説明

冷却装置及びそれを搭載した車両

【課題】 冷房を機能させながら冷房用冷媒の冷却能力を利用して動力源の冷却の負荷を低減することができる。
【解決手段】 冷房用冷媒冷却器50には、一定運転条件下で冷房用冷媒(二酸化炭素)が外気温近傍となる位置にバイパス流路61が接続され、このバイパス流路61には燃料電池スタック20を冷却する冷却水と熱交換を行う熱交換器62が接続されている。バイパス流路61の接続部分には、冷房用冷媒冷却器50を通過する冷房用冷媒が熱交換器62に流通するか、流通しないかを切り替える切替バルブ64が配設されている。そして、冷却用コントローラ60は、バイパス流路61の接続部分の冷房用冷媒の温度が外気温近傍であるときに冷房用冷媒冷却器50の冷却能力に余力があると判定し、熱交換器62により燃料電池スタック20の冷却水と冷房用冷媒との間で熱交換を行うように切替バルブ64を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却装置及びそれを搭載した車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の冷却装置としては、車両に搭載された動力源である燃料電池を冷却させる冷却水と車両室内を冷房する冷房用冷媒との間で熱交換するものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1に記載された装置は、燃料電池の冷却水と冷房用冷媒との間で熱交換させるように構成し、冷却水を冷却するラジエータと冷房用冷媒を冷却させる冷房用冷媒冷却器とを共用化して省スペース化を図っている。
【特許文献1】特開2002−75389号公報(図10)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、この特許文献1に記載された冷却装置では、燃料電池の発熱量が大きくなる場合であっても、燃料電池の冷却水と冷房用冷媒との間で常時熱交換が行われ冷却水が暖められるため、燃料電池を冷却する負荷が大きいことがあった。一方、冷房用冷媒も燃料電池の冷却水と熱交換して暖められるため、冷房が十分機能しないことがあった。
【0004】
本発明は、このような課題に鑑みなされたものであり、冷房を機能させながら冷房用冷媒の冷却能力を利用して動力源の冷却の負荷を低減することができる冷却装置を提供することを目的の一つとする。また、そのような冷却装置を搭載した車両を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の冷却装置は、上述の目的の少なくとも一部を達成するために以下の手段を採った。
【0006】
本発明の冷却装置は、
動力源を冷却する冷却装置であって、
冷房用冷媒が循環する冷房用冷媒流路と、
前記冷房用冷媒流路に接続され前記冷房用冷媒を冷却する冷房用冷媒冷却器と、
前記動力源又は該動力源を冷却する動力用冷媒と前記冷房用冷媒との間で熱交換を行う熱交換手段と、
前記冷房用冷媒冷却器の冷却能力に余力があるか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段によって冷却能力に余力があると判定されたときには前記熱交換手段により前記動力源又は前記動力用冷媒と前記冷房用冷媒との間で熱交換を行うように制御し、前記判定手段によって冷却能力に余力がないと判定されたときには前記熱交換を行わないように制御する熱交換制御手段と、
を備えたものである。
【0007】
この冷却装置では、冷房用冷媒冷却器の冷却能力に余力があるときには熱交換手段により動力源又は動力用冷媒と冷房用冷媒との間で熱交換を行い、冷房用冷媒冷却器の冷却能力に余力がないときには動力源又は動力用冷媒と冷房用冷媒との間で熱交換を行わない。したがって、冷房を機能させながら冷房用冷媒の冷却能力を利用して動力源の冷却の負荷を低減することができる。
【0008】
本発明の冷却装置は、前記冷房用冷媒冷却器から前記熱交換手段まで前記冷房用冷媒が流通するように形成されているバイパス流路と、前記バイパス流路に接続され前記熱交換手段に前記冷房用冷媒が流通するか前記熱交換手段に前記冷房用冷媒が流通しないかを切り替える切替手段と、を備え、前記熱交換制御手段は、前記熱交換を行うように制御するに際して前記バイパス流路に前記冷房用冷媒が流通するように前記切替手段を制御し、前記熱交換を行わないように制御するに際して前記バイパス流路に前記冷房用冷媒が流通しないように前記切替手段を制御してもよい。こうすれば、比較的簡単な構成で動力源又は前記動力用冷媒と冷房用冷媒との間で熱交換を行うことができる。
【0009】
本発明の冷却装置において、前記バイパス流路は、前記冷房用冷媒冷却器から前記熱交換手段を介して該冷房用冷媒冷却器まで前記冷房用冷媒が流通するように形成してもよい。こうすれば、熱交換手段により暖められた冷房用冷媒を再び冷房用冷媒冷却器により冷却可能であるため、十分な冷却能力を確保できる。このとき、前記バイパス流路は、前記冷房用冷媒冷却器の冷却能力に余力が生じる所定位置から前記熱交換手段を介して該所定位置近傍まで前記冷房用冷媒が流通するように形成してもよい。
【0010】
本発明の冷却装置は、前記動力源に接続され前記動力用冷媒が流通するように形成されている動力用冷媒流路と、前記動力用冷媒流路に接続され前記動力用冷媒を通風によって放熱させるラジエータと、を備え、前記熱交換手段は、前記動力用冷媒流路のうち前記動力源の下流であって前記ラジエータの上流に配置してもよい。こうすれば、動力用冷媒が冷房用冷媒で冷却されたあとラジエータで冷却されるため、動力用冷媒がラジエータで冷却されたあと冷房用冷媒で冷却されるよりも冷房用冷媒冷却器の冷却性能を有効に利用することができる。
