説明

剪断流動発生部付き射出金型装置

本発明は、剪断流動発生部付き射出金型装置に関する。これは、所定ピグメントが混合された溶融樹脂が満たされる内部空間を備えた射出金型と、前記射出金型に設けられて、その一部が前記内部空間に露出し、内部空間に注入される溶融樹脂に接して、外部動力を印加されて動作し、その表面に接している溶融樹脂を粘性で剪断流動させることによって、溶融樹脂内のピグメント位置を調節する剪断力発生部と、前記剪断力発生部を動作させる駆動部、を含むことを特徴とする。上記のような本発明の射出金型装置は、射出金型内部のウェルドライン(Weld line)発生区域に位置した溶融樹脂内に、粘性流動を生じることによって、当該区域の溶融樹脂内に混合されているピグメントの位置を調節することができるため、ウェルドライン周辺におけるピグメントの配向不良及び含量不足による問題を解決し、高品質の成型品を制作することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、剪断流動発生部付き射出金型装置に関する。
【背景技術】
【0002】
合成樹脂製品の表面に、例えば、メタリック(metallic)やパール(pearl)、またはマーブル(marble)質感などを付与するために、前記質感を具現する各種ピグメント(pigment)を樹脂原料に予め混合し射出する方法が知られている。この方法は、一般無質感合成樹脂製品の表面にスプレー塗装を追加する方法に比べ、生産コストが著しく低く、塗装工程に伴う環境問題がないという長所を有している。
【0003】
一方、上記のように、ピグメントを溶融樹脂に予め混合して射出する方法において重要なことは、射出後、ピグメントが製品の表面に均一に分布しなければならないということである。特に、フレーク(flake)型ピグメントは、製品表面と平行な配向を有しなければならない。このように、ピグメントが均一に分布し、且つ適切な配向を有することによってのみ、樹脂中に含まれたピグメントが多量の光を均一に反射して光輝感をもたせ、高品質の製品を得ることができるようになる。
【0004】
しかしながら、射出時、金型内部で二つ以上の溶融樹脂の流れがぶつかり合う部位(ウェルドライン)や、製品に穴を形成するためのコア(図2の14)の後方周辺部などには、いわゆる噴水流動効果(Fountain flow effect)により、溶融樹脂内部のピグメントがコア層(図3のC)からスキン層(図2のS)に回っていくようになる。
【0005】
このような現象により、前記ウェルドライン付近に、ピグメントの含量が他の所より相対的に少ない低含量区域(図2のA)が形成されるようになり、特に、ピグメントが多面体型ではなく、フレーク(flake)型である場合、ピグメント(図3及び図6の21)の配向が製品表面に対し垂直あるいは傾いて、光の反射量が著しく減ることによって、該当部位が暗い線に見えるような製品不良が発生する。
【0006】
図1及び図2は、従来の射出金型で製品を射出する様子を概略的に示した図である。射出金型は、制作しようとする製品の形によってその構造が千差万別であるが、本明細書では、説明の便宜上、最も簡単な構造の金型を例とした。
【0007】
図1を参照すると、下部金型15と上部金型13とが組み合って、一つの金型11をなしており、その内部には、制作しようとする製品形状が反映された内部空間17が形成されている。さらに、前記上部金型13の両側部には、溶融樹脂19を注入するための注入口13aが位置している。前記注入口13aの位置は、金型11の設計時、溶融樹脂19の流動特性や流動距離など、色んな要素を勘案して、最も適切な場所に決定する。前記注入口13aの数も、場合によって変わることも有りうる。
【0008】
ところが、いかに簡単な金型であっても、多数の注入口を有するか、一つの注入口を使用するとしても穴や厚さ偏差などの製品構造により、溶融樹脂の二つの流れが合流し、それぞれの注入口を通じての注入あるいは製品構造による二つの流れの溶融樹脂19は、内部空間17において度々ぶっつかる。例えば、図1に示したように、両側の注入口13aを通じて流入した溶融樹脂19が、内部空間17を矢印z方向に満たしながら移動するうち、中央部位でぶつかり合うようになる。
【0009】
上記のように、異なる流れを有する溶融樹脂がぶつかり合う位置をウェルドラインRという。前記ウェルドライン付近では、樹脂の流れが、他の所とは違い円滑でないため、望ましくない色んな現象が発生し、製品の不良が生じる場所となる可能性が高い。
