説明

半導体封止用エポキシ樹脂組成物およびそれを用いた半導体装置

【課題】パッケージの反りを抑えるだけでなく、その温度の依存性も低減し、難燃性、流動性、樹脂封止時のパウダーブロッキング抑性および連続成形性に優れた半導体封止用エポキシ樹脂組成物及びそれを用いた半導体装置を提供すること。
【解決手段】下記(A)〜(E)成分を含む半導体封止用エポキシ樹脂組成物であって、(C)成分がエポキシ樹脂組成物全体の0.10〜2.0重量%である、半導体封止用エポキシ樹脂組成物。(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤、(C)式R−(CONH)nの脂肪酸アミド化合物(Rは炭素数1〜60の脂肪族基または芳香族基であり、nは1〜4の整数である。また、脂肪族基は飽和脂肪族基でも不飽和脂肪族基でもよい。)、(D)下記(X)及び/又は(Y)の離型剤:(X)数平均分子量が550〜800の直鎖飽和カルボン酸、(Y)酸化ポリエチレンワックス、(E)無機質充填剤

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体封止用エポキシ樹脂組成物およびそれを用いた半導体装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、半導体装置の製造工程において、基板へのボンディングが終了した半導体素子は、外部との接触を避けるため、熱硬化性樹脂等のモールド樹脂を用いて封止される。上記モールド樹脂としては、例えば、シリカ粉末を主体とする無機質充填剤をエポキシ樹脂に混合分散したもの等が用いられる。このモールド樹脂を用いた封止方法としては、例えば、基板にボンディングされた半導体素子を金型に入れ、これにモールド樹脂を圧送してモールド樹脂を硬化して成形するトランスファーモールド法等が実用化されている。
【0003】
従来、半導体素子をモールド樹脂によって封止した樹脂封止型半導体装置は、信頼性、量産性およびコスト等の面において優れており、セラミックを構成材料とするセラミック封止型半導体装置と共に普及している。
そして、ボールグリッドアレイ(BGA)などの片面封止構造の半導体装置では、樹脂硬化物からなる封止層と基板の収縮量の違いから封止層と基板の間で応力が発生し、この応力によりパッケージに反りが発生するという問題が生じる。この反りを抑制するために、樹脂硬化物のガラス転移温度を高くして基板との収縮量の差を小さくすることが検討されている(特許文献1参照)。しかし、樹脂硬化物のガラス転移温度を高くした封止用樹脂組成物では、その架橋点密度の高さゆえに難燃性に関して問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−112515号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、パッケージの反りを抑えるだけでなく、その温度の依存性も低減し、難燃性、流動性、樹脂封止時のパウダーブロッキング抑性および連続成形性に優れた半導体封止用エポキシ樹脂組成物及びそれを用いた半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、下記(A)〜(E)成分を含む半導体封止用エポキシ樹脂組成物であって、(C)成分がエポキシ樹脂組成物全体の0.10〜2.0重量%である、半導体封止用エポキシ樹脂組成物、及びそれを用いた半導体装置である。
(A)エポキシ樹脂
(B)硬化剤
(C)式(1)で表される脂肪酸アミド化合物
R−(CONH)n (1)
(式(1)中、Rは炭素数1〜60の脂肪族基または芳香族基であり、nは1〜4の整数である。また、脂肪族基は飽和脂肪族基でも不飽和脂肪族基でもよい。)
(D)下記(X)および(Y)から選ばれる少なくとも1種の離型剤
(X)数平均分子量が550〜800の直鎖飽和カルボン酸
(Y)酸化ポリエチレンワックス
(E)無機質充填剤
【0007】
本発明者らは、反り温度依存性低減を必須条件に、連続成形性を両立させた封止材となり得るエポキシ樹脂組成物を得ることを目的に一連の研究を重ねた。その結果、(C)成分であるアミド構造を含有した特定添加剤を使用した場合、優れた反り温度依存性が付与され、(D)成分である特定離型剤の併用で連続成形性に優れた半導体封止材が達成されることを見出し本発明に到達した。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、(A)〜(E)成分、特に反り抑制機能を有する(C)成分を特定量、離型機能を有する特定構造を有する(D)成分を配合するとともに(A)成分、(B)成分、及び(E)成分を好適に選定、配合することによりパッケージの反りを抑えるだけでなく、その温度の依存性も低減し、難燃性、流動性、樹脂封止時のパウダーブロッキング抑性および連続成形性に優れた半導体封止用エポキシ樹脂組成物及びそれを用いた半導体装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物(以下、本発明組成物ともいう)の構成要素について説明する。
(A)成分について説明する。
(A)成分は、エポキシ樹脂であれば特に制限されるべきものではないが、2官能エポキシ樹脂であることが好ましく、以下の式(2)で表される化合物(以下、化合物(2)ともいう。他も同様。)がより好ましい。
【0010】
【化1】


