説明

制御された遺伝子または蛋白質送給の方法と装置

遺伝子/蛋白質送給器具とパルス生成装置を含む埋込み型システム、および遺伝子/蛋白質送給器具を準備し、システムを使用する方法が提供される。一実施形態では、埋込み型システムは、所定の条件または事象を検出し、応答して、ペーシングおよび/または除細動パルスの送給と関連して、遺伝子および/または蛋白質を送る。

【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
(優先権の主張)
参照によって本明細書に組み込まれる2004年7月14日に出願された米国特許出願10/890825に対する優先権の利益が、本明細書によって主張される。
【技術分野】
【0002】
本発明は、一般的には、生体組織の遺伝子治療に関し、非限定的に具体的には、埋込み型医療用器具を使用して遺伝子または蛋白質を送る方法と装置に関する。
【背景技術】
【0003】
薬剤または他の医薬品を身体組織に送るための多くの技法が現在存在する。これらには、薬剤が皮膚もしくは他の表面組織の中、またはそれにわたって受動的に吸収される、もしくは通過させられる局所的投与または経皮投与、経口投与、筋肉内注入などによるなど身体組織内への直接注入、および選択された薬剤を血流内に直接導入することを含む静脈内投与がある。経皮薬剤送給システムは、通常、患者の皮膚または他の表面組織を経た薬剤の外部投与に限定され、したがって、薬剤のいくらかが、罹病領域または損傷領域に到達する前に、あるいは罹病領域または損傷領域を超えて運ばれる前に、健康な組織によって吸収される可能性があるので非効率的である。経口投与、注入、静脈内投与は全身系であり、したがって、局所領域に薬剤を集中させることができない。
【0004】
局所薬剤送給システムを使用する薬剤の輸送は、イオン導入などの手段により改善することが可能である。イオン導入は、通常、薬剤のイオン化分子と外部電場との間の相互作用を含み、帯電分子の移動をもたらす。移動は、治療される組織にわたって2つの電極を配置し、比較的低い直流(DC)電圧で電極を帯電させることによって達成される。電極の一方は、ソース電極として作用し、通常、薬剤溶液と接触する。他方の電極は、リターン電極として作用し、電解質溶液で満たされる。2つの電極間に生成される電場により、帯電分子は、1つの電極から、治療される組織に移動する。
【0005】
それにもかかわらず、筋肉の刺激や収縮だけでなく痛みまたは他の望ましくない感覚を含めて、電流を身体内に導入することに関連する問題がある。心臓不整脈(不規則なリズム)の問題は、電流が心臓を通過するとき、容易に生じることがあることがより重要である。この問題を生じる電流源は、冠状動脈からなど、心臓自体の内部にある外部源、または心臓に隣接する外部源から生じることがある。
【0006】
イオン導入において使用される電流の強度(電流密度)、周波数、波形、持続時間は、心臓不整脈や他の問題が生じるとともにそれらの反応の大きさに影響を与える。心室細動が様々な経胸腔電気レベルと心臓内電気レベルに付随して生じる閾値は、より高い周波数の電流と共に増大する。感覚の閾値も、より高い周波数で増大する。たとえば、米国特許第5087243号は、イオン導入に誘発される不整脈の危険性を最小限に抑えることを試行する方法を開示している。パルス電流がアノード・パッチに供給される埋込み心筋イオン導入パッチ・システムが開示されている。患者の心臓における電気活動が監視され、心臓が電気誘発不整脈または不自然な心臓リズムの悪影響を受けやすい間隔を回避するように、イオン導入電流が心室の脱分極と同期してパルス的にオン・オフされる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
電気治療と関連して使用される装置など、遺伝子および/または蛋白質の局所的一時的送給の改良された装置が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、特殊条件を有するまたは特殊条件の危険にある哺乳動物について経腔アクセスが望ましい心筋、血管、またはあらゆる他の臓器もしくは領域にポリマー基質から核酸分子(ポリヌクレオチド)または蛋白質などの治療薬剤を局所的に短期間に送給することを対象とする。たとえば、本発明は、条件に関連するパラメータの検出またはパラメータの変化に応答して、イオン導入により、心臓血管条件を有する、または心臓血管条件に危険にある哺乳動物の心筋に遊離核酸または蛋白質を局所的に投与するために使用することができ、たとえば、遊離核酸および/または蛋白質は、心筋機能を向上させるなど、短期間に変化させるのに有効な量において投与される。イオン導入技術は、核酸または蛋白質などのイオン分子、あるいはイオン溶液の薬剤非イオン分子を駆動するために、浸透性障壁を横切る電位または電流を使用する。イオン導入は、連続的送給またはパルス的送給、ならびに事前にプログラミングされた投与スケジュールで行われる。イオン導入に影響を与える因子には、pH、電流密度、イオン強度、輸送される分子の濃度、輸送される分子のサイズ、電流印加方法(連続電流またはパルス電流)がある。分子の電荷は、溶液のpHを変化させることによって制御することができ、したがって、送給は、カソード・イオン導入またはアノード・イオン導入について調節することができる。したがって、イオン導入は分子の輸送を容易にすることができ、組織浸透を向上することができる。
【0009】
一実施態様では、哺乳動物は、たとえば、野生型(機能)遺伝子産物の発現不足または発現欠如など、遺伝子産物の異常な時間的発現または発現の異常レベルなどの異常発現に関連する条件を有する。哺乳動物におけるその条件を防止、抑制、または治療するために、哺乳動物における埋込み型器具が、イオン導入により、ポリマー基質から核酸を放出する。ポリマー基質は、全長遺伝子産物とほぼ同じ活動を有する遺伝子産物を符号化する遺伝子産物またはその一部のオープン・リーディング・フレームなど、少なくとも1つの遺伝子またはその一部をセンス・オリエンテーション(sense orientation)に含む。一実施態様では、哺乳動物の心筋組織は、心筋における伝導を直接的または間接的に変調する遺伝子、たとえば、ギャップ・ジャンクション蛋白質および/またはイオン・チャネル蛋白質を変調させる遺伝子産物の遺伝子、あるいはギャップ・ジャンクション蛋白質またはイオン・チャネル蛋白質のレベルを変化させる転写調節蛋白質の遺伝子と接触する。他の実施態様では、異常Ifを有する哺乳動物の心房は、ポリマー基質に埋め込まれたプロモータ(発現カセット)に動作可能にリンクされたHCN核酸を含む埋込み型器具と接触する。異常Ifを検出すると、HCN遺伝子は、Ifを変化させる量において心房細胞に送給される。したがって、心筋条件では、ポリマー基質に埋め込まれた、または加えられた遊離核酸および/または蛋白質は、心外膜、心内膜、または心膜に導入され、それにより、全身系送給と比較してより低い投与量の局所化されたトランス心筋送給が行われる。他の実施態様では、ポリマー基質における核酸は、たとえば、複数のサブユニットで形成される分子、サブユニットがポリマー基質の核酸によって符号化される遺伝子産物に対応する分子など、内因性分子の発現またはレベルを下げるのに有用である優性阻害遺伝子産物を符号化する。
【0010】
他の実施態様では、野生型(機能)蛋白質の発現不足に関連する条件を有する哺乳動物における埋込み型器具は、イオン導入により、その条件を防止、抑制、または治療するのに有効な量の蛋白質をポリマー基質から放出する。
【0011】
アンチセンス・オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドは、主に対象遺伝子のメッセンジャーRNAに結合することによって、遺伝子の発現を抑制することができ、したがって、特殊条件に関連する遺伝子産物の発現を遮断する能力を有する。したがって、一実施態様では、ポリマー基質における核酸は、アンチセンス・オリエンテーションにおいて、オリゴヌクレオチドなど、遺伝子またはその一部を含む。一実施形態では、対応する内因性遺伝子を有する哺乳動物細胞に核酸が存在することにより、内因性遺伝子の発現が抑制される。一実施態様では、内因性遺伝子は、過剰発現する野生型(機能)遺伝子産物を符号化する。他の実施態様では、内因性遺伝子は、変化した活動または優性阻害を有するものなど、変異遺伝子産物を符号化する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
必ずしも縮尺調整されて描かれていない図面において、同じ符号は、いくつかの図にわたって同じ構成要素を記載する。図面は、一般的には、例示としてであって限定としてではなく、本文書において議論される様々な実施形態を示す。図面は、例示のみを目的とし、縮尺調整されておらず、また解剖学的に精確ではない。
【0013】
以下の詳細な説明では、その一部を形成し、本発明を実施することが可能である特定の実施形態が例示として示される添付の図面を参照する。これらの実施形態は、当業者が本発明を実施できるように十分詳細に説明される。実施形態は、組み合わせることが可能であり、または他の実施形態が使用されることが可能であり、その構造的、論理的、または電気的な変更が、本発明の精神と範囲から逸脱せずに行われることが可能であることを理解されたい。以下の詳細な説明は、例を提供し、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される。
【0014】
本開示における「1つの」、「一」、または「様々な」実施形態という言及は、必ずしも同じ実施形態に対するものではなく、そのような言及は、2つ以上の実施形態を考慮することに留意されたい。
【0015】
定義
「核酸」、「オリゴヌクレオチド」、「ポリヌクレオチド」、または文法的な均等物によって、本明細書では、互いに共有的にリンクされた少なくとも2つのヌクレオチドを意味する。
【0016】
「ポリヌクレオチド」は、リボヌクレオチドまたはデオキシリボヌクレオチド、あるいはその類似物である、任意の長さのヌクレオチドの重合形態を指す。この用語は、分子の1次構造を指し、したがって二本鎖DNAと一本鎖DNA及び二本鎖RNAと一本鎖RNA、さらに二本鎖配列または一本鎖配列の両方の一部を含む。ポリヌクレオチドは、ポリヌクレオチドがデオキシリボヌクレオチドとリボヌクレオチドの任意の組合せ、およびウラシル、アデニン、チミン、シトシン、グアニン、イノシン、キサニン(xathanine)、ヒポキサニン(hypoxathanine)などの塩基の任意の組合せを含む場合、DNA、ゲノムおよびcDNAの両方、RNAまたはハイブリッドとすることが可能である。したがって、たとえば、Colo−Straussら、Science、273:1386(1996年)、およびYoonら、Proc.Natl.Acad.Sci、USA、93:2071(1996年)に記載されているように、キメラDNA−RNA分子が使用できる。また、メチル化および/またはキャップ・ポリヌクレオチドなど、変性ポリヌクレオチドも含む。
【0017】
「オリゴヌクレオチド」は、Sambrookら、A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Press(1989年)など、当技術分野において周知の方法によって確定されるように、RNAまたはDNAである少なくとも7つのヌクレオチド、好ましくは15、より好ましくは20以上の連続ヌクレオチド、最高で100のヌクレオチドを含み、ヌクレオチドは、選択されたmRNAの非コーディング鎖またはコーディング鎖の補体に対応し、あるいは、mRNAまたはmRNAを符号化するDNAにハイブリッド化され、中程度に厳しい、または高度に厳しい条件の下で依然として安定に結合している。
【0018】
「遊離」という用語は、核酸、ペプチド、またはポリペプチドに関係して使用されるとき、少なくとも1つの汚染核酸、ポリペプチド、または通常は自然源において関連付けられる他の生物学的構成要素から識別および分離される核酸配列、ペプチド、またはポリペプチドを指す。遊離核酸、ペプチド、またはポリペプチドは、自然に見られる形態とは異なる形態またはセッティングにおいて存在する。たとえば、所与のDNA配列(たとえば、遺伝子)は、隣接遺伝子に近接する宿主細胞の染色体上において見られる。特定の遺伝子を符合化する特定のmRNA配列などのRNA配列は、複数の蛋白質を符号化する多くの他のmRNAとの混合物として細胞において見られる。遊離核酸分子は、一本鎖または二本鎖の形態において存在する。遊離核酸分子が蛋白質を発現させるために使用されるとき、分子は、最低でもセンス鎖またはコーディング鎖を含む(すなわち、分子は、単一鎖とすることが可能である)が、センス鎖(およびアンチセンス鎖の両方を含む(すなわち、分子は、二本鎖とすることが可能である)。
【0019】
ポリヌクレオチドに加えられる「組換え体」は、ポリヌクレオチドが、クローン化、制約、および/または結紮のステップ、ならびに自然に見られるポリヌクレオチドとは別個の構成体をもたらす他の手順の様々な組合せの産物であることを意味する。蛋白質に加えられた組換え体は、蛋白質が組換え体ポリヌクレオチドの発現の産物であることを意味する。
【0020】
「遺伝子」は、一般的に、遺伝子産物の配列を含むポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチドの一部を指す。ほとんどの状況について、遺伝子は、転写を有効に促進するために、コーディング配列に動作可能にリンクされたプロモータをも備えることが望ましい。エンハンサ、抑制因子、その他の調節配列が、当技術分野において周知であるように、遺伝子の活動を変調させるために含まれてもよい。
【0021】
「ポリペプチド」、「ペプチド」、「蛋白質」という用語は、任意の長さのアミノ酸のポリマーを指すために交換可能に使用される。これらの用語は、グリコシル化、アセチル化、リン酸化を含む反応により翻訳後に変性される蛋白質をも含む。
【0022】
「DNA」によって、とりわけ線形DNA分子(たとえば、抑制断片)、ウィルス、プラスミド、染色体おいて見られる二本鎖または一本鎖の形態にあるデオキシリボヌクレオチド(アデニン、グアニン、チミン、またはシトシン)の重合形態を意味する。特定のDNA分子の構造の議論において、配列は、DNAの非転写鎖(すなわち、mRNAに対して相補的な配列を有する鎖)に沿って5’から3’の方向における配列のみを与える通常の規定に従って本明細書において説明されることが可能である。用語は、4つの塩基アデニン、グアニン、チミン、またはシトシンを含む分子、ならびに当技術分野において既知の塩基類似物を含む分子を捕捉する。
【0023】
本明細書において使用される際、「相補的」または「相補性」という用語は、塩基対形成規則によって関係付けられるポリヌクレオチド(すなわち、ヌクレオチドの配列)を指すために使用される。たとえば、配列「A−G−T」は、配列「T−C−A」に対して相補的である。相補性は、「部分的」であることが可能であり、この場合、核酸塩基のいくらかのみが塩基対化規則に従って整合される。あるいは、核酸の間に「完全」または「全面的」な相補性があることが可能である。核酸鎖間の相補性の程度は、核酸鎖間のハイブリッド化の効率と強度に対して著しい影響を有する。これは、増幅反応において、および核酸の間の結合に依存する検出方法において得に重要である。
【0024】
