説明

出力制御用半導体装置

【課題】 チップサイズを縮小することができ、低コスト化が可能となるスイッチングトランジスタ、及びそれを用いた出力制御装置を提供する。
【解決手段】 第一導電型の半導体基板1の主面上に、第二導電型の高濃度埋め込み層2を有し、エピタキシャル層3の表面に形成される第二導電型のドレイン領域9と第二導電型の高濃度埋め込み層2が第二導電型の柱状の高濃度拡散領域11を介して電気的に接続していることにより、ドレイン端子10が基板表面上にある縦型トランジスタを用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オン・オフの時間比率が制御されることによって出力電圧又は出力電流を制御するスイッチングトランジスタと、スイッチングトランジスタによって制御された出力電圧又は出力電流に基づいて、スイッチングトランジスタのオン・オフの時間比率を制御する制御ICとを備えた出力制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
商用AC電源を電気・電子機器用DC電源に変換するスイッチング電源システムにおいて、1次側回路に接続されるスイッチ素子とそのスイッチ素子を制御する制御ICとを備えたスイッチング電源システムが知られている。非特許文献1の1577頁の図1には、縦型パワーMOSFETと制御回路との組み合わせによって、このようなスイッチング電源システムを構成した例が開示されている。
【0003】
また、非特許文献2には、従来のスイッチング電源システムにおいて、制御ICとスイッチングトランジスタとを、それぞれ別にパッケージングした構成が開示されている。
【0004】
特許文献1の図5には、制御ICチップとスイッチングトランジスタとを2チップ1パッケージに収めた構成を開示しているが、一般にスイッチングトランジスタは縦形トランジスタであるため、ダイボンドエリアがドレイン(コレクタ)となり、回路的に制御ICのチップ裏面の電位(一般にGND)と縦形トランジスタのドレイン(コレクタ)との間に大きな電位差が発生する。このため制御ICチップの裏面とスイッチングトランジスタのダイボンドエリアとは絶縁しなければならず、制御ICチップの裏面に絶縁シートを敷いてダイボンドしている。
【0005】
また、特許文献1の図1及び図2には、制御ICチップの裏面とスイッチングトランジスタのダイボンドエリアとを絶縁するため、リードフレームのアイランドを分割し、一方のアイランドに制御ICチップをダイボンドし、他方のアイランドにスイッチングトランジスタをダイボンドする構成が知られている。
【0006】
特許文献2の図1及び図2には、縦型パワーMOSFETをディスクリートで作製している構成が開示されている。
【0007】
従来型の縦型パワーMOSFETの構造を図7に示す。ソース電極6及びゲート電極7は基板の表側に、ドレイン電極10は基板の裏面にある。特許文献3には、柱状のp型の領域13とn型のエピタキシャル領域3(ドリフト領域でもある)を交互に繰り返し配列させ、p型層とn型層の界面に空乏層を導入することにより、ソースとドレイン間の電界を緩和させ、耐圧を向上させるスーパージャンクション構造が開示されている。
【0008】
【特許文献1】実開昭63−197358号公報
【特許文献2】米国特許4376286号明細書
【特許文献3】特許第3988262号明細書
【非特許文献1】Matsushita et al.、「IEEE TRANSACTIONS ON ELECTRON DEVICES」、(米国)、1991年7月、第38巻、第7号、p.1576−1581
【非特許文献2】「トランジスタ技術スペシャルNo.28 最新・電源回路設計技術のすべて : 3端子レギュレータから共振型スイッチング電源まで」、CQ出版社、1991年7月、p.106
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
非特許文献2に開示された構成では、制御IC、スイッチングトランジスタをそれぞれにモールド・アセンブリするため、高コストとなり、また小型化もできないという問題が生じる。
【0010】