【0011】
本発明の冷却装置は、前記動力源に接続され前記動力用冷媒が流通するように形成されている動力用冷媒流路と、前記動力用冷媒流路に接続され前記動力用冷媒を通風によって放熱させるラジエータと、を備え、前記冷房用冷媒冷却器は、前記ラジエータを通過する通風を暖めない位置に配置され、前記ラジエータは前記冷房用冷媒冷却器を通過する通風を暖めない位置に配置してもよい。こうすれば、ラジエータ及び冷房用冷媒冷却器のどちらか一方が他方の通風を暖める構成に比べ、ラジエータを通過しようとする風が冷房用冷媒冷却器によって暖められることがなく、また、冷房用冷媒冷却器を通過しようとする風がラジエータによって暖められることもないため、ラジエータ及び冷房用冷媒冷却器の放熱効率を高めることができる。
【0012】
本発明の冷却装置は、前記冷房用冷媒冷却器に前記冷房用冷媒を圧縮して供給する圧縮器、を備え、前記判定手段は、前記圧縮器の作動状況に基づいて前記冷房用冷媒冷却器の冷却能力に余力があるか否かを判定してもよい。一般的に冷却装置では、冷房用冷媒冷却器の冷却能力が足りないときには、冷房用冷媒を圧縮器により圧縮して冷房用冷媒の冷却能力を上げることがある。このように、圧縮器の作動状況と冷房用冷媒冷却器の冷却能力との間に相関関係があるため、圧縮器の作動状況により冷房用冷媒冷却器の冷却能力に余力があるか否かを判定することができる。ここで、「圧縮器の作動状況」とは、例えば、圧縮器の消費電力、圧縮器の仕事量(回転数やピストン運動回数など)及び圧縮器によって圧縮された冷房用冷媒の圧力などであってもよい。
【0013】
本発明の冷却装置は、前記冷房用冷媒冷却器によって冷却された前記冷房用冷媒の温度を検出する温度検出手段、を備え、前記判定手段は、前記温度検出手段によって検出された前記冷房用冷媒の温度に基づいて前記冷房用冷媒冷却器の冷却能力に余力があるか否かを判定してもよい。こうすれば、冷房用冷媒冷却器によって冷却された冷房用冷媒の温度と冷房用冷媒冷却器の冷却能力との間には相関関係があるため、冷房用冷媒の温度により冷房用冷媒冷却器の冷却能力に余力があるか否かを判定することができる。ここで、「温度検出手段」は、冷房用冷媒の温度を把握できるものであればよく、例えば直接的に冷房用冷媒の温度を求めるものであってもよいし、冷房用冷媒冷却器の温度や冷房用冷媒流路の温度などから間接的に冷房用冷媒の温度を求めるものであってもよい。また、それらの温度を冷房用冷媒の温度とみなして冷房用冷媒冷却器の冷却能力に余力があるか否かを判定してもよい。このとき、前記判定手段は、前記温度検出手段により検出された前記冷房用冷媒の温度が外気温近傍であるときに前記冷房用冷媒冷却器の冷却能力に余力があると判定してもよい。冷房用冷媒が外気により十分に冷却されるとその温度は外気温近傍となる。したがって、比較的容易に冷房用冷媒冷却器の冷却能力に余力があると判定することができる。
【0014】
本発明の冷却装置は、前記冷房用冷媒冷却器を通過する通風の風速を検出する風速検出手段、を備え、前記判定手段は、前記風速検出手段により検出された前記風速が前記冷房用冷媒冷却器の冷却能力に余力が生じる所定速度以上になったときに前記冷房用冷媒冷却器の冷却能力に余力があると判定してもよい。こうすれば、冷房用冷媒は通風により冷却されることから通風の風速に関する値と冷房用冷媒冷却器の冷却能力との間に相関関係があるため、冷房用冷媒冷却器を通過する通風の風速により冷房用冷媒冷却器の冷却能力に余力があるか否かを判定することができる。ここで、「風速検出手段」は、冷房用冷媒冷却器を通過する通風の風速を把握できるものであればよく、例えば直接的に通風の風速を求めるものであってもよいし、車両に搭載されている場合には車速などから間接的に通風の風速を求めるものであってもよい。また、例えば車速などを冷房用冷媒冷却器を通過する通風の風速とみなして冷房用冷媒冷却器の冷却能力に余力があるか否かを判定してもよい。
【0015】
本発明の冷却装置において、前記冷房用冷媒は、二酸化炭素であってもよい。こうすれば、代替フロン(例えばHFC−134aなど)を用いるのに比べて温暖化への影響度が小さい。
【0016】
本発明の冷却装置において、前記動力源は、電気化学反応により発電する燃料電池であってもよい。燃料電池は、電気化学反応により発電することからその温度を一定の温度範囲に制御する必要がある。特に高出力が要求されるときには電気化学反応により発生する熱が大きくなるため、冷却の負荷が大きくなる。したがって、本発明を燃料電池の冷却に適用する意義が高い。
【0017】
本発明の車両は、上述した種々の態様のいずれかの冷却装置を搭載したものである。本発明の冷却装置は、冷房を機能させながら動力源の冷却の負荷を低減することができるから、これを搭載した車両も同様の効果を奏するものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
次に、本発明を実施するための最良の形態を実施例を用いて説明する。
【実施例】
【0019】
本発明の実施例を図面に基づいて説明する。図1は燃料電池搭載車両10のブロック図であり、図2及び図3は冷却装置12の概略を示すブロック図である。燃料電池搭載車両10は、水素ボンベ22から水素ポンプ24によって供給される水素(燃料ガス)とエアコンプレッサ26から供給される空気(酸化ガス)中の酸素との電気化学反応により発電する燃料電池21(図2参照)が複数積層された燃料電池スタック20(本発明の動力源に相当する)と、電力を蓄電又は放電可能な蓄電装置34と、電力により駆動輪18,18を駆動させる駆動用モータ35と、システム全体をコントロールするパワーコントロールユニット(PCU)30と、燃料電池スタック20及び冷房用冷媒の冷却を行う冷却装置12とを備える。
