説明

半導体装置、及び、その製造方法

【課題】微細配線を有する半導体装置の信頼性を向上させる。
【解決手段】本発明に係る半導体装置は、第1のCu配線102と、第1のCu配線102の上に設けられ、第1のCu配線102からCuの拡散を防ぐ第1のバリア絶縁膜103とを備える。また、第1のバリア絶縁膜103の上には、第2のCu配線105と、第1のCu配線105の上に設けられ、第2のCu配線105からCuの拡散を防ぐ第2のバリア絶縁膜106と、を備える。第1、第2のバリア絶縁膜103、106は、分枝アルキル基、及び、炭素−炭素二重結合を有するシリコン系絶縁膜からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置、及び、その製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコン半導体集積回路(以下、LSI)において、かつては導電材料としてアルミニウム(Al)又はAl合金が広く用いられてきた。そして、LSIの微細化の進行に伴い、配線抵抗の低減と配線の高信頼化のために、導電材料として銅(Cu)が使用されるようになってきた。Cuはシリコン酸化膜中に容易に拡散するため、Cu配線の上面にバリア絶縁膜を形成し、Cuの拡散を防止する技術が知られている(例えば、特許文献1−3)。
【0003】
例えば、特許文献1には、Cu配線の上部を覆うように30〜150nmのバリア絶縁膜を形成し、その上に200〜500nmの厚みのSiOCH膜を層間絶縁膜として形成することが記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、ケイ素−炭素結合や、炭素−炭素単結合(C−C)、炭素−炭素二重結合(C=C)、炭素−炭素三重結合(C≡C)のような炭素−炭素結合、又はこれらの組み合わせを備える炭化ケイ素ベースのバリア層を形成することが記載されている。これにより、低い誘電率、向上したエッチング抵抗性、優れたバリアパフォーマンスを具備する誘電バリアを形成する方法が提供できるとされている。
【0005】
さらに、特許文献3には、高密度処理を行い第二の絶縁性バリア膜の少なくとも一部分を高密度にすることが記載されている。こうすることで、第二の絶縁性バリア膜が薄くても、第二の絶縁性バリア膜の上に設けられた低誘電率な絶縁膜からの水分の浸透を防止することができ、第二の絶縁性バリア膜の下に設けられた銅膜の表面酸化を防止し、配線のEM(Electro Migration)耐性と配線間TDDB(Time Dependent Dielectric Breakdown)寿命とを十分確保しつつ、実効比誘電率が低い配線構造を得ることができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−88495号公報
【特許文献2】特開2009−170872号公報
【特許文献3】特開2009−182000号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献3記載の従術では、バリア絶縁膜の密度を上げると誘電率が上がるという問題があった。そのため、高密度層を非常に薄くしないと実効的な誘電率が結果的に下がらないという問題があった。ところが、特許文献3の技術では、Cu膜上に形成されたSiCO膜に対するヘリウムプラズマ処理による高密度処理により高密度層を形成させるものであるため、高密度層の厚みを制御することが非常に困難だった。
【0008】
また、4MS(テトラメチルシラン)を用いて形成されたバリア絶縁膜では、膜の透水性が高く、EM、TDDBなどの問題を十分に解消することができなかった。
【0009】
したがって、上記文献の技術では、微細配線を有する半導体装置の信頼性を十分に向上させることができていなかった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、
金属配線と、
前記金属配線の上に設けられ、前記金属配線から金属の拡散を防ぐバリア絶縁膜と、
を備え、
前記バリア絶縁膜は、分枝アルキル基、及び、炭素−炭素二重結合を有するシリコン系絶縁膜からなる、半導体装置が提供される。
【0011】
また、本発明によれば、
