説明

半導体発光素子

【課題】基板成長面に光の干渉効果を考慮した周期的凹凸構造を形成することにより、光取り出し効率の向上した半導体発光素子を提供する。
【解決手段】第1屈折率を有する基板10と、基板10上に配置され、第2屈折率を有し、周期的凹凸加工された加工層18と、加工層18に挟まれた凹部の基板10上および凸部の加工層18上に配置され、第3屈折率を有する第1半導体層12とを備え、第2屈折率の値は、第1屈折率の値よりも大きく、第3屈折率の値よりも小さい半導体発光素子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体発光素子に係り、特に基板成長面に光の干渉効果を考慮した周期的凹凸構造を形成することにより、発光効率の向上した半導体発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)などに、III族窒化物系半導体からなる半導体発光素子が使用されている。III族窒化物系半導体の例としては、窒化アルミニウム(AlN)、窒化ガリウム(GaN)、窒化インジウム(InN)などがある。代表的なIII族窒化物系半導体は、AlxInyGa1-x-yN(0≦x≦1, 0≦y≦1, 0≦x+y≦1)で表される。
【0003】
III族窒化物系半導体を用いた半導体発光素子は、例えば、基板上にn型のIII族窒化物系半導体層(n型半導体層)、活性層(発光層)およびp型のIII族窒化物系半導体層(p型半導体層)をこの順に積層した構造を有する。そして、p型半導体層から供給された正孔(ホール)とn型半導体層から供給された電子が活性層で再結合して発生する光を外部に出力する。
【0004】
活性層として、井戸層(ウェル層)をウェル層よりもバンドギャップの大きな障壁層(バリア層)でサンドイッチ状に複数層挟んだ多重量子井戸(MQW:Multi-Quantum Well)構造が採用可能である。
【0005】
LEDの発光効率を決める要因の一つに、光取り出し効率がある。光取り出し効率とは、発光層で発光した光を半導体層の外側へ取り出す効率である。半導体層の屈折率は、半導体層の外側、例えばエポキシ樹脂の屈折率よりも高い。その上、屈折率の差が大きいために、半導体層の内部へ全反射してしまう光の量が多く、如何に発光した光を取り出せるかということが発光効率向上に効果がある。
【0006】
発光効率を向上させる試みとして、サファイア基板上にSiOの凹凸パターンを作製することは可能である(例えば、特許文献1参照。)。ただし、SiOは半導体層より屈折率が小さいが、サファイアの屈折率よりも小さいため、光取り出し効率向上の余地はまだある。
【0007】
また、ナノインプリント技術を用いて基板成長面への凹凸パターンを樹脂やレジストなどで作製することは可能である(例えば、特許文献2参照。)。
【0008】
また、基板上に形成された窒化物半導体膜を有し、基板の成長面には凹部と凸部が設けられ、凹部では、窒化物半導体膜と基板との間に空洞を有する窒化物半導体構造の発光素子についても既に開示されている(例えば、特許文献3参照。)。
【0009】
また、発光層の下方に凹凸形状の屈折率界面を付与することによって、発光層で生じた横方向の光の少なくとも一部に対して、その進行方向を外界に向かわせる半導体発光素子は、既に開示されている(例えば、特許文献4参照。)。
【0010】
また、基板に凹凸部を設けることによって外部量子効率を向上させた半導体発光素子についても既に開示されている(例えば、特許文献5参照。)。
【0011】
特許文献3〜5に開示された従来技術では、凹部の深さが数μm(少なくとも1μm)程度である。このため、厚く堆積させるための成膜の時間と、深くエッチングするための加工に時間を要し、製造コストの増大を招いていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2009−54898号公報
【特許文献2】特開2005−136106号公報
【特許文献3】特開2000−106455号公報
【特許文献4】特開2004−247757号公報
【特許文献5】特開2005−101566号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従来技術のように、凹部の深さを深く形成することによって、光が散乱され、それにより光の取り出し効率向上の効果があると云われている。本発明者らの実験結果によれば、以下の知見を得ている。すなわち、凸部を基板とは異なる屈折率を持つ材料で形成した場合に、凹凸が無いときには、基板側へ通り抜けていた光の成分の一部が、この深い凹部があることで散乱し、基板側へ通り抜けられない。一方で、凹凸が無いときに基板側へ通り抜けられない光の成分の一部が、凹凸があることで基板側へ通り抜けられるようになる。従来技術では光を凹凸の側壁面で反射または入射させるために散乱させるような効果が必要であり、凹凸の深さは数μmの厚さが必要であった。
【0014】
凹凸が無いときに基板側へ通り抜けられない光の成分がある理由は、基板より半導体層の屈折率が大きいことにより、半導体層から基板へのある入射角以上では全反射するからである。例えば、GaNとサファイアでは、屈折率はそれぞれn(GaN)=2.5、n(サファイア)=1.7であり、入射角がsin-1{n(サファイア)/n(GaN)}=42.8度以上のときに全反射する。全反射角度は屈折率の差が大きい程、小さくなる傾向にあり、光取り出し効率の点では、屈折率差が大きいことは好ましくない。
【0015】
凹凸の側壁面では、入射角度θは90度から基板への入射角度θを引いた分、θ=90−θになる。簡単のために、サファイアで凹凸を形成した場合は、凹凸の側壁面では、90−θ<42.8のとき、つまりθ>47.2の場合に、側壁面からサファイア基板側へ透過することができる。ただし、この側壁面からの透過成分を増やすには凹凸を深くする必要があり、少なくとも1μmは無いと効果が得られない。
【0016】
従来技術の一つである凸部をSiO2で形成されている場合は、SiOの屈折率は1.5であるため、GaNとの屈折率差はサファイアよりも大きくなり、全反射角度は36.8度と小さくなってしまい。サファイア基板で凹凸を形成するよりも基板側への光の透過率は悪くなる。
【0017】
凸部の材質がSiNの場合、屈折率はn(SiN)=1.95となる。GaNとの屈折率差はサファイア基板の場合より小さくなり、凹凸の側壁面からの透過光が増える。しかし、光取り出し効率向上のためには凹凸を1μmと深くする必要があり、SiNの堆積の時間とエッチングに時間を費やし、コスト増になる。
【0018】
また、光の取り出し効率の向上の点では、反射防止膜のような効果として、サファイア結晶基板全面をGaNとサファイアの中間の屈折率をもつもの、例えばSiNで薄く覆うことが理想であるが、それではサファイア結晶基板上にGaN系結晶を成長させることができない。
【0019】
そこで、浅い凹凸を形成することで、反射防止膜の効果を持たせつつ、GaN系結晶を成長させるということが両立でき、光取り出し効率の向上が期待できる。
【0020】
本発明の目的は、半導体層の屈折率と基板の屈折率の中間の屈折率を持つ材料を基板成長面上に、光の干渉効果を考慮した周期的凹凸構造を形成し、光取り出し効率の向上した半導体発光素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記目的を達成するための本発明の一態様によれば、第1屈折率を有する基板と、基板上に配置され、第2屈折率を有し、周期的凹凸加工された加工層と、加工層に挟まれた凹部の基板上および凸部の加工層上に配置され、第3屈折率を有する第1半導体層とを備え、第2屈折率の値は、第1屈折率の値よりも大きく、第3屈折率の値よりも小さい半導体発光素子が提供される。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、基板成長面に光の干渉効果を考慮した周期的凹凸構造を形成することにより、光取り出し効率の向上した半導体発光素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】(a)本発明の第1の実施の形態に係る半導体発光素子の模式的断面構造図、(b)図1(a)に対応する模式的平面パターン構成図。
【図2】(a)本発明の第1の実施の形態に係る半導体発光素子をパッケージに実装した構造を示す模式的断面構造図、(b)図2(a)のP部分の拡大図。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係る半導体発光素子に適用するBAlGaInNのバンドギャップエネルギーとa軸格子定数の関係を説明する図。
【図4】本発明の第1の実施の形態に係る半導体発光素子に適用するBAlGaInNの屈折率nとa軸格子定数の関係を説明する図。
【図5】本発明の第1の実施の形態に係る半導体発光素子に適用するBAlGaNのバンドギャップエネルギーと屈折率nとの関係を説明する図。
【図6】本発明の第1の実施の形態に係る半導体発光素子に適用するAlInNの屈折率nおよびバンドギャップエネルギーとAlxIn1-xNの組成比xとの関係を説明する図。図中には参考として、GaNの屈折率とバンドギャップエネルギーが示してある。
【図7】本発明の第1の実施の形態に係る半導体発光素子において、サファイア基板と、周期的凹凸加工された加工層と、BwAlyGa1-xInzN(0≦w≦1、0≦x≦1、0≦y≦1、0≦z≦1、x=w+y+z)系半導体層の模式的断面構造図。
【図8】本発明の第1の実施の形態に係る半導体発光素子において、加工層の凹凸パターンの周期的構造例1。
【図9】本発明の第1の実施の形態に係る半導体発光素子において、加工層の凹凸パターンの周期的構造例2。
【図10】本発明の第1の実施の形態に係る半導体発光素子において、加工層の凹凸パターンの周期的構造例3。
【図11】(a)本発明の第1の実施の形態に係る半導体発光素子において、入射角度θでサファイア基板に進入した光が、サファイア基板界面で屈折されてサファイア基板を透過する様子を説明する模式的断面構造図、(b)図11(a)のQ部分の拡大図。
【図12】本発明の第1の実施の形態に係る半導体発光素子において、凸部の長さa=5μm、凹部の長さb=2μm、凹凸の深さt=200nm〜1000nmの場合のBAlGaInN系半導体層からサファイア基板への散乱透過強度と入射角度θとの関係を説明する図。
【図13】本発明の第1の実施の形態に係る半導体発光素子において、凸部の長さa=5μm、凹部の長さb=2μm、凹凸の深さt=60nm〜200nmの場合のBAlGaInN系半導体層からサファイア基板への散乱透過強度と入射角度θとの関係を説明する図。
【図14】本発明の第1の実施の形態に係る半導体発光素子において、凸部の長さa=5μm、凹部の長さb=0.5μm、凹凸の深さt=200nm〜1000nmの場合のBAlGaInN系半導体層からサファイア基板への散乱透過強度と入射角度θとの関係を説明する図。
【図15】本発明の第1の実施の形態に係る半導体発光素子において、凹凸がなく加工層が一様に形成された場合の加工層の厚さt=200nm〜1000nmの場合のBAlGaInN系半導体層からサファイア基板への散乱透過強度と入射角度θとの関係を説明する図。
【図16】本発明の第1の実施の形態に係る半導体発光素子において、凸部の長さa=5μm、凹部の長さb=0.5μm、凹凸の深さt=90nmの場合において、加工層としてSiN層を用いた場合のBAlGaInN系半導体層からサファイア基板への散乱透過強度と入射角度θとの関係を説明する図(破線は加工層としてSiO2層を用いた場合の比較例)。
【図17】本発明の第1の実施の形態に係る半導体発光素子において、凸部の長さa=5μm、凹部の長さb=0〜2μm、加工層としてSiN層を用いた場合のBAlGaInN系半導体層からサファイア基板への積分散乱透過強度と凹部の深さtとの関係を説明する図(□は加工層としてSiO2層を用いた場合の比較例)。
【図18】(a)本発明の第1の実施の形態に係る半導体発光素子の基板加工工程の一工程を用いて形成された基板および加工された加工層の模式的断面構造図(構造例1)、(b)本発明の第1の実施の形態に係る半導体発光素子の基板加工工程を用いて形成された基板および加工層の模式的断面構造図(構造例2)、(c)本発明の第1の実施の形態に係る半導体発光素子の基板加工工程を用いて形成された基板および加工層の模式的断面構造図(構造例3)、(d)本発明の第1の実施の形態に係る半導体発光素子の基板加工工程を用いて形成された基板および加工層の模式的断面構造図(構造例4)。