【0020】
燃料電池スタック20は、周知の固体高分子電解質型の燃料電池21の単セルを複数積層したスタック構造を有し、高電圧電源(数百V)として機能する。燃料電池スタック20の各単セルでは、水素ボンベ22から水素ガスが水素ポンプ24で圧力・流量が調節されたあとアノードに供給され、エアコンプレッサ26から圧力が調節された圧縮空気がカソードに供給され、所定の電気化学反応が進行することにより起電力が生じる。この燃料電池スタック20において、高い発電効率を発揮させるためには燃料電池スタック20を所定の運転温度範囲(例えば70〜80℃)に制御しなければならない。なお、反応しなかった余剰水素は水素ポンプ24の上流に送られ燃料ガスとして再利用される。
【0021】
蓄電装置34は、ニッケル水素蓄電池を複数個直列に接続した構造を有し高電圧電源(数百V)として機能する。この蓄電装置34は、PCU30の制御によって、車両の始動時に駆動用モータ35を駆動したり、加速時に駆動用モータ35をアシストしたり、その他の補機類などに電力を供給したりする。また、この蓄電装置34は、減速回生時に駆動用モータ35から回生電力を回収したり、負荷に応じて燃料電池スタック20によって充電されたりする。なお、この蓄電装置34は、電気二重層コンデンサ(キャパシタ)などでもよい。
【0022】
駆動用モータ35は、三相同期モータであり、車両後方に配置され、燃料電池スタック20の出力する直流電流がPCU30によって三相交流に変換されて供給されて回転駆動力を発生する。この駆動用モータ35によって発生した駆動力は、駆動軸14及びディファレンシャルギア16を介して最終的には、駆動輪18,18に出力され、燃料電池搭載車両10を走行させる。また、車両走行時の車速vは、車速センサ37によって検出される。この車速センサ37は、冷却用コントローラ60と電気的に接続されている。
【0023】
PCU30は、マイクロコンピュータを中心とした論理回路として構成されたコントローラ部31と 燃料電池スタック20や蓄電装置34の高電圧直流電流と駆動用モータ34,34の交流電流との変換を行うインバータ部32とを備えている。このPCU30のコントローラ部31は、駆動用モータ35の負荷や蓄電装置34の蓄電量に応じて、燃料電池スタック20で発生した電力を駆動用モータ35や蓄電装置34に供給したり、蓄電装置34に蓄積された電力を駆動用モータ35に供給したりする制御を行う。また、減速時や制動時等において、駆動用モータ35から得られる回生電力を蓄電装置34に供給する。このPCU30は、入出力ポート(図示せず)を備え、後述の冷却用コントローラ60からの各種制御信号などが入力ポートを介してコントローラ部31に入力され、コントローラ部31からの水素ポンプ24への駆動信号,エアコンプレッサ26への駆動信号などが出力ポートを介して出力されている。
【0024】
冷却装置12は、燃料電池スタック20を冷却する冷却水(本発明の動力用冷媒に相当する)を放熱させる燃料電池ラジエータ40と、冷房用冷媒を冷却させる冷房用冷媒冷却器50と、燃料電池システムの冷却を制御する冷却用コントローラ60とを備える。
【0025】
燃料電池ラジエータ40は、車両前方に配置され、燃料電池21を循環する冷却水を通風により放熱させるものである。燃料電池ラジエータ40には、燃料電池ラジエータ40から燃料電池21の内部を経由し燃料電池ラジエータ40へ冷却水を循環させる冷却水流路41が接続されている。この冷却水流路41には、循環ポンプ42が設けられ、この循環ポンプ42により冷却水が50〜150L/分の循環速度で循環する。また、冷却水流路41には、燃料電池スタック20の出口の下流位置に冷却水温センサ36が設けられ冷却水温Tfが検出される。この冷却水温センサ36は、冷却用コントローラ60と電気的に接続されている。また、燃料電池ラジエータ40の近傍には外気温Taを検出する外気温センサ39が設けられている。この外気温センサ39は、冷却用コントローラ60と電気的に接続されている。また、燃料電池ラジエータ40を通過する通風の下流には、第1冷却ファン46が配置されている。第1冷却ファン46は、燃料電池ラジエータ40へ外気を強制的に通風させる樹脂製のファンであり、図示しないモータによって回転駆動される。この第1冷却ファン46は、冷却用コントローラ60と電気的に接続されている。
【0026】
冷房用冷媒冷却器50は、高温高圧の気体状の冷房用冷媒を通風により冷却するものである。ここでは、冷房用冷媒として二酸化炭素を用いている。この冷房用冷媒冷却器50は、燃料電池ラジエータ40の下側に燃料電池ラジエータ40を通過する通風の流れに対して燃料電池ラジエータ40と並列に配置されている。したがって、冷房用冷媒冷却器50は、燃料電池ラジエータ40を通過する通風を暖めることがなく、燃料電池ラジエータ40は、冷房用冷媒冷却器50を通過する通風を暖めることがない。なお、冷房用冷媒は二酸化炭素であるとしたが、これ以外の代替フロン(HFC−134aやHCなど)であってもよい。この冷房用冷媒冷却器50には、冷房用冷媒が循環する冷房用冷媒流路51が接続されている。冷房用冷媒流路51には、冷房用冷媒冷却器50の下流に減圧弁52、エバポレータ53及び圧縮器54が接続されている。また、冷房用冷媒冷却器50を通過する通風の下流には、第2冷却ファン56が配置されている。この第2冷却ファン56は、冷房用冷媒冷却器50へ外気を強制的に通風させる樹脂製のファンであり、図示しないモータによって回転駆動される。この第2冷却ファン56は、冷却用コントローラ60と電気的に接続されている。この第2冷却ファン56は、車速vが低いと走行風が少なくなり強制的な通風量が必要となることから、車速vが低いほどファンの回転数が高くなるように冷却コントローラ60により制御される。また、冷房用冷媒の圧力が高いほど冷房用冷媒の必要放熱量が大きくなることから、冷房用冷媒の圧力が高いほど回転数が高くなるように冷却コントローラ60により制御される。