金属配線を形成する工程と、
前記金属配線の上に、前記金属配線から金属の拡散を防ぐバリア絶縁膜を形成する工程と、
を含み、
前記バリア絶縁膜を形成する前記工程において、分枝アルキル基、及び、炭素−炭素二重結合を有するシリコン系絶縁膜を形成する、半導体装置の製造方法
が提供される。
【0012】
この発明によれば、バリア絶縁膜が分枝アルキル基と炭素-炭素二重結合とを有するシリコン系絶縁膜からなるため、実効比誘電率を低減しつつ、水分の透過性を抑制して、EM耐性、及び、配線間TDDB寿命の確保を図ることができる。したがって、微細配線を有する半導体装置の信頼性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、微細配線を有する半導体装置の信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施の形態に係る半導体装置を模式的に示した断面図である。
【図2】実施の形態に係る半導体装置の製造方法の一例を説明する図である。
【図3】実施の形態に係る半導体装置の製造方法の一例を説明する図である。
【図4】実施の形態に係る半導体装置の製造方法の一例を説明する図である。
【図5】実施例で用いた構造を示す模式的な断面図である。
【図6】本発明のバリア絶縁膜を用いて吸湿試験を行った前後のFT−IRのチャートを示す図である。
【図7】本発明のバリア絶縁膜を用いて吸湿試験を行った前後のFT−IRのチャートを示す図である。
【図8】従来のバリア絶縁膜を用いて吸湿試験を行った前後のFT−IRのチャートを示す図である。
【図9】本発明のバリア絶縁膜、及び、従来のバリア絶縁膜をそれぞれ成膜した直後のFT−IR結果を示す図である。
【図10】本発明のバリア絶縁膜、及び従来のバリア絶縁膜をそれぞれ用いて吸湿試験を行った前後のFT−IRのチャートを示す図である。
【図11】本発明のバリア絶縁膜、及び、従来のバリア絶縁膜において、PCTテスト後の結合変化を定量化した図である。
【図12】本発明のバリア絶縁膜、及び、従来のバリア絶縁膜のXPSによる深さ方向の酸素プロファイルを示す図である。
【図13】原料ガスの違いによるC−CH結合を生成するための活性化エネルギーの違いを調べた結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0016】
図1は、本実施の形態の半導体装置を示す模式的な断面図である。この半導体装置は、第1のCu(銅)配線102と、第1のCu配線102の上に設けられ、第1のCu配線102からCuの拡散を防ぐ第1のバリア絶縁膜103とを備える。また、第1のバリア絶縁膜103の上には、第2のCu配線105と、第1のCu配線105の上に設けられ、第2のCu配線105からCuの拡散を防ぐ第2のバリア絶縁膜106と、を備える。第1、第2のバリア絶縁膜103、106は、分枝アルキル基、及び、炭素−炭素二重結合を有するシリコン系絶縁膜からなる。
【0017】
以下、具体的に本実施の形態の半導体装置について説明する。本実施の形態の半導体装置は、図示しない半導体基板にトランジスタが形成された下層膜を有し、この下層膜上に第1の層間絶縁膜101が形成されている。また、第1の層間絶縁膜101上に、第1のバリア絶縁膜103、第2の層間絶縁膜104、第2のバリア絶縁膜106が順に積層されている。
【0018】
第1、第2の層間絶縁膜101、104は、いずれも、酸化シリコン膜の比誘電率(k=3.9〜4.5)よりも比誘電率の低い低誘電率膜である。第1、第2の層間絶縁膜101、104の厚みは、第1のバリア絶縁膜103よりも厚く、例えば、200〜500nmとすることができる。第1、第2の層間絶縁膜101、104は、例えば、SiCH膜、SiCNH膜、SiCOH及びSiCONH膜とすることができる。
【0019】
第1、第2の層間絶縁膜101、104には、いずれも配線溝が形成されている。第1の層間絶縁膜101に形成された配線溝の内部には、第1のバリアメタル膜102a及び第1のCu膜102bが形成され、第1のCu配線102を構成している。また、第2の層間絶縁膜104に形成された配線溝の内部には、第2のバリアメタル膜105a及び第2のCu膜105bが形成され、第2のCu配線105を構成している。さらに、第2の層間絶縁膜104には、第1のバリア絶縁膜103を貫通し、第1の層間絶縁膜101に形成された第1のCu配線102と接続しているビア107が形成されている。第2の層間絶縁膜に接続孔が形成され、その内部に第3のバリアメタル膜107a、及び、第3のCu膜107bが形成されることによりビア107が構成されている。
