説明

半導体ウエハ処理方法および半導体ウエハ乾燥装置

【課題】 水洗および有機溶剤による洗浄の後の乾燥において、半導体ウエハを短時間で良好に処理可能な優れた半導体ウエハ処理方法および半導体ウエハ乾燥装置を提供すること。
【解決手段】 半導体ウエハの洗浄工程後に、半導体ウエハの複数の面へガスを吹き付ける乾燥工程を行う半導体ウエハ処理方法であって、乾燥工程は、半導体ウエハへガスを吹き付ける際に、複数方向からのガスが半導体ウエハの主面上において交わらないように、ガスの吹き付けを制御することとする。また、半導体ウエハの複数の面へガスを吹き付ける半導体ウエハ乾燥装置であって、半導体ウエハの一側面側からガスを噴射させる第1噴射パイプと、半導体ウエハの他の側面側からガスを噴射させる第2噴射パイプとを備え、第1噴射パイプおよび第2噴射パイプのうち少なくとも1つが移動しながら噴射可能であることとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばシリコンウエハ等の半導体ウエハの処理方法および半導体ウエハ乾燥装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、単結晶シリコン、多結晶シリコン等の結晶系太陽電池素子の基板として用いられる半導体シリコンウエハは、デバイスの製造工程において、フッ酸、硝酸、水酸化ナトリウム等の種々の水溶液に浸漬し、エッチング、酸化膜除去等の処理をした後、水洗、乾燥処理を行うことがある。
【0003】
上記乾燥処理が不十分であると、シリコンウエハに液滴が残り、この液滴がそのまま乾燥してウオーターマークと呼ばれるシミが残る。例えば太陽電池素子の製造工程において、シリコンウエハの表面上に、反射防止膜としてCVD(化学気相堆積)装置等を使用して窒化シリコン等の薄膜を製膜することがある。薄膜の製膜直前の水洗後の乾燥において、ウオーターマークが発生すると、この部分だけが反射防止膜の色が変化し色ムラとなる。このため、完成した太陽電池素子の外観を著しく損ねることがある。
【0004】
そこで、例えば太陽電池素子のデバイス工程においては、10〜70枚程度のシリコンウエハをカセットに収容し、洗浄後、濡れた状態でカセットごと回転式のリンサードライヤーにセットし、回転の遠心力等を利用して水滴を飛ばし乾燥させていた。
【0005】
このようなリンサードライヤーによる乾燥では、一度に乾燥できるカセットが2〜4個程度と少なく、また回転数の上昇と下降が有るため、上記のカセットのセットから乾燥まで時間がかかり処理効率が悪い。
【0006】
この対策として、本出願人は、カセットに入れた複数のシリコンウエハに対し、水蒸気をスプレーした後、高圧の窒素ガスまたは空気をスプレーノズルよりブローし、乾燥することを提案した(下記特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−54344号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、カセットに入れた複数のシリコンウエハに対し水蒸気をスプレーした後、高圧の窒素ガスまたは空気をブローする方法では、水蒸気とガスの2段階の処理が必要になる。このため、時間がかかるうえに、高温、高圧の水蒸気を発生させる設備が別途必要になり、設備が大掛かりになる。
【0009】
このような問題点に鑑み、本発明は水洗および有機溶剤による洗浄の後の乾燥において、半導体ウエハを短時間で良好に処理可能な優れた半導体ウエハ処理方法および半導体ウエハ乾燥装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の一形態に係る半導体ウエハ処理方法は、半導体ウエハの洗浄工程後に、前記半導体ウエハの複数の面へガスを吹き付ける乾燥工程を行う半導体ウエハ処理方法であって、前記乾燥工程は、前記半導体ウエハへガスを吹き付ける際に、複数方向からのガスが前記半導体ウエハの主面上において交わらないように、ガスの吹き付けを制御することを特徴とする。
