励起光導入部材、光ファイバ構造体および光学装置
【課題】励起光源から光ファイバへの励起光導入の効率を高くすることができる励起光導入部材、ならびに、光ファイバにおける光増幅効率やレーザ発振効率を向上させることができる光ファイバ構造体および光学装置を提供する。
【解決手段】光学装置1は、渦巻状に密に巻かれていてディスク形状とされた光ファイバ11、この光ファイバ11の一端に設けられた反射部材12、この光ファイバ11に励起光を導入する励起光導入部材13、この励起光導入部材13へ励起光を入射させる光学系14、および、励起光を出力する励起光源15を備える。光ファイバ11のコアは、所定波長の励起光を吸収して他の波長の光を放出することができるレーザ活性物質を含有する。励起光導入部材13の屈折率は、光ファイバ11のクラッドの屈折率より高い。
【解決手段】光学装置1は、渦巻状に密に巻かれていてディスク形状とされた光ファイバ11、この光ファイバ11の一端に設けられた反射部材12、この光ファイバ11に励起光を導入する励起光導入部材13、この励起光導入部材13へ励起光を入射させる光学系14、および、励起光を出力する励起光源15を備える。光ファイバ11のコアは、所定波長の励起光を吸収して他の波長の光を放出することができるレーザ活性物質を含有する。励起光導入部材13の屈折率は、光ファイバ11のクラッドの屈折率より高い。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コアがレーザ活性物質を含有する光ファイバを含む光ファイバ構造体、この光ファイバ構造体において光ファイバに励起光を導入する励起光導入部材、および、この光ファイバ構造体を含む光学装置(例えば光増幅器やレーザ発振器)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コアがレーザ活性物質を含有する光ファイバを含む光学装置として、光増幅器やレーザ発振器が挙げられる。光増幅器では、光ファイバに励起光が導入されることによりレーザ活性物質が励起され、その光ファイバに被増幅光が入力されると、その光ファイバにおいて誘導放出が生じ、被増幅光が光増幅されて光ファイバから出力される。また、レーザ発振器では、光ファイバが共振器内に配され、その光ファイバに励起光が導入されることによりレーザ活性物質が励起され、その光ファイバにおいて誘導放出が生じるとともに共振器においてレーザ発振してレーザ光が出力される。
【0003】
このような光学装置は、光増幅媒体として光ファイバを用いていることから、その光ファイバにおいて増幅または発振する光の横モードの数が少なく、出力光の品質が優れている。したがって、光増幅媒体として光ファイバを用いる光学装置は、産業用(特に機械加工用)に好適に使用され得る。
【0004】
このような光学装置において光ファイバ内に励起光を導入する方法は、光ファイバの端面から光ファイバのコア内に励起光を導入する端面導入方法と、光ファイバを巻回等して構成される光ファイバ構造体の側面から光ファイバのクラッド内に励起光を導入する側面導入方法と、に大別される。前者の端面導入方法と比較すると、後者の側面導入方法は、励起光源から出力された励起光を光ファイバ構造体に導入する際の効率が高く、また、ファイバへの励起光投入口面積を広くとれるので励起光源としてレーザダイオード(LD)単体だけでなくLDアレイやLDスタックを用いることが可能であるので、高パワーの励起光を光ファイバ構造体に導入することができ、したがって、光増幅効率やレーザ発振効率が優れ、この点でも産業用に好適に用いられ得る(例えば特許文献1や非特許文献1を参照)。
【0005】
側面導入方法においては、光ファイバ構造体の側面から光ファイバのクラッド内に励起光を導入するために励起光導入部材が用いられる。非特許文献1に記載された励起光導入部材は、凡そ平板形状のものであって、入射面に励起光を入射し、その入射した励起光を内部で導光させ、その導光させた励起光を傾斜面で全反射させ、その全反射させた励起光を出射面から出射して光ファイバ内に入射させる。
【0006】
また、側面導入方法においては、励起光源としてはレーザダイオード(LD)単体だけでなくLDアレイやLDスタックを用いることが可能である。端面導入方法と比較すると、特に側面導入方法においては、上記のような励起光導入部材を使用することとの関係で、LDアレイやLDスタックが励起光源として好適に用いられ得る。
【特許文献1】特開平10−190097号公報
【非特許文献1】平成13年度 新エネルギー・産業技術総合開発機構委託 フォトン計測・加工技術(石油生産システム高度計測・加工技術研究開発)成果報告書、「第VII章 高集光完全固体化レーザー技術:ファイバーレーザーの研究開発」、財団法人製造科学技術センター、平成14年3月
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような側面導入方法に拠る光ファイバ構造体および光学装置において、光ファイバにおける光増幅効率やレーザ発振効率の更なる向上が望まれている。光増幅効率やレーザ発振効率を向上させるには、投入された励起光が効率良くレーザ出力パワーに変換されることが必要である。そのためには、光ファイバにおけるレーザ活性物質の含有量を増やすことや、励起光源から出力された励起光が光ファイバに導入される効率を大きくすること、が考えられる。しかし、濃度消光の問題や製造上の問題があることから、レーザ活性物質の含有量の増加には限界がある。
【0008】
本発明は、上記問題点を解消する為になされたものであり、励起光源から光ファイバへの励起光導入の効率を高くすることができる励起光導入部材、ならびに、光ファイバにおける光増幅効率やレーザ発振効率を向上させることができる光ファイバ構造体および光学装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る励起光導入部材は、レーザ活性物質を含有するコアをクラッド内に含む光ファイバの側面から該光ファイバ内に励起光を導入する励起光導入部材であって、励起光を入射する入射面と、この入射面に入射して内部を導光した励起光を全反射させる傾斜面と、この傾斜面で全反射させた励起光を出射して光ファイバ内に入射させる出射面と、を有する導入板を備え、導入板の屈折率が光ファイバのクラッドの屈折率より高いことを特徴とする。
【0010】
本発明に係る励起光導入部材は、励起光を入射する入射端と、この入射端に入射して内部を導光した励起光を出射する出射端と、を各々有する複数の線状体を更に備え、複数の線状体それぞれの出射端が導入板の入射面と光学的に接続されているのが好適である。
【0011】
本発明に係る光ファイバ構造体は、レーザ活性物質を含有するコアをクラッド内に含む光ファイバと、この光ファイバの側面から該光ファイバ内に励起光を導入する上記の本発明に係る励起光導入部材と、を備えることを特徴とする。
【0012】
本発明に係る光学装置は、上記の本発明に係る光ファイバ構造体と、この光ファイバ構造体に含まれる光ファイバに導入されるべき励起光を出力する励起光源と、を備えることを特徴とする。
【0013】
本発明に係る励起光導入部材では、光ファイバ内に励起光を入射させる導入板の屈折率が光ファイバのクラッドの屈折率より高いことから、光ファイバへの励起光導入の効率を高くすることができる。本発明に係る励起光導入部材が導入板に加えて複数の線状体を備える場合には、複数の線状体それぞれの入射端に励起光源を光学的に接続することにより、光ファイバへ導入する励起光のパワーを大きくすることができる。また、本発明に係る光ファイバ構造体および光学装置は、光ファイバにおける光増幅効率やレーザ発振効率を向上させることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る励起光導入部材は、励起光源から光ファイバへの励起光導入の効率を高くすることができる。また、この励起光導入部材を用いた光ファイバ構造体および光学装置は、光ファイバにおける光増幅効率やレーザ発振効率を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための最良の形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0016】
(第1実施形態)
【0017】
先ず、本発明に係る励起光導入部材の実施形態について説明するとともに、この励起光導入部材を用いた光ファイバ構造体および光学装置の第1実施形態について説明する。図1は、第1実施形態に係る光学装置1の平面図である。この図に示される光学装置1は、渦巻状に密に巻かれていてディスク形状とされた光ファイバ11、この光ファイバ11の一端に設けられた反射部材12、この光ファイバ11に励起光を導入する励起光導入部材13、この励起光導入部材13へ励起光を入射させる光学系14、および、励起光を出力する励起光源15を備える。これらのうち、光ファイバ11,反射部材12および励起光導入部材13は、光ファイバ構造体10を構成している。
【0018】
光ファイバ11の断面形状は略正方形であり、当該クラッド内にあるコアの断面形状は円形である。そのコアは、所定波長の励起光を吸収して他の波長の光を放出することができるレーザ活性物質を含有する。具体的には、光ファイバ11は石英ガラスを主成分とするものである。また、コアに含有されるレーザ活性物質として、Yb,Er,Nd,Tm,Ho,Pr,Ce等のランタノイド元素の三価イオンの何れか一種もしくは組み合わせ、または、Cr,Ti等の或る種の遷移金属元素のイオン、が例示される。
【0019】
このような光ファイバ11は以下のようにして製造される。通常の光ファイバ母材を製造する方法と同様の方法(例えばMCVD法等)により円形断面の母材を製造し、この円形断面の母材の側面を研削・研磨して矩形断面の母材とする。そして、この光ファイバ母材を線引することで、光ファイバ11を得ることができる。この線引の際の諸条件を適切に設定することにより、線引により得られる光ファイバ11の断面形状は略矩形のままとなる。
【0020】
光ファイバ構造体10において、光ファイバ11は渦巻状に密に巻かれていてディスク形状とされている。この券回に際して、光ファイバ11の少なくとも一部は、径方向に積層されてディスク形状とされている。なお、このディスク面に垂直な方向には光ファイバ11は積層される必要は無い。この巻かれた状態において隣接するクラッド間は、融着や光学樹脂により光学的に接続されていてもよいが、より好適にはポリシラザンが接着剤として用いられて光学的に接続される。
【0021】
光ファイバ11の両端面は、平坦(斜めを含む)または球面に研磨されていてもよい。この場合、この光ファイバ構造体10は光増幅器における光増幅媒体として好適に用いられる。すなわち、一方の端面からコアに入射した被増幅光は、コアにおいて光増幅され、その光増幅された光は他方の端面から出射される。このとき、双方の端面には反射低減膜が設けられているのも好ましい。
