説明

加工装置

【課題】吸着保持面を有するチャックテーブルにおいて板状ワークを保持する場合に、吸着保持面が完全に覆われるように板状ワークを載置できるようにする。
【解決手段】チャックテーブル2に位置決めブロック24が固定され、位置決めブロック24には板状ワークWのオリエンテーションフラットOFと吸着保持部20に形成されたフラット部200とを平行にする角度位置決め部243と、角度位置決め部243の両端に設けられチャックテーブル2の中心と板状ワークW中心とを一致させる2つの中心位置決め部244とを備え、板状ワークWを位置決めブロック24に押し当てるだけで、板状ワークWの角度と中心位置をあわせることができ、板状ワークWを容易かつ確実に吸着保持することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板状ワークを保持するチャックテーブルを有する加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェーハ等の板状ワークを加工する加工装置として、板状ワークの面に砥石を接触させて研削する装置や、半導体ウェーハの上面から突出して形成されているバンプの先端をバイトなどの切削工具で削って高さを揃える装置などがある。このような加工装置においては、板状ワークがチャックテーブルに搬送され、吸引保持されて加工が行われる(例えば特許文献1参照)。
【0003】
板状ワークをチャックテーブルに搬送するための搬送手段を備えている加工装置においては、板状ワークの中心とチャックテーブルの中心とが搬送手段によって位置あわせされ、かかる位置あわせがなされた状態で板状ワークがチャックテーブルの吸着保持面に保持される(例えば特許文献2参照)。
【0004】
一方、板状ワークをチャックテーブルに搬送するための搬送手段を備えていない加工装置においては、オペレータの目視によってチャックテーブルの吸着保持面が隠れるように板状ワークを載置して吸引させた後、吸引圧力の値によって、板状ワークが、エアのリークがなく正常に吸着保持されたか否かを確認している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−319697号公報
【特許文献2】特開2006−310483号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、板状ワークを吸着保持面に載置したときに、吸着保持面が僅かに露出している場合は、吸着保持面の露出を目視によって確認することはできない。そして、その状態で吸着保持面に吸引力を作用させると、板状ワークが正常に吸着保持されないことが確認される場合がある。
【0007】
本発明は、このような問題にかんがみなされたもので、吸着保持面を有するチャックテーブルにおいて板状ワークを保持する場合に、吸着保持面が完全に覆われるように板状ワークを載置できるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、オリエンテーションフラットを有する板状ワークの裏面を吸着保持するチャックテーブルと、チャックテーブルに保持された板状ワークの表面を加工する加工手段とを備えた加工装置に関するもので、チャックテーブルは、板状ワークと相似形に形成され該板状ワークより狭い面積の吸着保持面を備え該オリエンテーションフラットに対応するフラット部を備えた吸着保持部と、吸着保持部の外側を囲繞する環状壁および吸着保持部の底面を支持する底床とから構成された基台部と、板状ワークを所定の位置に位置決めする位置決めブロックが固定される部分であるブロック固定部とを備え、位置決めブロックは、板状ワークのオリエンテーションフラットとフラット部とを平行にする角度位置決め部と、角度位置決め部の両端に設けられチャックテーブル中心と板状ワーク中心とを一致させる2つの中心位置決め部と、位置決めブロックをチャックテーブルに取り付けるブロック取付け部とを備えており、オリエンテーションフラットの両端近傍の円弧部分を2つの中心位置決め部に当接させると共に、板状ワークのオリエンテーションフラットを角度位置決め部に当接させることで、板状ワークの位置決めを可能とする。
【0009】
