説明

半導体封止用エポキシ樹脂組成物、樹脂封止型半導体装置及び半導体装置の実装方法

【課題】 耐ハンダクラック性、高温安定性、耐湿信頼性に優れた硬化物を与える鉛フリーハンダ対応半導体封止用エポキシ樹脂組成物とこれを用いた半導体装置と実装方法を提供する。
【解決手段】(a)エポキシ樹脂(b)エポキシ樹脂用硬化剤(c)無機充填剤を必須成分として配合してなり、その硬化物の85℃の相対湿度85%、72時間での吸湿率が0.2%以下であり、空気中240℃、5時間での重量減少が0.5%以下である鉛フリーハンダ実装対応半導体封止用エポキシ樹脂組成物であり、これを用いた鉛フリーハンダ実装用樹脂封止型半導体装置と、半導体装置の実装方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐ハンダクラック性、高温安定性および耐湿信頼性に優れた硬化物を与える鉛フリーハンダ実装対応半導体封止用エポキシ樹脂組成物、鉛フリーハンダを用いた高温リフローに適した樹脂封止型半導体装置、さらに鉛フリーハンダを用いた実装信頼性に優れた半導体装置の実装方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エポキシ樹脂組成物は、その優れた硬化物性や取扱いの容易さから、接着、注型、封止、積層、成形、塗装等の広い分野で使用されている。また、エポキシ樹脂組成物やその成形方法には、多くの種類があり、その選択により成形性や硬化物性が大きく変わるため、使用分野目的に応じて使い分けられている。
近年、高分子材料の使用条件が苛酷になるに従って、高分子材料に対して要求される諸特性は厳しくなり、一般に用いられている各種の樹脂組成物では、要求特性を充分に満足できなくなってきた。
例えば、エポキシ樹脂とフェノール樹脂硬化剤を配合した組成物は、半導体封止に広く用いられているが、この分野でも、要求性能は、厳しくなっている。
すなわち、半導体装置の配線基盤への実装は表面実装が主流となっている。表面実装(ハンダリフロー)においては半導体装置全体がハンダの溶解温度以上の高温にさらされるため、吸湿された水分が急速に膨張し、その結果封止材にクラックが入る等の不良が発生しやすい。
さらに近年は、環境保護の観点かち、有害な鉛の使用を制限する動きがあり、実装用ハンダも鉛フリーハンダが使用されるようになってきた、鉛フリーハンダは従来の鉛を含有するハンダより溶解温度が高く、リフロー温度も高くする必要がある。そのため、鉛フリーハンダ実装対応半導体封止用エポキシ樹脂組成物には、従来品よりさらに厳しい耐ハンダクラック性が要求される。また、高温のため樹脂硬化物の一部が熱分解し、発生した腐食性物質により、内部の半導体の耐湿信頼性が悪化するなどの弊害もある、現在用いられているノボラック型エポキシ樹脂とフェノール樹脂硬化剤に難燃剤として臭素化エポキシ樹脂を配合した半導体封止用エポキシ樹脂組成物では、耐ハンダクラック性、高温安定性および耐湿信頼性等の点において鉛フリーハンダ実装には対応できなくなってきた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、耐ハンダクラック性、高温安定性および耐湿信頼性に優れた硬化物を与える鉛フリーハンダ実装対応半導体封止用エポキシ樹脂組成物、鉛フリーハンダを用いた高温リフローに適した樹脂封止型半導体装置、さらに鉛フリーハンダを用いた実装信頼性に優れた半導体装置の実装方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、前記の課題を解決するために種々研究を重ねた結果、硬化物の吸湿率と高温保持での重量減少が特定量以下であるエポキシ樹脂組成物を使用することによりその目的を達成できたのである。本発明は、
「1.(a)エポキシ樹脂
(b)エポキシ樹脂用硬化剤
(c)無機充填剤
を必須成分として配合してなり、その硬化物の85℃の相対湿度85%、72時間での吸湿率が0.2%以下であり、空気中240℃、5時間での重量減少が0.5%以下である鉛フリーハンダ実装対応半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
2.(a)成分と(b)成分をその混合物が150℃での溶融粘度が1.0ポイズ以下である組み合わせと使用割合とした、1項に記載された半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
3.(b)成分としてエポキシ基と反応する基を持つ硬化剤を用い、全(a)成分中のエポキシ基1モルに対して、全(b)成分中のエポキシ基と反応する基の合計が0.5〜2.0モルである、1項または2項に記載された鉛フリーハンダ実装対応半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
4.(b)成分として、エポキシ基の重合を開始する硬化剤を用い、全(a)成分100重量部に対し(b)成分を0.1〜10重量部用いた、1項または2項に記載された鉛フリーハンダ実装対応半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
