説明

動物およびヒトにおける抗不安作用および鎮静作用の誘導方法

単子葉植物から、または化学合成により入手可能である、酸素含有基、窒素または別の酸素含有基およびC〜Cアルコキシ基が共有結合したフェノール分子を有するフェノール化合物またはその前駆化合物は、ヒトおよび動物において不安ならびに関連する行動および状態を沈静および/または低減させることが発見されている。本発明の別な化合物は、フェノール化合物の前駆物質として働くことができる、ベンゾキサジノイド−環状ヒドロキサム酸、ラクタムおよびそれに対応するグルコシドを含むことができる。ヒトおよび動物の治療的使用に適した濃度の本発明のフェノール化合物およびフェノール化合物の前駆物質を、最適な収量を得るために適時収穫される成長初期段階にあるトウモロコシなどの単子葉植物から得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はヒトおよび動物において不安を沈静および低減する組成物に関し、さらに具体的には、ある種の植物から誘導、分離および/または抽出される、または化学合成からの、動物およびヒトにおいて使用するのに適した濃度および量で取得可能なフェノール化合物およびインドールアミン様化合物の新規組成物、不安障害および関連する行動に苦しんでいるか、またはストレス、疾患または損傷の期間のヒトおよび動物における不安を沈静および/または低減するのに使用するために同新規組成物を使用、生成および収穫する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
推定3500〜4000万人の米国民が大うつ病エピソードに苦しみ、さらに多くの人がより軽度の不快状態を経験するであろう。現在、うつ病である約1750万人の米国人のうち約920万人は臨床的に衰弱したレベルにある。臨床的うつ病は、長時間にわたって持続する一連の症状によって特徴付けられる。当業者には理解されるように、うつ病は、外的ストレス要因によって一般に惹起されるか、または引き起こされる深刻な問題である。ストレスが大きくなるか持続するにつれて、結果的に身体の化学的不均衡が生じる。
【0003】
臨床的うつ病は身体的および精神的の両方で非常に衰弱したものになり、自殺によって死に至る可能性さえある。より軽度のうつ病では、生産性の損失および人間関係の問題が生じるおそれがある。現在のところ、抗うつ剤はうつ病、特に少なくとも中等度のうつ病を治療する基本となっている。抑うつ状態のヒトおよび動物は、抗うつ剤で治療されると改善する傾向にあるが、多くは処方された最初の抗うつ剤には反応しない。そのようなヒトまたは動物は、最終的には異なった抗うつ剤か、または十分有効である場合には適した抗うつ剤の組合せによって利益を受けることがある。
【0004】
性機能不全は広く見られる別の障害である。全人口では、18〜59歳の女性の43%および男性の31%が性機能不全を経験し、繰り返し経験する者もいると考えられている。理解されるように、性機能不全には、例えば、性行為への関心の欠如、性的興奮に関する問題、性行為を楽しめないこと、および性的能力に関わる不安が挙げられる。実際、一般に快感は性機能に著しい影響を及ぼすことがわかっている。この点で、悲しんでいるか、うつ状態の人々は性機能不全に伴う困難を経験し易い可能性がある。性的興奮の問題は2000万人以上(すなわち、成人男性10人のうち約2人)の米国男性に影響を与えており、そのような困難は多くの場合、ある種のうつ病または気分障害に関与するか、またはそれを伴う。一方で、処方うつ剤は、その使用の副作用が頻繁に起こることが性機能不全であることから、その状況を実際には悪化させることが認められている。実際、性的反応は処方うつ剤の使用者の最大で75%で実際に減退する可能性がある。この目的ために、性的反応、性的興奮または性的欲求を増強することを伴った、うつ病を低減するかまたは気分を改善するか、別の方法ではヒトまたは動物の性的機能に悪影響を及ぼさない治療の形態が必要となる。
【0005】
本発明の化合物に関連する当業者によるこれまでの研究は主に、6−メトキシ−2,3−ベンゾキサゾリノン(6−MBOA)に着眼したものであった。例えば、種々の害虫に対する単子葉植物の抵抗性を増強する際の6−MBOAの役割はかなり研究されている。6−MBOAおよびその化学的前駆物質も競合種において根および芽の成長を阻害する可能性があるアレロパシー特性を有することができることがさらに証明されている。また、6−MBOAは抗菌性を有することができ、成長の初期段階に構成的に出現し、微生物および昆虫の攻撃に最も曝される組織に局在していることが見出されている。
【0006】
植物中の化合物が野生の齧歯類の季節的な繁殖期に影響を及ぼすことが長く疑われてきた。1981年、6−MBOAは季節的な繁殖周期に影響を及ぼすことが立証されたある植物において見出された最初の天然化合物になった。よく知られているように、6−MBOAは単子葉植物中に種々の濃度で存在することができる。それ以降、研究の大半は季節繁殖のイニシエータおよび多数の齧歯類および数種類の鳥類の集団の大きさのエフェクターとしての6−MBOAに注がれている。この点に関し、6−MBOAに関連するとともに同時に発生する可能性のある化合物は一般に未だ調査されていない。
【0007】
6−MBOAは、成熟した雌から子孫へと妊娠および授乳期間に伝えられることができ、この結果、典型的には受け取る側の子供において成長が進んで性腺が大きくなる。弱齢の動物は母親の光周期の過程および6−MBOAの相互作用に依存し、成長および思春期の開始の時期を調節する。6−MBOAを含有する餌を給餌された成獣はより多くの雌の子孫を産むことが見出された。同じく、6−MBOAを妊娠中の雌に与えると、雄の子孫の性器の発育が一般に増強される。
【0008】
齧歯類では、成長および生殖に対するメラトニンの阻害作用は6−MBOAによって一部が阻止されることが認められた(ゴワーら(Gower et al.)、「Reproductive responses of male Microtus montanus to photo period,melatonin,and 6−MBOA」、Journal of Pineal Research,8:297〜312頁、1990年)。当業者によってさらに明らかにされているように、6−MBOAはメラトニン受容体においてメラトニンを妨害することができるか、またはメラトニンの作用を調べるように独立して働くことができる(スウェットら(Sweat et al.)、「Uterotropic 6−methoxybenzoxazolinone is an adrenergic agonist and melatonin analog」、Molecular and Cellular Endocrinology、57:131〜138頁、1988年)。
【0009】
6−MBOAによってメラトニン・レベルが高くなると、メラトニン受容体の脱感作を生ずることができるが(ダヤら(Daya et al.)、「Effect of 6−methoxy−2−benzoxazolinone on the activities of rat pineal N−acetyltransferase and hydroxyindole−O−methyltransferase and on melatonin production」、Journal of Pineal Research、8:57〜66頁、1990年)、すべての齧歯類に生じるわけではない(アンダーソンら(Anderson et al.)、「Effects of melatonin and 6−methoxybenzoxazolinone on photoperiodic control of testis size in adult male golden hamsters」、Journal of Pineal Research、5:351〜65頁、1988年)。
【0010】
当業者によるさらなる知見は、6−MBOAはメラトニン生合成を阻害するのではなく、刺激し、ノルエピネフリンによるメラトニン合成の刺激は阻止しないことを示唆している(ユウィラーら(Yuwiler et al.)、「Effects of 6−methoxy−2−benzoxazolinone on the pineal melatonin generating system」、J.Pharmacol.Exp.Ther.233:45〜50、1985年)。さらに、6−MBOAは、α(アルファ)およびβ−(ベータ)作動性受容体の両方に作用することができ(ダヤら(Daya et al.)、「Effect of 6−methoxy−2−benzoxazolinone on the activities of rat pineal N−acetyltransferase and hydroxyindole−O−methyltransferase and on melatonin production」、Journal of Pineal Research、8:57〜66頁、1990年)、松果体、視床下部および下垂体においてアデニルシクラーゼ(すなわち、アデニル酸シクラーゼ)活性を刺激することができる(スウェットら(Sweat et al.)、「Uterotropic 6−methoxy−benzoxazolinone is an adrenergic agonist and melatonin analog」、Molecular and Cellular Endocrinology、57:131〜138頁、1988年)。
【0011】
理解されるように、6−MBOAに対する子宮肥大などのある種の反応はエストロゲンにより複製され得るが、6−MBOAはエストロゲン様化合物ではない(ゴワー(Gower)、「Endocrine effects of the naturally occurring reproductive stimulant、6−methoxy−benzoxazolinone」、Ph.D.Thesis、ユタ大学、ユタ州ソルトレイクシティ所在、1990年)。また、6−MBOAは卵胞刺激ホルモンの合成速度を増大することができる(バタースタインら(Butterstein et al.)、「The plant metabolite 6−methoxybenzoxazolinone interacts with follicle−stimulating hormone to enhance ovarian growth」、Biology of Reproduction、39:465〜471頁、1988年)および下垂体プロラクチン(ボーガンら(Vaughan et al.)、「Hormonal consequences of subcutaneous 6−methoxy−2−benzoxazolinone pellets or injections in prepubertal male and female rats」、Journal of Reproduction and Fertility、83:859〜866頁、1988年)。また、視床下部の黄体形成ホルモン放出ホルモン含有量および下垂体重量は、6−MBOAを含有するカプセルを植え込んだ少なくとも一つの齧歯類では高い(アーバンスキーら(Urbanski et al.)、「Influence of photoperiod and 6−methoxybenzoxazolinone on the reproductive axis of inbred LSH/Ss Lak male hamsters」、Journal of Reproduction and Fertility、90:157〜163頁、1990年)。
【0012】
本発明の発明者らは、6−MBOAおよびインドールアミン、メラトニンが構造的類似性を共有することを認識している。しかし、メラトニンは抑うつ状態の人々において神経不安の徴候を悪化させる。メラトニン作動薬である6−MBOAはこの点で逆であることがわかり、実際に気分を改善することができる。しかし、本発明者らは、ヒトにおいて特にうつ病または気分の改善に関して向精神作用を有するものとしての6−MBOAまたは関連する化合物の使用を調査または示唆した先行技術に気付いていない。本発明の目的は、6−MBOAがメンバーである関連の化学ファミリーに属する化合物の使用を伴う、うつ病および性機能不全のための治療法を開発することにある。この目的に従って、さらなる目的は、ヒトに治療的に使用するのに適した濃度で植物源または動物源から前記化合物を抽出、誘導および/または分離する方法を開発することにある。
【0013】
上記のように、うつ病および気分障害ならびに性的機能(すなわち、性欲、性的興奮および性的機能)に対するストレスの影響に加えて、当業者は動物およびヒトにおける免疫系および不安レベルに対するストレスの複数の影響も認識することができる。例えば、動物は積込みストレス、手術、離乳、パフォーマンスまたは訓練、混み合いおよび/または知らない動物と混ぜられることに伴う感染症、罹患率および死亡率の増大として発現する可能性があるストレスに関連する免疫機能障害のリスクのおそれがある。家畜産業および他の食用動物産業へのそのような免疫障害のコストは大きく、米国だけで1年間に1億ドル以上であると推定される。
【0014】
動物およびヒトにおけるストレスは、物理的、化学的または電磁的な困難;疾患;損傷および/または心理的要因に起因する可能性がある。典型的には、これらの要因はストレスを受けた動物またはヒトの体内で生理学的適応を誘発する。適応は複数の反応で発現することができる。ストレスが誘起するホルモン産生の変化には、免疫抑制ホルモンであるコルチコステロンのレベルが高くなることが挙げられる。ストレスおよび不安が誘起する神経内分泌反応は、前炎症性サイトカインの濃度変化などの免疫系の機能の変化を伴う可能性がある。したがって、これらのストレスが誘起する応答によって、結果として、ウイルスおよび細菌感染が生じ易くなり、サイトカイン異常および炎症過程に関与する合併症を生じる可能性が高くなるおそれがある。
【0015】
損傷、手術、感染、心理的ストレス、精神疾患(例えば、うつ病)およびエリートスポーツ選手の厳しいトレーニングなどの身体的困難といった種々のストレスの多い刺激の後に、ヒトは感染および自己免疫反応のリスクを増大する可能性がある免疫異常を示すおそれがある。ヒトにおいて、免疫障害に起因して結果的に生じる合併症は、医療および働けなかった日数のコストを著しく増大し易くするおそれがある。
【0016】
民族植物学者、生薬学者、医薬品化学者およびある種のメンタル・ヘルス・ケア従事者などの専門家は、抗不安特性を有する植物材料から誘導または分離された新しい化合物を常に探求している。例えば、抗不安活性はカバカバおよびカバカバを含有する市販製品に幅広く関連しており、沈静および抗不安作用は広く知られている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明の目的は、6−MBOAがメンバーである関連の化学ファミリーに属する化合物の使用を伴う、動物およびヒトにおいて不安を沈静および低減する組成物および方法を開発することにある。この目的に従って、さらなる目的は、ヒトに治療的に使用するのに適した濃度で植物源および動物源から前記化合物を抽出、誘導および/または分離する方法を開発することにある。
【0018】
当業者による過去の研究は、抗不安特性を有する新しい植物化合物を分離、同定および特徴付けしようとしたが、これまで6−MBOAは沈静化および抗不安特性に関しては同定または評価されてこなかった。したがって、単子葉植物から誘導、分離および/または抽出されるか、あるいは化学合成による新規化合物および同新規化合物を用いて動物およびヒトにおける不安および関連する症状を低減する方法は、当該分野では著しい進歩となろう。そのような新規化合物および方法を本願において開示および教示する。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の主な目的は、単子葉植物から誘導、分離および/または抽出されるか、あるいは化学合成による新規化学組成物、および前記組成物を用いてストレスの期間中または不安な状態に起因する不安を経験するヒトおよび動物を沈静し易くする方法を提供することである。
【0020】
単子葉植物から誘導、分離および/または抽出されるか、あるいは化学合成による新規化学組成物、および前記組成物を用いてヒトおよび動物においてインドールアミン、例えば、セロトニンおよびメラトニンのレベルを上昇させる方法を提供することも本発明の目的である。
【0021】
哺乳動物においてセロトニンおよび/またはメラトニンの類似体および/または作動薬として機能する、単子葉植物から誘導、分離および/または抽出されるか、あるいは化学合成による新規化学組成物を提供することが本発明のさらなる目的である。
【0022】
結果的に6−MBOAまたは他のフェノール化合物およびインドールアミン化合物の収量を増大させる単子葉植物を栽培する新規方法を提供することが本発明のまたさらなる目的である。
【0023】
また、6−MBOAまたは他のフェノール化合物およびインドールアミン化合物の製造に有効な単子葉植物を収穫する新規方法を提供することが本発明の目的である。
さらに、単子葉植物から誘導、分離および/または抽出されるか、あるいは化学合成による新規化学組成物、および前記組成物を用いて視床下部−下垂体−副腎皮質(HPA)系の不安誘発作用を抑制する方法を提供することが本発明の目的である。
【0024】
単子葉植物から誘導、分離および/または抽出されるか、あるいは化学合成による新規化学組成物、および前記組成物を用いて不安に伴う有害な行動を妨げる方法を提供することも本発明の目的である。
【0025】
さらに、単子葉植物から誘導、分離および/または抽出されるか、あるいは化学合成による新規化学組成物、および前記組成物を用いて不安に起因して増大する可能性があるカテコールアミン化合物(例えば、エピネフリンおよびノルエピネフリン)のレベルを低減させる方法を提供することが本発明の目的である。
【0026】
単子葉植物から誘導、分離および/または抽出されるか、あるいは化学合成による新規化学組成物、および前記組成物を用いて不安を低減または除去するようにγアミノ酪酸(GABA)レベルに影響を及ぼす方法を提供することが、本発明のさらなる目的である。
【0027】
単子葉植物から誘導、分離および/または抽出されるか、あるいは化学合成による新規化学組成物、および前記組成物を用いてγアミノ酪酸(GABA)受容体の機能に影響を及ぼす(例えば、該受容体をアロステリック修飾してイオン・チャネル開放の持続時間および/または頻度を増大させる)方法を提供することが、本発明のさらなる目的である。
【0028】
単子葉植物から誘導、分離および/または抽出されるか、あるいは化学合成による新規化学組成物、および前記組成物を用いて不安に関連する合併症状を低減させる方法提供することが本発明のさらなる目的である。
【0029】
単子葉植物を栽培および収穫して、酸素含有基、窒素または第2の酸素含有基および少なくとも一つのC〜Cアルコキシ基が共有結合したフェノール分子を有するフェノール化合物を得るための新規方法を提供することが、本発明のさらなる目的である。
【0030】
また、酸素含有基、窒素または第2の酸素含有基および少なくとも一つのC〜Cアルコキシ基が共有結合したフェノール分子を有するフェノール化合物を投与することによって、ヒトおよび動物における先天性免疫防御を保持および増強するための新規方法を提供することが本発明の目的である。
【0031】
酸素含有基、窒素または第2の酸素含有基および少なくとも一つのC〜Cアルコキシ基が共有結合したフェノール分子を有するフェノール化合物を投与することによって、ヒトおよび動物において不安を沈静および/または低減する新規方法を提供することが本発明の別の目的である。
【0032】
単子葉植物を栽培および収穫して、ベンゾキサジノイド−環状ヒドロキサム酸、ラクタムおよびそれに相当するグルコシドからなるフェノール化合物の前駆物質を得るための新規方法を提供することも本発明の目的である。
【0033】
また、ベンゾキサジノイド−環状ヒドロキサム酸、ラクタムおよびそれに相当するグルコシドからなるフェノール化合物の前駆物質を投与することによって、ヒトおよび動物における先天性免疫防御を保持および増強するための新規方法を提供することが本発明の目的である。
【0034】
上記目的と一致して、また本願中で具体化および広く記載されるような本発明にしたがって、構造的類似性を共有していることおよびセロトニンおよび/またはメラトニンと構造的類似性を有することによって相互に関連している、ある種のフェノール化合物およびフェノール化合物の前駆物質は、ヒトおよび動物における不安の徴候を低減するのに有効であることが見出された。理解されるように、本発明の新規化合物は単子葉植物の初期生育の植物二次代謝産物として自然に存在するか、それを摂取してからある種の動物の身体部分内に蓄積するか、または化学的手段によって合成することが可能である。本発明は、ヒトおよび動物における不安を低減するのに使用する、単子葉植物から誘導、分離および/または抽出されるか、あるいは化学合成による新規化学化合物の治療的使用を意図する。
【0035】
本発明の治療的方法の現時点の好適な一実施形態は、ある期間にわたって本発明の新規化合物をヒトまたは動物が摂取すること、または本発明の化合物を体内に入れる他の手段を備える。雄および雌はともに、本発明の化合物の摂取から利益を受けるが、そのような化合物は単子葉植物からの乾燥葉に含まれたままであるか、あるいは生成および/または合成調整物として摂取される。本発明者らの知見に基づいて、本発明の新規化合物はインドールアミン類似体および/または作動薬として働くとともにストレスに関連する不安を低減し易くすると思われる。
【0036】
以下で詳細に考察するように、本発明の現時点の好適な一実施形態は、6−メトキシ−2,3−ベンゾキサゾリノン(6−MBOA)がメンバーである、関連する化学ファミリーに属するフェノール化合物を投与することを備える。これらのフェノール化合物は、メラトニン化合物およびインドールアミン化合物と構造的類似性を共有する。メラトニンとの構造的類似性に基づき、免疫防御および不安に関連する徴候に及ぼす影響について本発明の化合物を試験した。本発明の方法の現時点の好適な一実施形態では、6−MBOAまたは製薬学的に許容可能なそれらの塩の組成物を治療有効量で投与することによって、ヒトおよび動物における不安および関連する行動を沈静および緩和することを特に強調する。
【0037】
ヒトおよび動物における不安を低減するのに使用される本発明の化合物の源は、初期生育段階におけるある単子葉植物中に見出すことができる。そのような単子葉植物からヒト治療に適した濃度で本発明の化合物を得るために、これらの植物を生育初期段階で収穫することおよび明確なパラメータのほか、適切性を確実にするための具体的な分析的基準を用いて乾燥することを利用する。しかし、これに限定するものではないが本発明の化合物が萌芽および別の場合には未成熟の草を摂取した後に蓄積するシカおよびエルク(シカ科)の袋角先端などの動物の身体部分からヒト治療に適した濃度の本発明の化合物を得ることも可能である。さらに、本発明の化合物は化学合成により得ることも可能である。
【0038】
本発明の上記および他の目的は、添付図面とともに以下の説明および添付の特許請求の範囲からさらに完全に明白となろう。これらの図面は本発明の典型的な実施形態を示しているに過ぎず、したがってその範囲を限定するものと解釈すべきではないことを理解し、添付図面を用いてさらに具体的かつ詳細に本発明を説明することにする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
本願中の図面、式および表に全般的に記載および説明されるように、本発明の構成要素を種々の異なった構成で用意およびデザインすることができることが容易に理解されよう。当然、当業者であれば、記載のような本発明の本質的特徴から逸脱せずに、本願中の詳細に種々の変更を加えることができることを理解する。したがって、図1〜4に示すように本発明の組成物および方法の実施形態の以下のさらに詳細な説明は、特許請求されるような本発明の範囲を限定することを意図するものではなく、本発明の現時点の好適な一実施形態を代表するものに過ぎないことは容易に理解されよう。
【0040】
以下の式I〜IVを参照すると、本発明の化合物は共通して酸素含有基、窒素含有基または別の酸素含有基およびC〜Cアルコキシ基が共有結合したフェノール分子を有する。化学構造を表す標準的な慣行を使用し、式I〜IIIは本発明の化合物を定義する化学構造および具体的なパラメータを開示する。式IVは、本発明の組成物の現時点の好適な一実施形態のすべてを表す統一的な式である。
【0041】
式I−式の化学組成物、または製薬学的に許容可能なそれらの塩。
【0042】
【化1】

