説明

包装材料、およびそれを使用した栄養剤用包装容器

【課題】 優れた保存性、および内容物視認性の両方を兼ね備え、例えば栄養剤の包装容器として使用した場合に、内容物の長期保存が可能であり、かつ内容物の投与量や投与速度を正確に調節することを可能とする包装材料を提供する。
【解決手段】 樹脂フィルムからなる基材層(3)、ヒートシール性樹脂層(4)、印刷層(6、7)、および場合によって樹脂フィルムからなる中間層を有する積層材からなる包装材料において、
前記基材層、または前記中間層にガスバリア性層(5)を設け、さらに
前記包装材料の一部または全部が、250nm〜550nmの波長領域において20%以下であり、そして650nm〜800nmの波長領域において50%以上の光線透過率を有する内容物視認部分であり、かつ他の部分が20%以下の全光線透過率を有することを特徴とする包装材料を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装材料、およびそれを使用した栄養剤用包装容器に関する。さらに詳しくは、本発明は、優れた保存性と内容物視認性との両方を兼ね備え、例えば栄養剤の包装容器用の包装材料として使用した場合に、内容物の長期保存が可能であり、かつ投与量や投与速度を正確に調節することを可能とする包装材料、およびそれを使用した栄養剤用包装容器に関する。
【背景技術】
【0002】
栄養剤は、手術後等、通常の経口食による栄養摂取が困難なヒト(以下、単に「利用者」という)に対し、栄養素を経口的に、または経鼻チューブ、胃瘻もしくは腸瘻等を介して、胃、十二指腸または空腸に供給するために、必要栄養成分を低粘度に調整したものである。一般的に栄養剤には、成分として半消化させたタンパク質、糖質等が含まれており、これらの成分は、酸素、水蒸気等のガスや主に紫外〜可視短波長領域の光線により変性・分解されやすいことが知られている。したがって栄養剤用の包装容器には、その品質等を保持するため、優れたガスバリア性と遮光性の両方を有することが要求される。
また栄養剤の投与にあたっては、利用者の年齢、体重、症状に応じて、その投与量や投与速度を調節することが必要である。したがって適切な量の栄養剤を適切な速度で投与するためには、包装容器に内容物の残量を確認する手段を設けることが望ましい。
【0003】
従来、上記栄養剤の包装用材料としてアルミニウム箔やアルミニウム蒸着フィルムなど様々なものが開発され、提案されている。このようなアルミニウム箔等を用いた包装材料は、遮光性、ガスバリア性という点においては優れているものの、焼却適性に劣り、使用後の廃棄処分が容易でないという問題点を有する。さらに上記の包装材料は、光を全く通さないことから、内容物の残量を確認することができず、投与量や投与速度を正確に調節することができない。
【0004】
また医薬や飲食品用の包装容器として使用される積層材として、特許文献1には「少なくとも基材フィルム層とヒートシール層とを積層した積層材からなり、更に、該積層材を構成するいずれかの層に、印刷インキによる連続印刷膜を設けたことを特徴とする遮光性積層材」が記載されている。特許文献1記載の遮光性積層材は、ガスバリア性と遮光性とを兼ね備え、良好な保存性を有するものの、積層材全体にわたって、全光線透過率が0.0〜0.2%に調整されていることから、内容物の残量を確認することができない。したがって、これらを栄養剤の包装材料として使用した場合、投与量や投与速度を正確に調節することができないという問題を生ずる。
【0005】
さらに特許文献2には、「白色系顔料と黒色系顔料とを含む有彩色インキであって、前記黒色系顔料が有彩色インキの全顔料100質量部中の3〜5質量部とした有彩色インキよりなる有彩色インキ層を遮光印刷層に設けたことを特徴とする包装材料」が記載されている。特許文献2記載の包装材料も同様に良好な保存性を有するものであるが、包装材料全体にわたって、300nm〜800nmの波長領域における光線透過率が10%以下に調整されていることから、内容物の残量を確認することができない。したがって、これらを栄養剤の包装材料として使用した場合、投与量や投与速度を正確に調節することができないという問題を生ずる。
【特許文献1】特開平10−305513号公報
【特許文献2】国際公開第2004/020303号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のとおり、内容物の保存性に優れた医薬や飲食品用の包装材料として様々なものが知られているが、これらはいずれもすべての波長領域の光線を遮光するものであり、内容物の残量を確認できるものは得られていない。
【0007】
これに対し本発明は、優れた保存性、および内容物視認性の両方を兼ね備え、例えば栄養剤の包装容器として使用した場合に、内容物の長期保存が可能であり、かつ内容物の投与量や投与速度を正確に調節することを可能とする包装材料を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意研究した結果、内容物となるタンパク質や糖質が主に紫外〜可視短波長領域という特定の波長領域の光線により破壊されることに着目し、ガスバリア性を有する包装材料の一部または全部を上記特定の波長領域の光線のみを遮光するものとしたところ、従来得ることができなかった、優れた保存性と内容物視認性とを兼ね備える包装容器が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、以下の(a)〜(e)に示す発明を包含する。
(a) 少なくとも樹脂フィルムからなる基材層、ヒートシール性樹脂層、印刷層、および場合によって樹脂フィルムからなる中間層を有する積層材からなる包装材料において、
前記基材層、前記中間層のいずれか一方または両方の一方の面にガスバリア性層を設け、さらに
前記包装材料の一部または全部が、250nm〜550nmの波長領域において20%以下であり、さらに長波長領域に移るにしたがって透過率が上昇し、そして650nm〜800nmの波長領域において50%以上の光線透過率を有する内容物視認部分であり、他の部分が20%以下の全光線透過率を有することを特徴とする包装材料。
(b) 内容物視認部分の印刷層に用いられる顔料が、燈色系顔料、黄色系顔料、および燈色系顔料もしくは黄色系顔料と、赤色系顔料との混合物からなる群から選択される1種またはそれ以上の顔料であることを特徴とする(a)に記載の包装材料。
(c) ガスバリア性層が、無機酸化物の蒸着膜を有する樹脂フィルムであることを特徴とする(a)または(b)に記載の包装材料。
(d) ガスバリア性層が、無機酸化物の蒸着膜と、一般式R1nM(OR2m(式中、Mは金属原子を表し、R1、R2は炭素数1〜8の有機基を表し、nは0以上の整数であり、mは1以上の整数であり、n+mはMの原子価を表す)で表される少なくとも1種以上のアルコキシド、ポリビニルアルコール、および/またはエチレン・ビニルアルコールを含んでなる組成物を、ゾルゲル法によって重縮合して得るアルコキシドの加水分解物またはアルコキシドの加水分解縮合物であるガスバリア性塗布膜とからなることを特徴とする(a)〜(c)のいずれかに記載の包装材料。
(e) (a)〜(d)のいずれかに記載の包装材料を用いた栄養剤用の包装容器であって、一方の包装材料のヒートシール性樹脂層側と、他方の包装材料のヒートシール性樹脂層側とが対向するように重ね合わせ、その端部をヒートシールしたことを特徴とする包装容器。
【発明の効果】
【0009】
本発明の包装材料は、優れたガスバリア性を有すると共に、その一部または全部が紫外〜可視短波長領域という特定の波長領域の光線のみを遮光し、他の波長領域の光線を透過させるものであることから、優れた保存性と内容物視認特性とを兼ね備える。すなわち本発明により、医薬や飲食品の包装容器として要求される品質保持特性に優れ、かつ投与量や投与速度を正確に調節することを可能とする、特に栄養剤の包装容器に適した包装材料を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に図面等を用いて本発明をさらに詳しく説明する。
1.本発明の包装材料およびそれを使用した包装容器の構成
(1)本発明の包装材料の構成
本発明の包装材料の構成について、その具体例を図面を用いて説明する。図1は、本発明の包装材料の外観の一例を示す概略的平面図であり、図2〜4は、本発明の包装材料の層構成の一例を示す概略的断面図である。
【0011】
