説明

加速度センサー及びその製造方法

【課題】小型化が可能な加速度センサーを提供する。
【解決手段】基板と、基板上に位置する第1の電極層と、第1の電極層の第1の面と対向して位置する第2の電極層と、第2の電極層を基板に支持する支持部と、を含み、第2の電極層は、上記第1の面に沿った方向に動くことができ、支持部は、第2の電極層が上記第1の面に沿った方向に動くことができるように第2の電極層を基板に支持する。これにより、感度と精度を確保しつつ、基板の面に垂直な方向における加速度センサーの厚みを低減し、加速度センサーを小型化することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加速度センサー、及び、加速度センサーの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体プロセス技術を用いて製造する加速度センサー等のMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)センサーは、半導体電子回路との集積化が可能で、小型化が可能であることから、高付加価値型製品を生み出すための基盤技術として幅広い産業分野において注目され、期待されている。
【0003】
下記の特許文献1には、シリコンなどの基板に深いトレンチを掘り、さらにその底部を等方的にエッチングすることによって櫛歯状の可動部を形成した加速度センサーが記載されている。この加速度センサーにおいては、可動部が外的な加速度によって基板の面に沿った方向に移動した場合に、櫛歯と対向する固定櫛との間の距離が変化する。この距離の変化が、櫛歯と固定櫛とにそれぞれ設けた電極間の容量変化として捉えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3657606号公報(図6、図7)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1においては、感度と精度を実現する都合上、対向電極の面積を確保する必要があるため、トレンチの深さを深くする必要がある。従って、素子サイズが大きくなり、小型化が困難である。
【0006】
本発明は、以上のような技術的課題に鑑みてなされたものである。本発明の幾つかの態様は、小型化が可能な加速度センサーを提供することに関連している。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の幾つかの態様において、加速度センサーは、基板と、基板上に位置する第1の電極層と、第1の電極層の第1の面と対向して位置する第2の電極層と、第2の電極層を基板に支持する支持部と、を含み、第2の電極層は、上記第1の面に沿った方向に動くことができ、支持部は、第2の電極層が上記第1の面に沿った方向に動くことができるように第2の電極層を基板に支持する。
この態様によれば、基板上に位置する第1の電極層と、第1の電極層の第1の面と対向して位置しており、上記第1の面に沿った方向に動くことができる第2の電極層とを具備する。従って、感度と精度を確保しつつ、基板の面に垂直な方向における加速度センサーの厚みを低減し、加速度センサーを小型化することができる。
【0008】
上述の態様において、第1の電極層は、第1の導電部及び第2の導電部を含み、第2の電極層は、第3の導電部及び第4の導電部を含み、第1の導電部は、上記第1の面に垂直な方向からみて第3の導電部と一部重なり、かつ第3の導電部より第1の方向にずれた位置に有しており、第2の導電部は、上記第1の面に垂直な方向からみて第4の導電部と一部重なり、かつ第4の導電部より第1の方向と反対側の第2の方向にずれた位置に有していることが望ましい。
これによれば、第1の導電部は、第3の導電部より第1の方向にずれた位置に有しており、第2の導電部は、第4の導電部より第2の方向にずれた位置に有している。従って、第1の導電部及び第3の導電部間の静電容量と、第2の導電部及び第4の導電部間の静電容量との差分を検出することにより、上記第1の面に垂直な方向における第2の電極層の移動分をキャンセルすることができる。従って、上記第1の面に沿った方向における第2の電極層の移動を正確に測定することができる。
【0009】
上述の態様において、支持部は、第2の電極層と一体となって上記第1の面に沿った方向に動くことができる可動部と、可動部より小さな剛性を有し、可動部が上記第1の面に沿った方向に動くことができるように可動部を基板に支持するばね部と、を含むことが望ましい。
