医療用観察システム
【課題】電子スコープ等の撮像手段から被検体までの撮影距離を測定するのに好適な構成の医療用観察システムを提供すること。
【解決手段】所定の波長域の照明光を導光する複数の導光路であって、ある波長の照明光が全ての導光路で導光されたとき、該波長の照明光によって被検体が均一に照明されるように配された複数の導光路と、少なくとも一つの導光路中に配置され、特定波長の照明光を所定期間遮蔽する手段と、所定期間中に照明された被検体の特定波長以外の波長に対応する光像を撮像する撮像手段と、撮像された光像に基づき被検体の画像を生成する手段と、所定期間中に照明された被検体の特定波長に対応する輝度分布を検出する手段と、検出された輝度分布に基づいて撮像手段から被検体までの撮影距離を計算する手段とを有する医療用観察システムを提供する。
【解決手段】所定の波長域の照明光を導光する複数の導光路であって、ある波長の照明光が全ての導光路で導光されたとき、該波長の照明光によって被検体が均一に照明されるように配された複数の導光路と、少なくとも一つの導光路中に配置され、特定波長の照明光を所定期間遮蔽する手段と、所定期間中に照明された被検体の特定波長以外の波長に対応する光像を撮像する撮像手段と、撮像された光像に基づき被検体の画像を生成する手段と、所定期間中に照明された被検体の特定波長に対応する輝度分布を検出する手段と、検出された輝度分布に基づいて撮像手段から被検体までの撮影距離を計算する手段とを有する医療用観察システムを提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電子スコープから被検体までの撮影距離を測定する医療用観察システムに関連し、詳しくは、被検体の照明するための既存の構成要素を利用して輝度分布ムラを意図的に生成し、該生成された輝度分布ムラに基づいて撮影距離を測定する医療用観察システムに関する。
【背景技術】
【0002】
医師が患者の体腔内を診断する際に使用する医療機器として、電子スコープが一般的に知られている。電子スコープを使用する医師は、電子スコープの挿入部を体腔内に挿入して、挿入部先端に備えられた先端部を被検体近傍に導く。医師は、先端部に搭載されたCCD(Charge Coupled Device)等の固体撮像素子により体腔内を撮影するため、電子スコープやビデオプロセッサの操作部を必要に応じて操作する。医師は、各種操作を行った結果得られる体腔内の映像をモニタを通じて観察し診断や施術等を行う。
【0003】
近年の医療用観察システムには、医師による診断を補助すべく、電子スコープの先端から被検体までの撮影距離を測定する測距機能を実装したものがある。測距機能を有する医療用観察システムの具体的構成例は、例えば特許文献1〜3に記載されている。
【0004】
特許文献1に記載の医療用観察システムは、回動自在な一対の反射板の角度を制御しつつ、一対のレーザ光源から発振されたレーザ光を各反射板で反射させて被検体上で交差させる。当該医療用観察システムは、二つのレーザ光が交差したときの各反射板の角度に基づいてCCDの撮像面と被検体との撮影距離を測定する。
【0005】
特許文献2に記載の医療用観察システムは、所定の測定光が電子スコープの先端部から斜めに角度付けされて放射される。電子スコープの先端部から被検体までの撮影距離は、撮影範囲内における測定光のスポット形成位置に基づいて計算される。
【0006】
特許文献3に記載の医療用観察システムは、照明光の発光位置から被検体までの撮影距離が相違する別個独立した二系統の照明光学系を備えている。当該医療用観察システムにおいては、各照明光学系によって照明された被検体の画像が光源の発光の切替に同期して独立に撮影される。次いで、撮影された各照明光学系に対応する二枚の画像の輝度比に基づいて被検体までの撮影距離が測定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−278980号公報
【特許文献2】特許第3446272号明細書
【特許文献3】特開2002−65581号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1に記載の医療用観察システムにおいては、反射板の角度調節を高精度に行う小型かつ精密な駆動機構が必要であり、先端部の構成が複雑化すると共に製造コスト面の負担が大きい問題が指摘される。
【0009】
特許文献2に記載の医療用観察システムにおいては、電子スコープの基端から先端に至るまで測定光を伝送させるための専用の導光路を照明光用の導光路以外に別途組み込む必要がある。そのため、電子スコープの挿入部が大径化する。挿入部が大径化するほど、挿入部を患者の体腔内の微少な隙間に円滑に挿入させ難くなり、患者にかかる負担が大きいため望ましくない。
【0010】
特許文献3に記載の医療用観察システムにおいては、照明用光源が複数灯必要とされるため、製造コスト面の負担が大きいことが問題視される。
【0011】
なお、医師が電子スコープの鉗子チャンネルにメジャーを挿入し通して被検体に直接当てて、被検体までの距離を測定する方法が存在する。しかし、この種の測定作業には熟練を要するため、正確な測定が難しい問題が指摘されている。
【0012】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、電子スコープ等の撮像手段から被検体までの撮影距離を測定するのに好適な構成の医療用観察システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題を解決する本発明の一形態に係る医療用観察システムは、所定の波長域の照明光を導光する複数の導光路であって、ある波長の照明光が全ての導光路で導光されたとき、該波長の照明光によって被検体が均一に照明されるように配された複数の導光路と、少なくとも一つの導光路中に配置され、所定の波長域のうち特定波長の照明光を所定期間遮蔽する遮蔽手段と、所定期間中に照明された被検体の特定波長以外の波長に対応する光像を撮像する撮像手段と、撮像された光像に基づき被検体の画像を生成する画像生成手段と、所定期間中に照明された被検体の特定波長に対応する輝度分布を検出する輝度分布検出手段と、検出された輝度分布に基づいて撮像手段から被検体までの撮影距離を計算する撮影距離計算手段とを有することを特徴としている。
【0014】
かかる構成によれば、例えば測距用の複雑な駆動機能や測定光用の専用の光路等を別途設けることなく、既存の構成要素である導光路による配光を利用して撮影距離を測定することができる。そのため、測距機能の実装に伴う装置の大型化や製造コストの増加が好適に抑えられる。また、カラー画像の品質(例えば画質、フレームレート等)に実質的な影響を及ぼすことなく、撮影距離をリアルタイムで測定することができる。
【0015】
遮蔽手段は、例えば、遮蔽帯域が異なる複数の開口フィルタが回転方向に設けられた回転フィルタと、複数の開口フィルタが撮像手段による撮像に同期したタイミングで導光路中に択一的に挿入されるように回転フィルタを回転制御する回転制御手段とを有した構成であってもよい。
【0016】
回転フィルタは、面順次方式に対応した内視鏡用光源装置に搭載された一般的な回転フィルタとしてもよい。すなわち、回転フィルタは、R光以外を遮蔽する第一の開口フィルタ、G光以外を遮蔽する第二の開口フィルタ、B光以外を遮蔽する第三の開口フィルタを回転方向に有した構成であってもよい。本発明に係る医療用観察システムによれば、このような周知の回転フィルタを利用しつつ、被検体の撮影と撮影距離の測定とを同時に行うことができる。そのために、回転制御手段は、撮像手段によって一フレームが撮像される期間に同期させて回転フィルタを一回転させる。撮像手段は、第一、第二、第三の開口フィルタが導光路に挿入されている第一、第二、第三の期間中に照明された被検体のR光、G光、B光に対応する各光像を順次撮像する。画像生成手段は、撮像された各光像に基づき被検体のカラー画像を生成する。輝度分布検出手段は、第一、第二、第三の期間中に照明された被検体のR光以外、G光以外、B光以外の波長に対応する輝度分布を検出する。撮影距離計算手段は、検出された各輝度分布に基づいて撮像手段から被検体までの撮影距離を計算する。
【0017】
本発明に係る医療用観察システムは、所定の波長域の照明光を放射する光源を更に有する構成としてもよい。かかる場合、回転フィルタは、例えば光源と導光路の入射端との間に配置されている。
【0018】
ここで、輝度分布検出手段は、撮像手段により撮像された一フレームを複数の領域に分割し、該分割された各分割領域に対応する輝度値をサンプリングし、該サンプリングされた輝度値のなかからピーク値を検出する構成としてもよい。撮影距離計算手段は、該ピーク値と、所定の分割領域に対応する輝度値との比を計算し、該計算された比に基づいて撮影距離を計算する構成としてもよい。
【0019】
上記所定の分割領域は、例えばその領域中心が、ピーク値に対応する分割領域の中心と、撮影範囲の中心を通る仮想的な直線上であって、該撮影範囲の中心を挟んで該ピーク値に対応する該分割領域と反対側の該撮影範囲周辺に位置する領域としてもよい。
【0020】
ここで、撮影距離計算手段は、所定の関数を保持しており、計算された輝度比を用いて所定の関数を計算して撮影距離を求める構成としてもよい。
【0021】
別の形態において、撮影距離計算手段は、輝度比と撮影距離とを対応付けた変換テーブルを有しており、計算された輝度比を用いて変換テーブルを参照して撮影距離を求める構成としてもよい。
【0022】
本発明に係る医療用観察システムは、撮像手段により撮像される画像の輝度を設定する輝度設定手段を更に有する構成としてもよい。かかる場合、撮影距離計算手段は、設定される輝度毎に対応した所定の関数又は変換テーブルを保持しており、計算された輝度比を用いて所定の関数又は変換テーブルを参照して撮影距離を求める。
【0023】
本発明に係る医療用観察システムは、撮影距離計算手段により計算された撮影距離を表現する表示情報を生成する表示情報生成手段と、該生成された表示情報を所定の表示装置に出力する表示情報出力手段とを更に有する構成としてもよい。
【0024】
本発明に係る医療用観察システムは、撮影距離計算手段により計算された撮影距離と、撮像手段が有する対物光学系の焦点距離に基づいて、該撮像手段に撮像されている被検体のサイズを計算するサイズ計算手段と、該計算されたサイズを表現する情報を所定の表示装置に出力するサイズ情報出力手段とを更に有する構成としてもよい。
【発明の効果】
【0025】
本発明の医療用観察システムによれば、例えば測距用の複雑な駆動機能や測定光用の専用の光路等を別途設けることなく、既存の構成要素である導光路による配光を利用して撮影距離を測定することができる。そのため、測距機能の実装に伴う装置の大型化や製造コストの増加が好適に抑えられる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施例1の医療用観察システムの外観図である。
