説明

内燃機関の空燃比制御装置

【課題】 空燃比センサの出力が一定期間停滞する停滞故障を正確に判定することができ、且つ比較的高い頻度で故障判定を実行することができる内燃機関の空燃比制御装置を提供する。
【解決手段】 空燃比を設定振動周期で振動させる空燃比振動制御が行われ、空燃比振動制御実行中に、空燃比センサの出力から算出される検出当量比KACTの変化量検出期間当たりの変化量が検出当量比変化量DKACTとして算出される。検出当量比変化量DKACTと変化量閾値xLSBとが比較され、その比較の結果が所定の条件を満たすときに増分値RTADDを積算することにより故障判定パラメータRTが算出される。算出された故障判定パラメータRTを停滞故障判定閾値RTTHと比較し、その比較結果に応じて停滞故障が発生しているか否かが判定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の空燃比制御装置に関し、特に空燃比制御に使用する空燃比センサの故障を検出する機能を有する空燃比制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、空燃比センサの劣化診断装置が示されている。この装置によれば、空燃比センサ出力の極小値(最もリッチ側の空燃比を示す値)を検出し、その極小値検出時点から所定時間T経過後の空燃比センサ出力と、極小値との差分が判定閾値以下であるときに、空燃比センサが劣化していると判定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−77806号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に示された劣化判定手法では、空燃比センサ出力が一定期間停滞する停滞故障を正確に判定することができない。図18はこの課題を説明するためのタイムチャートであり、図18の破線は正常な空燃比センサの出力推移を示し、実線が停滞故障が発生している空燃比センサの出力推移を示す。上記所定時間Tが停滞時間TSTYより若干短い場合には、図18に示す停滞故障を正確に判定できるが、停滞時間TSTYが既知であるわけではないので、所定時間Tを例えば図18に示す時間TLに設定した場合には、正常であると誤判定される。
【0005】
また最適な所定時間Tの設定が難しいため、空燃比センサ出力が極小値に達してから上昇する状態の発生頻度が低い場合、あるいは逆に発生頻度が高い場合には、故障判定(劣化判定)を適切に実行できず、故障判定の実行頻度が低下するという課題もある。
【0006】
本発明は、上述した点に着目してなされたものであり、空燃比センサの出力が一定期間停滞する停滞故障を正確に判定することができ、且つ比較的高い頻度で故障判定を実行することができる内燃機関の空燃比制御装置を提供することを第1の目的とし、空燃比センサが正常である状態をより高い精度で判定でき、且つ比較的高い頻度で故障判定を実行することができる内燃機関の空燃比制御装置を提供することを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため請求項1に記載の発明は、内燃機関の排気通路(13)に設けられ、前記機関で燃焼する混合気の空燃比を検出する空燃比検出手段(15)を備える内燃機関の空燃比制御装置において、前記空燃比を設定振動周期(TPRT))で振動させるための振動信号を生成する振動信号生成手段と、前記振動信号に応じて前記空燃比を振動させる空燃比振動手段と、該空燃比振動手段の作動中に、前記空燃比検出手段の出力の変化量であって、前記設定振動周期(TPRT)より短い設定検出期間(TDAF)当たりの変化量を、検出空燃比変化量(DKACT)として算出する変化量算出手段と、前記検出空燃比変化量(DKACT)と変化量閾値(xLSB)とを比較し、判定積算期間(TINT)において前記比較の結果が所定の条件を満たすときに増分値(RTADD)を積算することにより故障判定パラメータ(RT)を算出する故障判定パラメータ算出手段と、前記空燃比検出手段の出力が停滞する停滞故障を判定するための停滞故障判定閾値(RTTH)と、前記故障判定パラメータとを比較し、該比較結果に応じて前記停滞故障を判定する停滞故障判定手段とを備えることを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の内燃機関の空燃比制御装置において、前記設定振動周期(TPRT)は前記機関回転に同期した期間に設定され、前記機関の回転数(NE)を検出する回転数検出手段と、前記停滞故障判定閾値(RTTH)を前記機関回転数(NE)に応じて設定する閾値設定手段とをさらに備えることを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、内燃機関の排気通路(13)に設けられ、前記機関で燃焼する混合気の空燃比を検出する空燃比検出手段(15)を備える内燃機関の空燃比制御装置において、前記空燃比を設定振動周期(TPRT)で振動させるための振動信号を生成する振動信号生成手段と、前記振動信号に応じて前記空燃比を振動させる空燃比振動手段と、前記空燃比振動手段による空燃比振動の実行中に、前記空燃比検出手段の出力の変化量であって、前記設定振動周期(TPRT)より短い設定検出期間(TDAF)当たりの変化量を、検出空燃比変化量(DKACT)として算出する変化量算出手段と、前記検出空燃比変化量(DKACT)と変化量閾値(xLSB)とを比較し、判定積算期間(TINT)において前記比較の結果が所定の条件を満たすときに増分値(RTADD)を積算することにより第1故障判定パラメータ(RT)を算出する第1故障判定パラメータ算出手段と、前記空燃比振動手段による空燃比振動の実行中に、前記空燃比検出手段の出力信号に含まれる、前記設定振動周期(TPRT)に応じた特定周波数成分(KACTFA,KACTFA1,KACTFA2)を抽出し、該特定周波数成分に基づいて第2故障判定パラメータ(LAFDLYP,RLAFDLYP)を算出する第2故障判定パラメータ算出手段と、前記第1故障判定パラメータ(RT)に応じて前記第2故障判定パラメータ(LAFDLYP,RLAFDLYP)を補正し、補正故障判定パラメータ(LAFDLYPC,RLAFDLYP)を算出する補正手段と、前記補正故障判定パラメータ(LAFDLYPC,RLAFDLYPC)に基づいて前記空燃比検出手段の故障を判定する故障判定手段とを備えることを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の内燃機関の空燃比制御装置において、前記第2故障判定パラメータ算出手段は、前記空燃比検出手段の出力(KACT)についてバンドパスフィルタ処理を施して、前記設定振動周期(TPRT)に対応する設定振動周波数(fp)成分をフィルタ処理後出力(KACTFA)として算出するバンドパスフィルタ手段を有し、前記フィルタ処理後出力(KACTFA)を積算することにより、前記第2故障判定パラメータ(LAFDLYP)を算出し、前記補正手段は、前記第1故障判定パラメータ(RT)に応じて補正係数(KRT)を算出し、前記第2故障判定パラメータ(LAFDLYP)に前記補正係数(KRT)を乗算することにより前記補正故障判定パラメータ(LAFDLYPC)を算出し、前記故障判定手段は、前記空燃比検出手段の出力が停滞する停滞故障であるか、前記空燃比検出手段の応答が遅れる応答遅れ故障であるかを、前記補正故障判定パラメータ(LAFDLYPC)に基づいて判別することを特徴とする。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項3に記載の内燃機関の空燃比制御装置において、前記第2故障判定パラメータ算出手段は、前記空燃比検出手段の出力(KACT)について第1バンドパスフィルタ処理を施して、前記設定振動周期(TPRT)に対応する設定振動周波数(fp)成分を第1フィルタ処理後出力(KACTFA1)として算出する第1バンドパスフィルタ手段と、前記空燃比検出手段の出力(KACT)について第2バンドパスフィルタ処理を施して、前記設定振動周波数(fp)の2倍の周波数成分を第2フィルタ処理後出力(KACTFA2)として算出する第2バンドパスフィルタ手段と、前記第1フィルタ処理後出力(KACTFA1)を積算することにより第1周波数成分強度(LAFDLYP1)を算出する第1周波数成分強度算出手段と、前記第2フィルタ処理後出力(KACTFA2)を積算することにより第2周波数成分強度(LAFDLYP2)を算出する第2周波数成分強度算出手段とを有し、前記第1周波数成分強度(LAFDLYP1)と前記第2周波数成分強度(LAFDLYP2)との比率を、前記第2故障判定パラメータ(RLAFDLYP)として算出し、前記補正手段は、前記第1故障判定パラメータ(RT)に応じて補正係数(KRT)を算出し、前記第2故障判定パラメータ(RLAFDLYP)に前記補正係数(KRT)を乗算することにより前記補正故障判定パラメータ(RLAFDLYPC)を算出し、前記故障判定手段は、前記空燃比検出手段の出力が停滞する停滞故障であるか、前記空燃比検出手段の応答が遅れる応答遅れ故障であるかを、前記補正故障判定パラメータ(RLAFDLYPC)に基づいて判別する故障種別判別手段を有することを特徴とする。
