説明

医用画像診断装置及び画像処理装置

【課題】立体視される医用画像の奥行き感が低減することを回避すること。
【解決手段】実施形態の医用画像診断装置としての超音波診断装置は、レンダリング処理部17bと、モニタ2と、制御部18とを備える。レンダリング処理部17bは、3次元の医用画像データであるボリュームデータに対して複数視点からレンダリング処理を行なうことで、所定視差数の視差画像である視差画像群を生成する。モニタ2は、視差画像群を表示することで、観察者により立体的に認識される立体画像を表示する。制御部18は、モニタ2において視差画像群を表示する第1領域と、モニタ2において視差画像群以外の情報を示す情報画像を表示する第2領域とが識別可能となる視差画像群と情報画像との合成画像群がモニタ2に表示されるように制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、医用画像診断装置及び画像処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、両眼視差を用いた投影方法により、人間が3次元空間として認識できる立体画像を表示するディスプレイ装置が実用化されている。かかるディスプレイ装置としては、例えば、レンチキュラーレンズ等の光線制御子を用いて、複数の視点から撮影された多視差画像(例えば、9つの視差画像)を表示することで、観察者が裸眼にて立体視できる立体画像を表示するモニタ等がある。
【0003】
一方、超音波診断装置やX線CT(Computed Tomography)装置、MRI(Magnetic Resonance Imaging)装置等の医用画像診断装置では、3次元の医用画像データ(ボリュームデータ)を生成可能な装置が実用化されている。従来、かかる医用画像診断装置により生成されたボリュームデータは、種々の画像処理(レンダリング処理)により2次元画像(レンダリング画像)とされ、汎用モニタ上にて2次元表示される。
【0004】
例えば、医用画像診断装置により生成されたボリュームデータは、ボリュームレンダリングにより3次元の情報を反映した2次元画像(ボリュームレンダリング画像)とされ、汎用モニタ上にて2次元表示される。しかし、汎用モニタにて2次元の表示面上に表示されるボリュームレンダリング画像には、奥行き感が不足し、観察者は、自身が着目する部位が手前にあるものなのか奥にあるものか区別がつかないことがある。
【0005】
そこで、医用画像診断装置により生成されたボリュームデータに対して多視点からボリュームレンダリングすることで生成されたボリュームレンダリング画像を、立体視可能なモニタにて立体的に表示させることが検討されている。しかし、医用画像は、コントラストのある画質が求められるため、一般的には、医用画像の背景色を黒色にすることが多い。一方、医用画像とともに表示される文字等の情報の背景色も、一般的には、黒色である。このため、立体視される医用画像の奥行き感は、低減してしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−78611号公報
【特許文献2】特開2001−326947号公報
【特許文献3】特開2004−354540号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、立体視される医用画像の奥行き感が低減することを回避することができる医用画像診断装置及び画像処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態の医用画像診断装置は、レンダリング処理部と、表示部と、制御部とを備える。レンダリング処理部は、3次元の医用画像データであるボリュームデータに対して複数視点からレンダリング処理を行なうことで、所定視差数の視差画像である視差画像群を生成する。表示部は、前記レンダリング処理部により生成された前記視差画像群を表示することで、観察者により立体的に認識される立体画像を表示する。制御部は、前記表示部において前記視差画像群を表示する第1領域と、前記表示部において前記視差画像群以外の情報を示す情報画像を表示する第2領域とが識別可能となる前記視差画像群と前記情報画像との合成画像群が前記表示部に表示されるように制御する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、第1の実施形態に係る超音波診断装置の構成例を説明するための図である。
【図2】図2は、9視差画像により立体表示を行なう立体表示モニタの一例を説明するための図である。
【図3】図3は、第1の実施形態に係るボリュームレンダリング処理の一例を説明するための図である。
【図4】図4は、従来技術の課題を説明するための図である。
【図5A】図5Aは、第1の実施形態に係る合成画像群の一例を説明するための図(1)である。
【図5B】図5Bは、第1の実施形態に係る合成画像群の一例を説明するための図(2)である。
【図6A】図6Aは、第1の実施形態に係る合成画像群の別の一例を説明するための図(1)である。
【図6B】図6Bは、第1の実施形態に係る合成画像群の別の一例を説明するための図(2)である。
【図7】図7は、第1の実施形態に係る超音波診断装置の処理を説明するためのフローチャートである。
【図8A】図8Aは、第2の実施形態に係る合成画像群を説明するための図(1)である。
【図8B】図8Bは、第2の実施形態に係る合成画像群を説明するための図(2)である。
【図9】図9は、第2の実施形態に係る超音波診断装置の処理を説明するためのフローチャートである。
【図10A】図10Aは、第3の実施形態に係る制御部を説明するための図(1)である。
【図10B】図10Bは、第3の実施形態に係る制御部を説明するための図(2)である。
【図10C】図10Cは、第3の実施形態に係る制御部を説明するための図(3)である。
【図11】図11は、第3の実施形態に係る超音波診断装置の処理を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して、医用画像診断装置及び画像処理装置の実施形態を詳細に説明する。なお、以下では、医用画像診断装置として超音波診断装置を一例に挙げて説明する。最初に、以下の実施形態で用いる用語について説明すると、「視差画像群」とは、ボリュームデータに対して、所定の視差角ずつ視点位置を移動させてボリュームレンダリング処理を行なうことで生成された画像群のことである。すなわち、「視差画像群」は、「視点位置」が異なる複数の「視差画像」から構成される。また、「視差角」とは、「視差画像群」を生成するために設定された各視点位置のうち隣接する視点位置とボリュームデータによって表される空間内の所定位置(例えば、空間の中心)とにより定まる角度のことである。また、「視差数」とは、立体表示モニタにて立体視されるために必要となる「視差画像」の数のことである。また、以下で記載する「9視差画像」とは、9つの「視差画像」から構成される「視差画像群」のことである。また、以下で記載する「2視差画像」とは、2つの「視差画像」から構成される「視差画像群」のことである。
【0011】
(第1の実施形態)
まず、本実施形態に係る超音波診断装置の構成について説明する。図1は、第1の実施形態に係る超音波診断装置の構成例を説明するための図である。図1に示すように、第1の実施形態に係る超音波診断装置は、超音波プローブ1と、モニタ2と、入力装置3と、装置本体10とを有する。また、装置本体10は、ネットワーク100を介して外部装置4と接続される。
