説明

半導体用接着フィルム、半導体搭載用配線基板、半導体装置、および接着剤組成物

【課題】半導体装置製造時の熱履歴に起因する反りの発生が抑制される半導体用接着フィルムを提供することを課題とする。
【解決手段】半導体用接着フィルムを、支持フィルムと、前記支持フィルム上に設けられ、加熱硬化後の20℃における三点曲げ弾性率が50g/mm未満である第1のエポキシ樹脂、加熱硬化後の20℃における三点曲げ弾性率が50g/mm以上かつエポキシ当量が100g/eq〜250g/eqであって20℃で固体である第2のエポキシ樹脂、硬化剤、および(メタ)アクリル共重合体を含む接着剤組成物層と、を備えて構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体用接着フィルム、半導体搭載用配線基板、半導体装置、および接着剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体チップを接着して多段に積層したスタックドMCP(Multi Chip Package)が普及している。スタックドMCPは、携帯電話及び携帯オーディオ機器等に搭載されるメモリパッケージとして広く用いられている。近年では、携帯電話等の多機能化に伴い、かかるパッケージの更なる高密度化及び高集積化が推し進められている。これに伴い、スタックドMCPにおける半導体チップの更なる多段化及びパッケージ自体の薄型化が要望されている。ところが、半導体チップの多段化は、接着工程及びワイヤボンディング工程など熱処理を必要とする工程を増加させ、結果として接着フィルムに含まれる接着剤成分の熱硬化を促進する。この硬化反応による収縮や半導体チップ、接着フィルム、レジスト基板の線膨張係数の差により接着フィルム起因の反りが発生することによるワイヤボンディング精度の低下や、耐リフロー性の悪化が懸念される。
【0003】
反りの発生は接着フィルムの硬化反応による硬化収縮に起因する。この硬化収縮を低減する方法として、エポキシ樹脂自身の骨格の柔軟化が挙げられる。これに関連して、エポキシ基含有水添ポリブタジエン変性重合体からなる主剤と特殊ビニルエーテルでブロックしたカルボキシル基を有する化合物を硬化剤として含有する柔軟性熱硬化性組成物が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−302839号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に接着剤組成物層の硬化反応による硬化収縮を低減する方法として、接着剤組成物に含まれるエポキシ樹脂と硬化剤との架橋点を低減すること、及びエポキシ樹脂自身の骨格を柔軟化すること等が挙げられる。これらにより硬化後の応力緩和性が向上し、反りの発生を抑制することができると考えられる。しかし、架橋点の減少や骨格の柔軟化は耐熱性の低下につながる場合があるため、反りの発生抑制と耐熱性とを両立させることは困難であった。
例えば、特許文献1に記載の柔軟性熱硬化性組成物では、十分な耐熱性が得られない場合があった。
【0006】
本発明は、耐熱性に優れ、半導体装置製造時の熱履歴に起因する反りの発生を抑制可能な半導体用接着フィルムおよび接着剤組成物、ならびに該半導体用接着フィルムを用いてなる半導体搭載用配線基板および半導体装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するための具体的手段は以下の通りである。
本発明の第1の態様は、支持フィルムと、前記支持フィルム上に設けられ、加熱硬化後の20℃における三点曲げ弾性率が50g/mm未満である第1のエポキシ樹脂、加熱硬化後の20℃における三点曲げ弾性率が50g/mm以上かつエポキシ当量が100g/eq〜250g/eqであって20℃で固体である第2のエポキシ樹脂、硬化剤、および(メタ)アクリル共重合体を含む接着剤組成物層と、を備える半導体用接着フィルムである。
【0008】
前記接着剤組成物層における前記第1のエポキシ樹脂に対する前記第2のエポキシ樹脂の含有比率が30質量%〜90質量%であることが好ましい。
また、前記接着剤組成物層は、フィラーをさらに含むことが好ましく、前記フィラーは、シリカフィラーであることが好ましい。
さらに前記硬化剤は、フェノール樹脂であることが好ましい。
【0009】
前記接着剤組成物層は、前記硬化剤の含有量が、前記第1のエポキシ樹脂および第2のエポキシ樹脂の、エポキシ当量の加重平均値に対する比率が、官能基当量基準で30%〜95%となる含有量であって、前記(メタ)アクリル共重合体の含有量が、前記第1のエポキシ樹脂、第2のエポキシ樹脂および前記硬化剤の合計含有量100質量部に対して20質量部〜50質量部であることが好ましい。
【0010】
また本発明の第2の態様は、配線基板と、前記配線基板上に設けられ、前記半導体用接着フィルムを用いてなる接着剤組成物層と、を備える半導体搭載用配線基板である。
【0011】
また本発明の第3の態様は、前記半導体用接着フィルムを用いて被接着体に接着された半導体チップを有する半導体装置である。
【0012】
さらに本発明の第4の態様は、加熱硬化後の20℃における三点曲げ弾性率が50g/mm未満である第1のエポキシ樹脂、加熱硬化後の20℃における三点曲げ弾性率が50g/mm以上かつエポキシ当量が100g/eq〜250g/eqであって20℃で固体である第2のエポキシ樹脂、硬化剤、および(メタ)アクリル共重合体を含む接着剤組成物である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、耐熱性に優れ、半導体装置製造時の熱履歴に起因する反りの発生を抑制可能な半導体用接着フィルムおよび接着剤組成物、ならびに該半導体用接着フィルムを用いてなる半導体搭載用配線基板および半導体装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態にかかる半導体用接着フィルムを示す模式断面図である。
【図2】本発明の実施形態にかかる半導体装置を示す模式断面図である。
【図3】本発明の実施例にかかる反り量の測定方法を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<半導体用接着フィルム>
本発明の半導体用接着フィルムは、支持フィルムと、前記支持フィルム上に設けられ、加熱硬化後の20℃における三点曲げ弾性率が50g/mm未満である第1のエポキシ樹脂、加熱硬化後の20℃における三点曲げ弾性率が50g/mm以上かつエポキシ当量が100g/eq〜250g/eqであって20℃で固体である第2のエポキシ樹脂、硬化剤、および(メタ)アクリル共重合体を含む接着剤組成物層と、を備えて構成される。
かかる構成であることで、耐熱性と半導体装置製造時の熱履歴に起因する反りの発生抑制とが高い次元で両立される。
【0016】
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。更に、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。また、本明細書における「(メタ)アクリル酸」とは「アクリル酸」及びそれに対応する「メタクリル酸」を意味し、「(メタ)アクリレート」とは「アクリレート」及びそれに対応する「メタクリレート」を意味する。
また、本明細書において「〜」は、その前後に記載される数値をそれぞれ最小値および最大値として含む範囲を示すものとする。
【0017】
図1は、本発明の好適な実施形態にかかる半導体用接着フィルムを示す模式断面図である。この半導体用接着フィルム10は、支持フィルム1と、その表面上に形成された接着剤組成物層2とを備える。
【0018】
本発明において接着剤組成物層は、加熱硬化後の20℃における三点曲げ弾性率が50g/mm未満である第1のエポキシ樹脂と、加熱硬化後の20℃における三点曲げ弾性率が50g/mm以上かつエポキシ当量が100〜250g/eqであって20℃で固体である第2のエポキシ樹脂と、硬化剤と、(メタ)アクリル共重合体とを含み、必要に応じて、フィラーやその他の成分を含んで構成される。
特定の異なる物性を示すエポキシ樹脂を少なくとも2種と、(メタ)アクリル共重合体を含むことで、硬化後の耐熱性と柔軟性とを高いレベルで両立可能な接着剤組成物層を構成することができる。
前記接着剤組成物層は、支持フィルム上に以下に詳細に説明する接着剤組成物を、層状となるように形成したものである。
【0019】
[接着剤組成物]
(エポキシ樹脂)
本発明における接着剤組成物は、加熱硬化後の20℃における三点曲げ弾性率が50g/mm未満である第1のエポキシ樹脂の少なくとも1種と、加熱硬化後の20℃における三点曲げ弾性率が50g/mm以上かつエポキシ当量が100〜250g/eqであって20℃で固体である第2のエポキシ樹脂の少なくとも1種とを含む。