例えば図1に示すように、本発明の包装材料としては、内容物視認部分1と他の部分2からなる包装材料Aを挙げることができる。ここで内容物視認部分は、タンパク質や糖質の変性・分解に関与する紫外〜可視短波長領域の光線を十分に遮光できるよう、250nm〜550nmの波長領域における光線透過率が20%以下であることが必要であり、好ましくは15%以下、特に10%以下であることが望ましい。上記範囲を逸脱すると、紫外〜可視短波長領域の光線によりタンパク質や糖質等の内容物が変性・分解し、保存性が低下するという問題が生じる。さらに内容物視認部分は、内容物の残量を確認できるよう、650nm〜800nmの波長領域における光線透過率が50%以上であることが必要であり、好ましくは70%以上、特に80%以上であることが望ましい。上記範囲を逸脱すると、内容物の残量確認が困難となり、例えば栄養剤の包装容器として使用した場合、投与量や投与速度を正確に調節することができないという問題を生ずる。
【0012】
また他の部分は、内容物の保存性に影響を与えないよう、全光線透過率が20%以下であることが必要であり、好ましくは10%以下であることが望ましい。なお550nm〜650nmの波長領域における光線透過率は、特に制限されず、0%〜100%いずれの間でもよいが、通常550nmから透過率が徐々に増加し、650nmで50%以上となる。
上記図1に示す包装材料は、内容物視認部分を包装材料の一部に設けたものであるが、包装材料全体を内容物視認部分とすることも可能である。ただし内容物の残量を確認するという内容物視認部分を設ける目的、および包装材料に商品名や柄等を印刷するという観点、すなわち意匠上の観点からは、内容物視認部分を包装容器全体の面積に対して5%〜90%、好ましくは10〜30%設け、残りの部分を他の部分とすることが好ましい。さらに内容物視認部分の形状は、内容物の残量を確認することができるという目的を果たす限り、どのようなものでもよく、図1のように、包装材料に縦長の長方形として内容物視認部分を設ける他に、例えば包装材料に横長の長方形を複数本設けたり、小円形の内容物視認部分を複数個設けたものであってもよい。
【0013】
次に本発明の包装材料の層構成について説明する。本発明の包装材料として、例えば図2に示すように、最外層として基材層3を、最内層としてヒートシール性樹脂層4を設けた積層材からなり、さらに前記基材層3にガスバリア性層5を、そして前記ヒートシール性樹脂層層4、またはガスバリア性層5に、内容物視認部分を構成する印刷層6と、他の部分を構成する印刷層7とを設けた層構成からなる包装材料Bを挙げることができる。あるいは、本発明にかかる包装材料としては、図3に示すように、基材層3、中間層8、ヒートシール性樹脂層4順に積層した積層材からなり、さらに前記基材層3にガスバリア性層5を、そして前記ガスバリア性層5、または中間層8に、印刷インキによる内容物視認部分を構成する印刷層6と、他の部分を構成する印刷層7とを設けた層構成からなる包装材料Cを挙げることができる。さらに、本発明にかかる包装材料としては、図4に示すように、上記の図3で示した包装材料Cにおいて、基材層3の他の面に、さらに最外層としてヒートシール性樹脂層4aを積層した層構成からなる包装材料Dを挙げることができる。上記の例示は、本発明にかかる包装材料の代表的な二三を例示したものであり、本発明はこれによって限定されるものではないことはいうまでもない。例えば、図示しないが、印刷インキによる印刷層の積層位置は、いずれの位置でもよく、例えば、基材層、中間層、あるいはヒートシール性樹脂層のいずれかに設け、その一ないし二以上を使用し、それと他の材料等を任意に積層して、本発明にかかる包装材料を製造することができる。また、本発明においては、その使用目的、用途、充填包装する内容物、その流通形態、販売形態等によって積層材としての層構成を設計し、基材層、中間層、ヒートシール性樹脂層、その他の素材を使用して任意に積層して、本発明にかかる包装材料を製造することができる。
【0014】
(2)本発明の包装容器の構成
次に、上記の本発明の包装材料を製袋してなる本発明の包装容器について説明する。図5は、図2に示す包装材料を製袋してなる本発明の包装容器の構成を示す概略的斜視図であり、図6は、図5に示す包装容器内に内容物を充填包装した包装製品の構成を示す概略的斜視図である。例えば図5に示す本発明の包装容器Eは、上記図2に示す層構成を有する包装材料B、Bの2枚を用意し、その最内層を構成するヒートシール性樹脂層4、4の面を対向して重ね合わせ、しかる後その包装材料B、Bの周辺端部の3方をヒートシールしてヒートシール部9、9、9を形成して製造することができる。上記の包装容器は、一例を例示したものであり、これによって本発明は限定されるものではなく、上記の図3および4等に示す包装材料を使用して同様に、本発明の包装容器を製造することができる。さらに上記の包装容器は、その両面に内容物視認部分を設けたものであるが、本発明においては、例えば図2の包装材料Bと、全光線透過率が20%以下、すなわち他の部分のみからなる包装材料とを上記のようにヒートシールして、片面のみに内容物視認部分を有する包装容器とすることもできる。また図示しないが、本発明においては、包装容器の形態として、種々の形態を採用することができ、後述するように、例えば自立性袋(スタンディングパウチ)、カゼット型袋、舟底型袋等、種々の形態のものを製造することができる。さらに本発明においては、開封のために、周辺端部のヒートシール部であって、その開封部に相当する箇所に、例えば、開封用ノッチ、切り欠き部等を刻設することができる。
【0015】
次に、上記のような本発明にかかる包装容器内に内容物を充填包装した包装製品について説明すると、図6に示すように、上記の図5に示す包装容器Eの上方の開口部から内容物10を充填し、しかる後その上方の開口部をヒートシールして上端シール部11を形成して、本発明にかかる包装容器Eを使用した包装製品Fを製造することができる。本発明においては、上記のような包装製品Fは、同じく、図6に示すように、開封用ノッチ12、12等の部分を手に持って、袋体を引き裂いて開封し、これによって内容物を取り出して、その内容物に合った用途に供することができる。また図示しないが、本発明に係る包装容器を使用して、経管投与用栄養剤の包装容器を製造するには、例えば上記の図5に示す包装容器の下部に任意の手段で吊り下げ用の孔を設けると共に、前記上方開口部のヒートシールの際に、注出口を包装容器に装着すればよい。
【0016】
2.本発明の包装材料およびそれを使用した包装容器を構成する材料
次に、本発明において、本発明にかかる包装材料、および包装容器等を構成する基材層、ガスバリア性層、印刷層、ヒートシール性樹脂層、中間層等について説明する。
(1)基材層
本発明の包装容器に設けられる基材層を構成する樹脂のフィルムとしては、通常、これが包装材料を構成する基本素材となるものであることから、機械的、物理的、化学的に優れた性質を有すること、特に強靱でかつ耐熱性を有するものを使用することが望ましい。具体的には、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアラミド系樹脂、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアクリルまたはメタクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアセタール系樹脂、フッ素系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂等の強靱な樹脂のフィルムないしシート等を使用することができる。
上記の樹脂のフィルムないしシートとしては、縦方向または横方向のいずれかの一軸方向、または二軸方向に延伸した延伸フィルムを使用することができる。その延伸方法としては、例えば、フラット法、インフレーション法等の公知の方法で行うことができ、その延伸倍率としては、約2〜10倍のものを使用することができる。また、そのフィルムの厚さとしては、5μm〜100μm、好ましくは、10μm〜50μmが望ましい。なお本発明においては、上記のような樹脂のフィルムには、例えば、文字、図形、記号、絵柄、模様等の所望の印刷絵柄を通常の印刷法で表刷り印刷あるいは裏刷り印刷等が施されていてもよい。
【0017】
(2)ガスバリア性層
本発明の包装材料は、優れたガスバリア性を有する必要があることから、通常、基材層の一方の面には、水蒸気、水等に対しバリア性を有するガスバリア性層を設けることが必要である。さらに、上記のとおり本発明の包装材料においては、上記基材層とヒートシール性樹脂層との間に、中間層を設けることもできるが、この場合、基材層に加え、または代えて、前記中間層にガスバリア性層を設けてもよい。なお本発明にいうガスバリア性基材層とは、無機酸化物の蒸着膜、および前記蒸着膜上に後述するガスバリア性塗布膜を設けたものを意味する。
以下、ガスバリア性層を構成する無機酸化物の蒸着膜、上記ガスバリア性塗布膜について説明する。
【0018】
(a)無機酸化物の蒸着膜
