説明

切削工具

【課題】本発明は、625〜800℃の温度で化学蒸着によって切削工具インサート上に結晶質α−Al2O3層を堆積する方法による切削工具に関する。
【解決手段】本発明の方法は、X+Y+Z≧1及びZ>0好ましくはZ>0.2であり、0.1〜1.5μmのTiCXNYOZの層を堆積する工程、0.5〜3vol%のO2好ましくはCO2とH2またはO2とH2を含有するガス混合物中で任意に0.5〜6vol%のHClの存在する中において約0.5〜4分の短い時間625〜1000℃で前記層を処理する工程、及び40〜300ミリバールの処理圧力と625〜800℃の温度で、処置した前記層を、H2中に2〜10vol%のAlCl3と16〜40vol%のCO2とを含有するガス混合物と、0.8〜2vol%の硫黄含有剤好ましくはH2Sとに、接触させることによって前記Al2O3層を堆積させる工程を含む。本発明は、本発明のα−Al2O3層の少なくとも1層の被膜を有する切削工具インサートも含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、α−Al23層を低温度で堆積するCVD被覆工程、並びに切屑を形成する機械加工用の被覆切削工具に関する。この被覆切削工具は、本発明の方法にしたがい堆積した少なくとも1層のAl23層を含む。この被覆工具は、断続切削操作に使用された場合に改良された靭性挙動を示し、且つこのAl23層が物理蒸着法(PVD)で予め被覆した工具上に堆積された場合改良された耐磨耗性を示す。
【背景技術】
【0002】
TiC、TiC及びAl23など種々の硬質相で被覆した超硬合金切削工具は、数年間市販されてきた。この工具の被膜は、数層の硬質層によって多層構造に形成されている。個々の層の順序及び厚みは、種々の切削作業及び工作物材料、例えば鋳鉄及びステンレス鋼に適合させるために慎重に選ばれる。
【0003】
工具被膜は、ほとんどは物理蒸着法(PVD)または化学蒸着法(CVD)によって堆積される。幾つかの稀なケースにおいては、プラズマアシスト化学蒸着(PACVD)法も使用されてきた。被覆超硬合金工具に使用するCVD法は、むしろ880〜1000℃の高い温度で行われている。この高蒸着温度のため、及びこの堆積された被覆材料と超硬合金工具との間で熱膨張係数の不一致のために、CVD法では冷却割れと引っ張り応力とを有する被膜が作られる。物理蒸着法は約450〜700℃の著しく低い温度で操作され、且つ被覆中に高圧縮応力をもたらすイオン衝撃のもとで実施され冷却割れがない。これらの工程の相違のために、CVD被覆工具は、さらに脆くてために、PVD被覆工具に比較して粗悪な靭性挙動を示す。
【0004】
CVD方では、Al23、TiC、Ti(C、N)、TiN、TiCXYZ及びZrO2のような多くの硬くて耐磨耗性の被膜材料を堆積することができる。この顕微鏡組織と、それによってこれらの被膜の特性とは、蒸着条件を変化させることによってかなり大幅に変えることができる。標準的なCVD蒸着温度をかなり低下させることが可能であるならば、被覆した工具の靭性増加が期待される。
【0005】
CVDで被覆した工具の性能の顕著な改良は、中間温度の化学蒸着法(MTCVD)が約5〜10年前に工具業界に参入され始めたときに実現された。工具の靭性挙動の改良は達成された。今日工具の製造の主力はこの技術を使用する。残念ながら、このMTCVD技術が、Ti(C、N)層の製造に対してだけに限定されている。ここでは、この蒸着処理は700〜900℃の範囲の温度で実施される。これはCH3CN、TiCl4及びH2のガス混合物を使用する。
【0006】
最近の工具被膜は、高いクレータ磨耗性を達成するために、少なくとも1層のAl23を含むべきであることが一般的に認められている。したがって、高品位のAl23層が、MTCVDのTiCN処理の温度と同じような範囲の温度でCVD処理によって堆積することができるならば望ましく、且つ組合せたPVD−CVD被膜が望ましいならばPVD処理温度の近くの温度でCVD処理によって堆積することができるならば望ましい。
【0007】
Al23は、種々の異なる相すなわちα、κ、γ、δ、θなどに結晶質することが良く知られている。この最も一般的なCVD蒸着温度は、範囲980〜1050℃にある。これらの温度では、単相のκ−Al23及び単相のα−Al23、及びそれらの混合物が生成される。時にはθ相も同量存在する。
【0008】
特許文献1(米国特許第5,674,564号)には、低蒸着温度で高濃度の硫黄化合物を用いることによって、微細粒化したκ−アルミナ層を成長させる方法が開示される。