【図2】本発明の実施例1の医療用観察システムの構成を模式的に示すブロック図である。
【図3】本発明の実施例1のプロセッサに内蔵された回転フィルタの構成を模式的に示した図である。
【図4】本発明の実施例1の電子スコープの挿入先端部の正面図である。
【図5】透過期間中の撮影範囲と照明光量分布との関係を視覚的に理解させるための補助的な説明図である。
【図6】遮蔽期間中の撮影範囲と照明光量分布との関係を視覚的に理解させるための補助的な説明図である。
【図7】本発明の実施例1においてプロセッサの距離算出部が実行する距離算出処理を示すフローチャート図である。
【図8】一方の配光窓から放射された照明光だけで照明された被検体のG成分(又はB成分)の輝度分布と撮影距離との関係を説明するための図である。
【図9】一方の配光窓から放射された照明光だけで照明された被検体のG成分(又はB成分)の輝度分布と撮影距離との関係を説明するための図である。
【図10】一方の配光窓から放射された照明光だけで照明された被検体のG成分(又はB成分)の輝度分布と撮影距離との関係を説明するための図である。
【図11】図8〜図10の各図(a)の直線L上のG成分(又はB成分)の輝度分布を示した輝度分布図である。
【図12】本発明の実施例2のプロセッサに内蔵された回転フィルタの構成を模式的に示した図である。
【図13】本発明の実施例3の医療用観察システムの構成を模式的に示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、添付された各図面を参照しつつ、本発明の実施形態の医療用観察システムについて説明する。なお、電子スコープには、一般に、鉗子チャンネルや送気送水ノズル等が備えられているが、本明細書又は各図面においては、本発明の特徴に直接的には関係しないこの種の構成要素は、その説明又は図示を便宜上省略している。
【0028】
図1は、本発明の実施例1の医療用観察システム1の外観図である。図1に示されるように、医療用観察システム1は、患者の体腔内を撮像する電子スコープ100を有している。電子スコープ100は、可撓管によって外装された挿入可撓部11を有している。挿入可撓部11の先端には、硬質性を有する樹脂製筐体によって外装された挿入先端部12が連結されている。挿入可撓部11と挿入先端部12との連結箇所は、挿入可撓部11の基端に連結された手元操作部13からの遠隔操作によって屈曲自在に構成されている。挿入先端部12の方向が上記遠隔操作による屈曲動作に応じて変わることにより、電子スコープ100による撮影領域が移動する。
【0029】
図1に示されるように、医療用観察システム1は、プロセッサ200を有している。プロセッサ200は、電子スコープ100からの信号を処理する信号処理装置と、自然光の届かない体腔内を電子スコープ100を介して照明する光源装置とを一体に備えた装置である。別の実施の形態では、信号処理装置と光源装置を別体で構成してもよい。
【0030】
プロセッサ200には、電子スコープ100の基端に設けられたコネクタ10に対応するコネクタ部20が設けられている。コネクタ部20は、コネクタ部10に対応する連結構造を有し、電子スコープ100とプロセッサ200とを電気的、光学的に接続するように構成されている。
【0031】
図2は、本実施例1の医療用観察システム1の構成を模式的に示すブロック図である。図2に示されるように、医療用観察システム1は、所定のケーブルを介してプロセッサ200に接続されたモニタ300を有している。なお、図1においては、図面を簡略化するため、本発明に係る特徴的構成を有さないモニタ300を図示省略している。
【0032】
図2に示されるように、プロセッサ200は、システムコントローラ202、タイミングコントローラ204を有している。システムコントローラ202は、医療用観察システム1を構成する各要素を制御する。タイミングコントローラ204は、信号の処理タイミングを調整するクロックパルスを医療用観察システム1内の各種回路に出力する。
【0033】
プロセッサ200の電源が投入されたとき、ランプ電源206からランプ208に電源が供給されてランプ208が点灯して、白色光を放射する。ランプ208には、キセノンランプ、ハロゲンランプ、水銀ランプ、メタルハライドランプなどの高輝度ランプが適している。ランプ208から放射された照明光は、集光レンズ209によって集光されてLCB(light carrying bundle)101の入射端に入射される。なお、画像生成に使用される波長の光は、R光、G光、B光であるため、本明細書においては白色光とRGB光とを等価的に扱う。
【0034】
LCB(以下、「バンドル」と省略して記す。)101は、入射端から射出端に向かう途中、二本のバンドル101A、101Bに分岐されている。照明光は、バンドル101の分岐点において光量が分けられて、バンドル101A又は101Bを伝播される。バンドル101Aを伝播された照明光は、電子スコープ100の先端に配されたバンドル101Aの射出端から射出される。バンドル101Aの射出端から射出された照明光は、配光レンズ104A、カバーガラス106Aを介して被検体を照明する。
【0035】
バンドル101Bを伝播された照明光は、プロセッサ200の内部に配されたバンドル101Bの射出端から射出される。バンドル101Bの射出端から射出された照明光は、集光レンズ210により集光されつつ絞り212を介して適正な光量に制限されて、回転フィルタ215を介して電子スコープ100が有するバンドル102の入射端に入射される。
【0036】
絞り212には、図示省略されたアームやギヤなどの伝達機構を介してモータ214が機械的に連結されている。モータ214は例えばDCモータであり、ドライバ216のドライブ制御下で駆動する。絞り212は、モニタ300に表示される映像を適正な明るさにするため、モータ214によって動作されて開度が変化して、ランプ208から放射された照明光の光量を開度に応じて制限する。適正とされる映像の明るさの基準は、術者によるフロントパネル218の輝度調節操作に応じて変更される。なお、ドライバ216を制御して輝度調整を行う調光回路は周知の回路であり、本明細書においては省略することとする。
【0037】
図3は、本実施例1の回転フィルタ215の構成を模式的に示した図である。図3に示されるように、回転フィルタ215には、扇形の開口215AとR光透過フィルタ215Rが形成されている。回転フィルタ215には、図示省略されたギア等の伝達機構を介してモータ217が機械的に連結されている。モータ217は例えばDCモータであり、ドライバ216のドライブ制御下で駆動して、回転フィルタ215を点Cを中心に矢印A方向に回転させる。
【0038】
開口215AとR光透過フィルタ215Rは、回転フィルタ215の回転に伴い、照明光路中に択一的に挿入される。開口215Aは、ランプ208から放射された全ての波長の照明光を、R光透過フィルタ215Rは、当該照明光のうちR光のみを、それぞれ透過させる。そのため、バンドル102の入射端には、全ての波長の又はR光の照明光が回転フィルタ215の回転に応じて周期的に入射する。以下、説明の便宜上、回転フィルタ215が全ての波長の照明光を透過させる期間を「透過期間」と記し、R光の照明光のみを透過させる期間を「遮蔽期間」と記す。なお、回転フィルタ215の回転速度、タイミングは、撮影画像のフレームレートに対応する速度、タイミングに設定されている。具体的には、透過期間は、連続した二フレームの撮影タイミングに同期し、遮蔽期間は、当該撮影タイミングの間の一フレームの撮影タイミングに同期する。
【0039】
バンドル102の入射端に入射された照明光は、バンドル102の内部を全反射を繰り返すことによって伝播される。バンドル102を伝播された照明光は、電子スコープ100の先端に配されたバンドル102の射出端から射出される。バンドル102の射出端から射出された照明光は、配光レンズ104B、カバーガラス106Bを介して被検体を照明する。
【0040】
図4は、本実施例1の挿入先端部12の正面図である。図4に示されるように、各バンドル101A、102に対応する二つの配光窓(図4中カバーガラス106A、106B)は、対物レンズ110及び固体撮像素子112を有する撮像系(図4では、外観に現れるカバーガラス108が示されている)の光軸を通る中心線Yを挟んで対称の位置に配置されている。説明を加えると、二つのカバーガラス106A、106Bは、挿入先端部12を正面から臨んだときの撮像系までの距離が等しくなるように配置されている。また、電子スコープ100が有する各種光学部品は、透過期間中、各カバーガラス106A、106Bを介して放射される照明光量が等しくなるように設計されている。そのため、被検体は、透過期間中、挿入先端部12と被検体とが所定距離以上離れていることを条件として(別の表現によれば、挿入先端部12が被検体に過度に接近しない限り)、撮影範囲内においてほぼ均一な光量分布の白色光で照明される。遮蔽期間中は、R光透過フィルタ215RによるR光以外の照明光(画像生成に使用されるR光以外の波長の光がG光、B光であるため、R光以外の照明光を便宜上「GB光」と記す。)の遮蔽(或いは減光であってもよい。)がバンドル102側の光路だけでなされている。そのため、被検体は、遮蔽期間中、撮影範囲内においてほぼ均一な光量分布のR光で照明されると同時に不均一な光量分布のGB光で照明される。なお、配光窓を複数配することによって配光ムラを無くす構成は、電子スコープの製品分野において一般的に知られた構成である。
【0041】
図5(a)〜図5(c)は、透過期間中の撮影範囲と照明光量分布との関係を視覚的に理解させるための補助的な説明図である。図6(a)〜図6(c)は、遮蔽期間中の撮影範囲と照明光量分布との関係を視覚的に理解させるための補助的な説明図である。各図中縦軸が照明光量を、横軸が撮影範囲を、それぞれ示している。何れも正規化されているため、単位はない。各図において撮影範囲は、便宜上一次元で表現されているが、実際には二次元である。図5(a)、図6(a)の符号RA、RBは、カバーガラス106A、106Bを介して放射されたR光の照明光量分布(破線)を、符号RLは、照明光量分布RAとRBとを合わせた撮影範囲全体のR光の照明光量分布(実線)を、それぞれ示している。図5(b)、図6(b)の符号GA、GBは、カバーガラス106A、106Bを介して放射されたG光の照明光量分布(破線)を、符号GLは、照明光量分布GAとGBとを合わせた撮影範囲全体のG光の照明光量分布(実線)を、それぞれ示している。図5(c)、図6(c)の符号BA、BBは、カバーガラス106A、106Bを介して放射されたB光の照明光量分布(破線)を、符号BLは、照明光量分布BAとBBとを合わせた撮影範囲全体のB光の照明光量分布(実線)を、それぞれ示している。図5(a)〜図5(c)に示されるように、被検体は、透過期間中ほぼ均一な光量分布のRGB光で照明される。図6(a)〜図6(c)に示されるように、被検体は、遮蔽期間中ほぼ均一な光量分布のR光で照明されると同時に不均一な光量分布のGB光で照明される。