【0020】
第1、第2、第3のバリアメタル膜102a、105a、107aは、それぞれ、タンタル(Ta)やチタン(Ti)を主要な金属とする膜であり、例えば、Ta、TaN、TiN等から構成させることができる。第1のバリアメタル膜102a、105a、107aは、単層であってもよいし、異なる二種以上の層が積層されていてもよい。これにより、第1のCu配線102中のCuが第1の層間絶縁膜101に拡散するのを防止することができる。まだ、第2のCu配線105及びビア107中のCuが第2の層間絶縁膜104に拡散するのを防止することができる。
【0021】
第1、第2、第3のCu膜102b、105a、107aは、Cuを主成分とする膜であればよく、Cuのみからなる膜であってもよいし、Cuと他の金属(Al、Mn、Mgなど)とを含むCu合金であってもよい。
【0022】
図示しないが、第1の層間絶縁膜101の表面に露出した第1のCu膜102b、及び、第2の層間絶縁膜104の表面に露出した第2、3のCu膜105b、107bは、キャップメタル膜で覆われていても良い。キャップメタル膜は、例えば、コバルト(Co)、タングステン(W)などを主成分とした膜とすることができる。
【0023】
第1、第2のバリア絶縁膜103、106は、分枝アルキル基、及び、炭素−炭素二重結合を有するシリコン系絶縁膜であればよく、厚みは、1〜100nmとすることができる。分枝アルキル基としては、C−CH結合を有する置換基が好ましい。分枝アルキル基、及び、炭素−炭素二重結合は、赤外分光法で赤外吸収を調べることにより確認することができる。
【0024】
第1、第2のバリア絶縁膜103、106は、比誘電率kを4.0以下とすることができ、より好ましくは、3.5以下とすることができ、さらに好ましくは、3.0以下とすることができる。また、第1、第2のバリア絶縁膜103、106は、このような低誘電率を維持しつつ、透水性を低くすることができ、例えば、温度105〜143℃、湿度75〜100%、圧力0.02〜0.2MPa、100時間の条件下でも、低透水性を保持することができる。
【0025】
第1、第2のバリア絶縁膜103、106は、シリコン(Si)を含むシリコン系の絶縁膜であればよいが、例えば、SiCH膜、SiCNH膜、SiCOH膜及びSiCONH膜のいずれかとすることができる。SiCNH膜、SiCOH膜及びSiCONH膜のように、第1、第2のバリア絶縁膜103、106に窒素(N)や酸素(O)が含まれることにより、リーク電流を減少させることができる。また、SiCNH膜及びSiCONH膜のように第1、第2のバリア絶縁膜103、106にNが含まれることより、第2の層間絶縁膜104など上層の層間絶縁膜とのドライエッチングの選択比を大きくすることができる。また、SiCOH膜及びSiCONH膜のように、第1、第2のバリア絶縁膜103、106に酸素原子(O)が添加されることで、第2の層間絶縁膜104など上層の層間絶縁膜との密着性を向上させることができる。
【0026】
第1の層間絶縁膜101と第1のバリア絶縁膜103との間には、第1の層間絶縁膜101及び第1のバリア絶縁膜103とは異なる材料からなる絶縁膜(例えば、SiCN膜など)が設けられていても良い。また、第2の層間絶縁膜104と第2のバリア絶縁膜106との間にも同様に、第2の層間絶縁膜104、及び、第2のバリア絶縁膜106とは異なる材料からなる絶縁膜を設けることができる。これにより、第1の層間絶縁膜101と第1のバリア絶縁膜103との間、あるいは、第2の層間絶縁膜104と第2のバリア絶縁膜106との間の接着性を向上させることができる。
【0027】
