説明

加圧ガス供給システム、MOCVD装置、および、加圧ガス供給方法

【課題】簡易な構成で、有機金属原料の液化や固化によって加圧効率の低下を招くことなく、有機金属ガスを安定的に加圧して反応室に供給する。
【解決手段】加圧ガス供給システム200は、液体である原料LにバブリングガスBを噴射して当該原料Lを気化させることにより原料ガスXを生成するバブリングユニット212と、バブリングユニット212で生成された原料ガスXが導入されるとともに、加圧ガスPが導入されることにより、反応室112より高圧の混合ガスMを生成する加圧タンク214と、加圧タンク214と反応室112との差圧によって混合ガスMを反応室112に供給する混合ガス供給部216とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原料ガスを加圧して反応室に供給する加圧ガス供給システム、MOCVD装置、および、加圧ガス供給方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機金属ガスを利用して、基板上に金属化合物の結晶を成長させる有機金属気相成長(Metal Organic Chemical Vapor Deposition:MOCVD)装置が知られている。MOCVD装置では、反応室内に有機金属ガスと反応ガスとが供給される。そして、有機金属ガスと反応ガスの雰囲気下において、基板を加熱したり、プラズマを発生させたりすることで、有機金属ガスと反応ガスとが反応し、基板上に金属化合物の結晶が成膜される。
【0003】
このようなMOCVD装置において、種類によっては、成膜された金属化合物が、加熱された基板上で蒸発してしまうことがある。そうすると、成膜された膜質が低下してしまう。そこで、反応室の圧力を大気圧よりも高くすることで、金属化合物の沸点を低下させ、加熱された基板上での金属化合物の蒸発を抑制する技術が広く利用されている。このような、圧力が高い反応室に、有機金属ガスを供給する場合、有機金属ガスを反応室よりも高い圧力にする必要がある。
【0004】
そこで、有機金属ガスが導入されるタンクと、タンク内を摺動可能に設けられたピストンとを備え、ピストンで有機金属ガスを圧縮することにより、圧力を高くする技術が開示されている(例えば、特許文献1)。また、有機金属ガスが導入されるタンクの側面をベローズ形状(蛇腹形状)に形成しておき、タンクを圧縮することにより、有機金属ガスを圧縮し、圧力を高くする技術も開示されている(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平2−278718号公報
【特許文献2】特開平9−27455号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した有機金属ガスの基となる有機金属原料は、常温で液体または固体であるが、恒温槽等を利用して有機金属原料を所定温度に維持しておき、有機金属原料にバブリングガスを噴射してバブリングすることで、有機金属原料をガス化している。
【0007】
したがって、タンクに導入された有機金属ガスが圧縮された際に、有機金属ガスの一部が凝縮(液化)したり、凝結(固化)したりすることがある。そうすると、特許文献1の技術ではピストンとタンクとの摺動部分に、特許文献2の技術ではベローズ形状の部分に、液化または固化した有機金属原料が付着するおそれがある。そうすると、有機金属原料によって、ピストンとタンクとの摺動性が低下したり、ピストンやタンクが削剥されてしまったり、ベローズ形状の部分による圧縮効率が低下してしまう。
【0008】
そこで本発明は、このような課題に鑑み、簡易な構成で、有機金属原料の液化や固化によって加圧効率の低下を招くことなく、有機金属ガスを安定的に加圧して反応室に供給することが可能な加圧ガス供給システム、MOCVD装置、および、加圧ガス供給方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の加圧ガス供給システムは、混合ガスを利用して反応を遂行する反応室に混合ガスを加圧して供給する加圧ガス供給システムであって、液体である原料にバブリングガスを噴射して当該原料を気化させることにより原料ガスを生成する、または、固体である原料にバブリングガスを噴射して当該原料を昇華させることにより原料ガスを生成するバブリングユニットと、バブリングユニットで生成された原料ガスが導入されるとともに、原料ガスとは異なるガスである加圧ガスが導入されることにより、反応室よりも高圧の混合ガスを生成する加圧タンクと、加圧タンクで生成された混合ガスを、加圧タンクと反応室との差圧によって反応室に供給する混合ガス供給部と、を備えたことを特徴とする。