【0010】
前記ウェルドラインにおける問題は、製品に質感を具現するために、溶融樹脂にピグメントを混合した場合はさらにひどくなる。
【0011】
なお、前記図1の場合と異なって、溶融樹脂が一つの注入口13aを通じて注入されても、金型11の内部空間17にコア(図2の14)が設けられている場合、コア14の後方に前記ウェルラインが形成される確率が非常に高い。
【0012】
図2にコア14の設けられた金型11を示した。
【0013】
図2を参照すると、一つの注入口13aを通じて内部空間17に注入された溶融樹脂19が、矢印P方向に粘性流動しながら徐々に内部空間17を満たしていくことが分かる。前記溶融樹脂19は、流動中、前記コア14により分かれた後、コア14の後方で再び合流する。即ち、コア14により分離された流れがコア14の後方で再び合流するようになるのである。このような合流による問題は、前記図1を通じて説明したような、(異なる穴を通じて流入された)二つの流れがぶつかり合う時に発生する問題を引き起こす。即ち、ウェルドラインRを形成する。
【0014】
図3、図4、及び図5は、前記図1に示した従来の射出金型の問題点を説明するために示した図面である。
【0015】
図3は、前記図1のウェルドラインR付近におけるピグメント21の流動特性を示した図である。基本的に、溶融樹脂は粘性流体であるため、流動通路を内部流動する時、中央部位が最も速く流動し、壁面に近接した部位は、壁面に近接するほど遅く流動する。一般に、中央部の流動層をコア層Cといい、外郭部(コア層と壁面との間)の流動層をスキン層Sという。
【0016】
図3を参照すると、金型の内部空間17を矢印Z方向に流動しながらぶつかり合った溶融樹脂のコア層Cは、相互衝突後(まるで噴水のように周りに広がり)、反対方向に流動する。この瞬間、内部空間は、溶融樹脂で満たされた状態になるため、それ以上の流入流量がない。したがって、一度ぶつかり合うと反対方向に広がって、スキン層Sに位置した溶融樹脂は、それ以上動けなくなり、そのまま固まって製品化される。
【0017】
一方、前記溶融樹脂に混合されていたピグメント21も、上記の溶融樹脂の流れによって移動しながら、図3に示したパターンで配向された後、止まるようになる。したがって、前記ウェルドラインRの上部と下部に、ピグメント21の密度が非常に低い低含量区域Aが形成されるようになる。前記低含量区域Aは、ピグメント21の含量が他の所より非常に少ない場所であって、光を反射できる面が減って、減った分暗く映り、特に、図示したようにピグメント21がフレーク型である場合は、製品における当該部位のみが所定質感を出せなくなる結果を招来する。
【0018】
図4は、前記流れを有する溶融樹脂19が金型の内部で固まった状態を示した断面図である。図示したように、ウェルドラインR付近に低含量区域Aが位置することが分かる。前記下部金型15から上部金型13を開けて、射出された製品Bを取り出してみると、図5のように、製品Bの中央部、即ちウェルドラインR付近の低含量区域Aが、他の所より暗く映っていることが分かる。このような製品は、不良と分類される。
【0019】
図6は、前記図2に示した従来の射出金型の問題点を説明するための図2のQ−Q線断面図である。
【0020】
図面を参照すると、金型14の側部に低含量区域Aが位置することが分かる。前記低含量区域Aの発生原因は、図3を通じて説明した通りであり、製品の表面にウェルドラインRとして表れる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
本発明は、上記のような問題点を解消するために創案したもので、射出金型内部のウェルドライン(Weld line)発生区域に、溶融樹脂に粘性による剪断力を加えることにより、溶融樹脂内に混合されているピグメントの位置を調節することができる剪断力発生部を設け、前記剪断力発生部によって、ウェルドライン周辺におけるピグメントの配向不良及び含量不足による問題を解決し、高品質の成型品を制作することができる、剪断流動発生部付き射出金型装置を提供することにその目的がある。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上記目的を達成するために本発明は、所定ピグメントが混合された溶融樹脂が満たされる内部空間を備えた射出金型と、前記射出金型に設けられて、その一部が前記内部空間に露出し、内部空間に注入される溶融樹脂に接して、外部動力の印加により動作し、その表面に接している溶融樹脂を粘性で剪断流動させることによって、溶融樹脂内のピグメント位置を調節する剪断力発生部と、前記剪断力発生部を動作させる駆動部を含むことを特徴とする。