【図19】(a)本発明の第1の実施の形態に係る半導体発光素子の基板加工工程を用いて形成された基板上の加工層の模式的平面パターン構成図(構成例1)、(b)本発明の第1の実施の形態に係る半導体発光素子の基板加工工程を用いて形成された基板上の加工層の模式的平面パターン構成図(構成例2)、(c)本発明の第1の実施の形態に係る半導体発光素子の基板加工工程を用いて形成された基板上の加工層の模式的平面パターン構成図(構成例3)、(d)本発明の第1の実施の形態に係る半導体発光素子の基板加工工程を用いて形成された基板上の加工層の模式的平面パターン構成図(構成例4)。
【図20】本発明の第1の実施の形態に係る半導体発光素子の製造方法の一工程を説明する模式的断面構造図(その1)。
【図21】本発明の第1の実施の形態に係る半導体発光素子の製造方法の一工程を説明する模式的断面構造図(その2)。
【図22】本発明の第1の実施の形態に係る半導体発光素子の製造方法の一工程を説明する模式的断面構造図(その3)。
【図23】本発明の第1の実施の形態に係る半導体発光素子の製造方法の一工程を説明する模式的断面構造図(その4)。
【図24】本発明の第1の実施の形態に係る半導体発光素子の製造方法の一工程を説明する模式的断面構造図(その5)。
【図25】本発明の第1の実施の形態に係る半導体発光素子の製造方法の一工程を説明する模式的断面構造図(その6)。
【図26】本発明の第1の実施の形態に係る半導体発光素子の製造方法において、横方向成長の一工程を説明する模式的断面構造図(その1)。
【図27】本発明の第1の実施の形態に係る半導体発光素子の製造方法において、横方向成長の一工程を説明する模式的断面構造図(その2)。
【図28】本発明の第1の実施の形態に係る半導体発光素子の製造方法において、横方向成長の一工程を説明する模式的断面構造図(その3)。
【図29】本発明の第1の実施の形態に係る半導体発光素子の製造方法において、横方向成長の一工程を説明する模式的断面構造図(その4)。
【図30】本発明の第1の実施の形態に係る半導体発光素子の製造方法において、横方向成長の一工程を説明する模式的断面構造図(その5)。
【図31】本発明の第1の実施の形態に係る半導体発光素子の製造方法の一工程を説明する模式的断面構造図(その6)。
【図32】本発明の第1の実施の形態に係る半導体発光素子の製造方法の一工程を説明する模式的断面構造図(その7)。
【図33】本発明の第1の実施の形態に係る半導体発光素子の詳細な模式的断面構造例1であって、半導体発光素子部分および活性層部分の拡大された模式的断面構造図。
【図34】本発明の第1の実施の形態に係る半導体発光素子の詳細な模式的断面構造例2あって、半導体発光素子部分および活性層部分の拡大された模式的断面構造図。
【図35】本発明の第1の実施の形態に係る半導体発光素子に適用されるIII族窒化物半導体の結晶面について説明するための模式図であって、(a)III族窒化物半導体の結晶構造のc面、a面、m面を示す模式図、(b)半極性面{10−11}を説明するための模式図、(c)半極性面{10−13}を説明するための模式図、(d)III族原子と窒素原子の結合を示す模式図。
【図36】図33に示した本発明の第1の実施の形態に係る半導体発光素子において、p側電極およびn側電極まで形成した模式的断面構造図。
【図37】本発明の第1の実施の形態に係る半導体発光素子の詳細な模式的断面構造例3であって、半導体発光素子部分および活性層部分の拡大された模式的断面構造図。
【図38】図37に示した本発明の第1の実施の形態に係る半導体発光素子のp側電極およびn側電極まで形成した模式的断面構造図。
【図39】本発明の第1の実施の形態に係る半導体発光素子をフリップチップ構造のパッケージに実装した構造を示す模式的断面構造図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
次に、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。又、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることはもちろんである。
【0025】
又、以下に示す実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、この発明の実施の形態は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。この発明の実施の形態は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0026】
以下の本発明の実施の形態に係る半導体発光装置において、「透明」とは、LEDの発光波長に対して透過率が約50%以上であるものと定義する。また「透明」とは、本発明の実施の形態に係る半導体発光装置において、可視光線に対して、無色透明という意味でも使用する。可視光線は波長約360nm〜830nm程度、エネルギー約3.45eV〜1.49eV程度に相当し、この領域で透過率が50%以上あれば透明である。
【0027】
[第1の実施の形態]
(素子構造)
本発明の第1の実施の形態に係る半導体発光素子は、図1(a)および図1(b)に示すように、第1屈折率を有する基板10と、基板10上に配置され、第2屈折率を有し、周期的凹凸加工された加工層18と、加工層18に挟まれた基板10上および加工層18上に配置され、第3屈折率を有し、n型不純物をドープされた第1半導体層12と、第1半導体層12上に配置された活性層13と、活性層13上に配置され、p型不純物をドープされた第2半導体層14とを備え、第2屈折率の値は、第1屈折率の値よりも大きく、第3屈折率の値よりも小さい。
【0028】
基板10は、例えばサファイア基板で形成される。なお、基板10は、多層積層構造の途中に配置された層構造若しくは半導体層で形成されていても良い。
【0029】
加工層18は、酸化物、窒化物、または酸素と窒素からなる化合物のいずれかで形成されていても良い。
【0030】
また、加工層18は、B、Mg、Al、Si、Ti、Zn、またはGaのいずれかの元素から構成される化合物で形成されていても良い。
【0031】
また、加工層18は、例えば、SiN、SiON、AlN、Al23、BN、BAlN、B23、Ga23、MgO、TiN、TiO2、ZnO、MgZnO、MgAl24、またはBpAlqGa1-rN(0≦p≦1、0≦q≦1、0≦r≦1、r=p+q)などのいずれかを用いることができる。
【0032】
加工層18のパターンサイズは数μm程度であり、例えば、約0.2μm〜約10μm程度である。例えば、基板10上に凹部の深さt=200nm以下の周期的凹凸構造を形成することによって、加工層18のパターンを形成している。
【0033】
加工層18の凹部の深さtは、例えば200nm以下であり、発光波長450nmのLEDの場合には、凹凸の深さtは、約90nmであることが好ましい。
【0034】
第1半導体層12は、BwAlyGa1-xInzN(0≦w≦1、0≦x≦1、0≦y≦1、0≦z≦1、x=w+y+z)系半導体層を備える。
【0035】
また、第1の実施の形態に係る半導体発光素子は、図1(a)に示すように、加工層18に挟まれた基板10上に配置されたバッファ層16をさらに備えていても良い。
【0036】
バッファ層16は、例えば、BsAltGa1-uN(0≦s≦1、0≦t≦1、0≦u≦1、u=s+t)系半導体を堆積することによって形成される。
【0037】
第1半導体層12は、バッファ層16上に配置されたBiAljGa1-kN(0≦i≦1、0≦j≦1、0≦k≦1、k=i+j)系半導体層を備えていても良い。ここで、第3屈折率はバッファ層16の屈折率の値と同じ、または大きい値を有する。
【0038】
バッファ層16、第1半導体層12のいずれか一方若しくは両方ともにSiドープされていても良い。
【0039】
バッファ層16の屈折率の値は、第2屈折率の値と同じ、または大きい。すなわち、第1屈折率を有する基板10と、第2屈折率を有する加工層18と、第3屈折率を有する第1半導体層12において、第1屈折率<第2屈折率<第3屈折率の関係があり、さらに、バッファ層16の屈折率の値は、第2屈折率の値と同じ、または大きく、もしくは第3屈折率の値と同じ、または小さい。
【0040】
また、第1の実施の形態に係る半導体発光素子は、図1(a)および図1(b)に示すように、第2半導体層14上に配置された透明電極15と、透明電極15、第2半導体層14、活性層13および第1半導体層12の一部を除去して得られた第1半導体層12面上に配置されたn側電極200と、透明電極15上に配置されたp側電極100とを備える。
【0041】
尚、第1半導体層12、活性層13、第2半導体層14、透明電極15、n側電極200、p側電極100などの各部の詳細については、図22〜図25、あるいは図33の詳細構造の説明において併せて説明する。
【0042】
第1の実施の形態に係る半導体発光素子をパッケージに実装した模式的断面構造は、図2(a)に示すように表される。また、図2(a)のA部分の拡大された模式的断面構造は、図2(b)に示すように表される。
【0043】
図2(a)に示すように、第1の実施の形態に係る半導体発光素子のp側電極100は、ボンディングコンタクト102を介して、ボンディングワイヤ104によって、パッケージ2の内壁底に実装されたアノード用の電極パターン106に接続され、同様に、n側電極200は、ボンディングコンタクト202を介して、ボンディングワイヤ204によって、パッケージ2の内壁底に実装されたカソード用の電極パターン206に接続されている。
【0044】
また、第1の実施の形態に係る半導体発光素子は、例えば、モールド樹脂1によって、パッケージ2内に実装されている。
【0045】
図2(a)に示すように、活性層13から上方向に放射された光は、第2半導体層14と透明電極15との界面で一部反射され、下方向に伝搬される。また、活性層13から下方向に放射された光は、加工層18において効率良く屈折されて、基板10内を伝搬し、パッケージ2の内壁底で反射され、上方向に伝搬される。
【0046】
結果として、図2(a)に示すように、パッケージ2に実装された第1の実施の形態に係る半導体発光素子において、活性層13から上方向および下方向に放射された光は、効率良く外部に取り出すことができる。
【0047】
第1の実施の形態に係る半導体発光素子に適用するBAlGaInNのバンドギャップエネルギーとa軸格子定数の関係は、図3に示すように表される。図3の横軸であるa軸格子定数(nm)は、BAlGaInN系結晶のa軸の長さであり、軸の方向は、基板10の表面に平行である。なお、ここで、基板10の表面に垂直な方向は、c軸になる。バンドギャップエネルギーE(eV)から波長λ(nm)への変換は、λ=1239.84/Eによって計算可能である。
【0048】
図3に示すように、BAlGaInNのバンドギャップエネルギーは、BN、AlN、GaN、InNとそれらを繋ぐ点線で囲まれた領域内に収まる。
【0049】
第1の実施の形態に係る半導体発光素子に適用するBAlGaInNの屈折率nとa軸格子定数の関係は、図4に示すように表される。図4に示すように、BAlGaInNの屈折率は、BN、AlN、GaN、InNとそれらを繋ぐ点線で囲まれた領域内に収まる。
【0050】
第1の実施の形態に係る半導体発光素子に適用するBAlGaInNのバンドギャップエネルギーと屈折率nとの関係は、図5に示すように表される。図5に示すように、BAlGaNのバンドギャップエネルギーは、BN、AlN、GaNとそれらを繋ぐ点線で囲まれた領域内に収まる。バッファ層16として、BAlGaNを選択することで、常にBAlGaNの屈折率nは、GaNの屈折率よりも小さくすることができ、BAlGaNのバンドギャップエネルギーも、常にGaNのバンドギャップエネルギーよりも大きくすることができる。そのため、光の取り出し効率を考慮すると、バッファ層16として、BAlGaNを選択することが望ましい。さらに、光の取り出し効率を考慮すると、バッファ層16だけに限らず、第1半導体層12に対してもBAlGaNを適用することができる。
【0051】
第1の実施の形態に係る半導体発光素子に適用するAlInNの屈折率nおよびバンドギャップエネルギーとAlxIn1-xNの組成比xとの関係は、図6に示すように表される。AlxIn1-xNの組成比xが0.5以上であれば、AlInNの屈折率nは、GaNの屈折率よりも小さくなり、AlInNのバンドギャップエネルギーは、GaNのバンドギャップエネルギーよりも大きくすることができる。したがって、光の取り出し効率を考慮すると、バッファ層16だけに限らず、第1半導体層12に対してもAlInNを適用することができる。
【0052】
(加工層)
第1の実施の形態に係る半導体発光素子の基板10の加工工程は、基板10自体を加工する代わりに、予め、基板10表面に加工が容易な材料の層を形成しておいて、この層を、例えば、エッチング加工することによって、基板10表面に凹部の深さt=200nm以下の周期的凹凸構造を形成している。
【0053】