(式(2)中、R11〜R18はそれぞれ独立して水素原子及び炭素数1〜10の置換又は非置換の一価の炭化水素基から選ばれ、nは0〜3の整数を示す。)
化合物(2)において、炭化水素基としては、飽和でも不飽和でもよく、また、直鎖状、分岐状、又は環状でもよいが、好ましくは、メチル基またはエチル基である。
【0011】
上記化合物(2)は単独で用いられることが好ましいが、構造の異なる一般的なエポキシ樹脂を併用することも可能である。例えば、ジシクロペンタジエン型、クレゾールノボラック型、フェノールノボラック型、ビスフェノール型、ビフェニル型、トリスヒドロキシフェニルメタン型等の各種のエポキシ樹脂をもちいることが出来る。そして、これらエポキシ樹脂のなかでも、特に融点または軟化点が室温を超えていることが好ましい。例えば、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂としては、エポキシ当量180〜210、軟化点60〜110℃のものが好適に用いられる。特にワイヤー流れ性の厳しい半導体装置では2官能エポキシ樹脂が推奨されるが、流動性及び難燃性の観点で上記化合物(2)の構造のものが好ましい。但し、2官能エポキシ樹脂は少なくともエポキシ樹脂成分中60質量%以上の配合であることが好ましい。
(A)成分は、特定構造の(C)成分と組み合わせることにより特に難燃性と反り抑制に寄与することができる。
【0012】
(B)成分について説明する。
(B)成分は、(A)成分の硬化剤として作用するものであり、特に限定するものではなく、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂、及びビフェニル骨格含有フェノールノボラック樹脂等があげられる。
これらフェノール樹脂は単独で用いてもよいし2種以上併用してもよいが、難燃性の観点より下記式(3)又は式(4)で表される化合物が難燃性の観点で特に好ましい。
【0013】
【化2】