【0022】
また、図1に示されるように、一方の端面に、光ファイバ11のコアに含有されたレーザ活性物質から放出される光を反射する反射部材12が設けられていてもよい。この場合、他方の端面と反射部材12とは光共振器を構成していて、光ファイバ構造体10はレーザ発振器における光増幅媒体として好適に用いられる。このとき、他方の端面(レーザ光が出射する面)には反射低減膜が設けられているのも好ましい。また、レーザ光が出射する端面付近には反射率10%以下のファイバブラッググレーティング(FBG)を設置し、端面自体は斜めに研磨した構成も好ましい。反射部材12として、好適には、外部ミラー、端面に貼り付けられた誘電体多層膜ミラー、光ファイバグレーティング等が用いられる。
【0023】
また、光ファイバ11を冷却する為のディスク形状の金属板(不図示)が設けられている。この金属板は、ディスク形状に巻かれた光ファイバ11に直接に又は間接に接していて、励起光吸収により生じる光ファイバ11の熱を吸収する。また、この金属板と光ファイバ11との間に低屈折率の樹脂(例えばゲル状のフルオロシリコーン)が設けられているのも好ましく、このようにすることにより、樹脂とクラッドとの界面で励起光が全反射するので、金属板による励起光の吸収が防止されるとともに、金属板とクラッドとの間の熱伝達がよくなるので、冷却効果が増す。
【0024】
励起光源15は、光ファイバ構造体10に含まれる光ファイバ11に導入されるべき励起光を出力するものであり、例えばLDであり、好適には、複数のLDのエミッタが一次元配列されたLDアレイや、複数のLDアレイが積層されたLDスタックである。励起光の波長としては、光ファイバ11のコアに含有されたレーザ活性物質を励起し得る波長が選ばれる。光学系14は、励起光源15から出力された励起光をコリメートし更に収斂して、その収斂した励起光を励起光導入部材13の一端面131に入射させる。
【0025】
励起光導入部材13は、励起光源15から出力され光学系14を経て一端面131に入力した励起光を、光ファイバ11のうち積層された部分において光ファイバ11内に導入する。励起光導入部材13は、励起光波長において吸収が小さい材料からなり、好適には合成石英ガラスであり、また、多成分系ガラスであってもよく、更に好適には光ファイバ11のクラッドの屈折率より高い屈折率を有する。例えば、光ファイバ11のクラッド110が純石英ガラスからなるのに対して、励起光導入部材13は、屈折率上昇材としての不純物が添加された石英ガラスからなる。また、導入後の励起光がコアの延在方向に伝搬するように励起光導入部材13が設けられているのが好ましい。
【0026】
図2は、第1実施形態に係る光ファイバ構造体10の一部断面図である。この図に示されるように、光ファイバ構造体10において、クラッド110内にコア111を含む光ファイバ11が渦巻状に密に巻かれてディスク形状とされていて、そのディスク形状とされた光ファイバ11のクラッド110間がポリシラザン161により接着されており、また、ディスク形状とされた光ファイバ11の上下に、ゲル状のフルオロシリコーン162A,162B、フッ素樹脂シート163A,163B、熱伝導シート164A,164B、および、金属板165A,165Bが順に設けられている。
【0027】
ポリシラザン161は、光ファイバ11が巻かれた状態において隣接するクラッド110間に接着剤として設けられたものである。このポリシラザンは、分子式が (SiH2NH)n で表される透明材料であって、空気中の水分で加水分解されてSiO2 へ転化する。ただし、ここでクラッド110間に接着剤として設けられるポリシラザン161は、転化していてもよいし、転化していなくてもよい。ポリシラザンをキシレンやミネラルスピリッツ等の溶剤に溶融したものを当該ディスク面上に滴下すると、毛細管現象によりクラッド110間に侵入し溶剤が蒸散して、ポリシラザンがクラッド110間の接着剤として作用する。
【0028】
ポリシラザンは、炭素元素を含まないので、C-H伸縮振動に伴う波長900nm台の吸収が無い。一方、光ファイバ11のコア111に添加されるYb3+を励起しる励起光の波長は910nm〜980nmである。したがって、ポリシラザンは励起光を吸収することは無い。この点で、ポリシラザンは、従来の光学樹脂と比べて優れている。また、ポリシラザンは、従来の光学樹脂と比べて耐熱性が高い。さらに、ポリシラザンは、融着接続する場合と比較してクラッド110間を容易に接続することが可能であり、歩留まりが高い。
【0029】
このようにクラッド110間がポリシラザン161により接続されてディスク形状とされた光ファイバ11と、この光ファイバ11を冷却する冷却部材としての金属板165A,165Bとの間に、ゲル状のフルオロシリコーン162A,162B、フッ素樹脂シート163A,163B、および、熱伝導シート164A,164Bが順に設けられている。フッ素樹脂シート163A,163B、および、熱伝導シート164A,164Bは、何れも熱伝導率が高く、可撓性が優れている。フッ素樹脂シート163A,163Bの屈折率は、光ファイバ11のクラッド110の屈折率より低い。
【0030】
ゲル状のフルオロシリコーンは、非常に安定な物質であり、耐久性に優れ、透明性にも優れている。ゲル状のフルオロシリコーンは、水素元素を含まないので、C-H伸縮振動に伴う波長900nm台の吸収が無く、したがって、励起光を吸収することは無い。ゲル状のフルオロシリコーンは、クラッド110を構成する石英ガラスの屈折率より低い屈折率を有しており、クラッド110との界面において励起光を全反射させることができる。なお、仮にクラッド110が金属板165A,165Bに直接に接していれば、励起光が金属板165A,165Bにより吸収されるので励起効率が低下するが、クラッド110がゲル状のフルオロシリコーン(またはフッ素樹脂シート163A,163B)に接していることにより励起効率が優れる。
【0031】
ゲル状のフルオロシリコーンは、熱伝導率が高いので、金属板165A,165Bにより光ファイバ11を伝熱冷却する上でも好都合である。また、クラッド110間がポリシラザン161により接続されてディスク形状とされた光ファイバ11の当該ディスク面には光ファイバ11の径の周期で凹凸が存在するが、その場合であっても、光ファイバ11のディスク面とフッ素樹脂シート163A,163Bとの間にゲル状のフルオロシリコーンが充填されることで、伝熱冷却の効果を高めることができる。なお、金属板165A,165B間の圧力によっては、クラッド110がフッ素樹脂シート163A,163Bに直接に接する部分が生じ得るが、その場合であっても、上記の効果の低減は僅かである。
【0032】
図3は、励起光導入部材13,光学系14および励起光源15の平面図および側面図であり、同図(a)は平面図であり、同図(b)は側面図である。この図では、励起光源15は2個のLDアレイが積層されたLDスタックであるとしている。光学系14は、第1コリメータ141,第2コリメータ142および集光レンズ143を含む。第1コリメータ141は、励起光源15としてのLDスタックの各エミッタから出力された励起光を入力し、その励起光をファスト軸に関して平行化する。第2コリメータ142は、第1コリメータ141から出力された励起光を入力し、その励起光をスロー軸に関して平行化する。そして、集光レンズ143は、第1コリメータ141および第2コリメータ142により平行光とされた励起光を入力し、その励起光を収斂して、その収斂した励起光を励起光導入部材13の入射面131に入射させる。
【0033】
図4は、励起光導入部材13による光ファイバ11への励起光導入を説明する側面図である。励起光導入部材13は、光学系14から一端の入射面131に入力した励起光を、上下面で全反射させながら内部を導光させ、その導光した励起光を他端側から光ファイバ11内に導入する。励起光導入部材13の上面および下面は互いに平行な平面であり、励起光導入部材13の他端側(光ファイバ11内に励起光を導入する側)においては、下面に対して傾斜した傾斜面132が設けられている。この傾斜面132の下方の下面(出射面)133は、光ファイバ11の側面に対して光学的に接続されている。この傾斜面132は、下面に対して数度〜十数度の角度をなし、光学研磨またはそれに相当する滑らかな面を有しており、励起光導入部材13の内部を導光してきた励起光を全反射させる。そして、出射面133は、傾斜面132で全反射させた励起光を出射して光ファイバ11内に入射させる。
【0034】
ここで、図中において点線で示すように進む励起光について考える。励起光導入部材13中において励起光が出射面133に対して角度θ0で進むものとする。出射面133と傾斜面132とがなす角度をθ1とする。光ファイバ11中において励起光が光軸に対して角度θ2で進むものとする。励起光導入部材13の屈折率をnfとし、光ファイバ11のクラッド110の屈折率をncladとする。また、励起光導入部材13の厚みをDfとし、光ファイバ11のクラッド110の径をDcとする。このとき、これらのパラメータの間には下記(1)式の関係が成り立つ。
【数1】
【0035】
励起光導入部材13の傾斜面132で反射されて出射面133から光ファイバ11内に導入された励起光は、ディスク形状とされた光ファイバ11の下面で反射され、次いで上面(励起光導入部材13が設けられている側)で反射される。励起光導入部材13の傾斜面132の始点(入射面131に最も近い位置)と、その始点で反射された励起光がディスク形状の光ファイバ11の上面に最初に到達する位置との間の距離Xrefは、下記(2)式で表される。
【数2】
【0036】
また、励起光導入部材13の傾斜面132の始点と終点(入射面131から最も遠い位置)との間の距離Ledgeは、下記(3)式で表される。なお、距離Xrefおよび距離Ledgeそれぞれは、光ファイバ11の光軸に沿った方向についての距離である。
【数3】
【0037】
仮に、励起光導入部材13から光ファイバ11に導入された励起光が再び励起光導入部材13に戻ると、励起光導入効率が低減する。このように励起光導入部材13に励起光が戻ることを防止するため、距離Xrefと距離Ledgeとの間に下記(4)式の関係が成り立つことが必要である。
【数4】
【0038】
このように構成される光学装置1は以下のように動作する。励起光源15から出力された励起光は、光学系14により集光されて励起光導入部材13の入射面131に入射され、励起光導入部材13の内部で導光され、励起光導入部材13の傾斜面132で全反射される。傾斜面132で全反射された励起光は、励起光導入部材13の出射面133と光ファイバ11の側面とが光学的に接続された部分を経て、光ファイバ11内に導入される。光ファイバ11内に導入された励起光は、クラッド110の外側界面で全反射されながら光ファイバ11内を導波する間に、コア111に含まれるレーザ活性物質を励起する。