これによれば、第2の電極層と一体となって動くことができる可動部を有するので、可動部及び第2の電極層の合計質量と加速度とに応じた慣性力が第2の電極層にかかる。そして、可動部を基板に支持するばね部を有するので、慣性力に応じた変位を感度良く検出することができる。
【0010】
上述の態様において、可動部の周囲に、ばね部を固定する固定部をさらに具備することが望ましい。
これによれば、可動部及びばね部を基板に支持するための構造を、エッチングにより容易に加工することができる。
【0011】
上述の態様において、可動部、固定部及び基板のうちの何れかに、可動部の動きを規制する突起部をさらに具備することが望ましい。
これによれば、可動部の動きを安定させ、加速度センサーの精度を向上することができる。
【0012】
上述の態様において、上記第1の面に沿った方向におけるばね部の剛性は、上記第1の面に垂直な方向におけるばね部の剛性より小さいことが望ましい。
この態様によれば、可動部が上記第1の面に垂直な方向に振動することを抑制し、加速度センサーの精度を向上することができる。
【0013】
本発明の他の態様において、加速度センサーは、基板と、基板上に位置する第1の電極層と、空隙部を介して第1の電極層の第1の面と対向して位置する第2の電極層と、第2の電極層を基板に支持する支持部と、を含み、支持部は、ばね部を含む。
この態様によれば、感度と精度を確保しつつ、加速度センサーの厚みを低減し、加速度センサーを小型化することができる。
【0014】
本発明の他の態様において、加速度センサーの製造方法は、基板の上方に第1の電極を形成する工程(a)と、基板及び第1の電極の上方に犠牲層を形成する工程(b)と、犠牲層の上方に第2の電極を形成する工程(c)と、犠牲層及び第2の電極の上方に絶縁層を形成する工程(d)と、絶縁層の第1の部分を、絶縁層の上方から犠牲層に向かって異方性エッチングすることによって除去し、犠牲層を露出させる工程(e)と、犠牲層のうち、絶縁層の第1の部分の下方に位置する部分と絶縁層の第2の部分の下方に位置する部分とをエッチングすることによって除去し、絶縁層の第2の部分及び当該第2の部分の下方に位置する第2の電極と、基板及び第1の電極との間に空隙を形成する工程(f)と、を具備する。
この態様によれば、犠牲層上に可動部を形成し、その後、犠牲層を除去するので、可動部と基板との間の空隙を容易に形成することができる。
なお、上方とは、表面を基準として裏面に向かう方向とは反対の方向を意味する。
【0015】
上述の態様において、工程(e)は、複数の第1の部分を除去することを含み、第2の部分は、複数の第1の部分によって囲まれ、又は挟まれた領域に位置することが望ましい。
これによれば、第2の部分は、複数の第1の部分によって囲まれ、又は挟まれた領域に位置するので、第2の部分が基板に対して動きやすいようにすることができる。
【0016】
上述の態様において、工程(e)は、絶縁層の第2の部分に、絶縁層の上方から犠牲層に向かって貫通する孔を形成することを含み、工程(f)は、犠牲層をエッチングするためのエッチング液を、上記孔を介して犠牲層に到達させることを含むことが望ましい。
これによれば、犠牲層を除去する工程(f)において、犠牲層を除去するためのエッチング液を貫通孔から犠牲層に容易に到達させることができる。従って、犠牲層を効率的に除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】第1の実施形態に係る加速度センサーの斜視図。
【図2】第1の実施形態に係る加速度センサーの平面図及び切断面図。
【図3】第1の実施形態に係る加速度センサーの製造工程を示す切断面図。
【図4】第1の実施形態に係る加速度センサーの製造工程を示す切断面図。
【図5】第2の実施形態に係る加速度センサーの平面図。
【図6】第3の実施形態に係る加速度センサーの切断面図。
【図7】第4の実施形態に係る加速度センサーの一部を示す平面図及び切断面図。
【図8】第5の実施形態に係る加速度センサーの一部を示す平面図。
【図9】第6の実施形態に係る加速度センサーの一部を示す平面図。
【図10】第7の実施形態に係る加速度センサーの一部を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、以下に説明する本実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また本実施形態で説明される構成の全てが本発明の解決手段として必須であるとは限らない。また同一の構成要素には同一の参照符号を付して説明を省略する。
【0019】
<1.第1の実施形態>
<1−1.構成>