【0011】
また、本発明の一形態に係る半導体ウエハ乾燥装置は、半導体ウエハの複数の面へガスを吹き付ける半導体ウエハ乾燥装置であって、前記半導体ウエハの一側面側からガスを噴射させる第1噴射パイプと、前記半導体ウエハの他の側面側からガスを噴射させる第2噴射パイプとを備え、前記第1噴射パイプおよび前記第2噴射パイプのうち少なくとも1つが移動しながら噴射可能であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一形態に係る半導体ウエハ処理方法および半導体ウエハ乾燥装置によれば、水蒸気等の使用が不要であるので、簡単で迅速に処理を行える。また、半導体ウエハに対して多方向からガスの吹き付けが可能なため、短時間での乾燥が可能である。さらに、半導体ウエハ上の液滴をほぼ完全に乾燥でき、ウオーターマーク等の発生を抑えることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】シリコンウエハの洗浄工程を説明する図であり、(a)〜(c)はそれぞれ半導体ウエハを収容したカセットを洗浄槽から引き上げる様子を示す一部断面図である。
【図2】本発明の一形態に係る半導体ウエハ乾燥装置を説明する斜視図である。
【図3】本発明の一形態に係る半導体ウエハ乾燥装置を構成する噴射パイプの一部分を示す斜視図である。
【図4】(a)〜(h)はそれぞれ本発明の一形態に係る半導体ウエハ処理方法の手順を説明する概略側面図である。
【図5】(a)、(b)はそれぞれ上側噴射パイプによりブローされたガスと左側面噴射パイプによりブローされたガスが半導体ウエハの主面上において交わる様子を模式的に示す正面図である。
【図6】カセットを傾斜させてブローする状態を説明する側面図である。
【図7】(a)は、本発明の一形態に係る半導体ウエハ乾燥装置の他の例を示す斜視図であり、(b)は模式的に示す側面図である。
【図8】底部吸引容器の詳細を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態について模式的に示した図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、各図面においてまたは図面同士の関係において、構成要素同士のサイズの大小関係は、必ずしも実際の様子を正確に反映しているわけではない。
【0015】
まず、シリコンウエハの洗浄工程について説明する。図1(a)〜(c)および図2において、カセット2に立てて収容された複数枚の半導体ウエハであるシリコンウエハ1は、例えば単結晶または多結晶のシリコンからなる。その厚さは例えば0.15〜0.4mm程度であり、その主面の平面形状は円形状、正方形状または矩形状である。また、その大きさは円形状の場合、直径100〜200mm程度、正方形状または矩形状の場合は一辺が100〜200mm程度である。
【0016】
カセット2は、シリコンウエハ1の複数を、間隔をあけて立てた状態で並べて収容できる。その材質は乾燥の前工程で酸やアルカリ等の処理を行う場合には、フッ素樹脂またはポリプロピレン等の耐酸性の樹脂である。また前工程で250℃以上の温度とする場合、有機溶剤を使用する場合などでは、ステンレス等の金属製とするとよい。カセット2は後記するように、その側面と底部にサイドバーが設けられており、シリコンウエハ1が乾燥しやすい構造としている。
【0017】
シリコンウエハ1の洗浄工程では、例えばシリコンウエハ1を収容したカセット2を水酸化ナトリウム水溶液またはフッ酸等に浸漬し、エッチング等の処理を行った後、純水等を満たした複数の洗浄槽20に、一定時間毎の浸漬と次の槽への移動を繰り返し洗浄していく。
【0018】
この処理において、シリコンウエハ1を収容したカセット2を洗浄槽20から引き上げる手順は以下の通りである。
【0019】
