説明

刈取収穫機

【課題】 走行機体の水平基準面に対する前後傾斜角を設定傾斜角に維持しながら刈取作業を行うことが可能なものでありながら、刈取部が地面に突っ込むおそれを少なくすることが可能な刈取収穫機を提供する。
【解決手段】 刈取部10の対地高さが制御目標高さになるように刈取シリンダC1の作動を制御する刈取昇降制御並びに走行機体Vの水平基準面に対する前後傾斜角が設定傾斜角に維持されるように姿勢変更操作手段の作動を制御する姿勢制御を実行する制御手段が、刈取部10が地面に近付く形態で走行機体Vの前後傾斜角を前下がり傾斜方向に姿勢変更させているときは、目標対地高さ設定手段にて設定される目標対地高さに対応させて定めた基準対地高さよりも前傾斜操作用設定量だけ高い値を制御目標高さとして定め、走行機体Vの前後傾斜角を前下がり傾斜方向に姿勢変更させていないときは基準対地高さを制御目標高さとして定める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行機体の前部に昇降自在に連結された刈取部を昇降駆動する昇降駆動手段と、前記刈取部の対地高さを検出する対地高さ検出手段と、前記刈取部の目標対地高さを設定する手動操作式の目標対地高さ設定手段と、走行装置の接地部に対する前記走行機体の前後傾斜角を変更操作自在な姿勢変更操作手段と、前記走行機体の水平基準面に対する前後傾斜角を検出する前後傾斜角検出手段と、前記刈取部の対地高さが前記目標対地高さに基づいて定められる制御目標高さになるように前記昇降駆動手段の作動を制御する刈取昇降制御並びに前記刈取部の水平基準面に対する前後傾斜角が設定傾斜角に維持されるように前記姿勢変更操作手段の作動を制御する姿勢制御を実行する制御手段とが備えられた刈取収穫機に関する。
【背景技術】
【0002】
上記刈取収穫機の従来例として次のように構成されたものがあった。
すなわち、前記姿勢変更操作手段が、走行機体における左側前部、左側後部、右側前部、及び、右側後部の夫々において走行装置の接地部に対する高さを各別に変更調節自在な油圧シリンダを備えて構成され、それら4個の油圧シリンダのうち、左側前部及び右側前部に位置する2つの油圧シリンダを前側の駆動手段とし、左側後部及び右側後部に位置する2つの油圧シリンダを後側の駆動手段として、例えば前側の駆動手段及び後側の駆動手段のいずれか一方を停止させた状態で他方を操作させることで、走行装置の接地部に対する走行機体の前後傾斜角を前下がり傾斜方向及び後下がり傾斜方向夫々に変更操作自在に構成され、上記したような姿勢制御を実行する構成となっており、又、このような姿勢制御に併せて前記刈取昇降制御を実行する構成となっている。そして、この刈取昇降制御は、前記目標対地高さ設定手段にて設定された目標対地高さを前記制御目標高さとして定めて、前記対地高さ検出手段にて検出される前記刈取部の対地高さが前記目標対地高さになるように前記昇降駆動手段の作動を制御する構成となっていた(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
【特許文献1】特開2002−204613号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来構成では、前記刈取昇降制御が常に前記目標対地高さ設定手段にて設定された目標対地高さを前記制御目標高さとして定める構成であることから、次のような不利な点があった。
【0005】
すなわち、前記姿勢制御を実行して前記姿勢変更操作手段を作動させる場合、刈取部が地面に近付く形態で走行機体を前下がり傾斜方向に姿勢変更すべく前記姿勢変更操作手段を作動させることがあるが、刈取作業を行っているときにこのような姿勢変更が行われると刈取部が地面に突っ込むおそれがある。
【0006】
説明を加えると、走行機体を上記したように前下がり傾斜方向に姿勢変更させる場合には、何らかの要因により走行機体の水平基準面に対する前後傾斜角が設定傾斜角に対応する適正な前後傾斜姿勢に対して走行機体が後下がり傾斜側に姿勢変化しており、その姿勢変化を修正するために上記したような前下がり傾斜方向に姿勢変更を行うことになるが、そのとき、大きな荷重を有する走行機体を姿勢変更操作手段の操作によって前下がり傾斜方向に姿勢変更させると、姿勢変更を開始するときは姿勢変更操作手段の操作速度によって操作されるが、走行機体の重心位置が姿勢変化に伴い前下がり方向に移動することから、走行機体の重心移動により加速されて走行機体が姿勢変更操作手段の操作速度よりも高速で姿勢変更することがある。
【0007】
一方、走行機体の前下がり傾斜方向への姿勢変更に伴って刈取部が下降してその刈取部の対地高さが目標対地高さよりも下回ると、刈取昇降制御の実行により目標対地高さに維持しようとして刈取部を上昇すべく昇降駆動手段を作動させるのであるが、上記したように、走行機体が前下がり傾斜方向への姿勢変更の際に、走行機体が姿勢変更操作手段の操作速度よりも高速で姿勢変更することがあると、刈取昇降制御による刈取部の上昇操作が間に合わずに刈取部が地面に突っ込むおそれがある。
【0008】
本発明の目的は、走行機体の水平基準面に対する前後傾斜角を設定傾斜角に維持しながら刈取作業を行うことが可能なものでありながら、刈取部が地面に突っ込むことを回避し易いものにすることが可能な刈取収穫機を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る刈取収穫機は、走行機体の前部に昇降自在に連結された刈取部を昇降駆動する昇降駆動手段と、
前記刈取部の対地高さを検出する対地高さ検出手段と、
前記刈取部の目標対地高さを設定する手動操作式の目標対地高さ設定手段と、
走行装置の接地部に対する前記走行機体の前後傾斜角を変更操作自在な姿勢変更操作手段と、
前記走行機体の水平基準面に対する前後傾斜角を検出する前後傾斜角検出手段と、
前記刈取部の対地高さが前記目標対地高さに基づいて定められる制御目標高さになるように前記昇降駆動手段の作動を制御する刈取昇降制御並びに前記走行機体の水平基準面に対する前後傾斜角が設定傾斜角に維持されるように前記姿勢変更操作手段の作動を制御する姿勢制御を実行する制御手段とが備えられたものであって、
その第1特徴構成は、前記制御手段が、
前記刈取昇降制御における前記制御目標高さとして、前記刈取部が地面に近付く形態で前記走行装置の接地部に対する前記走行機体の前後傾斜角を前下がり傾斜方向に姿勢変更させているときは、前記目標対地高さ設定手段にて設定される目標対地高さに対応させて定めた基準対地高さよりも前傾斜操作用設定量だけ高い値を定め、前記刈取部が地面に近付く形態で前記走行装置の接地部に対する前記走行機体の前後傾斜角を前下がり傾斜方向に姿勢変更させていないときは、前記基準対地高さを定めるように構成されている点にある。
【0010】
第1特徴構成によれば、前記制御手段が前記姿勢制御を実行することによって、走行機体の水平基準面に対する前後傾斜角を設定傾斜角に維持することができる。そして、前記制御手段は、前記刈取昇降制御を実行する際に、目標対地高さ設定手段にて設定される前記目標対地高さに基づいて制御目標高さを定めるにあたり、前記刈取部が地面に近付く形態で前記走行装置の接地部に対する前記走行機体の前後傾斜角を前下がり傾斜方向に姿勢変更させているときは、前記目標対地高さ設定手段にて設定される目標対地高さに対応させて定めた基準対地高さよりも前傾斜操作用設定量だけ高い値を制御目標高さとして定め、前記刈取部が地面に近付く形態で前記走行装置の接地部に対する前記走行機体の前後傾斜角を前下がり傾斜方向に姿勢変更させていないときは、前記基準対地高さを制御目標高さとして定めて、前記対地高さ検出手段にて検出される刈取部の対地高さが上述したようにして定めた制御目標高さになるように前記昇降駆動手段の作動を制御することになる。