【0012】
超音波プローブ1は、複数の圧電振動子を有し、これら複数の圧電振動子は、後述する装置本体10が有する送受信部11から供給される駆動信号に基づき超音波を発生する。また、超音波プローブ1は、被検体Pからの反射波を受信して電気信号に変換する。また、超音波プローブ1は、圧電振動子に設けられる整合層と、圧電振動子から後方への超音波の伝播を防止するバッキング材等を有する。なお、超音波プローブ1は、装置本体10と着脱自在に接続される。
【0013】
超音波プローブ1から被検体Pに超音波が送信されると、送信された超音波は、被検体Pの体内組織における音響インピーダンスの不連続面で次々と反射され、反射波信号として超音波プローブ1が有する複数の圧電振動子にて受信される。受信される反射波信号の振幅は、超音波が反射される不連続面における音響インピーダンスの差に依存する。なお、送信された超音波パルスが、移動している血流や心臓壁等の表面で反射された場合の反射波信号は、ドプラ効果により、移動体の超音波送信方向に対する速度成分に依存して、周波数偏移を受ける。
【0014】
ここで、第1の実施形態に係る超音波プローブ1は、超音波により被検体Pを2次元で走査するとともに、被検体Pを3次元で走査することが可能な超音波プローブである。具体的には、第1の実施形態に係る超音波プローブ1は、被検体Pを2次元で走査する複数の超音波振動子を所定の角度(揺動角度)で揺動させることで、被検体Pを3次元で走査するメカニカルスキャンプローブである。或いは、第1の実施形態に係る超音波プローブ1は、複数の超音波振動子がマトリックス状に配置されることで、被検体Pを3次元で超音波走査することが可能な2次元超音波プローブである。なお、2次元超音波プローブは、超音波を集束して送信することで、被検体Pを2次元で走査することも可能である。
【0015】
入力装置3は、後述するインターフェース部19を介して装置本体10と接続される。入力装置3は、マウス、キーボード、ボタン、パネルスイッチ、タッチコマンドスクリーン、フットスイッチ、トラックボール等を有し、超音波診断装置の操作者からの各種設定要求を受け付け、装置本体10に対して受け付けた各種設定要求を転送する。
【0016】
モニタ2は、超音波診断装置の操作者が入力装置3を用いて各種設定要求を入力するためのGUI(Graphical User Interface)を表示したり、装置本体10において生成された超音波画像等を表示したりする。
【0017】
ここで、第1の実施形態に係るモニタ2は、立体視可能なモニタ(以下、立体表示モニタ)である。以下、立体表示モニタについて説明する。
【0018】
現在最も普及している一般的な汎用モニタは、2次元画像を2次元で表示するものであり、2次元画像を立体表示することができない。仮に、観察者が汎用モニタにて立体視を要望する場合、汎用モニタに対して画像を出力する装置は、平行法や交差法により観察者が立体視可能な2視差画像を並列表示させる必要がある。又は、汎用モニタに対して画像を出力する装置は、例えば、左目用の部分に赤色のセロハンが取り付けられ、右目用の部分に青色のセロハンが取り付けられたメガネを用いて余色法により観察者が立体視可能な画像を表示する必要がある。
【0019】
一方、立体表示モニタとしては、2視差画像(両眼視差画像とも称する)を表示することで、両眼視差による立体視を可能とするモニタ(以下、2視差モニタと記載する)がある。2視差モニタとしては、シャッター方式により立体表示を行なう装置や、偏光メガネ方式により立体表示を行なう装置、視差バリア方式により立体表示を行なう装置等がある。
【0020】
更に、近年実用化された立体表示モニタとしては、レンチキュラーレンズ等の光線制御子を用いることで、例えば、9視差画像等の多視差画像を観察者が裸眼にて立体視可能とするものがある。かかる立体表示モニタは、両眼視差による立体視を可能とし、更に、観察者の視点移動に合わせて観察される映像も変化する運動視差による立体視も可能とする。
【0021】
図2は、9視差画像により立体表示を行なう立体表示モニタの一例を説明するための図である。図2に示す立体表示モニタには、液晶パネル等の平面状の表示面200の前面に、光線制御子が配置される。例えば、図2に示す立体表示モニタには、光線制御子として、光学開口が垂直方向に延びる垂直レンチキュラーシート201が表示面200の前面に貼り付けられている。
【0022】
表示面200には、図2に示すように、縦横比が3:1であり、縦方向にサブ画素である赤(R)、緑(G)、青(B)の3つが配置された画素202がマトリクス状に配置される。図2に示す立体表示モニタは、9視差画像にて同一位置にある9つの画素それぞれを、9列の画素202に割り振って出力させる。9列の画素202は、視点位置の異なる9つの画像を同時に表示する単位画素群203となる。
【0023】
表示面200において単位画素群203として同時に出力された9視差画像は、例えば、LED(Light Emitting Diode)バックライトにより平行光として放射され、更に、垂直レンチキュラーシート201により、多方向に放射される。9視差画像の各画素の光が多方向に放射されることにより、観察者の右目及び左目に入射する光は、観察者の位置(視点の位置)に連動して変化する。これにより、観察者は、例えば、図2に示す9つの位置それぞれにおいて、撮影対象を立体的に視認できる。また、観察者は、例えば、図2に示す「5」の位置において、撮影対象に対して正対した状態で立体的に視認できるとともに、図2に示す「5」以外それぞれの位置において、撮影対象の向きを変化させた状態で立体的に視認できる。以下、図2を用いて説明した立体表示モニタを9視差モニタと記載する。
【0024】
第1の実施形態は、モニタ2が2視差モニタである場合であっても、9視差モニタである場合であっても適用可能である。以下では、モニタ2が9視差モニタである場合について説明する。
【0025】
図1に戻って、外部装置4は、後述するインターフェース部19を介して装置本体10と接続される装置である。例えば、外部装置4は、ハードディスク、フレキシブルディスク、CD−ROM(Compact Disk Read Only Memory)、MO(Magneto-Optical disk)、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な記憶装置である。或いは、外部装置4は、病院内に勤務する医師や検査技師により操作されるPC(Personal Computer)やタブレット式PC、PDA(Personal Digital Assistant)、携帯電話等の端末装置に接続されるプリンターや上記の汎用モニタである。
【0026】
装置本体10は、超音波プローブ1が受信した反射波に基づいて超音波画像データを生成する装置である。具体的には、第1の実施形態に係る装置本体10は、超音波プローブ1が受信した3次元の反射波データに基づいて3次元の超音波画像データ(以下、ボリュームデータと記載する)を生成可能な装置である。
【0027】
装置本体10は、図1に示すように、送受信部11と、Bモード処理部12と、ドプラ処理部13と、2次元データ処理部14と、画像メモリ15と、内部記憶部16と、ボリュームデータ処理部17と、制御部18と、インターフェース部19とを有する。
【0028】