図1(a)に示すように、洗浄槽20内の純水等の洗浄液21にシリコンウエハ1を収容したカセット2を浸漬する。一定時間経過後、図1(b)に示すように、まず排液配管22に繋がる開閉弁を開け、洗浄液21を洗浄槽20内にカセット2を残したまま排液する。その後、図1(c)に示すように、シリコンウエハ1を収容したカセット2を液のない状態の洗浄槽20から作業者またはロボットアームにて引き上げる。
【0020】
このように、シリコンウエハ1を収容したカセット2を洗浄液のない状態の洗浄槽20から引き上げることにより、シリコンウエハ1が洗浄液の抵抗により割れることなく、カセット2を引き上げることが可能となる。特に、250μm以下の薄いシリコンウエハ1の洗浄に最適である。
【0021】
また、純水等の洗浄液を有効利用するため、予備タンクを用意して、排液した洗浄液を予備タンクに一旦溜め、カセットを引き上げた後、再度、同一または別の洗浄槽に予備タンクから戻して使用してもよい。
【0022】
また、洗浄槽20の底部にカセット2内のシリコンウエハ1の並び方向に傾斜させ、傾けた状態で洗浄液中に浸漬し、引き上げるときも同様に、カセット2の内のシリコンウエハ1の並び方向に傾けた状態で引き上げることが望ましい。これにより、カセット2内で薄いシリコンウエハ1の上部または下部が重なり、洗浄が不十分になるようなことが無くなる。
【0023】
また、カセット2に収容されたシリコンウエハ1を、乾燥前に70℃以上の水に浸漬することが望ましい。カセット2とシリコンウエハ1の温度を上昇させることにより、その後の洗浄液で濡れた状態でカセット2に収容された状態のシリコンウエハ1に、ガスを吹き付ける(以下、「ブローする」ともいう)ことによるシリコンウエハ1の乾燥時間を短縮できる。そして、シリコンウエハ1とカセット2に設けた後記するサイドバーとの接触部分の水も確実に乾燥でき、ウオーターマークおよび乾燥残りが発生しにくい良好な乾燥状態を確実なものとすることができる。
【0024】
さらに、上述の乾燥前または70℃以上の水に浸漬する前において、カセット2に入っているシリコンウエハ1が有機溶剤で濡れている場合、その有機溶剤はメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコールおよびアセトンの内、少なくとも一つを含むことが望ましい。すなわち、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコールおよびアセトンは水に溶けやすいため、これらを含むことにより70℃以上の水への浸漬等で容易に水と混ざり合い、洗浄の汚れおよび乾燥が不十分な部分が発生しにくい。また、ウオーターマークや乾燥残りが発生しにくい良好な乾燥状態を確実なものとすることができる。また、工程で使用する有機溶剤がトルエンやキシレン等の水と混ざりにくいものである場合には、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコールまたはアセトンに一度浸漬し、置換することが望ましい。
【0025】
このような洗浄後カセット2に収容されたシリコンウエハ1に対して乾燥工程を行う。この乾燥工程においては、シリコンウエハ1の複数の面へガスをブローする。図2に乾燥工程に使用する半導体ウエハ乾燥装置の一例を示す。
【0026】
図2に示すように、半導体ウエハ乾燥装置は、シリコンウエハ1の複数の面へガスを吹き付ける装置である。シリコンウエハ1の一側面側(図2の例では上部側面側)からガスを噴射させる第1噴射パイプである上側噴射パイプ5と、シリコンウエハ1の他の側面側(図2の例では左右いずれかの側面側)からガスを噴射させる第2噴射パイプである左側噴射パイプ6aまたは右側噴射パイプ6bとを少なくとも備えている。各噴射パイプは後記するブローノズル7を複数備えている。そして、これらの噴射パイプのうち少なくとも1つがこの装置に挿入されたカセット2の周囲を移動しながら噴射可能である。例えば、各噴射パイプの駆動は、そのパイプ部分にステンレス等で作製された固定用のブラケット6b2をはめ込みネジ等で固定し、このブラケット6b2をサーボモータまたはステッピングモータ等を使用することにより位置制御可能な一軸ロボット6b3を接続することにより行う。パイプ部8の他端部は、電磁弁等の開閉装置(不図示)を介して高圧のガスのライン6b1に接続されている。