図1は、第1の実施形態に係る加速度センサーの斜視図である。図2(A)は、第1の実施形態に係る加速度センサーの平面図であり、図2(B)は、図2(A)のB−B線に沿った切断面を示す図である。これらの図においては、加速度センサーの加速度が、測定可能な加速度の下限以下の加速度である状態(例えば、加速度が0である状態)を示している。
【0020】
第1の実施形態に係る加速度センサーは、基板10と、第1の電極11と、第2の電極21と、支持部50と、固定部40と、を具備している。支持部50は、可動部20と、ばね部30とを含んでいる。
【0021】
基板10は、例えば単結晶のシリコン(Si)によって構成されている。基板10上には、絶縁体層101及び102が形成されている。絶縁体層101及び102の間には、基板10の表面に沿って第1の電極(電極層)11が形成されている。絶縁体層101は、例えば酸化シリコン(SiO)によって構成され、絶縁体層102は、例えば窒化シリコン(Si)によって構成されている。誘電率の高い窒化シリコンを用いることにより、加速度センサーの感度を向上することができる。第1の電極11は、例えば多結晶シリコン(Si)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、タングステン(W)、銅(Cu)などの金属によって構成されている。
絶縁体層101及び102上に、可動部20、ばね部30、固定部40が位置している。
【0022】
可動部20は、例えば窒化シリコン又は酸化シリコンと金属の配線層との積層構造によって構成されている。可動部20内には、第1の電極11に対向する第2の電極(電極層)21が形成されている。第2の電極21は、例えば多結晶シリコン(Si)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、タングステン(W)、銅(Cu)などの金属によって構成されている。図2(B)に示すように、可動部20と絶縁体層102との間には空隙が形成されている。この空隙には、気体や液体などの誘電体を充填しても良いし、真空としても良い。なお、第1及び第2の電極11及び21は、それぞれ絶縁体層102及び可動部20によって覆われる例について説明したが、第1及び第2の電極11及び21を空隙に向けて露出させても良い。
【0023】
ばね部30は、可動部20に接続された一端と、固定部40に接続された他端とを有し、可動部20を固定部40に支持する蛇腹状の部分である。ばね部30は、例えば窒化シリコン又は酸化シリコンと金属の配線層との積層構造によって構成されている。図2(B)に示すように、ばね部30と絶縁体層102との間にも空隙が形成されている。ばね部30が変形することにより、可動部20が第2の電極21と一体となって、図1に示す矢印Xの方向に振動することができるようになっている。また、ばね部30は、基板10の面に沿った方向における剛性が、基板10の面に垂直な方向における剛性より小さいので、基板10の面に垂直な方向には変形しにくくなっている。
【0024】
固定部40は、可動部20の周囲に位置している。固定部40は、絶縁体層102上に直接形成され、ばね部30の上記他端を固定している。固定部40は、例えば窒化シリコン又は酸化シリコンと金属の配線層との積層構造によって構成されている。固定部40は、基板10に形成される半導体素子(図示せず)のための多層配線層を兼ねることができる。
【0025】
第1の電極11は、第1の導電部111及び第2の導電部112を含んでいる。第2の電極21は、第3の導電部213及び第4の導電部214を含んでいる。
図2(A)に示すように、第1の導電部111は、第3の導電部213と一部重なり、かつ第3の導電部213より第1の方向(図1に示す矢印Xに沿った方向)にずれた位置に有している。また、第2の導電部112は、第4の導電部214と一部重なり、かつ第4の導電部214より第1の方向と反対側の第2の方向にずれた位置に有している。
【0026】
以上の構成において、加速度センサーに与えられた加速度と可動部20及び第2の電極21の質量とに応じた慣性力によって、ばね部30が変形し、可動部20が固定部40に対して図1に示す矢印Xの方向に動く。これにより、第1の電極11と第2の電極21との重なり部分の面積が変化するため、第1の電極11と第2の電極21との間の静電容量が変化する。この静電容量の変化を検出することにより、矢印Xの方向における加速度及び加速方向を検出することができる。
【0027】
