内燃機関の燃焼騒音検出方法及び燃焼騒音検出装置並びに内燃機関の制御装置
【課題】
内燃機関の燃焼方法を運転状態に応じて変更する方法が提案されているが、異なる燃焼方法においては燃焼騒音の発生状況も自ずと異なってくることが考えられ、従来技術の検出方法では異なる燃焼方法に対応できず燃焼騒音の検出精度が低かった。
【解決手段】
内燃機関の燃焼モードを把握し、内燃機関の燃焼室内の燃焼騒音を検出する燃焼騒音センサの検出周波数、或いは検出周波数帯域を燃焼モードに基づいて選択して燃焼騒音を検出することで燃焼騒音が精度よく検出できる。
内燃機関の燃焼方法を運転状態に応じて変更する方法が提案されているが、異なる燃焼方法においては燃焼騒音の発生状況も自ずと異なってくることが考えられ、従来技術の検出方法では異なる燃焼方法に対応できず燃焼騒音の検出精度が低かった。
【解決手段】
内燃機関の燃焼モードを把握し、内燃機関の燃焼室内の燃焼騒音を検出する燃焼騒音センサの検出周波数、或いは検出周波数帯域を燃焼モードに基づいて選択して燃焼騒音を検出することで燃焼騒音が精度よく検出できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は内燃機関の燃焼騒音を検出する燃焼騒音検出方法及び燃焼騒音検出装置並びに内燃機関の燃焼を制御するための調節機構を駆動する内燃機関の制御装置に係り、特に内燃機関の燃焼室内の燃焼方法が異なった場合の燃焼状態を直接的、或いは間接的に把握する燃焼騒音の検出方法及び検出装置並びにこの燃焼騒音検出装置を用いて内燃機関の燃費性能、或いは排気性能、或いは両性能を改善するように燃焼を制御する内燃機関の制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
内燃機関の燃焼室内の燃焼状態を把握する手段として内燃機関の振動を検出する振動検出型のノックセンサを用いることが知られている。このノックセンサは内燃機関の振動を検出するものであるが間接的には燃焼室内の燃焼状態を検出しており、代表的には燃焼状態の変化によって燃焼室内の圧力が過剰に上昇したりして内燃機関が振動するのを検出している。
【0003】
つまり、燃焼室内の燃焼ガスにより生じる衝撃波の圧力の伝達経路はシリンダヘッドとピストンが考えられるが、一般にシリンダヘッドの燃焼室壁面剛性はピストン系の剛性より高いため、伝達される振動エネルギの大部分はピストン側からシリンダブロックへ流れており、これを振動センサであるノックセンサで検出しているものである、したがって、この振動は燃焼状態の変動を表すことから燃焼騒音として捉えることができる。
【0004】
このような燃焼騒音の発生を把握或いは検知して、この燃焼騒音を抑制する方向に燃焼を制御する技術が特開2010−216264号公報(特許文献1)にて開示されている。
【0005】
特許文献1に開示されているフローチャート(図10参照)では、S1で読み込まれた燃焼温度にもとづきS2、S3において8kHzおよび6kHzの周波数に対応するノックセンサ信号の積分値を検出する。S4、S12では、このノックセンサ信号の積分値を用いて燃焼期間を判定する。続くS5、S7、S13、S17では着火タイミングの判定を実施する。さらにS9では失火を判定し、S14では目標レール圧に対する判定を実施する。これらの燃焼期間と着火タイミングの判定結果に基づき燃料噴射量(PreQ)、排気ガス還流量(EGR)、燃料噴射時期(IT)を制御してルーチンを終了する。
【0006】
このように引用文献1には、燃焼期間と着火タイミングを割り出すために検出周波数を選択することで燃焼期間と着火タイミングを精度良く検出することができ、これによって燃焼状態を所定の状態にフィードッバク制御できるということが記述されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−216264号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、今後の内燃機関は燃費性能の向上や排気性能の向上、更には両性能の相乗的な向上等が要求されている。このためのアプローチとして種々の技術的な改良、改善が提案されているが、その中の技術の一つとして内燃機関の燃焼方法を自動車等の車両の運転状態や内燃機関自身の運転状態に応じて変更する方法が注目されている。
【0009】
例えば、理論空燃比(ストイキ状態)近傍の混合気(燃料と空気の混合された状態)や、この理論空燃比より空気の割合が多い希薄混合気を点火プラグによって着火して燃焼を行う方法や、これらの混合気を点火プラグによらないで混合気の断熱圧縮によって生じる熱によって着火して燃焼を行う方法をそれぞれ運転状態に応じて選択的に実行することが提案されている。
【0010】
しかしながら、このような異なる燃焼方法においては燃焼騒音の発生状況も自ずと異なってくることが考えられ、上述したような従来技術の検出方法では異なる燃焼方法に対応できない恐れが考えられる。つまり、上記した従来技術では一つの燃焼方法(この例ではデーゼルエンジンのため圧縮着火燃焼に分類される)に関して生じる振動の周波数を選択的に利用して精度良い着火タイミングと燃焼期間を割り出し、これによって燃焼状態を改善することであり、異なる燃焼方法については考慮されていないものであった。
【0011】
本発明の目的は、自動車等の車両の運転状態や内燃機関自身の運転状態に応じて異なる燃焼を行う内燃機関に用いられる制御装置にあって、異なる燃焼方法を実行している内燃機関の燃焼室内の燃焼状態を直接的、或いは間接的に燃焼騒音として把握し、この燃焼騒音に基づいて内燃機関の燃費性能、或いは排気性能、或いは両性能を改善するように内燃機関の燃焼を制御する調節機構を駆動する内燃機関の制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の特徴は、運転状態によって定まる燃焼方法(以下燃焼モードという)で駆動されている内燃機関の燃焼モードを把握し、この燃焼モードに基づいて内燃機関の燃焼室内の燃焼騒音を検出する燃焼騒音センサの検出周波数、或いは検出周波数帯域を選択して燃焼騒音の大きさの度合いを検出する、ところにある。
【0013】
また、本発明の他の特徴は、上記した燃焼騒音の検出結果を用いて内燃機関の燃焼室内の燃焼騒音が所定の燃焼騒音となるように内燃機関の燃焼を制御する調節機構を駆動する、ところにある。
【0014】
ここで、燃焼モードは典型的には火花点火燃焼と圧縮着火燃焼であるが、以下に述べる〔発明を実施するための形態〕にある実施例で説明するように、これに限らず種々の燃焼モードにおいても本発明の技術的思想は適用できるものである。
【0015】
また、燃焼騒音センサには燃焼ガスによる圧力変動を振動によって検出する振動センサ、いわゆるノックセンサや、燃焼室内の燃焼ガスの電気伝導度を測定するイオン電流センサ、燃焼室内の燃焼圧を測定する筒内圧センサ等が使用できる。これらは異なる燃焼モードで燃焼騒音に関して周波数分布の振る舞いが同じ傾向を示している。
【0016】
要は各燃焼モードで区別(或いは顕著な値を有する)できる特異な検出周波数、或いは検出周波数帯域があることを見い出し、これを燃焼モードに対応して選択的に検出してやれば燃焼騒音の発生状況を精度よく検出できることを提案するものである。また、この検出方法を使用して燃焼室内の燃焼状態を制御してやれば正確な制御を実行できるようになり、結果として燃費性能や排気性能を向上することができるものである。
【0017】
また、燃焼状態を調節する調節機構としては、内燃機関の吸気弁や排気弁の開閉タイミングや開閉リフト、燃料噴射弁の燃料噴射時期や噴射期間(=噴射量)、点火プラグの点火時期の進角や遅角、ターボチャージャによる過給圧の増減、ハイブリッド車等における車両駆動モータの駆動トルク或いは発電トルクの増減、等があるが、内燃機関の燃焼状態を調節できるものであればこれらに限らないものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、燃焼モードに基づいて燃焼騒音センサの検出周波数或いは検出周波数帯域を適切に選択することで燃焼状態を高精度に検出することが可能となり、この結果、この選択された検出周波数或いは検出周波数帯域で検出される実際の燃焼騒音が所定の燃焼騒音以下となるように内燃機関の燃焼状態を精度良く制御できるため、内燃機関の燃費性能、或いは排気性能、或いは両性能を改善できるという効果が期待できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施例になる内燃機関の制御装置の構成を示す構成図である。
【図2】図1に示すECUの内部構成を示すブロック図である。
【図3】図1に示すバルブ可変装置の特性を示す特性図である。
【図4】図1に示すクランク角センサの出力信号に基づく検出期間と、この検出期間に基づくノックセンサの振動判定期間を示すチャート図である。
【図5】図1に示す制御装置に設けられる火花点火燃焼と圧縮着火燃焼の運転領域を示す制御マップ図である。
【図6】図1に示す制御装置における圧縮着火燃焼FLGがOFFのときの検出周波数演算部のブロック図である。
【図7】図1に示すクランク角センサの出力信号に基づく検出期間と、この検出期間に基づくノックセンサの振動判定期間と、特定周波数の振動エネルギを示すチャート図である。
【図8】図7に示す振動パワースペクトルPSS(i)の燃焼毎の特性チャート図である。
【図9】圧縮着火燃焼FLGがOFFのときの燃焼騒音の抑制制御のシステムブロック図である。
【図10】図9に示す圧縮着火燃焼FLGがOFFのときの点火時期の制御特性図である。
【図11】圧縮着火燃焼FLGがONのときの検出周波数演算部のブロック図である。
【図12】図1に示すクランク角センサの出力信号に基づく検出期間と、この検出期間に基づくノックセンサの振動判定期間と、特定周波数の振動エネルギを示すチャート図である。
【図13】図12に示す振動パワースペクトルPSS(i)の燃焼毎の特性チャート図である。
【図14】圧縮着火燃焼FLGがONのときの燃焼騒音の抑制制御のシステムブロック図である。
【図15】圧縮着火燃焼FLGがONのときの排気バルブの制御特性図である。
【図16】圧縮着火燃焼FLGがONのときの燃料噴射弁の噴射時間の制御特性図である。
【図17】圧縮着火燃焼FLGがONのときの過給圧の制御特性図である。
【図18】圧縮着火燃焼FLGがONのときのモータの駆動トルクと、発電トルクの制御特性図である。
【図19】図1に示す制御装置における制御内容を示すフローチャート図である。
【図20】本発明の他の実施例になる内燃機関の制御装置の構成を示す構成図である。
【図21】図20に示すECUの内部構成を示すブロック図である。
【図22】図20に示す2個のノックセンサの感度指標S/N比を示す特性図である。
【図23】図20に示すクランク角センサの出力信号に基づく検出期間と、この検出期間に基づく2個のノックセンサの振動判定期間を示すチャート図である。
【図24】図20に示す制御装置における制御内容を示すフローチャート図である。
【図25】本発明の更に他の実施例になる内燃機関の制御装置の構成を示す構成図である。
【図26】図25に示す制御装置に設けられるストイキ火花点火燃焼と希薄燃焼と排気再循環燃焼と圧縮着火燃焼の運転領域を示す制御マップ図である。
【図27】図25に示す実施例における検出周波数演算部のブロック図である。
【図28】各燃焼モードにおける周波数の分布状態を示す特性図である。
【図29】本発明の更に他の実施例になる内燃機関の制御装置の構成を示す構成図である。
【図30】図29に示すフィルタ回路の特性図である。
【図31】図29に示すフィルタ回路を適用した際のノックセンサの信号特性図である。
【図32】圧縮着火燃焼と火花点火燃焼の振動パワースペクトルの周波数分布の相違を説明する特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施例について図面に従い詳細に説明するが、各実施例においては燃焼騒音センサとして振動検出型のノックセンサを備えた内燃機関の制御装置を基本に説明する。
【実施例1】
【0021】
図1を用いて本発明の第1の実施形態による内燃機関の制御装置の構成を説明するが、この実施例は自動車用ガソリン内燃機関に適用した構成である。
【0022】
内燃機関100は異なった燃焼モードである(1)火花点火燃焼と、(2)圧縮着火燃焼を実行する自動車用のガソリン内燃機関であるが、同一の空燃比で混合気が形成されている。
【0023】
ここで、(1)火花点火燃焼は、内燃機関に供給された空気と燃料の混合気をシリンダヘッドに取り付けた点火プラグによって点火して混合気を燃焼させる方法であり、(2)圧縮着火燃焼は、燃焼室に供給された空気をピストンによって断熱圧縮して温度を上昇させ、これに燃料を噴射して自着火させて燃料を燃焼させる方法や、内燃機関に供給された空気と燃料の混合気をピストンによって断熱圧縮して温度を上昇させ自着火させて燃料を燃焼させる方法である。
【0024】
内燃機関の吸気系を構成する吸気管15には、吸入空気量を計測するエアフローセンサ18と、吸気管圧力を調整する電子制御スロットル装置16と、吸入空気温度検出器の一態様であって吸入空気の温度を計測する吸気温度センサ17と、吸入空気を圧縮して充填効率を向上するターボチャージャのような過給機22が適宜位置に備えられている。尚、場合によっては過給機22を含まない構成でも良く、またエアフローセンサ18の代わりには吸入空気圧力センサとしても良い。
【0025】
内燃機関100はピストン12を内蔵する気筒を有し、この気筒の燃焼室8の中に燃料を直接噴射する燃料噴射装置(以下燃料噴射弁)13と、点火エネルギを供給する点火プラグ14が気筒毎に備えられている。尚、気筒の燃焼室8の中に燃料を噴射する燃料噴射弁13の代わりに吸気管15の適宜位置に燃料噴射弁13を備えても良いものである。これは所謂マルチポイントインジェクション(MPI)と呼ばれるものである。
内燃機関の燃焼状態を直接或いは間接的に把握(これは検知する概念も含む)するため、内燃機関の機械的振動を計測する振動検出型のノックセンサ9が内燃機関100の適宜位置(通常はシリンダブロック)に備えられており、また、このノックセンサ9は非共振型のノックセンサであり、広い周波数帯域にわたって振動を検出することができるものである。
【0026】
更に、内燃機関の燃焼室8に流入する吸入空気を調整する吸気バルブ可変装置7aと燃焼室8から流出する排気ガスを調整する排気バルブ可変装置7bとから構成されるバルブ可変装置7が内燃機関100の各々の適宜位置に備えられている。
【0027】
バルブ可変装置7を調整することにより吸気バルブと排気バルブの開閉タイミング(位相角)及びリフト行程(作用角)が変更でき、燃焼室8に流入する真の空気量やバルブオーバラップによる内部EGR量を調整することができる。
【0028】
更に圧力調整器の一態様であって燃料噴射弁13に燃料を供給する燃料ポンプ21が内燃機関100の適宜位置に備えられており、この燃料ポンプ21は燃料圧力検出器の一態様であって燃料の圧力を計測する燃料圧力センサ20が備えられている。
【0029】
排気系を構成する排気管6には、排気を浄化する三元触媒5と、空燃比検出器の一態様であって三元触媒5の上流側で排気の空燃比を検出する空燃比センサ4と、排気温度検出器の一態様であって三元触媒5の上流側で排気の温度を計測する排気温度センサ3とが適宜位置に備えられている。
【0030】
またクランクシャフト11にはクランクシャフト11の角度および角速度およびピストン12の移動速度等を検出するためのクランク角センサ10が備えられている。
【0031】
更にクランクシャフト11に動力を伝達可能な適宜位置に車両駆動用モータ23が備えられているが、車両駆動用モータ23を含まない構成でもよい。車両駆動用モータ23は例えば、ハイブリッド車に使用されるモータであり、内燃機関100が停止している状態、或いは運転されている状態で自動車を駆動することができる。この車両駆動用モータ23は更に自動車が減速しているときに回生ブレーキとして作用して自動車に搭載されているリチウム電池を充電する発電機として働くことができる。
【0032】
そして、エアフローセンサ18、吸気温度センサ17、ノックセンサ9、燃料圧力センサ20、空燃比センサ4及び排気温度センサ3とから得られる検出信号は内燃機関コントロールユニット(以下ECUという。)1に送られる。
また、運転者の運転意図を表すアクセル開度センサ2から得られる信号がECU1に送られるが、このアクセル開度センサ2は運転者が要求するトルクであるアクセルペダルの踏み込み量、すなわち、アクセル開度を検出するものである。
【0033】
ECU1はアクセル開度センサ2の出力信号に基づいて要求トルクを演算するもので、アクセル開度センサ2は内燃機関100への要求トルクを検出する要求トルク検出センサとして用いられる。
【0034】
また、ECU1はクランク角センサ10の出力信号にもとづいてクランクシャフト11の角度、角速度及びピストン12の移動速度、内燃機関の回転速度を所定の計算式に基づいて演算する。
【0035】
ECU1は前記各種センサの出力から得られる内燃機関100の運転状態にもとづき電子制御スロットル装置16の開度、燃料噴射弁13の燃料噴射期間や噴射時期、点火プラグ14の点火時期、吸気バルブ可変装置7aと排気バルブ可変装置7bのバルブ開閉タイミング等の内燃機関100の制御に必要な作動量を演算する。尚、ECU1はこれらの作動量以外にも他の作動量を演算して内燃機関の作動を制御するものである。
【0036】