(式中、「R」はC〜Cアルコキシを表し(該Rは環の4または5位にある)、「n」は整数0、1または2の一つを表し、「A」は−OH、−NHまたはNHCR’を表し(R’はC〜Cアルキルを表す))
式II−式の化学組成物、または製薬学的に許容可能なそれらの塩。
【0043】
【化2】

(式中、「R」はC〜Cアルコキシを表し(該Rは環の5または6位にある)、「n」は整数0、1または2の一つを表す)、
式III−式の化学組成物、または製薬学的に許容可能なそれらの塩。
【0044】
【化3】

(式中、「R」はC〜Cアルコキシを表し(該Rは環の6または7位にある)、「n」は整数0、1または2の一つを表す)
式IV−式の化学組成物、または製薬学的に許容可能なそれらの塩。
【0045】
【化4】

(式中、「R」はC〜Cアルコキシを表し(該Rは環の4または5位にある)、「n」は整数0、1または2の一つを表し、「B」はHを表し、「A」は−OH、−NHまたはNHCR’を表し(R’はC〜Cアルキルを表す)、「BA」は、
【0046】
【化5】

を表す)
本発明の化合物は、ヒトまたは動物の体内に摂取または導入されると、(1)気分を改善し、うつ病の徴候を低減または改善するという点で抗うつ剤として、(2)性欲および性機能(例えば、欲求、性的興奮および機能)を改善するという意味でセックス・セラピーにおいて、(3)体重減少の効果的な補助療法として、(4)薬物乱用および薬物中毒の補助療法として、(5)ヒトおよび動物における先天性免疫防御を保持および増強するものとして、および(6)不安に関連する徴候および合併している行動を低減するものとして効果的である。本化合物は、これに限定するものではないが未成熟トウモロコシの粉砕葉などの自然に発生する植物の粉砕部分の形態で、または薬学的に許容可能な担体としての精製または化学的に合成された化合物として投与されることができる。
【0047】
本発明の化合物は、錠剤、カプセル剤、懸濁剤、溶液の形態で、またはおそらくは血流への吸収を強化するか、または所望の作用を得易くするための他の化合物との混合剤など、そのような摂取に適した他の手段で経口投与されることができる。同様に、経口投与には舌下(すなわち、舌の下)投与形態を含むことが意図される。本発明の化合物は、鼻腔内投与(すなわち、鼻構造を通して)または経粘膜投与(すなわち、粘膜にわたって)によって投与されることもできる。
【0048】
また、本発明の化合物は、皮下注、筋注または静注として非経口的投与か、あるいは持続放出用のインプラントによって投与されることもできる。非経口投与される場合、本発明の化合物は生理学的に許容可能な液体媒体に溶解され、および/または知られている製薬上の技術に従って調合される。本発明の化合物の別の投与形態は、本発明の化合物の体内への流入が許容可能な担体分子および適切な担体分子によって促進される経皮貼付であることもできる。
【0049】
特に定めのない限り、本願中で使用される専門用語、科学用語および医学用語は、当業者によって理解されるように同じ意味を有する。しかし、本願に使用された種々の用語の支持を確立するために、以下の技術的な解説、定義および概説を参照のために提供する。
【0050】
「ストレス」とは、動物またはヒトが刺激または要因(例えば、(それぞれ、心的外傷、ヒスタミン、または恐怖としての)身体的、化学的または情動的)に適応できないこと、および動物またはヒトに疾患を進行させ易くする可能性があるか、あるいは正常な生理機能を損なう可能性がある生理的緊張を生じるものと定義することができる。
【0051】
「サイトカイン」とは、細胞によって分泌される、あるクラスの免疫調節性タンパク質(例えば、インターロイキン、腫瘍壊死因子またはインターフェロン)として定義することができる。サイトカインは主として免疫系に関連する細胞によって分泌される。
【0052】
「ホルモン」とは、体液に分泌され、身体の他の領域に運ばれて細胞の活動に対して特異的作用を生ずることができる生体細胞の化学的生成物(多くの場合、有機化合物)であると定義することができる。
【0053】
「免疫系」とは、動物またはヒトの身体を異物、異質細胞および異組織から保護する系であると定義することができる。免疫系として、胸腺、脾臓、(例えば、胃腸管および骨髄にある)リンパ組織の特別な沈着物、抗体、およびリンパ球(例えば、B細胞およびT細胞)を挙げることができる。
【0054】
「T細胞」とは、胸腺で分化することができるいくつかのリンパ球のいずれかであると定義することができる。T細胞は高度に特異的な細胞表面抗原受容体を有し、細胞性および体液性の免疫の開始および抑制の制御に関与することができる。T細胞は、抗原呈示細胞を溶解する受容体も有することができる。
【0055】
「細胞性免疫(CMI)」とは、B細胞によって分泌される抗体ではなく、主としてT細胞および特に細胞障害性T細胞によって媒介される免疫応答に関連するものであると定義することができる。
【0056】
「カテコールアミン」とは、隣接する2個のヒドロキシル基およびエチルアミンの側鎖を有するベンゼン環を含むことができる種々の化合物(例えば、エピネフリン、ノルエピネフリン、ドーパミン等)のいずれかであると定義することができる。カテコールアミンはホルモンまたは神経伝達物質として機能するか、または代替的にはその両方として機能することができる。
【0057】
「コルチコイド」とは、副腎皮質から抽出されることができる種々の有機化合物であると定義することができる。コルチコイドは一般にステロイドまたはコルチコステロイドを指し、そのうちのいくつかがホルモン(例えば、コルチコステロン、コルチゾンおよびアルドステロン)である。
【0058】
「グルココルチコイド」とは、糖質代謝(例えば、コルチゾン、ヒドロコルチゾン、プレドニゾン、プレドニゾロン、トリアムシノロン、メチルプレドニゾロン、デキサメタゾン、ベタメタゾン等)に主に作用するコルチコイドを指すことができる。
【0059】
「先天性」とは、生まれた時からヒト、動物または他の生体において存在しているか、それに属していることと定義することができる。「先天性」を「生来の」または「生まれつきの」と同義的に使用することができる。
【0060】
「免疫」とは、特に病原性微生物の発達を阻止するか、または病原性微生物毒素および細胞生産物の作用を妨げることによって特定の疾患に抵抗する能力を指すことができる。
「自然免疫」とは、その群(例えば、人種、系統、種属)が保有し、その遺伝学的構造および/または生物学的構造の一部として個々において発生する免疫を指すことができる。
【0061】
「マクロファージ」とは、大きな貪食細胞であると定義することができる。ここで、貪食細胞、典型的には白血球または細網内皮細胞は、特徴的に異物を飲み込むあらゆる細胞であることができる。貪食細胞は、壊死組織片および異物(例えば、変性組織または細菌)を排除または消費するように体内で機能することができる。
【0062】
「補体」とは、一般に血清または血漿に見られる熱不安定性の(すなわち、過度の熱によって不活性化される)物質を指すことができる。補体は抗体とともに働いて細菌、外来性の血球および他の抗原の破壊を引き起こす。
【0063】
「抗体」とは、適した抗原またはハプテン(すなわち、非抗原性物質または抗原性が弱い物質)の感染または投与に応答して特異的免疫系の細胞によって産生され、抗原(例えば、細菌、毒素または外来性の赤血球)と結合してそれらを無力化および/またはそれらの毒素を無力化することができる種々の体内グロブリンタンパク質のいずれかを指すことができる。
【0064】
多くの動物およびすべてのヒトは、異物、例えばこれに限定するものではないが進入してくる細菌または微生物(例えば、バクテリア、ウイルス、アメーバ、寄生体等)、異種タンパク質および異種糖質に、および他の抗原性(すなわち、抗体および/または補体反応の刺激)物質に対する細胞制御機構および/または生理学的防御機構を提供する免疫系を有する。「免疫」という用語は多くの場合、免疫系および体内におけるその役割と互換的に使用される。
【0065】
用語「炎症」は一般に、異物、抗原または損傷を受けた組織、移動している細胞、および分子を識別してその異物、抗原または損傷を受けた組織を攻撃し、その異物または抗原を無力化および/または破壊するか、あるいは損傷した組織を除去する際の免疫系の過程を指すことができる。炎症は多くの場合、毛細血管拡張、白血球(すなわち、white blood cell)浸潤、限局性および/または全身性の体温上昇、および限局性および/または全身性の疼痛によって特徴付けることが可能である。毛細血管拡張および白血球浸潤は、感染部位および/または損傷した組織周囲の浮腫(すなわち、腫脹)によってさらに特徴付けることが可能である。炎症は、毒性物質または損傷を受けた組織を無力化、破壊および/または除去するための重要な機序であることができる。
【0066】
当業者は、免疫系とは体中に広がった細胞および器官の非常に複雑な組織であることを理解することができる。また、免疫は一般的に2つに区分されることが当業者によって一般に認識されている。自然(すなわち、先天性または生来的)免疫は、補体系、貪食細胞およびサイトカインに大きく依存して感染から身体を保護することができる。動物およびヒトは遺伝子にコードされた自然免疫を持って生まれることができる。
【0067】
補体とは、自然免疫細胞および抗体が抗原または異物を認識(すなわち、認識段階)する関連タンパク質の群であることができる。補体タンパク質は、抗原または異物の表面に結合することができる(すなわち、活性化段階)。補体タンパク質による活性化は、抗原または異物の膜多孔率を増大し、次いで抗原または異物を無力化するか、または「タグ付け(tagging)」機構として働いて他の自然免疫細胞(例えば、貪食細胞)および/または抗体による抗原または異物の識別を強化することができる。次いで、自然免疫細胞および/または抗体はその抗原または異物を無力化および/または除去することができる(すなわち、エフェクター段階)。
【0068】
貪食細胞は一般に、ファゴサイトーシスと呼ばれる過程中に他の細胞または粒子を貪食または破壊する細胞の群に属することができる。また、貪食細胞(例えば、マクロファージ、好中球、ナチュラルキラー細胞)は、抗原または異物を無力化および/または破壊する際に活性化することができる一般にサイトカインと呼ばれる可溶性媒介物質を分泌することができる。サイトカインは、例えばこれに限定するものではないが、インターフェロン(例えば、αおよびβインターフェロン)、腫瘍壊死因子(TNF)およびインターロイキンを含むことができる。
【0069】
特異的(すなわち、後天性)免疫は、自然免疫の細胞および分子の使用を保持し、付加的な2つの免疫防御性を加えることができる。特異的免疫は、宿主(すなわち、ヒトまたは動物)に特定の抗原または異物を「記憶する」能力を与えることができる。この記憶特性によって、その後に特定の抗原または異物と遭遇する毎に、宿主はより効果的な防御を組み込むことができる。ワクチン投与は、特定の抗原または異物を記憶する特異的免疫の特性に基づくことができる。
【0070】
特異的免疫は、抗原または異物に対する自然免疫の防御反応を「増幅」させる能力も宿主に提供することができる。さらに、この増幅過程は、抗原または異物が入ってくる部位に対して自然免疫を正確にターゲッティングすることも伴うことができる。
【0071】
また、特異的免疫は、特定の抗原または異物が識別され得る認識段階;特定の抗原または異物が標識され得る活性化段階;および特定の抗原または異物が抗体、リンパ球またはリンパ球由来サイトカインによって作用されてその抗原または異物を無力化および/または破壊され得るエフェクター段階を利用することができる。
【0072】
自然免疫および特異的免疫は、補体および貪食細胞がその異なる抗原を区別することができず、その抗原または異物に宿主が曝露した後に数が増やされないという点で異なることができる。他方、抗体およびリンパ球は特定の抗原または異物を識別することができ、その抗原または異物に宿主が曝露した後に数を増幅することができる。
【0073】
特異的免疫応答の2つの分類は、どの免疫系の成分が利用されているのかに応じて認識することが可能である。液性免疫とは、抗原を排除および/または無力化する抗体および他の分子の作用を指すことができる。細胞免疫と呼ばれることもある細胞性免疫(CMI)は、抗原または異物を除去および/または無力化する際のリンパ球(例えば、Bリンパ球(「B細胞」))およびTリンパ球(「T細胞」)の作用を指すことができる。
【0074】
当業者であれば、免疫系の内分泌調節およびホルモン調節は複雑な過程を伴う可能性があることを認識するであろう。複数のホルモンおよびホルモン経路が免疫系調節に関与する可能性がある。免疫調節における重要な内分泌腺には、例えばこれに限定するものではないが、松果体、視床下部、下垂体および副腎が挙げられる。松果体はセロトニンからメラトニンを合成する役割を担うことができる。メラトニンは多様な作用を身体に及ぼし、これには抗原または異物に応答して白血球および/またはリンパ球の機能を刺激および/または増強することを含むことができる。セロトニンはT細胞の増殖を刺激することによって免疫系にプラスの効果を及ぼし、ある種の貪食細胞(例えばマクロファージ)の機能を増強することができる。
【0075】
視床下部、下垂体および副腎は、ストレスに対する身体の反応を調節するための重要なホルモン・フィードバック経路、すなわち視床下部−下垂体−副腎皮質系(HPA)を形成する。視床下部は、下垂体に作用してそのホルモンを放出させ得るホルモンを分泌することができる。下垂体からのホルモンは、内分泌または体内の他の器官に対する作用を有することができる。副腎は、グルココルチコイド、電解質コルチコイドおよびアンドロゲンを含む複数のステロイド・ホルモンを産生する役割を担うことができる。副腎は、カテコールアミン・ホルモン(例えば、エピネフリン、ノルエピネフリン、ドーパミン等)を産生する役割を担うことができる。
【0076】
ストレスの多い状況に曝されたヒトおよび動物において感染性疾患の発症率が高くなるのは、困難な期間中に生じる神経内分泌変化および免疫変化の結果の可能性がある。これらの変化は、ストレスの多い状況に適応した結果の可能性がある。ストレスに対するこの適合過程の幅広く調査された生理学的および解剖学的構成要素はHPA系である。HPA系の活性化によって通常は、ストレス、疾患および損傷に伴うグルココルチコイド濃度が上昇する可能性がある。グルココルチコイドは免疫機能に対して抑制効果を及ぼし、ストレスに伴う免疫抑制の役割を担う可能性がある。したがって、グルココルチコイドの免疫抑制効果は、免疫系細胞の産生の低下および/または破壊ならびに免疫系による炎症の抑制を含む可能性がある。また、副腎カテコールアミン(例えば、エピネフリンおよびノルエピネフリン)がストレスに反応して不安などのストレスに関連する感情状態に重要な役割を担う可能性がある。
【0077】
メラトニンと構造上類似しているにもかかわらず、6−MBOAおよび関連する化合物は、メラトニン・アゴニストとして自身の能力でαおよびβアドレナリン作動性細胞受容体において機能することができる。メラトニンは鬱状態のヒトにおいて情緒不安の徴候を悪化させるが、本発明の6−MBOAおよび関連する化合物はメラトニン・アゴニストとして逆に働き、よりよい気分を実際に刺激する。
【0078】
メラトニン・アゴニストとして、本発明の新規化合物はメラトニンの産生を刺激するか、または免疫系に対するメラトニンの作用を増強することができる。例えばこれに限定するものではないが、本発明の6−MBOAおよび関連する化合物は免疫系細胞によってリンパ球の産生およびサイトカインの産生を刺激することができる。
【0079】
これまでは、免疫系機能の保持および/または増強および/または鬱病を除く不安および関連する併存疾患を緩和する際に本発明の6−MBOAおよび関連する新規化合物を投与することを結び付けようとは示唆されていない。この目的のために、本発明の発明者らは、本発明の新規化合物を用いて、免疫系に対するセロトニンおよびメラトニン誘導作用および/またはストレス誘導性神経内分泌産物を低減することによって不安の徴候の沈静および緩和を達成することが可能であることを見出した。
【0080】
また、セロトニンおよびメラトニンはともに免疫調節性を有することができる。セロトニンは、細胞増殖およびマクロファージ抗原呈示を増強することができる。メラトニンは、これに限定するものではないが、拘束ストレス、損傷およびコルチゾール投与などのストレス誘導性免疫機能障害モデルにおいて増強活性を有することができる。さらに、当業者によって理解されるように、本発明の6−MBOAまたは関連する化合物は、構造的および/または機能的にメラトニンおよびカテコールアミン(例えば、エピネフリン、αおよびβアドレナリン作動性化合物等)にそれぞれ類似することができる。
【0081】
本発明の6−MBOAまたは関連する化合物は、中枢神経系において、および中枢神経系の周囲で阻害作用および刺激作用の両方を有することができる。メラトニン類似体として、6−MBOAはメラトニン受容体においてメラトニン・アゴニストとして働き、これによって性成熟および/または性機能に対するメラトニンの悪影響を阻害することができる。さらに、6−MBOAのβアドレナリン作動性受容体作用は、メラトニン受容体を脱感作し、ひいては性成熟および/または性機能に対するメラトニンの悪影響を最小化することに役立つことができる。したがって、本発明者らによる研究は、本発明の化合物の現時点の好適な一実施形態がメラトニン作用の悪影響(例えば、性熟成、神経不安等の阻害)を刺激することなく、メラトニン機能のプラスの効果(例えば、鎮静作用および/または抗不安作用および免疫機能の保持および/または増強)のいくつかを有することを実証する。
【0082】
不安障害および関連する行動および状態を予防または治療するための本発明の新規な方法の現時点の好適な一実施形態は、そのような治療を必要とする動物またはヒトに本願に記載の化合物の治療有効量を投与することを伴うことができる。例えばこれに限定するものではないが、
パニック障害、
広場恐怖症、
全般性不安障害(GAD)、
特異的な恐怖、
対人恐怖症、
強迫性障害(OCD)、
心的外傷後ストレス症候群(PTSD)、
急性ストレス障害、
注意欠陥多動性障害(ADHD)などの、はっきり区別することができるいくつかの不安障害および関連する行動または状態がある。上記疾患の他の不安障害は、米国精神医学会(American Psychiatric Association)発行の精神疾患の分類と診断の手引(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders)(DSM−IV)、第4版に分類されている。しかし、本発明の精神および範囲は、あらゆる不安状態および合併状態を含むことを意図する。
【0083】
米国では、不安障害はヒトの精神疾患の最もよく見られるタイプである。不安障害は、例えばこれに限定するものではないが、パニック障害、強迫性障害、心的外傷後ストレス症候群、特異的な恐怖、社会的な恐怖および全身性不安障害を含むことができる。不安障害は、現実に恐怖があることの明白な証拠がない状態で経験される場合がある不安、恐怖および悩みが特徴であることができる。ストレスの多い状態の間、ヒトおよび動物は行動および自立機能およびホルモン機能ならびに分泌の変化を伴って応答することができる。これらの反応の結果、ストレスの状況の間不安症状が悪化し、心的および身体的な健康および機能に影響を及ぼす可能性がある。不安の期間中に性的興奮状態が増大すれば、その結果として、過覚醒、驚愕反応の増大、集中力および学習障害、不眠症、イライラを生じるおそれがあり、これらはすべてヒトおよび動物における種々の設定の機能を低下させる可能性がある。米国では何百万人(すなわち、診断された2300万人以上)がこれらの状態に苦しみ、個々の機能および健康のためのコスト、生産性の損失および治療費のコストが高くなる可能性がある。
【0084】
動物の能力および健康は、不安行動によって困難なものになり、有害な影響を受ける可能性がある。新しい環境、積込みおよび輸送、疾病または損傷、疲弊、混雑、去勢、ワクチン接種、浸漬、駆虫、標識付け、焼印押し、装蹄およびトレーニングを含む他の処理手順の不安を生じさせる状況は、健康、成長および能力に有害な影響を及ぼす可能性がある。個々の動物をトレーニングして不安を減少させる際の多大な努力はコストがかかり、実用的ではないこともしばしばである。同じく、不安に関連するストレス状態に起因して体重が減少すれば、結果的には動物産業に大きな経済的損失を与える可能性がある。
【0085】
不安障害を治療するのに現在利用可能な方法には、例えばこれに限定するものではないが、行動療法、認知療法、感情療法およびリラクセーション療法などの心理療法または動物療法が挙げられる。これらの方法は、不安の低減および能力の増強を達成するために多大な時間および費用を必要とする可能性がある。ヒトおよび動物において、例えばこれに限定するものではないが、セロトニン再取り込み阻害剤(すなわち、フルオキセチン、パロキセチン、セルトラリン、シタロプラム、エスシタロプラム、フルボキサミン、ベンラファクシン等)、ベンゾジアゼピン(例えば、アルプラゾラム、クロルジアゼポキシド、クロラゼプ酸、ジアゼパム、ハラゼパム、ロラゼパム、オキサゼパム等)、β遮断薬(すなわち、βアドレナリン受容体作動薬(例えば、プロプラノロール等)、モノアミンオキシダーゼ阻害薬(例えば、フェニルジン、トラニルシプロミン等)、アザピロン(例えば、ブスピロン)、ジフェニルメタン(例えば、ジフェンヒドラミン、ヒドロキシジン等)、および三環系抗うつ薬(例えば、アミトリプチリン、クロミプラミン、ドキセピン、イミプラミン、トリミプラミン、デシプラミン、ノルトリプチリン、プロトリプチリン等)などの薬物療法を用いて不安を低減することもできる。これらの薬物は重篤な副作用を有するおそれがあり、動物の治療には容易には用いることができず、食糧生産用の種には不適切な可能性がある。したがって、不安障害を治療する新しい方法がヒトおよび動物の両者に必要となっている。
【0086】
本発明は、治療を必要とする動物またはヒトに本願に記載の化合物の有効量を投与することを含む不安障害を予防または治療するための新規な組成物および方法を提供する。また、不安に関連する動物における行動およびマイナスの結果は、例えばこれに限定するものではないが、(1)繰り返しの行為、強迫行為および常同行為(例えば、潰瘍化するまで皮膚を舐めること、さく癖、空気の飲み込み、歩き回ることおよび他の病理学的行動)、(2)取り扱い(例えば、トレーラーに積み込まれること、触られること、トレーニング、パフォーマンス)に関連する心配および恐怖、(3)消耗性ストレス、(4)社会的ストレス/新しい動物と混ぜられること、(5)輸送、(6)体重減少および健康への悪影響を随伴する閉じ込めおよび混み合い、および(7)食糧生産動物(すなわち、ストレス反応によって肉質が劣る)が挙げられことができる。これらの障害のいずれも本発明の方法および化合物によって治療または予防することができる。さらに、個々のヒトを新しい、やり甲斐のある職務または強迫感を感じるような立場に置く可能性のあるストレスの多い状況も不安症状および関連する行動を誘発する可能性があり、本発明はそのような不安を生む状況の有害な作用を最小化し、回復を増強し、不安障害が長期間確立されることを予防または最小に抑えることもできる。不安を感じているヒトおよび動物を効果的に治療すれば、学習、トレーニングおよびパフォーマンスに役立ち、ストレスおよび不安の身体への有害な結果を最小化または予防することができる。
【0087】
当業者による過去の研究は、免疫系、抗不安性および気分刺激特性を有する新規の植物化合物を分離、識別および特徴付けようとしたが、本発明の6−MBOAおよび関連する化合物は先天性免疫防御を保持および/または増強することおよび/または気分を刺激することに関しては今まで識別または評価されていない。したがって、当業者によって容易に理解されるように、単子葉植物から誘導、分離、抽出、生成および/または収穫した新規化合物および同化合物を用いてヒトおよび動物における先天性免疫防御を保持および/または増強する方法は、当該分野では著しい進歩となろう。そのような新規な組成物および方法を本願において開示および教示する。
【0088】
当業者による過去の研究は沈静性および/または抗不安性を有する新規の植物化合物を分離、識別および特徴付けようとしたが、6−MBOAは不安を沈静および/または低減することに関しては今まで識別または評価されていない。したがって、単子葉植物から誘導、分離、抽出、生成および/または収穫したか、または代替的には化学合成による新規化合物および同化合物を用いて本発明によって意図されるような動物およびヒトにおける不安および関連して合併する行動および状態を沈静および/または低減する方法は当該分野では大きな進歩である。
【0089】
以下の実施例は、本発明の実施をさらに詳細に説明する。当業者であれば、本願の実施例に全般的に記載および説明されるような以下の本発明の新規な化合物の方法、式および組成物は、本発明の原理の例示とみなされるべきであり、それら原理を実施するための特定の構造または方法に限定されるものとみなすべきではないことは容易に理解されよう。したがって、実施例1〜17に呈示したような以下の本発明の方法、技術、式および組成物の現時点の好適な一実施形態のさらに詳細な説明は、特許請求されるような本発明の範囲を制限することを意図するものではなく、本発明の現時点の好適な一実施形態を代表するものに過ぎない。
【実施例1】
【0090】
本発明の化合物の類似する生理学的作用
式I、IIおよびIIIの代表化合物を化合物1〜7として以下に示す。式I、IIおよびIIIの化合物は類似する生理学的特性を有し、治療のために類似するか同等であると考えられ、齧歯類モデルを用いて試験した。
1.2−アミノ−5−メトキシフェノール[式Iのメンバー]
【0091】
【化6】