前記第1のエポキシ樹脂は、加熱硬化後の20℃における三点曲げ弾性率が50g/mm未満であるが、反りの発生抑制の観点から、5g/mm〜40g/mmであることが好ましく、5g/mm〜20g/mmであることがより好ましい。
三点曲げ弾性率が50g/mm以上であると、反りの発生を十分に抑制することができない場合がある。また、三点曲げ弾性率を5g/mm以上とすることで接着性が向上し、例えば、耐リフロー性(JEDEC Level2)等の信頼性が向上する。
【0020】
また第2のエポキシ樹脂は、加熱硬化後の20℃における三点曲げ弾性率が50g/mm以上かつエポキシ当量が100g/eq〜250g/eqであって20℃で固体であるが、耐熱性の観点から、エポキシ当量が150g/eq〜200g/eqであることが好ましい。さらに分子内に芳香環を含むこともまた好ましく、加熱硬化後のガラス転移温度Tgが120℃以上であることもまた好ましい。
尚、エポキシ当量は、1モルのエポキシ樹脂の平均質量を、該エポキシ樹脂に含まれるエポキシ基数で除した数値である。
また一般に、エポキシ当量が100g/eq〜250g/eqであって20℃で固体であるエポキシ樹脂は、後述する本発明における加熱後の20℃下での三点曲げ弾性率が50g/mm以上となる。
【0021】
本発明において、加熱硬化後の20℃における三点曲げ弾性率(以下、単に「弾性率」ということがある)は、以下のようにして測定される。
−加熱硬化条件−
エポキシ樹脂とXLC−LL(硬化剤)のシクロヘキサノン溶液を当量比1:1で配合し、120℃で1時間、140℃で1時間、170℃で5時間、加熱して、気泡が発生しないように熱硬化させる。
【0022】
−弾性率測定条件−
三点曲げ弾性率は、3mm×10mm×100mmの直方体状に試験サンプルをカットし、ORIENTEC製RTM−100を用いて、常温(20℃)環境下、速度1.5mm/minで三点曲げ試験を行った。
【0023】
−加熱硬化条件−
各エポキシ樹脂とXLC−LLのシクロヘキサノン溶液を当量比1:1で配合し、120℃で1時間、140℃で1時間、170℃で5時間、加熱し、気泡が発生しないように熱硬化させた。
【0024】
前記第1のエポキシ樹脂としては、加熱硬化後の20℃における三点曲げ弾性率が50g/mm未満であれば、特に制限はないが、環構造の含有率が低いエポキシ樹脂、架橋点が少ないエポキシ樹脂、柔軟鎖の含有率が高いエポキシ樹脂等のいわゆる柔軟性エポキシ樹脂であることが好ましい。また、主鎖内にオキシラン環を含む柔軟性エポキシ樹脂であることもまた好ましい。
前記架橋点が少ないエポキシ樹脂としては、例えば、両末端にエポキシ基を有するエポキシ樹脂の場合、エポキシ当量が400g/eq以上であることが好ましく、400g/eq〜800g/eqであることがより好ましい。
【0025】
前記第1のエポキシ樹脂として具体的には、反り発生抑制の観点から、カルボキシル基末端ブタジエンニトリルゴム(CTBN)変性エポキシ樹脂、およびエポキシ化ポリブタジエンから選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0026】
前記第1のエポキシ樹脂は、常法により合成したものを用いてもよく、また市販のエポキシ樹脂から適宜選択して用いることもできる。
市販のエポキシ樹脂として具体的には例えば、PB3600(ダイセル化学工業(株)製、加熱硬化後の20℃における三点曲げ弾性率30g/mm)、TSR−601(DIC(株)製、加熱硬化後の20℃における三点曲げ弾性率8g/mm)、およびR−45EPT(ナガセケムテックス(株)製、加熱硬化後の20℃における三点曲げ弾性率15g/mm)等を挙げることができる。
これらは1種単独でも、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0027】
また前記第2のエポキシ樹脂としては、加熱硬化後の20℃における三点曲げ弾性率が50g/mm以上、かつ、エポキシ当量が100g/eq〜250g/eqであって、20℃で固体であり、硬化して接着性を示す固形エポキシ樹脂であれば特に制限はなく、フェノールノボラック型エポキシ樹脂やクレゾールノボラック型エポキシ樹脂などのノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂などを使用することができる。
中でも耐熱性の観点から、ノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂から選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、ノボラック型エポキシ樹脂であることがより好ましい。
尚、本発明において20℃で固体であるとは、20℃において流動性を示さないことを意味し、軟化点が40℃以上あって、40℃未満では流動性を示さないことが好ましい。
【0028】
本発明において第2のエポキシ樹脂は、加熱硬化後の20℃における三点曲げ弾性率が50g/mm以上である。
三点曲げ弾性率が50g/mm未満であると接着性が低下し、例えば、耐リフロー性(JEDEC Level2)を満足できない等の信頼性に問題が生じる場合がある。
【0029】
さらに第2のエポキシ樹脂はエポキシ当量が100g/eq〜250g/eqであるが、反り発生抑制の観点から、150g/eq〜220g/eqであることが好ましく、150g/eq〜210g/eqであることがより好ましい。
【0030】
前記第2のエポキシ樹脂は、常法により合成したものを用いてもよく、また市販のエポキシ樹脂から適宜選択して用いることもできる。
市販のエポキシ樹脂として具体的には例えば、YDCN−700−10(東都化成(株)製、エポキシ当量210g/eq)、YSLV−80XY(東都化成(株)製、エポキシ当量195g/eq)、およびEXA−4700(エポキシ当量167g/eq)等を挙げることができる。
これらは1種単独でも、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0031】
本発明における接着剤組成物中の、前記第1のエポキシ樹脂および第2のエポキシ樹脂の含有比率としては、特に制限はないが、耐熱性と反りの発生抑制の観点から、前記第1のエポキシ樹脂に対する第2のエポキシ樹脂の含有比率(第2のエポキシ樹脂/第1のエポキシ樹脂)が、30質量%〜90質量%であることが好ましく、35質量%〜80質量%であることがより好ましく、40質量%〜70質量%であることがさらに好ましい。
本発明において、前記第1のエポキシ樹脂および第2のエポキシ樹脂の少なくとも一方が2種以上からなる場合、前記第1のエポキシ樹脂に対する第2のエポキシ樹脂の含有比率は、第1のエポキシ樹脂の総含有量に対する第2のエポキシ樹脂の総含有量の比率を意味する。
【0032】
本発明においては、加熱硬化後の20℃における三点曲げ弾性率が50g/mm未満である第1のエポキシ樹脂と、加熱硬化後の20℃における三点曲げ弾性率が50g/mm以上かつエポキシ当量が100g/eq〜250g/eqであって20℃で固体である第2のエポキシ樹脂とを、第1のエポキシ樹脂に対する第2のエポキシ樹脂の含有比率が30質量%〜90質量%となるように含むことが好ましく、
加熱硬化後の20℃における三点曲げ弾性率が0g/mm〜30g/mmである第1のエポキシ樹脂と、加熱硬化後の20℃における三点曲げ弾性率が50g/mm以上かつエポキシ当量が150g/eq〜220g/eqであって20℃で固体である第2のエポキシ樹脂とを、第1のエポキシ樹脂に対する第2のエポキシ樹脂の含有比率が35〜80質量%となるように含むことがより好ましく、
加熱硬化後の20℃における三点曲げ弾性率が0g/mm〜30g/mmであって、CTBN変性エポキシ樹脂およびエポキシ化ポリブタジエンから選ばれる少なくとも1種である第1のエポキシ樹脂と、加熱硬化後の20℃における三点曲げ弾性率が50g/mm以上かつエポキシ当量が150g/eq〜220g/eqであり20℃で固形であって、ノボラック型エポキシ樹脂である第2のエポキシ樹脂とを、第1のエポキシ樹脂に対する第2のエポキシ樹脂の含有比率が35質量%〜80質量%となるように含むことがさらに好ましい。
【0033】
前記接着剤組成物中の第1のエポキシ樹脂および第2のエポキシ樹脂の総含有量としては、接着性と反り抑制の観点から、接着剤組成物の全質量に対して20質量%〜35質量%であることが好ましく、25質量%〜35質量%であることがより好ましい。
【0034】
(硬化剤)