【0027】
減圧弁52は、冷房用冷媒冷却器50によって冷却された冷房用冷媒を減圧して低温・低圧にする弁である。
【0028】
エバポレータ53は、図示しないブロアファンによる風が通過するように構成され、減圧弁52によって低温・低圧となった冷房用冷媒によりエバポレータ53を通過する風を冷却するものである。
【0029】
圧縮器54は、エバポレータ53で暖められた冷房用冷媒をPCU30から供給される電力により圧縮して高温・高圧の気体にするスクロール式の電動インバータコンプレッサである。ここで、エバポレータ53で暖められた冷房用冷媒を圧縮して高圧の気体にすると冷房用冷媒冷却器50で冷却しやすくなり冷房能力が高まるため、この圧縮器54は、エバポレータ53を通過する風の冷却量が大きいほどスクロールの回転数が高くなるように冷却コントローラ60により制御される。このように、冷房用冷媒冷却器50と減圧弁52とエバポレータ53と圧縮器54とを冷房用冷媒が循環することによって図示しないブロアファンによる風を冷却し、この冷却された風を車両室内に供給することにより冷房を行う。
【0030】
また、冷房用冷媒冷却器50には、バイパス流路61が接続されている。このバイパス流路61は、冷房用冷媒冷却器50の中央近傍に位置するバイパス入口50a(図2参照)から熱交換器62を介してバイパス入口の近傍に位置するバイパス出口50bまで冷房用冷媒が流通するように形成されている。このバイパス入口50aの位置は、冷房の負荷状態を変化させたときの冷房用冷媒冷却器50内部の冷房用冷媒の温度を予め経験的に求め、一定の運転条件下において冷房用冷媒冷却器50内部の冷房用冷媒の温度が外気温近傍となる位置として定められている。この位置では、一定の運転条件下において冷房用冷媒がこれ以上冷却できないまで冷却されることから冷房用冷媒冷却器50の冷却能力に十分な余力が生じうる。一方、バイパス出口50bの位置は、熱交換器により暖められた冷房用冷媒が流通し冷房用冷媒冷却器50の出口までの間に十分冷却可能な位置として定められている。バイパス入口50aの近傍には冷房用冷媒温センサ38が設けられ、バイパス入口50a近傍の冷房用冷媒温Tcが検出される。この冷房用冷媒温センサ38は、冷却用コントローラ60と電気的に接続されている。冷房用冷媒冷却器50のバイパス入口50a及びバイパス出口50bの近傍のバイパス流路61には、切替バルブ64が配設されている。この切替バルブ62は、熱交換器62に冷房用冷媒が流通するか熱交換器62に冷房用冷媒が流通しないかを切り替える4方バルブであり、冷却用コントローラ60と電気的に接続されている。冷房用冷媒冷却器50は、バイパス入口50aとバイパス出口50bとの間で仕切られ、切替バルブ64を経由して冷房用冷媒が流通するようになっている(図2参照)。
【0031】
熱交換器62は、冷却水と冷房用冷媒との間で熱交換を行うものであり、冷却水流路41とバイパス流路61との間に配置されている。この熱交換器62は、燃料電池スタック20の下流であり燃料電池ラジエータ40の上流に配置されている。この熱交換器62では、冷却水と冷房用冷媒とを対向流として熱交換を行うようになっている(図3参照)。
【0032】
冷却用コントローラ60は、CPU、ROM、RAMにより構成されたコントローラであり、燃料電池スタック20の冷却の制御を行う。この冷却用コントローラ60は、入出力ポート(図示せず)を備え、冷却水温センサ36からの信号、車速センサ37からの信号、冷房用冷媒温センサ38からの信号、外気温センサ39からの信号などが入力ポートを介して入力され、切替バルブ64への駆動信号、第1冷却ファン46への駆動信号、圧縮器54への駆動信号、第2冷却ファン56への駆動信号、切替バルブ64への信号などが出力ポートを介して出力されている。また、冷却用コントローラ60は、この入出力ポートを介してPCU30に接続されており、各種制御信号やデータのやりとりを行なう。この冷却用コントローラ60が本発明の判定手段及び熱交換制御手段に相当する。
【0033】
次に、こうして構成された本実施例の燃料電池搭載車両10の動作、まず燃料電池スタック20の冷却の動作について説明する。燃料電池搭載車両10が起動すると、図4に示す燃料電池冷却ルーチンが開始される。このルーチンは、冷却用コントローラ60のROM(図示せず)に記憶され、冷却用コントローラ60のCPU(図示せず)により所定のタイミングで(例えば数msecごと)に繰り返し実行される。なお、燃料電池搭載車両10が起動したときに、切替バルブ64は、図2に示すように、熱交換器62に冷房用冷媒を流通しないように切り替えられる。まず、冷却用コントローラ60は、冷却水温Tf、車両の車速vを取得し(ステップS100)、冷却水温Tfが所定の運転温度範囲(例えば70〜80℃)以下であるか否かを判定する(ステップS110)。