2.6−メトキシ−2−ベンゾキサゾリノン[式IIのメンバー]
【0092】
【化7】

3.2,4−ジヒドロキシ−7−メトキシ−1,4−(2H)−ベンゾキサジン−3−オン[式IIIのメンバー]
【0093】
【化8】

4.2−ヒドロキシ−4−メトキシアセトアニリド[式Iのメンバー]
【0094】
【化9】

5.2−ヒドロキシ−4−エトキシアセトアニリド[式Iのメンバー]
【0095】
【化10】

6.5−メトキシ−2−ベンゾキサゾリノン[式IIIのメンバー]
【0096】
【化11】

7.2−ヒドロキシ−5−メトキシアセトアニリド[式Iのメンバー]
【0097】
【化12】

雌のヤマハタネズミであるサンガクハタネズミに式I、IIおよびIIIに属する代表化合物を3日連続で腹腔内投与し、最終投与から24時間後に殺処分して子宮重量の応答を調べた。代表化合物の特性を評価するために、化学的手段(ユタ大学化学科(University of Utah Department of Chemistry)[ユタ州ソルトレイクシティ所在])によって作製した純粋な化合物をこの試験のために特別に調製した。すべての化合物を、総注入量0.5mlとして5%プロピレングリコールに溶解し5mcg/日の用量で注入した。対照動物には5%プロピレングリコールを0.5mlのみを投与した。ハタネズミはすべて4〜5週齢、重量25〜29gとした。
【0098】
以下の表1に示すように、式I、IIおよびIIIに属する化合物はどれも、統計学的に有意な子宮重量の増加を引き起こした。
【0099】
【表1】

平均すると、上記を投与したハタネズミの子宮重量は22.8gとなり、対照群の子宮重量よりも50%高かった。対照群のハタネズミの子宮重量以上に82%と平均重量が最大に増加したのは、6−メトキシ−2−ベンゾキサゾリノンを投与した雌のハタネズミであったが、式I、IIまたはIIIに属する化合物の作用は最小で、5−メトキシ−2−ベンゾキサゾリノンの場合、32%の子宮重量の増加を伴った。この結果は生理学的作用または作用機序が本発明の化合物によって共通して保持されることを示している。
【実施例2】
【0100】
ヒト男性における抗うつ剤および催淫剤としての本発明の化合物
この本発明の構成要素は、うつ病を緩和し、別の場合には幸福であるという気分または感情を改善するための方法に関し、前記方法は本願に定めた一つ以上の本発明の化合物の有効量をヒト男性に投与する工程を含む。本発明の化合物のこの構成要素は、これに限定するものではないが、性交への関心の欠如、性的興奮に関する問題、性交を楽しめないことおよび性機能に関する不安などの、性機能障害を治療するか、または別の場合には制的欲求または性機能を高めるための方法にも関し、前記方法は一つ以上の本発明の活性化合物の有効量を投与する工程を含む。
【0101】
二重盲検交叉試験をヒト男性に実施して、うつ病を治療するか、あるいは別の場合には気分を高揚させるほか性的機能を改善するための治療薬としての本発明の化合物を試験した。この試験は3相あり、各相期間は2週間で、被験者は本発明の化合物を1相、つまり2週間摂取した。1日投与量は高さ30〜45cmの未成熟のトウモロコシ植物からの粉砕葉に天然に含有されている本発明の化合物から構成し、合成6−メトキシ−2−ベンゾキサゾリノンを用いて計15mgの6−メトキシ−2−ベンゾキサゾリノンに標準化した。齧歯類であるウサギおよび他の動物を対象にした従来の試験から推定して、ヒトに対して最小有効1日投与量となり得ると考えられるので、15mgの用量を選択した。本発明者らが行った過去のヒトを対象にした事例試験は、15mgの1日投与量は好ましい効果を有し、健康に悪影響がないことを示唆した。一般に、本発明の化合物の治療有効量は約5mcg〜約60mgの1日投与量の範囲にあることができる。
【0102】
広く受け入れられている指標であるうつ病および全般性不安障害を定量するための病院不安およびうつ尺度(HAD)および性欲、心理学的な性的興奮および全般的な性的態度に関するアリゾナ性経験指標(Arizona Sexual Experience Index)(SEX)を用いて、うつ病または精神健康あるいは性的機能の評価を毎週行った。
【0103】
1相は14日間継続し、その間に被験者には本発明またはプラセボの1日投与量を投与した。男性被験者には本発明またはプラセボを無作為割付した。1相からなる14日間の直前に、身体検査および血液分析を行った。その時点で、各男性にHADおよびSEX用紙を記入させて精神衛生および性的機能を評価し、座位および立位での血圧および脈拍を検査し、生化学分析に必要な血液サンプルを採取した。
【0104】
2相は1相直後の7日間から構成され、その期間中は本発明もプラセボも投与しなかった。2相中、身体検査および臨床検査を再度行った。14日間継続する3相では、被験者には本発明またはプラセボのいずれかを再度投与した。本発明またはプラセボの割付は1相中に投与したカプセルの種類に従って行った。1相中に被験者が本発明の化合物を摂取した場合には、3相中はプラセボを投与し、1相中にプラセボを摂取した場合には、3相中は本発明の化合物を投与した。3相の終了直後に、身体検査および臨床検査を再度行った。3相終了後、各被験者には用意した質問を尋ね、本発明の化合物の使用に関する意見および印象を求めた。
【0105】
表2は実施例2で観察され得る現時点の好適な一実施形態の結果を表にまとめたものである。
【0106】
【表2】