ブロック取付け部は、位置決めブロックの上下方向の取付け位置を調整可能であることが望ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明では、チャックテーブルに位置決めブロックが固定され、位置決めブロックには板状ワークのオリエンテーションフラットと吸着保持部に形成されたフラット部とを平行にする角度位置決め部と、角度位置決め部の両端に設けられチャックテーブル中心と板状ワーク中心とを一致させる2つの中心位置決め部とを備えたため、板状ワークを位置決めブロックに押し当てるだけで、板状ワークの角度と中心位置をあわせることができ、板状ワークを容易かつ確実に吸着保持することができる。
【0011】
また、位置決めブロックをチャックテーブルに取り付けるブロック取付け部を、位置決めブロックの上下方向の取付け位置を調整可能とすることで、様々な厚みの板状ワークを吸着保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】加工装置の一例を示す斜視図である。
【図2】板状ワークの一例を示す平面図である。
【図3】チャックテーブルの一例を示す平面図である。
【図4】図3のA−A線断面図である。
【図5】厚い板状ワークをチャックテーブルに保持した状態を示す断面図である。
【図6】薄い板状ワークをチャックテーブルに保持した状態を示す断面図である。
【図7】板状ワークをチャックテーブルに保持した状態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1に示す加工装置1は、板状ワークの裏面側を吸着保持するチャックテーブル2と、チャックテーブル2に保持された板状ワークの表面側を加工する加工手段3とを備えている。
【0014】
チャックテーブル2は、ベーステーブル2aに固定されている。ベーステーブル2aの前後方向の両側部にはジャバラ2bが連結されており、ベーステーブル2aは、ジャバラ2bの伸縮を伴って前後方向(矢印X方向)に移動可能となっている。
【0015】
加工手段3は、ハウジング30によって回転可能に支持された回転軸31の下端にホイール32が取り付けられ、ホイール32の下面側にバイト工具33が取り付けられて構成されており、回転軸31の回転とともにバイト工具33も回転する。
【0016】
加工手段3は、送り手段4によって駆動されて鉛直方向に昇降する。送り手段4は、鉛直方向に延びるボールスクリュー40と、ボールスクリュー40と平行に配設されたガイドレール41と、ボールスクリュー40の一端に連結されたパルスモータ42と、ボールスクリュー40に螺合する不図示のナットを備えるとともに側部がガイドレール41に摺接する昇降部43とから構成されており、パルスモータ42がボールスクリュー40を回動させると、昇降部43がガイドレール41にガイドされて昇降し、これにともない加工手段3も昇降する構成となっている。
【0017】
チャックテーブル2が吸着保持する板状ワークは、図2に示す板状ワークWのように、結晶方位識別マークであるオリエンテーションフラットOFを有する形状のものであり、表面W1には、分割予定ラインLによって区画されてデバイスDが形成されている。また、デバイスDには、上方に突出するバンプBが形成されている。
【0018】
図3に示すように、チャックテーブル2は、板状ワークWを吸着保持する吸着保持部20と、吸着保持部20を下方及び側方から支持する基台21と、板状ワークWを所定の位置に位置決めする位置決めブロック24が固定される部分であるブロック固定部22とを備えている。ブロック固定部22は、基台21の表面側周縁部を切り欠いた形状に形成されている。
【0019】
吸着保持部20の表面は、板状ワークWを保持するための吸引力を作用させる吸着保持面20aとなっている。また、吸着保持部20には、板状ワークWのオリエンテーションフラットOFに対応して直線状に形成されたフラット部200が形成されている。すなわち、吸着保持部20は、板状ワークWと相似形に形成されている。また、吸着保持部20は、板状ワークWより面積が狭く、板状ワークWの中心と吸着保持部20の中心とが一致した状態で板状ワークWを載置した場合に吸着保持部20の全面が覆われるように形成されている。
【0020】
図4に示すように、吸着保持部20の下方においては、基台21の内部に吸引路210が形成されている。吸引路210は吸引源23に連通しており、吸着保持部20は、吸引路210を介して吸引源23に連通している。なお、図示していないが、吸着保持面20aは、上方に突出する複数のピンが水平方向に連立し、ピンとピンとの間に吸引源23に連通する吸引口が形成されている。
【0021】