【0027】
なお、カセット2の側面と底部には、サイドバー3が設けられている。サイドバー3は、カセット2の一側面と底部のそれぞれに2〜3本程度取り付けられ、その内面側の面には2〜8mm程度のピッチで、V字形状の溝が上下方向に形成されている。シリコンウエハ1はこのV字形状の溝部に差し込まれるようにカセット2内に収容される。このように、サイドバー3でシリコンウエハ1の端部の側面と底部を部分的に支持するのは、ガスのブローがシリコンウエハ1に当たりやすくするためである。
【0028】
図3に半導体ウエハ乾燥装置を構成する上側噴射パイプ5の斜視図を示す。なお、左側噴射パイプ6aおよび右側噴射パイプ6bも同様の構成である。各噴射パイプは、直径20〜50mm程度のステンレスまたは塩化ビニル製のパイプ部8の一端部を溶接等で閉じ、パイプ部8の側面に複数のブローノズル7をネジまたは溶接等により取り付けたものである。このブローノズル7の個数、ピッチおよびブローパターン等は、乾燥させるシリコンウエハ1の枚数やカセット2の大きさ等を考慮して決定すればよい。
【0029】
各噴射パイプは、ガスのブローをシリコンウエハ1の左右側面毎に片側から行う。さらに、ガスの吹き付けをシリコンウエハ1の一側面側の一端から他端に移動させながら行うようにする。すなわち、例えば、カセット2に納められたシリコンウエハ1の上側側面に対し平行に左右方向に動くように構成されており、左側噴射パイプ6aおよび右側噴射パイプ6bもシリコンウエハ1の左右の側面に対し平行に上下方向に動くように構成されている。
【0030】
次に、シリコンウエハ1の乾燥方法の手順について説明する。図4(a)〜(h)は、それぞれシリコンウエハ1が収容されているカセット2を側面側よりみた模式図であり、乾燥時における噴射パイプ5、6a、6bの動きとガス10のブローの様子を示したものである(矢印の有るものがガス10が噴射されている)。
【0031】
水または有機溶剤により濡れた状態でシリコンウエハ1が収容されたカセット2を、装置にセットする。すなわち、噴射パイプ5、6a、6bの配置されている載置台のほぼ中央部にカセット2を載置する。
【0032】
シリコンウエハ1の中央上部に位置した上側噴射パイプ5に繋がる弁を開け、図4(a)に示すように、ガス10によるブローを行いながらシリコンウエハ1の上側側面に対して平行に左側へ、カセット2の外側上部まで徐々に移動する。上側噴射パイプ5がカセット2の左外側の上部まで移動したら、その位置で停止して2〜10秒程度ガス10によるブローを行う。その後、ガスによるブローを行いながら、図4(b)に示すように、カセット2の右外側の上部まで移動し、その位置で停止して、2〜10秒程度ガス10によるブローを行う。上側噴射パイプ5をカセット2の左右の外側まで移動させるのは、ガス10によるブローにより左右のサイドバー3のV字形状の溝部分に残っている洗浄液を除去するためである。
【0033】
その後、図4(c)に示すように、上側噴射パイプ5によるガス10のブローを行いながら、カセット2内のシリコンウエハ1の右外側よりシリコンウエハ1の横側長さの1/4程度左側に寄った部位の上部まで移動し停止する。さらに、左側面噴射パイプ6aをカセット2内のシリコンウエハ1の高さの2/3〜3/4程度の高さから鉛直線に対し30〜60度の角度でカセット2内のシリコンウエハ1に対し斜め上方からガス10を2〜10秒程度ブローする。
【0034】
この際、シリコンウエハ1の上面から上側噴射パイプ5によりブローされたガスとシリコンウエハの左側面側から左側面噴射パイプ6aによりブローされたガスがシリコンウエハ1の主面上で交わらないように制御している。