これらのデータは、本発明の化合物はうつ病または気分に対して顕著なプラスの効果を有することを示す。被験者15例中14例が本試験を適切に終了し、これらの被験者のデータのみを分析に用いた。HADスコアが20.0を超えていると臨床的うつ病であることを表すが、20.0を下回るスコアも意気消沈した気分に関連すると思われる。HAD値が臨床的最小値(21.0および23.0)を超えた男性2例のみがこの試験に参加した。さらに、本発明の化合物の投与後、被験者14例中12例で気分が改善し、幸福であるという感情が改善したか、またはうつ病が沈静化した。2週間の期間にわたるHADスコアの低下は最大15、平均5.2であった。臨床的にうつ病である被験者2例ではHAD値が5.0および15.0と低下を示した。平均HADスコアは本試験開始時の13.5から本発明の化合物摂取2週間後には9.1となり、統計学的に非常に有意である。プラセボを摂取している間、被験者には統計学的に検出可能な変化は認められなかった。
【0107】
本発明の化合物を2週間摂取後、14例中5例ではASEX値が下がり、これは性的反応が改善したか、または性的不安が弱まったことを示すが、プラセボ摂取2週間後に同じ結果を示したのは男性14例中2例のみであった。ASEXの変化に統計学的有意差は認められなかったが、これは標本サイズが小さいことに起因すると考えられる。全被験者に行った出口インタビューにより本試験では本発明の化合物の性的利益も除外した。本発明の化合物を摂取している間、男性の大半は、本化合物を摂取していないときに通常経験するよりもペニスの早朝勃起のサイズが大きくなったか、持続時間が長くなったか、またはその回数が増えたことを報告した。また、大半の意見は精力、性欲および他の点で「10代の若者のように」(直接引用)感じるということに集中した。性行為の相手が嫌がるかまたは性行為の相手がいないことによって個人的状況は複雑であったことに留意されたい。被験者15例中12例は本発明の化合物の使用を継続したくないと表明した。彼らは、本発明の化合物が性的な意味合いで自分にとって有用であることが証明されたと確信したと明言した。
【実施例3】
【0108】
ヒト女性における抗うつ剤としての本発明の化合物
この実施例はうつ病を緩和し、別の場合には幸福であるという気分または感情を改善するための方法にさらに関連し、前記方法は上記に定めた本発明の化合物の有効量をヒト女性に投与する工程を含む。本発明の化合物を用いて臨床的うつ病である女性8例を治療したが、そのうち3例の女性は少なくとも1年間うつが継続中であった。被験者は実施例2と同じ用量の15mg/日の本発明の化合物を摂取した。毎日摂取する前に被験者にはHADを実施した。各被験者には2週間毎に問診を行って副作用の有無を調べ、本発明の化合物の使用に関する意見を求めた。6週間の試験終了後にHAD指標を再び実施した。
【0109】
表3を参照すると、本試験の結果の現時点の好適な一実施形態を表にする。
【0110】
【表3】

これらのデータは、本発明の化合物がうつ病を有意に緩和することを示す。最初のHADスコアは全被験者で20を超えた。女性はすべて臨床的うつ病であり、そのHADスコアは平均21.9であった。被験者8例中6例が本発明の化合物に反応を示し、HAD値は5〜16ポイント低下し、6週間の期間では低下の平均は10.5となった。全体的な平均HADスコアは試験開始時の21.9(臨床的うつ病)から使用6週間後の14.4(臨床的うつ病でない)まで低下し、被験者2例はHAD値が8および7で終了した。本試験では女性8例のみであったが、HADスコアの低減は依然として統計学的に有意(p<0.031)であった。本発明の化合物の抗うつ特性は除外される。
【0111】
過剰体重および薬物乱用はともに、一次的うつまたは二次的うつのいずれかにより特徴付けられる。過剰体重および薬物乱用に及ぼすそのような心理学的要因は、長期間有効となる療法のための生理学的要因とともに処理されなければならないので、本発明の化合物は、体重減少を達成するか、あるいは薬物乱用または薬物中毒の人における再発のリスクを低減するための補助療法を含む。
【実施例4】
【0112】
独自の方法で収穫および加工した植物からのヒト治療に適した濃度の本発明の化合物
実施例4は、未成熟段階まで成長した植物からのヒト治療に適した濃度の本発明の化合物を得るための方法に関する。「ヒト治療に適した濃度」とは、10g以下の乾燥植物材料中の本発明の化合物が1日投与量(例えば、6−メトキシ−2−ベンゾキサゾリノンである本発明の15mgの化合物;しかし、本発明の化合物の一般的な治療有効1日投与量は約5μg〜約60mgであり得る)を構成することを意味する。前記用量は天然または合成で発生する新規化合物か、本発明の天然および合成の新規化合物の両方を組み合わせたものかのいずれかを含むことができる。
【0113】
作物の品質を決定する分析パラメータと同様、具体的な収穫および乾燥条件をここで特定する。「特定の収穫および乾燥条件」とは、本発明の化合物が、植物が最終生成物のために操作される通常の方法とは異なる環境を用いて植物から得られることを意味する。
【0114】
一例として、トウモロコシ(Zea mays)は一般には成長段階または成熟段階まで生育させて種を付けたトウモロコシの穂軸を得る。本発明の化合物が発生する未成熟な成長段階では、トウモロコシ植物はヒト治療に適した濃度の本発明の化合物を含んだ相当量の葉材料の収穫の前兆であるバイオマスを有する。したがって、未成熟の植物からのトウモロコシ乾燥葉は本願に説明したヒト治療に適したものになるか、またはその乾燥葉は本発明の化合物の濃縮、抽出および精製のための資源である。ヒト治療に適した濃度の本発明の化合物の天然産物を有する他の単子葉植物がある。
【0115】
単子葉植物とはその胚芽が唯一の子葉、すなわち双葉を有する顕花植物である。単子葉植物は単系統群(すなわち、単一の祖先系統由来)であり、これに限定するものではないが、次の植物科が挙げられる:イネ科(草、あるいはイネと呼ばれる)、ショウブ科(ショウブ)、ユリ科(リュウゼツラン)、オモダカ科(サジオモダカ)、Anemarrhenaceae(知母)、アンセリカ科(スレンダー・グラス・リリー)、サトイモ科(アルム・リリー)、クサスギカズラ科(アスパラガス)、Behniaceae(旧熱帯のつる植物)、パイナップル科(アナナス、パイナップル)、ハナイ科(ハナイ)、ヤシ科(ヤシまたはヤシの木)、イヌサフラン科(ミルクメイド)、ツユクサ科(ブルー・ジンジャー)、シオニラ科(浅瀬の海藻、サーフグラス、ヒドリガモ)、カヤツリグサ科(ワタスゲ、ハリイ、スゲ)、ヤマノイモ科(ヤムイモ)、ホシクサ科(ハット・ピン、ホナガアオケイトウ(pipewort))、トウツルモドキ科(偽ラタン・ヤシ)、トチカガミ科(水草)、アヤメ科(アヤメ)、イグサ科(イグサ、ヤマスズメノヒエ)、シバナ科(アロー・ウィード、アロー・グラス)、ラン科(シャボンソウ、latherwort、scourwort)、ウキクサ科(ウキクサ)、ユリ科(ユリ、タマネギ、ツリガネスイセン)、ロウイア科(オルキダンタ)、クズウコン科(アロールート、マランタ、紋様蕉)、マヤカ科(大水苔、マヤカ)、バショウ科(バナナ)、リュウゼツラン科(熊草)、ラン科(ラン)、タヌキアヤメ科(frogsmouth)、Phormaiaceae(アマユリ)、ポシドニア科(ポシドニア)、ヒルムシロ科 (ヒルムシロ)、ラパテア科(ラパテア)、サンアソウ科(olifantsriet、rekoala grass、sprucecone)、カワツルモ科(大きな実のなる房、ヒドリガモ草)、ミクリ科(ミクリ)、Themidaceae(ookow、Bridge’s triteleia)、トゥルニア科(プリオニウム、トゥルニア)、ガマ科(ガマ)、トウエンソウ(yellow−eyed grass)、ショウガ科(ショウガ)およびアマモ科(ウナギ草)。本発明の化合物は上記の識別された単子葉植物またはその他の単子葉植物の科もしくは目のいずれかから選択された植物から誘導、収穫および/または抽出することが可能であることが意図される。
【0116】
本発明の化合物の好適な実施形態は、カヤツリグサ科およびイネ科(あるいはGraminaeと呼ばれる)の科から選択することができる。この科には、穀草(例えば、ソルガム、トウモロコシまたはmaize、コムギ、ライムギ、イネ、オオムギおよびカラスムギ);ガマ草(トリプサクム属)、ワイルド・ライス(Zizania aquatica、Z.texana)およびブタモロコシ(Zea diploperennis、Z.luxurians、wild Z.mays、Z.nicaraguensis、Z.perennis)などの穀草に関連する種;サトウキビ(サトウキビ属);竹(これに限定するものではないが、ホウライチク、Bashania、Cephalostachyum、Dendrocalamus、Dinochloa、Fargesia、Gigantochloa、Kinabaluchloa、Melocalamus、Nastus、Phyllostchys、Schizostacyum、Sinarundinaria、Thyrsostachys、VietnamosasaおよびYushania属など);および牧草(これに限定するものではないが、一年生ライグラス、ベントグラス、ギョウギシバ、イチゴツナギ、クライングラス、カモガヤ、ヘラオオバコ、スーダングラス、オオアワガエリおよびフェスクなど);に加え野草(これに限定するものではないが、アルカリグラス、ウシクサ、バッファログラス、シマスズメノヒエ、ヘアーグラス、インディアングラス、ラブグラス、メドウグラス、ネピア・グラス、パンパス・グラス、パンゴラ・グラス、ヒエ、ハマヒエガリ、slender wild oat、スイッチグラス、ハブラシ草、ウィートグラス);アワ(これに限定するものではないが、キビ属、エノコログサ属、ヒエ属、チカラシバ属およびオヒシバ属などの植物);ジュズダマ(Coix lachryma−jobi;Coix aquatica);およびオオムギに似た草(これに限定するものではないが、オオムギ属、エノコログサ属、アストレブラ属、イソレピス属、ルズラ属およびヒパレニア属など)がある。
【0117】
まず従来の方法でトウモロコシを生育させて本発明の化合物を得るが、収穫時に植物がより小さくなるように従来の作物よりも密集させて種を植える。収穫期は植物が未成熟の間に行う。トウモロコシに関しては、この未成熟な植物の収穫は、植えてから約5週間後に高さが約30cm〜約45cm以下のときに行われることができる。本発明の実施形態は、高さが約45cm〜約122cmの間にある未成熟のトウモロコシ植物の収穫を利用することが好ましく、植付け後の約5〜約8週が求められ、10週未満であることが好ましい。一般参照として、成熟したトウモロコシ植物は典型的には高さが180cm以上であり、植付け後、約4〜5カ月間成長したものである。トウモロコシに関しては、収穫は地上から3〜4cmで植物を切断することが好ましい。刈り取られた植物を集め、約40℃〜約45℃に維持した温度で乾燥することができる。実証的試験から、この温度範囲は本発明の化合物の前駆物質を活性分子へ転換するのを最大化し易くすることがわかった。
【0118】
南イリノイの試験区画では、約38,000本のトウモロコシ植物から、適したレベルの本発明の化合物を有する137kg(300ポンド)のトウモロコシ乾燥葉(96%乾燥重量)が得られた。質量分析による分析から、5週間の生育期間後、相当な量の本発明の化合物がトウモロコシ乾燥葉中に存在することがわかった。分析のためにトウモロコシ乾燥葉の無作為標本5例を得た。トウモロコシ乾燥葉標本の各々に関し、1gの部分を10mlの蒸留水中でホモジナイズし、25℃で1時間培養し、30分間煮沸し、次いで3600rpmで10分間遠心分離した。抽出毎に10mlの試薬グレードのジクロロメタンを用いて、得られた上清を3回抽出した。この3回分の抽出物を併せて空気乾燥させた後、乾燥した残渣をしっかりと栓をしたガラス管に保管した。
【0119】
この乾燥した残渣を、ガスクロマトグラフ質量分析による6−MBOA分析に供した。積分器およびSP2250GCカラムを200℃の等温にした状態のデュポン・モデル(Dupont Model)DP102装置(デュポン社(Dupont)、デラウェア州ウィルミントン所在)を用いた。メタノール液中の純粋な合成6−MBOA(シグマ社(Sigma)、ミズーリ州セントルイス所在)0.06、0.60および1.20μgの注入を用いて6−MBOAの標準曲線を得るとともに、5%レベルで再現性があった。
【0120】
6−MBOAは、ヒトの消費に適したレベルでトウモロコシ乾燥葉中に生じた。サンプルの平均は10mg/gの6−MBOAとなり、個々のサンプルのアッセイはそれぞれ8、9、10、10および12mg/gの6−MBOAであった。そのような濃度では、ヒト1日投与量を作製するには2g未満のトウモロコシ乾燥葉が必要である。これによって、ここで独自に成長、収穫および乾燥されるようなトウモロコシ葉が本発明の化合物の適した源となる。比較のために、8週以上成長させた植物からの葉の6−MBOAを分析した。6−MBOAは実質的には存在しなかった。
【0121】
本発明者らの以前の研究は、本発明の化合物の濃度の高さは本発明の化合物に関して作物の品質および適正を示す複数の生化学的パラメータに関連することができることを示した。ヒトに使用するのに適した濃度の本発明の化合物を含有するそれらの植物では、クロマトグラフによって決定されるように、フェノールの総量は17.0mg/g(乾燥重量)を超える濃度であるが、4−ヒドロキシケイ皮酸および4−ヒドロキシ−3−メトキシケイ皮酸を合わせた総量は1.5mg/g以下(乾燥重量)である。本発明について、フェノール総量および4−ヒドロキシケイ皮酸および4−ヒドロキシ−3−メトキシケイ皮酸を合わせた総量に関する上記パラメータを、植物に関連するために本発明の要素として定める。実施例2のトウモロコシ葉の標本について、全フェノールは平均19.1mg/gとなり、ケイ皮酸の累計量は平均0.9mg/gとなった。
【実施例5】
【0122】
動物の体の一部からの本発明の化合物
シカおよびエルク(シカ科)の1年の大半の主食は若葉、すなわち背の低い木本植物の成長中の先端である。しかし、前年からの硬い枝角の脱皮は、自然の牧草地の春の芽吹きおよびそれに伴って餌が草、主に萌芽中で未成熟な草へと変わるのと同時に起こる。そのような草は成長段階で、6−MBOAおよび関連する化合物が最も豊富に存在する。
【0123】
枝角の脱皮後、新しい枝角が成長し始める。このような成長中の枝角には、袋角と呼ばれる皮膚から血管によって栄養が与えられる。枝角はその先端が進むにつれて組織を下にした状態で先端から成長する。枝角の袋角先端は軟らかい軟骨性内部構造を有し、脂肪含有量が高く、対照的に、角枝の残りの部分は軟骨が硬く、脂肪はほとんどない。
【0124】
空気乾燥および凍結乾燥させた枝角の袋角サンプルを得た。これらはともに、エルク(Cervus elaphus)の亜種である市販の飼育されたカナダのワピチおよびニュージーランドのアカシカからのものであった。動物をすべて牧草地で飼育した。サンプルは55〜65日成長した枝角の袋角からのものとし、頂点から5cm以下の領域と定義される両方の先端部のほかより成長した枝角の他の部分を含んだ。
【0125】
乾燥枝角の各サンプルに関して、1gの部分を10mlの蒸留水中でホモジナイズし、25℃で1時間培養し、30分間煮沸し、次いで3600rpmで10分間遠心分離した。抽出毎に10mlの試薬グレードのジクロロメタンを用いて、得られた上清を3回抽出した。この3回分の抽出物を併せて空気乾燥させた後、乾燥した残渣をしっかりと栓をしたガラス管に保管した。
【0126】
この乾燥した残渣をガスクロマトグラフ質量分析による6−MBOA分析に供した。積分器およびSP2250GCカラムを200℃の等温にした状態のデュポン・モデル(Dupont Model)DP102装置(デュポン社(Dupont)、デラウェア州ウィルミントン所在)を用いた。メタノール液中の純粋な合成6−MBOA(シグマ社(Sigma)、ミズーリ州セントルイス所在)0.06、0.60および1.20μgの注入を用いて6−MBOAの標準曲線を得、5%レベルで再現性があった。
【0127】
表4を参照すると、実施例5の観察結果は以下のようにまとめることができる。
【0128】
【表4】

このデータは、6−MBOAは先端の全サンプル中に存在するが、枝角のより成長した部分のサンプル中には少ししか存在しないか、または全く存在しないことを示している。枝角の袋角先端サンプルからの6−MBOAの量は、発芽1週間未満(ほとんどの6−MBOAの成長段階)の草中に典型的に認められる量を超えていることは明白である。これらの結果からは、摂取された6−MBOAは枝角の袋角先端に蓄積または凝縮することがわかり、このことはヒト使用に適した濃度で本発明の化合物を得る手段であることを意味する。
【0129】
多くの動物は、草および他の単子葉植物を食べる。そのような動物は体の一部、最も可能性があるのは脂肪含有量が高いことによって特徴付けられる部分に、本発明の化合物を蓄積している可能性がある。エルクおよびシカの袋角以外の身体部分から本発明の化合物を得ること、およびエルクまたはシカ以外の動物から本発明の化合物を得ることを本発明から排除するものではない。
【実施例6】
【0130】
新規化合物の代替実施形態
本発明のフェノール化合物のどのような数の代替実施形態も、本発明の精神および範囲内にあることが意図される。特に、以下の式Vは本発明のフェノール化合物の前駆物質の代替的な好適な一実施形態の一般的表現を表す一般化学式である。
式V−式の化合物、または製薬学的に許容可能なそれらの塩。
【0131】
【化13】

(式中、「R」はHおよびOCHからなる群から選択され;式中、「R」はHおよび(グルコシドとして)グルコースからなる群から選択され;式中、「R」はH、OHおよびOCHからなる群から選択される)
示したように、本発明の新規化合物のこのような実施形態は、ベンゾキサジノイド−環状ヒドロキサム酸、ラクタムおよびそれに相当するグルコシドを含むことができる。本願において意図されるように、「R」位の置換は、HおよびOCHからなる群から選択されたメンバーと行うことができる。「R」位の置換は、Hおよび(グルコシドとして)グルコースからなる群から選択されたメンバーと行うことができる。「R」位置の置換はH、OHおよびOCHからなる群から選択されたメンバーと行うことができる。
【0132】
ここで以下の化合物8〜17を参照すると、式Vに示した一般表現による一連の化学構造は、本発明の新規化合物のさらなる実施形態の代表化合物のための化学構造を表す。
8.2,4−ジヒドロキシ−1,4−ベンゾキサジン−3−オン(DIBOA)
【0133】
【化14】