また、制御ICとスイッチングトランジスタとの間の配線が長く、この配線のインダクタ成分の働きにより、制御ICが生成するスイッチングトランジスタ駆動信号波形になまりを生じ、その結果スイッチングトランジスタが設計通りに動作せず、電源回路全体の変換効率が低下するという問題が生じる。
【0011】
更に、制御ICとスイッチングトランジスタとの間の配線が長いと、他の回路からのノイズの影響を受けやすく、制御ICが生成するスイッチングトランジスタ駆動信号波形に乱れを生じさせ、その結果、スイッチングトランジスタが設計通りに動作せず、電源回路全体の変換効率が低下するという問題が生じる。更に、この配線とGND間寄生容量の働きにより、制御ICがスイッチングトランジスタ駆動信号を生成する際、配線とGND間容量の充放電のための電流も同時に供給しなければならず、制御ICから見た駆動能力が余分に必要となり、その分制御ICの消費電力が増加し、チップサイズも大きくなるという問題が生じる。
【0012】
特許文献1の図5に開示された構成では、絶縁シートが高価であり、また、制御ICチップが絶縁シートを介して100V以上の電圧振幅を持つリードフレームと容量結合するため、制御ICの回路が誤動作を起こす可能性があるという問題が生じる。
【0013】
特許文献1の図1及び図2に開示された構成では、制御ICチップをダイボンドしたアイランドが回路的にGNDであるのに対し、スイッチングトランジスタチップをダイボンドしたアイランドは100V以上の電圧振幅を持つため、このアイランド間の容量結合により、制御ICの回路が誤動作を起こす可能性があるという問題が生じる。誤動作を防ぐためにはアイランド間の容量を減らす必要があり、そのためにある一定以上のアイランド間の間隔が必要である。
【0014】
一方、スイッチングトランジスタは消費電力が大きく、発熱が大きい。一方制御ICは安定動作のために温度上昇を避けた方がよい。この従来技術は、スイッチングトランジスタで発生した熱を制御ICに伝えにくくする効果があるが、特許文献1にはその効果を出すために必要なアイランド間隔についての記載及び示唆はなされていない。
【0015】
また、大容量電源でスイッチングトランジスタの放熱対策が必要な場合、スイッチングトランジスタが搭載されているアイランドのみをパッケージ裏面から露出させて外部放熱板に接続する必要があり、フレーム構造が極めて複雑となり、コストも高くなる。
【0016】
本発明の目的は、チップサイズを縮小することができ、低コスト化が可能となる出力制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するための本発明に係る半導体装置は、第一導電型の半導体基板主面側に形成される高濃度の第二導電型の埋め込み層と、前記半導体基板の主面上及び前記埋め込み層の上に形成される第二導電型のエピタキシャル層と、前記エピタキシャル層の表面部(表面及びその下側部分)に形成される第一導電型のベース領域と、前記ベース領域内の表面部(表面及びその下側部分)に形成される第二導電型のソース領域と、前記埋め込み層の外周部の上方の、前記エピタキシャル層の表面部に形成される高濃度の第二導電型のドレイン領域と、前記エピタキシャル層の上層において、前記ソース領域と前記エピタキシャル層に挟まれた前記ベース領域の上方を含む領域にゲート絶縁膜を介して形成されるゲート電極と、を備える半導体装置であって、前記エピタキシャル層内に形成された前記ドレイン領域の下層に、第二導電型の高濃度不純物拡散層が前記埋め込み層に達する深さまで形成され、前記ドレイン領域と前記埋め込み層が電気的に接続していることを第1の特徴とする。
【0018】
本発明に係る半導体装置の上記第1の特徴構成によれば、第一導電型の半導体基板主面上に形成された第二導電体型の高濃度埋め込み層と第二導電型のドレイン領域は第二導電型の高濃度不純物拡散層を介して電気的に接続されている。これにより、ドレインを三次元的に構成し、本来裏面に構成されていたドレイン端子を半導体基板の主面上に構成することができるので、縦型のトランジスタを見かけ上横型トランジスタとして実装することができる。即ち、ドレイン端子と半導体基板裏面を電気的に分離できるため、当該トランジスタを他のICと同一パッケージのアイランド上に実装できる。
【0019】