【0012】
前記補正係数は、前記停滞故障が発生している可能性が高くなるほど減少するように設定することが望ましい。
【0013】
請求項6に記載の発明は、請求項3に記載の内燃機関の空燃比制御装置において、前記第2故障判定パラメータ算出手段は、前記空燃比検出手段の出力(KACT)について第1バンドパスフィルタ処理を施して、前記設定振動周期(TRPT)に対応する設定振動周波数(fp)成分を第1フィルタ処理後出力(KACTFA1)として算出する第1バンドパスフィルタ手段と、前記空燃比検出手段の出力(KACT)について第2バンドパスフィルタ処理を施して、前記設定振動周波数(fp)の2倍の周波数成分を第2フィルタ処理後出力(KACTFA2)として算出する第2バンドパスフィルタ手段と、前記第1フィルタ処理後出力(KACTFA1)を積算することにより第1周波数成分強度(LAFDLYP1)を算出する第1周波数成分強度算出手段と、前記第2フィルタ処理後出力(KACTFA2)を積算することにより第2周波数成分強度(LAFDLYP2)を算出する第2周波数成分強度算出手段と、前記第1周波数成分強度(LAFDLYP1)と前記第2周波数成分強度(LAFDLYP2)との比率を、周波数成分強度比率(RLAFDLYP)として算出する周波数成分強度比率算出手段とを有し、前記第1周波数成分強度(LAFDLYP1)と前記周波数成分強度比率(RLAFDLYP)の積を前記第2故障判定パラメータとして算出し、前記補正手段は、前記第1故障判定パラメータ(RT)に応じて補正係数(KRT)を算出し、前記第2故障判定パラメータに前記補正係数(KRT)を乗算することにより前記補正故障判定パラメータ(LAFDLYPCa)を算出し、前記故障判定手段は、前記空燃比検出手段が故障しているか否かを、前記補正故障判定パラメータ(LAFDLYPCa)に基づいて判別することを特徴とする。
【0014】
請求項7に記載の発明は、請求項3から6の何れか1項に記載の内燃機関の空燃比制御装置において、前記設定振動周期(TPRT)は前記機関回転に同期した期間に設定され、前記機関の回転数(NE)を検出する回転数検出手段と、前記第1故障判定パラメータ(RT)の算出に適用される前記増分値(RTADD)を前記機関回転数(NE)に応じて設定する増分値設定手段とをさらに備えることを特徴とする。
【0015】
請求項8に記載の発明は、請求項1から7の何れか1項に記載の内燃機関の空燃比制御装置において、前記設定検出期間(TDAF)は、前記設定振動周期(TPRT)の1/4の期間に設定されることを特徴とする。
【0016】
請求項9に記載の発明は、請求項1から8の何れか1項に記載の内燃機関の空燃比制御装置において、前記設定振動周期(TPRT)は前記機関回転に同期した期間に設定され、前記機関の回転数(NE)を検出する回転数検出手段と、前記設定検出期間(TDAF)を前記機関回転数(NE)に応じて設定する検出期間設定手段とをさらに備えることを特徴とする。
【0017】
請求項10に記載の発明は、請求項1から9の何れか1項に記載の内燃機関の空燃比制御装置において、前記設定振動周期(TPRT)は前記機関回転に同期した期間に設定され、前記機関の回転数(NE)を検出する回転数検出手段と、前記判定積算期間(TINT)を前記機関回転数(NE)に応じて設定する積算期間設定手段とをさらに備えることを特徴とする。
【0018】
請求項11に記載の発明は、請求項1から10の何れか1項に記載の内燃機関の空燃比制御装置において、前記空燃比検出手段(15)は、その出力が前記空燃比の変化に対して直線的に変化する比例型空燃比センサであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
請求項1に記載の発明によれば、空燃比を設定振動周期で振動させる空燃比振動制御が行われ、空燃比振動制御実行中に、空燃比検出手段の出力の変化量であって、設定振動周期より短い設定検出期間当たりの変化量が検出空燃比変化量として算出される。検出空燃比変化量と変化量閾値とが比較され、判定積算期間において比較の結果が所定の条件を満たすときに増分値を積算することにより故障判定パラメータが算出される。算出された故障判定パラメータを停滞故障判定閾値と比較し、その比較結果に応じて停滞故障が発生しているか否かが判定される。停滞故障が発生していると、検出空燃比変化量が変化量閾値を超える頻度が減少するので、例えば検出空燃比変化量が変化量閾値より大きいという条件が満たされるときに増分値を積算して故障判定パラメータを算出することにより、故障判定パラメータが停滞故障判定閾値以下であるときに、停滞故障が発生していると判定することができる。また検出空燃比変化量が変化量閾値以下である条件が満たされるときに増分値を積算して故障判定パラメータを算出するようにしてもよく、その場合には故障判定パラメータが停滞故障判定閾値より大きいときに、停滞故障が発生していると判定することができる。この手法によれば、空燃比検出手段の停滞故障を正確に判定することが可能となり、空燃比検出手段出力の極小値または極大値を検出する必要がなく、比較的に高い頻度で故障判定を実行することができる。
【0020】
請求項2に記載の発明によれば、空燃比振動制御が機関回転に同期した周期で実行され、停滞故障判定閾値が機関回転数に応じて設定される。空燃比振動制御が機関回転数に応じた周期で実行されるので、判定精度の低下及び排気特性の悪化を抑制することができる。すなわち、一定の振動周波数で振動させる場合には、その振動周波数と機関回転数とが特定の関係となり(機関回転数に対応する周波数の1/2倍、1倍などに該当し)、空燃比振動制御による空燃比変動と、機関回転数に起因するノイズによる空燃比変動とが区別できずに、判定精度が低下する可能性があるが、例えば振動周波数を機関回転数に対応する周波数の0.4倍に設定することにより、そのような事態を確実に回避することが可能である。また、故障判定に例えば20振動周期の期間を要する場合、機関回転数が高くなるほど故障判定時間が短縮され、空燃比振動制御を行うことに起因する排気特性の悪化を抑制することができる。この発明では、空燃比振動周期(時間)が機関回転数に依存して変化するため、設定検出期間当たりの検出空燃比変化量も機関回転数に依存して変化する。したがって、停滞故障判定閾値を機関回転数に応じて設定することにより、判定精度を良好に維持することができる。
【0021】
請求項3に記載の発明によれば、空燃比を設定振動周期で振動させる空燃比振動制御が行われ、空燃比振動制御実行中に、空燃比検出手段の出力の変化量であって、設定振動周期より短い設定検出期間当たりの変化量が検出空燃比変化量として算出される。検出空燃比変化量と変化量閾値とが比較され、判定積算期間において比較の結果が所定の条件を満たすときに増分値を積算することにより第1故障判定パラメータが算出される。さらに空燃比振動制御実行中に、空燃比検出手段の出力信号に含まれる、設定振動周期に応じた特定周波数成分が抽出され、該特定周波数成分に基づいて第2故障判定パラメータが算出される。第1故障判定パラメータに応じて第2故障判定パラメータを補正することにより、補正故障判定パラメータが算出され、この補正故障判定パラメータに基づいて空燃比検出手段の故障が判定される。補正故障判定パラメータは、第2故障判定パラメータが、停滞故障が発生している可能性、あるいは停滞故障の進行度合に応じて補正されたものに相当するので、補正故障判定パラメータを用いることによって、正常な状態をより高い精度で判定することが可能となり、かつ停滞故障とは異なる態様の故障を区別して判定することが可能となる。
【0022】