9.2,4−ジヒドロキシ−1,4−ベンゾキサジン−3−オン−グルコシド(DIBOA−Glc)
【0134】
【化15】

10.2,4−ジヒドロキシ−7−メトキシ−1,4−ベンゾキサジン−3−オン(DIMBOA)
【0135】
【化16】

11.2,4−ジヒドロキシ−7−メトキシ−1,4−ベンゾキサジン−3−オン−グルコシド(DIMBOA−Glc)
【0136】
【化17】

12.2−ヒドロキシ−1,4−ベンゾキサジン−3−オン(HBOA)
【0137】
【化18】

13.2−ヒドロキシ−1,4−ベンゾキサジン−3−オン−グルコシド(HBOA−Glc)
【0138】
【化19】

14.2−ヒドロキシ−7−メトキシ−1,4−ベンゾキサジン−3−オン(HMBOA)
【0139】
【化20】

15.2−ヒドロキシ−7−メトキシ−1,4−ベンゾキサジン−3−オン−グルコシド(HMBOA−Glc)
【0140】
【化21】

16.2−ヒドロキシ−4,7−ジメトキシ−1,4−ベンゾキサジン−3−オン(HDMBOA)
【0141】
【化22】

17.2−ヒドロキシ−4,7−ジメトキシ−1,4−ベンゾキサジン−3−オン−グルコシド(HDMBOA−Glc)
【0142】
【化23】

具体的には、化合物8は2,4−ジヒドロキシ−1,4−ベンゾキサジン−3−オン(DIBOA)の化学式を表す。DIBOAはグルコース分子を有しており、グルコシド(グリコシドとも呼ばれる)である化合物9に示したDIBOA−Glcを形成することもできる。示したように、化合物10は2,4−ジヒドロキシ−7−メトキシ−1,4−ベンゾキサジン−3−オン(DIMBOA)の化学式を表す。DIMBOAはグルコース分子と結合して存在しており、化合物11に示したグリコシド化合物(DIMBOA−Glc)を形成することもできる。
【0143】
化合物12は2−ヒドロキシ−1,4−ベンゾキサジン−3−オン(HBOA)の化学式を表す。グリコシドはHBOAとグルコース分子との間(HBOA−Glc)に形成することもでき、化合物13として示されている。化合物14は2−ヒドロキシ−7−メトキシ−1,4−ベンゾキサジン−3−オン(HMBOA)の化学式を表す。HMBOAはグルコース分子を含んでおり、化合物15として示したHMBOA−Glcを形成することもできる。また、化合物16は2−ヒドロキシ−4,7−ジメトキシ−1,4−ベンゾキサジン−3−オン(HDMBOA)の化学式を表す。ここで、化合物17は、グルコシドがHDMBOAとグルコースとの間(HDMBOA−Glc)に形成されていることを示す。上記実施例では、グルコース分子を個々のアグリコン(すなわち、糖ではない)化合物(例えば、DIBOA、DIMBOA、HBOA、HDMBOA、6−MBOA)と結合させてグリコシドを形成することが可能である。
【0144】
理解されるように、グルコース分子は典型的にはピラノース(すなわち、環状6炭素環)の形態であり、グルコピラノースと呼ばれることもできる。グルコピラノース化合物は通常、ヘミアセタールとしてアグリコン部分と結合する。本発明のさらに他の現時点の好適な一実施形態のグリコシド化合物の構成が、(2R)−構成に見ることができる。しかし、グルコースおよびグリコシドの構成の他の形態は、本発明の新規化合物の精神および範囲内にあることが予期されることが意図される。したがって、実施例6に示すような本発明の化合物の現時点の好適な一実施形態は本発明の原理の例示とみなされるべきであり、本発明を実施および/または実行するためのどのような特定の式、構造または方法も限定するものとみなすべきではない。
【実施例7】
【0145】
ジャイアント・パンダの先天性免疫防御の保持および/または増強における本発明の新規化合物
絶滅が危惧されるジャイアント・パンダ(Ailuropoda melanoleuca)は、中国中央部の高い竹林および松林に原生する熊に似た哺乳動物である。世界におけるジャイアント・パンダの総数は現在約1500頭であり、別に140頭が動物園および研究センターで飼育されている。このような頭数が地球上で最も絶滅が危惧される種の一つとしてジャイアント・パンダを位置付けていると思われる。ジャイアント・パンダの頭数が絶滅危惧レベルにある理由の一つは、乳児死亡率が高いことにある。捕獲されたパンダの集団内で生まれた新生児が離乳まで生存している可能性は50%未満の可能性がある。1980年〜1997年に捕獲飼育において誕生した42頭のジャイアント・パンダのうち、生き残ったのは僅か23頭である。ジャイアント・パンダの新生児は通常、感染症および/または未熟な免疫系が原因で死亡することが報告されている。
【0146】
野生のジャイアント・パンダは主としてタケを食べる。タケは単子葉植物として分類することができる。また、ジャイアント・パンダは花、つる草、雑草、松樹皮、ハチミツ、昆虫および齧歯類を食べることがある。あるタケ属は現在パンダが生息し得る高地に広く存在する可能性がある。タケの属は、例えばこれに限定するものではないが、Fargesia spathacea、Sinarundinaria chungii、S.nitidaおよびS.fangianaを挙げることができる。これらはすべて本発明の現時点の好適な一実施形態による化合物をタケノコおよび若葉に必ず含んでいる。しかし、これらのタケ属の植物が年を経た段階では本発明の化合物は一切生じない。
【0147】
特に、タケに見出される本発明の現時点の好適な一実施形態による化合物は繁殖期の直前およびその期間中に存在する。そのような期間中、本発明の化合物が特に豊富な状態であるタケノコおよび若葉はジャイアント・パンダによって好んで食べられることができる。その間、そのように他の時に優勢な成熟したか古くなったタケの葉には、本発明の現時点の好適な一実施形態が意図する化合物はほとんどないか、全くない。
【0148】
大人のジャイアント・パンダは、成熟したか、または古くなったタケの葉および枝を食べるときに、1日当たり約12〜約15kgの食物を消費する可能性がある。しかし、本来、本発明の現時点の好適な一実施形態による化合物を有するタケノコを食べるとき、ジャイアント・パンダは最高で1日38kgを消費する。これはその平均体重の約40%を占める可能性がある。
【0149】
歴史的には、本発明の化合物は、ジャイアント・パンダに与えられる動物園の餌にはほとんど常に不足している可能性がある。野生のパンダの餌とは異なり、飼育動物は一般に老竹のみが給餌され、本発明の活性化合物の量は極僅かである。飼育パンダには、粥、ニンジン、リンゴ、トウモロコシ紛およびサツマイモが給餌されることもある。
【0150】
本発明の現時点の好適な一実施形態の化合物は、ジャイアント・パンダの母親から子孫に妊娠および/または授乳中に伝えられ得ることがこれまでに実証されている(ネルソン(Nelson)、「Maternal diet influences reproductive development in male prairie vole offspring」、Physiology of Behavior 50:1063〜1066頁)。したがって、本発明の活性化合物を与えられ得る雌ジャイアント・パンダは、離乳期前の赤ちゃんパンダの生存の見通しから検証が可能である。
【0151】
この例では、本発明となる化合物が比較的豊富であるタケを中国の臥龍自然保護区にあるジャイアント・パンダ繁殖センター(Giant Panda Breeding Center)の動物に与えた。このセンターには40頭以上の成人パンダが存在し、これは世界の飼育パンダの総数の30%を占める。
【0152】
本発明の活性化合物の濃度は、臥龍のジャイアント・パンダ繁殖センターで最も一般的に与えられているタケの種であるヤダケのタケノコ、タケノコから生じた若葉および成熟した古い葉について決定することが可能である。タケの各成長段階の3つのサンプルを採取し、40〜45℃で乾燥させた。乾燥したタケの葉またはタケノコのサンプル各々について、約1gの部分を10mLの蒸留水中でホモジナイズし、25℃で約1時間培養し、約30分間煮沸し、次いで3600rpmで約10分間遠心分離した。抽出毎に10mlの試薬グレードのジクロロメタンを用いて、得られた上清を3回抽出した。次いでこの3回分の抽出物を併せて空気乾燥させた後、乾燥した残渣をしっかりと栓をしたガラス管に保管した。
【0153】
この乾燥した残渣をガスクロマトグラフ質量分析による6−メトキシ−2−ベンゾキサゾリノン(6−MBOA)分析に供した。積分器およびSP2250GCカラムを200℃の等温にした状態のデュポン・モデル(Dupont Model)DP102装置(デュポン社(Dupont)、デラウェア州ウィルミントン所在)を用いた。メタノール液中の純粋な合成6−MBOA(シグマ社(Sigma)、ミズーリ州セントルイス所在)0.06、0.60および1.20μgの注入を用いて6−MBOAの標準曲線を得、5%レベルで再現性があった。
【0154】
ヤダケのサンプル9例の6−MBOA含有量(100万分の1単位)は次のようになった:タケノコ=56、88、91;(2)若葉=23、27、38;(3)成熟した古い葉=3、3、5。
【0155】
2003年のほぼ3月から5月までの繁殖期の間、飼育パンダは3月から5月の繁殖期前の月およびまたその期間中、主にタケノコおよび若葉からなる餌を摂取することができる。平均消費量はこの期間の間、タケ約28kg/日の範囲の可能性がある。米および野菜の粥をパンダに給餌することができる。古い葉はできるだけ除外するのが好ましく、対照的にこれらが餌の大半を含んでいるときは繁殖期を過ぎている。
【0156】
著しい量の本発明の化合物によって特徴付けられる成長段階のタケを与えようと協力する前に、繁殖センターの雄の飼育パンダの僅か10%が自然に生殖し、雌の30%未満が出産し、そのパンダの赤ちゃんの50%以上が離乳前に死亡した。事前の繁殖期に給餌されたタケは主として成熟した古い葉から構成された。実際、古い植物材料は容易かつ安価に大量に入手可能であるので、量は別にして、協力に基づいた若い材料はほとんど全く提供されなかった。
【0157】
ジャイアント・パンダ繁殖センターで実施された知見および研究に基づき、餌の大部分を構成する本発明の現時点の好適な一実施形態の化合物を含有するタケでは、出生率は約3倍になり、ほぼすべての飼育パンダが妊娠した。離乳後の新生児の生存率は上昇し、それまでは感染症のために死亡率は高かったが、ほぼすべてが生き残った。実際、史上最多の子供(19頭の子孫)が、2003年の繁殖期のこの実施例ではジャイアント・パンダ繁殖センターで誕生した。これらの子孫のうち、2頭は死産であり、1頭は生後間もなく死亡した。この3例を検視したところ、感染性または病原性に関しては明らかにならなかった。残りの子孫は2004年1月中生き残った。まとめると、過去の繁殖期の結果に基づくと、一般には50%以上の乳児死亡率が予想されることを考慮すると、本発明の化合物を与えた後には、前例のないほどジャイアント・パンダの生存が観察された。
【実施例8】
【0158】
マウスの先天性免疫防御の保持および/または増強における本発明の新規化合物
試験デザイン
動物においてストレスが誘起する変化を試験するためのモデルは、先天性免疫防御を抑制するのに十分な所望の時間間隔の間ストレスが多い環境に動物を曝露し、次いで、免疫応答を促進することが知られている物質(すなわち、免疫原または抗原)に曝すことを含むことができる。典型的には、免疫応答は免疫原の投与部位近傍で生じ得る限局性腫脹(すなわち、炎症)の量によって測定することができる。ある動物の免疫系に対して特定の免疫源が及ぼす作用は、その動物の対照群および試験群における腫脹の程度を比較することによって検証することができる。
【0159】
本例示的試験では、約8週齢の雄の近交系マウスであるBalb/cマウス(チャールズ・リバー社(Charles River,Inc.))を用いた。当業者には理解されるように、Balb/cマウスがストレス/損傷試験に用いられることが多いのは、他の動物の系に比してストレスおよび損傷を浮け易く、重要なのは、Balb/cマウスでは免疫系の変化が観察され易いためである。
【0160】
ストレスを受けているだけでなく本発明の6−MBOAまたは関連する化合物を含有する未成熟トウモロコシ葉に曝露されたマウス(すなわち、ストレス/6−MBOAマウス)は、知られている免疫原に免疫応答を組み込む能力を有することができることが予想される。対照的に、ストレスを受けているが、本発明の6−MBOAまたは関連する化合物を含有する未成熟トウモロコシ葉に曝露されていないマウス(すなわち、ストレス/非6−MBOAマウス)は、知られている免疫原に免疫応答を組み込む能力をほとんど有さないか、または全く有し得ない。同様に、付加的な対照群は、ストレスを受けずに本発明の6−MBOAまたは関連する化合物を含有する未成熟トウモロコシ葉に曝露されていないマウス(すなわち、非ストレス/非6−MBOAマウス)およびストレスを受けているが本発明の6−MBOAまたは関連する化合物を含有する未成熟トウモロコシ葉に曝露されていないマウス(すなわち、ストレス/非6−MBOAマウス)を利用することができる。
【0161】
本試験では、Balb/cマウス20匹を等しく4群に分けた。これらの群を次の特性から構成した:非ストレス/非6−MBOAマウスの対照群を含んだ群1、ストレス/非6−MBOAマウスの群を含んだ群2、非ストレス/6−MBOAマウスの群を含んだ群3、およびストレス/6−MBOAマウスの群を含んだ群4。
【0162】
まず、ストレス手順に曝露する3日前(−3日目)に、本発明の6−MBOAまたは関連する化合物を含有する未成熟トウモロコシ葉を群3および4のマウスに餌として経口投与した。マウスの餌を粉砕し、次いで、本発明の6−MBOAまたは関連する化合物を含有する未成熟トウモロコシ葉を適した濃度(例えば、40mg/kg/匹/日)で添加した。マウスの餌および本発明の6−MBOAまたは関連する化合物を含有する未成熟トウモロコシ葉を少しのハチミツおよび水と再度混合し、次いで乾燥させた。群1および2のマウスには同じように調製した餌を与えたが、本発明の6−MBOAまたは関連する化合物を含有する未成熟トウモロコシ葉は添加しなかった。ストレス手順に曝露する2日前(−2日目)および1日前(−1日目)に、全群に同じように給餌した。
【0163】
0日目、低温拘束ストレス手順を用いて群2および4のマウスにストレスを与えた。当業者には理解されるように、低温拘束ストレス手順は、結果的に免疫応答の低下を生じて感染を起こす可能性が十分にあると記載されているモデルである。低温拘束ストレス手順では、マウスが前後に動くことはできるが回転することはできない通気した50mLの遠心分離管にマウスを入れた。次いで、マウスを4℃の冷蔵庫に約1時間入れた後、ケージに戻した。低温拘束ストレス手順は組織を損傷させず、類推によってヒトの心理的ストレスおよび/または種々の動物種が経験する可能性がある積込みまたは他のストレス(例えば、監禁、餌を与えないこと、水を与えないこと、精神的苦痛、環境変化、光の存在または不存在等)に最も厳密に似たものとした。
【0164】
選択した免疫指標は、免疫原であるジニトロフルオロベンゼン(DNFB)に対する遅延型過敏反応とした。DNFBは、1−フルオロ−2,4−ジニトロベンゼン、2,4−ジニトロ−1−フルオロベンゼン、またはサンガー試薬とも呼ばれることもある。マウスには、+1日目および+2日目にDNFBを耳介皮膚に投与した。正常な動物では、試行された領域はDNFBの投与に反応して脹れ、これはこの抗原に対する特定の感作を反映する可能性がある。そのような腫脹は一般に、炎症およびDNFBに対するT細胞性免疫応答の指標を表す。ストレスを受けているか、何らかの方法で損傷またはストレスを受けた動物は反応が鈍くなり、免疫抑制を示した。この反応は、細菌感染に対する抵抗性にも関与していた。
【0165】
ストレス手順後の1日目(+1日目)および2日目(+2日目)に、群1〜4のマウスすべてに右耳介皮膚(すなわち、耳の皮膚)にDNFBを皮膚投与した。+4日目、耳介皮膚の厚さの測定では、各マウスの曝露した耳および反対側の耳(すなわち、DNFBに曝露していない反対側の耳)の厚さを、測径器を用いて測定した。DNFBに曝露した皮膚の耳介皮膚厚から曝露していない耳介皮膚厚の値を引いて、DNFBに対する免疫応答のレベルを定量した。
【0166】
上記試験プロコルは以下のように表5にまとめることができる。
【0167】
【表5】

