説明

化学増幅型シリコーン系ポジ型ホトレジスト組成物

容易に入手可能な化合物を原料として簡単な手段で製造可能であって、これを用いた二層レジスト材料により、高解像度で高アスペクト比、良好な断面形状、小さいラインエッジラフネスの微細パターンを形成しうる化学増幅型ポジ型シリコーン系ポジ型レジスト組成物を提供する。(A)アルカリ可溶性樹脂及び(B)光酸発生剤を含む化学増幅型ポジ型レジスト組成物において、(A)アルカリ可溶性樹脂として、(a)(ヒドロキシフェニルアルキル)シルセスキオキサン単位、(a)(アルコキシフェニルアルキル)シルセスキオキサン単位及び(a)アルキル又はフェニルシルセスキオキサン単位を含んでなるラダー型シリコーン共重合体を用いる。上記(A)成分において(a)単位がフェニルシルセスキオキサン単位である共重合体は新規化合物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、特に二層レジスト材料の上層として用いた場合、高解像度で良好な断面形状を有し、ラインエッジラフネスの小さいパターンを与える新規な化学増幅型シリコーン系ポジ型ホトレジスト組成物、それを用いた二層レジスト材料及びそれらに用いられるラダー型シリコーン共重合体に関するものである。
【背景技術】
近年、半導体素子の微細化が急速に進むに従って、その製造に用いられるホトリソグラフィー工程についても0.20nm以下の微細加工が求められるようになってきており、KrF、ArF又はFエキシマレーザー光などの短波長の照射光に対応する化学増幅型レジスト材料の開発が行われている。
しかしながら、これまでの化学増幅型レジスト材料を用いてリソグラフィー法により微細加工する場合には、機械的強度の点で、高アスペクト比のパターン形成を行うことは非常にむずかしい。このため、最近に至り、寸法精度が高く、高アスペクト比が得やすい多層レジスト法が検討されるようになり、特に高い集積度を得るために複数回のリソグラフィー工程を行って、多層の回路を形成した場合、その表面は凹凸を呈するので、この多層レジスト法によるパターン形成が必須となっている。
この多層レジスト法に用いるレジスト材料には、上層をポジ型レジスト層とし、下層を有機樹脂層とした二層構造のものと、これらの上層と下層の間に中間層として金属薄膜層を設けた三層構造のものとが知られているが、いずれも有機層により所要の厚みを確保してポジ型レジスト層の薄膜化を可能にしたものである。
これらのレジスト材料は、上層のポジ型レジスト層によって形成したパターンをマスクとしてプラズマエッチングして基板にパターンを刻設するのに用いられているが、上層のポジ型レジスト層が耐エッチング性を欠くとプラズマエッチングの際に膜減りし、マスクパターンとしての役割を十分に果すことができなくなるため、中間に金属薄膜層を設け三層構造にしているのである。したがって、上層のポジ型レジスト層の厚みを小さくしても十分な耐エッチング性を備えたものであれば、あえて作業工程が複雑な三層構造とする必要はなく、二層構造のものを用いることができる。
このため、酸素プラズマに対する耐性が高く、かつパターンの断面形状に優れたポジ型レジスト組成物についての検討がなされている。これまでにアルカリ可溶性樹脂として、一般式

[式中のn及びmは0.5≦n(n+m)≦0.7の関係を満たす0又は正の数である]
で表わされるアルカリ可溶性ラダーシリコーン重合体を用いたポジ型レジスト組成物(特許文献1参照)、アルカリ可溶性樹脂として、多環式炭化水素基をもつ含ケイ素化合物残基とともに、脂環式系列の化合物残基とジアクリレート化合物残基を導入した重合体を用いた化学増幅型ポジ型レジスト組成物(特許文献2参照)が提案されている。
しかしながら、これらの化学増幅型ポジ型レジスト組成物は、原料化合物の入手が困難である上に、パターン断面形状、焦点深度、ラインエッジラフネスの面でも必ずしも満足できるものではなく、より優れた物性をもつシリコーン系ポジ型レジスト組成物が要望されていた。
【特許文献1】 日本国特許第2567984号公報(特許請求の範囲等)
【特許文献2】 日本国特開2001−233920号公報(特許請求の範囲等)
【発明の開示】
本発明は、容易に入手可能な化合物を原料として簡単な手段で製造可能であって、これを用いた二層レジスト材料により、高解像度で高アスペクト比、良好な断面形状、小さいラインエッジラフネスの微細パターンを形成しうる化学増幅型ポジ型シリコーン系ポジ型レジスト組成物、それを用いた二層レジスト材料及びそれらに用いられるラダー型シリコーン共重合体を提供することを目的としてなされたものである。