【0011】
走行機体の前後傾斜角を前下がり傾斜方向に姿勢変更させているときには刈取部が地面に近づくように下降することになるが、目標対地高さ設定手段にて設定される目標対地高さに対応させて定めた基準対地高さよりも前傾斜操作用設定量だけ高い値を制御目標高さとして定めるようにしたから、刈取部が地面に突っ込むことを極力回避し易いものにできる。
説明を加えると、走行機体の前後傾斜角を前下がり傾斜方向に姿勢変更させるときには、前記基準対地高さを制御目標高さとして定める状態から前記基準対地高さよりも前傾斜操作用設定量だけ高い値を制御目標高さとして定める状態に変更されるから、刈取昇降制御を実行することにより、刈取部が前記基準対地高さ又はそれに近い高さから前傾斜操作用設定量だけ高い対地高さにまで一旦上昇することになる。そして、走行機体の姿勢変更によって刈取部が地面に近付くように下降して対地高さ検出手段にて検出される刈取部の対地高さが制御目標高さを下回ると、刈取部を上昇させるべく昇降駆動手段の作動を制御することになる。
【0012】
その結果、例えば、走行機体を姿勢変更操作手段の操作によって前下がり傾斜方向に姿勢変更させるときに、走行機体の重心移動により加速されて走行機体が姿勢変更操作手段の操作速度よりも高速で姿勢変更するようなことがあっても、上記したように刈取部を制御目標高さとしての基準対地高さよりも前傾斜操作用設定量だけ高い対地高さにまで一旦上昇させておき、しかも、刈取部の対地高さが制御目標高さを下回ると刈取部を上昇させる上昇操作を実行することになるから、そのことにより、刈取部が地面に突っ込むことを回避し易いものとなる。
【0013】
一方、前記刈取部が地面に近付く形態で前記走行装置の接地部に対する前記走行機体の前後傾斜角を前下がり傾斜方向に姿勢変更させていないときは、前記基準対地高さを制御目標高さとして定めるようにしたから、手動操作にて設定された所望の対地高さに刈取部の対地高さを維持する状態で刈り取り作業を行うことができる。
【0014】
従って、第1特徴構成によれば、走行機体の水平基準面に対する前後傾斜角を設定傾斜角に維持しながら刈取作業を行うことが可能なものでありながら、刈取部が地面に突っ込むことを回避し易いものにすることが可能な刈取収穫機を提供できるに至った。
【0015】
本発明の第2特徴構成は、第1特徴構成に加えて、圃場における畦際の作業領域を刈取走行する畦際作業状態であることを指令する手動操作式の畦際作業状態指令手段が備えられ、
前記制御手段が、前記畦際作業状態指令手段にて前記畦際作業状態であることが指令されているときは、前記制御目標高さを畦際作業用設定量だけ高い値に補正するように構成されている点にある。
【0016】
第2特徴構成によれば、圃場における畦際の作業領域を刈取走行する際に、作業者が手動操作にて畦際作業状態指令手段を操作して畦際作業状態であることを指令されると、制御手段は、前記畦際作業状態指令手段にて前記畦際作業状態であることが指令されているときは、前記制御目標高さを畦際作業用設定量だけ高い値に補正することになる。
【0017】
圃場における畦際を作業走行するときは、圃場が畦に近い側が高い位置になるように傾斜している場合があったり、畦に近い側にワラくずが堆積している場合があり、刈取部が地面やワラくず等に干渉しないように走行機体を左右傾斜させた状態で刈り取り作業を行うことがある。又、対地高さ検出手段は刈取部の刈幅方向の端部でなく中央側に寄った箇所に設けられるので、対地高さ検出手段の検出値が制御目標高さと同じであっても、刈取部の刈幅方向の端部が制御目標高さよりも低い位置になり、地面やワラくず等に接触するおそれがある。そこで、前記制御目標高さを畦際作業用設定量だけ高い値に補正することによって、刈取部の刈幅方向の端部が地面やワラくず等に接触することを回避させることが可能となるのである。
【0018】
従って、第2特徴構成によれば、畦際での刈り取り作業の際に刈取部が地面やワラくず等に接触することを回避させることが可能な刈取収穫機を提供できるに至った。
【0019】
本発明の第3特徴構成は、第1特徴構成又は第2特徴構成に加えて、前記制御手段が、前記前後傾斜角検出手段にて前記走行機体の水平基準面に対する前後傾斜角が設定値以上の前下がり状態であることが検出されているときは、前記制御目標高さを圃場進入用設定量だけ高い値に補正するように構成されている点にある。
【0020】
第3特徴構成によれば、前記制御手段が前記姿勢制御を実行しているにもかかわらず、前記前後傾斜角検出手段にて前記走行機体の水平基準面に対する前後傾斜角が設定値以上の前下がり状態であることが検出されているときは、例えば、畦から圃場内に進入して行きながら刈り取り作業を開始する等、走行機体が大きく前下がり傾斜状態になっていることが考えられ、このような場合には、走行機体が前進走行を続けると刈取部が地面に突っ込むおそれがあるので、前記制御目標高さを圃場進入用設定量だけ高い値に補正することによって刈取部が地面に突っ込むことを回避し易いものとなるのである。
【0021】
従って、第3特徴構成によれば、畦から圃場内に進入して行きながら刈り取り作業を開始するような場合であっても、刈取部が地面に突っ込むことを回避し易い刈取収穫機を提供できるに至った。
【0022】
本発明の第4特徴構成は、第1特徴構成〜第3特徴構成のいずれかに加えて、乾田用制御モードを指令する状態と湿田用制御モードを指令する状態とに切り換え自在なモード切換指令手段が備えられ、前記制御手段が、前記モード切換指令手段にて乾田用制御モードが指令されているときは前記制御目標高さに基づいて前記刈取昇降制御を実行し、前記モード切換指令手段にて前記湿田用制御モードが指令されているときは前記制御目標高さを湿田用設定量だけ高い値に補正してその補正した制御目標高さに基づいて前記刈取昇降制御を実行するように構成されている点にある。
【0023】
第4特徴構成によれば、圃場での刈り取り作業を行うにあたり、圃場が乾田であれば走行機体が地面に沈みこむことはないので走行機体の前後傾斜姿勢は大きく変化するおそれは少なく、刈取部の対地高さは走行機体の変動に伴って変動するおそれは少ない。これに対して、湿田では、圃場な軟弱であるから走行機体が後進走行を開始する際等において、前下がり傾斜角が大きくなり易いので、刈取部が地面に突っ込むおそれが大となる。
【0024】
そこで、モード切換指令手段にて乾田用制御モードを指令する状態と湿田用制御モードを指令する状態とに切り換え自在な構成として、乾田用制御モードが指令されているときは前記制御目標高さに基づいて前記刈取昇降制御を実行することにより所望の対地高さに維持することが可能となり、湿田用制御モードが指令されているときは前記制御目標高さを湿田用設定量だけ高い値に補正してその補正した制御目標高さに基づいて前記刈取昇降制御を実行することにより刈取部が地面に突っ込むことを回避し易いものとなる。
【0025】
従って、第4特徴構成によれば、湿田であっても刈取部が地面に突っ込むことを回避し易い状態で適正な刈り取り作業を行うことが可能な刈取収穫機を提供できるに至った。
【0026】