統計学的分析
分散分析(ANOVA)検定およびフィッシャーの最小有意差法(PLSD)検定を用いて、耳介皮膚腫脹の結果を分析した。
【0168】
結果
ここで図1を全体的に参照すると、ストレスを受けたマウスは、非ストレス・マウスに比して免疫応答の低下を呈した。さらに、本発明の6−MBOAまたは関連する化合物を含有した未成熟トウモロコシ葉を給餌されたストレス・マウスは、免疫原に対する免疫応答性のレベルが正常であることを示した。さらに具体的には、DNFBの局所投与によりマウスを感作することによって、DNFBに対する細胞免疫応答を決定した。図1に示すように、縦座標(縦)軸は、右耳介と体側の耳介との間においてmm単位で測定した厚さ(すなわち、腫脹)の差を表す。横座標(横)軸は、本試験で識別した4群の各々のマウスに相当するグラフを表す。
【0169】
本発明の現時点の好適な一実施形態では、濃度が4:1のアセトン−鉱油混合物中で0.25%DNFB(シグマ社(Sigma))の溶液を調製し、+1日目および+2日目に右耳介皮膚の裏側に10μlを塗布した。+4日目、耳を測径器で測定したところ10−3mmであった。耳の腫脹(測定回数が大きい)はDNFBに対する免疫応答があるが、腫脹が大きくなるほど応答の大きさも大きくなることを示す。
【0170】
本試験の結果は、他のすべての群と比較して対照群のストレスを受けたマウスでは免疫応答が低下したことを示す。本発明の6−MBOAまたは関連する化合物を含有する未成熟トウモロコシ葉に曝露したストレスを受けたマウスはDNFBに対して通常の反応であり、本発明の6−MBOAまたは関連する化合物を含有する未成熟トウモロコシ葉はストレスを受けた拘束マウスにおいて細胞性免疫応答を保持したことが示唆される。
【実施例9】
【0171】
マウスの先天性免疫防御の保持および/または増強における本発明の新規化合物−用量範囲試験
試験デザイン
別の試験を実施して、複数の濃度でストレス・マウスに投与した本発明の6−MBOAおよび関連する化合物を含有する未成熟トウモロコシ葉からの細胞性免疫応答に対する作用を評価することができる。本試験プロトコルは実施例8のプロトコルと類似するものであり、40mg/kg、25mg/kgおよび5mg/kgの6−MBOA(それぞれ6−MBOA用量#1、#2および#3)の用量範囲で本発明の6−MBOAまたは関連する化合物を含有する未成熟トウモロコシ葉にマウスを曝露した。DNFBを投与した耳の厚さを+4日目に測定した。
【0172】
この実施例では、約8週齢である雄のアルビノ近交系マウスであるBalb/cマウス(チャールズ・リバー社(Charles River,Inc.))を用いた。他の動物の系に比してストレスおよび損傷を受け易いので、Balb/cマウスがストレス/損傷動物として使用されることが多い。当業者であれば免疫系の変化はこれらの動物で観察され易いことが理解されよう。
【0173】
ストレスを受けているだけでなく本発明の6−MBOAまたは関連する化合物を含有する未成熟トウモロコシ葉に曝露されたマウス(すなわち、ストレス/6−MBOAマウス)は、知られている免疫原に免疫応答を組み込む能力を有することができることが予想される。対照的に、ストレスを受けるかもしれないが、本発明の6−MBOAまたは関連する化合物を含有する未成熟トウモロコシ葉に曝露されていないマウス(すなわち、ストレス/非6−MBOAマウス)は、知られている免疫原に免疫応答を組み込む能力をほとんど有さないか、または全く有し得ない。同様に、別な対照群は、ストレスを受けずに本発明の6−MBOAまたは関連する化合物を含有する未成熟トウモロコシ葉に曝露されていないマウス(すなわち、非ストレス/非6−MBOAマウス)、およびストレスを受けているが本発明の6−MBOAまたは関連する化合物を含有する未成熟トウモロコシ葉に曝露されていないマウス(すなわち、ストレス/非6−MBOAマウス)を利用することができる。
【0174】
Balb/cマウス35例を6群に分割した。この群を次の特徴から構成した:非ストレス/非6−MBOAマウスの対照群を含む群1;ストレス/非6−MBOAマウスの対照群を含む群2;非ストレス/6−MBOAマウスの群を含む群3;ストレス/6−MBOA用量#1マウスの群を含む群4;ストレス/6−MBOA用量#2マウスの群を含む群5;およびストレス/6−MBOA用量#3マウスの群を含む群6。
【0175】
まず、ストレス手順に曝露する3日前(−3日目)に、本発明の6−MBOAまたは関連する化合物を含有する未成熟トウモロコシ葉を群3〜6のマウスに餌として経口投与した。マウスの餌を粉砕し、次いで、本発明の6−MBOAまたは関連する化合物を含有する未成熟トウモロコシ葉を6−MBOAの適した濃度(例えば、40mg/kg/匹/日)で添加した。マウスの餌および本発明の6−MBOAまたは関連する化合物を含有する未成熟トウモロコシ葉を少しのハチミツおよび水と再度混合し、次いで乾燥させた。群1および2のマウスには同じように調製した餌を与えたが、本発明の6−MBOAまたは関連する化合物を含有する未成熟トウモロコシ葉は添加しなかった。ストレス手順に曝露する2日前(−2日目)および1日前(−1日目)に、全群に同じように給餌した。
【0176】
0日目、低温拘束ストレス手順を用いて群2および4のマウスにストレスを与えた。当業者には理解されるように、低温拘束ストレス手順は、結果的に免疫応答の低下を生じて感染を起こし易くする可能性が十分にあると記載されているモデルである。低温拘束ストレス手順では、マウスが前後に動くことはできるが回転することはできない通気した50mLの遠心分離管にマウスを入れた。次いで、マウスを4℃の冷蔵庫に約1時間入れた後、ケージに戻した。低温拘束ストレス手順は組織を損傷させず、類推によってヒトの心理的ストレスおよび/または種々の動物種が経験する可能性がある積込みまたは他のストレス(例えば、監禁、餌を与えないこと、水を与えないこと、精神的苦痛、環境変化、光の存在または不存在等)に最も厳密に似たものとした。
【0177】
選択した免疫指標は、ジニトロフルオロベンゼン(DNFB)に対する遅延型過敏反応とした。マウスには、+1日目および+2日目にDNFBを耳介皮膚に投与した。正常な動物では、試行された領域はDNFBの投与に反応して脹れ、これはこの抗原に対する特定の感作を反映する可能性がある。そのような腫脹は一般に、炎症およびDNFBに対するT細胞性免疫応答の指標を表す。ストレスを受けているか、何らかの方法で損傷またはストレスを受けた動物は反応が鈍くなり、免疫抑制を示した。この反応は細菌感染に対する抵抗性にも関与していた。
【0178】
ストレス手順後の1日目(+1日目)および2日目(+2日目)に、群1〜6のマウスすべてに右耳介(すなわち、耳の皮膚)にDNFBを皮膚投与した。+4日目、耳介皮膚の厚さの測定では、各マウスの曝露した耳および反対側の耳(すなわち、DNFBに曝露していない反対側の耳)の厚さを、測径器を用いて測定した。DNFBに曝露した皮膚の耳介皮膚厚から曝露していない耳介皮膚厚の値を引いて、DNFBに対する免疫応答のレベルを定量した。
【0179】
上記試験プロコルは以下のように表6にまとめることができる。
【0180】
【表6】