本発明者らは、レジストパターン断面形状がよく、焦点深度が広く、ラインエッジラフネスを低減しうる二層レジスト材料用化学増幅型シリコーン系ポジ型レジスト組成物を開発するために鋭意研究を重ねた結果、(ヒドロキシフェニルアルキル)シルセスキオキサン単位、(アルコキシフェニルアルキル)シルセスキオキサン単位及びアルキル又はフェニルシルセスキオキサン単位の3種のシルセスキオキサン単位を含んでなるアルカリ可溶性ラダー型シリコーン共重合体を用いることにより、その目的を達成しうることを見出し、この知見に基づいて本発明をなすに至った。
すなわち、本発明は、(A)アルカリ可溶性樹脂及び(B)光酸発生剤を含む化学増幅型ポジ型レジスト組成物において、(A)アルカリ可溶性樹脂として、(a)(ヒドロキシフェニルアルキル)シルセスキオキサン単位、(a)(アルコキシフェニルアルキル)シルセスキオキサン単位及び(a)アルキル又はフェニルシルセスキオキサン単位を含んでなるラダー型シリコーン共重合体を用いることを特徴とする化学増幅型シリコーン系ポジ型レジスト組成物、基板上に有機層を設け、その上に上記の化学増幅型シリコーン系ポジ型レジスト組成物の層を形成させたことを特徴とする二層レジスト材料及びびそれらに用いられる(ヒドロキシフェニルアルキル)シルセスキオキサン単位、(アルコキシフェニルアルキル)シルセスキオキサン単位及びフェニルシルセスキオキサン単位を含んでなる新規なラダー型シリコーン共重合体を提供するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
本発明の化学増幅型シリコーン系ポジ型レジスト組成物は、
(A)アルカリ可溶性樹脂と(B)光酸発生剤とを必須成分として含む。
(A)成分はラダー型シリコーン共重合体であって、(a)(ヒドロキシフェニルアルキル)シルセスキオキサン単位、すなわち、一般式

又は

(式中のnは1〜3の整数である)
で表わされる構成単位と、(a)(アルコキシフェニルアルキル)シルセスキオキサン単位、すなわち一般式

又は

(式中のRは炭素数1〜4の直鎖状又は枝分れ状低級アルキル基、nは1〜3の整数である)
で表わされる構成単位と、(a)アルキル又はフェニルシルセスキオキサン単位、すなわち式

又は

(式中のRは炭素数1〜20の直鎖状又は炭素数2〜20の枝分かれ状又は炭素数5〜20の脂環状又は単環又は多環式アルキル基又はフェニル基である)
で表わされる構成単位を含んでなるラダー型シリコーン共重合体を用いることが必要である。上記一般式(II)又は(II´)中のRは、低級アルキル基であり、メチル基が最も好ましい。この一般式(III)又は(III´)中のRとしては、炭素数1〜5の低級アルキル基、炭素数5〜6のシクロアルキル基又はフェニル基が被膜のk値(消衰係数、extinction coefficient)を調整しやすいので好ましい。また、上記一般式(I)と(II)における−OH基と−OR基の結合位置は、o位、m位及びp位のいずれでもよいが、工業的にはp位が好ましい。また、(a)、(a)及び(a)単位は、通常上記一般式(I)、(II)及び(III)で表わされたり、あるいは(I´)、(II´)、(III´)と表わされる。これらの単位以外の公知の共重合可能な単位を本発明の目的が達成される範囲内で含んでいても良い。
このラダー型シリコーン共重合体は、質量平均分子量(ポリスチレン換算)が1500〜30000の範囲にあるものが好ましく、3000〜20000のものがより好ましい。分子量の分散度は1.0〜5.0の範囲であることが好ましく、1.2〜3.0であることがより好ましい。
これらの構成単位の含有割合は、(a)単位10〜70モル%、好ましくは20〜55モル%、(a)単位5〜50モル%、好ましくは10〜40モル%、(a)単位10〜60モル%、好ましくは20〜40モル%の範囲内で選ばれる。
この中の(a)単位はアルカリに対する溶解度を調整して膜減りを抑制し、レジストパターン断面に生じる丸味を防止する。これは、(ヒドロキシフェニルアルキル)シルセスキオキサン単位の出発原料である(アルコキシフェニルアルキル)シルセスキオキサン単位と同じであるから、アルコキシ基の解離度を抑制することにより簡単に導入することができるので有利である。
本発明の化学増幅型シリコーン系ポジ型レジスト組成物においては、(A)成分中の(a)単位を増減してアルカリに対する溶解速度を0.05〜50nm/s、好ましくは5.0〜30nm/sに調節するのがよい。この(A)成分の質量平均分子量としては、ポリスチレン換算で1500〜20000の範囲が好ましい。