【0009】
特許文献2(米国特許第5,487,625号)には、小さな横断面積(約1μ)の柱状粒からなる微細粒化した(012)のα−Al23層を得るための方法を開示する。
【0010】
特許文献3(米国特許第5,766,782号)には、微細粒化した(104)の組織のα−Al23層を得るための方法が開示される。
【0011】
ナノ結晶体のα−Al23層が、特許文献4(米国特許第5,698,314号)、特許文献5(米国特許第5,139,921号)及び特許文献6(米国特許第5,516,588号)に記載されるようにPVD及び低温度でのPACVDによって、堆積することができる。しかしながら、これらの技術は、多くの技術的な組合せであり、敏感な処理であり、且つα−Al23を堆積するために使用する場合、CVD法より少ない投入出力である。
【0012】
κ−Al23層、γ−Al23層及びα−Al23層は、異なる種々の材料を切削する場合、僅かに相違する摩耗特性を有する。広義には、このα層は鋳鉄を切削する場合に好ましく、一方κ層は低炭素鋼を用いる場合に多用される。これは、例えば700℃以上の温度でα−Al23層を生成することができるうえに、この方法は、MTCVD法のTi(C、N)層と組合せることができ、あるいはPVDで被覆した層に堆積することさえもできることが望ましい。κ−Al23及びγ−Al23の低温度処理は、特許文献1(米国特許第5,674,564号)及び特許文献7(ヨーロッパ特許第A−1122334号)に開示される。800〜950℃及び700〜900℃の範囲の蒸着温度が開示される。
【0013】
特許文献8(ドイツ特許第A10115390号)には、中間温度でCVD法によって堆積したAl23表層を有してPVDで被覆した内層からなる被膜を開示する。このAl23層は、実質的にκ、α、δおよび非晶質のいずれにも変化することができる。700〜850℃の温度範囲が、この蒸着工程のために必要とされる。しかしながら850℃未満の温度でこのα−Al23相を堆積するための方法は開示されていない。
【0014】
α−Al23は高温度安定アルミナ酸化物相であるので、それが800℃未満で形成されることを予期していなかった。特許文献7(ヨーロッパ特許第A1122334号)及び特許文献1(米国特許第5,674,564号)は、準安定相のみがこれらの低い温度で達成することを可能にするための望ましい条件を目指している。現在まで、工具被膜として使用できて800℃未満の温度で十分な結晶質Al23を堆積することが可能であるCVD処理についてなんの報告もない。しかしながら、有機金属化合物を用いる低温度Al23CVD処理が報告されている。このような被膜は不純物を含み、且つ結晶質でないかまたは低結晶性であるので、工具の被膜としては不適切である。
【0015】
被覆した工具の寿命及び性能は、被膜が生成される方法に非常に関係する。上述するように、高温度蒸着処理は、低温度で堆積した被膜に比較して、低い靭性挙動を備えた切削工具を一般的に提供する。このことは、被膜を形成する冷却の際のクラック数の相違、引張り応力状態の相違、超硬工具本体の処理による影響、例えば、脱炭の程度及び超硬合金から被膜への元素の拡散割合、などの多くの因子に起因する。
【0016】
その一方で、高温度蒸着処理は、一般的に優れた被膜付着性が与えられ、その理由は、工具本体から成長する被膜に向かう材料の実質的に内部拡散のためである。
【0017】
しかしながら、工具の高靭性は、高被膜付着性よりさらに重要となる多くの切削作業がある。
【0018】
このような切削作業には、靭性のあるPVDで被覆した工具がほとんど使用される。
【0019】
PVDで被覆した工具は、CVDで被覆した工具に比較して、一般的に耐磨耗性が劣る。CVD処理の温度が、全てに対して、または主要な被覆工程に対して少なくとも低くすることができるならば、その結果、より高い靭性が予期され、且つこのようなCVDで被覆した工具は、靭性と高磨耗性との双方が要求される作業においては、純PVD工具をさらに補完することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】米国特許第5,674,564号
【特許文献2】米国特許第5,487,625号
【特許文献3】米国特許第5,766,782号
【特許文献4】米国特許第5,698,314号
【特許文献5】米国特許第5,139,921号
【特許文献6】米国特許第5,516,588号
【特許文献7】ヨーロッパ特許第A−1122334号