【0010】
加圧ガスは、バブリングガスと同成分のガスであってもよい。
【0011】
加圧タンクの内部を減圧する減圧部を備え、減圧部によって加圧タンクの内部が真空状態に減圧された後に、加圧タンクとバブリングユニットとの差圧によって原料ガスが加圧タンクに導入されてもよい。
【0012】
上記課題を解決するために、本発明のMOCVD装置は、混合ガスに基づく金属化合物を基板に蒸着させる反応室と、液体である原料にバブリングガスを噴射して当該原料を気化させることにより原料ガスを生成する、または、固体である原料にバブリングガスを噴射して当該原料を昇華させることにより原料ガスを生成するバブリングユニットと、バブリングユニットで生成された原料ガスが導入されるとともに、原料ガスとは異なるガスである加圧ガスが導入されることにより、反応室よりも高圧の混合ガスを生成する加圧タンクと、加圧タンクと反応室との差圧によって、加圧タンクで生成された混合ガスを反応室に供給する混合ガス供給部と、を備えたことを特徴とする。
【0013】
上記課題を解決するために、本発明の加圧ガス供給方法は、混合ガスを利用して反応を遂行する反応室に混合ガスを供給する加圧ガス供給方法であって、液体である原料にバブリングガスを噴射して当該原料を気化させることにより原料ガスを生成する、または、固体である原料にバブリングガスを噴射して当該原料を昇華させることにより原料ガスを生成するステップと、加圧タンクに原料ガスを導入するステップと、原料ガスが導入された加圧タンクに、原料ガスとは異なるガスである加圧ガスを導入することにより、反応室よりも高圧の混合ガスを生成するステップと、加圧タンクと反応室との差圧によって、混合ガスを反応室に供給するステップと、を有することを特徴とする。
【0014】
加圧タンクに原料ガスを導入するステップを遂行する前に、加圧タンクの内部を真空状態に減圧するステップを有してもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、簡易な構成で、有機金属原料の液化や固化によって加圧効率の低下を招くことなく、有機金属ガスを安定的に加圧して反応室に供給することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】MOCVD装置を説明するための説明図である。
【図2】MOCVD装置を用いた加圧ガス供給方法の処理の流れを説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0018】
(MOCVD装置100)
図1は、MOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition:有機金属気相成長)装置100を説明するための説明図である。図1に示すように、MOCVD装置100は、反応部110と、加圧ガス供給システム200とを含んで構成される。ここでは、MOCVD装置100が、基板Wに窒化ガリウム(GaN)を成膜する場合を例に挙げて説明する。また、MOCVD装置100を構成する各バルブは、不図示のバルブ制御装置による制御指令に応じて開閉し、各流量調整部はバルブ制御装置による制御指令に応じて流量を調整する。
【0019】
反応部110は、反応が遂行される反応室112と、反応室112内に搬入された基板Wを加熱する1組のヒータ114a、114bを含んで構成される。
【0020】
反応室112には、原料ガスX(トリメチルガリウム(TMG))を含む混合ガスMと、反応室112において原料ガスXと反応を遂行する反応ガスY(アンモニア(NH))と、混合ガスMおよび反応ガスYを希釈して反応室112を所定の圧力(例えば、0.85MPa程度)に維持する希釈ガスZ(例えば、窒素(N))とが供給される。具体的に説明すると、混合ガスMは、後述する加圧ガス供給システム200から反応室112に供給される。反応ガスYは、反応ガスYが充填されたガスボンベ等の反応ガス源120から、バルブ120a、流量制御装置(Mass Flow Controller:MFC)120b、バルブ120cを介して、反応室112に供給される。希釈ガスZは、希釈ガスZが充填されたガスボンベ等の希釈ガス源122から、バルブ122a、流量制御装置(MFC)122b、バルブ122cを介して、反応室112に供給される。ここで希釈ガスZは、反応室112で遂行される反応に無関係なガス、例えば、上述した窒素やアルゴン等の不活性ガスであるとよい。
