説明

半導体封止用エポキシ樹脂組成物及び半導体装置

【課題】ブロム化エポキシ樹脂、アンチモン化合物を使用せずに、低コストながらも耐燃性に優れ、かつ流動性、耐半田性のバランスに優れた半導体封止用エポキシ樹脂組成物を提供する。
【解決手段】(A)インデン骨格を有するエポキシ樹脂と、(B)硬化剤と、(C)無機充填剤とを含むことを特徴とする半導体封止用エポキシ樹脂組成物、並びに、その半導体封止用エポキシ樹脂組成物の硬化物により半導体素子を封止してなることを特徴とする半導体装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体封止用エポキシ樹脂組成物及び半導体装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、集積回路(IC)、大規模集積回路(LSI)、超大規模集積回路(VLSI)等の電子部品や半導体装置の高密度化、高集積化に伴い、それらの実装方式は、挿入実装から表面実装に移り変わりつつある。それに伴い、リードフレームの多ピン化及びリードの狭ピッチ化が要求されており、小型・軽量でかつ多ピン化に対応できる表面実装型のQFP(Quad Flat Package)等が各種の半導体装置に用いられている。そしてその半導体装置は、生産性、コスト、信頼性等のバランスに優れることからエポキシ樹脂組成物を用いて封止されるのが主流となっている。
【0003】
従来、難燃性を付与する目的から、半導体封止用エポキシ樹脂組成物には、臭素含有エポキシ樹脂、酸化アンチモンが一般的に使用されてきたが、近年、環境保護の観点からダイオキシン類似化合物を発生する危惧のある含ハロゲン化合物や毒性の高いアンチモン化合物の使用を規制する動きが高まっている。こうした中、ブロム化エポキシ樹脂やアンチモン化合物代替の水酸化アルミニウムや水酸化マグネシウム等の金属酸化物の難燃剤が使用されてきているが、溶融樹脂粘度の増加による流動性の低下や耐半田性の低下という課題があった。
【0004】
上記のような状況から、難燃性付与剤を添加せずとも良好な難燃性が得られる半導体エポキシ樹脂組成物として、ビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂を用いたエポキシ樹脂組成物が提案されている(例えば、特許文献1、2参照。)。これらのエポキシ樹脂組成物は、低吸水性、熱時低弾性率、高接着性で、難燃性に優れ、信頼性の高い半導体装置を得ることができるものの、これらの樹脂の製造には、コストがかかる、また、薄型の半導体装置を封止する際に流動性が十分でない場合があるという難点があった。
【0005】
【特許文献1】特開2004−203911号公報
【特許文献2】特開2004−155841号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、ブロム化エポキシ樹脂、アンチモン化合物を使用せずに、低コストながらも耐燃性に優れ、かつ流動性、耐半田性のバランスが良好な半導体封止用エポキシ樹脂組成物及びその硬化物により半導体素子を封止してなる信頼性に優れた半導体装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物は、(A)下記一般式(1)で表されるエポキシ樹脂と、(B)硬化剤と、(C)無機充填剤とを含むことを特徴とする。
【0008】
【化1】

(ただし、上記一般式(1)において、Arはそれぞれ炭素数1〜10の芳香環であり、互いに同じであっても異なっていてもよい。R1、R2、R3はそれぞれ炭素数1〜6の炭化水素基であり、互いに同じであっても異なっていてもよい。aは0〜5の整数、bは0〜2の整数、cは0〜5の整数である。nは0〜10の整数である。dはそれぞれ0〜5の整数であり、互いに同じであっても異なっていてもよく、kはそれぞれ0〜20の整数であり、互いに同じであっても異なっていてもよいが、(インデン骨格の総数)/(グリシジルエーテル基が結合した芳香環の総数)の平均は0.2〜5.0である。なお、グリシジルエーテル基が結合した芳香環がナフタレン環の場合、ナフタレン環一つにつき、芳香環1つとカウントする。)
【0009】
本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物は、前記一般式(1)で表されるエポキシ樹脂(A)が、フェノール樹脂類、下記一般式(2)で表される化合物とを反応させて得られたインデン変性フェノール樹脂類を、エピクロルヒドリンでグリシジルエーテル化したエポキシ樹脂であるものとすることができる。
【0010】
【化2】

(ただし、上記一般式(2)において、R3は炭素数1〜6の炭化水素基であり、互いに同じであっても異なっていてもよい。cは0〜5の整数である。)
【0011】
本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物は、前記一般式(1)で表されるエポキシ樹脂(A)が下記一般式(3)で表されるエポキシ樹脂であるものとすることができる。
【0012】
【化3】

(ただし、上記一般式(3)において、nは0〜10の整数である。eはそれぞれ0〜3の整数であり、互いに同じであっても異なっていてもよく、kはそれぞれ0〜20の整数であり、互いに同じであっても異なっていてもよいが、(インデン骨格の総数)/(グリシジルエーテル基が結合した芳香環の総数)の平均は0.2〜5.0である。)
【0013】
本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物は、(A)フェノール樹脂類、下記一般式(2)で表される化合物とを反応させて得られたインデン変性フェノール樹脂類を、エピクロルヒドリンでグリシジルエーテル化したエポキシ樹脂と、(B)硬化剤と、(C)無機充填剤とを含むことを特徴とする。
【0014】
【化2】

(ただし、上記一般式(2)において、R3は炭素数1〜6の炭化水素基であり、互いに同じであっても異なっていてもよい。cは0〜5の整数である。)
【0015】
本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物は、前記硬化剤(B)がフェノール樹脂系硬化剤であるものとすることができる。
【0016】
本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物は、(D)硬化促進剤をさらに含むものとすることができる。
【0017】
本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物は、前記硬化促進剤(D)が、テトラ置換ホスホニウム化合物、ホスホベタイン化合物、ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物、及びホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物から選ばれた少なくとも1種の潜伏性を有する硬化促進剤を含むものとすることができる。
【0018】
本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物は、芳香環を構成する2個以上の隣接する炭素原子にそれぞれ水酸基が結合した化合物(E)をさらに含むものとすることができる。
【0019】
本発明の半導体装置は、前述の半導体封止用エポキシ樹脂組成物の硬化物により半導体素子を封止してなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明に従うと、ブロム化エポキシ樹脂、アンチモン化合物を使用せずに、低コストながらも耐燃性に優れ、かつ流動性、耐半田性のバランスが良好な半導体封止用エポキシ樹脂組成物及び信頼性に優れた半導体装置を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明は、(A)インデン骨格を有するエポキシ樹脂と、(B)硬化剤と、(C)無機充填剤とを含むことにより、低コストながらも耐燃性に優れ、かつ流動性、耐半田性のバランスに優れる半導体封止用エポキシ樹脂組成物及び信頼性に優れた半導体装置が得られるものである。以下、本発明について詳細に説明する。
【0022】
先ず、半導体封止用エポキシ樹脂組成物について説明する。本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物では、エポキシ樹脂として下記一般式(1)で表されるエポキシ樹脂(A)を用いることができる。該エポキシ樹脂(A)は、分子内に芳香族環炭素が多く、これを用いたエポキシ樹脂組成物の硬化物は耐燃性に優れ、吸水率が低く、密着性が向上するという特徴を有している。これらのうちでは、硬化性に優れるという観点から、下記一般式(3)で表される化合物がより好ましい。
【0023】
【化1】

(ただし、上記一般式(1)において、Arはそれぞれ炭素数1〜10の芳香環であり、互いに同じであっても異なっていてもよい。R1、R2、R3はそれぞれ炭素数1〜6の炭化水素基であり、互いに同じであっても異なっていてもよい。aは0〜5の整数、bは0〜2の整数、cは0〜5の整数である。nは0〜10の整数である。dはそれぞれ0〜5の整数であり、互いに同じであっても異なっていてもよく、kはそれぞれ0〜20の整数であり、互いに同じであっても異なっていてもよいが、(インデン骨格の総数)/(グリシジルエーテル基が結合した芳香環の総数)の平均は0.2〜5.0である。なお、グリシジルエーテル基が結合した芳香環がナフタレン環の場合、ナフタレン環一つにつき、芳香環1つとカウントする。)
【0024】
【化3】