本発明の第5特徴構成は、第1特徴構成〜第4特徴構成のいずれかに加えて、前記制御手段が、前記刈取部を上昇させる操作速度を上昇用標準速度に設定し且つ前記刈取部を下降させる操作速度を下降用標準速度に設定する標準速度操作状態と、前記刈取部を上昇させる操作速度を上昇用標準速度よりも設定量増大側に変更設定し且つ前記刈取部を下降させる操作速度を下降用標準速度よりも設定量減少側に変更設定する高速上昇操作状態とに切り換え自在に構成され、且つ、前記刈取部が地面に近付く形態で前記走行装置の接地部に対する前記走行機体の前後傾斜角を前下がり傾斜方向に姿勢変更させているときは前記高速上昇操作状態に切り換え、前記刈取部が地面に近付く形態で前記走行装置の接地部に対する前記走行機体の前後傾斜角を前下がり傾斜方向に姿勢変更させていないときは前記標準速度操作状態に切り換える形態にて前記刈取昇降制御を実行するように構成されている点にある。
【0027】
第5特徴構成によれば、前記刈取部が地面に近付く形態で前記走行装置の接地部に対する前記走行機体の前後傾斜角を前下がり傾斜方向に姿勢変更させていないときは前記標準速度操作状態に切り換える形態にて前記刈取昇降制御を実行するので、予め設定されている適切な操作速度で刈取部を昇降させることができる。一方、刈取部が地面に近付く形態で前記走行装置の接地部に対する前記走行機体の前後傾斜角を前下がり傾斜方向に姿勢変更させているときは前記高速上昇操作状態に切り換えるので、刈取部を上昇させる操作速度を上昇用標準速度よりも設定量増大側に変更設定し且つ前記刈取部を下降させる操作速度を下降用標準速度よりも設定量減少側に変更設定することになる。このように高速上昇操作状態に切り換えることにより、刈取部の上昇を素早く行い且つ下降を低速にすることで、刈取部が地面に突っ込むことをより的確に回避し易いものになる。
【0028】
従って、第5特徴構成によれば、走行機体を前下がり傾斜方向に姿勢変更させているときに刈取部が地面に突っ込むことをより的確に回避し易い刈取収穫機を提供できるに至った。
【0029】
本発明の第6特徴構成は、第5特徴構成に加えて、前記制御手段が、前記刈取部が地面に近付く形態で前記走行装置の接地部に対する前記走行機体の前後傾斜角を前下がり傾斜方向に姿勢変更させていないときに、前記前後傾斜角検出手段にて前記走行機体の水平基準面に対する前後傾斜角が設定値以上の前下がり状態であることが検出されているときは、前記高速上昇操作状態に切り換える形態で前記刈取昇降制御を実行するように構成されている点にある。
【0030】
第6特徴構成によれば、前記刈取部が地面に近付く形態で前記走行装置の接地部に対する前記走行機体の前後傾斜角を前下がり傾斜方向に姿勢変更させていないときであっても、前記前後傾斜角検出手段にて前記走行機体の水平基準面に対する前後傾斜角が設定値以上の前下がり状態であることが検出されているときは、前記高速上昇操作状態に切り換える形態で前記刈取昇降制御を実行するようにしたので、畦から圃場内に進入して行きながら刈り取り作業を開始する等、走行機体が大きく前下がり傾斜状態になっているような場合には、高速上昇操作状態に切り換えることにより、刈取部の上昇を素早く行い且つ下降を低速にすることで、刈取部が地面に突っ込むことをより的確に回避し易いものになる。
【0031】
従って、第6特徴構成によれば、走行機体を前下がり傾斜方向に姿勢変更させているときだけでなく、畦から圃場内に進入して行きながら刈り取り作業を開始するような場合であっても刈取部が地面に突っ込むことをより的確に回避し易い刈取収穫機を提供できるに至った。
【0032】
本発明の第7特徴構成は、第2特徴構成〜第4特徴構成に加えて、前記制御手段が、前記刈取部を上昇させる操作速度を上昇用標準速度に設定し且つ前記刈取部を下降させる操作速度を下降用標準速度に設定する標準速度操作状態と、前記刈取部を上昇させる操作速度を上昇用標準速度よりも設定量増大側に変更設定し且つ前記刈取部を下降させる操作速度を下降用標準速度よりも設定量減少側に変更設定する高速上昇操作状態とに切り換え自在に構成され、且つ、前記畦際作業状態指令手段にて前記畦際作業状態であることが指令されているとき、及び、前記畦際作業状態指令手段にて前記畦際作業状態であることが指令されていない状態で前記刈取部が地面に近付く形態で前記走行装置の接地部に対する前記走行機体の前後傾斜角を前下がり傾斜方向に姿勢変更させているときは、前記高速上昇操作状態に切り換え、前記畦際作業状態指令手段にて前記畦際作業状態であることが指令されていない状態で前記刈取部が地面に近付く形態で前記走行装置の接地部に対する前記走行機体の前後傾斜角を前下がり傾斜方向に姿勢変更させていないときは、前記標準速度操作状態に切り換えるように構成されている点にある。
【0033】
第7特徴構成によれば、前記畦際作業状態指令手段にて前記畦際作業状態であることが指令されていない状態で前記刈取部が地面に近付く形態で前記走行装置の接地部に対する前記走行機体の前後傾斜角を前下がり傾斜方向に姿勢変更させていないときは、前記標準速度操作状態に切り換えるので、予め設定されている適切な操作速度で刈取部を昇降させることができる。一方、前記畦際作業状態指令手段にて前記畦際作業状態であることが指令されているとき、及び、前記畦際作業状態指令手段にて前記畦際作業状態であることが指令されていない状態で前記刈取部が地面に近付く形態で前記走行装置の接地部に対する前記走行機体の前後傾斜角を前下がり傾斜方向に姿勢変更させているときは、前記高速上昇操作状態に切り換えるので、刈取部を上昇させる操作速度を上昇用標準速度よりも設定量増大側に変更設定し且つ前記刈取部を下降させる操作速度を下降用標準速度よりも設定量減少側に変更設定することになる。このように高速上昇操作状態に切り換えることにより、刈取部の上昇を素早く行い且つ下降を低速にすることで、刈取部が地面に突っ込むことをより的確に回避し易いものになる。
【0034】
従って、第7特徴構成によれば、畦際での刈り取り作業を行っているときや畦から圃場内に進入して行きながら刈り取り作業を開始するような場合であっても、刈取部が地面に突っ込むことをより的確に回避し易い刈取収穫機を提供できるに至った。
【0035】
本発明の第8特徴構成は、第7特徴構成に加えて、前記制御手段が、前記畦際作業状態指令手段にて前記畦際作業状態であることが指令されていない状態で前記刈取部が地面に近付く形態で前記走行装置の接地部に対する前記走行機体の前後傾斜角を前下がり傾斜方向に姿勢変更させていないときに、前記前後傾斜角検出手段にて前記走行機体の水平基準面に対する前後傾斜角が設定値以上の前下がり状態であることが検出されているときは前記高速上昇操作状態に切り換えるように構成されている点にある。
【0036】
第8特徴構成によれば、前記畦際作業状態指令手段にて前記畦際作業状態であることが指令されておらず、しかも、刈取部が地面に近付く形態で前記走行装置の接地部に対する前記走行機体の前後傾斜角を前下がり傾斜方向に姿勢変更させていないときであっても、前後傾斜角検出手段にて走行機体の水平基準面に対する前後傾斜角が設定値以上の前下がり状態であることが検出されているときは前記高速上昇操作状態に切り換えるようにしたから、刈取部の上昇を素早く行い且つ下降を低速にすることで、刈取部が地面に突っ込むおそれをより的確に回避し易いものになる。
【0037】
従って、第8特徴構成によれば、畦際での刈り取り作業を行っているときや畦から圃場内に進入して行きながら刈り取り作業を開始するような場合だけでなく、畦から圃場内に進入して行きながら刈り取り作業を開始するような場合であっても刈取部が地面に突っ込むおそれをより的確に回避し易い刈取収穫機を提供できるに至った。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
以下、本発明を刈取収穫機の一例としてのコンバインに適用した場合の実施形態について図面に基づいて説明する。