冷却水温Tfが所定の運転温度範囲以下でないときには、冷却用コントローラ60は、冷却水温Tf、車速vに基づいて第1冷却ファン46を回転させる電圧Vを設定し(ステップS120)、設定された電圧Vで第1冷却ファン46を回転駆動させ(ステップS130)、このルーチンを終了する。ここで、電圧Vは、冷却水温Tf及び車速vが高くなるほど電圧が高くなるように設定されROMに記憶した冷却マップを用いて設定する。つまり、燃料電池スタック20の発熱が大きくなると燃料電池ラジエータ40を通過する通風量が大きくなるように設定されている。一方、冷却水温Tfが所定の運転温度範囲以下であるときには、冷却用コントローラ60は、冷却水を冷却しないようにするため、冷却水流路41に設けられた、冷却水が燃料電池ラジエータ40を通過するのを回避可能な迂回流路(図示せず)に冷却水を循環させるようにバルブ(図示せず)を切り替え(ステップS140)、このルーチンを終了する。
【0034】
次に、冷却水と冷房用冷媒との間で熱交換を行う動作について説明する。図5は、冷却用コントローラ60のCPUにより実行される熱交換制御ルーチンのフローチャートである。このルーチンは、冷却用コントローラ60のROM(図示せず)に記憶され、冷房スイッチ(図示せず)がオンされると冷却用コントローラ60により所定のタイミングで(例えば数msecごと)に繰り返し実行される。
【0035】
このルーチンが開始されると、冷却用コントローラ60は、まず、冷却水の水温Tf、冷房用冷媒の温度Tc及び外気温Taを冷却水温センサ36、冷房用冷媒温センサ38及び外気温センサ39からそれぞれ取得する(ステップS300)。次に、冷却用コントローラ60は、冷却水温Tfが所定の運転温度範囲(例えば70〜80℃)以上であるか否かを判定する(ステップS310)。上述のように、冷却装置12は、燃料電池スタック20の温度が所定の運転温度範囲になるように冷却制御しているが、高速走行が継続する場合など、燃料電池スタック20の発熱量が燃料電池ラジエータ40の放熱量を超えた状態が続くと、冷却水温Tfが所定の運転温度範囲を超えることがある。そして、冷却水温Tfが所定の運転温度範囲以上であるときには、冷却用コントローラ60は、冷房用冷媒温Tcが外気温Ta近傍(例えば外気温+5℃以下など)であるか否かを判定する(ステップS320)。冷房用冷媒温Tcが外気温近傍であるときには、冷却用コントローラ60は、冷房用冷媒冷却器50の冷却能力に余力があるものとみなし、熱交換器62に冷房用冷媒が流通するように切替バルブ64を切り替え(ステップS330)、このルーチンを終了する。切替バルブ64が切り替えられる前は、図2に示すようにバイパス入口52aまで冷却された冷房用冷媒が切替バルブ64を介してすぐにバイパス出口52bを経て冷房用冷媒冷却器50に戻って再び冷却されるが、切替バルブ64が切り替えられると、図3に示すように、バイパス入口52aまで冷却された冷房用冷媒が切替バルブ64を介して熱交換器62を流通するようになる。そして、外気温近傍(例えば35℃)まで冷却されている冷房用冷媒と所定の運転温度範囲を超えている冷却水(例えば85℃)との間で熱交換が行われる。冷房用冷媒により冷却された冷却水は燃料電池ラジエータ40で更に適温まで冷却され、燃料電池スタック20を流通してこれを冷却する。一方、冷却水により暖められた冷房用冷媒は、バイパス出口50bから冷房用冷媒冷却器50に戻って再び冷却され、減圧弁52を介してエバポレータ53で図示しないブロアファンによる風を冷却して冷房を機能させる。
【0036】
一方、ステップS310で冷却水温Tfが所定の運転温度範囲未満であるときには、冷房用冷媒冷却器50の冷却能力を利用しなくてもよいため、又はステップS320で冷房用冷媒温Tcが外気温近傍でないときには、冷房用冷媒冷却器50の冷却能力に余力がないため、冷却用コントローラ60は、熱交換器62に冷房用冷媒が流通しないように切替バルブ64を切り替え(ステップS340)、このルーチンを終了する。なお、熱交換器62において熱交換されて冷房用冷媒の温度が上がりすぎた場合であっても、冷房用冷媒が循環し冷房用冷媒温センサ38により検出される温度も上がり、結果として冷房用冷媒冷却器50の冷却能力に余力がないと判定されて熱交換を行わないようになるため、冷房を機能させることができる。
【0037】
以上詳述した本実施例の冷却装置12を搭載した燃料電池搭載車両10によれば、冷房用冷媒冷却器50の冷却能力に余力があるときには熱交換器62により燃料電池21を冷却する冷却水と冷房用冷媒との間で熱交換を行い、冷房用冷媒冷却器50の冷却能力に余力がないときには燃料電池21を冷却する冷却水と冷房用冷媒との間で熱交換を行わない。したがって、冷房を機能させながら冷房用冷媒の冷却能力を利用して燃料電池スタック20の冷却の負荷を低減することができる。
【0038】
また、冷却用コントローラ60は、熱交換を行うように制御するに際してバイパス流路61に冷房用冷媒が流通するように切替バルブ64を制御し、熱交換を行わないように制御するに際してバイパス流路61に冷房用冷媒が流通しないように切替バルブ64を制御するため、比較的簡単な構成で冷却水と冷房用冷媒との間で熱交換を行うことができる。
【0039】
更に、バイパス流路61は、冷房用冷媒冷却器50の冷却能力に余力が生じるバイパス入口50aから熱交換器62を介してバイパス出口50bまで冷房用冷媒が流通するように形成されているため、熱交換器62で熱を与えられた冷房用冷媒を冷却能力に余力が生じているバイパス出口50bに送り再び冷房用冷媒冷却器50により冷却可能であり、十分な冷却能力を確保できる。