【0014】
式(3)又は(4)中、nはそれぞれ独立して0〜5、好ましくは、0〜2の整数を示す。)
【0015】
上記(A)成分と(B)成分との配合割合は、(A)成分を硬化させるに充分な量に設定することが好ましい。(A)成分中のエポキシ基1当量に対して、(B)成分の水酸基の合計が0.6〜1.2当量となるように配合することが好ましい。より好ましくは0.7〜1.0当量である。
【0016】
上記(A)成分および(B)成分とともに用いられる硬化促進剤としては、従来公知の各種硬化促進剤が可能であり、例えばテトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレートや、トリフェニルホスフィン等の有機リン系化合物、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7、1,5−ジアザビシクロ(4,3,0)ノネン−5等のジアザビシクロアルケン系化合物、2−メチルイミダゾール、2,3−ジアミノー6−(2−ウンデシルイミダゾリル)−エチルーS−トリアジン、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール等のイミダゾール系の内1種または2種以上併せて用いることも可能である。
硬化促進剤は(B)成分に対し最低3質量%であることが好ましく、その上限は20質量%程度が好ましい。
【0017】
次に(C)成分について説明する。
化合物(1)において、Rは炭素数1〜60、好ましくは、13〜60の脂肪族基または芳香族基である。脂肪族基としては、飽和でも不飽和でもよく、また、直鎖状、分岐状、又は環状でもよいが、好ましくは、直鎖状の飽和または不飽和脂肪族基であり、より好ましくは直鎖状の飽和脂肪族基である。芳香族基としては、置換基を有していてもいなくともよい。Rが炭素数60以上のものの入手、合成はできない為、化合物(1)の高分子量体の性能については検証されていない。化合物(1)において、nは1〜4の整数であり、1〜2の整数が好ましい。
化合物(1)の原料となる脂肪族酸に関しては、以下のものがあげられる。ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ヘンエイコ酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、メリシン酸、ラッセル酸、モンタン酸で、本発明組成物のパウダーブロッキング性の観点から炭素数13(ミリスチン酸アミド)以上が好ましい。また、安息香酸、フタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等の芳香族酸も使用可能である。その含有量も反りの抑制、パウダーブロッキング性、増粘、連続成形性(Sticking特性)の観点より、本発明組成物全量に対して0.1〜2.0質量%、好ましくは0.4〜2.0質量%に設定している。
【0018】
(D)成分は、離型剤であり、下記(X)および(Y)から選ばれる少なくとも1種である。(X)の離型剤を離型剤(X)と、(Y)の離型剤を離型剤(Y)という。
(X)数平均分子量が550〜800の直鎖飽和カルボン酸
(Y)酸化ポリエチレンワックス
離型剤(X)について説明する。
離型剤(X)は、式(5)で表すことができ、nは同一でも異なってよく上記数平均分子量を満たすように選択される。ただし、現状、数平均分子量が800以上のものの性能については、入手困難なために検証されていない。数平均分子量は600〜800が好ましい。
CH−(CH−COOH (5)
【0019】
離型剤(Y)について説明する。
離型剤(Y)としては、滴点、酸価、数平均分子量、密度、平均粒径等の数値を適宜選定して用いることが好ましく、滴点としては、100〜130℃、酸価としては10〜70mgKOH/g、数平均分子量としては、800〜3000、密度としては、0.8〜1.1g/cmが好ましい範囲として挙げられる。離型剤(Y)は市販のものを用いることができ、例えば、クラリアント社製PED−136、PED−521等を用いることができる。