DNA分子は「5’端部」と「3’端部」を有すると言われるが、その理由は、モノヌクレオチドは、1つのモノヌクレオチド・ペントース・リングの5’リン酸塩が、ホスホジエステル・リンクにより一方向において付近の3’酸素に取り付けられるような方式で、オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドを作成するように反応するからである。したがって、オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドの端部は、5’リン酸塩がモノヌクレオチド・ペントース・リングの3’酸素にリンクされない場合、「5’端部」と呼ばれ、3’酸素が後続モノヌクレオチド・ペントース・リングの5’リン酸塩にリンクされない場合、「3’端部」と呼ばれる。本明細書において使用される際、核酸配列は、より大きなオリゴヌクレオチドまたはヌクレオチドの内部にある場合でも、5’および3’端部を有すると言われることが可能である。線形または円形のDNA分子では、離散要素は、「下流」または3’要素の「上流」または5’にあると言われる。この専門用語は、転写がDNA鎖に沿って5’から3’の方式において進行するということを反映する。リンクされた遺伝子の転写を命令するプロモータとエンハンサ要素は、一般に、コーディング領域の5’または上流に位置する。しかし、エンハンサ要素は、プロモータ要素とコーディング領域の3’に位置するときでも、影響を及ぼすことができる。転写終結信号とポリアデニル化信号が、コーディング領域の3’または下流に位置する。
【0025】
「相同性」は、2つのポリヌクレオチドまたは2つのポリペプチド間の同一性パーセントを指す。1つの配列と他の配列との間の対応は、当技術分野において既知の技法によって決定することができる。たとえば、相同性は、配列情報を位置合わせし、かつ容易に利用可能なコンピュータ・プログラムを使用することによって、2つのポリペプチドまたはポリヌクレオチド分子間の配列情報を直接比較することによって決定することができる。代替として、相同性は、相同性領域間において安定な二本鎖を形成する条件下において、ポリヌクレオチドをハイブリッド化し、次いて単一鎖特有ヌクレアーゼで消化し、消化断片のサイズを決定することによって決定することができる。2つのDNA、または2つのポリペプチドの配列は、ヌクレオチドまたはアミノ酸の少なくとも約80%、好ましくは少なくとも約90%、最も好ましくは少なくとも約95%が、上記の方法を使用して決定されるように、分子の決められた長さにわたってそれぞれ整合するとき、互いに「ほぼ相同」である。
【0026】
「発現構成体」または「発現カセット」によって、直接転写することができる核酸分子を意味する。発現構成体は、少なくともプロモータを含む。エンハンサおよび/または転写終結信号などの追加の要素が含まれてもよい。
【0027】
遺伝子配列と制御配列などの核酸配列に関係する「非相同性」という用語は、通常は共に接合されず、かつ/または通常は特定の細胞に関連付けられない配列を表す。したがって、核酸構成体またはベクターの「非相同性」領域は、自然において他の分子に関連して見られることのない他の核酸分子内にある、またはそれに添付された核酸のセグメントである。たとえば、核酸構成の非相同性領域は、自然においてコーディング配列に関連して見られることのない配列によってフランクされたコーディング配列、すなわち非相同性プロモータを含む。非相同性コーディング配列の他の例は、コーディング配列自体が自然において見られない構成体である(たとえば、未変性の遺伝子とは異なるコドンを有する合成配列)。同様に、細胞に通常は存在しない構成体で変形された細胞は、本発明の目的では非相同性であると見なされる。
【0028】
「制御要素」という用語は、プロモータ領域、ポリアデニル化信号、転写終結配列、上流調節ドメイン、複製の起点、内部リボソーム・エントリ・サイト(「IRES」)、エンハンサ、スプライス接合などを集団的に指し、これらは、受容細胞におけるコーディング配列の複製、転写、転写後処理、翻訳を集団的に行う。選択されたコーディング配列が、適切な宿主細胞において複製、転写、翻訳することができる限り、これらの制御要素のすべてが、常に存在する必要はない。
【0029】
「プロモータ領域」という用語は、本明細書では、DNA調節配列を備えるヌクレオチド領域を指すために、通常の意味で使用され、調節配列は、RNAポリメラーゼを結合し、下流(3’方向)コーディング配列の転写を開始することができる遺伝子から導出される。したがって、「プロモータ」は、動作可能にリンクされる遺伝子またはコーディング配列の転写を制御するポリヌクレオチド配列を指す。構成、誘発、抑制プロモータを含めて、様々な異なる源からの多数のプロモータが、当技術分野において周知である。
【0030】
「エンハンサ要素」によって、プロモータに近接して配置されるとき、エンハンサ・ドメインがない場合にプロモータから得られる転写活動に対して、転写活動の増大を付与する核酸配列を意味する。したがって、「エンハンサ」は、動作可能にリンクされる遺伝子またはコーディング配列の転写を促進するポリヌクレオチド配列を含む。様々な異なる源からの多数のエンハンサが、当技術分野において周知である。プロモータ配列(一般的に使用されるCMVプロモータなど)を有するいくつかのポリヌクレオチドも、エンハンサ配列を有する。
【0031】
「心臓特有エンハンサまたはプロモータ」によって、プロモータに動作可能にリンクされるとき、または単独のとき、それぞれ、心臓細胞において遺伝子発現を命令し、すべての組織またはすべての細胞タイプにおいて遺伝子発現を命令しない要素を意味する。心臓特有エンハンサまたはプロモータは、自然に生じたり、あるいは生じないこともある。当業者なら、自然には生じないエンハンサまたはプロモータの合成は、標準的なオリゴヌクレオチド合成技法を使用して実施することができることを理解するであろう。
【0032】
「動作可能にリンクされる」は、そのように記述される構成要素が、意図した方式で構成要素が機能することを可能にする関係にある並置を指す。核酸分子に関して「動作可能にリンクされる」ことによって、2つ以上の核酸分子(たとえば、転写される核酸分子、プロモータ、エンハンサ要素)が、核酸分子の転写を可能にするような方式で接続されることを意味する。プロモータがコーディング配列の転写を制御する場合、プロモータがコーディング配列に動作可能にリンクされる。動作可能にリンクされたプロモータは、一般に、コーディング配列の上流に位置するが、必ずしもコーディング配列と隣接しない。エンハンサがコーディング配列の転写を増大させる場合、エンハンサは、コーディング配列に動作可能にリンクされる。動作可能にリンクされたエンハンサが、コーディング配列の上流、その内部、または下流に配置することができる。転写がコード配列を経てポリアデニル化配列に進行するように、ポリアデニル化配列がコーディング配列の下流端に位置する場合、ポリアデニル化配列がコーディング配列に動作可能にリンクされる。ペプチドおよび/またはポリペプチド分子に関して「動作可能にリンクされる」ことは、2つ以上のペプチドおよび/またはポリペプチド分子が、融合の各ペプチドおよび/またはポリペプチド成分の少なくとも1つの特性を有する単一ポリペプチド鎖、すなわち融合ポリペプチドをもたらすような方式で接続されることを意味する。したがって、単一または対象のペプチド配列は、結果的な融合が、分泌信号ペプチドが存在する結果として細胞から分泌される場合、または細胞小器官対象ペプチドが存在する結果として細胞小器官内に分泌される場合、他の蛋白質に動作可能にリンクされる。
【0033】
本明細書において使用される「遺伝子送給」、「遺伝子移入」などは、導入に使用される方法に関係なく、外因性ポリヌクレオチド(「導入遺伝子」と呼ばれることがある)を宿主細胞に導入することを指す用語である。そのような方法は、ベクター介在遺伝子移入(たとえば、ウィルス感染/トランスフェクション、または様々な他の蛋白質ベースもしくは脂質ベースの送給複合体による)などの様々な周知の技法、ならびに「裸」ポリヌクレオチドの送給を容易にする技法(電気穿孔、イオン導入、「遺伝子銃」送給、さらにポリヌクレオチドを導入するために使用される様々な他の技法)を含む。導入されたポリヌクレオチドは、宿主細胞において安定にまたは過渡的に維持することが可能である。たとえば、遊離核酸が細胞のゲノムにおいて染色体外に維持されない、または統合されない一実施形態では、導入されたポリヌクレオチドは、細胞において過渡的に維持される。安定な維持は、通常、導入されたポリヌクレオチドが、宿主細胞と共存可能な複製の起点を含む、あるいは染色体外レプリコン(たとえば、プラスミド)などの宿主細胞のレプリコン、または核染色体もしくはミトコンドリア染色体に統合されることを必要とする。
【0034】
「導入遺伝子」は、工夫によって細胞に過渡的または永続的に挿入され、ゲノムに統合される、または染色体外に維持される場合、有機体の一部となる核酸分子(たとえば、DNA)の任意の一部を意味する。そのような導入遺伝子は、トランスジェニック有機体と一部または完全に非相同性(すなわち、異物)である遺伝子を含むか、あるいは、有機体の内因性遺伝子と相同性の遺伝子を表す。
【0035】
本明細書において使用される「イン・ビボ」遺伝子/蛋白質送給、遺伝子/蛋白質移入、遺伝子/蛋白質治療などは、外因性(遊離)ポリヌクレオチドまたは蛋白質をヒトまたはヒト以外の哺乳動物などの有機体の身体に直接導入し、それにより、外因性ポリヌクレオチドまたは蛋白質がイン・ビボでそのような有機体の細胞に導入されることを指す用語である。
【0036】
「ベクター(遺伝子送給または遺伝子移入「賦形剤」と呼ばれることがある)は、イン・ビトロまたはイン・ビボで宿主細胞に送給されるポリヌクレオチドまたは蛋白質を備える高分子または分子の複合体を指す。ベクターは、たとえば、発現ベクター、ウィルス・ベクター(アデノウィルス(「Ad」)、アデノ関連ウィルス(AAV)、レンチウィルス、ポックスウィルス、パピローマ・ウィルス、ヘルペスウィルス、レトロウィルスなど)、リポソーム、その他の脂質包含複合体、さらに宿主細胞へのポリヌクレオチドまたは蛋白質の送給を介在または向上させることができる他の高分子複合体がある。ベクターは、遺伝子送給および/または遺伝子発現をさらに変調させる、あるいはそうでない場合は有益な特性を対象細胞に提供する他の構成要素または機能を備えることもできる。そのような他の構成要素には、たとえば、細胞への結合または対象化に影響を与える構成要素(細胞のタイプまたは組織特有結合を仲介する構成要素を含む)、細胞による核酸または蛋白質の取入れに影響を与える構成要素、取入れ後に細胞内のポリヌクレオチドまたは蛋白質の局在化に影響を与える構成要素(核酸局在化を介在する薬剤など)、ポリヌクレオチドの発現に影響を与える構成要素がある。そのような構成要素は、取り入れた細胞を検出または選択するために使用することができ、導入された核酸を発現している検出可能および/または選択可能なマーカなど、マーカを含むことも可能である。そのような構成要素は、ベクターの自然特徴として提供することができ(結合および取入れを介在する構成要素または機能を有するある種のウィルス・ベクターの使用など)、または、ベクターは、そのような機能を提供するように変性させることができる。多様なそのようなベクターが、当技術分野において知られており、一般的に利用可能である。
【0037】
「治療ポリヌクレオチド」、「治療遺伝子」、または「治療蛋白質」は、個体の細胞に移入されるとき、個体において予防、治療、または他の有益な効果を誘発することができるヌクレオチド配列またはアミノ酸配列を指す。
【0038】
「対応する」という用語は、本明細書では、ポリヌクレオチドまたは蛋白質配列が、基準ポリヌクレオチドまたは蛋白質配列のすべてまたは一部と相同性である(すなわち、同様または同一である可能性があるが、厳密に発展的には関係付けられない)ことを意味するために使用される。対照的に、「相補的」という用語は、本明細書では、相補的なポリヌクレオチド配列が他の鎖にハイブリッド化することができることを意味するために使用される。以下で概述するように、2つの配列間の相同性は、少なくとも70%、好ましくは85%、より好ましくは95%、同一であることが好ましい。
【0039】
「ほぼ対応する」または「実質的同一性」あるいは「相同性」という用語は、本明細書では、核酸または蛋白質の配列が、基準配列と比較して少なくとも約70%の配列同一性、基準配列と比較して通常は少なくとも約85%の配列同一性、好ましくは少なくとも約95%の配列同一性を有する、核酸または蛋白質の配列の特徴を表すために使用される。基準配列は、遺伝子またはフランキング配列の一部、あるいは蛋白質の一部など、より大きな配列の副集合とすることが可能である。しかし、基準配列は、少なくとも20ヌクレオチドの長さ、通常は少なくとも約30ヌクレオチドの長さ、好ましくは少なくとも約50から100のヌクレオチドの長さであり、または、ペプチドもしくはポリペプチドでは、少なくとも7のアミノ酸の長さ、通常は少なくとも10のアミノ酸の長さ、好ましくは少なくとも20から30のアミノ酸の長さである。本明細書において使用される「ほぼ相補的」は、基準配列にほぼ対応する配列に対して相補的であるヌクレオチド配列を指す。
【0040】
「特定のハイブリッド化」は、本明細書では、基準配列および選択された対象核酸配列と比較して、置換、欠失、および/または追加を含むポリヌクレオチド間のハイブリッドの形成として定義され、ポリヌクレオチドは、たとえば、対象核酸配列を含む細胞から準備されたDNAのノザンブロットまたはサザンブロットに関して少なくとも1つの離散帯域を同定することができるように、対象核酸配列に優先的にハイブリッド化する。最適なハイブリッド化条件は、ポリヌクレオチドと対象の配列組成や長さに応じて、さらには実行者によって選択される実験方法に応じて変わることが明らかである。様々なガイドラインを、適切なハイブリッド化条件を選択するために使用できる(Maniatisら、1989年、ならびにBergerおよびKimmel、1987年を参照されたい)。
【0041】
「野生型」という用語は、自然に生じる源から遊離しているときの遺伝子または遺伝子産物の特徴を有する遺伝子または遺伝子産物を指す。野生型遺伝子は、ポピュレーションにおいて最も頻繁に観測され、したがって、遺伝子の「通常」形態または「野生型」形態が任意に指定される。対照的に、「変性」または「変異体」という用語は、野生型遺伝子または遺伝子産物と比較するとき、配列および/または機能特性の変性(すなわち、変更された特徴)を表す遺伝子または遺伝子産物を指す。自然に生じる変異体は遊離することができることに留意されたい。これらは、野生型遺伝子または遺伝子産物と比較するとき、特徴を変化させていることによって同定される。
【0042】
本明細書において使用される際、「疾患アレル」という用語は、認識可能な疾患を生成することができる遺伝子のアレルを指す。疾患アレルは、優性または劣性とすることが可能であり、直接、または特定の遺伝子背景もしくは既存の病理学条件と組み合わされて存在するとき、病気を生成する。疾患アレルは、遺伝子プール(遺伝性疾患アレル)に存在することが可能であり、または、体細胞変異(獲得疾患アレル)によって個体において改めて生成することが可能である。
【0043】
「脈管構造」または「脈管」は、哺乳動物の身体にわたって血液(およびリンパ液)を搬送する血管システムを指す用語である。
【0044】
「血管」は、動脈、細動脈、毛細血管、細静脈、静脈、洞、脈管の脈管を含めて、哺乳動物脈管システムの血管のいずれかを指す。
【0045】
「動脈」は、血液が心臓から離れて通過する血管を指す。冠状動脈は、心臓自体の組織に送給し、他の動脈は、身体の残りの臓器に送る。動脈の全体的な構造は、多層動脈壁によって囲まれた管腔からなる。
【0046】