そして、ECU1で演算された燃料噴射期間は開弁パルス信号に変換され燃料噴射弁13に送られ、同様に演算された点火タイミングは点火信号に変換されて点火プラグ14に送られ、同様に演算されたスロットル開度はスロットル駆動信号に変換されて電子制御スロットル装置16へ送られ、同様に演算されたバルブ開閉タイミングは可変バルブ駆動信号に変換されてバルブ可変装置7へ送られる。
【0037】
また、同様に演算された燃料ポンプ21の作動量は燃料ポンプ駆動信号に変換されて燃料ポンプ21へ送られ、同様に演算された過給機22の作動量は過給機駆動信号に変換されて過給機22へ送られ、同様に演算された車両駆動用モータ23の作動量はモータ指令信号に変換されて車両駆動用モータ23へ送られる。
【0038】
ここで、電子制御スロットル装置16、燃料噴射弁13、点火プラグ14、吸気バルブ可変装置7a、排気バルブ可変装置7b、燃料ポンプ21、過給機22及び車両駆動用モータ23等は内燃機関の作動に必要な作動量を制御するものであるが、基本的は内燃機関の燃焼状態を制御、或いは調節するための調節機構としての機能を備えているものである。もちろんこれ以外の調節機構を採用しても良いことはいうまでも無い。
【0039】
したがって、上記した内燃機関の種々の作動量を把握、或いは検出するセンサや、内燃機関の種々の作動量を調節する調節機構の働きによって、吸気管15から吸気バルブを経て燃焼室8内に流入した空気に燃料噴射弁13から燃料が噴射されて燃焼室8内に混合気が形成され、この混合気は所定の点火タイミングに点火プラグ14で発生される火花により点火されて爆発、燃焼し、その燃焼圧によりピストン12を押し下げて内燃機関100の駆動力となる。更に爆発後の排気は排気管6を経て三元触媒5に送られ排気成分は三元触媒5内で浄化されて大気に排出される。
【0040】
次に図2を用いて内燃機関の制御装置の構成について説明するが、基本的には制御基板上に搭載されたLSI等の論理素子、演算素子および記憶素子等から構成されている。
【0041】
アクセル開度センサ2、排気温度センサ3、空燃比センサ4、ノックセンサ9、クランク角センサ10、吸気温度センサ17、エアフローセンサ18及び燃料圧力センサ20等の作動量を表すセンサ出力信号はECU1の入力回路1aに入力される。上述したが記載したセンサ類は代表的なものであって、これ以外の内燃機関の作動量を検出するセンサの信号を入力してもなんら差し支えないものである。
【0042】
入力された各センサの入力信号は入力回路1aから入出力ポート1b内の入力ポートに送られ、入力ポート1bに送られた値はRAM1cに記憶されてCPU1eでの演算処理に使用される。
【0043】
演算処理内容を記述した制御プログラムはROM1dに予め書き込まれており、この制御プログラムに従って演算された各調節機構の作動量を示す値はRAM1cに記憶された後、入出力ポート1bの出力ポートに送られ各駆動回路を経て各調節機構に送られる。
【0044】
本実施形態の場合では調節機構の駆動回路として、電子制御スロットル駆動回路1f、燃料噴射弁駆動回路1g、点火出力回路1h、可変バルブ駆動回路1i、燃料ポンプ駆動回路1j、過給機駆動回路1kがあり、指令回路としてモータ指令回路1lが備えられている。
【0045】
各駆動回路は電子制御スロットル装置16、燃料噴射弁13、点火プラグ14、バルブ可変装置7、燃料ポンプ21、過給機22、モータ23に送られそれぞれを制御する。尚、本実施形態においてはECU1内に前記駆動回路の全てを備えているが、本実施例はこれに限るものではなく調節機構に直接駆動回路を取り付ける、いわゆる機電一体型の調節機構を備える場合はECU1内にこの駆動回路を備える必要は無い。
【0046】
次に図3を用いてバルブ可変装置7の作動特性を説明すると、グラフの縦軸はバルブリフト量Lvを示し、横軸は位相角を示している。
【0047】
BDCはピストン12が下死点にあるときを示し、TDCはピストン12が上死点にあるときを示しており、経過位相角に対応する内燃機関100の作動行程(爆発、排気、吸気、圧縮)を併せ示している。
【0048】
排気弁の動作は爆発行程の終期付近から排気工程を経過して吸気行程の初期付近にわたって行われ、バルブリフト量が増加し排気弁が開き始めるタイミングを排気弁開タイミング(以下EVO)、その後バルブリフト量が減少し排気弁が閉じるタイミングを排気弁閉タイミング(以下EVC)と定義する。
【0049】
本実施形態では吸気弁及び排気弁にバルブ可変装置7a、7bを備えており、これらのバルブ可変装置7を動作することで、バルブリフト量のプロフィール(例えば最大バルブリフト量、最大バルブリフト量のタイミング、バルブリフト量推移、EVO、EVC、位相等)を連続的あるいは段階的に変更するもので、吸気弁の動作も同様に変更することが可能である。
【0050】
本実施形態においては、吸気弁および排気弁にバルブリフト量のプロフィールを連続的あるいは段階的に変更するバルブ可変装置備えているが、これに限るものではなく、排気バルブにのみ備えるものであっても良い。更に、クランクシャフトに対するカムシャフトの相対位相を変えるバルブ位相変更装置あるいはバルブリフト量の可変機構のいずれかを備えるものであっても良い。
【0051】
以上のバルブ可変装置7と前記電子制御スロットル装置16の制御により、燃焼室8の中の空気量や内部EGR量を調整することができる。
【0052】
次に図4を用いて、ノックセンサ9とクランク角センサ10の出力信号と、この出力信号に基づく内燃機関100の振動(=燃焼騒音)の判定期間について説明する。
【0053】
本実施例においては、クランク角センサ10の出力信号は矩形状の電圧であり、矩形波の電圧が上昇するときを立ち上がり、矩形波の電圧が降下するときを立ち下りと定義する。矩形波は所定の個数zを1周期として繰り返し出力されており、またECU1内では、前記立ち上がりのタイミング毎に基準k(a)を判定する。添字の(a)は所定の個数z番目の矩形波が出力されてから所定期間経過した後の1回目の矩形波の立ち上がりの基準k(a)=(1)とする基準kの番号であり、所定の個数zにおいて(a)=(z)となる。
【0054】
基準k(1)と基準k(2)と経過期間の判定をもってクランクシャフト回転角度CA2とし、これ以外に判定された基準k(a)毎にクランクシャフトの回転角度CA1として判定する。ECU1内では、クランクシャフトの回転角度CA1、CA2をもってクランクシャフト11の角度の判定を実施する。尚、前記所定の個数zが不足あるいは過多の状態となる場合は、クランク角センサの異常と判断すれば良い。
【0055】
基準k(z)がECU1内で判定されたときから、所定の基準k(a)を判定するまでの期間をノックセンサ信号に対する周波数解析処理期間とする。望ましくは、基準k(z)はピストン12が圧縮上死点であるタイミング(位相)とし、かつ所定の基準k(a)はクランクシャフト11が圧縮上死点から60度回転したタイミング(位相)とする。尚、通常ではこの60度の範囲でノックが発生することが知られているので、この範囲でノックセンサ9の信号を取り込んで計算機で周波数解析すればよい。そして、この周波数解析処理期間内に発生した振動は周波数解析されて特定の中心周波数をピークに持つ周波数出力が得られる。一般には火花点火燃焼機関では5つの特異なピークを持つ中心周波数出力が得られる。
【0056】
図5は火花点火燃焼と圧縮着火燃焼の運転領域を切り替えるための制御マップの説明図であり、本実施例では火花点火燃焼と圧縮着火燃焼を要求トルクと内燃機関の回転数で決まる運転領域によって切り換えて実行する。
【0057】
ECU1はアクセル開度センサ2の出力信号から演算される要求トルクと、クランク角センサ10の出力信号から演算される内燃機関100の回転速度に基づく切り換え制御マップを記憶素子の所定エリアに備えており、要求トルクと回転速度に基づき圧縮着火燃焼FLG(フラグの略称)のONとOFFを切り替える。
つまり、圧縮着火燃焼FLGがONでは圧縮着火燃焼が行なわれており、圧縮着火燃焼FLGがOFFでは火花点火燃焼が行われているものである。このように、火花点火燃焼と圧縮着火燃焼の各燃焼モードに応じて燃焼騒音の検出周波数或いは検出周波数帯域を選択する点が本発明の特徴の一つである。
【0058】
ここで、図5に示す制御マップのパラメータはアクセル開度と回転数を用いているが、この2つのパラメータを使用することによって燃焼室8に送られる空気量に換算することができるものであるが、アクセル開度だけで火花点火燃焼と圧縮着火燃焼を切り替えるようにしても良い。尚、圧縮着火燃焼FLGの制御マップを備えているがこれに限るものではなく、要求トルクおよび内燃機関回転速度のいずれかから演算される制御マップを備えるものであってもよい。
【0059】
次に図6乃至図10を用いて圧縮着火燃焼FLGがOFFのとき、すなわち火花点火燃焼の燃焼騒音を抑制する制御について説明する。
【0060】
図6は圧縮着火燃焼FLGがOFFのときの検出周波数演算部のブロック図であり、圧縮着火燃焼FLGがOFFという条件に基づき、ノックセンサ9の検出周波数のうちの特定の中心周波数S1、S2、S3、S4、S5を含む5つの検出周波数帯域の振動エネルギを演算する検出周波数演算部を備えている。そして、検出周波数演算部は圧縮着火燃焼FLGがOFFの火花点火燃焼では好ましくは中心周波数S1、S2、S3、S4、S5を含む5つの検出周波数帯域の振動エネルギを出力する。ここで、特異な中心周波数としては、S1≒6Khz、S2≒10Khz、S3≒13Khz、S4≒14Khz及びS5≒18Khzである。
【0061】
また、これら5成分の周波数の抽出は、(1)すべての5成分を含む周波数帯域を選択しても良いし、(2)5成分の中心周波数を含む5つの周波数帯域(前述の周波数帯域より狭い)を選択して抽出することができる。いずれの方法をとるかは制御システムの構築によってより適正な方法を選択すれば良いものである。
【0062】
そして、検出周波数演算部はデジタルシグナルプロセッサ(通称DSP)等を用いて高速で演算ができるように構成されている。尚、周波数解析は高速フーリエ変換(FFT)等の手法を用いて行うことができる。
【0063】
少なくとも、圧縮着火燃焼FLGがOFFのときでは中心周波数S1、S2、S3、S4、S5を含む5つの検出周波帯域の内2つ以上を出力すると良い。この理由として、火花点火燃焼時は5つの中心周波数において振動信号が顕著に現れるためであり、この成分を2つ以上とすることで燃焼騒音による振動の検出精度を向上することが可能となるためである。
【0064】
次に図7を用いて内燃機関100の振動の大きさを算出するためノックセンサ9の出力信号に基づく周波数解析処理を説明する。
【0065】
本実施例においては図4で説明したような周波数解析期間の設定と同様な手法でノックセンサ9の信号を検出する。
そして、この周波数解析期間において、ノックセンサ9の信号から得られる中心周波数S1、S2、S3、S4、S5を含む所定の周波数帯域の5成分についての周波数解析を実施した結果を振動エネルギを示す振動パワースペクトルPSS(j)として示している。ここで振動パワースペクトルPSS(j)のPSはパワースペクトルを表し、Sは火花点火燃焼を表し、(j)はECU1内のクロック(演算周期)にもとづくデータ番号である。
【0066】
したがって、この振動パワースペクトルPSS(j)は5つの周波数成分毎に周波数解析期間(約60度)にわたって所定の演算周期でそれぞれ演算され、その演算結果が図7に示されている。
つまり、周波数解析期間のある時点では中心周波数S1、S2、S3、S4、S5を有する所定周波数帯域の5成分が周波数解析演算されており、これを周波数解析期間にわたりプロットすると、図7にある、例えばS1、S2の周波数成分のような結果が得られる。もちろん他のS3、S4、S5の周波数成分についても同様である。
【0067】
次に図8を用いて振動パワースペクトルPSS(i)の特性について説明する。
【0068】
図8は振動パワースペクトルPSS(i)の説明図であるが、(i)は内燃機関100における燃焼回数を示している。つまり1燃焼毎に同じ周波数帯域の振動パワースペクトルPSS(i)の総和を求めたものであり、他の周波数帯域も同様に求められる。
【0069】
本実施例では振動パワースペクトルPSS(i)は、上述した振動パワースペクトルPSS(j)から以下の式を用いて算出する。
PSS(i)=∫PSS(j)dj・・・式(1)
*算出タイミングは前記周波数解析期間における完了タイミングとする。
そして、これらの各周波数帯域毎に求められた振動パワースペクトルPSS(i)は所定の演算を行って燃焼騒音の検出が実施される。例えば、各検出周波数帯域の振動パワースペクトルPSS(i)をすべて加算、或いは値が大きい順から所定数だけ加算して総和(燃焼騒音指標)を求め、この総和をノックが発生していない場合の総和(所定の比較用燃焼騒音指標)と比較し、その差が所定以上であればノックが発生していると判断する方法がある。この他にも燃焼騒音指標及び比較用燃焼騒音指標の求め方やその比較判断方法等は種々の方法があるので本実施例では適宜選択して実行すればよいものである。
【0070】
図9は圧縮着火燃焼FLGがOFFのときの燃焼騒音の抑制制御のブロック図であり、振動パワースペクトルPSS(i)の入力信号にもとづき燃焼騒音が所定の燃焼騒音より大きいか小さいかを判断する燃焼騒音指標演算部と、この燃焼指標演算部の出力によって気筒別に点火時期を遅角補正する気筒別点火遅角補正制御部を備えている。
【0071】
また、図10は燃焼騒音指標N比較用の燃焼騒音指標NLとの比較演算の結果に基づいて点火時期を遅角していく過程を示している。
【0072】
図9及び図10からわかるように、本実施例では圧縮着火燃焼FLGがOFFのときの内燃機関100の振動パワースペクトルPSS(i)の入力信号に基づき燃焼騒音指標演算部において燃焼騒音指標Nの演算と所定の比較用の燃焼騒音指標NLとの比較演算を行い、燃焼騒音が大きくなったと判断されると次段の気筒別点火遅角補正制御部で燃焼騒音が大きくなった気筒の点火タイミングを徐々に所定の速さで遅角することで燃焼騒音の発生を抑制していき、その後この燃焼騒音指標Nが所定の比較用の燃焼騒音指標NL未満となったときの気筒別点火時期を保持することで燃焼騒音を抑制する。
【0073】
以上の制御により燃焼騒音を抑制できる理由として、火花点火燃焼において燃焼騒音が大きい状態は燃焼室内で自着火が発生しており、これを抑制するためには自着火を抑制するための点火タイミングを設定して燃焼室内に高温場(ホットスポット)を残存させないことが効果的であるからである。
【0074】
本制御における気筒別点火時期を遅角補正する方法は燃焼室内の高温場を効率良く減少することが可能であり、かつこの遅角補正された点火時期を保持することで定常的に燃焼騒音を抑制することが可能となる。ここで、点火時期を遅角補正できるのは圧縮着火燃焼FLGがOFFであり火花点火燃焼による燃焼モードの状態であるからである。尚、点火時期以外にも他の調節機構によって燃焼騒音を低減できるので必要によって選択すればよいものである。
【0075】
次に図11乃至図18に基づき圧縮着火燃焼FLGがONのときの燃焼騒音を抑制する制御について説明する。
【0076】
図11は圧縮着火燃焼FLGがONのときの検出周波数演算部のブロック図であり、検出周波数演算部の機能や働きは図6に示した実施例と基本的には同様であるが、異なっている点は検出する周波数帯が低い周波数帯に移行していることである。したがって周波数解析もこれにしたがって低い周波数帯域の周波数を周波数解析する。
【0077】
本実施例では圧縮着火燃焼FLGがONという条件に基づき検出周波数が中心周波数Hの振動エネルギを演算する検出周波数演算部を備えている。圧縮着火燃焼FLGがONのとき検出される中心周波数Hは図6で説明した火花点火燃焼の場合の検出周波数S1、S2、S3、S4、S5の5成分に対して低い周波数成分として出力され、かつ1つの周波数に特異的なピークが認められる。
【0078】
また、この場合の周波数検出帯域は火花点火燃焼の場合に比べて狭い(狭窄された)周波数帯域に設定されている。
【0079】
つまり、圧縮着火燃焼でのノック発生時には1つの周波数において内燃機関の振動が特異的に表れ、かつ燃焼室8内の温度が火花点火燃焼に比べて低いことで周波数も低くなるためである。この要因により圧縮着火燃焼時には火花点火燃焼時に比べて低い周波数帯域で特定の周波数Hを検出することによって正確に燃焼騒音を検出でき、しかもその検出精度を改善することが可能となる。
【0080】
次に図12を用いて内燃機関100の振動の大きさを算出するためノックセンサ9の出力信号に基づく周波数解析処理を説明する。
【0081】
この図12においても基本的には図7に示した実施例と同様の機能や働きを行うが、異なっている点は検出周波数が上記したように低い周波数側に移行していることと、1つの周波数に対して周波数解析を行う点である。つまり、検出周波数を中心周波数Hとする所定の検出周波数帯域で振動をサンプリングして周波数解析を行うものである。
【0082】
上記周波数解析期間において、ノックセンサ信号に対し検出周波数Hの成分についての周波数解析を実施した結果をその下に示しており、縦軸は振動エネルギの大きさを示すパワースペクトルPSH(j)を示している。ここでPSHのPSはパワースペクトルを表し、Hは圧縮着火燃焼を表し、(j)はECU1内のクロック(演算周期)にもとづくデータ番号である。
【0083】
したがって、この振動パワースペクトルPSS(j)は周波数解析期間にわたって所定の演算周期で演算され、その演算結果が図12に示されている。この検出周波数Hも上述したように周波数解析期間のある時点で周波数解析演算されており、これを周波数解析期間にわたりプロットすると図12にあるような結果が得られる。