(D)成分は、特に本発明組成物の連続成形性を確保するために用いられる。
(D)成分の含有量は、本発明組成物に対して0.05〜2.0質量%であることが好ましく、0.1〜0.5質量%であることが更に好ましい。上記範囲とすることにより、難燃性、流動性、及びパウダーブロッキング性を維持しつつ、反りの抑制に寄与し、連続成形性をより確実に確保することができる。
なお、本発明組成物は、一般的な離型剤との併用も可能で、高級脂肪酸エステル、高級脂肪酸カルシウム等の化合物があげられ、例えば、カルナバワックスやポリエチレン系ワックスが用いられ、これらとの2種以上併せて用いられることも可能である。
【0020】
(E)成分の無機質充填剤は、材質としては例えば、石英ガラス粉末、タルク、シリカ粉末(溶融シリカ粉末や結晶性シリカ粉末等)、アルミナ粉末、窒化アルミニウム粉末、窒化珪素粉末等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。なかでも、得られる硬化物の線膨張係数を低減できるという点から上記シリカ粉末を用いることが好ましく、上記シリカ粉末のなかでも溶融球状シリカ粉末を用いることが、本発明の効果を維持し、高充填、高流動性という点から特に好ましい。
(E)成分は本発明組成物に対して、60〜93質量%、好ましくは、70〜91質量%含む。
【0021】
なお、本発明組成物では、上記各成分に加えて、シランカップリング剤、難燃剤、イオントラップ剤、カーボンブラック等の顔料や着色剤、低応力化剤等の他の添加剤を適宜配合することが出来る。
【0022】
シランカップリング剤としては、特に限定するものでは無く各種シランカップリング剤を用いることができ、中でも2個以上のアルコキシ基を有するものが好適に用いられる。具体的には、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アニリノプロピルトリメトキシシラン、ヘキサメチルシラザン等が上げられる。これらは、単独でも、2種以上併せて用いることも可能である。
【0023】
上記難燃剤としては、ノボラック型ブロム化エポキシ樹脂、金属水酸化物等が挙げられる。
【0024】
上記イオントラップ剤としては、イオントラップ能力を有する公知に化合物全てが使用でき、例えばハイドロタルサイト類、水酸化ビスマス等が用いられる
【0025】
また、上記低応力化剤としては、アクリル酸メチル−ブタジエン−スチレン共重合体、メタクリル酸メチル−ブタジエン−スチレン共重合体当のブタジエン系ゴムやシリコーン化合物があげられる。
【0026】
本発明組成物は、例えば、つぎのようにして製造することができる。すなわち、前記成分(A)〜(E)、必要に応じて他の添加剤を常法に準じて適宜配合し、ミキシングロール等の混練機を用いて加熱状態で溶融混練した後、これを室温下で冷却固化させる。その後、公知の手段により粉砕し、必要に応じて打錠するという一連の工程により目的とする本発明組成物を製造することができる。
【0027】
このようにして得られた本発明組成物を用いての半導体素子の封止は、特に制限するものではなく、通常のトランスファー成形等の公知のモールド方法により行うことができる。
また、打錠工程を経ず、顆粒状態のパウダーを圧縮成形のモールド方法にも適用可能である。
【0028】
このようにして得られる半導体装置は、本発明組成物中に、前記特定エポキシ樹脂、硬化剤、硬化促進剤、離型剤を制御している為、これが良好なワイヤー流れ性、離型性を有するとともに、特殊感光性ポリイミドとの接着性改善により優れた耐リフロー信頼性を備えた半導体装置となる。
【実施例】
【0029】
つぎに、実施例について比較例と併せて説明する。
まず、下記に示す各成分を準備した。
【0030】
〔エポキシ樹脂A〕
ジャパンエポキシレジン(株)製YX−4000H(エポキシ当量195、融点107℃、前記化合物(2)の基本構造を有する。本発明内)
【0031】
〔エポキシ樹脂B〕
東都化成(株)製YDC−1312(エポキシ当量175、融点145℃、下記構造、本発明内)
【0032】
【化3】