従来の技術においては、上述のように電極間の距離の変化による容量変化を検出していたので、感度と精度を実現するには、トレンチの深さを深くし、素子サイズを大きくする必要があった。このような従来の技術に対し、第1の実施形態においては、基板10上に位置する第1の電極11と、第1の電極11の一方の面に沿った方向に動くことができる第2の電極21との間の静電容量の変化を検出する。従って、感度と精度を確保しつつ、基板10の面に垂直な方向における加速度センサーの厚みを低減し、加速度センサーを小型化することができる。
【0028】
また、従来の技術においては、ダイナミックレンジを確保するために可動部の移動できる距離を確保する必要があるが、電極間の静電容量は電極間の距離に反比例するので、電極間の距離が長くなると静電容量による距離の検出精度が低下する。また、加工精度との兼ね合いから電極間のギャップを小さくすることも困難である。このような従来の技術に対し、第1の実施形態においては、基板10上に位置する第1の電極11と、第1の電極11の一方の面に沿った方向に動くことができる第2の電極21との間の静電容量の変化を検出する。従って、第1の電極11と第2の電極21との間の距離は、可動部20の振幅とはほぼ無関係に設定することができる。これにより、第1の実施形態においては、素子を小型化することができる。
【0029】
また、第1の実施形態において、第1の導電部111は、第3の導電部213より第1の方向にずれた位置に有しており、第2の導電部112は、第4の導電部214より第2の方向にずれた位置に有している。従って、可動部20が第1の方向に動いた場合には、第1の導電部111と第3の導電部213との重なり部分の面積が大きくなり、静電容量が増加する一方、第2の導電部112と第4の導電部214との重なり部分の面積が小さくなり、静電容量が減少する。従って、第1の導電部111及び第3の導電部213間の静電容量と、第2の導電部112及び第4の導電部214間の静電容量との差分を検出することにより、基板10の面に垂直な方向に可動部20が動くことによる静電容量の変化をキャンセルすることができる。従って、基板10の面に沿った方向における可動部20の動きを正確に測定することができる。
【0030】
<1−2.製造方法>
図3及び図4は、第1の実施形態に係る加速度センサーの製造工程を示す切断面図である。
まず、図3(A)に示すように、シリコンの基板10上に絶縁体層101を形成し、さらに絶縁体層101上に第1の電極11を所定のパターンに形成する。なお、SOI(Silicon On Insulator)基板の表面のシリコン膜を一部除去して絶縁体層を露出させ、この絶縁体層上に第1の電極11を形成しても良い。
【0031】
次に、図3(B)に示すように、絶縁体層101及び第1の電極11の上に絶縁体層102を形成し、この絶縁体層102をCMP(Chemical Mechanical Polishing)法等によって平坦化した後、絶縁体層102上に犠牲層103を形成する。
次に、図3(C)に示すように、犠牲層103上に絶縁体層401を形成し、絶縁体層401上に第2の電極21を所定のパターンに形成する。
【0032】
次に、図4(D)に示すように、絶縁体層401及び第2の電極21の上に絶縁体層402を形成する。絶縁体層402は、さらに金属の配線層を挟みこんでいても良い。また、絶縁体層402を形成する工程は、基板10に形成される半導体素子(図示せず)のための多層配線層を形成する工程を兼ねていても良い。
【0033】
次に、図4(E)に示すように、絶縁体層402及び401の第1の部分(固定部40となる部分に囲まれた領域の一部)を異方性エッチングすることにより、犠牲層103を露出させる。固定部40となる部分に囲まれた領域のうち、第1の部分以外の部分(第2の部分)は、後の工程で可動部20及びばね部30となる。第1の部分は、第2の部分を囲み、又は第2の部分を挟む複数の領域に位置することが望ましい。
【0034】
最後に、図4(F)に示すように、犠牲層103を選択的にエッチングすることにより、第2の部分と絶縁体層102との間に空隙を形成する。これにより、可動部20及びばね部30が形成され、ばね部30が加速度に応じて変形し、可動部20が動くことができるようになる。
以上の工程により、第1の実施形態に係る加速度センサーが製造される。
【0035】
以上の工程によれば、犠牲層103上に可動部20及びばね部30を形成し、その後、犠牲層103を除去するので、可動部20及びばね部30と絶縁体層102との間の空隙を容易に形成することができる。また、犠牲層103の厚さを調整することによって、可動部20及びばね部30と絶縁体層102との間の間隔を調整し、加速度センサーの感度を調整することができる。
【0036】