そこで、凸部を形成する加工層18をSiNで形成し、凹部の表面はサファイア基板10を露出するように形成することで、露出したサファイア基板10の表面からGaN系半導体結晶を成長させることが可能となる。相対的に凹部の露出面積を減少させ、凸部を形成する加工層18の面積を増加させることで、SiNとGaN系半導体結晶が接する面積が増大し、結果として、光が取り出せない角度成分を低減する条件を得ることができる。ここで、凹凸の深さは200nm以下でも充分に効果が得られている。
【0054】
第1の実施の形態に係る半導体発光素子では、凸部を形成する加工層18の面積が重要であるため、凹凸の深さはそれほど重要な事項ではない。例えば、凹凸の深さが200nm以下と小さいことで、凹凸の深さが1μmの場合に比べて、成膜時間および加工時間を、それぞれ1/5以下に減らすことができ、製造時間短縮によるコスト削減を可能にすることができる。
【0055】
さらに凹凸の深さが200nm以下と小さいことで、GaN系半導体層からサファイア基板10側へ透過する光に対して、凸部を形成する加工層18のSiNが反射防止膜のような役割も果たすため、サファイア基板10側へ光を導入するのにより効果がある。
【0056】
GaNとサファイア基板10界面では全反射しない角度でも、サファイア基板10側へ100%透過することはできず、屈折率差に応じた分だけ反射される。この反射される成分を減らすことで、光の取り出し効率の向上が可能である。反射成分を減らすには、GaN層の屈折率よりも小さく、サファイア基板10の屈折率よりも大きい屈折率を有する材質を選ぶのが良い。
【0057】
すなわち、サファイア基板10上にGaN層の屈折率よりも小さく、サファイア基板10の屈折率よりも大きい屈折率を有する材質の凸部を有する加工層18を形成することによって、この反射成分を減らし、光の取り出し効率を向上することができる。
【0058】
例えば、SiNの屈折率は、n(SiN)=1.95であり、GaNの屈折率n(GaN)=2.5、サファイアの屈折率n(サファイア)=1.7に対して、好ましい値を有する。一方、SiO2の屈折率は、n(SiO2)=1.5であり、凸部をSiO2で形成することによって、光の取り出し効率は減少してしまう。
【0059】
SiNに限らず、屈折率2.15のAlN、またはAlNとGaNの中間の屈折率を持つAlGaNでも凸部を形成ことができる。さらにサファイア基板を使用する場合には、屈折率がサファイアの1.7より大きくなるように組成を調整することで、BGaN、BAlN、BAlGaNで凸部を形成することもできる。
【0060】
GaNの屈折率n(GaN)=2.5、サファイアの屈折率n(サファイア)=1.7に対して、例えば、n(AlN)=2.15、n(BN)=1.65、n(BAlN)=1.65〜2.15、n(BGaN)=1.65〜2.5、n(AlGaN)=2.15〜2.5であることから、n(SiN)=1.95と同じ、または大きく、n(GaN)=2.5と同じ、または小さい屈折率を有するAlN、BAlN、BGaN、AlGaN、BAlGaNなどをバッファ層16として適用することができる。
【0061】
サファイア基板10上にSiNを全面に形成することができれば、反射成分を減らす効果はもっとも大きいが、それではGaN層を形成することが難しい。
【0062】
そこで、部分的に加工層18を形成するSiN層をエッチングし、サファイア基板10を露出させることで、GaN層の形成が可能になる。サファイア基板10上にGaN層の屈折率よりも小さく、サファイア基板10の屈折率よりも大きい屈折率を有するSiN層の凸部を形成することによって、GaNとサファイア基板10界面での反射成分を減らすことができる。
【0063】
サファイア基板10が露出している凹部の面積BとSiNで覆われている凸部を形成する加工層18の面積Aを比較すると、BとAは同じか、若しくは、B<Aであることが好ましい。また、サファイア基板10が露出している凹部の長さbが、SiNで覆われている凸部の長さaよりも短い方が好ましい。具体的には、b/aは、2/5以下であることが望ましい。
【0064】
例えば、サファイア基板10が露出している凹部の深さtは、最大200nm程度もあれば充分である。例えば、発光ピーク波長450nmのLEDにおいては、サファイア基板10上のSiN層の凸部の深さは、90nmが最適である。
【0065】
加工層18の膜厚が200nm以下と薄い場合、幾何光学の手法では光の取り出し効率を算定することは不可能であり、干渉の効果を考慮する必要がある。すなわち、波動光学の手法を用いることで、干渉の効果を考慮して、光の取り出し効率を見積もることが可能となる。波動光学の効果を計算するには、マックスウェル方程式を直接差分により解く時間領域差分法を用いることで実行可能となる。この手法は、近似式を使用しないことにより、複雑な構造にも対応可能である。本発明の第1の実施の形態に係る半導体発光素子においては、波動光学の手法を用いることで、干渉の効果を考慮して、光の取り出し効率を最適化している。
【0066】
本発明の第1の実施の形態に係る半導体発光素子においては、波動光学の手法を用い、発光波長および各部の屈折率をパラメータにして、実質的な計算速度を得るために面内を1次元構造として、簡素化して計算した。
【0067】
例えば、GaN系半導体層からサファイア基板10に対して、ある入射角の光がサファイア基板10側へ散乱成分も含めて透過する強度を計算し、入射角を0度から10度ステップで変化させて計算した値をすべて積分して比較した。その結果、発光波長450nmのGaInN系半導体発光素子の場合、厚さ90nmのときに干渉の効果によって、光の取り出し効率が向上することを見出した。
【0068】
第1の実施の形態に係る半導体発光素子によれば、加工層18の凹凸の配列は、周期構造になっていることで、GaN系半導体層からサファイア基板10側への透過率が向上する。その結果、光の取り出し効率が向上し、輝度が向上する。
【0069】
第1の実施の形態に係る半導体発光素子によれば、加工層18の周期的凹凸の干渉の効果によりGaN系半導体層からサファイア基板10側への透過率が向上し、その結果、光の取り出し効率が向上し、輝度の向上が可能となる。
【0070】
(シミュレーション)
第1の実施の形態に係る半導体発光素子において、シミュレーションに用いた基板構造は、図7に示すように、第1屈折率を有するサファイア基板10と、サファイア基板10上に配置され、第2屈折率を有し、周期的凹凸構造を有するSiNからなる加工層18と、加工層18に挟まれた基板10上および加工層18上に配置され、第3屈折率を有し、BwAlyGa1-xInzN(0≦w≦1、0≦x≦1、0≦y≦1、0≦z≦1、x=w+y+z)系半導体層からなる第1半導体層12とを備える。ここで、第2屈折率の値n(SiN)=1.95、第1屈折率の値n(サファイア)=1.7であり、第3屈折率の値n(BAlGaInN)は、図4〜図6に示すように、例えば2.0〜2.9の範囲に設定可能である。したがって、第2屈折率の値は、第1屈折率の値よりも大きく、第3屈折率の値よりも小さく設定される。
【0071】
―周期的構造例1―
第1の実施の形態に係る半導体発光素子において、加工層の凹凸パターンの周期的構造例1は、図8に示すように、矩形パターンが千鳥格子状に配置されている。凹部はサファイア基板10で形成され、凸部はSiNからなる加工層18で形成される。凸部の幅a=5μm、凹部の幅b=2μmである。凸部、凹部それぞれの幅(a,b)は、周期的特徴を示す。あるいは、凸部の最も長い部分の幅aと、その両端の凹部の幅bで規定しても良い。凹部表面は、GaN系半導体単結晶がエピタキシャル成長可能なサファイア基板10の表面である。
【0072】
―周期的構造例2―
第1の実施の形態に係る半導体発光素子において、加工層の凹凸パターンの周期的構造例2は、図9に示すように、三角形パターンが千鳥格子状に配置されている。凹部はサファイア基板10で形成され、凸部はSiNからなる加工層18で形成される。凸部の幅a=5μm、凹部の幅b=2μmである。凸部、凹部それぞれの幅(a,b)は、周期的特徴を示す。凹部表面は、GaN系半導体単結晶がエピタキシャル成長可能なサファイア基板10の表面である。
【0073】
―周期的構造例3―
第1の実施の形態に係る半導体発光素子において、加工層の凹凸パターンの周期的構造例3は、図10に示すように、円形パターンが千鳥格子状に配置されている。凹部はサファイア基板10で形成され、凸部はSiNからなる加工層18で形成される。凸部の幅a=5μm、凹部の幅b=2μmである。凸部、凹部それぞれの幅(a,b)は、周期的特徴を示す。凹部表面は、GaN系半導体単結晶がエピタキシャル成長可能なサファイア基板10の表面である。
【0074】
第1の実施の形態に係る半導体発光素子において、入射角度θでサファイア基板10に進入した光が、サファイア基板10界面で屈折されてサファイア基板10を透過する様子を説明する模式的断面構造は、図11(a)に示すように表され、また、図11(a)のQ部分の拡大は、図11(b)に示すように表される。
【0075】
第1の実施の形態に係る半導体発光素子において、凸部の長さa=5μm、凹部の長さb=2μm、凹凸の深さt=200nm〜1000nmの場合のBAlGaInN系半導体層からサファイア基板への散乱透過強度と入射角度θとの関係は、図12に示すように表される。同様に、凹凸の深さt=60nm〜200nmの場合のBAlGaInN系半導体層からサファイア基板への散乱透過強度と入射角度θとの関係は、図13に示すように表される。図13から明らかなように、凹凸の深さt=60nm〜90nmの場合、散乱透過強度の変化値のコントラストが最も高い。
【0076】
第1の実施の形態に係る半導体発光素子において、凸部の長さa=5μm、凹部の長さb=0.5μm、凹凸の深さt=200nm〜1000nmの場合のBAlGaInN系半導体層からサファイア基板10への散乱透過強度と入射角度θとの関係は、図14に示すように表される。また、凹凸がなく加工層が一様に形成された場合の加工層18の厚さt=200nm〜1000nmの場合のBAlGaInN系半導体層からサファイア基板10への散乱透過強度と入射角度θとの関係は、図15に示すように表される。
【0077】
第1の実施の形態に係る半導体発光素子において、凸部の長さa=5μm、凹部の長さb=0.5μm、加工層18としてSiN層を用いた場合のBAlGaInN系半導体層からサファイア基板10への散乱透過強度と入射角度θとの関係は、図16に示すように表される。図16において、破線は加工層18としてSiO2層を用いた場合の比較例に相当する。図16から明らかなように、SiO2は屈折率がサファイアより小さいため、散乱透過強度は、SiNの場合よりも小さくなる。また、図16から明らかなように、加工層18としてSiO2層を用いた場合に比較して、SiN層を用いた場合、散乱透過強度の変化値のコントラストが高い。
【0078】
第1の実施の形態に係る半導体発光素子において、凸部の長さa=5μm、凹部の長さb=0〜2μm、加工層18としてSiN層を用いた場合のBAlGaInN系半導体層からサファイア基板10への積分散乱透過強度と凹部の深さtとの関係は、図17に示すように表される。四角印(□)は、加工層18としてSiO2層を用いた場合の比較例に相当する。図17から明らかなように、散乱透過強度を入射角度θに対して積分した積分散乱透過強度は、SiN層からなる加工層18の凹部の長さb=2μmのとき、凹部の深さt=90nmにおいて大きくなる。凹凸がなくSiN層が一様に形成される場合(uniform)、最も積分散乱透過強度が大きくなるが、BAlGaInN系半導体層のエピタキシャル成長ができなくなるため、実際は使うことができない。一方、加工層18としてSiO2層を用いた場合は、SiN層を用いた場合に比較して、積分散乱透過強度の値は、小さくなる。
【0079】
(加工層の断面構造例)
加工層18の模式的断面構造例を図18(a)〜(d)を参照して、以下に説明する。
【0080】
図18(a)は、第1の実施の形態に係る半導体発光素子の基板加工工程を用いて形成された基板10および加工層18の模式的断面構造例1に対応し、加工層18の凹部の深さt、加工層18のパターンピッチa+b、加工層18の凸部のパターン幅aの矩形パターンを有する例である。
【0081】
第1の実施の形態に係る半導体発光素子の基板加工工程を用いて形成された基板10および加工層18の他の模式的断面構造例2〜4としては、図18(b)〜(d)に示すように、それぞれパターンピッチa+b・上底のパターン幅aの台形形状パターン、パターンピッチa+b・下辺のパターン幅aの三角形状パターン、パターンピッチa+b・直径のパターン幅aの半円パターンを備えていても良い。
【0082】