【0042】
照明光によって照明された被検体からの反射光は、カバーガラス108を介して対物レンズ110に入射され、対物レンズ110のパワーにより固体撮像素子112の受光面上で光学像を結ぶ。
【0043】
固体撮像素子112は、例えばベイヤ型画素配置を有する単板式カラーCCDであり、受光面上の各画素で結像した光学像を光量に応じた電荷として蓄積して、R、G、Bの各色に応じた画像信号に変換する。変換された画像信号は、プリアンプ114により増幅されてドライバ信号処理回路116に入力される。
【0044】
ドライバ信号処理回路116は、タイミングコントローラ204のクロックパルスに基づき、固体撮像素子112をプロセッサ200側で処理される映像のフレームレートに同期したタイミングで駆動制御する。メモリ118には、電子スコープ100固有の情報(例えば固体撮像素子112の画素数や感度、対応可能なレート、或いは型番など)が格納されている。ドライバ信号処理回路116は、メモリ118にアクセスして電子スコープ100固有の情報を読み出す。
【0045】
ドライバ信号処理回路116は、読み出された固有情報をシステムコントローラ202に、画像信号を信号処理回路220に、それぞれ出力する。ドライバ信号処理回路116とシステムコントローラ202又は信号処理回路220との間には、フォトカップラなどを使用した絶縁回路(不図示)が配置されている。すなわち、電子スコープ100とプロセッサ200は、電気的に絶縁されている。
【0046】
システムコントローラ202は、ドライバ信号処理回路116からの上記固有情報に基づいて各種演算を行い、制御信号を生成する。システムコントローラ202は、生成された制御信号を用いて、プロセッサ200に接続中の電子スコープに適した処理がされるようにプロセッサ200内の各種回路の動作やタイミングを制御する。また、システムコントローラ202は、電子スコープの型番と、該型番の電子スコープに適した制御情報とを対応付けたテーブルを有した構成としてもよい。かかる場合、システムコントローラ202は、対応テーブルの制御情報を参照して、プロセッサ200に接続中の電子スコープに適した処理がされるようにプロセッサ200内の各種回路の動作やタイミングを制御する。
【0047】
信号処理回路220は、ドライバ信号処理回路116からの画像信号に、クランプ、ニー、γ補正、補間処理、AGC(Auto Gain Control)等の所定の信号処理を施してA/D変換し、フレーム単位のバッファリングを行う。信号処理回路220のバッファには、透過期間中、ほぼ均一な光量分布のRGB光で照明された被検体の画像信号がバッファリングされる。信号処理回路220は、バッファリングされたフレーム単位の画像信号をタイミングコントローラ204によるタイミングで掃き出して、NTSC(National Television System Committee)やPAL(Phase Alternating Line)等の所定の規格に準拠した映像信号に変換して、モニタ300に順次出力する。これにより、被検体のカラー画像がモニタ300に表示される。
【0048】
一方、遮蔽期間中は、ほぼ均一な光量分布のR光と不均一な光量分布のGB光で照明された被検体の画像信号が信号処理回路220のバッファにバッファリングされる。信号処理回路220が有する距離算出部250は、当該画像信号をバッファリングする毎に、GB光に対応する画像信号を用いて、図7に示される距離算出処理を実行する。なお、以降の本明細書中の説明並びに図面において、処理ステップは「S」と省略して記す。
【0049】
図7の距離算出処理を詳細説明に先立ち、図8〜図10を用いて、照明光量が不均一なG(又はB)の照明光によって照明された被検体のG成分(又はB成分)の輝度分布を説明する。
【0050】
図8〜図10の各図の(a)は、被検体のG成分(又はB成分)の輝度分布と撮影範囲との関係を模式的に示す図である。図8〜図10の各図(a)において、被検体のG成分(又はB成分)の輝度分布は、等高線モデルを用いて示されている。曲率半径の小さい等高線ほどG(又はB)の照明光の中心に近く、G成分(又はB成分)に関して被検体が明るく照明されていることを示している。なお、図8〜図10の各図(a)中、符号Oは、撮影範囲の中心を、符号Lは、撮影範囲中最も輝度の高い点及び中心Oを通る直線を、それぞれ示している。
【0051】
図8〜図10の各図の(b)は、各図の(a)に対応する図であって、電子スコープ100の挿入先端部12から被検体400までの撮影距離Dを模式的に示す図である。なお、各図の(b)においては、図面を簡素化するため、電子スコープ100の構成要素のうち各バンドル101A、102、対物レンズ110、固体撮像素子112以外の構成要素の図示を省略している。
【0052】
また、図8〜図10の各図の(b)においては、対物レンズ110の主点から被検体400までの距離を便宜上撮影距離Dとして示したに過ぎない。ここで、電子スコープ100の各種要素(例えば対物レンズ110の主点、挿入先端部12の前面、固体撮像素子112の受光面等)の相対位置は既知である。よって、撮影距離Dは、例えば挿入先端部12の前面から被検体400までの距離と定義してもよく、或いは固体撮像素子112の受光面から被検体400までの距離と定義してもよい。
【0053】
図11は、図8〜図10の各図の(a)の直線L上のG成分(又はB成分)の輝度分布を示した輝度分布図である。図11中縦軸が輝度値を、横軸が直線L上の座標を、それぞれ示している。図11中、符号BD1は、撮影距離Dが図8の場合のG成分(又はB成分)の輝度分布を、符号BD2は、撮影距離Dが図9場合のG成分(又はB成分)の輝度分布を、符号BD3は、撮影距離Dが図10の場合のG成分(又はB成分)の輝度分布を、それぞれ示している。
【0054】
図8〜図10を参照するところ、挿入先端部12と被検体400とが接近するほどG成分(又はB成分)の輝度分布のピーク位置が撮影範囲の中心Oから離れていくことが分かる。本実施例1の距離算出処理においては、このような輝度分布の特性を利用して撮影距離Dを測定する。
【0055】
距離算出部250は、G、Bの各波長の光に対応する画像信号それぞれを用いて、図7に示されるS101〜S106の処理を行う。図9(a)及び図11を用いて図7の距離算出処理を具体的に説明すると、距離算出部250は、バッファリングされた一フレーム中の各画像領域を細分化する。距離算出部250は、バッファリングされた画像信号から、細分化された各分割画像領域に対応するG、Bの各輝度値をサンプリングする(S101)。具体的には、距離算出部250は、G、Bの各輝度値をサンプリングするため、各分割画像領域に属する画素のG、Bの各輝度信号を用いてヒストグラム処理を行う。次いで、生成されたヒストグラムデータを用いて、分割画像領域毎にG、Bの各輝度の平均値を算出してサンプリングデータを得る。
【0056】
距離算出部250は、サンプリングデータに基づいてピークとなるG、Bの各輝度値、及び該各輝度値に対応する分割画像領域R1を計算する(S102)。距離算出部250は、G、Bの各々に対して、計算された分割画像領域R1の中心と撮影範囲の中心Oを通る仮想的な直線Lを定義する(S103)。距離算出部250は、定義されたG、Bに対応する各直線L上の分割画像領域のなかから所定条件を満たす分割画像領域R2を特定する(S104)。分割画像領域R2は、例えばその領域中心が直線L上であって、中心Oを挟んで分割画像領域R1と反対側の撮影範囲周辺に位置する(撮影範囲の最周辺から所定画素分離れた位置の)分割画像領域として定義される。距離算出部250は、サンプリングデータのなかから分割画像領域R2に対応するG、Bの各輝度値を取得する(S105)。距離算出部250は、G、Bの各々に対して、分割画像領域R1とR2の輝度値の比(以下、「輝度比」と記す。)を計算する(S106)。
【0057】
ここで、前述したように、G成分、B成分の輝度分布のピーク位置は、撮影距離Dに応じて撮影範囲の中心Oとの距離が変化する。してみると、撮影距離DとG、Bの各輝度比との間には、所定の関係が成立するといえる。当該関係は、輝度比をBRと定義した場合、所定の関数D=f(BR)によって表現される。距離算出部250は、G、Bの各々に対応した所定の関数D=f(BR)を保持している。距離算出部250は、S106の処理において計算されたG、Bの各輝度比を用いて所定の関数D=f(BR)を計算する。距離算出部250は、G、Bに対応する各関数の計算結果を平均化し、平均化されたその値を撮影距離Dとする(S107)。なお、別の実施形態において距離算出部250は、輝度比と撮影距離Dとを対応付けた変換テーブルを有したものとしてもよい。かかる場合、距離算出部250は、所定の関数D=f(BR)に代替して、変換テーブルを用いてS107の処理を行う。
【0058】
撮影距離Dと輝度比との関係は、フロントパネル218の輝度調節操作で設定された目標となる明るさに依存して変わる。そのため、距離算出部250は、設定輝度(或いは絞り212の開度)毎に対応する関数又は変換テーブルを保持した構成としてもよい。かかる場合、距離算出部250は、設定輝度(或いは絞り212の開度)に応じた関数又は変換テーブルを参照して、輝度調節操作時においても撮影距離Dを求めることができる。また、かかる構成によれば、各設定輝度(或いは絞り212の開度)に適した関数又は変換テーブルを用いて撮影距離Dが計算されるため、撮影距離Dの精度が向上する効果が得られる。
【0059】
輝度比は、被検体が色相の変化が大きいものである場合に、その影響を比較的受け難いパラメータである。よって、かかる場合には測定距離誤差が小さく好適である。
【0060】
距離算出部250は次いで、計算された撮影距離Dを表す情報(例えばキャラクタやスケール、グリッド等)の信号を生成する(S108)。距離算出部250は、生成されたキャラクタ情報等の信号を、信号処理回路220から出力される画像信号に加算する(S109)。これにより、撮影距離Dを示すキャラクタ情報等が、被検体のカラー画像と共にモニタ300に表示される。
【0061】
本実施例1の医療用観察システム1によれば、測距用の複雑な駆動機能や測定光用の専用の光路を別途設けることなく、既存のバンドルを利用して距離算出処理を行うことができる。距離算出処理を行うために挿入先端部12に追加される部品は特に無く、バンドル101を分岐させて一方(バンドル101B)の射出端を回転フィルタ215の手前に配するだけでよい。そのため、挿入先端部12の大型化や製造コストの増加が最小限に抑えられている。なお、本実施例1に係る構成において、遮蔽期間中に遮蔽される照明光は、GB光に限らず、他の波長の光であってもよい。
【0062】
図12は、本実施例2の回転フィルタ215zの構成を模式的に示した図である。本実施例2の医療用観察システム1は、回転フィルタの構成と信号処理回路220の処理内容が本実施例1の医療用観察システム1と相違し、その他は同じである。本実施例2以降の各実施例の医療用観察システム1において、本実施例1の医療用観察システム1と同一の又は同様の構成には、同一の又は同様の符号を付して説明を省略する。
