図3は、図1に示されている制御装置6によって実行される動作の第二の具体例(フューエルカット制御動作)を示すフローチャートである。CPU60aは、図3に示されているフューエルカット制御ルーチン300を、クランク角が所定値となる毎に、繰り返し実行する。
【0057】
本ルーチンが実行されると、まず、S310にて、所定のフューエルカット条件が成立しているか否かが判定される。フューエルカット条件が成立していない場合(S310=No)、S320以降の処理がスキップされ、本ルーチンが一旦終了する。
【0058】
フューエルカット条件が成立している場合(S310=Yes)、処理がS320に進行し、触媒床温センサ66の出力によって取得された触媒床温Tcが高温であるか否かが判定される。触媒床温Tcが低温である場合(S320=No)、処理がS330に進行し、フューエルカットが実行され(フューエルカットの実行が許可され)、本ルーチンが一旦終了する。
【0059】
触媒床温Tcが高温である場合(S320=Yes)、処理がS340に進行し、現在の回転数−速度比Ne/spdが算出される。この回転数−速度比Ne/spdの算出には、クランクポジションセンサ63の出力に基づいて得られた機関回転数Neと、車輪速センサ67の出力に基づいて得られた車速spdとが用いられる。なお、本具体例においては、このS320における、車輪速センサ67の出力に基づく車速spdのECU60による取得処理によって、本発明の車速取得部(手段)が実現されている。
【0060】
次に、処理がS350に進行し、現在の回転数−速度比Ne/spdが、所定値Aを中心とするプラスマイナスaの範囲内にあるか否かが判定される。なお、本例において、これらの所定値A及びaは、ROM60bに予め格納されているものとする。
【0061】
ここで、クランクシャフト23とプロペラシャフト34との、マニュアルトランスミッション装置35における連結が完全である(すなわちクラッチ機構35aにて半クラッチ状態やクラッチオフ状態ではない)場合、回転数−速度比Ne/spdは、選択された変速段に応じてほぼ一定である。
【0062】
そこで、S350においては、現在の回転数−速度比Ne/spdが、四速ギヤが選択されている場合にとり得る所定値Aとほぼ一致するか否かが判定される。すなわち、S350においては、現在の回転数−速度比Ne/spdに基づいて、マニュアルトランスミッション装置35が四速ギヤの直結状態であるか否かが判定される。なお、本具体例においては、このS350の処理によって、本発明の連結状態判定部が実現されている。
【0063】
現在の回転数−速度比Ne/spdが所定値Aを中心とするプラスマイナスa(aはセンサ類や車輪径の誤差を考慮した所定値)の範囲内にある場合(S350=Yes)、マニュアルトランスミッション装置35が四速(最高速)ギヤの直結状態であって、運転者による減速要求がないかあるいはそれほど大きくないことが想定される。そこで、この場合、処理がS360に進行し、触媒保護(劣化抑制)のためにフューエルカットが禁止され、本ルーチンが一旦終了する。
【0064】
現在の回転数−速度比Ne/spdが所定値Aを中心とするプラスマイナスaの範囲内にない場合(S350=No)、処理がS370に進行し、機関回転数Neの変化量ΔNeが取得される。その後、処理がS380に進行し、機関回転数Neの変化量ΔNeが所定値αよりも小さいか否かが判定される。
【0065】
触媒床温Tcが高温であり(S320=Yes)、且つ機関回転数Neの変化量ΔNeが所定値αよりも小さい場合(S380=Yes)、処理がS360に進行し、触媒保護(劣化抑制)のためにフューエルカットが禁止され、本ルーチンが一旦終了する。
【0066】
一方、触媒床温Tcが高温であっても(S320=Yes)、機関回転数Neの変化量ΔNeが所定値α以上である場合(S380=No)、本ルーチンの実行時点において機関回転数Neが上昇していることになる。そこで、この場合、上述の第一の具体例と同様に、処理がS330に進行し、フューエルカットが実行され(フューエルカットの実行禁止が解除され)、本ルーチンが一旦終了する。