(B)成分の光酸発生剤は、光の照射により酸を発生する化合物のことであり、これまでも一般の化学増幅型ポジ型レジスト組成物の成分として通常使用されているものである。本発明においては、このようにこれまで使用されているものの中から適宜選択して用いることができるが、特にオニウム塩、ジアゾメタン系化合物が好ましい。オニウム塩とジアゾメタンを混合して用いることが好ましい。オニウム塩とその質量に基づき10〜80質量%のジアゾメタン系化合物とを併用すると、コンタクトホールでのラインエッジラフネスが低減するので更に好ましい。
本発明の化学増幅型シリコーン系ポジ型レジスト組成物の(B)成分として好ましい光酸発生剤は、ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート又はノナフルオロブタンスルホネート、ビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムのトリフルオロメタンスルホネート又はノナフルオロブタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムのトリフルオロメタンスルホネート又はノナフルオロブタンスルホネート、トリ(4−メチルフェニル)スルホニウムのトリフルオロメタンスルホネート又はノナフルオロブタンスルホネートなどのオニウム塩や、ビス(p−トルエンスルホニル)ジアゾメタン、ビス(1,1−ジメチルエチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(イソプロピルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(シクロヘキシルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(2,4−ジメチルフェニルスルホニル)ジアゾメタンなどのジアゾメタン系化合物を挙げることができる。これらの中で特に好ましいのは、トリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート及びトリフェニルスルホニウムノナフルオロブタンスルホネートである。
この(B)成分の光発生剤は、単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。その配合量は、前記(A)成分100質量部に対し、通常0.5〜30質量部、好ましくは1〜20質量部の範囲で選ばれる。この光酸発生剤の配合量が0.5質量部未満では像形成ができにくいし、30質量部を超えるとレジストの耐熱性が著しく低下し、矩形の断面形状を形成するのが困難になる。
本発明の化学増幅型シリコーン系ポジ型レジスト組成物には、上記の必須成分(A)及び(B)成分に加えて必要に応じ(C)成分として溶解阻止剤を配合することができる。この溶解阻止剤としては、フェノール性水酸基が酸分解性基で保護されたフェノール化合物又はカルボキシル基が酸分解性基で保護されたカルボキシル化合物が用いられる。
この中のフェノール性水酸基が酸分解性基で保護されるフェノール化合物としては、フェノール基を3〜5個有するポリフェノール化合物、例えば核置換基としてヒドロキシル基をもつトリフェニルメタン系化合物、ビス(フェニルメチル)ジフェニルメタン系化合物がある。また、フェノール、m−クレゾール、2,5−キシレノールから選ばれるフェノール類とホルマリン縮合して得られる2〜6核体も用いることができる。
また、カルボキシル基が酸分解性基で保護されるカルボキシル化合物としては、ビフェニルカルボン酸、ナフタレン(ジ)カルボン酸、ベンゾイル安息香酸、アントラセンカルボン酸などがある。
これらのフェノール化合物又はカルボキシル化合物中の水酸基又はカルボキシル基を保護するための酸分解性基としては、第三ブチルオキシカルボニル基、第三アミルオキシカルボニル基のような第三ブチルオキシカルボニル基や、第三ブチル基、第三アミル基のような第三アルキル基や、第三ブチルオキシカルボニルメチル基、第三アミルオキシカルボニルメチル基のような第三アルコキシカルボニルアルキル基やテトラヒドロピラニル基、テトラヒドロフラニル基のような環状エーテル基などを挙げることができる。そして、このような溶解阻止剤として好適な化合物は、2,5−キシレノールとホルマリン縮合物とを縮合して得られる4核体を第三アルコキシカルボニルアルキル基で保護したものである。