【0063】
図12に示されるように、本実施例2の回転フィルタ215zは、R光透過フィルタ215R、G光透過フィルタ215G、B光透過フィルタ215Bが形成されており、面順次方式に対応した一般的なプロセッサに搭載されている回転フィルタと同じ構成を有している。回転フィルタ215zは、一フレームに対応する周期で一回転する。そのため、バンドル102の入射端には、一周期の間に、R光、G光、B光の照明光が順に入射する。以下、説明の便宜上、回転フィルタ215zがR光の照明光のみを透過させる期間を「R期間」と記し、G光の照明光のみを透過させる期間を「G期間」と記し、B光の照明光のみを透過させる期間を「B期間」と記す。
【0064】
被検体は、R期間中、撮影範囲内においてほぼ均一な光量分布のR光で照明されると同時に不均一な光量分布のGB光で照明される。G期間中は、撮影範囲内においてほぼ均一な光量分布のG光で照明されると同時に不均一な光量分布のRB光で照明される。B期間中は、撮影範囲内においてほぼ均一な光量分布のB光で照明されると同時に不均一な光量分布のRG光で照明される。
【0065】
R期間に得られたR光に対応する画像信号、G期間に得られたG光に対応する画像信号、B期間に得られたB光に対応する画像信号はそれぞれ、信号処理回路220が有するR、G、B用の各フレームメモリにバッファリングされる。信号処理回路220は、バッファリングされた各フレームメモリの画像信号をタイミングコントローラ204によるタイミングで掃き出して映像信号に変換し、モニタ300に順次出力する。これにより、被検体のカラー画像がモニタ300に表示される。
【0066】
一方、R期間に得られたG光、B光に対応する画像信号は、距離算出部250が有するバッファにバッファリングされる。距離算出部250は、バッファリングされたGB光に対応する画像信号を用いて、図7に示される距離算出処理を実行する。距離算出部250は、次いで、G期間に得られたR光、B光に対応する画像信号を用いて距離算出処理を実行する。更に、B期間に得られたR光、G光に対応する画像信号を用いて距離算出処理を実行する。すなわち、本実施例2によれば、撮影距離Dが一フレーム期間中に複数回測定される。例えば撮影距離Dの精度を向上させるため、これらの測定結果の平均値をモニタ300に出力し表示させることができる。また、カラー画像の品質(例えば画質、フレームレート等)に実質的な影響を及ぼすことなく、撮影距離Dをリアルタイムで測定することができる。
【0067】
図13は、本実施例3の医療用観察システム1yの構成を模式的に示すブロック図である。図13に示されるように、医療用観察システム1yは、電子スコープ100y、プロセッサ200y、モニタ300、バンドル分岐装置500を有している。図13に示されるように、電子スコープ100yとプロセッサ200yは、バンドル分岐装置500を介して光学的に接続されている。
【0068】
バンドル分岐装置500は、バンドル101yを有している。バンドル101yの入射端は、バンドル分岐装置500をプロセッサ200yに接続させたとき、集光レンズ210を介してランプ208に結合される。バンドル101yは、入射端から射出端に向かう途中、二本のバンドル101Ay、101Byに分岐されている。照明光は、バンドル101yの分岐点において光量が分けられて、バンドル101Ay又は101Byを伝播される。バンドル101Ayを伝播された照明光は、電子スコープ100の先端に配されたバンドル101Ayの射出端から射出される。バンドル101Ayの射出端から射出された照明光は、配光レンズ104A、カバーガラス106Aを介して被検体を照明する。
【0069】
バンドル101Byを伝播された照明光は、バンドル分岐装置500の内部に配されたバンドル101Byの射出端から射出される。バンドル101Byの射出端から射出された照明光は、集光レンズ512により集光されつつ回転フィルタ215を介して、バンドル102yの入射端に入射される。なお、モータ217による回転フィルタ215の回転は、ドライバ216によって制御されている。ここでは、図面を簡素化するため、ドライバ216とモータ217との結線を省略している。
【0070】
バンドル102yを伝播された照明光は、電子スコープ100の先端に配されたバンドル102yの射出端から射出される。バンドル102yの射出端から射出された照明光は、配光レンズ104B、カバーガラス106Bを介して被検体を照明する。カバーガラス106Bからは、回転フィルタ215によって異なる波長域にフィルタリングされた照明光が順次放射される。本実施例3に係る構成においても、輝度分布ムラを意図的に生成し、当該ムラを利用した距離算出処理を行うことができる。
【0071】
本実施例3において距離算出部250は、例えばFPGA(Field Programmable Gate Array)によって提供されている。なお、距離算出部250は、バンドル分岐装置500に実装されていてもよい。
【0072】
以上が本発明の実施形態の説明である。本発明は、上記の構成に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲において様々な変形が可能である。例えばバンドルは、三本以上に分岐された構成であってもよい。この場合、電子スコープ100は、被検体を三以上の配光窓からの照明光によって均一に又は不均一に照明する。
【0073】
撮影された被検体の大きさは、撮影距離Dと対物レンズ110の特定波長(照明光量分布が不均一な波長)に対する焦点距離を用いて計算することができる。かかる計算機能を距離算出部250に付加してモニタ300上に表示させるようにしてもよい。
【0074】
別の実施形態の医療用観察システムは、回転フィルタに代えて波長可変液晶フィルタを備えた構成であってもよい。
【符号の説明】
【0075】
1 医療用観察システム
100 電子スコープ
101A、102 バンドル
112 固体撮像素子
200 プロセッサ
202 システムコントローラ
220 信号処理回路
250 距離算出部
300 モニタ
【技術分野】
【0001】
この発明は、電子スコープから被検体までの撮影距離を測定する医療用観察システムに関連し、詳しくは、被検体の照明するための既存の構成要素を利用して輝度分布ムラを意図的に生成し、該生成された輝度分布ムラに基づいて撮影距離を測定する医療用観察システムに関する。
【背景技術】
【0002】
医師が患者の体腔内を診断する際に使用する医療機器として、電子スコープが一般的に知られている。電子スコープを使用する医師は、電子スコープの挿入部を体腔内に挿入して、挿入部先端に備えられた先端部を被検体近傍に導く。医師は、先端部に搭載されたCCD(Charge Coupled Device)等の固体撮像素子により体腔内を撮影するため、電子スコープやビデオプロセッサの操作部を必要に応じて操作する。医師は、各種操作を行った結果得られる体腔内の映像をモニタを通じて観察し診断や施術等を行う。
【0003】
近年の医療用観察システムには、医師による診断を補助すべく、電子スコープの先端から被検体までの撮影距離を測定する測距機能を実装したものがある。測距機能を有する医療用観察システムの具体的構成例は、例えば特許文献1〜3に記載されている。
【0004】
特許文献1に記載の医療用観察システムは、回動自在な一対の反射板の角度を制御しつつ、一対のレーザ光源から発振されたレーザ光を各反射板で反射させて被検体上で交差させる。当該医療用観察システムは、二つのレーザ光が交差したときの各反射板の角度に基づいてCCDの撮像面と被検体との撮影距離を測定する。
【0005】
特許文献2に記載の医療用観察システムは、所定の測定光が電子スコープの先端部から斜めに角度付けされて放射される。電子スコープの先端部から被検体までの撮影距離は、撮影範囲内における測定光のスポット形成位置に基づいて計算される。
【0006】
特許文献3に記載の医療用観察システムは、照明光の発光位置から被検体までの撮影距離が相違する別個独立した二系統の照明光学系を備えている。当該医療用観察システムにおいては、各照明光学系によって照明された被検体の画像が光源の発光の切替に同期して独立に撮影される。次いで、撮影された各照明光学系に対応する二枚の画像の輝度比に基づいて被検体までの撮影距離が測定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−278980号公報
【特許文献2】特許第3446272号明細書
【特許文献3】特開2002−65581号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1に記載の医療用観察システムにおいては、反射板の角度調節を高精度に行う小型かつ精密な駆動機構が必要であり、先端部の構成が複雑化すると共に製造コスト面の負担が大きい問題が指摘される。
【0009】
特許文献2に記載の医療用観察システムにおいては、電子スコープの基端から先端に至るまで測定光を伝送させるための専用の導光路を照明光用の導光路以外に別途組み込む必要がある。そのため、電子スコープの挿入部が大径化する。挿入部が大径化するほど、挿入部を患者の体腔内の微少な隙間に円滑に挿入させ難くなり、患者にかかる負担が大きいため望ましくない。
【0010】
特許文献3に記載の医療用観察システムにおいては、照明用光源が複数灯必要とされるため、製造コスト面の負担が大きいことが問題視される。
【0011】
なお、医師が電子スコープの鉗子チャンネルにメジャーを挿入し通して被検体に直接当てて、被検体までの距離を測定する方法が存在する。しかし、この種の測定作業には熟練を要するため、正確な測定が難しい問題が指摘されている。
【0012】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、電子スコープ等の撮像手段から被検体までの撮影距離を測定するのに好適な構成の医療用観察システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題を解決する本発明の一形態に係る医療用観察システムは、所定の波長域の照明光を導光する複数の導光路であって、ある波長の照明光が全ての導光路で導光されたとき、該波長の照明光によって被検体が均一に照明されるように配された複数の導光路と、少なくとも一つの導光路中に配置され、所定の波長域のうち特定波長の照明光を所定期間遮蔽する遮蔽手段と、所定期間中に照明された被検体の特定波長以外の波長に対応する光像を撮像する撮像手段と、撮像された光像に基づき被検体の画像を生成する画像生成手段と、所定期間中に照明された被検体の特定波長に対応する輝度分布を検出する輝度分布検出手段と、検出された輝度分布に基づいて撮像手段から被検体までの撮影距離を計算する撮影距離計算手段とを有することを特徴としている。
【0014】