【0067】
本具体例によれば、例えば三速で減速中に四速にシフトアップされた場合に、四速ギヤ直結状態になった直後から、触媒劣化抑制のためのフューエルカット禁止制御が、違和感なく行われ得る。
【実施例3】
【0068】
<フューエルカット制御>
図4は、図1に示されている制御装置6によって実行される動作の第三の具体例(フューエルカット制御動作)を示すフローチャートである。CPU60aは、図4に示されているフューエルカット制御ルーチン400を、クランク角が所定値となる毎に、繰り返し実行する。
【0069】
本ルーチンが実行されると、まず、S410にて、所定のフューエルカット条件が成立しているか否かが判定される。フューエルカット条件が成立していない場合(S410=No)、S420以降の処理がスキップされ、本ルーチンが一旦終了する。
【0070】
フューエルカット条件が成立している場合(S410=Yes)、処理がS420に進行し、触媒床温センサ66の出力によって取得された触媒床温Tcが高温であるか否かが判定される。触媒床温Tcが低温である場合(S420=No)、処理がS430に進行し、フューエルカットが実行され(フューエルカットの実行が許可され)、本ルーチンが一旦終了する。
【0071】
触媒床温Tcが高温である場合(S420=Yes)、処理がS440に進行し、機関回転数Neの変化量ΔNeが取得される。続いて、処理がS450に進行し、機関回転数Neの変化量ΔNeが所定値αよりも小さいか否かが判定される。機関回転数Neの変化量ΔNeが所定値αよりも小さい場合(S450=Yes)、処理がS460に進行し、触媒保護(劣化抑制)のためにフューエルカットが禁止され、本ルーチンが一旦終了する。
【0072】
機関回転数Neの変化量ΔNeが所定値α以上である場合(S450=No)、マニュアルトランスミッション装置35における連結状態がニュートラル状態(図示しないシフトレバーがニュートラル位置にある状態以外に、図示しないクラッチペダルが運転者により踏み込まれてクラッチオフとなった状態も含まれる)であるか否かが判定される。本具体例においては、このニュートラル判定は、後述する連結状態判定ルーチン500によって行われるものとする。なお、本具体例においては、このS470(あるいは後述するルーチン500)の処理によって、本発明の連結状態判定部(手段)が実現されている。
【0073】
ニュートラル状態でない場合(S470=No)、今回の触媒高温時の機関回転数Neの上昇は、運転者による減速要求操作に基づくものである。よって、この場合、処理がS430に進行して、フューエルカットが実行され(フューエルカットの実行禁止が解除され)、本ルーチンが一旦終了する。
【0074】
一方、ニュートラル状態である場合(S470=Yes)、今回の触媒高温時の機関回転数Neの上昇は、上述のように、アイドル中の筒内吸入空気量Mcの過剰によるものである。この場合、スロットルバルブ開度TAを減少補正する必要がある。
【0075】
そこで、この場合、処理がS480に進行し、フューエルカット禁止中のアイドル時のスロットルバルブ開度TAfcpがΔTAだけ減少補正される。これにより、次回のフューエルカット禁止中のアイドル時における筒内吸入空気量Mcの過剰状態が緩和あるいは解消される。そして、乗員に対する不快感を可及的に抑制するため、処理がS430に進行してフューエルカットが実行され(フューエルカットの実行禁止が解除され)、本ルーチンが一旦終了する。なお、本具体例においては、このS480の処理によって、本発明のスロットル開度補正部(手段)が実現されている。
【0076】
本具体例によれば、ニュートラル状態におけるアイドル中の筒内吸入空気量Mcの過剰による「吹き上がり」すなわち不快な回転数上昇の発生が効果的に抑制されつつ、触媒劣化抑制のためのフューエルカットの禁止制御が良好に行われ得る。
【0077】
<連結状態判定>
CPU60aは、図5に示されている連結状態判定ルーチン500を、クランク角が所定値となる毎に、繰り返し実行する。なお、本例において、後述する所定値A〜D及びa〜dは、ROM60bに予め格納されているものとする。