つづいて、本実施の形態の半導体装置の製造方法の一例について図2〜4を用いて説明する。まず、シリコン基板などの半導体基板にトランジスタ等の素子を形成して、下地層を作製する(図示せず)。ついで、下地層にプラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)法により、第1の層間絶縁膜101を成膜した後、第1の層間絶縁膜101にフォトリソグラフィー技術を用いて配線溝102cを形成する(図2(a))。
【0028】
つづいて、スパッタリング法やCVD法により配線溝102cに第1のバリアメタル膜102aを形成した後、スパッタリング法、CVD法又はめっき法により第1のCu膜102bを埋め込む。そして、第1の層間絶縁膜101上の第1のバリアメタル膜102a及び第1のCu膜102bをCMP(Chemical Mechanical Polishing)法により除去して第1のCu配線102を形成する(図2(b))。
【0029】
つづいて、第1の層間絶縁膜101、及び、第1の層間絶縁膜101から露出している第1の配線102を覆うように、第1のバリア絶縁膜103を形成する(図2(c))。第1のバリア絶縁膜103は、プラズマCVD法により成膜することができ、原料ガスとしては、下記一般式(1)の化合物を用いることができる。
【0030】
【化1】

【0031】
一般式(1)中、Rは、炭素数3〜6の分枝鎖アルキル基であり、R及びRは、不飽和炭化水素基、又は、飽和炭化水素基であり、Xは、不飽和炭化水素基、又は、飽和炭化水素基が結合しているケイ素原子、水素原子、不飽和炭化水素基及び飽和炭化水素基のいずれかが結合している窒素原子、不飽和炭化水素基又は飽和炭化水素基のいずれかであり、不飽和炭化水素基及び飽和炭化水素基の各々は、ビニル基、アリル基、炭素数1〜6のアルキル基のいずれかであり、R、R、R及びXは、互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0032】
具体的には、一般式(1)中、Rは、C−CH結合を有する置換基であることが好ましく、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、イソペンチル基及びイソヘキシル基のいずれかであることがより好ましく、イソブチル基であることが特に好ましい。また、Xは、炭素数1〜6の鎖状又は分枝アルキル基であることがより好ましい。
【0033】
もまた、炭素数3〜6の分枝鎖アルキル基であることが好ましい。また、1つのSi原子に結合しているイソブチル基の数が多いほど、透水性をより低くすることができる。したがって、X、R、R及びRいずれか二つ以上がイソブチル基を有することが好ましい。さらに、一般式(1)中、Xは、不飽和炭化水素基又は飽和炭化水素基であることが好ましい。これにより、SiCH膜からなるバリア絶縁膜を形成させることができる。例えば、ジイソブチルジメチルシラン、イソブチルトリメチルシラン、トリイソブチルメチルシラン、テトラメチルイソブチルシラン等のブチルシランを原料ガスとして用いることができるが、1つのSiに結合している置換基が分枝鎖アルキル基(特に、イソブチル基)をより多く含むことが好ましい。
【0034】
また、一般式(1)中、Xが不飽和炭化水素基又は飽和炭化水素基である化合物に対して、アンモニアガスを添加してもよい。こうすることで、SiCNH膜からなるバリア絶縁膜を形成させることができる。また、Xが不飽和炭化水素基又は飽和炭化水素基である化合物に対して、CO、CO又はOガスを添加してSiCOH膜を形成してもよいし、NO又はNOガスなどを添加してSiCONH膜を形成してもよい。
【0035】
つづいて、第1のバリア絶縁膜103上にプラズマCVD法により第2の層間絶縁膜104を成膜した後、第2の層間絶縁膜104にフォトリソグラフィー技術を用いて配線溝105c、及び接続孔107cを形成する(図3)。
【0036】
その後、スパッタリング法やCVD法により配線溝105c及び接続孔107cに第2、第3のバリアメタル膜105a、107aを同時に形成した後、スパッタリング法、CVD法又はめっき法により第2、3のCu膜105b、107bを同時に埋め込む。そして、第2の層間絶縁膜104上の第2、第3のCu膜105b、107b、及び、第2、第3のバリアメタル膜105a、107aをCMP(Chemical Mechanical Polishing)法により除去して第2の配線105、及び、ビア107を形成する(図4)。