かかる構成によれば、例えば測距用の複雑な駆動機能や測定光用の専用の光路等を別途設けることなく、既存の構成要素である導光路による配光を利用して撮影距離を測定することができる。そのため、測距機能の実装に伴う装置の大型化や製造コストの増加が好適に抑えられる。また、カラー画像の品質(例えば画質、フレームレート等)に実質的な影響を及ぼすことなく、撮影距離をリアルタイムで測定することができる。
【0015】
遮蔽手段は、例えば、遮蔽帯域が異なる複数の開口フィルタが回転方向に設けられた回転フィルタと、複数の開口フィルタが撮像手段による撮像に同期したタイミングで導光路中に択一的に挿入されるように回転フィルタを回転制御する回転制御手段とを有した構成であってもよい。
【0016】
回転フィルタは、面順次方式に対応した内視鏡用光源装置に搭載された一般的な回転フィルタとしてもよい。すなわち、回転フィルタは、R光以外を遮蔽する第一の開口フィルタ、G光以外を遮蔽する第二の開口フィルタ、B光以外を遮蔽する第三の開口フィルタを回転方向に有した構成であってもよい。本発明に係る医療用観察システムによれば、このような周知の回転フィルタを利用しつつ、被検体の撮影と撮影距離の測定とを同時に行うことができる。そのために、回転制御手段は、撮像手段によって一フレームが撮像される期間に同期させて回転フィルタを一回転させる。撮像手段は、第一、第二、第三の開口フィルタが導光路に挿入されている第一、第二、第三の期間中に照明された被検体のR光、G光、B光に対応する各光像を順次撮像する。画像生成手段は、撮像された各光像に基づき被検体のカラー画像を生成する。輝度分布検出手段は、第一、第二、第三の期間中に照明された被検体のR光以外、G光以外、B光以外の波長に対応する輝度分布を検出する。撮影距離計算手段は、検出された各輝度分布に基づいて撮像手段から被検体までの撮影距離を計算する。
【0017】
本発明に係る医療用観察システムは、所定の波長域の照明光を放射する光源を更に有する構成としてもよい。かかる場合、回転フィルタは、例えば光源と導光路の入射端との間に配置されている。
【0018】
ここで、輝度分布検出手段は、撮像手段により撮像された一フレームを複数の領域に分割し、該分割された各分割領域に対応する輝度値をサンプリングし、該サンプリングされた輝度値のなかからピーク値を検出する構成としてもよい。撮影距離計算手段は、該ピーク値と、所定の分割領域に対応する輝度値との比を計算し、該計算された比に基づいて撮影距離を計算する構成としてもよい。
【0019】
上記所定の分割領域は、例えばその領域中心が、ピーク値に対応する分割領域の中心と、撮影範囲の中心を通る仮想的な直線上であって、該撮影範囲の中心を挟んで該ピーク値に対応する該分割領域と反対側の該撮影範囲周辺に位置する領域としてもよい。
【0020】
ここで、撮影距離計算手段は、所定の関数を保持しており、計算された輝度比を用いて所定の関数を計算して撮影距離を求める構成としてもよい。
【0021】
別の形態において、撮影距離計算手段は、輝度比と撮影距離とを対応付けた変換テーブルを有しており、計算された輝度比を用いて変換テーブルを参照して撮影距離を求める構成としてもよい。
【0022】
本発明に係る医療用観察システムは、撮像手段により撮像される画像の輝度を設定する輝度設定手段を更に有する構成としてもよい。かかる場合、撮影距離計算手段は、設定される輝度毎に対応した所定の関数又は変換テーブルを保持しており、計算された輝度比を用いて所定の関数又は変換テーブルを参照して撮影距離を求める。
【0023】
本発明に係る医療用観察システムは、撮影距離計算手段により計算された撮影距離を表現する表示情報を生成する表示情報生成手段と、該生成された表示情報を所定の表示装置に出力する表示情報出力手段とを更に有する構成としてもよい。
【0024】
本発明に係る医療用観察システムは、撮影距離計算手段により計算された撮影距離と、撮像手段が有する対物光学系の焦点距離に基づいて、該撮像手段に撮像されている被検体のサイズを計算するサイズ計算手段と、該計算されたサイズを表現する情報を所定の表示装置に出力するサイズ情報出力手段とを更に有する構成としてもよい。
【発明の効果】
【0025】
本発明の医療用観察システムによれば、例えば測距用の複雑な駆動機能や測定光用の専用の光路等を別途設けることなく、既存の構成要素である導光路による配光を利用して撮影距離を測定することができる。そのため、測距機能の実装に伴う装置の大型化や製造コストの増加が好適に抑えられる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施例1の医療用観察システムの外観図である。
【図2】本発明の実施例1の医療用観察システムの構成を模式的に示すブロック図である。
【図3】本発明の実施例1のプロセッサに内蔵された回転フィルタの構成を模式的に示した図である。
【図4】本発明の実施例1の電子スコープの挿入先端部の正面図である。
【図5】透過期間中の撮影範囲と照明光量分布との関係を視覚的に理解させるための補助的な説明図である。
【図6】遮蔽期間中の撮影範囲と照明光量分布との関係を視覚的に理解させるための補助的な説明図である。
【図7】本発明の実施例1においてプロセッサの距離算出部が実行する距離算出処理を示すフローチャート図である。
【図8】一方の配光窓から放射された照明光だけで照明された被検体のG成分(又はB成分)の輝度分布と撮影距離との関係を説明するための図である。
【図9】一方の配光窓から放射された照明光だけで照明された被検体のG成分(又はB成分)の輝度分布と撮影距離との関係を説明するための図である。
【図10】一方の配光窓から放射された照明光だけで照明された被検体のG成分(又はB成分)の輝度分布と撮影距離との関係を説明するための図である。
【図11】図8〜図10の各図(a)の直線L上のG成分(又はB成分)の輝度分布を示した輝度分布図である。
【図12】本発明の実施例2のプロセッサに内蔵された回転フィルタの構成を模式的に示した図である。
【図13】本発明の実施例3の医療用観察システムの構成を模式的に示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、添付された各図面を参照しつつ、本発明の実施形態の医療用観察システムについて説明する。なお、電子スコープには、一般に、鉗子チャンネルや送気送水ノズル等が備えられているが、本明細書又は各図面においては、本発明の特徴に直接的には関係しないこの種の構成要素は、その説明又は図示を便宜上省略している。
【0028】
図1は、本発明の実施例1の医療用観察システム1の外観図である。図1に示されるように、医療用観察システム1は、患者の体腔内を撮像する電子スコープ100を有している。電子スコープ100は、可撓管によって外装された挿入可撓部11を有している。挿入可撓部11の先端には、硬質性を有する樹脂製筐体によって外装された挿入先端部12が連結されている。挿入可撓部11と挿入先端部12との連結箇所は、挿入可撓部11の基端に連結された手元操作部13からの遠隔操作によって屈曲自在に構成されている。挿入先端部12の方向が上記遠隔操作による屈曲動作に応じて変わることにより、電子スコープ100による撮影領域が移動する。
【0029】
図1に示されるように、医療用観察システム1は、プロセッサ200を有している。プロセッサ200は、電子スコープ100からの信号を処理する信号処理装置と、自然光の届かない体腔内を電子スコープ100を介して照明する光源装置とを一体に備えた装置である。別の実施の形態では、信号処理装置と光源装置を別体で構成してもよい。
【0030】
プロセッサ200には、電子スコープ100の基端に設けられたコネクタ10に対応するコネクタ部20が設けられている。コネクタ部20は、コネクタ部10に対応する連結構造を有し、電子スコープ100とプロセッサ200とを電気的、光学的に接続するように構成されている。
【0031】
図2は、本実施例1の医療用観察システム1の構成を模式的に示すブロック図である。図2に示されるように、医療用観察システム1は、所定のケーブルを介してプロセッサ200に接続されたモニタ300を有している。なお、図1においては、図面を簡略化するため、本発明に係る特徴的構成を有さないモニタ300を図示省略している。
【0032】
図2に示されるように、プロセッサ200は、システムコントローラ202、タイミングコントローラ204を有している。システムコントローラ202は、医療用観察システム1を構成する各要素を制御する。タイミングコントローラ204は、信号の処理タイミングを調整するクロックパルスを医療用観察システム1内の各種回路に出力する。
【0033】
プロセッサ200の電源が投入されたとき、ランプ電源206からランプ208に電源が供給されてランプ208が点灯して、白色光を放射する。ランプ208には、キセノンランプ、ハロゲンランプ、水銀ランプ、メタルハライドランプなどの高輝度ランプが適している。ランプ208から放射された照明光は、集光レンズ209によって集光されてLCB(light carrying bundle)101の入射端に入射される。なお、画像生成に使用される波長の光は、R光、G光、B光であるため、本明細書においては白色光とRGB光とを等価的に扱う。
【0034】
LCB(以下、「バンドル」と省略して記す。)101は、入射端から射出端に向かう途中、二本のバンドル101A、101Bに分岐されている。照明光は、バンドル101の分岐点において光量が分けられて、バンドル101A又は101Bを伝播される。バンドル101Aを伝播された照明光は、電子スコープ100の先端に配されたバンドル101Aの射出端から射出される。バンドル101Aの射出端から射出された照明光は、配光レンズ104A、カバーガラス106Aを介して被検体を照明する。
【0035】
バンドル101Bを伝播された照明光は、プロセッサ200の内部に配されたバンドル101Bの射出端から射出される。バンドル101Bの射出端から射出された照明光は、集光レンズ210により集光されつつ絞り212を介して適正な光量に制限されて、回転フィルタ215を介して電子スコープ100が有するバンドル102の入射端に入射される。
【0036】
絞り212には、図示省略されたアームやギヤなどの伝達機構を介してモータ214が機械的に連結されている。モータ214は例えばDCモータであり、ドライバ216のドライブ制御下で駆動する。絞り212は、モニタ300に表示される映像を適正な明るさにするため、モータ214によって動作されて開度が変化して、ランプ208から放射された照明光の光量を開度に応じて制限する。適正とされる映像の明るさの基準は、術者によるフロントパネル218の輝度調節操作に応じて変更される。なお、ドライバ216を制御して輝度調整を行う調光回路は周知の回路であり、本明細書においては省略することとする。
【0037】
図3は、本実施例1の回転フィルタ215の構成を模式的に示した図である。図3に示されるように、回転フィルタ215には、扇形の開口215AとR光透過フィルタ215Rが形成されている。回転フィルタ215には、図示省略されたギア等の伝達機構を介してモータ217が機械的に連結されている。モータ217は例えばDCモータであり、ドライバ216のドライブ制御下で駆動して、回転フィルタ215を点Cを中心に矢印A方向に回転させる。