第1の実施の形態に係る半導体発光素子の基板加工工程を用いて形成された基板上の加工層の模式的平面パターン構成例1〜4は、図19(a)〜(d)に示すように表される。図19(a)は、矩形形状の加工層18を格子状配置した例である。図19(b)は、シミュレーションに適用した図8の変形例に相当し、矩形形状の加工層18を千鳥格子状配置した例であり、隣接する加工層18のパターンピッチは、全てa+bに等しい。図19(c)は、シミュレーションに適用した図10と凹凸パターンが逆の例に相当し、円形形状の加工層18を千鳥格子状配置した例であり、隣接する加工層18のパターンピッチは、全てa+bに等しい。図19(d)は、六角形形状の加工層18を千鳥格子状配置した例であり、隣接する加工層18のパターンピッチは、全てa+bに等しい。
【0083】
(製造方法)
第1の実施の形態に係る半導体発光素子の製造方法は、図20〜25に示すように、第1屈折率を有する基板10を準備する工程と、基板10上に、第2屈折率を有する加工層18を形成する工程と、加工層18をパターニングし、基板10を露出する工程と、加工層18に挟まれ、露出された基板10および加工層18上に、第3屈折率を有し、第1半導体層12を形成する工程と、第1半導体層12上に活性層13を形成する工程と、活性層13上に第2半導体層14を形成する工程とを有する。第2屈折率の値は、第1屈折率の値よりも大きく、第3屈折率の値よりも小さい。
【0084】
また、第1の実施の形態に係る半導体発光素子の製造方法は、加工層18に挟まれた基板10上にバッファ層16を形成する工程を有していても良い。
【0085】
(a)まず、図20に示すように、サファイア基板10上に、周期的凹凸加工するための加工層18を一様に堆積する。加工層18は、例えば、SiN、SiON、AlN、Al23、BN、BAlN、B23、Ga23、MgO、TiN、TiO2、ZnO、MgZnO、MgAl24、またはBpAlqGa1-rN(0≦p≦1、0≦q≦1、0≦r≦1、r=p+q)などのいずれかを用いることができる。加工層18の材料の堆積方法は、スパッタリング法、化学的気相堆積法(CVD:Chemical Vapor Deposition)、パルスレーザ堆積法(PLD:Pulse Laser Deposition)、ゾルゲル法、スピンコート法などを用いることができる。
【0086】
(b)次に、図21に示すように、フォトリソグラフィなどを用いてパターニングを実施し、所定のパターンサイズにエッチング加工することによって、加工層18の凹凸の周期構造を形成する。エッチングの方法は、ウェットエッチング法、ドライエッチング法のいずれも適用可能である。結果として、凹部の表面には、サファイア基板10が露出される。ドライエッチングの場合には、例えば、誘導結合プラズマ(ICP:Inductively Coupled Plasma)エッチング法、反応性イオンエッチング(RIE:Reactive Ion Etching)法などを適用することができる。加工層18のパターンサイズは数μm以下であり、例えば、約0.2μm〜約10μm程度である。例えば、基板10上に凹部の深さt=200nm以下の周期的凹凸構造を形成することによって、加工層18のパターンを形成している。加工層18の凹部の深さtは、例えば200nm以下であり、発光波長450nmのLEDの場合には、凹凸の深さtは、約90nmであることが好ましい。
【0087】
(c)次に、図22に示すように、加工層18に挟まれたサファイア基板10上および加工層18上に、BwAlyGa1-xInzN(0≦w≦1、0≦x≦1、0≦y≦1、0≦z≦1、x=w+y+z)系半導体層からなる第1半導体層12aを堆積する。堆積方法は、例えば、有機金属気相成長法(MOCVD:Metal Organic Chemical Vapor Deposition)を用いることができる。MOCVDの反応炉は、縦型でも横型でも良いが、縦型の方が好ましい。
【0088】
詳細には、加工層18に挟まれたサファイア基板10上にBwAlyGa1-xInzN(0≦w≦1、0≦x≦1、0≦y≦1、0≦z≦1、x=w+y+z)系半導体層からなるバッファ層16を形成し、その後、BwAlyGa1-xInzN(0≦w≦1、0≦x≦1、0≦y≦1、0≦z≦1、x=w+y+z)系半導体層からなる第1半導体層12aを堆積する。バッファ層16と第1半導体層12aの組成(x、y、z、w)は異なっていても良い。w若しくはyの値は、第1半導体層12aよりもバッファ層16の方が大きい方が好ましい。第1半導体層12aでは、堆積するにつれて、w若しくはyの値が徐々に減少するような構造であっても良い。
【0089】
バッファ層16は、例えば、低温GaNバッファ層、高温AlNバッファ層、BAlNバッファ層、BsAltGa1-uN(0≦s≦1、0≦t≦1、0≦u≦1、u=s+t)系半導体バッファ層などを堆積することによって形成しても良い。なお、バッファ層16の厚さは、凹部の深さt以下である。バッファ層16の屈折率の値は、第2屈折率の値と同じ、または大きい。
【0090】
第1半導体層12aは、例えば、GaN、AlN、AlGaN、BiAljGa1-kN(0≦i≦1、0≦j≦1、0≦k≦1、k=i+j)系半導体層などを堆積することによって形成しても良い。若しくは、AlN層から連続的にGaを混ぜてGaN層まで変化させて形成しても良い。ここで、連続的な変化は、例えば、100nm毎にAl組成が10%減少し、Ga組成が10%増加する変化であっても良い。あるいは変化は、200nm毎でも良いし、50nm毎であっても良い。開始の濃度は、Al濃度50%、Ga濃度50%からでも良い。Alの代わりに、Bを用いても良い。また、Gaの代わりにInを用いても良い。
【0091】
バッファ層16、第1半導体層12aのいずれか一方若しくは両方ともにn型ドーパントであるSiがドーピングされていても良い。
【0092】
第1半導体層12aは、バッファ層16の屈折率の値と同じ、または大きい値の第3屈折率を有する。すなわち、第1屈折率を有するサファイア基板10と、第2屈折率を有する加工層18と、第3屈折率を有する第1半導体層12aにおいて、第1屈折率<第2屈折率<第3屈折率の関係があり、さらに、バッファ層16の屈折率の値は、第2屈折率の値と同じ、または大きく、もしくは第3屈折率の値と同じ、または小さい。
【0093】
(d)次に、図23に示すように、第1半導体層12aの形成後、n型BAlGaInN層12bを形成する。第1半導体層12aの形成後には、生産性を向上させるために、必要に応じて堆積装置を変更しても良い。例えば、縦型の反応炉を持つMOCVD装置から、別の縦型反応炉を持つMOCVD装置に変更する、もしくは横型反応炉のMOCVD装置へ変更することも可能である。n型BAlGaInN層12bを形成後は、活性層13を形成前に、必要に応じて、超格子構造を導入することも可能である。例えば、In0.09Ga0.91N(0.7nm)/GaN(2.6nm)の40周期の超格子構造を導入する。超格子構造は、Siがドーピングされていても良く、濃度は、例えば、約4×1018cm-3程度である。
【0094】
(e)次に、図23に示すように、n型BAlGaInN層12bを形成後、活性層13を形成する。活性層13は、量子井戸構造を有し、その井戸数は、例えば、1〜20程度である。量子井戸構造は、例えば、井戸層としてIn0.09Ga0.91N(2.5nm)、障壁層としてGaN(7.5nm)を用いて井戸層の数を3とした場合、発光波長は、400nm程度が得られている。このような量子井戸構造に対して、In組成を増加した場合には、発光波長はレッドシフトし、例えば。450nmや500nmの発光波長を得ることができる。
【0095】
井戸層のIn組成は、結晶成長の温度を下げることで増加することができる。例えば、In組成9%の場合は、865℃の結晶成長の温度において、発光波長は400nmであるが、結晶成長の温度を10℃下げることで、発光波長は410nmにシフトするという結果が得られている。発光波長が、450nmにシフトするときは、結晶成長の温度は、845℃程度になる。
【0096】
発光波長を400nm以下にするためには、In組成を減少する必要があるが、減少し過ぎると障壁層であるGaNを用いて井戸層へ効率的にキャリアを閉じ込めることができなくなるため、障壁層にAlまたはBを添加する必要がある。さらに、発光波長を370nm以下にするためには、井戸層に対してもAlやBを添加する必要がある。
【0097】
逆に、発光波長が長波長領域の場合にも、井戸層と障壁層の格子整合のためには、BやAlが井戸層、障壁層に添加されていても良い。
【0098】
(f)次に、図23に示すように、活性層13を形成後、第2半導体層14を形成する。第2半導体層14は、例えば、p型BAlGaN層によって形成される。第2半導体層14をp型化するためには、例えば、Mgをドーピングすると良い。
【0099】
第2半導体層14として、まず活性層13からのキャリア、特に電子のオーバーフローを防止するために、バンドギャップの広いp型Al0.1Ga0.9N層(25nm)を形成することが望ましい。このときのMgのドーピング濃度は、例えば、約1×1020cm-3である。p型Al0.1Ga0.9N層の後は、p型GaN層を、例えば、厚さ50nm〜500nm程度に形成する。さらに、このp型GaN層の最表面の10nm〜20nm程度は、透明電極15との接触抵抗を低減するために、Mg濃度を、例えば、約2×1020cm-3程度と多く形成する。
【0100】
(g)次に、このp型GaN層形成後は基板温度を低下させて、MOCVD装置からウェハを取り出し、ウェハ全面に透明電極層を形成後、透明電極15をパターン形成する。透明電極15としては、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)、ZnO、GaドープZnO、AlドープZnO、GaドープMgZnO、AlドープMgZnOなどを適用することができる。透明電極15の厚さは、200nm以上が好ましく、厚ければ厚い程、透明電極15からの光取出し効率は上昇するが、厚すぎると堆積に時間を要する。このため、透明電極15の厚さは、400nm〜600nm程度であることが望ましい。透明電極15は、スパッタリング法、CVD法、PLD法、電子ビーム蒸着法、ゾルゲル法などを用いて形成することができる。
【0101】
(h)次に、図24若しくは図25に示すように、透明電極15の形成後、フォトリソグラフィ技術を用いて、LEDのメサ形状にパターニングし、エッチングにより、n型BAlGaInN層12bを露出させる。透明電極15のエッチングには、酸性水溶液を用いたウェットエッチングを利用しても良く、あるいはドライエッチングを利用しても良い。図25に示すようなn型BAlGaInN層12bのエッチングには、ドライエッチングを利用する。
【0102】
(i)次に、図24若しくは図25に示すように、第1半導体層12および第2半導体層14をともにフォトリソグラフィを用いてパターニング後、p側電極100およびn側電極200を真空蒸着法によって形成する。p側電極100およびn側電極200は、金属の積層構造となっていることが好ましく、さらに最表面には、金(Au)ワイヤをボンディングするために、Au層が形成されていることが好ましい。
【0103】
(j)次に、LEDの側面保護のために、保護膜(図示省略)を形成する。保護膜としては、例えば、SiO2、SiON、SiNなどを適用可能である。保護膜の形成方法としては、例えば、スパッタリング法、CVD法、スピンコート法などを適用することができる。
【0104】
(k)保護膜の形成後は、p側電極100およびn側電極200が覆われてしまうため、フォトリソグラフィ技術を用いて、p側電極100およびn側電極200上部の保護膜をウェットエッチング若しくはドライエッチングにより除去する。フリップチップとしてLED素子をダイボンディングする場合は、透明電極15部分の保護膜上に反射面かつ電極となる層を形成する。この反射面かつ電極となる層としては、可視光領域ではAl電極などが好ましいが、波長400nm以下では、誘電体多層構造が効果的である。
【0105】
(l)次に、素子をチップ化するために、サファイア基板10の厚さを薄くする。例えば、サファイア基板10を研磨することで、薄層化することができる。サファイア基板10側をダイボンディングする場合は、研磨後にサファイア基板10側に反射面を形成しても良い。サファイア基板10側の反射面としては、可視光領域ではAl電極が、安価であるため一般的に適用されている。LEDの発光波長が400nm以下の場合には、誘電体多層膜構造が好ましい。
【0106】
(m)次に、ウェハを劈開してチップ化する。チップは、フレーム、パッケージ、サブマウント、高熱伝導素材上などへダイボンディングする。ダイボンディングには、銀ペースト若しくは反射率を得るために、白色ペーストを用いても良い。ダイボンディングにおいては、図2(a)に示すように、p側電極100は、ボンディングコンタクト102を介して、ボンディングワイヤ104によって、パッケージ2の内壁底に実装されたアノード用の電極パターン106に接続され、同様に、n側電極200は、ボンディングコンタクト202を介して、ボンディングワイヤ204によって、パッケージ2の内壁底に実装されたカソード用の電極パターン206に接続されている。ボンディングワイヤ104、204は、Auが一般的であるが、Cuを用いても良い。