【0078】
本ルーチンが実行されると、まず、S510において、現在の回転数−速度比Ne/spdが取得される。
【0079】
次に、S520において、回転数−速度比Ne/spdの取得値(以下、単に「取得値」と称する。)が、所定値Aを中心とするプラスマイナスaの範囲内にあるか否かが判定される。取得値がこの範囲内にある場合(S520=Yes)、マニュアルトランスミッション装置35が四速ギヤの直結状態であることが判定され(S525)、本ルーチンが一旦終了する。一方、取得値がこの範囲内にない場合(S520=No)、処理がS530に進行する。
【0080】
S530においては、取得値が、所定値B(B>A)を中心とするプラスマイナスb(b>a)の範囲内にあるか否かが判定される。取得値がこの範囲内にある場合(S530=Yes)、マニュアルトランスミッション装置35が三速ギヤの直結状態であることが判定され(S535)、本ルーチンが一旦終了する。一方、取得値がこの範囲内にない場合(S530=No)、処理がS540に進行する。
【0081】
S540においては、取得値が、所定値C(C>B)を中心とするプラスマイナスc(c>b)の範囲内にあるか否かが判定される。取得値がこの範囲内にある場合(S540=Yes)、マニュアルトランスミッション装置35が二速ギヤの直結状態であることが判定され(S545)、本ルーチンが一旦終了する。一方、取得値がこの範囲内にない場合(S540=No)、処理がS550に進行する。
【0082】
S550においては、取得値が、所定値D(D>C)を中心とするプラスマイナスd(d>c)の範囲内にあるか否かが判定される。取得値がこの範囲内にある場合(S550=Yes)、マニュアルトランスミッション装置35が一速ギヤの直結状態であることが判定される(S555)。一方、取得値がこの範囲内にない場合(S550=No)、マニュアルトランスミッション装置35がニュートラル状態であることが判定される。その後、本ルーチンが一旦終了する。
【0083】
<実施形態による効果>
以上詳述した通り、本実施形態においては、機関回転数Neの変化量ΔNeが大きい場合には、フューエルカットの禁止が解除される。これにより、迅速な減速が行われたり、不快な回転数上昇が抑制されたりする。したがって、本実施形態によれば、燃費低減や減速のためのフューエルカット、及び、触媒劣化抑制のための当該フューエルカットの禁止が、違和感なく適切に行われ得る。
【0084】
また、現在の回転数−速度比Ne/spdに基づいてマニュアルトランスミッション装置35における連結状態を判定する具体例によれば、付加的なスイッチ類(例えばニュートラルスイッチやクラッチスイッチ等)を用いることなく、当該連結状態を判定することができる。したがって、装置構成が簡略化され得る。
【0085】
<変形例の例示列挙>
なお、上述の実施形態やその具体例は、上述した通り、出願人が本願の出願時点において最良であると考えた本発明の具体化の例を単に示したものにすぎないのであって、本発明はもとより上述の実施形態等によって何ら限定されるべきものではない。よって、上述の実施形態等に対して、本発明の本質的部分を変更しない範囲内において、種々の変形が施され得ることは、当然である。
【0086】
以下、変形例について幾つか例示する。ここで、以下の変形例の説明において、上述の実施形態における各構成要素と同様の構成・機能を有する構成要素については、当該変形例においても同一の名称及び同一の符号が付されているものとする。そして、当該構成要素の説明については、上述の実施形態における説明が、矛盾しない範囲で適宜援用され得るものとする。
【0087】
もっとも、変形例とて、下記のものに限定されるものではないことは、いうまでもない。本発明を、上述の実施形態や下記変形例の記載に基づいて限定解釈することは、(特に先願主義の下で出願を急ぐ)出願人の利益を不当に害する反面、模倣者を不当に利するものであって、許されない。
【0088】
また、上述の実施形態(各具体例を含む)や、下記の各変形例に記載された事項は、技術的に矛盾しない範囲において、適宜組み合わせて適用され得ることも、いうまでもない。