「哺乳動物」によって、非限定的に、ヒト、チンパンジー、その他の類人猿や猿種などのヒトではない霊長類、ウシ、ヒツジ、ブタ、ヤギ、ウマなどの家畜動物、イヌやネコなどの家庭用哺乳動物、ネズミ、ラット、ウサギ、モルモットなどのげっ歯類などの実験動物を含めて、マンモリアのクラスのいずれかのメンバを意味する。
【0047】
「から導出される」によって、核酸分子が、親核酸分子から作成または設計されたことを意味し、派生物は、作成または設計された元である親核酸分子によって符号化された遺伝子産物とほぼ同じ活動を有して遺伝子産物を符号化するなど、親核酸分子とほぼ同じ機能特徴を維持することを意味する。
【0048】
「外因性」という用語は、細胞または生物体における蛋白質、遺伝子、核酸、またはポリヌクレオチドに関して使用されるとき、人工手段または自然手段によって細胞または生物体に導入された蛋白質、遺伝子、核酸、またはポリヌクレオチドを指し、あるいは細胞に関して使用されるとき、人工手段または自然手段によって遊離され、その後他の細胞または生物体に導入された細胞を指す。外因性核酸は、異なる生物体または細胞からとすることが可能であり、あるいは、生物体または細胞の内部において自然に生じる核酸の1つまたは複数の追加のコピーとすることが可能である。外因性細胞は、異なる生物体からとすることが可能であり、または、同じ生物体からとすることが可能である。非限定的な例として、外因性核酸は、自然細胞のものとは異なる染色体位置にあり、またはそうでない場合は、自然において見られるものとは異なる核酸配列によってフランクされる。
【0049】
「成長因子」によって、少なくとも、細胞の成長を促進する、または表現変化を誘発する作用物質を意味する。
【0050】
「脈管形成」という用語は、単独でまたは他の作用物質と組み合わされて脈管形成を誘発し、非限定的に、線維芽細胞成長因子(FGF)、脈管内皮成長因子(VEGF)、肝実質細胞成長因子、アンギオゲニン、形質転換成長因子(TGF)、組織ネクローシス因子(TNF−αなどのTNF)、血小板誘導成長因子(PDGF)、顆粒球コロニー刺激因子(GCSF)、胎盤GF、IL−8、プロリフェリン、アンギオポイエチン−1およびアンギオポイエチン−2などのアンギオポイエチン、トロンボスポンジン、エフリン−A1、E−セレクチン、レプチン、ヘパリン親和性調節ペプチドを含む作用物質を意味する。
【0051】
「心臓血管条件」には、非限定的に、冠状動脈疾患/虚血、冠状動脈疾患(CAD)、虚血、アンギナ(胸部痛)、血栓症、冠状血栓症、心筋梗塞(MI)、無症状虚血、狭窄/再狭窄、一時的脳虚血性発作(TIA)、アテローム性動脈硬化症、抹消血管疾患、たとえば徐脈型不整脈、徐脈、シック・サイナス・リズム(洞機能不全症候群)、洞性徐脈、洞房遮断、不全収縮、洞停止、失神、第1度心房−心室(AV)遮断、第2度心房−心室(AV)遮断、第3度心房−心室(AV)遮断、変事性機能不全である徐脈型不整脈、たとえば頻脈性不整脈、頻脈、細動、粗動、心房細動、心房粗動、家族性心房細動、発作性心房細動、永久心房細動、持続性心房細動、上方心室頻脈性不整脈、洞頻脈、再入(リエントラント不整脈)、AV結節再入、限局性不整脈、転位、心室細動(VF)、心室頻脈(VT)、ウォルフ・パーキンソン・ホワイト症候群(WPW)、突然心臓死である頻脈性不整脈、たとえば心不全、心筋症、うっ血性心不全、肥大性心筋症、リモデリング、非虚血性心筋症、拡張期心筋症、拘束性心筋症、拡張期心不全、収縮期心不全、慢性心不全である心不全、たとえば心房心室(AV)遮断、束枝遮断(BBB)、左束枝遮断(LBBB)、右束枝遮断(RBBB)、長期QT症候群(LQTS)、早発性心室収縮(PVC)、電気リモデリング、心室内伝導欠損、ヘミブロックである心臓ブロック/電気障害、たとえば高血圧症、低血圧症、左心室機能不全、低駆出率、低心拍出量、低1回心拍出量である血行動態欠乏、突然心臓死、心臓停止、突然心臓死(SCD)、心室細動、ポンプ不全、細菌性心内膜炎、ウィルス性心筋炎、心膜炎、リウマチ性心臓疾患、失神がある。具体的には、心臓血管条件は、非限定的に、たとえば心房細動、心室細動または徐脈、虚血、心不全、腫瘍性疾患に関連しない過形成症である不整脈があり、この条件は、心室リモデリング、拡張期機能不全、異常体温、たとえば変化された静脈、左心室、または左心房の圧力である異常または変化圧力、異常または変化心拍または心音、異常または変化電位図、たとえば変化血液pH、グルコース、pO2、pCO2、分時換気、クレアチン、CRP、Mef2A、クレアチン・キナーゼ、またはクレアチン・キナーゼMBレベルである異常または変化心臓代謝、異常または変化肺インピーダンスまたは胸部インピーダンス、異常または変化1回心拍出量、異常または変化神経ホルモン・レベル、異常または変化電気活動、異常または変化交感神経活動、異常または変化腎出力、異常または変化ろ過率、異常または変化アンギオテンシンIIレベル、あるいは異常または変化呼吸音などに関連付けることが可能である。
【0052】
本明細書において使用される「処置」または「治療」は、個々において予防、治療、または他の有益な効果を誘発することができる薬剤を個々の患者に投与することを指す。
【0053】
本明細書において使用される「遺伝子治療」は、治療遺伝子を備えるベクターを個々の患者に投与することを指す。
【0054】
本明細書において使用される「使用者」は、患者を治療するために遺伝子/蛋白質送給システムを使用する医師または他の介護者を含む。
【0055】
総括
本発明は、1つまたは複数の遺伝子および/または1つまたは複数の蛋白質に基づく治療薬剤や、非遺伝子、非蛋白質に基づく治療薬剤を空間的に制御された方式で哺乳動物の細胞または組織に短期間に送給するシステムを提供する。細胞に導入され、任意選択で細胞内で発現されたときの遊離核酸、または細胞に導入されたときの遊離蛋白質は、遊離核酸または遊離蛋白質と接触していない対応する細胞とは異なる表現型を有する細胞をもたらす。いくつかの実施形態では、遊離核酸または蛋白質は、自然に生じる配列とは異なる。一実施形態では、治療される哺乳動物は、心臓血管条件を有する、またはその危険にある。たとえば、哺乳動物は、心房細動、心室頻脈、心不全、虚血、除脈、または過形成を有する、またはその危険にある可能性がある。
【0056】
本文書は、埋込み型イオン導入遺伝子/蛋白質送給器具、および埋込み型パルス生成装置を含む遺伝子/蛋白質送給システムをも議論する。本文書では、「遺伝子/蛋白質送給」は、遺伝子、蛋白質、任意選択で、心臓血管条件などの条件の少なくとも1つの症状(発現)を抑制、予防、または治療するのに有用な他の成分を含む。埋込み型イオン導入遺伝子/蛋白質送給器具は、1つまたは複数の遺伝子および/または1つまたは複数の蛋白質、さらに任意選択で、1つまたは複数の非核酸、非蛋白質に基づく薬剤を哺乳動物に送ることができる。本明細書において使用される際、「遺伝子」は、遺伝子産物(センス・オリエンテーション)を符号化する全長オープン・リーディング・フレームを含むポリヌクレオチド、または全長オープン・リーディング・フレームによって符号化された遺伝子産物とほぼ同じ活性を有する遺伝子産物を符号化する蛋白質(センス・オリエンテーション)、全長オープン・リーディング・フレーム(アンチセンス・オリエンテーション)の補体、任意選択でオリゴヌクレオチドなどのリンクされた5’および/または3’非コーディング配列またはその蛋白質などのポリヌクレオチドの補体がある。ポリヌクレオチドは、対応するmRNAの転写、安定性、または翻訳を抑制するのに有用である。一実施形態では、本発明のポリヌクレオチドは、非限定的に、プロモータ、エンハンサ、イントロン、コザック配列、または転写終結配列を含めて、動作可能にリンクされた転写要素を含む。他の実施形態では、本発明のポリヌクレオチドは、転写要素を含まない。一実施形態では、本発明のポリヌクレオチドは、1つまたは複数の変性糖、塩基、またはリン酸基を有するものなど、変性ヌクレオチドを含む。したがって、本発明の核酸は、リン酸エステル結合を含むが、いくつかの場合、モルフォリノ変性オリゴまたはポリ−ヌクレオチド(Kangら、Biopolymers、32:1351(1992年);Summertonら、Antisense Nucl.Acid.Drug Dev.、7:187(1997年);米国特許第5142047号および第5185444号)、ならびにペプチド核酸バックボーンと連鎖(Nielsen、Orig.Life Evol.Biosph.、23:323(1993年))を含めて、たとえばホスホラミド(Beaucageら、Methods Mol.Biol.、20:33(1993年);Letsinger、J.Org.Chem.、35:3800(1970年);Sprinzlら、Eur.J.Biochem、81:579(1977年);Letsingerら、Nucl.Acids Res.、14:3487(1986年))、ホスホロチオネート(Phosphorothioate)、ホスホロジチオネート(Phosphorodithioate)、O−メチルホスホロアミダイト(O−methylphosphoroamidite)連鎖を備える、交互バックボーンを有することが可能である核酸類似物が含まれる。リボソリン酸バックボーンまたは塩基の変性は、2’O−メチルおよび5’変性置換物を含めて、化学成分などの他の成分の追加を可能にするため、および/または生理学的環境においてそのような分子の安定性および寿命を増大させるために実施することが可能である。具体的には、ベクターから発現しないアンチセンス核酸では、塩基変性(Herdewijnら、Antisense Nucl.Acid.Drug Dev.、10:297(2000年);Mangosら、Curr.Topics Med.Chem.、7、1147(2002年))、アラビノース派生物(Wildsら、Bioconi.Chem.、10:299(1999年))などの糖変性(Urbanら、Farmaco、58:243(2003年));および2’メチオキシエトキシ(Kimberら、Reprod.Biomed.Online、6:318(2003年));ならびに/あるいは5−(N−アミノヘキシル)カルバミル−2’−O−メチルウリジン(Itoら、NAR、31:2514(2003年))が、安定性をイン・ビボで向上させるために使用できる。さらに、核酸は、2’−O−メチル−リボヌクレオチドなどのデオキシリボヌクレオチドおよびリボヌクレオチドなど、たとえばDNAおよびRNAで作成されたキメラとすることが可能である(発表された米国特許出願20030045830を参照されたい)。
【0057】
遊離核酸または蛋白質は、組換え手段または化学合成により準備することが可能である。たとえば、遊離核酸は、プラスミド、ウィルス・ベクター、コスミド、ファージ、BAC、YAC、もしくは他の人工染色体、プラスミドもしくは他のベクターが形質移入された、または組換えウィルスに感染した細胞からの遊離核酸、あるいはイン・ビトロ転写核酸とすることが可能である。上述されたように、一実施形態では、遊離核酸は、加水分解に対してより安定であるものなど、変性ヌクレオチドを含み、この核酸は、化学合成により準備される。一実施形態では、遊離核酸は、RNAポリメラーゼによって転写し、対象核酸にハイブリッド化することができ、一方、他の実施形態では、遊離核酸は、アンチセンス核酸などの対象核酸にハイブリッド化することができるが、イン・ビボで転写することはできない。
【0058】
本発明のシステムと方法に有用な蛋白質は、たとえば、固体相ペプチド合成方法によって、または組替えDNA手法によって、イン・ビトロで合成することができる。固体相ペプチド合成方法は、確立されて広範に使用される方法であり、以下の参考文献において記載されている:Stewartら、Solid Phase Peptide Synthesis、W.H.Freeman Co.、サン・フランシスコ(1969年);Merrifield、J.Am.Chem.Soc.、852149(1963年);「Hormonal Proteins and Peptides」、edにおけるMeienhofer;C.H.Li、Vol.2(Academic Press、1973)、48〜267ページ;BavaayおよびMerrifield「The Peptides」eds.E.GrossおよびF.Meienhofer、Vol.2(Academic Press、1980)3〜285ページ;ならびにClark−Lewisら、Meth.Enzymol.、287、233(1997年)。これらの蛋白質は、免疫親和性またはイオン交換カラムに関する分割、エタノール沈殿、反転相HPLC、シリカまたはDEAEなどのアニオン交換樹脂に関するクロマトグラフィ、クロマトフォーカシング、SDS−PAGE、硫酸アンモニウム沈殿、セファデックスG−75などを使用するゲルろ過、または配意子親和性クロマトグラフィによって、さらに精製することができる。
【0059】
遊離されて特徴付けられた後、所与の蛋白質の化学的に導出された派生物などの派生物は、容易に準備することができる。たとえば、蛋白質のアミドは、カルボキシル酸基または先駆物質をアミドに変換するための当技術分野において周知の技法によって準備することも可能である。C末端カルボキシル基においてアミドを形成する好ましい方法は、適切なアミンで固体支持体から蛋白質を劈開する、またはアルコールが存在する状態で劈開し、エステルをもたらし、続いて望ましいアミノでアミノ分解する。
【0060】
蛋白質のカルボキシル基の塩は、たとえば、水酸化ナトリウムなどの金属水酸基、たとえば炭酸ナトリウムまたは重炭酸ナトリウムなどの金属炭酸塩基または重炭酸塩基、あるいはトリエチルアミン、トリエタノールアミンなどのアミン塩基などの望ましい塩基の1つまたは複数の均等物を蛋白質と接触させることによって、通常の方式で準備することが可能である。
【0061】
蛋白質のアミノ基のNアシル派生物は、最終凝縮についてNアシル保護アミノ酸を使用することによって、または、保護蛋白質または無保護蛋白質をアシル化することによって準備することが可能である。Oアシル派生物は、たとえば、自由ヒドロキシ蛋白質または蛋白質樹脂のアシル化によって準備することが可能である。アシル化は、アシル・ハロゲン化物、無水物、アシル・イミダゾールなどの標準的なアシル化試薬を使用して実施することが可能である。Nアシル化およびOアシル化の両方とも、所望であれば、共に実施することが可能である。
【0062】
ホルミル−メチオニン、パイログルタミン、トリメチル−アラニンは、蛋白質のN末端残基において置換することが可能である。他のアミノ末端変性は、アミノオキシペンタン変性を含む(Simmonsら、Science、276、276(1997年)参照)。
【0063】
さらに、蛋白質のアミノ酸配列は、変異体をもたらすように変性させることができる。変性は、LではなくD形態を使用する置換、またはα、α2置換アミノ酸、Nアルキルアミノ酸、乳酸などの自然にないアミノ酸などの他の周知のアミノ酸類似物を使用する置換を含めて、蛋白質の少なくとも1つのアミノ酸残基を他のアミノ酸残基と置換することを含む。これらの類似物には、ホスホセリン、ホスホスレオニン、ホスホチロシン、ヒドロキシプロリン、ガンマ−カルボキシグルタミン酸塩、馬尿酸、オクタヒドロインドール−2−カルボン酸、スタチン、1,2,3,4,−テトラヒドロイソキノリン−3−カルボン酸、ペニシルアミン、オルニシン、シトルリン、α−メチル−アラニン、パラ−ベンゾール−ペニルアラニン、フェニルグリシン、プロパルギルグリシン、サルコシン、ε−N,N,N−トリメチルリシン、ε−Nアセチルリシン、N−アセチルセリン、N−フォルミルメチオニン、3−メチルヒスチジン、5−ヒドロキシリシン、ω−N−メチルアルギニン、ならびに他の同様のアミノ酸とイミノ酸、さらにテルト−ブチルグリシンがある。
【0064】