本発明において、上記の無機酸化物の蒸着膜としては、例えば、ケイ素酸化物(SiOx)、酸化アルミニウム、酸化インジウム、酸化スズ、酸化ジルコニウム等の金属酸化物や、一酸化ケイ素と二酸化ケイ素との混合物、あるいはケイ素酸化物と酸化アルミニウムとの混合物を挙げることができる。本発明においては、上記無機酸化物の蒸着膜を、例えば、プラズマ化学気相成長法、熱化学気相成長法、光化学気相成長法等の化学気相成長法(Chemical Vapor Deposition法、CVD法)、または真空蒸着法、スバッタリング法、イオンプレーティング法、イオンクラスタービーム法等の物理気相成長法(Physical Vapor Deposition法、PVD法)により形成することができる。特に化学気相成長法を使用してケイ素酸化物の蒸着膜を形成する場合、酸化ケイ素を主体とし、これにさらに炭素、水素、ケイ素、および酸素からなる群から選択される1種または2種以上の元素からなる化合物または基を化学結合により含有するもの(以下、「有機ケイ素酸化物」という)を蒸着することができ、これにより蒸着膜の耐衝撃性、延展性、柔軟性等を向上することができる。無機酸化物の蒸着膜の厚さとしては、十分なガスバリア性を得るために、100Å〜3000Åであることが好ましく、特に、本発明においては、200Å〜2000Åであることが望ましい。上記において、無機酸化物の蒸着膜の厚さが、2000Å、特に3000Åを超えると、無機酸化物の蒸着膜にクラック等が入りやすくなり、ガスバリア性が低下すると共に、材料コストが高くなり、また200Å未満、さらには100Å未満になると、ガスバリア性の効果が得られず好ましくない。
【0019】
(b)ガスバリア性塗布膜
本発明にいうガスバリア性塗布膜とは、一般式:R1nM(OR2mで表される少なくとも1種以上のアルコキシド、ポリビニルアルコールおよび/またはエチレン・ビニルアルコールを含有する組成物をゾルゲル法によって重縮合して得られるガスバリア性組成物によるガスバリア性塗布膜を意味する。
本発明に好適に使用できるアルコキシドは、一般式:R1nM(OR2m(式中、Mは金属原子、R1、R2が炭素数1〜8の有機基、nは0以上、mは1以上の整数、n+mはMの原子価を表す)で表されるものであり、このアルコキシドの部分加水分解物またはアルコキシドの加水分解縮合物の少なくとも1種以上を使用することができる。なお上記のアルコキシドの部分加水分解物としては、アルコキシ基のすべてが加水分解されている必要はなく、1個以上が加水分解されているもの、およびその混合物であってもよい。また、加水分解の縮合物は、部分加水分解アルコキシドの2量体以上のものを表しており、2〜6量体が通常使用される。
【0020】
上記一般式:R1nM(OR2mにおける、Mで表される金属原子としては、ケイ素、ジルコニウム、チタン、アルミニウム等を使用することができる。特に本発明においては、MがSiであるアルコキシシランが好ましい。また、単独または2種以上の異なる金属原子のアルコキシドを同一溶液中に混合して使うこともできる。
また、上記の一般式R1nM(OR2mで表されるアルコキシドにおいて、R1で表される有機基の具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基等のアルキル基を挙げることができる。
上記アルコキシシランとしては、テトラメトキシシラン Si(OCH34、テトラエトキシシラン Si(OC254、テトラプロポキシシラン Si(OC374、テトラブトキシシラン Si(OC494等を使用することができる。これらのアルコキシシランは、単独または2種以上を混合しても用いてもよい。
【0021】
本発明においては、上記アルコキシドと共にシランカップリング剤が併用されることが好ましい。シランカップリング剤としては、既知の有機反応性基含有オルガノアルコキシシランを使用することができる。特に、エポキシ基を有するオルガノアルコキシシラン、例えばγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、およびβ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランを好適に使用することができる。このようなシランカップリング剤は2種以上を混合して用いてもよく、その使用量は、上記アルコキシシラン100重量部に対して0.1〜20重量部の範囲内である。20重量部以上を使用すると形成される複合ポリマーの剛性と脆性とが大きくなり、複合ポリマー層の絶縁性および加工性が低下する。
【0022】
本発明においては、ガスバリア性塗布膜形成用の組成物(塗工液)に、ポリビニルアルコールおよび/またはエチレン・ビニルアルコールコポリマーが含まれる。ポリビニルアルコールおよびエチレン・ビニルアルコールコポリマーを組み合わせることによって、得られる塗布膜のガスバリア性、耐水性、耐候性などが著しく向上する。さらに、ポリビニルアルコールとエチレン・ビニルアルコールコポリマーとを組み合わせた積層フィルムは、ガスバリア性、耐水性、および耐候性に加えて耐熱水性および熱水処理後のガスバリア性に優れる。
【0023】
ポリビニルアルコールおよびエチレン・ビニルアルコールコポリマーの組み合わせを採用する場合のそれぞれの含有重量比は、10:0.05〜10:6であることが好ましく、約10:1がさらに好ましい。
上記ポリビニルアルコールおよび/またはエチレン・ビニルアルコールコポリマーの合計の含有量は、上記アルコキシドの合計量100重量部に対して5〜600重量部の範囲であり、好ましくは約50〜400重量部である。600重量部を上回ると複合ポリマーの脆性が大きくなり、得られる積層フィルムの耐水性および耐候性も低下する。5重量部を下回るとガスバリア性が低下する。
【0024】
ポリビニルアルコール系樹脂の具体例としては、株式会社クラレ製のRSポリマーであるRS−110(ケン化度=99%、重合度=1,000)、同社製のクラレポバールLM−20SO(ケン化度=40%、重合度=2,000)、日本合成化学工業株式会社製のゴーセノールNM−14(ケン化度=99%、重合度=1,400)等を使用することができる。また、エチレン・ビニルアルコール共重合体の具体例としては、エチレンと酢酸ビニルとの共重合体のケン化物、すなわち、エチレン−酢酸ビニルランダム共重合体をケン化して得られるものを使用することができる。
【0025】
本発明においては、上記の組成物(塗工液)を蒸着膜上に塗布し、その組成物をゾル−ゲル法により重縮合して塗布膜を形成する。ゾル−ゲル法触媒、主として重縮合触媒としては、水に実質的に不溶であり、かつ有機溶媒に可溶な第三級アミンが用いられる。例えば、N,N−ジメチルベンジルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミンなどがあり、特にN−N−ジメチルベンジルアミンが好適である。その使用量は、アルコキシドおよびシランカップリング剤の合計量100重量部当り、0.01〜1重量部、好ましくは約0.03重量部である。
【0026】
本発明においては、上記の組成物は第三級アミンに代えて、またはさらに酸を含んでいてもよい。酸は、ゾル−ゲル法の触媒、主としてアルコキシドやシランカップリング剤などの加水分解のための触媒として用いられる。酸としては、硫酸、塩酸、硝酸などの鉱酸、ならびに酢酸、酒石酸などの有機酸が用いられる。酸の使用量は、アルコキシドおよびシランカップリング剤のアルコキシド分(例えばシリケート部分)の総モル量に対して、0.001〜0.05モルであり、好ましくは約0.01モルである。
【0027】
本発明においては、上記ガスバリア性塗布膜形成用組成物中に、アルコキシドの合計モル量1モルに対して0.1〜100モル、好ましくは0.8〜2モルの割合の水を含んでなることが好ましい。また、ガスバリア性塗布膜形成用組成物は、有機溶剤を含有することが好ましい。有機溶媒としては、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブタノールなどが用いられる。
【0028】
本発明におけるガスバリア性塗布膜の形成方法について以下に説明する。
まず、上記のアルコキシシラン等のアルコキシド、シランカップリング剤、ポリビニルアルコール系樹脂および/またはエチレン・ビニルアルコール共重合体、ゾル−ゲル法触媒、水、有機溶媒、および、必要に応じて、金属アルコキシド等を混合してガスバリア性塗工液を調製する。ガスバリア性塗工液中では次第に重縮合反応が進行する。
【0029】
次いで、基材の一方の面に設けた無機酸化物の蒸着膜の上に、常法により、上記のガスバリア性塗工液を通常の方法で塗布し、乾燥する。乾燥により、上記アルコキシド、金属アルコキシド、シランカップリング剤およびビニルアルコールポリマーの重縮合がさらに進行し、複合ポリマーの層が形成される。好ましくは上記の操作を繰り返して、複数の複合ポリマー層を積層する。