送受信部11は、トリガ発生回路、遅延回路及びパルサ回路等を有し、超音波プローブ1に駆動信号を供給する。パルサ回路は、所定のレート周波数で、送信超音波を形成するためのレートパルスを繰り返し発生する。また、遅延回路は、超音波プローブ1から発生される超音波をビーム状に集束して送信指向性を決定するために必要な圧電振動子ごとの遅延時間を、パルサ回路が発生する各レートパルスに対し与える。また、トリガ発生回路は、レートパルスに基づくタイミングで、超音波プローブ1に駆動信号(駆動パルス)を印加する。すなわち、遅延回路は、各レートパルスに対し与える遅延時間を変化させることで、圧電振動子面からの送信方向を任意に調整する。
【0029】
なお、送受信部11は、後述する制御部18の指示に基づいて、所定のスキャンシーケンスを実行するために、送信周波数、送信駆動電圧等を瞬時に変更可能な機能を有している。特に、送信駆動電圧の変更は、瞬間にその値を切り替え可能なリニアアンプ型の発信回路、または、複数の電源ユニットを電気的に切り替える機構によって実現される。
【0030】
また、送受信部11は、アンプ回路、A/D変換器、加算器等を有し、超音波プローブ1が受信した反射波信号に対して各種処理を行なって反射波データを生成する。アンプ回路は、反射波信号をチャンネルごとに増幅してゲイン補正処理を行なう。A/D変換器は、ゲイン補正された反射波信号をA/D変換し、デジタルデータに受信指向性を決定するのに必要な遅延時間を与える。加算器は、A/D変換器によって処理された反射波信号の加算処理を行なって反射波データを生成する。加算器の加算処理により、反射波信号の受信指向性に応じた方向からの反射成分が強調される。
【0031】
このように、送受信部11は、超音波の送受信における送信指向性と受信指向性とを制御する。
【0032】
ここで、第1の実施形態に係る送受信部11は、超音波プローブ1から被検体Pに対して3次元の超音波ビームを送信させ、超音波プローブ1が受信した3次元の反射波信号から3次元の反射波データを生成する。
【0033】
Bモード処理部12は、送受信部11から反射波データを受信し、対数増幅、包絡線検波処理等を行なって、信号強度が輝度の明るさで表現されるデータ(Bモードデータ)を生成する。
【0034】
ドプラ処理部13は、送受信部11から受信した反射波データから速度情報を周波数解析し、ドプラ効果による血流や組織、造影剤エコー成分を抽出し、平均速度、分散、パワー等の移動体情報を多点について抽出したデータ(ドプラデータ)を生成する。
【0035】
なお、第1の実施形態に係るBモード処理部12及びドプラ処理部13は、2次元の反射波データ及び3次元の反射波データの両方について処理可能である。すなわち、Bモード処理部12は、2次元の反射波データから2次元のBモードデータを生成し、3次元の反射波データから3次元のBモードデータを生成する。また、ドプラ処理部13は、2次元の反射波データから2次元のドプラデータを生成し、3次元の反射波データから3次元のドプラデータを生成する。
【0036】
2次元データ処理部14は、Bモード処理部12及びドプラ処理部13が生成した2次元データから「表示用の超音波画像データ」を生成する。すなわち、2次元データ処理部14は、Bモード処理部12が生成した2次元のBモードデータから反射波の強度を輝度にて表した2次元のBモード画像データを生成する。また、2次元データ処理部14は、ドプラ処理部13が生成した2次元のドプラデータから移動体情報を表す平均速度画像、分散画像、パワー画像、又は、これらの組み合わせ画像としての2次元のカラードプラ画像データを生成する。
【0037】
そして、2次元データ処理部14は、超音波スキャンの走査線信号列を、テレビ等に代表されるビデオフォーマットの走査線信号列に変換(スキャンコンバート)することで、2次元のBモード画像データや2次元のカラードプラ画像データから「表示用の超音波画像データ」を生成し、モニタ2に出力する。具体的には、2次元データ処理部14は、超音波プローブ1による超音波の走査形態に応じて座標変換を行なうことで、「表示用の超音波画像データ」を生成する。
【0038】
ここで、2次元データ処理部14は、表示用の超音波画像データに、種々のパラメータの文字情報、目盛り、ボディーマーク等を合成した合成画像を生成し、ビデオ信号としてモニタ2に出力する。以下では、表示用の超音波画像に対して合成される「種々のパラメータの文字情報、目盛り、ボディーマーク等」により構成される画像を「情報画像」と記載する。
【0039】
画像メモリ15は、2次元データ処理部14が生成した画像データを記憶するメモリである。また、画像メモリ15は、Bモード処理部12やドプラ処理部13が生成したデータを記憶することも可能である。
【0040】
内部記憶部16は、超音波送受信、画像処理及び表示処理を行なうための制御プログラムや、診断情報(例えば、患者ID、医師の所見等)や、診断プロトコルや各種ボディーマーク等の各種データを記憶する。また、内部記憶部16は、必要に応じて、画像メモリ15が記憶する画像データの保管等にも使用される。
【0041】
ボリュームデータ処理部17は、Bモード処理部12及びドプラ処理部13が生成した3次元のデータから表示用の超音波画像データを生成する。ボリュームデータ処理部17は、図1に示すように、ボリュームデータ生成部17a、レンダリング処理部17b及び合成部17cを有する。
【0042】
ボリュームデータ生成部17aは、Bモード処理部12が生成した3次元のBモードデータから反射波の強度を輝度にて表した3次元のBモード画像データを生成する。また、ボリュームデータ生成部17aは、ドプラ処理部13が生成した3次元のドプラデータから移動体情報を表す平均速度画像、分散画像、パワー画像、又は、これらの組み合わせ画像としての3次元のカラードプラ画像データを生成する。更に、ボリュームデータ生成部17aは、超音波プローブ1による超音波の走査形態に応じて座標変換を行なうことで、3次元の超音波画像データである「ボリュームデータ」を生成する。
【0043】
レンダリング処理部17bは、ボリュームデータをモニタ2にて表示するための各種画像(2次元画像)を生成するために、ボリュームデータに対してレンダリング処理を行なう処理部である。レンダリング処理部17bが行なうレンダリング処理としては、断面再構成法(MPR:Multi Planer Reconstruction)を行なってボリュームデータからMPR画像を再構成する処理がある。また、レンダリング処理部17bが行なうレンダリング処理としては、ボリュームデータに対して「Curved MPR」を行なう処理や、ボリュームデータに対して「Intensity Projection」を行なう処理がある。
【0044】
更に、レンダリング処理部17bが行なうレンダリング処理としては、3次元の情報を反映した2次元画像を生成するボリュームレンダリング処理がある。
【0045】
これらのレンダリング機能を用いることで、レンダリング処理部17bは、3次元の超音波画像データであるボリュームデータに対して複数視点からレンダリング処理を行なうことで、所定視差数の視差画像である視差画像群を生成する。具体的には、レンダリング処理部17bは、ボリュームデータに対してボリュームレンダリング処理を行なうことで視差画像群を生成する。より具体的には、レンダリング処理部17bは、モニタ2が9視差モニタであることから、ボリュームデータに対して9つの視点からボリュームレンダリング処理を行なうことで、9つの視差画像である9視差画像を生成する。
【0046】