これらの溶解阻止剤は、単独で用いてもよいし、また2種以上混合して用いてもよい。これらの溶解阻止剤は(A)成分のアルカリ可溶性樹脂100質量部当り0.5〜40質量部、好ましくは10〜30質量部の範囲内で用いられる。この量が0.5質量部未満では、十分な溶解阻止効果が得られないし、また40質量部を超えるとパターン形状が劣化したり、リソグラフィー特性が悪化する。
本発明の化学増幅型シリコーン系ポジ型レジスト組成物には、所望に応じさらに(D)クエンチャーとしてアミン及び/又は有機酸を配合することができる。アミンは、露光から露光後加熱処理までの間の時間経過によってレジストパターンが悪化するのを防止するために配合されるのものであり、有機酸はアミンの配合による感度劣化を防止するために配合される。
上記のアミンとしては、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリイソプロピルアミン、ジブチルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミンのような脂肪族アミン、ベンジルアミン、アニリン、N−メチルアニリン、N,N−ジメチルアニリン、o−メチルアニリン、m−メチルアニリン、p−メチルアニリン、N,N−ジエチルアニリン、ジフェニルアミン、ジ−p−トリルアミンのような芳香族アミン、ピリジン、o−メチルピリジン、o−エチルピリジン、2,3−ジメチルピリジン、4−エチル−2−メチルピリジン、3−エチル−4−メチルピリジンのような複素環式アミンなどが用いられる。これらのアミンは単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。これらの中で特にトリアルカノールアミンが好ましく、その中でもトリエタノールアミンが最も好ましい。
上記の有機酸としては、有機ホスホン酸やカルボン酸が用いられるが、このような有機ホスホン酸としては、フェニルホスホン酸が挙げられ、またカルボン酸としては、酢酸、クエン酸、コハク酸、マロン酸、マレイン酸などの脂肪族カルボン酸、安息香酸、サリチル酸などの芳香族カルボン酸が用いられる。特に好ましいものとして、フェニルホスホン酸、サリチル酸が挙げられ、フェニルホスホン酸が最も好ましい。これらの有機酸は単独で用いてもよいし、また2種以上組み合わせて用いてもよい。
これらのクエンチャーは、(A)成分のアルカリ可溶性樹脂100質量部に対し0.01〜5質量部、好ましくは0.1〜1質量部の範囲内で用いられる。この量が少なすぎると露光後の時間経過によるレジストパターンの悪化を防止することができないし、また多すぎるとリソグラフィー工程のスループットが低下する。アミン又はアミンと有機酸との組合せを用いると、露光後の時間経過に伴う安定性が更に良好となる。特には、アミンとしてトリエタノールアミンを、有機酸としてフェニルホスホン酸又はサリチル酸を組み合わせて用いることが好ましい。
本発明の化学増幅型シリコーン系ポジ型レジスト組成物は、使用に際して適当な溶剤に溶かし、溶液として用いられる。この際用いる溶剤としては、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルイソアミルケトンなどのケトン類や、エチレングリコール、エチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコール又はジエチレングリコールモノアセテートのモノメチルエーテル、モノエチルエーテル、モノプロピルエーテル、モノブチルエーテル又はモノフェニルエーテルなどの多価アルコール類及びその誘導体や、ジオキサンのような環式エーテル類や、乳酸メチル、乳酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビル酸エチルなどのエステル類が用いられる。これらは単独で用いてもよいし、また2種以上混合して用いてもよい。
本発明の化学増幅型シリコーン系ポジ型レジスト組成物には、必要に応じさらに相容性のある添加物、例えば増感剤、付加的樹脂、可塑剤、安定剤あるいは現像した像をより一層可視的にするための着色料などの慣用されているものを添加することができる。
次に、本発明の化学増幅型シリコーン系ポジ型レジスト組成物を用いて二層レジスト材料を製造するには、基板上に先ず有機層を設けて下層とし、その上に化学増幅型シリコーン系ポジ型レジスト組成物の層を形成させる。この際用いる基板としては、特に制限はなく、通常の半導体デバイスの基板材料として慣用されている材料の中から任意に選ぶことができる。