また、本発明に係る半導体装置は、上記第1の特徴に加えて、前記エピタキシャル層内に形成される前記ベース領域の下層に、第一導電型の不純物拡散層が、前記ベース領域の下面から前記埋め込み層に達する深さまで形成されていることを第2の特徴とする。
【0020】
本発明に係る半導体装置の上記第2の特徴構成によれば、第二導電型の高濃度埋め込み層の上層において、第二導電型のエピタキシャル層内に、柱状の第一導電型の不純物拡散層がベース領域下層に形成される。結果、第一導電型の不純物拡散層と第二導電型のエピタキシャル層の界面に空乏層が形成されるので、高電圧印加時に加わる電界が当該界面にも分散され、トランジスタの耐圧を向上させることができる。更に、当該不純物拡散層を基板に平行な方向に繰り返し配列させると、エピタキシャル層と不純物拡散層が基板と平行な方向に交互に繰り返し配列して、所謂スーパージャンクション構造をとることになる。これにより、不純物拡散層とエピタキシャル層の界面に空乏層が形成され、基板に平行な方向の電界緩和ができ、高電圧印加時に加わる電界が特定の部分に集中せず、エピタキシャル層と不純物拡散層の界面にわたって広範囲に分散させることができるので、チップ面積を大きくすることなく、トランジスタの耐圧を向上させることができる。
【0021】
これにより、トランジスタの耐圧が向上する結果、同一サイズ、同一条件の場合において基板濃度を高くできるので、オン抵抗の低い、小面積のスイッチングトランジスタを実装することができる。
【0022】
更に、本発明に係る出力制御装置は、スイッチング電源の一次コイルに接続し、前記一次コイルを流れる電流を制御する上記第2の特徴構成の半導体装置から構成されるスイッチングトランジスタと、前記一次コイルを断続的に流れる電流によって誘導される電流又は電圧に基づいて、前記スイッチングトランジスタのオン・オフの時間比率を制御する制御ICを備えてなる、スイッチング電源用の出力制御装置であって、前記制御ICと前記スイッチングトランジスタは、同一のアイランド上に搭載されていることを第3の特徴とする。
【0023】
本発明に係る出力制御装置の上記第3の特徴構成によれば、上記第2の特徴構成の半導体装置から構成されるスイッチングトランジスタは、ドレイン端子がチップ表面にあるので、同一フレーム上に、かつ別々のアイランドに分割することなく、スイッチングトランジスタと制御ICをダイボンドすることができる。勿論、制御ICチップの裏面とスイッチングトランジスタのダイボンドエリアを絶縁する必要もない。
【0024】
更に、上記のドレイン端子をチップ表面に出したスイッチングトランジスタはスーパージャンクション構造のMOSFETにより構成されるため、オン抵抗が低い。従って、制御ICに設けられた出力トランジスタの小型化が可能になり、チップサイズを縮小することができ、低コスト化が可能になる。
【0025】
また、本発明に係る出力制御装置は、上記第3の特徴に加えて、前記出力制御装置本体のグランド端子と前記アイランドが電気的に接続し、前記制御ICのグランド電位が供給され、前記グランド電位は前記スイッチングトランジスタのソース端子及びドレイン端子と電気的に分離していることを第4の特徴とする。
【0026】
本発明に係る出力制御装置の上記第4の特徴構成によれば、制御ICとスイッチングトランジスタを搭載したアイランドから制御ICのグランド電位が供給され、制御ICのグランド電位は前記スイッチングトランジスタのソース端子及びドレイン端子と電気的に分離されている。このため、スイッチングトランジスタのソース電流を制御ICチップのグランド電流から分離することができるので、スイッチングトランジスタから制御ICチップへのグランドを経由したノイズの回り込みを軽減することができる。
【0027】
また、本発明に係る出力制御装置は、上記第3又は第4の特徴に加えて、スイッチングトランジスタと制御ICのチップ間の距離dcが、e0を真空の誘電率、emを制御ICチップのモールド樹脂の比誘電率、Scをスイッチングトランジスタチップと制御ICチップとが向かい合う面積、Vをスイッチングトランジスタチップでの電圧振幅、Rcを制御ICチップの制御回路インピーダンス、BWを制御ICチップの制御回路の帯域幅、Vncを制御ICチップの制御回路内で許されるノイズの電圧振幅とすると、下記の数1で表される関係を満足することを第5の特徴とする。