請求項4に記載の発明によれば、空燃比検出手段の出力についてバンドパスフィルタ処理を施すことにより、設定振動周期に対応する特定周波数成分がフィルタ処理後出力として算出され、フィルタ処理後出力を積算することにより、第2故障判定パラメータが算出される。第1故障判定パラメータに応じて補正係数が算出され、第2故障判定パラメータに補正係数を乗算することにより補正故障判定パラメータが算出される。空燃比検出手段の故障が停滞故障であるか、応答遅れ故障であるかが、補正故障判定パラメータに基づいて判別される。このように補正故障判定パラメータを用いることにより、故障態様の識別が可能となる。
【0023】
請求項5に記載の発明によれば、空燃比検出手段の出力について第1バンドパスフィルタ処理を施すことにより、設定振動周期に対応する設定振動周波数成分が第1フィルタ処理後出力として算出さるとともに、設定振動周波数の2倍の周波数成分が第2フィルタ処理後出力として算出され、さらに第1フィルタ処理後出力及び第2フィルタ処理後出力をそれぞれ積算することにより第1周波数成分強度及び第2周波数成分強度が算出される。そして第1周波数成分強度と第2周波数成分強度との比率が第2故障判定パラメータとして算出される。第1故障判定パラメータに応じて補正係数が算出され、第2故障判定パラメータに補正係数を乗算することにより補正故障判定パラメータが算出される。空燃比検出手段の故障が停滞故障であるか、応答遅れ故障であるかが、補正故障判定パラメータに基づいて判別される。このように補正故障判定パラメータを用いることにより、故障態様の識別が可能となる。
【0024】
請求項6に記載の発明によれば、空燃比検出手段の出力について第1バンドパスフィルタ処理を施すことにより、設定振動周期に対応する設定振動周波数成分が第1フィルタ処理後出力として算出さるとともに、設定振動周波数の2倍の周波数成分が第2フィルタ処理後出力として算出され、さらに第1フィルタ処理後出力及び第2フィルタ処理後出力をそれぞれ積算することにより第1周波数成分強度及び第2周波数成分強度が算出される。そして第1周波数成分強度と第2周波数成分強度との比率が周波数成分強度比率として算出され、周波数成分強度比率と第1周波数成分強度の積が第2故障判定パラメータとして算出される。第1故障判定パラメータに応じて補正係数が算出され、第2故障判定パラメータに補正係数を乗算することにより補正故障判定パラメータが算出される。空燃比検出手段が故障しているか否かが、補正故障判定パラメータに基づいて判別される。周波数成分強度比率、第1周波数成分強度、及び補正係数は、いずれも空燃比検出手段が正常であれば比較的大きな値をとるパラメータ(故障の程度が悪化するほど減少するパラメータ)であるため、これらを乗算することにより算出される補正故障判定パラメータを用いることにより、LAFセンサ15の正常状態をより高い精度で判定することができる。
【0025】
請求項7に記載の発明によれば、空燃比振動制御が機関回転に同期した周期で実行され、第1故障判定パラメータの算出に適用される増分値が機関回転数に応じて設定される。空燃比振動制御が機関回転数に応じた周期で実行されるので、排気特性の悪化を抑制することができる。また空燃比振動周期(時間)が機関回転数に依存して変化するため、設定検出期間当たりの検出空燃比変化量も機関回転数に依存して変化する。したがって、増分値を機関回転数に応じて設定することにより、判定精度を良好に維持することができる。
【0026】
請求項8に記載の発明によれば、設定振動周期の1/4の期間に設定される。この設定により、第1故障判定パラメータの正常時の値と停滞故障発生時の値との差が大きくなり、判定精度を高めることができる。
【0027】
請求項9に記載の発明によれば、空燃比振動制御が機関回転に同期した周期で実行され、設定検出期間が機関回転数に応じて設定される。空燃比振動制御が機関回転数に応じた周期で実行されるので、排気特性の悪化を抑制することができる。また空燃比振動周期(時間)が機関回転数に依存して変化するため、設定検出期間当たりの検出空燃比変化量も機関回転数に依存して変化する。したがって、設定検出期間を機関回転数に応じて設定することにより、判定精度を良好に維持することができる。
【0028】
請求項10に記載の発明によれば、空燃比振動制御が機関回転に同期した周期で実行され、判定積算期間が機関回転数に応じて設定される。空燃比振動制御が機関回転数に応じた周期で実行されるので、排気特性の悪化を抑制することができる。また空燃比振動周期(時間)が機関回転数に依存して変化するため、設定検出期間当たりの検出空燃比変化量も機関回転数に依存して変化する。したがって、判定積算期間を機関回転数に応じて設定することにより、判定精度を良好に維持することができる。
【0029】
請求項11に記載の発明によれば、比例型空燃比センサにおける停滞故障を正確に判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の一実施形態にかかる内燃機関及びその空燃比制御装置の構成を示す図である。
【図2】空燃比センサの故障態様を説明するためのタイムチャートである。
【図3】空燃比センサの故障判定処理のフローチャートである。
【図4】空燃比を振動させる信号を示すタイムチャートである。
【図5】停滞故障の判定手法を説明するためのタイムチャートである。
【図6】図3の処理で算出される故障判定パラメータの算出データを示す図である。
【図7】図3の処理の変形例のフローチャートである。
【図8】空燃比を振動させる信号の変形例を示すタイムチャートである。
【図9】本発明の第2の実施形態にかかる故障判定処理のフローチャートである。
【図10】図9の処理で実行される故障判定パラメータ(RT)算出処理のフローチャートである。
【図11】図9の処理で実行される故障判定サブルーチンのフローチャートである。
【図12】図11の処理で参照されるテーブルを示す図である。
【図13】本発明の第3の実施形態にかかる故障判定処理のフローチャートである。
【図14】図13の処理で実行される故障判定サブルーチンのフローチャートである。
【図15】図14の処理を説明するための図である。
【図16】図14の処理の第1変形例のフローチャートである。
【図17】図14の処理の第2変形例のフローチャートである。
【図18】先行技術の課題を説明するためのタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
[第1の実施形態]
図1は、本発明の一実施形態にかかる内燃機関(以下「エンジン」という)及びその空燃比制御装置の全体構成図であり、例えば4気筒のエンジン1の吸気管2の途中にはスロットル弁3が配されている。スロットル弁3にはスロットル弁開度THを検出するスロットル弁開度センサ4が連結されており、その検出信号は電子制御ユニット(以下「ECU」という)5に供給される。
【0032】
燃料噴射弁6はエンジン1とスロットル弁3との間かつ吸気管2の図示しない吸気弁の少し上流側に各気筒毎に設けられており、各噴射弁は図示しない燃料ポンプに接続されていると共にECU5に電気的に接続されて当該ECU5からの信号により燃料噴射弁6の開弁時間が制御される。
【0033】
スロットル弁3の上流側には吸入空気流量GAIRを検出する吸入空気流量センサ7が設けられている。またスロットル弁3の下流側には吸気圧PBAを検出する吸気圧センサ8、及び吸気温TAを検出する吸気温センサ9が設けられている。これらのセンサの検出信号は、ECU5に供給される。エンジン1の本体には、エンジン冷却水温TWを検出する冷却水温センサ10が装着されており、その検出信号はECU5に供給される。
【0034】
ECU5には、エンジン1のクランク軸(図示せず)の回転角度を検出するクランク角度位置センサ11が接続されており、クランク軸の回転角度に応じた信号がECU5に供給される。クランク角度位置センサ11は、エンジン1の特定の気筒の所定クランク角度位置でパルス(以下「CYLパルス」という)を出力する気筒判別センサ、各気筒の吸入行程開始時の上死点(TDC)に関し所定クランク角度前のクランク角度位置で(4気筒エンジンではクランク角180度毎に)TDCパルスを出力するTDCセンサ及びTDCパルスより短い一定クランク角周期(例えば6度周期)で1パルス(以下「CRKパルス」という)を発生するCRKセンサから成り、CYLパルス、TDCパルス及びCRKパルスがECU5に供給される。これらのパルスは、燃料噴射時期、点火時期等の各種タイミング制御、エンジン回転数(エンジン回転速度)NEの検出に使用される。
【0035】