【0089】
(1)本発明は、上述した実施形態にて開示された具体的な装置構成に何ら限定されるものではない。
【0090】
例えば、気筒数、気筒配列方式(直列、V型、水平対向)、燃料噴射方式(ポート噴射、筒内直接噴射)、触媒個数、変速段数、駆動力伝達方式(マニュアルトランスミッションかオートマチックトランスミッションか、マニュアルトランスミッションにおけるクラッチ個数及びクラッチ操作が手動であるか自動であるか)等については、特に限定はない。
【0091】
また、触媒温度(触媒床温)、連結状態、車速、等の取得手段についても、上述の実施形態(具体例)に示されたものに何ら限定されない。
【0092】
具体的には、例えば、触媒温度の取得に際しては、触媒床温センサ66による検出値に代えて、排気通路に設けられた排気温センサによる検出値が用いられてもよい。あるいは、触媒床温は、吸入空気流量Ga等のパラメータを用いて、高精度でオンボード推定され得る。
【0093】
ギヤの選択状態やニュートラル状態も、既知のスイッチ類を用いて判定され得る。車速も、車輪速センサ67以外の他の手段によって取得され得る。具体的には、例えば、プロペラシャフト34の回転数に基づいて、車速spdが取得され得る。
【0094】
(2)本発明は、上述した具体例のような具体的動作に限定されない。すなわち、上述の具体例における各処理は、本発明の範囲内で、適宜変更され得る。
【0095】
例えば、フューエルカット禁止は、第二の具体例(図3のフローチャート参照)のような最高速段(四段変速の場合は四速)に限定されない。すなわち、六段変速の場合は、五速以上(すなわち五速及び六速)にてフューエルカット禁止が行われ得る。
【0096】
図6は、図1に示されている制御装置6によって実行される動作の一変形例(触媒劣化抑制制御)を示すフローチャートである。CPU60aは、図6に示されている触媒劣化抑制制御ルーチン600を、クランク角が所定値となる毎に、繰り返し実行する。
【0097】
本ルーチンが実行されると、まず、S610にて、所定のフューエルカット条件が成立しているか否かが判定される。フューエルカット条件が成立していない場合(S610=No)、S620以降の処理がスキップされ、本ルーチンが一旦終了する。
【0098】
フューエルカット条件が成立している場合(S610=Yes)、処理がS620に進行し、触媒床温センサ66の出力によって取得された触媒床温Tcが高温であるか否かが判定される。触媒床温Tcが低温である場合(S620=No)、触媒劣化抑制制御を行う必要がないので、S630以降の処理がスキップされ、本ルーチンが一旦終了する。
【0099】
触媒床温Tcが高温である場合(S620=Yes)、処理がS630に進行し、機関回転数Neの変化量ΔNeが取得される。続いて、処理がS640に進行し、機関回転数Neの変化量ΔNeが所定値α(このαは上述の具体例と同様である)よりも小さいか否かが判定される。
【0100】
機関回転数Neの変化量ΔNeが所定値α以上である場合(S640=No)、すなわち、機関回転数Neの上昇が生じている場合、フューエルカットを実行する必要がある。そこで、この場合、処理がS650に進行して、触媒劣化抑制制御(フューエルカット禁止)が禁止される。すなわち、この場合、フューエルカットの禁止が解除される。その後、本ルーチンが一旦終了する。
【0101】
機関回転数Neの変化量ΔNeが所定値αより小さい場合(S640=Yes)、処理がS660に進行し、マニュアルトランスミッション装置35における連結状態がニュートラル状態であるか否かが判定される。現在ニュートラル状態である場合(S660=Yes)、処理がS650に進行して、触媒劣化抑制制御(フューエルカット禁止)が禁止され、本ルーチンが一旦終了する。一方、現在ニュートラル状態でない場合(S660=No)、処理がS670に進行して、触媒劣化抑制制御(フューエルカット禁止)が許可され、本ルーチンが一旦終了する。
【0102】
このように、ニュートラル判定(S660)が、機関回転数Neの変化量ΔNeが所定値αよりも小さいか否かの判定(S640)に引き続いて直列的に行われてもよい。