【0028】
制御ICチップの制御回路内で許されるノイズの電圧振幅Vncは、スイッチングトランジスタチップと制御ICチップ間の寄生容量をCとすると、下記の数2を満足する必要がある。数2の右辺は、スイッチングトランジスタチップでの電圧振幅Vにより、チップ間の寄生容量Cを介して制御ICチップに誘導される電圧を表している。
【0029】
[数1]
dc≧e0・em・Sc・(V/Vnc)・BW・Rc
[数2]
Vnc≧(C・BW・Rc)・V
【0030】
ここで、チップ間の寄生容量Cは、C=e0・em・Sc/dcで表されるから、上式を数2に代入して整理すると数1が得られる。
【0031】
数1を満足するほどにスイッチングトランジスタと制御ICのチップ間の距離を離すことにより、スイッチングトランジスタチップからのスイッチングノイズの制御ICチップへの伝達を低減することができる。
【発明の効果】
【0032】
以上詳細に説明したように、本発明に係る半導体装置はドレイン端子が基板表面にあるので、スイッチングトランジスタとして用いる場合、制御ICチップとスイッチングトランジスタチップとを同一のアイランドに搭載することができる。更に、スーパージャンクション構造を用いた為、オン抵抗を低くできるので、チップサイズの小型化が可能になる。更に、裏面がグランドである制御ICチップとスイッチングトランジスタチップとを、同電位で、同一アイランド上に搭載することができるので、絶縁シートやアイランドの特別な加工を必要とせず、低コスト化が可能になる。更に、制御ICチップとスイッチングトランジスタチップを搭載したアイランドを共通のグランド端子に繋ぐことにより、スイッチングトランジスタの基板電位の固定及び、制御ICへのノイズ回り込みの低減効果を期待することができる。
【0033】
本発明に係る出力制御装置は、以上のように、スイッチングトランジスタと制御ICを別チップで構成し、出来るだけ微細化したプロセスで製造することが望ましい制御ICチップと、デザインルールが大きいスイッチングトランジスタチップとを、夫々最適なプロセスを用いて作製できるので、1チップ構成と比較して、プロセスコストを低減できるという効果を奏する。また、スイッチングトランジスタと制御ICを1パッケージで構成しているので、2パッケージ構成と比較して、小型化、低コスト化することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下において、本発明に係る半導体装置及び出力制御装置の実施形態につき、図面を参照して説明する。
【0035】
<第一実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係る半導体装置の構成を模式的に示す断面図である。尚、以下の各断面構造図は、模式的に図示されたものであり、図面上の寸法比と実際の寸法比は必ずしも一致するものではない。高抵抗のp型の半導体基板1の主面側に、高濃度低抵抗のn型の埋め込み層2が形成され、その上層にn型のエピタキシャル層3が形成されている。エピタキシャル層3の表面部にp型のベース領域4が、選択的(基板と平行な方向に周期的、かつ、平面ストライプ形状)に、イオン注入により導入されたp型不純物の熱拡散により形成され、更にベース領域4の内部にn型のソース領域5が、選択的(基板と平行な方向に周期的、かつ、平面ストライプ形状)に、イオン注入により導入されたn型不純物の熱拡散により形成されている。ソース領域5はソース電極6と電気的に接続している。ソース領域5とエピタキシャル層3に挟まれたベース領域4の上方に、ゲート電極7が、ゲート絶縁膜8を介して平面ストライプ形状に形成されている。埋め込み層2の外周部の上方、エピタキシャル層3の表面部に、n型の高濃度低抵抗のドレイン領域9がイオン注入により導入されたn型不純物の熱拡散により形成され、ドレイン領域9は、半導体基板1の主面側に形成されたドレイン電極10と電気的に接続している。ドレイン領域9の下層に、n型の柱状の高濃度拡散領域11が形成され、ドレイン領域9と埋め込み層2間を電気的に接続している。尚、本実施形態ではソース電極6とチャネル領域が同電位になるように、ベース領域4の中央部にp型の高濃度拡散領域15がイオン注入により形成され、ソース電極6と電気的に接続している。