【0084】
次に図13を用いて振動パワースペクトルPSH(i)の特性について説明するが、これも図8に示した実施例と同様の機能、働きを行い、振動パワースペクトルPSH(j)から以下の式を用いて算出する。
PSH(i)=∫PSH(j)dj・・・式(2)
算出タイミングは周波数解析期間における完了タイミング。
ここで、火花点火燃焼と圧縮着火燃焼でノックが生じたときの振動パワースペクトルPSS(i)と振動パワースペクトルPSH(i)の周波数分布を図32に示しており、圧縮着火燃焼の場合を実線で表し、火花点火燃焼の場合(S2成分)を破線で表している。
【0085】
この図からわかるように、圧縮着火燃焼ではノックに特異な周波数が火花点火燃焼に比べて低い周波数側に現れている。しかも、特異なピークは1つであることが知見として得られた。
【0086】
したがって、圧縮着火燃焼FLGがOFFの場合は中心周波数S1乃至S5を含む周波数帯域を通過させるバンドパスフィルタをそれぞれ使用し、圧縮着火燃焼FLGがONの場合は中心周波数Hを含む周波数帯域を通過させるバンドパスフィルタを使用すれば周波数解析を実行することができる。
【0087】
図14は圧縮着火燃焼FLGがONのときの燃焼騒音の抑制制御のブロック図であり、振動パワースペクトルPSH(i)の入力信号に基づき、排気バルブの閉じタイミング(EVC)、燃料噴射期間、過給圧、車両駆動用モータのトルクのいずれか一つ以上について補正制御を実施するための騒音指標演算部を備えている。
【0088】
図15は圧縮着火燃焼FLGがONのときの燃焼騒音を抑制するため排気バルブの閉じるタイミング(EVC)を補正する制御の説明図である。
【0089】
本実施例では圧縮着火燃焼FLGがONのときの振動パワースペクトルPSH(i)の入力信号に基づき、燃焼騒音指標演算部において燃焼騒音指標Nの演算と所定の比較用の燃焼騒音指標NLとの比較演算を行い、燃焼騒音が大きくなったと判断されると次段のEVC補正制御部で燃焼騒音が大きくなった気筒の排気バルブの閉じタイミングを徐々に所定の速さで遅角することでバルブオーバラップ角を大きくして燃焼騒音の発生を抑制していき、その後この燃焼騒音指標Nが所定の比較用の燃焼騒音指標NL未満となったときの排気バルブ補正量を保持することで燃焼騒音を抑制する。
【0090】
以上の制御により燃焼騒音が抑制できる理由として、圧縮着火燃焼において燃焼騒音が大きい状態は自着火タイミングの不良が発生しており、これを抑制するためには自着火を促進するための高温の排ガスを燃焼室内に残存させないことが効果的であり、本制御における排気バルブの閉じタイミングの遅角補正は高温の排気ガスの残存量を効率良く低減することが可能であり、かつ補正量を保持することで定常的に燃焼騒音を抑制することが可能となる。
【0091】
図16は圧縮着火燃焼FLGがONのときの燃焼騒音を抑制するため燃料噴射弁の噴射期間を補正する制御の説明図である。
【0092】
本実施例では圧縮着火燃焼FLGがONのときの振動パワースペクトルPSH(i)の入力信号に基づき、燃焼騒音指標演算部において燃焼騒音指標Nの演算と所定の比較用の燃焼騒音指標NLとの比較演算を行い、燃焼騒音が大きくなったと判断されると次段の燃料噴射期間補正制御部で燃焼騒音が大きくなった気筒の燃料噴射弁の燃料噴射期間を徐々に所定の速さで短縮することで燃料噴射量を減少させて燃焼騒音の発生を抑制していき、その後この燃焼騒音指標Nが所定の比較用の燃焼騒音指標NL未満となったときの燃料噴射期間補正量を保持することで燃焼騒音を抑制する。
【0093】
以上の制御により燃焼騒音を抑制できる理由として、圧縮着火燃焼において燃焼騒音が大きい状態は自着火タイミングの不良が発生しており、これを抑制するためには自着火を促進する燃焼前駆物質であるラジカル(OH基)を燃焼室内に残存させないことが効果的であり、本制御における燃料噴射期間補正量の短縮は燃焼室内の燃焼前駆物質の残存量を効率良く低減することが可能であり、かつ燃料噴射期間補正量を保持することで定常的に燃焼騒音を抑制することが可能となる。
【0094】
図17は圧縮着火燃焼FLGがONのときの燃焼騒音を抑制するため過給機22であるターボチャージャの過給圧を補正する制御の説明図である。
【0095】
本実施例では圧縮着火燃焼FLGがONのときの振動パワースペクトルPSH(i)の入力信号に基づき、燃焼騒音指標演算部において燃焼騒音指標Nの演算と所定の比較用の燃焼騒音指標NLとの比較演算を行い、燃焼騒音が大きくなったと判断されると次段の過給圧補正制御部でターボチャージャのウエストゲートバルブを閉じ方向に制御して過給圧を徐々に所定の速さで増加補正して燃焼騒音の発生を抑制していき、その後この燃焼騒音指標Nが所定の比較用の燃焼騒音指標NL未満となったときの過給圧補正量を保持することで燃焼騒音を抑制する。
【0096】
以上の制御により燃焼騒音を抑制できる理由として、圧縮着火燃焼において燃焼騒音が大きい状態は自着火タイミングの不良が発生しており、これを抑制するためには自着火を促進するための燃料濃度の濃化をさせないことが効果的であり、本制御における過給圧補正量の増加は前記燃料濃度の濃化を効率良く低減することが可能であり、かつ補正量を保持することで定常的に燃焼騒音を抑制することが可能となる。
【0097】
図18は圧縮着火燃焼FLGがONのときの燃焼騒音を抑制するため車両駆動用モータの駆動トルクと発電トルクを補正する制御の説明図である。
【0098】
本実施例では圧縮着火燃焼FLGがONのときの振動パワースペクトルPSH(i)の入力信号に基づき、燃焼騒音指標演算部において燃焼騒音指標Nの演算と所定の比較用の燃焼騒音指標NLとの比較演算を行い、燃焼騒音が大きくなったと判断されると次段のモータトルク補正制御部で駆動トルクを徐々に所定の速さで増加し、逆に発電トルクを徐々に所定の速さで減少することで燃焼騒音の発生を抑制していき、その後この燃焼騒音指標Nが所定の比較用の燃焼騒音指標NL未満となったときの駆動トルクと発電トルクの補正量を保持することで燃焼騒音を抑制する。
【0099】
以上の制御により燃焼騒音を抑制できる理由として、圧縮着火燃焼において燃焼騒音が大きい状態は内燃機関100において過剰なトルクが発生しており、これを抑制するためには過剰なトルクを促進するための車両駆動用モータ23の駆動トルクを減少させないこと、そして車両駆動用モータ23の発電トルクを増加させないことが効果的であり、本制御における駆動トルクの増加と発電トルクの減少は過剰なトルクを効率良く低減することが可能であり、かつ補正量を保持することで定常的に燃焼騒音を抑制することが可能となる。
【0100】
図19は以上説明した燃焼騒音を抑制する制御をより具体的に説明するためのフローチャートであり、調節機構として点火プラグ14を含む点火装置とバルブ可変装置7を用い、その作動量として点火時期とバルブ閉じタイミングを制御するようにしている。
【0101】
図19において、このフローチャートは所定の時間周期毎、或いはエンジンの所定回転角周期毎に発生する割り込み信号によって繰り返し実行されるものである。
【0102】
ECU1内では、ステップ101(以下、ステップを“S”と表記する)において現在の内燃機関運転領域に関する情報(内燃機関回転速度、要求トルク、ノックセンサ信号、クランク角センサ信号等)を読み込むが、要求トルクはアクセル開度センサ2の出力信号にもとづいて演算される。
【0103】
次にS102において現在の内燃機関運転領域にもとづき適切な運転が実現できるように電子制御スロットル装置16、バルブ可変装置7、燃料噴射弁13、モータ23を制御する。
【0104】
次にECU1はS103において、S101で読み込まれたクランク角センサ信号を用いて基準k(a)読み込む。
【0105】
次にS104においてS101で読み込まれた内燃機関回転速度、要求トルク等を用いて、図5にあるような制御マップ等から現在の運転領域が圧縮着火燃焼領域か火花点火燃焼領域かの燃焼モードを判定し、圧縮着火燃焼FLGのONとOFFを切り替える。
【0106】
まず圧縮着火燃焼FLGがONである場合、S105において検出周波数Hを読み込み、続くS106においてS103で読み込まれたk(a)とk(z)が等しいかを判定する。否である場合、S103に戻り再度k(a)を読み込む。ステップS103で読み込まれたk(a)とk(z)が等しい場合、S107において検出周波数Hに対応する周波数成分の振動パワースペクトルPSH(j)を演算する。
【0107】
次にS108において、PSH(j)を周波数解析処理期間の完了タイミングまで積分して振動パワースペクトルPSH(i)を演算し、続いてS109においてS108で演算された各周波数の振動パワースペクトルPSH(i)の燃焼騒音指標Nを演算する。この燃焼騒音指標Nは本実施例の場合、は振動パワースペクトルPSH(i)の相加平均値等である。
【0108】
次にS110において燃焼騒音指標Nが所定の比較用の燃焼騒音指標NL以上であるか否かを判定する。否である場合はS103に戻り再度k(a)を読み込む。燃焼騒音指標Nが所定の比較用の燃焼騒音指標NL以上であると判定された場合、S111において図15にあるような排気バルブの閉じタイミング(EVC)の遅角制御を実施し制御を終了する。
【0109】
また圧縮着火燃焼FLGがOFFである場合、S112において検出周波数S1、S2、S3、S4、S5を読み込む。次にS113においてS103で読み込まれたk(a)とk(z)が等しいかを判定する。否である場合、S103に戻り再度k(a)を読み込む。
【0110】
S103で読み込まれたk(a)とk(z)が等しい場合、S114において検出周波数S1、S2、S3、S4、S5に対応する周波数成分の振動パワースペクトルPSS(j)を演算する。
【0111】
次にS115において、S1乃至S5の5成分の振動パワースペクトルPSS(j)を周波数解析処理期間の完了タイミングまで積分して振動パワースペクトルPSS(i)を演算し、続いてS116においてS115で算出された振動パワースペクトルPSS(i)の騒音指標Nを演算する。この騒音指標Nは本実施例の場合は振動パワースペクトルPSS(i)の相加平均値等である。
【0112】
次にS117において燃焼騒音指標Nが所定の比較用の燃焼騒音指標NL以上であるか否かを判定する。否である場合、S103に戻り再度k(a)を読み込む。
【0113】
騒音指標Nが所定値NL以上であると判定された場合、S118において図10に示すような点火タイミングの遅角制御を実施して制御を終了する。
【実施例2】
【0114】
次に本発明の第2の実施例を図21乃至図24を用い説明するが、図1、図2に示す実施例1と基本的に同じ構成部分についてはその説明を省略する。
【0115】
図1、図2に示す実施例と異なるのはノックセンサを共振型のノックセンサと非共振型のノックセンサを使用するようにし、この2個のノックセンサを用いて燃焼騒音を検出するようにしたところにある。
【0116】
図20において、シリンダブロックには非共振型のノックセンサ9と共振型のノックセンサ24が設けられており、これらの信号は図21にあるようにECU1の入力回路1aに入力される。
【0117】
次に図22を用いて非共振型のノックセンサ9と共振型のノックセンサ24におけるノックセンサ特性について説明するが、具体的には感度指標S/N比を示しており、横軸は周波数であり、縦軸はS/N比である。
【0118】
図22でわかるように、ノックセンサ9のS/N比は周波数に対してほぼ平坦な特性を有し、ノックセンサ24のS/N比は低い周波数側で特定の周波数に対して高い特性を有している。
【0119】
ここでは、圧縮着火燃焼の燃焼騒音が低い周波数帯域で特異なピークを有しているので、ノックセンサ24の検出周波数はノックセンサ9の検出周波数より低く設定して、共振型のノックセンサ24で圧縮着火燃焼の燃焼騒音を検出するようにしている、
次に図23を用いて内燃機関100の振動の大きさを算出するためノックセンサ9の出力信号に基づく周波数解析処理を説明する。
【0120】
この図23においても基本的には図7に示した実施例と同様の機能や働きを行うが、異なっている点は共振型のノックセンサ24と非共振型のノックセンサ9の周波数解析を行う点である。
【0121】
そして、周波数解析処理期間においてノックセンサ9とノックセンサ24の信号がECU1に入力される。またノックセンサ9とノックセンサ24の信号はそれぞれ異なる周波数に対するS/N比を有するため異なる値を示す。
【0122】
図24は2個のノックセンサを使用した場合の燃焼騒音を抑制する制御をより具体的に説明するためのフローチャートであり、調節機構として点火プラグを含む点火装置14とバルブ可変装置7を用い、その作動量として点火時期とバルブ閉じタイミングを制御するようにしている。
【0123】
図24において、このフローチャートは所定の時間周期毎、或いはエンジンの所定回転角周期毎に発生する割り込み信号によって繰り返し実行されるものである。
【0124】
図19に示す処理と実質的に同じ処理を行うが、図19に示す実施例と異なるのはS104の判断で、運転領域が圧縮着火燃焼領域か否かを判定して圧縮着火燃焼FLGのONとOFFを切り替えた後の処理である。
【0125】
S104の判断で圧縮着火燃焼では無いと判断されると火花点火燃焼であるため、S119に進んでノックセンサ9の信号を選択して、検出周波数S1乃至S5の周波数成分を取り込んで周波数解析演算を行う。この後の処理フローは図19の処理フローと同様であるので説明を省略する。
【0126】
S104の判断で圧縮着火燃焼であると判断されると、S120に進んでノックセンサ24の信号を選択し、このノックセンサ24の共振周波数成分を取り込んで周波数解析演算を行う。この後の処理フローは図19の処理フローと同様であるので説明を省略する。
このように、共振型のノックセンサ24を用いて圧縮着火燃焼時の燃焼騒音を検出するようにしたので、圧縮着火燃焼時の正確な燃焼騒音が検出でき、これに伴ってより高精度の燃焼制御を実行できることが期待できるものである。
【実施例3】
【0127】
次に本発明の第3の実施例を図25乃至図31を用い説明するが、図1、図2に示す実施例1と基本的に同じ構成部分についてはその説明を省略する。
【0128】
図25のシステム構成は実質的には図1、図2に示す実施例と同様であるが、異なる点は燃焼モードを火花点火燃焼と圧縮着火燃焼の2領域から、運転領域を(1)ストイキ(理論空燃比)火花点火燃焼、(2)希薄燃焼、(3)排気再循環燃焼及び(4)圧縮着火燃焼の4つの燃焼領域に分割し、これらについても燃焼制御を実行するようにしたところである。したがって、ECU1内の制御マップもこれに合わせて構築されている。本実施例では
(1)ストイキ火花点火燃焼は理論空燃比の混合気を点火プラグによって着火して燃焼する燃焼方式、
(2)希薄燃焼は理論空燃比より空気が多い混合気を点火プラグによって着火して燃焼する燃焼方式、
(3)排気再循環燃焼は理論空燃比の混合気に排気ガスを再循環(内部EGR/外部EGRを含む)させた混合気を点火プラグによって着火して燃焼する燃焼方式、
(4)圧縮着火燃焼は理論空燃比の混合気をピストンによって断熱圧縮して自己着火して燃焼する燃焼方式、
である。
【0129】
繰り返して述べるが、これらの燃焼方式は実施例であって、点火プラグによる着火方法を圧縮着火による着火方法に変更した燃焼法、例えば(2)理論空燃比より空気が多い混合気をピストンによる断熱圧縮で着火して燃焼する燃焼方式や(3)理論空燃比の混合気に排気ガスを再循環させた混合気をピストンによる断熱圧縮で着火して燃焼する燃焼方式を採用しても良いことはいうまでも無く、更に上記混合気の態様に圧縮着火と火花点火を組み合わせた種々の燃焼モードを対象にしても良い。
【0130】
ただ、後述するが各燃焼モードにおいても燃焼騒音がピークとして現れる特異的な周波数は圧縮着火燃焼<希薄燃焼<排気再循環燃焼<ストイキ点火燃焼の関係を有しており、その理由として各燃焼モードで燃焼温度が異なり、これにともない燃焼ガスの圧力伝播速度が変化するためと考えられる。
【0131】
図26は(1)ストイキ火花点火燃焼と(2)希薄燃焼と(3)排気再循環燃焼と(4)圧縮着火燃焼の燃焼領域および各燃焼モードのフラグ(FLG)の状態を示した制御マップの説明図である。
【0132】
本実施例では(1)ストイキ火花点火燃焼と(2)希薄燃焼と(3)排気再循環燃焼と(4)圧縮着火燃焼の燃焼モードを運転領域によって切り換えて実行する。
【0133】
ECU1はアクセル開度センサ2の出力信号から演算される要求トルクと、クランク角センサ10の出力信号から演算される内燃機関100の回転速度にもとづく燃焼モードFLGの制御マップを備えており、要求トルクと内燃機関回転速度にもとづき各燃焼モードFLGをONとする。
尚、図25はストイキ火花点火燃焼と希薄燃焼と排気再循環燃焼と圧縮着火燃焼のFLGの制御マップを備えているがこれに限るものではなく、各燃焼モードの少なくとも二つ以上の燃焼モードを制御マップに備えていても良い。
【0134】
図27は図26に示すマップによって選択された燃焼モードにおける検出周波数を解析する検出周波数演算部のブロック図であり、燃焼モードFLGに基づき検出周波数が(1)ストイキ火花点火燃焼時の検出周波数Sと、(2)希薄燃焼時の検出周波数Lと、(3)排気再循環燃焼時の検出周波数Eと、(4)圧縮着火燃焼時の検出周波数Hの振動パワースペクトルPSを出力する検出周波数演算部を備えている。
【0135】