図1に示すように、コンバインは、左右一対のクローラ式の走行装置1L,1R、刈取穀稈を脱穀処理する脱穀装置3、脱穀された穀粒を貯留する穀粒タンク4、搭乗運転部2等を備えた走行機体Vに対して、稲や麦等の植立穀稈を刈り取って脱穀装置3に供給する刈取部10を機体前部に昇降自在に備えて構成されている。
【0039】
刈取部10は、先端部に設けた分草具6、分草具6にて分草された植立穀稈を引き起こす引き起こし装置5、引き起こされた穀稈の株元側を切断するバリカン型の刈刃7、刈取穀稈を徐々に横倒れ姿勢に変更しながら後方側に搬送する縦搬送装置8等にて構成され、走行機体Vの前部に横軸芯P1周りに昇降駆動手段の一例としての油圧式の刈取シリンダC1によって揺動昇降自在に設けられている。つまり、この刈取部10は、地面に近接するような刈取作業用の低位置と、地面から大きく離間するように大きく上昇する上昇退避位置とにわたり揺動昇降自在に構成されている。
【0040】
上記分草具6の後方側箇所に、刈取部10の地面に対する高さを検出する対地高さ検出手段としての接地式の刈高さセンサ9が設けられている。詳述はしないが、この刈高さセンサ9は、横軸芯周りで揺動自在で且つ下方側に付勢される接地片9Aの地面との接当による揺動角度に基づいて刈取部10の地面に対する高さを検出するように構成されている。
【0041】
又、刈取部10の走行機体Vに支持される枢支部、つまり、刈取部10が横向きの軸芯P1まわりで回動自在に走行機体Vに支持される箇所に、刈取部10の機体に対する高さを検出する対機体高さ検出手段としてのポテンショメータ形式の対機体高さセンサ40が設けられ、この対機体高さセンサ40の検出情報も制御装置22に入力される構成となっている。又、走行装置1L,1Rへの走行駆動系に、走行出力軸の回転速度を検出する回転速度センサ41が備えられ、制御装置22は、この回転速度センサ41の検出情報と時間経過情報とから走行機体Vの走行距離を演算にて求めるように構成されている。
【0042】
そして、このコンバインでは、走行装置1L,1Rの接地部に対する走行機体Vの前後傾斜角及び左右傾斜角を変更操作自在な姿勢変更操作手段100が設けられている。以下、その構成について説明する。
先ず、左右の走行装置1L,1Rの走行機体Vへの取付構造を説明する。尚、左右の走行装置1L,1Rは夫々同一構成であるから、そのうち左側の走行装置1Lについて以下に説明し、右側の走行装置1Rについてはその説明を省略する。
【0043】
図2に示すように、走行機体Vを構成する前後向き姿勢の主フレーム11に対して固定される支持フレーム12の前端側には駆動スプロケット13が回転自在に支持されるとともに、複数個の遊転輪体14を前後方向に並べた状態で枢支し、且つ、後端部にテンション輪体15を支持したトラックフレーム16が前記支持フレーム12に対して上下動可能に装着されている。そして、前記駆動スプロケット13とテンション輪体15及び各遊転輪体14にわたり無端回動体であるクローラベルトBが巻回されている。
【0044】
前記支持フレーム12の前部側には水平軸芯P2周りで回動可能に側面視で略L字形に構成される前ベルクランク17aが枢支され、支持フレーム12の後部側には水平軸芯P3周りで回動可能に側面視で略L字形に構成される後ベルクランク17bが枢支されている。前ベルクランク17aの下方側端部がトラックフレーム16の前部側箇所に枢支連結され、後ベルクランク17bの下方側端部は、ストローク吸収用の補助リンク17b1を介して、トラックフレーム16の後部側箇所に枢支連結されている。
一方、前後ベルクランク17a,17bの夫々の上方側端部には、夫々、油圧シリンダC2,C3のシリンダロッドが連動連結されている。前記各油圧シリンダC2,C3のシリンダ本体側は主フレーム11における横フレーム部分に枢支連結されており、前記各油圧シリンダC2,C3は夫々複動型の油圧シリンダにて構成されている。
【0045】
前ベルクランク17aに対応する油圧シリンダC2(以下、左前シリンダという)を最も伸張させるとともに、後ベルクランク17bに対応する油圧シリンダC3(以下、左後シリンダという)を最も短縮させると、図2に示すように、トラックフレーム16が支持フレーム12に受け止め支持され、トラックフレーム16が主フレーム11に最も近づいてほぼ平行状態となる。
【0046】
そして、図2に示す状態から、左後シリンダC3をそのままの状態に維持しながら左前シリンダC2を短縮作動させると、図3に示すように、走行機体Vの前部側を接地部に対して離間する方向に姿勢変更することになる。
図2に示す状態から、左前シリンダC2をそのままの状態に維持しながら左後シリンダC3を伸長作動させると、図4に示すように、走行機体Vの後部側を接地部に対して離間する方向に姿勢変更することになる。
又、図2に示す状態から、左前シリンダC2を短縮作動させ、且つ、左後シリンダC3を伸長作動させると、図5に示すように、走行機体Vが接地部に対して平行姿勢のまま離間する方向に姿勢変更することになる。
【0047】
右側の走行装置1Rにおいても左側の走行装置1Lと同様に、機体前部側に位置する右前シリンダC4と、機体後部側に位置する右後シリンダC5とが夫々備えられ、左側の走行装置1Lと同様な動作を行う。尚、左右両側の走行装置1L,1Rが夫々図2に示す状態になっていると、走行装置1L,1Rの接地部に対する走行機体Vの前後傾斜角及び左右傾斜角が夫々零又は略零となる基準状態としての下限基準姿勢となる。
【0048】
このように前記姿勢変更操作手段100が、走行機体Vにおける左側前部、左側後部、右側前部、及び、右側後部の夫々において前記左右走行装置1L,1Rの接地部に対する高さを各別に変更調節自在な4個の機体姿勢変更用の油圧シリンダC2〜C5を備えて構成されている。
【0049】
そして、左右の後シリンダC3,C5を作動停止させた状態において、左右の前シリンダC2,C4を短縮作動させると走行機体Vの前部側が走行装置1L,1Rの接地部に対して離間する方向に姿勢変更(前上昇操作)し、左右の前シリンダC2,C4を伸長作動させると走行機体Vの前部側が走行装置1L,1Rの接地部に対して近接する方向に姿勢変更(前下降操作)することになる。又、左右の前シリンダC2,C4を作動停止させた状態において、左右の後シリンダC3,C5を伸長作動させると走行機体Vの後部側が走行装置1L,1Rの接地部に対して離間する方向に姿勢変更(後上昇操作)し、左右の後シリンダC3,C5を短縮作動させると走行機体Vの後部側が走行装置1L,1Rの接地部に対して近接する方向に姿勢変更(後下降操作)することになる。従って、左右の前シリンダC2,C4が前側の姿勢変更用駆動手段に対応しており、左右の後シリンダC3,C5が後側の姿勢変更用駆動手段に対応している。
【0050】
前記4個の油圧シリンダC2,C3,C4,C5の夫々に対応させて、左右走行装置1L,1Rにおける前記各ベルクランク17a,17bの回動支点部に対応する箇所に、その回動量に基づいて前記各油圧シリンダC2,C3,C4,C5の操作量(即ち、伸縮作動したストローク量)を検出するポテンショメータ形のストロークセンサ18,19,20,21が設けられている(図7参照)。
【0051】
次に、動力伝達系を図6に示す。走行機体Vに搭載されたエンジンEから出力された動力は、脱穀クラッチ45を介して脱穀装置3に伝達されるとともに、走行クラッチ46及び走行変速装置としての無段変速装置47を介して左右の走行装置1L,1Rのミッション部48に伝達され、ミッション部48に伝達された動力は、走行装置1L,1Rに伝達される一方、刈取クラッチ49を介して刈取部10に伝達される。又、詳述はしないが、前記ミッション部48に伝達された動力を左右の走行装置1L,1Rにおける駆動速度に差をつけて旋回操作するための旋回用伝動機構55が備えられており、搭乗運転部2に備えられた左右方向並びに前後方向の夫々に十字揺動操作自在な操作レバー28の左右方向の揺動操作に基づいて旋回用伝動機構55を切り換えて走行機体Vを旋回走行させることができるようになっている。前記無段変速装置47は、搭乗運転部2に設けた変速レバー51によって変速操作されるように構成されている。