【0036】
この構造により、従来、基板の裏面に形成されていたドレイン端子及びドレイン領域を基板の表側に形成することができる為、上記の半導体装置を出力制御用のスイッチングトランジスタとして用いる場合、図2に示されるように、同一フレーム30上に、かつ別々のアイランドに分割することなく、スイッチングトランジスタ23と制御回路28をダイボンドすることができる。
【0037】
更に、p型のベース領域4の下層には、p型の柱状の不純物拡散領域13が、ベース領域4の下面から埋め込み層2の深さまで形成されている。この結果、当該p型で柱状の不純物拡散領域13とn型のエピタキシャル層3が基板と並行方向に交互に、周期的に配列してスーパージャンクション構造をとっている。
【0038】
この構造により、高電圧印加時に加わる電界が特定の部分に集中せず、n型のエピタキシャル層3とp型の不純物拡散領域13の界面方向にも電界を分散させることができるので、チップ面積を大きくすることなく、トランジスタの耐圧を向上させることができる。
【0039】
上記第1実施形態に係る半導体装置は、以下の様にして作製することができる。図3と図4は実施例1に係る半導体装置の製造方法の説明図である。以下、図3と図4に沿って説明する。
【0040】
まず、p型のシリコン基板1を準備し(図3(a))、基板1上にフォトレジスト14のマスクパターンを形成し、n型不純物イオンの注入を行い、埋め込み層2を形成する(図3(b))。ここで、埋め込み層2は、リンイオンを50keVの加速エネルギーで、ドーズ量3×1015cm−2でイオン注入することにより作製できる。次に、フォトレジスト14を除去し、n型層をエピタキシャル成長させた後(図3(c))、夫々異なるマスクパターンを用いて、p型とn型イオン不純物の注入を行う(図3(d))。ここで、p型領域はホウ素イオンを50keVの加速エネルギーで、ドーズ量5×1011cm−2でイオン注入することにより、n型領域はリンイオンを50keVの加速エネルギーで、ドーズ量3×1015cm−2でイオン注入することにより、夫々作製できる。
【0041】
更に、フォトレジストを取り除き、n型層をエピタキシャル成長させると図3(e)の様になる。
【0042】
次に、p型とn型不純物イオンの注入を再度行ってから(図4(a))、n型層をエピタキシャル成長させる。このように、エピタキシャル成長とイオン注入を所定の膜厚に達するまで繰り返し行うと図4(b)の様になる。その後熱処理を行い、注入されたイオンを熱拡散させると、イオン注入領域同士が繋がり、柱状のn型の高濃度不純物拡散領域11、p型の不純物拡散領域13が形成される。n型の高濃度不純物拡散領域11は埋め込み層2と電気的に接続される(図4(c))。
【0043】
次に、p型のベース領域4、n型のドレイン領域9を夫々、p型とn型のイオン不純物を注入し形成する。更に、ゲート絶縁膜8をベース領域4の上方を含む領域にエピタキシャル層3とベース領域4を跨るように形成し、その上に例えばポリシリコン等で構成される導電性材料膜を成膜後、パターニング処理してゲート電極7を形成する。次に、ベース領域4内にn型の不純物イオンを注入し、n型のソース領域5を形成する。ここで、本実施形態のように、ベース領域4内に更にp型の高濃度拡散領域15を形成しても良い。その後、CVD法によって全面に層間絶縁膜12を堆積させた後、ソース領域5の上面、及びドレイン領域9の上面を含む領域を開口し、導電性材料膜を成膜し、パターニング処理を行ってソース電極6、ドレイン電極10を夫々形成する(図4(d))。
【0044】
上記の製造工程により、ベース領域4間の間隔が25μm、n型エピタキシャル層3の厚さが55μm、濃度が5×1014cm−3で、埋め込み層2の濃度が1×1019cm−3、n型高濃度拡散領域11の濃度が1×1019cm−3、p型の拡散領域13の濃度が
5×1014cm−3で、800ボルトの耐圧を持つパワーMOSFETを作製することができる。
【0045】
<第二実施形態>