(ただし、上記一般式(3)において、nは0〜10の整数である。eはそれぞれ0〜3の整数であり、互いに同じであっても異なっていてもよく、kはそれぞれ0〜20の整数であり、互いに同じであっても異なっていてもよいが、(インデン骨格の総数)/(グリシジルエーテル基が結合した芳香環の総数)の平均は0.2〜5.0である。)
【0025】
一般式(1)で表されるエポキシ樹脂(A)におけるkは0〜20の整数であり、nは0〜10の整数を表す。エポキシ樹脂(A)は、少なくとも1つ以上のインデン骨格を有するものであり、(インデン骨格の総数)/(グリシジルエーテル基が結合した芳香環の総数)の平均値の下限値としては、0.2以上であることが好ましく、0.5以上であることがより好ましい。(インデン骨格の総数)/(グリシジルエーテル基が結合した芳香環の総数)の平均値の下限値が上記範囲内であると、エポキシ樹脂組成物の耐燃性、耐半田性の向上効果を得ることができる。また、(インデン骨格の総数)/(グリシジルエーテル基が結合した芳香環の総数)の平均値の上限値としては、5.0以下であることが好ましく、3.5以下であることがより好ましい。(インデン骨格の総数)/(グリシジルエーテル基が結合した芳香環の総数)の平均値の上限値が上記範囲内であると、流動性と硬化性に優れた樹脂組成物を得ることができる。なお、グリシジルエーテル基が結合した芳香環がナフタレン環の場合、ナフタレン環一つにつき、芳香環1つとカウントする。
nの平均値の上限値としては、特に限定されないが、エポキシ樹脂の粘度、樹脂組成物の流動性という観点からは、5以下であることが好ましく、3以下であることがより好ましい。(インデン骨格の総数)/(グリシジルエーテル基が結合した芳香環の総数)の平均値は、エポキシ樹脂(A)のH−NMR、又はC−NMR測定によってインデン骨格中に含まれるベンゼン環由来のシグナルとグリシジルエーテル基が結合した芳香環中に含まれるベンゼン環又はナフタレン環由来のシグナルの強度比によって算出することができる。また、エポキシ樹脂(A)のエポキシ当量から計算により求めることもできる。
【0026】
本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物で用いられる一般式(1)で表されるエポキシ樹脂(A)は、フェノール樹脂類と下記一般式(2)で表される化合物(インデンモノマー類)とを反応させて得られるインデン変性フェノール樹脂にエピハロヒドリン類を加えてグリシジルエーテル化するか、あるいはフェノールノボラック型エポキシ樹脂類又はビスフェノール型エポキシ樹脂類と下記一般式(2)で表される化合物(インデンモノマー類)とを反応させて得ることができ、収率の点で前者の方法が好ましい。一般式(1)で表されるエポキシ樹脂(A)は、従来から用いられてきた3a,4,7,7a−テトラヒドロインデンのような芳香環を有さないインデン化合物ではなく、芳香環を有するインデン化合物である下記一般式(2)で表される化合物を用いているため、最終生成物であ
る一般式(1)で表されるエポキシ樹脂(A)中における芳香環構造の密度が向上し、結果として耐燃性・耐湿性が顕著に向上する特長がある。また、耐燃性に優れ、低吸水性であるビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂よりも原料コストが安く、原料も入手し易いといった利点があるため、低コストで製造又は入手することができるものである。
【0027】
【化2】

(ただし、上記一般式(2)において、R3は炭素数1〜6の炭化水素基であり、互いに同じであっても異なっていてもよい。cは0〜5の整数である。)
【0028】
エポキシ樹脂(A)の出発原料であるフェノール樹脂類としては、ベンゼン環又はナフタレン環にフェノール性水酸基を有する構造が1個の炭素原子を介して共有結合している構造を有するものであって、ベンゼン環又はナフタレン環にフェノール性水酸基を有する構造の数が2〜12個の範囲のものであれば特に制限を受けるものではないが、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、テトラメチルビスフェノールF等のビスフェノール化合物、又はノボラック型フェノール樹脂、クレゾールノボラック型フェノール樹脂等のフェノールモノマー類とアルデヒド類との重縮合によって得られるノボラック型フェノール樹脂類などが挙げられる。エポキシ樹脂組成物における流動性や硬化性の観点からは、ベンゼン環にフェノール性水酸基を有する構造が2〜4個のものを主成分とするものが好ましく、2〜3個のものを主成分とするものがより好ましい。
【0029】
エポキシ樹脂(A)の出発原料であるノボラック型フェノール樹脂類の製造に用いられるフェノールモノマー類としては、ベンゼン環又はナフタレン環にフェノール性水酸基を有する構造であれば特に制限は無いが、炭素数1〜6の炭化水素置換基を0〜3個結合した構造でもよく、例えば、フェノール、o−クレゾール、p−クレゾール、m−クレゾール、フェニルフェノール、エチルフェノール、n−プロピルフェノール、iso−プロピルフェノール、t−ブチルフェノール、キシレノール、メチルプロピルフェノール、メチルブチルフェノール、ジプロピルフェノール、ジブチルフェノール、ノニルフェノール、メシトール、2,3,5−トリメチルフェノール、2,3,6−トリメチルフェノール、α−ナフトール、β−ナフトール、2‐メチル‐1‐ナフトール、3-メチル−1−ナフ
トール、4‐メチル‐1‐ナフトール、6-メチル−1−ナフトール、7-メチル−1−ナフトール、8‐メチル‐1‐ナフトール、9-メチル−1−ナフトール、3‐メチル‐2
‐ナフトール、5‐メチル‐1‐ナフトール、6,7‐ジメチル‐1‐ナフトール、5,7‐ジメチル‐1‐ナフトール、2,5,8‐トリメチル‐1‐ナフトール、2,6‐ジメチル‐1‐ナフトール、2,3‐ジメチル‐1‐ナフトール、2‐メチル‐3‐フェニル‐1‐ナフトール、2‐メチル‐3‐エチル‐1‐ナフトール、ラシニレンA、7−ヒドロキシカダレン、1,6−ジ−ターシャル−ブチルナフタレン―2−オール、6−ヘキシルー2ナフトール等が挙げられる。これらの中でも、フェノール、o−クレゾールが好ましく、さらにフェノールがより好ましい。これらは、1種類を単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。
【0030】
エポキシ樹脂(A)の出発原料であるノボラック型フェノール樹脂類の製造に用いられるアルデヒド類としては、例えば、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、ベンズアルデヒドなどが挙げられる。これらの中でもホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒドが
好ましい。これらは、1種類を単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。
【0031】
本発明で用いられるエポキシ樹脂(A)の出発原料であるフェノール樹脂類の合成方法については特に限定はなく、市販品を用いてもよい。エポキシ樹脂(A)の出発原料として使用できるノボラック型フェノール樹脂類の合成方法としては、たとえばフェノールモノマー類とアルデヒド類又はケトン類との共存下で酸性触媒を用いて共縮合させる方法が挙げられる。ここで、エポキシ樹脂(A)の重合度(n+2)をより好ましい範囲とするためには、酸触媒の配合量を減らす、アルデヒド類の配合量を減らす、共縮合温度を下げるなどの手法によって重合度を低減することができる。
【0032】
エポキシ樹脂(A)の製造に用いられる一般式(2)で表される化合物としては、一般式(2)の構造で、R3が炭素数1〜6の炭化水素基、cが0〜3の整数であれば特に制限はない。R3(炭素数1〜6の炭化水素)の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、2−メチルブチル基、3−メチルブチル基、t−ペンチル基、n−ヘキシル、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、4−メチルペンチル基、2,2−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基、2,4−ジメチルブチル基、3,3−ジメチルブチル基、3,4−ジメチルブチル基、4,4−ジメチルブチル基、2−エチルブチル基、1−エチルブチル基、シクロヘキシル基及びフェニル基などが挙げられるが、c=0の構造のものが、フェノール樹脂骨格への導入が容易でかつ工業的に比較的安価に入手することができる。ただし、工業的に安価で入手できるインデン類の中のいくつかには、クマロン類、スチレン類やフェノール類などが不純物として含まれることがあり、これらの不純物は25%以下であることが好ましい。
【0033】
【化2】