【0052】
そして、重力の作用によって走行機体Vの水平基準面に対する前後傾斜角を検出する重力式の前後傾斜角センサ24と、重力の作用によって走行機体Vの水平基準面に対する左右傾斜角を検出する重力式の左右傾斜角センサ23とが備えられている。又、図7に示すように、マイクロコンピュータ利用の制御装置22が設けられ、この制御装置22に、前記各ストロークセンサ18〜21、刈高さセンサ9、左右傾斜角センサ23、前後傾斜角センサ24の各検出情報が入力されている。
【0053】
又、搭乗運転部2の操作パネルには、左右方向での姿勢変更を行う左右姿勢制御の入切を指令する左右自動スイッチ26、前後方向での姿勢変更を行う前後姿勢制御の入切を指令する前後自動スイッチ27、制御モードを切り換えるためのモード切換指令手段としてのモード切換スイッチ35、刈取部10の地面に対する目標対地高さとしての目標刈高さを設定する手動操作式の目標対地高さ設定手段としてのポテンショメータ式の刈高設定器36、刈取部上昇を指令する上昇スイッチSW1、刈取部下降を指令する下降スイッチSW2等が備えられ、これらの情報も制御装置22に入力されている。
【0054】
前記上昇スイッチSW1及び前記下降スイッチSW2は、搭乗運転部2の操作パネルに備えられた十字揺動自在な操作レバー28の前後揺動操作にて入り切り操作される構成となっている。つまり、操作レバー28を後方側に設定量以上揺動すると上昇スイッチSW1がオンし、操作レバー28を前方側に設定量以上揺動すると下降スイッチSW2がオンする構成となっている。又、詳述はしないが、走行機体Vの左右傾斜姿勢及び前後傾斜姿勢を手動操作にて変更調整自在な複数の手動操作用指令スイッチも備えられている。
【0055】
前記搭乗運転部2の操作パネルには、圃場における畦際の作業領域を刈取走行する畦際作業状態であることを指令する手動操作式の畦際作業状態指令手段としての畦際スイッチ37が備えられ、この畦際スイッチ37を操作することで、後述するように刈取昇降制御における制御目標高さを畦際用設定量だけ高い値に補正するように構成されている。
【0056】
又、制御装置22は、左右傾斜角センサ23の検出情報に基づいて、走行機体Vの水平基準面に対する左右傾斜角が設定左右傾斜角に維持されるように姿勢変更操作手段100の作動を制御する左右姿勢制御、及び、前後傾斜角センサ24の検出情報に基づいて、走行機体Vの水平基準面に対する前後傾斜角が設定前後傾斜角に維持されるように姿勢変更操作手段100の作動を制御する前後姿勢制御を実行するように構成されている。
【0057】
そして、制御装置22は、前後姿勢制御において、前記4個の油圧シリンダC2〜C5のうち、左側前部及び右側前部に位置する2個の油圧シリンダ(左前シリンダC2と右前シリンダC4)と、左側後部及び右側後部に位置する2個の油圧シリンダ(左後シリンダC3と右後シリンダC5)のいずれか一方の2個の油圧シリンダを駆動停止させた状態で、他方の2個の油圧シリンダを駆動操作するように構成され、且つ、左右姿勢制御において、前記4個の油圧シリンダC2〜C5のうち、左側前部及び左側後部に位置する2個の油圧シリンダ(左前シリンダC2と左後シリンダC3)と、右側前部及び右側後部に位置する2個の油圧シリンダ(右前シリンダC4と右後シリンダC5)のいずれか一方の2個の油圧シリンダを駆動停止させた状態で、他方の2個の油圧シリンダを駆動操作するように構成されている。制御装置22からは、刈取シリンダC1及び4個の機体姿勢変更用の油圧シリンダC2〜C5を油圧制御するための油圧制御用の電磁弁29〜33に対する駆動信号が夫々出力される。
【0058】
又、制御装置22は、前記モード切換スイッチ67による指令に基づいて、姿勢制御用の制御モードとして、前後姿勢制御を実行するときの制御感度として鈍感側の感度が設定される乾田用制御モード(以下、乾田モードという)と、前後姿勢制御を実行するときの制御感度として敏感側の感度が設定される湿田用制御モード(以下、湿田モードという)とに切り換え自在に構成されている。
【0059】
説明を加えると、前後傾斜角センサ24にて検出される走行機体Vの水平基準面に対する前後傾斜角と設定傾斜角(例えば零)との偏差が姿勢制御用の不感帯を外れていると、前記偏差が前記不感帯内に入るように前記姿勢変更操作手段100を作動させるように構成され、且つ、前記乾田モードでは、前記姿勢制御用の不感帯として乾田用の不感帯を用い、前記湿田モードでは、前記姿勢制御用の不感帯として前記乾田用の不感帯の幅よりも狭い幅の湿田用の不感帯を用いることにより乾田モードより敏感な制御感度に設定するように構成されている。
【0060】
前記制御装置22は、刈高さセンサ9の検出値を刈高さ設定器39にて設定された目標刈高さに基づいて定められる制御目標高さに維持すべく刈取シリンダC1を作動させる刈取昇降制御を実行するように構成されている。そして、制御装置22は、刈取昇降制御として、刈取部10が地面に近付く形態で走行装置1L,1Rの接地部に対する走行機体Vの前後傾斜角を前下がり傾斜方向に姿勢変更させているときは、刈高設定器36にて設定される目標対地高さに対応させて定めた基準対地高さよりも前傾斜操作用設定量だけ高い値を制御目標高さとして定め、刈取部10が地面に近付く形態で走行装置1L、1Rの接地部に対する走行機体Vの前後傾斜角を前下がり傾斜方向に姿勢変更させていないときは、前記基準対地高さを前記制御目標高さとして定めるように構成されている。
従って、制御装置22により、姿勢制御及び刈取昇降制御を実行する制御手段が構成される。
【0061】
さらに、制御装置22は、刈取昇降制御として、畦際スイッチ37がオン操作されて前記畦際作業状態であることが指令されているときは、前記制御目標高さを畦際作業用設定量だけ高い値に補正するように構成されている。又、制御装置22は、刈取昇降制御として、前後傾斜角センサ24にて走行機体Vの水平基準面に対する前後傾斜角が設定値以上の前下がり状態であることが検出されているときは、制御目標高さを圃場進入用設定量だけ高い値に補正するように構成されている。又、制御装置22は、前記刈取昇降制御として、前記乾田モードに切り換えられているときは前記制御目標高さに基づいて刈取昇降制御を実行し、前記湿田モードに切り換えられているときは前記制御目標高さを湿田用設定量だけ高い値に補正してその補正した制御目標高さに基づいて刈取昇降制御を実行するように構成されている。
【0062】
制御装置22は、刈取部10を上昇させる操作速度を上昇用標準速度に設定し且つ刈取部10を下降させる操作速度を下降用標準速度に設定する標準速度操作状態と、刈取部10を上昇させる操作速度を上昇用標準速度よりも設定量増大側に変更設定し且つ刈取部10を下降させる操作速度を下降用標準速度よりも設定量減少側に変更設定する高速上昇操作状態とに切り換え自在に構成され、且つ、刈取昇降制御として、刈取部10が地面に近付く形態で走行装置の接地部に対する走行機体Vの前後傾斜角を前下がり傾斜方向に姿勢変更させているときは高速上昇操作状態に切り換え、刈取部10が地面に近付く形態で走行装置の接地部に対する走行機体Vの前後傾斜角を前下がり傾斜方向に姿勢変更させていないときは前記標準速度操作状態に切り換えるように構成されている。さらに、前記刈取昇降制御として、刈取部10が地面に近付く形態で走行装置の接地部に対する走行機体Vの前後傾斜角を前下がり傾斜方向に姿勢変更させていないときに、前後傾斜角検出センサにて走行機体Vの水平基準面に対する前後傾斜角が設定値以上の前下がり状態であることが検出されているときは、前記高速上昇操作状態に切り換えるように構成されている。