【0021】
このように、反応室112に供給された、混合ガスM(原料ガスX)、反応ガスY、希釈ガスZの雰囲気下において、ヒータ114a、114bによって基板Wが加熱されると、基板W上に金属化合物(窒化ガリウム)が蒸着されることになる。
【0022】
また、反応室112には、バルブ210bを介して、加圧ガス供給システム200を構成する減圧部210が接続されている。そして、MOCVD装置100を利用した成膜を開始する前に、反応室112は、減圧部210によって真空状態に減圧される。
【0023】
さらに、反応室112には、バルブ150を介して、排気ガス処理装置300が接続されている。したがって、反応室112において、原料ガスXと反応ガスYが反応した後の排気ガスEは、排気ガス処理装置300に排気されることになる。ここで排気ガス処理装置300は、不図示の吸引ファンを備えており、大気圧よりわずかに低圧である。これにより配管の継目等から、ガス(原料ガスX、反応ガスY、排気ガスE等のガス)が外部へ漏出(リーク)する事態を回避することができる。
【0024】
(加圧ガス供給システム200)
上述したように、加圧ガス供給システム200は、原料ガスXを含む混合ガスMを生成して反応室112に供給する。以下、加圧ガス供給システム200の具体的な構成について説明する。
【0025】
加圧ガス供給システム200は、減圧部210と、バブリングユニット212と、加圧タンク214と、混合ガス供給部216とを含んで構成される。
【0026】
減圧部210は、ターボ分子ポンプ等の真空ポンプで構成され、バルブ210aを介して、後述する加圧タンク214を減圧したり、バルブ210bを介して反応室112を減圧したりする。
【0027】
バブリングユニット212は、液体である原料Lにバブリングガスを噴射して当該原料Lを気化させることにより原料ガスXを生成する。ここで、原料Lは、トリメチルガリウムである。具体的にバブリングユニット212は、バブリング槽212aと、恒温槽212bと、バブリングガス導入管212cと、原料ガス排出管212dを含んで構成される。
【0028】
バブリング槽212aは、原料Lを貯留する。恒温槽212bは、バブリング槽212aに貯留された原料Lを所定温度(例えば、0℃〜20℃)に維持する。バブリングガス導入管212cは、バルブ212eを介してバブリングガス源212fから供給されたバブリングガスBを、原料Lに噴射する。原料ガス排出管212dは、バブリングガスBによってバブリングされることにより、原料Lが気化した原料ガスXを加圧タンク214に排出する。なお、バブリングガスBは、原料Lと反応しないガス、例えば、窒素やアルゴン等の不活性ガスであるとよい。
【0029】
加圧タンク214には、バルブ212gを介して、原料ガス排出管212dから排出された原料ガスXが導入される。本実施形態において加圧タンク214には、減圧部210によって加圧タンク214の内部が真空状態に減圧された後に、加圧タンク214とバブリングユニット212との差圧によって原料ガスXが導入される。ここで、バブリング槽212aの温度を所定温度にしておけば、原料Lの飽和蒸気圧曲線に基づいて、バブリングユニット212における原料Lの飽和蒸気圧が決定される。そうすると、加圧タンク214には、所定温度における飽和蒸気圧の原料ガスXが、加圧タンク214の容量分導入されることになる。これにより、加圧タンク214に導入される原料ガスXの量を所定値に維持することができる。
【0030】
また、減圧部210が加圧タンク214の内部を真空状態にせず、前回反応室112に供給した混合ガスMに新たな原料ガスXを追加すると、前回反応室112に供給した混合ガスM等の残渣が混入してしまい原料ガスXの濃度が不明になったり、変性した残渣が混入して混合ガスMの成分が不明になったりする。したがって、減圧部210が加圧タンク214の内部を真空状態にした後(混合ガスMの残渣が0になった後)に、新たな原料ガスXを導入することで、新たに混合ガスMを生成することができ、混合ガスMにおける原料ガスXの濃度や、混合ガスMの成分を高精度に維持することが可能となる。
【0031】