(ただし、上記一般式(2)において、R3は炭素数1〜6の炭化水素基であり、互いに同じであっても異なっていてもよい。cは0〜5の整数である。)
【0034】
エポキシ樹脂(A)の前駆体であるインデン変性フェノール樹脂の合成方法については特に限定しないが、その合成方法としては、たとえば出発原料であるフェノール樹脂類のフェノール性水酸基1モルに対して、一般式(2)で表される化合物0.2〜5.0モル
、ルイス酸、スルホン酸、燐酸、酢酸などのカチオン重合触媒0.01〜0.05モル、トルエンなどの有機溶媒を80℃から120℃の温度で2〜12時間反応させた後、水洗などによってカチオン重合触媒を除去することによって得ることができる。ここで、所望の(インデン骨格の総数)/(グリシジルエーテル基が結合した芳香環の総数)値を得るには、反応容器に適切な冷却環を備えることで、ほぼ仕込み量を反映した(インデン骨格の総数)/(グリシジルエーテル基が結合した芳香環の総数)値を得ることができる。また、均一な変性フェノール樹脂を得るために、たとえば反応に先立ってフェノール樹脂を粒状に粉砕し、反応容器に適切な攪拌装置を設けることが好ましい。
【0035】
本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物で用いられる一般式(1)で表されるエポキシ樹脂(A)の合成方法については特に限定しないが、例えば、エポキシ樹脂(A)の前駆体であるインデン変性フェノール樹脂を過剰のエピクロルヒドリンに溶解した後、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物の存在下で50〜150℃、好
ましくは60〜120℃で1〜10時間反応させる方法等が挙げられる。反応終了後、過剰のエピクロルヒドリンを留去し、残留物をトルエン、メチルイソブチルケトン等の溶剤に溶解し、濾過し、水洗して無機塩を除去し、次いで溶剤を留去することによりエポキシ樹脂(A)を得ることができる。
【0036】
本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物では、一般式(1)で表されるエポキシ樹脂(A)を用いることによる効果が損なわれない範囲で、他のエポキシ樹脂を併用することができる。併用できるエポキシ樹脂としては、例えばビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂等の結晶性エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂;トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、アルキル変性トリフェノールメタン型エポキシ樹脂等の多官能エポキシ樹脂;フェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂、フェニレン骨格を有するナフトールアラルキル型エポキシ樹脂等のアラルキル型エポキシ樹脂;ジヒドロキシナフタレン型エポキシ樹脂、ヒドロキシナフタレン及び/又はジヒドロキシナフタレンの2量体をグリシジルエーテル化して得られるエポキシ樹脂等のナフトール型エポキシ樹脂;トリグリシジルイソシアヌレート、モノアリルジグリシジルイソシアヌレート等のトリアジン核含有エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン変性フェノール型エポキシ樹脂等の有橋環状炭化水素化合物変性フェノール型エポキシ樹脂が挙げられる。半導体封止用エポキシ樹脂組成物としての耐湿信頼性を考慮すると、イオン性不純物であるNaイオンやClイオンが極力少ない方が好ましく、硬化性の点からエポキシ当量としては100g/eq以上500g/eq以下が好ましい。
【0037】
他のエポキシ樹脂を併用する場合における一般式(1)で表されるエポキシ樹脂(A)の配合割合としては、全エポキシ樹脂に対して、30重量%以上であることが好ましく、45重量%以上であることがより好ましく、60重量%以上であることが特に好ましい。配合割合が上記範囲内であると、耐燃性、低吸水性等を向上させる効果を得ることができる。
【0038】
エポキシ樹脂全体の配合割合の下限値については、特に限定されないが、全半導体封止用エポキシ樹脂組成物中に、2重量%以上であることが好ましく、4重量%以上であることがより好ましい。配合割合の下限値が上記範囲内であると、流動性の低下等を引き起こす恐れが少ない。また、エポキシ樹脂全体の配合割合の上限値についても、特に限定されないが、全半導体封止用エポキシ樹脂組成物中に、15重量%以下であることが好ましく、13重量%以下であることがより好ましい。配合割合の上限値が上記範囲内であると、耐半田性の低下等を引き起こす恐れが少ない。
【0039】
本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物では、硬化剤(B)を用いる。本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物で用いることができる硬化剤としては、例えば重付加型の硬化剤、触媒型の硬化剤、縮合型の硬化剤の3タイプに大別することができる。
【0040】
重付加型の硬化剤としては、例えば、ジエチレントリアミン(DETA)、トリエチレンテトラミン(TETA)、メタキシレリレンジアミン(MXDA)などの脂肪族ポリアミン、ジアミノジフェニルメタン(DDM)、m−フェニレンジアミン(MPDA)、ジアミノジフェニルスルホン(DDS)などの芳香族ポリアミンのほか、ジシアンジアミド(DICY)、有機酸ジヒドララジドなどを含むポリアミン化合物;ヘキサヒドロ無水フタル酸(HHPA)、メチルテトラヒドロ無水フタル酸(MTHPA)などの脂環族酸無水物、無水トリメリット酸(TMA)、無水ピロメリット酸(PMDA)、ベンゾフェノンテトラカルボン酸(BTDA)などの芳香族酸無水物などを含む酸無水物;ノボラック型フェノール樹脂、フェノールポリマーなどのポリフェノール化合物;ポリサルファイド
、チオエステル、チオエーテルなどのポリメルカプタン化合物;イソシアネートプレポリマー、ブロック化イソシアネートなどのイソシアネート化合物;カルボン酸含有ポリエステル樹脂などの有機酸類などが挙げられる。
【0041】
触媒型の硬化剤としては、例えば、ベンジルジメチルアミン(BDMA)、2,4,6−トリスジメチルアミノメチルフェノール(DMP−30)などの3級アミン化合物;2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール(EMI24)などのイミダゾール化合物;BF3錯体などのルイス酸などが挙げられる。
【0042】
縮合型の硬化剤としては、例えば、ノボラック型フェノール樹脂、レゾール型フェノール樹脂等のフェノール樹脂系硬化剤;メチロール基含有尿素樹脂のような尿素樹脂;メチロール基含有メラミン樹脂のようなメラミン樹脂などが挙げられる。
【0043】
これらの中でも、耐燃性、耐湿性、電気特性、硬化性、保存安定性等のバランスの点からフェノール樹脂系硬化剤が好ましい。フェノール樹脂系硬化剤は、一分子内にフェノール性水酸基を2個以上有するモノマー、オリゴマー、ポリマー全般であり、その分子量、分子構造を特に限定するものではないが、例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂等のノボラック型樹脂;トリフェノールメタン型フェノール樹脂等の多官能型フェノール樹脂;テルペン変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂等の変性フェノール樹脂;フェニレン骨格及び/又はビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂、フェニレン及び/又はビフェニレン骨格を有するナフトールアラルキル樹脂等のアラルキル型樹脂;ビスフェノールA、ビスフェノールF等のビスフェノール化合物等が挙げられ、これらは1種類を単独で用いても2種類以上を併用してもよい。これらのうち、硬化性の点から水酸基当量は90g/eq以上、250g/eq以下のものが好ましい。
【0044】
硬化剤(B)全体の配合割合の下限値については、特に限定されないが、全半導体封止用エポキシ樹脂組成物中に、0.8重量%以上であることが好ましく1.5重量%以上であることがより好ましい。配合割合の下限値が上記範囲内であると、充分な流動性を得ることができる。また、硬化剤(B)全体の配合割合の上限値についても、特に限定されないが、全半導体封止用エポキシ樹脂組成物中に、10重量%以下であることが好ましく、8重量%以下であることがより好ましい。配合割合の上限値が上記範囲内であると、良好な耐半田性を得ることができる。
【0045】
また、硬化剤としてフェノール樹脂系硬化剤を用いる場合においては、エポキシ樹脂全体とフェノール樹脂系硬化剤全体との配合比率としては、エポキシ樹脂全体のエポキシ基数(EP)とフェノール樹脂系硬化剤全体のフェノール性水酸基数(OH)との当量比(EP)/(OH)が0.8以上、1.3以下であることが好ましい。当量比がこの範囲であると、半導体封止用エポキシ樹脂組成物の成形時に充分な硬化性を得ることができる。また、当量比がこの範囲であると、樹脂硬化物における良好な物性を得ることができる。
【0046】
本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物では、(C)無機充填剤を用いる。本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物用いる無機充填剤(C)としては、一般に半導体封止用樹脂組成物に用いられているものを使用することができ、例えば、溶融シリカ、球状シリカ、結晶シリカ、アルミナ、窒化珪素、窒化アルミ等が挙げられる。無機充填剤(C)の粒径としては、金型キャビティへの充填性を考慮すると0.01μm以上、150μm以下であることが望ましい。
【0047】
無機充填剤(C)の含有割合の下限値としては、半導体封止用エポキシ樹脂組成物全体の80重量%以上であることが好ましく、82重量%以上であることがより好ましく、8
4重量%以上であることが特に好ましい。無機充填剤(C)の含有割合の下限値が上記範囲内であると、半導体封止用エポキシ樹脂組成物の硬化物物性として、吸湿量が増加したり、強度が低下したりすることがなく、良好な耐半田クラック性を得ることができる。また、無機充填剤(C)の含有割合の上限値としては、半導体封止用エポキシ樹脂組成物全体の92重量%以下であることが好ましく、91重量%以下であることがより好ましく、90重量%以下であることが特に好ましい。無機充填剤(C)の含有割合の上限値が上記範囲内であると、流動性が損なわれることがなく、良好な成形性を得ることができる。
【0048】
本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物では、さらに硬化促進剤(D)を用いることができる。硬化促進剤(D)は、エポキシ樹脂と硬化剤との架橋反応を促進する作用を有するものであればよく、一般の半導体封止用エポキシ樹脂組成物に使用されているものを利用することができる。具体例としては、有機ホスフィン、テトラ置換ホスホニウム化合物、ホスホベタイン化合物、ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物、ホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物等のリン原子含有硬化促進剤;1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7、ベンジルジメチルアミン、2−メチルイミダゾール等の窒素原子含有硬化促進剤が挙げられ、これらのうち、リン原子含有硬化促進剤が好ましい硬化性を得ることができる。しかしながら、一般式(1)で表されるエポキシ樹脂(A)、硬化剤(B)、無機充填材(C)に、潜伏性を有しないリン原子含有硬化促進剤を配合すると、樹脂配合物の溶融混練中に発熱反応による組成物粘度増加・硬化が起こり、封止用樹脂組成物の生産が極めて不安定となる場合がある。その機構の詳細は不明であるが、エポキシ樹脂(A)中のインデン骨格の存在により、リン原子の硬化促進作用が著しく発現するためと推測される。上述の生産上の不具合を回避する観点から、テトラ置換ホスホニウム化合物、ホスホベタイン化合物、ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物、ホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物等の潜伏性を有するリン原子含有硬化促進剤を用いることで、溶融混練中での反応を抑えることができ、安定して半導体封止用樹脂組成物を得ることができる。また、潜伏性を有しないリン原子含有硬化促進剤を用いる場合であっても、後述する芳香環を構成する2個以上の隣接する炭素原子にそれぞれ水酸基が結合した化合物(E)を併用することによって、同様に溶融混練中での反応を抑えることができ、安定して半導体封止用樹脂組成物を得ることができる。また、流動性と硬化性のバランスの観点からも、テトラ置換ホスホニウム化合物、ホスホベタイン化合物、ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物、ホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物等の潜伏性を有するリン原子含有硬化促進剤がより好ましい。流動性という点を重視する場合にはテトラ置換ホスホニウム化合物が特に好ましく、また半導体封止用エポキシ樹脂組成物の硬化物熱時低弾性率という点を重視する場合にはホスホベタイン化合物、ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物が特に好ましく、また潜伏的硬化性という点を重視する場合にはホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物が特に好ましい。
【0049】
本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物で用いることができる有機ホスフィンとしては、例えばエチルホスフィン、フェニルホスフィン等の第1ホスフィン;ジメチルホスフィン、ジフェニルホスフィン等の第2ホスフィン;トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン等の第3ホスフィンが挙げられる。
【0050】
本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物で用いることができるテトラ置換ホスホニウム化合物としては、例えば下記一般式(4)で表される化合物等が挙げられる。
【0051】
【化4】