【0038】
開口215AとR光透過フィルタ215Rは、回転フィルタ215の回転に伴い、照明光路中に択一的に挿入される。開口215Aは、ランプ208から放射された全ての波長の照明光を、R光透過フィルタ215Rは、当該照明光のうちR光のみを、それぞれ透過させる。そのため、バンドル102の入射端には、全ての波長の又はR光の照明光が回転フィルタ215の回転に応じて周期的に入射する。以下、説明の便宜上、回転フィルタ215が全ての波長の照明光を透過させる期間を「透過期間」と記し、R光の照明光のみを透過させる期間を「遮蔽期間」と記す。なお、回転フィルタ215の回転速度、タイミングは、撮影画像のフレームレートに対応する速度、タイミングに設定されている。具体的には、透過期間は、連続した二フレームの撮影タイミングに同期し、遮蔽期間は、当該撮影タイミングの間の一フレームの撮影タイミングに同期する。
【0039】
バンドル102の入射端に入射された照明光は、バンドル102の内部を全反射を繰り返すことによって伝播される。バンドル102を伝播された照明光は、電子スコープ100の先端に配されたバンドル102の射出端から射出される。バンドル102の射出端から射出された照明光は、配光レンズ104B、カバーガラス106Bを介して被検体を照明する。
【0040】
図4は、本実施例1の挿入先端部12の正面図である。図4に示されるように、各バンドル101A、102に対応する二つの配光窓(図4中カバーガラス106A、106B)は、対物レンズ110及び固体撮像素子112を有する撮像系(図4では、外観に現れるカバーガラス108が示されている)の光軸を通る中心線Yを挟んで対称の位置に配置されている。説明を加えると、二つのカバーガラス106A、106Bは、挿入先端部12を正面から臨んだときの撮像系までの距離が等しくなるように配置されている。また、電子スコープ100が有する各種光学部品は、透過期間中、各カバーガラス106A、106Bを介して放射される照明光量が等しくなるように設計されている。そのため、被検体は、透過期間中、挿入先端部12と被検体とが所定距離以上離れていることを条件として(別の表現によれば、挿入先端部12が被検体に過度に接近しない限り)、撮影範囲内においてほぼ均一な光量分布の白色光で照明される。遮蔽期間中は、R光透過フィルタ215RによるR光以外の照明光(画像生成に使用されるR光以外の波長の光がG光、B光であるため、R光以外の照明光を便宜上「GB光」と記す。)の遮蔽(或いは減光であってもよい。)がバンドル102側の光路だけでなされている。そのため、被検体は、遮蔽期間中、撮影範囲内においてほぼ均一な光量分布のR光で照明されると同時に不均一な光量分布のGB光で照明される。なお、配光窓を複数配することによって配光ムラを無くす構成は、電子スコープの製品分野において一般的に知られた構成である。
【0041】
図5(a)〜図5(c)は、透過期間中の撮影範囲と照明光量分布との関係を視覚的に理解させるための補助的な説明図である。図6(a)〜図6(c)は、遮蔽期間中の撮影範囲と照明光量分布との関係を視覚的に理解させるための補助的な説明図である。各図中縦軸が照明光量を、横軸が撮影範囲を、それぞれ示している。何れも正規化されているため、単位はない。各図において撮影範囲は、便宜上一次元で表現されているが、実際には二次元である。図5(a)、図6(a)の符号RA、RBは、カバーガラス106A、106Bを介して放射されたR光の照明光量分布(破線)を、符号RLは、照明光量分布RAとRBとを合わせた撮影範囲全体のR光の照明光量分布(実線)を、それぞれ示している。図5(b)、図6(b)の符号GA、GBは、カバーガラス106A、106Bを介して放射されたG光の照明光量分布(破線)を、符号GLは、照明光量分布GAとGBとを合わせた撮影範囲全体のG光の照明光量分布(実線)を、それぞれ示している。図5(c)、図6(c)の符号BA、BBは、カバーガラス106A、106Bを介して放射されたB光の照明光量分布(破線)を、符号BLは、照明光量分布BAとBBとを合わせた撮影範囲全体のB光の照明光量分布(実線)を、それぞれ示している。図5(a)〜図5(c)に示されるように、被検体は、透過期間中ほぼ均一な光量分布のRGB光で照明される。図6(a)〜図6(c)に示されるように、被検体は、遮蔽期間中ほぼ均一な光量分布のR光で照明されると同時に不均一な光量分布のGB光で照明される。
【0042】
照明光によって照明された被検体からの反射光は、カバーガラス108を介して対物レンズ110に入射され、対物レンズ110のパワーにより固体撮像素子112の受光面上で光学像を結ぶ。
【0043】
固体撮像素子112は、例えばベイヤ型画素配置を有する単板式カラーCCDであり、受光面上の各画素で結像した光学像を光量に応じた電荷として蓄積して、R、G、Bの各色に応じた画像信号に変換する。変換された画像信号は、プリアンプ114により増幅されてドライバ信号処理回路116に入力される。
【0044】
ドライバ信号処理回路116は、タイミングコントローラ204のクロックパルスに基づき、固体撮像素子112をプロセッサ200側で処理される映像のフレームレートに同期したタイミングで駆動制御する。メモリ118には、電子スコープ100固有の情報(例えば固体撮像素子112の画素数や感度、対応可能なレート、或いは型番など)が格納されている。ドライバ信号処理回路116は、メモリ118にアクセスして電子スコープ100固有の情報を読み出す。
【0045】
ドライバ信号処理回路116は、読み出された固有情報をシステムコントローラ202に、画像信号を信号処理回路220に、それぞれ出力する。ドライバ信号処理回路116とシステムコントローラ202又は信号処理回路220との間には、フォトカップラなどを使用した絶縁回路(不図示)が配置されている。すなわち、電子スコープ100とプロセッサ200は、電気的に絶縁されている。
【0046】
システムコントローラ202は、ドライバ信号処理回路116からの上記固有情報に基づいて各種演算を行い、制御信号を生成する。システムコントローラ202は、生成された制御信号を用いて、プロセッサ200に接続中の電子スコープに適した処理がされるようにプロセッサ200内の各種回路の動作やタイミングを制御する。また、システムコントローラ202は、電子スコープの型番と、該型番の電子スコープに適した制御情報とを対応付けたテーブルを有した構成としてもよい。かかる場合、システムコントローラ202は、対応テーブルの制御情報を参照して、プロセッサ200に接続中の電子スコープに適した処理がされるようにプロセッサ200内の各種回路の動作やタイミングを制御する。
【0047】
信号処理回路220は、ドライバ信号処理回路116からの画像信号に、クランプ、ニー、γ補正、補間処理、AGC(Auto Gain Control)等の所定の信号処理を施してA/D変換し、フレーム単位のバッファリングを行う。信号処理回路220のバッファには、透過期間中、ほぼ均一な光量分布のRGB光で照明された被検体の画像信号がバッファリングされる。信号処理回路220は、バッファリングされたフレーム単位の画像信号をタイミングコントローラ204によるタイミングで掃き出して、NTSC(National Television System Committee)やPAL(Phase Alternating Line)等の所定の規格に準拠した映像信号に変換して、モニタ300に順次出力する。これにより、被検体のカラー画像がモニタ300に表示される。
【0048】
一方、遮蔽期間中は、ほぼ均一な光量分布のR光と不均一な光量分布のGB光で照明された被検体の画像信号が信号処理回路220のバッファにバッファリングされる。信号処理回路220が有する距離算出部250は、当該画像信号をバッファリングする毎に、GB光に対応する画像信号を用いて、図7に示される距離算出処理を実行する。なお、以降の本明細書中の説明並びに図面において、処理ステップは「S」と省略して記す。
【0049】
図7の距離算出処理を詳細説明に先立ち、図8〜図10を用いて、照明光量が不均一なG(又はB)の照明光によって照明された被検体のG成分(又はB成分)の輝度分布を説明する。
【0050】
図8〜図10の各図の(a)は、被検体のG成分(又はB成分)の輝度分布と撮影範囲との関係を模式的に示す図である。図8〜図10の各図(a)において、被検体のG成分(又はB成分)の輝度分布は、等高線モデルを用いて示されている。曲率半径の小さい等高線ほどG(又はB)の照明光の中心に近く、G成分(又はB成分)に関して被検体が明るく照明されていることを示している。なお、図8〜図10の各図(a)中、符号Oは、撮影範囲の中心を、符号Lは、撮影範囲中最も輝度の高い点及び中心Oを通る直線を、それぞれ示している。
【0051】
図8〜図10の各図の(b)は、各図の(a)に対応する図であって、電子スコープ100の挿入先端部12から被検体400までの撮影距離Dを模式的に示す図である。なお、各図の(b)においては、図面を簡素化するため、電子スコープ100の構成要素のうち各バンドル101A、102、対物レンズ110、固体撮像素子112以外の構成要素の図示を省略している。
【0052】
また、図8〜図10の各図の(b)においては、対物レンズ110の主点から被検体400までの距離を便宜上撮影距離Dとして示したに過ぎない。ここで、電子スコープ100の各種要素(例えば対物レンズ110の主点、挿入先端部12の前面、固体撮像素子112の受光面等)の相対位置は既知である。よって、撮影距離Dは、例えば挿入先端部12の前面から被検体400までの距離と定義してもよく、或いは固体撮像素子112の受光面から被検体400までの距離と定義してもよい。
【0053】
図11は、図8〜図10の各図の(a)の直線L上のG成分(又はB成分)の輝度分布を示した輝度分布図である。図11中縦軸が輝度値を、横軸が直線L上の座標を、それぞれ示している。図11中、符号BD1は、撮影距離Dが図8の場合のG成分(又はB成分)の輝度分布を、符号BD2は、撮影距離Dが図9場合のG成分(又はB成分)の輝度分布を、符号BD3は、撮影距離Dが図10の場合のG成分(又はB成分)の輝度分布を、それぞれ示している。
【0054】
図8〜図10を参照するところ、挿入先端部12と被検体400とが接近するほどG成分(又はB成分)の輝度分布のピーク位置が撮影範囲の中心Oから離れていくことが分かる。本実施例1の距離算出処理においては、このような輝度分布の特性を利用して撮影距離Dを測定する。
【0055】