【0040】
更にまた、熱交換器62は、冷却水流路41のうち燃料電池スタック20の下流であって燃料電池ラジエータ40の上流に配置されているため、冷却水が冷房用冷媒で冷却されたあと燃料電池ラジエータ40で冷却されることから、冷却水が燃料電池ラジエータ40で冷却されたあと冷房用冷媒で冷却されるよりも冷房用冷媒冷却器50の冷却性能を有効に利用することができる。また、燃料電池ラジエータ40では、所定の運転温度範囲になるような冷却水の温度制御を第1冷却ファン46などにより行っているため、燃料電池ラジエータ40で冷却したあとに冷房用冷媒により冷却するのに比べ、この構成の方が温度制御性がよい。
【0041】
そして、冷房用冷媒冷却器50は、燃料電池ラジエータ40を通過する通風を暖めない位置に配置され、燃料電池ラジエータ40は冷房用冷媒冷却器50を通過する通風を暖めない位置に配置しているため、燃料電池ラジエータ40及び冷房用冷媒冷却器50のどちらか一方が他方の通風を暖める構成に比べ、燃料電池ラジエータ40を通過しようとする風が冷房用冷媒冷却器50によって暖められることがなく、また、冷房用冷媒冷却器50を通過しようとする風が燃料電池ラジエータ40によって暖められることもないことから、燃料電池ラジエータ40及び冷房用冷媒冷却器50の放熱効率を高めることができる。また、燃料電池ラジエータ40及び冷房用冷媒冷却器50の放熱効率が高まるため、燃料電池ラジエータ40や冷房用冷媒冷却器50のコンパクト化を図ることができる。
【0042】
そしてまた、冷房用冷媒冷却器50によって冷却された冷房用冷媒の温度と冷房用冷媒冷却器50の冷却能力との間には相関関係があるため、冷却用コントローラ60は、冷房用冷媒温Tcに基づいて冷房用冷媒冷却器50の冷却能力に余力があるか否かを判定することができる。また、冷房用冷媒が外気により十分に冷却されるとその温度は外気温近傍となるため、冷却用コントローラ60は、冷房用冷媒温Tcが外気温近傍であるか否かにより比較的容易に冷房用冷媒冷却器50の冷却能力に余力があると判定することができる。
【0043】
そして更に、冷房用冷媒は、二酸化炭素であるため、代替フロン(例えばHFC−134aなど)を用いるのに比べて温暖化への影響度が小さい。
【0044】
そして更にまた、発明の燃料電池搭載車両10の動力源は、電気化学反応により発電する燃料電池21が複数積層された燃料電池スタック21である。燃料電池21は、電気化学反応により発電することからその温度を一定の温度範囲に制御する必要がある。特に高出力が要求されるときには電気化学反応により発生する熱が多くなるため、冷却の負荷が大きくなる。したがって、本発明を燃料電池スタック21の冷却に適用する意義が高い。
【0045】
また、熱交換器62では、冷却水と冷房用冷媒とが対向流で熱交換を行うため、冷却水と冷房用冷媒とが同じ方向に流通する平行流により熱交換を行う場合と比べ、熱交換の効率がよい。
【0046】
燃料電池搭載車両10に搭載された燃料電池21は、大きな車両駆動力が要求される高速走行時では、燃料電池21の負荷が大きく燃料電池21の発熱量が大きくなり、燃料電池ラジエータ40の放熱量が大きくなる。一方、冷房用冷媒冷却器50は、高速走行時であれ低速走行時であれ冷房用冷媒を冷却させる必要性に大差はない。また、高速走行時では冷房用冷媒冷却器50を通過する通風量が増えるため、冷房用冷媒冷却器50の冷却性能に余力が生じやすい。このように、燃料電池搭載車両10では、燃料電池21の発熱量が大きくなるときには冷房用冷媒冷却器50の冷却性能に余力が生じやすいため、冷房を機能させながら燃料電池スタック20の冷却の負荷を低減しやすい。
【0047】
なお、本発明は上述した実施例に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0048】
例えば、上述した実施例では、冷却用コントローラ60によって冷房用冷媒センサ38により検出された冷房用冷媒温Tcに基づいて冷房用冷媒冷却器50の冷却能力に余力があるか否かを判定するとしたが、圧縮器54の回転数に基づいて前記冷房用冷媒冷却器の冷却能力に余力があるか否かを判定してもよい。一般的に冷房用冷媒冷却器50の冷却能力が足りないときには、冷房用冷媒を圧縮器54により圧縮して冷却能力を上げることがあることから、圧縮器54の回転数と冷房用冷媒冷却器50の冷却能力との間に相関関係があるため、圧縮器54の回転数により冷房用冷媒冷却器50の冷却能力に余力があるか否かを判定することができる。なお、圧縮器54の回転数の代わりに、例えば、圧縮器54の消費電力や圧縮器54によって圧縮された冷房用冷媒の圧力や、ピストン式の圧縮器を用いた場合はピストン運動回数などとしてもよい。
【0049】
あるいは、冷房用冷媒冷却器を通過する風の速度を検出する風速センサを備え、この風速センサにより検出された風速が冷房用冷媒冷却器50の冷却能力に余力が生じる所定の速度以上になったときに冷房用冷媒冷却器50の冷却能力に余力があると判定してもよい。こうすれば、冷房用冷媒は通風により冷却されることから風速に関する値と冷房用冷媒冷却器の冷却能力との間に相関関係があるため、冷房用冷媒冷却器を通過する風の速度により冷房用冷媒冷却器50の冷却能力に余力があるか否かを判定することができる。ここで、所定の速度は、冷房用冷媒冷却器50を通過する風の速度や冷房の負荷状態を変化させたときの冷房用冷媒冷却器50のバイパス入口50aにおける冷房用冷媒の温度を予め経験的に求め、バイパス入口50aにおける冷房用冷媒の温度が外気温近傍になる風速として定めてもよい。なお、風速センサの代わりに車速センサなどにより間接的に通風の風速を求めてもよいし、車速を風速とみなしてもよい。