統計学的分析
分散分析(ANOVA)検定およびフィッシャーの最小有意差法(PLSD)検定を用いて、耳介皮膚腫脹および足蹠腫脹の結果を分析した。
【0181】
結果
ここで図2を全体的に参照すると、ストレスを受けたマウスは、非ストレス・マウスに比して免疫応答の低下を呈した。さらに、40mg/kgおよび25mg/kgの濃度で本発明の6−MBOAまたは関連する化合物を含有した未成熟トウモロコシ葉を給餌されたストレス・マウスでは、5mg/kgの6−MBOA濃度で本発明の6−MBOAまたは関連する化合物を含有するか、または6−MBOAを含まない未成熟トウモロコシ葉を給餌されたマウスよりも、免疫応答は有意に高かった。
【実施例10】
【0182】
子ウシの先天性免疫防御の保持および/または増強における本発明の新規化合物
試験デザイン
動物においてストレスが誘起する変化を試験するためのモデルは、先天性免疫防御を抑制するのに十分な所望の時間間隔の間、ストレスが多い環境に動物を曝し、次いで、免疫応答を促進することが知られている物質(すなわち、免疫原または抗原)に曝露することを含むことができる。典型的には、免疫応答は免疫原の投与部位近傍で生ずる可能性がある限局性腫脹(すなわち、炎症)の量によって測定することができる。ある動物の免疫系に対して特定の免疫源が及ぼす作用は、その動物の対照群および試験群における腫脹の程度を比較することによって検証することができる。
【0183】
本試験では、本発明の6−MBOAまたは関連する化合物を含有する未成熟トウモロコシ葉を穀物と混合し、ストレスの多い困難(例えば、ホルター・ブレーキング)を受け易いであろう、離乳した子ウシに給餌した。本発明の6−MBOAまたは関連する化合物を含有する未成熟トウモロコシ葉を補給することにより生物学的効果があることの証拠を観察することができ、これは本発明の6−MBOAまたは関連する化合物の代謝が生じたことを示唆し、この代謝がストレスを受けた子ウシにおいて免疫応答の保持および/または増強を示すことができる。
【0184】
本発明の現時点の好適な一実施形態では、試験設備には柵付きの家畜小屋、スクイーズ・シュート、スケール、および手順のために子ウシを集合させることのできるアリーナを含んだ。研究室として教室も使用した。
【0185】
本試験では、32頭の子ウシを各々8頭からなる4群に等しく分けた。これらの4群を次の特性から構成した:非ストレス/非6−MBOA子ウシの対照群を含んだ群1、ストレス/非6−MBOA子ウシの群を含んだ群2、ストレス/6−MBOA用量#1子ウシの群を含んだ群3およびストレス/6−MBOA用量#2子ウシの群を含んだ群4。
【0186】
子ウシの大半が雌(n=29)であったが、去勢牛(n=1)および雄牛(n=2)も含んでいた。少なくとも2週間、子ウシを離乳させた。ロープに繋いで子ウシにストレスを蓄積させた。子ウシには明らかに白癬感染症が認められたが、どの子ウシも急性呼吸器感染症または他の感染症を呈さなかった。子ウシはみな食欲が良好であるように思われ、穀物の割当量をすぐに消費した。
【0187】
水および干し草を自由に摂取できる状態で、4つの別個の囲いの中で子ウシを飼育した。本発明の6−MBOAまたは関連する化合物を含有する未成熟トウモロコシ葉を補助食品として添加したスイート・ミックス・グレインまたはそれを添加していないものを子ウシに給餌した。まず、ストレス手順に曝露する前の1日目(−1日目)は、浅い飼い葉桶に穀物の割当量を撒くことによって、子ウシに−1日目および0日目には朝(8時)に1回給餌した。まず+1日目および試験の終わりまで継続して、子ウシには午前8時および午後5時の2回給餌した。子ウシは飼い葉桶に整列し、ほぼ同じ量の割当量を食べるのが観察された。対照群(すなわち群1および2)および本発明の6−MBOAまたは関連する化合物を含有する未成熟トウモロコシ葉を補給した群(すなわち、群3および4)は、約4540g(10ポンド)のスイート・ミックス・グレインを1日2回食べた。全割当量は典型的には約5分以内に消費された。
【0188】
本試験のストレス手順はホルター・ブレーキングを含む。ホルター・ブレーキングは、アリーナ内の柵に1.5時間繋いでおく(すなわち、ローピング)ことを含んでいた。ローピング手順中、子ウシには餌または水を食べさせないようにした。ローピングは0日目に行い、その直後に子ウシの首にDNFBを感作させた。
【0189】
本発明の6−MBOAまたは関連する化合物を含有した未成熟トウモロコシ葉を実験室規模で秤量し、動物8頭の各群に対して適した量を3175g(7ポンド)のスイート・ミックス・グレインに加え、手でよく混ぜ合わせた。スイート・ミックス・グレイは多少粘りがあるので、本発明の6−MBOAまたは関連する化合物を含有した未成熟トウモロコシ葉を十分に混ぜ合わせた。子ウシが補給割当量を食べ終えたら、1361g(3ポンド)の穀物を与えた。
【0190】
体重測定
−3日目、+4日目および+11日目に子ウシの体重を測定した。体重は子ウシ間で変動したが、各群間で開始時の体重に有意差は見られなかった。どの時間ポイントでも群間に差はなかったが、本発明の6−MBOAまたは関連する化合物を含有した未成熟トウモロコシ葉を補給した餌は子ウシの体重増加を阻害しなかった。
【0191】
免疫応答アッセイ
DNFB感作を用いて細胞性免疫応答をすべての子ウシで評価した。0日目、子ウシをシュート内に入れ、左頚部の1区画を剃毛し、アセトンおよび鉱油中の4%DNFB100μlを剃毛領域に塗布した。+1日目は、400μlのDNFBを用いて同じ頚部領域に再度塗布した。+3日目、子ウシの右耳を剃毛し、60μlのDNFBを剃毛領域に塗布した。その頚部および正常な頚部の皮膚の感作領域を、測径器を用いて測定した。24時間後、塗布した耳および反対側の耳をともに測定し、頚部の皮膚を再度測定して記録した。このデータは、正常な皮膚と、感作または塗布した皮膚との間に差があることを示した。
【0192】
本発明の6−MBOAまたは関連する化合物を含有した未成熟トウモロコシ葉を穀物と十分に混ぜ合わせ、割当量を容易に消費した子ウシに給餌した。
結果
上記のマウス試験に観察されたように、抗原に接触したことに対する免疫応答は、ストレスを受けた対照群に比して、本発明の6−MBOAまたは関連する化合物を含有した未成熟トウモロコシ葉に曝露した子ウシでは高かった。ここで図3を参照すると、感作部位および塗布部位両方の腫脹度として測定した免疫応答は、ストレスを受けた対照群に比して、本発明の6−MBOAまたは関連する化合物を含有した未成熟トウモロコシ葉に曝露した子ウシで高かった。免疫応答を、測径器を用いてmm単位で測定することができる。示すように、群3および群4はDNFB曝露後に免疫応答を組み込むことができた。
【0193】
図4を参照すると、頚部の感作部位および塗布部位両方の腫脹度として測定した免疫応答は、ストレスを受けた対照群に比して、本発明の6−MBOAまたは関連する化合物を含有した未成熟トウモロコシ葉に曝露した子ウシで高かった。示すように、群3および群4はDNFB曝露後に免疫応答を組み込むことができた。
【0194】
考察および結論
結論として、本発明の6−MBOAまたは関連する化合物を含有する未成熟トウモロコシ葉を用いた補給は、ストレス困難に曝露した子ウシにはプラスの効果があることは明白である。子ウシの遺伝的特徴および大きさおよび試験開始時の被検体の状態が比較的悪かったことを考慮すると、これは強力な観察結果となった。
【実施例11】
【0195】
魚の先天性免疫防御の保持および/または増強における本発明の新規化合物
水産養殖の形態である養殖は、過去10年間で約11%/年拡大した。養殖は世界の食糧経済で最も急速に成長している分野の可能性がある。1990年には、1300万メートルトンの魚が生産された。これと比較して1998年には、3100万メートルトンの魚が生産された。この目的のために、養殖は主要な食糧源として、牛の放牧を世界的に実質的に上回っている。養殖の約85%は発展途上国で行われている。例えば、中国は200万トンである2位のインドを大きく引き離しており、1998年には世界の水産養殖生産高のうち2100万トンを占めた。
【0196】
工業国のうち米国、カナダ、ノルウェーおよび日本は魚生産のリーダーである。北米および欧州では、ナマズ、マスおよびサケが魚生産量の80%以上を占める。現在の450,000メートルトンという米国の年間生産高は主にブチナマズ(Ictalurus punctatus)であり、ノルウェーで生産される400,000トンは主に太平洋サケ(Salmo salar)である。米国の養殖太平洋サケの漁獲高は1990年の12,000メートルトンから2003年には50,000メートルトンまで成長した。
【0197】
養殖に特有の、混み合ってストレスを受ける環境のために、病気が頻繁に起こり、養殖の成功は壊滅的な制限を受けることになる。このため、魚および/または水生動物の免疫系機能を増強および/または強化することができる本発明の新規化合物の好適な実施形態は、養殖業の定量的および定性的生産量に相当な影響を及ぼす可能性がある。例えば、国を問わず、養殖業において主に実践されてきたことは、抗生物質を餌の中に予防的および一次的に加えることであった。米国では、1999年だけでも30メートル・トン以上の抗生物質活性成分および約6.5〜14.3メートル・トンのテトラサイクリンが魚餌に使用された。この実践の専門家は、公衆衛生および生態への大きな悪影響は、養殖業において抗生物質を過剰に使用することから派生する可能性があることを示唆している。
【0198】
これらの悪影響には、例えばこれに限定するものではないが、環境への影響が望ましいものではなくなり、ヒト病原体が特定の抗生物質および抗生物質のクラスに抵抗する可能性があることが挙げられる。実際、カナダのクイーン・シャーロット海峡のブロートン群島の逃げた魚は、いくつかのヒト疾患を引き起こすことが知られている細菌を有することが認められたが、その病原菌は異なる10種の抗生物質に耐性があることが検証された。
【0199】
養殖に使用される抗生物質を含んだ餌の約30%は、実際には食べ残される可能性がある。それよりも、この抗生物質を含んだ餌は、野生または自然の食物連鎖に直接入る可能性があり、食物連鎖では天然の海藻、他の植物および有用なバクテリアを死滅させるほか、オヒョウの稚魚に奇形を生じさせることが報告されている。抗生物質が養殖場の境界を越えて行くという他の証拠は、その付近で捕獲された野生魚の75%以上の魚肉において抗生物質が含まれていることに示されている可能性がある。
【0200】
抗生物質耐性菌の発生が増加することは抗生物質の使用が増加する原因ともなり、しがたって水産養殖に関連する環境およびヒトの健康へのリスクが増大することにもなる可能性がある。耐病性を向上させるレベルまで養殖魚の免疫系を幾分増強することができるなら、水産養殖における抗生物質の使用を最小化することが好ましい。さらに、環境およびヒトの健康への影響に対する懸念から、欧州連合は魚餌における抗生物質の許容基準をさらに低くするように指示し始めている。議論されているように、欧州では2006年1月またはほぼその時に発効することが期待される魚餌抗生物質の全面的禁止が行われるかもしれない。同じく、他国の政府は同様の法案を真剣に検討するかもしれない。魚餌中の抗生物質が懸念されるために、養殖業では免疫系を刺激する飼料添加物がさらに望まれるであろう。ここで意図されるように、本発明の化合物の現時点の好適な一実施形態は、動物飼料製造にとって安全であると容易かつ広く認識されている製剤として存在することができる。
【0201】
魚は脊椎動物の非常に原始的な形態であり、病原体の攻撃に反応し、それから身を守る典型的な脊椎動物免疫系を有する。他の脊椎動物に見られるように、通常の液性応答および細胞応答が魚の免疫系の特徴である。実際、脊椎動物間の免疫系の類似性は、脊椎動物免疫応答を試験するための実験モデルとして魚を広く使用していることによって十分に証明され得る。当業者によって理解されるように、脊椎動物の順位にわたって、免疫系の生理および機能のあるレベルの同等性が存在する可能性がある。同様に、哺乳動物および鳥または魚を問わず、生化学的および生理学的応答が、本発明の化合物の現時点の好適な一実施形態を投与することにより論理的に期待され得る。
【0202】
「一般に安全と認められる」、すなわち「GRAS」という用語は、可能な餌の含有物であると評価された物品を描写するために世界的に使用される概念であり、ヒトにおける使用および食物連鎖において安全であるとみなすことができる。GRASの概念は、大規模で、繰り返される評価からGRAS内容物を除外することによって、安全性評価の過程を簡単にするものである。理解されるように、GRASとして分類される物質には、本願に開示するような本発明からなる化合物を含有する単子葉植物の葉を含む。
【0203】
本発明のフェノール化合物の新規組成物およびフェノール化合物の前駆物質は先天性免疫防御を保持および/または増強するように構成されているため、先天性免疫防御を保持および/または増強する方法は、上記および関連する添付図面に記載されたように6−MBOAがそのメンバーである、関連する化学ファミリーに属するフェノール化合物を含むことが容易に理解されよう。したがって、本願に提供された実施例は本発明の原理の例示であるとみなされるべきであり、それら原理を実施するための特定の構造または方法を限定するものとみなされるべきではないことが意図される。
【0204】
6−MBOAがそのメンバーである、本願に関連する添付図面に定義された化学ファミリーに関連するフェノール化合物の新規組成物および関連する化学ファミリーに属するフェノール化合物は、これに限定するものではないが、経口投与、非経口投与、舌下投与、局所投与、経皮投与、筋内投与または吸入投与などの当業者には知られたどのような様式でも投与可能であり、採用される剤形に従って選択される賦形剤も含むことができることがさらに理解されよう。また、個々に投与される抽出組成物の用量は、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、いくつかの考慮事項に基づいて変化することができ、したがって、治療される標的である個人特定の事例に左右されよう。
【0205】
上記考察から、本発明は、6−MBOAがそのメンバーであるフェノール化合物および関連する化学ファミリーに属するフェノール化合物の前駆物質を用いて、ヒトおよび動物における先天性免疫防御を保持および/または増強する新規組成物および方法を提供する。先天性免疫防御を保持および/または増強する本発明の現時点の好適な一実施形態は、動物(例えば、魚、鳥、爬虫類および哺乳動物)およびヒトに投与することが可能である。また、哺乳動物は、クマ(例えば、北極グマ、ハイイロ・グマ、ツキノワグマ、ヒグマ、ジャイアント・パンダ等)、バッファロー、イヌ科動物(例えば、オオカミ、キツネ、イヌ、コヨーテ等)、ウシ、シカ科動物(例えば、シカ、ムース、エルク、アンテロープ、カリブー等)、ゾウ、ネコ科動物(例えば、ネコ、ライオン、トラ、チータ、クーガー、ヒョウ、ジャガー、オオヤマネコ等)、キリン、ヤギ、カバ、ウマ、カンガルー、コアラ、マナティ、霊長類(例えば、サル、ゴリラ、チンパンジー、テナガザル、ヒヒ、オラウータン、キツネザル、タマリン等)、サイ、齧歯類(例えば、マウス、ラット、モグラ等)、アザラシ科動物、ヒツジ、雌ブタ、セイウチ、イタチ(例えば、カワウソ、ビーバー、アナグマ、ミンク等)、クジラ、ヤクおよびシマウマを含むことができる。
【0206】
実施例では特定の用量濃度を用い、絶対的な用量域(例えば、5μg〜60mg)または体重に個別化した用量域(例えば、5mg/kg〜40mg/kg)基づくが、これらの有効用量レベルは本発明の現在の好適な実施形態いくつかの例示に過ぎず、それらを限定することを意図したものではない。一方、有効用量レベルはかなりの程度まで変化してもよく、好適な用量レベルは治療中の条件および治療中のヒトの大きさまたは性別に合わせて変動してもよい。この目的のために、有効量が与えられている限り、用量レベルは決定的であるとは思われない。
【0207】
先行技術の技法および方法とは異なり、本発明は、単子葉植物から誘導、分離および/または抽出されるか、または化学合成による新規化学組成物および同新規組成物を用いて、(1)ヒトおよび動物における先天性免疫防御を保持および増強し、(2)ヒトおよび動物においてインドールアミン、例えば、セロトニンおよびメラトニンの濃度を上昇させ、(3)哺乳動物においてセロトニンおよび/またはメラトニンの類似体および/または作動物質として機能し、(4)視床下部−下垂体−副腎(HPA)系の免疫調節作用を抑制し、(5)グルココルチコイド・ホルモン(例えば、コルチゾル)の免疫抑制作用と反対に作用し、(6)カテコールアミン化合物(例えば、エピネフリンおよびノルエピネフリン)の免疫抑制作用と反対に作用し、(7)T細胞増殖およびマクロファージ抗原呈示を増強し、(8)免疫系異常(例えば、感染反応および自己免疫反応のリスクの増大)に伴う合併症を低減させる方法を提供する。
【実施例12】
【0208】
ストレスの多い状況に置かれた子ウシの不安行動
単子葉植物の葉から得た本発明の化合物を穀物と十分に混合し、72.6〜136kg(160〜300ポンド)の子ウシに給餌した。本発明の化合物(例えば、粉砕したトウモロコシ葉)を1日に20mg/kg〜70mg/kgこの子ウシに給餌したところ、子ウシはこの餌を容易に消費した。1カ月間では、対照群と栄養補助食品給餌子ウシとの間に体重増加の差は見られなかった。
【0209】
どの子ウシもスクイーズ・シュート内で不安行動(すなわち、スクイーズ・シュートに入るのを嫌がり、触れられるのを避けた)を示したが、端綱を初めて受け取り、アリーナ内に引かれ/引っ張られて繋がれようとさらに試みたことが大きなストレス要因に思われた。栄養補助食品給餌子ウシはそのストレスの間落ち着いていたことが観察された。
【0210】
取り扱われた子ウシの最初の2群は、それ以前に本発明の化合物(例えば、粉砕トウモロコシ葉)を給餌された子ウシで、その後に、トウモロコシ葉が給餌されず、等量の穀物だけを与えられていた対照群の子ウシが続いた。スクイーズ・シュートに入れようとした間、行動には群間差が認められ(対照群をスクイーズ・シュートに入れることが困難であり、続いて後ろ脚を蹴り上げたり、脚をさらにバタつかせたりした)、柵に繋いだ後、数分後には、栄養補助食品給餌子ウシは脚をばたつかせることも、引かれることに抵抗することもなかったことが観察された。反対に、対照群は柵から後退し、柵に体当たりしたり、地面に体を打ちつけたりし、ストレスを受けた期間の大半、この行動が続いた。穀物に本発明の化合物を補った方の子ウシは数分後には落ち着き、暴れている対照群の子ウシを見ながら立ち尽していた。さらに、栄養補助食品給餌子ウシは、ストレスを受けた期間の終わりには繋いだり、アリーナから連れ出したりすることが容易であったが、対照群の子ウシは近づくことが困難であり、繋がれたり、動かされたりするのに全体的に抵抗した。
【実施例13】
【0211】
元気のよい馬術用馬の不安行動
非常に驚き、そのために攻撃的な行動を呈する高い能力のある馬術用馬に穀物に混ぜ合わせた本発明の化合物(例えば、粉砕したトウモロコシ葉)を1日40mg/kg給餌し、行動の変化を観察した。補給3日以内に、馬は明らかに静かになって扱い易くなると同時に、精力およびパフォーマンス能力も維持したままだった。馬の所有者は長期間にわたって20mg/kgを馬に与え続け、鎮静作用が継続していることを報告した。
【実施例14】
【0212】
離乳馬に関する不安
モンタナ州のウマ牧場経営者が試験に参加した。この経営者は離乳ウマに関して以前から困難な経験をしており、子ウマのほとんどが離乳直後に病気になり、2002年の離乳期には2頭の死亡を含む深刻な結果になった。2003年のシーズンでは、この雌馬および子馬に穀物に混ぜ合わせた本発明の化合物(例えば、粉砕したトウモロコシ葉)20〜40mg/kg相当を離乳前後の数日間給餌した。観察者は雌馬と子馬を引き離すときにあまり鳴かなくなり、離乳後の子馬に病気が検出されなかったことを記録した。
【実施例15】
【0213】
マウスを使った不安試験における本発明の新規化合物
マウスを対象に不安を検証する試験には、新しい環境にマウスを直面させること、および/または捕食者の匂いに曝露することを含む。マウスの不安レベルおよび感情的反応に対して抗不安剤が及ぼす作用は、マウスの対照群および試験群における行動反応を比較することによって検証することができる。
【0214】
本例示的試験では、約12〜14週齢の雌のアルビノ近交系マウスであるBalb/cマウス(チャールズ・リバー社(Charles River,Inc.))を用いた。当業者には理解されるように、Balb/cマウスが不安試験に用いられることが多いのは、不安な設定に対して特に感受性が高いことが知られており、これらの動物では行動反応を容易に観察することができるためである。
【0215】
本発明の6−MBOAまたは関連する化合物を含有した未成熟トウモロコシ葉の調整物を給餌した後に不安を引き起こす状況に曝露させたBalb/cマウス(すなわち、6−MBOAマウス)は、不安に伴う行動反応は低下するであろうことが予想された。例えば、マウスは臆病さをあまり示さず、その環境をより奔放に探索しようとし、潜在的な捕捉者に対して恐怖をあまり示さないであろうと予想された。対照的に、本発明の6−MBOAまたは関連する化合物を含有する未成熟トウモロコシ葉の調整物が給餌されなかったBalb/cマウス(すなわち、非6−MBOAマウス)は、6−MBOAマウスに比してかなりの程度まで不安に伴う行動反応を示すであろうことが想定された。
【0216】
試験モデル
本試験では、雌のBalb/cマウス14匹を各7匹の2群に分けた。これらの群を次の特性から構成した:(1)非6−MBOAマウスの対照群を含んだ群1および(2)6−MBOA投与マウスの群を含んだ群2(すなわち、本発明の6−MBOAまたは関連する化合物を含有する未成熟トウモロコシ葉の調整物を給餌)。非6−MBOAマウスには6−MBOAを給餌または投与しなかった。すべてのマウスをケージ当たり3〜5匹入れ、明/暗の周期を12/12時間とした。照明を午前6時に点灯させ、午後6時に消灯した。約21℃〜約23℃(華氏約70度〜華氏約73度)に温度を維持した。群Iおよび群IIともに市販の齧歯類用のペレット餌および水を自由に摂取させた。
【0217】
不安試験手順に曝露する前の5日間の各々に関し、適した濃度(例えば、40mg/kg/匹/日)で本発明の6−MBOAまたは関連する化合物を含有する未成熟トウモロコシ葉の調整物を群2のマウスに餌として経口投与した。不安試験手順に曝露する前の5日間の各々に関し、群1のマウスには同じように調製した餌を与えたが、本発明の6−MBOAまたは関連する化合物を含有する未成熟トウモロコシ葉は添加しなかった。
【0218】
5日後、オープン・フィールド試験装置を用いて不安試験を実施した。この試験装置では、通常は定められた小さなケージで飼育されているマウスを横寸法が約35cm〜約76.2cmおよび縦寸法が約20cmの大きなプラスチックの箱に突然入れた。箱の床に周囲の区域の印を付け、各々約18cmの長さとした。先の試験動物の残り香を消すために、各試験動物を入れる前に、箱の床に敷いた紙タオルを交換することが好ましかった。箱は100Wの電球で照明したが、その一角は「安全コーナー」と印を付けて紙タオルで遮蔽した。3歳齢の家庭犬からの新鮮なイヌの糞を箱の第3象限の中央に置くことによって、箱の一部分に捕捉者の匂いを入れた。
【0219】
約午後7時〜約午後10時までの薄暮の中でマウスを試験した。試験では箱の安全コーナーに優しくマウスを入れた。これで試験を開始し、5分の時間間隔にわたってマウスのある種の行動反応を記録した。この試験段階の間、マウスには好きなように箱を移動させた。
【0220】
新しい環境および捕捉者の匂いに対するマウスの反応を評価するのに用いた行動反応の尺度は、以下の時間(秒単位)とした;(1)マウスがオープン・フィールドを探索しようとした時間、(2)マウスがオープン・フィールドの周囲部分に入った回数、(3)マウスがオープン・フィールドの中央部分に入った回数、(4)捕捉者の匂いのする物体に向かって直接接近した回数、(5)伸び/探索行動の回数、(6)尾が防御姿勢を取った回数、および(7)「身動きできない」姿勢のセッションの回数。
【0221】
本試験結果を以下の表7に示す(特に記載のない限り、平均値±平均値の標準誤差、n=7として表した)。
【0222】
【表7】

統計学的分析
対応のあるt検定および分散分析(ANOVA)を用いて、行動反応の差の優位性を分析した(p<0.05)。
【0223】
結果
ここで表7を全体的に参照すると、想定通り、群2の6−MBOA投与マウスは臆病さをあまり示さず、オープン・フィールド環境を奔放に探索し、潜在的な捕捉者の匂いにあまり恐怖を示さなかった。表7に示すように、群1(非6−MBOAマウス)の対照群マウスは、オープン・フィールドの探索を開始しようとするまでの平均時間が非常に長いことがわかった。ばらつきが比較的大きいことで、ここで用いた尺度によってこの試験結果が有意差のないものになっているが、算出した平均値の差は予想された方向にあり、非6−MBOAマウスに比べて6−MBOAマウスは新しい環境を探索しようとすることにあまり躊躇しないと思われることが示唆される。
【0224】
表7は、群2の6−MBOAマウスは新しいオープン・フィールド環境の周囲領域を探索しようとする傾向が大きかったことを示唆している。具体的には、非6−MBOAマウスがどの象限にも入ったのに比べて、6−MBOAマウスについては平均的に入ったことが記録された。第2象限および最も離れた象限である第4象限の場合、平均値の差は有意であった。
【0225】
表7は、群の非6−MBOAマウスよりも群2の6−MBOAマウスがオープン・フィールドの中央領域を探索しようとする傾向が多少強かったが平均値の差は統計学的に有意なものではなかったことをさらに示唆している。両群は、中央領域よりもオープン・フィールドの周囲を好むように思われた。
【0226】
表7に示すように、群2マウス(6−MBOAマウス)が捕捉者の匂いのする物体に接近しようとする平均的な傾向が大きい場合、有意差が認められる。このことは、6−MBOAマウスが群1の対照マウスよりもあまり恐れていないことを示唆している。
【0227】
非6−MBOAマウスに比して6−MBOAマウスに観察された伸びの姿勢の平均回数が大きい場合にも、有意差が認められる。当業者によって理解されるように、伸びの姿勢は通常は移動運動の予備段階である。このことはまた、非6−MBOAマウスに比して6−MBOAマウスでは新しい環境に対してあまりおそれないことを示している。
【0228】
統計学的に有意ではないものの、群2の6−MBOAマウスに比して群1の非6−MBOAマウスが示した防御姿勢の平均回数がより大きな値になっていることも、6−MBOAマウスでは恐怖および不安があまりないことを示す可能性がある。
【0229】
最後に、群1の非6−MBOA対照マウスが、新たな刺激に対する防御または恐怖の反応であると解釈される「身動きできない」姿勢を開始しようとする平均的な傾向は、群2の6−MBOAマウスについて有意に高かった。したがって、6−MBOAマウスが身動きできない姿勢が少なく、新しい環境および物体を動き回り、探索する傾向が大きいことは、不安および恐怖が少ないことに関連している。
【0230】
一般に、この例示的試験の結果は、本発明の6−MBOAまたは関連する化合物を含有する未成熟トウモロコシ葉の調整物を与えられたマウス(6−MBOAマウス)では、非6−MBOAマウスに比して不安および恐怖に伴う行動反応が低下したことを示した。行動反応測定値すべての平均値の差は、最初の予測と一致する。10種類の反応カテゴリのうち5つでは、平均値の差は統計学的に有意であった。本発明の6−MBOAまたは関連する化合物を含有する未成熟トウモロコシ葉に曝露されたマウスでは、新しい環境および恐怖を引き起こす物体に対する不安に関連する行動反応は少なく、本発明の6−MBOAまたは関連する化合物を含有する未成熟トウモロコシ葉がBalb/cマウスにおいて抗不安剤として働いたことが示唆される。
【実施例16】
【0231】
輸送および大きな音に伴う不安
12歳齢の大型雑種犬に本発明の化合物(例えば、粉砕トウモロコシ葉)を1日の給餌量で与えた。本発明の化合物を与える前は、イヌは著しい不安を多様な状態(例えば、電機掃除機を近付けると逃げ出したり、輸送や車の中に置き去りにすると震えたり、破壊行動)で示した。本発明の化合物(30〜40mg/kg)を数日間与えたところ、ストレス要因に対するイヌの反応、特に輸送に伴う興奮が著しく抑えられた。全般的に、イヌは大人しくなると同時に、通常の活動レベルを維持した。
【実施例17】
【0232】
弱齢の雄イヌへの鎮静作用
弱齢の純潔種の雄ラブラドールレトリバーは、飼い主の家中にある物を異常なほど収集し、飼い主が適宜相手をしてやらないと、集めた物を破壊した。イヌの餌に本発明の化合物(例えば、トウモロコシ葉)を入れて(30〜40mg/kg)数日以内に、頻繁に吠えること、および尾追い行動とともにこの行動は止まった。観察結果は弱齢のイヌは大人しくなることを示した。
【0233】
理解されるように、本発明はその精神または本質的特徴から逸脱することなく他の具体的な形態で具現化することが可能である。記載の実施形態および実施例はあらゆる点において単なる例示であって、限定的なものではないとみなすべきである。したがって、本発明の範囲は上記の説明ではなく、添付の特許請求の範囲によって示される。添付の特許請求の同等物の意味および範囲内にあるあらゆる変更は、添付の特許請求の範囲内に包含されるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0234】
【図1】本発明の化合物の現時点で好適な一実施形態に曝露したストレス・マウスおよび非ストレス・マウス、ならびにこれに対応する対照ストレス・マウスおよび対照非ストレス・マウスを対象にした耳の腫脹を検証する試験における、ジニトロフルオロベンゼン(DNFB)に対する細胞性免疫応答の結果を示す棒グラフ。
【図2】本発明の化合物の現時点で好適な一実施形態に曝露したストレス・マウスおよび非ストレス・マウス(すなわち、40mg/kg、25mg/kgおよび5mg/kg)、ならびにこれに対応する対照ストレス・マウスおよび対照非ストレス・マウスを対象にした耳の腫脹を検証する試験における、ジニトロフルオロベンゼン(DNFB)に対する細胞性免疫応答において発現した細胞性目免疫(CMI)の保持に対する本発明の化合物の現時点で好適な一実施形態の作用の評価を示す棒グラフ。
【図3】本発明の化合物の現時点で好適な一実施形態の異なる2つの用量に曝露した、ストレスを受けた子ウシ、ならびにこれに対応する対照ストレス子ウシおよび対照非ストレス子ウシを対象にした耳の腫脹を検証する試験における、ジニトロフルオロベンゼン(DNFB)に対する細胞性免疫応答を表す本発明の方法の現時点の好適な一実施形態を示す棒グラフ。
【図4】本発明の化合物の現時点で好適な一実施形態の異なる2つの用量に曝露した、ストレスを受けた子ウシ、ならびにこれに対応する対照ストレス子ウシおよび対照非ストレス子ウシを対象にした耳の腫脹を検証する試験における、ジニトロフルオロベンゼン(DNFB)に対する細胞性免疫応答を表す本発明の方法の現時点の好適な一実施形態を示す棒グラフ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
【化1】