【0035】
図5は、この上側噴射パイプ5によりブローされたガスと左側噴射パイプ6aによりブローされたガスの噴出方向の中心線が交わる状態を示す模式図である。図5(a)はシリコンウエハ1の主面上で交わる状態の一例を示し、図5(b)はシリコンウエハ1の主面上で交わらない状態の一例を示している。図5(a)(b)において、10aは上側噴射パイプ5によりブローされたガスの噴出方向の中心線を示し、10bは左側噴射パイプ6aによりブローされたガスの噴出方向の中心線を示す。また12a、12bは、それぞれ上側噴射パイプ5によりブローされたガスの噴出方向の中心線10aと左側噴射パイプ6aによりブローされたガスの噴出方向の中心線10bとの交点を示す。
【0036】
図5(a)に示すように、上側噴射パイプ5の位置がシリコンウエハ1の上部の中央に近い場合、または左側面噴射パイプ6aの傾斜角度が大きい場合などでは、上側噴射パイプ5によりブローされたガスの噴出方向の中心線10aと左側噴射パイプ6aによりブローされたガスの噴出方向の中心線10bとの交点12aは、平面視してシリコンウエハ1の主面内にあるため、両者が互いに干渉する。このため、シリコンウエハ1が割れたり、シリコンウエハ1上の洗浄液の乾燥が不十分となる。
【0037】
これに対し、図5(b)に示すように、上側噴射パイプ5の位置がシリコンウエハ1の上部の近く、または左側噴射パイプ6aの傾斜角度が小さい場合などでは、上側噴射パイプ5によりブローされたガスの噴出方向の中心線10aと左側噴射パイプ6aによりブローされたガスの噴出方向の中心線10bとの交点12bはシリコンウエハ1の面の外側にある。このため、両者が互いに干渉することが無いので、シリコンウエハ1が割れることがなく、シリコンウエハ1の乾燥も十分となる。このように、シリコンウエハ1の上面から上側噴射パイプ5によりブローされたガスとシリコンウエハ1の左側面側から左側噴射パイプ6aによりブローされたガスがシリコンウエハ1の主面上で交わらないように、上側噴射パイプ5と左側噴射パイプ6aの位置および左側噴射パイプ6aの傾斜角度を決定しなければならない。
【0038】
その後、図4(d)に示すように、上側噴射パイプ5を、ガス10によるブローを行いながらカセット2内のシリコンウエハ1の左側端部よりシリコンウエハ1の横側長さの1/4程度の右側に寄った部位の上部まで移動する。さらに、右側噴射パイプ6aをカセット2内のシリコンウエハの高さの2/3〜3/4程度の高さから鉛直線に対し30〜60度の角度でカセット2内のシリコンウエハ1に対し斜め上方からガス10を2〜10秒程度ブローする。これにおいても、上述したようにシリコンウエハ1の上面から上側噴射パイプ5によりブローされたガスとシリコンウエハ1の右側面側から右側噴射パイプ6bによりブローされたガスがシリコンウエハ1の主面上で交わらないようにしなければならない。
【0039】
その後図4(e)に示すように、上側噴射パイプ5をガス10によるブローを行いながら、カセット2内のシリコンウエハ1の左側端部よりシリコンウエハ1の横側長さの1/4程度の右側に寄った部位の上部まで移動し、さらにその位置からシリコンウエハ1の右側端部よりシリコンウエハ1の横側長さの1/4程度の左側に寄った部位の上部まで移動する。以後、上側噴射パイプ5は、この2点の間を往復することを繰り返す。さらに左側噴射パイプ6aをカセット2内のシリコンウエハ1の高さの1/2程度の高さに下げて、鉛直線に対し30〜60度の角度でカセット2内のシリコンウエハ1に対し斜め上方からガスを2〜10秒程度ブローする。
【0040】
その後図4(f)に示すように、上側噴射パイプ5は、上記の2点の間を往復することを繰り返しながら、右側噴射パイプ6bをカセット2内のシリコンウエハ1の高さの1/2程度の高さに下げて、鉛直線に対し30〜60度の角度でカセット2内のシリコンウエハ1に対し斜め上方からガスを2〜10秒程度ガス10をブローする。
【0041】