【0023】
また、前記剪断力発生部は、その外周面の一部が前記内部空間に突出するように設けられて、軸回転運動を通じて、前記外周面に接している溶融樹脂を回転方向に剪断流動させる一つ以上のローラーまたは移動面ベルトを含むことを特徴とする。
【0024】
さらに、前記ローラーは、二個以上が相互並ぶように配置されて、溶融樹脂の状態によって、それぞれ同一な回転方向または相互異なる回転方向に回転することを特徴とする。
【0025】
また、前記金型の内部には、長さ方向に延びたガイド溝が備えられて、前記剪断力発生部は、前記ガイド溝に支持された状態で往復動可能であり、その一側に、前記内部空間側に突出し、往復動する間に溶融樹脂に剪断力を提供する突出部を有する往復部材が含まれることを特徴とする。
【0026】
また、前記駆動部は、前記往復部材にピン連結され、金型の外部に延びる回動リンクと、前記回動リンクを回動させ、この回動リンクをして往復部材を動作させるアクチュエータを含むことを特徴とする。
【0027】
また、前記駆動部は、前記往復部材に装着されたラックギアと、前記ラックギアと噛み合うピニオンギアと、前記ピニオンギアを回転させるモーターを含むことを特徴とする。
【0028】
また、前記駆動部は、前記往復部材の一側に装着されるソレノイド部と、前記ソレノイド部に従動可能な状態でガイド溝に固定され、ソレノイドの動作時、往復部材を進退動させるプランジャーを含むことを特徴とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明による実施例を、添付の図面を参照し、より詳細に説明する。本発明において、溶融樹脂に混合したピグメントは、フレーク(flake)型ピグメントを例としたが、フレークタイプの他に、多面体型ピグメントやその他のタイプのピグメントを適用することができる。
【0030】
図7は、本発明の実施例1による剪断流動発生部付き射出金型装置の構成を概略的に示した構成図である。
【0031】
図面を参照すると、実施例1による金型装置は、平板状の製品(図14のB)を制作するための金型41と、前記金型41の内部に設けられるローラー49と、前記ローラー49を作動する駆動部を含む構成を有する。
【0032】
前記金型41は、下部金型45と、前記下部金型45の上部にフィットする上部金型43とからなり、前記上部金型43の両側には、溶融樹脂を金型の内部空間47に注入するための通路である注入口43aが設けられている。前記注入口43aは、溶融樹脂の流動速度や移動距離などを考慮し、最も適合した所に位置される。
【0033】
一方、前記ローラー49は、一定直径を有し、その外周面の一部が金型41の内部空間47に突出した環棒状部材であって、金型41の外部に設けられているモーター51から動力を伝達されて軸回転する。
【0034】
前記ローラー49は、矢印z方向に進入する溶融樹脂の進入方向に直交する方向に配置されるが、溶融樹脂が相互ぶつかり合うウェルドラインから少し離隔された地点に位置する。参考に、前記ウェルドラインは、通常の数値解釈方法により正確な予測が可能である。本実施例では、前記ローラー49がウェルドラインRから少し離隔されているが、場合によって、ローラー49の中心をウェルドラインRに合わせることもできる。
【0035】
前記ローラー49は、その外周面の一部が内部空間47側に突出するため、図11に示したように、突出外周面により、溶融樹脂を図11の矢印X方向に粘性流動させることができる。したがって、溶融樹脂内部に含まれているピグメント21を前記低含量区域(図4のA)に移動させると共に、ピグメントがフレーク型ピグメントである場合、ピグメントが金型の内向面にほぼ平行に配向されるように誘導する。
【0036】
前記ローラー49を動作させる駆動部には、ローラー49に回転トルクを伝達するモーター51と、前記モーター51を制御するコントローラー53が含まれる。前記コントローラー53は、モーター51の回転速度や回転方向を調節できる通常の制御手段である。前記ローラー49を回転させることができるものであれば、前記モーター以外の駆動手段も勿論適用することができる。
【0037】