続いて加圧タンク214には、バルブ214aを介して加圧ガス源214bから加圧ガスPが導入される。なお、加圧ガスPは、原料Lと反応しないガス、例えば、窒素やアルゴン等の不活性ガスであるとよい。
【0032】
加圧ガスPは、反応室112よりも高圧な状態(例えば、0.95MPa)で加圧タンク214に導入されるため、加圧タンク214で生成される、原料ガスXと加圧ガスPとの混合ガスMは、反応室112よりも高圧(例えば、0.9MPa)となる。上述したようにバブリングユニット212から導入される原料ガスXは飽和蒸気圧であるため、加圧タンク214に導入する加圧ガスPの容量を所定値に維持しておけば、混合ガスMにおける原料ガスXの濃度(%)を常に所定値に維持することが可能となる。
【0033】
また、加圧タンク214の外周に、ラバーヒータやリボンヒータ等で構成された加温部214cを備えておき、加圧タンク214の温度を所定温度(例えば、80℃)に維持してもよい。上述したように、加圧タンク214に導入される原料ガスXは飽和蒸気圧であるため、室温では凝縮してしまうおそれがある。したがって、加圧タンク214の外周に加温部214cを備えておき、加圧タンク214を所定温度に維持することにより、加圧タンク214内における原料ガスXの凝縮を防止することができる。
【0034】
なお、本実施形態において加圧ガスPは、バブリングガスBと同成分のガス(ここでは、窒素)である。バブリングユニット212から導入される原料ガスXには少なからずバブリングガスBが含まれている。したがって、加圧ガスPをバブリングガスBと同成分のガスとすることにより、ガス源(212f、214b)を1つに纏めることができ、低コスト化を図ることが可能となる。また、加圧タンク214において生成される混合ガスMを原料ガスXと1種類のガス(窒素)とで構成することができるため、不要な副反応が遂行されてしまうおそれを回避することが可能となる。
【0035】
混合ガス供給部216は、バルブ216aと、流量制御装置(MFC)216bと、バルブ216cとを含んで構成され、加圧タンク214と反応室112との差圧によって、加圧タンク214から反応室112に混合ガスMを供給する。混合ガス供給部216が流量制御装置216bを備える構成により、加圧タンク214で生成された混合ガスMを、所定流量で安定的に反応室112に供給することができる。
【0036】
なお、本実施形態において、流量制御装置216bとバルブ216cとの間に、加圧タンク214から供給される混合ガスMを排気ガス処理装置300に直接排気するバイパス管152が設けられている。そして、MOCVD装置100を利用した成膜を開始する前に、反応室112の温度や圧力が所定の条件となるまで、バルブ216cを閉状態、バルブ152aを開状態にして、加圧タンク214から供給される混合ガスMを反応室112に導入しないようにする。
【0037】
(加圧ガス供給方法)
図2は、MOCVD装置100を用いた加圧ガス供給方法の処理の流れを説明するための説明図である。
【0038】
図2に示すように、まず、基板Wが反応室112に搬入され、不図示のバルブ制御装置は、バルブ120a、122aを開状態にしておき、他のバルブ120c、122c、150、152a、210a、210b、212g、212e、214a、216a、216cを閉状態にしておく。バルブ制御装置がバルブ210bを開にして、減圧部210が反応室112の内部を真空状態にすると、バルブ制御装置はバルブ210bを閉にする(S300)。
【0039】
続いて、ユーザによる当該加圧ガス供給処理の停止指示がなければ(S302におけるNO)、バルブ制御装置がバルブ210aを開にして、減圧部210が加圧タンク214の内部を真空状態にすると、バルブ制御装置はバルブ210aを閉にする(S304)。そして、バルブ制御装置がバルブ212eを開にすると、バブリングユニット212において、バブリングガス源212fからバブリングガスBが原料Lに噴射され、原料Lが気化されることにより原料ガスXを生成される(S306)。
【0040】
ここで、バルブ制御装置がバルブ212gを開にする。そうすると、バブリングユニット212から原料ガス排出管212dを通じて、加圧タンク214に、飽和蒸気圧の原料ガスXが、加圧タンク214の容量分導入される(S308)。そして、バルブ制御装置はバルブ212e、212gを閉にして、バルブ214aを開にする。そうすると、ステップS308で原料ガスXが導入された加圧タンク214に、加圧ガス源214bから加圧ガスPが導入される(S310)。ここで、加圧ガス源214bから導入される加圧ガスPの圧力を、反応を遂行する際の反応室112の雰囲気の圧力(ここでは、0.85MPa)よりも高圧(ここでは、0.9MPa)にする。こうすることで、加圧タンク214において、反応を遂行する際の反応室112よりも高圧な混合ガスMが生成される(S312)。