【0039】
光学装置1が反射部材12を含まず光増幅器として動作する場合、コア111の一端に被増幅光が入力すると、その入力した被増幅光はコア111を導波する間に光増幅され、その光増幅された光は他端から出力される。一方、光学装置1が反射部材12を含みレーザ発振器として動作する場合、励起されたレーザ活性物質で誘導放出が生じるとともに共振器においてレーザ発振してレーザ光が出力される。
【0040】
特に、本実施形態では、励起光導入部材13の屈折率nfが光ファイバ11のクラッド110の屈折率ncladより高いことを特徴としている。励起光導入部材13中において励起光が出射面133に対してなす角度θ0は、上記(4)式が成り立つ範囲で許容される。すなわち、励起光導入部材13の屈折率nfが光ファイバ11のクラッド110の屈折率ncladより高いと、角度θ0の許容範囲が広くなる。
【0041】
したがって、励起光導入部材13は、励起光源15から光ファイバ11への励起光導入の効率を高くすることができる。また、この励起光導入部材13を用いた光ファイバ構造体10および光学装置1は、光ファイバ11における光増幅効率やレーザ発振効率を向上させることができる。また、励起光導入部材13,光学系14および励起光源15の間の位置調整について高精度であることが要求されず、また、これら個々の部品についても高精度であることが要求されないので、光ファイバ構造体10または光学装置1を安価かつ容易に製造することができる。
【0042】
また、一般に、石英ガラスは、不純物が添加されると、融点が低くなる。すなわち、屈折率nfが高い励起光導入部材13の融点は、クラッド110の融点より低い。したがって、励起光導入部材13の出射面133をディスク形状の光ファイバ11の上面に融着接続する際に、励起光導入部材13のみを軟化させて融着することが可能である。
【0043】
次に、励起光導入部材13の種々の変形例について説明する。図5は、励起光導入部材13の変形例を示す第1の側面図である。励起光導入部材13の傾斜面132で反射された励起光が通過する範囲において、出射面133と光ファイバ11のクラッド110とが光学的に接続されていればよい。このとき、同図(a)に示されるように、励起光導入部材13の下面とクラッド110とが重なる範囲の全体が光学的に接続されていてもよい。しかし、同図(b)に示されるように、励起光導入部材13の傾斜面132で反射された励起光が通過する範囲において、出射面133とクラッド110とが光学的に接続されている一方で、励起光が通過しない範囲においては、励起光を遮断する膜134が出射面133とクラッド110との間に設けられているのが好適である。このように励起光遮断膜134が設けられていることにより、或る励起光導入部材から光ファイバ11に導入された励起光が他の励起光導入部材を経て放射されることを抑制することが可能となって、励起効率を向上させることができる。
【0044】
図6は、励起光導入部材13の変形例を示す第2の側面図である。同図(a)に示されるように、励起光導入部材13の傾斜面132は、平面であって、先端が下面まで達していてもよい。しかし、先端が鋭く尖ったものを製作することは現実には困難であるので、同図(b)に示されるように、励起光導入部材13の傾斜面132は、先端が鋭く尖っておらず、光ファイバ11との接続に用いた光学樹脂135が先端部分に存在していてもよい。また、励起光導入部材13の傾斜面132は、同図(c)に示されるように凸面であってもよいし、同図(d)に示されるように凹面であってもよく、これらの場合には、反射する励起光に対してレンズ作用を奏することができる。
【0045】
図7は、励起光導入部材13の変形例を示す第3の側面図である。同図(a)に示されるように、励起光導入部材13の入射面131は、平面であって、下面に対して垂直であってもよい。しかし、同図(b)に示されるように、励起光導入部材13の入射面131は、平面であって、下面に対して垂直でないのが好適である。この場合には、入射面131で反射した励起光が励起光源15に戻ることが抑制されて、安定した励起光出力を得ることができる。また、同図(b)に示されるように、励起光導入部材13の入射面131は、凸面であって、レンズ作用を奏するのも好適である。
【0046】
図8は、励起光導入部材13の変形例を示す平面図である。励起光導入部材13は、同図(a)に示されるように幅が一定であってもよいし、同図(b)に示されるように入射面131から傾斜面132に向かうに従って幅が狭くなっていてもよい。後者の場合には、後に図9に示されるように多数の線状体を入射面131に光学的に接続することができ、高パワーの励起光を高密度で光ファイバ11に導入することができる。
【0047】
図9は、励起光導入部材13の変形例を示す平面図および側面図である。これまでに説明してきた励起光導入部材は、入射面131,傾斜面132および出射面133を有する凡そ平板形状の導入板13Aからなるものであった。しかし、同図に示される励起光導入部材13は、凡そ平板形状の導入板13Aに加えて、複数(図では5本)の線状体13Bを更に備えている。なお、この場合には光学系14は無くてもよい。
【0048】
各線状体13Bは可撓性を有するのが好適である。各線状体13Bは、励起光源から出力された励起光を入射する入射端136と、この入射端136に入射して内部を導光した励起光を出射する出射端137と、を有する。各線状体13Bの出射端137は、導入板13Aの入射面131と光学的に接続されている。各線状体13Bは、屈折率が一様のものであってもよいし、クラッド内にコアを有する光ファイバであってもよい。また、後者の場合には、各線状体13Bは、光ファイバアレイを構成する個々の光ファイバであってもよいし、励起光源15としてのLDに付属しているピグテイル光ファイバであってもよい。
【0049】
このように励起光導入部材13が導入板13Aおよび複数の線状体13Bを備える場合には、光ファイバ11に導入する励起光のパワーを大きくすることができるだけでなく、以下のような効果もある。すなわち、アレイ配置された複数の線状体13Bと導入板13Aとの接続は、光通信分野で実績がある融着接続により容易に可能である。また、図10に側面図が示されるように、樹脂138A,138Bを介して金属板139A,139Bにより励起光導入部材13を挟むことにより、効率が高い冷却を行うことができ、また、機械的に強固にすることも容易である。また、作製が容易であって、精密な位置調整やあおり調整が可能であるので、複数の線状体13Bから導入板13Aで合流された励起光のビーム品質の劣化が小さい。
【0050】
各線状体13Bが可撓性を有していれば、線状体13Bの入射端136に接続される励起光源としてのLDの配置を任意とすることができ、励起光源としてチップLDを用いることができるので、LDの冷却を空冷で行うこともできる。個々の線状体13Bについては、径を小さくすることができるので、放熱の点でも好ましい。LDの配置を任意とすることができることから、ボード上にLDを集約することもできるし、劣化LDの交換も容易となる。アライメントずれが生じ難い。また、ディスク形状の光ファイバ構造体10を薄くしても、励起光の集積度を上げて高出力化が可能であり、ビーム品質の向上も容易である。
【0051】
(第2実施形態)
【0052】
次に、本発明に係る光ファイバ構造体および光学装置の第2実施形態について説明する。図11は、第2実施形態に係る光学装置2の斜視図である。この図に示される光学装置2は、円柱状の冷却部材29、この冷却部材29の周囲に螺旋状に密に巻かれてシリンダ形状とされた光ファイバ21、この光ファイバ21の一端に設けられた反射部材22、この光ファイバ21に励起光を導入する励起光導入部材23、この励起光導入部材23へ励起光を入射させる光学系24、および、励起光を出力する励起光源25を備える。これらのうち、冷却部材29,光ファイバ21,反射部材22および励起光導入部材23は、光ファイバ構造体20を構成している。光ファイバ21は、第1実施形態における光ファイバ11と同様の構成のものであり同様にして作製される。
【0053】
光ファイバ構造体20において、光ファイバ21は螺旋状に密に巻かれていてシリンダ形状とされている。この券回に際して、光ファイバ21の少なくとも一部は、径方向に積層されてシリンダ形状とされている。なお、このシリンダ形状の径方向には光ファイバ21は積層される必要は無い。この巻かれた状態において隣接するクラッド間は、融着や光学樹脂により光学的に接続されていてもよいが、より好適にはポリシラザンが接着剤として用いられて光学的に接続される。
【0054】
光ファイバ21の両端面は、平坦に研磨されていてもよい。この場合、この光ファイバ構造体20は光増幅器における光増幅媒体として好適に用いられる。すなわち、一方の端面からコアに入射した被増幅光は、コアにおいて光増幅され、その光増幅された光は他方の端面から出射される。このとき、双方の端面には反射低減膜が設けられているのも好ましい。また、レーザ光が出射する端面付近には反射率10%以下のファイバブラッググレーティング(FBG)を設置し、端面自体は斜めに研磨した構成も好ましい。
【0055】
また、図11に示されるように、一方の端面に、光ファイバ21のコアに含有されたレーザ活性物質から放出される光を反射する反射部材22が設けられていてもよい。この場合、他方の端面と反射部材22とは光共振器を構成していて、光ファイバ構造体20はレーザ発振器における光増幅媒体として好適に用いられる。このとき、他方の端面(レーザ光が出射する面)には反射低減膜が設けられているのも好ましい。反射部材22として、好適には、外部ミラー、端面に貼り付けられた誘電体多層膜ミラー、光ファイバグレーティング等が用いられる。
【0056】
また、冷却部材29は、金属からなり、光ファイバ21を冷却する為のものである。この冷却部材29の内部には、循環する冷却水を流す孔が設けられているのが好ましい。この冷却部材29は、シリンダ形状に巻かれた光ファイバ21に直接に又は間接に接していて、励起光吸収により生じる光ファイバ21の熱を吸収する。また、この冷却部材29と光ファイバ21との間には低屈折率の樹脂(例えばフルオロシリコーン)が設けられているのも好ましく、このようにすることにより、樹脂とクラッドとの界面で励起光が全反射するので、冷却部材29により励起光の吸収が防止されるとともに、冷却部材29とクラッドとの間の熱伝達がよくなるので、冷却効果が増す。
【0057】