排気通路13には三元触媒14が設けられている。三元触媒14は、酸素蓄積能力を有し、エンジン1に供給される混合気の空燃比が理論空燃比よりリーン側に設定され、排気中の酸素濃度が比較的高い排気リーン状態では、排気中の酸素を蓄積し、逆にエンジン1に供給される混合気の空燃比が理論空燃比よりリッチ側に設定され、排気中の酸素濃度が低く、HC、CO成分が多い排気リッチ状態では、蓄積した酸素により排気中のHC,COを酸化する機能を有する。
【0036】
三元触媒14の上流側であって各気筒に連通する排気マニホールドの集合部より下流側には、比例型酸素濃度センサ15(以下「LAFセンサ15」という)が装着されており、このLAFセンサ15は排気中の酸素濃度(空燃比)にほぼ比例した検出信号を出力し、ECU5に供給する。
【0037】
ECU5には、エンジン1により駆動される車両のアクセルペダルの踏み込み量(以下「アクセルペダル操作量」という)APを検出するアクセルセンサ21及び当該車両の走行速度(車速)VPを検出する車速センサ22が接続されており、それらセンサの検出信号がECU5に供給される。スロットル弁3は図示しないアクチュエータにより開閉駆動され、スロットル弁開度THはアクセルペダル操作量APに応じてECU5により制御される。
【0038】
ECU5は、各種センサからの入力信号波形を整形し、電圧レベルを所定レベルに修正し、アナログ信号値をデジタル信号値に変換する等の機能を有する入力回路、中央演算処理ユニット(以下「CPU」という)、該CPUで実行される各種演算プログラム及び演算結果等を記憶する記憶回路、燃料噴射弁6に駆動信号を供給する出力回路を備えている。
【0039】
ECU5のCPUは、上述の各種センサの検出信号に基づいて、種々のエンジン運転状態を判別するとともに、該判別されたエンジン運転状態に応じて、次式(1)を用いて、TDCパルスに同期して開弁作動する燃料噴射弁6の燃料噴射時間TOUTを演算する。燃料噴射時間TOUTは、噴射される燃料量にほぼ比例するので、以下「燃料噴射量TOUT」という。
TOUT=TIM×KCMD×KAF×KIDSIN×KTOTAL (1)
【0040】
ここに、TIMは基本燃料量、具体的には燃料噴射弁6の基本燃料噴射時間であり、吸入空気流量GAIRに応じて設定されたTIMテーブルを検索して決定される。TIMテーブルは、エンジンにおいて燃焼する混合気の空燃比AFがほぼ理論空燃比になるように設定されている。
【0041】
KCMDはエンジン1の運転状態に応じて設定される目標空燃比係数である。目標空燃比係数KCMDは、空燃比A/Fの逆数、すなわち燃空比F/Aに比例し、理論空燃比のとき値1.0をとるので、以下「目標当量比」という。
【0042】
KAFは、空燃比フィードバック制御の実行条件が成立するときは、LAFセンサ15の検出値から算出される検出当量比KACTが目標当量比KCMDに一致するようにPID(比例積分微分)制御あるいは適応制御器(Self Tuning Regulator)を用いた適応制御により算出される空燃比補正係数である。
【0043】
KIDSINは、後述するLAFセンサ15の故障判定を行うときに、1.0±DAFの範囲で時間経過に伴って正弦波状に変化するように設定される振動係数である。振動係数KIDSINは、通常運転中は「1.0」に固定される。
【0044】
KTOTALは夫々各種エンジンパラメータ信号に応じて演算される他の補正係数(エンジン冷却水温TMに応じた補正係数KTW、吸気温TAに応じた補正係数KTAなど)の積である。
【0045】
ECU5のCPUは上述のようにして求めた燃料噴射量TOUTに基づいて燃料噴射弁6を開弁させる駆動信号を出力回路を介して燃料噴射弁6に供給する。また、ECU5のCPUは、以下に説明するようにLAFセンサ15の故障の判定を行う。
【0046】
図2は、LAFセンサ15の故障態様を説明するためのタイムチャートであり、空燃比AFを正弦波状に振動させたときの検出当量比KACTの推移を示す。図2(a)はLAFセンサ15が正常である場合に対応し、図2(b)〜(g)は故障が発生している場合に対応する。図2(b)は、応答速度がリッチ側及びリーン側で同程度に遅くなる故障(以下「対称応答遅れ故障」という)FM1に対応し、図2(c)は、リーン空燃比からリッチ空燃比への変化に対する応答速度が遅くなる非対称応答遅れ故障FM2に対応し、図2(d)は、リッチ空燃比からリーン空燃比への変化に対する応答速度が遅くなる非対称応答遅れ故障FM3に対応し、図2(e)は、リッチ側及びリーン側で同程度のむだ時間(停滞時間)TSTYが発生する対称停滞故障FM4に対応し、図2(f)は、リッチ側でむだ時間(停滞時間)TSTYが発生する非対称停滞故障FM5に対応し、図2(g)は、リーン側でむだ時間(停滞時間)TSTYが発生する非対称停滞故障FM6に対応する。対称停滞故障FM4及び非対称停滞故障FM5,FM6を、「停滞故障」と総称する。
【0047】
図3は、停滞故障を判定するための故障判定処理のフローチャートである。この処理はECU5のCPUで所定時間TCAL(例えば10msec)毎に実行される。
ステップS11では、センサ活性化フラグFACTVが「1」であるか否かを判別する。センサ活性化フラグFACTVは、LAFセンサ15が活性化しているとき「1」に設定される。ステップS11の答が肯定(YES)であるときは、実行条件フラグFMCNDが「1」であるか否かを判別する(ステップS12)。実行条件フラグFMCNDは、車速VP、エンジン回転数NE、及び吸入空気流量GAIRが所定範囲内にあるとき「1」に設定される。
【0048】
ステップS11またはS12の答が否定(NO)であるときは、振動係数KIDSINを「1.0」に設定し、停滞故障判定パラメータRTを「0」に設定するとともに、積算時間タイマ(ダウンカウントタイマ)TMINTを所定積算時間TINT(例えば1500msec)に設定してスタートさせる(ステップS13)。
【0049】
ステップS12の答が肯定(YES)であるときは、故障判定が開始される。故障判定実行中は、目標当量比KCMD及び空燃比補正係数KAFは「1.0」に固定される。ステップS14では、下記式(2)により振動係数KIDSINを算出する。式(2)のDAFは振幅であり例えば「0.3」に設定される。fpは振動周波数であり、例えば「4Hz」に設定される。kは所定時間TCALにより離散化した離散化時刻である。
KIDSIN=DAF×sin{2πfp×TCAL×k} (2)
【0050】
振動係数KIDSINを式(1)に適用することにより、空燃比振動制御が実行される。
【0051】
ステップS15では下記式(3)により、当量比変化量DKACTを算出する。
DKACT=|KACT(k)−KACT(k-6)| (3)
ステップS16では当量比変化量DKACTが変化量閾値xLSB(例えば0.0005〜0.0015の範囲内の値に設定される)より大きいか否かを判別し、この答が否定(NO)であるときは直ちにステップS18に進む。DKACT>xLSBであるときは、下記式(4)により、停滞故障判定パラメータRTを算出する。式(4)の右辺のRTは前回算出値であり、RTADDは増分値であり、例えば「1」に設定される。
RT=RT+RTADD (4)
【0052】
ステップS18では、積算時間タイマTMINTの値が「0」であるか否かを判別し、その答が否定(NO)である間は直ちに処理を終了する。故障判定の開始時点から所定積算時間TINTが経過し、ステップS18の答が肯定(YES)となると、ステップS19に進んで、停滞故障判定パラメータRTが停滞故障判定閾値RTTHより大きいか否かを判別する。この答が肯定(YES)であるときはLAFセンサ15は正常と判定する(ステップS20)。一方、RT≦RTTHであるときは、停滞故障(FM4,FM5,またはFM6)が発生していると判定する(ステップS21)。その後、判定終了フラグFDETENDを「1」に設定し、故障判定を終了する。
【0053】
図4及び図5は、図3の処理を説明するためのタイムチャートである。
図3のステップS14で設定される振動係数KIDSINは、図4に示すように変化する。TPRTは振動周期であり、「1/fp」に等しい。振動周波数fpが4Hzであるときは、振動周期TPRTは、250msecである。またTDAFは、変化量検出期間であり、図3の処理では「6×TCAL」(60msec)に等しい。変化量検出期間TDAFは、振動周期TRPTの1/4の期間に設定される。この設定により、停滞故障判定パラメータRTの正常時の値と停滞故障発生時の値との差が大きくなり、判定精度を高めることができる。