(式中、「R」はC〜Cアルコキシを表し(該Rは環の4または5位にある)、
「n」は整数0、1または2の一つを表し、
「B」はHを表し、「A」は−OH、−NHまたはNHCR’を表し(R’はC〜Cアルキルを表す)、「BA」は
【化2】

を表す)
として定義された一つまたは複数の化学組成物または製薬学的に許容可能なそれらの塩の有効量の投与によってヒトおよび動物における不安を沈静および低減する方法。
【請求項2】
【化3】

(式中、「R」はHおよびOCHからなる群から選択され、
「R」はHおよびグルコース(グルコシドとして)からなる群から選択され、
「R」はH、OHおよびOCHからなる群から選択される)
として定義された一つまたは複数の化学組成物または製薬学的に許容可能なそれらの塩の有効量の投与をさらに備える請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記投与される化学組成物は約5mcg〜約60mgの1日投与量を備える請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記投与される化学組成物は15mgの1日投与量を備える請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記投与される化学組成物は、個々の体重に合わせて約5mg/kg〜約40mg/kgの1日投与量を備える請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記投与される化学組成物は、個々の体重に合わせて25mg/kgの1日投与量を備える請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記動物は、魚、鳥、爬虫類および哺乳動物からなる群から選択される請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記化学組成物の少なくとも一つは、植物を未成熟段階まで栽培し、該植物を収穫することによって、トウモロコシ、小麦、大麦、ライ麦、カラスムギ、イネ、ソルガム、アワ、タケ、ジュズダマ、大麦様の草、および野草からなる群から選択される一種または複数種の単子葉植物から得られる請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記収穫された植物が乾燥される請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記収穫された植物が約40℃〜約45℃の範囲の温度で乾燥される請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記乾燥した収穫植物は、総量で17.0mg/gm(乾燥重量)を超えるフェノールを含む請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記乾燥した収穫植物は、4−ヒドロキシケイ皮酸および4−ヒドロキシ−3−メトキシケイ皮酸をそれらの総量で1.5mg/gm以下(乾燥重量)含む請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記乾燥した収穫植物は未成熟トウモロコシ(Zea mays)である請求項8に記載の方法。
【請求項14】
前記未成熟トウモロコシは約45cm〜約122cmの高さまで成長している請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記未成熟トウモロコシは約30cm〜約45cmを超えない高さまで成長している請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記未成熟トウモロコシは植付け後10週間未満成長している請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記化学組成物は、(1)錠剤、カプセル剤、懸濁剤、液剤、および舌下投与形態を含む摂取に適した他の手段の形態による経口投与、(2)鼻腔内投与、(3)経粘膜投与、(4)皮下注、筋注、静注の形態による非経口投与、(5)持続放出のためのインプラント、および(6)経皮貼布からなる群から選択された様式で投与される請求項1に記載の方法。
【請求項18】
【化4】

(式中、「R」はC〜Cアルコキシを表し(該Rは環の4または5位にある)、
「n」は整数0、1または2の一つを表す)
として定義された一つまたは複数の化学組成物または製薬学的に許容可能なそれらの塩の有効量の投与によってヒトおよび動物における不安を沈静および低減する方法。
【請求項19】
前記化学組成物の一つは、
【化5】

として定義された6−メトキシ−2,3−ベンゾキサゾリノンまたは製薬学的に許容可能なその塩を備える請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記化学組成物の一つは、
【化6】

として定義された5−メトキシ−2,3−ベンゾキサゾリノンまたは製薬学的に許容可能なその塩を含む請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記投与される化学組成物は約5mcg〜約60mgの1日投与量を備える請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記投与される化学組成物は15mgの1日投与量を備える請求項19に記載の方法。
【請求項23】
前記投与される化学組成物は、個々の体重に合わせて約5mg/kg〜約40mg/kgの1日投与量を備える請求項18に記載の方法。
【請求項24】
前記投与される化学組成物は、個々の体重に合わせて25mg/kgの1日投与量を備える請求項18に記載の方法。
【請求項25】
前記動物は、魚、鳥、爬虫類および哺乳動物からなる群から選択される請求項18に記載の方法。
【請求項26】
前記化学組成物の少なくとも一つは、植物を未成熟段階まで栽培し、植物を収穫することによって、トウモロコシ、小麦、大麦、ライ麦、カラスムギ、イネ、ソルガム、アワ、タケ、ジュズダマ、大麦様の草および野草からなる群から選択される一種または複数種の単子葉植物から得られる請求項18に記載の方法。
【請求項27】
前記収穫された植物が乾燥される請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記収穫された植物が約40℃〜約45℃の範囲の温度で乾燥される請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記乾燥した収穫植物は、総量で17.0m/gm(乾燥重量)を超えるフェノールを含む請求項27に記載の方法。
【請求項30】
前記乾燥した収穫植物は、4−ヒドロキシケイ皮酸および4−ヒドロキシ−3−メトキシケイ皮酸をそれらの総量で1.5mg/gm以下(乾燥重量)含む請求項27に記載の方法。
【請求項31】
前記乾燥した収穫植物は未成熟トウモロコシ(Zea mays)である請求項26に記載の方法。
【請求項32】
前記未成熟トウモロコシは約45cm〜約122cmの高さまで成長している請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記未成熟トウモロコシは約30cm〜約45cmを超えない高さまで成長している請求項31に記載の方法。
【請求項34】
前記未成熟トウモロコシは植付け後10週間未満成長している請求項31に記載の方法。
【請求項35】
前記化学組成物は、(1)錠剤、カプセル剤、懸濁剤、液剤、および舌下投与形態を含む摂取に適した他の手段の形態による経口投与、(2)鼻腔内投与、(3)経粘膜投与、(4)皮下注、筋注、静注の形態による非経口投与、(5)持続放出のためのインプラント、および(6)経皮貼布からなる群から選択された様式で投与される請求項18に記載の方法。
【請求項36】
【化7】

(式中、「R」はHおよびOCHからなる群から選択され、
「R」はHおよびグルコース(グルコシドとして)からなる群から選択され、
「R」はH、OHおよびOCHからなる群から選択される)
として定義された一つまたは複数の化学組成物または製薬学的に許容可能なそれらの塩の有効量の投与によってヒトおよび動物における不安を沈静および低減する方法。
【請求項37】
前記投与される化学組成物は、約5mcg〜約60mgの1日投与量を備える請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記投与される化学組成物は、個々の体重に合わせて約5mg/kg〜約40mg/kgの1日投与量を備える請求項36に記載の方法。
【請求項39】
前記化学組成物の少なくとも一つは、植物を未成熟段階まで栽培し、植物を収穫することによって、トウモロコシ、小麦、大麦、ライ麦、カラスムギ、イネ、ソルガム、アワ、タケ、ジュズダマ、大麦様の草、および野草からなる群から選択される一種または複数種の単子葉植物から得られる請求項36に記載の方法。
【請求項40】
前記収穫した植物が乾燥される請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記収穫した植物hs約40℃〜約45℃の範囲の温度で乾燥される請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記乾燥した収穫植物は、総量で17.0mg/gm(乾燥重量)を超えるフェノールを含む請求項40に記載の方法。
【請求項43】
前記乾燥した収穫植物は、4−ヒドロキシケイ皮酸および4−ヒドロキシ−3−メトキシケイ皮酸をそれらの総量で1.5mg/gm以下(乾燥重量)含む請求項40に記載の方法。
【請求項44】
前記乾燥した収穫植物は未成熟トウモロコシ(Zea mays)である請求項39に記載の方法。
【請求項45】
前記未成熟トウモロコシは約45cm〜約122cmの高さまで成長している請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記未成熟トウモロコシは約30cm〜約45cmを超えない高さまで成長している請求項44に記載の方法。
【請求項47】
前記未成熟トウモロコシは植付け後10週間未満成長している請求項44に記載の方法。
【請求項48】
【化8】

(式中、「R」はC〜Cアルコキシを表し(該Rは環の4または5位にある)、
「n」は整数0、1または2の一つを表し、
「B」はHを表し、「A」は−OH、−NHまたはNHCR’を表し(R’はC〜Cアルキルを表す)、「BA」は
【化9】

を表す)
として定義された一つまたは複数の化学組成物または製薬学的に許容可能なそれらの塩の製造方法であって、
該前記化学組成物の源を同定する工程と、
該源から少なくとも一つの化学組成物を得る工程とを備える方法。
【請求項49】
【化10】

(式中、「R」はHおよびOCHからなる群から選択され、
「R」はHおよびグルコース(グルコシドとして)からなる群から選択され、
「R」はH、OHおよびOCHからなる群から選択される)
として定義された一つまたは複数の化学組成物または製薬学的に許容可能なそれらの塩の製造を更に備える請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記化学組成物の一つ以上を有する前記源は、トウモロコシ、小麦、大麦、ライ麦、カラスムギ、イネ、ソルガム、アワ、タケ、ジュズダマ、大麦様の草、および野草からなる群から選択される単子葉植物を備える請求項48に記載の方法。
【請求項51】
前記少なくとも一つの化学組成物を得る工程は、
前記単子葉植物を栽培する工程と、
前記植物を未成熟状態で収穫する工程とをさらに備える請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記単子葉植物は未成熟トウモロコシ(Zea mays)である請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記未成熟トウモロコシは約45cm〜約122cmの高さまで成長している請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記未成熟トウモロコシは約30cm〜約45cmを超えない高さまで成長している請求項52に記載の方法。
【請求項55】
前記未成熟トウモロコシは植付け後10週間未満成長している請求項52に記載の方法。
【請求項56】
前記単子葉植物を乾燥させる工程をさらに含む請求項51に記載の方法。
【請求項57】
前記乾燥工程は、約40℃〜約45℃の範囲の温度で乾燥した収穫植物を生成する請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記乾燥した収穫植物は、総量で17.0mg/gm(乾燥重量)を超えるフェノールを含む請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記乾燥した収穫植物は、4−ヒドロキシケイ皮酸および4−ヒドロキシ−3−メトキシケイ皮酸をそれらの総量で1.5mg/gm以下(乾燥重量)含む請求項57に記載の方法。
【請求項60】
【化11】

(式中、「R」はC〜Cアルコキシを表し(該Rは環の4または5位にある)、
「n」は整数0、1または2の一つを表す)
として定義された一つまたは複数の化学組成物または製薬学的に許容可能なそれらの塩の製造方法であって、
一つ以上の該化学組成物の源を同定する工程と、
該源から該化学組成物の少なくとも一つを得る工程とを備える方法。
【請求項61】
前記化学組成物の一つが、
【化12】

として定義された6−メトキシ−2,3−ベンゾキサゾリノンまたは製薬学的に許容可能なその塩を含む請求項60に記載の方法。
【請求項62】
前記化学組成物の一つが、
【化13】

として定義された5−メトキシ−2,3−ベンゾキサゾリノンまたは製薬学的に許容可能なその塩を含む請求項60に記載の方法。
【請求項63】
前記化学組成物の一つ以上を有する前記源は、トウモロコシ、小麦、大麦、ライ麦、カラスムギ、イネ、ソルガム、アワ、タケ、ジュズダマ、大麦様の草、および野草からなる群から選択される単子葉植物を備える請求項60に記載の方法。
【請求項64】
前記少なくとも一つの化学組成物を得る工程は、
前記単子葉植物を栽培する工程と、
前記植物を未成熟状態で収穫する工程とをさらに備える請求項60に記載の方法。
【請求項65】
前記単子葉植物は未成熟トウモロコシ(Zea mays)である請求項64に記載の方法。
【請求項66】
前記未成熟トウモロコシは約45cm〜約122cmの高さまで成長している請求項65に記載の方法。
【請求項67】
前記未成熟トウモロコシは約30cm〜約45cmを超えない高さまで成長している請求項65に記載の方法。
【請求項68】
前記未成熟トウモロコシは植付け後10週間未満成長している請求項65に記載の方法。
【請求項69】
前記単子葉植物を乾燥させる工程をさらに含む請求項64に記載の方法。
【請求項70】
前記乾燥工程は、約40℃〜約45℃の範囲の温度で乾燥した収穫植物を生成する請求項69に記載の方法。
【請求項71】
前記乾燥した収穫植物は、総量で17.0mg/gm(乾燥重量)を超えるフェノールを含む請求項70に記載の方法。
【請求項72】
前記乾燥した収穫植物は、4−ヒドロキシケイ皮酸および4−ヒドロキシ−3−メトキシケイ皮酸をそれらの総量で1.5mg/gm以下(乾燥重量)含む請求項70に記載の方法。
【請求項73】
【化14】

(式中、「R」はHおよびOCHからなる群から選択され、
「R」はHおよびグルコース(グルコシドとして)からなる群から選択され、
「R」はH、OHおよびOCHからなる群から選択される)
として定義された一つまたは複数の化学組成物または製薬学的に許容可能なそれらの塩の製造方法であって、
一つ以上の該化学組成物の源を同定する工程と、
該源から該化学組成物の少なくとも一つを得る工程とを備える方法。
【請求項74】
前記化学組成物の一つ以上を有する前記源は、トウモロコシ、小麦、大麦、ライ麦、カラスムギ、イネ、ソルガム、アワ、タケ、ジュズダマ、大麦様の草、および野草からなる群から選択される単子葉植物を備える請求項73に記載の方法。
【請求項75】
前記少なくとも一つの化学組成物を得る工程は、
前記単子葉植物を栽培する工程と、
前記植物を未成熟状態で収穫する工程とをさらに備える請求項74に記載の方法。
【請求項76】
前記単子葉植物は未成熟トウモロコシ(Zea mays)である請求項75に記載の方法。
【請求項77】
前記未成熟トウモロコシは約45cm〜約122cmの高さまで成長している請求項76に記載の方法。
【請求項78】
前記未成熟トウモロコシは約30cm〜約45cmを超えない高さまで成長している請求項76に記載の方法。
【請求項79】
前記未成熟トウモロコシは植付け後10週間未満成長している請求項76に記載の方法。
【請求項80】
前記単子葉植物を乾燥させる工程をさらに含む請求項75に記載の方法。
【請求項81】
前記乾燥工程は、約40℃〜約45℃の範囲の温度で乾燥した収穫植物を生成する請求項80に記載の方法。
【請求項82】
前記乾燥した収穫植物は、総量で17.0mg/gm(乾燥重量)を超えるフェノールを含む請求項81に記載の方法。
【請求項83】
前記乾燥した収穫植物は、4−ヒドロキシケイ皮酸および4−ヒドロキシ−3−メトキシケイ皮酸をそれらの総量で1.5mg/gm以下(乾燥重量)含む請求項81に記載の方法。
【請求項84】
【化15】

(式中、「R」はC〜Cアルコキシを表し(該Rは環の4または5位にある)、
「n」は整数0、1または2の一つを表し、「B」はHを表し、
「A」は−OH、−NHまたはNHCR’を表し(R’はC〜Cアルキルを表す)、「BA」は
【化16】

を表す)
として定義された一つまたは複数の化学組成物または製薬学的に許容可能なそれらの塩の製造方法であって、
一つ以上の該化学組成物の単子葉植物源を同定する工程と、
植付け後10週間未満の期間、約45cm〜約122cmの高さまで該単子葉植物を栽培する工程と、
前記単子葉植物を収穫する工程と、
約40℃〜約45℃の範囲の温度で該単子葉植物源を乾燥させ、乾燥した収穫植物を生成する工程とを備える方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2008−505974(P2008−505974A)
【公表日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−521566(P2007−521566)
【出願日】平成17年7月12日(2005.7.12)
【国際出願番号】PCT/US2005/024680
【国際公開番号】WO2006/017281
【国際公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【出願人】(507010382)セロクティン リサーチ アンド テクノロジーズ インコーポレイテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】SEROCTIN RESEARCH & TECHNOLOGIES,INC.
【Fターム(参考)】