蛋白質の残基の1つまたは複数は、結果的な変異体が無変性(機能活性)蛋白質とほぼ同じ活動を有する限り、変化させることができる。たとえば、変異体は、対応する無変性蛋白質の生物活性の少なくとも約80%以上、少なくとも90%を有することが好ましい。保存アミノ酸置換が好ましい。たとえば、酸性アミノ酸としてアスパラギン・グルタミン酸、塩基性アミノ酸としてリシン/アルギニン/ヒスチジン、疎水性アミノ酸としてロイシン/イソロイシン/メチオニン/アラニン/バリン/バリン/グルシン、親水性アミノ酸としてセリン/スレオニンである。保存アミノ酸置換は、側鎖に基づくグルーピングも含む。他の例では、脂肪族側鎖を有するアミノ酸のグループは、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシンであり、脂肪族ヒドロキシ側鎖を有するアミノ酸のグループは、セリンとスレオニンであり、アミド包含側鎖を有するアミノ酸のグループは、アスパラギンとグルタミンであり、芳香族側鎖を有するアミノ酸のグループは、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファンであり、塩基性側鎖を有するアミノ酸のグループは、リシン、アルギニン、ヒスチジンであり、硫黄包含側鎖を有するアミノ酸のグループは、システインとメチオニンである。たとえば、ロイシンをイソロイシンまたはバリン、アスパラギン酸塩をグルタミン酸塩、スレオニンをセリンで置換し、またはアミノ酸を構造的に関係付けられるアミノ酸で同様に置換することは、結果的な変異体の特性に対して大きな影響を与えない。アミノ酸の変化により機能蛋白質が得られるかは、変異体の特定の活性を検定することによって容易に決定することができる。
【0065】
本発明の範囲内にあるアミノ酸置換は、一般に、(a)置換の領域におけるペプチド・バックボーンの構造、(b)対象箇所における分子の電荷または疎水性、あるいは(c)側鎖のバルクを維持することに対する影響について著しく異なることのない置換を選択することによって達成される。自然に生じる残基は、共通側鎖の特性に基づいてグループに分割される。
(1)疎水性:ノルロイシン、met、ala、val、leu、ile
(2)中性親水性:cys、ser、thr
(3)酸性:asp、glu
(4)塩基性:asn、gln、his、lys、arg
(5)鎖の配向に影響を与える残基:gly、pro
(6)芳香族:trp、tyr、phe
【0066】
本発明は、非保存置換での変異体も考慮する。非保存置換は、上述されたクラスの1つのメンバを他と交換することを必要とする。
【0067】
蛋白質または蛋白質のアミノ残基の酸追加塩は、たとえば塩酸などの望ましい無機酸または有機酸の1つまたは複数の均等物と蛋白質またはアミンを接触させることによって準備することが可能である。蛋白質のカルボキシル基のエステルは、当技術分野において既知の通常の方法のいずれかによって準備することも可能である。
【0068】
さらに、蛋白質は、半減期または生物学的利用能など、安定性をイン・ビボで増大させる方式で変性される。そのようなは生物を準備する方法は、当技術分野において周知である。ペプチドを安定させる1つの方法は、環化ペプチドである派生物を準備するものである(EPA471453(アミド結合)、リシンとアスパラギン酸側鎖との間のものなど;EPA467701(ジスルフィド結合);EPA467699(チオエーテル結合)を参照されたい)。安定性をイン・ビボで増大させることが可能である他の修正が、Jamesonら(Nature、368、744(1994年))、米国特許第4992463号、米国特許第5596078号、米国特許第5091396号に開示されている。
【0069】
本発明の遺伝子/蛋白質送給システムは、たとえば、遺伝子および/または蛋白質治療によって治療可能な条件などの条件または条件の開始を表す特定の生理学的パラメータの変化など、ある生理学的信号を検出し、検出に応答して、遺伝子および/または蛋白質の有効な量を送る。心臓リズム管理システムの一部として具体的に議論されているが、遺伝子/蛋白質送給システムは、すべてのイン・ビボ遺伝子/蛋白質治療について使用することが可能である。
【0070】
図1は、遺伝子/蛋白質送給システム100の実施形態、およびそれが使用される環境の一部を示す。システム100は、埋込み型システム105と外部システム155を含み、さらに埋込み型システム105と外部システム155との間で通信する遠隔測定リンク140を含む。
【0071】
埋込み型システム105は、とりわけ、埋込み型CRM器具110、リード・システム108、埋込み型イオン導入遺伝子/蛋白質送給器具130を含む。図1に示されるように、埋込み型CRM器具110は身体102に埋め込まれる。一実施形態では、埋込み型CRM器具110は、遺伝子/蛋白質送給制御装置を含む。遺伝子/蛋白質送給器具130は、心臓101に取り付けられる。リード・システム108は、埋込み型CRM器具110と遺伝子/蛋白質送給器具130との間で通信する1つまたは複数のリードを含む。一実施形態では、リード・システム108は、埋込み型CRM器具110と遺伝子/蛋白質送給器具130との間における有線通信を提供する。一実施形態では、リード・システム108は、電気信号の組織伝導により、埋込み型CRM器具110と遺伝子/蛋白質送給器具130との間の通信を提供する。様々な実施形態において、埋込み型CRM器具110は、ペースメーカ、電気除細動器/除細動器、心臓再同期治療(CRT)器具、心臓リモデリング制御治療(RCT)器具、薬剤送給器具または薬剤送給制御装置、細胞治療器具、あるいはあらゆる他の埋込み型医療用器具をも含む。リード・システム108は、生理学的信号を感知して、ペーシング・パルス、電気的除細動/除細動ショック、および/または薬物もしくは他の物質を送給するためのリードをさらに含む。
【0072】
外部システム155は、外部器具150、ネットワーク160、遠隔器具170を含む。外部器具150は、埋込み型CRM器具110の周辺内にあり、遠隔測定リンク140を介して埋込み型CRM器具110と双方向に通信する。遠隔測定器具170は、遠隔位置にあり、ネットワーク160を介して外部器具150と双方向に通信し、それにより、使用者が、遠隔測定位置から患者を監視して治療することが可能になる。
【0073】
システム100により、埋込み型CRM器具110、外部器具150、または遠隔器具170のいずれか1つによって、遺伝子/蛋白質送給をトリガすることが可能になる。一実施形態では、埋込み型CRM器具110が、所定の信号または条件を検出すると、遺伝子/蛋白質送給をトリガする。他の実施形態では、外部器具150または遠隔器具170が、埋込み型CRM器具110から送信された信号から条件を検出すると、遺伝子/蛋白質送給をトリガする。1つの特定の実施形態では、外部システム155は、遺伝子/蛋白質送給をトリガするか、およびいつトリガするかを決定するために、治療決定アルゴリズムを実行するプロセッサを含む。他の特定の実施形態では、外部システム155は、埋込み型CRM器具155によって獲得された信号、および/または検出された異常条件を使用者に提示するためにユーザ・インタフェースを含み、遺伝子/蛋白質送給について使用者からコマンドを受信する。他の特定の実施形態では、ユーザ・インタフェースは、使用者および/またはシステム100で治療される患者からコマンドを受信するために、外部器具150に組み込まれたユーザ入力を含む。たとえば、患者は、ある症状を感知するとき、遺伝子/蛋白質送給のコマンドを入力するように指示され、患者の側にいる他の個人が、症状の観測により同じことを行う。
【0074】
図2は、埋込み型CRM器具110、リード・システム108、および遺伝子/蛋白質送給器具130を含むシステム100の一部の回路の一実施形態を示すブロック図である。一実施形態では、リード・システム108は、埋込み型CRM器具110と遺伝子/蛋白質送給器具130との間の電気接続を提供し、それにより、埋込み型CRM器具は、遺伝子/蛋白質送給を制御するために、電圧信号または電気信号を遺伝子/蛋白質送給器具に送る。他の実施形態では、リード・システム108により、遺伝子/蛋白質送給を制御するために、埋込み型CRM器具110から生成された電気信号によって、遺伝子/蛋白質送給器具130において、またその付近において、電場を創出することが可能になる。
【0075】
遺伝子/蛋白質送給器具130は、ポリマー基質232を含み、かつ少なくとも1つの遺伝子産物を符号化し、少なくとも1つの選択されたmRNAを結合する遊離核酸を含み、または遊離蛋白質、あるいはその組合せを含む。遊離核酸および/または蛋白質は、埋込み型CRM器具110から送信された遺伝子/蛋白質送給制御信号に応答して、遺伝子/蛋白質送給器具232から放出される。一実施形態では、遺伝子/蛋白質送給器具130は、遺伝子/蛋白質を心臓組織に送るために、心外膜パッチを含む。他の実施形態では、遺伝子/蛋白質送給器具130は、遺伝子および/または蛋白質を血液中に放出するために、ステントなどの脈管器具に組み込まれる。イオン導入を使用する薬剤送給器具の例が、米国特許第5041107号、「ELECTRICALLY CONTROLLABLE NON−OCCLUDING,BODY IMPLANTABLE DRUG DELIVERY SYSTEM」と、米国特許第6689117号「DRUG DELIVERY SYSTEM FOR IMPLANTABLE MEDICAL DEVICE」において記載されており、両方ともCardiac Pacemakers,Inc.に譲渡され、参照によって本明細書に完全に組み込まれている。
【0076】
埋込み型CRM器具110は、センサ212、事象検出器213、埋込み制御装置214を含む。センサ212は、遺伝子/蛋白質送給によって抑制または治療される条件を表す生理学的信号を感知する。事象検出器213は条件を検出する。埋込み制御装置214は、検出された条件に応答して遺伝子/蛋白質送給をトリガするために、信号を遺伝子/蛋白質送給器具130に送信する遺伝子/蛋白質送給制御モジュール215を含む。一実施形態では、遺伝子/蛋白質送給器具130は、たとえば2つ以上の異なる1つまたは複数の遺伝子、および/または1つまたは複数の蛋白質を含み、印加された電場に応答して遺伝子/蛋白質を放出するポリマー基質232を含む。一実施形態では、電場が、リード・システム108を経て送給された電圧としてポリマー基質232に印加される。遺伝子/蛋白質送給器具130が埋込み型CRM器具に直接配線されないときなどの他の実施形態では、身体102の組織を経た伝導によってポリマー基質232に電場が加えられる。
【0077】
一実施形態では、センサ212は、1つまたは複数の電位図を感知する心臓感知回路を含み、事象検出器213は、1つまたは複数の電位図から不整脈を検出する。一実施形態では、事象検出器213は、心拍数を検出し、心拍数を1つまたは複数の閾値率と比較することによって、不整脈を検出する。心拍数が徐脈の閾値より下がると、徐脈条件が検出される。心拍数が頻脈の閾値を超えると、頻脈条件が検出される。他の実施形態では、事象検出器213は、電位図の形態的特徴を1つまたは複数の所定のテンプレートと比較することによって、不整脈を検出する。事象検出器213は、不整脈検出器、頻脈検出器、細動検出器、あらゆる他の不整脈検出器の1つまたは複数を含む。1つの特定の実施形態では、事象検出器213は、心房細動検出器を含む。他の特定の実施形態では、事象検出器213は、心室細動検出器を含む。
【0078】
一実施形態では、センサ212は、虚血を表す生理学的信号を感知し、事象検出器213は、虚血検出器を含む。1つの特定の実施形態では、センサ212は電位図を感知し、事象検出器213は、電位図から虚血条件を検出するために、自動虚血検出アルゴリズムを実行する。電位図に基づく虚血検出器の1つの特定の例が、Cardiac Pacemakers,Inc.に譲渡され、参照によって完全に本明細書に組み込まれている、2001年9月25日に出願されたZhuら、米国特許出願09/962852、「EVOKED RESPONSE SENSING FOR ISCHEMIA DETECTION」において議論されている。他の実施形態では、センサ212は、低搬送波周波数(たとえば、100Hz)を使用する電気インピーダンスに基づくセンサを含み、事象検出器213は、電気インピーダンス信号から虚血条件を検出するために、自動虚血検出アルゴリズムを実行する。組織電気インピーダンスは、Minら(International Journal of Bioelectromagnetism、5:53(2003年))において議論されているように、虚血中に著しく増大することが示されている。センサ212は、心臓に挿入された電極間の低周波数電気インピーダンス信号を感知する。事象検出器213は、インピーダンスの突然変化(値の突然の上昇など)として虚血を検出する。他の特定の実施形態では、センサ212は、心臓の上または心臓において配置されたリード本体内に位置する加速度計を使用する局所心臓運動ベース・センサを含み、事象検出器213は、加速度信号から虚血条件を検出するために、自動虚血検出アルゴリズムを実行する。事象検出器213は、局所心臓加速度の振幅の突然の減少として虚血を検出する。
【0079】
一実施形態では、センサ212は、心臓代謝レベル(心臓細胞の代謝率)を表す代謝信号を感知する代謝センサを含む。代謝センサの例には、非限定的に、pHセンサ、酸素圧力(PO2)センサ、二酸化炭素圧力(PCO2)センサ、グルコース・センサ、クレアチン・センサ、C創出蛋白質センサ、クレアチン・キナーゼ・センサ、クレアチン・キナーゼMBセンサ、またはそのようなセンサのあらゆる組合せがある。事象検出器213は、代謝信号から心臓代謝レベルを決定し、その心臓代謝レベルを、心臓代謝レベルの通常範囲を決める1つまたは複数の所定の閾値と比較する。心臓代謝レベルが心臓代謝レベルの通常範囲外にあるとき、異常条件が検出される。
【0080】
一実施形態では、センサ212は、肺インピーダンス、または胸腔の一部のインピーダンスを測定するために、埋込み型インピーダンス・センサを含む。事象検出器213は、インピーダンスが通常範囲外にあるとき、異常条件を検出する。たとえば、心拍出量の減少の結果である肺における流体の保持など、肺浮腫が、肺インピーダンスまたは胸部インピーダンスを増大させる。1つの特定の実施形態では、事象検出器213は、肺インピーダンスまたは胸部インピーダンスが所定の閾値を超えるとき、信号を生成する。一実施形態では、インピーダンス・センサは、患者の分時換気を感知する呼吸センサである。分時換気を感知するインピーダンス・センサの一例が、Cardiac Pacemakers,Inc.に譲渡され、参照によって本明細書に完全に組み込まれている、米国特許第6459929号、「IMPLANTABLE CARDIAC RHYTHM MANAGEMENT DEVICE FOR ASSESSING STATUS OF CHF PATIENTS」において議論されている。
【0081】