5.(c)無機充填剤として、溶融および/または結晶シリカ粉末充填剤を組成物全体の80〜95重量%含有する、1項ないし4項のいずれか1項に記載された半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
6.ハロゲン元素の含有量が(a)成分と(b)成分の総合計に対して0.5重量%以下であり、かつその硬化物がUL94規格のV−0相当以上の難燃性を有する、1項ないし5項のいずれか1項に記載された半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
7.半導体素子および/または半導体集積回路が1項ないし6項のいずれか1項に記載された半導体封止用エポキシ樹脂組成物の硬化物で封止されている、鉛フリーハンダ実装用樹脂封止型半導体装置。
8.実質的に鉛を含有せず溶融温度が200℃以上のハンダを用い、7項に記載された樹脂封止型半導体装置を配線基盤にハンダ付け実装することを特徴とする半導体装置の実装方法。」
に関する。
【発明の効果】
【0005】
本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物は、耐ハンダクラック性、高温安定性および耐湿信頼性に優れた硬化物を与えるので鉛フリーハンダ実装対応半導体装置の封止に有利に使用することができる。本発明の樹脂封止型半導体装置は、耐ハンダクラック性、高温安定性および耐湿信頼性に優れるので、鉛フリーハンダを用いた実装に有利に使用することができる。本発明の半導体装置の実装方法は、実装信頼性に優れるので鉛フリーハンダを用いた実装に有利に使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0006】
溶解温度が高い鉛フリーハンダを用いた実装方法においては、リフロー温度も高くする必要があるが、従来の半導体封止用エポキシ樹脂組成物では、吸湿率が高いために保存中に吸収された水分が高温にさらされた際に急速に膨張し、その結果封止材にクラックが入るなどの不良が発生しやすい。また、熱安定性の悪い臭素化エポキシ樹脂等が配合されているために、高温により熱分解し、ハロゲン化合物等の腐食性物質が発生し、内部の半導体の耐湿信頼性が悪化するなどの弊害もある。
本発明では、低溶融粘度の樹脂系にシリカ充填剤を多量に配合し、吸湿率を低くした上で、熱安定性の悪い成分を配合しないことにより、鉛フリーハンダを用いた高温リフローを実施してもハンダクラックが発生しにくくし、耐湿信頼性の悪化も大巾に改良したものである。
【0007】
本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物で用いられる(a)エポキシ樹脂としては、例えばビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD、ビフェノール、テトラメチルビフェノール、テトラメチルビスフェノールF、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、ジブチルハイドロキノン、レゾルシン、メチルレゾルシン、ジヒドロキシジフェニルエーテル、ジヒドロキスチルベン誘導体、ジヒドロキシナフタレン、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ナフトールノボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂、テルペンフェノール樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール樹脂;種々のフェノール類と、ベンズアルデヒド、ヒドロキシベンズアルデヒド、クロトンアルデヒド、グリオキザール等の種々のアルデヒド類との縮合反応で得られる多価フェノール樹脂;重質油類またはピッチ類、フェノール類およびアルデヒド化合物とを重縮合反応させて得られた変性フェノール樹脂等の各種フェノール系化合物と、エピハロヒドリンとから製造されるエポキシ樹脂やジアミノジフェニルメタン、アミノフェノール、キシレンジアミン等の種々のアミン化合物と、エピハロヒドリンとから製造されるエポキシ樹脂、メチルヘキサヒドロキシフタル酸、ダイマー酸等の種々のカルボン酸類と、エピハロヒドリンとから製造されるエポキシ樹脂、水素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水素化ビスフェノールF型エポキシ樹脂等の水素化エポキシ樹脂、1,2−エポキシエチル−3,4−エポキシシクロヘキサン、3,4−エポキシシクロヘキシルカルボン酸−3,4−エポキシシクロヘキシルメチル、アジピン酸ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル〉等の脂環式エポキシ樹脂等が挙げられる。
これらのエポキシ樹脂は一種単独で用いてもよいし、二種以上混合して使用してもよい。