【0107】
(横方向成長工程)
第1の実施の形態に係る半導体発光素子の製造方法において、横方向成長の一工程を説明する模式的断面構造は、図26〜図32に示すように、第1屈折率を有する基板10を準備する工程と、基板10上に、第2屈折率を有する加工層18を形成する工程と、加工層18をパターニングし、基板10を露出する工程と、加工層18に挟まれ、露出された基板10および加工層18上に、第3屈折率を有し、n型不純物をドープされた第1半導体層12を横方向エピタキシャル成長により形成する工程と、第1半導体層12上に活性層13を形成する工程と、活性層13上にp型不純物をドープされた第2半導体層14を形成する工程とを有する。第2屈折率の値は、第1屈折率の値よりも大きく、第3屈折率の値よりも小さい。活性層13を形成する工程と、第2半導体層14を形成する工程は、上述と同様である。
【0108】
また、基板10を露出する工程後、加工層18に挟まれ、露出された基板10上にバッファ層16を形成する工程をさらに有する。
【0109】
以下、図26〜図32を参照して、横方向成長工程を説明する。以下に述べる横方向成長工程は一例であり、変形例を含めて、これ以外の種々の工程により実現可能であることは勿論である。ここでは、基板10にサファイア基板を適用する例を説明する。
【0110】
(a)まず、図26に示すように、サファイア基板10を準備し、サファイア基板10上に加工層18を形成後、周期的凹凸加工し、基板10の表面を露出する。
【0111】
加工層18の形状は、矩形、三角形、菱形、六角形、円形、ストライプ等、横方向選択エピタキシャル成長(ELO)を阻害しないパターン形状ものが良い。特に、ELOを行うため、パターンの方向は、横方向成長面であるa面、m面を考慮して、選択する。サファイア基板10の裏面もしくはエピタキシャル成長層の上面から光を取り出す際、加工層18とエピタキシャル成長層の界面に周期構造の凹凸を形成するため、光が干渉、散乱もしくは回折され、エピタキシャル成長層−異種基板界面の屈折率差によって全反射されていた光が、外へ効率よく取り出されることになる。サファイア基板10上に、屈折率nが次第に増加する傾向を有する加工層18を形成しても良い。この加工層18に対して、周期構造の凹凸構造を形成することによって、サファイア基板10側への光の散乱透過率が向上し、光取り出し効率が向上する。
【0112】
(b)次に、図27に示すように、露出されたサファイア基板10上に、MOCVD法などにより、例えば、BsAltGa1-uN(0≦s≦1、0≦t≦1、0≦u≦1、u=s+t)系半導体を堆積することによってバッファ層16を形成される。あるいは、バッファ層16として、AlxIn1-xN(0≦x≦1)を成長させる。
【0113】
(c)次に、図28に示すように、バッファ層16上に、MOCVD法などにより、第1半導体層12となるBiAljGa1-kN(0≦i≦1、0≦j≦1、0≦k≦1、k=i+j)系半導体層を成長させる。例えば、バッファ層16を形成したサファイア基板10をサーマルクリーニングした後、基板温度を1000°C程度に設定して、バッファ層16上に、n型不純物を不純物添加した第1半導体層12を1〜5μm程度成長させる。第1半導体層12には、例えばn型不純物としてSiを3×1018cm-3程度の濃度で不純物添加したBiAljGa1-kN(0≦i≦1、0≦j≦1、0≦k≦1、k=i+j)系半導体膜が採用可能である。Siを不純物添加する場合は、トリメチルガリウム(TMG)、アンモニア(NH3)及びシラン(SiH4)を原料ガスとして供給して、第1半導体層12を形成する。図28中に示すように、第1半導体層12となるBiAljGa1-kN(0≦i≦1、0≦j≦1、0≦k≦1、k=i+j)系半導体層中には、貫通転位20が発生している。
【0114】
(d)次に、図29に示すように、ELOによって、第1半導体層12を形成する。横方向選択エピタキシャル成長面であるm面若しくはa面上に横方向選択エピタキシャル成長層が形成されて、図29中のベクトルLA、LB方向に第1半導体層12が、横方向に選択エピタキシャル成長される。結果として、貫通転位20も曲げられて、加工層18の中央部LO近傍において左右からの選択エピタキシャル成長面が合体し、同時に貫通転位20もつながる。
【0115】
加工層18を埋めるため、途中からピタキシャル成長条件を横方向成長を促進させる条件に変えても良い。横方向成長を促進させるためには、例えば、結晶成長時のガス系の圧力を変化させると良い。第1のステップとして、例えば約1050℃で、約100Torrで約1μm程度成長後、第2のステップとして、例えば約1050℃で、約200Torrで約1.5μm程度成長させることができる。このように第1半導体層12を形成することによって、ELOによる貫通転位密度の低減効果と共に、横方向成長を促進させることができる。
【0116】
加工層18を覆うように、横方向選択エピタキシャル成長(ELO)させるため、結晶の貫通転位を曲げることができ、結晶性も向上する。
【0117】
さらに、第1半導体層12を形成する圧力および成長温度条件を変化させて、何回かのステップにわけることも可能であり、例えば、図30に示すように、4層構造の第1半導体層12(121、122、123、124)を形成することもできる。このようにすることによって、第1半導体層12の表面モフォロジ―が改善され、結晶性を向上することができる。
【0118】
例えば、加工層18のパターンをストライプ状に形成する場合、ストライプは、<11−20>または<1−100>方向とし、凸部である加工層18の幅を約1〜5μm程度、繰り返しの周期を例えば約1.2〜7μm程度とする。この上に、HVPE法により、1000℃で第1半導体層12となるBiAljGa1-kN(0≦i≦1、0≦j≦1、0≦k≦1、k=i+j)系半導体層を成長する。
【0119】
例えば、HVPE法を用いて、GaClとNH3を反応させてGaNを成長させても良い。ストライプ方向が<11−20>の場合に、GaNの成長は、まず加工層18の開口部では、最初(0001)方向の成長により、基板面に対して傾斜した{1−101}面をファセットとする三角形断面の形状が生じる。次に、ファセットを保持したまま、加工層18上で横方向の成長が、隣接した成長部が合体するまで進む。合体後は、さらに表面が平坦化するように成長が進み、(0001)面を有する完全に平坦な成長層が得られる。ストライプが<1−100>方向のパターンでは、{11−22}面がファセットとなるが、同様の成長層が得られる。
【0120】
上記の例は一例であって、他のパターンおよびパターン方向も適用可能である。また、結晶成長の主面は上記の例では、極性面の例を説明しているが、非極性面、半極性面を適用することも可能である。
【0121】
(e)次に、図31に示すように、活性層13を第1半導体層12上に形成する。
【0122】
(f)次いで、図32に示すように、基板温度を800℃〜900℃程度にして、最終バリア層310上に、p型不純物を不純物添加した第2半導体層14を0.05〜1μm程度形成する。
【0123】
(g)次に、図1に示すように、第2半導体層14の上部に蒸着、スパッタリング技術などによって透明電極15を形成する。透明電極15としては、例えば、ZnO、ITO若しくはインジウムを含有するZnOのいずれかを用いることができる。さらに、GaあるいはAlなどのn型不純物を1×1019 〜5×1021cm-3程度まで高濃度にZnOへ不純物添加しても良い。
【0124】
(h)次に、図1に示すように、透明電極15をパターニング後、第2半導体層14〜第1半導体層12の途中までを、RIEなどのエッチング技術を用いて除去し、第1半導体層12の表面を露出させる。
【0125】
(i)次に、露出した第1半導体層12の表面にn側電極200を蒸着、スパッタリング技術などにより形成する。第2半導体層14上の透明電極15に対しても、パターン形成後p側電極100を蒸着、スパッタリング技術などにより形成して、図1に示した半導体発光素子が完成する。
【0126】
(詳細構造例1)
第1の実施の形態に係る半導体発光素子の詳細な模式的断面構造例1であって、半導体発光素子部分および活性層部分の拡大された模式的断面構造図は、図33に示すように、第1屈折率を有する基板10と、基板10上に配置され、第2屈折率を有し、周期的凹凸加工された加工層18と、加工層18に挟まれた基板10上に配置されたバッファ層16と、バッファ層16および加工層18上に配置され、第3屈折率を有し、n型不純物が不純物添加された第1半導体層12と、第1半導体層12上に配置され、第1半導体層12より低い濃度でn型不純物が不純物添加されたブロック層17と、ブロック層17上に配置され活性層13と、活性層13上に配置された第2半導体層14と、第2半導体層14上に配置された透明電極15とを備える。
【0127】
バッファ層16の屈折率の値は、第2屈折率の値と同じ、または大きい。すなわち、第1屈折率を有する基板10と、第2屈折率を有する加工層18と、第3屈折率を有する第1半導体層12において、第1屈折率<第2屈折率<第3屈折率の関係があり、さらに、バッファ層16の屈折率の値は、第2屈折率の値と同じ、または大きく、もしくは第3屈折率の値と同じ、または小さい。
【0128】
図33の構成では、第1半導体層12上にブロック層17として、Siを1×1017cm-3未満、例えば8×1016cm-3程度の濃度で不純物添加したGaN膜を例えば、約200nm程度成長させる。このとき、第1半導体層12を形成した場合と同様の原料ガスを適用可能である。
【0129】
活性層13は、図33に示すように、バリア層311〜31n、310とそのバリア層311〜31n、310よりバンドギャップが小さい井戸層321〜32nが交互に配置された積層構造を有する。以下において、活性層13に含まれる第1バリア層311〜第nバリア層31nを総称して「バリア層31」という。また、活性層13に含まれるすべての井戸層を総称して「井戸層32」という。
【0130】
形成された積層構造上に、図33に示すように、最終バリア層310としてノンドープのGaN膜を10nm程度形成して、活性層13が形成される。最終バリア層310の膜厚d0は、第2半導体層14から活性層13に拡散するp型ドーパンドが活性層13の井戸層32に到達しない厚さに設定される。
【0131】
例えば、図33に示すように、GaN膜からなるバリア層31とInGaN膜からなる井戸層32を交互に積層して、活性層13が形成される。具体的には、活性層13を形成する際の基板温度及び原料ガスの流量を調整しながら、バリア層31と井戸層32を交互に連続して成長させ、バリア層31と井戸層32が積層してなる活性層13が形成される。即ち、基板温度及び原料ガスの流量を調節することによって井戸層32及び井戸層32よりバンドギャップが大きいバリア層31を積層する工程を単位工程とし、この単位工程をn回、例えば8回程度繰り返して、バリア層31と井戸層32が交互に積層された積層構造を得る。
【0132】
バリア層31を形成する場合は、原料ガスとして、例えばTMGガス、NH3ガスをそれぞれ成膜用の処理装置に供給する。一方、井戸層32を形成する場合は、原料ガスとして、例えばTMGガス、トリメチルインジウム(TMI)ガス、NH3ガスをそれぞれ処理装置に供給する。なお、TMGガスはGa原子の原料ガス、TMIガスはIn原子の原料ガス、NH3ガスは窒素原子の原料ガスとして供給される。
【0133】
第2半導体層14は、例えば、図33に示すように、p型不純物としてMgを不純物添加した4層構造に形成する。活性層13の上部に配置される第1窒化物系半導体層41は、約2×1020cm-3、厚さ約50nm程度のp型GaN層で形成し、第2窒化物系半導体層42は、約4×1019cm-3、厚さ約100nm程度のp型GaN層で形成し、第3窒化物系半導体層43は、例えば約1×1020cm-3、厚さ約40nm程度のp型GaN層で形成し、第4窒化物系半導体層44は、約8×1019cm-3、厚さ約10nm程度のp型GaN層で形成する。
【0134】
Mgを不純物添加する場合は、TMGガス、NH3ガス及びビスシクロペンタジエニルマグネシウム(Cp2Mg)ガスを原料ガスとして供給して、第2半導体層14(41〜44)を形成する。第2半導体層14(41〜44)の形成時に第2半導体層14(41〜44)から活性層13にMgが拡散するが、最終バリア層310により、Mgが活性層13の井戸層32に拡散することが防止される。
【0135】
上記の積層構造の最上層の最終バリア層310の膜厚は、その最終バリア層310以外の積層構造に含まれる他のバリア層(第1バリア層311〜第nバリア層31n)の厚さより厚く形成されていてもよい。