この基板上に下層として設けられる有機層は、酸素プラズマによりドライエッチングされうるものであればよく、ほとんどすべての有機物を使用することができる。通常使用されるものとしては、有機系ホトレジスト、ポリメチルメタクリレート、メタクリル酸メチルとメタクリル酸との共重合体、イミド系樹脂などがあるが、好適なのはノボラック樹脂及び1,2−キノンジアジド基を導入したノボラック樹脂である。
このようにして設けられた有機層の上に、本発明の化学増幅型シリコーン系ポジ型レジスト組成物の溶液を常法に従って塗布し、感光層を形成する。この際の各層の乾燥後の厚さは、有機層が200〜800nm、好ましくは300〜600nm、感光層が50〜200nm、好ましくは80〜150nmの範囲で選ばれる。
この二層レジスト材料を用いて所望のレジストパターンを製造する方法の1例を示すと、まず基板上に常法に従って有機層からなる下層を設けたのち、その上に本発明組成物の溶液を、例えばスピンナーを用いて塗布し、乾燥後、可溶化するのに適した活性光線、例えば低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、アーク灯、キセノンランプなどを光源とする活性光線やエキシマレーザー光を、所望のホトマスクを介して選択的に照射するか、縮小投影露光法により照射する。次いで、現像液、例えば1〜5質量%水酸化ナトリウム水溶液、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液、トリメチル(2−ヒドロキシエチル)アンモニウムヒドロキシド水溶液などのアルカリ水溶液により、レジスト膜の露光によって可溶化した部分を溶解除去することで、基板上にレジストパターンを形成する。次に基板上に露出した有機層を酸素ガスによるドライエッチング、例えばプラズマエッチング法、リアクティブイオンエッチング法などによりエッチングすることで、マスクパターンに忠実なパターンを得ることができる。
露光に用いる光の波長は、特に限定されず、ArFエキシマレーザー、KrFエキシマレーザー、Fエキシマレーザー、EUV(極紫外線)、VUV(真空紫外線)、EB(電子線)、X線、軟X線などの放射線を用いて行うことができる。特に、本願発明は、KrFエキシマレーザーに対して有効である。
本発明のレジスト組成物や二層レジスト材料に用いられる(A)成分のラダー型シリコーン共重合体は、耐エッチング性やアルカリ可溶性を有するので好ましく、レジスト組成物の基材樹脂成分として用いたときに、その可溶性を所望の範囲に調整できるので好ましい。
該ラダー型シリコーン共重合体はそれ自体公知の方法、例えば日本国特許第2567984号公報に記載された製造例1の方法で合成できる。
(A)成分のラダー型シリコーン共重合体の中で、(ヒドロキシフェニルアルキル)シルセスキオキサン単位、(アルコキシフェニルアルキル)シルセスキオキサン単位及びフェニルシルセスキオキサン単位を含む共重合体は文献未載の新規化合物である。本発明のレジスト組成物に用いるには、(ヒドロキシフェニルアルキル)シルセスキオキサン単位10〜70モル%、(アルコキシフェニルアルキル)シルセスキオキサン単位5〜50モル%及びフェニルシルセスキオキサン単位10〜60モル%からなる共重合体が好ましく、特に質量平均分子量が1500〜30000で分子量の分散度が1.0〜5.0の範囲である共重合体が好適である。
次に、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によりなんら限定されるものではない。
なお、各実施例における物性は、以下の方法により測定したものである。
(1)感度:
有機反射防止膜(ブリューワ・サイエンス社製、商品名「DUV−44」)65nmを設けたシリコンウエーハ上にレジスト組成物をスピンナーを用いて塗布し、これをホットプレート上で100℃、90秒間乾燥して膜厚0.5μmのレジスト膜を得た。この膜に縮小投影露光装置(ニコン社製、製品名「NSR−203B」、NA=0.60)を用いて、10J/mずつドーズ量を加え、KrFエキシマレーザーにより露光したのち、110℃、90秒間のPEB(POST EXPOSURE BAKE)を行い、2.38質量%−テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液で23℃にて60秒間現像し、30秒間水洗して乾燥したとき、現像後の露光部の膜厚が0となる最小露光時間を感度としてmJ/cm(エネルギー量)単位で測定した。
(2)レジストパターンの断面形状:
上記(1)と同様の操作により得られたラインアンドスペース140nmレジストパターンの断面形状をSEM(走査型電子顕微鏡)写真により評価した。