【0037】
ついで、第1のバリア絶縁膜103と同様な方法により第2のバリア絶縁膜106を形成し、図1の構造を作製する。図1で示す構造を下地膜として、さらに、図1の構造を作製してもよい。その後、任意の方法により半導体装置を完成させる。
【0038】
つづいて、本実施の形態の作用効果について説明する。本実施の形態の半導体装置によれば、第1、第2のバリア絶縁膜103、106が分枝アルキル基と炭素-炭素二重結合とを有するシリコン系絶縁膜からなるため、実効比誘電率を低減しつつ、水分の透過性を抑制して、EM耐性、及び、配線間TDDB寿命の確保を図ることができる。したがって、微細配線を有する半導体装置の信頼性を向上させることができる。
【0039】
分岐アルキル基及び炭素−炭素二重結合を有するシリコン系絶縁膜からなるバリア絶縁膜では、膜中の炭素−炭素二重結合及び分枝アルキル基の炭素と水とが反応し、酸化してC=O結合などを生成し、水分子(HO)をトラップすると考えられる。これにより、下層のCu配線には水が透過せず、酸化銅が発生しないと推測される。したがって、炭素−炭素二重結合及び分枝アルキル基(特に、C−CH結合)をもっていれば、バリア絶縁膜の密度がそれほど高くなくても、水分の透過性を抑制(吸湿ブロック)できると考えられる。
【0040】
例えば、第1、第2のバリア絶縁膜103、106としてジイソブチルジメチルシラン(DiBDM)を用いてバリア絶縁膜を形成させることで、膜の透水性をより低くすることができる。そのため、第1、第2、第3のCu膜102b、105b、107bの酸化を抑制し、Cu酸化膜が発生しないようにすることができる。
【0041】
また、本実施の形態の構造において、バリア絶縁膜を炭素−炭素二重結合及び分枝アルキル基(特に、C−CH結合)を含むSiC(H)膜又はSiCN(H)膜を形成し、その上に層間絶縁膜として、例えばSiCOHあるいはSiCONH膜を形成することが好ましい。こうすることで、水(酸素)の拡散を確実にブロックできるため、バリア絶縁膜の比誘電率及び透水性をいずれも、より効果的に低減させることができる。
【0042】
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
たとえば、実施の形態では、金属配線としてCu配線を例に挙げて説明したが、Cu配線に限らず、アルミニウム(Al)配線等を有する半導体装置であっても、本発明の効果を得ることができる。
【実施例】
【0043】
(製造例)
図2〜4の方法により図1の構造を作製した。まず、第1、2の層間絶縁膜101、104として、ポーラスSiCOH膜(k=2.5)を形成した。第1、2のバリア絶縁膜103、106としては、下記化学式(2)で示すジイソブチルジメチルシラン(DiBDM)を用いた平行平板型プラズマCVD法を行い、比誘電率3.5のSiCH膜を30nm形成した。第2の層間絶縁膜104にデュアルダマシン法により、第2のCu配線105、ビア107を形成した。
なお、第1、第2のバリア絶縁膜103、106のCVD成長条件は、以下のとおりとした。
<DiBDM成膜条件>
温度:350℃
DiBDMSの流量:15sccm
ガス=0sccm
Heガス=0sccm
RF周波数:13.56MHz
RFパワー:700W
圧力:0.47kPa(3.5Torr)
【0044】
【化2】

【0045】
(評価例1−1)
図5に示すように、層間絶縁膜の一例として、HSQ(Hydrogen Silsesquioxane)膜601を280nmのSi基板610上に成膜し、その上に、DiBDMSを原料ガスとした平行平板型プラズマCVDを用いて、バリア絶縁膜の一例として、SiCH膜603を50nm形成した。SiCH膜のプラズマ条件は、上記製造例で示したプラズマ条件を用いて、比誘電率3.5のSiCH膜を成膜した。また、上記製造例で示したプラズマ条件を圧力0.2〜0.67kPa(1.6〜5Torr)、パワーを400〜650Wの範囲で変更して、SiCH膜の比誘電率が、3.0、4.0のSiCH膜からなるサンプルも作製した。そして、PCT(Pressure Cooker Test)による吸湿試験を行った。PCT条件は、気圧110kPa、温度125℃、湿度100%、96時間とした。