一実施形態では、センサ212は圧力センサを含む。不整脈や心不全を含む異常条件により、心臓血管システムの様々な部分の圧力が正常範囲から逸脱する。事象検出器213は、圧力が正常範囲外にあるとき、異常条件を検出する。1つの特定の実施形態では、事象検出器213は、心臓周期の収縮期中に圧力に関係付けられる異常条件を検出するために、収縮期機能不全検出器を含む。他の特定の実施形態では、事象検出器213は、心臓周期の拡張期中に圧力に関係付けられる異常条件を検出するために、拡張期機能不全検出器を含む。圧力センサの例には、非限定的に、左心房(LA)圧力センサ、左心室(LV)圧力センサ、動脈圧力センサ、肺動脈圧力センサがある。肺浮腫により、LAと肺動脈の圧力は増大する。LVの低下により、LVと動脈の圧力は減少する。様々な実施形態において、事象検出器213は、LA圧力が所定の閾値LA圧力レベルを超えるとき、肺動脈圧力が所定の閾値肺動脈圧力レベルを超えるとき、LV圧力が所定の閾値LV圧力レベルより下がるとき、および/または動脈圧力が所定の閾値LV圧力レベルより下がるとき、異常条件を検出する。他の実施形態では、事象検出器213は、圧力変化率など、これらの圧力の1つからパラメータを導出し、パラメータが正常範囲から逸脱するとき、信号を生成する。一実施形態では、LV圧力センサは、心臓周期のすべてまたは一部中にLV圧力との既知の関係または予測可能な関係を有する信号を感知することによって、LV圧力を間接的に感知する。そのような信号の例には、非限定的に、LA圧力と冠状静脈圧力がある。冠状静脈圧力センサを使用してLV圧力を測定する1つの特定の例が、Cardiac Pacemakers,Inc.に譲渡され、参照によって本明細書に完全に組み込まれている、2002年1月4日に出願された米国特許出願10/038936、METHOD AND APPARATUS FOR MEASURING LEFT VENTRICULAR PRESSUREにおいて議論されている。
【0082】
一実施形態では、センサ212は、心拍出量センサまたは1回心拍出量センサを含む。1回心拍出量感知の例が、米国特許第4686987号、「BIOMEDICAL METHOD AND APPARATUS FOR CONTROLLING THE ADMINISTRATION OF THERAPY TO A PATIENT IN RESPONSE TO CHANGES IN PHYSIOLOGIC DEMAND」、米国特許第5284136号、「DUAL INDIFFERENT ELECTRODE PACEMAKER」において議論されており、両方ともCardiac Pacemakers,Inc.に譲渡され、参照によって本明細書に完全に組み込まれている。事象検出器213は、1回心拍出量が所定の閾値レベルより下がるとき、異常条件を検出する。
【0083】
一実施形態では、センサ212は、交感神経および/または副交感神経の活動を検出するために、神経活動センサを含む。心拍出量の著しい減少は、低下した心臓機能を自律神経系が補償しようとするので、交感神経および/または副交感神経の活動を即座に刺激する。1つの特定の実施形態では、神経活動センサが、神経ホルモンのレベルを感知するために、神経ホルモン・センサを含む。事象検出器213は、ホルモン・レベルが所定の閾値レベルを超えるとき、異常条件を検出する。他の特定の実施形態では、神経活動センサは、交感神経および/または副交感神経の電気活動を感知するために、活動電位記録器を含む。事象検出器213は、交感神経および/または副交感神経の電気活動の周波数が所定の閾値レベルを超えるとき、異常条件を検出する。直接的および間接的神経活動感知の例が、Cardiac Pacemakers,Inc.に譲渡され、参照によって本明細書に完全に組み込まれている、米国特許第5042497号、「ARRHYTHMIA PREDICTION AND PREVENTION FOR IMPLANTED DEVICES」において議論されている。
【0084】
一実施形態では、センサ212は心拍数変動検出器を含む。急性非代償性心不全に苦しむ患者は、異常に低い心拍数変動を示す。心拍数変動を検出する例が、Cardiac Pacemakers,Inc.に譲渡され、参照によって本明細書に完全に組み込まれている、米国特許第5603331号、「DATA LOGGING SYSTEM FOR IMPLANTABLE CARDIAC DEVICE」において議論されている。事象検出器213は、心拍数変動が所定の閾値レベルより下がるとき、異常条件を検出する。
【0085】
一実施形態では、センサ212は腎機能センサを含む。急性非代償性心不全は、主に、心拍出量の低下が続く腎臓の体液貯留のために、末梢浮腫をもたらす。体液貯留は、腎出力の低下、糸球体ろ過の低下、アンギオテンシンの形成に関連付けられる。したがって、1つの特定の実施形態では、腎機能センサは、腎出力を表す信号を感知するために、腎出力サンサを含む。事象検出器213は、感知された腎出力が所定の閾値より下がるとき、異常条件を検出する。他の特定の実施形態では、腎機能センサは、糸球体ろ過率を表す信号を感知するために、ろ過率センサを含む。事象検出器213は、感知された糸球体ろ過率が所定の閾値より下がるとき、異常条件を検出する。他の特定の実施形態では、腎機能センサは、アンギオテンシンIIレベルを表す信号を感知するために、化学センサを含む。事象検出器213は、感知されたアンギオテンシンIIレベルが所定の閾値レベルを超えるとき、異常条件を検出する。
【0086】
一実施形態では、センサ212は、心音センサおよび/または呼吸音センサなどの音響センサを含む。不整脈および/または心不全により、異常な心臓と肺の活動パターンが生じ、したがって、心音と呼吸音がパターンおよび/または振幅の正常範囲から逸脱する。事象検出器213は、心音または呼吸音が正常範囲外にあるとき、異常条件を検出する。たとえば、異常第3心音(S3)振幅の検出が心不全を表すことが知られている。1つの特定の実施形態では、事象検出器213は、S3振幅が所定の閾値レベルを超えるとき、異常条件を検出する。
【0087】
一実施形態では、センサ212は、心筋リモデリングの程度を表す信号を感知するために、リモデリング・センサを含む。1つの特定の実施形態では、リモデリング・センサは、梗塞領域などの損傷心筋領域のサイズを感知するために、リード・システム108の1つまたは複数のリードに組み込まれている2つ以上の圧電結晶を含む。損傷心筋領域のサイズは、結晶によって感知され、所定の時間期間にわたって平均された空間情報に基づいて推定される。一実施形態では、損傷領域のサイズの多大な程度の変化は、組み合わされた電気治療と医薬品治療を開始、停止、または調整する必要性を表す。他の特定の実施形態では、センサ212は、リモデリング・プロセスの進行を示す心筋肥大の程度を表す信号を感知するために、肥大センサを含む。他の特定の実施形態では、センサ212は、肥大応答中に変化することが知られているエンドセリン−1(ET−1)、BNP、またはp38MAPKの発現または濃度の変化を感知するために、化学センサを含む。他の実施形態では、センサ処理回路215は、心筋リモデリングの程度が所定の閾値を超えるとき、異常条件を検出するために、事象検出器を含む。心筋リモデリングの程度は、損傷領域のサイズの変化の程度と、心筋肥大の程度と、さらにはエンドセリン−1(ET−1)、BNP、またはp38MAPKの発現または濃度の変化の程度との1つまたは複数によって表される。
【0088】
センサ212と事象検出器213の例が、例示としてであって限定としてではなく、本文書において議論される。遺伝子/蛋白質送給によって治療可能な異常条件を直接または間接に検出するための他の方法およびセンサが、遺伝子/蛋白質送給システム100と共に使用できる。
【0089】
埋込み型CRM器具110は、器具の電子機器の少なくとも一部を収容するために、気密封止金属カンを含む。一実施形態では、センサ212は、金属カンの内部にある。他の実施形態では、センサ212は、金属カンの外部にある。一実施形態では、センサ212は、リード・システム108に組み込まれる。
【0090】
図3は、埋込み型CRM器具110、リード・システム108、遺伝子/蛋白質送給器具130、外部システム155を含むシステム100の一部の回路の他の実施形態を示すブロック図である。図3に示される埋込み型CRM器具110は、ペーシングと除細動の能力を含む。遺伝子/蛋白質送給の他に、埋込み型CRM器具110によって送給される治療の例には、非限定的に、徐脈型不整脈ペーシング、反頻脈型不整脈ペーシング、心房および/または心室電気的除細動/除細動、CRT、RCT、薬剤送給がある。しかし、ペーシングと除細動の能力は、システム100が遺伝子/蛋白質送給を実施するために必要ではなく、したがって、埋込み型CRM器具110から排除することが可能である。すなわち、埋込み型CRM器具110は、遺伝子/蛋白質送給の制御を含む追加の機能を有する埋込み型ペースメーカおよび/または除細動器とすることができ、あるいは、専用の埋込み型遺伝子/蛋白質送給プロセッサまたは制御装置とすることができる。
【0091】
一実施形態では、埋込み型CRM器具110は、センサ212、事象検出器213、埋込み制御装置214、ペーシング回路320、除細動回路324、埋込み遠隔測定モジュール316を含む。ペーシング回路320は、埋込み制御装置214によって制御される1つまたは複数の心臓領域にペーシング・パルスを送る。除細動回路324は、埋込み制御装置214によって制御される1つまたは複数の心臓領域に、電気的除細動または除細動ショックを送る。センサ212は、遺伝子/蛋白質送給で治療可能な条件を表す生理学的信号を感知し、事象検出器213は、図2を参照して上記で議論されたように、その条件を検出する。埋込み型CRM器具110がCRTやRCTペーシングを行い、除細動を行う1つの特定の実施形態では、埋込み制御装置214は、遺伝子/蛋白質送給制御モジュール215、CRT制御モジュール321、RCT制御モジュール322、除細動制御モジュール323、コマンド受信器326を含む。遺伝子/蛋白質送給制御モジュール215は、事象検出器213によって検出された条件、またはコマンド受信器326によって受信された遺伝子/蛋白質送給コマンドに応答して、遺伝子/蛋白質送給制御信号を生成する。コマンド受信器326は、遠隔測定リンク140を介して外部システム155から遺伝子/蛋白質送給コマンドを受信する。CRT制御モジュール321は、CRTアルゴリズムを実行することによって、ペーシング回路320からペーシング・パルスの送給を制御する。RCT制御モジュール322は、RCTアルゴリズムを実行することによって、ペーシング回路320からのペーシング・パルスの送給を制御する。除細動制御モジュール323は、頻脈型不整脈条件が検出されるとき、除細動回路324からの電気的除細動/除細動ショックの送給を制御する。一実施形態では、除細動制御モジュール323は、心房の1つまたは複数への電気的除細動/除細動ショックの送給を制御するために、心房除細動制御モジュールを含む。一実施形態では、除細動制御モジュール323は、心室の1つまたは複数への電気的除細動/除細動ショックの送給を制御するために、心室除細動制御モジュールを含む。
【0092】
リード・システム108は、リード・システム108Aと参照される1つまたは複数の遺伝子/蛋白質送給制御リード、およびペーシング・リード、除細動リード、ペーシング−除細動リード、またはリード・システム108Bと参照されるそのようなリードの任意の組合せを含む。リード・システム108Aにより、遺伝子/蛋白質送給制御モジュール215は、埋込み型遺伝子/蛋白質送給器具130を制御することが可能になる。リード・システム108Bにより、心臓101の様々な領域からの電気信号を感知し、ペーシング・パルスおよび/または除細動ショックを心臓101の様々な領域に送ることが可能になる。心臓101の様々な領域は、右心房(RA)、左心房(LA)、右心室(RV)、左心室(LV)の内部、またはその回りの領域を含む。一実施形態では、リード・システム108Bは、心臓101の内部に配置された少なくとも1つの感知ペーシングまたは除細動電極をそれぞれが有する1つまたは複数の経静脈リードを含む。一実施形態では、リード・システム108Bは、心臓101の上に配置された少なくとも1つの感知ペーシングまたは除細動電極をそれぞれが有する1つまたは複数の心外膜リードを含む。一実施形態では、リード・システム108Bは、心房除細動を可能にするために、心房の一方または両方において、あるいはその回りに配置された少なくとも1つの心房除細動電極を含む。一実施形態では、リード・システム108Bは、心室除細動を可能にするために、心室の一方または両方において、あるいはその回りに配置された少なくとも1つの心室除細動電極を含む。一実施形態では、センサ212は、リード・システム108Aまたは108Bの少なくとも一部を含む。他の実施形態では、センサ212は、リード・システム108Aまたは108Bに組み込まれる。
【0093】
外部システム155は、外部遠隔測定モジュール352、外部ユーザ入力器具354、プレゼンテーション器具356、外部制御装置358を含む。これらのシステム構成要素は、設計および医療上の考慮事項に応じて、外部器具150、ネットワーク160、または遠隔器具170の1つまたは複数において分布する。ユーザ入力器具354は、遺伝子/蛋白質送給を含めて、治療の送給を制御するために、使用者および/または患者からコマンドおよび/またはパラメータを受信する。プレゼンテーション器具356は、埋込み型CRM器具110によって獲得された信号および/または検出された条件を表示し、またはそうでない場合は提示する。外部制御装置358は、外部システム155の動作を制御する。一実施形態では、外部制御装置358は、埋込み型CRM器具110の動作の自動制御をさらに行う。一実施形態では、ユーザ入力器具352は、信号の観測および/またはプレゼンテーション器具356によって提示された条件に基づいて使用者によって入力された遺伝子/蛋白質送給コマンドを受信する。他の実施形態では、ユーザ入力器具352は、患者が、遺伝子/蛋白質治療の即時必要性を表す症状を物理的に感知するときに患者によって入力された、または、遺伝子/蛋白質治療の即時必要性を表す症状を観測する患者の付近にいる個人によって入力された遺伝子/蛋白質送給コマンドを受信する。他の実施形態では、外部制御装置358は、埋込み型CRM器具110によって獲得された信号、および/または検出された異常条件を自動的に分析し、分析の結果として必要と見なされるとき、遺伝子/蛋白質送給コマンドを生成する。
【0094】
遠隔測定リンク140は、埋込み遠隔測定モジュール316と外部遠隔測定モジュール352によって支持された無線双方向データ送信リンクである。一実施形態では、遠隔測定リンク140は、2つのコイル(一方が埋込み遠隔測定モジュール316に接続され、他方が外部遠隔測定モジュール352に接続される)が互いの付近に配置されるときに形成される誘導結合である。他の実施形態では、遠隔測定リンク140は、埋込み型CRM器具110と外部システム155が少なくとも10フィートである遠隔測定範囲にわたって通信することを可能にする遠距離場無線周波数遠隔測定リンクである。
【0095】
埋込み型イオン導入遺伝子/蛋白質送給器具
本発明のシステムは、埋込み型パルス生成装置に結合された埋込み型イオン導入遺伝子および/または蛋白質送給器具を含む。埋込み型イオン導入遺伝子/蛋白質送給器具は、ポリマー基質と少なくとも1つの遺伝子産物を符号化する遊離核酸、少なくとも1つの選択されたmRNAを結合する遊離核酸、および/または遊離蛋白質、またはその任意の組合せを含む。遊離核酸または蛋白質は、有利に変更される条件を有する相関など、特定の条件を有する配列の相関に基づいて開業医の裁量で選択される。選択された遺伝子と蛋白質の例が、以下に提供される。
【0096】
例示的な遺伝子および/または蛋白質