例えば、レンダリング処理部17bは、後述する制御部18の制御の下、図3に示すボリュームレンダリング処理を行なうことで9視差画像を生成する。図3は、第1の実施形態に係るボリュームレンダリング処理の一例を説明するための図である。
【0047】
例えば、レンダリング処理部17bが、図3の「9視差画像生成方式(1)」に示すように、レンダリング条件として、平行投影法を受け付け、更に、基準の視点位置(5)と視差角「1度」とを受け付けたとする。かかる場合、レンダリング処理部17bは、視差角が「1度」おきとなるように、視点の位置を(1)〜(9)に平行移動して、平行投影法により視差角(視線方向間の角度)が1度ずつ異なる9つの視差画像を生成する。なお、平行投影法を行なう場合、レンダリング処理部17bは、視線方向に沿って無限遠から平行な光線を照射する光源を設定する。
【0048】
或いは、レンダリング処理部17bが、図3の「9視差画像生成方式(2)」に示すように、レンダリング条件として、透視投影法を受け付け、更に、基準の視点位置(5)と視差角「1度」とを受け付けたとする。かかる場合、レンダリング処理部17bは、ボリュームデータの中心(重心)を中心に視差角が「1度」おきとなるように、視点の位置を(1)〜(9)に回転移動して、透視投影法により視差角が1度ずつ異なる9つの視差画像を生成する。なお、透視投影法を行なう場合、レンダリング処理部17bは、視線方向を中心に光を3次元的に放射状に照射する点光源や面光源を各視点にて設定する。また、透視投影法を行なう場合、レンダリング条件によっては、視点(1)〜(9)は、平行移動される場合であってもよい。
【0049】
なお、レンダリング処理部17bは、表示されるボリュームレンダリング画像の縦方向に対しては、視線方向を中心に光を2次元的に放射状に照射し、表示されるボリュームレンダリング画像の横方向に対しては、視線方向に沿って無限遠から平行な光線を照射する光源を設定することで、平行投影法と透視投影法とを併用したボリュームレンダリング処理を行なってもよい。
【0050】
このようにして生成された9つの視差画像が、視差画像群である。すなわち、視差画像群は、ボリュームデータから生成された立体表示用の超音波画像群である。第1の実施形態において、9つの視差画像は、後述する制御部18により所定フォーマット(例えば格子状)に配置した中間画像に変換され、立体表示モニタとしてのモニタ2に出力される。
【0051】
制御部18の制御の下、モニタ2は、レンダリング処理部17bにより生成された視差画像群を表示することで、観察者(超音波診断装置の操作者)により立体的に認識される立体画像を表示する。
【0052】
ここで、ボリュームデータ処理部17は、2次元データ処理部14と同様に、表示用の視差画像群に、視差画像群以外の情報(文字情報、目盛り、ボディーマーク等)を示す「情報画像」を合成した合成画像群を生成し、ビデオ信号としてモニタ2に出力する。
【0053】
図1に示す合成部17cは、合成画像群を生成するために、ボリュームデータ処理部17に設置される処理部である。なお、合成部17cの処理については、後に詳述する。
【0054】
ボリュームデータ処理部17の処理により生成された各種画像データは、画像メモリ15や内部記憶部16に格納される。
【0055】
制御部18は、超音波診断装置の処理全体を制御する。具体的には、制御部18は、入力装置3を介して操作者から入力された各種設定要求や、内部記憶部16から読込んだ各種制御プログラム及び各種データに基づき、送受信部11、Bモード処理部12、ドプラ処理部13、2次元データ処理部14及びボリュームデータ処理部17の処理を制御する。また、制御部18は、画像メモリ15や内部記憶部16が記憶する表示用の超音波画像データをモニタ2にて表示するように制御する。また、制御部18は、表示用の超音波画像データがインターフェース部19及びネットワーク100を介して外部装置4に出力されるように制御する。
【0056】
インターフェース部19は、入力装置3、ネットワーク100及び外部装置4に対するインターフェースである。入力装置3が受け付けた操作者からの各種設定情報及び各種指示は、インターフェース部19により、制御部18に転送される。また、制御部18の制御により出力された画像データは、インターフェース部19から、ネットワーク100を介して外部装置4に出力される。
【0057】
以上、第1の実施形態に係る超音波診断装置の全体構成について説明した。かかる構成のもと、第1の実施形態に係る超音波診断装置は、3次元の超音波画像データであるボリュームデータを生成し、生成した超音波ボリュームデータから視差画像群を生成する。そして、第1の実施形態に係る超音波診断装置は、モニタ2にて視差画像群を表示することで、観察者により立体的に認識される立体画像を表示する。
【0058】
ここで、実際にモニタ2に表示される画像群は、視差画像群を構成する視差画像それぞれと情報画像とを合成した合成画像群である。しかし、立体表示モニタであるモニタ2を参照することで観察者が認識する立体画像の奥行き感は、以下に説明する要因により低減してしまう。図4は、従来技術の課題を説明するための図である。なお、以下に説明する課題は、超音波診断装置が生成したボリュームデータに基づく視差画像群により認識される立体画像だけでなく、X線CT装置やMRI装置等の医用画像診断装置が生成したボリュームデータに基づく視差画像群により認識される立体画像においても同様に生じる課題である。
【0059】
医用画像は、コントラストのある画質が求められるため、一般的には、医用画像の背景色を黒色にすることが多い。一方、医用画像とともに表示される情報画像の背景色も、一般的には、黒色である。すなわち、視差画像群及び情報画像それぞれの背景色は、同じ黒色となる。このため、観察者は、図4の右図に示すように、モニタ2の表面(以下、モニタ表面と記載する)において、黒色の背景内で文字等の情報とともに立体画像を認識することとなる。
【0060】
ここで、視差画像群は、図4の左上図に示すように、モニタ表面から観察者側に飛び出した位置からモニタ表面の後ろ側の位置(図中のAを参照)までの奥行きを持つ立体画像として観察者に認識されるように生成された画像群である。
【0061】
しかし、一般的に、人間は、黒色の場所が最も奥に位置する場所として認識する。このため、実際に観察者により認識される立体画像は、図4の左下図に示すように、モニタ表面から観察者側に飛び出した位置からモニタ表面の位置(図中のaを参照)までの奥行きしか持たない立体画像となる。すなわち、観察者は、立体画像のAの位置をaの位置として認識するため、立体画像の奥行きは、図4に示すように、圧縮された状態となる。
【0062】
そこで、第1の実施形態に係る超音波診断装置の制御部18は、以下に説明する制御を行なうことで、立体視される医用画像の奥行き感が低減することを回避する。すなわち、制御部18は、モニタ2において視差画像群を表示する第1領域と、モニタ2において視差画像群以外の情報を示す情報画像を表示する第2領域とが識別可能となる「視差画像群と情報画像との合成画像群」がモニタ2に表示されるように制御する。具体的には、制御部18は、第1領域の背景色と第2領域との背景色とが異なる色となる合成画像群がモニタ2に表示されるように制御する。
【0063】
より具体的には、制御部18は、第1領域と第2領域とを識別可能な視差画像群と情報画像との合成画像群として、第1領域の背景色と第2領域との背景色とが異なる色となる合成画像群を合成部17cに生成させるように制御する。