したがって、ストイキ火花点火燃焼FLGがONのとき検出周波数Sの振動パワースペクトルPSSを、希薄燃焼FLGがONのとき検出周波数Lの振動パワースペクトルPSLを、排気再循環燃焼FLGがONのとき検出周波数Eの振動パワースペクトルPSEを、圧縮着火燃焼FLGがONのとき検出周波数Hの振動パワースペクトルPSHを出力する。
【0136】
これらの演算は第1の実施例と同様の手法で求めることができる。また、非共振型のノックセンサ9を使用しているため、燃焼モードに応じて対応する検出周波数を選択するため対応するバンドパスフィルタを用いて周波数帯域の選択を実施している。
【0137】
ここで、検出周波数はH<L<E<Sの関係を有していることが新たな知見として得られている。その理由として各燃焼モードで燃焼温度が異なり、これにともない燃焼ガスの圧力伝播速度が変化するためである。このため、各燃焼モードの燃焼騒音の検出に適した検出周波数があるのでこれに対応して周波数解析処理を行えば正確な燃焼騒音の評価が可能となる。
【0138】
尚、燃焼モードのFLGによる検出周波数の選定によらず、検出周波数S、L、E、Hのすべてにおいて振動パワースペクトルPSを演算しても良い。また、検出周波数S、L、E、Hの周波数に合わせた共振型のセンサを用い、燃焼モードでこれらのセンサを選択して燃焼騒音を検出してもよい。
【0139】
次に図28を用いてノックセンサ9の出力信号にもとづく周波数解析処理について説明する。
【0140】
本実施例ではノックセンサ9の振動信号に対して周波数解析処理を行うことで、各周波数に対する振動パワースペクトルを演算している。横軸は周波数であり、縦軸は振動エネルギを示す振動パワースペクトルPSを示している。
【0141】
ECU1内ではこの周波数解析処理信号に対し検出周波数S、L、E、Hについての振動パワースペクトルPSを読み込む。ここで望ましくは、検出周波数はH<L<E<Sとする。これにより各燃焼モードの燃焼温度変化による周波数の変化に対応でき、検出精度を向上することができる。
【0142】
また、燃焼モードのFLGによらず検出周波数S、L、E、Hにおける振動パワースペクトルPSを読み込んだ結果から、これらの検出周波数における振動パワースペクトルPSS、振動パワースペクトルPSL、振動パワースペクトルPSE、振動パワースペクトルPSHの内で最大振動パワースペクトルPSとなる検出周波数から燃焼モードを判定することが可能である。例えば振動パワースペクトルPSHが最大であれば燃焼モードは圧縮着火燃焼である。
【0143】
ここで、燃焼状態を変更するための制御において、各燃焼モードに対応した振動パワースペクトルの値は燃焼モードで異なるので、振動パワースペクトルから演算される燃焼騒音指標Nと比較される所定の比較用燃焼騒音指標NLも各燃焼モードに対応して設定されるものである。例えば、それぞれの燃焼モード毎にノックが生じていないときのバックグランドの振動パワースペクトルPS(BGL)を演算して比較用燃焼騒音指標NLとしても良い。
【0144】
次に図29を用いて検出周波数を変更する手法について説明するが、その特徴はノックセンサ9とECU1の信号線間において、フィルタ回路26を備えることであり、フィルタ回路26は任意にフィルタリング機能をON、OFFすることができるように構成されている。
【0145】
フィルタリング機能は種々の方法があるが、検出周波数によってローパス、ハイパス、バンドパス等の機能を単独、或いは組み合わせて用いることができる。
【0146】
図30はフィルタ回路26の特性図であり、このフィルタ回路26は所定の周波数以上の信号をフィルタリングする特性を有している。この所定の周波数とは前述の検出周波数H、L、E、Sの間の周波数とする。このフィルタ回路特性26はローパスフィルタであり、ノックセンサ9の信号における所定の周波数以上をフィルタリングすることが可能である。フィルタリングするタイミングはECU1からの切り換え信号によって行われる。尚、フィルタリング処理はECU1内でソフト的にデジタルフィルタリングすることも可能である。
【0147】
また、図29による検出周波数変更方法を用いて検出周波数を変更したかどうかの実施判定ができるのでその手法を説明する。
【0148】
図31はフィルタ回路26を適用した際のノックセンサ9の信号特性であり、ノックセンサ9の信号は前述のフィルタ回路の特性に基づきフィルタリングされる。例えば、ストイキ火花点火燃焼を実施している際、フィルタ回路26のフィルタをONとOFFすると点火時期が異なってくるが、圧縮着火燃焼を実施している際、フィルタ回路26のフィルタをONとOFFするとバルブ可変装置と燃料噴射期間のいずれも同じとなることを確認すれば、ストイキ火花点火燃焼の燃焼モードにもとづいて検出周波数の変更を実施していることが判定できる。
【0149】
以上に説明した実施例においては燃焼騒音を検出するセンサとして燃焼による内燃機関の振動を検出する振動検出型のノックセンサを用いて説明したが、これ以外に燃焼室内の燃焼ガスの電気伝導度を測定するイオン電流センサ、燃焼室内の燃焼圧を測定する筒内圧センサ等を使用することが可能である。これらは異なる燃焼モードで燃焼騒音に関しては周波数分布の振る舞いが同じ傾向を示しているからである。
【0150】
本発明は、要は各燃焼モードで区別(或いは顕著な値を有する)できる特異な検出周波数、或いは検出周波数帯域があることを見い出し、これを燃焼モードに対応して選択的に検出してやれば燃焼騒音の発生状況を精度よく検出できることを提案するものである。また、この検出方法を使用して燃焼室内の燃焼状態を制御してやれば正確な制御を実行できるようになり、結果として燃費性能や排気性能を向上することが期待できるものである。
【符号の説明】
【0151】
1…ECU、2…アクセル開度センサ、3…排気温度センサ、4…空燃比センサ、5…三元触媒、6…排気管、7a…吸気バルブ可変装置、7b…排気バルブ可変装置、8…燃焼室、9…ノックセンサ、10…クランク角センサ、11…クランク軸、12…ピストン、13…燃料噴射弁、14…点火プラグ、15…吸気管、16…電子制御スロットル装置、17…吸気温度センサ、18…エアフローセンサ、20…燃料圧力センサ、21…燃料ポンプ、22…過給器、23…モータ、24…ノックセンサ、25…EGR弁、26…フィルタ回路、100…内燃機関、20a…入力回路、20b…入出力ポート、20c…RAM、20d…ROM、20e…CPU、20f…電子制御スロットル駆動回路、20g…燃料噴射弁駆動回路、20h…点火出力回路、20i…可変バルブ駆動回路、20j…燃料ポンプ駆動回路、20k…過給機駆動回路。
【技術分野】
【0001】
本発明は内燃機関の燃焼騒音を検出する燃焼騒音検出方法及び燃焼騒音検出装置並びに内燃機関の燃焼を制御するための調節機構を駆動する内燃機関の制御装置に係り、特に内燃機関の燃焼室内の燃焼方法が異なった場合の燃焼状態を直接的、或いは間接的に把握する燃焼騒音の検出方法及び検出装置並びにこの燃焼騒音検出装置を用いて内燃機関の燃費性能、或いは排気性能、或いは両性能を改善するように燃焼を制御する内燃機関の制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
内燃機関の燃焼室内の燃焼状態を把握する手段として内燃機関の振動を検出する振動検出型のノックセンサを用いることが知られている。このノックセンサは内燃機関の振動を検出するものであるが間接的には燃焼室内の燃焼状態を検出しており、代表的には燃焼状態の変化によって燃焼室内の圧力が過剰に上昇したりして内燃機関が振動するのを検出している。
【0003】
つまり、燃焼室内の燃焼ガスにより生じる衝撃波の圧力の伝達経路はシリンダヘッドとピストンが考えられるが、一般にシリンダヘッドの燃焼室壁面剛性はピストン系の剛性より高いため、伝達される振動エネルギの大部分はピストン側からシリンダブロックへ流れており、これを振動センサであるノックセンサで検出しているものである、したがって、この振動は燃焼状態の変動を表すことから燃焼騒音として捉えることができる。
【0004】
このような燃焼騒音の発生を把握或いは検知して、この燃焼騒音を抑制する方向に燃焼を制御する技術が特開2010−216264号公報(特許文献1)にて開示されている。
【0005】
特許文献1に開示されているフローチャート(図10参照)では、S1で読み込まれた燃焼温度にもとづきS2、S3において8kHzおよび6kHzの周波数に対応するノックセンサ信号の積分値を検出する。S4、S12では、このノックセンサ信号の積分値を用いて燃焼期間を判定する。続くS5、S7、S13、S17では着火タイミングの判定を実施する。さらにS9では失火を判定し、S14では目標レール圧に対する判定を実施する。これらの燃焼期間と着火タイミングの判定結果に基づき燃料噴射量(PreQ)、排気ガス還流量(EGR)、燃料噴射時期(IT)を制御してルーチンを終了する。
【0006】
このように引用文献1には、燃焼期間と着火タイミングを割り出すために検出周波数を選択することで燃焼期間と着火タイミングを精度良く検出することができ、これによって燃焼状態を所定の状態にフィードッバク制御できるということが記述されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−216264号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、今後の内燃機関は燃費性能の向上や排気性能の向上、更には両性能の相乗的な向上等が要求されている。このためのアプローチとして種々の技術的な改良、改善が提案されているが、その中の技術の一つとして内燃機関の燃焼方法を自動車等の車両の運転状態や内燃機関自身の運転状態に応じて変更する方法が注目されている。
【0009】
例えば、理論空燃比(ストイキ状態)近傍の混合気(燃料と空気の混合された状態)や、この理論空燃比より空気の割合が多い希薄混合気を点火プラグによって着火して燃焼を行う方法や、これらの混合気を点火プラグによらないで混合気の断熱圧縮によって生じる熱によって着火して燃焼を行う方法をそれぞれ運転状態に応じて選択的に実行することが提案されている。
【0010】
しかしながら、このような異なる燃焼方法においては燃焼騒音の発生状況も自ずと異なってくることが考えられ、上述したような従来技術の検出方法では異なる燃焼方法に対応できない恐れが考えられる。つまり、上記した従来技術では一つの燃焼方法(この例ではデーゼルエンジンのため圧縮着火燃焼に分類される)に関して生じる振動の周波数を選択的に利用して精度良い着火タイミングと燃焼期間を割り出し、これによって燃焼状態を改善することであり、異なる燃焼方法については考慮されていないものであった。
【0011】
本発明の目的は、自動車等の車両の運転状態や内燃機関自身の運転状態に応じて異なる燃焼を行う内燃機関に用いられる制御装置にあって、異なる燃焼方法を実行している内燃機関の燃焼室内の燃焼状態を直接的、或いは間接的に燃焼騒音として把握し、この燃焼騒音に基づいて内燃機関の燃費性能、或いは排気性能、或いは両性能を改善するように内燃機関の燃焼を制御する調節機構を駆動する内燃機関の制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の特徴は、運転状態によって定まる燃焼方法(以下燃焼モードという)で駆動されている内燃機関の燃焼モードを把握し、この燃焼モードに基づいて内燃機関の燃焼室内の燃焼騒音を検出する燃焼騒音センサの検出周波数、或いは検出周波数帯域を選択して燃焼騒音の大きさの度合いを検出する、ところにある。
【0013】
また、本発明の他の特徴は、上記した燃焼騒音の検出結果を用いて内燃機関の燃焼室内の燃焼騒音が所定の燃焼騒音となるように内燃機関の燃焼を制御する調節機構を駆動する、ところにある。
【0014】
ここで、燃焼モードは典型的には火花点火燃焼と圧縮着火燃焼であるが、以下に述べる〔発明を実施するための形態〕にある実施例で説明するように、これに限らず種々の燃焼モードにおいても本発明の技術的思想は適用できるものである。
【0015】
また、燃焼騒音センサには燃焼ガスによる圧力変動を振動によって検出する振動センサ、いわゆるノックセンサや、燃焼室内の燃焼ガスの電気伝導度を測定するイオン電流センサ、燃焼室内の燃焼圧を測定する筒内圧センサ等が使用できる。これらは異なる燃焼モードで燃焼騒音に関して周波数分布の振る舞いが同じ傾向を示している。
【0016】
要は各燃焼モードで区別(或いは顕著な値を有する)できる特異な検出周波数、或いは検出周波数帯域があることを見い出し、これを燃焼モードに対応して選択的に検出してやれば燃焼騒音の発生状況を精度よく検出できることを提案するものである。また、この検出方法を使用して燃焼室内の燃焼状態を制御してやれば正確な制御を実行できるようになり、結果として燃費性能や排気性能を向上することができるものである。
【0017】
また、燃焼状態を調節する調節機構としては、内燃機関の吸気弁や排気弁の開閉タイミングや開閉リフト、燃料噴射弁の燃料噴射時期や噴射期間(=噴射量)、点火プラグの点火時期の進角や遅角、ターボチャージャによる過給圧の増減、ハイブリッド車等における車両駆動モータの駆動トルク或いは発電トルクの増減、等があるが、内燃機関の燃焼状態を調節できるものであればこれらに限らないものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、燃焼モードに基づいて燃焼騒音センサの検出周波数或いは検出周波数帯域を適切に選択することで燃焼状態を高精度に検出することが可能となり、この結果、この選択された検出周波数或いは検出周波数帯域で検出される実際の燃焼騒音が所定の燃焼騒音以下となるように内燃機関の燃焼状態を精度良く制御できるため、内燃機関の燃費性能、或いは排気性能、或いは両性能を改善できるという効果が期待できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施例になる内燃機関の制御装置の構成を示す構成図である。
【図2】図1に示すECUの内部構成を示すブロック図である。
【図3】図1に示すバルブ可変装置の特性を示す特性図である。
【図4】図1に示すクランク角センサの出力信号に基づく検出期間と、この検出期間に基づくノックセンサの振動判定期間を示すチャート図である。
【図5】図1に示す制御装置に設けられる火花点火燃焼と圧縮着火燃焼の運転領域を示す制御マップ図である。
【図6】図1に示す制御装置における圧縮着火燃焼FLGがOFFのときの検出周波数演算部のブロック図である。
【図7】図1に示すクランク角センサの出力信号に基づく検出期間と、この検出期間に基づくノックセンサの振動判定期間と、特定周波数の振動エネルギを示すチャート図である。
【図8】図7に示す振動パワースペクトルPSS(i)の燃焼毎の特性チャート図である。
【図9】圧縮着火燃焼FLGがOFFのときの燃焼騒音の抑制制御のシステムブロック図である。
【図10】図9に示す圧縮着火燃焼FLGがOFFのときの点火時期の制御特性図である。
【図11】圧縮着火燃焼FLGがONのときの検出周波数演算部のブロック図である。
【図12】図1に示すクランク角センサの出力信号に基づく検出期間と、この検出期間に基づくノックセンサの振動判定期間と、特定周波数の振動エネルギを示すチャート図である。
【図13】図12に示す振動パワースペクトルPSS(i)の燃焼毎の特性チャート図である。
【図14】圧縮着火燃焼FLGがONのときの燃焼騒音の抑制制御のシステムブロック図である。
【図15】圧縮着火燃焼FLGがONのときの排気バルブの制御特性図である。
【図16】圧縮着火燃焼FLGがONのときの燃料噴射弁の噴射時間の制御特性図である。
【図17】圧縮着火燃焼FLGがONのときの過給圧の制御特性図である。
【図18】圧縮着火燃焼FLGがONのときのモータの駆動トルクと、発電トルクの制御特性図である。
【図19】図1に示す制御装置における制御内容を示すフローチャート図である。
【図20】本発明の他の実施例になる内燃機関の制御装置の構成を示す構成図である。
【図21】図20に示すECUの内部構成を示すブロック図である。
【図22】図20に示す2個のノックセンサの感度指標S/N比を示す特性図である。
【図23】図20に示すクランク角センサの出力信号に基づく検出期間と、この検出期間に基づく2個のノックセンサの振動判定期間を示すチャート図である。
【図24】図20に示す制御装置における制御内容を示すフローチャート図である。
【図25】本発明の更に他の実施例になる内燃機関の制御装置の構成を示す構成図である。
【図26】図25に示す制御装置に設けられるストイキ火花点火燃焼と希薄燃焼と排気再循環燃焼と圧縮着火燃焼の運転領域を示す制御マップ図である。
【図27】図25に示す実施例における検出周波数演算部のブロック図である。
【図28】各燃焼モードにおける周波数の分布状態を示す特性図である。
【図29】本発明の更に他の実施例になる内燃機関の制御装置の構成を示す構成図である。
【図30】図29に示すフィルタ回路の特性図である。
【図31】図29に示すフィルタ回路を適用した際のノックセンサの信号特性図である。
【図32】圧縮着火燃焼と火花点火燃焼の振動パワースペクトルの周波数分布の相違を説明する特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施例について図面に従い詳細に説明するが、各実施例においては燃焼騒音センサとして振動検出型のノックセンサを備えた内燃機関の制御装置を基本に説明する。
【実施例1】
【0021】
図1を用いて本発明の第1の実施形態による内燃機関の制御装置の構成を説明するが、この実施例は自動車用ガソリン内燃機関に適用した構成である。
【0022】