A:基板とレジストパターンとの角度が85〜90°のもの
B:基板とレジストパターンとの角度が70〜85°未満のもの
C:基板とレジストパターンとの角度が70°未満のもの
(3)焦点深度幅:
上記(1)と同様の操作により、140nmラインアンドスペースパターンが良好な形状で形成される焦点深度幅を測定した。
(4)溶解速度:2.38質量%−テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液中に、レジスト膜を有する基板を23℃において浸漬したときの1秒当りの膜減り量(nm/s)を求めた。
(5)ラインエッジラフネス
上記(1)と同様の操作により形成した140nmラインアンドスペースパターンを走査型電子顕微鏡写真により観察し、ラフネス(レジストライン上の凹凸)のほとんど認められないものをA、小さいラフネスが認められるものをB、大きいラフネスが認められるものをCとして評価した。
(6)解像度
上記(1)と同様の操作により、ベスト露光量での極限解像度を示した。
各例において用いた光酸発生剤、溶解阻止剤、溶剤の略号は以下の意味をもつ。
光酸発生剤TPS塩;式

で表わされるトリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート
溶解阻止剤DI22;式

−R=−CHCOOt−Bu
で表わされる多核フェノール化合物
溶剤EL;乳酸エチル
参考例1
かきまぜ機、還流冷却器、滴下漏斗及び温度計を備えた500ml三つ口フラスコに、炭酸水素ナトリウム1.00モル(84.09)と水400mlを投入し、次いで滴下漏斗からp−メトキシベンジルトリクロロシラン0.32モル(81.8g)とフェニルトリクロロシラン0.18モル(38.1g)とをジエチルエーテル100mlに溶かした溶液を2時間にわたってかきまぜながら滴下したのち、1時間還流加熱した。反応終了後、反応生成物をジエチルエーテルで抽出し、抽出液からジエチルエーテルを減圧下に留去した。
このようにして得た加水分解生成物に10質量%−水酸化カリウム水溶液0.33gを加え、200℃で2時間加熱することにより、p−メトキシベンジルシルセスキオキサン単位64モル%とフェニルシルセスキオキサン単位36モル%からなる共重合体Aを製造した。共重合体AのプロトンNMR、赤外吸収スペクトル、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)の分析結果を以下に示す。
H−NMR(DMSO−d):δ=2.70ppm(−CH−)、3.50ppm(−OCH)、6.00〜7.50ppm(ベンゼン環)
IR(cm−1):ν=1178(−OCH)、1244、1039(−SiO−)
質量平均分子量(Mw):7500、分散度(Mw/Mn):1.8
次に、この共重合体Aをアセトニトリル150mlに溶解した溶液にトリメチルシリルヨード0.4モル(80.0g)を加え、還流下で24時間かきまぜたのち、水50mlを加え、さらに12時間還流下でかきまぜて反応させた。冷却後、亜硫酸水素ナトリウム水溶液で遊離のヨウ素を還元したのち、有機層を分離し、溶媒を留去した。残留物をアセトンとn−ヘキサンで再沈し、減圧加熱乾燥することにより、p−ヒドロキシベンジルシルセスキオキサン単位64モル%とフェニルシルセスキオキサン単位36モル%からなる共重合体Aを製造した。共重合体AのプロトンNMR、赤外吸収スペクトル、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)の分析結果を以下に示す。
H−NMR(DMSO−d):δ=2.70ppm(−CH−)、6.00〜7.50ppm(ベンゼン環)、8.90ppm(−OH)
IR(cm−1):ν=3300(−OH)、1244、1047(−SiO−)
質量平均分子量(Mw):7000、分散度(Mw/Mn):1.8
参考例2
参考例1におけるp−メトキシベンジルトリクロロシランとフェニルトリクロロシランの使用量をそれぞれ0.275モル(70.3g)、0.225モル(47.6g)に変えた以外は、参考例1と同様にしてp−ヒドロキシベンジルシルセスキオキサン単位55モル%とフェニルシルセスキオキサン単位45モル%からなる共重合体Aを製造した。共重合体AのプロトンNMR、赤外吸収スペクトル、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)の分析結果を以下に示す。