【0136】
図33に示した半導体発光素子では、最終バリア層310のp型ドーパンドの濃度が、第2半導体層14に接する最終バリア層310の第1主面から最終バリア層310の膜厚方向に沿って漸減し、第1主面に対向する第2主面においてp型ドーパンドが存在しない。
【0137】
(AlNバッファ層)
バッファ層16は、例えば、厚さ約10〜50オングストローム程度のAlN層で形成される。AlNバッファ層16を結晶成長させる場合、例えば、約900℃〜950℃程度の温度範囲の高温において成長させる。
【0138】
トリメチルアルミニウム(TMA)と、アンモニア(NH3)を、H2ガスをキャリアとして、反応室に供給することによって、厚さ約10〜50オングストローム程度の薄いAlNバッファ層16を、高速に成長させることができ、しかも結晶性も良好に保ちつつ形成することができる。
【0139】
第1の実施の形態に係る半導体発光素子によれば、高温AlNバッファ層16および加工層18上に形成されるIII族窒化物系半導体の結晶性および表面モフォロジーを改善することができる。
【0140】
(ブロック層)
第1半導体層12と活性層13間に配置されたブロック層17は、例えばn型不純物としてSiを1×1017cm-3未満で不純物添加した膜厚約200nm程度のIII族窒化物系半導体、例えばGaN層等が採用可能である。
【0141】
図33に示した半導体発光素子では、例えば第1半導体層12にSiが3×1018cm-3程度不純物添加された場合に、Siが約8×1016cm-3程度不純物添加されたブロック層17を第1半導体層12と活性層13間に配置することにより、活性層13の形成工程及びその工程以後の製造工程における第1半導体層12から活性層13へのSiの拡散を防止できる。
【0142】
つまり、活性層13内にSiが拡散せず、活性層13で発生する光の輝度の低下が防止される。更に、活性層13で発光させるために第1半導体層12と第2半導体層14間にバイアスが印加された場合に、第1半導体層12から活性層13に供給された電子が活性層13を通過して第2半導体層14に到達するオーバーフローを防止することができ、半導体発光素子から出力される光の輝度の低下を防止できる。
【0143】
ブロック層17のSi濃度は、1×1017cm-3未満である。これは、ブロック層17のSi濃度が高すぎる場合、第1半導体層12から供給された電子が活性層13を超えて第2半導体層14までオーバーフローし、第2半導体層14内で正孔と再結合してしまい、活性層13中での再結合の割合が減少し、活性層13で発生する光の輝度が低下するためである。一方、ブロック層17のSi濃度が低すぎる場合は、第1半導体層12から活性層13へ注入させる電子のキャリア密度を上昇することができない。そのため、ブロック層17のSi濃度は、約5×1016〜1×1017cm-3未満であることが好ましい。
【0144】
以上に説明したように、第1の実施の形態に係る半導体発光素子では、第1半導体層12と活性層13間にブロック層17を配置することにより、製造工程中での第1半導体層12から活性層13へのSiの拡散、及び発光時における第1半導体層12から第2半導体層14への電子のオーバーフローを防止することができ、半導体発光素子から出力される光の輝度の低下を防止できる。その結果、図33に示す半導体発光素子の品質の劣化を防止できる。
【0145】
(第1半導体層)
第1半導体層12は、電子を活性層13に供給し、第2半導体層14は、正孔(ホール)を活性層13に供給する。供給された電子及び正孔が活性層13で再結合することにより、光が発生する。
【0146】
第1半導体層12は、シリコン(Si)等のn型不純物を不純物添加した膜厚1〜6μm程度のIII族窒化物系半導体、例えばGaN層等が採用可能である。
【0147】
加工層18を介して窒化物半導体からなる第1半導体層12を基板10上へ直接エピタキシャル成長させる。加工層18を埋めるため、途中から条件を横方向成長を促進させる条件に変える。横方向成長を促進させるためには、例えば、結晶成長時のガス系の圧力を変化させると良い。第1のステップとして、例えば約1050℃で、約100Torrで約1μm程度成長後、第2のステップとして、例えば約1050℃で、約200Torrで約1.5μm程度成長させることができる。このように第1半導体層12を形成することによって、横方向成長(ELO)による貫通転位密度の低減効果と共に、横方向成長を促進させることができる。
【0148】
加工層18を覆うように、横方向成長(ELO)させるため、結晶の貫通転位を曲げることができ、結晶性も向上する。
【0149】
(第2半導体層)
第2半導体層14は、p型不純物を不純物添加した膜厚0.05〜1μm程度のIII族窒化物系半導体、例えばGaN層等が採用可能である。p型不純物としては、マグネシウム(Mg)、亜鉛(Zn)、カドミウム(Cd)、カルシウム(Ca)、ベリリウム(Be)、炭素(C)等が使用可能である。
【0150】
第2半導体層14の構成例は、さらに詳細には以下の通りである。すなわち、第2半導体層14は、図33に示すように、活性層13の上部に配置され,p型不純物を含む第1窒化物系半導体層41と、第1窒化物系半導体層41上に配置され,第1窒化物系半導体層41のp型不純物よりも低濃度のp型不純物を含む第2窒化物系半導体層42と、第2窒化物系半導体層42上に配置され,第2窒化物系半導体層42のp型不純物よりも高濃度のp型不純物を含む第3窒化物系半導体層43と、第3窒化物系半導体層43上に配置され,第3窒化物系半導体層43のp型不純物よりも低濃度のp型不純物を含む第4窒化物系半導体層44とを備える。
【0151】
第2窒化物系半導体層42の厚さは、第1窒化物系半導体層41、或いは第3窒化物系半導体層43乃至第4窒化物系半導体層44の厚さよりも厚く形成される。
【0152】
ここで、具体的に各層の材料と厚さを説明する。活性層13の上部に配置されるp型不純物を含む第1窒化物系半導体層41は、例えばMgを不純物添加された約2×1020cm-3、厚さ約50nm程度のp型GaN層で形成される。
【0153】
第1窒化物系半導体層41上に配置され,第1窒化物系半導体層41のp型不純物よりも低濃度のp型不純物を含む第2窒化物系半導体層42は、例えばMgを不純物添加された約4×1019cm-3、厚さ約100nm程度のp型GaN層で形成される。
【0154】
第2窒化物系半導体層42上に配置され,第2窒化物系半導体層42のp型不純物よりも高濃度のp型不純物を含む第3窒化物系半導体層43は、例えばMgを不純物添加された約1×1020cm-3、厚さ約40nm程度のp型GaN層で形成される。
【0155】
第3窒化物系半導体層43上に配置され,第3窒化物系半導体層43のp型不純物よりも低濃度のp型不純物を含む第4窒化物系半導体層44は、例えばMgを不純物添加された約8×1019cm-3、厚さ約10nm程度のp型GaN層で形成される。
【0156】
第1の実施の形態に係る半導体発光素子において、インジウムを含む多重量子井戸からなる活性層13の上に形成される第2半導体層14は、上記のように、Mg濃度の異なる4層構造のp型GaN層からなり、上記の濃度でドーピングされている。p型GaN層は、活性層13への熱ダメージを低減させるために、約800℃〜900℃の低温で成長する。
【0157】
活性層13に一番近い第1窒化物系半導体層41は、Mg濃度が高いほど発光強度が高くなるため、Mg濃度は高ければ高いほど望ましい。
【0158】
第2窒化物系半導体層42は、Mgを不純物添加しすぎると、Mgに起因する結晶欠陥が増加し、膜の抵抗が高くなるため、1019cm-3台の半ば程度のMg濃度とすることが望ましい。
【0159】
第3窒化物系半導体層43は、活性層13への正孔注入量を決める層であるため、第2窒化物系半導体層42よりはやや高めのMg濃度とすることが望ましい。
【0160】
第4窒化物系半導体層44は、透明電極15とのオーミックコンタクトを取るためのp型GaN層であり、実質的に空乏化されている。透明電極15として、例えば、GaまたはAlが1×1019 〜5×1021cm-3程度不純物添加されたZnO電極を用いた場合、半導体発光素子の順方向電圧Vfを最も下げる時のMg濃度となるように、第4窒化物系半導体層44には、Mgが不純物添加される。
【0161】
p型GaN層を4層成長させる場合、p側電極100に近い第3窒化物系半導体層43、第4窒化物系半導体層44は、膜中の正孔濃度を上昇させる必要があるため、キャリアガス中のH2ガス量を多くする。また、活性層13に近い第1窒化物系半導体層41、第2窒化物系半導体層42は、キャリアガス中のH2ガス量を多くする必要はなく、活性層13をN2キャリアガスで成長させているその延長で結晶成長させる。これらのp型GaN層を成長させる時は、V/III比をなるべく高くした方がより低抵抗な膜を成長させることができ、発光素子の順方向電圧(Vf)を下げることができる。
【0162】
第1の実施の形態に係る半導体発光素子によれば、低温でp型半導体層を形成して活性層への熱ダメージを低減させ、かつ順方向電圧(Vf)を低下させ、発光効率を向上させることができる。
【0163】
(活性層)
また、活性層13は、バリア層とバリア層よりバンドギャップが小さい井戸層が交互に配置された積層構造を有し、インジウムを含む多重量子井戸からなる。
【0164】
また、バリア層は、GaNよりなり、井戸層は、InxGa1-xN(0<x<1)よりなり、多重量子井戸のペア数は、例えば、6〜11程度である。
【0165】
また、井戸層の厚さは、例えば、2〜3nmであり、バリア層の厚さは、例えば、15〜18nmである。
【0166】
さらに詳細には、活性層13は、図33に示すように、第1バリア層311〜第nバリア層31n及び最終バリア層310でそれぞれ挟まれた第1井戸層321〜第n井戸層32nを有する多重量子井戸(MQW)構造である(n:自然数)。つまり、活性層13は、井戸層32を井戸層32よりもバンドギャップの大きなバリア層31でサンドイッチ状に挟んだ量子井戸構造を単位ペア構造とし、この単位ペア構造をn回積層したnペア構造を有する。
【0167】
具体的には、第1井戸層321は第1バリア層311と第2バリア層312の間に配置され、第2井戸層322は第2バリア層312と第3バリア層313の間に配置される。そして、第n井戸層32nは第nバリア層31nと最終バリア層310の間に配置される。活性層13の第1バリア層311は、第1半導体層12上にブロック層17を介して配置され、活性層13の最終バリア層310上には第2半導体層14(41〜44)が配置される。
【0168】
井戸層321〜32nは、例えばInxGa1-xN(0<x<1)層によって形成され、バリア層311〜31n,310は、例えばGaN層によって形成される。また、多重量子井戸層のペア数は、例えば、6〜11であることを特徴とする。なお、井戸層321〜32nのインジウム(In)の比率{x/(1−x)}は、発生させたい光の波長に応じて適宜設定される。
【0169】
また、井戸層321〜32nの厚さは、例えば、約2〜3nm程度、望ましくは、約2.8nm程度であり、バリア層311〜31nの厚さは約7〜18nm程度、望ましくは、約16.5nm程度である。
【0170】
第1の実施の形態に係る半導体発光素子においては、第1半導体層12から供給される電子と、第2半導体層14から供給されるホールが活性層13において効率よく再結合するための活性層13内のMQWペア数を最適化することができる。
【0171】
(最終バリア層)
最終バリア層310の膜厚は、第2半導体層14から活性層13へのMgの拡散距離より厚く形成される。
【0172】
図33に示した半導体発光素子の例では、最終バリア層310のp型不純物の濃度が、第2半導体層14に接する最終バリア層310の第1主面から最終バリア層310の膜厚方向に沿って漸減し、第1主面に対向する第2主面においてp型不純物が実質的に存在しない。
【0173】
図33に示した半導体発光素子の最終バリア層310の膜厚d0は、第2半導体層14の形成工程及びその工程以降において第2半導体層14から活性層13に拡散するp型不純物が、活性層13の井戸層32に達しないように設定される。つまり、第2半導体層14から最終バリア層310に拡散するp型不純物が、第2半導体層14に接する最終バリア層310の第1主面に対向する第2主面(最終バリア層310が井戸層32nに接する面)まで達しない厚みに膜厚d0が設定される。
【0174】
第2半導体層14に接する最終バリア層310の第1主面でのMg濃度は、例えば、約2×1020cm-3程度であり、第1主面に対向する最終バリア層310の第2主面に向かってMg濃度は次第に低下し、第1主面から距離約7〜8nmの位置においてMg濃度は、約1016cm-3未満の影響を及ぼさず、分析での検出下限界以下になる。
【0175】