【0030】
最後に、上記塗工液を塗布したフィルムを通常の環境下、50℃〜300℃、好ましくは、70℃〜200℃の温度で、0.005分間〜60分間、好ましくは、0.01分間〜10分間、加熱・乾操することにより、縮合が行われ、ガスバリア性塗布膜を形成することができる。
【0031】
本発明においては、ビニルアルコールポリマーの代わりに、エチレン・ビニルアルコールコポリマーまたはエチレン・ビニルアルコールコポリマーとポリビニルアルコールとの両者を用いた組成物を使用してもよい。エチレン・ビニルアルコールコポリマーとポリビニルアルコールとの両者を用いることにより、ボイル処理、レトルト処理などの熱水処理後のガスバリア性がさらに向上する。
【0032】
ガスバリア性塗布膜形成用組成物を塗布する方法としては、例えば、グラビアコーターなどのロールコート、スプレーコート、スピンコート、デイッピング、刷毛、バーコード、アプリケータなどの塗装手段により、1回あるいは複数回の塗装で、乾燥膜厚が0.01μm〜30μm、好ましくは、0.1μm〜10μmのガスバリア性塗布膜を形成することができる。
また必要ならば、ガスバリア性組成物を塗布する際に、予め、無機酸化物の蒸着膜の上に、プライマー剤等を塗布することもできる。
【0033】
本発明においては、上記樹脂のフィルム上に蒸着層とガスバリア性塗布膜を設けた後、さらに蒸着層を設け、その蒸着層上にガスバリア性塗布膜を上記と同様にして形成してもよい。このように積層数を増やすことにより、より一層ガスバリア性を向上することができる。
【0034】
(3)印刷層
本発明の包装材料は、その一部または全部が250nm〜550nmの波長領域の光線に対し20%以下で、さらに長波長領域に移るにしたがって透過率が上昇し、そして650nm〜800nmの波長領域の光線に対し50%以上の光線透過率を有する内容物視認部分であり、残りが20%以下の全光線透過率を有する他の部分であるが、このような性質を有する包装材料は、積層材の内容物視認部分、他の部分それぞれに特定の印刷インキによる印刷層を設けることにより形成することができる。
上記特定の印刷インキによる印刷層は、基材層、中間層、ガスバリア性層、ヒートシール性樹脂層等いずれの層に設けてもよい。
以下本発明の包装材料における内容物視認部分を構成する印刷層に用いる印刷インキ、他の部分を構成する印刷層に用いる印刷インキ、および印刷層の形成方法を説明する。
【0035】
(a)内容物視認部分を構成する印刷層に用いる印刷インキ
内容物視認部分を構成する印刷層に用いる印刷インキとしては、例えばバインダー樹脂をビヒクルの主成分とし、250nm〜550nmの波長領域の光線に対し遮光性を有する特定の顔料または染料を加え、更に、所望の助剤を任意に添加し、溶剤・希釈剤等で十分に混練してなる着色インキ組成物を使用することができる。
上記性質を有する顔料として、例えば、ファストイエロー、ジスアゾイエロー、チタンイエロー、黄色酸化鉄、黄鉛等の黄色系顔料、ピラゾロン系−パーマネントオレンジG、カドミウムオレンジ、クロムオレンジ等の燈色系顔料の1種ないしそれ以上の混合物を使用することができる。さらに上記黄色系顔料または燈色系顔料と、トルイジンレッド、レーキレッド、ベンガラ、モリブデンレッド、バーミリオン等の赤色系顔料との1種ないしそれ以上の混合物を使用することもできる。
また上記性質を有する染料として、C.I.ソルベント・イエロー14、C.I.ソルベント・イエロー56、C.I.アシッド・イエロー等の黄色系染料、C.I.アシッドオレンジ51、C.I.アシッドオレンジ56、C.I.アシッドオレンジ74等の燈色系染料等の1種ないしそれ以上の混合物を使用することができる。さらに上記黄色系染料または燈色系染料と、C.I.ソルベント・レッド18、C.I.ソルベント・レッド27、C.I.ソルベント・レッド49等の赤色系染料との1種ないしそれ以上の混合物を使用することもできる。
【0036】
またバインダー樹脂としては、例えば、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリアクリル系またはメタクリル系樹脂、マレイン酸樹脂、フマル酸樹脂、ポリアクリルニトリル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、酸変成ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、乾性油アルキド樹脂、アルキド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、フェノール系樹脂、アミノ系樹脂、エポキシ系樹脂、ロジン系樹脂、エステルガム、ニトロセルロースあるいはエチルセルロース等の繊維素樹脂、ゴム誘導体、石油系樹脂等の1種ないし2種以上の混合物を使用することができる。さらに助剤としては、例えば、安定剤、可塑剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、滑剤、帯電防止剤、充填剤、ワックス類、グリース類、分散剤等の助剤の1種ないしそれ以上を任意に添加して使用することができる。また溶剤・希釈剤等としては、例えば、アルコール系溶剤、エステル系溶剤、エーテルアルコール系溶剤、脂肪族炭化水素系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤、ケトン系溶剤等を使用することができる。本発明においては、上記のような材料を使用し、例えば、ミキサー、ニーダー等を使用してプレミキシングし、次いで、ロールミル、ボールミル、サンドミル等を使用し、十分に混練して内容物視認部分に使用する印刷インキを製造することができる。本発明において、上記の顔料の添加量としては、印刷インキを構成するビヒクルとしてのバインダー樹脂、100重量部に対し0.1〜30重量部、好ましくは、0.4〜20重量部の割合で配合することが望ましい。
【0037】
さらに本発明においては、内容物視認部分を構成する印刷層として、黄色系顔料・染料を含む印刷インキ(黄色インキ)、燈色系顔料・染料、または燈色系顔料・染料もしくは黄色系顔料・染料と、赤色系顔料・染料とを含む印刷インキ(燈色インキ)のいずれかを用いて、一層により印刷層を形成することができるが、250nm〜550nmの波長領域の光線をより効果的に遮光するために、黄色インキまたは燈色インキの1種またはそれ以上を用い、二層以上積層することにより印刷層を形成することが望ましい。この場合、印刷インキとして、上記黄色インキ、燈色インキの他、酸化チタン、亜鉛華、硫化亜鉛等の白色系顔料や白色系染料を含有する印刷インキ(白色インキ)等の遮光性が低い顔料・染料を含有する印刷インキも用いることができ、例えば、黄色インキと白色インキの二層からなる印刷層や、黄色インキ、燈色インキ、白色インキの三層からなる印刷層を形成してもよい。
【0038】
(b)他の部分を構成する印刷層に用いる印刷インキ
本発明の包装材料の一部が内容物視認部分の場合には、20%以下の全光線透過率を有する他の部分を設けることが必要であるが、このような他の部分に用いる印刷インキとしては、例えば、上記のバインダー樹脂をビヒクルの主成分とし、これに他の部分の全光透過率が20%以下となるように適当な顔料・染料を加え、更に、上記の助剤、溶剤・希釈剤を添加して、十分に混練してなる着色インキ組成物を使用することができる。
上記着色インキに使用する顔料・染料としては、例えば、上記の黄色系顔料・染料、燈色系顔料・染料、赤色系顔料・染料、茶色系顔料、群青、紺青、コバルトチタネートグリーン、酸化クロム等の青色ないし緑色系顔料、酸化チタン、亜鉛華、硫化亜鉛等の白色系顔料、カーボンブラック等の黒色系顔料、炭酸カルシウム、沈降性硫酸バリウム、クレー、タルク等の体質系顔料、アゾ系染料・顔料、フタロシアニン系顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリノン系顔料、ジオキサジン系顔料、チオインジゴ系顔料、アントラキノン系染料・顔料等の染料・顔料等の1種ないしそれ以上の混合物を使用することができるが、特に上記黒色系顔料、黒色系顔料と白色系顔料との混合物、または赤色系顔料、緑色系顔料および青色系顔料の混合物を使用することが好ましい。上記の顔料の添加量としては、印刷インキを構成するビヒクルとしてのバインダー樹脂、100重量部に対し0.1〜30重量部、好ましくは、0.4〜20重量部の割合で配合することが望ましい。
【0039】
また本発明においては、他の部分を構成する印刷層として、全光線透過率が20%以下となるように、上記顔料を含む印刷インキのいずれかを用いて一層により印刷層を形成してもよいし、上記顔料を含む印刷インキの1種以上を用いて二層以上により印刷層を形成してもよい。
【0040】
(c)印刷層の形成方法
