説明

動力装置

【課題】組付けの容易な動力装置を提供することを目的とする。
【解決手段】
動力装置は、動力を伝達する要素が配置されて開口63が設けられるケース60と、開口63をふさぐことが可能なカバー30と、一端103側がケースに係合し、他端102側がカバーに係合する冷却パイプ100と、カバーと冷却パイプの他端との間に配置される弾性部材140とを備え、カバー30の表面で弾性部材140に当接する部分は、流体通路の延在方向に沿って一端に近づくにつれて径が大きくなるテーパ面33である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、動力装置に関し、より特定的には、ケース内を潤滑することが可能な動力装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、動力装置は、たとえば特開2007−209160号公報(特許文献1)に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−209160号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、コンパクトで、かつ、振動時の冷却効率の低下が抑制された冷却パイプの固定構造および該構造を含む電動車両を提供することを目的とする。特許文献1における冷却パイプの固定構造は、ケーシングと、ケーシング内に設けられたステータと別体に設けられ、ステータ冷却用のオイルが流れる冷却パイプと、冷却パイプの一端に設けられ、ケーシングの内面に当接する支持リングと、冷却パイプの他端に設けられ、カバーに圧入されるゴムキャップとを備える構成が開示されている。
【0005】
しかしながら、従来の構成においては、組付けが困難であるという問題があった。
そこで、この発明は上述のような問題点を解決するためになされたものであり、組付けの容易な動力装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に従った動力装置は、動力を伝達する要素が配置されて開口が設けられるケースと、開口をふさぐことが可能なカバーと、一端側がケースに係合し、他端側がカバーに係合する筒状部材と、カバーと筒状部材の他端との間に配置される弾性部材とを備え、カバーにはケース内を潤滑するための流体が流れる流体通路が筒状部材に連なるように設けられており、流体通路に供給された流体は筒状部材を経由してケース内に供給され、ケースの表面で弾性部材に当接する部分は、流体通路の延在方向に沿って一端に近づくにつれて径が大きくなるテーパ面である。
【0007】
このように構成された動力装置では、ケースの表面で弾性部材に当接する部分は、流体通路の延在方向に沿って一端に近づくにつれて径が大きくなるテーパ面であるため、ケースにカバーを取り付ける工程で、テーパ面の調芯機能により最適な位置に他端が位置決めされて組みつけが行われる。その結果、組付けの容易な動力装置を提供することができる。
【0008】
好ましくは、ゴムは防振ゴムである。
好ましくは、筒状部材の他端側は弾性部材から突出するように設けられる。
【0009】
好ましくは、ケースには一端を受け入れる孔が設けられており、一端はその孔に嵌合し、筒状部材は一端よりも外径の大きい大径部を有し、大径部が孔の入口に当接する。
【発明の効果】
【0010】
この発明に従えば、組付けの容易な動力装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】この発明の実施の形態1に従った、ケースとカバーとを含む動力装置の一部を示す断面図である。
【図2】この発明の実施の形態1に従ったケースに弾性部材を有する冷却パイプが孔に挿入される工程を示す断面図である。
【図3】この発明の実施の形態2に従った動力装置で用いられる冷却パイプの先端部分を拡大して示す断面図である。
【図4】この発明の実施の形態3に従ったケースに弾性部材を有する冷却パイプが挿入される工程を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、この発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、以下の実施の形態では同一または相当する部分については同一の参照符号を付し、その説明については繰返さない。また、各実施の形態を組合せることも可能である。
【0013】
(実施の形態1)
