説明

動力伝達装置

【課題】 車体に固定される主管を基準として組み立てられ、入力される双方向の回転力を一方向の回転力として出力可能な伝動装置を提供する。
【解決手段】 車体に固定される主管11の軸方向に形成されている貫通孔13には、駆動軸12が挿通される。主管11に隣り合う補助管61の軸方向に形成されている貫通孔63には、従動軸62が挿通される。駆動軸12および従動軸62の一方の端部にはスプロケット42、92が設けられる。スプロケット42は、一方向クラッチ4を介して駆動軸12に接続する。スプロケット42とスプロケット92とはチェーン5を介して同じ方向に回転する。駆動軸12の他方の端部には駆動側歯車41が設けられる。また、従動軸62の他方の端部には駆動側歯車41と係合する従動側歯車91が設けられる。駆動側歯車41は、一方向クラッチ3を介して駆動軸12に接続しており、一方向の回転力を出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は動力伝達装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、駆動軸に入力される双方向の回転力を一方向の回転力として出力する動力伝達装置が知られている。特許文献1には、双方向の回転力を入力した場合、一方向の回転力が出力されるクラッチ式逆送可能な二方向入力/一方向出力する動力伝達装置を備える自転車が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−168268号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の自転車の動力伝達装置は、自転車に一体となって設けられているため、組み付けに工数がかかり、また保守点検作業が困難となる。
【0005】
本発明の目的は、車体に固定される主管を基準として組み立てられ、入力される双方向の回転力を一方向の回転力として出力可能な伝動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の動力伝達装置は、車体に固定される主管11および補助管61を備える。主管11の軸方向に形成されている貫通孔13には、軸受21、22に回転可能に支持されている駆動軸12が挿通される。補助管61の軸方向に形成されている貫通孔63には、軸受71、72に回転可能に支持されている従動軸62が挿通される。主管11および補助管61は、固定リング31、32、81、82によってそれぞれアーム1およびアーム2の間に挟持されている。また、駆動軸12および従動軸62の一方の端部にはスプロケット42、92が設けられる。スプロケット42は、一方向クラッチ4を介して駆動軸12に接続する。スプロケット42とスプロケット92とはチェーン5を介して同じ方向に回転する。駆動軸12の他方の端部には駆動側歯車41が設けられる。また、従動軸62の他方の端部には駆動側歯車41と係合する従動側歯車91が設けられる。駆動側歯車41は、一方向クラッチ3を介して駆動軸12に接続しており、一方向の回転力を外部に出力する。
【0007】
本発明の動力伝達装置は、車体に固定される主管11を車体に対して位置を変更しない基準として構成されている。これにより、従来、車体と一体となって設けられていた入力される双方向の回転力を一方向の回転力として出力する動力伝達装置車体を車体から取り外すことができるようになるため、車体への取付が容易となり、また保守点検時に容易に分解することができるため、保守点検作業を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の第1実施形態による動力伝達装置の構造模式図である。
【図2】図1の立体分解模式図である。
【図3】本発明の第1実施形態による動力伝達装置に用いる固定リングの構造模式図である。
【図4】本発明の第2実施形態による動力伝達装置に用いる固定リングの構造模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1実施形態)
図1は第1実施形態による動力伝達装置の構造模式図である。図2は図1の立体分解模式図である。図1および図2に示す動力伝達装置の主な構造は以下の通りである。
【0010】
主管11は、管状に形成され、図示しない車体に固定される。主管11には、駆動軸12が挿通される貫通孔13が形成されている。貫通孔13の両端の内壁面には、ねじ山が形成されており、固定リング31、32を締付固定可能である。主管11には、固定リング31、32、アーム1の固定孔16およびアーム2の固定孔26によってアーム1、2が固定される。
【0011】
駆動軸12は、固定リング31、32に埋設されて主管11に設けられる軸受21、22に軸受けされている。これにより、駆動軸12は、主管11に対して回転可能に支持される。
【0012】
補助管61は、中央部の外径が端部の外径より小さい管状をなしており、主管11に対して平行に設けられる。補助管61には、軸方向に貫通孔63が形成されており、従動軸62が挿通される。補助管61の両端の内壁面には、ねじ山が形成されており、固定リング81、82を締付固定可能である。補助管61は、固定リング81、82によってアーム1の固定孔17およびアーム2の固定孔27が形成されている位置に固定される。
【0013】
従動軸62は、軸受71、72に軸受けされている。軸受71、72は、固定リング81、82に埋設されて補助管62に設けられる。これにより、従動軸62は、補助管61に対して回転可能に支持される。