そして、可動部20には一般的な半導体プロセスにおいて形成される多層配線層を用いることができ、基板を深くエッチングする必要はない。従って、一般的な半導体プロセスとの親和性が高く、簡便な加工技術によって、加速度センサーを製造することができる。また、加速度センサーと加速度センサーから出力された信号の処理等を行う半導体回路とを、同一の半導体チップ上に混載することも容易となる。
【0037】
<2.第2の実施形態>
図5は、第2の実施形態に係る加速度センサーの平面図である。図5は、第1の実施形態において参照した図2(A)に対応する部分を示している。第2の実施形態に係る加速度センサーは、ばね部32が4つ形成されている点で、第1の実施形態と異なる。また、第2の実施形態に係る加速度センサーは、固定部40から可動部20に向けて突出する突起部41a及び41bが形成されている点で、第1の実施形態と異なる。他の点は第1の実施形態と同様である。
【0038】
ばね部32は、4つ形成される場合に限られず、3つ又は5つ以上でも良い。ばね部32を3つ以上形成することにより、可動部20の振動方向をより安定させることができる。
突起部41aは、可動部20の振動方向(矢印X方向)に垂直な方向における可動部20の動きを規制する。これにより可動部20の振動方向を安定させることができる。突起部41bは、可動部20の振動方向(矢印X方向)における可動部20の動きを規制する。これにより可動部20の振幅を安定させ、ばね部の破損を防止することができる。突起部41a及び41bは、固定部40から可動部20に向けて突出する場合に限られず、基板10から突出させて可動部20の動きを規制しても良い。また、突起部41a及び41bは、可動部20から突出するように形成しても良い。さらに、突起部41aは、可動部20の振動方向をガイドするレール状のものであっても良い。
【0039】
<3.第3の実施形態>
図6は、第3の実施形態に係る加速度センサーの切断面図である。図6は、第1の実施形態において参照した図2(B)に対応する部分を示している。第3の実施形態に係る加速度センサーは、ばね部33が基板10から基板10の面に垂直な方向に突出するように形成されている点で、第1の実施形態と異なる。
【0040】
第3の実施形態において、基板10には溝13がエッチングにより形成されることにより、ばね部33が形成されている。可動部20と基板10との間の空隙は、第1の実施形態と同様に犠牲層を用いて形成することができる。
【0041】
<4.第4の実施形態>
図7(A)は、第4の実施形態に係る加速度センサーの一部を示す平面図である。図7(B)は、第4の実施形態に係る加速度センサーの切断面図である。第4の実施形態に係る加速度センサーは、可動部20に貫通孔22が形成されている点で、第1の実施形態と異なる。他の点は、上述の第1〜第3の実施形態と同様とすることができる。なお、図7(B)においては、簡略化のため貫通孔22を一部省略して示している。
【0042】
貫通孔22は、基板10の面に垂直な方向に可動部20を貫通するように形成されている。貫通孔22は、第2の電極21の隙間を貫通するようになっている。
貫通孔22の形成は、第1の実施形態において説明した絶縁体層402及び401の第1の部分をエッチングする工程(図4(E))において、第1の部分をエッチングするのと同時に、貫通孔22となる部分をエッチングすることにより行う。
第4の実施形態においては、犠牲層を除去する工程(図4(F))において、犠牲層を除去するためのエッチング液を貫通孔22から犠牲層に到達させることができる。従って、犠牲層を効率的に除去することができる。
【0043】
<5.第5の実施形態>
図8は、第5の実施形態に係る加速度センサーの一部を示す平面図である。第5の実施形態に係る加速度センサーにおいては、第1の実施形態において説明したように、第1の導電部111及び第3の導電部213間の静電容量と、第2の導電部112及び第4の導電部214間の静電容量とを検出する構成を有している。上述のように、これらの静電容量の差分を検出することが望ましい。
【0044】
第1及び第2の導電部111及び112の各々は、可動部20の振動方向(X方向)に垂直な棒状である複数の電極部11aと、複数の電極部11aを接続する接続部11bとを含んでいる。
第3及び第4の導電部213及び214の各々は、可動部20の振動方向(X方向)に垂直な棒状である複数の電極部21aと、複数の電極部21aを接続する接続部21bとを含んでいる。
【0045】
複数の電極部11aと複数の電極部21aとは、ほぼ同一の線幅を有しており、これらの線幅のほぼ半分に相当するずれを有する位置に配置されている。従って、可動部20がX方向に動くと、複数の電極部11aと複数の電極部21aとの重なり部分の面積が変化する。