即ち、最終バリア層310の膜厚d0を、約10nm程度にすることにより、Mgは最終バリア層310の第2主面まで拡散せず、そのため、活性層13と接する最終バリア層310の第2主面にはMgは存在しない。つまり、第n井戸層32n内にMgが拡散せず、活性層13で発生する光の輝度の低下が防止される。
【0176】
なお、第1バリア層311〜第nバリア層31nの膜厚d1〜dnは、同一であってもよい。ただし、膜厚d1〜dnは、第1半導体層12から活性層13に注入される正孔が第n井戸層32nに到達し、第n井戸層32nで電子と正孔の再結合による発光が生じ得る厚さに設定する必要がある。第1バリア層311〜第nバリア層31nの膜厚d1〜dnが厚すぎると活性層13中での正孔の移動が妨げられ、発光効率が低下するためである。例えば、最終バリア層310の膜厚d0は約10nm程度であり、第1バリア層311〜第nバリア層31nの膜厚d1〜dnは約7〜18nm程度であり、第1井戸層321〜第n井戸層32nの膜厚は約2〜3nm程度である。
【0177】
以上に説明したように、第1の実施の形態に係る半導体発光素子では、第2半導体層14に接する最終バリア層310の膜厚d0が、第2半導体層14から活性層13に拡散するp型不純物が活性層13の井戸層32に到達しない厚さに設定される。つまり、図33に示した半導体発光素子によれば、最終バリア層310の膜厚d0をMgの拡散距離より厚く設定することにより、活性層13全体の膜厚の増大を抑制しつつ、第2半導体層14から活性層13の井戸層32へのp型不純物の拡散を防止できる。その結果、井戸層32へのp型不純物の拡散に起因する光の輝度の低下が生じず、半導体発光素子の品質の劣化が抑制された半導体発光素子を製造することができる。
【0178】
(透明電極)
透明電極15は、ZnO、ITO若しくはインジウムを含有するZnOのいずれかであっても良い。或いはまた、透明電極15は、GaまたはAlが、不純物濃度1×1019 〜5×1021cm-3で不純物添加されたZnO、ITO若しくはインジウムを含有するZnOのいずれかであっても良い。
【0179】
図33に示した第1の実施の形態に係る半導体発光素子の詳細な模式的断面構造例1において、p側電極およびn側電極まで形成した模式的断面構造は、図36に示すように、第1半導体層12に電圧を印加するn側電極200と、第2半導体層14に電圧を印加するp側電極100を更に備える。図36に示すように、第2半導体層14、活性層13、ブロック層17、及び第1半導体層12の一部領域をエッチングして露出させた第1半導体層12の表面に、n側電極200が配置される。
【0180】
p側電極100は、第2半導体層14上に透明電極15を介して配置される。或いはまた、p側電極100は、第2半導体層14上に直接配置されていても良い。第4窒化物系半導体層44上に配置される透明電極15は、例えば、ZnO、ITO若しくはインジウムを含有するZnOのいずれかを含む。
【0181】
n側電極200は、例えばアルミニウム(Al)膜、Ti/Ni/AuまたはAl/Ti/Au,Al/Ni/Au,Al/Ti/Ni/Auの多層膜、或いは上層からAu-Sn/Ti/Au/Ni/Alの多層膜からなり、p側電極100は、例えばAl膜、パラジウム(Pd)−金(Au)合金膜、Ni/Ti/Auの多層膜、或いは上層からAu-Sn/Ti/Auの多層膜からなる。そして、n側電極200は第1半導体層12に、p側電極100は、透明電極15を介して第2半導体層14に、それぞれオーミック接続される。
【0182】
(詳細構造例2)
第1の実施の形態に係る半導体発光素子の詳細な模式的断面構造例2あって、半導体発光素子部分および活性層部分の拡大された模式的断面構造は、図34に示すように、第1屈折率を有する基板10と、基板10上に配置され、第2屈折率を有し、周期的凹凸加工された加工層18と、加工層18に挟まれた基板10上に配置されたバッファ層16と、バッファ層16および加工層18上に配置され、 第3屈折率を有し、n型不純物が不純物添加された第1半導体層12と、第1半導体層12上に配置され、第1半導体層12より低い濃度でn型不純物が不純物添加されたブロック層17と、ブロック層17上に配置された活性層13と、活性層13上に配置された第2半導体層14と、第2半導体層14上に配置された透明電極15とを備える。
【0183】
バッファ層16の屈折率の値は、第2屈折率の値と同じ、または大きい。すなわち、第1屈折率を有する基板10と、第2屈折率を有する加工層18と、第3屈折率を有する第1半導体層12において、第1屈折率<第2屈折率<第3屈折率の関係があり、さらに、バッファ層16の屈折率の値は、第2屈折率の値と同じ、または大きく、もしくは第3屈折率の値と同じ、または小さい。
【0184】
第1の実施の形態に係る半導体発光素子の詳細な模式的断面構造例2は、活性層13の上部に配置されたp型不純物を含む第3窒化物系半導体層43と、第3窒化物系半導体層上に配置され、第3窒化物系半導体層のp型不純物よりも低濃度のp型不純物を含む第4窒化物系半導体層と、第4窒化物系半導体層上に配置され、透明電極15とを備える。
【0185】
第1の実施の形態に係る半導体発光素子の詳細な模式的断面構造例2においては、その構造上、第2半導体層14が、活性層13の上部に直接配置された第3窒化物系半導体層43と、第3窒化物系半導体層43上に配置され、第3窒化物系半導体層43のp型不純物よりも低濃度のp型不純物を含む第4窒化物系半導体層44からなる2層構造に形成されている。
【0186】
活性層13の上部に直接配置された第3窒化物系半導体層43は、例えばMgを不純物添加された約1×1020cm-3、厚さ約40nm程度のp型GaN層で形成される。
【0187】
第3窒化物系半導体層43上に配置され,第3窒化物系半導体層43のp型不純物よりも低濃度のp型不純物を含む第4窒化物系半導体層44は、例えばMgを不純物添加された約8×1019cm-3、厚さ約10nm程度のp型GaN層で形成される。
【0188】
第1の実施の形態に係る半導体発光素子の詳細な模式的断面構造例2において、インジウムを含む多重量子井戸からなる活性層13の上に形成される第2半導体層14は、上記のように、Mg濃度の異なる2層構造のp型GaN層からなり、上記の濃度でドーピングされている。p型GaN層は、活性層13への熱ダメージを低減させるために、約800℃〜900℃の低温で成長する。
【0189】
活性層13に一番近い第3窒化物系半導体層43は、活性層13への正孔注入量を決める層であるため、Mg濃度が高いほど発光強度が高くなる。このため、Mg濃度は高ければ高いほど望ましい。
【0190】
第4窒化物系半導体層44は、透明電極15とのオーミックコンタクトを取るためのp型GaN層であり、実質的に空乏化されている。透明電極15として、例えば、GaまたはAlが1×1019 〜5×1021cm-3程度不純物添加されたZnO電極を用いた場合、半導体発光素子の順方向電圧Vfを最も下げる時のMg濃度となるように、第4窒化物系半導体層44には、Mgが不純物添加される。
【0191】
p型GaN層を2層成長させる場合、p側電極100に近い第3窒化物系半導体層43、第4窒化物系半導体層44は、膜中の正孔濃度を上昇させる必要があるため、キャリアガス中のH2ガス量を多くする。或いはまた、活性層13に近い第3窒化物系半導体層43は、キャリアガス中のH2ガス量を多くする必要はなく、活性層13をN2キャリアガスで成長させているその延長で結晶成長させてもよい。
【0192】
第1の実施の形態に係る半導体発光素子の詳細な模式的断面構造例2においても、基板10上に配置された加工層18、加工層18に挟まれた基板10上に配置されたバッファ層16、バッファ層16および加工層18上に配置され,n型不純物が不純物添加された第1半導体層12、ブロック層17、活性層13、第2半導体層14、最終バリア層310および電極構造は本発明の第1の実施の形態に係る半導体発光素子の詳細構造例1と同様であるため、説明は省略する。
【0193】
また、第1の実施の形態に係る半導体発光素子の詳細な模式的断面構造例2においては、低温で第2半導体層14を形成して活性層13への熱ダメージを低減させ、かつ順方向電圧Vfを低下させ、発光効率を向上させることができる。
【0194】
また、第1半導体層12から供給される電子と、第2半導体層14から供給されるホールが活性層13において効率よく再結合するための活性層13のMQWペア数を最適化し、発光効率を向上させることができる。
【0195】
また、第2半導体層14から井戸層へのp型不純物の拡散を抑制し、発光効率を向上させることができ、第1半導体層12から第2半導体層14への電子のオーバーフロー、及び第1半導体層12から活性層13へのn型不純物の拡散を抑制し、発光効率を向上させることができる。
【0196】
(結晶成長面方位)
第1の実施の形態に係る半導体発光素子に適用されるIII族窒化物系半導体の結晶面について説明する。III族窒化物系半導体の結晶構造のc面、a面、m面は、模式的に図35(a)に示すように表され、半極性面{10−11}は、模式的に図35(b)に示すように表され、半極性面{10−13}は、模式的に図35(c)に示すように表され、III族原子と窒素原子の結合形状は、模式的に、図35(d)に示すように表される。
【0197】
III族窒化物系半導体の結晶構造は、図35(a)〜図35(d)に示すように、六方晶系で近似することができ、一つのIII族原子に対して4つの窒素原子が結合している。4つの窒素原子は、III族原子を中央に配置した正四面体の4つの頂点に位置している。これらの4つの窒素原子は、一つの窒素原子がIII族原子に対して+c軸方向に位置し、他の三つの窒素原子がIII族原子に対して−c軸側に位置している。このような構造のために、III族窒化物系半導体では、分極方向がc軸に沿っている。
【0198】
c軸は六角柱の軸方向に沿い、このc軸を法線とする面(六角柱の頂面)がc面{0001}である。c面に平行な2つの面でIII族窒化物半導体の結晶を劈開すると、+c軸側の面(+c面)はIII族原子が並んだ結晶面となり、−c軸側の面(−c面)は窒素原子が並んだ結晶面となる。そのため、c面は、+c軸側と−c軸側とで異なる性質を示すので、極性面(Polar Plane)と呼ばれる。
【0199】
+c面と−c面とは異なる結晶面であるので、それに応じて、異なる物性を示す。具体的には、+c面は、アルカリに強いなどといった化学反応に対する耐久性が高く、逆に、−c面は化学的に弱く、例えば、アルカリに溶けてしまうことが分かっている。
【0200】
一方、六角柱の側面がそれぞれm面{10−10}であり、隣り合わない一対の稜線を通る面がa面{11−20}である。これらは、c面に対して直角な結晶面であり、分極方向に対して直交しているため、極性のない平面、すなわち、非極性面(Non-polar Plane)である。さらに、図35(b)および図35(c)に示すように、c面に対して傾斜している(平行でもなく直角でもない)結晶面{10−11}や{10−13}は、分極方向に対して斜めに交差しているため、若干の極性のある平面、すなわち、半極性面(Semi-polar Plane)である。他の半極性面の具体例は、{10−1−1}面、{10−1−3}面、{11−22}面などの面である。
【0201】
例えば、m面を主面とするGaN単結晶基板は、c面を主面としたGaN単結晶から切り出して作製することができる。切り出された基板のm面は、例えば、化学的機械的研磨処理によって研磨され、[0001]方向および[11−20]方向の両方に関する方位誤差が±1°以内(好ましくは±0.3°以内)とされる。こうして、m面を主面としたGaN単結晶基板が得られる。
【0202】
第1の実施の形態に係る半導体発光素子は、上記六方晶構造の各面を結晶主面として用いることができ、MOCVD法などによって、半導体発光素子を形成することができる。
【0203】
第1の実施の形態に係る半導体発光素子においては、例えば、第1半導体層12,活性層13,および第2半導体層14は、六方晶構造の非極性面を結晶成長の主面とし、第1半導体層12の横方向成長面は、上記の非極性面に垂直な非極性面となるように、加工層18のパターン形状を選択すると良い。
【0204】
或いはまた、第1半導体層12,活性層13,および第2半導体層14は、六方晶構造のm面を結晶成長の主面とし、第1半導体層12の横方向成長面は、上記のm面に垂直なa面となるように、加工層18のパターン形状を選択すると良い。
【0205】
或いはまた、第1半導体層12,活性層13,および第2半導体層14は、六方晶構造のa面を結晶成長の主面とし、第1半導体層12の横方向成長面は、上記のa面に垂直なm面となるように、加工層18のパターン形状を選択すると良い。
【0206】
或いはまた、第1半導体層12,活性層13,および第2半導体層14は、六方晶構造の半極性面を結晶成長の主面とし、第1半導体層12の横方向成長面は、上記の半極性面に垂直なa面若しくはm面となるように、加工層18のパターン形状を選択すると良い。