【0054】
図5(a)は、LAFセンサ15が正常であるときの検出当量比KACTの推移を示しており、当量比変化量DKACTは検出期間TS1において変化量閾値xLSBを超え、他の検出期間TS2及びTS3では、変化量閾値xLSBより小さい。したがって、検出期間TS1において停滞故障判定パラメータRTに増分値RTADDが加算される。
【0055】
一方図5(b)は、停滞故障が発生しているときの検出当量比KACTの推移を示しており、当量比変化量DKACTは検出期間TS7において変化量閾値xLSBを超え、他の検出期間TS4〜TS6では、変化量閾値xLSBより小さい。したがって、検出期間TS7において停滞故障判定パラメータRTに増分値RTADDが加算される。
【0056】
したがって、停滞故障が発生しているときの方が、増分値RTADDが加算される頻度が低下し、停滞故障判定パラメータRTの値は正常時に比べて小さくなる。したがって、停滞故障判定パラメータRTが停滞故障判定閾値RTTH以下であるときに、停滞故障が発生していると判定することができる。
【0057】
図6は、テスト結果を示す図であり、横軸のNTはテスト回数であり、図に示す矩形のシンボルが正常な状態に対応する停滞故障判定パラメータ値を示し、三角形のシンボルが停滞故障が発生している状態に対応する停滞故障判定パラメータ値を示す。このように、停滞故障が発生しているときは、停滞故障判定パラメータRTが正常時より明確に減少するので、例えば図に示すように停滞故障判定閾値RTTHを設定することにより、停滞故障を正確に判定することができる。
【0058】
図6には示されていないが、対称応答遅れ故障FM1が発生しているときは、図のNGデータ群と、OKデータ群のほぼ中間に領域に分布するデータが得られる。したがって、停滞故障判定閾値RTTHを図6に示すように設定すると、対称応答遅れ故障FM1が発生しているときに、停滞故障と判定される可能性がある。したがって、停滞故障判定閾値RTTHをより小さい値に設定するか、または大小2つの判定閾値RTTH1,RTTH2(<RTTH1)を設定し、RTTH2<RT≦RTTH1であるときに、対称応答遅れ故障FM1が発生していると判定し、RT≦RTTH2であるときに停滞故障(FM4,FM5,またはFM6)が発生していると判定するようにしてもよい。これにより、停滞故障のみを抽出することが可能となる。
なお本実施形態では、非対称応答遅れ故障FM2,FM3が発生しているときに、正常と判定される可能性がある。
【0059】
本実施形態では、LAFセンサ15が空燃比検出手段に相当し、燃料噴射弁6が空燃比振動手段の一部に相当し、ECU5が、振動信号生成手段、空燃比振動手段の一部、変化量算出手段、故障判定パラメータ算出手段、及び停滞故障判定手段を構成する。具体的には、図3のステップS14が振動信号生成手段に相当し、ステップS15が変化量算出手段に相当し、ステップS13及びS16〜S18が故障判定パラメータ算出手段に相当し、ステップS19〜S21が停滞故障判定手段に相当する。
【0060】
[変形例1]
図7は、図3の処理の変形例のフローチャートである。図7の処理は、図3のステップS13,S17,及びS19をそれぞれステップS13a,S17a,及びS19aに変更し、ステップS16の「YES」「NO」の位置を逆にしたものである。
【0061】
ステップS16の答が肯定(YES)、すなわちDKACT>xLSBであるときは直ちにステップS18に進み、ステップS16の答が否定(NO)、すなわちDKACT≦xLSBであるときは、ステップS17aに進んで、下記式(4a)により停滞故障判定パラメータRTaを算出する。
RTa=RTa+RTADD (4a)
【0062】
ステップS19aでは、停滞故障判定パラメータRTaが停滞故障判定閾値RTTHaより小さいか否かを判別し、その答が肯定(YES)であるときは、LAFセンサ15は正常と判定する(ステップS20)。一方、RTa≧RTTHaであるときは、停滞故障が発生していると判定する(ステップS21)。
【0063】
図7の処理は、停滞故障判定パラメータRTaを、図3の処理と逆にDKACT≦xLSBが成立するときに増加させるようにしたものであり、したがってステップS19aにおいて停滞故障判定パラメータRTaと停滞故障判定閾値RTTHaとの比較することにより、図3の処理と同様に停滞故障を判定することができる。
【0064】
本変形例では、図7のステップS13a,S16,S17a,及びS18が故障判定パラメータ算出手段に相当し、ステップS19a,S20,及びS21が停滞故障判定手段に相当する。
【0065】
[変形例2]
上述した実施形態では、振動係数KIDSINを離散時間kを式(2)に適用して算出するようにしたが、図8(a)に示すようにクランク角度CAに応じて(エンジン回転に同期して)、下記式(2a)により算出するようにしてもよい。式(2a)のωNEは、エンジン回転数NE[rpm]を角速度に変換したエンジン回転角速度[rad/sec]であり、下記式(11)で与えられる。
KIDSIN=DAF×sin{2π×ωNE×TCAL×k/CAPRT}
(2a)
ωNE=2π×NE/60 (11)
【0066】
この場合には、エンジン回転数NEが変化してもクランク角度周期CAPRTは一定であるが、空燃比振動の時間周期はエンジン回転数NEに反比例して変化する。すなわち、クランク角度周期CAPRTと、変化量検出期間TDAFとの相対関係は、エンジン回転数NEに依存して変化する。図8(a)に示す状態は、例えばクランク角度周期CAPRTを1800deg(10πラジアン)に設定した場合においてエンジン回転数NEが1200rpmである状態に対応する。
【0067】
このように空燃比振動の周期をエンジン回転に同期するように(エンジン回転数NEに反比例するように)設定することにより、故障判定実行中における排気特性の悪化及び判定精度の低下を抑制することができる。すなわち、一定の振動周波数で振動させる場合には、エンジン回転数NEと特定の関係となり(エンジン回転数NEに対応する周波数の1/2倍、1倍などに該当し)、空燃比振動制御による空燃比変動と、機関回転に起因するノイズによる空燃比変動とが区別できずに、判定精度が低下する可能性があるが、本変形例において振動周波数を例えばエンジン回転数NEに対応する周波数の0.4倍に設定すれば、そのような事態を確実に回避することが可能である。また、故障判定に例えば20振動周期の期間を要する場合、機関回転数が高くなるほど故障判定時間が短縮され、空燃比振動制御を行うことに起因する排気特性の悪化を抑制することができる。
【0068】
変化量検出期間TDAFにおける当量比変化量DKACTは、LAFセンサ15が正常であっても、図8(b)に示すように振動信号の極大値(または極小値)近傍で、変化量閾値xLSBより小さくなる状態(以下「小変化量状態」という)が発生する。図8(b)には、小変化量状態が3回発生した例が示されている。本変形例では、クランク角度周期CAPRTに対応する時間振動周期TPRTがエンジン回転数NEに依存して変化するため、小変化量状態の発生頻度が時間振動周期TPRTに依存して変化する。
【0069】
そこで本変形例では、下記式(11)により停滞故障判定閾値RTTHを、時間振動周期TPRTに応じて補正している。
RTTH=RTADD×(NTOTAL−NNE−NC) (11)
【0070】
式(11)のNTOTALは、総判定回数であり、例えば故障判定処理の実行周期TCALが10msecで、所定積算時間TINTが1500msecの場合、NTOTALは「150」である。NCは実験により予め設定される補正項であり、NNEは、エンジン回転数NEに依存する回転数補正項であり、例えば所定周期TPRT0(例えば250msec)の期間における小変化量状態の発生回数がnX回である場合には、回転数補正項NNEは、下記式(12)で与えられる。
NNE=TPRT×nX/TPRT0 (12)
【0071】
このように停滞故障判定閾値RTTHを、エンジン回転数NEに反比例する時間振動周期TPRTに応じて設定することにより、判定精度を良好に維持することができる。
【0072】
[第2の実施形態]
本実施形態は、第1の実施形態における停滞故障判定パラメータRTを、特開2010−133418号公報に示されている故障判定手法と組み合わせて用いることにより、故障判定を行うようにしたものである。
【0073】