HSQ膜は、吸湿するとSi−H結合が消失する。そこで、PCTの前後でHSQ膜のSi−H結合が消失しているか否かをFT−IRで調べることで、SiCH膜の吸湿性を評価した。得られたFT−IRのチャートを図6に示す。図6中、実線がPCT後のチャートであり、破線がPCT前のチャートである。図6(a)がSiCH膜603の比誘電率が3.0の結果であり、図6(b)がSiCH膜603の比誘電率が3.5の結果であり、図6(c)がSiCH膜603の比誘電率が4.0の結果である。図6(a)〜(c)で示すように、2250cm−1にあるSi−Hピークが検出されている。したがって、HSQ膜601のSi−H結合が吸湿試験後も変化せず、DiBDMSを用いたSiCH膜は透水性が非常に低いことが示された。
【0046】
評価例1−1において、DiBDMSに窒素ガスやヘリウムガスを5000sccm程度添加してプラズマCVDを行った場合や、圧力を0.2〜0.67kPa(1.6〜5Torr)、パワーを400〜650Wの範囲に10%程度のマージンをとってDiBDMを成膜した場合も、吸湿試験後にHSQ膜601のSi−H結合を確認することができた。したがって、DiBDMSで形成されたSiCH膜が低透水性を有することが確認された。
【0047】
(評価例1−2)
評価例1−1において、DiBDMSの代わりにイソブチルトリメチルシラン(iBTMS)を原料ガスとし、プラズマ条件のうち、流量を15〜30sccm、圧力を0.30〜0.67kPa(2.2〜5Torr)、パワーを450〜700Wの範囲に変更して、平行平板型プラズマCVDを用いてSiCH膜を形成した以外は、評価1−1と同様にした。比誘電率が3.0、3.5、4.0のSiCH膜を作製した。FT−IRの結果を図7に示す。図7(a)が比誘電率3.0の結果であり、図7(b)が比誘電率3.5の結果であり、図7(c)が比誘電率4.0の結果である。図7(a)〜(c)で示すように、2250cm−1にあるSi−Hピークが検出されている。したがって、iBTMSを用いたSiCH膜も透水性が非常に低いことが示された。
【0048】
評価例1−2において、iBTMSに窒素ガスやヘリウムガスを5000sccm程度まで添加してプラズマCVDを行った場合や、圧力を0.2〜0.67kPa(1.6〜5Torr)、パワーを400〜650Wの範囲に10%程度のマージンをとってiBTMSを成膜した場合も、吸湿試験後にHSQ膜601のSi−H結合を確認することができた。したがって、iBTMSで形成されたSiCH膜が低透水性を有することが確認された。
【0049】
(評価例1−3)
評価例1−1において、DiBDMSの代わりに4MS(テトラメチルシラン:Si(CH)を原料ガスとし、プラズマ条件を下記のように変更して平行平板型プラズマCVDを用いてSiCH膜を形成した以外は、評価例1−1と同様にした。プラズマ条件は、以下に示す。比誘電率が3.6のSiCH膜が得られた。
<4MS成膜条件>
温度 350℃
ガス流量:30sccm
ガス:0sccm
Heガス:0sccm
RF周波数:13.56MHz
RFパワー:600W
圧力:0.4kPa(3Torr)
FT−IRの結果を図8に示す。図8中、実線がPCT後のチャートであり、破線がPCT前のチャートである。4MSを用いたSiCH膜は、下層のHSQ膜のSi−H結合がPCT後になくなってしまった。したがって、4MSを用いたSiCH膜は、透水性を有することが示された。
【0050】
(評価例2−1)
製造例1のバリア絶縁膜の成膜条件に従って、DiBDMSにより単層のSiCH膜100nmを作製し、評価例1−1のPCT条件で吸湿試験を行った。
【0051】
(評価例2−2)
評価例1−3の成膜条件に従って、4MSにより単層のSiCH膜100nmを作製し、評価例1−1のPCT条件で吸湿試験を行った。
【0052】
評価例2−1、2−2で得られたSiCH膜のPCT前のFT−IRの結果を図9(a)に示す。図9(b)は、図9(a)の拡大図である。図9中、実線は、DiBDMSで形成されたSiCH膜(評価例2−1)の結果であり、破線は、4MSで形成されたSiCH膜(評価例2−2)の結果を示す。図9に示すように、DiBDMSで形成されたSiCH膜(評価例2−1)では、約1550cm−1に観測されるC=C結合、及び、1450cm−1周辺のC−CH結合を示すピークが確認された。一方、4MSで形成されたSiCH膜(評価例2−2)では、膜の中にFT−IRで約1550cm−1に観測されるC=C結合及び約1450cm−1周辺に観測されるC−CH結合のピークが明確に確認できなかった。