次に、本発明の第2実施形態に係る出力制御装置の構成を説明する。第2実施形態は、第1実施形態に係る半導体装置から構成されるスイッチングトランジスタを用いた出力制御装置であり、例えばAC/DC電源装置に搭載できる。図5は、本発明の出力制御装置20を搭載したAC/DC電源装置を模式的に示す回路図である。交流電圧Vinは整流ブリッジ21で整流され、一次側の電解コンデンサ22で平滑され、スイッチングトランジスタ23により高周波の交流に変換された後、高周波トランスを介して、一次電源側の一次コイル24から二次電源側の二次コイル25へ、出力電圧が変換されて伝達される。二次側に伝達された交流電圧は、二次側のダイオード26、電解コンデンサ27により整流、平滑され直流電圧Voutとなって電源負荷へと供給される。制御回路28は、二次側に出力される直流電圧Voutの電圧レベルに応じて、当該電圧レベルが一定の範囲内に安定するように、制御信号をスイッチングトランジスタ23のゲート端子に入力し、オン・オフの時間比率を調整する。
【0046】
本発明の出力制御装置20は第1実施形態に係る半導体装置を用いることにより、スイッチングトランジスタ23と制御回路28を同一のフレーム30上に、別々のアイランドに分離することなくダイボンドでき、小型化が図られている。制御回路28のグランド電位は出力制御装置本体のアイランド上のグランド端子29から供給され、スイッチングトランジスタのソース端子及びドレイン端子と電気的に分離されている。これにより、スイッチングトランジスタ23のソース電流は制御回路28のグランド電流と分離されているので、スイッチングトランジスタ23から制御回路28へのグランドを経由したノイズの回り込みが軽減できる。
【0047】
尚、第2実施形態においては、一般的なスイッチング型AC/DC電源装置において、本発明の出力制御装置を用いた構成を例示しているが、本発明はこれに限定されるものではない。スイッチング電源の一次コイルに接続し、前記一次コイルを流れる電流を制御する、本発明の半導体装置から構成されるスイッチングトランジスタと、一次コイルを断続的に流れる電流によって誘導された出力電流又は出力電圧に基づいて、スイッチングトランジスタのオン・オフの時間比率をフィードバック制御する制御回路を備える電源回路であれば、当該スイッチングトランジスタと制御回路を同一のアイランド上に搭載することができるので、本発明の出力制御装置の効果を享受することができる。具体的には、AC/DC電源装置に加えて、DC/DCコンバータ、及びLEDバックライト回路装置等にも本発明を適用可能である。
【0048】
<別実施形態>
図6は、本発明の別実施形態に係る半導体装置の構成を模式的に示す断面図である。第1実施形態の構成と比較すると、第1実施形態において、エピタキシャル層3内に、p型のベース領域4の下層に形成されていたp型の柱状の不純物拡散領域13が本実施形態においては形成されない。しかしながら、柱状のn型の高濃度拡散領域11を有することにより、ドレイン領域9と埋め込み層2間は電気的に接続されているので、ドレイン端子及びドレイン領域を基板の表面に形成することができる。この為、本実施形態の半導体装置を出力制御用のスイッチングトランジスタとして用いる場合、図2に示されるように、同一フレーム30上に、かつ別々のアイランドに分割することなく、スイッチングトランジスタ23と制御回路28をダイボンドすることができる。本実施形態の半導体装置の製造方法は、図3(d)及び図4(a)において、p型のイオン不純物の注入を行わず、n型イオン不純物のみの注入を行えばよい。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、スイッチング電源回路に利用可能であり、回路の実装面積の小型化、低コスト化に貢献できる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の半導体装置の構成を模式的に示す断面図。
【図2】本発明に係る半導体装置から構成されるスイッチングトランジスタと制御ICを同一のアイランド内に実装した構成を示す図。
【図3】本発明に係る半導体装置の製造方法を示す図。
【図4】本発明に係る半導体装置の製造方法を示す図。
【図5】本発明に係る出力制御装置を用いたAC/DC電源装置を模式的に示す回路図。
【図6】本発明の別実施形態に係る半導体装置の構成を模式的に示す断面図。