基台21の中央部には、吸着保持部20を収容するための凹部211が形成されている。凹部211は、吸着保持部20の底面20aを覆い下方から支持する底床211aと、吸着保持部20の外周側を囲繞する環状壁211bとから構成されている。環状壁211bの上面211cは、底床211aよりも高い位置に形成されている。
【0022】
ブロック固定部22は、フラット部200に平行でかつ吸着保持部20の吸着保持面20aに垂直に形成された位置決め面220を備えている。
【0023】
位置決めブロック24は、段差のある2つの水平板240、241と、2つの水平板240、241の一端同士を連結する垂直壁242とが一体となって形成されている。水平板240には、図3に示すように、板状ワークWに形成されたオリエンテーションフラットOFと吸着保持部20に形成されたフラット部200とを平行にさせる為の角度位置決め部243と、角度位置決め部243の両端に設けられチャックテーブル2の中心と板状ワークWの中心とを一致させるための2つの中心位置決め部244とを備えている。水平板241は、ブロック取付け部5によって、昇降可能に基台21に固定される。垂直壁242は、位置決め面220に密着させる。
【0024】
ブロック取付け部5は、外周面に雄ネジ50aが形成され位置決めブロック24を基台21に固定するための固定ネジ50と、円筒上に形成され内周面に固定ネジ50の外周面に形成された雄ねじが貫通する貫通孔51aを有するとともに外周面に雄ネジ51bを有する上下調整ネジ51とを備えている。上下調整ネジ51の外周面に形成された雄ネジ51bには、水平板241に形成された雌ネジ241aが螺合している。
【0025】
このように構成されるブロック取付け部5においては、固定ネジ50を緩めた状態で、固定ネジ50に対する上下調整ネジ51の上下方向の位置を調整することにより、位置決めブロック24を所定の高さに移動させることができる。すなわち、ブロック取付け部5は、位置決めブロック24の上下方向の位置を調整する上下調整機構としての機能を有している。そして、位置決めブロック24をブロック固定部22の位置決め面220に押し当て、固定ネジ50を締めることにより、位置決めブロック24を所定の高さに設定した状態で基台21に固定することができる。
【0026】
図5に示すように、バンプBが形成され比較的厚く形成された板状ワークWをチャックテーブル2において保持する場合は、固定ネジ50を緩め、上下調整ネジ51を若干上昇させることにより、位置決めブロック24を若干上昇させる。このとき、位置決めブロック24の水平板240の上面240aは吸着保持面20aより高い位置にあり、板状ワークWの表面W1より低い位置にある。そして、この状態において位置決めブロック24をブロック固定部22の位置決め面220に押し当て、固定ネジ50を締めることにより、基台21に固定する。
【0027】
一方、図6に示すように、図5に示した板状ワークWよりも薄い板状ワークWaの裏面W2aをチャックテーブル2において保持する場合は、固定ネジ50を緩め、上下調整ネジ51を若干下降させることにより、位置決めブロック24を若干下降させる。このとき、位置決めブロック24の水平板240の上面240aは吸着保持面20aより高い位置にあり、板状ワークWaの表面W1aより低い位置にある。そして、この状態において位置決めブロック24をブロック固定部22の位置決め面220に押し当て、固定ネジ50を締めることにより、基台21に固定する。
【0028】
なお、本実施形態では、板状ワークの厚みは2〜4mmを想定しているが、上下調整ネジ51の可動範囲を大きくすれば、対応可能な厚みの幅をさらに広げることができる。また、図6に示した板状ワークWaのように、表面にバンプが形成されていない板状ワークも保持の対象とすることができる。
【0029】
このようにして、位置決めブロック24が基台21に対して所定の高さに固定された後、例えば図5に示した板状ワークWの裏面W2側を吸着保持部20において吸着する場合は、図7に示すように、板状ワークWを構成するオリエンテーションフラットOFの両端部近傍の円弧状に形成された部分を2つの中心位置決め部244に当接させるとともに、オリエンテーションフラットOFを角度位置決め部243に当接させる。そうすると、中心位置決め部244によって板状ワークWの中心が吸着保持部20の中心と一致するとともに、角度位置決め部243によってオリエンテーションフラットOFがフラット部200と平行になる。このようにして板状ワークWが位置決めされると、吸着保持部20の吸着保持面20aの全面が板状ワークWによって覆われ、この状態で吸着保持部20に吸引力を作用させると、エアのリークがない状態で板状ワークWが保持される。なお、図1においては、表面W1に形成されたバンプ等の図示は省略している。