【0041】
そして、バルブ制御装置はバルブ214aを閉にし、バルブ120c、122c、150を開にする。そうすると、反応ガス源120から反応ガスYが、希釈ガス源122から希釈ガスZが、反応室112に供給される。そして、ヒータ114a、114bをオンにして、反応室112の温度、圧力が成膜に適した所定の値になるまで待機する(反応室準備処理)。
【0042】
この反応室準備処理を行っている間、バルブ制御装置は、バルブ216a、152aを開にする。そうすると、加圧タンク214と排気ガス処理装置300との差圧によって、加圧タンク214から供給される混合ガスMが反応室112に導入されずにバイパス管152を介して排気ガス処理装置300に排気される。
【0043】
そして、反応室112の温度、圧力が成膜に適した所定の値になると、基板Wの成膜を開始すべく、バルブ制御部は、バルブ152aを閉にし、バルブ216cを開にする。そうすると、加圧タンク214と反応室112との差圧によって、加圧タンク214から反応室112に混合ガスMが供給される(S314)。なお、この際、バルブ制御装置は流量制御装置120b、122b、216b、バルブ150を調整して、反応室112に導入される、反応ガスY、希釈ガスZ、混合ガスM(原料ガスX)の割合を所定値にし、反応室112の雰囲気の圧力を0.85MPaに維持する。
【0044】
そうすると、混合ガスM、反応ガスY、希釈ガスZの雰囲気下で基板Wが加熱され、基板W上に金属化合物(窒化ガリウム)が成膜される(S316)。そして、所定時間が経過すると、ヒータ114a、114bをオフにして成膜を終了する(S318)。
【0045】
ここで、加圧タンク214の圧力が、反応室112の圧力と実質的に等しく(0.85MPaに)なるまで低下していなければ(S320におけるNO)、加圧タンク214と反応室112との差圧によって、加圧タンク214から反応室112への混合ガスMの供給が維持できる。そこで、このような雰囲気内で反応室112に接続された不図示のゲートバルブを介して、反応室112から成膜済みの基板Wが取り出され、新たな基板Wが反応室112へ搬入される(S322)。そして、成膜開始ステップS316に戻って、新たな基板Wの成膜処理を遂行する。
【0046】
一方、加圧タンク214の圧力が、反応室112の圧力と実質的に等しくなるまで低下する(0.85MPaになる)と(S320におけるYES)、加圧タンク214と反応室112との差圧がなくなるため、加圧タンク214から反応室112への混合ガスMの供給が停止される(S324)。そうすると、バルブ制御装置はバルブ216a、216c、120c、122cを閉にする。そして、ユーザによる停止指示があれば(S302におけるYES)、当該加圧ガス供給処理を終了する。一方、ユーザによる停止指示がなければ(S302におけるNO)、加圧タンク減圧処理S304からの処理を繰り返す。すなわち、加圧タンク212において混合ガスMの生成を再度行うことになる。
【0047】
以上説明したように、本実施形態にかかるMOCVD装置100や、MOCVD装置100を用いた加圧ガス供給方法によれば、加圧タンク214において、原料ガスXに高圧の加圧ガスPを導入するといった簡易な構成で、原料L(有機金属原料)の液化や固化によって加圧効率の低下を招くことなく、原料ガスX(有機金属ガス)を安定的に加圧して反応室112に供給することが可能となる。
【0048】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0049】
例えば、上述した実施形態では、MOCVD装置として加熱型のMOCVD装置を例に挙げて説明したが、プラズマ発生型のMOCVD装置を採用することもできる。
【0050】
また、上述した実施形態において、バブリングユニット212は、液体である原料Lを気化させて原料ガスXを生成していたが、固体である原料(例えば、トリメチルインジウム)にバブリングガスを噴射して当該原料を昇華させることにより原料ガスを生成することもできる。また、上述した実施形態では、バブリングユニット212で利用する原料としてトリメチルガリウムを例に挙げて説明したが、液体または固体の有機金属化合物であればよい。