第2実施形態における励起光導入部材23,光学系24および励起光源25は、図3および図4に示されたような第1実施形態における励起光導入部材13,光学系14および励起光源15と同様のものである。励起光導入部材23は、励起光波長において吸収が小さい材料からなり、好適には合成石英ガラスであり、また、多成分系ガラスであってもよく、更に好適には光ファイバ21のクラッドの屈折率より高い屈折率を有する。例えば、光ファイバ21のクラッドが純石英ガラスからなるのに対して、励起光導入部材23は、屈折率上昇材としての不純物が添加された石英ガラスからなる。また、導入後の励起光がコアの延在方向に伝搬するように励起光導入部材23が設けられているのが好ましい。励起光導入部材23は、図5〜図10に示されたような構成のものであってもよい。
【0058】
図12は、第2実施形態に係る光ファイバ構造体20の一部断面図である。この図に示されるように、光ファイバ構造体20において、クラッド210内にコア211を含む光ファイバ21が螺旋状に密に巻かれてシリンダ形状とされていて、そのシリンダ形状とされた光ファイバ21のクラッド210間がポリシラザン261により接着されており、また、シリンダ形状とされた光ファイバ21と冷却部材29との間にゲル状のフルオロシリコーン262、フッ素樹脂シート262および熱伝導シート264が順に設けられている。
【0059】
ポリシラザン261は、光ファイバ21が巻かれた状態において隣接するクラッド210間に接着剤として設けられたものである。ここでクラッド210間に接着剤として設けられるポリシラザン261は、転化していてもよいし、転化していなくてもよい。このようにクラッド210間がポリシラザン261により接続されてシリンダ形状とされた光ファイバ21と、この光ファイバ21を冷却する冷却部材29との間に、ゲル状のフルオロシリコーン262、フッ素樹脂シート262および熱伝導シート264が順に設けられている。ゲル状のフルオロシリコーン262、フッ素樹脂シート262および熱伝導シート264は、何れも熱伝導率が高い。また、フッ素樹脂シート262および熱伝導シート264は、何れも可撓性が優れている。
【0060】
このように構成される本実施形態に係る光学装置2は、第1実施形態に係る光学装置1と同様に動作し同様の効果を奏することができる。
【0061】
(第3実施形態)
【0062】
次に、本発明に係る光ファイバ構造体および光学装置の第3実施形態について説明する。図13は、第3実施形態に係る光学装置3の斜視図である。この図に示される光学装置3は、略円盤状の冷却部材39、この冷却部材39の周囲に巻かれた光ファイバ31、この光ファイバ31の一端に設けられた反射部材32、この光ファイバ31に励起光を導入する励起光導入部材33、および、励起光を出力する励起光源(不図示)を備える。これらのうち、冷却部材39,光ファイバ31,反射部材32および励起光導入部材33は、光ファイバ構造体30を構成している。光ファイバ31は、第1実施形態における光ファイバ11と同様の構成のものであり同様にして作製される。
【0063】
光ファイバ構造体30において、光ファイバ31は冷却部材38の側面に巻かれている。径方向には光ファイバ31は積層される必要は無い。この券回された光ファイバ31において、一部の領域31Aにおいては隣接クラッド間が光学的に接続されているが、その他の領域31Bにおいては個々のクラッドが互いに離間されている。領域31Aにおける隣接クラッド間は、融着や光学樹脂により光学的に接続されていてもよいが、より好適にはポリシラザンが接着剤として用いられて光学的に接続される。クラッドが互いに離間している領域31Bにおいては、石英ガラスからなるクラッドの周囲に樹脂等が被覆されている。クラッドの周囲の樹脂の屈折率はクラッドの屈折率より低く、これらは2重クラッド構造を構成しているのが好適である。
【0064】
光ファイバ31の両端面は、平坦に研磨されていてもよい。この場合、この光ファイバ構造体30は光増幅器における光増幅媒体として好適に用いられる。すなわち、一方の端面からコアに入射した被増幅光は、コアにおいて光増幅され、その光増幅された光は他方の端面から出射される。このとき、双方の端面には反射低減膜が設けられているのも好ましい。
【0065】
また、図13に示されるように、一方の端面に、光ファイバ31のコアに含有されたレーザ活性物質から放出される光を反射する反射部材32が設けられていてもよい。この場合、他方の端面と反射部材32とは光共振器を構成していて、光ファイバ構造体30はレーザ発振器における光増幅媒体として好適に用いられる。このとき、他方の端面(レーザ光が出射する面)には反射低減膜が設けられているのも好ましい。また、レーザ光が出射する端面付近には反射率10%以下のファイバブラッググレーティング(FBG)を設置し、端面自体は斜めに研磨した構成も好ましい。反射部材32として、好適には、外部ミラー、端面に貼り付けられた誘電体多層膜ミラー、光ファイバグレーティング等が用いられる。
【0066】
また、冷却部材39は、金属からなり、光ファイバ31を冷却する為のものである。この冷却部材39の内部には、循環する冷却水を流す孔が設けられているのが好ましく、また、図13に示されるように空冷の為に複数の貫通孔39Aが設けられているのも好ましい。これら複数の貫通孔39Aそれぞれは、一方向に長い矩形形状を有していて、各々の長辺が互いに平行であり、隣り合う貫通孔39Aの間が肉薄になっている。この冷却部材39は、光ファイバ31に直接に又は間接に接していて、励起光吸収により生じる光ファイバ31の熱を吸収する。また、この冷却部材39と光ファイバ31との間には低屈折率の樹脂(例えばフルオロシリコーン)が設けられているのも好ましく、このようにすることにより、樹脂とクラッドとの界面で励起光が全反射するので、冷却部材39により励起光の吸収が防止されるとともに、冷却部材39とクラッドとの間の熱伝達がよくなるので、冷却効果が増す。
【0067】
第3実施形態における励起光導入部材33,光学系および励起光源は、図3および図4に示されたような第1実施形態における励起光導入部材13,光学系14および励起光源15と同様のものであってもよい。励起光導入部材33は、励起光波長において吸収が小さい材料からなり、好適には合成石英ガラスであり、また、多成分系ガラスであってもよく、更に好適には光ファイバ31のクラッドの屈折率より高い屈折率を有する。例えば、光ファイバ31のクラッドが純石英ガラスからなるのに対して、励起光導入部材33は、屈折率上昇材としての不純物が添加された石英ガラスからなる。また、導入後の励起光がコアの延在方向に伝搬するように励起光導入部材33が設けられているのが好ましい。励起光導入部材33は、図5〜図10に示されたような構成のものであってもよい。
【0068】
なお、本実施形態では、励起光導入部材33の出射面(光ファイバ31へ導入される励起光が出射される面)は、券回された光ファイバ31において隣接クラッド間が光学的に接続されている領域31Aに接続されている。また、特に図13に示された励起光導入部材33は、図9および図10に示されたような凡そ平板形状の導入板33Aと複数の線状体33Bとを備える構成を有している。また、隣接クラッド間が光学的に接続されている領域31Aにおける光ファイバ構造体30の断面構造は、図12に示されたものと同様である。
【0069】
このように構成される本実施形態に係る光学装置3は、第1実施形態に係る光学装置1と同様に動作し同様の効果を奏することができる。加えて、本実施形態に係る光学装置3は、以下のような作用・効果を奏することができる。励起光導入部材33から励起光が導入される光ファイバ31の領域31Aでは、隣接クラッド間が光学的に接続されることで、励起光導入効率が高められる。一方、光ファイバ31の他の領域31Bでは、個々のクラッドが互いに離間されているので、放熱の点で有利である。
【0070】
また、この光学装置3は、作製が容易であり、また、光ファイバの径を細くすることができるので、光ファイバの収納がコンパクトであり、この点でも放熱に有利である。この光学装置3は、光ファイバ31における励起光伝搬損失が小さいので、励起光吸収長を長くすることができ、シングルモード化し易い。また、この光学装置3は、2重クラッドとなっている領域31Bでは、光ファイバ31は様々な取り回しが可能であることから、曲げに因る高次モード抑制が容易である。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】第1実施形態に係る光学装置1の平面図である。
【図2】第1実施形態に係る光ファイバ構造体10の一部断面図である。
【図3】励起光導入部材13,光学系14および励起光源15の平面図および側面図である。
【図4】励起光導入部材13による光ファイバ11への励起光導入を説明する側面図である。
【図5】励起光導入部材13の変形例を示す第1の側面図である。
【図6】励起光導入部材13の変形例を示す第2の側面図である。
【図7】励起光導入部材13の変形例を示す第3の側面図である。
【図8】励起光導入部材13の変形例を示す平面図である。
【図9】励起光導入部材13の変形例を示す平面図および側面図である。
【図10】励起光導入部材13の変形例を示す側面図である。
【図11】第2実施形態に係る光学装置2の斜視図である。
【図12】第2実施形態に係る光ファイバ構造体20の一部断面図である。
【図13】第3実施形態に係る光学装置3の斜視図である。
【符号の説明】
【0072】
1〜3…光学装置、10…光ファイバ構造体、11…光ファイバ、12…反射部材、13…励起光導入部材、14…光学系、15…励起光源、20…光ファイバ構造体、21…光ファイバ、22…反射部材、23…励起光導入部材、24…光学系、25…励起光源、29…冷却部材、30…光ファイバ構造体、31…光ファイバ、32…反射部材、33…励起光導入部材、39…冷却部材。
【技術分野】
【0001】
本発明は、コアがレーザ活性物質を含有する光ファイバを含む光ファイバ構造体、この光ファイバ構造体において光ファイバに励起光を導入する励起光導入部材、および、この光ファイバ構造体を含む光学装置(例えば光増幅器やレーザ発振器)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コアがレーザ活性物質を含有する光ファイバを含む光学装置として、光増幅器やレーザ発振器が挙げられる。光増幅器では、光ファイバに励起光が導入されることによりレーザ活性物質が励起され、その光ファイバに被増幅光が入力されると、その光ファイバにおいて誘導放出が生じ、被増幅光が光増幅されて光ファイバから出力される。また、レーザ発振器では、光ファイバが共振器内に配され、その光ファイバに励起光が導入されることによりレーザ活性物質が励起され、その光ファイバにおいて誘導放出が生じるとともに共振器においてレーザ発振してレーザ光が出力される。