【0063】
さらに、畦際スイッチ37にて畦際作業状態であることが指令されているとき及び畦際スイッチ37にて前記畦際作業状態であることが指令されていない状態で刈取部10が地面に近付く形態で走行装置の接地部に対する走行機体Vの前後傾斜角を前下がり傾斜方向に姿勢変更させているときは、前記高速上昇操作状態に切り換え、畦際スイッチ37にて前記畦際作業状態であることが指令されていない状態で刈取部10が地面に近付く形態で走行装置の接地部に対する走行機体Vの前後傾斜角を前下がり傾斜方向に姿勢変更させていないときは、前記標準速度操作状態に切り換えるように構成されている。又、畦際スイッチ37にて畦際作業状態であることが指令されていない状態で刈取部10が地面に近付く形態で前記走行装置の接地部に対する前記走行機体Vの前後傾斜角を前下がり傾斜方向に姿勢変更させていないときに、前後傾斜角センサ24にて走行機体Vの水平基準面に対する前後傾斜角が設定値以上の前下がり状態であることが検出されているときは前記高速上昇操作状態に切り換えるように構成されている。
【0064】
次に、制御装置22による前後姿勢制御について、図8のフローチャートに基づいて具体的に説明する。尚、この前後姿勢制御は前後自動スイッチ27がオン操作されている状態で実行されることになる。
この前後姿勢制御では、先ず、モード切換スイッチ35の操作状態により切り換えられる制御モードが湿田モードであるか乾田モードであるかを判別し、乾田モードでは姿勢制御用の不感帯として乾田用の不感帯を設定し、湿田モードでは、姿勢制御用の不感帯として前記乾田用の不感帯の幅よりも幅狭の湿田用の不感帯を設定する(ステップ1、2、3)。
【0065】
そして、前後傾斜角センサ24の検出値と設定前後傾斜角に対応する水平状態に相当する信号値(制御目標値)との偏差が姿勢制御用の不感帯を走行機体Vの前傾斜側に外れていれば(ステップ4、5)、走行機体Vの前後傾斜姿勢を後下げ方向に姿勢変更させる後傾斜処理を実行する。つまり、機体後部に位置する左右のストロークセンサ19、21の検出情報に基づいて、左後シリンダC3と右後シリンダC5のいずれかが下限位置に操作されているか否かを判断し、両シリンダC3,C5がいずれも下限位置に操作されていなければ、左前シリンダC2及び右前シリンダC4の作動を停止させて、左後シリンダC3と右後シリンダC5のいずれかが下限位置に達するまで左後シリンダC3及び右後シリンダC5を短縮作動させる下降傾斜作動を実行する(ステップ6、7)。そして、左後シリンダC3及び右後シリンダC5のいずれかが下限位置に操作されても、そのとき前記偏差が不感帯を走行機体Vの後傾斜側に外れていれば、引き続いて、左後シリンダC3及び右後シリンダC5を作動停止させて、左前シリンダC2及び右前シリンダC4のいずれかが上限位置に達するまで、左前シリンダC2及び右前シリンダC4を短縮作動させる上昇傾斜作動を実行する(ステップ8、9)。
【0066】
又、前後傾斜角センサ24の検出値と水平状態に対応する信号値との偏差が姿勢制御用の不感帯を走行機体Vの後傾斜側に外れていれば、走行機体Vの前後傾斜姿勢を前下げ方向に姿勢変更させる前傾斜処理を実行する。すなわち、機体前部に位置する左右のストロークセンサ18、20の検出情報に基づいて、左前シリンダC2と右前シリンダC4のいずれかが下限位置に操作されているか否かを判断し、両シリンダC2,C4がいずれも下限位置に操作されていなければ、その両シリンダC2,C4のいずれかが下限位置に達するまで、左前シリンダC2及び右前シリンダC4を伸長作動させる(ステップ10、11)。左前シリンダC2及び右前シリンダC4のいずれかが下限位置に操作されても偏差が不感帯を走行機体Vの後傾斜側に外れていれば、左前シリンダC2及び右前シリンダC4を作動停止させて、左後シリンダC3及び右後シリンダC5のいずれかが上限位置に達するまで、左後シリンダC3及び右後シリンダC5を伸長作動させる(ステップ12、13)。前後傾斜角センサ24の検出値と設定前後傾斜角すなわち水平状態に対応する信号値との偏差が姿勢制御用の不感帯内に収まると各シリンダの作動を停止する(ステップ14)。
【0067】
次に、制御装置22による刈取昇降制御について、図9、図10、図11のフローチャートに基づいて具体的に説明する。尚、この刈取昇降制御は、手動昇降指令による操作が行われて刈取部10の対機体高さが昇降可能範囲の中間レベルに設定された設定高さを下回ると実行する構成となっている。但し、この刈取昇降制御を実行している状態においても、操作レバー28による手動での昇降指令があれば優先してその指令に基づく昇降操作を実行することになる。
【0068】
刈取昇降制御においては、先ず、刈高設定器36にて設定されている目標刈高さを読み込み(ステップ20)、その目標刈高さに基づいて制御目標高さを算出する制御目標高さ算出処理を実行する(ステップ21)。
この制御目標高さ算出処理は、図10に示すように、刈高設定器36にて設定されている目標刈高さに対応する基準対地高さを算出する(ステップ200)。つまり、前記目標刈高さと基準対地高さとの相関関係が予めマップデータあるいは演算式により設定されており、そのような相関関係と刈高設定器36にて設定されている目標刈高さとから基準対地高さH0を求める。次に、前後姿勢制御を実行することにより前記前傾斜処理を実行しているとき、言い換えると、刈取部10が地面に近付く形態で走行装置1L、1Rの接地部に対する走行機体Vの前後傾斜角を前下がり傾斜方向に姿勢変更させているときには、前記基準対地高さH0に対して前傾斜操作用設定量α1を加算した値を制御目標高さHsとして定める(ステップ201、202)。一方、前記前傾斜処理を実行していないとき、言い換えると、刈取部10が地面に近付く形態で走行装置1L、1Rの接地部に対する走行機体Vの前後傾斜角を前下がり傾斜方向に姿勢変更させていないときは、前記基準対地高さH0を制御目標高さHsとして定める(ステップ203)。前記前傾斜操作用設定量α1の具体的な値としては例えば10mm〜数十mm程度の値である。
【0069】
そして、畦際スイッチ37がオン操作されているときは、前記制御目標高さHsに畦際作業用設定量を加算することにより、制御目標高さHsを畦際作業用設定量α2だけ高い値に補正し(ステップ204、205)、湿田モードに切り換えられているときは、前記制御目標高さHsに湿田用設定量α3を加算することにより制御目標高さHsを湿田用設定量だけ高い値に補正する(ステップ206、207)。又、前後傾斜角センサ24にて走行機体Vの水平基準面に対する前後傾斜角が設定値以上の前下がり状態であることが検出されているときは、前記制御目標高さHsに圃場進入用設定量α4を加算することにより制御目標高さHsを圃場進入用設定量α4だけ高い値に補正する(ステップ208、209)。ちなみに、畦際作業用設定量α2、湿田用設定量α3、及び、圃場進入用設定量α4は、いずれも数mm〜数十mm程度の値のうちの適切な値が予め実験等によって適宜設定される。
【0070】