【0064】
以下、制御部18の制御の下、第1の実施形態に係る合成部17cが生成する合成画像群の具体例について説明する。図5A及び図5Bは、第1の実施形態に係る合成画像群の一例を説明するための図である。また、図6A及び図6Bは、第1の実施形態に係る合成画像群別の一例を説明するための図である。
【0065】
例えば、制御部18は、第1領域の背景色を黒色とし、第2領域の背景色を灰色とする合成画像群がモニタ2に表示されるように制御する。かかる制御により、合成部17cは、図5Aに示すように、背景色が黒色となる視差画像U10と背景色が灰色となる情報画像O10との合成画像を生成する。なお、図5Aに例示する視差画像U10は、画像間の視差角が例えば「1度」となる9つの視差画像の中の1つの視差画像を示しており、実際には、合成部17cは、背景色が黒色となる9つの視差画像それぞれと背景色が灰色となる情報画像O10との合成画像を9つ生成する。
【0066】
まず、合成部17cは、第1領域にて表示される9つの視差画像それぞれの背景色を黒色とする。ここで、レンダリング処理部17bが生成した9つの視差画像それぞれの背景色が黒色である場合、合成部17cは、レンダリング処理部17bが生成した9つの視差画像をそのまま後段の処理に用いる。また、レンダリング処理部17bが生成した9つの視差画像それぞれの背景色が黒色でない場合、合成部17cは、レンダリング処理部17bが生成した9つの視差画像の背景色を黒色として後段の処理に用いる。
【0067】
そして、合成部17cは、第1領域を取り囲むように設定される第2領域において、文字情報等の情報が配置され、情報以外の背景部分の色が灰色となる情報画像を生成する。そして、合成部17cは、背景色が黒色である9つの視差画像それぞれと背景色が灰色である情報画像とを合成することで9つの合成画像から構成される合成画像群を生成する。
【0068】
制御部18は、合成画像群を上述した中間画像に変換して、モニタ2に表示させる。モニタ2の観察者は、図5Bに示すように、灰色の背景色にて情報画像O10に描出される文字情報等を認識する。そして、モニタ2の観察者は、図5Bに示すように、視差画像群により表示される立体画像を黒色の背景色にて認識する。観察者は、灰色を黒色より自身に近い位置にあると認識するため、背景色が黒色である立体画像の奥行きは、維持されることとなる。
【0069】
なお、合成部17cにより生成される合成画像群は、図5A及び図5Bに例示した合成画像群に限定されるものではない。例えば、制御部18の制御により、合成部17cは、図6Aに示すように、情報画像の背景色は黒色のままとし、視差画像群の背景色を視差画像群の色「B」の補色「CB」とする場合であっても良い。視差画像群の背景色を補色とすることで、観察者は、立体画像と情報画像とを識別することができる。
【0070】
また、制御部18の制御により、合成部17cは、更に、図6Bに示すように、視差画像群の背景色を視差画像群の色「B」の補色「CB」とするとともに、視差画像群の輪郭を黒色で強調した合成画像群とする場合であっても良い。視差画像群の背景色を補色とし、視差画像群の輪郭を黒色とすることで、観察者は、第1領域における立体画像の輪郭をモニタ表面より奥まった位置にあると認識することができ、立体画像と情報画像とを識別することができる。
【0071】
また、図6Aや図6Bに示す一例の合成画像群は、更に、情報画像が表示される第2領域の背景色を、「B」及び「CB」の中間色として生成される場合であっても良い。かかる合成画像群を表示することでも、観察者は、立体画像と情報画像とを識別することができる。
【0072】
次に、図7を用いて、第1の実施形態に係る超音波診断装置の処理について説明する。図7は、第1の実施形態に係る超音波診断装置の処理を説明するためのフローチャートである。なお、図7では、ボリュームデータが生成され、更に、ボリュームデータに対する視点位置、視差数及び視差角等の視差画像群の生成条件が設定された後の処理について説明する。
【0073】
図7に示すように、第1の実施形態に係る超音波診断装置は、操作者から入力装置3を介して立体画像の表示要求を受け付けたか否かを判定する(ステップS101)。ここで、表示要求を受け付けない場合(ステップS101否定)、第1の実施形態に係る超音波診断装置は、表示要求を受けるまで待機する。
【0074】
一方、表示要求を受け付けた場合(ステップS101肯定)、制御部18の制御により、レンダリング処理部17bは、背景色を黒色とする視差画像群を生成し(ステップS102)、合成部17cは、背景色を灰色とする情報画像を生成する(ステップS103)。具体的には、合成部17cは、第2領域の形状に合わせて背景色を灰色とする情報画像を生成する。
【0075】
その後、合成部17cは、第1領域のサイズに合わせた視差画像群それぞれと情報画像との合成画像群を生成する(ステップS104)。そして、モニタ2は、制御部18の制御により、合成画像群を表示し(ステップS105)、処理を終了する。
【0076】
上述してきたように、第1の実施形態では、制御部18は、モニタ2において視差画像群を表示する第1領域と、モニタ2において視差画像群以外の情報を示す情報画像を表示する第2領域とが識別可能となる「視差画像群と情報画像との合成画像群」を表示させる。すなわち、第1の実施形態では、制御部18は、第1領域と第2領域とを識別可能な視差画像群と情報画像との合成画像群として、第1領域の背景色と第2領域との背景色とが異なる色となる合成画像群を合成部17cに生成させるように制御し、モニタ2に表示させる。
【0077】
具体的には、制御部18は、第1領域と第2領域とを識別可能な視差画像群と情報画像との合成画像群として、第1領域の背景色が黒色であり、第2領域との背景色と灰色である合成画像群を合成部17cに生成させるように制御し、モニタ2に表示させる。
【0078】
かかる制御により、観察者は、第2領域に表示される情報画像がモニタ表面に位置するように感じ、第1領域に表示される立体画像の背景がモニタ表面より奥にあるように感じることができる。従って、第1の実施形態では、立体視される医用画像の奥行き感が低減することを回避することができる。なお、第1の実施形態に係る合成部17cの処理は、2次元データ処理部14により実行される場合であっても良い。
【0079】
(第2の実施形態)
第2の実施形態では、第1の実施形態とは異なる方法により合成画像群が生成される場合について説明する。
【0080】
第2の実施形態に係る超音波診断装置は、図1を用いて説明した第1の実施形態に係る超音波診断装置と同様に構成されるが、制御部18の合成部17cに対する制御処理が第1の実施形態とは異なる。以下、これを中心に説明する。
【0081】
第2の実施形態に係る制御部18は、第1領域と第2領域との境界を囲む枠線が描画された合成画像群がモニタ2に表示されるように制御する。図8A及び図8Bは、第2の実施形態に係る合成画像群を説明するための図である。
【0082】
一例を挙げると、合成部17cは、制御部18の制御により、図8Aに示すように、第1領域と第2領域との境界が白色の2重線により囲まれた枠線を描画した合成画像群を生成する。
【0083】
ここで、レンダリング処理部17bが生成した9つの視差画像それぞれの背景色が黒色である場合、合成部17cは、レンダリング処理部17bが生成した9つの視差画像をそのまま後段の処理に用いる。また、合成部17cは、第2領域において、文字情報等が配置され、文字情報以外の背景部分の色が従来と同様に黒色となる情報画像を生成する。そして、合成部17cは、9つの視差画像それぞれと情報画像とを合成し、更に、9つの視差画像それぞれの輪郭を囲む白色の2重線を描画することで、9つの合成画像から構成される合成画像群を生成する。