【0014】
アーム1は、板状に形成されており、両端部に固定孔16、17が設けられている。一方の固定孔16では、固定リング31によって主管11がアーム1に対して固定される。また、他方の固定孔17では、固定リング81によって補助管61がアーム1に対して固定される。これにより、主管11の駆動側歯車41側の端部と補助管61の内部出力側91の端部とはアーム1によって連結される。
【0015】
アーム2は、板状に形成されており、両端部に固定孔26、27が設けられている。一方の固定孔26では、固定リング32によって主管11がアーム2に対して固定される。また、他方の固定孔27では、固定リング82によって補助管61がアーム2に対して固定される。これにより、主管11のスプロケット42側の端部と補助管61のスプロケット92側の端部とはアーム2によって連結される。
【0016】
固定リング31、32、81、82は、一方の端部にねじ山を有する環状に形成されている。固定リング31、32、81、82のねじ山は、主管11および補助管61の両端内壁に形成されているねじ山と締付結合される。
【0017】
固定リング31、32、81、82の構造を図3に示す。固定リング31、32、81、82は、階段状構造であり、中間軸穴310を備える。一方の端部には、回転することにより軸方向に移動し位置を調整することができる頭部311が形成され、他方の端部には、径外方向に形成されるねじ山312を備える。
【0018】
一方向クラッチ3、4はオーバーランニングクラッチであって、一方向の回転のみを許容して駆動歯車41、スプロケット42に駆動軸12の回転力を伝達する。
【0019】
スプロケット42、92は、それぞれスナップリングおよび軸止め部材によって駆動軸12および従動軸62の一方の端部に設けられている。スプロケット42は、一方向クラッチ4を介して駆動軸12に接続する。スプロケット42、92を連結するチェーン5は、スプロケット42とスプロケット92とを同じ回転方向に回転する。
【0020】
駆動側歯車41および従動側歯車91は、それぞれスナップリングおよび軸止め部材によって駆動軸12および従動軸62の他方の端部に設けられている。駆動側歯車41は、一方向クラッチ3を介して駆動軸12に接続する。また、駆動側歯車41と従動側歯車91とはそれぞれ径外方向に形成されている歯によって噛み合っており、駆動側歯車41と従動側歯車91とは逆方向に回転する。
【0021】
(効果)
(A)第1実施形態の動力伝達装置は、車体に固定される主管11を基準として組み立てられている。これにより、動力伝達装置は、駆動軸12に入力される双方向の回転力に対して、一方向の回転力を駆動側歯車41によって出力することができるとともに、車体への取付が容易に行うことができる。また保守点検時には取り外して容易に分解することができるため、保守点検作業を容易に行うことができる。
【0022】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態による動力伝達装置を図4に基づいて説明する。第2実施形態は、第1実施形態に対して、固定リングの構造が異なる。なお、第1実施形態と実質的に同一の部位には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0023】
第2実施形態における固定リング31、32、81、82の構造を図4に示す。
固定リング31、32、81、82は、中間軸穴315が形成されたねじ山317と、回転することにより軸方向に移動し位置を調整することできるキャップナット316から構成される別体構造となっている。キャップナット316は、ねじ山317にねじ込むことによりねじ山317に固定される。
【0024】
第2実施形態の動力伝達装置では、固定リング31、32、81、82のキャップナット316とねじ山317との距離を調整することができる。これにより、アーム1とアーム2との距離を調整することができる。
【0025】
(他の実施形態)
(ア)上述の実施形態では、一方向クラッチ3、4をそれぞれ駆動軸12に接続するスプロケット42、駆動側歯車41に設けるとした。しかしながら、一方向クラッチ3、4を設ける場所はこれに限定されない。従動軸62に接続するスプロケット82、従動側歯車91に設けられてもよい。
【0026】
(イ)上述の実施形態では、補助管中央の直径は、端部の直径よりも小さいとした。しかし、補助管中央の直径はこれに限定されない。中央の直径は、端部の直径と同じであってもよい。
【0027】
(ウ)上述の実施形態では、固定リングの一方の端部には、主管および補助管の貫通孔内壁に形成されるねじ山と締付結合されるねじ山が形成されるとした。しかしながら、固定リングの一方の端部に形成される形状はこれに限定されない。固定リングと主管および補助管の貫通孔内壁とを固定する構造であればよい。
【0028】
(エ)上述の第1実施形態では、駆動軸および従動軸の両端に図3に示す固定リングを設けるとした。また、上述の第2実施形態では、駆動軸および従動軸の両端に図4に示す固定リングを設けるとした。しかしながら、駆動軸および従動軸の両端に設けられる固定リングの組み合わせはこれに限定されない。駆動軸および従動軸の一端に図3に示す固定リングを設け、他端には図4に示す固定リングを設けてもよい。
【符号の説明】
【0029】
1、2:アーム、
3、4:一方向クラッチ、
5:チェーン、
11:主管、
12:駆動軸、
21、22、71、72:軸受、