図9は、本発明の第2の実施形態にかかる故障判定処理のフローチャートである。この処理は所定時間TCAL毎にECU5のCPUで実行される。
ステップS31,S32,及びS35は、図3のステップS11,S12及びS14と同一である。ステップS31またはS32の答が否定(NO)であるときは、振動係数KIDSINを「1.0」に設定するとともに(ステップS33)、ダウンカウントタイマである待機時間タイマTMKACTFDを所定待機時間TKACTFDにセットしてスタートさせる(ステップS34)。所定待機時間TKACTFDは、空燃比振動制御を開始した時点からLAFセンサ出力が安定化するまでの遅れ時間に相当するものである。
【0074】
ステップS39では停滞故障判定パラメータRTを「0」に設定し、ステップS40ではダウンカウントタイマである積算時間タイマTMLAFDETを所定積算期間TLAFDETにセットしてスタートさせる。
【0075】
ステップS32の答が肯定(YES)であるときは、振動係数KIDSINを算出し(ステップS35)、次いで検出当量比KACTのfpバンドパスフィルタ処理を行うことにより、フィルタ処理後検出当量比KACTFを算出する。fpバンドパスフィルタ処理は、振動周波数fp近傍の周波数帯域を通過させるバンドパスフィルタ処理であり、公知の演算手法が適用される。ステップS37では、フィルタ処理後検出当量比KACTFの絶対値KACTFAを算出する。フィルタ処理後検出当量比KACTFは、「0」を中心として変動するため、絶対値KACTFAが周波数fpに対応する周波数成分強度を示すパラメータとして、以下に説明する故障判定処理に使用される。
【0076】
ステップS38では、待機時間タイマTMKACTFDの値が「0」であるか否かを判別する。最初はこの答は否定(NO)であるのでステップS39に進み、肯定(YES)となると、ステップS41に進んで、図10に示すRT算出処理を実行し、停滞故障判定パラメータRTを算出する。
【0077】
ステップS42では、下記式(13)により絶対値KACTFAの積算演算を行うことにおり、fp成分強度LAFDLYPを算出する。式(13)の右辺のKACTFAは、前回算出値である。
LAFDLYP=LAFDLYP+KACTFA (13)
【0078】
式(13)により算出されるfp成分強度LAFDLYPは、検出当量比KACTに含まれる振動周波数fp近傍の周波数成分強度(fp周波数成分強度)を示すパラメータであり、対称遅れ故障FM1を判定するのに適したパラメータである。対称遅れ故障FM1が発生すると、fp周波数成分強度が正常時に比べて顕著に低下するからである。
【0079】
ステップS43では、積算時間タイマTMLAFDETの値が「0」であるか否かを判別する。最初はこの答は否定(NO)であるので、直ちに処理を終了する。ステップS43の答が肯定(YES)となると、ステップS44に進み、図11に示す故障判定処理を実行し、判定終了フラグFDETENDを「1」に設定する(ステップS45)。
【0080】
図10は、図9のステップS41で実行されるRT算出処理のフローチャートである。
ステップS51〜S53は、図3のステップS15〜S17と同一の処理であり、図10の処理を実行することにより、停滞故障判定パラメータRTが算出される。
【0081】
図11は、図9のステップS44で実行される故障判定処理のフローチャートである。
ステップS61では、停滞故障判定パラメータRTに応じて図12に示すKRTテーブルを検索し、補正係数KRTを算出する。KRTテーブルは、停滞故障判定パラメータRTが小さくなるほど、すなわち停滞故障が発生している可能性が高くなるほど補正係数KRTが減少するように設定されている。
【0082】
ステップS62では、fp成分強度LAFDLYPに補正係数KRTを乗算することにより、補正故障判定パラメータLAFDLYPCを算出する。fp成分強度LAFDLYPに補正係数KRTを乗算することにより、停滞故障が発生している可能性が高くなるほど、補正故障判定パラメータLAFDLYPCは減少方向に変化する。
【0083】
ステップS63では、補正故障判定パラメータLAFDLYPCが第1判定閾値LAFDLYPTHより大きいか否かを判別し、その答が肯定(YES)であるとき、すなわち補正故障判定パラメータLAFDLYPCの値が比較的大きいときは、LAFセンサ15は正常と判定する(ステップS64)。
【0084】
ステップS63の答が否定(NO)であるときは、さらに補正故障判定パラメータLAFDLYPCが第2判定閾値LAFDLYPTHL(<LAFDLYPTH)より大きいか否を判別する(ステップS65)。この答が肯定(YES)であるときは、非対称応答故障(FM2またはFM3)が発生していると判定する(ステップS66)。一方、LAFDLYPC≦LAFDLYPTHLであるときは、さらに停滞故障判定パラメータRTが停滞故障判定閾値RTTHより大きいか否かを判別する(ステップS67)。
【0085】
ステップS67の答が肯定(YES)であるときは、対称応答遅れ故障FM1が発生していると判定し(ステップS68)、RT≦RTTHであるときは、停滞故障(FM4,FM5,またはFM6)が発生していると判定する(ステップS69)。
【0086】
本実施形態によれば、空燃比を振動周期TPRT(振動周波数fp)で振動させる空燃比振動制御が行われ、空燃比振動制御実行中に算出される検出当量比変化量DKACTが変化量閾値xLSBと比較され、積算期間TLAFDETにおいて検出当量比変化量DKACTが変化量閾値xLSBを超えるときに増分値RTADDを積算することにより停滞故障判定パラメータRTが算出される。さらに空燃比振動制御実行中に、検出当量比KACTに含まれる、振動周波数fpに対応する周波数成分の強度を示すfp成分強度LAFDLYPが算出され、停滞故障判定パラメータRTに応じて補正係数KRTが算出される。fp成分強度LAFDLYPを補正係数KRTで補正することにより、補正故障判定パラメータLAFDLYPCが算出され、この補正故障判定パラメータLAFDLYPCに基づいてLAFセンサ15の故障が判定される。補正故障判定パラメータLAFDLYPCは、fp成分強度LAFDLYPが、停滞故障の発生可能性を示す停滞故障判定パラメータRTに応じて補正されたものに相当するので、補正故障判定パラメータLAFDLYPCを用いることによって、正常な状態をより高い精度で判定することが可能となり、かつ停滞故障とは異なる非対称遅れ故障(FM2またはFM3)を区別して判定することが可能となる。
【0087】
さらに補正故障判定パラメータLAFDLYPCによる判別(ステップS65)後に、第1故障判定判定パラメータRTによる判別を行うことにより、停滞故障を対称遅れ故障と区別して判定することが可能となる。
【0088】
本実施形態では、図9のステップS35が振動信号生成手段に相当し、図10のステップS51が変化量算出手段に相当し、ステップS39及びS41が第1故障判定パラメータ算出手段に相当し、ステップS36,S37,S39,及びS42が周波数成分強度パラメータ算出手段に相当し、ステップS36がバンドパスフィルタ手段に相当し、図11の処理が故障判定手段に相当し、図11のステップS62が補正手段に相当する。
【0089】
[第3の実施形態]
本実施形態は、第2の実施形態で使用される停滞故障判定パラメータRT及びfp成分強度LAFDLYPとともに、周波数成分強度比率RLAFDLYPを使用して、故障判定を行うようにしたものである。周波数成分強度比率RLAFDLYPに相当するパラメータによる判定は、特開2010−101289号公報に示されている。
【0090】
図13は、本実施形態における故障判定処理のフローチャートである。この処理は、図9のステップS36,S37,S39,S42,及びS44を、それぞれステップS36a,S37a,S39a,S42a,及びS44aに代え、さらにステップS42bを追加したものである。
【0091】
ステップS36aでは、検出当量比KACTについて第1バンドパスフィルタ処理を行うことにより、第1フィルタ処理後検出当量比KACTF1を算出するとともに、検出当量比KACTについて第2バンドパスフィルタ処理を行うことにより、第2フィルタ処理後検出当量比KACTF2を算出する。第1バンドパスフィルタ処理は、図9のステップS36におけるバンドパスフィルタ処理に相当するもので、振動周波数fp近傍の周波数帯域を通過させるバンドパスフィルタ処理である。第2バンドパスフィルタ処理は、振動周波数fpの2倍の周波数近傍の周波数帯域を通過させるバンドパスフィルタ処理である。