本発明における接着剤組成物層は、硬化剤の少なくとも1種を含む。前記硬化剤としては、通常用いられる公知のエポキシ樹脂の硬化剤を特に制限なく用いることができる。例えば、アミン類、ポリアミド類、酸無水物類、ポリスルフィド類、ビスフェノールA、ビスフェノールF、およびビスフェノールSのようなフェノール性水酸基を1分子中に2個以上有するビスフェノール類、フェノールノボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂およびクレゾールノボラック樹脂等のフェノール樹脂類、ならびに、三フッ化ホウ素等の無機化合物類などが挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0035】
本発明における硬化剤としては、耐熱性と反り抑制の観点から、フェノール樹脂であることが好ましい。
前記フェノール樹脂としては、市販のものを各種入手可能であり、また常法により合成することもできる。市販のフェノール樹脂としては、例えば、ミレックスXLCシリーズ及びミレックスXLシリーズ(以上、三井化学社製、商品名)、ならびに、フェノライトLFシリーズ(大日本インキ社製、商品名)等が挙げられる。
【0036】
本発明における接着剤組成物中の硬化剤の含有量としては、特に制限はないが、硬化性と粘度および吸湿性の官能基を残存させないという観点から、第1のエポキシ樹脂および第2のエポキシ樹脂の、エポキシ当量の加重平均値に対する比率が、官能基当量基準で30%〜95%となる含有量であることが好ましく、70%〜95%であることがより好ましく、75%〜90%であることがさらに好ましい。
前記比率が95%以下であることで、半導体パッケージにおける基板段差の埋め込み性がより向上する。また30%以上であることで、吸湿性の上昇を抑制し、加熱硬化持における発泡を抑制できる。
【0037】
また本発明における接着剤組成物が硬化剤としてフェノール樹脂を含む場合、前記第1のエポキシ樹脂および第2のエポキシ樹脂の総量とフェノール樹脂の含有比としては、硬化性と粘度の観点から、フェノール樹脂における水酸基当量の、第1および第2のエポキシ樹脂におけるエポキシ当量の加重平均値に対する比率として、官能基当量基準で30%〜95%となる含有量であることが好ましく、50%〜95%であることがより好ましく、75%〜90%であることがさらに好ましい。
前記第1のエポキシ樹脂および第2のエポキシ樹脂の総量とフェノール樹脂の含有比が上記範囲内であることにより、接着剤組成物の硬化性がより向上し、未硬化状態での粘度上昇が抑制され、好適な流動性を得ることができる。
【0038】
さらに本発明における接着剤組成物は、前記第1のエポキシ樹脂、第2のエポキシ樹脂、硬化剤、および後述する(メタ)アクリル共重合体の総含有量に対する、前記第1のエポキシ樹脂、第2のエポキシ樹脂、および硬化剤の総含有量が40質量%〜60質量%であることが好ましく、45質量%〜55質量%であることがより好ましい。
前記第1のエポキシ樹脂、第2のエポキシ樹脂、および硬化剤の総含有量が40質量%以上であることで、粘度の上昇が抑制され、基板の凹部への埋め込み性がより向上する傾向にある。また、この含有割合が60質量%以下であることで、タック強度が上昇することを抑制し、実装基板の作製プロセスにおける作業性がより向上する傾向にある。
【0039】
((メタ)アクリル共重合体)
本発明における接着剤組成物は、(メタ)アクリル共重合体の少なくとも1種を含む。前記(メタ)アクリル共重合体としては、重量平均分子量が10万〜120万、かつガラス転移温度(Tg)が−50〜+50℃であって、分子内に架橋性官能基を有する(メタ)アクリル共重合体であることが好ましい。
【0040】
(メタ)アクリル共重合体としては、(メタ)アクリル酸エステル共重合体、アクリルゴム等を挙げることができ、アクリルゴムであることがより好ましい。アクリルゴムとしては、アクリル酸エステルを主成分とする共重合体であれば特に制限はないが、ブチルアクリレートとアクリロニトリルなどの共重合体や、エチルアクリレートとアクリロニトリルなどの共重合体などからなるアクリロニトリルゴムや、前記アクリロニトリルゴムにおけるアクリロニトリルをメチルメタクリレートに置換したアクリロニトリルフリーゴム等を好適に挙げることができる。
【0041】
本発明における(メタ)アクリル共重合体は、架橋性官能基の少なくとも1種を含むことが好ましく、エポキシ基、アルコール性又はフェノール性水酸基、およびカルボキシル基から選ばれる架橋性官能基の少なくとも1種を含むことがより好ましく、エポキシ基を含むことがさらに好ましい。また、前記エポキシ基を含む(メタ)アクリル共重合体は、グリシジルアクリレート又はグリシジルメタクリレートなどの、エポキシ基を含むアクリルモノマーに由来する構造単位を有することが好ましい。
【0042】
前記(メタ)アクリル共重合体における架橋性官能基の含有量としては、特に制限はないが、耐熱性と硬化性の観点から、0.5質量%〜5.0質量%であることが好ましく、0.5質量%〜2.0質量%であることがより好ましい。
【0043】
本発明における(メタ)アクリル共重合体の重量平均分子量は、好ましくは10万以上100万以下であり、より好ましくは10万〜90万であり、さらに好ましくは、20万〜85万である。重量平均分子量が10万以上であることで接着剤組成物層の硬化後の耐熱性及び接着力がより向上する傾向がある。また重量平均分子量が120万以下であることで接着層の流動性がより向上する傾向がある。なお、上記重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC)で標準ポリスチレンによる検量線を用いたポリスチレン換算値である。
【0044】
また前記(メタ)アクリル共重合体は、重量平均分子量が互いに異なる2種類以上を併せて用いることが好ましい。さらに、重量平均分子量が10万〜30万である(メタ)アクリル共重合体の少なくとも1種と、重量平均分子量が50万〜120万である(メタ)アクリル共重合体の少なくとも1種とを併用することが好ましく、重量平均分子量が10万〜30万である(メタ)アクリル共重合体の少なくとも1種と、互いに異なる重量平均分子量が50万〜120万である(メタ)アクリル共重合体の少なくとも2種とを併用することがより好ましい。これにより、一層高い接着強度を有する接着剤組成物を構成することができる。この接着剤組成物は、粘度が低くても、硬化後の耐熱性及び耐湿性により優れたものとなる
なお、接着剤組成物が、(メタ)アクリル共重合体を2種類以上含む場合、それらは別個に重合して得られるものである。
【0045】
前記(メタ)アクリル共重合体のガラス転移温度(Tg)は−50〜+50℃であることが好ましく、−20℃〜+40℃であることがより好ましく、−10℃〜+40℃であることがさらに好ましい。Tgが−50℃以上であることで接着剤組成物の柔軟性が高くなりすぎることを抑制し、ウエハダイシング時における接着剤組成物層の切断がより容易になり、その結果バリの発生を抑制できダイシング性がより向上する傾向にある。またTgが+50℃以下であることで、接着層の柔軟性がより向上する傾向にある。
【0046】
さらに前記(メタ)アクリル共重合体は、ガラス転移温度(Tg)が−20℃〜+40℃で重量平均分子量が10万〜90万であってエポキシ基を有する(メタ)アクリル共重合体であることが好ましく、Tgが−10℃〜+40℃で重量分子量が20万〜85万であってエポキシ基を有する(メタ)アクリル共重合体であることがより好ましい。これにより、特に、半導体ウエハダイシング時に接着フィルムの切断が一層容易になり、切断の際に樹脂くず(バリ)が更に発生し難くなり、また、耐熱性がより高くなる。
【0047】
本発明における接着剤組成物中の(メタ)アクリル共重合体の含有量としては、特に制限はないが、耐熱性と硬化性の観点から、前記第1のエポキシ樹脂、第2のエポキシ樹脂、および硬化剤の総含有量に対して、15質量%〜40質量%であることが好ましく、15質量%〜30質量%であることがより好ましく、20質量%〜30質量%であることが更に好ましい。(メタ)アクリル共重合体の含有量が上記数値範囲内にあることで、15質量%を下回る場合と比較して、フィルム成形性がより向上する。また(メタ)アクリル共重合体の含有量が上記数値範囲内にあることで、40質量%を超える場合と比較して、接着剤組成物の更なる低粘度化が実現できる。
【0048】
本発明においては、前記(メタ)アクリル共重合体に加えて、エポキシ基、アルコール性又はフェノール性水酸基、カルボキシル基等の架橋性官能基を有する高分子量成分を含むことができる。前記高分子量成分としては、ポリイミド樹脂、ウレタン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、フェノキシ樹脂、および変性ポリフェニレンエーテル樹脂等が挙げられる。