【特許文献8】ドイツ特許第A10115390号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
α−Al23層を800℃以下の温度で堆積することを本発明の目的とする。
【0022】
さらに、本発明の目的は、硬質工具本体に、800℃以下の温度でCVDによって堆積したαAl23から実質的になる少なくとも一つの層を含む耐磨耗性の被膜を与えることである。この被膜内の別の層は、MTCVD法によって、またはPVD法及びPACVD(プラズマアシスト法)によって、低温度で堆積することができる。
【0023】
さらに、本発明の目的は、鋼の切削性能を改良しアルミナで被覆した工具インサート、中実炭化物ドリル、または炭化物エンドミルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0024】
図1〜3は、本発明にしたがうα−Al23層を、上面投影法における走査型電子顕微鏡(SEM)による10000倍の倍率の組織写真で示す。
【0025】
多くの蒸着試験を実施した後、実際に100%のα−Al23の良い結晶質層が、625℃まで下げたこのような低い温度のときに堆積できるという驚くべきことが明らかになった。この場合は、最初に酸素を含むガス混合物で処理してその後のAl23処理は高濃度のCO2と硫黄剤好ましくはH2Sとを使用した。この酸素処理工程が排除された場合は、その結果、主にAl23の非晶質または準安定層が形成される。
【0026】
すなわち、本発明は、旋削加工、フライス加工及び穿孔加工のような金属機械加工用の被膜と基材とを含んで成る切削工具の製造方法に関する。この被膜は、化学蒸着法を用いて625〜800℃で堆積される100%α−Al23からなる十分な結晶質の少なくとも1層を含む。この基材は、超硬合金、サーメット、セラミックまたは高速度鋼、或いは立方晶窒化ボロンまたはダイヤモンドのような超硬質材料のような硬質合金から成る。
【0027】
本発明にしたがうAl23層は一般的に基材上に堆積され、この基材は公知である耐磨耗性の少なくとも1層で予め被覆される。X+Y+Z≧1及びZ>0であり好ましくはZ>0.2であり、0.1〜1.5μmのTiCXYZの中間層が、PVD法を用いて450〜600℃で、またはCVD法を用いて1000〜1050℃で、先ず堆積される。このAl23被覆工程の開始以前に、このTiCXYZ層は、0.5〜3vol%のO2好ましくはCO2+H2またはO2+H2を含有するガス混合物中で、任意に0.5〜6vol%のHClを添加して、約0.5〜4分の短い時間、625と1050℃で処理し、好ましくは中間層がPVDで堆積された場合1000℃周辺で処理し、またはこの内層がPVDで堆積された場合は625℃周辺で処理する。この工程は、中間相の表面領域に酸素含有量を増加させるために行われる。その後のAl23蒸着処理は、次の濃度で実施され、すなわち、16〜40vol%のCO2と、0.8〜2vol%のH2Sと、2〜10vol%のAlCl3と、好ましくは2〜7vol%のHCl及び残部H2とで、40〜300ミリバールの処理圧力と625〜800℃好ましくは625〜700℃最も好ましくは650〜695℃の温度で実施される。
【0028】
代わりの実施態様において、このTiCXYZの中間層は除かれて、且つ内層の表面は、超音波浴内において硬質粒子例えばダイヤモンド処理またはブラスト処理によってAl23被覆工程前にかき落としされる。これは特にPVDの前被覆した表面に適用され、または675℃以下の温度で堆積するときに適用される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】図1は、690℃でPVD法によりTi(C、N)を前もって被覆した工具に堆積されたα−Al23層を示す。
【図2】図2は、690℃の中間温度でTi(C、O)を有しCVDでTi(C、N)を前もって被覆した工具に堆積されたα−Al23層を示す。
【図3】図3は、625℃の中間温度でTi(C、O)を有しCVDでTi(C、N)を前もって被覆した工具に堆積されたα−Al23層を示す。
【図4】図4は、研究された低い温度のAl23処理によって堆積された被膜のX線回折パターンを示す。
【発明を実施するための形態】
【0030】