【0092】
ステップS37aでは、第1フィルタ処理後検出当量比KACTF1及び第2フィルタ処理後検出当量比KACTF2の絶対値KACTFA1及びKACTFA2を算出する。
【0093】
ステップS39aでは、fp成分強度LAFDLYP1(第2の実施形態におけるfp成分強度LAFDLYPに相当する)を「0」に設定するとともに、第2フィルタ処理後検出当量比の絶対値KACTFA2の積算値(以下「2fp成分強度」という)LAFDLYP2を「0」に設定する。
【0094】
ステップS42aでは、下記式(21)及び(22)を用いて、絶対値KACTFA1を積算することにより、fp成分強度LAFDLYP1を算出するとともに、絶対値KACTFA2を積算することにより、2fp成分強度LAFDLYP2を算出する。
LAFDLYP1=LAFDLYP1+KACTFA1 (21)
LAFDLYP2=LAFDLYP2+KACTFA2 (22)
【0095】
ステップS42bでは、下記式(23)により、fp成分強度LAFDLYP1と2fp成分強度LAFDLYP2との比率を、周波数成分強度比率RLAFDLYPとして算出する。
RLAFDLYP=LAFDLYP1/LAFDLYP2 (23)
【0096】
ステップS44aでは、図14に示す故障判定処理を実行する。図14に示す処理は、図11のステップS62及びS67をそれぞれステップS62a及びS67aに代えたものである。
【0097】
ステップS62aでは、fp成分強度LAFDLYP1に補正係数KRTを乗算することにより、補正故障判定パラメータLAFDLYPCを算出する。ステップS67aでは、周波数成分強度比率RLAFDLYPが第3判定閾値RLAFDLYPTHより大きいか否かを判別し、その答が肯定(YES)であるときは、対称応答遅れ故障FM1が発生していると判定する。RLAFDLYP≦RLAFDLYPTHであるときは、停滞故障が発生していると判定する。
【0098】
図15は、図14の処理を説明するための図であり、周波数成分強度比率RLAFDLYPに対応する横軸と、補正故障判定パラメータLAFDLYPCに対応する縦軸とで定義される平面上に、正常なLAFセンサに対応するデータ群の領域(以下「正常データ領域」という)RNと、対称応答遅れ故障FM1が発生している状態に対応するデータ群の領域(以下「対称応答遅れデータ領域」という)RF1と、非対称応答遅れ故障(FM2,FM3)が発生している状態に対応するデータ群の領域(以下「非対称応答遅れデータ領域」という)RF2と、停滞故障が発生している状態に対応するデータ群の領域(以下「停滞故障データ領域」という)RF3とが示されている。
【0099】
この図から明らかなように、第1判定閾値LAFDLYPTHによって、正常なセンサを判別し、第2判定閾値LAFDLYPTHLによって非対称応答遅れ故障を判別し、さらに第3判定閾値RLAFDLYPTHによって対称応答遅れ故障と停滞故障とを判別することができる。
【0100】
本実施形態では、図13のステップS35が振動信号生成手段に相当し、ステップS39a及びS41が第1故障判定パラメータ算出手段に相当し、ステップS36a,S37a,S39a,及びS42aが第2故障判定パラメータ算出手段に相当し、図14の処理が故障判定手段に相当する。
【0101】
[変形例1]
図16は、図14に示す処理の第1変形例を示すフローチャートである。
ステップS71は、ステップS61と同一であり、停滞故障判定パラメータRTに応じて補正係数KRTを算出する。
【0102】
ステップS72では、周波数成分強度比率RLAFDLYPに補正係数KRTを乗算することにより、補正故障判定パラメータRLAFDLYPCを算出する。ステップS73では、補正故障判定パラメータRLAFDLYPCが第3判定閾値RLAFDLYPTHより大きい否かを判別する。ステップS73の答が肯定(YES)であるときは、さらにfp成分強度LAFDLYP1が第1判定閾値LAFDLYPTHより大きいか否かを判別する(ステップS74)。
【0103】
ステップS74の答が肯定(YES)であるときはLAFセンサ15は正常と判定し、LAFDLYP1≦LAFDLYPTHであるときは、対称遅れ故障FM1が発生していると判定する。
【0104】
ステップS73の答が否定(NO)であるときは、ステップS77に進み、停滞故障判定パラメータRTが停滞故障判定閾値RTTHより大きいか否かを判別する。ステップS77の答が肯定(YES)であるときは、非対称遅れ故障(FM2またはFM3)が発生していると判定し、RT≦RTTHであるときは、停滞故障が発生していると判定する(ステップS79)。
【0105】
本変形例によれば、周波数成分強度比率RLAFDLYPを補正係数KRTを用いて補正することにより、補正故障判定パラメータRLAFDLYPCが算出され、さらにステップS74及びS77の判別を行うことによって、故障態様を判定することができる。
【0106】
本変形例では、周波数成分強度比率RLAFDLYPが第2故障判定パラメータに相当し、ステップS71及びS72が補正手段に相当し、ステップS73〜S79が故障判定手段に相当する。
【0107】
[変形例2]
図17は、図14に示す処理の第2変形例を示すフローチャートである。
ステップS81は、ステップS61と同一であり、停滞故障判定パラメータRTに応じて補正係数KRTを算出する。
【0108】
ステップS82では、fp成分強度LAFDLYP及び周波数成分強度比率RLAFDLYPの積に補正係数KRTを乗算することにより、補正故障判定パラメータLAFDLYPCaを算出する。ステップS83では、補正故障判定パラメータLAFDLYPCaが第4判定閾値LAFDLYPTHaより大きい否かを判別する。ステップS83の答が肯定(YES)であるときは、LAFセンサ15は正常であると判定し(ステップS84)、LAFDLYPCa≦LAFDLYPTHaであるときは、上述した何れかの故障が発生していると判定する(ステップS85)。
【0109】
本変形例によれば、fp成分強度LAFDLYP及び周波数成分強度比率RLAFDLYPの積に補正係数KRTを乗算することにより、補正故障判定パラメータLAFDLYPCaが算出される。fp成分強度LAFDLYP、周波数成分強度比率RLAFDLYP、及び補正係数KRTは、いずれもLAFセンサ15が正常であれば比較的大きな値をとるパラメータ(故障の程度が悪化するほど減少するパラメータ)であるため、これらを乗算することにより、LAFセンサ15の正常状態をより高い精度で判定することができる。
【0110】
本変形例では、fp成分強度LAFDLYP1と周波数成分強度比率RLAFDLYPの積が第2故障判定パラメータに相当し、ステップS81及びS82が補正手段に相当し、ステップS83〜S85が故障判定手段に相当する。
【0111】
なお本発明は上述した実施形態に限るものではなく、種々の変形が可能である。例えば、第1の実施形態の変形例2では、停滞故障判定閾値RTTHをエンジン回転数NEに応じて設定するようにしたが、これに代えて増分値RTADD、または変化量検出期間TDAF、または積算時間TINTをエンジン回転数NEに応じて設定するようにしてもよい。その場合には、増分値RTADDはエンジン回転数NEが増加するほど減少するように設定し、変化量検出期間TDAFはエンジン回転数NEが増加するほど減少するように設定し、積算時間TINTをエンジン回転数NEが増加するほど減少するように設定する。
【0112】
第2及び第3の実施形態においても、第1の実施形態の変形例2と同様に、振動係数KIDSINをエンジン回転に同期して変化するように算出してもよい。その場合には、停滞故障判定閾値RTTH、または増分値RTADD、または変化量検出期間TDAF、または積算時間TINTをエンジン回転数NEに応じて設定することが望ましい。
【0113】
この変形例では振動周波数fpがエンジン回転数NEの変化に伴って変化するため、バンドバスフィルタ処理に適用するフィルタ係数を以下のようにして算出する。すなわち、エンジン回転数NEに応じて複数組のフィルタ係数が設定されたフィルタ係数テーブルを予めメモリに格納しておき、判定実行時のエンジン回転数NEに応じてフィルタ係数テーブルを検索して、使用するフィルタ係数を算出する。この変形例では、エンジン回転数NEが急変したときは、故障判定を中止することが望ましい。
【符号の説明】
【0114】
1 内燃機関