図1は、この発明の実施の形態1に従った、ケースとカバーとを含む動力装置の一部を示す断面図である。図1を参照して、動力装置1は、ケース60と、ケース60の開口63を塞ぐカバー30とを有する。ケース60には、さまざまな機械部品が設けられる。具体的には、ケース60内には回転するシャフト50が配置される。シャフト50内のオイル通路51が設けられる。シャフト50の外側には、回転電機のロータ20が係合している。ロータ20のロータコア21および永久磁石22がシャフト50と共に回転する。これに対し、ロータ20から間を空けてステータ10が配置される。ステータ10のステータコア12がケース60に取付けられる。ステータコア12にはコイル11が巻かれる。コイル11においてステータコア12からはみ出た部分がコイルエンドである。
【0014】
ケース60の孔61には冷却パイプ100が差し込まれている。冷却パイプ100の一端103が孔61に差し込まれ、他端102がカバー30と嵌合している。
【0015】
シャフト50にはオイルポンプ40が取付けられる。シャフト50が回転するとオイルポンプ40内で圧が生じて、この圧によりオイル通路41内を矢印49で示す方向にオイル(ATF(オートマチックトランスミッションフルード))が流れる。
【0016】
そして、この流れはカバー30内のオイル通路32,31へ伝わり矢印39で示す方向にオイルが流れる。そしてこのオイルは軸方向に延びるオイル通路35へ伝えられて冷却パイプ100内を矢印109で示す方向にオイルが流れる。そして冷却パイプ100に設けられた孔61の径D1よりも外径の大きい大径部105が冷却パイプ100に設けられている。大径部105の外径はD2でありこの部分が大きいために、孔61の端部である入口62に大径部105が接触する。冷却パイプ100の内周面131がオイル通路を構成しており、この中を矢印109で示す方向にオイルが流れる。流れたオイルは排出孔110,120,130から排出されてステータ10を冷却する。
【0017】
冷却パイプ100の他端102の外周には、ゴムからなる弾性部材140が嵌合しており、弾性部材140はテーパ面33と当接している。弾性部材140は、図1で示す、ケース60の開口63をカバー30が封止している場合には、カバー30から押圧されて弾性変形している。弾性部材140は鍔部分101により保持されて冷却パイプ100の外周上に位置決めされている。そのため、弾性部材140は、鍔部分101とカバーとにより圧縮されている。弾性部材140は鍔部分101および冷却パイプ100を軸方向に押圧する。この押圧力により、冷却パイプ100の大径部105が孔61の端面としての入口62に押し付けられており、冷却パイプ100が孔61から外れることを防止できる。
【0018】
図2は、この発明の実施の形態1に従ったケースに弾性部材を有する冷却パイプが挿入される工程を示す断面図である。図2を参照して、冷却パイプ100を孔形状のオイル通路35に挿入する場合には、カバー30を冷却パイプ100の他端102側へ近づける。このとき、弾性部材140の外周面がテーパ面141であり、このテーパ面141がカバー30に当接するため、スムーズに冷却パイプ100をオイル通路35内に挿入することができる。孔の外寸A内に他端102が当接すれば、図2で示す作用により、冷却パイプ100が確実にオイル通路35内に挿入される。
【0019】
実施の形態1に従った動力装置は、動力を伝達する要素が配置されて開口63が設けられるケース60と、開口63をふさぐことが可能なカバー30と、一端103側がケース60に係合し、他端102側がカバー30に係合する筒状部材としての冷却パイプ100と、カバー30と冷却パイプ100の他端102との間に配置される弾性部材140とを備え、カバー30にはケース60内を潤滑するための流体が流れる流体通路としてのオイル通路31,35が冷却パイプ100に連なるように設けられており、オイル通路35に供給されたオイルは冷却パイプ100を経由してケース60内に供給され、弾性部材140の外周面でカバー30に当接する部分は、冷却パイプ100の延在方向に対して他端102に近づくにつれて細くなるテーパ面141である。
【0020】
このように構成された動力装置では、シール部材としてのカバー30の内周面がテーパ面33であるため、ケース60にカバー30を取り付ける工程で、テーパ面33の調芯機能により最適な位置に他端102が位置決めされて組みつけが行われる。その結果、組付けの容易な動力装置を提供することができる。
【0021】
さらに、テーパ面33,141は、冷却パイプ100の軸方向の力および半径方向の力を受けることができる。この力により、冷却パイプを軸方向および半径方向に固定することができるため、弾性部材140の外周がテーパ面でない場合と比較して、冷却パイプ100を固定するために必要な力を減少させることができる。