(ただし、上記一般式(4)において、Pはリン原子を表す。R4、R5、R6及びR7は芳香族基又はアルキル基を表す。Aはヒドロキシル基、カルボキシル基、チオール基から選ばれる官能基のいずれかを芳香環に少なくとも1つ有する芳香族有機酸のアニオンを表す。AHはヒドロキシル基、カルボキシル基、チオール基から選ばれる官能基のいずれかを芳香環に少なくとも1つ有する芳香族有機酸を表す。x、yは1〜3の整数、zは0〜3の整数であり、かつx=yである。)
【0052】
一般式(4)で表される化合物は、例えば以下のようにして得られるがこれに限定されるものではない。まず、テトラ置換ホスホニウムハライドと芳香族有機酸と塩基を有機溶剤に混ぜ均一に混合し、その溶液系内に芳香族有機酸アニオンを発生させる。次いで水を加えると、一般式(4)で表される化合物を沈殿させることができる。一般式(4)で表される化合物において、リン原子に結合するR4、R5、R6及びR7がフェニル基であり、かつAHはヒドロキシル基を芳香環に有する化合物、すなわちフェノール類であり、かつAは該フェノール類のアニオンであるのが好ましい。
【0053】
本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物で用いることができるホスホベタイン化合物としては、例えば下記一般式(5)で表される化合物等が挙げられる。
【化5】

(ただし、上記一般式(5)において、X1は炭素数1〜3のアルキル基、Y1はヒドロキシル基を表す。fは0〜5の整数であり、gは0〜3の整数である。)
【0054】
一般式(5)で表される化合物は、例えば以下のようにして得られる。まず、第三ホスフィンであるトリ芳香族置換ホスフィンとジアゾニウム塩とを接触させ、トリ芳香族置換ホスフィンとジアゾニウム塩が有するジアゾニウム基とを置換させる工程を経て得られる。しかしこれに限定されるものではない。
【0055】
本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物で用いることができるホスフィン化合物とキノン化合物との付加物としては、例えば下記一般式(6)で表される化合物等が挙げられる。
【化6】

(ただし、上記一般式(6)において、Pはリン原子を表す。R8、R9及びR10は炭素数1〜12のアルキル基又は炭素数6〜12のアリール基を表し、互いに同一であっても異なっていてもよい。R11、R12及びR13は水素原子又は炭素数1〜12の炭化水素基を表し、互いに同一であっても異なっていてもよく、R11とR12が結合して環状構造となっていてもよい。)
【0056】
ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物に用いるホスフィン化合物としては、例えばトリフェニルホスフィン、トリス(アルキルフェニル)ホスフィン、トリス(アルコキシフェニル)ホスフィン、トリナフチルホスフィン、トリス(ベンジル)ホスフィン等の芳香環に無置換又はアルキル基、アルコキシル基等の置換基が存在するものが好ましく、アルキル基、アルコキシル基等の置換基としては1〜6の炭素数を有するものが挙げられる。入手しやすさの観点からはトリフェニルホスフィンが好ましい。
【0057】
またホスフィン化合物とキノン化合物との付加物に用いるキノン化合物としては、o−ベンゾキノン、p−ベンゾキノン、アントラキノン類が挙げられ、中でもp−ベンゾキノンが保存安定性の点から好ましい。
【0058】
ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物の製造方法としては、有機第三ホスフィンとベンゾキノン類の両者が溶解することができる溶媒中で接触、混合させることにより付加物を得ることができる。溶媒としてはアセトンやメチルエチルケトン等のケトン類で付加物への溶解性が低いものがよい。しかしこれに限定されるものではない。
【0059】
一般式(6)で表される化合物において、リン原子に結合するR8、R9及びR10がフェニル基であり、かつR11、R12及びR13が水素原子である化合物、すなわち1,4−ベンゾキノンとトリフェニルホスフィンを付加させた化合物が半導体封止用エポキシ樹脂組成物の硬化物の熱時弾性率を低下させる点で好ましい。
【0060】
本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物で用いることができるホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物としては、例えば下記一般式(7)で表される化合物等が挙げられる。
【化7】