内燃機関100は異なった燃焼モードである(1)火花点火燃焼と、(2)圧縮着火燃焼を実行する自動車用のガソリン内燃機関であるが、同一の空燃比で混合気が形成されている。
【0023】
ここで、(1)火花点火燃焼は、内燃機関に供給された空気と燃料の混合気をシリンダヘッドに取り付けた点火プラグによって点火して混合気を燃焼させる方法であり、(2)圧縮着火燃焼は、燃焼室に供給された空気をピストンによって断熱圧縮して温度を上昇させ、これに燃料を噴射して自着火させて燃料を燃焼させる方法や、内燃機関に供給された空気と燃料の混合気をピストンによって断熱圧縮して温度を上昇させ自着火させて燃料を燃焼させる方法である。
【0024】
内燃機関の吸気系を構成する吸気管15には、吸入空気量を計測するエアフローセンサ18と、吸気管圧力を調整する電子制御スロットル装置16と、吸入空気温度検出器の一態様であって吸入空気の温度を計測する吸気温度センサ17と、吸入空気を圧縮して充填効率を向上するターボチャージャのような過給機22が適宜位置に備えられている。尚、場合によっては過給機22を含まない構成でも良く、またエアフローセンサ18の代わりには吸入空気圧力センサとしても良い。
【0025】
内燃機関100はピストン12を内蔵する気筒を有し、この気筒の燃焼室8の中に燃料を直接噴射する燃料噴射装置(以下燃料噴射弁)13と、点火エネルギを供給する点火プラグ14が気筒毎に備えられている。尚、気筒の燃焼室8の中に燃料を噴射する燃料噴射弁13の代わりに吸気管15の適宜位置に燃料噴射弁13を備えても良いものである。これは所謂マルチポイントインジェクション(MPI)と呼ばれるものである。
内燃機関の燃焼状態を直接或いは間接的に把握(これは検知する概念も含む)するため、内燃機関の機械的振動を計測する振動検出型のノックセンサ9が内燃機関100の適宜位置(通常はシリンダブロック)に備えられており、また、このノックセンサ9は非共振型のノックセンサであり、広い周波数帯域にわたって振動を検出することができるものである。
【0026】
更に、内燃機関の燃焼室8に流入する吸入空気を調整する吸気バルブ可変装置7aと燃焼室8から流出する排気ガスを調整する排気バルブ可変装置7bとから構成されるバルブ可変装置7が内燃機関100の各々の適宜位置に備えられている。
【0027】
バルブ可変装置7を調整することにより吸気バルブと排気バルブの開閉タイミング(位相角)及びリフト行程(作用角)が変更でき、燃焼室8に流入する真の空気量やバルブオーバラップによる内部EGR量を調整することができる。
【0028】
更に圧力調整器の一態様であって燃料噴射弁13に燃料を供給する燃料ポンプ21が内燃機関100の適宜位置に備えられており、この燃料ポンプ21は燃料圧力検出器の一態様であって燃料の圧力を計測する燃料圧力センサ20が備えられている。
【0029】
排気系を構成する排気管6には、排気を浄化する三元触媒5と、空燃比検出器の一態様であって三元触媒5の上流側で排気の空燃比を検出する空燃比センサ4と、排気温度検出器の一態様であって三元触媒5の上流側で排気の温度を計測する排気温度センサ3とが適宜位置に備えられている。
【0030】
またクランクシャフト11にはクランクシャフト11の角度および角速度およびピストン12の移動速度等を検出するためのクランク角センサ10が備えられている。
【0031】
更にクランクシャフト11に動力を伝達可能な適宜位置に車両駆動用モータ23が備えられているが、車両駆動用モータ23を含まない構成でもよい。車両駆動用モータ23は例えば、ハイブリッド車に使用されるモータであり、内燃機関100が停止している状態、或いは運転されている状態で自動車を駆動することができる。この車両駆動用モータ23は更に自動車が減速しているときに回生ブレーキとして作用して自動車に搭載されているリチウム電池を充電する発電機として働くことができる。
【0032】
そして、エアフローセンサ18、吸気温度センサ17、ノックセンサ9、燃料圧力センサ20、空燃比センサ4及び排気温度センサ3とから得られる検出信号は内燃機関コントロールユニット(以下ECUという。)1に送られる。
また、運転者の運転意図を表すアクセル開度センサ2から得られる信号がECU1に送られるが、このアクセル開度センサ2は運転者が要求するトルクであるアクセルペダルの踏み込み量、すなわち、アクセル開度を検出するものである。
【0033】
ECU1はアクセル開度センサ2の出力信号に基づいて要求トルクを演算するもので、アクセル開度センサ2は内燃機関100への要求トルクを検出する要求トルク検出センサとして用いられる。
【0034】
また、ECU1はクランク角センサ10の出力信号にもとづいてクランクシャフト11の角度、角速度及びピストン12の移動速度、内燃機関の回転速度を所定の計算式に基づいて演算する。
【0035】
ECU1は前記各種センサの出力から得られる内燃機関100の運転状態にもとづき電子制御スロットル装置16の開度、燃料噴射弁13の燃料噴射期間や噴射時期、点火プラグ14の点火時期、吸気バルブ可変装置7aと排気バルブ可変装置7bのバルブ開閉タイミング等の内燃機関100の制御に必要な作動量を演算する。尚、ECU1はこれらの作動量以外にも他の作動量を演算して内燃機関の作動を制御するものである。
【0036】
そして、ECU1で演算された燃料噴射期間は開弁パルス信号に変換され燃料噴射弁13に送られ、同様に演算された点火タイミングは点火信号に変換されて点火プラグ14に送られ、同様に演算されたスロットル開度はスロットル駆動信号に変換されて電子制御スロットル装置16へ送られ、同様に演算されたバルブ開閉タイミングは可変バルブ駆動信号に変換されてバルブ可変装置7へ送られる。
【0037】
また、同様に演算された燃料ポンプ21の作動量は燃料ポンプ駆動信号に変換されて燃料ポンプ21へ送られ、同様に演算された過給機22の作動量は過給機駆動信号に変換されて過給機22へ送られ、同様に演算された車両駆動用モータ23の作動量はモータ指令信号に変換されて車両駆動用モータ23へ送られる。
【0038】
ここで、電子制御スロットル装置16、燃料噴射弁13、点火プラグ14、吸気バルブ可変装置7a、排気バルブ可変装置7b、燃料ポンプ21、過給機22及び車両駆動用モータ23等は内燃機関の作動に必要な作動量を制御するものであるが、基本的は内燃機関の燃焼状態を制御、或いは調節するための調節機構としての機能を備えているものである。もちろんこれ以外の調節機構を採用しても良いことはいうまでも無い。
【0039】
したがって、上記した内燃機関の種々の作動量を把握、或いは検出するセンサや、内燃機関の種々の作動量を調節する調節機構の働きによって、吸気管15から吸気バルブを経て燃焼室8内に流入した空気に燃料噴射弁13から燃料が噴射されて燃焼室8内に混合気が形成され、この混合気は所定の点火タイミングに点火プラグ14で発生される火花により点火されて爆発、燃焼し、その燃焼圧によりピストン12を押し下げて内燃機関100の駆動力となる。更に爆発後の排気は排気管6を経て三元触媒5に送られ排気成分は三元触媒5内で浄化されて大気に排出される。
【0040】
次に図2を用いて内燃機関の制御装置の構成について説明するが、基本的には制御基板上に搭載されたLSI等の論理素子、演算素子および記憶素子等から構成されている。
【0041】
アクセル開度センサ2、排気温度センサ3、空燃比センサ4、ノックセンサ9、クランク角センサ10、吸気温度センサ17、エアフローセンサ18及び燃料圧力センサ20等の作動量を表すセンサ出力信号はECU1の入力回路1aに入力される。上述したが記載したセンサ類は代表的なものであって、これ以外の内燃機関の作動量を検出するセンサの信号を入力してもなんら差し支えないものである。
【0042】
入力された各センサの入力信号は入力回路1aから入出力ポート1b内の入力ポートに送られ、入力ポート1bに送られた値はRAM1cに記憶されてCPU1eでの演算処理に使用される。
【0043】
演算処理内容を記述した制御プログラムはROM1dに予め書き込まれており、この制御プログラムに従って演算された各調節機構の作動量を示す値はRAM1cに記憶された後、入出力ポート1bの出力ポートに送られ各駆動回路を経て各調節機構に送られる。
【0044】
本実施形態の場合では調節機構の駆動回路として、電子制御スロットル駆動回路1f、燃料噴射弁駆動回路1g、点火出力回路1h、可変バルブ駆動回路1i、燃料ポンプ駆動回路1j、過給機駆動回路1kがあり、指令回路としてモータ指令回路1lが備えられている。
【0045】
各駆動回路は電子制御スロットル装置16、燃料噴射弁13、点火プラグ14、バルブ可変装置7、燃料ポンプ21、過給機22、モータ23に送られそれぞれを制御する。尚、本実施形態においてはECU1内に前記駆動回路の全てを備えているが、本実施例はこれに限るものではなく調節機構に直接駆動回路を取り付ける、いわゆる機電一体型の調節機構を備える場合はECU1内にこの駆動回路を備える必要は無い。
【0046】
次に図3を用いてバルブ可変装置7の作動特性を説明すると、グラフの縦軸はバルブリフト量Lvを示し、横軸は位相角を示している。
【0047】
BDCはピストン12が下死点にあるときを示し、TDCはピストン12が上死点にあるときを示しており、経過位相角に対応する内燃機関100の作動行程(爆発、排気、吸気、圧縮)を併せ示している。
【0048】
排気弁の動作は爆発行程の終期付近から排気工程を経過して吸気行程の初期付近にわたって行われ、バルブリフト量が増加し排気弁が開き始めるタイミングを排気弁開タイミング(以下EVO)、その後バルブリフト量が減少し排気弁が閉じるタイミングを排気弁閉タイミング(以下EVC)と定義する。
【0049】
本実施形態では吸気弁及び排気弁にバルブ可変装置7a、7bを備えており、これらのバルブ可変装置7を動作することで、バルブリフト量のプロフィール(例えば最大バルブリフト量、最大バルブリフト量のタイミング、バルブリフト量推移、EVO、EVC、位相等)を連続的あるいは段階的に変更するもので、吸気弁の動作も同様に変更することが可能である。
【0050】
本実施形態においては、吸気弁および排気弁にバルブリフト量のプロフィールを連続的あるいは段階的に変更するバルブ可変装置備えているが、これに限るものではなく、排気バルブにのみ備えるものであっても良い。更に、クランクシャフトに対するカムシャフトの相対位相を変えるバルブ位相変更装置あるいはバルブリフト量の可変機構のいずれかを備えるものであっても良い。
【0051】
以上のバルブ可変装置7と前記電子制御スロットル装置16の制御により、燃焼室8の中の空気量や内部EGR量を調整することができる。
【0052】
次に図4を用いて、ノックセンサ9とクランク角センサ10の出力信号と、この出力信号に基づく内燃機関100の振動(=燃焼騒音)の判定期間について説明する。
【0053】
本実施例においては、クランク角センサ10の出力信号は矩形状の電圧であり、矩形波の電圧が上昇するときを立ち上がり、矩形波の電圧が降下するときを立ち下りと定義する。矩形波は所定の個数zを1周期として繰り返し出力されており、またECU1内では、前記立ち上がりのタイミング毎に基準k(a)を判定する。添字の(a)は所定の個数z番目の矩形波が出力されてから所定期間経過した後の1回目の矩形波の立ち上がりの基準k(a)=(1)とする基準kの番号であり、所定の個数zにおいて(a)=(z)となる。
【0054】
基準k(1)と基準k(2)と経過期間の判定をもってクランクシャフト回転角度CA2とし、これ以外に判定された基準k(a)毎にクランクシャフトの回転角度CA1として判定する。ECU1内では、クランクシャフトの回転角度CA1、CA2をもってクランクシャフト11の角度の判定を実施する。尚、前記所定の個数zが不足あるいは過多の状態となる場合は、クランク角センサの異常と判断すれば良い。
【0055】
基準k(z)がECU1内で判定されたときから、所定の基準k(a)を判定するまでの期間をノックセンサ信号に対する周波数解析処理期間とする。望ましくは、基準k(z)はピストン12が圧縮上死点であるタイミング(位相)とし、かつ所定の基準k(a)はクランクシャフト11が圧縮上死点から60度回転したタイミング(位相)とする。尚、通常ではこの60度の範囲でノックが発生することが知られているので、この範囲でノックセンサ9の信号を取り込んで計算機で周波数解析すればよい。そして、この周波数解析処理期間内に発生した振動は周波数解析されて特定の中心周波数をピークに持つ周波数出力が得られる。一般には火花点火燃焼機関では5つの特異なピークを持つ中心周波数出力が得られる。
【0056】
図5は火花点火燃焼と圧縮着火燃焼の運転領域を切り替えるための制御マップの説明図であり、本実施例では火花点火燃焼と圧縮着火燃焼を要求トルクと内燃機関の回転数で決まる運転領域によって切り換えて実行する。
【0057】
ECU1はアクセル開度センサ2の出力信号から演算される要求トルクと、クランク角センサ10の出力信号から演算される内燃機関100の回転速度に基づく切り換え制御マップを記憶素子の所定エリアに備えており、要求トルクと回転速度に基づき圧縮着火燃焼FLG(フラグの略称)のONとOFFを切り替える。
つまり、圧縮着火燃焼FLGがONでは圧縮着火燃焼が行なわれており、圧縮着火燃焼FLGがOFFでは火花点火燃焼が行われているものである。このように、火花点火燃焼と圧縮着火燃焼の各燃焼モードに応じて燃焼騒音の検出周波数或いは検出周波数帯域を選択する点が本発明の特徴の一つである。
【0058】
ここで、図5に示す制御マップのパラメータはアクセル開度と回転数を用いているが、この2つのパラメータを使用することによって燃焼室8に送られる空気量に換算することができるものであるが、アクセル開度だけで火花点火燃焼と圧縮着火燃焼を切り替えるようにしても良い。尚、圧縮着火燃焼FLGの制御マップを備えているがこれに限るものではなく、要求トルクおよび内燃機関回転速度のいずれかから演算される制御マップを備えるものであってもよい。
【0059】
次に図6乃至図10を用いて圧縮着火燃焼FLGがOFFのとき、すなわち火花点火燃焼の燃焼騒音を抑制する制御について説明する。
【0060】
図6は圧縮着火燃焼FLGがOFFのときの検出周波数演算部のブロック図であり、圧縮着火燃焼FLGがOFFという条件に基づき、ノックセンサ9の検出周波数のうちの特定の中心周波数S1、S2、S3、S4、S5を含む5つの検出周波数帯域の振動エネルギを演算する検出周波数演算部を備えている。そして、検出周波数演算部は圧縮着火燃焼FLGがOFFの火花点火燃焼では好ましくは中心周波数S1、S2、S3、S4、S5を含む5つの検出周波数帯域の振動エネルギを出力する。ここで、特異な中心周波数としては、S1≒6Khz、S2≒10Khz、S3≒13Khz、S4≒14Khz及びS5≒18Khzである。
【0061】
また、これら5成分の周波数の抽出は、(1)すべての5成分を含む周波数帯域を選択しても良いし、(2)5成分の中心周波数を含む5つの周波数帯域(前述の周波数帯域より狭い)を選択して抽出することができる。いずれの方法をとるかは制御システムの構築によってより適正な方法を選択すれば良いものである。
【0062】
そして、検出周波数演算部はデジタルシグナルプロセッサ(通称DSP)等を用いて高速で演算ができるように構成されている。尚、周波数解析は高速フーリエ変換(FFT)等の手法を用いて行うことができる。
【0063】
少なくとも、圧縮着火燃焼FLGがOFFのときでは中心周波数S1、S2、S3、S4、S5を含む5つの検出周波帯域の内2つ以上を出力すると良い。この理由として、火花点火燃焼時は5つの中心周波数において振動信号が顕著に現れるためであり、この成分を2つ以上とすることで燃焼騒音による振動の検出精度を向上することが可能となるためである。
【0064】
次に図7を用いて内燃機関100の振動の大きさを算出するためノックセンサ9の出力信号に基づく周波数解析処理を説明する。
【0065】
本実施例においては図4で説明したような周波数解析期間の設定と同様な手法でノックセンサ9の信号を検出する。
そして、この周波数解析期間において、ノックセンサ9の信号から得られる中心周波数S1、S2、S3、S4、S5を含む所定の周波数帯域の5成分についての周波数解析を実施した結果を振動エネルギを示す振動パワースペクトルPSS(j)として示している。ここで振動パワースペクトルPSS(j)のPSはパワースペクトルを表し、Sは火花点火燃焼を表し、(j)はECU1内のクロック(演算周期)にもとづくデータ番号である。
【0066】
したがって、この振動パワースペクトルPSS(j)は5つの周波数成分毎に周波数解析期間(約60度)にわたって所定の演算周期でそれぞれ演算され、その演算結果が図7に示されている。
つまり、周波数解析期間のある時点では中心周波数S1、S2、S3、S4、S5を有する所定周波数帯域の5成分が周波数解析演算されており、これを周波数解析期間にわたりプロットすると、図7にある、例えばS1、S2の周波数成分のような結果が得られる。もちろん他のS3、S4、S5の周波数成分についても同様である。
【0067】
次に図8を用いて振動パワースペクトルPSS(i)の特性について説明する。
【0068】
図8は振動パワースペクトルPSS(i)の説明図であるが、(i)は内燃機関100における燃焼回数を示している。つまり1燃焼毎に同じ周波数帯域の振動パワースペクトルPSS(i)の総和を求めたものであり、他の周波数帯域も同様に求められる。
【0069】
本実施例では振動パワースペクトルPSS(i)は、上述した振動パワースペクトルPSS(j)から以下の式を用いて算出する。
PSS(i)=∫PSS(j)dj・・・式(1)