その後図4(g)に示すように、上側噴射パイプ5は、上記の2点の間を往復することを繰り返しながら、左側噴射パイプ6aをカセット2内のシリコンウエハ1の高さの1/4から1/3程度の高さに下げて、鉛直線に対し30〜60度の角度でカセット2内のシリコンウエハ1に対し斜め上方からガス10を2〜10秒程度ブローする。
【0042】
その後図4(h)に示すように、上側噴射パイプ5は、上記の2点の間を往復することを繰り返しながら、右側噴射パイプ6bをカセット2内のシリコンウエハ1の高さの1/4から1/3程度の高さに下げて、鉛直線に対し30〜60度の角度でカセット2内のシリコンウエハ1に対し斜め上方からガス10を2〜10秒程度ブローする。
【0043】
図4(e)から(h)においても、上述したようにシリコンウエハ1の上面から上側噴射パイプ5によりブローされたガスとシリコンウエハ1の側面側からの噴射パイプ6a、6bによりブローされたガスがシリコンウエハ1の主面上で交わらないようにしなければならない。
【0044】
また噴射パイプ5、6a、6bの移動速度は、20mm/秒以上80mm/秒以下であることが望ましい。すなわち移動速度をこの範囲内にすることにより、乾燥が十分となり液滴が残ることがなく、作業効率が良好となる。さらに、ガスの圧力は、均一にスプレーし乾燥を十分にするために、ブローノズル7の直前で3×10Pa以上が最適である。
【0045】
このように、シリコンウエハ1の上面から上側噴射パイプ5によりブローする。また、シリコンウエハ1の側面側から高さを徐々に下げながら斜め方向にブローすることにより、大面積で薄いシリコンウエハでも割ることがなく、洗浄液の液滴をシリコンウエハ上にできるだけ残さないようにして乾燥させることが可能となる。
【0046】
本実施形態の処理方法においては、ブローするガスは空気、窒素ガスまたはアルゴンガス等の各種ガスが使用可能であるが、特にシリコンウエハ1の表面に酸化膜の形成を抑え簡便に使用可能なものとして、空気または窒素ガスが望ましい。
【0047】
また、乾燥時間を短くするには、ブローするガスの温度をブローノズル7の直前で80℃以上250℃以下に昇温しておくことが望ましい。これにより、乾燥時間の短縮が効果的に行え、シリコンウエハ1に酸化膜の形成が促進されにくい。しかも、シリコンウエハ1およびカセット2に部分的な温度差が生じて、シリコンウエハ1の反り等で割れおよびクラックが発生しにくい。さらに、カセット2が熱膨張により変形しにくく、樹脂製のカセット2においても融けにくく、破損、劣化等もしにくい。
【0048】
上記乾燥工程において、シリコンウエハ1の収容されているカセット2は、水平面に対し前後方向(シリコンウエハの並んでいるいる方向)に傾斜させることが望ましい。図6は、カセット2を傾斜させてブローする状態を示した模式図である。図6において15は載置台、16は下角部用噴射パイプ、θは傾斜角度を示す。
【0049】
図6に示すように、載置台15は樹脂製またはステンレス等の金属製であり、カセット2の寸法と同じか5〜15mm程度小さめに直方体状に作製されている。ここで、カセット2の載置される面には、カセット2が滑り落ちにくいように、粗面化しておくことが望ましい。この際、載置台15の底部にスペーサー等を置くことにより角度θ傾けるようにすればよい。このようにして、洗浄液で濡れた状態の複数のシリコンウエハ1の収容されているカセット2が前後方向に傾斜するように載置する。
【0050】
カセット2を水平面に対しシリコンウエハ1の並んでいる方向に角度θ傾斜させることにより、カセット2の中でシリコンウエハ1が一定方向に倒れる。これにより、隣接するシリコンウエハ1同士が等間隔でほぼ平行に並ぶことになる。このため、カセット2を水平面に置いた場合などは、その際の衝撃またはガスをブローしたときのシリコンウエハの振動等で、シリコンウエハ1の上端部同士が洗浄液の作用で貼り付き、ブローしたガスがシリコンウエハ1の表面に当たらないことがある。カセット2を傾斜させることにより、シリコンウエハ1同士が等間隔でほぼ平行に並ぶことになる。また、上記のような衝撃や振動があっても自重により元の位置に戻ろうとするため、シリコンウエハ1の上端部同士が洗浄液の作用で貼り付くことが無く、シリコンウエハの乾燥をより安定させることができる。