本発明において、印刷層を形成する方法として、例えば、上記の印刷インキを使用し、まず内容物視認部分を構成する上記の基材層、中間層、あるいはヒートシール層の面に、グラビアコート、ロールコート、ナイフコート、スプレーコート、グラビア印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷、オフセット印刷等の通常の印刷方式ないしコーティング方式で印刷ないしコーティングし、そして他の部分を同様に印刷ないしコーティングし、しかる後印刷ないしコーティング膜を乾燥する方法が挙げられる。
さらに本発明において印刷層を形成する方法として、本発明の包装材料を構成する一つの層の内容物視認部分のみに印刷インキを印刷ないしコーティングして、内容物視認部分を構成する印刷層を形成し、同様に上記層とは別の層の他の部分のみに印刷インキを印刷ないしコーティングして、他の部分を構成する印刷層を形成し、両者の印刷層同士を対向して貼り合わせる等、内容物視認部分を構成する印刷層と、他の部分を構成する層とを別々の層に設け、これを後述する方法により貼り合わせることにより、全体の印刷層を形成する方法が挙げられる。具体的には、例えば基材層に、内容物視認部分を構成する印刷層を、上記印刷インキを印刷ないしコーティングすることにより設け、さらに中間層に、他の部分を構成する印刷層を、上記印刷インキを印刷ないしコーティングすることにより設け、両者を印刷層同士が対向するように、接着剤層を介して貼り合わせることにより、包装材料全体の印刷層を形成することができる。同様に、例えば中間層に、内容物視認部分を構成する印刷層を設け、さらに第二の中間層に、他の部分を構成する印刷層を設け、両者を印刷層同士が対向するように、接着剤層を介して貼り合わせることにより、包装材料全体の印刷層を形成することができる。印刷インキには顔料が含まれることから、印刷層は柔軟性に乏しく、印刷層を一つの層(基材層、中間層、ヒートシール性樹脂層)のみに設けると、印刷層と印刷層を設けた層との間に剥離が生じうる。したがって、内容物視認部分を構成する印刷層と、他の部分を構成する印刷層とを別々の層に形成し、応力緩和作用のある接着剤層を介して貼り合わせることにより、印刷層を設けた層の柔軟性が保たれ、その結果、印刷層と印刷層を設けた層との間の剥離を防止することができる。
なお前記印刷層の膜厚としては、0.5g/m2〜20g/m2、好ましくは、1.0g/m2〜10g/m2が望ましい。
また上記のとおり本発明においては、印刷層を二層以上により構成することもできるが、二層以上からなる印刷層の形成方法として、重ね刷り印刷、あるいは二重コーティング等が挙げられる。
【0041】
(4)ヒートシール性樹脂層
本発明において、ヒートシール性樹脂層を構成するヒートシール性樹脂としては、熱によって溶融して相互に融着し得る樹脂を使用することができ、具体的には、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、メチルペンテンポリマー、ポリブテンポリマー、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂をアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、無水マレイン酸等の不飽和カルボン酸で変性した酸変性ポリオレフィン系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアクリルニトリル系樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS系樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS系樹脂)等を使用することができる。本発明においては、上記のような樹脂のフィルムないしシート、あるいは上記のような樹脂を主成分とする樹脂組成物によるコーティング膜等によって、ヒートシール性樹脂層を構成することができる。その厚さとしては、1〜200μm、好ましくは、5〜100μmが望ましい。
【0042】
さらに、本発明において、上記のようなヒートシール性樹脂として、メタロセン触媒を用いて重合したエチレン−α・オレフィン共重合体も同様に使用することができる。具体的には、メタロセン触媒を用いて重合したエチレン−α・オレフィン共重合体、例えば、二塩化ジルコノセンとメチルアルモキサンの組み合わせによる触媒等のメタロセン錯体とアルモキサンとの組み合わせによる触媒、すなわち、メタロセン触媒を使用して重合してなるエチレン−α・オレフィン共重合体を使用することができる。メタロセン触媒は、現行の触媒が、活性点が不均一でマルチサイト触媒と呼ばれているのに対し、活性点が均一であることからシングルサイト触媒とも呼ばれているものである。例えば、三菱化学株式会社製の商品名「カーネル」、三井石油化学工業株式会社製の商品名「エボリュー」、米国、エクソン・ケミカル(EXXON CHEMICAL)社製の商品名「エクザクト(EXACT)」、米国、ダウ・ケミカル(DOW CHEMICAL)社製の商品名「アフィニティー(AFFINITY)、商品名「エンゲージ(ENGAGE)」等のメタロセン触媒を用いて重合したエチレン−α・オレフィン共重合体を使用することができる。本発明において、上記のようなヒートシール性樹脂として、メタロセン触媒を用いて重合したエチレン−α・オレフィン共重合体を使用する場合には、袋体を製造するときに、低温ヒートシールが可能であるという利点を有する。
【0043】
本発明においては、上記図4のように積層材の最外層にヒートシール性樹脂層を設けることもできるが、このような最外層に使用するヒートシール性樹脂としては、前述に挙げたヒートシール性樹脂、そのフィルムないしシートをそのまま同様に使用することができる。そのフィルムないしシートの厚さとしては、5μm〜300μm、好ましくは10μm〜100μmが望ましい。本発明においては、上記のようなヒートシール性樹脂層を最外層にも設け、その最内層面と最外層面とを重ね合わせて、その重合面の端部をヒートシールしてシール部を形成することによって、本発明にかかる包装容器を製造することができる。
【0044】
(5)中間層
本発明においては、基材層とヒートシール性樹脂層との間に、樹脂のフィルムからなる中間層を設けてもよく、さらに上記のとおり基材層に加え、または代えて中間層にガスバリア性層を設けてもよい。このような中間層を設けることにより、強度や耐突き刺し性等が向上する。
中間層として使用する樹脂のフィルムとしては、機械的、物理的、化学的等において優れた強度を有し、耐突き刺し性等に優れ、その他、耐熱性、防湿性、耐ピンホール性、透明性等に優れた樹脂のフィルムないしシートを使用することができる。具体的には、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアラミド系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアクリルまたはメタクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアセタール系樹脂、フッ素系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、その他の強靱な樹脂フィルムないしシートを使用することができる。
上記の樹脂のフィルムないしシートとしては、未延伸フィルム、あるいは一軸方向または二軸方向に延伸した延伸フィルム等のいずれのものでも使用することができる。また、本発明において、その樹脂のフィルムないしシートの厚さとしては、強度、耐突き刺し性等について、必要最低限に保持され得る厚さであればよく、厚すぎると、コストが上昇し、逆に、薄すぎると、強度、耐突き刺し性等が抵下するという問題が生じる。
さらに本発明においては、必要に応じて、上記の中間層以外に、上記の樹脂フィルムからなる一つまたはそれ以上の第2、第3等の中間層を本発明の包装材料を構成する材料として使用することができる。なお本発明にいう中間層、第2の中間層、第3の中間層等とは、設けた中間層の数を意味するのみであって、実質的な相違はなく、例えば本発明の包装材料に中間層を2つ設けた場合、いずれか一方を中間層とした場合、他方を第2の中間層という。
【0045】
(6)その他