【0053】
評価例2−1、2−2においてPCT前後のFT−IRの結果を図10に示す。図10中、実線がPCT後のチャートであり、破線がPCT前のチャートである。PCT後には、DiBDMSで形成されたSiCH膜(評価例2−1)では、約1550cm−1に観測されるC=C結合のピーク及び約1450cm−1のC−CH結合のピークがPCT後に減少していることがわかる(図10(a))。一方、4MSで形成されたSiCH膜(評価例2−2)は約1550cm−1に観測されるC=C結合のピーク、及び、1450cm−1のC−CHのピークははじめから明確に確認できないため、変化が明確に確認されなかった(図10(b))。また約1700cm−1のC=O結合の赤外吸収が観測される部分では、大きく変化が確認できた。4MSで形成されたSiCH膜(評価例2−2)ではPCT前後で変化が明確にないのに対し(図10(d))、DiBDMSで形成されたSiCH膜(評価例2−1)ではPCT後に1700cm−1のC=O結合を示す赤外光吸収の増加が確認できた(図10(c))。
【0054】
評価例2−1、及び、評価例2−2で得られたFT−IRの結果を定量化したものを図11に示す。図11(a)は、C=C結合の存在を表す約1550cm−1における赤外光吸収の結果を示す。図11(b)は、C−CH結合の存在を表す1450cm−1周辺における赤外光吸収の結果を示す。図11(c)は、C=O結合の存在を表す、約1700cm−1における赤外光吸収の結果を示す。また、測定装置の精度上、0.005以下の数値についてはノイズと解釈する。DiBDMSで形成されたSiCH膜(評価例2−1)では、C=C及びC−CHが減少し、C=Oが増加することが明確にわかる。一方、4MSで形成されたSiCH膜(評価例2−2)では比較して大きな変化は見られなかった。約1550cm−1、約1450cm−1及び1700cm−1の関係を総合すると、C=C及びC−CHの一部の炭素が一部酸化され、C=Oなどが形成されたと考えられる。
【0055】
<膜中の酸素濃度の測定>
また、評価例2−1、2−2で作製したSiCH膜のXPS(X−ray photoelectron spectroscopy)による深さ方向のプロファイルをPCT前後でそれぞれ確認した。PCT前後の膜中の酸素濃度の変化量を図12に示す。ここでいう酸素濃度とは、バリア絶縁膜中に含まれる酸素原子の濃度(単位:原子数%(at.%))である。4MSで形成されたSiCH膜(評価例2−2)では、トップ(T)、センター(C)、ボトム(B)とも酸素濃度の増加が確認された。一方、DiBDMSで形成されたSiCH膜(評価例2−1)では、表面が酸素層度の増加量が大きいが、深くなるにつれ酸素濃度が急激に低下し、膜の奥には酸化が進めないものと推測される。すなわち、SiCH膜中にC=C結合及びC−CH結合を持つ膜は、SiCHのC=C結合及びC−CH結合の炭素が酸化することにより、水をトラップし、それがほとんど表層のみで中に透水させない効果を有することが確認できた。
【0056】
<C−CH結合の確認実験>
図13では、4MSで形成されたSiCH膜でも1450cm−1周辺における赤外光吸収の結果が示されているが、4MSの結果はノイズであり、4MSで形成されたSiCH膜はC−CH結合を有しないと考えられる。そこで、このことをシミュレーションによる分子の結合解離エネルギー及び反応障壁エネルギーから検証した。使用プログラムはGAUSSIAN03を使用し、量子化学計算に密度汎関数法(B3LYP)、既定関数にcc−pVDZを用い計算した。4MS又はDiBDMSがプラズマ雰囲気で分解、再結合しC−CH結合を生成するには、ラジカル活性反応とイオン活性反応が起こると考えられる。すべての反応の初期過程について、活性化エネルギー(ラジカル及びイオン活性種経由)から反応のし易さを計算し、最もC−CHが生成し易い反応から材料による反応性の比較を行った。