【0051】
さらにカセット2を傾斜させたことにより、洗浄液が下方向に流れ、カセット2の下部の角部に集まってくるため、この部分を下角側噴射パイプ16でガスをブローすることにより、洗浄液を効率良く飛散させることも可能である。
【0052】
上記傾斜角度θは5度以上35度以下であることが望ましい。傾斜角度θがこの範囲内にあると、シリコンウエハ1の上端部の貼り付き抑制が効果的に行え、カセット2が載置台15から滑り落ちにくい。
【0053】
次に、半導体ウエハ乾燥装置の他の例について説明する。図7(a),(b)に示すように、シリコンウエハ1が収容されているカセット2は空気の吸引が可能に構成された底部吸引容器25上に位置している。この状態において、上述のように噴射パイプ5、6a、6bからガスのブローが行われ、さらに底部吸引容器25からの吸引も行われる。
【0054】
図8に示すように、底部吸引容器25は、その両端が封止され上面に開口部を設けた減圧部25aと減圧部25aの開口部長手方向の両端部から斜め上方に延びた載置部25bと載置部25bの両端部を塞ぐ側面部25cとから成る。
【0055】
減圧部25aは、例えばステンレス製であり、一辺の長さが30〜50mm程度の断面矩形状である直方体状の溝または断面が直径30〜50mm程度の円形である円柱状の溝であり、その厚みは1mm程度とする。また、減圧部25aの長さはカセット2の長さより3〜8mm程度長く作製される。なぜなら、減圧部25aの長さがこの範囲であれば、長手方向端部でのシリコンウエハ1の乾燥に寄与しない吸引を抑制でき、乾燥時間を短くすることができるからであり、さらに、シリコンウエハ1が収容されているカセット2を底部吸引容器25上に載置する際に、側面部25cとカセット2またはシリコンウエハ1とが衝突してシリコンウエハ1に割れ、カケ等が発生することが抑制されるからである。
また、減圧部25aの中央底部には、シリコンウエハ1の乾燥に伴って発生する液滴を排水するための配水管26が溶接等で取り付けられている。さらに、減圧部25aの側面部または底部には、減圧配管27が溶接等で取り付けられている。この減圧配管27の他端部には真空ポンプ等の減圧手段28が接続されており、減圧部25aの内部が1×10〜8×10Pa程度に減圧されるようにしてある。
【0056】
載置部25bはカセット2を配置するためのものであり、厚さ1〜3mm程度のステンレス等からなる金属板、または、フッ素樹脂、ポリプロピレン等の樹脂板で作製される。また、この載置部25bは、減圧部25aの開口部長手方向に沿った両端部から斜め上方に広がる態様で、2枚の板が溶接またはネジ止め等で取り付けられる。この載置部25bの両端部は、例えば載置部25bと同様な板で作製された側面部25cにより塞がれる。なお、載置部25bは、搭載するカセット2の大きさに応じて安定に配置しやすいように段状に形成されていてもよい。
【0057】
このような構成により、水等で濡れた状態のシリコンウエハ1が収容されているカセット2は、底部吸引容器25の載置部25b上に配置される。その状態で、噴射パイプ5、6a、6bからのガスのブローが行われる。さらに、減圧手段28により減圧部25a内部が減圧され吸引が行われる。これにより、カセット2周辺からその底部にある減圧部25aに向けた空気の流れができ、噴射パイプ5、6a、6bからブローされたガスは、その流れの勢いを大きく低下させること無く減圧部25aに向け効率よく流れることになる。このため、通常ではブローされたガスの勢いが低下して、除去しにくいシリコンウエハ1とカセット2の最下部にある液滴を、効果的に除去することが可能になる。
【0058】