なお通常包装容器は、種々の物品を充填包装する場合、化学的にも、物理的にも過酷な条件に置かれることが多いことから、このような条件に対応するために、本発明においては、上記のような材料の他に、通常の軟包装用袋を構成する樹脂のフィルムないしシートを適宜使用することができる。具体的には、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−アクリル酸またはメタクリル酸共重合体、メチルペンテンポリマー、ポリブテン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリアクリルニトリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS系樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS系樹脂)、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体のケン化物、フッ素系樹脂、ジエン系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ニトロセルロース等の公知の樹脂のフィルムないしシートから任意に選択して使用することができる。その他、例えば、セロハン等のフィルム、合成紙等も使用することができる。本発明において、上記の樹脂のフィルムないしシートは、未延伸、一軸ないし二軸方向に延伸されたもの等のいずれのものでも使用することができる。またその厚さは、任意であるが、数μm〜300μmの範囲から選択して使用することができる。さらに本発明においては、樹脂のフィルムないしシートとしては、押し出し成膜、インフレーション成膜、コーティング膜等のいずれの性状の膜でもよい。
【0046】
3.本発明の包装材料を製造する方法
上記の本発明において、上記のような材料を使用して、本発明の包装材料を製造する方法について説明する。本発明の包装材料を製造するためには、まず上記の基材層、中間層、ヒートシール性樹脂層等に説明したように、ガスバリア性層または印刷層を形成し、次にガスバリア性層または印刷層を設けた基材層、中間層、ヒートシール性樹脂層等を貼り合わせることにより製造する。前記基材層、中間層、ヒートシール性樹脂層等を貼り合わせる方法としては、通常の包装材料を製造するときに使用するラミネート方法、例えば、ウエットラミネーション法、ドライラミネーション法、無溶剤型ドライラミネーション法、押し出しラミネーション法、Tダイ共押し出し成形法、共押し出しラミネーション法、インフレーション法等で行うことができる。そして本発明においては、上記のラミネ−トを行う際に、必要ならば、例えば、コロナ処理、オゾン処理等の前処理をフィルムに施すことができ、また、例えば、イソシアネート系(ウレタン系)、ポリエチレンイミン系、ポリブタジエン系、有機チタン系等のアンカーコーティング剤、あるいはポリウレタン系、ポリアクリル系、ポリエステル系、エポキシ系、ポリ酢酸ビニル系、セルロ−ス系等のラミネート用接着剤等の公知のアンカーコート剤、接着剤等を使用することができる。
上記のような包装材料の製造法において、押し出しラミネートする際の接着剤層を構成する押し出し樹脂としては、例えば、ポリエチレン、エチレン−α・オレフィン共重合体、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリイソブテン、ポエイソブチレン、ポリブタジエン、ポリイソプレン、エチレン−メタクリル酸共重合体、あるいはエチレン−アクリル酸共重合体等のエチレンと不飽和カルボン酸との共重合体、あるいはそれらを変性した酸変性ポリオレフィン系樹脂、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体等を使用することができる。また、本発明において、ドライラミネートする際の接着剤層を構成する接着剤としては、具体的には、ドライラミネート等において使用される2液硬化型ウレタン系接着剤、ポリエステルウレタン系接着剤、ポリエーテルウレタン系接着剤、アクリル系接着剤、ポリエステル系接着剤、ポリアミド系接着剤、ポリ酢酸ビニル系接着剤、エポキシ系接着剤、ゴム系接着剤等を使用することができる。
【0047】
4.本発明の包装材料を使用して包装容器を製造する方法
次に、本発明にかかる包装材料を使用して包装容器を製造する方法について説明すると、かかる方法としては、種々の方法があるが、前述の包装材料を使用し、そのヒートシール性樹脂層面を対向して重ね合わせ、更に、その周辺端部をヒートシールしてシール部を設けて、本発明にかかる包装容器を製造することができる。上記において、周辺端部をヒートシールする形態としては、例えば、側面シール型、二方シール型、三方シール型、四方シール型、封筒貼りシール型、合掌貼りシール型(ピローシール型)、ひだ付シール型、平底シール型、角底シール型、舟底シール型等のヒートシール形態をあげることができ、これに合った種々の形態の包装容器を製造することができる。その他、例えば、自立性包装袋(スタンディングパウチ)等も製造することが可能である。上記において、ヒートシールの方法としては、例えば、バーシール、回転ロールシール、ベルトシール、インパルスシール、高周波シール、超音波シール等の公知の方法で行うことができる。
【0048】
5.本発明の包装容器の用途
本発明において、上記のようにして製造した本発明にかかる包装容器は、種々の物品の充填包装に使用することができ、例えば、医薬や飲食品等の物品を充填包装するに適するものである。特に、本発明の包装容器を、栄養剤等の液体または半固体状の医薬や飲食品等の充填包装に使用した場合には、内容物が、紫外〜可視短波長領域という特定の波長領域の光線による影響を受けて、その品質等が変化し、内容物の品質が劣化することを防止することができると共に、投与量や投与速度を正確に調節することが可能となる。また本発明においては、上記のような物品を充填包装してなる包装製品は、金属探知機等を使用して、その中に金属等の異物の混入の有無を簡単に検査することができる。
【実施例】
【0049】
次に本発明について実施例を挙げて具体的に説明する。
実施例1
基材層として厚さ12μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを用い、この片面に、ガスバリア性層として、化学蒸着法により100Åの有機酸化ケイ素の蒸着膜を積層した。次に前記ガスバリア性層に、以下の(表1)に示す順序でグラビア印刷法により、内容物視認部分および他の部分を構成する各印刷インキを連続して印刷し、印刷層を形成した。
印刷層の形成後、その上に接着剤層として2液硬化型ウレタン系接着剤を乾燥状態で3.5g/m2となるように設け、中間層として厚さ15μmの2軸延伸ナイロンフィルム用い、これを前記接着剤層と対向させてグラビアコート法により貼り合わせた。さらに前記中間層の背面に接着剤層として2液硬化型ウレタン系接着剤を乾燥状態で3.5g/m2となるように設け、ヒートシール性樹脂層として70μmの未延伸ポリプロピレンフィルムを用い、これを前記接着剤層と対向させてグラビアコート法により貼り合わせ、内容物視認部分と他の部分とからなる本発明の包装材料を製造した。
【0050】
【表1】

【0051】
実施例2
ガスバリア性層として、物理蒸着法により、200Åの酸化アルミニウムの蒸着膜を基材層に積層したこと以外は、実施例1と同様の方法で、内容物視認部分と他の部分とからなる本発明の包装材料を製造した。
【0052】
実施例3
以下の(表2)に示す順序でグラビア印刷法により、内容物視認部分および他の部分を構成する各印刷インキを連続して印刷し、印刷層を形成したこと以外は、実施例2と同様の方法で、内容物視認部分と他の部分とからなる本発明の包装材料を製造した。
【0053】
【表2】

【0054】
実施例4
以下の(表3)に示す順序でグラビア印刷法により、内容物視認部分および他の部分を構成する各印刷インキを連続して印刷し、印刷層を形成したこと以外は、実施例2と同様の方法で、内容物視認部分と他の部分とからなる本発明の包装材料を製造した。
【0055】
【表3】

【0056】
実施例5
(1)基材層として厚さ12μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを用い、この片面に、以下に示す方法により、ガスバリア性層として、酸化アルミニウムの蒸着膜と、ガスバリア性塗布膜とを順に積層した。すなわち、前記基材層の片面に、物理蒸着法により200Åの酸化アルミニウムの蒸着膜を積層し、さらに前記蒸着膜上に以下の(表4)に示す組成に従って、調製した組成a.と組成b.との撹拌混合液からなる無色透明のバリア塗工液をグラビアロールコート法によりコーティングして、次いで、100℃で30秒間、加熱処理して、乾操状態で0.4g/m2のガスバリア性塗布膜を形成した。
【表4】

【0057】