【0003】
このような光学装置は、光増幅媒体として光ファイバを用いていることから、その光ファイバにおいて増幅または発振する光の横モードの数が少なく、出力光の品質が優れている。したがって、光増幅媒体として光ファイバを用いる光学装置は、産業用(特に機械加工用)に好適に使用され得る。
【0004】
このような光学装置において光ファイバ内に励起光を導入する方法は、光ファイバの端面から光ファイバのコア内に励起光を導入する端面導入方法と、光ファイバを巻回等して構成される光ファイバ構造体の側面から光ファイバのクラッド内に励起光を導入する側面導入方法と、に大別される。前者の端面導入方法と比較すると、後者の側面導入方法は、励起光源から出力された励起光を光ファイバ構造体に導入する際の効率が高く、また、ファイバへの励起光投入口面積を広くとれるので励起光源としてレーザダイオード(LD)単体だけでなくLDアレイやLDスタックを用いることが可能であるので、高パワーの励起光を光ファイバ構造体に導入することができ、したがって、光増幅効率やレーザ発振効率が優れ、この点でも産業用に好適に用いられ得る(例えば特許文献1や非特許文献1を参照)。
【0005】
側面導入方法においては、光ファイバ構造体の側面から光ファイバのクラッド内に励起光を導入するために励起光導入部材が用いられる。非特許文献1に記載された励起光導入部材は、凡そ平板形状のものであって、入射面に励起光を入射し、その入射した励起光を内部で導光させ、その導光させた励起光を傾斜面で全反射させ、その全反射させた励起光を出射面から出射して光ファイバ内に入射させる。
【0006】
また、側面導入方法においては、励起光源としてはレーザダイオード(LD)単体だけでなくLDアレイやLDスタックを用いることが可能である。端面導入方法と比較すると、特に側面導入方法においては、上記のような励起光導入部材を使用することとの関係で、LDアレイやLDスタックが励起光源として好適に用いられ得る。
【特許文献1】特開平10−190097号公報
【非特許文献1】平成13年度 新エネルギー・産業技術総合開発機構委託 フォトン計測・加工技術(石油生産システム高度計測・加工技術研究開発)成果報告書、「第VII章 高集光完全固体化レーザー技術:ファイバーレーザーの研究開発」、財団法人製造科学技術センター、平成14年3月
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような側面導入方法に拠る光ファイバ構造体および光学装置において、光ファイバにおける光増幅効率やレーザ発振効率の更なる向上が望まれている。光増幅効率やレーザ発振効率を向上させるには、投入された励起光が効率良くレーザ出力パワーに変換されることが必要である。そのためには、光ファイバにおけるレーザ活性物質の含有量を増やすことや、励起光源から出力された励起光が光ファイバに導入される効率を大きくすること、が考えられる。しかし、濃度消光の問題や製造上の問題があることから、レーザ活性物質の含有量の増加には限界がある。
【0008】
本発明は、上記問題点を解消する為になされたものであり、励起光源から光ファイバへの励起光導入の効率を高くすることができる励起光導入部材、ならびに、光ファイバにおける光増幅効率やレーザ発振効率を向上させることができる光ファイバ構造体および光学装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る励起光導入部材は、レーザ活性物質を含有するコアをクラッド内に含む光ファイバの側面から該光ファイバ内に励起光を導入する励起光導入部材であって、励起光を入射する入射面と、この入射面に入射して内部を導光した励起光を全反射させる傾斜面と、この傾斜面で全反射させた励起光を出射して光ファイバ内に入射させる出射面と、を有する導入板を備え、導入板の屈折率が光ファイバのクラッドの屈折率より高いことを特徴とする。
【0010】
本発明に係る励起光導入部材は、励起光を入射する入射端と、この入射端に入射して内部を導光した励起光を出射する出射端と、を各々有する複数の線状体を更に備え、複数の線状体それぞれの出射端が導入板の入射面と光学的に接続されているのが好適である。
【0011】
本発明に係る光ファイバ構造体は、レーザ活性物質を含有するコアをクラッド内に含む光ファイバと、この光ファイバの側面から該光ファイバ内に励起光を導入する上記の本発明に係る励起光導入部材と、を備えることを特徴とする。
【0012】
本発明に係る光学装置は、上記の本発明に係る光ファイバ構造体と、この光ファイバ構造体に含まれる光ファイバに導入されるべき励起光を出力する励起光源と、を備えることを特徴とする。
【0013】
本発明に係る励起光導入部材では、光ファイバ内に励起光を入射させる導入板の屈折率が光ファイバのクラッドの屈折率より高いことから、光ファイバへの励起光導入の効率を高くすることができる。本発明に係る励起光導入部材が導入板に加えて複数の線状体を備える場合には、複数の線状体それぞれの入射端に励起光源を光学的に接続することにより、光ファイバへ導入する励起光のパワーを大きくすることができる。また、本発明に係る光ファイバ構造体および光学装置は、光ファイバにおける光増幅効率やレーザ発振効率を向上させることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る励起光導入部材は、励起光源から光ファイバへの励起光導入の効率を高くすることができる。また、この励起光導入部材を用いた光ファイバ構造体および光学装置は、光ファイバにおける光増幅効率やレーザ発振効率を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための最良の形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0016】
(第1実施形態)
【0017】
先ず、本発明に係る励起光導入部材の実施形態について説明するとともに、この励起光導入部材を用いた光ファイバ構造体および光学装置の第1実施形態について説明する。図1は、第1実施形態に係る光学装置1の平面図である。この図に示される光学装置1は、渦巻状に密に巻かれていてディスク形状とされた光ファイバ11、この光ファイバ11の一端に設けられた反射部材12、この光ファイバ11に励起光を導入する励起光導入部材13、この励起光導入部材13へ励起光を入射させる光学系14、および、励起光を出力する励起光源15を備える。これらのうち、光ファイバ11,反射部材12および励起光導入部材13は、光ファイバ構造体10を構成している。
【0018】
光ファイバ11の断面形状は略正方形であり、当該クラッド内にあるコアの断面形状は円形である。そのコアは、所定波長の励起光を吸収して他の波長の光を放出することができるレーザ活性物質を含有する。具体的には、光ファイバ11は石英ガラスを主成分とするものである。また、コアに含有されるレーザ活性物質として、Yb,Er,Nd,Tm,Ho,Pr,Ce等のランタノイド元素の三価イオンの何れか一種もしくは組み合わせ、または、Cr,Ti等の或る種の遷移金属元素のイオン、が例示される。
【0019】
このような光ファイバ11は以下のようにして製造される。通常の光ファイバ母材を製造する方法と同様の方法(例えばMCVD法等)により円形断面の母材を製造し、この円形断面の母材の側面を研削・研磨して矩形断面の母材とする。そして、この光ファイバ母材を線引することで、光ファイバ11を得ることができる。この線引の際の諸条件を適切に設定することにより、線引により得られる光ファイバ11の断面形状は略矩形のままとなる。
【0020】
光ファイバ構造体10において、光ファイバ11は渦巻状に密に巻かれていてディスク形状とされている。この券回に際して、光ファイバ11の少なくとも一部は、径方向に積層されてディスク形状とされている。なお、このディスク面に垂直な方向には光ファイバ11は積層される必要は無い。この巻かれた状態において隣接するクラッド間は、融着や光学樹脂により光学的に接続されていてもよいが、より好適にはポリシラザンが接着剤として用いられて光学的に接続される。
【0021】
光ファイバ11の両端面は、平坦(斜めを含む)または球面に研磨されていてもよい。この場合、この光ファイバ構造体10は光増幅器における光増幅媒体として好適に用いられる。すなわち、一方の端面からコアに入射した被増幅光は、コアにおいて光増幅され、その光増幅された光は他方の端面から出射される。このとき、双方の端面には反射低減膜が設けられているのも好ましい。
【0022】
また、図1に示されるように、一方の端面に、光ファイバ11のコアに含有されたレーザ活性物質から放出される光を反射する反射部材12が設けられていてもよい。この場合、他方の端面と反射部材12とは光共振器を構成していて、光ファイバ構造体10はレーザ発振器における光増幅媒体として好適に用いられる。このとき、他方の端面(レーザ光が出射する面)には反射低減膜が設けられているのも好ましい。また、レーザ光が出射する端面付近には反射率10%以下のファイバブラッググレーティング(FBG)を設置し、端面自体は斜めに研磨した構成も好ましい。反射部材12として、好適には、外部ミラー、端面に貼り付けられた誘電体多層膜ミラー、光ファイバグレーティング等が用いられる。
【0023】
また、光ファイバ11を冷却する為のディスク形状の金属板(不図示)が設けられている。この金属板は、ディスク形状に巻かれた光ファイバ11に直接に又は間接に接していて、励起光吸収により生じる光ファイバ11の熱を吸収する。また、この金属板と光ファイバ11との間に低屈折率の樹脂(例えばゲル状のフルオロシリコーン)が設けられているのも好ましく、このようにすることにより、樹脂とクラッドとの界面で励起光が全反射するので、金属板による励起光の吸収が防止されるとともに、金属板とクラッドとの間の熱伝達がよくなるので、冷却効果が増す。
【0024】
励起光源15は、光ファイバ構造体10に含まれる光ファイバ11に導入されるべき励起光を出力するものであり、例えばLDであり、好適には、複数のLDのエミッタが一次元配列されたLDアレイや、複数のLDアレイが積層されたLDスタックである。励起光の波長としては、光ファイバ11のコアに含有されたレーザ活性物質を励起し得る波長が選ばれる。光学系14は、励起光源15から出力された励起光をコリメートし更に収斂して、その収斂した励起光を励起光導入部材13の一端面131に入射させる。
【0025】