(ただし、上記一般式(7)において、Pはリン原子を表し、Siは珪素原子を表す。R14、R15、R16及びR17は、それぞれ、芳香環又は複素環を有する有機基、ある
いは脂肪族基を表し、互いに同一であっても異なっていてもよい。式中X2は、基Y2及びY3と結合する有機基である。式中X3は、基Y4及びY5と結合する有機基である。Y2及びY3は、プロトン供与性基がプロトンを放出してなる基を表し、同一分子内の基Y2及びY3が珪素原子と結合してキレート構造を形成するものである。Y4及びY5はプロトン供与性基がプロトンを放出してなる基を表し、同一分子内の基Y4及びY5が珪素原子と結合してキレート構造を形成するものである。X2、及びX3は互いに同一であっても異なっていてもよく、Y2、Y3、Y4、及びY5は互いに同一であっても異なっていてもよい。Z1は芳香環又は複素環を有する有機基、あるいは脂肪族基である。)
【0061】
一般式(7)において、R14、R15、R16及びR17としては、例えば、フェニル基、メチルフェニル基、メトキシフェニル基、ヒドロキシフェニル基、ナフチル基、ヒドロキシナフチル基、ベンジル基、メチル基、エチル基、n−ブチル基、n−オクチル基及びシクロヘキシル基等が挙げられ、これらの中でも、フェニル基、メチルフェニル基、メトキシフェニル基、ヒドロキシフェニル基、ヒドロキシナフチル基等の置換基を有する芳香族基もしくは無置換の芳香族基がより好ましい。
【0062】
また、一般式(7)において、X2は、Y2及びY3と結合する有機基である。同様に、X3は、基Y4及びY5と結合する有機基である。Y2及びY3はプロトン供与性基がプロトンを放出してなる基であり、同一分子内の基Y2及びY3が珪素原子と結合してキレート構造を形成するものである。同様にY4及びY5はプロトン供与性基がプロトンを放出してなる基であり、同一分子内の基Y4及びY5が珪素原子と結合してキレート構造を形成するものである。基X2及びX3は互いに同一であっても異なっていてもよく、基Y2、Y3、Y4、及びY5は互いに同一であっても異なっていてもよい。このような一般式(7)中の−Y2−X2−Y3−、及び−Y4−X3−Y5−で表される基は、プロトン供与体が、プロトンを2個放出してなる基で構成されるものであり、プロトン供与体としては、例えば、カテコール、ピロガロール、1,2−ジヒドロキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシナフタレン、2,2’−ビフェノール、1,1’−ビ−2−ナフトール、サリチル酸、1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、クロラニル酸、タンニン酸、2−ヒドロキシベンジルアルコール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,2−プロパンジオール及びグリセリン等が挙げられるが、これらの中でも、カテコール、1,2−ジヒドロキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシナフタレンがより好ましい。
【0063】
また、一般式(7)中のZ1は、芳香環又は複素環を有する有機基又は脂肪族基を表し、これらの具体的な例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基及びオクチル基等の脂肪族炭化水素基や、フェニル基、ベンジル基、ナフチル基及びビフェニル基等の芳香族炭化水素基、グリシジルオキシプロピル基、メルカプトプロピル基、アミノプロピル基及びビニル基等の反応性置換基などが挙げられるが、これらの中でも、メチル基、エチル基、フェニル基、ナフチル基及びビフェニル基が熱安定性の面から、より好ましい。
【0064】
ホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物の製造方法としては、メタノールを入れたフラスコに、フェニルトリメトキシシラン等のシラン化合物、2,3−ジヒドロキシナフタレン等のプロトン供与体を加えて溶かし、次に室温攪拌下ナトリウムメトキシド−メタノール溶液を滴下する。さらにそこへ予め用意したテトラフェニルホスホニウムブロマイド等のテトラ置換ホスホニウムハライドをメタノールに溶かした溶液を室温攪拌下滴下すると結晶が析出する。析出した結晶を濾過、水洗、真空乾燥すると、ホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物が得られる。しかし、これに限定されるものではない。
【0065】
本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物に用いることができる硬化促進剤(D)の配
合割合は、全エポキシ樹脂組成物中0.1重量%以上、1重量%以下であることがより好ましい。硬化促進剤(D)の配合量が上記範囲内であると、充分な硬化性を得ることができる。また、硬化促進剤(D)の配合量が上記範囲内であると、充分な流動性を得ることができる。
【0066】
本発明では、さらに芳香環を構成する2個以上の隣接する炭素原子にそれぞれ水酸基が結合した化合物(E)を用いることができる。芳香環を構成する2個以上の隣接する炭素原子にそれぞれ水酸基が結合した化合物(E)(以下、「化合物(E)」とも称する。)は、これを用いることにより、一般式(1)で表されるエポキシ樹脂(A)と硬化剤(B)との架橋反応を促進させる硬化促進剤として、潜伏性を有しないリン原子含有硬化促進剤を用いた場合であっても、樹脂配合物の溶融混練中での反応を抑えることができ、安定して半導体封止用樹脂組成物を得ることができる。また、化合物(E)は、半導体封止用樹脂組成物の溶融粘度を下げ、流動性を向上させる効果も有するものである。化合物(E)としては、下記一般式(8)で表される単環式化合物又は下記一般式(9)で表される多環式化合物等を用いることができ、これらの化合物は水酸基以外の置換基を有していてもよい。
【0067】
【化8】

(ただし、上記一般式(8)において、R18、R22はどちらか一方が水酸基であり、片方が水酸基のとき他方は水素原子、水酸基又は水酸基以外の置換基である。R19、R20、及びR21は水素原子、水酸基又は水酸基以外の置換基である。)
【0068】
【化9】