イオン導入技法が使用されるために、ポリマー基質に埋め込まれた、または加えられた分子は、特有の特徴を有するべきである。理想的には、分子は、ポリマー基質からの分子のイオン導入移動または輸送を促進するために、イオンの性質を有するべきであり、または分子に結合された他のイオン分子を含むべきである。本発明の埋込み型イオン導入遺伝子/蛋白質送給器具に適切な遺伝子および/または蛋白質は、特定の条件に関連付けられる1つまたは複数の症状を治療、抑制(低減)、または排除するのに有用な器具を含む。特定の条件に関連付けられる1つまたは複数の症状を治療、抑制、または排除するために特定の遺伝子産物の増大が示される一実施形態では、センス・オリエンテーションにおいて遺伝子産物を符号化するオープン・リーディング・フレームの少なくとも一部は、発現カセットを形成するために、組織特有制御要素を任意選択で含めて、非相同性転写制御要素などの転写制御要素に動作可能にリンクされる。たとえば、一実施形態では、発現カセットは、心臓特有プロモータに動作可能にリンクされたコネクシン43のオープン・リーディング・フレームを含む。他の実施形態では、発現カセットは、ウィルスプロモータに動作可能にリンクされる哺乳動物イオン・チャネル蛋白質のオープン・リーディング・フレームを含む。
【0097】
特定の条件に関連付けられる1つまたは複数の症状を治療、抑制、または排除するために特定の遺伝子産物の減少が示される他の実施形態では、アンチセンス・オリエンテーションにおけるその遺伝子産物のオープン・リーディング・フレームの少なくとも一部が、発現カセットを形成するために、組織特有制御要素を任意選択で含めて、非相同性転写制御要素などの転写制御要素に動作可能にリンクされる。代替として、アンチセンス核酸は、発現カセットに存在しない、すなわち、プロモータなどの転写制御要素に動作可能にリンクされない。
【0098】
本発明の目的では、筋肉特有および誘導性のプロモータ、エンハンサなどの制御要素は、特定の用途に使用される。そのような制御要素には、非限定的に、ミオD遺伝子族からなど、アクチンやミオシンの遺伝子族から導出されたもの(Weintraubら、Science、251、76l(1991年));筋細胞特有エンハンサ結合因子MEF−2(CserjesiおよびOlson、Mol.Cell Biol.、11、4854(1991年));人骨格アクチン遺伝子から導出された制御要素(Muscatら、Mol.Cell Bio.、2、4089(1987年))および心臓アクチン遺伝子;筋肉クレアチン・キナーゼ配列要素(Johnsonら、Mol.Cell Biol.、9、3393(1989年))およびムリン・クレアチン・キナーゼ・エンハンサ(mCK)要素;骨格迅速単収縮トロポニンC遺伝子、緩慢単収縮心臓トロポニンC遺伝子、および緩慢単収縮トロポニンI遺伝子;低酸素誘発核因子(Semenzaら、Proc.Natl.Acad.Sci、米国、88、5680(1991年);Semenzaら、J.Biol.Chem.、269、23757);グルココルチコイド応答要素(GRE)など、ステロイド誘発要素およびプロモータ(MaderおよびWhite、Proc.Natl.Acad.Sci.、米国、90、5603(1993年));RU486誘導のための融合交感要素;ならびにテトラサイクリン調節遺伝子発現を提供する要素(Dhawanら、Somat.Cell.Mol.Genet.、21、233(1995年));Shockettら、Proc.Natl.Acad.Sci.米国、92、6522(1995年))がある。
【0099】
一実施形態では、心臓細胞制限プロモータは、特定の用途に使用される。心臓特有プロモータには、非限定的に、以下の遺伝子からのプロモータを含む:心室αミオシン重鎖遺伝子などのαミオシン重鎖遺伝子、心室βミオシン重鎖遺伝子などのβミオシン重鎖遺伝子、心室ミオシン軽鎖2遺伝子などのミオシン軽鎖2ν遺伝子、心室ミオシン軽鎖2遺伝子などのミオシン軽鎖2a遺伝子、心筋細胞制限心臓アンキリン反復蛋白質(CARP)遺伝子、心臓αアクチン遺伝子、心臓m2ムスカリン・アセチルコリン遺伝子、ANP遺伝子、BNP遺伝子、心臓トロポニンC遺伝子、心臓トロポニンI遺伝子、心臓トロポニンT遺伝子、心臓筋小胞体Ca−ATパーゼ遺伝子、骨格αアクチン遺伝子、人工心臓細胞特有プロモータがある。
【0100】
さらに、室特有プロモータまたはエンハンサを使用することも可能であり、たとえば、心房特有発現について、うずらのスロー・ミオシン鎖タイプ3(MyHC3)またはANPプロモータ、あるいはcGATA−6エンハンサが使用できる。心室特有発現について、イロコイ・ホメオボックス遺伝子が使用できる。心室筋細胞特有プロモータの例には、心室ミオシン軽鎖2プロモータや心室ミオシン重鎖プロモータがある。
【0101】
プロモータおよび/またはエンハンサの他の源は、Csx/NKX2.5遺伝子、チチン遺伝子、αアクチニン遺伝子、ミオメシン遺伝子、M蛋白質遺伝子、心臓トロポニンT遺伝子、RyR2遺伝子、Cx40遺伝子、Cx43遺伝子、さらにはMef2、dHAND、GATA、CarG、E−ボックス、Csx/NKX2.5、またはTGF−ベータ、あるいはその組合せを結合する遺伝子がある。
【0102】
組織特有エンハンサが使用されることも可能である。たとえば、好ましい心房特有エンハンサは、cGATA−6エンハンサである。他の実施形態では、エンハンサは組織特有ではない。
【0103】
他の実施形態では、プロモータは、非筋肉、非心臓組織特有プロモータである。
【0104】
それにもかかわらず、アデノウィルス、アデノ関連ウィルス、レトロウィルス、ヘルペスウィルス、またはレンチウィルスなど、ある組織または細胞に特有ではない他のプロモータおよび/またはエンハンサが、本発明の発現カセットや方法において使用できる。好ましい非相同性構成プロモータは、エンハンサをも含むCMVプロモータである。
【0105】
遺伝子は、ポリアデニル化信号に動作可能にリンクされることが好ましい。
【0106】
一実施形態では、条件は、非限定的に、心房細動、虚血、心室頻脈、徐脈、過形成、または心不全を含めて、心臓血管条件である。心臓血管条件のシステムおよび方法において有用な遺伝子と対応する蛋白質には、非限定的に、コネクシン遺伝子、Ifに関連付けられる遺伝子産物などの心房特有イオン・チャネル蛋白質遺伝子、Ikに関連付けられる遺伝子産物などの非特有イオン・チャネル蛋白質遺伝子、ギャップ・ジャンクションを調節する遺伝子産物、心筋における伝導を変化させる遺伝子産物、イオン・チャネル蛋白質の合成または活動を遮断する調整蛋白質を符号化する遺伝子産物、イオン・チャネル蛋白質の合成または活動を上方調節する遺伝子産物、少なくとも1つのイオン・チャネル蛋白質を下方調節する遺伝子産物、あるいはイオン・チャネルの動態または電圧を変化させる遺伝子産物がある。
【0107】
したがって、有用な遺伝子や対応する蛋白質には、K+、Na+、Ca+を含むイオン・チャネルと電圧活性チャネル、さらにHCN(Ifについて)、Kir2.1(IKIについて)、Kir3.1/3.4(IKAChについて)、ERG(IKrのαサブユニット)、MiRP1(IKr、If、およびItoを変調する)、KvLQT1(IKSのαサブユニット)、MinK(IKsのβサブユニット)、Kv4.2/4.3(Itoのαサブユニット)、Kv1.4(Itoのαサブユニット)、KChIP2(Itoのβサブユニット)、Kv1.5(IKurについて)、Cav1.2(Icat)、Cav1.3(ICaV)、Cav3.1(ICa)、Nav1.5(INa)、ならびにコネクシン40、クネクシン43、およびコネクシン45(IGJ)(開示が参照によって本明細書に具体的に組み込まれているSchramら、Circ.Res.、90:939(2002年))、NCX1、NCX2、およびNCX3、Kir6.1、Kir6.2、Kv1.7、Kv4.2、Kv4.3、Kv4.1、ならびにSCN5AなどのNaイオン・チャネルを非限定的に含めて、好ましくは心臓組織において発現されたイオン・チャネルの遺伝子がある。本発明のシステムおよび方法において有用な他の遺伝子には、非限定的に、Galphai2サブユニット、ニューロテンシン、カルモジュリン、カルモジュリン依存キナーゼ、ATF3、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)、nNOS、iNOS、およびeNOSなどのNOS、Nkx2.5、ジソトロフィン、タファジン、心臓アクチン、デスミン、ラミンA/C、デルタ・サクログリカン、心臓βミオシン重鎖、および心臓トロピンC、βアドレナリン受容体、抑制グラニン・ヌクレオチド蛋白質、GPCRキナーゼ、VEGF、プラセンタル成長因子、ACE(2)、Cox2、カルシウム調節について、カルモジュリン、CaMKII、RyR(リアノジン受容体)、SERCA、カルシウムATパーゼ(CSR)、ホスホランバン(PLB)、カルシニューリン、およびFK506結合蛋白質Lbx1、AT1A受容体、AT2、p27(KIP1)、カルシニューリン、アンギオテンシンIT、およびHSPがある。心不全を予防、抑制、または緩和させるために、以下の遺伝子/蛋白質が有用である可能性がある:カルモジュリン、CaMKII、RyR(リアノジン受容体)、SERCA、カルシウムATパーゼ(CSR)、ホスホランバン(PLB)、カルシニューリン、およびFK506結合蛋白質。過形成を予防、抑制、または緩和させるために、以下の遺伝子/蛋白質が有用である可能性がある:Lbx1、AT1A受容体、AT2、p27(KIP1)、カルシニューリン、アンギオテンシンII、およびHSP。虚血を予防、抑制、または緩和させるために、以下の遺伝子/蛋白質が有用である可能性がある:CGRP、ATF3、プラセンタル成長因子、Cox2.収縮性を増大させるために、以下の遺伝子/蛋白質が有用である可能性がある:ニューロテンシンおよびACE(2)。
【0108】
ポリマー基質
ポリマー基質は、電場がない場合、数か月または数年などの継続時間期間、生理学的条件の下で、遊離核酸および/または蛋白質(帯電分子である)あるいは任意選択で他の治療薬剤を含む他の医薬品を一般に保持する任意の生理学的共存可能材料で形成することが可能である。ポリマー基質は、電気信号によって創出された電場に応答して、埋込み型イオン導入遺伝子または蛋白質送給器具から遊離核酸または蛋白質を押し出す(放出する)。電気信号は、心臓血管条件などの条件に関連付けられる生理学的信号の検出に応答して生成される。
【0109】
遊離核酸および/または蛋白質、あるいは任意選択の他の薬剤が、重合前にモノマーの溶液に導入される、またはたとえば溶媒(たとえば、水、プロピレン、グリコールなど)に溶解したポリマー基質に導入される。結果的な溶液は、ポリマー基質材料に組み込むことができる。遊離核酸および/または蛋白質がポリマー基質に埋め込まれた、または加えられた後、結果的な遺伝子/蛋白質送給器具は、埋込み型パルス生成装置に結合される。代替として、ポリマー基質は、まず、埋込み型パルス生成装置に結合し、次いで、遊離核酸および/または蛋白質が、受動的または能動的に(たとえば、イオン導入などの方法により)、埋込み型パルス生成装置に埋め込まれる、または加えられる。電場が供給される際、遊離核酸および/または蛋白質あるいは任意選択で他の薬剤が、電場がない場合の放出より大きい率において基質から放出される。具体的には、埋込みイオン導入遺伝子/蛋白質送給器具における遊離核酸および/または蛋白質は、埋込み型パルス生成装置によって生成された電場に応答して、隣接細胞または組織あるいは血管管腔に放出される。この放出は、印加電場に比例する量である。電気信号が停止された後、遺伝子および/または蛋白質はもはや放出されず、または、電場が存在する場合の放出率と比較して著しく低減された率において放出される。したがって、遺伝子および/または蛋白質の送給は、一時的(一時的)であり、電場の方向と器具の配置によって空間的に制御することが可能である。
【0110】
基質材料は、生理学的に不活性であり、送給されるべき帯電分子を保持することができることが好ましい。使用することが可能である基質材料には、ポリ酢酸またはポリグリコール酸とその派生物、ポリオルソエステル、ポリエステル、ポリウレタン、ポリリシンなどのポリアミノ酸、乳酸/グリコール酸コポリマー、ポリ無水物、スルホン酸ポリテトラフルオロエチレンなどのイオン交換樹脂、またはその組合せがある。
【0111】
さらに、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノ−プロピル)塩酸カルボジイミドなどの架橋薬剤を使用して架橋される自然の蛋白質または材料から基質を構築することが可能である。そのような自然の材料は、アルブミン、コラーゲン、フィブリン、ゲラチン、ケラチン、イオン導入に使用されるように加水分解されたポテト・スターチ、寒天(アガロース)などの材料である。ポリアクリルアミド、アクリルアミド/ビス−アクリルアミド混合物、酢酸セルロース、グリコキシル・アガロース、等電集束において使用されるのに適切なセファデックス(商標)(Pharmacia Fine Chemicals,Inc.)を含めて、合成電気移動基質も適切である。また、本発明のカソード・基質を製作するために、ポリアクリルアミドとアガロースの組合せなど、そのような基質の組合せを使用することも可能である。
【0112】
一実施形態では、ポリマー基質は、リポソーム、ヒドロゲル、シクロデキシトリン、生体分解性ナノカプセル、またはマイクロスフェアを含む。したがって、ポリマー基質は、ポリビニル・アルコール、ポリビニルピロリドンとポリアクリルアミド、ポリエチレン酸化物、ポリ(2−ヒドロキシエチル・メタクリレート)など、たとえば核酸および/または蛋白質浸透性構成または形態のヒドロゲルまたは他の多孔性材料の形態の合成ポリマー;ガムまたはスターチなどの天然ポリマー;シリコン・ゴム、ポリウレタン・ゴムなどの合成エラストマ;ならびに天然ゴムを含み、ポリ[α(4−アミノブチル)]−1−グリコール酸、ポリエチレン酸化物(Royら、Mol.Ther.、7:401(2003年))、ポリオルソエステル(Hellerら、Adv.Drugs Delivery Rev.、54:1015(2002年))、シルク−エラスチン状ポリマー(Megeldら、Pharma.Res.、19:954(2002年))、アルギン酸塩(Weeら、Adv.Drug Deliv.Rev.、31:267(1998年))、EVAc(ポリ(エチレン−コ−ビニル・アセテート)、ポリ(D,L−ラクチド−コ−グリコリド)コポリマーおよびポリ(L−ラクチド)、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)−b−ポリ(D,L−ラクチド)、グリオキサールで架橋され、ヒドロキシルアパタイト、ポリ(エプシロン−カプロラクトン)−ポリ(エチレン・グリコール)コポリマー、ポリ(アクリロイル・ヒドロキシエチル)スターチ、ポリシン−ポリエチレン・グリコール、アガロース・ヒドロゲル、または脂質微小管ヒドロゲルなどの生理活性充填剤で強化されたものなどのソイ・基質を含む。
【0113】
一実施形態では、核酸または蛋白質は、非イオン性またはイオン性生体分解性または非生体分解性の基質など、ポリマー基質に埋め込まれ、またはそれに加えられる。それらには、ポロキサマーのヒドロゲル、ポリアクリルアミド、ポリ(2−ヒドロキシエチル・メタクリレート)、カブロキシビニル−ポリマー(たとえば、カルボポル934など、Goodrich Chemical Co.)、メチルセルロースやヒドロキシプロピル・セルロースなどのセルロール派生物、ポリビニル・ピロリドン、またはポリビニル・アルコールを非限定的に含む。
【0114】
他の実施形態では、生体適合性ポリマー材料は、ポリウレタン、ポリジメチルシクロキサン(シリコン・ゴム)、エチレン・ビニル・アセテート・コポリマー(EVA)、ポリメチルメタクリレート、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリビニル・アルコール、ポリテトラフルオロエチレン、または酢酸セルロースなどのセルロース派生物など、合成非生体分解性ポリマーである。