励起光導入部材13は、励起光源15から出力され光学系14を経て一端面131に入力した励起光を、光ファイバ11のうち積層された部分において光ファイバ11内に導入する。励起光導入部材13は、励起光波長において吸収が小さい材料からなり、好適には合成石英ガラスであり、また、多成分系ガラスであってもよく、更に好適には光ファイバ11のクラッドの屈折率より高い屈折率を有する。例えば、光ファイバ11のクラッド110が純石英ガラスからなるのに対して、励起光導入部材13は、屈折率上昇材としての不純物が添加された石英ガラスからなる。また、導入後の励起光がコアの延在方向に伝搬するように励起光導入部材13が設けられているのが好ましい。
【0026】
図2は、第1実施形態に係る光ファイバ構造体10の一部断面図である。この図に示されるように、光ファイバ構造体10において、クラッド110内にコア111を含む光ファイバ11が渦巻状に密に巻かれてディスク形状とされていて、そのディスク形状とされた光ファイバ11のクラッド110間がポリシラザン161により接着されており、また、ディスク形状とされた光ファイバ11の上下に、ゲル状のフルオロシリコーン162A,162B、フッ素樹脂シート163A,163B、熱伝導シート164A,164B、および、金属板165A,165Bが順に設けられている。
【0027】
ポリシラザン161は、光ファイバ11が巻かれた状態において隣接するクラッド110間に接着剤として設けられたものである。このポリシラザンは、分子式が (SiH2NH)n で表される透明材料であって、空気中の水分で加水分解されてSiO2 へ転化する。ただし、ここでクラッド110間に接着剤として設けられるポリシラザン161は、転化していてもよいし、転化していなくてもよい。ポリシラザンをキシレンやミネラルスピリッツ等の溶剤に溶融したものを当該ディスク面上に滴下すると、毛細管現象によりクラッド110間に侵入し溶剤が蒸散して、ポリシラザンがクラッド110間の接着剤として作用する。
【0028】
ポリシラザンは、炭素元素を含まないので、C-H伸縮振動に伴う波長900nm台の吸収が無い。一方、光ファイバ11のコア111に添加されるYb3+を励起しる励起光の波長は910nm〜980nmである。したがって、ポリシラザンは励起光を吸収することは無い。この点で、ポリシラザンは、従来の光学樹脂と比べて優れている。また、ポリシラザンは、従来の光学樹脂と比べて耐熱性が高い。さらに、ポリシラザンは、融着接続する場合と比較してクラッド110間を容易に接続することが可能であり、歩留まりが高い。
【0029】
このようにクラッド110間がポリシラザン161により接続されてディスク形状とされた光ファイバ11と、この光ファイバ11を冷却する冷却部材としての金属板165A,165Bとの間に、ゲル状のフルオロシリコーン162A,162B、フッ素樹脂シート163A,163B、および、熱伝導シート164A,164Bが順に設けられている。フッ素樹脂シート163A,163B、および、熱伝導シート164A,164Bは、何れも熱伝導率が高く、可撓性が優れている。フッ素樹脂シート163A,163Bの屈折率は、光ファイバ11のクラッド110の屈折率より低い。
【0030】
ゲル状のフルオロシリコーンは、非常に安定な物質であり、耐久性に優れ、透明性にも優れている。ゲル状のフルオロシリコーンは、水素元素を含まないので、C-H伸縮振動に伴う波長900nm台の吸収が無く、したがって、励起光を吸収することは無い。ゲル状のフルオロシリコーンは、クラッド110を構成する石英ガラスの屈折率より低い屈折率を有しており、クラッド110との界面において励起光を全反射させることができる。なお、仮にクラッド110が金属板165A,165Bに直接に接していれば、励起光が金属板165A,165Bにより吸収されるので励起効率が低下するが、クラッド110がゲル状のフルオロシリコーン(またはフッ素樹脂シート163A,163B)に接していることにより励起効率が優れる。
【0031】
ゲル状のフルオロシリコーンは、熱伝導率が高いので、金属板165A,165Bにより光ファイバ11を伝熱冷却する上でも好都合である。また、クラッド110間がポリシラザン161により接続されてディスク形状とされた光ファイバ11の当該ディスク面には光ファイバ11の径の周期で凹凸が存在するが、その場合であっても、光ファイバ11のディスク面とフッ素樹脂シート163A,163Bとの間にゲル状のフルオロシリコーンが充填されることで、伝熱冷却の効果を高めることができる。なお、金属板165A,165B間の圧力によっては、クラッド110がフッ素樹脂シート163A,163Bに直接に接する部分が生じ得るが、その場合であっても、上記の効果の低減は僅かである。
【0032】
図3は、励起光導入部材13,光学系14および励起光源15の平面図および側面図であり、同図(a)は平面図であり、同図(b)は側面図である。この図では、励起光源15は2個のLDアレイが積層されたLDスタックであるとしている。光学系14は、第1コリメータ141,第2コリメータ142および集光レンズ143を含む。第1コリメータ141は、励起光源15としてのLDスタックの各エミッタから出力された励起光を入力し、その励起光をファスト軸に関して平行化する。第2コリメータ142は、第1コリメータ141から出力された励起光を入力し、その励起光をスロー軸に関して平行化する。そして、集光レンズ143は、第1コリメータ141および第2コリメータ142により平行光とされた励起光を入力し、その励起光を収斂して、その収斂した励起光を励起光導入部材13の入射面131に入射させる。
【0033】
図4は、励起光導入部材13による光ファイバ11への励起光導入を説明する側面図である。励起光導入部材13は、光学系14から一端の入射面131に入力した励起光を、上下面で全反射させながら内部を導光させ、その導光した励起光を他端側から光ファイバ11内に導入する。励起光導入部材13の上面および下面は互いに平行な平面であり、励起光導入部材13の他端側(光ファイバ11内に励起光を導入する側)においては、下面に対して傾斜した傾斜面132が設けられている。この傾斜面132の下方の下面(出射面)133は、光ファイバ11の側面に対して光学的に接続されている。この傾斜面132は、下面に対して数度〜十数度の角度をなし、光学研磨またはそれに相当する滑らかな面を有しており、励起光導入部材13の内部を導光してきた励起光を全反射させる。そして、出射面133は、傾斜面132で全反射させた励起光を出射して光ファイバ11内に入射させる。
【0034】
ここで、図中において点線で示すように進む励起光について考える。励起光導入部材13中において励起光が出射面133に対して角度θ0で進むものとする。出射面133と傾斜面132とがなす角度をθ1とする。光ファイバ11中において励起光が光軸に対して角度θ2で進むものとする。励起光導入部材13の屈折率をnfとし、光ファイバ11のクラッド110の屈折率をncladとする。また、励起光導入部材13の厚みをDfとし、光ファイバ11のクラッド110の径をDcとする。このとき、これらのパラメータの間には下記(1)式の関係が成り立つ。
【数1】
【0035】
励起光導入部材13の傾斜面132で反射されて出射面133から光ファイバ11内に導入された励起光は、ディスク形状とされた光ファイバ11の下面で反射され、次いで上面(励起光導入部材13が設けられている側)で反射される。励起光導入部材13の傾斜面132の始点(入射面131に最も近い位置)と、その始点で反射された励起光がディスク形状の光ファイバ11の上面に最初に到達する位置との間の距離Xrefは、下記(2)式で表される。
【数2】
【0036】
また、励起光導入部材13の傾斜面132の始点と終点(入射面131から最も遠い位置)との間の距離Ledgeは、下記(3)式で表される。なお、距離Xrefおよび距離Ledgeそれぞれは、光ファイバ11の光軸に沿った方向についての距離である。
【数3】
【0037】
仮に、励起光導入部材13から光ファイバ11に導入された励起光が再び励起光導入部材13に戻ると、励起光導入効率が低減する。このように励起光導入部材13に励起光が戻ることを防止するため、距離Xrefと距離Ledgeとの間に下記(4)式の関係が成り立つことが必要である。
【数4】
【0038】
このように構成される光学装置1は以下のように動作する。励起光源15から出力された励起光は、光学系14により集光されて励起光導入部材13の入射面131に入射され、励起光導入部材13の内部で導光され、励起光導入部材13の傾斜面132で全反射される。傾斜面132で全反射された励起光は、励起光導入部材13の出射面133と光ファイバ11の側面とが光学的に接続された部分を経て、光ファイバ11内に導入される。光ファイバ11内に導入された励起光は、クラッド110の外側界面で全反射されながら光ファイバ11内を導波する間に、コア111に含まれるレーザ活性物質を励起する。
【0039】
光学装置1が反射部材12を含まず光増幅器として動作する場合、コア111の一端に被増幅光が入力すると、その入力した被増幅光はコア111を導波する間に光増幅され、その光増幅された光は他端から出力される。一方、光学装置1が反射部材12を含みレーザ発振器として動作する場合、励起されたレーザ活性物質で誘導放出が生じるとともに共振器においてレーザ発振してレーザ光が出力される。
【0040】
特に、本実施形態では、励起光導入部材13の屈折率nfが光ファイバ11のクラッド110の屈折率ncladより高いことを特徴としている。励起光導入部材13中において励起光が出射面133に対してなす角度θ0は、上記(4)式が成り立つ範囲で許容される。すなわち、励起光導入部材13の屈折率nfが光ファイバ11のクラッド110の屈折率ncladより高いと、角度θ0の許容範囲が広くなる。
【0041】
したがって、励起光導入部材13は、励起光源15から光ファイバ11への励起光導入の効率を高くすることができる。また、この励起光導入部材13を用いた光ファイバ構造体10および光学装置1は、光ファイバ11における光増幅効率やレーザ発振効率を向上させることができる。また、励起光導入部材13,光学系14および励起光源15の間の位置調整について高精度であることが要求されず、また、これら個々の部品についても高精度であることが要求されないので、光ファイバ構造体10または光学装置1を安価かつ容易に製造することができる。
【0042】
また、一般に、石英ガラスは、不純物が添加されると、融点が低くなる。すなわち、屈折率nfが高い励起光導入部材13の融点は、クラッド110の融点より低い。したがって、励起光導入部材13の出射面133をディスク形状の光ファイバ11の上面に融着接続する際に、励起光導入部材13のみを軟化させて融着することが可能である。
【0043】