【0103】
図7は、図1に示されている制御装置6によって実行される動作の他の変形例(触媒劣化抑制制御)を示すフローチャートである。図7に示されているルーチン700におけるS710ないしS760の各ステップは、図6におけるS610ないしS660と同様である。また、図7に示されているルーチン700におけるS780は、図6におけるS670と同様である。
【0104】
図7に示されているように、ニュートラル状態ではないことが判定された(S760=No)後に、触媒劣化抑制制御(フューエルカット禁止)を実施すべき所定ギヤの判定(S770)が行われてもよい。
【0105】
図8は、図1に示されている制御装置6によって実行される動作のさらに他の変形例(触媒劣化抑制制御)を示すフローチャートである。CPU60aは、図8に示されている触媒劣化抑制制御ルーチン800を、クランク角が所定値となる毎に、繰り返し実行する。
【0106】
本ルーチンが実行されると、まず、S810にて、現在四速(最高速)ギヤが選択されているか否かが、図示しないスイッチ等に基づいて判定される。四速(最高速)ギヤが選択されていない場合(S810=No)、触媒劣化抑制制御(減速フューエルカットの禁止制御)が行われない。よって、この場合、S820以降の処理がスキップされ、本ルーチンが一旦終了する。
【0107】
現在四速(最高速)ギヤが選択されているとして(S810=Yes)、処理がS820以降に進行すると、まずS820にて、所定のフューエルカット条件が成立しているか否かが判定される。フューエルカット条件が成立していない場合(S820=No)、S830以降の処理がスキップされ、本ルーチンが一旦終了する。
【0108】
フューエルカット条件が成立している場合(S820=Yes)、処理がS830に進行し、触媒床温センサ66の出力によって取得された触媒床温Tcが高温であるか否かが判定される。触媒床温Tcが低温である場合(S830=No)、触媒劣化抑制制御を行う必要がないので、S840以降の処理がスキップされ、本ルーチンが一旦終了する。
【0109】
触媒床温Tcが高温である場合(S830=Yes)、処理がS840に進行し、現在の回転数−速度比Ne/spdが取得される。次に、S850において、回転数−速度比Ne/spdの取得値(以下、単に「取得値」と称する。)が、所定値A+aより大きいか否か(A及びaは上述の具体例と同様である)が判定される。
【0110】
取得値が所定値A+a以下である場合(S850=No)、マニュアルトランスミッション装置35が四速ギヤの直結状態であることが判定される。よって、この場合、処理がS860に進行し、触媒劣化抑制制御(フューエルカット禁止)が許可され、本ルーチンが一旦終了する。
【0111】
一方、取得値が所定値A+aより大きい場合(S850=Yes)、アイドル中の筒内吸入空気量Mcの過剰による機関回転数Neの上昇が生じていることが判定される。よって、この場合、処理がS870に進行し、フューエルカット禁止中のアイドル時のスロットルバルブ開度TAfcpがΔTAだけ減少補正される。これにより、次回のフューエルカット禁止中のアイドル時における筒内吸入空気量Mcの過剰状態が緩和あるいは解消される。そして、乗員に対する不快感を可及的に抑制するため、処理がS880に進行して、触媒劣化抑制制御(フューエルカット禁止)が禁止され、本ルーチンが一旦終了する。
【0112】
(3)その他、特段に言及されていない変形例についても、本発明の本質的部分を変更しない範囲内において、本発明の技術的範囲に含まれることは当然である。
【0113】
さらに、本発明の課題を解決するための手段を構成する各要素における、作用・機能的に表現されているものは、上述の実施形態や変形例にて開示されている具体的構造の他、当該作用・機能を実現可能ないかなる構造をも含む。
【図面の簡単な説明】
【0114】
【図1】本発明の一実施形態が適用された車両の全体構成を概略的に示す図である。
【図2】図1に示されている制御装置によって実行される動作の第一の具体例(フューエルカット制御動作)を示すフローチャートである。