図8は、本発明の実施例2による剪断流動発生部付き射出金型装置の構成を概略的に示した構成図であって、図7のローラーの代わりに、広い移動面ベルト50の面全体が少し突出して動くため、部品制作の難易度に比べ、剪断流動の効果を極大化することができる長所がある。
【0038】
図9及び図10は、図7及び図8に示した射出金型装置の一部斜視図であって、ローラー49とモーター51の電動連結方式を例として示した。
【0039】
図示したように、下部金型45に前記ローラー49が回転可能に設けられている。前記ローラー49の外周面の一部が下部金型45の金型面の上部に突出していることは、上記の通りである。
【0040】
特に、前記ローラー49の一端部は、下部金型45の側部に延び、延びた端部には、プーリ49aが固定されている。前記プーリ49aは、モーター51の駆動軸に固定されている駆動プーリ51aに、ベルト52により連結される。したがって、モーター51を駆動すると、モーターの回転トルクは、ベルト52を介してローラー49に伝達される。
【0041】
図11、図12、及び図13は、前記図7及び図8に示した射出金型装置の動作を説明するために示した図面であり、既に金型の内部空間47に溶融樹脂が充填された状態で、ローラー49の回転により溶融樹脂が矢印X方向に粘性流動する様子を示している。前記ローラー49は、溶融樹脂が内部空間に充填される時から固まる前まで動作し、具体的な作動時期は、溶融樹脂の特徴や様々な条件により異なってくる。図面を参照すると、溶融樹脂(図にはピグメント21のみが示されているが、内部空間47に溶融樹脂が充填されていることは当然である)内のピグメント21のうち、スキン層Sに位置したピグメント21が上・下部金型43、45の内向面にほぼ平行に配向されていることが分かる。特に、前記ウェルドラインRの低含量区域Aにも、ピグメント21が他の所と同じ分布密度で満たされている。これは、前記ローラー49の動作によるものである。
【0042】
即ち、前記ローラー49を矢印m方向に軸回転させるにつれて、ローラー49の外周面に接している溶融樹脂が矢印X方向に粘性流動し、この際、溶融樹脂内部に分布しているピグメント21が流動方向に配向されると共に、前記低含量区域Aに移動する。前記ウェルドラインR周辺以外の他の部位のピグメントは、粘性流動の特性上、金型43、45の内向面に並んで配向されて、全体的に均一な密度で分布する。
【0043】
図14は、図7に示した射出金型装置で制作した製品の断面図である。
【0044】
前記図5の過程を経て、ピグメント21が低含量区域Aを好ましい配向角度で満たした状態で、冷却により樹脂を固化させた後、金型を分離すると、図14の製品Bが得られる。
【0045】
図14を参照すると、製品Bの内部にピグメント21が全体的に均一な密度で分布していることが分かる。特に、従来問題となっていた低含量区域が存在せず、製品表面付近のピグメントも、表面とほぼ並んで配向されている。したがって、製品Bの外側面に入射された光は、各ピグメント21に反射され(暗い部分無しに)、外部に光輝感をディスプレイする。
【0046】
図面符号Gは、前記ローラー49が挿入されたまま固まって形成された溝である。前記溝Gがある面は、外部から見えない製品の内側面である。
【0047】
図15は、本発明の実施例3による射出金型装置の構成を概略的に示した構成図である。実施例3及び後述する実施例4の射出金型装置は、両方とも実施例1と同様な原理を有する。さらに、上記の図面符号と同一な図面符号は、同一な機能を有する同一な部材を意味する。
【0048】
図15を参照すると、実施例3による射出金型装置の下部金型57には、多数個のローラー49が備えられていることが分かる。前記四つのローラー49は、一つのモーター51により同一な回転速度で回転する。前記ローラー49の回転速度(回転速度には、回転方向も含まれる)は、コントローラー53の制御により調節可能である。
【0049】
さらに、前記各ローラー49とモーター51の電動連結は、通常的な動力連結方式により自由に具現可能である。また、前記ローラー49の作動時期は、実施例1と同様である。
【0050】
図16及び図17は、図15に示した射出金型装置の動作を説明するために示した図面である。
【0051】
図示したように、多数個のローラー49が下部金型57の内向面から上部に突出して設けられている。前記各ローラー49は、内部空間47に充填されて、その外周面に接している溶融樹脂を、矢印X方向に粘性流動させることにより、溶融樹脂内部のピグメント21を均一な密度で分布させると共に、所望の方向に配向させる役割をする。このようなローラー49の役割及び作動メカニズムは、実施例1と同様である。