【0049】
本発明における接着剤組成物層は、耐熱性と反りの発生抑制の観点から、前記第1のエポキシ樹脂と第2のエポキシ樹脂と、前記第1のエポキシ樹脂と第2のエポキシ樹脂の、エポキシ当量の加重平均値に対する比率が、官能基当量基準で30%〜95%となる含有量である硬化剤と、第1のエポキシ樹脂と第2のエポキシ樹脂と硬化剤の合計含有量100質量部に対して、20質量部〜50質量部の(メタ)アクリル共重合体と、を含むことが好ましく、
前記第1のエポキシ樹脂と第2のエポキシ樹脂と、前記第1のエポキシ樹脂と第2のエポキシ樹脂のエポキシ当量の加重平均値に対する比率が、官能基当量基準で75%〜90%となる含有量である硬化剤と、第1のエポキシ樹脂と第2のエポキシ樹脂と硬化剤の合計含有量100質量部に対して、20質量部〜35質量部の(メタ)アクリル共重合体と、を含むことがより好ましい。
【0050】
(フィラー)
本発明における接着剤組成物は、フィラーの少なくとも1種をさらに含むことがより好ましい。
フィラーは固体粒子であり、これを含むことにより、接着剤組成物の未硬化状態(以下、「Bステージ状態」ということがある)における接着フィルムのダイシング性がより向上したり、接着フィルムの取り扱い性がより向上したり、熱伝導性がより向上したりする。また、溶融粘度を好適な粘度に調整することができたり、チクソトロピック性が付与できたり、接着力がより向上したりする。かかる観点から、フィラーは無機フィラーであることがより好ましい。
【0051】
前記無機フィラーは固体粒子状の無機化合物であれば特に限定されない。無機フィラーの材質の具体例としては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、アルミナ、窒化アルミニウム、ほう酸アルミウイスカ、窒化ホウ素、結晶性シリカ、非晶性シリカ、アンチモン酸化物などが挙げられる。無機フィラーは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0052】
熱伝導性向上の観点からは、無機フィラーの材質が、アルミナ、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、結晶性シリカ又は非晶性シリカであることが好ましい。また溶融粘度の調整やチクソトロピック性の付与の観点からは、無機フィラーの材質が、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、アルミナ、結晶性シリカ又は非晶性シリカであることが好ましい。また、ダイシング性向上の観点からは、無機フィラーの材質がアルミナ又はシリカであることが好ましい。
本発明におけるフィラーは上記観点から適宜選択することができるが、中でも接着性の観点から、シリカフィラーであることが好ましい。
【0053】
前記フィラーの平均粒径としては特に制限はないが、更に高い接着力を得ると共に良好な成膜性を達成する観点から、0.005μm〜2.0μmであることが好ましく、0.005μm〜1.5μmであることがより好ましく、0.005μm〜1.0μmであることが更に好ましい。
【0054】
本発明における接着剤組成物は、平均粒径が互いに異なる2種類以上のフィラーを含むことが好ましい。これにより、接着力が更に高まると共に、一層良好なフィルム成形性を示す接着剤組成物が得られる。
具体的には例えば、平均粒径が0.1μm以上1.0μm以下のフィラーと、平均粒径が0.01μm以上0.10μm未満のフィラーとを含むことが好ましく、平均粒径が0.3μm以上0.7μm以下のフィラーと、平均粒径が0.015μm以上0.050μm以下のフィラーとを含むことがより好ましい。
上記態様であることにより接着力が更に高まると共に、より一層良好なフィルム成形性が得られる。
【0055】
また、平均粒径が互いに異なるフィラーの含有比としては、より大きい平均粒径のフィラーに対してより小さい平均粒径のフィラーを30:1で含むことが好ましく、25:1で含むことがさらに好ましい。
上記態様であることにより接着力が更に高まると共に、より一層良好なフィルム成形性が得られる。
【0056】
本発明におけるフィラーの含有率は、第1のエポキシ樹脂、第2のエポキシ樹脂および硬化剤の総含有量に対して、40質量%〜180質量%であることが好ましく、60質量%〜120質量%であることがより好ましい。
このフィラーの含有率が40質量%以上であることで、ダイシング時に樹脂のバリの発生をより抑制し、ダイシング性が向上すると共に接着力が高まり、ワイヤボンディング性が良好になる。またフィラーの含有率が180質量%以下であることで、未硬化の状態での流動性が高くなり、フィルム成形性が更に優れたものとなる。さらに、フィラーの含有率を上記数値範囲内に収めることにより、接着層が硬化した後の170℃における貯蔵弾性率を20MPa〜1000MPaに調整しやすくなる。
【0057】
前記接着剤組成物において、上記熱硬化性成分、アクリル共重合体及びフィラーの合計の含有量は、接着剤組成物の全量に対して95質量%〜100質量%であることが好ましく、97質量%〜100質量%であることがより好ましい。上述の各成分の含有量がこの数値範囲内にあると、接着剤組成物としてより十分有効に機能することができる。
【0058】
さらに本発明における接着剤組成物層は、耐熱性と反りの発生抑制の観点から、前記第1のエポキシ樹脂および第2のエポキシ樹脂と、前記第1のエポキシ樹脂および第2のエポキシ樹脂の、エポキシ当量の加重平均値に対する比率が官能基当量基準で30%〜95%となる含有量である硬化剤と、第1のエポキシ樹脂と第2のエポキシ樹脂と硬化剤の合計含有量100質量部に対して、20質量部〜50質量部の(メタ)アクリル共重合体と、100質量部〜200質量部のフィラーとを含むことが好ましく、
前記第1のエポキシ樹脂および第2のエポキシ樹脂と、前記第1のエポキシ樹脂と第2のエポキシ樹脂の、エポキシ当量の加重平均値に対する比率が官能基当量基準で70%〜90%となる含有量である硬化剤と、第1のエポキシ樹脂と第2のエポキシ樹脂と硬化剤の合計含有量100質量部に対して、20質量部〜35質量部の(メタ)アクリル共重合体と、100質量部〜150質量部のフィラーとを含むことがより好ましい。
【0059】
本発明における接着剤組成物は、150℃以上の温度で重合するモノマーをさらに含有してもよく、そのモノマーがエポキシ樹脂以外のモノマーであることが好ましい。これにより、接着剤組成物層2のようなフィルム形状にして用いた接着剤組成物の粘度の経時変化を一層抑制することができ、フィルム特性をより長く維持することができる。一方で、接着剤組成物層2を150℃以上に加熱して、このモノマーを高分子量化させて硬化することで、硬化後の接着剤組成物層2の耐熱性及び耐湿性を高い状態で保持することができる。なお、ここでの「モノマー」は、重合可能な化合物を意味する。
【0060】
このようなモノマーとしては、例えば、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート及びジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)等の多官能(メタ)アクリレートモノマーなどが挙げられる。その中でも、DPHAが好ましい。150℃以上の温度で重合するモノマーは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0061】
本発明における接着剤組成物は、上述の各成分の他、本発明の目的を達成する限りにおいて、硬化促進剤、触媒、添加剤、カップリング剤、可塑剤、粘着性付与剤等、接着剤組成物に含まれ得る通常の成分をさらに含んでもよい。
【0062】
以上、説明した接着剤組成物は、本発明の目的を達成する限りにおいて、上述の各成分のそれぞれにおいて例示されたもののいずれを組み合わせてもよい。
【0063】
本発明における接着剤組成物の好適な実施形態は、熱硬化後の20℃における三点曲げ弾性率が50g/mm未満である第1のエポキシ樹脂と、エポキシ当量が100g/eq〜250g/eqかつ20℃で固体であって、前記第1のエポキシ樹脂に対する含有率が30質量%〜90質量%である第2のエポキシ樹脂と、第1のエポキシ樹脂および第2のエポキシ樹脂の、エポキシ当量の加重平均値に対する比率が水酸基当量基準で70%〜95%となる含有量であるフェノール樹脂と、第1のエポキシ樹脂、第2のエポキシ樹脂およびフェノール樹脂の合計含有量100質量部に対して、重量平均分子量が10万〜120万、かつTgが−50〜+50℃であって、分子内に架橋性官能基を有する(メタ)アクリル共重合体の30質量部〜50質量部と、シリカフィラーの100質量部〜200質量部と、を含有するものである。