また、本発明は、焼結した超硬合金、サーメット、セラミックまたは高速度鋼、或いは立方晶窒化ボロンまたはダイヤモンドのような超硬質材料の基体、及び該基体の表面の機能する部分上に少なくとも、0.5〜10μmの厚みを有して0.1〜1.1μmの平均粒幅の柱状粒を有し且つ625〜800℃の温度で堆積される結晶質α−Al23から実質的に成る少なくとも1層を含む硬質で耐磨耗性の被膜を含む切削工具である。この被膜はTi(C、N)から成る少なくとも1層を含み、この層はMTCVD法によって885℃未満の温度で堆積される0.5〜10μmの厚みを有し、且つα−Al23層とMTCVDで被覆したTi(C、N)層との間に好ましくは0.5〜1.5μmのTiCXYZの中間層を含み、好ましくはX=Z=0.5及びY=0である。代わりに、上述の被膜は、α−Al23層と、PVD層またはPACVD層(単層または複数層)の間に、好ましくは0.1〜1.5μmのTiCXYZの中間層を含む。この場合、このα−Al23層は0.5μm以上の粒幅の顕著な柱状粒組織を有する。好ましくは、このα−Al23層の一つは、切削切刃線に少なくとも沿った頂部可視層である。すくい面上及び切刃線に沿った被膜は、測定される長さ5μmに渡って0.2μm未満の表面粗さ(Ra)にするために、ブラシ加工またはブラスト加工によって滑らかにされる。
【0031】
本発明にしたがう工具は、切削インサート、または中実炭化物ドリル、または炭化物エンドミルにすることができる。
【0032】
このAl23層の粒径が平滑化作業後の頂部視野の射影から決定される場合は、その結果としてAl23層は、好ましく先ずHFまたはHNO3の混合物でエッチング処理されるか、またはこの粒径が、走査型電子顕微鏡において粒幅として破壊された試料で測定できる。
【実施例】
【0033】
以下の実施例における蒸着被膜は、数千の切削工具インサートを収容できるCVD工具塗付機及びPVD工具塗付機で実施された。
【0034】
実施例1
A)7.5wt%のCoと1.8wt%のTiCと0.5wt%のTiNと3wt%のTaCと0.4wt%のNbCと残部WCを含む形式CNMG120408−PMの超硬切削インサートは、従来のCVD法を用いて930℃で1μm厚みのTiN層で、そして引き続いて5μmのTiCN層で、MTCVD法を使用して、処理ガスとしてTiCl4、H2、N2及びCH3CNを用いて、700℃の温度で被覆された。同一被覆サイクル中のその後の処理工程において、約0.5μmのTi(C、O)の層が、1000℃で堆積され、その後反応器は、2μmの厚みのα−Al23層が本発明の被覆処理条件に従って堆積される690℃のアルゴン雰囲気の冷却する前に、2%のCO2と5%のHClと93%のH2との混合物で2分間洗浄された。蒸着行程の際の処理条件は以下のとおりである。
【0035】
表1
工程 TiN Ti(C、N) Ti(C、O) 洗浄 Al23
TiCl4 1.5% 1.4% 2%
2 38% 38%
CO2: 2% 20%
CO 6%
AlCl3: 3.2%
2S − 1%
HCl 5% 3.2%
2: 残部 残部 残部 残部 残部
CH3CN − 0.6%
圧力(mbar) 160 60 60 60 70
温度(℃) 930 700 1000 1000 690
所要時間 30分 4時間 20分 2分 5時間
【0036】
堆積されたAl23層のX線回折解析は、それが図4のα相のみからなることを示した。したがって、κ相またはγ相からの回折ピークが検出されなかった。
【0037】
頂部視野の射影のSEM顕微鏡写真は、図2に示される。このα−Al23層は、690℃のような低い温度で堆積されたので驚くほど良い結晶質であった。約1μmの結晶粒が観察された。
【0038】
B)7.5wt%のCoと1.8wt%のTiCと0.5wt%のTiNと3wt%のTaCと0.4wt%のNbCと残部WCを含む形式CNMG120408−PMの超硬切削インサートは、従来のCVD法を用いて930℃で1μm厚みのTiN層で、そして引き続いて5μmのTiCN層で、MTCVD法を使用して、処理ガスとしてTiCl4、H2、N2及びCH3CNを用いて、700℃の温度で被覆された。同一被覆サイクル中のその後の処理工程において、0.5μmのTi(C、O)が、1000℃で堆積された。その後2μmの厚みのα−Al23層が米国特許第5,487,625号開示されると同じ従来技術に従って1010℃で堆積された。Al23蒸着行程の際の処理条件は以下のとおりである。
【0039】
表2
工程 TiN Ti(C、N) Ti(C、O) 洗浄 Al23
TiCl4 1.5% 1.4% 2%
2 38% 38%
CO2: 4% 4%
CO 6%
AlCl3: 4% 4%
2S − 0.2%
HCl 1% 4%
2: 残部 残部 残部 残部 残部
CH3CN − 0.6%
圧力(mbar) 160 60 60 65 65
温度(℃) 930 700 1000 1010 1010