次に、励起光導入部材13の種々の変形例について説明する。図5は、励起光導入部材13の変形例を示す第1の側面図である。励起光導入部材13の傾斜面132で反射された励起光が通過する範囲において、出射面133と光ファイバ11のクラッド110とが光学的に接続されていればよい。このとき、同図(a)に示されるように、励起光導入部材13の下面とクラッド110とが重なる範囲の全体が光学的に接続されていてもよい。しかし、同図(b)に示されるように、励起光導入部材13の傾斜面132で反射された励起光が通過する範囲において、出射面133とクラッド110とが光学的に接続されている一方で、励起光が通過しない範囲においては、励起光を遮断する膜134が出射面133とクラッド110との間に設けられているのが好適である。このように励起光遮断膜134が設けられていることにより、或る励起光導入部材から光ファイバ11に導入された励起光が他の励起光導入部材を経て放射されることを抑制することが可能となって、励起効率を向上させることができる。
【0044】
図6は、励起光導入部材13の変形例を示す第2の側面図である。同図(a)に示されるように、励起光導入部材13の傾斜面132は、平面であって、先端が下面まで達していてもよい。しかし、先端が鋭く尖ったものを製作することは現実には困難であるので、同図(b)に示されるように、励起光導入部材13の傾斜面132は、先端が鋭く尖っておらず、光ファイバ11との接続に用いた光学樹脂135が先端部分に存在していてもよい。また、励起光導入部材13の傾斜面132は、同図(c)に示されるように凸面であってもよいし、同図(d)に示されるように凹面であってもよく、これらの場合には、反射する励起光に対してレンズ作用を奏することができる。
【0045】
図7は、励起光導入部材13の変形例を示す第3の側面図である。同図(a)に示されるように、励起光導入部材13の入射面131は、平面であって、下面に対して垂直であってもよい。しかし、同図(b)に示されるように、励起光導入部材13の入射面131は、平面であって、下面に対して垂直でないのが好適である。この場合には、入射面131で反射した励起光が励起光源15に戻ることが抑制されて、安定した励起光出力を得ることができる。また、同図(b)に示されるように、励起光導入部材13の入射面131は、凸面であって、レンズ作用を奏するのも好適である。
【0046】
図8は、励起光導入部材13の変形例を示す平面図である。励起光導入部材13は、同図(a)に示されるように幅が一定であってもよいし、同図(b)に示されるように入射面131から傾斜面132に向かうに従って幅が狭くなっていてもよい。後者の場合には、後に図9に示されるように多数の線状体を入射面131に光学的に接続することができ、高パワーの励起光を高密度で光ファイバ11に導入することができる。
【0047】
図9は、励起光導入部材13の変形例を示す平面図および側面図である。これまでに説明してきた励起光導入部材は、入射面131,傾斜面132および出射面133を有する凡そ平板形状の導入板13Aからなるものであった。しかし、同図に示される励起光導入部材13は、凡そ平板形状の導入板13Aに加えて、複数(図では5本)の線状体13Bを更に備えている。なお、この場合には光学系14は無くてもよい。
【0048】
各線状体13Bは可撓性を有するのが好適である。各線状体13Bは、励起光源から出力された励起光を入射する入射端136と、この入射端136に入射して内部を導光した励起光を出射する出射端137と、を有する。各線状体13Bの出射端137は、導入板13Aの入射面131と光学的に接続されている。各線状体13Bは、屈折率が一様のものであってもよいし、クラッド内にコアを有する光ファイバであってもよい。また、後者の場合には、各線状体13Bは、光ファイバアレイを構成する個々の光ファイバであってもよいし、励起光源15としてのLDに付属しているピグテイル光ファイバであってもよい。
【0049】
このように励起光導入部材13が導入板13Aおよび複数の線状体13Bを備える場合には、光ファイバ11に導入する励起光のパワーを大きくすることができるだけでなく、以下のような効果もある。すなわち、アレイ配置された複数の線状体13Bと導入板13Aとの接続は、光通信分野で実績がある融着接続により容易に可能である。また、図10に側面図が示されるように、樹脂138A,138Bを介して金属板139A,139Bにより励起光導入部材13を挟むことにより、効率が高い冷却を行うことができ、また、機械的に強固にすることも容易である。また、作製が容易であって、精密な位置調整やあおり調整が可能であるので、複数の線状体13Bから導入板13Aで合流された励起光のビーム品質の劣化が小さい。
【0050】
各線状体13Bが可撓性を有していれば、線状体13Bの入射端136に接続される励起光源としてのLDの配置を任意とすることができ、励起光源としてチップLDを用いることができるので、LDの冷却を空冷で行うこともできる。個々の線状体13Bについては、径を小さくすることができるので、放熱の点でも好ましい。LDの配置を任意とすることができることから、ボード上にLDを集約することもできるし、劣化LDの交換も容易となる。アライメントずれが生じ難い。また、ディスク形状の光ファイバ構造体10を薄くしても、励起光の集積度を上げて高出力化が可能であり、ビーム品質の向上も容易である。
【0051】
(第2実施形態)
【0052】
次に、本発明に係る光ファイバ構造体および光学装置の第2実施形態について説明する。図11は、第2実施形態に係る光学装置2の斜視図である。この図に示される光学装置2は、円柱状の冷却部材29、この冷却部材29の周囲に螺旋状に密に巻かれてシリンダ形状とされた光ファイバ21、この光ファイバ21の一端に設けられた反射部材22、この光ファイバ21に励起光を導入する励起光導入部材23、この励起光導入部材23へ励起光を入射させる光学系24、および、励起光を出力する励起光源25を備える。これらのうち、冷却部材29,光ファイバ21,反射部材22および励起光導入部材23は、光ファイバ構造体20を構成している。光ファイバ21は、第1実施形態における光ファイバ11と同様の構成のものであり同様にして作製される。
【0053】
光ファイバ構造体20において、光ファイバ21は螺旋状に密に巻かれていてシリンダ形状とされている。この券回に際して、光ファイバ21の少なくとも一部は、径方向に積層されてシリンダ形状とされている。なお、このシリンダ形状の径方向には光ファイバ21は積層される必要は無い。この巻かれた状態において隣接するクラッド間は、融着や光学樹脂により光学的に接続されていてもよいが、より好適にはポリシラザンが接着剤として用いられて光学的に接続される。
【0054】
光ファイバ21の両端面は、平坦に研磨されていてもよい。この場合、この光ファイバ構造体20は光増幅器における光増幅媒体として好適に用いられる。すなわち、一方の端面からコアに入射した被増幅光は、コアにおいて光増幅され、その光増幅された光は他方の端面から出射される。このとき、双方の端面には反射低減膜が設けられているのも好ましい。また、レーザ光が出射する端面付近には反射率10%以下のファイバブラッググレーティング(FBG)を設置し、端面自体は斜めに研磨した構成も好ましい。
【0055】
また、図11に示されるように、一方の端面に、光ファイバ21のコアに含有されたレーザ活性物質から放出される光を反射する反射部材22が設けられていてもよい。この場合、他方の端面と反射部材22とは光共振器を構成していて、光ファイバ構造体20はレーザ発振器における光増幅媒体として好適に用いられる。このとき、他方の端面(レーザ光が出射する面)には反射低減膜が設けられているのも好ましい。反射部材22として、好適には、外部ミラー、端面に貼り付けられた誘電体多層膜ミラー、光ファイバグレーティング等が用いられる。
【0056】
また、冷却部材29は、金属からなり、光ファイバ21を冷却する為のものである。この冷却部材29の内部には、循環する冷却水を流す孔が設けられているのが好ましい。この冷却部材29は、シリンダ形状に巻かれた光ファイバ21に直接に又は間接に接していて、励起光吸収により生じる光ファイバ21の熱を吸収する。また、この冷却部材29と光ファイバ21との間には低屈折率の樹脂(例えばフルオロシリコーン)が設けられているのも好ましく、このようにすることにより、樹脂とクラッドとの界面で励起光が全反射するので、冷却部材29により励起光の吸収が防止されるとともに、冷却部材29とクラッドとの間の熱伝達がよくなるので、冷却効果が増す。
【0057】
第2実施形態における励起光導入部材23,光学系24および励起光源25は、図3および図4に示されたような第1実施形態における励起光導入部材13,光学系14および励起光源15と同様のものである。励起光導入部材23は、励起光波長において吸収が小さい材料からなり、好適には合成石英ガラスであり、また、多成分系ガラスであってもよく、更に好適には光ファイバ21のクラッドの屈折率より高い屈折率を有する。例えば、光ファイバ21のクラッドが純石英ガラスからなるのに対して、励起光導入部材23は、屈折率上昇材としての不純物が添加された石英ガラスからなる。また、導入後の励起光がコアの延在方向に伝搬するように励起光導入部材23が設けられているのが好ましい。励起光導入部材23は、図5〜図10に示されたような構成のものであってもよい。
【0058】
図12は、第2実施形態に係る光ファイバ構造体20の一部断面図である。この図に示されるように、光ファイバ構造体20において、クラッド210内にコア211を含む光ファイバ21が螺旋状に密に巻かれてシリンダ形状とされていて、そのシリンダ形状とされた光ファイバ21のクラッド210間がポリシラザン261により接着されており、また、シリンダ形状とされた光ファイバ21と冷却部材29との間にゲル状のフルオロシリコーン262、フッ素樹脂シート262および熱伝導シート264が順に設けられている。
【0059】
ポリシラザン261は、光ファイバ21が巻かれた状態において隣接するクラッド210間に接着剤として設けられたものである。ここでクラッド210間に接着剤として設けられるポリシラザン261は、転化していてもよいし、転化していなくてもよい。このようにクラッド210間がポリシラザン261により接続されてシリンダ形状とされた光ファイバ21と、この光ファイバ21を冷却する冷却部材29との間に、ゲル状のフルオロシリコーン262、フッ素樹脂シート262および熱伝導シート264が順に設けられている。ゲル状のフルオロシリコーン262、フッ素樹脂シート262および熱伝導シート264は、何れも熱伝導率が高い。また、フッ素樹脂シート262および熱伝導シート264は、何れも可撓性が優れている。
【0060】
このように構成される本実施形態に係る光学装置2は、第1実施形態に係る光学装置1と同様に動作し同様の効果を奏することができる。
【0061】
(第3実施形態)
【0062】