【0115】
代替実施形態では、生体適合性ポリマー材料は、コラーゲン、フィブリン、ポリ乳酸−ポリグリコール酸、またはポリ無水物など、生体分解性ポリマーである。他の例には、非限定的に、任意の生体適合性ポリマーがあり、エチレン酢酸ビニルコポリマー(EVA)、ポリメチルメタクリレート、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、または酢酸セルロースなどのセルロース派生物など、疎水性、親水性、または両親媒性がある。代替実施形態では、蛋白質コラーゲン、フィブリン、ポリ乳酸−ポリグリコール酸、またはポリ無水物などの生物学的派生ポリマーが、適切なポリマー基質材料である。
【0116】
上記の例は、参照のためにのみ提供され、適切なポリマー基質材料の範囲は、上記に列挙された材料に限定されると解釈されるべきではない。ポリマー基質材料は、上述された物理的特性を満たす限り、親水性、疎水性、または両親媒性とすることができる。米国特許第5087243号、およびAvitallら、Circ.、85:1582(1992年)も参照されたい。ポリマー基質は、ポリマー基質において遺伝子および/または蛋白質、その他の任意選択の薬剤を安定させることが好ましい。
【0117】
ポリマー基質は、透析膜、ナイロン、またはポリスルホキシル酸などの選択的半浸透性膜において存在することも可能である。一実施形態では、半浸透性膜は、生体分解性ではない。
【0118】
他の実施形態では、多層陰極リザーバを製作することが可能である。そのような多層リザーバは、帯電物質が基質から電気移動する率に対して追加の制御を有することが望ましいある種の実施形態において有用である。したがって、対象組織と接触するリザーバの表面において主に生じる陰イオン分子の拡散を防止することが望ましい場合、比較的強い陽イオン基質材料が、比較的弱い陰イオン基質材料をキャップするために使用できる。この多層基質の実施形態は、比較的より毒性であるが、より有効な分子が、埋込み直後の刺激閾値を下げるためにまず使用される場合、優先的に使用できる。しかし、特に心臓不整脈または細動の履歴を有する患者では、不整脈防止薬剤または細動防止薬剤で第2層を帯電させることが有用である可能性があり、この薬剤は、必要な生理学的要求に応じてのみ送給される。同様の組合せが患者において行われることが可能であり、組合せは、甲状腺ホルモン治療が望ましい可能性がある場合、心臓停止の履歴を有する患者において行われることが可能である。
【0119】
多層基質が使用されるとき、徐々に減少する(または増大する、もしくは周期的)分子濃度を順次送ることも可能である。そのような実施形態では、最も遠い基質リザーバが分子の第1下方投与量を含み、第1より高い分子濃度を有する次の最も遠い基質が続く等である。
【0120】
埋込み型システムを使用する方法
埋込み型パルス生成装置および埋込み型イオン導入遺伝子/蛋白質送給器具を含む本発明の埋込み型システムは、ステント、シャント、留置カテーテル、リード、または心外膜パッチなどの他の埋込み型器具、あるいは経皮パッチなどの最小浸襲性器具を結合することが可能である。そのような組合せ器具は、静脈などの血管、または他の身体管腔に導入することが可能である。一実施形態では、本発明の埋込み型システムは、一方または両方の心房など、哺乳動物の心臓に導入される。たとえば、心房細動を有する、またはその危険性を有する哺乳動物は、埋込み型パルス生成装置と埋込み型イオン導入遺伝子/蛋白質送給器具を含むシステムを備える。このシステムは、心臓の心房に結合させることが可能である。心房細動を表す生理学的信号を感知すると、埋込み型パルス生成装置の埋込み制御装置が、電場をもたらす電気信号を生成する。埋込み型イオン導入遺伝子/蛋白質送給器具の遊離核酸および/または蛋白質は、印加電場に比例する量において電場に応答して隣接細胞または組織もしくは血管管腔に放出される。遺伝子/蛋白質の投与量範囲は、条件の症状が緩和される望ましい効果を生成するように十分大きい。投与量は、有害な副作用を生じないように大きくあるべきである。一般に、核酸投与量は、約0.01μgから約100μgなど、約0.001から約500μg、蛋白質投与量では、約1μgから約1mgなど、約1ngから約10mgを含む。一般に、投与量は、患者の年齢、条件、性別、疾患の程度に付随して変化し、当業者によって決定することができる。電気信号が停止された後、遺伝子および/または蛋白質はもはや放出されず、または、電場が存在する場合の放出率より著しく低い率において放出される。したがって、遺伝子および/または蛋白質の送給は、短期間(一時的)であり、電場の方向と器具の配置によって空間的に制御することが可能である。
【0121】
心臓の全周囲の回りの心臓組織が核酸/蛋白質を受け取る一実施形態では、核酸/蛋白質は周辺嚢に投与される。他の実施形態では、ヒドロゲルに存在する核酸/蛋白質は、心臓の表面に経皮的に加え、心臓筋肉に加えることができる。しかし、電場の強度および/または分布は、心臓組織のより大きいまたはより小さい領域を治療することができるように、制御することができることが理解されるであろう。
【0122】
イオン導入の周波数範囲は、0Hz(dc)において始まり、約20MHzの最大値まで増大し、好ましい範囲は2〜15kHzにある。一実施形態では、電場は、dcオフセットを有するac場である。周波数は、本発明のカテーテルにおいて使用される所与の薬剤についてイオン導入移入の率を最大にするように、これらの範囲内において変化させることができる。内因性心拍数より著しく高い周波数範囲を選択することにより、不整脈を誘発する危険性が低減される。
【0123】
本発明の装置およびシステムは、ペーシング、CRT、RCT、除細動などの電気治療、薬剤治療、および/またはたとえば統合遺伝子をもたらす非局在遺伝子治療などの他の治療と共に使用することが可能である。他の治療は、非限定的に、成長因子および/または脈管形成因子での治療、または、プロプラノロールなどのベータ−アドレナリン遮断剤、ベラパミルなどのカルシウム・チャネル遮断剤、カプトプリルなどのアンギオテンシン変換酵素阻害剤、ロサルタンなどのアンギオテンシンII受容体遮断剤、ドキサゾシンなどのアルファ・アドレナリン遮断剤、またはレセルピンなどの降圧剤、シムバスタチンなどの抗脂血剤、亜硝酸アミル、カルベジロール、アデノシン、ジゴキシン、イブチリド、リドカイン、ネセリチドなどの血管拡張剤などの薬剤での治療を含む。
【0124】
すべての刊行物、特許、および特許出願は、参照によって本明細書に組み込まれている。以上の明細書において、本発明は、ある好ましい実施形態に関して記述され、多くの詳細が例示のために述べられたが、当業者なら、本発明は、追加の実施形態が可能であり、本明細書におけるある詳細のいくらかは、本発明の基本的な原理から逸脱せずに、大きく変更することが可能であることを理解するであろう。
【図面の簡単な説明】
【0125】
【図1】遺伝子/蛋白質送給システムの実施形態、およびそれが使用される環境の一部を示す図である。
【図2】図1に示されるような遺伝子/蛋白質送給システムの一部の回路の一実施形態を示すブロック図である。
【図3】図1に示されるような遺伝子/蛋白質送給システムの一部の回路の他の実施形態を示すブロック図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の心臓条件を表す生理学的信号を感知するセンサと、
前記生理学的信号から前記所定の心臓条件を検出するために、前記センサに結合された事象検出器と、
前記事象検出器に結合され、前記所定の心臓条件に応答して遺伝子または蛋白質送給を制御するために、電気信号を生成するように適合された遺伝子または蛋白質送給制御モジュールを含む埋込み制御装置と
を含む埋込み型パルス生成装置、および
前記埋込み型パルス生成装置に結合され、ポリマー基質、および少なくとも1つの遺伝子産物を符号化するまたは少なくとも1つの選択されたmRNAを結合する遊離核酸、あるいは遊離蛋白質を含む埋込み型遺伝子または蛋白質送給器具であって、核酸または蛋白質が、前記電気信号によって創出された電場に応答して埋込み型遺伝子または蛋白質送給器具から放出される埋込み型遺伝子または蛋白質送給器具を備える、システム。
【請求項2】
前記センサが電位図感知回路を備え、前記事象検出器が不整脈検出器を備える請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記不整脈検出器が、徐脈検出器、頻脈細動検出器の1つまたは複数を備える請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記細動検出器が、心房細動検出器を備える請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記細動検出器が、心室細動検出器を備える請求項3から4のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項6】
前記センサが、虚血を表す生理学的信号を感知するセンサを備え、前記事象検出器が、虚血検出器を備える請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記センサが、心臓代謝レベルを表す信号を感知するように適合された代謝センサを備える請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記センサが、pHセンサ、酸素圧力(PO2)センサ、二酸化炭素圧力(PCO2)センサ、グルコース・センサ、クレアチン・センサ、C創出蛋白質センサ、クレアチン・キナーゼ・センサ、およびクレアチン・キナーゼMBセンサの少なくとも1つを備える請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記センサが、組織のインピーダンスを感知するためにインピーダンス・センサを備える請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記インピーダンス・センサが、肺インピーダンス・センサを備える請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記インピーダンス・センサが、呼吸センサを備える請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記センサが、心臓血管システムの圧力を感知するために、圧力センサを備える請求項1に記載のシステム。
【請求項13】
前記圧力センサが、左心房圧力センサ、左心室圧力センサ、動脈圧力センサ、肺動脈圧力センサの少なくとも1つを備える請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記事象検出器が、収縮期機能不全検出器を備える請求項12から13のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項15】
前記事象検出器が、拡張期機能不全検出器を備える請求項12から14のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項16】
前記センサが、1回心拍出量センサを備える請求項1に記載のシステム。
【請求項17】
前記センサが、神経活動センサを備える請求項1に記載のシステム。
【請求項18】
前記神経活動センサが、神経ホルモンのレベルを感知するために、神経ホルモン・センサを備える請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
前記神経活動センサが、神経電気活動を感知するために、活動電位記録器を備える請求項17に記載のシステム。
【請求項20】
前記センサが、心拍数変動検出器を備える請求項1に記載のシステム。
【請求項21】
前記センサが、腎機能センサを備える請求項1に記載のシステム。
【請求項22】
前記腎機能センサが、腎出力センサ、ろ過率センサ、アンギオテシンIIレベル・センサの少なくとも1つを備える請求項21に記載のシステム。
【請求項23】
前記センサが、心音と呼吸音の少なくとも一方を感知するように適合された音響センサを備える請求項1に記載のシステム。
【請求項24】
第3心音(S3)振幅が所定の閾値を超えるとき、前記事象検出器が前記所定の心臓条件を検出する請求項23に記載のシステム。
【請求項25】
前記センサが、心筋リモデリングの程度を表す信号を感知するために、リモデリング・センサを備える請求項1に記載のシステム。
【請求項26】
前記リモデリング・センサが、損傷心筋領域のサイズを感知するために、2つ以上の圧電結晶を備える請求項25に記載のシステム。
【請求項27】
前記埋込み型遺伝子または蛋白質送給器具が、前記ポリマー基質を含む心外膜パッチを備える請求項1から26のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項28】
前記核酸または蛋白質が、前記電場の強度によって制御される率において放出される請求項1から27のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項29】
前記埋込み型パルス生成装置が、前記埋込み制御装置に結合されたペーシング回路をさらに備え、前記埋込み制御装置が、前記核酸または蛋白質の放出と関連してペーシング・パルスの送給を制御するように適合されたペーシング制御モジュールを含む請求項1から28のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項30】
心房ペーシング・パルスを送るために、前記ペーシング回路に結合された少なくとも1つの心房ペーシング・リードをさらに備える請求項29に記載のシステム。
【請求項31】
心室ペーシング・パルスを送るために、前記ペーシング回路に結合された少なくとも1つの心室ペーシング・リードをさらに備える請求項29から30のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項32】
前記埋込み型パルス生成装置が、前記埋込み制御装置に結合された心臓再同期治療(CRT)回路をさらに備え、前記埋込み制御装置が、前記核酸または蛋白質の前記放出と関連してCRTの送給を制御するように適合されたCRT制御モジュールを含む請求項29から31のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項33】
前記埋込み型パルス生成装置が、前記埋込み制御装置に結合されたリモデリング制御治療(RCT)回路をさらに備え、前記埋込み制御装置が、前記核酸または蛋白質の前記放出と関連してRCT治療を制御するように適合されたRCT治療制御モジュールを含む請求項29から32のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項34】
前記埋込み型パルス生成装置が、前記埋込み制御装置に結合された除細動回路をさらに備え、前記埋込み制御装置が、前記核酸または蛋白質の前記放出と関連して除細動ショックの送給を制御するように適合された除細動制御モジュールを含む請求項1から33のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項35】
前記除細動ショックを1つまたは複数の心房に送るために、前記除細動回路に結合された少なくとも1つの心房除細動リードをさらに備え、前記除細動制御モジュールが、心房除細動制御モジュールを備える請求項34に記載のシステム。
【請求項36】