所要時間 30分 4時間 20分 30分 110分
【0040】
堆積されたAl23層のX線回折解析は、それがα−相のみからなることを示した。
【0041】
実施例2
C)7.5wt%のCoと1.8wt%のTiCと0.5wt%のTiNと3wt%のTaCと0.4wt%のNbCと残部WCを含む形式CNMG120408−PMの超硬切削インサートは、PVD(イオンプレーティング法)によって2μmのTiNで被覆された。
【0042】
D)C)と同一の形式と塑性を有する超硬合金基材は、PVD(イオンプレーティング法)によって4μmのTiNで被覆された。
【0043】
E)C)からのTiNを前被覆したインサートが本発明の処理に従って2μmのAl23で被覆された。
この穂膜は次の処理に従って前形成された。
【0044】
表3
工程 洗浄 Al23
CO2: 3.4% 20%
Al23: 3.2%
2S 1%
HCl 1.5% 3.2%
2: 残部 残部
圧力(mbar): 60 70
温度(℃): 690 690
所用期間: 3分 5時間
【0045】
堆積されたAl23層のX線回折解析は、それがα相からなることを示した。したがって、κ相またはγ相からの回折ピークが検出することはできなかった。得られた被膜の頂部視野の射影のSEM顕微鏡写真は、図1に示される。平均粒径は約0.25μmであった。
【0046】
表4
工程 Al23 Al23
CO2: 4% 4%
Al23: 4% 4%
2S 0.2%
HCl 1% 1%
2: 残部 残部
圧力(mbar): 65 65
温度(℃): 1010 1010
所用期間: 30分 110分
【0047】
堆積されたAl23層のX線回折解析は、それがα相からなることを示した。
【0048】
A)、B)、E)及びF)からのインサートは、被覆面を平滑にするために、SiC粒を含むナイロンブラシでブラシがけされた。D)からのPVD被覆したインサートは、被覆したときに既に優れた平滑性を示し、そのためにブラシがけをしなかった。
【0049】
その後、A)及びB)からのインサートは、特別に設計された加工物で靭性に関する試験を行った。加工物は、SS1312材料の二つの平らな鋼のプレートから成り、この二つのプレート間のギャップから離れる中間に距離棒で互いに側面と側面を締結した。このプレートは、増加させた送り速度で長さ方向に切削された。試験をした各インサートについて破壊までの時間が記録された。各変形種の集まりの中で、幾つかの切刃が他の切刃より長持ちし、試験をした各切刃の寿命が記録された。得られた結果を、短い寿命を有するインサートの時間、長い寿命を有するインサートの時間、及び集団内の切刃の50%が破壊するまでの時間として以下に示す。A)及びB)からのインサートは切刃破壊まで運転された。
【0050】
切削作業1:
乾燥条件
V=100m/分
A=1.5mm
送り=0.15〜0.35mm/回転
表5:結果
最初の破壊 インサートの59%が 最後のインサートが
までの時間 破壊するときの時間 破壊するときの時間
(s) (s) (s)
B)先行技術 24 66 83
A)本発明 62 80 105
【0051】
切削作業2:
合金鋼(AISI1518、W番号1.0580)において正面作業が実施された。加工物の形状は、切刃が回転当たり3回の切削をした。
切削データ
速度: 130〜220m/分
速度: 0.2mm/回転
切込み深さ: 2.0mm
【0052】
5個のインサート(切刃)が加工物全体を一回切削するまで運転された。表6の結果は、被膜の剥離が生じる切削における切刃線の百分率として表示される。
【0053】
表6:切削操作2
変形種 切刃線の剥離平均
B)先行技術 <10%、小さな剥離した点のみ
A)本発明 <10%、小さな剥離した点のみ
【0054】
切削試験1及び2の結果から、本発明にしたがうインサートは従来技術のインサートに比較してより大きな靭性と同等の耐剥離性を有すると結論することができる。
【0055】
切削作業3:
D)、E)及びF)からの切削インサートが、ボール軸受け鋼Ovako825Bにおいて、長手方向の旋削作業で試験された。
切削データ
切削速度:210m/分
送り:0.25mm/回転
切込み深さ:2.0mm、冷却材を使用しなかった。
【0056】
切削作業は、クレータ摩耗の進行を厳密に追跡するために、周期的に中断された。この摩耗は顕微鏡で測定(観察)した。被膜が破壊するまでの機械加工時間、及び炭化物の基材がクレータ摩耗の底に目視できる。
【0057】
表7
変形種 炭化物可視までの時間