距離算出部250は、G、Bの各波長の光に対応する画像信号それぞれを用いて、図7に示されるS101〜S106の処理を行う。図9(a)及び図11を用いて図7の距離算出処理を具体的に説明すると、距離算出部250は、バッファリングされた一フレーム中の各画像領域を細分化する。距離算出部250は、バッファリングされた画像信号から、細分化された各分割画像領域に対応するG、Bの各輝度値をサンプリングする(S101)。具体的には、距離算出部250は、G、Bの各輝度値をサンプリングするため、各分割画像領域に属する画素のG、Bの各輝度信号を用いてヒストグラム処理を行う。次いで、生成されたヒストグラムデータを用いて、分割画像領域毎にG、Bの各輝度の平均値を算出してサンプリングデータを得る。
【0056】
距離算出部250は、サンプリングデータに基づいてピークとなるG、Bの各輝度値、及び該各輝度値に対応する分割画像領域R1を計算する(S102)。距離算出部250は、G、Bの各々に対して、計算された分割画像領域R1の中心と撮影範囲の中心Oを通る仮想的な直線Lを定義する(S103)。距離算出部250は、定義されたG、Bに対応する各直線L上の分割画像領域のなかから所定条件を満たす分割画像領域R2を特定する(S104)。分割画像領域R2は、例えばその領域中心が直線L上であって、中心Oを挟んで分割画像領域R1と反対側の撮影範囲周辺に位置する(撮影範囲の最周辺から所定画素分離れた位置の)分割画像領域として定義される。距離算出部250は、サンプリングデータのなかから分割画像領域R2に対応するG、Bの各輝度値を取得する(S105)。距離算出部250は、G、Bの各々に対して、分割画像領域R1とR2の輝度値の比(以下、「輝度比」と記す。)を計算する(S106)。
【0057】
ここで、前述したように、G成分、B成分の輝度分布のピーク位置は、撮影距離Dに応じて撮影範囲の中心Oとの距離が変化する。してみると、撮影距離DとG、Bの各輝度比との間には、所定の関係が成立するといえる。当該関係は、輝度比をBRと定義した場合、所定の関数D=f(BR)によって表現される。距離算出部250は、G、Bの各々に対応した所定の関数D=f(BR)を保持している。距離算出部250は、S106の処理において計算されたG、Bの各輝度比を用いて所定の関数D=f(BR)を計算する。距離算出部250は、G、Bに対応する各関数の計算結果を平均化し、平均化されたその値を撮影距離Dとする(S107)。なお、別の実施形態において距離算出部250は、輝度比と撮影距離Dとを対応付けた変換テーブルを有したものとしてもよい。かかる場合、距離算出部250は、所定の関数D=f(BR)に代替して、変換テーブルを用いてS107の処理を行う。
【0058】
撮影距離Dと輝度比との関係は、フロントパネル218の輝度調節操作で設定された目標となる明るさに依存して変わる。そのため、距離算出部250は、設定輝度(或いは絞り212の開度)毎に対応する関数又は変換テーブルを保持した構成としてもよい。かかる場合、距離算出部250は、設定輝度(或いは絞り212の開度)に応じた関数又は変換テーブルを参照して、輝度調節操作時においても撮影距離Dを求めることができる。また、かかる構成によれば、各設定輝度(或いは絞り212の開度)に適した関数又は変換テーブルを用いて撮影距離Dが計算されるため、撮影距離Dの精度が向上する効果が得られる。
【0059】
輝度比は、被検体が色相の変化が大きいものである場合に、その影響を比較的受け難いパラメータである。よって、かかる場合には測定距離誤差が小さく好適である。
【0060】
距離算出部250は次いで、計算された撮影距離Dを表す情報(例えばキャラクタやスケール、グリッド等)の信号を生成する(S108)。距離算出部250は、生成されたキャラクタ情報等の信号を、信号処理回路220から出力される画像信号に加算する(S109)。これにより、撮影距離Dを示すキャラクタ情報等が、被検体のカラー画像と共にモニタ300に表示される。
【0061】
本実施例1の医療用観察システム1によれば、測距用の複雑な駆動機能や測定光用の専用の光路を別途設けることなく、既存のバンドルを利用して距離算出処理を行うことができる。距離算出処理を行うために挿入先端部12に追加される部品は特に無く、バンドル101を分岐させて一方(バンドル101B)の射出端を回転フィルタ215の手前に配するだけでよい。そのため、挿入先端部12の大型化や製造コストの増加が最小限に抑えられている。なお、本実施例1に係る構成において、遮蔽期間中に遮蔽される照明光は、GB光に限らず、他の波長の光であってもよい。
【0062】
図12は、本実施例2の回転フィルタ215zの構成を模式的に示した図である。本実施例2の医療用観察システム1は、回転フィルタの構成と信号処理回路220の処理内容が本実施例1の医療用観察システム1と相違し、その他は同じである。本実施例2以降の各実施例の医療用観察システム1において、本実施例1の医療用観察システム1と同一の又は同様の構成には、同一の又は同様の符号を付して説明を省略する。
【0063】
図12に示されるように、本実施例2の回転フィルタ215zは、R光透過フィルタ215R、G光透過フィルタ215G、B光透過フィルタ215Bが形成されており、面順次方式に対応した一般的なプロセッサに搭載されている回転フィルタと同じ構成を有している。回転フィルタ215zは、一フレームに対応する周期で一回転する。そのため、バンドル102の入射端には、一周期の間に、R光、G光、B光の照明光が順に入射する。以下、説明の便宜上、回転フィルタ215zがR光の照明光のみを透過させる期間を「R期間」と記し、G光の照明光のみを透過させる期間を「G期間」と記し、B光の照明光のみを透過させる期間を「B期間」と記す。
【0064】
被検体は、R期間中、撮影範囲内においてほぼ均一な光量分布のR光で照明されると同時に不均一な光量分布のGB光で照明される。G期間中は、撮影範囲内においてほぼ均一な光量分布のG光で照明されると同時に不均一な光量分布のRB光で照明される。B期間中は、撮影範囲内においてほぼ均一な光量分布のB光で照明されると同時に不均一な光量分布のRG光で照明される。
【0065】
R期間に得られたR光に対応する画像信号、G期間に得られたG光に対応する画像信号、B期間に得られたB光に対応する画像信号はそれぞれ、信号処理回路220が有するR、G、B用の各フレームメモリにバッファリングされる。信号処理回路220は、バッファリングされた各フレームメモリの画像信号をタイミングコントローラ204によるタイミングで掃き出して映像信号に変換し、モニタ300に順次出力する。これにより、被検体のカラー画像がモニタ300に表示される。
【0066】
一方、R期間に得られたG光、B光に対応する画像信号は、距離算出部250が有するバッファにバッファリングされる。距離算出部250は、バッファリングされたGB光に対応する画像信号を用いて、図7に示される距離算出処理を実行する。距離算出部250は、次いで、G期間に得られたR光、B光に対応する画像信号を用いて距離算出処理を実行する。更に、B期間に得られたR光、G光に対応する画像信号を用いて距離算出処理を実行する。すなわち、本実施例2によれば、撮影距離Dが一フレーム期間中に複数回測定される。例えば撮影距離Dの精度を向上させるため、これらの測定結果の平均値をモニタ300に出力し表示させることができる。また、カラー画像の品質(例えば画質、フレームレート等)に実質的な影響を及ぼすことなく、撮影距離Dをリアルタイムで測定することができる。
【0067】
図13は、本実施例3の医療用観察システム1yの構成を模式的に示すブロック図である。図13に示されるように、医療用観察システム1yは、電子スコープ100y、プロセッサ200y、モニタ300、バンドル分岐装置500を有している。図13に示されるように、電子スコープ100yとプロセッサ200yは、バンドル分岐装置500を介して光学的に接続されている。
【0068】
バンドル分岐装置500は、バンドル101yを有している。バンドル101yの入射端は、バンドル分岐装置500をプロセッサ200yに接続させたとき、集光レンズ210を介してランプ208に結合される。バンドル101yは、入射端から射出端に向かう途中、二本のバンドル101Ay、101Byに分岐されている。照明光は、バンドル101yの分岐点において光量が分けられて、バンドル101Ay又は101Byを伝播される。バンドル101Ayを伝播された照明光は、電子スコープ100の先端に配されたバンドル101Ayの射出端から射出される。バンドル101Ayの射出端から射出された照明光は、配光レンズ104A、カバーガラス106Aを介して被検体を照明する。
【0069】
バンドル101Byを伝播された照明光は、バンドル分岐装置500の内部に配されたバンドル101Byの射出端から射出される。バンドル101Byの射出端から射出された照明光は、集光レンズ512により集光されつつ回転フィルタ215を介して、バンドル102yの入射端に入射される。なお、モータ217による回転フィルタ215の回転は、ドライバ216によって制御されている。ここでは、図面を簡素化するため、ドライバ216とモータ217との結線を省略している。
【0070】
バンドル102yを伝播された照明光は、電子スコープ100の先端に配されたバンドル102yの射出端から射出される。バンドル102yの射出端から射出された照明光は、配光レンズ104B、カバーガラス106Bを介して被検体を照明する。カバーガラス106Bからは、回転フィルタ215によって異なる波長域にフィルタリングされた照明光が順次放射される。本実施例3に係る構成においても、輝度分布ムラを意図的に生成し、当該ムラを利用した距離算出処理を行うことができる。
【0071】
本実施例3において距離算出部250は、例えばFPGA(Field Programmable Gate Array)によって提供されている。なお、距離算出部250は、バンドル分岐装置500に実装されていてもよい。
【0072】
以上が本発明の実施形態の説明である。本発明は、上記の構成に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲において様々な変形が可能である。例えばバンドルは、三本以上に分岐された構成であってもよい。この場合、電子スコープ100は、被検体を三以上の配光窓からの照明光によって均一に又は不均一に照明する。
【0073】
撮影された被検体の大きさは、撮影距離Dと対物レンズ110の特定波長(照明光量分布が不均一な波長)に対する焦点距離を用いて計算することができる。かかる計算機能を距離算出部250に付加してモニタ300上に表示させるようにしてもよい。
【0074】
別の実施形態の医療用観察システムは、回転フィルタに代えて波長可変液晶フィルタを備えた構成であってもよい。
【符号の説明】
【0075】
1 医療用観察システム
100 電子スコープ
101A、102 バンドル
112 固体撮像素子
200 プロセッサ
202 システムコントローラ
220 信号処理回路
250 距離算出部
300 モニタ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の波長域の照明光を導光する複数の導光路であって、ある波長の照明光が全ての前記導光路で導光されたとき、該波長の照明光によって被検体が均一に照明されるように配された複数の導光路と、