(ただし、上記一般式(9)において、R23、R29はどちらか一方が水酸基であり、片方が水酸基のとき他方は水素原子、水酸基又は水酸基以外の置換基である。R24、R25、R26、R27及びR28は水素原子、水酸基又は水酸基以外の置換基である。)
【0069】
一般式(8)で表される単環式化合物の具体例としては、例えば、カテコール、ピロガロール、没食子酸、没食子酸エステル又はこれらの誘導体が挙げられる。また、一般式(9)で表される多環式化合物の具体例としては、例えば、1,2−ジヒドロキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシナフタレン及びこれらの誘導体が挙げられる。これらのうち、流動性と硬化性の制御のしやすさから、芳香環を構成する2個の隣接する炭素原子にそれぞれ水酸基が結合した化合物が好ましい。また、混練工程での揮発を考慮した場合、母核は低揮発性で秤量安定性の高いナフタレン環である化合物とすることがより好ましい。こ
の場合、化合物(E)を、具体的には、例えば、1,2−ジヒドロキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシナフタレン及びその誘導体等のナフタレン環を有する化合物とすることができる。これらの化合物(E)は1種類を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0070】
かかる化合物(E)の配合量は、全半導体封止用樹脂組成物中に0.01重量%以上、1重量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.03重量%以上、0.8重量%以下、特に好ましくは0.05重量%以上、0.5重量%以下である。化合物(E)の配合量の下限値が上記範囲内であると、半導体封止用樹脂組成物の充分な低粘度化と流動性向上効果を得ることができる。また、化合物(E)の配合量の上限値が上記範囲内であると、半導体封止用樹脂組成物の硬化性の低下や硬化物物性の低下を引き起こす恐れが少ない。
【0071】
本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物においては、エポキシ樹脂と無機充填剤(C)との密着性を向上させるため、シランカップリング剤等の密着助剤(F)を添加することができる。その例としては特に限定されないが、エポキシシラン、アミノシラン、ウレイドシラン、メルカプトシラン等が挙げられ、エポキシ樹脂と無機充填剤との間で反応し、エポキシ樹脂と無機充填剤の界面強度を向上させるものであればよい。また、シランカップリング剤は、前述の化合物(E)と併用することで、半導体封止用樹脂組成物の溶融粘度を下げ、流動性を向上させるという化合物(E)の効果を高めることもできるものである。
【0072】
より具体的には、エポキシシランとしては、例えば、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、β−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等が挙げられる。また、アミノシランとしては、例えば、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−フェニルγ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニルγ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−6−(アミノヘキシル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(3−(トリメトキシシリルプロピル)−1,3−ベンゼンジメタナン等が挙げられる。また、ウレイドシランとしては、例えば、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン等が挙げられる。また、メルカプトシランとしては、例えば、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。これらのシランカップリング剤は1種類を単独で用いても2種類以上を併用してもよい。
【0073】
本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物に用いることができるシランカップリング剤等の密着助剤(F)の配合割合としては、全エポキシ樹脂組成物中0.01重量%以上、1重量%以下が好ましく、より好ましくは0.05重量%以上、0.8重量%以下、特に好ましくは0.1重量%以上、0.6重量%以下である。シランカップリング剤等の密着助剤(F)の配合量が上記下限値以上であれば、エポキシ樹脂と無機充填剤との界面強度が低下することがなく、半導体装置における良好な耐半田クラック性を得ることができる。また、シランカップリング剤等の密着助剤(F)の配合量が上記範囲内であれば、エポキシ樹脂組成物の硬化物の吸水性が増大することがなく、半導体装置における良好な耐半田クラック性を得ることができる。
【0074】
本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物では、前述した成分以外に、カーボンブラック、ベンガラ、酸化チタン等の着色剤;カルナバワックス等の天然ワックス、ポリエチレンワックス等の合成ワックス、ステアリン酸やステアリン酸亜鉛等の高級脂肪酸及びその金属塩類若しくはパラフィン等の離型剤;シリコーンオイル、シリコーンゴム等の低応力
添加剤;酸化ビスマス水和物等の無機イオン交換体;水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の金属水酸化物や、硼酸亜鉛、モリブデン酸亜鉛、フォスファゼン、三酸化アンチモン等の難燃剤等の添加剤を適宜配合してもよい。
【0075】
本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物は、(A)〜(C)成分、及びその他の添加剤等を、例えば、ミキサー等を用いて常温で均一に混合したもの、さらにその後、加熱ロール、ニーダー又は押出機等の混練機を用いて溶融混練し、続いて冷却、粉砕したものなど、必要に応じて適宜分散度や流動性等を調整したものを用いることができる。
【0076】
次に、本発明の半導体装置について説明する。本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物の硬化物により半導体素子を封止し半導体装置を製造するには、例えば、半導体素子を搭載したリードフレーム、回路基板等を金型キャビティ内に設置した後、半導体封止用エポキシ樹脂組成物をトランスファーモールド、コンプレッションモールド、インジェクションモールド等の成形方法で成形硬化すればよい。
【0077】
本発明の半導体装置で封止される半導体素子としては、特に限定されるものではなく、例えば、集積回路、大規模集積回路、トランジスタ、サイリスタ、ダイオード、固体撮像素子等が挙げられる。
【0078】
本発明の半導体装置の形態としては、特に限定されないが、例えば、デュアル・インライン・パッケージ(DIP)、プラスチック・リード付きチップ・キャリヤ(PLCC)、クワッド・フラット・パッケージ(QFP)、ロー・プロファイル・クワッド・フラット・パッケージ(LQFP)、スモール・アウトライン・パッケージ(SOP)、スモール・アウトライン・Jリード・パッケージ(SOJ)、薄型スモール・アウトライン・パッケージ(TSOP)、薄型クワッド・フラット・パッケージ(TQFP)、テープ・キャリア・パッケージ(TCP)、ボール・グリッド・アレイ(BGA)、チップ・サイズ・パッケージ(CSP)等が挙げられる。
【0079】
トランスファーモールドなどの成形方法で半導体封止用エポキシ樹脂組成物の硬化物により半導体素子を封止した本発明の半導体装置は、そのまま、或いは80℃から200℃程度の温度で、10分から10時間程度の時間をかけて完全硬化させた後、電子機器等に搭載される。
【0080】
図1は、本発明に係る半導体封止用エポキシ樹脂組成物を用いた半導体装置の一例について、断面構造を示した図である。ダイパッド3上に、ダイボンド材硬化体2を介して半導体素子1が固定されている。半導体素子1の電極パッドとリードフレーム5との間は金線4によって接続されている。半導体素子1は、半導体封止用エポキシ樹脂組成物の硬化体6によって封止されている。
【実施例】
【0081】
以下、本発明を実施例にて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。以下配合割合は重量部とする。実施例、比較例で用いた成分について、以下に示す。
【0082】
エポキシ樹脂1〜7の(インデン骨格の総数)/(グリシジルエーテル基が結合した芳香環の総数)の平均値については、C−NMR測定によってインデン骨格中に含まれるベンゼン由来のシグナルとグリシジルエーテル基が結合した芳香環中に含まれるベンゼン又はナフタレン由来のシグナルの強度比によって算出した。尚、本発明のエポキシ樹脂(A)の具体例となるエポキシ樹脂1〜6においては、C−NMR測定に基づいて算出した値と、エポキシ当量を用いて回帰式を求めて算出した値とが一致した。
【0083】
(インデン骨格の総数)/(グリシジルエーテル基が結合した芳香環の総数)の平均値をエポキシ当量を用いて回帰式を求めて算出する方法を以下に示す。(インデン骨格の総数)と(グリシジルエーテル基が結合した芳香環の総数)の任意の組合せの場合での理論分子量を計算し、それを一分子中のグリシジルエーテル基の数で除することによって理論エポキシ当量を算出したのち、理論エポキシ当量値と(インデン骨格の総数)/(グリシジルエーテル基が結合した芳香環の総数)の値とを用いて一次回帰式を得ることができ、実測したエポキシ当量値を一次回帰式に代入することで(インデン骨格の総数)/(グリシジルエーテル基が結合した芳香環の総数)の値を得ることができる。グリシジルエーテル基が結合した芳香環の種類や置換基の有無等、化学構造によって一次回帰式は異なるものとなるが、例えば、一般式(3)で表されるエポキシ樹脂の場合における一次回帰式は、下記で表される。
(インデン骨格の総数)/(グリシジルエーテル基が結合した芳香環の総数)の平均値=0.0087×(実測したエポキシ当量)−1.372
(R=0.999)
【0084】
図2にチャートを添付したエポキシ樹脂1のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定は次の条件で行なった。エポキシ樹脂1の試料20mgに溶剤テトラヒドロフラン(THF)を6ml加えて十分溶解しGPC測定に供した。GPCシステムは、WATERS社製モジュールW2695、東ソー(株)製TSK GUARDCOLUMN HHR−L(径6.0mm、管長40mm、ガードカラム)、東ソー(株)製TSK−GEL GMHHR−L(径7.8mm、管長30mm、ポリスチレンジェルカラム)2本、WATERS社製示差屈折率(RI)検出器W2414を直列に接続したものを用いた。ポンプの流速は0.5ml/分、カラム及び示差屈折率計内温度を40℃とし、測定溶液を100μlインジェクターより注入して測定を行った。
【0085】
また、図3にチャートを添付したエポキシ樹脂1のFD−MS測定は次の条件で行なった。エポキシ樹脂1の試料10mgに溶剤ジメチルスルホキシド(DMSO)1gを加えて十分溶解したのち、FDエミッターに塗布の後、測定に供した。FD−MSシステムは、イオン化部に日本電子株式会社製MS−FD15Aを、検出器に日本電子株式会社製MS−700機種名二重収束型質量分析装置とを接続して用い、検出質量範囲(m/z)50〜2000にて測定した。
【0086】
(エポキシ樹脂)
エポキシ樹脂1:下記式(10)で表されるインデン(東京化成工業製インデン・分子量116、純度98%)95.12重量部、下記式(11)で表されるビスフェノールF(本州化成製ジヒロキシジフェニルメタン・分子量200、2核体量92%、軟化点116℃)100重量部、パラトルエンスルホン酸2.82重量部、トルエン200重量部とをセパラブルブルフラスコに秤量し、窒素置換しながら125℃に加熱し、3〜4時間撹拌することにより、内部が相溶化するまで反応させた。反応後、室温まで冷却し、蒸留水150重量部を加えて振とうした後に、水層を棄却する操作(水洗)を洗浄水が中性になるまで繰り返し行った後、油層を125℃減圧処理することによってトルエンなどの揮発成分を留去し、固形分(前駆体フェノール樹脂)を得た。習得した固形分全量に対して、エピクロルヒドリン524重量部、ジメチルスルホキシド520重量部を加えて溶解後、40℃に加熱し、水酸化ナトリウム(固形細粒状、純度99%試薬)38.7重量部を2時間かけて添加し、50℃に昇温して2時間、さらに70℃に昇温して2時間反応させた。反応後、蒸留水150重量部を加えて振とうした後に、水層を棄却する操作(水洗)を洗浄水が中性になるまで繰り返し行った後、油層を125℃減圧処理することによってエピクロルヒドリン及びジメチルスルホキシドを留去した。得られた固形物にトルエン260重量部を加えて溶解し、70℃に加熱し20重量%水酸化ナトリウム水溶液18.4重
量部を1時間かけて添加し、さらに1時間反応した後、静置し水層を棄却した。油層に蒸留水260重量部を加えて水洗操作を行い、洗浄水が中性になるまで同様の水洗操作を繰り返し行った後、加熱減圧によってメチルイソブチルケトンを留去し、下記式(3)で表されるエポキシ樹脂1(エポキシ当量250、軟化点50℃、150℃におけるICI粘度0.50dPa・s。下記式(3)におけるnの平均値0.1、(インデン骨格の総数)/(グリシジルエーテル基が結合した芳香環の総数)の平均値0.81。)を得た。GPCチャートを図2に、FD−MSチャートを図3に示す。
【0087】
【化10】