*算出タイミングは前記周波数解析期間における完了タイミングとする。
そして、これらの各周波数帯域毎に求められた振動パワースペクトルPSS(i)は所定の演算を行って燃焼騒音の検出が実施される。例えば、各検出周波数帯域の振動パワースペクトルPSS(i)をすべて加算、或いは値が大きい順から所定数だけ加算して総和(燃焼騒音指標)を求め、この総和をノックが発生していない場合の総和(所定の比較用燃焼騒音指標)と比較し、その差が所定以上であればノックが発生していると判断する方法がある。この他にも燃焼騒音指標及び比較用燃焼騒音指標の求め方やその比較判断方法等は種々の方法があるので本実施例では適宜選択して実行すればよいものである。
【0070】
図9は圧縮着火燃焼FLGがOFFのときの燃焼騒音の抑制制御のブロック図であり、振動パワースペクトルPSS(i)の入力信号にもとづき燃焼騒音が所定の燃焼騒音より大きいか小さいかを判断する燃焼騒音指標演算部と、この燃焼指標演算部の出力によって気筒別に点火時期を遅角補正する気筒別点火遅角補正制御部を備えている。
【0071】
また、図10は燃焼騒音指標N比較用の燃焼騒音指標NLとの比較演算の結果に基づいて点火時期を遅角していく過程を示している。
【0072】
図9及び図10からわかるように、本実施例では圧縮着火燃焼FLGがOFFのときの内燃機関100の振動パワースペクトルPSS(i)の入力信号に基づき燃焼騒音指標演算部において燃焼騒音指標Nの演算と所定の比較用の燃焼騒音指標NLとの比較演算を行い、燃焼騒音が大きくなったと判断されると次段の気筒別点火遅角補正制御部で燃焼騒音が大きくなった気筒の点火タイミングを徐々に所定の速さで遅角することで燃焼騒音の発生を抑制していき、その後この燃焼騒音指標Nが所定の比較用の燃焼騒音指標NL未満となったときの気筒別点火時期を保持することで燃焼騒音を抑制する。
【0073】
以上の制御により燃焼騒音を抑制できる理由として、火花点火燃焼において燃焼騒音が大きい状態は燃焼室内で自着火が発生しており、これを抑制するためには自着火を抑制するための点火タイミングを設定して燃焼室内に高温場(ホットスポット)を残存させないことが効果的であるからである。
【0074】
本制御における気筒別点火時期を遅角補正する方法は燃焼室内の高温場を効率良く減少することが可能であり、かつこの遅角補正された点火時期を保持することで定常的に燃焼騒音を抑制することが可能となる。ここで、点火時期を遅角補正できるのは圧縮着火燃焼FLGがOFFであり火花点火燃焼による燃焼モードの状態であるからである。尚、点火時期以外にも他の調節機構によって燃焼騒音を低減できるので必要によって選択すればよいものである。
【0075】
次に図11乃至図18に基づき圧縮着火燃焼FLGがONのときの燃焼騒音を抑制する制御について説明する。
【0076】
図11は圧縮着火燃焼FLGがONのときの検出周波数演算部のブロック図であり、検出周波数演算部の機能や働きは図6に示した実施例と基本的には同様であるが、異なっている点は検出する周波数帯が低い周波数帯に移行していることである。したがって周波数解析もこれにしたがって低い周波数帯域の周波数を周波数解析する。
【0077】
本実施例では圧縮着火燃焼FLGがONという条件に基づき検出周波数が中心周波数Hの振動エネルギを演算する検出周波数演算部を備えている。圧縮着火燃焼FLGがONのとき検出される中心周波数Hは図6で説明した火花点火燃焼の場合の検出周波数S1、S2、S3、S4、S5の5成分に対して低い周波数成分として出力され、かつ1つの周波数に特異的なピークが認められる。
【0078】
また、この場合の周波数検出帯域は火花点火燃焼の場合に比べて狭い(狭窄された)周波数帯域に設定されている。
【0079】
つまり、圧縮着火燃焼でのノック発生時には1つの周波数において内燃機関の振動が特異的に表れ、かつ燃焼室8内の温度が火花点火燃焼に比べて低いことで周波数も低くなるためである。この要因により圧縮着火燃焼時には火花点火燃焼時に比べて低い周波数帯域で特定の周波数Hを検出することによって正確に燃焼騒音を検出でき、しかもその検出精度を改善することが可能となる。
【0080】
次に図12を用いて内燃機関100の振動の大きさを算出するためノックセンサ9の出力信号に基づく周波数解析処理を説明する。
【0081】
この図12においても基本的には図7に示した実施例と同様の機能や働きを行うが、異なっている点は検出周波数が上記したように低い周波数側に移行していることと、1つの周波数に対して周波数解析を行う点である。つまり、検出周波数を中心周波数Hとする所定の検出周波数帯域で振動をサンプリングして周波数解析を行うものである。
【0082】
上記周波数解析期間において、ノックセンサ信号に対し検出周波数Hの成分についての周波数解析を実施した結果をその下に示しており、縦軸は振動エネルギの大きさを示すパワースペクトルPSH(j)を示している。ここでPSHのPSはパワースペクトルを表し、Hは圧縮着火燃焼を表し、(j)はECU1内のクロック(演算周期)にもとづくデータ番号である。
【0083】
したがって、この振動パワースペクトルPSS(j)は周波数解析期間にわたって所定の演算周期で演算され、その演算結果が図12に示されている。この検出周波数Hも上述したように周波数解析期間のある時点で周波数解析演算されており、これを周波数解析期間にわたりプロットすると図12にあるような結果が得られる。
【0084】
次に図13を用いて振動パワースペクトルPSH(i)の特性について説明するが、これも図8に示した実施例と同様の機能、働きを行い、振動パワースペクトルPSH(j)から以下の式を用いて算出する。
PSH(i)=∫PSH(j)dj・・・式(2)
算出タイミングは周波数解析期間における完了タイミング。
ここで、火花点火燃焼と圧縮着火燃焼でノックが生じたときの振動パワースペクトルPSS(i)と振動パワースペクトルPSH(i)の周波数分布を図32に示しており、圧縮着火燃焼の場合を実線で表し、火花点火燃焼の場合(S2成分)を破線で表している。
【0085】
この図からわかるように、圧縮着火燃焼ではノックに特異な周波数が火花点火燃焼に比べて低い周波数側に現れている。しかも、特異なピークは1つであることが知見として得られた。
【0086】
したがって、圧縮着火燃焼FLGがOFFの場合は中心周波数S1乃至S5を含む周波数帯域を通過させるバンドパスフィルタをそれぞれ使用し、圧縮着火燃焼FLGがONの場合は中心周波数Hを含む周波数帯域を通過させるバンドパスフィルタを使用すれば周波数解析を実行することができる。
【0087】
図14は圧縮着火燃焼FLGがONのときの燃焼騒音の抑制制御のブロック図であり、振動パワースペクトルPSH(i)の入力信号に基づき、排気バルブの閉じタイミング(EVC)、燃料噴射期間、過給圧、車両駆動用モータのトルクのいずれか一つ以上について補正制御を実施するための騒音指標演算部を備えている。
【0088】
図15は圧縮着火燃焼FLGがONのときの燃焼騒音を抑制するため排気バルブの閉じるタイミング(EVC)を補正する制御の説明図である。
【0089】
本実施例では圧縮着火燃焼FLGがONのときの振動パワースペクトルPSH(i)の入力信号に基づき、燃焼騒音指標演算部において燃焼騒音指標Nの演算と所定の比較用の燃焼騒音指標NLとの比較演算を行い、燃焼騒音が大きくなったと判断されると次段のEVC補正制御部で燃焼騒音が大きくなった気筒の排気バルブの閉じタイミングを徐々に所定の速さで遅角することでバルブオーバラップ角を大きくして燃焼騒音の発生を抑制していき、その後この燃焼騒音指標Nが所定の比較用の燃焼騒音指標NL未満となったときの排気バルブ補正量を保持することで燃焼騒音を抑制する。
【0090】
以上の制御により燃焼騒音が抑制できる理由として、圧縮着火燃焼において燃焼騒音が大きい状態は自着火タイミングの不良が発生しており、これを抑制するためには自着火を促進するための高温の排ガスを燃焼室内に残存させないことが効果的であり、本制御における排気バルブの閉じタイミングの遅角補正は高温の排気ガスの残存量を効率良く低減することが可能であり、かつ補正量を保持することで定常的に燃焼騒音を抑制することが可能となる。
【0091】
図16は圧縮着火燃焼FLGがONのときの燃焼騒音を抑制するため燃料噴射弁の噴射期間を補正する制御の説明図である。
【0092】
本実施例では圧縮着火燃焼FLGがONのときの振動パワースペクトルPSH(i)の入力信号に基づき、燃焼騒音指標演算部において燃焼騒音指標Nの演算と所定の比較用の燃焼騒音指標NLとの比較演算を行い、燃焼騒音が大きくなったと判断されると次段の燃料噴射期間補正制御部で燃焼騒音が大きくなった気筒の燃料噴射弁の燃料噴射期間を徐々に所定の速さで短縮することで燃料噴射量を減少させて燃焼騒音の発生を抑制していき、その後この燃焼騒音指標Nが所定の比較用の燃焼騒音指標NL未満となったときの燃料噴射期間補正量を保持することで燃焼騒音を抑制する。
【0093】
以上の制御により燃焼騒音を抑制できる理由として、圧縮着火燃焼において燃焼騒音が大きい状態は自着火タイミングの不良が発生しており、これを抑制するためには自着火を促進する燃焼前駆物質であるラジカル(OH基)を燃焼室内に残存させないことが効果的であり、本制御における燃料噴射期間補正量の短縮は燃焼室内の燃焼前駆物質の残存量を効率良く低減することが可能であり、かつ燃料噴射期間補正量を保持することで定常的に燃焼騒音を抑制することが可能となる。
【0094】
図17は圧縮着火燃焼FLGがONのときの燃焼騒音を抑制するため過給機22であるターボチャージャの過給圧を補正する制御の説明図である。
【0095】
本実施例では圧縮着火燃焼FLGがONのときの振動パワースペクトルPSH(i)の入力信号に基づき、燃焼騒音指標演算部において燃焼騒音指標Nの演算と所定の比較用の燃焼騒音指標NLとの比較演算を行い、燃焼騒音が大きくなったと判断されると次段の過給圧補正制御部でターボチャージャのウエストゲートバルブを閉じ方向に制御して過給圧を徐々に所定の速さで増加補正して燃焼騒音の発生を抑制していき、その後この燃焼騒音指標Nが所定の比較用の燃焼騒音指標NL未満となったときの過給圧補正量を保持することで燃焼騒音を抑制する。
【0096】
以上の制御により燃焼騒音を抑制できる理由として、圧縮着火燃焼において燃焼騒音が大きい状態は自着火タイミングの不良が発生しており、これを抑制するためには自着火を促進するための燃料濃度の濃化をさせないことが効果的であり、本制御における過給圧補正量の増加は前記燃料濃度の濃化を効率良く低減することが可能であり、かつ補正量を保持することで定常的に燃焼騒音を抑制することが可能となる。
【0097】
図18は圧縮着火燃焼FLGがONのときの燃焼騒音を抑制するため車両駆動用モータの駆動トルクと発電トルクを補正する制御の説明図である。
【0098】
本実施例では圧縮着火燃焼FLGがONのときの振動パワースペクトルPSH(i)の入力信号に基づき、燃焼騒音指標演算部において燃焼騒音指標Nの演算と所定の比較用の燃焼騒音指標NLとの比較演算を行い、燃焼騒音が大きくなったと判断されると次段のモータトルク補正制御部で駆動トルクを徐々に所定の速さで増加し、逆に発電トルクを徐々に所定の速さで減少することで燃焼騒音の発生を抑制していき、その後この燃焼騒音指標Nが所定の比較用の燃焼騒音指標NL未満となったときの駆動トルクと発電トルクの補正量を保持することで燃焼騒音を抑制する。
【0099】
以上の制御により燃焼騒音を抑制できる理由として、圧縮着火燃焼において燃焼騒音が大きい状態は内燃機関100において過剰なトルクが発生しており、これを抑制するためには過剰なトルクを促進するための車両駆動用モータ23の駆動トルクを減少させないこと、そして車両駆動用モータ23の発電トルクを増加させないことが効果的であり、本制御における駆動トルクの増加と発電トルクの減少は過剰なトルクを効率良く低減することが可能であり、かつ補正量を保持することで定常的に燃焼騒音を抑制することが可能となる。
【0100】
図19は以上説明した燃焼騒音を抑制する制御をより具体的に説明するためのフローチャートであり、調節機構として点火プラグ14を含む点火装置とバルブ可変装置7を用い、その作動量として点火時期とバルブ閉じタイミングを制御するようにしている。
【0101】
図19において、このフローチャートは所定の時間周期毎、或いはエンジンの所定回転角周期毎に発生する割り込み信号によって繰り返し実行されるものである。
【0102】
ECU1内では、ステップ101(以下、ステップを“S”と表記する)において現在の内燃機関運転領域に関する情報(内燃機関回転速度、要求トルク、ノックセンサ信号、クランク角センサ信号等)を読み込むが、要求トルクはアクセル開度センサ2の出力信号にもとづいて演算される。
【0103】
次にS102において現在の内燃機関運転領域にもとづき適切な運転が実現できるように電子制御スロットル装置16、バルブ可変装置7、燃料噴射弁13、モータ23を制御する。
【0104】
次にECU1はS103において、S101で読み込まれたクランク角センサ信号を用いて基準k(a)読み込む。
【0105】
次にS104においてS101で読み込まれた内燃機関回転速度、要求トルク等を用いて、図5にあるような制御マップ等から現在の運転領域が圧縮着火燃焼領域か火花点火燃焼領域かの燃焼モードを判定し、圧縮着火燃焼FLGのONとOFFを切り替える。
【0106】
まず圧縮着火燃焼FLGがONである場合、S105において検出周波数Hを読み込み、続くS106においてS103で読み込まれたk(a)とk(z)が等しいかを判定する。否である場合、S103に戻り再度k(a)を読み込む。ステップS103で読み込まれたk(a)とk(z)が等しい場合、S107において検出周波数Hに対応する周波数成分の振動パワースペクトルPSH(j)を演算する。
【0107】
次にS108において、PSH(j)を周波数解析処理期間の完了タイミングまで積分して振動パワースペクトルPSH(i)を演算し、続いてS109においてS108で演算された各周波数の振動パワースペクトルPSH(i)の燃焼騒音指標Nを演算する。この燃焼騒音指標Nは本実施例の場合、は振動パワースペクトルPSH(i)の相加平均値等である。
【0108】
次にS110において燃焼騒音指標Nが所定の比較用の燃焼騒音指標NL以上であるか否かを判定する。否である場合はS103に戻り再度k(a)を読み込む。燃焼騒音指標Nが所定の比較用の燃焼騒音指標NL以上であると判定された場合、S111において図15にあるような排気バルブの閉じタイミング(EVC)の遅角制御を実施し制御を終了する。
【0109】
また圧縮着火燃焼FLGがOFFである場合、S112において検出周波数S1、S2、S3、S4、S5を読み込む。次にS113においてS103で読み込まれたk(a)とk(z)が等しいかを判定する。否である場合、S103に戻り再度k(a)を読み込む。
【0110】
S103で読み込まれたk(a)とk(z)が等しい場合、S114において検出周波数S1、S2、S3、S4、S5に対応する周波数成分の振動パワースペクトルPSS(j)を演算する。
【0111】
次にS115において、S1乃至S5の5成分の振動パワースペクトルPSS(j)を周波数解析処理期間の完了タイミングまで積分して振動パワースペクトルPSS(i)を演算し、続いてS116においてS115で算出された振動パワースペクトルPSS(i)の騒音指標Nを演算する。この騒音指標Nは本実施例の場合は振動パワースペクトルPSS(i)の相加平均値等である。
【0112】
次にS117において燃焼騒音指標Nが所定の比較用の燃焼騒音指標NL以上であるか否かを判定する。否である場合、S103に戻り再度k(a)を読み込む。
【0113】
騒音指標Nが所定値NL以上であると判定された場合、S118において図10に示すような点火タイミングの遅角制御を実施して制御を終了する。
【実施例2】
【0114】
次に本発明の第2の実施例を図21乃至図24を用い説明するが、図1、図2に示す実施例1と基本的に同じ構成部分についてはその説明を省略する。
【0115】
図1、図2に示す実施例と異なるのはノックセンサを共振型のノックセンサと非共振型のノックセンサを使用するようにし、この2個のノックセンサを用いて燃焼騒音を検出するようにしたところにある。
【0116】
図20において、シリンダブロックには非共振型のノックセンサ9と共振型のノックセンサ24が設けられており、これらの信号は図21にあるようにECU1の入力回路1aに入力される。
【0117】
次に図22を用いて非共振型のノックセンサ9と共振型のノックセンサ24におけるノックセンサ特性について説明するが、具体的には感度指標S/N比を示しており、横軸は周波数であり、縦軸はS/N比である。
【0118】
図22でわかるように、ノックセンサ9のS/N比は周波数に対してほぼ平坦な特性を有し、ノックセンサ24のS/N比は低い周波数側で特定の周波数に対して高い特性を有している。
【0119】
ここでは、圧縮着火燃焼の燃焼騒音が低い周波数帯域で特異なピークを有しているので、ノックセンサ24の検出周波数はノックセンサ9の検出周波数より低く設定して、共振型のノックセンサ24で圧縮着火燃焼の燃焼騒音を検出するようにしている、
次に図23を用いて内燃機関100の振動の大きさを算出するためノックセンサ9の出力信号に基づく周波数解析処理を説明する。
【0120】
この図23においても基本的には図7に示した実施例と同様の機能や働きを行うが、異なっている点は共振型のノックセンサ24と非共振型のノックセンサ9の周波数解析を行う点である。
【0121】