5 電子制御ユニット(振動信号生成手段、空燃比振動手段、変化量算出手段、故障判定パラメータ算出手段、停滞故障判定手段、バンドバスフィルタ手段、補正手段、故障判定手段、閾値設定手段、増分値設定手段、検出期間設定手段、積算期間設定手段)
6 燃料噴射弁(空燃比振動手段)
11 クランク角度位置センサ(回転数検出手段)
13 排気通路
15 比例型酸素濃度センサ(空燃比検出手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の排気通路に設けられ、前記機関で燃焼する混合気の空燃比を検出する空燃比検出手段を備える内燃機関の空燃比制御装置において、
前記空燃比を設定振動周期で振動させるための振動信号を生成する振動信号生成手段と、
前記振動信号に応じて前記空燃比を振動させる空燃比振動手段と、
該空燃比振動手段の作動中に、前記空燃比検出手段の出力の変化量であって、前記設定振動周期より短い設定検出期間当たりの変化量を、検出空燃比変化量として算出する変化量算出手段と、
前記検出空燃比変化量と変化量閾値とを比較し、判定積算期間において前記比較の結果が所定の条件を満たすときに増分値を積算することにより故障判定パラメータを算出する故障判定パラメータ算出手段と、
前記空燃比検出手段の出力が停滞する停滞故障を判定するための停滞故障判定閾値と、前記故障判定パラメータとを比較し、該比較結果に応じて前記停滞故障を判定する停滞故障判定手段とを備えることを特徴とする内燃機関の空燃比制御装置。
【請求項2】
前記設定振動周期は前記機関回転に同期した期間に設定され、
前記機関の回転数を検出する回転数検出手段と、
前記停滞故障判定閾値を前記機関回転数に応じて設定する閾値設定手段とをさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の空燃比制御装置。
【請求項3】
内燃機関の排気通路に設けられ、前記機関で燃焼する混合気の空燃比を検出する空燃比検出手段を備える内燃機関の空燃比制御装置において、
前記空燃比を設定振動周期で振動させるための振動信号を生成する振動信号生成手段と、
前記振動信号に応じて前記空燃比を振動させる空燃比振動手段と、
前記空燃比振動手段による空燃比振動の実行中に、前記空燃比検出手段の出力の変化量であって、前記設定振動周期より短い設定検出期間当たりの変化量を、検出空燃比変化量として算出する変化量算出手段と、
前記検出空燃比変化量と変化量閾値とを比較し、判定積算期間において前記比較の結果が所定の条件を満たすときに増分値を積算することにより第1故障判定パラメータを算出する第1故障判定パラメータ算出手段と、
前記空燃比振動手段による空燃比振動の実行中に、前記空燃比検出手段の出力信号に含まれる、前記設定振動周期に応じた特定周波数成分を抽出し、該特定周波数成分に基づいて第2故障判定パラメータを算出する第2故障判定パラメータ算出手段と、
前記第1故障判定パラメータに応じて前記第2故障判定パラメータを補正し、補正故障判定パラメータを算出する補正手段と、
前記補正故障判定パラメータに基づいて前記空燃比検出手段の故障を判定する故障判定手段とを備えることを特徴とする内燃機関の空燃比制御装置。
【請求項4】
前記第2故障判定パラメータ算出手段は、
前記空燃比検出手段の出力についてバンドパスフィルタ処理を施して、前記設定振動周期に対応する設定振動周波数成分をフィルタ処理後出力として算出するバンドパスフィルタ手段を有し、
前記フィルタ処理後出力を積算することにより、前記第2故障判定パラメータを算出し、
前記補正手段は、前記第1故障判定パラメータに応じて補正係数を算出し、前記第2故障判定パラメータに前記補正係数を乗算することにより前記補正故障判定パラメータを算出し、
前記故障判定手段は、前記空燃比検出手段の出力が停滞する停滞故障であるか、前記空燃比検出手段の応答が遅れる応答遅れ故障であるかを、前記補正故障判定パラメータに基づいて判別することを特徴とする請求項3に記載の内燃機関の空燃比制御装置。
【請求項5】
前記第2故障判定パラメータ算出手段は、
前記空燃比検出手段の出力について第1バンドパスフィルタ処理を施して、前記設定振動周期に対応する設定振動周波数成分を第1フィルタ処理後出力として算出する第1バンドパスフィルタ手段と、
前記空燃比検出手段の出力について第2バンドパスフィルタ処理を施して、前記設定振動周波数の2倍の周波数成分を第2フィルタ処理後出力として算出する第2バンドパスフィルタ手段と、
前記第1フィルタ処理後出力を積算することにより第1周波数成分強度を算出する第1周波数成分強度算出手段と、
前記第2フィルタ処理後出力を積算することにより第2周波数成分強度を算出する第2周波数成分強度算出手段とを有し、
前記第1周波数成分強度と前記第2周波数成分強度との比率を、前記第2故障判定パラメータとして算出し、
前記補正手段は、前記第1故障判定パラメータに応じて補正係数を算出し、前記第2故障判定パラメータに前記補正係数を乗算することにより前記補正故障判定パラメータを算出し、
前記故障判定手段は、前記空燃比検出手段の出力が停滞する停滞故障であるか、前記空燃比検出手段の応答が遅れる応答遅れ故障であるかを、前記補正故障判定パラメータに基づいて判別する故障種別判別手段を有することを特徴とする請求項3に記載の内燃機関の空燃比制御装置。
【請求項6】
前記第2故障判定パラメータ算出手段は、
前記空燃比検出手段の出力について第1バンドパスフィルタ処理を施して、前記設定振動周期に対応する設定振動周波数成分を第1フィルタ処理後出力として算出する第1バンドパスフィルタ手段と、
前記空燃比検出手段の出力について第2バンドパスフィルタ処理を施して、前記設定振動周波数の2倍の周波数成分を第2フィルタ処理後出力として算出する第2バンドパスフィルタ手段と、
前記第1フィルタ処理後出力を積算することにより第1周波数成分強度を算出する第1周波数成分強度算出手段と、
前記第2フィルタ処理後出力を積算することにより第2周波数成分強度を算出する第2周波数成分強度算出手段と、
前記第1周波数成分強度と前記第2周波数成分強度との比率を、周波数成分強度比率として算出する周波数成分強度比率算出手段とを有し、
前記第1周波数成分強度と前記周波数成分強度比率の積を前記第2故障判定パラメータとして算出し、
前記補正手段は、前記第1故障判定パラメータに応じて補正係数を算出し、前記第2故障判定パラメータに前記補正係数を乗算することにより前記補正故障判定パラメータを算出し、
前記故障判定手段は、前記空燃比検出手段が故障しているか否かを、前記補正故障判定パラメータに基づいて判別することを特徴とする請求項3に記載の内燃機関の空燃比制御装置。
【請求項7】
前記設定振動周期は前記機関回転に同期した期間に設定され、
前記機関の回転数を検出する回転数検出手段と、
前記第1故障判定パラメータの算出に適用される前記増分値を前記機関回転数に応じて設定する増分値設定手段とをさらに備えることを特徴とする請求項3から6の何れか1項に記載の内燃機関の空燃比制御装置。
【請求項8】
前記設定検出期間は、前記設定振動周期の1/4の期間に設定されることを特徴とする請求項1から7の何れか1項に記載の内燃機関の空燃比制御装置。
【請求項9】
前記設定振動周期は前記機関回転に同期した期間に設定され、
前記機関の回転数を検出する回転数検出手段と、
前記設定検出期間を前記機関回転数に応じて設定する検出期間設定手段とをさらに備えることを特徴とする請求項1から8の何れか1項に記載の内燃機関の空燃比制御装置。
【請求項10】
前記設定振動周期は前記機関回転に同期した期間に設定され、
前記機関の回転数を検出する回転数検出手段と、
前記判定積算期間を前記機関回転数に応じて設定する積算期間設定手段とをさらに備えることを特徴とする請求項1から9の何れか1項に記載の内燃機関の空燃比制御装置。
【請求項11】
前記空燃比検出手段は、その出力が前記空燃比の変化に対して直線的に変化する比例型空燃比センサであることを特徴とする請求項1から10の何れか1項に記載の内燃機関の空燃比制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2012−241525(P2012−241525A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−109148(P2011−109148)
【出願日】平成23年5月16日(2011.5.16)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】