【0088】
【化11】

【0089】
【化3】

【0090】
エポキシ樹脂2:エポキシ樹脂1の合成において、式(10)で表されるインデン(東京化成工業製インデン・分子量116、純度98%)を99.76重量部、パラトルエンスルホン酸2.96重量部、として他の操作はエポキシ樹脂1と同様の操作を行い、式(3)で表されるエポキシ樹脂2(エポキシ当量255、軟化点51℃、150℃におけるICI粘度0.55dPa・s。式(3)におけるnの平均値0.1、(インデン骨格の総数)/(グリシジルエーテル基が結合した芳香環の総数)の平均値0.85。)を得た。
【0091】
エポキシ樹脂3:エポキシ樹脂1の合成において、式(10)で表されるインデン(東京化成工業製インデン・分子量116、純度98%)を116重量部、パラトルエンスルホン酸3.44重量部、として他の操作はエポキシ樹脂1と同様の操作を行い、式(3)
で表されるエポキシ樹脂3(エポキシ当量270、軟化点54℃、150℃におけるICI粘度0.60dPa・s。式(3)におけるnの平均値0.1、(インデン骨格の総数)/(グリシジルエーテル基が結合した芳香環の総数)の平均値0.98。)を得た。
【0092】
エポキシ樹脂4:エポキシ樹脂1の合成において、式(10)で表されるインデン(東京化成工業製インデン・分子量116、純度98%)を121.8重量部、パラトルエンスルホン酸3.62重量部、として他の操作はエポキシ樹脂1と同様の操作を行い、式(3)で表されるエポキシ樹脂4(エポキシ当量277、軟化点54℃、150℃におけるICI粘度0.65dPa・s。式(3)におけるnの平均値0.1、(インデン骨格の総数)/(グリシジルエーテル基が結合した芳香環の総数)の平均値1.04。)を得た。
【0093】
エポキシ樹脂5:エポキシ樹脂1の合成において、式(10)で表されるインデン(東京化成工業製インデン・分子量116、純度98%)を145.0重量部、パラトルエンスルホン酸4.31重量部、として他の操作はエポキシ樹脂1と同様の操作を行い、式(3)で表されるエポキシ樹脂5(エポキシ当量300、軟化点60℃、150℃におけるICI粘度0.80dPa・s。式(3)におけるnの平均値0.1、(インデン骨格の総数)/(グリシジルエーテル基が結合した芳香環の総数)の平均値1.23。)を得た。
【0094】
エポキシ樹脂6:エポキシ樹脂2の合成において、ビスフェノールF(本州化成製ジヒロキシジフェニルメタン・分子量200、2核体量92%、軟化点116℃)100重量部をビスフェノールA(東京化成工業試薬2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニルプロパン・分子量228.3、2核体量99%、軟化点155℃)114重量部、として他の操作はエポキシ樹脂1と同様の操作を行い、下記式(12)で表されるエポキシ樹脂6(エポキシ当量264.5、軟化点52℃、150℃におけるICI粘度0.55dPa・s
。下記式(12)におけるnの平均値0.1、(インデン骨格の総数)/(グリシジルエーテル基が結合した芳香環の総数)の平均値0.84。)を得た。
【0095】
【化12】

【0096】
エポキシ樹脂7:下記式(13)で表される3a,4,7,7a−テトラヒドロインデン−フェノール樹脂(日本石油化学製IPP500、水酸基当量190)191重量部、エピクロルヒドリン524重量部、ジメチルスルホキシド520重量部を加えて溶解後、40℃に加熱し、水酸化ナトリウム(固形細粒状、純度99%試薬)38.7重量部を2時間かけて添加し、50℃に昇温して2時間さらに70℃に昇温して2時間反応させた。
反応後、蒸留水150重量部を加えて振とうした後に水層を棄却する操作(水洗)を洗浄水が中性になるまで繰り返し行った後、油層を125℃減圧処理することによってエピクロルヒドリン及びジメチルスルホキシドを留去した。得られた固形物にトルエン260重量部を加えて溶解し、70℃に加熱し20重量%水酸化ナトリウム水溶液18.4重量部を1時間かけて添加し、さらに1時間反応した後、静置し水層を棄却した。油層に蒸留水260重量部を加えて水洗操作を行い、洗浄水が中性になるまで同様の水洗操作を繰り返し行った後、加熱減圧によってメチルイソブチルケトンを留去し、下記式(13)で表されるエポキシ樹脂7(エポキシ当量273、軟化点62℃、150℃におけるICI粘度0.55dPa・s。下記式(13)におけるnの平均値1.3、(インデン骨格の総数)/(グリシジルエーテル基が結合した芳香環の総数)の平均値0.78。)を得た。
【0097】
【化13】

【0098】
エポキシ樹脂8:オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(大日本インキ(株)製、N660。エポキシ当量210、軟化点62℃。)
【0099】
(硬化剤)
硬化剤1:フェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂(三井化学(株)製、XLC−4L。水酸基当量168、軟化点62℃。)
硬化剤2:フェノールノボラック樹脂(住友ベークライト(株)製、PR−HF−3。水酸基当量104、軟化点80℃。)
硬化剤3:ビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂(明和化成(株)製、MEH−7851SS。水酸基当量203、軟化点67℃。)
【0100】
(無機充填剤)
無機充填剤1:電気化学工業製溶融球状シリカFB560(平均粒径30μm)100重量部、アドマテックス製合成球状シリカSO−C2(平均粒径0.5μm)6.5重量部、アドマテックス製合成球状シリカSO−C5(平均粒径30μm)7.5重量部とを予めブレンドしたもの。
【0101】
(硬化促進剤)
硬化促進剤1:下記式(14)で表される硬化促進剤
【化14】

【0102】
硬化促進剤2:下記式(15)で表される硬化促進剤
【化15】

【0103】
硬化促進剤3:下記式(16)で表される硬化促進剤
【化16】

【0104】
硬化促進剤4:下記式(17)で表される硬化促進剤
【化18】

【0105】
硬化促進剤5:トリフェニルホスフィン(北興化学工業(株)製、TPP。)
【0106】
(化合物(E))
化合物E1:下記式(18)で表される化合物(東京化成工業(株)製、2,3−ナフタレンジオール、純度98%。)
【化18】