一方、接続部11bと接続部21bとは、異なる線幅を有しており、その中心線がほぼ一致する位置に配置されている。これにより、可動部20がX方向に垂直な方向に動いても、重なり部分の面積が変化しないようになっている。
図8に示した構成は、第1の実施形態に限らず、第2〜第4の実施形態においても採用することができる。
【0046】
<6.第6の実施形態>
図9は、第6の実施形態に係る加速度センサーの一部を示す平面図である。第6の実施形態に係る加速度センサーにおいて、第1の導電部111は、第3の導電部213より第1の方向にずれた位置に有しており、第2の導電部112も、第4の導電部214より第1の方向にずれた位置に有している。従って、可動部20が第1の方向に動いた場合には、第1の導電部111と第3の導電部213との重なり部分の面積が大きくなる一方、第2の導電部112と第4の導電部214との重なり部分の面積も大きくなる。
【0047】
そして、第6の実施形態においては、第3の導電部213と第4の導電部214とが、配線部215によって接続されている。第1の導電部111と第2の導電部112からそれぞれ配線を引き出し、これらの間の静電容量(第1の静電容量)を検出する。可動部20が第1の方向に動いた場合には、第1の静電容量が大きくなり、第2の方向に動いた場合には、第1の静電容量が小さくなる。
【0048】
第6の実施形態において、第1の電極11は、さらに第5の導電部115及び第6の導電部116を含んでおり、第2の電極21は、さらに第7の導電部217及び第8の導電部218を含んでいる。
第5の導電部115は、第7の導電部217と一部重なり、かつ第7の導電部217より第2の方向にずれた位置に有している。第6の導電部116も、第8の導電部218と一部重なり、かつ第8の導電部218より第2の方向にずれた位置に有している。
従って、可動部20が第1の方向に動いた場合には、第5の導電部115と第7の導電部217との重なり部分の面積が小さくなる一方、第6の導電部116と第8の導電部218との重なり部分の面積も小さくなる。
【0049】
そして、第6の実施形態においては、第7の導電部217と第8の導電部218とが、配線部219によって接続されている。第5の導電部115と第6の導電部116からそれぞれ配線を引き出し、これらの間の静電容量(第2の静電容量)を検出する。可動部20が第1の方向に動いた場合には、第2の静電容量が小さくなり、第2の方向に動いた場合には、第2の静電容量が大きくなる。
【0050】
さらに、第1の静電容量と第2の静電容量との差分を検出することにより、基板10の面に垂直な方向に可動部20が動いたことによる静電容量の変化をキャンセルすることができる。従って、基板10の面に沿った方向における可動部20の動きを正確に測定することができる。
第6の実施形態によれば、可動部20に位置する第2の電極21から可動部20の外部へ配線を引き出す必要がないので、素子構成及び製造工程を簡素化することができる。
【0051】
<7.第7の実施形態>
図10は、第7の実施形態に係る加速度センサーの一部を示す平面図である。第7の実施形態に係る加速度センサーにおいて、第1の電極11は、さらに第5の導電部115及び第6の導電部116を含んでおり、第2の電極21は、さらに第7の導電部217及び第8の導電部218を含んでいる。第5の導電部115は、第7の導電部217と一部重なり、かつ第7の導電部217より第2の方向にずれた位置に有している。第6の導電部116は、第8の導電部218と一部重なり、かつ第8の導電部218より第1の方向にずれた位置に有している。
【0052】
第1〜第4の導電部111、112、213、214については、図8を参照しながら説明した第5の実施形態と同様である。
そして、第3の導電部213と第8の導電部218は、可動部20の対角線上に位置しており、第4の導電部214と第7の導電部217は、可動部20の別の対角線上に位置している。
【0053】
第7の実施形態においては、第1の導電部111及び第3の導電部213間の静電容量と、第6の導電部116及び第8の導電部218間の静電容量との和を検出するとともに、第2の導電部112及び第4の導電部214間の静電容量と、第5の導電部115及び第7の導電部217間の静電容量との和を検出し、これらの和の差分を検出する。これにより、基板10の面に垂直な方向に可動部20が動いたことによる静電容量の変化をキャンセルするだけでなく、可動部20の傾きの変化による静電容量の変化もキャンセルすることができる。従って、基板10の面に沿った方向における可動部20の動きをより正確に測定することができる。
【符号の説明】
【0054】