【0084】
制御部18は、合成画像群を中間画像に変換して、モニタ2に表示させる。これにより、モニタ2の観察者は、図8Bに示すように、枠線で区切られた情報画像に描出される文字情報等を認識する。そして、モニタ2の観察者は、図8Bに示すように、枠線で区切られた立体画像を黒色の背景色にて認識する。観察者は、枠線により情報画像と立体画像とを識別することができるので、立体画像の奥行きは維持されることとなる。
【0085】
かかる枠線による識別効果は、張り付き効果や額縁効果と呼ばれるものである。ただし、立体再現される対象が画枠(枠線)で区切られると、左右眼への映像部分に違いが生じ、不安定な見えになる視野闘争が生じたり、対象が枠線に張り付いて立体感が抑えられて対象が変形したように見えたりする場合がある。
【0086】
このため、制御部18は、モニタ表示面と画枠(枠線)とが異なった位置に見えるように画枠(枠線)を設定したり、枠の存在を弱め、表示面位置を不確定な状態とする画面サイズの拡張を行なったり、空中像・空間像方式に基づく制御を行なっても良い。なお、空中像とは、表示像を空中に結像した映像のことであり、空中像を観察すると、表示面の存在位置が不確定になり、再現空間が表示面に固定されなくなるという効果がある。また、空間像とは、多層表示面や像面移動等で形成された映像であり、空間像を観察すると、空中像を観察する場合と同様の効果を得ることができる。
【0087】
次に、図9を用いて、第2の実施形態に係る超音波診断装置の処理について説明する。図9は、第2の実施形態に係る超音波診断装置の処理を説明するためのフローチャートである。なお、図9では、ボリュームデータが生成され、更に、ボリュームデータに対する視点位置、視差数及び視差角等の視差画像群の生成条件が設定された後の処理について説明する。
【0088】
図9に示すように、第2の実施形態に係る超音波診断装置は、操作者から入力装置3を介して立体画像の表示要求を受け付けたか否かを判定する(ステップS201)。ここで、表示要求を受け付けない場合(ステップS201否定)、第2の実施形態に係る超音波診断装置は、表示要求を受けるまで待機する。
【0089】
一方、表示要求を受け付けた場合(ステップS202肯定)、制御部18の制御により、レンダリング処理部17bは、背景色を黒色とする視差画像群を生成し(ステップS202)、合成部17cは、背景色を黒色とする情報画像を生成する(ステップS203)。具体的には、合成部17cは、第2領域の形状に合わせて背景色を黒色とする情報画像を生成する。
【0090】
その後、合成部17cは、第1領域のサイズに合わせた視差画像群であり、境界に枠線が描画された視差画像群それぞれと情報画像との合成画像群を生成する(ステップS204)。そして、モニタ2は、制御部18の制御により、合成画像群を表示し(ステップS205)、処理を終了する。
【0091】
上述してきたように、第2の実施形態では、制御部18は、第1領域と第2領域との境界を囲む枠線が描画された合成画像群を合成部17cに生成させるように制御し、モニタ2に表示させる。
【0092】
かかる制御により、観察者は、第1領域と第2領域とを線で区別することができる。すなわち、第2の実施形態では、背景色が同色であっても、立体画像と情報画像とが同じ奥行き位置にあると観察者が認識することを防ぐことができる。従って、第2の実施形態でも、立体視される医用画像の奥行き感が低減することを回避することができる。なお、第2の実施形態に係る合成部17cの処理は、2次元データ処理部14により実行される場合であっても良い。
【0093】
(第3の実施形態)
第3の実施形態では、視差画像群を印刷用に出力したり、汎用モニタにて表示用に出力したりする際に行なわれる処理について説明する。
【0094】
観察者が立体画像を観察した際に、観察した画像を2次元データとして出力したい場合がある。しかし、立体画像は、複数の視差画像を表示することで認識される画像である。複数の視差画像を、汎用モニタで再生したり印刷すると、出力される画像が2重に見えたり、ボケたりする。すなわち、複数の視差画像は、出力用の画像として好ましくない。従って、印刷用に出力したり、汎用モニタで観察するために出力したりするためには、視差画像群が重畳されない画像が必要となる。
【0095】
そこで、第3の実施形態に係る制御部18は、立体画像として認識される視差画像群から所定視点の画像データを抽出して外部装置4に出力するように制御する。
【0096】
制御部18が行なう出力制御としては、以下の2つが挙げられる。すなわち、第1の出力制御において、制御部18は、視差画像群の生成時に用いられた全視点の中心に位置している視点からの視差画像のデータを、所定視点の画像データとして抽出する。或いは、第2の出力制御において、制御部18は、モニタ2を参照する観察者が観察する立体画像に該当する視差画像を、所定視点の画像データとして抽出する。
【0097】
ここで、制御部18は、所定視点の画像データに該当する画像のデータが視差画像群に存在する場合、当該該当する画像データを選択して外部装置4に出力する。一方、制御部18は、所定視点の画像データに該当する画像データが視差画像群に存在しない場合、所定視点の画像データをレンダリング処理部17bに生成させて、外部装置4に出力する。
【0098】
以下、図10A、図10B及び図10Cを用いて第3の実施形態に係る制御部18が行なう出力制御の具体例について説明する。図10A、図10B及び図10Cは、第3の実施形態に係る制御部を説明するための図である。
【0099】
例えば、第1の出力制御を実行する場合、制御部18は、図10Aに示すように、立体画像として認識される9視差画像の中から、全視点の中心位置にある視点Sの視差画像を抽出し、視点Sの視差画像のデータを外部装置4に出力する。
【0100】
ここで、第1の出力制御を行なう場合、図10Aに示すように、モニタ2が9視差モニタであり、視差数が奇数であるならば、制御部18が実行する抽出処理は、既存の視差画像群からの選択により実行することができる。しかし、モニタ2が2視差モニタでのように、視差数が偶数である場合、全視点の中心位置にある視点の視差画像は、存在しないこととなる。
【0101】
かかる場合、制御部18は、図10Bに示すように、全視点の中心位置に隣接する視点S1及び視点S2の間に視点Sを設定する。そして、制御部18は、図10Bに示すように、視点Sからの視差画像を、ボリュームデータからボリュームレンダリング処理を行なって生成するようにレンダリング処理部17bを制御する。そして、制御部18は、新規に生成させた視点Sの視差画像のデータを外部装置4に出力する。
【0102】
また、第2の出力制御を行なう場合、モニタ2を参照する観察者が観察する立体画像に該当する視差画像を特定するために、制御部18は、図10Cに示すように、モニタ2に対する観察者の視線方向を取得する。例えば、制御部18は、モニタ2に対する観察者の視線方向を、モニタ2に取り付けられた顔認識機能を有するカメラを用いて取得する。例えば、カメラは、実空間における観察者の顔を顔認識機能により追跡(トラッキング)し、更に、認識した顔の方向から観察者のモニタ2に対する視線方向を決定する。カメラが取得した視線方向は、制御部18に転送される。