【0051】
なお、本明細書の加圧ガス供給方法における各工程は、必ずしもフローチャートとして記載された順序に沿って時系列に処理する必要はなく、並列的あるいはサブルーチンによる処理を含んでもよい。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、原料ガスを加圧して反応室に供給する加圧ガス供給システム、MOCVD装置、および、加圧ガス供給方法に利用することができる。
【符号の説明】
【0053】
B …バブリングガス
E …排気ガス
L …原料
M …混合ガス
P …加圧ガス
W …基板
X …原料ガス
Y …反応ガス
Z …希釈ガス
100 …MOCVD装置
112 …反応室
200 …加圧ガス供給システム
210 …減圧部
212 …バブリングユニット
214 …加圧タンク
216 …混合ガス供給部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
混合ガスを利用して反応を遂行する反応室に該混合ガスを加圧して供給する加圧ガス供給システムであって、
液体である原料にバブリングガスを噴射して当該原料を気化させることにより原料ガスを生成する、または、固体である原料にバブリングガスを噴射して当該原料を昇華させることにより原料ガスを生成するバブリングユニットと、
前記バブリングユニットで生成された原料ガスが導入されるとともに、該原料ガスとは異なるガスである加圧ガスが導入されることにより、前記反応室よりも高圧の混合ガスを生成する加圧タンクと、
前記加圧タンクで生成された混合ガスを、前記加圧タンクと前記反応室との差圧によって前記反応室に供給する混合ガス供給部と、
を備えたことを特徴とする加圧ガス供給システム。
【請求項2】
前記加圧ガスは、前記バブリングガスと同成分のガスであることを特徴とする請求項1に記載の加圧ガス供給システム。
【請求項3】
前記加圧タンクの内部を減圧する減圧部を備え、
前記減圧部によって前記加圧タンクの内部が真空状態に減圧された後に、該加圧タンクと前記バブリングユニットとの差圧によって前記原料ガスが前記加圧タンクに導入されることを特徴とする請求項1または2に記載の加圧ガス供給システム。
【請求項4】
混合ガスに基づく金属化合物を基板に蒸着させる反応室と、
液体である原料にバブリングガスを噴射して当該原料を気化させることにより前記原料ガスを生成する、または、固体である原料にバブリングガスを噴射して当該原料を昇華させることにより前記原料ガスを生成するバブリングユニットと、
前記バブリングユニットで生成された原料ガスが導入されるとともに、該原料ガスとは異なるガスである加圧ガスが導入されることにより、前記反応室よりも高圧の混合ガスを生成する加圧タンクと、
前記加圧タンクと前記反応室との差圧によって、該加圧タンクで生成された混合ガスを該反応室に供給する混合ガス供給部と、
を備えたことを特徴とするMOCVD装置。
【請求項5】
混合ガスを利用して反応を遂行する反応室に該混合ガスを供給する加圧ガス供給方法であって、
液体である原料にバブリングガスを噴射して当該原料を気化させることにより原料ガスを生成する、または、固体である原料にバブリングガスを噴射して当該原料を昇華させることにより原料ガスを生成するステップと、
加圧タンクに前記原料ガスを導入するステップと、
前記原料ガスが導入された加圧タンクに、該原料ガスとは異なるガスである加圧ガスを導入することにより、反応室よりも高圧の混合ガスを生成するステップと、
前記加圧タンクと前記反応室との差圧によって、前記混合ガスを該反応室に供給するステップと、
を有することを特徴とする加圧ガス供給方法。
【請求項6】
前記加圧タンクに原料ガスを導入するステップを遂行する前に、
前記加圧タンクの内部を真空状態に減圧するステップを有することを特徴とする請求項5に記載の加圧ガス供給方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−256762(P2012−256762A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−129534(P2011−129534)
【出願日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】