種々のエポキシ樹脂の中では、入手のしやすさや硬化物性等からビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂、テトラメチルビフェノール型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、テルペンフェノール型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール型エポキシ樹脂から選ばれた少なくとも一種類のエポキシ樹脂が好ましい。
【0008】
次に、本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物には(b)エポキシ樹脂用硬化剤が必須成分として配合される。
その使用できる硬化剤としては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD、ハイドロキノン、レゾルシン、メチルレゾルシン、ビフェノール、テトラメチルビフェノール、ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシジフェニルエーテル、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール樹脂、テルペンフェノール樹脂、ナフトールノボラック樹脂、ビフェニルフェノール樹脂等の種々の多価フェノール樹脂、種々のフェノール類と、ヒドロキシベンズアルデヒド、クロトンアルデヒド、グリオキザール等の種々のアルデヒド類との縮合反応で得られる多価フェノール樹脂、および重質油類またはピッチ類、フェノール類およびホルムアルデヒド化合物を重縮合させて得られた変性フェノール樹脂等の各種のフェノール樹脂類、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、無水ピロメリット酸、メチルナジック酸等の酸無水物類、ジエチレントリアミン、イソホロンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、ジシアンジアミド等のアミン類等が挙げられる。
【0009】
また、エポキシ基の重合を開始するタイプの硬化剤としては、例えば、トリフェニルホスフィン等のホスフィン化合物、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート等のホスホニウム塩、2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、2,4−ジシアノ−6−[2−メチルイミダゾリル−(1)]−エチル−S−トリアジン等のイミダゾール類、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾリウムトリメリテート、2−メチルイミダゾリウムイソシアヌレート、2−エチル−4−メチルイミダゾリウムテトラフェニルボレート、2−エチル−1,4−ジメチルイミダゾリウムテトラフェニルボレート等のイミダゾリウム塩、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、ベンジルメチルアミン等のアミン類、トリエチルアンモニウムテトラフェニルボレート等のアンモニウム塩、1,5−ジアザビシクロ(5,4,0)−7−ウンデセン、1,5−ジアザビシクロ(4,3,0)−5−ノネン等のジアザビシクロ化合物、それ等ジアザビシクロ化合物のテトラフェニルボレート、フェノール塩、フェノールノボラック塩、2−エチルヘキサン酸塩等、さらにトリフル酸(Triflic acid)塩、三弗化硼素エーテル錯化合物、金属フルオロ硼素錯塩、ビス(ペルフルオルアルキルスルホニル)メタン金属塩、アリールジアゾニウム化合物、芳香族オニウム塩、IIIa〜Va族元素のジカルボニルキレート、チオピリリウム塩、MF6陰イオン(ここでは燐、アンチモンおよび砒素から選択される)の形のVIb元素、アリールスルホニウム錯塩、芳香族ヨードニウム錯塩、芳香族スルホニウム錯塩、ビス[4−(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィド−ビス−ヘキサフルオロ金属塩(例えば燐酸塩、砒酸塩、アンチモン酸塩等)、アリールスルホニウム錯塩、ハロゲン含有錯イオンの芳香族スルホニウムまたはヨードニウム塩等を用いることができる。
(b)成分のエポキシ樹脂用硬化剤は、1種単独でも、2種以上併用してもよい。
それら各種エポキシ樹脂用硬化剤の中ではフェノールノボラック樹脂、テルペンフェノール樹脂、フェノールアラルキル樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール樹脂、ビフェニルフェノール樹脂、重質油類またはピッチ類、フェノール類およびアルデヒド化合物を重縮合反応させて得られた変性フェノール樹脂等が硬化物性や入手のしやすさの点から好ましい。
【0010】