H−NMR(DMSO−d):δ=2.70ppm(−CH−)、6.00〜7.50ppm(ベンゼン環)、8.90ppm(−OH)
IR(cm−1):ν=3300(−OH)、1244、1047(−SiO−)
質量平均分子量(Mw):7000、分散度(Mw/Mn):1.8
【実施例1】
トリメチルシリルヨードの量を調整した以外は、参考例1と同様にして参考例1で製造した共重合体Aのp−メトキシ基を部分加水分解させ、p−ヒドロキシベンジルセスキオキサン単位とp−メトキシベンジルシルセスキオキサン単位とフェニルシルセスキオキサン単位とのモル比が49:15:36(A)、25:39:36(A)及び44:20:36(A)の3種の共重合体を製造した。なお、(A)、(A)及び(A)におけるトリメチルシリルヨードの量は、それぞれ0.383モル、0.196モル及び0.344モルへ変え、そのときの各取れ高は、38.9g、39.8g及び39.1gであった。また、各(A)、(A)及び(A)のプロトンNMR、赤外吸収スペクトル、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)の分析結果を以下に示す。
H−NMR(DMSO−d):δ=2.70ppm(−CH−)、3.50ppm(−OCH)、6.00〜7.50ppm(ベンゼン環)、8.90ppm(−OH)
IR(cm−1):ν=3300(−OH)、1178(−OCH)、1244、1047(−SiO−)
質量平均分子量(Mw):7000、分散度(Mw/Mn):1.8
比較例1
参考例1で得た共重合体A100質量部に対し、光酸発生剤TPS塩3.0質量部、溶解阻止剤DI22を27.0質量部、クエンチャーとしてフェニルホスホン酸0.16質量部とトリエタノールアミン0.15質量部を加え、乳酸エチル1730質量部に溶解して化学増幅型シリコーン系ポジ型レジスト組成物溶液を調製した。
比較例2
参考例1で得た共重合体A100質量部に対し、光酸発生剤TPS塩3.0質量部、溶解阻止剤DI22を27.0質量部及びクエンチャーとしてトリエタノールアミン0.15質量部を加え、溶剤EL1730質量部に溶かして化学増幅型シリコーン系ポジ型レジスト組成物溶液を調製した。なお、Aの溶解速度は130.0nm/sであった。
比較例3
参考例2で得た共重合体A100質量部に対し、光酸発生剤TPS塩3.0質量部、溶解阻止剤DI22を27.0質量部、クエンチャーとしてトリブチルアミンを0.15質量部加え、溶剤EL1730質量部に溶かして化学増幅型シリコーン系ポジ型レジスト組成物溶液を調製した。なお、Aの溶解速度は82.0nm/sであった。
【実施例2】
実施例1で得た共重合体A100質量部に対し、光酸発生剤TPS塩3.0質量部、溶解阻止剤DI22を27.0質量部、クエンチャーとしてトリエタノールアミン0.15質量部とフェニルホスホン酸0.16質量部を加え、溶剤EL1730質量部に溶解して化学増幅型シリコーン系ポジ型レジスト組成物溶液を調製した。なお、Aの溶解速度は4.56nm/sであった。
【実施例3】
実施例1で得た共重合体Aを用い、実施例2と同様にして化学増幅型シリコーン系ポジ型レジスト組成物溶液を調製した。なお、Aの溶解速度は0.073nm/sであった。
【実施例4】
実施例1で得た共重合体Aを用い、実施例2と同様にして化学増幅型シリコーン系ポジ型レジスト組成物溶液を調製した。なお、Aの溶解速度は20.46nm/sであった。
応用例
75mmシリコンウエーハ上にノボラック樹脂(東京応化工業社製、商品名「TBLC−100」)を600nmの乾燥厚さに塗布したのち、230℃で90秒間加熱することにより有機層を設けた。次いでこの上に実施例2、3、4及び比較例1、2、3で得た表1に示す組成をもつ化学増幅型シリコーン系ポジ型レジスト組成物溶液を、130nmの乾燥膜厚に均一に塗布し、110℃で90秒間ホットプレート上にて乾燥した。次いで縮小投影露光装置(ニコン社製、「NSR−203B」)を用いて、KrFエキシマレーザーを照射したのち、100℃で90秒間加熱(PEB)処理し、2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液により、23℃で30秒間現像した。そして得られたレジストパターンを平行平板型プラズマエッチング装置(東京応化工業社製、「GP2」)を使用して圧力0.4Pa、酸素ガス流量20ml/min、RF出力1000W、処理温度25℃の条件でリアクティブイオンエッチングを行った。このようにして得られた二層レジスト材料の物性を表2に示す。


【産業上の利用可能性】