【0033】
〔エポキシ樹脂C〕
日本化薬(株)製CER−3000L(エポキシ当量240、融点67℃、本発明内)
【0034】
【化4】

【0035】
〔フェノール樹脂D〕
明和化成(株)製MEH−7851(水酸基当量210、軟化点73℃、前記化合物(3)、本発明内)
【0036】
〔フェノール樹脂E〕
東都化成(株)製SN−160L(水酸基当量176、軟化点59℃、前記化合物(4)、本発明内)
【0037】
〔フェノール樹脂E1〕
三井化学(株)製XLC−3L(水酸基当量170、軟化点67℃、下記構造、本発明内)
【0038】
【化5】

【0039】
[硬化促進剤F]
四国化成工業(株)製2P4MHZ−PW(下記構造)
【0040】
【化6】


【0041】
[硬化促進剤G]
四国化成工業(株)製C11ZA(下記構造)
【0042】
【化7】

【0043】
[離型剤H]
ベーカー・ペトロライト社製Unicid(登録商標)−700(数平均分子量 789、下記構造、本発明内)
CHCH−(CHCH−COOH n(平均)=24
【0044】
[離型剤I]
クラリアント社製PED−136(酸化ポリエチレンワックス、本発明内)
【0045】
[離型剤J]
クラリアント社製PED−521(酸化ポリエチレンワックス、本発明内)
【0046】
[離型剤K]
クラリアント社製PED−190(ポリエチレンワックス、比較品)
【0047】
[離型剤L]
クラリアント社製PED−520(ポリエチレンワックス、比較品)
【0048】
[脂肪酸アミド化合物M]
和光純薬工業(株)製プロピオン酸アミド(下記構造、本発明内)
−CONH
【0049】
[脂肪酸アミド化合物N]
和光純薬工業(株)製ラウリン酸アミド(下記構造、本発明内)
1123−CONH
【0050】
[脂肪酸アミド化合物O]
和光純薬工業(株)製ミスチル酸アミド(下記構造、本発明内)
1327−CONH
【0051】
[脂肪酸アミド化合物P]
和光純薬工業(株)製ステアリン酸アミド(下記構造、本発明内)
1735−CONH
【0052】
[脂肪酸アミド化合物Q]
花王(株)製脂肪酸アミド−S(エルカ酸アミド、下記構造、本発明内)
2141−CONH
【0053】
[脂肪酸アミド化合物R]
ベーカー・ペトロライト社製Unicid(登録商標)−700(C50101−COOH)を尿素と反応させた生成物(下記構造、本発明内)。
50101−CONH
Unicid−700 0.5mol/尿素 1.0molの混合物を175℃で4時間攪拌後、115℃に冷却し5%炭酸ナトリウム溶液を滴下攪拌。
生成物をろ過で回収しエタノールにて洗浄して得た。
【0054】
[脂肪酸アミド化合物S]
和光純薬工業(株)製安息香酸アミド(下記構造、本発明内)
−CONH
【0055】
[脂肪酸アミド化合物T]
和光純薬工業(株)製テレフタル酸アミド(下記構造、本発明内)
−(CONH
【0056】
[脂肪酸アミド化合物U]
日油(株)製アルフロー(登録商標)AD−281F(エチレンビスオレイン酸アミド、下記構造、比較品)
1733−CONH−C−CONH−C1733
【0057】
[脂肪酸アミド化合物V]
日油(株)製アルフロー(登録商標)H−50S(エチレンビスステアリン酸アミド、下記構造、比較品)
1735−CONH−C−CONH−C1735
【0058】
〔無機質充填剤〕
電気化学工業(株)製FB−570(球状溶融シリカ粉末(平均粒径16.2μm)、本発明内)
【0059】
実施例1〜21、比較例1〜21
下記の表1〜表2に示す各原料(質量部)を同表に示す割合で同時に配合し、ミキシングロール機(温度100℃)で3分間溶融混練した。つぎに、この溶融物を冷却した後粉砕し、さらにタブレット状に打錠することにより目的とする半導体封止用エポキシ樹脂組成物(以下、組成物ともいう)を得た。
得られた組成物を以下により評価し、結果を同表に示した。
【0060】
1)連続成形性:
成形金型を予めクリーニングしておき、実施例、比較例で得られた組成物を用いて、トランスファー成形(成形温度175℃、成形時間90秒)でパッケージを封止することを繰り返し、組成物が成形金型に張り付く(スティッキング)まで、又はステインを形成するまでの成形ショット数を測定し、停止ショット数とした。
なお、このパッケージは、ボールグリッドアレイ(BGA)基板(35mm×35mm×厚み0.5mm)に、半導体素子(10mm×10mm×厚み0.3mm)を金線ワイヤー(径0.02mm×長さ4.5mm)でワイヤーボンディングしたものである。
【0061】
2)反り温度依存性:
実施例、比較例で得られた組成物を用いて、トランスファー成形(成形温度175℃、成形時間90秒)でパッケージを封止し、175℃×3時間で後硬化することにより成形物を得た。このパッケージは、ソルダーレジスト(太陽インキ製造(株)、PSR−4000 AUS308)を塗工した基板(55mm×55mm×厚み0.22mm。三菱ガス化学(株)、CCL−HL832)に、シリコンチップ(10mm×10mm×厚み0.37mm)を10mm間隔で縦3個×横3個(計9個)をダイボンディング材(日東電工(株)、EM−700J)で実装したものである。
得られた成形物の反りを25℃から10℃間隔で260℃まで測定し、その間の最大値と最小値の差を算出した。
【0062】
3)パウダーブロッキング性:
実施例、比較例で得られた組成物を粉砕後、25℃/60RH%/24時間放置した後、1mmの篩で、その上に20質量%以上残るものをNG判定(×)とし、そうでないものを○(5質量%未満)、△(5質量%以上20質量%未満)とした。
【0063】
4)難燃性:
実施例、比較例で得られた組成物を用いて、175℃×2分間、後硬化175℃×5時間の成形条件にて厚み1/32インチ、幅10mmの試験片を作製した。得られた試験片について、UL94 V−0規格に従って難燃性を評価した。N=5の総有炎時時間が40秒以下を○、41〜60秒を△、61秒以上を×と判定した。
【0064】
5)流動性
〔スパイラルフロー(SF)〕
スパイラルフロー測定用金型を用い、175±5℃,120秒,70kg/cmの条件でEMMI 1−66の方法に準じて、スパイラルフロー値(cm)を測定した。
〔ゲル化時間(GT)〕
175℃の熱平板上に組成物を約200〜500mg載せ、1.5mm径のガラス棒で攪拌しながら、樹脂の糸引きが見られなくなるまでの時間をゲル化時間(秒)とした。
【0065】
【表1】