【0064】
本発明における接着剤組成物層は、熱硬化性であって、硬化前(Bステージ状態)の80℃における溶融粘度が800Pa・s〜40000Pa・sであることが好ましく、800Pa・s〜28000Pa・sであることがより好ましい。また、特定の基材(レジスト(太陽インキ社製、AUS308)が10〜30μmのレジスト厚で塗布された基板(日立化成工業社製、E−697FG))への接着強度が3MPa以上、かつ厚みが5μm〜250μmであると好ましい。
【0065】
前記溶融粘度が800Pa・s以上であることで、半導体チップ側面からの接着剤組成物のはみ出しの発生がより抑制される。また、この溶融粘度が40000Pa・s以下であることで、被着体表面における凹部への接着剤組成物層の埋め込み性がより向上する。
また前記溶融粘度は、TAインスツルメンツ製ARESを用いて、ひずみ量1.0(%)、剪断速度0.1(s−1)、昇温速度5℃/minの条件で30〜200℃の範囲で測定される。
【0066】
また、上記特定の基材への接着強度が3MPa以上であることで、接着性がより向上する傾向がある。
前記特定の基材への接着強度は、Dage Precision Industries製Dage2400を用い、260℃に設定したステージ上で30s保持した後、測定高さ100(μm)、測定速度100(μm/s)の条件にて測定される。
【0067】
さらに、接着剤組成物層の厚みが5μm以上であることで、被着体表面における凹部への接着剤組成物層の埋め込み性がより向上し、応力緩和効果や接着性がより向上する。一方、この厚みが250μm以下であることで、経済性が向上すると共に、半導体装置の小型化の要求により好適に適合できる。同様の観点から接着剤組成物層の厚みは10μm〜250μmであることがより好ましく、20μm〜100μmであることが更に好ましく、40μm〜80μmであることが特に好ましい。
【0068】
接着剤組成物層の硬化前の80℃における溶融粘度は、上述の第1のエポキシ樹脂および第2のエポキシ樹脂の種類の選定、(メタ)アクリル共重合体の分子量分布の調整、接着剤組成物における第1のエポキシ樹脂および第2のエポキシ樹脂の含有割合の調整、(メタ)アクリル共重合体とフィラーとの配合比率の調整、並びに接着組成物層の形成条件の調整などにより、上記数値範囲内に収めることができる。
また、上述の第1のエポキシ樹脂および第2のエポキシ樹脂の選定、(メタ)アクリル共重合体の分子量分布の調整、並びに(メタ)アクリル共重合体とフィラーとの配合比率の調整などにより、接着強度を3MPa以上に制御することができる。
【0069】
このような接着剤組成物層は、例えば、80℃での圧着により基材表面への埋め込みが可能となる。
【0070】
本発明の半導体用接着フィルム10は、例えば、下記のようにして得ることができる。まず、上述の接着剤組成物を有機溶媒中で混合、混練してワニスを調製する。次いで、このワニスを支持フィルム1の表面上に塗布し、加熱により乾燥する。こうして、支持フィルム1と、その表面上に形成された接着剤組成物層2とを備える半導体用接着フィルム10が得られる。
【0071】
上記の混合、混練は、通常の撹拌機、らいかい機、三本ロール、ボールミル等の分散機を適宜組み合わせて行うことができる。乾燥のための加熱の条件は、使用した有機溶媒が十分に揮発する条件であれば特に制限はないが、通常60〜200℃で、0.1〜90分間加熱して行う。
【0072】
上記ワニスの調製に用いる有機溶媒は、材料を均一に溶解、混練又は分散できるものであれば制限はなく、従来公知のものを使用することができる。このような溶剤としては、例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶媒、トルエン、キシレン等が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。これらの中でも、乾燥速度が速く、価格が安い点でメチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどを使用することが好ましい。これら有機溶剤の一部は、通常、半導体用接着フィルム中の接着剤組成物層に揮発分として残存する。
【0073】
接着剤組成物層中に揮発分として残存する有機溶媒の含有量は、接着剤組成物層の全質量基準で3質量%以下であることが好ましい。耐熱信頼性及び作業効率向上の観点からは、この割合は1.5質量%以下であることがより好ましく、1.0質量%以下であることが更に好ましい。なお、この有機溶媒の含有量の下限は特に限定されないが、上述と同様の観点から0.01質量%であることが好ましい。
【0074】
ダイシング性に優れる点から、接着剤組成物層の硬化前(Bステージ状態)の25℃における貯蔵弾性率は200MPa〜6000MPaであることが好ましい。更に、ダイシング性に優れ、かつ半導体ウエハとの密着性が優れる点でこの貯蔵弾性率は200MPa〜2000MPaであることがより好ましい。
【0075】
また、硬化前(Bステージ状態)の接着剤組成物層の80℃における貯蔵弾性率は0.0001MPa〜10MPaであることが好ましい。これにより、80℃程度の温度における半導体ウエハへの良好なラミネート性が得られる。特に半導体ウエハへの密着性が高い点で、80℃における貯蔵弾性率は0.001MPa〜5MPaであることがより好ましい。
【0076】
硬化後(Cステージ状態)の接着剤組成物層2の170℃における貯蔵弾性率は20〜1000MPaであることが好ましい。これにより、接着剤組成物層は、更に良好なワイヤボンディング性を示すことができる。
【0077】
接着剤組成物層の貯蔵弾性率は、動的粘弾性測定装置(UBM社製商品名「Rheogel−E4000」等)を用いて測定することができる。測定条件は、サンプルサイズ:長さ20mm、幅4mm、温度範囲−60(又は室温)〜+260℃、昇温速度3℃/min、変位10ppm、引張りモード、10Hz、自動静荷重とされる。
【0078】
本発明の半導体用接着フィルムは、上述したように支持フィルム上に前記接着剤組成物層が設けられて構成される。
支持フィルムとしては特に制限はなく、通常用いられる支持フィルムを特に制限なく用いることができる。具体的には例えば、ポリテトラフルオロエチレンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリイミドフィルムなどのプラスチックフィルム等が挙げられる。これらのフィルムに対して、必要に応じてプライマー塗布、UV処理、コロナ放電処理、研磨処理、エッチング処理、離型処理等の表面処理を行ってもよい。
【0079】
支持フィルムの膜厚は、特に制限はなく、接着剤組成物層の膜厚や半導体用接着フィルムの用途によって適宜、当業者の知識に基づいて定められるものであるが、経済性がよく、フィルムの取り扱い性が良い点で、好ましくは60μm〜150μm、より好ましくは70μm〜130μmである。
【0080】
また本発明における支持フィルムは、来公知のダイシングテープであってもよい。この場合、接着シート10は、ダイシングテープ1と、その表面上に形成された接着剤組成物層2とを備えたダイシングテープ一体型の半導体用接着フィルムとなる。このダイシングテープ一体型の半導体用接着フィルムを用いると、半導体ウエハへのラミネート工程が一回で済むため、作業の更なる効率化が可能である。
【0081】
上記ダイシングテープとしては、例えば、ポリテトラフルオロエチレンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリイミドフィルムなどのプラスチックフィルム等が挙げられる。これらのフィルムに対して、必要に応じてプライマー塗布、UV処理、コロナ放電処理、研磨処理、エッチング処理等の表面処理を行ってもよい。
【0082】
ダイシングテープは粘着性を有することが好ましい。そのため、上述のプラスチックフィルムに粘着性を付与したものを用いてもよいし、上述のプラスチックフィルムの片面に粘着剤層を設けても良い。粘着剤層は、液状成分の比率、高分子量成分のTgを調整すること等によって得られる適度なタック強度を有する樹脂組成物を塗布乾燥することで形成可能である。
【0083】
半導体用接着フィルムを、半導体装置を製造する際に用いる場合、接着剤組成物層は、ダイシングの際には半導体チップが飛散しない粘着力を有し、その後のピックアップの際にはダイシングテープから容易に剥離可能であることが望まれる。例えば、接着剤組成物層の粘着性が高すぎるとピックアップが困難になることがある。そのため、適宜、接着剤組成物層のタック強度を調節することが好ましい。