本発明の化学増幅型シリコーン系ポジ型レジスト組成物は、二層レジスト材料に用いた場合、高感度、高解像度で、良好な断面形状を有し、ラインエッジラフネスの小さいパターンを与えるので、0.20nm以下の微細加工が求められるKrF、ArF又はFエキシマレーザー光などの短波長の照射光に対応する化学増幅型レジスト材料に用いるのに好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)アルカリ可溶性樹脂及び(B)光酸発生剤を含む化学増幅型ポジ型レジスト組成物において、(A)アルカリ可溶性樹脂として、(a)(ヒドロキシフェニルアルキル)シルセスキオキサン単位、(a)(アルコキシフェニルアルキル)シルセスキオキサン単位及び(a)アルキル又はフェニルシルセスキオキサン単位を含んでなるラダー型シリコーン共重合体を用いることを特徴とする化学増幅型シリコーン系ポジ型レジスト組成物。
【請求項2】
(A)成分が(a)単位10〜70モル%、(a)単位5〜50モル%及び(a)単位10〜60モル%からなるラダー型シリコーン共重合体である請求の範囲第1項記載の化学増幅型シリコーン系ポジ型レジスト組成物。
【請求項3】
アルカリに対する溶解速度が0.05〜50nm/sになるように(a)単位の割合を調節する請求の範囲第1又は2項記載の化学増幅型シリコーン系ポジ型レジスト組成物。
【請求項4】
(B)成分がオニウム塩又はジアゾメタン系化合物である請求の範囲第1、2又は3項記載の化学増幅型シリコーン系ポジ型レジスト組成物。
【請求項5】
(A)成分及び(B)成分に加えて、(C)溶解阻止剤としてフェノール性水酸基が酸分解性基で保護されたフェノール化合物又はカルボキシル基が酸分解性基で保護されたカルボキシル化合物を(A)成分100質量部当り0.5〜40質量部の割合で配合した請求の範囲第1ないし4項のいずれかに記載の化学増幅型シリコーン系ポジ型レジスト組成物。
【請求項6】
(A)成分及び(B)成分あるいは(A)成分、(B)成分及び(C)成分に加えて、(D)クエンチャーとしてアミン及び/又は有機酸を(A)成分100質量部当り0.01〜5質量部の割合で配合した請求の範囲第1ないし5項のいずれかに記載の化学増幅型シリコーン系ポジ型レジスト組成物。
【請求項7】
基板上に、有機層を設け、その上に請求の範囲第1ないし6項のいずれかに記載の化学増幅型シリコーン系ポジ型レジスト組成物の層を形成させたことを特徴とする二層レジスト材料。
【請求項8】
有機層がノボラック樹脂層又は1,2−ナフトキノンジアジド基含有ノボラック樹脂層である請求の範囲第7項記載の二層レジスト材料。
【請求項9】
有機層の厚さが200〜800nmであり、化学増幅型シリコーン系ポジ型レジスト組成物の層の厚さが50〜200nmである請求の範囲第7又は8項記載の二層レジスト材料。
【請求項10】
(ヒドロキシフェニルアルキル)シルセスキオキサン単位、(アルコキシフェニルアルキル)シルセスキオキサン単位及びフェニルシルセスキオキサン単位を含んでなるラダー型シリコーン共重合体。
【請求項11】
(ヒドロキシフェニルアルキル)シルセスキオキサン単位10〜70モル%、(アルコキシフェニルアルキル)シルセスキオキサン単位5〜50モル%及びフェニルシルセスキオキサン単位10〜60モル%からなる請求の範囲第10項記載のラダー型シリコーン共重合体。
【請求項12】
アルカリに対する溶解速度が0.05〜50nm/sの範囲である請求の範囲第10又は11項記載のラダー型シリコーン共重合体。
【請求項13】
質量平均分子量が1500〜30000の範囲である請求の範囲第10項記載のラダー型シリコーン共重合体。
【請求項14】
分子量の分散度が1.0〜5.0の範囲である請求の範囲第10項記載のラダー型シリコーン共重合体。
【請求項15】
請求の範囲第7ないし9項のいずれかに記載の二層レジスト材料に活性光線を選択的に照射する工程及びレジスト膜の露光によって可溶化した部分をアルカリ水溶液により溶解除去する工程を包含する基板上にパターン状のレジスト膜を形成する方法。

【国際公開番号】WO2004/055598
【国際公開日】平成16年7月1日(2004.7.1)
【発行日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−502482(P2005−502482)
【国際出願番号】PCT/JP2003/015344
【国際出願日】平成15年12月1日(2003.12.1)
【出願人】(000220239)東京応化工業株式会社 (1,407)
【Fターム(参考)】