(2)次に前記ガスバリア性層に実施例3の(表2)に示したのと同様の順序でグラビア印刷法により、内容物視認部分および他の部分を構成する各印刷インキを連続して印刷し、印刷層を形成した。さらに前記印刷層に接着剤層として2液硬化型ウレタン系接着剤を乾燥状態で3.5g/m2となるように設け、中間層として厚さ15μmの2軸延伸ナイロンフィルムを用い、これを前記接着剤層と対向させてグラビアコート法により貼り合わせた。さらに2軸延伸ナイロンフィルムの背面に接着剤層として2液硬化型ウレタン系接着剤を乾燥状態で3.5g/m2となるように設け、ヒートシール性樹脂層として70μmの未延伸ポリプロピレンフィルムを用い、これを前記接着剤層と対向させてグラビアコート法により貼り合わせ、内容物視認部分と他の部分とからなる本発明の包装材料を製造した。
【0058】
実施例6
(1)基材層として厚さ15μmの2軸延伸ナイロンフィルムを用い、前記2軸延伸ナイロンフィルムの片面に、実施例3の(表2)に示したのと同様の順序でグラビア印刷法により、内容物視認部分および他の部分を構成する各印刷インキを連続して印刷し、印刷層を形成した。
【0059】
(2)一方、中間層として厚さ15μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを用い、前記中間層の片面に、ガスバリア性層として物理蒸着法で200Åの酸化アルミニウムの蒸着膜と、実施例5に示したのと同様の方法で乾燥状態で0.4g/m2のガスバリア性塗布膜とを形成した。
【0060】
(3)印刷層を積層した基材層の印刷面に、接着剤層として2液硬化型ウレタン系接着剤を乾燥状態で3.5g/m2となるように設け、これをガスバリア性層を積層した中間層の中間層面と対向させてグラビアコート法により貼り合わせた。さらに前記ガスバリア性層に、接着剤層として2液硬化型ウレタン系接着剤を乾燥状態で3.5g/m2となるように設け、ヒートシール性樹脂層として70μmの未延伸ポリプロピレンフィルムを用い、これを前記接着剤層と対向させてグラビアコート法により貼り合わせ、内容物視認部分と他の部分とからなる本発明の包装材料を製造した。
【0061】
実施例7
以下の(表5)に示す順序でグラビア印刷法により、内容物視認部分1、2を構成する各印刷インキを連続して印刷し、印刷層を形成したこと以外は、実施例1と同様の方法で、内容物視認部分のみからなる本発明の包装材料を製造した。
【0062】
【表5】

【0063】
比較例1
以下の(表6)に示す順序でグラビア印刷法により、内容物視認部分および他の部分に相当する箇所に各印刷インキを連続して印刷し、印刷層を形成したこと以外は、実施例1と同様の方法で、包装材料を製造した。
【0064】
【表6】

【0065】
比較例2
以下の(表7)に示す順序でグラビア印刷法により、内容物視認部分および他の部分に相当する箇所に各印刷インキを連続して印刷し、印刷層を形成したこと以外は、実施例1と同様の方法で、包装材料を製造した。
【0066】
【表7】

【0067】
比較例3
基材層にガスバリア性層を設けなかったこと以外は、実施例3と同様の方法で、包装材料を製造した。
【0068】
比較例4
基材層にガスバリア性層として物理蒸着法で250Åの酸化ケイ素の蒸着膜を設けたことと、以下の(表8)に示す順序でグラビア印刷法により、内容物視認部分および他の部分に相当する箇所に各印刷インキを連続して印刷し、印刷層を形成したこと以外は、実施例1と同様の方法で、包装材料を製造した。
【0069】
【表8】

【0070】
1.実施例1〜7、比較例1〜4の包装材料のレトルト処理前後における酸素透過度、水蒸気透過度の評価
実施例1〜7、および比較例1〜4の包装材料を用い、製袋機にて125mm×150mm(うち内容物視認部分は10mm×100mm)の平パウチを作成した。平パウチの外観は図7に示すとおりとなった。このようにして作成した平パウチに、内容物として水道水を充填し、蒸気レトルト殺菌を121℃、30分、2.1atmの条件で行った。蒸気レトルト殺菌後、上記と同様の条件で包装材料の酸素透過度、水蒸気透過度を測定した。
次に上記レトルト殺菌処理前後の、上記各実施例、および各比較例1〜4の包装材料の酸素透過度をMOCON社製OX−TRAN2/20で、23℃/90RH%の測定条件(JIS規格 K7126)にて、水蒸気透過度をMOCON社製PERMATRANで、40℃/90RH%の測定条件(JIS規格 K7129)にて測定した。
結果を以下の(表9)に示す。
【0071】
【表9】

【0072】
「評価結果」
上記のとおり基材層または中間層に、ガスバリア性層を積層した実施例1〜7の包装材料は、ガスバリア性層を積層しなかった比較例3と比較して、レトルト処理前後におけるガスバリア性が顕著に優れるものであることが確認された。
例えば、実施例1のレトルト処理前における酸素透過度と水蒸気透過度を、比較例3と比較すると、実施例1の酸素透過度、水蒸気透過度は、それぞれ1.5と1.2であるのに対し、比較例3においては、それぞれ>60と6.5であり、実施例1は比較例3に比し、酸素透過度、水蒸気透過度がそれぞれ約40倍以上、約5.4倍も優れるものであることが確認された。同様にレトルト処理後の実施例1を、比較例3と比較すると、実施例1は比較例3に比し、酸素透過度、水蒸気透過度がそれぞれ約25倍以上、約3.6倍も優れるものであることが確認された。
特に基材層または中間層にガスバリア性塗布膜を設けた実施例4や実施例5においては、レトルト処理前後のガスバリア性がより一層優れたものとなり、例えば実施例4を比較例3と比較すると、レトルト処理前においては、酸素透過度で約200倍以上、水蒸気透過度で約16倍、レトルト処理後においては、酸素透過度で約75倍以上、水蒸気透過度で約6倍も優れるものであることが確認された。
【0073】
2.遮光性評価
上記実施例1〜7、および比較例1〜4の包装材料について、内容物視認部分(実施例7においては内容物視認部分1)、他の部分(実施例7においては内容物視認部分2)の250nm〜800nmまでの光線透過率を、島津製作所紫外線可視吸光分光計(UV−2400)にて、測定した。内容物視認部分における遮光性評価結果を図8aに、他の部分における遮光性評価結果を図8bに示す。
【0074】
「評価結果」
実施例1〜6の内容物視認部分や実施例7の内容視認部分1は、燈色インキや黄色インキにより印刷層を形成したものであり、実施例7の内容物視認部分2は白色インキと燈色インキにより印刷層を形成したものであるが、両者とも250nm〜550nmの波長領域の光線に対し、20%以下という低い透過率を示すと共に、650nm〜800nmの波長領域の光線に対し、80%以上という高い透過率を示した。
【0075】
これに対し、印刷層を形成しなかった、比較例1や比較例2の内容物視認部分、白色インキのみで他の部分の印刷層を形成した比較例2の他の部分は、250nm〜約300nmまでの波長領域の光線に対しては遮光性を示すものの、300nm付近で光線透過率が急激に増加し、350nm〜800nmの透過率は約90%以上と非常に高いものとなり、250nm〜550nmの波長領域の光線を効果的に遮光できなかった。一方、白色インキと灰色インキとで印刷層を形成した比較例4の内容物視認部分は、250nm〜800nmのすべての波長領域にわたり約10%以下と低い光線透過率を示した。
【0076】
すなわち燈色インキ、黄色インキという、燈色顔料・染料、黄色顔料・染料、または黄色顔料・染料と赤色顔料・染料との組み合わせ等の特定の顔料・染料を含む印刷インキを、印刷層を形成する材料として使用することにより、タンパク質や糖質分解に関与する250nm〜550nmという特定の波長領域の光線のみを効果的に遮光できることが確認された。
【0077】
3.内容物視認性および印刷外観評価
上記1.の酸素透過度、水蒸気透過度の評価で作成したのと同様の方法で、実施例1〜7、比較例1〜4の包装材料を用いて125mm×150mm(うち内容物視認部分は10mm×100mm)の平パウチを作成した。これらの平パウチに市販の栄養食品(タンパク質、糖質入り)の粉末を水に規定量溶解したものを充填し、平パウチの内容物視認部分における内容物視認性、他の部分の印刷外観を目視で評価した。結果を以下の(表10)に示す。
【0078】
【表10】

【0079】
「評価結果」
(1)内容物視認性の評価結果
実施例1〜7の平パウチの内容物視認部分は、250nm〜550nmの波長領域の光線に対し、20%以下という低い透過率を示すと共に、650nm〜800nmの波長領域の光線に対し、80%以上という高い透過率を示すものであるが、これらの平パウチにおける内容物視認性を、内容物視認部分が遮光性を有さない比較例1および比較例2の平パウチと比較すると、両者とも内容物を確認することが可能であり、実施例1〜7の平パウチは、内容物視認部分が遮光性を有さない比較例1および比較例2の平パウチと同等の優れた内容物視認性を示した。これに対し、内容物視認部分が、250nm〜800nmのすべての波長領域にわたり低い光線透過率を有する比較例4の平パウチにおいては、内容物の残量を確認することができず、内容物視認性に劣るものであった。