少なくとも一つの前記導光路中に配置され、前記所定の波長域のうち特定波長の照明光を所定期間遮蔽する遮蔽手段と、
前記所定期間中に照明された被検体の前記特定波長以外の波長に対応する光像を撮像する撮像手段と、
前記撮像された光像に基づき前記被検体の画像を生成する画像生成手段と、
前記所定期間中に照明された被検体の前記特定波長に対応する輝度分布を検出する輝度分布検出手段と、
前記検出された輝度分布に基づいて前記撮像手段から前記被検体までの撮影距離を計算する撮影距離計算手段と、
を有することを特徴とする医療用観察システム。
【請求項2】
前記遮蔽手段は、
遮蔽帯域が異なる複数の開口フィルタが回転方向に設けられた回転フィルタと、
前記複数の開口フィルタが前記撮像手段による撮像に同期したタイミングで前記導光路中に択一的に挿入されるように前記回転フィルタを回転制御する回転制御手段と、
を有することを特徴とする、請求項1に記載の医療用観察システム。
【請求項3】
前記複数の開口フィルタは、前記回転方向に三つの開口フィルタであって、
R光以外を遮蔽する第一の開口フィルタ、
G光以外を遮蔽する第二の開口フィルタ、
B光以外を遮蔽する第三の開口フィルタ、
を有し、
前記回転制御手段は、前記撮像手段によって一フレームが撮像される期間に同期させて前記回転フィルタを一回転させ、
前記撮像手段は、前記第一、前記第二、前記第三の開口フィルタが前記導光路に挿入されている第一、第二、第三の期間中に照明された被検体の前記R光、前記G光、前記B光に対応する各光像を順次撮像し、
前記画像生成手段は、前記撮像された各光像に基づき前記被検体のカラー画像を生成し、
前記輝度分布検出手段は、前記第一、前記第二、前記第三の期間中に照明された被検体の前記R光以外、前記G光以外、前記B光以外の波長に対応する輝度分布を検出し、
前記撮影距離計算手段は、前記検出された各輝度分布に基づいて前記撮像手段から前記被検体までの撮影距離を計算することを特徴とする、請求項2に記載の医療用観察システム。
【請求項4】
前記所定の波長域の照明光を放射する光源を更に有し、
前記回転フィルタは、前記光源と前記導光路の入射端との間に配置されていることを特徴とする、請求項2又は請求項3の何れか一項に記載の医療用観察システム。
【請求項5】
前記輝度分布検出手段は、
前記撮像手段により撮像された一フレームを複数の領域に分割し、
前記分割された各分割領域に対応する輝度値をサンプリングし、
前記サンプリングされた輝度値のなかからピーク値を検出し、
前記撮影距離計算手段は、
前記ピーク値と、所定の前記分割領域に対応する輝度値との比を計算し、
前記計算された比に基づいて前記撮影距離を計算することを特徴とする、請求項1から請求項4の何れか一項に記載の医療用観察システム。
【請求項6】
前記所定の分割領域は、その領域中心が、前記ピーク値に対応する前記分割領域の中心と、前記撮影範囲の中心を通る仮想的な直線上であって、該撮影範囲の中心を挟んで該ピーク値に対応する該分割領域と反対側の該撮影範囲周辺に位置する分割領域であることを特徴とする請求項5に記載の医療用観察システム。
【請求項7】
前記撮影距離計算手段は、
所定の関数を保持し、
前記比を用いて前記所定の関数を計算し、前記撮影距離を求めることを特徴とする、請求項5又は請求項6の何れか一項に記載の医療用観察システム。
【請求項8】
前記撮像手段により撮像される画像の輝度を設定する輝度設定手段を更に有し、
前記撮影距離計算手段は、前記設定される輝度毎に対応した前記所定の関数を保持していることを特徴とする、請求項7に記載の医療用観察システム。
【請求項9】
前記撮影距離計算手段は、
前記比と前記撮影距離とを対応付けた変換テーブルを有し、
前記比を用いて前記変換テーブルを参照し、前記撮影距離を求めることを特徴とする、請求項5又は請求項6の何れか一項に記載の医療用観察システム。
【請求項10】
前記撮像手段により撮像される画像の輝度を設定する輝度設定手段を更に有し、
前記撮影距離計算手段は、前記設定される輝度毎に対応した前記変換テーブルを有していることを特徴とする、請求項9に記載の医療用観察システム。
【請求項11】
前記撮影距離計算手段により計算された前記撮影距離を表現する表示情報を生成する表示情報生成手段と、
前記生成された表示情報を所定の表示装置に出力する表示情報出力手段と、
を更に有することを特徴とする、請求項1から請求項10の何れか一項に記載の医療用観察システム。
【請求項12】
前記撮影距離計算手段により計算された前記撮影距離と、前記撮像手段が有する対物光学系の焦点距離に基づいて、該撮像手段に撮像されている前記被検体のサイズを計算するサイズ計算手段と、
前記計算されたサイズを表現する情報を所定の表示装置に出力するサイズ情報出力手段と、
を更に有することを特徴とする、請求項1から請求項11の何れか一項に記載の医療用観察システム。
【請求項1】
所定の波長域の照明光を導光する複数の導光路であって、ある波長の照明光が全ての前記導光路で導光されたとき、該波長の照明光によって被検体が均一に照明されるように配された複数の導光路と、
少なくとも一つの前記導光路中に配置され、前記所定の波長域のうち特定波長の照明光を所定期間遮蔽する遮蔽手段と、
前記所定期間中に照明された被検体の前記特定波長以外の波長に対応する光像を撮像する撮像手段と、
前記撮像された光像に基づき前記被検体の画像を生成する画像生成手段と、
前記所定期間中に照明された被検体の前記特定波長に対応する輝度分布を検出する輝度分布検出手段と、
前記検出された輝度分布に基づいて前記撮像手段から前記被検体までの撮影距離を計算する撮影距離計算手段と、
を有することを特徴とする医療用観察システム。
【請求項2】
前記遮蔽手段は、
遮蔽帯域が異なる複数の開口フィルタが回転方向に設けられた回転フィルタと、
前記複数の開口フィルタが前記撮像手段による撮像に同期したタイミングで前記導光路中に択一的に挿入されるように前記回転フィルタを回転制御する回転制御手段と、
を有することを特徴とする、請求項1に記載の医療用観察システム。
【請求項3】
前記複数の開口フィルタは、前記回転方向に三つの開口フィルタであって、
R光以外を遮蔽する第一の開口フィルタ、
G光以外を遮蔽する第二の開口フィルタ、
B光以外を遮蔽する第三の開口フィルタ、
を有し、
前記回転制御手段は、前記撮像手段によって一フレームが撮像される期間に同期させて前記回転フィルタを一回転させ、
前記撮像手段は、前記第一、前記第二、前記第三の開口フィルタが前記導光路に挿入されている第一、第二、第三の期間中に照明された被検体の前記R光、前記G光、前記B光に対応する各光像を順次撮像し、
前記画像生成手段は、前記撮像された各光像に基づき前記被検体のカラー画像を生成し、
前記輝度分布検出手段は、前記第一、前記第二、前記第三の期間中に照明された被検体の前記R光以外、前記G光以外、前記B光以外の波長に対応する輝度分布を検出し、
前記撮影距離計算手段は、前記検出された各輝度分布に基づいて前記撮像手段から前記被検体までの撮影距離を計算することを特徴とする、請求項2に記載の医療用観察システム。
【請求項4】
前記所定の波長域の照明光を放射する光源を更に有し、
前記回転フィルタは、前記光源と前記導光路の入射端との間に配置されていることを特徴とする、請求項2又は請求項3の何れか一項に記載の医療用観察システム。
【請求項5】
前記輝度分布検出手段は、
前記撮像手段により撮像された一フレームを複数の領域に分割し、
前記分割された各分割領域に対応する輝度値をサンプリングし、
前記サンプリングされた輝度値のなかからピーク値を検出し、
前記撮影距離計算手段は、
前記ピーク値と、所定の前記分割領域に対応する輝度値との比を計算し、
前記計算された比に基づいて前記撮影距離を計算することを特徴とする、請求項1から請求項4の何れか一項に記載の医療用観察システム。
【請求項6】
前記所定の分割領域は、その領域中心が、前記ピーク値に対応する前記分割領域の中心と、前記撮影範囲の中心を通る仮想的な直線上であって、該撮影範囲の中心を挟んで該ピーク値に対応する該分割領域と反対側の該撮影範囲周辺に位置する分割領域であることを特徴とする請求項5に記載の医療用観察システム。
【請求項7】
前記撮影距離計算手段は、
所定の関数を保持し、
前記比を用いて前記所定の関数を計算し、前記撮影距離を求めることを特徴とする、請求項5又は請求項6の何れか一項に記載の医療用観察システム。
【請求項8】
前記撮像手段により撮像される画像の輝度を設定する輝度設定手段を更に有し、
前記撮影距離計算手段は、前記設定される輝度毎に対応した前記所定の関数を保持していることを特徴とする、請求項7に記載の医療用観察システム。
【請求項9】
前記撮影距離計算手段は、
前記比と前記撮影距離とを対応付けた変換テーブルを有し、
前記比を用いて前記変換テーブルを参照し、前記撮影距離を求めることを特徴とする、請求項5又は請求項6の何れか一項に記載の医療用観察システム。
【請求項10】
前記撮像手段により撮像される画像の輝度を設定する輝度設定手段を更に有し、
前記撮影距離計算手段は、前記設定される輝度毎に対応した前記変換テーブルを有していることを特徴とする、請求項9に記載の医療用観察システム。
【請求項11】
前記撮影距離計算手段により計算された前記撮影距離を表現する表示情報を生成する表示情報生成手段と、
前記生成された表示情報を所定の表示装置に出力する表示情報出力手段と、
を更に有することを特徴とする、請求項1から請求項10の何れか一項に記載の医療用観察システム。
【請求項12】
前記撮影距離計算手段により計算された前記撮影距離と、前記撮像手段が有する対物光学系の焦点距離に基づいて、該撮像手段に撮像されている前記被検体のサイズを計算するサイズ計算手段と、
前記計算されたサイズを表現する情報を所定の表示装置に出力するサイズ情報出力手段と、
を更に有することを特徴とする、請求項1から請求項11の何れか一項に記載の医療用観察システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
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【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2011−19693(P2011−19693A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−166705(P2009−166705)
【出願日】平成21年7月15日(2009.7.15)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年7月15日(2009.7.15)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【Fターム(参考)】
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