従って、前記各ステップ204、206、208における判別の結果、制御目標高さHsが補正されるときは、前記各種の設定量が夫々加算された値に制御目標高さHsが補正されることになる。又、畦際スイッチ37がオフであり、乾田モードであり、及び、走行機体Vが大きく前下がり傾斜姿勢になっていないときには、ステップ202、203にて設定された制御目標高さHsをそのまま制御目標高さHsとして用いることになる。
【0071】
前記制御目標高さ算出処理を実行したのち操作速度設定処理を実行する。この操作速度設定処理は、図11に示すように、前後姿勢制御を実行することにより前記前傾斜処理を実行していること、畦際スイッチ37がオンしていること、前後傾斜角センサ24にて走行機体Vの水平基準面に対する前後傾斜角が設定値以上の前下がり状態であることが検出されていることの各条件のうちのいずれも成立していないときは、刈取部10を上昇させる操作速度を上昇用標準速度に設定し且つ刈取部10を下降させる操作速度を下降用標準速度に設定する標準速度操作状態に切り換える(ステップ300〜303)。ちなみに、上昇用標準速度及び下降用標準速度は、走行機体Vが水平姿勢を維持しながら走行している状態において、刈取部10を昇降操作させるために予め適切な操作速度として設定されている速度である。
【0072】
そして、上記各条件のうちの少なくともいずれか一つが成立していると、刈取部10を上昇させる操作速度を上昇用標準速度よりも設定量増大側に変更設定し且つ刈取部10を下降させる操作速度を下降用標準速度よりも設定量減少側に変更設定する高速上昇操作状態に切り換える(ステップ304)。このように刈取部10が地面に突っ込むおそれがあるときは、上昇を迅速に行い且つ下降はゆっくり行うようにして突っ込みを防止するようにしている。
【0073】
従って、畦際スイッチ37にて畦際作業状態であることが指令されているとき、及び、畦際スイッチ37にて畦際作業状態であることが指令されていない状態で前傾斜処理を実行しているときは高速上昇操作状態に切り換え、畦際スイッチ37にて前記畦際作業状態であることが指令されていない状態で前傾斜処理を実行していないときは前記標準速度操作状態に切り換えることになる。又、畦際スイッチ37にて畦際作業状態であることが指令されていない状態で前傾斜処理を実行していないときに、前後傾斜角センサ24にて走行機体Vの水平基準面に対する前後傾斜角が設定値以上の前下がり状態であることが検出されているときは高速上昇操作状態に切り換えることになる。
【0074】
前記制御目標高さ算出処理及び前記操作速度設定処理を実行したのちは、前記制御目標高さ算出処理にて設定された制御目標高さの情報と、前記操作速度設定処理にて設定された操作速度の情報とに基づいて、刈取部10の対地高さが制御目標高さになるように刈取シリンダC1の作動を制御する。
すなわち、後記するような刈取部10の上昇操作及び下降操作のいずれも行われていない状態であれば(ステップ23、24)、下降判別タイミングになっているか否かを判別する(ステップ25)。具体的には、前記回転速度センサ41の回転速度情報に基づいて演算にて求めた走行機体Vの走行距離が設定距離(30cm)に達する毎に下降判別タイミングであると判別するように構成されている。
【0075】
前記下降判別タイミングでなければ、前記高さ偏差が昇降制御用の不感帯を低い側に外れたことが判別されると、そのときの対機体高さセンサ40の検出値を上昇時対地高さとして図示しないメモリに書き込み記憶したのちに、刈取部10を上昇させるべく刈取シリンダC1を作動させる上昇処理を実行する(ステップ26、27、28)。そして、対機体高さセンサ40の検出値に基づいて刈取部10が予め設定されている上昇用目標量(例えば、数cm)を上昇したことを検出するまで上昇操作を実行し、上昇用目標量を上昇すると上昇操作を停止する(ステップ29、30)。この上昇操作を実行しているときは、対地高さセンサ9の検出状態にかかわらず強制的に上昇用目標量を上昇するまで実行することになる(ステップ23、28)。
【0076】
ステップ25にて下降判別タイミングになっていることが判別されると、そのとき、前記高さ偏差が昇降制御用の不感帯を高い側に外れているか否かが判別され、前記高さ偏差が昇降制御用の不感帯を高い側に外れていれば、刈取部10を下降させるべく刈取シリンダC1を作動させる下降操作を実行し、前記高さ偏差が昇降制御用の不感帯内に入ると下降操作を停止する(ステップ31〜34)。そして、刈取シリンダC1を作動させるときは、前記操作速度設定処理にて設定された操作速度で刈取シリンダC1を作動させることになる。
【0077】
〔別実施形態〕
以下、別実施形態を列記する。
【0078】
(1)上記実施形態では、畦際作業用設定量α2、湿田用設定量α3、及び、圃場進入用設定量α4を夫々各別に設定して、畦際スイッチ37が操作されていること、湿田モードであること、前後傾斜角が設定量以上であることの夫々の条件が成立する場合には、それら各設定量を加算するようにしたが、このような構成に限らず、いずれかの条件が成立しているときは、前記基準対地高さH0に対して前傾斜操作用設定量α1を加算した値を制御目標高さHsとして設定し、いずれの条件も成立していなければ、前記基準対地高さH0を制御目標高さHsとして設定するようにしてもよい。つまり、畦際作業用設定量α2、湿田用設定量α3、及び、圃場進入用設定量α4を夫々が、前傾斜操作用設定量α1と同じ大きさであり、しかも、自己が対応する条件のみが成立するときは制御目標高さHsに加算する補正を行うが、他の条件が成立しているときには、加算による補正を行わない構成としてもよい。
【0079】
(2)上記実施形態では、前記畦際作業状態指令手段が備えられ、前記畦際作業状態指令手段にて前記畦際作業状態であることが指令されているときは、前記制御目標高さを畦際作業用設定量だけ高い値に補正するようにしたが、このような畦際作業状態指令手段を備えない構成としてもよい。
【0080】
(3)上記実施形態では、前記前後傾斜角検出手段にて前記走行機体Vの水平基準面に対する前後傾斜角が設定値以上の前下がり状態であることが検出されているときは、前記制御目標高さを圃場進入用設定量だけ高い値に補正するようにしたが、このような補正を行わない構成としてもよい。
【0081】
(4)上記実施形態では、乾田モードを指令する状態と湿田モードを指令する状態とに切り換え自在なモード切換指令手段が備えられ、乾田モードが指令されているときは前記制御目標高さに基づいて前記刈取昇降制御を実行し、湿田モードが指令されているときは前記制御目標高さを湿田用設定量だけ高い値に補正してその補正した制御目標高さに基づいて前記刈取昇降制御を実行するようにしたが、このような補正を行わない構成としてもよい。
【0082】
(5)上記実施形態では、刈取部を操作する操作状態として、標準速度操作状態と高速上昇操作状態とに切り換え自在に構成され、刈取部が地面に突っ込むおそれがあるときに高速上昇操作状態に切り換えるものを例示したが、このような構成に代えて操作速度は常に標準速度に維持する構成としてもよい。
【0083】
(6)上記実施形態では、刈取部を上昇させるときは予め設定した目標量を上昇させる構成とし、刈取部を下降させるときは前記複数の対地高さ検出手段のいずれかの検出値が前記目標対地高さになるまで前記刈取部を下降させるように、前記昇降操作手段を制御する構成としたが、このような構成に代えて、上昇を開始してから設定時間が経過するまで上昇操作を実行する構成としたり、予め設定した目標量を下降させる構成としてもよい。
【0084】
(7)上記実施形態では、前記対地高さ検出手段として、接地体の検出センサを備える構成としたが、超音波センサ等の非接触式の対地高さセンサを用いてもよい。
【0085】