【0052】
さらに、ピグメントの大きさ、樹脂温度、金型温度、樹脂粘度、樹脂層厚、ローラーの直径及び回転速度など、樹脂、成形条件、金型などに応じて、流体の流れを所望の方向に制御するために、ローラーの回転方向が変更できるようにしたことを特徴とする。その例として、図16のローラーの回転方向と図17のローラーの回転方向とは、相互同じであるが、製品の外観面に該当する金型内部空間の部位における樹脂及びピグメントの流動方向は、相互反対である。これは、流体の流動特性と工程条件によって、図16及び図17のように異なってくる。
【0053】
図18は、図15に示した射出金型装置で制作した製品Bの断面図である。
【0054】
図示したように、製品Bの内部にピグメント21が均一に分布し、特に各ピグメント21が製品Bの内外側の表面に並んで配向されている。前記製品Bに混合されているピグメントが、フレーク型ピグメントではなく多面体型ピグメントの場合であっても、全体的に均一に分布し低含量区域がなく、ウェルドラインが表れないことは勿論である。
【0055】
図19は、本発明の実施例4による射出金型装置の概略的な構成を示した図面である。
【0056】
図面を参照すると、下部金型59の内部にガイド溝59aが形成されており、前記ガイド溝59aに、往復部材61が矢印p方向またはその反対方向に直線往復動可能に支持されていることが分かる。前記往復部材61は、両側端部が前記ガイド溝59aに挿入支持された状態で、その上面が内部空間47に露出する平板状部材である。
【0057】
前記往復部材61の上面には、多数の突出部61aが形成されている。前記突出部61aは、注入口43aを通じて内部空間47に進入する溶融樹脂19の流動方向に直交する方向に延びた線形突起であって、往復部材61が矢印p方向に移動する時に、溶融樹脂を図20の矢印X方向に粘性流動させる役割をする。
【0058】
図面符号55は、前記往復部材61を作動させる駆動部であって、駆動原理は、場合によって異なるが、例えば、図22、図23及び図24に示したリンク方式、ギア方式、ソレノイド方式を適用することができる。
【0059】
図20は、前記図19に示した射出金型装置の動作を説明するために示した図面である。
【0060】
図示したように、金型の内部空間47に充填されている溶融樹脂(図20では、溶融樹脂内部のピグメント21のみが示されている)の一部が、前記往復部材61の上面に接している。この状態で、前記駆動部55を通じて往復部材61を矢印P方向に瞬間的に移動させると、突出部61aが溶融樹脂内部に矢印X方向の粘性流動を発生し、相互異なる経路に進入してぶつかり合った溶融樹脂内部の非均質ピグメント21を低含量区域に移動させる(前記低含量区域は、ローラー49や往復部材61を作動する前には、常に発生するものである)。
【0061】
前記往復部材61を反復的に動作させ、十分な粘性流動を発生することにより、ピグメント21を均一に分散すると共に、好ましい方向に配向させることができる。上記のように、使用ピグメントが多面体型ピグメントである場合、ピグメントの配向は重要ではない。
【0062】
図21は、図19に示した射出金型装置で制作した製品の断面図である。
【0063】
図を参照すると、製品Bの内部に、ピグメント21が低含量区域が無しに全体的に均一に分布されていることが分かる。
【0064】
図22は、図19に示した射出金型装置における駆動部55の一具現例を概略的に示した図面である。
【0065】
図示したように、前記往復部材61の底面に、回動リンク67が連結ヒンジ71を通じてピン連結されている。前記回動リンク67は、往復部材61に連結された状態で下部金型59の外部に延びた一定長さのロッドであって、その中央部位が固定ヒンジ69にピン69a連結される。
【0066】
前記回動リンク67を固定ヒンジ69に連結させるために、回動リンク67の該当部位には、垂直に延びた長孔67aが設けられて、前記固定ヒンジ69のピン69aが前記長孔67aに挿入される。このように、回動リンク67に長孔67aを形成することにより、回動リンク67が固定ヒンジ69に固定された状態で回動自在になる。
【0067】
前記回動リンク67の下端部には、アクチュエータ65が連結される。前記アクチュエータ65は、空圧式または油圧式アクチュエータであって、作動ロッド65aが回動リンク67の下端部にピン連結される。したがって、前記アクチュエータ65を駆動して作動ロッド65aを往復動させると、往復部材61がガイド溝59aに支持された状態で、左右に往復移動するようになる。図面符号63は、緩衝スプリングである。