【0022】
弾性部材140はゴム、特に防振機能を有するゴムは防振である。ケース60には一端103を受け入れる孔61が設けられており、一端103はその孔61に嵌合し、冷却パイプ100は一端103よりも外径の大きい大径部105を有し、大径部105が孔61の入口62に当接する。
【0023】
(実施の形態2)
図3は、この発明の実施の形態2に従った動力装置で用いられる冷却パイプの先端部分を拡大して示す断面図である。図3を参照して、この発明の実施の形態2に従った動力装置の冷却パイプ100では、他端102側は弾性部材140から突出するように設けられる。
【0024】
このように他端102を弾性部材140から突出させることで、図3で示すように、他端102がテーパ面33に当接する。これにより、他端102は矢印108で示す方向に移動するため、オイル通路35側へ確実に他端102が導かれる。
【0025】
このように構成された、実施の形態2に従った動力装置では、確実に冷却パイプ100をオイル通路35へ挿入することが可能となる。
【0026】
(実施の形態3)
図4は、この発明の実施の形態3に従ったケースに弾性部材を有する冷却パイプが挿入される工程を示す断面図である。図4を参照して、実施の形態3に従ったカバー30および弾性部材140では、各々のテーパ面33,141の傾斜角度が等しくなっている。図4で示す工程では、弾性部材140がカバー30から離隔しており、変形する前の状態を示している。
【0027】
このように構成された、実施の形態3に従ったカバー30および弾性部材140では、互いのテーパ面33,141が等しい傾斜角度を有するため、スムーズな組付けを実現することができる。
【0028】
以上、この発明の実施の形態について説明したが、ここで示した実施の形態はさまざまに変形することが可能である。まず、図1ではオイルで回転電機のステータ10を冷却する構成を示したが、これに限られず、ギヤ、ブレーキおよびクラッチ等の他の部材を冷却してもよい。さらにオイルポンプ40でオイルを圧送する構成を示したが、必ずしもオイルポンプ40は設けられていなくてもよい。
【0029】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0030】
この発明は、内部の機構をオイルで冷却する構成を有する動力装置の分野で用いることができる。
【符号の説明】
【0031】
1 動力装置、10 ステータ、11 コイル、12 ステータコア、20 ロータ、21 ロータコア、22 永久磁石、30 カバー、31,32,35,41,51 オイル通路、33,141 テーパ面、40 オイルポンプ、50 シャフト、60 ケース、61 孔、62 入口、63 開口、100 冷却パイプ、101 鍔部分、102 他端、103 一端、105 大径部、140 弾性部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
動力を伝達する要素が配置されて開口が設けられるケースと、
前記開口をふさぐことが可能なカバーと、
一端側が前記ケースに係合し、他端側が前記カバーに係合する筒状部材と、
前記カバーと前記筒状部材の他端との間に配置される弾性部材とを備え、
前記カバーには前記ケース内を潤滑するための流体が流れる流体通路が前記筒状部材に連なるように設けられており、前記流体通路に供給された流体は前記筒状部材を経由して前記ケース内に供給され、
前記カバーの表面で前記弾性部材の外周面に当接する部分は、前記流体通路の延在方向に沿って前記一端に近づくにつれて径が大きくなるテーパ面である、動力装置。
【請求項2】
前記ゴムは防振ゴムである、請求項1に記載の動力装置。
【請求項3】
前記筒状部材の他端側は前記弾性部材から突出するように設けられる、請求項1または2に記載の動力装置。
【請求項4】
前記ケースには前記他端を受け入れる孔が設けられており、前記一端はその孔に嵌合し、前記筒状部材は前記他端よりも外径の大きい大径部を有し、前記大径部が前記孔の入口に当接する、請求項1から3のいずれか1項に記載の動力装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−23812(P2012−23812A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−157973(P2010−157973)
【出願日】平成22年7月12日(2010.7.12)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】