【0050】
また、上述した実施例では、切替バルブ64を冷房用冷媒冷却器50に接続したバイパス流路61に設けて冷房用冷媒を熱交換器62に流通させるかさせないかを切り替え、冷却水を熱交換器62に常に流通するようにしたが、図6に示す冷却装置112のように、冷却水流路41に接続されたバイパス流路161に切替バルブ64を設けて冷却水を熱交換器62に流通させるかさせないかを切り替え、冷房用冷媒を熱交換器62に常に流通するようにしてもよい。こうしても、冷房を機能させながら燃料電池スタック20の冷却の負荷を低減することができる。
【0051】
更に、上述した実施例では、冷却水流路41を流通する冷却水とバイパス流路61を流通する冷房用冷媒とが熱交換器62で熱交換を行うとしたが、燃料電池21の内部の冷却水流路41に併設するようにバイパス流路61を形成し、直接、燃料電池スタック20と冷房用冷媒との間で熱交換を行ってもよい。あるいは、燃料電池スタック20の外周を覆うウォータジャケット部を形成し、このウォータジャケット部にバイパス流路61を接続し冷房用冷媒を流通させて、直接、燃料電池スタック20と冷房用冷媒との間で熱交換を行ってもよい。こうしても、本発明と同様の効果が得られる。
【0052】
更にまた、上述した実施例では、燃料電池ラジエータ40の下側に燃料電池ラジエータ40を通過する通風の流れに対して燃料電池ラジエータ40と並列に冷房用冷媒冷却器50を配置するとしたが、燃料電池ラジエータ40の前側に燃料電池ラジエータ40を通過する通風の流れに対して燃料電池ラジエータ40と直列に冷房用冷媒冷却器50を配置してもよい。こうすれば、冷房用冷媒冷却器50と燃料電池ラジエータ40とを並列に配置したものに比べコンパクト化を図り、冷房を機能させながら冷房用冷媒の冷却能力を利用して燃料電池スタック20の冷却の負荷を低減することができる。
【0053】
そして、上述した実施例では、冷房用冷媒温センサにより直接冷房用冷媒の温度を検出したが、冷房用冷媒冷却器50の温度や冷房用冷媒流路51の温度などから間接的に冷房用冷媒の温度を求めてもよい。また、これらの温度を冷房用冷媒の温度とみなして冷房用冷媒冷却器50の冷却能力に余力があるか否かを判定してもよい。
【0054】
そしてまた、上述した実施例では、熱交換器62に冷房用冷媒が流通するかしないかを切替バルブ64により切り替えるとしたが、図7に示す冷却装置212のように、バイパス流路61の迂回流路61a及び熱交換流路61bにそれぞれ流量制御バルブ264a,264bを設け、冷房用冷媒が逆流しないように逆止弁264cを設け、冷房用冷媒冷却器50の出口近傍に出口温センサ238を配設し、この出口温センサ238により検出された冷房用冷媒冷却器50の出口近傍の冷房用冷媒の温度が高いほど熱交換器62に流通する冷房用冷媒の流量が小さくなるように流量制御バルブ264a,264bにより制御してもよい。こうすれば、より精度よく冷房を機能させながら燃料電池スタック20の冷却の負荷を低減することができる。また、冷却水温Tfや冷房用冷媒温Tcなどに基づいて熱交換器62に流通する冷房用冷媒の流量を制御してもよい。
【0055】
そして更に、上述した実施例では、冷却水温Tfが所定の運転温度範囲(例えば70〜80℃)以上であるか否かに基づいて冷房用冷媒冷却器50の冷却能力を利用するかしないかを判定したが、所定の温度(例えば75℃など)以上であるか否かに基づいて判定してもよい。こうしても、冷房を機能させながら冷房用冷媒の冷却能力を利用して燃料電池スタック20の冷却の負荷を低減することができる。
【0056】
そして更にまた、上述した実施例では、車両の動力源を燃料電池スタック20としたが、冷却を必要とする動力源であればよく、例えば駆動用モータ35としてもよいし、エンジンやバッテリなどであってもよい。
【0057】
そして更にまた、上述した実施例では冷却装置12を燃料電池搭載車両10(自動車)に適用したが、燃料電池ラジエータ40及び冷房用冷媒冷却器50を備えるものであれば特に限定されず、列車、船舶及び航空機などに適用してもよいし、住宅の発電システムなどに適用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本実施例の燃料電池搭載車両10の構成の概略を示す構成図である。
【図2】本実施例の冷却装置12の説明図である。
【図3】本実施例の冷却装置12の説明図である。
【図4】本実施例の燃料電池冷却制御ルーチンである。
【図5】本実施例の熱交換制御ルーチンである。
【図6】冷却装置112の構成の概略を示す構成図である。
【図7】冷却装置212の構成の概略を示す構成図である。
【符号の説明】
【0059】
10 燃料電池搭載車両、12 冷却装置、14 駆動軸、16 ディファレンシャルギア、17 従動輪、18 駆動輪、20 燃料電池スタック、21 燃料電池、22 水素ボンベ、24 水素ポンプ、26 エアコンプレッサ、30 PCU、31コントローラ部、32インバータ部、34 蓄電装置、35 駆動用モータ、36 冷却水温センサ、37 車速センサ、38 冷房用冷媒温センサ、39 外気温センサ、40 燃料電池ラジエータ、41 冷却水流路、42 循環ポンプ、46 第1冷却ファン、50 冷房用冷媒冷却器、50a バイパス入口、50b バイパス出口、51 冷房用冷媒流路、52 減圧弁、53 エバポレータ、54 圧縮器、56 第2冷却ファン、60 冷却用コントローラ、61 バイパス流路、61a 迂回流路、61b 熱交換流路、62 熱交換器、64 切替バルブ、112 冷却装置、161 バイパス流路、212 冷却装置、238 出口温センサ、264a,264b 流量制御バルブ、264c 逆止弁。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