接着剤組成物層のタック強度の調整には、例えば、接着剤組成物層の室温におけるフローを上昇させることにより、粘着強度及びタック強度が上昇する傾向があり、フローを低下させることにより、粘着強度及びタック強度が低下する傾向があることを利用すればよい。
【0084】
接着剤組成物層の室温におけるフローを上昇させるためには、例えば、可塑剤の含有量の増加、粘着性付与剤含有量の増加等の方法がある。逆にフローを低下させるためには、上記化合物の含有量を減らせばよい。可塑剤としては、例えば、単官能のアクリルモノマー、単官能エポキシ樹脂、液状エポキシ樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ系のいわゆる希釈剤等が挙げられる。
【0085】
ダイシングテープ上に接着剤組成物層を積層する方法としては、印刷のほか、予め作成したフィルム状の接着剤組成物層をダイシングテープ上にプレスやホットロールによってラミネートする方法が挙げられる。特に、連続的に製造でき、効率が良い点でホットロールによってラミネートする方法が好ましい。
【0086】
ダイシングテープの膜厚は、特に制限はなく、接着剤組成物層の膜厚や半導体用接着フィルムの用途によって適宜、当業者の知識に基づいて定められるものであるが、経済性がよく、フィルムの取り扱い性が良い点で、好ましくは60μm〜150μm、より好ましくは70μm〜130μmである。
【0087】
本実施形態に係る半導体用接着フィルムは、耐熱性に優れ、熱履歴に起因する反りの発生が抑制可能である。さらに、配線回路等に起因して形成された凹凸表面の凹部充填性が良好である。したがって、半導体装置の製造における半導体チップと基材との間や半導体チップ同士の間を接着するための工程において、接着信頼性に優れる半導体用接着フィルムとして使用することができる。本実施形態に係る半導体用接着フィルムは、半導体素子搭載用の基材に半導体チップを実装する場合に必要な耐熱性、耐湿性、絶縁性を有し、かつ作業性にも優れる。さらに半導体チップを実装する際の熱履歴による反りの発生が効果的に抑制される。
【0088】
上記半導体チップにおける半導体ウエハとしては、単結晶シリコンの他、多結晶シリコン、各種セラミック、ガリウム砒素などの化合物半導体が挙げられる。
また、半導体搭載用の基材としては、例えば、ダイパットを有するリードフレーム、セラミック基板、有機基板が挙げられる。これらは、基材の材質に制限されることなく用いられる。セラミック基板としては、例えば、アルミナ基板及び窒化アルミニウム基板が挙げられる。また、有機基板としては、例えば、ガラスクロスエポキシ樹脂を含浸させたFR−4基板、ビスマレイミド−トリアジン樹脂を含浸させたBT基板、ポリイミドフィルムを用いたポリイミドフィルム基板が挙げられる。
【0089】
有機基板と接着剤組成物層2との間の接着強度は、より十分な接着力を確保する観点から、265℃で3MPa以上であると好ましい。なお、ここでの「接着強度」は、上記「特定の基材への接着強度」における「特定の基材」を有機基板に代えて測定されるものである。
この接着強度は、上述の第1のエポキシ樹脂および第2のエポキシ樹脂の選定、(b)アクリル共重合体の分子量分布の調整、並びに(b)アクリル共重合体と(c)フィラーの配合比の調整などにより3MPa以上に制御することができる。
【0090】
<半導体装置>
図2は、本発明に係る半導体装置の一実施形態を示す断面図である。図2に示す半導体装置100は、同サイズの半導体チップを2つ以上備えるパッケージであって、いわゆるスタックドCSPと称されるものである。半導体装置100は、基材20及び基材20の一面側において積層された3個の半導体チップA1を備えている。そして、半導体チップA1と基材20との間、及び半導体チップA1同士の間に、上記実施形態に係る半導体用接着フィルム10から形成された硬化接着層2aが介在している。硬化接着層2aは、上記接着剤組成物層2の硬化体である。
【0091】
基材20は、基板3と、基板3の一面上に設けられた配線4と、配線4の下方において基板3を貫通する貫通孔を通って基板3の他方面側に導出された端子5とから主として構成される。基材20の配線4側の面は、配線4が形成されているために凹凸表面が形成されている。各半導体チップA1は、ワイヤ6を介して配線4と接続されている。
【0092】
このような構成を有する半導体装置100の製造において、本実施形態では、基材20の凹部を埋め込み、かつ上部の半導体チップA1との絶縁性を確保することが可能となる。さらに耐熱性に優れ、半導体装置100の製造時における熱履歴による反りの発生が抑制される。
【0093】
硬化接着層2aを介して半導体チップA1を基材20上に形成するには、例えば、下記のような工程を経る。まず、ダイシングテープである支持フィルム1及びその表面上に設けられた接着剤組成物層2からなる半導体用接着フィルム10の接着剤組成物層2側に、更に半導体ウエハを0℃〜80℃程度で貼り合わせる。次いで、回転刃又はレーザーを用いてそれらを所定の寸法及び形状になるように切断して、接着剤組成物層2と貼り合わされた半導体チップA1を得る。支持フィルム1を接着剤組成物層2から剥離除去した後、接着層2を、半導体チップA1とは反対側の面で、基材20または基材20上に硬化接着層2aを介して接着された別の半導体チップA1に圧着し、更に加熱する。この加熱により、接着剤組成物層2は基材20と半導体チップA1及び半導体チップA1同士を接着する硬化接着層2aとなる。
【0094】
この際の圧着荷重は、0.001MPa〜1MPa程度であることが好ましく、0.01MPa〜0.5MPaであることがより好ましく、0.01MPa〜0.3MPaであることが更に好ましい。圧着荷重を0.001MPa以上とすることで、ボイド(空隙)の発生を効果的に抑制でき、耐熱性が向上する。また、圧着荷重を1MPa以下とすることで、半導体チップA1が破壊されることを抑制できる。また、圧着時には加熱することが好ましく、圧着温度(加熱温度)としては80℃〜140℃であることが好ましく、100℃〜120℃であることがより好ましい。
【0095】
また圧着後の加熱処理は、硬化すべき接着剤組成物層2と貼り合わされた半導体チップA1のみに施されることが好ましい。あるいはその半導体チップA1と、接着対象である基材20又は別の半導体チップA1との両方が加熱されてもよい。加熱温度は60℃〜240℃であることが好ましく、80℃〜180℃であることがより好ましい。加熱温度を60℃以上とすることで、凹部への埋め込み性がより向上する傾向にあり、240℃以下とすることで基材20などの変形を抑制し、さらに反りの発生をより効果的に抑制できる傾向にある。加熱方法は、加熱対象をホットプレートに接触させる方法、加熱対象に赤外線又はマイクロ波を照射する方法、並びに加熱対象に熱風を吹き付ける方法などが挙げられる。
【0096】
<半導体搭載用配線基板>
本発明の半導体搭載用配線基板は、配線基板と、前記配線基板上に設けられた上記接着剤組成物層とを備える。かかる構成であることにより、半導体装置を構成する際の熱履歴に起因する反りの発生が抑制され、また耐熱性に優れる。従って本発明の半導体搭載用配線基板は半導体装置の製造に好適に使用することができる。
前記配線基板としては、上記半導体装置における基材として説明した事項をそのまま適用することができる。また接着剤組成物層についても上述の通りである。
【0097】
<接着剤組成物>
本発明の接着剤組成物は、加熱硬化後の20℃における三点曲げ弾性率が50g/mm未満である第1のエポキシ樹脂と、加熱硬化後の20℃における三点曲げ弾性率が50g/mm以上かつエポキシ当量が100〜250g/eqであり20℃で固体である第2のエポキシ樹脂と、硬化剤と、(メタ)アクリル共重合体と、を含む。かかる構成であることで、半導体チップ等と接着した状態における熱履歴に起因する反りの発生が抑制され、さらに耐熱性に優れる。
前記接着剤組成物の具体的な構成は、上述の半導体用接着フィルムにおける接着剤組成物と同様であり、好ましい態様も同様である。
【0098】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【0099】
例えば、本発明の別の実施形態において、半導体用接着フィルムは接着剤組成物層のみから構成されてもよい。この場合、接着剤組成物を含む上記ワニスを被塗布用フィルムの表面上に塗布し、更にワニスを加熱により乾燥した後、被塗布用フィルムを剥離除去して接着剤組成物層からなる接着シートが得られる。
【0100】