すなわち内容物視認部分として、650nm〜800nmの波長領域の光線に対する透過率が一定以上の包装用材料を使用することにより、遮光性を有さない包装容器と同等の優れた内容物視認性が得られることが確認された。
【0080】
(2)印刷外観の評価結果
実施例1〜6の他の部分は、白色インキおよび灰色インキを連続印刷することにより他の部分の印刷層を形成したものであり、また実施例7の内容物視認部分2は、白色インキおよび燈色インキを連側印刷することにより他の部分を形成したものであるが、いずれも商品名や柄の印刷に際し障害とならない良好な印刷画像が得られた。
【0081】
4.保存性評価
上記1.の酸素透過度、水蒸気透過度の評価で作成したのと同様の方法で、実施例1〜7、比較例1〜4の包装材料を用いて125mm×150mmの平パウチ(うち内容物視認部分は10mm×100mm)を作成した。これらの平パウチに市販の栄養食品(タンパク質、糖質入り)の粉末を水に規定量溶解したものを充填し、レトルト処理後に、蛍光灯下、23℃、40%RHの条件で1ヵ月保存し、内容物の変色の有無を評価した。結果を以下の(表11)に示す。
【0082】
【表11】

【0083】
「評価結果」
実施例1〜6の平パウチは、高いガスバリア性を有し、その内容物視認部分は250nm〜550nmの波長領域の光線に対し20%以下という低い透過率を有すると共に、650nm〜800nmの波長領域の光線に対し80%以上という高い透過率を有するものであり、そして他の部分はすべての波長領域の光線に対し20%以下という低い透過率を有するものである。また実施例7の平パウチは、高いガスバリア性を有し、250nm〜550nmの波長領域の光線に対し20%以下という低い透過率を有し、かつ650nm〜800nmの波長領域の光線に対し80%以上という高い透過率を有する内容物視認部分のみからなるものである。
【0084】
すなわち上記実施例1〜7の平パウチは、いずれも高いガスバリア性と、250nm〜550nmの波長領域の光線に対し高い遮光性とを有するものであるが、これらの平パウチの内容物保存性を、高いガスバリア性とすべての波長領域の光線に対し高い遮光性を有する比較例4の平パウチと比較すると、両者とも1ヵ月後の評価において内容物の変色は認められず、実施例1〜7の平パウチは比較例4の平パウチと同等の優れた保存性を有することが確認された。
【0085】
これに対し、内容物視認部分が遮光性を有さない比較例1や、内容物視認部分と他の部分の両方が遮光性を有さない比較例2の平パウチにおいては、1ヵ月後の評価において内容物が変色し、実施例1〜7の平パウチと比較して保存性に劣ることが確認された。またガスバリア性に劣る比較例3の平パウチにおいても同様に、1ヵ月後の評価において内容物が変色し、保存性に劣ることが確認された。
すなわち包装材料として、高いガスバリア性と、250nm〜550nmの波長領域の光線に対し高い遮光性とを兼ね備えるものを使用することにより、すべての波長領域の光線に対し遮光性を有する包装容器と同等の保存性が得られることが確認された。
【0086】
5.評価結果のまとめ
以上のとおり、包装材料に高いガスバリア性を付与すると共に、その一部または全部を250nm〜550nmという特定の波長領域の光線のみを遮光するものとし、残りをすべての波長領域の光線を遮光するものとすることにより、優れた保存性と内容物視認性とを兼ね備える包装容器が得られることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】本発明の包装材料の外観の一例を示す概略的平面図である。
【図2】本発明の包装材料の層構成の一例を示す概略的断面図である。
【図3】本発明の包装材料の層構成の一例を示す概略的断面図である。
【図4】本発明の包装材料の層構成の一例を示す概略的断面図である。
【図5】図2に示す包装材料を使用して製袋してなる本発明の包装容器の構成を示す概略的斜視図である。
【図6】図5に示す包装用容器内に内容物を充填包装した包装製品の構成を示す概略的斜視図である。
【図7】実施例1〜7、または比較例1〜4の包装材料を使用して製袋してなる包装容器の外観を示す概略的平面図である。
【図8a】実施例1〜7、および比較例1〜4の包装容器の内容物視認部分の250nm〜800nmの光線透過率の測定結果を示す図である。
【図8b】実施例1〜7、および比較例1〜4の包装容器の他の部分の250nm〜800nmの光線透過率の測定結果を示す図である。
【符号の説明】
【0088】
1 内容物視認部分
2 他の部分
3 基材層
4 ヒートシール性樹脂層
4a ヒートシール性樹脂層
5 ガスバリア性層
6 内容物視認部分を構成する印刷層
7 他の部分を構成する印刷層
8 中間層
9 ヒートシール部
10 内容物
11 上端シール部
12 開封用ノッチ
A 包装材料
B 包装材料
C 包装材料
D 包装材料
E 包装容器
F 包装製品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも樹脂フィルムからなる基材層、ヒートシール性樹脂層、印刷層、および場合によって樹脂フィルムからなる中間層を有する積層材からなる包装材料において、
前記基材層、前記中間層のいずれか一方または両方の一方の面にガスバリア性層を設け、さらに
前記包装材料の一部または全部が、250nm〜550nmの波長領域において20%以下であり、さらに長波長領域に移るにしたがって透過率が上昇し、そして650nm〜800nmの波長領域において50%以上の光線透過率を有する内容物視認部分であり、他の部分が20%以下の全光線透過率を有することを特徴とする包装材料。
【請求項2】
内容物視認部分が、250nm〜550nmの波長領域において10%以下の光線透過率を有することを特徴とする請求項1に記載の包装材料。
【請求項3】
内容物視認部分の印刷層に用いられる顔料が、燈色系顔料、黄色系顔料、および燈色系顔料もしくは黄色系顔料と、赤色系顔料との混合物からなる群から選択される1種またはそれ以上の顔料であることを特徴とする請求項1または2に記載の包装材料。
【請求項4】
積層材が、中間層を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の包装材料。
【請求項5】
基材層にガスバリア性層を設けたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の包装材料。
【請求項6】
ガスバリア性層が、無機酸化物の蒸着膜を有する樹脂フィルムであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の包装材料。
【請求項7】
ガスバリア性層が、無機酸化物の蒸着膜と、一般式R1nM(OR2m(式中、Mは金属原子を表し、R1、R2は炭素数1〜8の有機基を表し、nは0以上の整数であり、mは1以上の整数であり、n+mはMの原子価を表す)で表される少なくとも1種以上のアルコキシド、ポリビニルアルコール、および/またはエチレン・ビニルアルコールを含んでなる組成物を、ゾルゲル法によって重縮合して得るアルコキシドの加水分解物またはアルコキシドの加水分解縮合物であるガスバリア性塗布膜とからなることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の包装材料。
【請求項8】
無機酸化物が、酸化アルミニウムまたは酸化ケイ素であることを特徴とする請求項6または7記載の包装材料。
【請求項9】
無機酸化物の蒸着膜を有する樹脂フィルムが、化学蒸着法で樹脂フィルムに有機酸化ケイ素を積層することにより形成されたものであることを特徴とする請求項6または7記載の包装材料。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の包装材料を用いた栄養剤用の包装容器であって、一方の包装材料のヒートシール性樹脂層側と、他方の包装材料のヒートシール性樹脂層側とが対向するように重ね合わせ、その端部をヒートシールしたことを特徴とする包装容器。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8a】
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【図8b】
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【公開番号】特開2007−290268(P2007−290268A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−121724(P2006−121724)
【出願日】平成18年4月26日(2006.4.26)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】