【0030】
このようにして板状ワークWの裏面W2がチャックテーブル2において保持され、表面W1が上方に向いて露出した状態となると、図1に示した加工装置1では、バイト工具33の先端の高さを、バンプBの仕上げ高さに合わせる。そして、ホイール32を例えば6000RPMの回転速度で回転させ、その状態でチャックテーブル2を矢印X方向に2mm/秒の送り速度で移動させる。そうすると、複数のバンプBの頭部が次々と削られていき、すべてのバンプBの高さが均一になる。板状ワークWは、チャックテーブル2においてずれることなく保持されているため、すべてのバンプBを所望の高さに形成することができる。
【0031】
なお、板状ワークのサイズが変更される場合は、チャックテーブル自体を交換し、変更後の板状ワークのサイズ及びオリエンテーションフラットの長さに対応したものを使用する。オリエンテーションフラットの長さは、規格で決められている許容値の範囲内で変化しうるが、中心位置決め部244に当接させることにより、板状ワークの中心を吸着保持部20の中心にあわせ、吸着保持部20の全面を覆うことができる。
【0032】
なお、本実施形態では、バイトによる加工を行う装置を例示したが、対象となる装置はこれには限定されない。
【符号の説明】
【0033】
1:加工装置
2;チャックテーブル 2a:ベーステーブル 2b:ジャバラ
20:吸着保持部 20a:吸着保持面 200:フラット部
21:基台 210:吸引路 211:凹部 211a:底床 211b:環状壁
22:ブロック固定部 220:位置決め面
23:吸引源
24:位置決めブロック
240、241:水平板 241a:雌ネジ 242:垂直壁
243:角度位置決め部 244:中心位置決め部
3:加工手段 30:ハウジング 31:回転軸 32:ホイール 33:バイト工具
4:送り手段
40:ボールスクリュー 41:ガイドレール 42:パルスモータ 43:昇降部
5:ブロック取付け部
50:固定ネジ 50a:雄ネジ
51:上下調整ネジ 51a:貫通孔 51b:雄ネジ
W:板状ワーク
W1:表面 W2:裏面
OF:オリエンテーションフラット D:デバイス L:分割予定ライン B:バンプ
Wa:板状ワーク W1a:表面 W2a:裏面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オリエンテーションフラットを有する板状ワークの裏面を吸着保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持された板状ワークの表面を加工する加工手段と、を備えた加工装置であって、
該チャックテーブルは、板状ワークと相似形に形成され該板状ワークより狭い面積の吸着保持面を備え該オリエンテーションフラットに対応するフラット部を備えた吸着保持部と、該吸着保持部の外側を囲繞する環状壁および該吸着保持部の底面を支持する底床とから構成された基台部と、該板状ワークを所定の位置に位置決めする位置決めブロックが固定される部分であるブロック固定部とを備え、
該位置決めブロックは、該板状ワークのオリエンテーションフラットと該フラット部とを平行にする角度位置決め部と、該角度位置決め部の両端に設けられチャックテーブル中心と板状ワーク中心とを一致させる2つの中心位置決め部と、該位置決めブロックを該チャックテーブルに取り付けるブロック取付け部と、を備えており、
該オリエンテーションフラットの両端近傍の円弧部分を該2つの中心位置決め部に当接させると共に、板状ワークのオリエンテーションフラットを該角度位置決め部に当接させることで、板状ワークの位置決めを可能とする加工装置。
【請求項2】
前記ブロック取付け部は、前記位置決めブロックの上下方向の取付け位置を調整可能である請求項1に記載の加工装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−94913(P2013−94913A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−241249(P2011−241249)
【出願日】平成23年11月2日(2011.11.2)
【出願人】(000134051)株式会社ディスコ (2,397)
【Fターム(参考)】