被塗布用フィルムとしては、例えば、ポリエステルフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリイミドフィルム、ポリエーテルイミドフィルム、ポリエーテルナフタレートフィルム及びメチルペンテンフィルムが挙げられる。
【0101】
また、このようにして得られた接着剤組成物層を支持フィルム上に圧着等の手段により積層して、支持フィルムと、その表面上に形成された接着剤組成物層とを備える半導体用接着フィルムが作製されてもよい。
【0102】
半導体用接着フィルムが接着剤組成物層のみから構成される場合、まず半導体ウエハと接着剤組成物層とを貼り合わせた後に、ダイシングテープを、接着剤組成物層の半導体ウエハとは反対側の主面に貼り合わせてもよい。
【0103】
半導体用接着フィルムを半導体ウエハに貼り付ける際のラミネート温度は、0℃〜80℃が好ましく、15℃〜80℃がより好ましく、20℃〜70℃が更に好ましい。ラミネート温度を80℃以下とすることで、半導体用接着フィルムを貼り付けた後の半導体ウエハにおける反りの発生をより効果的に抑制できる。
【0104】
また、半導体用接着フィルムは、接着剤組成物層の支持フィルムとは反対側に保護フィルムを備えたものであってもよい。保護フィルムは、通常の半導体用接着フィルムに保護フィルムとして用いられるものであれば特に限定されず、例えばポリエチレン(PE)フィルムなどが挙げられる。
【0105】
さらに、接着剤組成物層自体がダイシングテープとしての役割を果たしてもよい。このような接着剤組成物層を有する半導体用接着フィルムは、ダイシングダイボンド一体型接着フィルムなどと呼ばれ、一つのフィルムでダイシングテープとしての役割と、接着フィルムとしての役割をともに果たす。半導体用接着フィルムにこのような機能を持たせるには、例えば、接着剤組成物層が、光硬化性高分子量成分、光硬化性モノマー、光開始剤等の光硬化性成分を含んでいればよい。
【0106】
さらに接着剤組成物層は1層のみでなくてもよく、2層以上が積層されていてもよい。
【0107】
また、上記半導体用接着フィルムから形成された硬化接着層を備えた半導体装置は、図2に示すものに限定されず、半導体チップと基材との間に上記硬化接着層を設けたものであればよい。したがって、例えば、いわゆるピラミッド型、逆ピラミッド型のスタックドCSPであってもよい。
【実施例】
【0108】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。尚、下記の実施例における各操作は全て大気中で行われた。
【0109】
(実施例1〜5および比較例1〜3)
表1に商品名及び配合部数(質量基準)を示すエポキシ樹脂、硬化剤、およびフィラーをシクロヘキサノンに溶解、分散させた。これらに、表1に示す種類および配合部数の(メタ)アクリル共重合体を加えて攪拌した。更に表1に同様に示すカップリング剤および硬化促進剤を塗工直前に加えて各成分が均一になるまで攪拌してワニスをそれぞれ得た。
【0110】
次に、得られたワニスを真空脱泡した。真空脱泡後のワニスを、支持フィルムの主面上に塗布した。塗布したワニスを120℃で15分間加熱乾燥した。こうして支持フィルムの主面上に、Bステージ状態にある厚み40μmの接着剤組成物層を備えた半導体用接着フィルムを得た。尚、支持フィルムとしては、主面上に離型処理を施した厚さ38μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(帝人デュポンフィルム(株)製A−31)を採用した。
【0111】
【表1】



【0112】
以下に、表1中の各成分の詳細を示す。尚、エポキシ樹脂の常温(20℃)における三点曲げ弾性率は既述の方法に従って測定した。
−硬化剤−
XLC−LL:ミレックスXLC−LL(商品名)、三井化学社製、フェノール樹脂、水酸基当量175
HE−200C−10: 、日本エアウォーター社製、フェノール樹脂、水酸基当量200
【0113】
−エポキシ樹脂−
エポリードPB3600(商品名):ダイセル化学社製、エポキシ化ポリブタジエン、エポキシ当量190(g/eq)、加熱硬化後の20℃における三点曲げ弾性率30g/mm
エピクロンTSR−601(商品名):DIC社製、CTBN変性エポキシ樹脂、エポキシ当量468(g/eq)、加熱硬化後の20℃における三点曲げ弾性率8g/mm
YDF−8170C(商品名):東都化成社製、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、エポキシ当量159(g/eq)、20℃で液体、加熱硬化後の20℃における三点曲げ弾性率88g/mm
YDCN−700−10(商品名):東都化成社製、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、エポキシ当量210(g/eq)、20℃で固体、加熱硬化後の20℃における三点曲げ弾性率120g/mm
YSLV−80XY(商品名):東都化成社製、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、エポキシ当量195(g/eq)、20℃で固体、加熱硬化後の20℃における三点曲げ弾性率105g/mm
630(商品名):JER社製、3官能グリシジルアミン型エポキシ樹脂、エポキシ当量96(g/eq)、20℃で固体、20℃における三点曲げ弾性率134g/mm
YDF−2001(商品名):東都化成社製、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、エポキシ当量486(g/eq)、20℃で固体、加熱硬化後の20℃における三点曲げ弾性率81g/mm
【0114】
−フィラー−
SC−2050(商品名):アドマテックス社製、シリカフィラー分散液、平均粒径0.500μm
R972:アエロジルR972(商品名)、日本アエロジル社製、シリカフィラー、平均粒径0.016μm
【0115】
−カップリング剤−
A−189:NUC A−189(商品名)、日本ユニカー社製、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン
A−1160:NUC A−1160(商品名)、日本ユニカー社製、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン
【0116】
−硬化促進剤−
2PZ−CN:キュアゾール2PZ−CN(商品名)、四国化成社製、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール
−アクリル共重合体−
HTR−860P−3:アクリルゴムHTR−860P−3(商品名)、ナガセケムテックス社製、重量平均分子量80万
試作品9:アクリルゴムHTR−860P−3試作品9(商品名)、ナガセケムテックス社製、重量平均分子量30万
試作品25:アクリルゴムHTR−860P−3試作品25(商品名)、ナガセケムテックス社製、重量平均分子量60万
試作品48:アクリルゴムHTR−860P−3試作品48(商品名)、ナガセケムテックス社製、重量平均分子量51万
【0117】
<評価>
実施例1〜5および比較例1〜3で得られた半導体用接着フィルムを用いて、以下に示す評価項目について評価を行なった。評価結果を表2に示した。
【0118】
[反り量]
半導体用接着フィルムのエアー面(支持フィルムとは反対側の面)にポリイミドフィルム(宇部興産(株)製ユーピレックスS、50 μm厚)を60℃、ロール加圧(温度100℃、線圧4kgf/cm、送り速度0.5m/分)でラミネートした。これを3cm角に切断し、支持フィルムを剥がして試験片を作製した。得られた試験片を乾燥機に入れ、120℃で1時間、次いで160℃で30分加熱した。その後乾燥機から取り出して室温に戻したときの反り量を測定した。
反り量測定には非接触形状測定装置YP−10(SONY(株)製)を用い、図3に模式図として示すように、最下点から反り方向に距離a(5mm)の位置における最大高さbを測定した。最大高さbからポリイミドフィルムと硬化後の接着剤組成物層の層厚を差し引いた値b’を求め、次式(1)に従って反り量を算出し、下記評価基準に従って評価した。
反り量(%)=100×b’/a (1)
〜評価基準〜
◎:反り量が4.0%以下(基板及びチップへ影響がないレベル)
○:反り量が4.0%を超え6.0%以下(基板またはチップ厚が数μmだと反る可能性があるレベル)
△:反り量が6.0%を超え10.0%以下(基板またはチップ厚が数十μmだと反る可能性があり、実用上の限界レベル)
×:反り量が10.0%を超えた(基板またはチップが剥がれるなど信頼性に悪影響があるレベル)
【0119】
[タック強度]