動力源を冷却する冷却装置であって、
冷房用冷媒が循環する冷房用冷媒流路と、
前記冷房用冷媒流路に接続され前記冷房用冷媒を冷却する冷房用冷媒冷却器と、
前記動力源又は該動力源を冷却する動力用冷媒と前記冷房用冷媒との間で熱交換を行う熱交換手段と、
前記冷房用冷媒冷却器の冷却能力に余力があるか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段によって冷却能力に余力があると判定されたときには前記熱交換手段により前記動力源又は前記動力用冷媒と前記冷房用冷媒との間で熱交換を行うように制御し、前記判定手段によって冷却能力に余力がないと判定されたときには前記熱交換を行わないように制御する熱交換制御手段と、
を備えた冷却装置。
【請求項2】
請求項1に記載の冷却装置であって、
前記冷房用冷媒冷却器から前記熱交換手段まで前記冷房用冷媒が流通するように形成されているバイパス流路と、
前記バイパス流路に接続され前記熱交換手段に前記冷房用冷媒が流通するか前記熱交換手段に前記冷房用冷媒が流通しないかを切り替える切替手段と、
を備え、
前記熱交換制御手段は、前記熱交換を行うように制御するに際して前記バイパス流路に前記冷房用冷媒が流通するように前記切替手段を制御し、前記熱交換を行わないように制御するに際して前記バイパス流路に前記冷房用冷媒が流通しないように前記切替手段を制御する、
冷却装置。
【請求項3】
前記バイパス流路は、前記冷房用冷媒冷却器から前記熱交換手段を介して該冷房用冷媒冷却器まで前記冷房用冷媒が流通するように形成されている、
請求項2に記載の冷却装置。
【請求項4】
前記バイパス流路は、前記冷房用冷媒冷却器の冷却能力に余力が生じる所定位置から前記熱交換手段を介して該所定位置近傍まで前記冷房用冷媒が流通するように形成されている、
請求項3に記載の冷却装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の冷却装置であって、
前記動力源に接続され前記動力用冷媒が流通するように形成されている動力用冷媒流路と、
前記動力用冷媒流路に接続され前記動力用冷媒を通風によって放熱させるラジエータと、
を備え、
前記熱交換手段は、前記動力用冷媒流路のうち前記動力源の下流であって前記ラジエータの上流に配置されている、
冷却装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の冷却装置であって、
前記動力源に接続され前記動力用冷媒が流通するように形成されている動力用冷媒流路と、
前記動力用冷媒流路に接続され前記動力用冷媒を通風によって放熱させるラジエータと、
を備え、
前記冷房用冷媒冷却器は、前記ラジエータを通過する通風を暖めない位置に配置され、前記ラジエータは前記冷房用冷媒冷却器を通過する通風を暖めない位置に配置されている、
冷却装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の冷却装置であって、
前記冷房用冷媒冷却器に前記冷房用冷媒を圧縮して供給する圧縮器、を備え、
前記判定手段は、前記圧縮器の作動状況に基づいて前記冷房用冷媒冷却器の冷却能力に余力があるか否かを判定する、
冷却装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の冷却装置であって、
前記冷房用冷媒冷却器によって冷却された前記冷房用冷媒の温度を検出する温度検出手段、を備え、
前記判定手段は、前記温度検出手段によって検出された前記冷房用冷媒の温度に基づいて前記冷房用冷媒冷却器の冷却能力に余力があるか否かを判定する、
冷却装置。
【請求項9】
前記判定手段は、前記温度検出手段により検出された前記冷房用冷媒の温度が外気温近傍であるときに前記冷房用冷媒冷却器の冷却能力に余力があると判定する、
請求項8に記載の冷却装置。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載の冷却装置であって、
前記冷房用冷媒冷却器を通過する通風の風速を検出する風速検出手段、を備え、
前記判定手段は、前記風速検出手段により検出された前記風速が前記冷房用冷媒冷却器の冷却能力に余力が生じる所定速度以上になったときに前記冷房用冷媒冷却器の冷却能力に余力があると判定する、
冷却装置。
【請求項11】
前記冷房用冷媒は、二酸化炭素である、請求項1〜10のいずれかに記載の冷却装置。
【請求項12】
前記動力源は、電気化学反応により発電する燃料電池である、請求項1〜11のいずれかに記載の冷却装置。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれかに記載の冷却装置を搭載した車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−2588(P2006−2588A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−177066(P2004−177066)
【出願日】平成16年6月15日(2004.6.15)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】