その結果、DiBDMSはC−CH結合を生成するための活性化障壁が低いことが明らかとなった。したがって、DiBDMSを原料とした方が、C−CH結合を生成しやすいことが考えられる(図13)。具体的には、ラジカル活性種経由でDiBDMSが4MSに対し、21.1Kcal/mol低く(図13(a))、イオン活性種経由で13.9kcal/mol低い結果となった(図13(b))。すなわち、DiBDMSを原料ガスとした場合はシミュレーション的にもC−CH結合が形成されるが、4MSでは、通常のプラズマ条件下では、C−CH結合が形成されないことが示された。また、C=C結合ができるためにはC−C結合を持った化合物の側鎖が切断され、C=C結合を生成する経路が主となると考えられる。すなわち、C−CH結合からC=C結合を生成する場合もDiBDMSが4MSよりC=C結合の生成が起こり易いといえ、DiBDMSはイソブチル基があるので、原料ガスからC=C結合を生成する場合もDiBDMSの方がC−C結合を持っていない4MSよりもC=C結合の生成が優勢になる。
【符号の説明】
【0057】
101 第1の層間絶縁膜
102 第1のCu配線
102a 第1のバリアメタル膜
102b 第1のCu膜
102c 配線溝
103 第1のバリア絶縁膜
104 第2の層間絶縁膜
105 第2のCu配線
105a 第2のバリアメタル膜
105b 第2のCu膜
105c 配線溝
106 第2のバリア絶縁膜
107 ビア
107a 第3のバリアメタル膜
107b 第3のCu膜
107c 接続孔
601 HSQ膜
603 SiCH膜
610 Si基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属配線と、
前記金属配線の上に設けられ、前記金属配線から金属の拡散を防ぐバリア絶縁膜と、
を備え、
前記バリア絶縁膜は、分枝アルキル基、及び、炭素−炭素二重結合を有するシリコン系絶縁膜からなる、半導体装置。
【請求項2】
前記バリア絶縁膜は、SiCH膜、SiCNH膜、SiCOH膜及びSiCONH膜のいずれかである、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記分枝アルキル基がC−CH結合を有する置換基である、請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記バリア絶縁膜は、下記一般式(1)の化合物を用いて形成されたものである、請求項1乃至3いずれか1項に記載の半導体装置。
【化1】

[一般式(1)中、Rは、炭素数3〜6の分枝アルキル基であり、R及びRは、不飽和炭化水素基、又は、飽和炭化水素基であり、Xは、不飽和炭化水素基、又は、飽和炭化水素基が結合しているケイ素原子、水素原子、不飽和炭化水素基及び飽和炭化水素基のいずれかが結合している窒素原子、不飽和炭化水素基又は飽和炭化水素基のいずれかであり、不飽和炭化水素基及び飽和炭化水素基の各々は、ビニル基、アリル基、炭素数1〜6のアルキル基のいずれかであり、R、R、R及びXは、互いに同一であっても異なっていてもよい。]
【請求項5】
前記一般式(1)中、Rは、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、イソペンチル基及びイソヘキシル基のいずれかである、請求項4に記載の半導体装置。
【請求項6】
金属配線を形成する工程と、
前記金属配線の上に、前記金属配線から金属の拡散を防ぐバリア絶縁膜を形成する工程と、
を含み、
前記バリア絶縁膜を形成する前記工程において、分枝アルキル基、及び、炭素−炭素二重結合を有するシリコン系絶縁膜を形成する、半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−74651(P2012−74651A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−220294(P2010−220294)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【出願人】(591006003)株式会社トリケミカル研究所 (31)
【出願人】(000231235)大陽日酸株式会社 (642)
【Fターム(参考)】