本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物で使用される(b)成分の使用割合は、(b)成分としてエポキシ基と反応する基を持つ化合物のみを使用する場合は、全(a)成分中のエポキシ基1モルに対して、全(b)成分中のエポキシ基と反応する基の合計が0.5〜2.0モルになる量が好ましく、より好ましくは、0.7〜1.5モルになる量である。
(b)成分としてエポキシ基の重合を開始するタイプの硬化剤を使用する場合は、全(a)成分100重量部に対して、0.1〜10重量部が好ましく、より好ましくは、0.3〜5重量部である。
本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物は鉛フリーハンダを用いた高リフローの際のハンダクラックを防止するために、85℃相対湿度85%、72時間での吸湿率が0.2%以下である必要があり、好ましくは0.15%以下である。
吸湿率が高いと高温でクラヅクが発生しやすいため、好ましくない、鉛フリーハンダを用いた高温によるリフロー後の信頼性を維持するためには、240℃の空気中に5時間保持した後の重量減少が0.5%以下であることが必要であり、好ましくは0.3%以下である。
【0011】
本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物では、吸湿率を低くするためシリカ充填剤を多量に配合する必要がある。そのためには、樹脂系((a)成分と(b)成分の混合物)の溶融粘度を低くすることが必要であり、150℃での溶融粘度が好ましくは1.0ポイズ以下、より好ましくは0.8ポイズ以下、さらに好ましくは0.6ポイズ以下になるよう(a)成分、(b)成分それぞれの種類や混合割合を調整しなければならない。樹脂系の溶融粘度が高すぎるとエポキシ樹脂組成物の流動性が低下し、成形が困難になる。
次に、本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物には、(c)無機充填剤が配合される。その無機充填剤の種類としては、例えば、溶融シリカ、結晶性シリカ、ガラス粉、アルミナ、炭酸カルシウム等が挙げられる。その形状としては破砕型または球状である。各種の無機充填剤は単独でまたは2種以上混合して用いられるが、それ等の中では溶融シリカまたは結晶性シリカが好ましい。その使用量は、組成物全体の80〜95重量%であり、好ましくは85〜95重量%であり、より好ましくは、87〜93重量%である。 (c)無機充填剤の使用量が少なすぎると、低吸湿性に劣り、結果的に耐ハンダクラック性に劣る。(c)無機充填剤の使用量が多すぎると、成型時の流動性が損なわれる。
本発明のエポキシ樹脂組成物には、必要に応じて、硬化促進剤、難燃剤、難燃助剤、カップリング剤、イオン捕捉剤、可塑剤、顔料、溶剤、離型剤、強化用繊維等を適宜に配合することができる。
【0012】
その硬化促進剤は、エポキシ樹脂中のエポキシ基と硬化剤中の活性基との反応を促進する化合物であり、トリブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン等のホスフィン化合物、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレートなどのホスホニウム塩、2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾールなどのイミダゾール類、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、ベンジルジメチルアミンなどのアミン類、トリエチルアンモニウムテトラフェニルボレートなどのアンモニウム塩、1,5−ジアザビシクロ(5,4,0)−7−ウンデセンなどのジアザビシクロ化合物、それ等ジアザビシクロ化合物のテトラフェニルボレート、フェノール塩、フェノールノボラック塩、2−エチルヘキサン酸塩などが挙げられる。
一般に半導体封止用エポキシ樹脂組成物には、難燃性を付与することが求められるため、臭素化エポキシ樹脂等のハロゲン化合物を難燃剤とし添加することが多い。しかし、鉛フリーハンダを用いたリフロー時の高温による熱分解でハロゲンイオン等が発生し電気特性等に悪影響を与えるため、ハロゲン系難燃剤は配合しないことが好ましい。ハロゲン元素は原料中の不純物として持ち込まれることもあるが、その量も含め(a)成分と(b)成分の総合計に対して0.5重量%以下とすることが好ましく、より好ましくは0.3重量%以下、さらに好ましくは0.1重量%以下である。硬化物の難燃性は電気電子部品や機器の規格により義務づけられているため、UL94規格のV−0相当以上の難燃性を有さなければならない、
【0013】
ハロゲン系難燃剤の代わりに、リン酸エステル類、ホスフィン類等のリン系難燃剤、メラミン誘導体等の窒素系難燃剤および水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の無機系難燃剤を使用することができるが、これらの物質も高温下で腐食性物質を発生したり、吸湿性を悪化させたりするため、使用しないか必要最小限とすることが好ましい。