31、32、81、82:固定リング、
310:中間軸穴、
311:頭部、
312:ねじ山、
315:中間軸穴、
316:キャップナット、
317:ねじ山、
41:駆動側歯車、
42、92:スプロケット、
61:補助管、
62:従動軸、
91:従動側歯車。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に固定される主管(11)に形成される貫通孔(13)には、軸受(21、22)に回転可能に支持されている駆動軸(12)が挿通され、補助管(61)の軸方向に形成されている貫通孔(63)には、軸受(71、72)に回転可能に支持されている従動軸(62)が挿通され、主管(11)および補助管(61)は、固定リング(31、32、81、82)によってアーム(1)とアーム(2)との間に挟持されており、駆動軸(12)および従動軸(62)の一方の端部にはスプロケット(42、92)が設けられ、スプロケット(42)は、一方向クラッチ(4)を介して駆動軸(12)に接続し、スプロケット(42)とスプロケット(92)とはチェーン(5)を介して同じ方向に回転し、駆動軸(12)の他方の端部には駆動側歯車(41)が設けられ、従動軸(62)の他方の端部には駆動側歯車(41)と係合する従動側歯車(91)が設けられ、駆動側歯車(41)は、一方向クラッチ(3)を介して駆動軸(12)に接続し、一方向の回転力を出力し、
主管(11)の貫通孔(13)の両端の内壁面には、ねじ山が形成されており、固定リング(31、32)を締付固定可能であり、固定リング(31、32)、アーム(1)の固定孔(16)およびアーム(2)の固定孔(26)によってアーム(1、2)が主管(11)に固定され、
駆動軸(12)は、固定リング(31、32)に埋設されて主管(11)に設けられる軸受(21、22)によって主管(11)に対して回転可能に支持され、
補助管(61)の貫通孔(63)両端の内壁面には、ねじ山が形成されており、固定リング(81、82)を締付固定可能であり、固定リング(81、82)、アーム(1)の固定孔(17)およびアーム(2)の固定孔(27)によってアーム(1、2)が補助管(61)に固定され、
従動軸(62)は、固定リング(81、82)に埋設されて補助管(62)に設けられる軸受(71、72)によって補助管(61)に対して回転可能に支持され、
アーム(1)は、主管(11)の駆動側歯車(41)側の端部と補助管(61)の従動側歯車(91)の端部とを連結し、
アーム(2)は、主管(11)のスプロケット(42)側の端部と補助管(61)のスプロケット(92)側の端部とを連結し、
固定リング(31、32、81、82)は、一方の端部にねじ山を有する環状に形成されており、ねじ山は、主管(11)および補助管(61)の両端内壁に形成されているねじ山によって締付結合され、
一方向クラッチ(3、4)はオーバーランニングクラッチであって、一方向の回転のみを許容し、
駆動側歯車(41)と従動側歯車(91)とは逆方向に回転することを特徴とする動力伝達装置。
【請求項2】
固定リング(31、32、81、82)は、一体成形されている階段形状をなしており、中間軸穴(310)を形成し、一方の端部には回転することにより軸方向に移動し位置を調整することができる頭部(311)を形成し、他方の端部にはねじ山(312)を形成することを特徴とする請求項1に記載の動力伝達装置。
【請求項3】
固定リング(31、32、81、82)は、中間軸穴(315)を持つねじ山(317)と、回転することにより軸方向に移動し位置を調整することができるキャップナット(316)とから構成される別体構造となっており、キャップナット(316)をねじ山(317)にねじ込むことにより調整可能な機能を有することを特徴とする請求項1に記載の動力伝達装置。
【請求項4】
駆動軸(12)の両端に設けられる固定リング(31、32)のいずれか一方および従動軸(62)の両端に設けられる固定リング(81、82)のいずれか一方は、一体成形されている固定リングであって、固定リング(31、32)のいずれか他方および固定リング(81、82)のいずれか他方は調整可能な別体構造の固定リングであることを特徴とする請求項1に記載の動力伝達装置。
【請求項5】
スプロケット(42、92)、およびチェーン(5)を駆動軸(12)および従動軸(62)の一方の側に設置し、駆動側歯車(41)および従動側歯車(91)を駆動軸(12)および従動軸(62)の他方の側に設置することを特徴とする請求項1に記載の動力伝達装置。
【請求項6】
一方向クラッチ(3)が駆動側歯車(41)に設けられるとき、一方向クラッチ(4)はスプロケット(42)に設けられ、一方向クラッチ(3)が従動側歯車(91)に設けられるとき、一方向クラッチ(4)はスプロケット(92)に設けられることを特徴とする請求項1に記載の動力伝達装置。
【請求項7】
補助管(61)は、中央部の外径が端部の外径に比べて小さいことを特徴とする請求項1に記載の動力伝達装置。
【請求項8】
補助管(61)は、外径が一定の円筒形状であることを特徴とする請求項1に記載の動力伝達装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−82959(P2012−82959A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−224175(P2011−224175)
【出願日】平成23年10月11日(2011.10.11)
【出願人】(599075531)
【Fターム(参考)】