次に、本発明に係る光ファイバ構造体および光学装置の第3実施形態について説明する。図13は、第3実施形態に係る光学装置3の斜視図である。この図に示される光学装置3は、略円盤状の冷却部材39、この冷却部材39の周囲に巻かれた光ファイバ31、この光ファイバ31の一端に設けられた反射部材32、この光ファイバ31に励起光を導入する励起光導入部材33、および、励起光を出力する励起光源(不図示)を備える。これらのうち、冷却部材39,光ファイバ31,反射部材32および励起光導入部材33は、光ファイバ構造体30を構成している。光ファイバ31は、第1実施形態における光ファイバ11と同様の構成のものであり同様にして作製される。
【0063】
光ファイバ構造体30において、光ファイバ31は冷却部材38の側面に巻かれている。径方向には光ファイバ31は積層される必要は無い。この券回された光ファイバ31において、一部の領域31Aにおいては隣接クラッド間が光学的に接続されているが、その他の領域31Bにおいては個々のクラッドが互いに離間されている。領域31Aにおける隣接クラッド間は、融着や光学樹脂により光学的に接続されていてもよいが、より好適にはポリシラザンが接着剤として用いられて光学的に接続される。クラッドが互いに離間している領域31Bにおいては、石英ガラスからなるクラッドの周囲に樹脂等が被覆されている。クラッドの周囲の樹脂の屈折率はクラッドの屈折率より低く、これらは2重クラッド構造を構成しているのが好適である。
【0064】
光ファイバ31の両端面は、平坦に研磨されていてもよい。この場合、この光ファイバ構造体30は光増幅器における光増幅媒体として好適に用いられる。すなわち、一方の端面からコアに入射した被増幅光は、コアにおいて光増幅され、その光増幅された光は他方の端面から出射される。このとき、双方の端面には反射低減膜が設けられているのも好ましい。
【0065】
また、図13に示されるように、一方の端面に、光ファイバ31のコアに含有されたレーザ活性物質から放出される光を反射する反射部材32が設けられていてもよい。この場合、他方の端面と反射部材32とは光共振器を構成していて、光ファイバ構造体30はレーザ発振器における光増幅媒体として好適に用いられる。このとき、他方の端面(レーザ光が出射する面)には反射低減膜が設けられているのも好ましい。また、レーザ光が出射する端面付近には反射率10%以下のファイバブラッググレーティング(FBG)を設置し、端面自体は斜めに研磨した構成も好ましい。反射部材32として、好適には、外部ミラー、端面に貼り付けられた誘電体多層膜ミラー、光ファイバグレーティング等が用いられる。
【0066】
また、冷却部材39は、金属からなり、光ファイバ31を冷却する為のものである。この冷却部材39の内部には、循環する冷却水を流す孔が設けられているのが好ましく、また、図13に示されるように空冷の為に複数の貫通孔39Aが設けられているのも好ましい。これら複数の貫通孔39Aそれぞれは、一方向に長い矩形形状を有していて、各々の長辺が互いに平行であり、隣り合う貫通孔39Aの間が肉薄になっている。この冷却部材39は、光ファイバ31に直接に又は間接に接していて、励起光吸収により生じる光ファイバ31の熱を吸収する。また、この冷却部材39と光ファイバ31との間には低屈折率の樹脂(例えばフルオロシリコーン)が設けられているのも好ましく、このようにすることにより、樹脂とクラッドとの界面で励起光が全反射するので、冷却部材39により励起光の吸収が防止されるとともに、冷却部材39とクラッドとの間の熱伝達がよくなるので、冷却効果が増す。
【0067】
第3実施形態における励起光導入部材33,光学系および励起光源は、図3および図4に示されたような第1実施形態における励起光導入部材13,光学系14および励起光源15と同様のものであってもよい。励起光導入部材33は、励起光波長において吸収が小さい材料からなり、好適には合成石英ガラスであり、また、多成分系ガラスであってもよく、更に好適には光ファイバ31のクラッドの屈折率より高い屈折率を有する。例えば、光ファイバ31のクラッドが純石英ガラスからなるのに対して、励起光導入部材33は、屈折率上昇材としての不純物が添加された石英ガラスからなる。また、導入後の励起光がコアの延在方向に伝搬するように励起光導入部材33が設けられているのが好ましい。励起光導入部材33は、図5〜図10に示されたような構成のものであってもよい。
【0068】
なお、本実施形態では、励起光導入部材33の出射面(光ファイバ31へ導入される励起光が出射される面)は、券回された光ファイバ31において隣接クラッド間が光学的に接続されている領域31Aに接続されている。また、特に図13に示された励起光導入部材33は、図9および図10に示されたような凡そ平板形状の導入板33Aと複数の線状体33Bとを備える構成を有している。また、隣接クラッド間が光学的に接続されている領域31Aにおける光ファイバ構造体30の断面構造は、図12に示されたものと同様である。
【0069】
このように構成される本実施形態に係る光学装置3は、第1実施形態に係る光学装置1と同様に動作し同様の効果を奏することができる。加えて、本実施形態に係る光学装置3は、以下のような作用・効果を奏することができる。励起光導入部材33から励起光が導入される光ファイバ31の領域31Aでは、隣接クラッド間が光学的に接続されることで、励起光導入効率が高められる。一方、光ファイバ31の他の領域31Bでは、個々のクラッドが互いに離間されているので、放熱の点で有利である。
【0070】
また、この光学装置3は、作製が容易であり、また、光ファイバの径を細くすることができるので、光ファイバの収納がコンパクトであり、この点でも放熱に有利である。この光学装置3は、光ファイバ31における励起光伝搬損失が小さいので、励起光吸収長を長くすることができ、シングルモード化し易い。また、この光学装置3は、2重クラッドとなっている領域31Bでは、光ファイバ31は様々な取り回しが可能であることから、曲げに因る高次モード抑制が容易である。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】第1実施形態に係る光学装置1の平面図である。
【図2】第1実施形態に係る光ファイバ構造体10の一部断面図である。
【図3】励起光導入部材13,光学系14および励起光源15の平面図および側面図である。
【図4】励起光導入部材13による光ファイバ11への励起光導入を説明する側面図である。
【図5】励起光導入部材13の変形例を示す第1の側面図である。
【図6】励起光導入部材13の変形例を示す第2の側面図である。
【図7】励起光導入部材13の変形例を示す第3の側面図である。
【図8】励起光導入部材13の変形例を示す平面図である。
【図9】励起光導入部材13の変形例を示す平面図および側面図である。
【図10】励起光導入部材13の変形例を示す側面図である。
【図11】第2実施形態に係る光学装置2の斜視図である。
【図12】第2実施形態に係る光ファイバ構造体20の一部断面図である。
【図13】第3実施形態に係る光学装置3の斜視図である。
【符号の説明】
【0072】
1〜3…光学装置、10…光ファイバ構造体、11…光ファイバ、12…反射部材、13…励起光導入部材、14…光学系、15…励起光源、20…光ファイバ構造体、21…光ファイバ、22…反射部材、23…励起光導入部材、24…光学系、25…励起光源、29…冷却部材、30…光ファイバ構造体、31…光ファイバ、32…反射部材、33…励起光導入部材、39…冷却部材。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ活性物質を含有するコアをクラッド内に含む光ファイバの側面から該光ファイバ内に励起光を導入する励起光導入部材であって、
励起光を入射する入射面と、この入射面に入射して内部を導光した励起光を全反射させる傾斜面と、この傾斜面で全反射させた励起光を出射して前記光ファイバ内に入射させる出射面と、を有する導入板を備え、
前記導入板の屈折率が前記光ファイバのクラッドの屈折率より高い、
ことを特徴とする励起光導入部材。
【請求項2】
励起光を入射する入射端と、この入射端に入射して内部を導光した励起光を出射する出射端と、を各々有する複数の線状体を更に備え、
前記複数の線状体それぞれの出射端が前記導入板の入射面と光学的に接続されている、
ことを特徴とする請求項1記載の励起光導入部材。
【請求項3】
レーザ活性物質を含有するコアをクラッド内に含む光ファイバと、この光ファイバの側面から該光ファイバ内に励起光を導入する請求項1または2に記載の励起光導入部材と、を備えることを特徴とする光ファイバ構造体。
【請求項4】
請求項3記載の光ファイバ構造体と、この光ファイバ構造体に含まれる光ファイバに導入されるべき励起光を出力する励起光源と、を備えることを特徴とする光学装置。
【請求項1】
レーザ活性物質を含有するコアをクラッド内に含む光ファイバの側面から該光ファイバ内に励起光を導入する励起光導入部材であって、
励起光を入射する入射面と、この入射面に入射して内部を導光した励起光を全反射させる傾斜面と、この傾斜面で全反射させた励起光を出射して前記光ファイバ内に入射させる出射面と、を有する導入板を備え、
前記導入板の屈折率が前記光ファイバのクラッドの屈折率より高い、
ことを特徴とする励起光導入部材。
【請求項2】
励起光を入射する入射端と、この入射端に入射して内部を導光した励起光を出射する出射端と、を各々有する複数の線状体を更に備え、
前記複数の線状体それぞれの出射端が前記導入板の入射面と光学的に接続されている、
ことを特徴とする請求項1記載の励起光導入部材。
【請求項3】
レーザ活性物質を含有するコアをクラッド内に含む光ファイバと、この光ファイバの側面から該光ファイバ内に励起光を導入する請求項1または2に記載の励起光導入部材と、を備えることを特徴とする光ファイバ構造体。
【請求項4】
請求項3記載の光ファイバ構造体と、この光ファイバ構造体に含まれる光ファイバに導入されるべき励起光を出力する励起光源と、を備えることを特徴とする光学装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2007−158012(P2007−158012A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−350983(P2005−350983)
【出願日】平成17年12月5日(2005.12.5)
【出願人】(000236436)浜松ホトニクス株式会社 (1,479)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年12月5日(2005.12.5)
【出願人】(000236436)浜松ホトニクス株式会社 (1,479)
【Fターム(参考)】
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