エポキシ樹脂組成物の難燃性は、エポキシ樹脂、硬化剤、無機充填剤およびその他の添加剤等の種類や配合割合により大きく変化する。本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物においては、吸湿率と重量減少を所定の値以下に保ったまま必要程度以上の難燃性が発現するよう各成分の種類や配合割合を調整する必要がある。
【0014】
本発明の樹脂封止型半導体装置は、集積回路、大規模集積回路、トランジスタ、サイリスタ、ダイオード等の半導体素子および/または半導体集積回路が本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物の硬化物で封止されている鉛フリーハンダ実装用樹脂半導体装置であり、半導体素子および/または半導体集積回路の種類、封止方法、パッケージ形状等には特に限定されない。
その封止方法としては、常温で固形のエポキシ樹脂組成物を用いた低圧トランスファー成形法、インジェクション成形法、常温で液状のエポキシ樹脂組成物を用いたポッティング法、スクリーン印刷法、アンダーフィル法等である、成形後の硬化条件は、エポキシ樹脂組成物の各成分の種類や、配合量により異なるが、通常、150〜220℃の温度で30秒から10時間である。
樹脂封止型半導体装置のパッケージ形状は、DIP、ZIP、SOP、SOJ、QFP等のリードフレームタイプ、BGAなどの片面封止タイプ、TAB、CSP等である、
【0015】
本発明の半導体装置の実装方法は、鉛フリーハンダを用い本発明の樹脂封止型半導体装置を配線基盤にハンダ付け実装することを特徴とする半導体装置の実装方法である。
本発明の実装方法で使用される鉛フリーハンダは、Sn−Ag系、Sn−Ag−Cu系、Sn−Ag−Bi系、Sn−Bi系、Sn−Bi−Ag−Cu系、Sn−Cu系、Sn−Zn系、Sn−Zn−Bi系等の鉛を実質的に含有しないハンダであり、それらの溶解温度は、一般的に200℃以上である。
そのリフロー方法は、赤外線リフロー、ハンダ浴ディップ、ベイパーフェーズリフロー、熱風リフロー等であり、加熱温度はハンダの溶解温度より30〜60℃高い温度が必要である。
本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物は、耐ハンダクラック性、高温安定性および耐湿信頼性に優れた硬化物を与えるので鉛フリーハンダ実装対応半導体装置の封止に有利に使用することができる、本発明の樹脂封止型半導体装置は、耐ハンダクラック性、高温安定性および耐湿信頼性に優れるので、鉛フリーハンダを用いた実装に有利に使用することができる。本発明の半導体装置の実装方法は、実装信頼性に優れるので鉛フリーハンダを用いた実装に有利に使用することができる。
【実施例】
【0016】
以下に、本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物、樹脂封止型半導体装置および半導体装置の実装方法を実施例および比較例を上げてさらに詳述する。
実施例1〜5および比較例1及び2
表1に示したように、(a)エポキシ樹脂として、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、テトラメチルビフェノール型エポキシ樹脂またはビスフェノール型エポキシ樹脂、および難燃剤として臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、(b)エポキシ樹脂用硬化剤としてフェノールアラルキル樹脂、フェノールノボラック樹脂、または重質油類またはピッチ類、フェノール類およびアルデヒド化合物とを重縮合反応させて得られた変性フェノール樹脂、(c)無機充填剤として球状溶融シリカ粉末、硬化促進剤としてトリフェニルホスフィン、難燃助剤として三酸化アンチモン、離型剤としてカルナバワックス、シランカップリング剤としてエポキシシランを用いて、各半導体封止用エポキシ樹脂組成物を配合した。次いで、各配合物をミキシングロールを用いて、70〜130℃の温度で5分間溶融混合した、得られた各溶融混合物はシート状に取り出し、粉砕して各成形材料を得た。
これらの各成形材料を用い低圧トランスファー成形機で金型温度180℃、成形時間90秒で成形して、各試験片および160ピンTQFP型樹脂封止型半導体装置を得、180℃で5時聞ポストキュアーさせた。各成形材料のポストキュアー後の吸湿率、重量減少および難燃性を試験した結果を表1に示した。
さらに各樹脂封止型半導体装置をSn−Ag−Cu系鉛フリーハンダ(溶解温度220℃)を用い、260℃の赤外線リフローで配線基盤に実装した。実装後の耐ハンダクラック性と耐湿信頼性を試験した結果も表1に示した、実施例1〜5の各組成物は、比較例1及び2の組成物に較べて耐ハンダクラック性および耐湿信頼性のバランスが大巾に優れていた。
【0017】
【表1】

【0018】
(註)
*1:A;テトラメチルビフェノール型エポキシ樹脂(油化シェルエポキシ社商品名 エピコートYX4000H、エポキシ当量:193)
*2:B;テトラメチルビフェノール型エポキシ樹脂とビフェノール型エポキシ樹脂の混合物(油化シェルエポキシ社商品名 エピコートYL6121H、エポキシ当量:171)