前記除細動ショックを1つまたは複数の心室に送るために、前記除細動回路に結合された少なくとも1つの心室除細動リードをさらに備え、前記除細動制御モジュールが、心室除細動制御モジュールを備える請求項34から35のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項37】
前記埋込み型パルス生成装置が、外部コマンドを受信するために、埋込み遠隔測定モジュールをさらに備え、前記遺伝子または蛋白質送給制御モジュールが、前記所定の心臓条件と前記外部コマンドに応答して遺伝子または蛋白質送給を制御するために、前記電気信号を生成するように適合される請求項1から36のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項38】
前記埋込み型パルス生成装置に通信式に結合された外部システムをさらに備え、前記外部システムが、
前記感知された生理学的信号や前記検出された所定の心臓条件の1つまたは複数を提示するためのプレゼンテーション器具と、
前記外部コマンドを受信するためのユーザ入力器具と、
前記外部コマンドを前記埋込み遠隔測定モジュールに送信するための外部遠隔測定モジュールとを含む請求項37に記載のシステム。
【請求項39】
前記外部システムが、プログラマを備える請求項38に記載のシステム。
【請求項40】
前記外部システムが、
遠隔測定により前記埋込み型パルス生成装置に無線結合された外部器具と、
遠隔位置から前記埋込み型パルス生成装置へのアクセスを提供するための遠隔器具と、
前記外部器具と前記遠隔器具とを接続するネットワークと
を含む高度患者管理システムを備える請求項38に記載のシステム。
【請求項41】
前記外部器具が、ユーザ入力を備える請求項40に記載のシステム。
【請求項42】
前記遠隔器具が、前記ユーザ入力を備える請求項40に記載のシステム。
【請求項43】
埋込み型遺伝子または蛋白質送給システムを動作させる方法であって、
埋込み型センサを使用して所定の心臓条件を表す生理学的信号を感知するステップと、
前記生理学的信号から前記所定の心臓条件を検出するステップと、
前記所定の心臓条件に応答して電気信号を生成ステップとを備え、
前記電気信号が、ポリマー基質を含み、かつ少なくとも1つの遺伝子産物を符号化するまたは少なくとも1つの選択されたmRNAを結合する遊離核酸または遊離蛋白質を含む、埋込み型遺伝子または蛋白質送給器具から核酸または蛋白質を放出する電場を創出する、方法。
【請求項44】
前記核酸または蛋白質が、前記電場の強度によって制御される率において放出される請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記整理信号を感知するステップが、少なくとも1つの電位図を感知するステップを備え、前記所定の心臓条件を検出するステップが、不整脈を検出するステップを備える請求項43から44のいずれか1項に記載の方法。
【請求項46】
前記所定の心臓条件を検出するステップが、心房細動を検出するステップを備える請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記所定の心臓条件を検出するステップが、心室細動を検出するステップを備える請求項45に記載の方法。
【請求項48】
前記生理学的信号を感知するステップが、虚血を表す生理学的信号を感知するステップを備え、前記所定の心臓条件を検出するステップが、虚血を検出するステップを備える請求項43から44のいずれか1項に記載の方法。
【請求項49】
前記生理学的信号を感知するステップが、心臓代謝レベルを表す信号を感知するステップを備える請求項43から44のいずれか1項に記載の方法。
【請求項50】
前記心臓代謝レベルを表す前記信号を感知するステップが、pH値、酸素圧力(PO2)、二酸化炭素圧力(PCO2)、グルコース・レベル、クレアチン・レベル、C創出蛋白質レベル、クレアチン・キナーゼ・レベル、クレアチン・キナーゼMBレベルの少なくとも1つを感知するステップを備える請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記生理学的信号を感知するステップが、組織インピーダンスを感知するステップを備える請求項43から44のいずれか1項に記載の方法。
【請求項52】
前記組織インピーダンスを感知するステップが、肺インピーダンスを感知するステップを備える請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記組織インピーダンスを感知するステップが、分時換気を表すインピーダンスを感知するステップを備える請求項51に記載の方法。
【請求項54】
前記生理学的信号を感知するステップが、心臓血管システムの圧力を感知するステップを備える請求項43から44のいずれか1項に記載の方法。
【請求項55】
前記圧力を感知するステップが、左心房圧力、左心室圧力、動脈圧力、肺動脈圧力の少なくとも1つを感知するステップを備える請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記所定の心臓条件を検出するステップが、収縮期機能不全を検出するステップを備える請求項54に記載の方法。
【請求項57】
前記所定の心臓条件を検出するステップが、拡張期機能不全を検出するステップを備える請求項54に記載の方法。
【請求項58】
前記生理学的信号を感知するステップが、1回心拍出量を感知するステップを備える請求項43から44のいずれか1項に記載の方法。
【請求項59】
前記生理学的信号を感知するステップが、神経活動を感知するステップを備える請求項43から44のいずれか1項に記載の方法。
【請求項60】
前記神経活動を感知するステップが、神経ホルモン・レベルを感知するステップを備える請求項59に記載の方法。
【請求項61】
前記神経活動を感知するステップが、神経電気活動を感知するステップを備える請求項59に記載の方法。
【請求項62】
前記生理学的信号を感知するステップが、心拍数の変動を検出するステップを備える請求項61に記載の方法。
【請求項63】
前記生理学的信号を感知するステップが、腎機能を感知するステップを備える請求項43から44のいずれか1項に記載の方法。
【請求項64】
前記腎機能を感知するステップが、腎出力、ろ過率、アンギオテンシンIIレベルの少なくとも1つを感知するステップを備える請求項63に記載の方法。
【請求項65】
生理学的信号を感知するステップが、心音と呼吸音の少なくとも一方を感知するステップを備える請求項43から44のいずれか1項に記載の方法。
【請求項66】
前記所定の心臓条件を検出するステップが、第3心音(S3)振幅が所定の閾値を超えるとき、所定の心臓条件を検出するステップを備える請求項65に記載の方法。
【請求項67】
前記生理学的信号を感知するステップが、心筋リモデリングの程度を表す信号を感知する請求項43から44のいずれか1項に記載の方法。
【請求項68】
心筋リモデリングの程度を表す前記信号を感知するステップが、損傷心筋領域のサイズを感知するステップを備える請求項67に記載の方法。
【請求項69】
前記核酸または蛋白質の放出と関連して、ペーシング・パルスを送るステップをさらに備える請求項43から68のいずれか1項に記載の方法。
【請求項70】
前記核酸または蛋白質の放出と関連して、心臓再同期治療(CRT)を行うステップをさらに備える請求項69に記載の方法。
【請求項71】
前記核酸または蛋白質の放出と関連して、リモデリング制御治療(RCT)を行うステップをさらに備える請求項69から70のいずれか1項に記載の方法。
【請求項72】
前記核酸または蛋白質の放出と関連して、電気的除細動/除細動ショックを送るステップをさらに備える請求項43から71のいずれか1項に記載の方法。
【請求項73】
電気的除細動/除細動ショックを送るステップが、心房除細動ショックを送るステップを備える請求項72に記載の方法。
【請求項74】
電気的除細動/除細動ショックを送るステップが、心室除細動ショックを送るステップを備える請求項72から73のいずれか1項に記載の方法。
【請求項75】
外部システムから埋込み型器具に送信された外部コマンドを受信するステップをさらに備え、前記電気信号を生成するステップが、前記所定の心臓条件と前記外部コマンドに応答して、前記電気信号を生成するステップを備える請求項43から74のいずれか1項に記載の方法。
【請求項76】
前記感知された生理学的信号と前記所定の心臓条件の検出の1つまたは複数を前記外部システムに送信するステップと、
前記外部システムを経て前記感知された生理学的信号と前記所定の心臓条件の検出の1つまたは複数を提示するステップとをさらに備える請求項75に記載の方法。
【請求項77】
前記外部コマンドを受信するステップが、前記外部システムを経て医師または他の介護者によって入力された前記外部コマンドを受信するステップを備える請求項75から76のいずれか1項に記載の方法。
【請求項78】
前記外部コマンドを受信するステップが、前記外部システムを経て患者によって入力された前記外部コマンドを受信するステップを備える請求項75から76のいずれか1項に記載の方法。
【請求項79】
埋込み型遺伝子または蛋白質送給器具を形成するように、少なくとも1つの遺伝子産物を符号化する、若しくは哺乳動物において少なくとも1つの選択されたmRNAを結合する遊離核酸または遊離蛋白質を、生理学的共存可能ポリマー基質に導入するステップを備え、前記遊離核酸または蛋白質が、哺乳動物において心臓条件を予防、抑制、または治療するように選択され、前記器具からの前記核酸または蛋白質の放出率を電気信号によって制御する、埋込み型遺伝子または蛋白質送給器具を準備する方法。
【請求項80】
埋込み型遺伝子または蛋白質送給器具を形成するように、ポリマー基質、および少なくとも1つの遺伝子産物を符号化する、または哺乳動物において少なくとも1つの選択されたmRNAを結合する遊離核酸、あるいは遊離蛋白質を形成するのに適切な生理学的共存可能モノマーを組み合わせるステップを備え、前記遊離核酸または蛋白質が、哺乳動物の心臓条件を予防、抑制、または緩和するように選択され、前記器具からの前記核酸または蛋白質の放出率を電気信号によって制御する、埋込み型遺伝子または蛋白質送給器具を準備する方法。
【請求項81】
前記核酸または蛋白質が、心房細動、心不全、心室細動、虚血、徐脈、または過形成を予防、抑制、または緩和するように選択される請求項79または80に記載の方法。
【請求項82】
前記核酸が、1つまたは複数のベクターの上に存在する請求項79または80に記載の方法。
【請求項83】
前記1つまたは複数のベクターが、DNAベクターである請求項82に記載の方法。
【請求項84】
前記1つまたは複数のベクターが、ウィルス・ベクターである請求項82に記載の方法。
【請求項85】
前記1つまたは複数のベクターが、プラスミド・ベクターである請求項82の方法。
【請求項86】
前記核酸が、モルフォリノ変性ヌクレオチドを含む請求項79から81のいずれか1項に記載の方法。
【請求項87】
少なくとも1つの遺伝子産物または蛋白質が、コネクシンである請求項79から86のいずれか1項に記載の方法。
【請求項88】
少なくとも1つの遺伝子産物または蛋白質が、心房特有イオン・チャネル蛋白質である請求項79から86のいずれか1項の方法。
【請求項89】
前記遺伝子産物または蛋白質が、Itに関連付けられる請求項88に記載の方法。
【請求項90】
少なくとも1つの遺伝子産物または蛋白質が、非特有イオン・チャネル蛋白質である請求項79から86のいずれか1項に記載の方法。
【請求項91】
前記遺伝子産物または蛋白質が、IKt、ICaL、Ito、IKD、IKur、IKATP、INa、またはINa/Caに関連付けられる請求項90に記載の方法。
【請求項92】
少なくとも1つの遺伝子産物または蛋白質が、ギャップ・ジャンクションを調節する請求項79から86のいずれか1項に記載の方法。
【請求項93】
少なくとも1つの遺伝子産物または蛋白質が、心筋における伝導を変化させる請求項79から86のいずれか1項に記載の方法。
【請求項94】
前記蛋白質または前記核酸が、イオン・チャネルを遮断し、イオン・チャネルを上方調節し、イオン・チャネルを下方調節し、またはイオン・チャネル動態を変化させる調節蛋白質を符号化する請求項43または79から86のいずれか1項に記載の方法。
【請求項95】
請求項79から94のいずれか1項に記載の前記方法によって準備される埋込み型遺伝子または蛋白質送給器具。
【請求項96】
少なくとも1つの遺伝子産物を符号化する、または少なくとも1つの選択されたmRNAを結合する遊離核酸、あるいは遊離蛋白質を哺乳動物に短期間に送る方法であって、
請求項1から42のいずれか1項に記載のシステムを備え、所定の心臓条件の危険にある哺乳動物を用意するステップと、
前記条件または少なくとも1つの症状を抑制または緩和させるのに有効な量において、前記核酸または蛋白質を短期間に送るように、前記条件の検出に応答して、電気信号の生成を命令するステップとを備える、方法。
【請求項97】
前記システムが、前記哺乳動物の心臓にある、または心臓にある請求項96に記載の方法。
【請求項98】
前記システムが、前記哺乳動物の血管にある、または血管にある請求項96に記載の方法。
【請求項99】
前記条件が、心房細動、心不全、心室細動、虚血、除脈、または過形成である請求項96から98のいずれか1項に記載の方法。
【請求項100】
前記核酸または蛋白質が、前記心房の少なくとも一方に送給される請求項96から98のいずれか1項に記載の方法。
【請求項101】
前記核酸または蛋白質が、心室の少なくとも一方に送給される請求項96から98のいずれか1項に記載の方法。
【請求項102】
送給される前記核酸または蛋白質が、コネクシン核酸または蛋白質である請求項96から98のいずれか1項に記載の方法。
【請求項103】
送給される前記核酸または蛋白質が、心房特有イオン・チャネル遺伝子または蛋白質である請求項96から98のいずれか1項に記載の方法。
【請求項104】
送給される前記核酸または蛋白質が、Ifに関連付けられる請求項103に記載の方法。
【請求項105】
送給される前記核酸または蛋白質が、非特有イオン・チャネル遺伝子または蛋白質である請求項96から98のいずれか1項に記載の方法。
【請求項106】
送給される前記核酸または蛋白質が、IKt、ICAl、Ito、IKr、IKur、IKATP、INa、またはINa/Caに関連付けられる請求項105に記載の方法。
【請求項107】
前記遺伝子産物または蛋白質が、ギャップ・ジャンクションを調節する請求項96から98のいずれか1項に記載の方法。
【請求項108】
前記遺伝子産物または蛋白質が、心筋における伝導を変化させる請求項96から98のいずれか1項に記載の方法。
【請求項109】
前記蛋白質または前記核酸が、イオン・チャネルを遮断し、イオン・チャネルを上方調節し、イオン・チャネルを下方調節し、またはイオン・チャネル動態を変化させる調節蛋白質を符号化する請求項96から98のいずれか1項に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公表番号】特表2008−506467(P2008−506467A)
【公表日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−521625(P2007−521625)
【出願日】平成17年7月13日(2005.7.13)
【国際出願番号】PCT/US2005/024914
【国際公開番号】WO2006/019856
【国際公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【出願人】(505003528)カーディアック・ペースメーカーズ・インコーポレーテッド (466)
【Fターム(参考)】