そして、周波数解析処理期間においてノックセンサ9とノックセンサ24の信号がECU1に入力される。またノックセンサ9とノックセンサ24の信号はそれぞれ異なる周波数に対するS/N比を有するため異なる値を示す。
【0122】
図24は2個のノックセンサを使用した場合の燃焼騒音を抑制する制御をより具体的に説明するためのフローチャートであり、調節機構として点火プラグを含む点火装置14とバルブ可変装置7を用い、その作動量として点火時期とバルブ閉じタイミングを制御するようにしている。
【0123】
図24において、このフローチャートは所定の時間周期毎、或いはエンジンの所定回転角周期毎に発生する割り込み信号によって繰り返し実行されるものである。
【0124】
図19に示す処理と実質的に同じ処理を行うが、図19に示す実施例と異なるのはS104の判断で、運転領域が圧縮着火燃焼領域か否かを判定して圧縮着火燃焼FLGのONとOFFを切り替えた後の処理である。
【0125】
S104の判断で圧縮着火燃焼では無いと判断されると火花点火燃焼であるため、S119に進んでノックセンサ9の信号を選択して、検出周波数S1乃至S5の周波数成分を取り込んで周波数解析演算を行う。この後の処理フローは図19の処理フローと同様であるので説明を省略する。
【0126】
S104の判断で圧縮着火燃焼であると判断されると、S120に進んでノックセンサ24の信号を選択し、このノックセンサ24の共振周波数成分を取り込んで周波数解析演算を行う。この後の処理フローは図19の処理フローと同様であるので説明を省略する。
このように、共振型のノックセンサ24を用いて圧縮着火燃焼時の燃焼騒音を検出するようにしたので、圧縮着火燃焼時の正確な燃焼騒音が検出でき、これに伴ってより高精度の燃焼制御を実行できることが期待できるものである。
【実施例3】
【0127】
次に本発明の第3の実施例を図25乃至図31を用い説明するが、図1、図2に示す実施例1と基本的に同じ構成部分についてはその説明を省略する。
【0128】
図25のシステム構成は実質的には図1、図2に示す実施例と同様であるが、異なる点は燃焼モードを火花点火燃焼と圧縮着火燃焼の2領域から、運転領域を(1)ストイキ(理論空燃比)火花点火燃焼、(2)希薄燃焼、(3)排気再循環燃焼及び(4)圧縮着火燃焼の4つの燃焼領域に分割し、これらについても燃焼制御を実行するようにしたところである。したがって、ECU1内の制御マップもこれに合わせて構築されている。本実施例では
(1)ストイキ火花点火燃焼は理論空燃比の混合気を点火プラグによって着火して燃焼する燃焼方式、
(2)希薄燃焼は理論空燃比より空気が多い混合気を点火プラグによって着火して燃焼する燃焼方式、
(3)排気再循環燃焼は理論空燃比の混合気に排気ガスを再循環(内部EGR/外部EGRを含む)させた混合気を点火プラグによって着火して燃焼する燃焼方式、
(4)圧縮着火燃焼は理論空燃比の混合気をピストンによって断熱圧縮して自己着火して燃焼する燃焼方式、
である。
【0129】
繰り返して述べるが、これらの燃焼方式は実施例であって、点火プラグによる着火方法を圧縮着火による着火方法に変更した燃焼法、例えば(2)理論空燃比より空気が多い混合気をピストンによる断熱圧縮で着火して燃焼する燃焼方式や(3)理論空燃比の混合気に排気ガスを再循環させた混合気をピストンによる断熱圧縮で着火して燃焼する燃焼方式を採用しても良いことはいうまでも無く、更に上記混合気の態様に圧縮着火と火花点火を組み合わせた種々の燃焼モードを対象にしても良い。
【0130】
ただ、後述するが各燃焼モードにおいても燃焼騒音がピークとして現れる特異的な周波数は圧縮着火燃焼<希薄燃焼<排気再循環燃焼<ストイキ点火燃焼の関係を有しており、その理由として各燃焼モードで燃焼温度が異なり、これにともない燃焼ガスの圧力伝播速度が変化するためと考えられる。
【0131】
図26は(1)ストイキ火花点火燃焼と(2)希薄燃焼と(3)排気再循環燃焼と(4)圧縮着火燃焼の燃焼領域および各燃焼モードのフラグ(FLG)の状態を示した制御マップの説明図である。
【0132】
本実施例では(1)ストイキ火花点火燃焼と(2)希薄燃焼と(3)排気再循環燃焼と(4)圧縮着火燃焼の燃焼モードを運転領域によって切り換えて実行する。
【0133】
ECU1はアクセル開度センサ2の出力信号から演算される要求トルクと、クランク角センサ10の出力信号から演算される内燃機関100の回転速度にもとづく燃焼モードFLGの制御マップを備えており、要求トルクと内燃機関回転速度にもとづき各燃焼モードFLGをONとする。
尚、図25はストイキ火花点火燃焼と希薄燃焼と排気再循環燃焼と圧縮着火燃焼のFLGの制御マップを備えているがこれに限るものではなく、各燃焼モードの少なくとも二つ以上の燃焼モードを制御マップに備えていても良い。
【0134】
図27は図26に示すマップによって選択された燃焼モードにおける検出周波数を解析する検出周波数演算部のブロック図であり、燃焼モードFLGに基づき検出周波数が(1)ストイキ火花点火燃焼時の検出周波数Sと、(2)希薄燃焼時の検出周波数Lと、(3)排気再循環燃焼時の検出周波数Eと、(4)圧縮着火燃焼時の検出周波数Hの振動パワースペクトルPSを出力する検出周波数演算部を備えている。
【0135】
したがって、ストイキ火花点火燃焼FLGがONのとき検出周波数Sの振動パワースペクトルPSSを、希薄燃焼FLGがONのとき検出周波数Lの振動パワースペクトルPSLを、排気再循環燃焼FLGがONのとき検出周波数Eの振動パワースペクトルPSEを、圧縮着火燃焼FLGがONのとき検出周波数Hの振動パワースペクトルPSHを出力する。
【0136】
これらの演算は第1の実施例と同様の手法で求めることができる。また、非共振型のノックセンサ9を使用しているため、燃焼モードに応じて対応する検出周波数を選択するため対応するバンドパスフィルタを用いて周波数帯域の選択を実施している。
【0137】
ここで、検出周波数はH<L<E<Sの関係を有していることが新たな知見として得られている。その理由として各燃焼モードで燃焼温度が異なり、これにともない燃焼ガスの圧力伝播速度が変化するためである。このため、各燃焼モードの燃焼騒音の検出に適した検出周波数があるのでこれに対応して周波数解析処理を行えば正確な燃焼騒音の評価が可能となる。
【0138】
尚、燃焼モードのFLGによる検出周波数の選定によらず、検出周波数S、L、E、Hのすべてにおいて振動パワースペクトルPSを演算しても良い。また、検出周波数S、L、E、Hの周波数に合わせた共振型のセンサを用い、燃焼モードでこれらのセンサを選択して燃焼騒音を検出してもよい。
【0139】
次に図28を用いてノックセンサ9の出力信号にもとづく周波数解析処理について説明する。
【0140】
本実施例ではノックセンサ9の振動信号に対して周波数解析処理を行うことで、各周波数に対する振動パワースペクトルを演算している。横軸は周波数であり、縦軸は振動エネルギを示す振動パワースペクトルPSを示している。
【0141】
ECU1内ではこの周波数解析処理信号に対し検出周波数S、L、E、Hについての振動パワースペクトルPSを読み込む。ここで望ましくは、検出周波数はH<L<E<Sとする。これにより各燃焼モードの燃焼温度変化による周波数の変化に対応でき、検出精度を向上することができる。
【0142】
また、燃焼モードのFLGによらず検出周波数S、L、E、Hにおける振動パワースペクトルPSを読み込んだ結果から、これらの検出周波数における振動パワースペクトルPSS、振動パワースペクトルPSL、振動パワースペクトルPSE、振動パワースペクトルPSHの内で最大振動パワースペクトルPSとなる検出周波数から燃焼モードを判定することが可能である。例えば振動パワースペクトルPSHが最大であれば燃焼モードは圧縮着火燃焼である。
【0143】
ここで、燃焼状態を変更するための制御において、各燃焼モードに対応した振動パワースペクトルの値は燃焼モードで異なるので、振動パワースペクトルから演算される燃焼騒音指標Nと比較される所定の比較用燃焼騒音指標NLも各燃焼モードに対応して設定されるものである。例えば、それぞれの燃焼モード毎にノックが生じていないときのバックグランドの振動パワースペクトルPS(BGL)を演算して比較用燃焼騒音指標NLとしても良い。
【0144】
次に図29を用いて検出周波数を変更する手法について説明するが、その特徴はノックセンサ9とECU1の信号線間において、フィルタ回路26を備えることであり、フィルタ回路26は任意にフィルタリング機能をON、OFFすることができるように構成されている。
【0145】
フィルタリング機能は種々の方法があるが、検出周波数によってローパス、ハイパス、バンドパス等の機能を単独、或いは組み合わせて用いることができる。
【0146】
図30はフィルタ回路26の特性図であり、このフィルタ回路26は所定の周波数以上の信号をフィルタリングする特性を有している。この所定の周波数とは前述の検出周波数H、L、E、Sの間の周波数とする。このフィルタ回路特性26はローパスフィルタであり、ノックセンサ9の信号における所定の周波数以上をフィルタリングすることが可能である。フィルタリングするタイミングはECU1からの切り換え信号によって行われる。尚、フィルタリング処理はECU1内でソフト的にデジタルフィルタリングすることも可能である。
【0147】
また、図29による検出周波数変更方法を用いて検出周波数を変更したかどうかの実施判定ができるのでその手法を説明する。
【0148】
図31はフィルタ回路26を適用した際のノックセンサ9の信号特性であり、ノックセンサ9の信号は前述のフィルタ回路の特性に基づきフィルタリングされる。例えば、ストイキ火花点火燃焼を実施している際、フィルタ回路26のフィルタをONとOFFすると点火時期が異なってくるが、圧縮着火燃焼を実施している際、フィルタ回路26のフィルタをONとOFFするとバルブ可変装置と燃料噴射期間のいずれも同じとなることを確認すれば、ストイキ火花点火燃焼の燃焼モードにもとづいて検出周波数の変更を実施していることが判定できる。
【0149】
以上に説明した実施例においては燃焼騒音を検出するセンサとして燃焼による内燃機関の振動を検出する振動検出型のノックセンサを用いて説明したが、これ以外に燃焼室内の燃焼ガスの電気伝導度を測定するイオン電流センサ、燃焼室内の燃焼圧を測定する筒内圧センサ等を使用することが可能である。これらは異なる燃焼モードで燃焼騒音に関しては周波数分布の振る舞いが同じ傾向を示しているからである。
【0150】
本発明は、要は各燃焼モードで区別(或いは顕著な値を有する)できる特異な検出周波数、或いは検出周波数帯域があることを見い出し、これを燃焼モードに対応して選択的に検出してやれば燃焼騒音の発生状況を精度よく検出できることを提案するものである。また、この検出方法を使用して燃焼室内の燃焼状態を制御してやれば正確な制御を実行できるようになり、結果として燃費性能や排気性能を向上することが期待できるものである。
【符号の説明】
【0151】
1…ECU、2…アクセル開度センサ、3…排気温度センサ、4…空燃比センサ、5…三元触媒、6…排気管、7a…吸気バルブ可変装置、7b…排気バルブ可変装置、8…燃焼室、9…ノックセンサ、10…クランク角センサ、11…クランク軸、12…ピストン、13…燃料噴射弁、14…点火プラグ、15…吸気管、16…電子制御スロットル装置、17…吸気温度センサ、18…エアフローセンサ、20…燃料圧力センサ、21…燃料ポンプ、22…過給器、23…モータ、24…ノックセンサ、25…EGR弁、26…フィルタ回路、100…内燃機関、20a…入力回路、20b…入出力ポート、20c…RAM、20d…ROM、20e…CPU、20f…電子制御スロットル駆動回路、20g…燃料噴射弁駆動回路、20h…点火出力回路、20i…可変バルブ駆動回路、20j…燃料ポンプ駆動回路、20k…過給機駆動回路。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の燃焼室内の燃焼騒音を周波数出力として検出する燃焼騒音センサからの周波数信号を周波数解析処理することによって前記燃焼騒音の大きさの度合いを演算する制御装置において、
前記制御装置は、
(1)運転状態によって定まる前記燃焼室内での燃焼方式を把握してこれに対応した前記燃焼騒音センサの検出周波数を選択し、
(2)前記選択された検出周波数出力を周波数解析処理することによって前記燃焼室内での燃焼方式に対応した燃焼騒音の大きさの度合いを演算する
ことを特徴とする内燃機関の燃焼騒音検出方法。
【請求項2】
請求項1に記載の内燃機関の燃焼騒音検出方法において、前記燃焼方式は少なくとも、点火プラグによって混合気を着火する火花点火燃焼と、ピストンによって混合気、あるいは空気を圧縮して自己着火する圧縮着火燃焼に設定され、前記火花点火燃焼の場合の前記燃焼騒音センサの検出周波数に対して前記圧縮着火燃焼の場合の前記燃焼騒音センサの検出周波数が低い値に設定されていることを特徴とする内燃機関の燃焼騒音検出方法。
【請求項3】
内燃機関の燃焼室内の燃焼によって生じる振動を周波数出力として検出する非共振型のノックセンサからの周波数信号を周波数解析処理することによって前記振動の大きさの度合いを演算する制御装置において、
前記制御装置は、
(1)運転状態によって定まる前記燃焼室内での燃焼方式を把握してこれに対応した前記ノックセンサの検出周波数を選択し、
(2)前記選択された検出周波数出力を周波数解析処理することによって前記燃焼室内での燃焼方式に対応した振動の大きさの度合いを演算する
ことを特徴とする内燃機関の燃焼騒音検出方法。
【請求項4】
請求項3に記載の内燃機関の燃焼騒音検出方法において、前記燃焼方式は少なくとも、点火プラグによって混合気を着火する火花点火燃焼と、ピストンによって混合気、あるいは空気を圧縮して自己着火する圧縮着火燃焼に設定され、前記火花点火燃焼の場合の前記ノックセンサの検出周波数に対して前記圧縮着火燃焼の場合の前記ノックセンサの検出周波数が低い値に設定されていることを特徴とする内燃機関の燃焼騒音検出方法。
【請求項5】
請求項4に記載の内燃機関の燃焼騒音検出方法において、前記火花点火燃焼の場合では前記ノックセンサの検出周波数帯域は少なくとも2つ以上の特異なピークを持つ検出周波数を含む帯域に設定され、前記圧縮着火点火燃焼の場合では前記ノックセンサの検出周波数帯域は1つの特異なピークを持つ検出周波数を含む帯域に設定されていることを特徴とする内燃機関の燃焼騒音検出方法。
【請求項6】
請求項4に記載の内燃機関の燃焼騒音検出方法において、前記火花点火燃焼の場合では前記ノックセンサの検出周波数帯域は少なくとも2つ以上の特異なピークを持つ中心出周波数を含む2つ以上の帯域に設定され、前記圧縮着火点火燃焼の場合では前記ノックセンサの検出周波数帯域は1つの特異なピークを持つ中心周波数を含む帯域に設定されていることを特徴とする内燃機関の燃焼騒音検出方法。
【請求項7】
請求項1或いは請求項3に記載の内燃機関の燃焼騒音検出方法において、前記運転状態によって定まる前記燃焼室内での燃焼方式は圧縮着火燃焼、希薄燃焼、排気再循環燃焼、ストイキ火花点火燃焼であって、それぞれの検出周波数は、圧縮着火燃焼<希薄燃焼<排気再循環燃焼<ストイキ火花点火燃焼の関係を有していることを特徴とする内燃機関の燃焼騒音検出方法。
【請求項8】
内燃機関の燃焼室内の燃焼騒音を周波数出力として検出する燃焼騒音センサからの周波数信号を周波数解析処理することによって前記燃焼騒音の大きさの度合いを演算する燃焼騒音検出装置において、
運転状態によって定まる前記燃焼室内での燃焼方式を把握する燃焼方式把握手段と、
把握された燃焼方式に対応して予め定めた前記燃焼騒音センサの検出周波数を選択する周波数選択手段と、
前記選択された検出周波数出力を周波数解析処理することによって前記燃焼室内での燃焼方式に対応した燃焼騒音の大きさの度合いを演算する燃焼騒音演算部と
を備えたことを特徴とする内燃機関の燃焼騒音検出装置。
【請求項9】
請求項8に記載の内燃機関の燃焼騒音検出装置において、前記燃焼方式把握手段は少なくとも、点火プラグによって混合気を着火する火花点火燃焼と、ピストンによって混合気、あるいは空気を圧縮して自己着火する圧縮着火燃焼を把握し、前記周波数選択手段は前記火花点火燃焼の場合は予め定めた前記火花点火燃焼のための検出周波数を選択し、前記圧縮着火燃焼の場合の予め定めた前記圧縮着火燃焼のための前記火花点火用の検出周波数より低い検出周波数を選択することを特徴とする内燃機関の燃焼騒音検出装置。
【請求項10】
内燃機関の燃焼室内の燃焼によって生じる振動を周波数出力として検出する非共振型のノックセンサからの周波数信号を周波数解析処理することによって前記振動の大きさの度合いを演算する燃焼騒音検出装置において、
運転状態によって定まる前記燃焼室内での燃焼方式を把握する燃焼方式把握手段と、
把握された燃焼方式に対応して予め定めた前記ノックセンサの検出周波数を選択する周波数選択手段と、
前記選択された検出周波数出力を周波数解析処理することによって前記燃焼室内での燃焼方式に対応した振動の大きさの度合いを演算する燃焼騒音演算部と
を備えたことを特徴とする内燃機関の燃焼騒音検出装置。
【請求項11】
請求項10に記載の内燃機関の燃焼騒音検出装置において、前記燃焼方式把握手段は少なくとも、点火プラグによって混合気を着火する火花点火燃焼と、ピストンによって混合気、あるいは空気を圧縮して自己着火する圧縮着火燃焼を把握し、前記周波数選択手段は前記火花点火燃焼の場合は予め定めた前記火花点火燃焼のための検出周波数を選択し、前記圧縮着火燃焼の場合の予め定めた前記圧縮着火燃焼のための前記火花点火用の検出周波数より低い検出周波数を選択することを特徴とする内燃機関の燃焼騒音検出装置。
【請求項12】