【0103】
そして、制御部18は、観察者の視線方向に該当する視差画像を視差画像群から抽出する。ここで、観察者の視線方向に該当する視点S’(図10Cを参照)からの視差画像が表示されている視差画像群に存在する場合、該当する視差画像のデータを選択して外部装置4に出力する。一方、視点S’の視差画像が表示されている視差画像群に存在しない場合、制御部18は、視点S’をボリュームデータに対して設定する。そして、制御部18は、新規に設定した視点S’からの視差画像を、ボリュームデータからボリュームレンダリング処理を行なって生成するようにレンダリング処理部17bを制御する。そして、制御部18は、新規に生成させた視点S’の視差画像のデータを外部装置4に出力する。
【0104】
なお、第3の実施形態に係る制御部18は、出力用の視差画像データの抽出対象を、第1の実施形態又は第2の実施形態にて説明した合成画像群とする場合であっても良い。かかる場合、制御部18は、所定視点の合成画像が存在しないならば、レンダリング処理部17bに所定視点の視差画像を新規に生成させ、更に、合成部17cに所定視点の視差画像と情報画像との合成画像を新規に生成させる。
【0105】
次に、図11を用いて、第3の実施形態に係る超音波診断装置の処理について説明する。図11は、第3の実施形態に係る超音波診断装置の処理を説明するためのフローチャートである。
【0106】
図11に示すように、第3の実施形態に係る超音波診断装置は、操作者から入力装置3を介して汎用モニタ用の出力要求を受け付けたか否かを判定する(ステップS301)。ここで、出力要求を受け付けない場合(ステップS301否定)、第3の実施形態に係る超音波診断装置は、出力要求を受けるまで待機する。
【0107】
一方、出力要求を受け付けた場合(ステップS301肯定)、制御部18は、出力用の画像データに該当するデータが存在するか否かを判定する(ステップS302)。ここで、存在する場合(ステップS302肯定)、制御部18は、出力用の画像データに該当するデータを選択する(ステップS303)。なお、合成画像群が抽出対象である場合、ステップS303で選択されるデータは、合成画像のデータである。
【0108】
一方、存在しない場合(ステップS302否定)、制御部18の制御により、レンダリング処理部17bは、出力用の画像データに該当するデータを生成する(ステップS304)。なお、合成画像群が抽出対象である場合、ステップS304においては、レンダリング処理部17b及び合成部17cにより、新規の合成画像データが生成される。
【0109】
ステップS303又はステップS304の処理の後、制御部18は、出力用の画像データを外部装置4に出力し(ステップS305)、処理を終了する。
【0110】
上述してきたように、第3の実施形態では、制御部18は、立体画像として認識される視差画像群から所定視点の画像データを抽出して外部装置4に出力するように制御する。従って、第3の実施形態では、多視点からの視差画像群が画像でなく、1つの視点からの画像を出力することができる。
【0111】
なお、上記では、所定視点の画像データが、1つの視点における1つの視差画像又は1つの合成画像である場合について説明した。しかし、第3の実施形態に係る制御部18の処理により、外部装置4に出力される画像データは、複数の視差画像や、複数の合成画像である場合であっても良い。すなわち、第3の実施形態は、所定視点が、1つの視点で構成される場合だけでなく、複数の視点で構成される場合であっても良い。
【0112】
例えば、モニタ2が9視差モニタであり、外部装置4に接続されるモニタが9視差モニタであるとする。かかる場合、制御部18は、モニタ2で立体画像として表示された9視差画像や9つの合成画像を、所定視点の画像データとして、外部装置4に出力する。或いは、例えば、モニタ2が9視差モニタであり、外部装置4に接続されるモニタが5つの視差画像を表示することで立体画像を表示する5視差モニタであるとする。かかる場合、制御部18は、モニタ2で立体画像として表示された9視差画像や9つの合成画像から選択した5つの画像データを、所定視点の画像データとして外部装置4に出力する。一例として、制御部18は、図10Aに例示する視点Sを中心とする5つの視点からの視差画像群を、所定視点の画像データとして外部装置4に出力する。或いは、一例として、制御部18は、図10Bに例示する視点S’を中心とする5つの視点からの視差画像群を、所定視点の画像データとして外部装置4に出力する。或いは、制御部18は、5視差モニタで立体画像として表示される5視差画像や5つの合成画像を、ボリュームデータ処理部17に新規に生成させた後に、外部装置4に出力する。
【0113】
或いは、例えば、モニタ2が9視差モニタであり、外部装置4に接続されるモニタが2視差モニタであるとする。かかる場合、制御部18は、モニタ2で立体画像として表示された9視差画像や9つの合成画像から選択した2つの画像データを、所定視点の画像データとして、外部装置4に出力する。一例として、制御部18は、図10Aに例示する視点Sからの視差画像と、視点Sの右側に位置する視点からの視差画像とを所定視点の画像データとして、外部装置4に出力する。或いは、制御部18は、2視差モニタで立体画像として表示される2視差画像や2つの合成画像を、ボリュームデータ処理部17に新規に生成させた後に、外部装置4に出力する。
【0114】
或いは、例えば、モニタ2が9視差モニタであり、外部装置4に接続されるモニタが18個の視差画像を表示することで立体画像を表示する18視差モニタであるとする。かかる場合、制御部18は、モニタ2で立体画像として表示された9視差画像や9つの合成画像を選択する。更に、制御部18は、モニタ2で立体画像として表示された9視差画像や9つの合成画像の生成に用いた視点に加えて、9つの視点の位置を新たに設定する。そして、制御部18は、新たに設定した9つの視点を用いた9つの視差画像や9つの合成画像を、ボリュームデータ処理部17に生成させる。そして、制御部18は、18個の視差画像や18個の合成画像を、所定視点の画像データとして外部装置4に出力する。なお、制御部18は、外部装置4から外部装置4に接続されるモニタの立体視様式の情報を、外部装置4や外部装置4の操作者から取得することで、上記の処理を行なう。
【0115】
更には、例えば、外部装置4に接続されるモニタが9視差モニタであり、外部装置4の操作者から基準の視点位置を受け付けたとする。ここで、受け付けた基準の視点位置を中心とする9視差画像や9つの合成画像が生成済みの場合、制御部18は、これらの画像データを所定視点の画像データとして外部装置4に出力する。一方、外部装置4の操作者の要求に合致する画像データが生成済みでない場合、制御部18は、外部装置4の操作者から受け付けた基準の視点位置を中心とする9視差画像や9つの合成画像をボリュームデータ処理部17に生成させた後、外部装置4に出力する。なお、外部装置4の操作者から受け付ける基準の視点位置は、複数である場合であっても良い。また、外部装置4の操作者から受け付ける情報は、基準の視点位置の他に、視差角の情報が含まれる場合であっても良い。
【0116】
このように、第3の実施形態に係る制御部18は、外部装置4の操作者から受け付けた条件に合致する画像データが装置本体10において生成済みである場合は、これらの画像データを所定視点の画像データとして出力する。また、制御部18は、外部装置4の操作者から受け付けた条件に合致する画像データが装置本体10において生成済みでない場合は、該当する画像データをボリュームデータ処理部17に生成させて、外部装置4に出力する。