【0066】
【表2】

【0067】
上表より、実施例1〜21は、(A)〜(E)成分全てに本発明内のものを用いているので、評価項目1)〜5)が全て同時に満たされ、実用範囲内であることが分かる。
本発明組成物において、本発明内の(C)成分に代えて比較品の脂肪酸アミド化合物を用いるか、(C)成分を用いないと反りの抑制が確保できず、また、流動性との両立もできない傾向が強い(比較例10〜19参照)。また、(C)成分の配合割合が本発明の下限を下回ると比較例2〜5のように反りの抑制が確保できず、(C)成分の配合割合が本発明の上限を上回ると比較例6〜9のようにパウダーブロッキング性が確保できない。また、(C)成分の配合割合(表中、「脂肪酸アミド化合物量」)は、0.4〜2.0質量%が反りの抑制に好ましいことが実施例1〜5から分かる。更に、また、(C)成分のRは、炭素数13以上がパウダーブロッキング性に好ましいことが、実施例4、6〜12から分かる。
本発明組成物において、本発明内の(D)成分に代えて比較品の離型剤を用いると流動性が確保できない(比較例20〜21参照)。(D)成分としては、離型剤(X)が反りの抑制に好ましいことが実施例3、19、20から分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)〜(E)成分を含む半導体封止用エポキシ樹脂組成物であって、(C)成分がエポキシ樹脂組成物全体の0.10〜2.0重量%である、半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
(A)エポキシ樹脂
(B)硬化剤
(C)式(1)で表される脂肪酸アミド化合物
R−(CONH)n (1)
(式(1)中、Rは炭素数1〜60の脂肪族基または芳香族基であり、nは1〜4の整数である。また、脂肪族基は飽和脂肪族基でも不飽和脂肪族基でもよい。)
(D)下記(X)および(Y)から選ばれる少なくとも1種の離型剤
(X)数平均分子量が550〜800の直鎖飽和カルボン酸
(Y)酸化ポリエチレンワックス
(E)無機質充填剤
【請求項2】
(A)成分は、式(2)で表される化合物である請求項1の半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
【化1】


(式(2)中、R11〜R18はそれぞれ独立して水素原子及び炭素数1〜10の置換又は非置換の一価の炭化水素基から選ばれ、nは0〜3の整数を示す。)
【請求項3】
(B)成分は、式(3)又は式(4)で表される化合物である請求項1又は2の半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
【化2】


(式(3)又は(4)中、nはそれぞれ独立して0〜5の整数を示す。)
【請求項4】
(C)成分は、Rの炭素数が13以上である請求項1〜3のいずれかの半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
【請求項5】
(C)成分の含有量は、半導体封止用エポキシ樹脂組成物に対して0.4〜2.0質量%である請求項1〜4のいずれかの半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
【請求項6】
(D)成分は、(X)である請求項1〜5のいずれかの半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかの半導体封止用エポキシ樹脂組成物を用いて、半導体素子を封止してなる半導体装置。

【公開番号】特開2010−280805(P2010−280805A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−134900(P2009−134900)
【出願日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】