【図7】従来のスーパージャンクション構造を有する縦型パワーMOSFETの断面図。
【符号の説明】
【0051】
1: p型半導体基板
2: n+型の埋め込み層
3: n型エピタキシャル層
4: p型ベース領域
5: n+型ソース領域
6: ソース電極
7: ゲート電極
8: ゲート絶縁膜
9: n+型ドレイン領域
10: ドレイン電極
11: n+型の高濃度拡散領域
12: 層間絶縁膜
13: p型拡散層
14: レジスト膜
15: p+型の高濃度拡散領域
20: 出力制御装置
21: 整流ブリッジ
22、27: 電解コンデンサ
23: スイッチングトランジスタ
24: 一次コイル
25: 二次コイル
26: ダイオード
28: 制御回路
29: グランド端子
30: フレーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一導電型の半導体基板主面側に形成される高濃度の第二導電型の埋め込み層と、
前記半導体基板の主面上及び前記埋め込み層の上に形成される第二導電型のエピタキシャル層と、
前記エピタキシャル層の表面部に形成される第一導電型のベース領域と、
前記ベース領域内の表面部に形成される第二導電型のソース領域と、
前記埋め込み層の外周部の上方の、前記エピタキシャル層の表面部に形成される高濃度の第二導電型のドレイン領域と、
前記エピタキシャル層の上層において、前記ソース領域と前記エピタキシャル層に挟まれた前記ベース領域の上方を含む領域にゲート絶縁膜を介して形成されるゲート電極と、を備える半導体装置であって、
前記エピタキシャル層内に形成された前記ドレイン領域の下層に、第二導電型の高濃度不純物拡散層が前記埋め込み層に達する深さまで形成され、前記ドレイン領域と前記埋め込み層が電気的に接続していることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記エピタキシャル層内に形成される前記ベース領域の下層に、第一導電型の不純物拡散層が、前記ベース領域の下面から前記埋め込み層に達する深さまで形成されていることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
スイッチング電源の一次コイルに接続し、前記一次コイルを流れる電流を制御する請求項2に記載の半導体装置から構成されるスイッチングトランジスタと、
前記一次コイルを断続的に流れる電流によって誘導される電流又は電圧に基づいて、前記スイッチングトランジスタのオン・オフの時間比率を制御する制御ICを備えてなる、スイッチング電源用の出力制御装置であって、
前記制御ICと前記スイッチングトランジスタは、同一のアイランド上に搭載されていることを特徴とする出力制御装置。
【請求項4】
前記出力制御装置本体のグランド端子と前記アイランドが電気的に接続し、前記制御ICのグランド電位が供給され、前記グランド電位は前記スイッチングトランジスタのソース端子及びドレイン端子と電気的に分離していることを特徴とする請求項3に記載の出力制御装置。
【請求項5】
前記スイッチングトランジスタと前記制御ICのチップ間の距離dcは、
e0:真空の誘電率、
em:制御ICチップのモールド樹脂の比誘電率、
Sc:スイッチングトランジスタチップと制御ICチップとが向かい合う面積、
V:スイッチングトランジスタチップでの電圧振幅、
Rc:制御ICチップの制御回路インピーダンス、
BW:制御ICチップの制御回路の帯域幅、
Vnc:制御ICチップの制御回路内で許されるノイズの電圧振幅、
とすると、
dc≧e0・em・Sc・(V/Vnc)・BW・Rc
なる関係を満足することを特徴とする請求項3又は4に記載の出力制御装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−50333(P2010−50333A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−214038(P2008−214038)
【出願日】平成20年8月22日(2008.8.22)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】