【0068】
図23は、図19に示した射出金型装置における駆動部の他の具現例を概略的に示した図である。
【0069】
図面を参照すると、前記往復部材61の底面にラックギア73が設けられており、前記ラックギア73にピニオンギア75が噛み合っていることが分かる。前記ピニオンギア75は、モーター77の駆動軸に固定されて、モーターの回転トルクをラックギア73に伝達し、往復部材61がガイド溝59aに支持された状態で往復するようにする。前記往復部材61の両端部には、緩衝用スプリング63が設けられている。
【0070】
図24は、図19に示した射出金型装置における駆動部のまた他の具現例を概略的に示した図である。
【0071】
図示したように、往復部材61の一端部内側にソレノイド部79が備えられており、前記ソレノイド部79には、プランジャー81が対応して設けられている。前記プランジャー81は、ソレノイド部79に電気が印加される時に発生する誘導電磁気力により、往復部材61に対して進退動する部材である。このようなソレノイドの作動原理は、一般的なものである。
【0072】
ところが、前記プランジャー81は、一側ガイド溝59aの内部に埋め込まれて固定されている。したがって、前記ソレノイド部79に電気が印加されると、プランジャー81ではなく、往復部材61がプランジャー81に対する進退動、即ち矢印方向の往復動をするようになる。このように、電気を駆動源として往復部材61を動作させることもできる。
【0073】
本発明を具体的な実施例を通じて詳細に説明したが、本発明は上記実施例に限定することなく、本発明の技術的思想の範囲内で通常の知識を有する者によって色々と変形が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0074】
上記のような本発明の剪断流動発生部を有する射出金型装置は、射出金型内部のウェルドライン(Weld line)発生区域に位置した溶融樹脂内に、粘性流動を生じることにより、当該区域の溶融樹脂内に混合されているピグメントの位置を調節することができるため、ウェルドライン周辺におけるピグメントの配向不良及び含量不足による問題を解決し、高品質の成型品を制作することができる。本発明の記載された具体的例を中心に詳細にわたって説明したが、本発明の範疇および技術思想範囲内において多様な変形および修正が添付された特許請求範囲に当然属するものである。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】従来の射出金型で製品を射出する様子を概略的に示した図である。
【図2】従来の射出金型で製品を射出する様子を概略的に示した図である。
【図3】図1に示した従来の射出金型の問題点を説明するための図である。
【図4】図1に示した従来の射出金型の問題点を説明するための図である。
【図5】図1に示した従来の射出金型の問題点を説明するための図である。
【図6】図2に示した従来の射出金型の問題点を説明するための、図2のQ−Q線断面図である。
【図7】本発明の剪断流動発生部を有する射出金型装置の構成のうち、実施例1によるローラー形態の剪断流動発生装置を概略的に示した構成図である。
【図8】本発明の剪断流動発生部を有する射出金型装置の構成のうち、実施例2による移動面ベルト形態の剪断流動発生装置を概略的に示した構成図である。
【図9】図7に示した射出金型装置の一部斜視図である。
【図10】図8に示した射出金型装置の一部斜視図である。
【図11】図7に示した射出金型装置の動作を説明するために示した図である。
【図12】図7に示した射出金型装置の動作を説明するために示した図である。
【図13】図8に示した射出金型装置の動作を説明するために示した図である。
【図14】図7に示した射出金型装置で制作した製品の断面図である。
【図15】本発明の実施例3による多数個のローラーを用いた射出金型装置の構成を概略的に示した構成図である。
【図16】図15に示した射出金型装置の動作を説明するために示した図である。
【図17】図15に示した射出金型装置の動作を説明するために示した図である。
【図18】図15に示した射出金型装置で制作した製品の断面図である。
【図19】本発明の実施例4による射出金型装置の概略的な構成を示した図である。