D)前被覆したPVD−TiN 1分未満
E)本発明のPVD−TiN+αAl23 約5分
F)先行技術のPVD−TiN+αAl23 約5分
【0058】
切削作業4:
D)、E)及びF)からの切削インサートは、合金鋼(AISI1518、W番号1.0580)において面作業において、切刃線の剥離に関して試験された。加工物の形状は、各回転中に切刃が3回の切削をおこなった。
切削データ
切削速度:130〜220m/分
送り:0.2mm/回転
切込み深さ:2.0mm
【0059】
このインサートが加工物全体を一回切削するまで運転された。結果は、剥離が生じる切削における切刃線の百分率として表示される。
【0060】
表8
変形種 剥離を生じる切刃線の百分率
D)PVD−TiN 約5%
E)本発明のPVD−TiN+αAl23 約15%
F)従来技術のPVD−TiN+αAl23 約75%+すくい面までの
剥離の広がり
【0061】
切削試験3及び4において得られた結果から、本発明にしたがうインサートは、PVD−TiN層の頂部に従来技術の高温度CVDのAl23を有する変化種F)より、PVDで被覆した工具を覆うクレータ摩耗特性と、優れた被膜付着性とが改良された。明らかに、PVD−TiNの前被膜は、先行技術のAl23処理の高温度に耐えることはできない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
焼結した超硬合金、サーメット、セラミックまたは高速度鋼、或いは立方晶窒化ボロンまたはダイヤモンドのような超硬質材料の基体、及び
少なくとも該基体の表面の機能する部分上に、0.5〜10μmの厚みを有する結晶質α−Al23から成る少なくとも1層を含む硬質及び耐磨耗性の被膜を有する切削工具であって、
前記結晶質α−Al23層が、0.1〜1.1μmの平均粒幅の柱状粒を有し且つ625〜800℃の温度で化学蒸着によって堆積させられていることを特徴とする切削工具。
【請求項2】
前記被膜が、885℃未満の温度で中温度化学蒸着法によって前記基材と前記α−Al23層の間に堆積された0.5〜10μmの厚みのTi(C、N)から成る少なくとも1層を含むことを特徴とする請求項1に記載の切削工具。
【請求項3】
前記被膜が、X+Y+Z≧1及びZ>0であり0.1〜1.5μmのTiCXYZの中間層を、前記α−Al23層と中温度化学蒸着法TiCN層との間に含むことを特徴とする請求項2記載の切削工具。
【請求項4】
前記被膜が、物理蒸着法またはプラズマアシスト化学蒸着法により堆積された切削工具の前記基体に隣接した少なくとも1層を含むことを特徴とする請求項1記載の切削工具。
【請求項5】
前記被膜が、前記α−Al23層と物理蒸着法またはプラズマアシスト化学蒸着法による層との間に、X+Y+Z≧1及びZ>0であり0.1〜1.5μmのTiCXYZの中間層を含むことを特徴とする請求項4記載の切削工具。
【請求項6】
前記被膜が、<0.5μmの粒幅の顕著な柱状粒組織を有することを特徴とする請求項4または5に記載の切削工具。
【請求項7】
前記α−Al23層の1層が、少なくとも切削切刃線に沿う頂部可視層であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の切削工具。
【請求項8】
すくい面上で且つ前記切刃線に沿う前記被膜が、測定される長さ5μmに渡って0.2μm未満の表面粗さ(Ra)にするために、表面粗さをブラシ加工またはブラスト加工によって滑らかにされたことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の切削工具。
【請求項9】
前記工具は、切削インサート、中実炭化物ドリル、または炭化物エンドミルであることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の切削工具。

【図4】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−45994(P2011−45994A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−229821(P2010−229821)
【出願日】平成22年10月12日(2010.10.12)
【分割の表示】特願2004−106655(P2004−106655)の分割
【原出願日】平成16年3月31日(2004.3.31)
【出願人】(505277521)サンドビック インテレクチュアル プロパティー アクティエボラーグ (284)
【Fターム(参考)】