さらに、カセット2の周辺からその底部にある減圧部25aに向けた空気流れのため、一旦シリコンウエハ1およびカセット2から飛ばされた液滴が、減圧部25aに吸い込まれるように除去される。このため、シリコンウエハ1やカセット2の別の部位に再付着することが無くなり、乾燥時間の短縮が可能となる。
【0059】
なお、半導体ウエハとしてシリコンウエハを例にとり説明したが、これに限定されるものではなく、各種材質の半導体ウエハに適用可能である。また、カセット2とそれを搭載する底部吸引容器25とは一体的に構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0060】
1:シリコンウエハ
2:カセット
3:カセットのサイドバー
5:上側噴射パイプ
6a:左側噴射パイプ
6b:右側噴射パイプ
10a:上側噴射パイプによりブローされたガスの噴出方向の中心線
10b:左側噴射パイプによりブローされたガスの噴出方向の中心線
12a、12b:上側噴射パイプによりブローされたガスの噴出方向の中心線と左側噴射パイプによりブローされたガスの噴出方向の中心線との交点
15:載置台
16:下角側噴射パイプ
20:洗浄槽
21:洗浄液
22:排液配管
θ:傾斜角度
25:底部吸引容器
25a:減圧部
25b:載置部
25c:側面部
26:排水管
27:減圧配管
28:減圧手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体ウエハの洗浄工程後に、前記半導体ウエハの複数の面へガスを吹き付ける乾燥工程を行う半導体ウエハ処理方法であって、前記乾燥工程は、前記半導体ウエハへガスを吹き付ける際に、複数方向からのガスが前記半導体ウエハの主面上において交わらないように、ガスの吹き付けを制御することを特徴とする半導体ウエハ処理方法。
【請求項2】
ガスの吹き付けを前記半導体ウエハの左右側面毎に片側から行うことを特徴とする請求項1に記載の半導体ウエハ処理方法。
【請求項3】
ガスの吹き付けを前記半導体ウエハの一側面側の一端から他端に移動させながら行うことを特徴とする請求項1または2に記載の半導体ウエハ処理方法。
【請求項4】
前記半導体ウエハの複数を立てた状態でカセットに収容し、前記カセットを水平面に対し傾斜させながら、ガスの吹き付けを行うことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の半導体ウエハ処理方法。
【請求項5】
前記ガスが空気または窒素ガスであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の半導体ウエハ処理方法。
【請求項6】
前記ガスの温度が80℃以上250℃以下であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の半導体ウエハ処理方法。
【請求項7】
半導体ウエハの複数の面へガスを吹き付ける半導体ウエハ乾燥装置であって、前記半導体ウエハの一側面側からガスを噴射させる第1噴射パイプと、前記半導体ウエハの他の側面側からガスを噴射させる第2噴射パイプとを備え、前記第1噴射パイプおよび前記第2噴射パイプのうち少なくとも1つが移動しながら噴射可能であることを特徴とする半導体ウエハ乾燥装置。
【請求項8】
前記半導体ウエハはカセットに収容されており、前記カセットは空気の吸引が可能な容器内に位置していることを特徴とする請求項7に記載の半導体ウエハ乾燥装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−9677(P2011−9677A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−175473(P2009−175473)
【出願日】平成21年7月28日(2009.7.28)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】