【図3】図1に示されている制御装置によって実行される動作の第二の具体例(フューエルカット制御動作)を示すフローチャートである。
【図4】図1に示されている制御装置によって実行される動作の第三の具体例(フューエルカット制御動作)を示すフローチャートである。
【図5】図4に示されている第三の具体例におけるニュートラル判定のための連結状態判定処理の具体例を示すフローチャートである。
【図6】図1に示されている制御装置によって実行される動作の一変形例(触媒劣化抑制制御)を示すフローチャートである。
【図7】図1に示されている制御装置によって実行される動作の他の変形例(触媒劣化抑制制御)を示すフローチャートである。
【図8】図1に示されている制御装置によって実行される動作のさらに他の変形例(触媒劣化抑制制御)を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0115】
1…車両 2…内燃機関 28…インジェクタ
3…動力伝達部 31…駆動輪 32…ドライブシャフト
33…デファレンシャルギヤ機構 34…プロペラシャフト
35…マニュアルトランスミッション装置
4…吸気系統 43…スロットルバルブ 43a…スロットルバルブアクチュエータ
5…排気系統
6…制御装置 60…ECU 61…エアフローメータ
62…スロットルポジションセンサ 63…クランクポジションセンサ
66…触媒床温センサ 67…車輪速センサ
68…アクセル開度センサ 81…アクセルペダル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気ガス浄化用の触媒の温度を取得する、触媒温度取得部と、
所定のフューエルカット条件が成立した場合であって、前記触媒温度取得部により取得された前記温度が所定温度より高いときに、フューエルカットを禁止にする、フューエルカット禁止部と、
機関回転数の変化量を取得する、回転数変化量取得部と、
前記変化量が所定量より大きくなった場合に、前記フューエルカットの禁止を解除する、フューエルカット禁止解除部と、
を備えたことを特徴とする、内燃機関の燃料噴射制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の、内燃機関の燃料噴射制御装置において、
前記内燃機関が搭載された車両の速度を取得する、車速取得部と、
前記機関回転数と前記速度との比に基づいて、前記内燃機関と前記車両の駆動軸との連結状態を判定する、連結状態判定部と、
をさらに備えたことを特徴とする、内燃機関の燃料噴射制御装置。
【請求項3】
請求項2に記載の、内燃機関の燃料噴射制御装置であって、
前記フューエルカット禁止解除部は、前記連結状態判定部にて前記連結状態がニュートラル状態であることが判定された場合であって、前記変化量が正の前記所定量より大きいときに、前記フューエルカットの禁止を解除することを特徴とする、内燃機関の燃料噴射制御装置。
【請求項4】
請求項3に記載の、内燃機関の燃料噴射制御装置において、
前記連結状態判定部にて前記連結状態がニュートラル状態であることが判定された場合であって、前記変化量が正の前記所定量より大きいときに、当該ニュートラル状態における前記フューエルカットの禁止中のスロットル開度を減少補正する、スロットル開度補正部をさらに備えたことを特徴とする、内燃機関の燃料噴射制御装置。
【請求項5】
請求項2ないし請求項4のうちのいずれか1項に記載の、内燃機関の燃料噴射制御装置であって、
前記車両には、マニュアルトランスミッション装置が設けられていることを特徴とする、内燃機関の燃料噴射制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−38113(P2010−38113A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−204488(P2008−204488)
【出願日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】