硬化前の半導体用接着フィルムの支持フィルムとは反対側の面(エアー面)におけるタック強度を、レスカ(株)製プローブタッキング試験機を用いて、JIS Z0237−1991に準拠した方法(プローブ)直径5.1mm、引き剥がし速度10mm/s、接触荷重100gf/cm、接触時間1秒)により、40℃で測定し、下記評価基準に従って評価した。
〜評価基準〜
−×:タック強度が0.2N未満であった。
○:タック強度が0.2N以上2.0N以下であった。
+×:タック強度が2.0Nを超えていた。
【0120】
[フロー率]
硬化前の半導体用接着フィルムを5mm角に打ち抜き、支持フィルムを剥がした後、2枚のカバーガラス(アズワン株式会社製)で挟み込んで検体を作製した。
得られた検体における半導体用接着フィルムの対角線の長さL1を光学顕微鏡で測定した。次いでこの検体を、テスター産業(株)製の熱圧着試験装置を用いて熱板温度120℃、圧力0.4MPaで3秒保持した後、対角線の長さL2を光学顕微鏡で測定した。得られた長さL1およびL2を、次式(2)に当てはめて、対角線の長さの変化率としてフロー率(%)を算出し、下記評価基準に従って評価した。
フロー率(%)=(L2−L1)×100/L1 (2)
〜評価基準〜
−×:フロー率が5%未満であった。
○:フロー率が5〜30%であった。
+×:フロー率が30%を超えていた。
【0121】
[接着強度]
半導体用接着フィルムの接着剤組成物層の接着強度(ダイシェア強度)を下記の方法により評価した。
半導体用接着フィルムの接着剤組成物層を厚み400μm、5.0mm角の半導体チップに60℃、1kgf、3秒で貼り付けた。次いで支持フィルムを剥がし、接着剤組成物層の半導体チップとは反対側の面を、レジスト(商品名「AUS308」、太陽インキ社製)を塗布した基板(日立化成工業社製、商品名「E−697FG」)表面上に、100℃、0.01MPa、1秒間の条件で熱圧着してサンプルを得た。その後、得られたサンプルの接着層を110℃で1時間、120℃で1時間、140℃で1時間、170℃で5時間の順でステップキュアにより硬化した。この試験片を85℃相対湿度85%の環境に48時間放置した後、Dage製接着力試験機Dage−4000を用いて、温度260℃の熱盤上で、測定速度:50μm/秒、測定高さ:50μmの条件で、せん断方向の外力を加えたときの最大応力としてダイシェア強度を測定して、これを接着強度とし、下記評価基準に従って評価した。
〜評価基準〜
◎:接着強度が3.0MPa以上(耐リフロー性JEDEC Level2を満足、かつ、基板上のレジストを凝集破壊した)
○:接着強度が2.0MPa以上3.0MPa未満(耐リフロー性JEDEC Level2を満足、かつ、レジストとフィルムの界面で剥離した)
×:接着強度が2.0MPa未満(耐リフロー性JEDEC Level2を不満足)
【0122】
[貯蔵弾性率]
以下のようにして硬化後の接着シートの貯蔵弾性率を評価した。
半導体用接着フィルムの接着剤組成物層が対向するように硬化前の半導体用接着フィルムを二枚重ねにして、110℃で1時間、120℃で1時間、140℃で1時間、さらに170℃で5時間熱処理して硬化させた。硬化させた接着剤組成物層から長さが20mm、幅が4mmの検体を作製し、動的粘弾性の測定装置、TAインスツルメンツ製RSA IIを用いて、ひずみ量0.01(%)、一定周波数10.0(s−1)、昇温速度5℃/分の条件で−50〜150℃の範囲で測定し、50℃及び100℃における貯蔵弾性率をそれぞれ求め、下記評価基準に従って評価した。
【0123】
〜評価基準50℃〜
×:50℃における貯蔵弾性率が2000MPa未満だった。
○:50℃における貯蔵弾性率が2000MPa以上5000MPa以下であった。
〜評価基準200℃〜
×:200℃における貯蔵弾性率が100MPaを超えた。
○:200℃における貯蔵弾性率が100MPa以下であった。
【0124】
[ずり粘度]
硬化前の半導体用接着フィルムのずり粘度を以下のようにして評価した。
半導体用接着フィルムの接着剤組成物層が対向するように硬化前の半導体用接着フィルムを二枚重ねにした。支持フィルムを剥がした後、平行平板プレート法によるずり弾性率の測定装置、TAインスツルメンツ製ARESを用いて、ひずみ量1.0(%)、剪断速度0.1(s−1)、120℃一定の条件で20分測定し、120℃20分後のずり粘度を測定し、下記評価基準に従って評価した。
〜評価基準〜
−×:ずり粘度が10000Pa・s未満であった。
○:ずり粘度が10000Pa・s以上100000Pa・s以下であった。
+×:ずり粘度が100000Pa・sを超えた。
【0125】
[吸湿耐熱性]
半導体接着フィルムから支持フィルムを剥がし、接着剤組成物層の両面にポリイミドフィルム(ユーピレックスS、厚さ50μm)を積層し、170℃で5時間の加熱処理により接着層を硬化した試験片を作製した。この試験片を85℃相対湿度85%の環境に48時間放置した後、10mm角に切断した後、260℃のホットプレート上に乗せて、膨れや発泡を目視により観察し、下記評価基準に従って評価した。
〜評価基準〜
×:ホットプレート上に乗せて1分以内に膨れや発泡が生じた。
○:ホットプレート上に乗せて1分を超えても膨れや発泡が生じなかった。
【0126】
【表2】



【0127】
表2から、本発明の半導体用接着フィルムは、加熱処理に起因する反りの発生が抑制され、さらに耐熱性に優れることが分かる。
【符号の説明】
【0128】
10…半導体用接着フィルム、1…支持フィルム、2…接着剤組成物層、
100…半導体装置、A1…半導体チップ、3…基板、4…配線、5…端子、6…ワイヤ、20…基材、
B1…硬化後の接着剤組成物層、B2…ポリイミドフィルム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持フィルムと、
前記支持フィルム上に設けられ、加熱硬化後の20℃における三点曲げ弾性率が50g/mm未満である第1のエポキシ樹脂、加熱硬化後の20℃における三点曲げ弾性率が50g/mm以上かつエポキシ当量が100g/eq〜250g/eqであって20℃で固体である第2のエポキシ樹脂、硬化剤、および(メタ)アクリル共重合体を含む接着剤組成物層と、
を備える半導体用接着フィルム。
【請求項2】
前記接着剤組成物層における前記第1のエポキシ樹脂に対する前記第2のエポキシ樹脂の含有比率が30質量%〜90質量%である請求項1に記載の半導体用接着フィルム。
【請求項3】
前記接着剤組成物層はフィラーをさらに含む請求項1または請求項2に記載の半導体用接着フィルム。
【請求項4】
前記硬化剤はフェノール樹脂である請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の半導体用接着フィルム。
【請求項5】
前記接着剤組成物層は、前記硬化剤の含有量が、前記第1のエポキシ樹脂および第2のエポキシ樹脂のエポキシ当量の加重平均値に対する比率が、官能基当量基準で30%〜95%となる含有量であって、
前記(メタ)アクリル共重合体の含有量が、前記第1のエポキシ樹脂、第2のエポキシ樹脂および前記硬化剤の合計含有量100質量部に対して20質量部〜50質量部である請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の半導体用接着フィルム。
【請求項6】
前記フィラーはシリカフィラーである請求項3〜請求項5のいずれか1項に記載の半導体用接着フィルム。
【請求項7】
配線基板と、
前記配線基板上に設けられ、請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の半導体用接着フィルムに含まれる接着剤組成物層と、
を備える半導体搭載用配線基板。
【請求項8】
請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の半導体用接着フィルムを用いて被接着体に接着された半導体チップを有する半導体装置。
【請求項9】
加熱硬化後の20℃における三点曲げ弾性率が50g/mm未満である第1のエポキシ樹脂と、加熱硬化後の20℃における三点曲げ弾性率が50g/mm以上かつエポキシ当量が100g/eq〜250g/eqであって20℃で固体である第2のエポキシ樹脂と、硬化剤と、(メタ)アクリル共重合体と、を含む接着剤組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−4377(P2012−4377A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−138487(P2010−138487)
【出願日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】