【0207】
或いはまた、第1半導体層12,活性層13,および第2半導体層14は、六方晶構造の極性面を結晶成長の主面とし、第1半導体層12の横方向成長面は、m面若しくはa面となるように、加工層18のパターン形状を選択すると良い。
【0208】
(詳細構造例3)
第1の実施の形態に係る半導体発光素子の詳細な模式的断面構造例3であって、半導体発光素子部分および活性層部分の拡大された模式的断面構造は、図37に示すように、基板10と、基板10上に配置され、周期的凹凸加工された加工層18と、加工層18に挟まれた基板10上に配置されたAlNバッファ層16と、AlNバッファ層16上および加工層18上に配置され、n型不純物が不純物添加されたAlxGa1-xN層(0<x<1)からなるn型半導体層25と、n型半導体層25上に配置され、AlxGa1-xN層(0<x<1)からなるバリア層とバリア層よりバンドギャップが小さいAlxInyGa1-x-yN層(0<x≦y<1, 0<x+y<1)からなる井戸層が交互に配置された積層構造を有する多重量子井戸からなる活性層60と、活性層60上に配置され、p型不純物が不純物添加されたAlxGa1-xN層(0≦x<1)からなる第2半導体層80とを備える。
【0209】
n型半導体層25は、n型不純物が不純物添加されたAlxGa1-xN層(0<x<1)からなる第1半導体層12と第1半導体層12上に配置され、同じくn型不純物が不純物添加されたAlxGa1-xN層(0<x<1)からなるn型コンタクト層19とを備える。
【0210】
活性層60は、図37に示すように、AlxGa1-xN層(0<x<1)からなるバリア層611〜61n、610とバリア層611〜61n、610よりバンドギャップが小さいAlxInyGa1-x-yN層(0<x≦y<1, 0<x+y<1) からなる井戸層621〜62nが交互に配置された積層構造を有する。
【0211】
図37に示した第1の実施の形態に係る半導体発光素子の詳細な模式的断面構造例3において、p側電極およびn側電極まで形成した模式的断面構造は、図38に示すように、n型半導体層25に電圧を印加するn側電極200と、第2半導体層80に電圧を印加するp側電極100を更に備える。図38に示すように、第2半導体層80、活性層60、及びn型コンタクト層19の一部領域をエッチングして露出させたn型コンタクト層19の表面に、n側電極200が配置される。
【0212】
(フリップチップ構造)
第1の実施の形態に係る半導体発光素子をフリップチップ構造のパッケージに実装した構造を示す模式的断面構造は、図39に示すように表される。
【0213】
第1の実施の形態に係る半導体発光素子のp側電極100は、ダイボンディングによって、パッケージ2の内壁底に実装されたアノード用の電極パターン(図示省略)に接続され、同様に、n側電極200は、ダイボンディングによって、パッケージ2の内壁底に実装されたカソード用の電極パターン(図示省略)に接続されている。
【0214】
また、第1の実施の形態に係る半導体発光素子は、例えば、モールド樹脂1によって、パッケージ2内に実装されている。
【0215】
フリップチップ構造に実装された第1の実施の形態に係る半導体発光素子においては、活性層13から下方向に放射された光は、第2半導体層14と透明電極15との界面で一部反射され、上方向に伝搬される。また、活性層13から上方向に放射された光は、加工層18において効率良く屈折されて、基板10内を伝搬し、上方向に伝搬される。
【0216】
結果として、図38に示すように、フリップチップ構造のパッケージ2に実装された第1の実施の形態に係る半導体発光素子において、活性層13から上方向および下方向に放射された光は、効率良く外部に取り出すことができる。
【0217】
GaN層側から主にサファイア基板10を介して外部へ光を取り出す経路となるフリップチップ構造が、特に輝度を向上させる点で有効である。
【0218】
第1の実施の形態に係る半導体発光素子においては、加工層18の内部に屈折率nの分布を持たせても良い。このように構成することによって、基板10側への光の取り出し効率が向上し、外部発光効率の向上した半導体発光素子を提供することができる。
【0219】
第1の実施の形態に係る半導体発光素子によれば、エッチング技術を用いて、基板成長面に凹部の深さtが約200nm以下の周期的凹凸構造を作製し、外部発光効率の向上した半導体発光素子を提供することができる。
【0220】
本発明によれば、基板成長面に光の干渉効果を考慮した周期的凹凸構造を形成することにより、光取り出し効率の向上した半導体発光素子を提供することができる。
【0221】
[その他の実施の形態]
上記のように、本発明は第1の実施の形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述および図面は例示的なものであり、この発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例および運用技術が明らかとなろう。
【0222】
既に述べた実施の形態の説明においては、AlxGa1-xN層(0<x<1)からなるバリア層31と該バリア層31よりバンドギャップが小さいAlxInyGa1-x-yN層(0<x≦y<1, 0<x+y<1)からなる井戸層32が交互に配置された積層構造を有する多重量子井戸からなる活性層30の例を示したが、活性層30がAlxInyGa1-x-yN層(0<x≦y<1, 0<x+y<1)からなる1つの井戸層32を含み、この井戸層32とp型半導体層80間に配置された最終バリア層310の膜厚d0を、Mgの拡散距離より厚くした構造であってもよい。
【0223】
本発明の第1の実施の形態において、ナノインプリント技術を用いて基板成長面に、凹部の深さt=200nm以下の周期的凹凸構造を形成しても良い。
【0224】
このように、本発明はここでは記載していない様々な実施の形態などを含む。
【産業上の利用可能性】
【0225】
本発明の半導体発光素子は、量子井戸構造を備えたLED素子,LD素子等の窒化物系半導体素子全般に利用可能であり、特に、GaN系LED、青色LED、紫外LED、白色LED、緑色LED、およびこれらを適用した照明技術分野、ディスプレイ技術分野など幅広い分野に適用可能である。
【符号の説明】
【0226】
1…モールド樹脂
2…パッケージ
6…レジスト層
10…基板(サファイア基板)
12、12a、121、122、123、124…第1半導体層(n型半導体層)
12b…n型BAlGaInN層
13、30,60…活性層
14、40,80…第2半導体層(p型半導体層)
15…透明電極
16…バッファ層
17…ブロック層
18、18−1〜18−n、19a、19b…加工層
19…n型コンタクト層
20…貫通転位
21…電子バリア層
22…キャップ層
25…n型半導体層
31,311〜31n…バリア層(GaN層)
32,321〜32n…井戸層(InGaN層)
61,611〜61n…バリア層(AlGaN層)
62,621〜62n…井戸層(AlInGaN層)
41,81…第1窒化物系半導体層
42,82…第2窒化物系半導体層
43,83…第3窒化物系半導体層
44,84…第4窒化物系半導体層(p型コンタクト層)
100…p側電極
102、202…ボンディングコンタクト
104、204…ボンディングワイヤ
106、206…電極パターン
200…n側電極
310、610…最終バリア層
LO…加工層18の中央部
LA,LB…横方向選択成長方向のベクトル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1屈折率を有する基板と、
前記基板上に配置され、第2屈折率を有し、周期的凹凸加工された加工層と、
前記加工層に挟まれた前記凹部の前記基板上および前記凸部の前記加工層上に配置され、第3屈折率を有する第1半導体層と
を備え、前記第2屈折率の値は、前記第1屈折率の値よりも大きく、前記第3屈折率の値よりも小さいことを特徴とする半導体発光素子。
【請求項2】
前記第1半導体層は、BwAlyGa1-xInzN(0≦w≦1、0≦x≦1、0≦y≦1、0≦z≦1、x=w+y+z)系半導体層を備えることを特徴とする請求項1に記載の半導体発光素子。
【請求項3】
前記凹部の幅bと前記凸部の幅aの比b/aが2/5以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の半導体発光素子。
【請求項4】
前記凹部の面積Bと前記凸部の面積Aの比B/Aが1以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の半導体発光素子。
【請求項5】
前記凹部の深さtと前記凹部の幅bの比t/bが2/5以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の半導体発光素子。
【請求項6】
前記加工層は、酸化物、窒化物、または酸素と窒素からなる化合物のいずれかであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の半導体発光素子。
【請求項7】
前記加工層は、B、Mg、Al、Si、Ti、Zn、またはGaのいずれかの元素から構成される化合物であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の半導体発光素子。
【請求項8】
前記加工層は、SiON、SiN、またはBpAlqGa1-rN(0≦p≦1、0≦q≦1、0≦r≦1、r=p+q)のいずれかであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の半導体発光素子。
【請求項9】
前記基板は、サファイア基板を備えることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の半導体発光素子。
【請求項10】
前記加工層に挟まれた前記基板上に配置され、BsAltGa1-uN(0≦s≦1、0≦t≦1、0≦u≦1、u=s+t)からなるバッファ層をさらに備えることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の半導体発光素子。
【請求項11】
前記第1半導体層は、前記バッファ層上に配置されたBiAljGa1-kN(0≦i≦1、0≦j≦1、0≦k≦1、k=i+j)系半導体層を備え、前記第3屈折率は前記バッファ層の屈折率の値と同じ、または大きい値を有することを特徴とする請求項10に記載の半導体発光素子。
【請求項12】
前記第1半導体層、前記バッファ層のいずれか一方若しくは両方ともにSiドープされていることを特徴とする請求項10〜11のいずれか1項に記載の半導体発光素子。
【請求項13】
前記バッファ層の屈折率の値は、前記第2屈折率の値と同じ、または大きいことを特徴とする請求項10〜12のいずれか1項に記載の半導体発光素子。
【請求項14】
前記第1半導体層上に配置された活性層と、
前記活性層上に配置され、p型不純物をドープされた第2半導体層と
をさらに備えることを特徴とする請求項1〜13のいずれか1項に記載の半導体発光素子。
【請求項15】
前記第2半導体層上に配置された透明電極と、
前記透明電極、前記第2半導体層、前記活性層および前記第1半導体層の一部を除去して得られた前記第1半導体層面上に配置されたn側電極と、
前記透明電極上に配置されたp側電極と
を備えることを特徴とする請求項14に記載の半導体発光素子。
【請求項16】
前記半導体発光素子は、フリップチップ構造を備え、光は前記基板側から取り出されることを特徴とする請求項1〜15のいずれか1項に記載の半導体発光素子。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate

【図26】
image rotate

【図27】
image rotate

【図28】
image rotate

【図29】
image rotate

【図30】
image rotate

【図31】
image rotate

【図32】
image rotate

【図33】
image rotate

【図34】
image rotate

【図35】
image rotate

【図36】
image rotate

【図37】
image rotate

【図38】
image rotate

【図39】
image rotate


【公開番号】特開2011−60917(P2011−60917A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−207523(P2009−207523)
【出願日】平成21年9月8日(2009.9.8)
【出願人】(000116024)ローム株式会社 (3,539)
【Fターム(参考)】