10…基板、11…第1の電極、11a…電極部、11b…接続部、13…溝、20…可動部、21…第2の電極、21a…電極部、21b…接続部、22…貫通孔、30、32、33…ばね部、40…固定部、41a、41b…突起部、50…支持部、101、102…絶縁体層、103…犠牲層、111…第1の導電部、112…第2の導電部、115…第5の導電部、116…第6の導電部、213…第3の導電部、214…第4の導電部、215…配線部、217…第7の導電部、218…第8の導電部、219…配線部、401、402…絶縁体層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に位置する第1の電極層と、
前記第1の電極層の第1の面と対向して位置する第2の電極層と、
前記第2の電極層を前記基板に支持する支持部と、を含み、
前記第2の電極層は、前記第1の面に沿った方向に動くことができ、
前記支持部は、前記第2の電極層が前記第1の面に沿った方向に動くことができるように前記第2の電極層を前記基板に支持する加速度センサー。
【請求項2】
請求項1において、
前記第1の電極層は、第1の導電部及び第2の導電部を含み、
前記第2の電極層は、第3の導電部及び第4の導電部を含み、
前記第1の導電部は、前記第1の面に垂直な方向からみて前記第3の導電部と一部重なり、かつ前記第3の導電部より第1の方向にずれた位置に有しており、
前記第2の導電部は、前記第1の面に垂直な方向からみて前記第4の導電部と一部重なり、かつ前記第4の導電部より前記第1の方向と反対側の第2の方向にずれた位置に有している加速度センサー。
【請求項3】
請求項1又は請求項2において、
前記支持部は、
前記第2の電極層と一体となって前記第1の面に沿った方向に動くことができる可動部と、
前記可動部より小さな剛性を有し、前記可動部が前記第1の面に沿った方向に動くことができるように前記可動部を前記基板に支持するばね部と、
を含む加速度センサー。
【請求項4】
請求項3において、
前記可動部の周囲に、前記ばね部を固定する固定部をさらに具備している加速度センサー。
【請求項5】
請求項4において、
前記可動部、前記固定部及び前記基板のうちの何れかに、前記可動部の動きを規制する突起部をさらに具備する加速度センサー。
【請求項6】
請求項3乃至請求項5の何れか一項において、
前記第1の面に沿った方向における前記ばね部の剛性は、前記第1の面に垂直な方向における前記ばね部の剛性より小さい加速度センサー。
【請求項7】
基板と、
前記基板上に位置する第1の電極層と、
空隙部を介して前記第1の電極層の第1の面と対向して位置する第2の電極層と、
前記第2の電極層を前記基板に支持する支持部と、を含み、
前記支持部は、ばね部を含む加速度センサー。
【請求項8】
基板の上方に第1の電極を形成する工程(a)と、
前記基板及び前記第1の電極の上方に犠牲層を形成する工程(b)と、
前記犠牲層の上方に第2の電極を形成する工程(c)と、
前記犠牲層及び前記第2の電極の上方に絶縁層を形成する工程(d)と、
前記絶縁層の第1の部分を、前記絶縁層の上方から前記犠牲層に向かって異方性エッチングすることによって除去し、前記犠牲層を露出させる工程(e)と、
前記犠牲層のうち、前記絶縁層の前記第1の部分の下方に位置する部分と前記絶縁層の第2の部分の下方に位置する部分とをエッチングすることによって除去し、前記絶縁層の前記第2の部分及び当該第2の部分の下方に位置する前記第2の電極と、前記基板及び前記第1の電極との間に空隙を形成する工程(f)と、
を具備する加速度センサーの製造方法。
【請求項9】
請求項8において、
工程(e)は、複数の前記第1の部分を除去することを含み、
前記第2の部分は、複数の前記第1の部分によって囲まれ、又は挟まれた領域に位置する
加速度センサーの製造方法。
【請求項10】
請求項8又は請求項9において、
工程(e)は、前記絶縁層の前記第2の部分に、前記絶縁層の上方から前記犠牲層に向かって貫通する孔を形成することを含み、
工程(f)は、前記犠牲層をエッチングするためのエッチング液を、前記孔を介して前記犠牲層に到達させることを含む
加速度センサーの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−163415(P2012−163415A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−23201(P2011−23201)
【出願日】平成23年2月4日(2011.2.4)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】