【0117】
なお、上述した第1の実施形態〜第3の実施形態では、モニタ2が9視差モニタである場合について説明した。しかし、上述した第1の実施形態〜第3の実施形態は、モニタ2が2視差モニタである場合であっても適用可能である。
【0118】
また、上述した第1の実施形態〜第3の実施形態では、モニタ2に表示される画像がボリュームレンダリング画像である場合について説明した。しかし、上述した第1の実施形態〜第3の実施形態は、モニタ2に表示される画像がボリュームデータからMPRにより生成されたMPR画像である場合であっても、適用可能である。
【0119】
また、上述した第1の実施形態〜第3の実施形態では、医用画像診断装置である超音波診断装置において、奥行き感を低減させないための合成画像群を表示したり、立体画像の出力用データを抽出したりする場合について説明した。しかし、上述した第1の実施形態〜第3の実施形態で説明した処理は、X線CT装置やMRI装置等のボリュームデータを生成可能な医用画像診断装置において実行される場合であっても良い。
【0120】
また、第1の実施形態〜第3の実施形態で説明した処理は、医用画像診断装置とは独立に設置された画像処理装置により実行される場合であっても良い。具体的には、図1に示すボリュームデータ処理部17及び制御部18の機能を有する画像処理装置が、各種の医用画像のデータを管理するシステムであるPACS(Picture Archiving and Communication Systems)のデータベースや、医用画像が添付された電子カルテを管理する電子カルテシステムのデータベース等から3次元の医用画像データであるボリュームデータを受信して、第1の実施形態〜第3の実施形態で説明した処理を行なう場合であってもよい。
【0121】
以上、説明したとおり、第1の実施形態〜第3の実施形態によれば、立体視される医用画像の奥行き感が低減することを回避することができる。
【0122】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0123】
1 超音波プローブ
2 モニタ
3 入力装置
4 外部装置
10 装置本体
11 送受信部
12 Bモード処理部
13 ドプラ処理部
14 2次元データ処理部
15 画像メモリ
16 内部記憶部
17 ボリュームデータ処理部
17a ボリュームデータ生成部
17b レンダリング部
17c 合成部
18 制御部
100 ネットワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
3次元の医用画像データであるボリュームデータに対して複数視点からレンダリング処理を行なうことで、所定視差数の視差画像である視差画像群を生成するレンダリング処理部と、
前記レンダリング処理部により生成された前記視差画像群を表示することで、観察者により立体的に認識される立体画像を表示する表示部と、
前記表示部において前記視差画像群を表示する第1領域と、前記表示部において前記視差画像群以外の情報を示す情報画像を表示する第2領域とが識別可能となる前記視差画像群と前記情報画像との合成画像群が前記表示部に表示されるように制御する制御部と、
を備える、医用画像診断装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記立体画像として認識される前記視差画像群又は前記合成画像群から、少なくとも1つの視点で構成される所定視点の画像データを抽出して所定の外部装置に出力するように制御する、請求項1に記載の医用画像診断装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記第1領域の背景色と前記第2領域との背景色とが異なる色となる合成画像群が前記表示部に表示されるように制御する、請求項1に記載の医用画像診断装置。
【請求項4】
前記第1領域の背景色を黒色とし、前記第2領域の背景色を灰色とする合成画像群が前記表示部に表示されるように制御する、請求項3に記載の医用画像診断装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記第1領域と前記第2領域との境界を囲む枠線が描画された合成画像群が前記表示部に表示されるように制御する、請求項1に記載の医用画像診断装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記視差画像群の生成時に用いられた全視点の中心に位置している視点からの視差画像、又は、合成画像の画像データを、前記所定視点の画像データとして抽出する、請求項2に記載の医用画像診断装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記表示部を参照する観察者が観察する立体画像に該当する少なくとも1つの視差画像、又は、少なくとも1つの合成画像の画像データを、前記所定視点の画像データとして抽出する、請求項2に記載の医用画像診断装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記所定視点の画像データに該当する画像のデータが前記視差画像群、又は、前記合成画像群に存在する場合、当該該当するデータを選択して前記所定の外部装置に出力し、前記所定視点の画像データに該当する画像データが前記視差画像群、又は、前記合成画像群に存在しない場合、前記所定視点の画像データを前記レンダリング処理部に生成させて前記所定の外部装置に出力する、請求項2に記載の医用画像診断装置。
【請求項9】
3次元の医用画像データであるボリュームデータに対して複数視点からレンダリング処理を行なうことで、所定視差数の視差画像である視差画像群を生成するレンダリング処理部と、
前記レンダリング処理部により生成された前記視差画像群を表示することで、観察者により立体的に認識される立体画像を表示する表示部と、
前記表示部において前記視差画像群を表示する第1領域と、前記表示部において前記視差画像群以外の情報を示す情報画像を表示する第2領域とが識別可能となる前記視差画像群と前記情報画像との合成画像群が前記表示部に表示されるように制御する制御部と、
を備えたことを特徴とする画像処理装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5A】
image rotate

【図5B】
image rotate

【図6A】
image rotate

【図6B】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8A】
image rotate

【図8B】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10A】
image rotate

【図10B】
image rotate

【図10C】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2012−254288(P2012−254288A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−109962(P2012−109962)
【出願日】平成24年5月11日(2012.5.11)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】