【図20】図19に示した射出金型装置の動作を説明するために示した図である。
【図21】図19に示した射出金型装置で制作した製品の断面図である。
【図22】図19に示した射出金型装置における駆動部の一具現例を概略的に示した図である。
【図23】図19に示した射出金型装置における駆動部の他の具現例を概略的に示した図である。
【図24】図19に示した射出金型装置における駆動部のまた他の具現例を概略的に示した図である。
【符号の説明】
【0076】
11、41 金型
13 上部金型
13a 注入口
14 コア
15 下部金型
17 内部空間
19 溶融樹脂
21 ピグメント
43 上部金型
43a 注入口
45 下部金型
47 内部空間
49 ローラー
49a プーリ
50 移動面ベルト
51 モーター
51a 駆動プーリ
52 ベルト
53 コントローラー
55 駆動部
57、59 下部金型
59a ガイド溝
61 往復部材
61a 突出部
63 スプリング
65 アクチュエータ
65a 作動ロッド
67 回動リンク
67a 長孔
69 固定ヒンジ
69a ピン
71 連結ヒンジ
73 ラックギア
75 ピニオンギア
77 モーター
79 ソレノイド部
81 プランジャー(plunger)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定ピグメントが混合された溶融樹脂が満たされる内部空間を備えた射出金型と、
前記射出金型に設けられて、その一部が前記内部空間に露出し、内部空間に注入される溶融樹脂に接して、外部動力の印加で動作し、その表面に接している溶融樹脂を粘性で剪断流動させることによって、溶融樹脂内のピグメント位置を調節する剪断力発生部と、
前記剪断力発生部を動作させる駆動部と、
を含むことを特徴とする、剪断流動発生部付き射出金型装置。
【請求項2】
前記剪断力発生部は、その外周面の一部が前記内部空間に突出するように設けられて、軸回転運動を通じて、前記外周面に接している溶融樹脂を回転方向に剪断流動させる一つ以上のローラーまたは移動面ベルトを含むことを特徴とする、請求項1に記載の剪断流動発生部付き射出金型装置。
【請求項3】
前記ローラーは、二個以上が相互に並ぶように配置されて、溶融樹脂の状態によって、それぞれ同一な回転方向または相互異なる回転方向に回転することを特徴とする、請求項2に記載の剪断流動発生部付き射出金型装置。
【請求項4】
前記金型の内部には、長さ方向に延びたガイド溝が備えられて、
前記剪断力発生部は、前記ガイド溝に支持された状態で往復動可能であり、その一側に、前記内部空間側に突出し、往復動する間に溶融樹脂に剪断力を提供する突出部を有する往復部材が含まれることを特徴とする、請求項1に記載の剪断流動発生部付き射出金型装置。
【請求項5】
前記駆動部は、
前記往復部材にピン連結され、金型の外部に延びる回動リンクと、前記回動リンクを回動させ、これにより往復部材を動作させるアクチュエータとを含むことを特徴とする、請求項4に記載の剪断流動発生部付き射出金型装置。
【請求項6】
前記駆動部は、前記往復部材に装着されたラックギアと、前記ラックギアと噛み合うピニオンギアと、前記ピニオンギアを回転させるモーターとを含むことを特徴とする、請求項4に記載の剪断流動発生部付き射出金型装置。
【請求項7】
前記駆動部は、前記往復部材の一側に装着されるソレノイド部と、前記ソレノイド部に従動可能な状態でガイド溝に固定され、ソレノイドの動作時、往復部材を進退動させるプランジャーとを含むことを特徴とする、請求項4に記載の剪断流動発生部付き射出金型装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図14】
image rotate

【図18】
image rotate

【図21】
image rotate


【公表番号】特表2009−526666(P2009−526666A)
【公表日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−554152(P2008−554152)
【出願日】平成19年2月12日(2007.2.12)
【国際出願番号】PCT/KR2007/000748
【国際公開番号】WO2007/094594
【国際公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【出願人】(500239823)エルジー・ケム・リミテッド (1,221)
【Fターム(参考)】