請求項10に記載の内燃機関の燃焼騒音検出装置において、前記周波数選択手段は前記火花点火燃焼の場合では少なくとも2つ以上の特異なピークを持つ検出周波数を含む周波数帯域を選択し、前記圧縮着火点火燃焼の場合では1つの特異なピークを持つ検出周波数を含む周波数帯域を選択することを特徴とする内燃機関の燃焼騒音検出装置。
【請求項13】
請求項10に記載の内燃機関の燃焼騒音検出方法において、前記周波数選択手段は前記火花点火燃焼の場合では少なくとも2つ以上の特異なピークを持つ中心出周波数を含む2つ以上の周波数帯域を選択し、前記圧縮着火点火燃焼の場合では1つの特異なピークを持つ中心周波数を含む周波数帯域を選択することを特徴とする内燃機関の燃焼騒音検出装置。
【請求項14】
請求項8或いは請求項10に記載の内燃機関の燃焼騒音検出装置において、前記運転状態によって定まる前記燃焼室内での燃焼方式は圧縮着火燃焼、希薄燃焼、排気再循環燃焼、ストイキ火花点火燃焼であって、それぞれの検出周波数は、圧縮着火燃焼<希薄燃焼<排気再循環燃焼<ストイキ火花点火燃焼の関係を有していることを特徴とする内燃機関の燃焼騒音検出装置。
【請求項15】
内燃機関の燃焼室内の燃焼によって生じる振動を周波数出力として検出するノックセンサからの周波数信号を周波数解析処理することによって前記振動の大きさの度合いを演算する燃焼騒音検出装置において、
運転状態によって定まる前記燃焼室内での燃焼方式を把握する燃焼方式把握手段と、
把握された燃焼方式に対応して共振型のノックセンサからの周波数信号と非共振型のノックセンサの周波数信号を選択する周波数選択手段と、
前記選択された検出周波数出力を周波数解析処理することによって前記燃焼室内での燃焼方式に対応した振動の大きさの度合いを演算する燃焼騒音演算部と
を備えたことを特徴とする内燃機関の燃焼騒音検出装置。
【請求項16】
請求項15に記載の内燃機関の燃焼騒音検出装置において、前記燃焼方式把握手段は少なくとも、点火プラグによって混合気を着火する火花点火燃焼と、ピストンによって混合気、あるいは空気を圧縮して自己着火する圧縮着火燃焼を把握し、前記周波数選択手段は前記火花点火燃焼の場合は前記非共振型のノックセンサの周波数信号を選択し、前記圧縮着火燃焼の場合は前記共振型のノックセンサの周波数信号を選択することを特徴とする内燃機関の燃焼騒音検出装置。
【請求項17】
運転状態によって定まる燃焼方式で運転される内燃機関の燃焼室内の燃焼騒音を周波数出力として検出する燃焼騒音センサからの周波数信号を周波数解析処理することによって前記燃焼騒音の大きさの度合いを演算する燃焼騒音検出部を備え、前記燃焼騒音検出部の出力によって前記内燃機関の燃焼を制御する調節機構を駆動する内燃機関の制御装置において、
前記運転状態によって定まる燃焼方式を把握する燃焼方式把握手段と、
把握された燃焼方式に対応して予め定めた前記燃焼騒音センサの検出周波数を選択する周波数選択手段と、
前記選択された検出周波数出力を周波数解析処理することによって前記燃焼室内での燃焼方式に対応した燃焼騒音の大きさの度合いを演算する燃焼騒音演算部と、
前記燃焼騒音演算部の出力が所定の燃焼騒音の値より大きい場合は前記調節機構によって実際の燃焼騒音が前記所定の燃焼騒音より小さくなるように燃焼を制御する調節手段とを備えたことを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項18】
運転状態によって定まる燃焼方式で運転される内燃機関の燃焼室内の燃焼によって生じる振動を周波数出力として検出するノックセンサからの周波数信号を周波数解析処理することによって前記振動の大きさの度合いを演算する燃焼騒音検出部を備え、前記燃焼騒音検出部の出力によって前記内燃機関の燃焼を制御する調節機構を駆動する内燃機関の制御装置において、
前記燃焼方式が少なくとも、点火プラグによって混合気を着火する火花点火燃焼と、ピストンによって混合気、あるいは空気を圧縮して自己着火する圧縮着火燃焼のいずれであるかを把握する燃焼方式把握手段と、
前記火花点火燃焼の場合は予め定めた前記火花点火燃焼のための検出周波数を選択し、前記圧縮着火燃焼の場合は予め定めた前記圧縮着火燃焼のための前記火花点火燃焼の検出周波数より低い検出周波数を選択する周波数選択手段と、
前記選択された検出周波数出力を周波数解析することによって前記燃焼室内での燃焼方式に対応した燃焼騒音の大きさの度合いを演算する燃焼騒音演算部と、
前記燃焼方式把握手段によって前記火花点火燃焼と判断されると前記燃焼騒音演算部の出力が所定の燃焼騒音の値より大きい場合は前記調節機構の一つである点火装置によって実際の燃焼騒音が前記所定の燃焼騒音より小さくなるように点火時期を遅角する点火補正手段と、
前記燃焼方式把握手段によって前記圧縮着火燃焼と判断されると前記燃焼騒音演算部の出力が所定の燃焼騒音の値より大きい場合は前記点火装置以外の前記調節機構によって実際の燃焼騒音が前記所定の燃焼騒音より小さくなるように燃焼を制御する調節機構補正手段と
を備えたことを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項19】
請求項18に記載の内燃機関の制御装置において、前記点火装置以外の前記調節機構は少なくとも、前記内燃機関の吸気弁や排気弁の開閉タイミングや開閉リフトを制御する可変バルブ装置、前記内燃機関に燃料を供給する燃料の燃料噴射時期や噴射期間を制御する燃料噴射弁、前記内燃機関に供給される空気の過給圧を制御する過給機及びハイブリッド車に駆動トルク或いは発電トルクを増減する車両駆動用モータの1つであることを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項1】
内燃機関の燃焼室内の燃焼騒音を周波数出力として検出する燃焼騒音センサからの周波数信号を周波数解析処理することによって前記燃焼騒音の大きさの度合いを演算する制御装置において、
前記制御装置は、
(1)運転状態によって定まる前記燃焼室内での燃焼方式を把握してこれに対応した前記燃焼騒音センサの検出周波数を選択し、
(2)前記選択された検出周波数出力を周波数解析処理することによって前記燃焼室内での燃焼方式に対応した燃焼騒音の大きさの度合いを演算する
ことを特徴とする内燃機関の燃焼騒音検出方法。
【請求項2】
請求項1に記載の内燃機関の燃焼騒音検出方法において、前記燃焼方式は少なくとも、点火プラグによって混合気を着火する火花点火燃焼と、ピストンによって混合気、あるいは空気を圧縮して自己着火する圧縮着火燃焼に設定され、前記火花点火燃焼の場合の前記燃焼騒音センサの検出周波数に対して前記圧縮着火燃焼の場合の前記燃焼騒音センサの検出周波数が低い値に設定されていることを特徴とする内燃機関の燃焼騒音検出方法。
【請求項3】
内燃機関の燃焼室内の燃焼によって生じる振動を周波数出力として検出する非共振型のノックセンサからの周波数信号を周波数解析処理することによって前記振動の大きさの度合いを演算する制御装置において、
前記制御装置は、
(1)運転状態によって定まる前記燃焼室内での燃焼方式を把握してこれに対応した前記ノックセンサの検出周波数を選択し、
(2)前記選択された検出周波数出力を周波数解析処理することによって前記燃焼室内での燃焼方式に対応した振動の大きさの度合いを演算する
ことを特徴とする内燃機関の燃焼騒音検出方法。
【請求項4】
請求項3に記載の内燃機関の燃焼騒音検出方法において、前記燃焼方式は少なくとも、点火プラグによって混合気を着火する火花点火燃焼と、ピストンによって混合気、あるいは空気を圧縮して自己着火する圧縮着火燃焼に設定され、前記火花点火燃焼の場合の前記ノックセンサの検出周波数に対して前記圧縮着火燃焼の場合の前記ノックセンサの検出周波数が低い値に設定されていることを特徴とする内燃機関の燃焼騒音検出方法。
【請求項5】
請求項4に記載の内燃機関の燃焼騒音検出方法において、前記火花点火燃焼の場合では前記ノックセンサの検出周波数帯域は少なくとも2つ以上の特異なピークを持つ検出周波数を含む帯域に設定され、前記圧縮着火点火燃焼の場合では前記ノックセンサの検出周波数帯域は1つの特異なピークを持つ検出周波数を含む帯域に設定されていることを特徴とする内燃機関の燃焼騒音検出方法。
【請求項6】
請求項4に記載の内燃機関の燃焼騒音検出方法において、前記火花点火燃焼の場合では前記ノックセンサの検出周波数帯域は少なくとも2つ以上の特異なピークを持つ中心出周波数を含む2つ以上の帯域に設定され、前記圧縮着火点火燃焼の場合では前記ノックセンサの検出周波数帯域は1つの特異なピークを持つ中心周波数を含む帯域に設定されていることを特徴とする内燃機関の燃焼騒音検出方法。
【請求項7】
請求項1或いは請求項3に記載の内燃機関の燃焼騒音検出方法において、前記運転状態によって定まる前記燃焼室内での燃焼方式は圧縮着火燃焼、希薄燃焼、排気再循環燃焼、ストイキ火花点火燃焼であって、それぞれの検出周波数は、圧縮着火燃焼<希薄燃焼<排気再循環燃焼<ストイキ火花点火燃焼の関係を有していることを特徴とする内燃機関の燃焼騒音検出方法。
【請求項8】
内燃機関の燃焼室内の燃焼騒音を周波数出力として検出する燃焼騒音センサからの周波数信号を周波数解析処理することによって前記燃焼騒音の大きさの度合いを演算する燃焼騒音検出装置において、
運転状態によって定まる前記燃焼室内での燃焼方式を把握する燃焼方式把握手段と、
把握された燃焼方式に対応して予め定めた前記燃焼騒音センサの検出周波数を選択する周波数選択手段と、
前記選択された検出周波数出力を周波数解析処理することによって前記燃焼室内での燃焼方式に対応した燃焼騒音の大きさの度合いを演算する燃焼騒音演算部と
を備えたことを特徴とする内燃機関の燃焼騒音検出装置。
【請求項9】
請求項8に記載の内燃機関の燃焼騒音検出装置において、前記燃焼方式把握手段は少なくとも、点火プラグによって混合気を着火する火花点火燃焼と、ピストンによって混合気、あるいは空気を圧縮して自己着火する圧縮着火燃焼を把握し、前記周波数選択手段は前記火花点火燃焼の場合は予め定めた前記火花点火燃焼のための検出周波数を選択し、前記圧縮着火燃焼の場合の予め定めた前記圧縮着火燃焼のための前記火花点火用の検出周波数より低い検出周波数を選択することを特徴とする内燃機関の燃焼騒音検出装置。
【請求項10】
内燃機関の燃焼室内の燃焼によって生じる振動を周波数出力として検出する非共振型のノックセンサからの周波数信号を周波数解析処理することによって前記振動の大きさの度合いを演算する燃焼騒音検出装置において、
運転状態によって定まる前記燃焼室内での燃焼方式を把握する燃焼方式把握手段と、
把握された燃焼方式に対応して予め定めた前記ノックセンサの検出周波数を選択する周波数選択手段と、
前記選択された検出周波数出力を周波数解析処理することによって前記燃焼室内での燃焼方式に対応した振動の大きさの度合いを演算する燃焼騒音演算部と
を備えたことを特徴とする内燃機関の燃焼騒音検出装置。
【請求項11】
請求項10に記載の内燃機関の燃焼騒音検出装置において、前記燃焼方式把握手段は少なくとも、点火プラグによって混合気を着火する火花点火燃焼と、ピストンによって混合気、あるいは空気を圧縮して自己着火する圧縮着火燃焼を把握し、前記周波数選択手段は前記火花点火燃焼の場合は予め定めた前記火花点火燃焼のための検出周波数を選択し、前記圧縮着火燃焼の場合の予め定めた前記圧縮着火燃焼のための前記火花点火用の検出周波数より低い検出周波数を選択することを特徴とする内燃機関の燃焼騒音検出装置。
【請求項12】
請求項10に記載の内燃機関の燃焼騒音検出装置において、前記周波数選択手段は前記火花点火燃焼の場合では少なくとも2つ以上の特異なピークを持つ検出周波数を含む周波数帯域を選択し、前記圧縮着火点火燃焼の場合では1つの特異なピークを持つ検出周波数を含む周波数帯域を選択することを特徴とする内燃機関の燃焼騒音検出装置。
【請求項13】
請求項10に記載の内燃機関の燃焼騒音検出方法において、前記周波数選択手段は前記火花点火燃焼の場合では少なくとも2つ以上の特異なピークを持つ中心出周波数を含む2つ以上の周波数帯域を選択し、前記圧縮着火点火燃焼の場合では1つの特異なピークを持つ中心周波数を含む周波数帯域を選択することを特徴とする内燃機関の燃焼騒音検出装置。
【請求項14】
請求項8或いは請求項10に記載の内燃機関の燃焼騒音検出装置において、前記運転状態によって定まる前記燃焼室内での燃焼方式は圧縮着火燃焼、希薄燃焼、排気再循環燃焼、ストイキ火花点火燃焼であって、それぞれの検出周波数は、圧縮着火燃焼<希薄燃焼<排気再循環燃焼<ストイキ火花点火燃焼の関係を有していることを特徴とする内燃機関の燃焼騒音検出装置。
【請求項15】
内燃機関の燃焼室内の燃焼によって生じる振動を周波数出力として検出するノックセンサからの周波数信号を周波数解析処理することによって前記振動の大きさの度合いを演算する燃焼騒音検出装置において、
運転状態によって定まる前記燃焼室内での燃焼方式を把握する燃焼方式把握手段と、
把握された燃焼方式に対応して共振型のノックセンサからの周波数信号と非共振型のノックセンサの周波数信号を選択する周波数選択手段と、
前記選択された検出周波数出力を周波数解析処理することによって前記燃焼室内での燃焼方式に対応した振動の大きさの度合いを演算する燃焼騒音演算部と
を備えたことを特徴とする内燃機関の燃焼騒音検出装置。
【請求項16】
請求項15に記載の内燃機関の燃焼騒音検出装置において、前記燃焼方式把握手段は少なくとも、点火プラグによって混合気を着火する火花点火燃焼と、ピストンによって混合気、あるいは空気を圧縮して自己着火する圧縮着火燃焼を把握し、前記周波数選択手段は前記火花点火燃焼の場合は前記非共振型のノックセンサの周波数信号を選択し、前記圧縮着火燃焼の場合は前記共振型のノックセンサの周波数信号を選択することを特徴とする内燃機関の燃焼騒音検出装置。
【請求項17】
運転状態によって定まる燃焼方式で運転される内燃機関の燃焼室内の燃焼騒音を周波数出力として検出する燃焼騒音センサからの周波数信号を周波数解析処理することによって前記燃焼騒音の大きさの度合いを演算する燃焼騒音検出部を備え、前記燃焼騒音検出部の出力によって前記内燃機関の燃焼を制御する調節機構を駆動する内燃機関の制御装置において、
前記運転状態によって定まる燃焼方式を把握する燃焼方式把握手段と、
把握された燃焼方式に対応して予め定めた前記燃焼騒音センサの検出周波数を選択する周波数選択手段と、
前記選択された検出周波数出力を周波数解析処理することによって前記燃焼室内での燃焼方式に対応した燃焼騒音の大きさの度合いを演算する燃焼騒音演算部と、
前記燃焼騒音演算部の出力が所定の燃焼騒音の値より大きい場合は前記調節機構によって実際の燃焼騒音が前記所定の燃焼騒音より小さくなるように燃焼を制御する調節手段とを備えたことを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項18】
運転状態によって定まる燃焼方式で運転される内燃機関の燃焼室内の燃焼によって生じる振動を周波数出力として検出するノックセンサからの周波数信号を周波数解析処理することによって前記振動の大きさの度合いを演算する燃焼騒音検出部を備え、前記燃焼騒音検出部の出力によって前記内燃機関の燃焼を制御する調節機構を駆動する内燃機関の制御装置において、
前記燃焼方式が少なくとも、点火プラグによって混合気を着火する火花点火燃焼と、ピストンによって混合気、あるいは空気を圧縮して自己着火する圧縮着火燃焼のいずれであるかを把握する燃焼方式把握手段と、
前記火花点火燃焼の場合は予め定めた前記火花点火燃焼のための検出周波数を選択し、前記圧縮着火燃焼の場合は予め定めた前記圧縮着火燃焼のための前記火花点火燃焼の検出周波数より低い検出周波数を選択する周波数選択手段と、
前記選択された検出周波数出力を周波数解析することによって前記燃焼室内での燃焼方式に対応した燃焼騒音の大きさの度合いを演算する燃焼騒音演算部と、
前記燃焼方式把握手段によって前記火花点火燃焼と判断されると前記燃焼騒音演算部の出力が所定の燃焼騒音の値より大きい場合は前記調節機構の一つである点火装置によって実際の燃焼騒音が前記所定の燃焼騒音より小さくなるように点火時期を遅角する点火補正手段と、
前記燃焼方式把握手段によって前記圧縮着火燃焼と判断されると前記燃焼騒音演算部の出力が所定の燃焼騒音の値より大きい場合は前記点火装置以外の前記調節機構によって実際の燃焼騒音が前記所定の燃焼騒音より小さくなるように燃焼を制御する調節機構補正手段と
を備えたことを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項19】
請求項18に記載の内燃機関の制御装置において、前記点火装置以外の前記調節機構は少なくとも、前記内燃機関の吸気弁や排気弁の開閉タイミングや開閉リフトを制御する可変バルブ装置、前記内燃機関に燃料を供給する燃料の燃料噴射時期や噴射期間を制御する燃料噴射弁、前記内燃機関に供給される空気の過給圧を制御する過給機及びハイブリッド車に駆動トルク或いは発電トルクを増減する車両駆動用モータの1つであることを特徴とする内燃機関の制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【公開番号】特開2013−29076(P2013−29076A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−165667(P2011−165667)
【出願日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】
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