(8)上記実施形態では、前記姿勢変更操作手段として4個の油圧シリンダを備える構成としたが、例えば、走行機体を走行装置に対して機体横方向での軸芯周りで回動自在に支持してその軸芯周りでの回動操作により走行装置の接地部に対する前記走行機体の前後傾斜角を変更操作する構成等であってもよい。
【0086】
(9)上記実施形態では、刈取収穫機としてコンバインを例示したが、コンバインに限らず野菜やイグサの収穫機にも本発明は適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】コンバインの全体側面図
【図2】走行装置の昇降操作構成を示す側面図
【図3】走行装置の昇降操作構成を示す側面図
【図4】走行装置の昇降操作構成を示す側面図
【図5】走行装置の昇降操作構成を示す側面図
【図6】動力伝達図
【図7】制御構成を示すブロック図
【図8】制御作動を示すフローチャート
【図9】制御作動を示すフローチャート
【図10】制御作動を示すフローチャート
【図11】制御作動を示すフローチャート
【符号の説明】
【0088】
1L,1R 走行装置
9 対地高さ検出手段
10 刈取部
22 制御手段
35 モード切換指令手段
36 目標対地高さ設定手段
37 畦際作業状態指令手段
100 姿勢変更操作手段
C1 昇降駆動手段
V 走行機体
α1 前傾斜操作用設定量
α2 畦際作業用設定量
α3 湿田用設定量
α4 圃場進入用設定量

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行機体の前部に昇降自在に連結された刈取部を昇降駆動する昇降駆動手段と、
前記刈取部の対地高さを検出する対地高さ検出手段と、
前記刈取部の目標対地高さを設定する手動操作式の目標対地高さ設定手段と、
走行装置の接地部に対する前記走行機体の前後傾斜角を変更操作自在な姿勢変更操作手段と、
前記走行機体の水平基準面に対する前後傾斜角を検出する前後傾斜角検出手段と、
前記刈取部の対地高さが前記目標対地高さに基づいて定められる制御目標高さになるように前記昇降駆動手段の作動を制御する刈取昇降制御並びに前記走行機体の水平基準面に対する前後傾斜角が設定傾斜角に維持されるように前記姿勢変更操作手段の作動を制御する姿勢制御を実行する制御手段とが備えられた刈取収穫機であって、
前記制御手段が、
前記刈取昇降制御における前記制御目標高さとして、前記刈取部が地面に近付く形態で前記走行装置の接地部に対する前記走行機体の前後傾斜角を前下がり傾斜方向に姿勢変更させているときは、前記目標対地高さ設定手段にて設定される目標対地高さに対応させて定めた基準対地高さよりも前傾斜操作用設定量だけ高い値を定め、前記刈取部が地面に近付く形態で前記走行装置の接地部に対する前記走行機体の前後傾斜角を前下がり傾斜方向に姿勢変更させていないときは、前記基準対地高さを定めるように構成されている刈取収穫機。
【請求項2】
圃場における畦際の作業領域を刈取走行する畦際作業状態であることを指令する手動操作式の畦際作業状態指令手段が備えられ、
前記制御手段が、前記畦際作業状態指令手段にて前記畦際作業状態であることが指令されているときは、前記制御目標高さを畦際作業用設定量だけ高い値に補正するように構成されている請求項1記載の刈取収穫機。
【請求項3】
前記制御手段が、
前記前後傾斜角検出手段にて前記走行機体の水平基準面に対する前後傾斜角が設定値以上の前下がり状態であることが検出されているときは、前記制御目標高さを圃場進入用設定量だけ高い値に補正するように構成されている請求項1又は2記載の刈取収穫機。
【請求項4】
乾田用制御モードを指令する状態と湿田用制御モードを指令する状態とに切り換え自在なモード切換指令手段が備えられ、
前記制御手段が、前記モード切換指令手段にて乾田用制御モードが指令されているときは前記制御目標高さに基づいて前記刈取昇降制御を実行し、前記モード切換指令手段にて前記湿田用制御モードが指令されているときは前記制御目標高さを湿田用設定量だけ高い値に補正してその補正した制御目標高さに基づいて前記刈取昇降制御を実行するように構成されている請求項1〜3のいずれか1項に記載の刈取収穫機。
【請求項5】
前記制御手段が、
前記刈取部を上昇させる操作速度を上昇用標準速度に設定し且つ前記刈取部を下降させる操作速度を下降用標準速度に設定する標準速度操作状態と、前記刈取部を上昇させる操作速度を上昇用標準速度よりも設定量増大側に変更設定し且つ前記刈取部を下降させる操作速度を下降用標準速度よりも設定量減少側に変更設定する高速上昇操作状態とに切り換え自在に構成され、且つ、
前記刈取部が地面に近付く形態で前記走行装置の接地部に対する前記走行機体の前後傾斜角を前下がり傾斜方向に姿勢変更させているときは前記高速上昇操作状態に切り換え、前記刈取部が地面に近付く形態で前記走行装置の接地部に対する前記走行機体の前後傾斜角を前下がり傾斜方向に姿勢変更させていないときは前記標準速度操作状態に切り換える形態にて前記刈取昇降制御を実行するように構成されている請求項1〜4のいずれか1項に記載の刈取収穫機。
【請求項6】
前記制御手段が、
前記刈取部が地面に近付く形態で前記走行装置の接地部に対する前記走行機体の前後傾斜角を前下がり傾斜方向に姿勢変更させていないときに、前記前後傾斜角検出手段にて前記走行機体の水平基準面に対する前後傾斜角が設定値以上の前下がり状態であることが検出されているときは、前記高速上昇操作状態に切り換える形態で前記刈取昇降制御を実行するように構成されている請求項5記載の刈取収穫機。
【請求項7】
前記制御手段が、
前記刈取部を上昇させる操作速度を上昇用標準速度に設定し且つ前記刈取部を下降させる操作速度を下降用標準速度に設定する標準速度操作状態と、前記刈取部を上昇させる操作速度を上昇用標準速度よりも設定量増大側に変更設定し且つ前記刈取部を下降させる操作速度を下降用標準速度よりも設定量減少側に変更設定する高速上昇操作状態とに切り換え自在に構成され、且つ、
前記畦際作業状態指令手段にて前記畦際作業状態であることが指令されているとき及び前記畦際作業状態指令手段にて前記畦際作業状態であることが指令されていない状態で前記刈取部が地面に近付く形態で前記走行装置の接地部に対する前記走行機体の前後傾斜角を前下がり傾斜方向に姿勢変更させているときは、前記高速上昇操作状態に切り換え、前記畦際作業状態指令手段にて前記畦際作業状態であることが指令されていない状態で前記刈取部が地面に近付く形態で前記走行装置の接地部に対する前記走行機体の前後傾斜角を前下がり傾斜方向に姿勢変更させていないときは、前記標準速度操作状態に切り換えるように構成されている請求項2〜4のいずれか1項に記載の刈取収穫機。
【請求項8】
前記制御手段が、
前記畦際作業状態指令手段にて前記畦際作業状態であることが指令されていない状態で前記刈取部が地面に近付く形態で前記走行装置の接地部に対する前記走行機体の前後傾斜角を前下がり傾斜方向に姿勢変更させていないときに、前記前後傾斜角検出手段にて前記走行機体の水平基準面に対する前後傾斜角が設定値以上の前下がり状態であることが検出されているときは前記高速上昇操作状態に切り換えるように構成されている請求項7記載の刈取収穫機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−95286(P2009−95286A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−270441(P2007−270441)
【出願日】平成19年10月17日(2007.10.17)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】