【0107】
(シランカップリング剤)
シランカップリング剤1:γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製、KBM−403。)
シランカップリング剤2:γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製、KBM−803。)
【0108】
(着色剤)
着色剤1:カーボンブラック(三菱化学工業(株)製、MA600。)
【0109】
(離型剤)
離型剤1:カルナバワックス(日興ファイン(株)製、ニッコウカルナバ、融点83℃。)
【0110】
実施例1
エポキシ樹脂1 7.93重量部
硬化剤1 5.07重量部
無機充填剤1 86.00重量部
硬化促進剤1 0.40重量部
シランカップリング剤1 0.10重量部
シランカップリング剤2 0.10重量部
着色剤1 0.30重量部
離型剤1 0.10重量部
をミキサーにて常温混合し、80〜100℃の加熱ロールで溶融混練し、冷却後粉砕し、エポキシ樹脂組成物を得た。得られたエポキシ樹脂組成物を用いて以下の方法で評価した。評価結果を表1に示す。
【0111】
スパイラルフロー:低圧トランスファー成形機(コータキ精機(株)製、KTS−15)を用いて、EMMI−1−66に準じたスパイラルフロー測定用金型に、175℃、注入圧力6.9MPa、保圧時間120秒の条件でエポキシ樹脂組成物を注入し、流動長を測定した。スパイラルフローは、流動性のパラメータであり、数値が大きい方が、流動性が良好である。単位はcm。
【0112】
硬化トルク比:キュラストメーター(オリエンテック(株)製、JSRキュラストメーターIVPS型)を用い、金型温度175℃、加熱開始60秒後、300秒後のトルクを求め、硬化トルク比:(60秒後のトルク)/(300秒後のトルク)×100(%)を計算した。キュラストメーターにおけるトルクは熱剛性のパラメータであり、硬化トルク比の大きい方が速硬化性の観点からは良好である。単位は%。
【0113】
耐燃性:低圧トランスファー成形機(コータキ精機(株)製、KTS−30)を用いて、金型温度175℃、注入時間15秒、硬化時間120秒、注入圧力9.8MPaの条件で、エポキシ樹脂組成物を注入成形して、3.2mm厚の耐燃試験片を作製した。得られた試験片について、UL94垂直法の規格に則り耐燃試験を行った。表には、Fmax、ΣF及び判定後の耐燃ランクを示した。実施例1で得られたエポキシ樹脂組成物は、Fmax:7秒、ΣF:19秒、耐燃ランク:V−0と良好な耐燃性を示した。
【0114】
耐半田性試験1:低圧トランスファー成形機(第一精工(株)製、GP−ELF)を用いて、金型温度180℃、注入圧力7.4MPa、硬化時間120秒間の条件で、エポキシ樹脂組成物を注入して半導体素子(シリコンチップ)が搭載されたリードフレーム等を封止成形し、80pQFP(Cu製リードフレーム、サイズは14×20mm×厚さ2.00mm、半導体素子は7×7mm×厚さ0.35mm、半導体素子とリードフレームのインナーリード部とは25μm径の金線でボンディングされている。)なる半導体装置を作製した。ポストキュアとして175℃で4時間加熱処理した半導体装置6個を、60℃、相対湿度60%で120時間加湿処理した後、IRリフロー処理(260℃、JEDEC・Level3条件に従う)を行った。さらにこれらの半導体装置を(−65℃/30分間)と(150℃/30分間)の冷熱サイクル処理を250サイクル施した後の半導体装置内部の剥離及びクラックの有無を超音波探傷装置(日立建機ファインテック製、mi−scope10)で観察し、剥離又はクラックのいずれか一方でも発生したものを不良とした。不良半導体装置の個数がn個であるとき、n/6と表示した。実施例1で得られ
たエポキシ樹脂組成物は0/6と良好な信頼性を示した。
【0115】
耐半田性試験2:上述の耐半田性試験―1の加湿処理条件を85℃、相対湿度60%で168時間加湿処理としたほかは、耐半田性試験―1と同様に試験を実施した。実施例1で得られたエポキシ樹脂組成物は0/6と良好な信頼性を示した。
【0116】
実施例2〜13、比較例1〜4
表1、表2の配合に従い、実施例1と同様にしてエポキシ樹脂組成物を製造し、実施例1と同様にして評価した。評価結果を表1、表2に示す。
【0117】
【表1】

【0118】
【表2】

【0119】
実施例1〜13は、一般式(1)で表されるエポキシ樹脂(A)、硬化剤(B)、無機充填剤(C)を含むものであり、エポキシ樹脂(A)の種類や配合割合を変更したもの、硬化剤(B)の種類を変更したもの、或いは、硬化促進剤(D)の種類を変更したもの又は化合物(E)を添加したものを含むものであるが、いずれにおいても、流動性(スパイラルフロー)、耐燃性及び耐半田性のバランスに優れる結果となった。
【産業上の利用可能性】
【0120】
本発明に従うと、ブロム化エポキシ樹脂、アンチモン化合物を使用せずに、低コストながらも耐燃性に優れ、かつ流動性、耐半田性のバランスが良好なエポキシ樹脂組成物及びその硬化物により半導体素子を封止してなる信頼性に優れた半導体装置を得ることができるため、半導体装置封止用、特に表面実装型の半導体装置用として好適である。
【図面の簡単な説明】
【0121】
【図1】本発明に係る半導体封止用エポキシ樹脂組成物を用いた半導体装置の一例について、断面構造を示した図である。
【図2】エポキシ樹脂1のGPCチャートである。
【図3】エポキシ樹脂1のFD−MSチャートである。
【符号の説明】
【0122】
1 半導体素子
2 ダイボンド材硬化体
3 ダイパッド
4 金線
5 リードフレーム
6 半導体封止用エポキシ樹脂組成物の硬化体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記一般式(1)で表されるエポキシ樹脂と、
(B)硬化剤と、
(C)無機充填剤とを含むことを特徴とする半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
【化1】

(ただし、上記一般式(1)において、Arはそれぞれ炭素数1〜10の芳香環であり、互いに同じであっても異なっていてもよい。R1、R2、R3はそれぞれ炭素数1〜6の炭化水素基であり、互いに同じであっても異なっていてもよい。aは0〜5の整数、bは0〜2の整数、cは0〜5の整数である。nは0〜10の整数である。dはそれぞれ0〜5の整数であり、互いに同じであっても異なっていてもよく、kはそれぞれ0〜20の整数であり、互いに同じであっても異なっていてもよいが、(インデン骨格の総数)/(グリシジルエーテル基が結合した芳香環の総数)の平均は0.2〜5.0である。なお、グリシジルエーテル基が結合した芳香環がナフタレン環の場合、ナフタレン環一つにつき、芳香環1つとカウントする。)
【請求項2】
前記一般式(1)で表されるエポキシ樹脂(A)が、フェノール樹脂類、下記一般式(2)で表される化合物とを反応させて得られたインデン変性フェノール樹脂類を、エピクロルヒドリンでグリシジルエーテル化したエポキシ樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
【化2】

(ただし、上記一般式(2)において、R3は炭素数1〜6の炭化水素基であり、互いに同じであっても異なっていてもよい。cは0〜5の整数である。)
【請求項3】
前記一般式(1)で表されるエポキシ樹脂(A)が下記一般式(3)で表されるエポキシ樹脂であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
【化3】

(ただし、上記一般式(3)において、nは0〜10の整数である。eはそれぞれ0〜3の整数であり、互いに同じであっても異なっていてもよく、kはそれぞれ0〜20の整数であり、互いに同じであっても異なっていてもよいが、(インデン骨格の総数)/(グリシジルエーテル基が結合した芳香環の総数)の平均は0.2〜5.0である。)
【請求項4】
(A)フェノール樹脂類、下記一般式(2)で表される化合物とを反応させて得られたインデン変性フェノール樹脂類を、エピクロルヒドリンでグリシジルエーテル化したエポキシ樹脂と、
(B)硬化剤と、
(C)無機充填剤とを含むことを特徴とする半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
【化2】

(ただし、上記一般式(2)において、R3は炭素数1〜6の炭化水素基であり、互いに同じであっても異なっていてもよい。cは0〜5の整数である。)
【請求項5】
前記硬化剤(B)がフェノール樹脂系硬化剤であることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
【請求項6】
(D)硬化促進剤をさらに含むことを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
【請求項7】
前記硬化促進剤(D)が、テトラ置換ホスホニウム化合物、ホスホベタイン化合物、ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物、及びホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物から選ばれた少なくとも1種の潜伏性を有する硬化促進剤を含むことを特徴とする請求項6に記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
【請求項8】
芳香環を構成する2個以上の隣接する炭素原子にそれぞれ水酸基が結合した化合物(E)をさらに含むことを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
【請求項9】
請求項1ないし請求項8のいずれかに記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物の硬化物により半導体素子を封止してなることを特徴とする半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−203340(P2009−203340A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−46623(P2008−46623)
【出願日】平成20年2月27日(2008.2.27)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】