*3:C;オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂とビフェノール型エポキシ樹脂の混合物(油化シェルエポキシ社商品名 エピコートYL6640、エポキシ当量:193)
*4:D;オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂〈油化シェルエポキシ社商品名 工ピコート180S65、エポキシ当量:212)
*5:臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂(油化シェルエポキシ社商品名 エピコート5050、エポキシ当量:385、臭素含有量:49%〉
*6:E;フェノールノボラック樹脂(群栄化学社製、水酸基当量:105)
*7:F;フェノールアラルキル樹脂(三井化学社商品名 ミレックスXL225−3L、水酸基当量170)
*8*G;重質油類またはピッチ類、フェノール類およびアルデヒド化合物とを重縮合反応させて得られた変性フェノール樹脂(鹿島石油社商品名 FPI5167、水酸基当量:165)
*9:(a)成分および(b)成分の使用割合での混合物の溶融粘度
*10:各原料のハロゲン含有量から算出
*11:球状溶融シリカ粉末(日本アエロジル社商品名 ELSIL BF100)
*12:エポキシシラン(信越化学工業社商品名 KBM−403)
*13:85℃、85%RH 72時間後の吸湿率
*14:240℃の空気中に5時間保持した後の重量減少
*15:UL−94に従って測定
*16:160ピンTQFP16個を85℃、85%RHにおいて168時間吸湿後、260℃赤外線リフローを行ない、クラックの発生した個数を求めた。
*17:実装後の160ピンTQFPで不飽和型PCTバイアステスト(130℃、85%RH V=50V)を行ない、平均故障寿命を求めた。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)エポキシ樹脂
(b)エポキシ樹脂用硬化剤
(c)無機充填剤
を必須成分として配合してなり、その硬化物の85℃の相対湿度85%、72時間での吸湿率が0.2%以下であり、空気中240℃、5時間での重量減少が0.5%以下である鉛フリーハンダ実装対応半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
【請求項2】
(a)成分と(b)成分をその混合物が150℃での溶融粘度が1.0ポイズ以下である組み合わせと使用割合とした、請求項1に記載された半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
【請求項3】
(b)成分としてエポキシ基と反応する基を持つ硬化剤を用い、全(a)成分中のエポキシ基1モルに対して、全(b)成分中のエポキシ基と反応する基の合計が0.5〜2.0モルである、請求項1または2に記載された鉛フリーハンダ実装対応半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
【請求項4】
(b)成分として、エポキシ基の重合を開始する硬化剤を用い、全(a)成分100重量部に対し(b)成分を0.1〜10重量部用いた、請求項1または2に記載された鉛フリーハンダ実装対応半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
【請求項5】
(c)無機充填剤として、溶融および/または結晶シリカ粉末充填剤を組成物全体の80〜95重量%含有する、請求項1ないし4のいずれか1項に記載された半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
【請求項6】
ハロゲン元素の含有量が(a)成分と(b)成分の総合計に対して0.5重量%以下であり、かつその硬化物がUL94規格のV−0相当以上の難燃性を有する、請求項1ないし5のいずれか1項に記載された半導体封止型エポキシ樹脂組成物。
【請求項7】
半導体素子および/または半導体集積回路が請求項1ないし6のいずれか1項に記載された半導体封止用エポキシ樹脂組成物の硬化物で封止されている、鉛フリーハンダ実装用樹脂封止型半導体装置。
【請求項8】
実質的に鉛を含有せず溶融温度が200℃以上のハンダを用い、請求項7に記載された樹脂封止型半導体装置を配線基盤にハンダ付け実装することを特徴とする半導体装置の実装方法。













【公開番号】特開2011−58003(P2011−58003A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−261395(P2010−261395)
【出願日】平成22年11月24日(2010.11.24)
【分割の表示】特願2000−191827(P2000−191827)の分割
【原出願日】平成12年5月24日(2000.5.24)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】