説明

半導体装置およびその駆動方法

【課題】2Tr1C型半導体メモリ装置の消費電力を削減する。
【解決手段】読み出しトランジスタのしきい値の絶対値をビット線のデータ電位の変動幅よりも大きくする(あるいはビット線のデータ電位の変動幅を読み出しトランジスタのしきい値の絶対値よりも小さくする)ことで、ソース線の電位を固定し、また、書き込みワード線の電位変動を小さくでき、読み出しワード線の電位は、読み出しの際にのみ変動させる。また、そのようなしきい値の絶対値の大きなトランジスタは、ゲートの材料を仕事関数の高い窒化インジウム等を用いて形成する。仕事関数の高い材料を用いることで、ゲート絶縁物のポテンシャル障壁が高まり、リーク電流が抑制できるので、電荷保持特性も向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体を用いたメモリ装置および半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、バンドギャップがシリコンの2倍以上の酸化物半導体を用いたトランジスタのオフ電流が非常に小さいことを利用して、電荷を極めて長期間に保持できることが発見された。例えば、バンドギャップが2.5電子ボルト以上の半導体では、理論上のオフ電流(オフ状態でのドレイン電流)は、10−26A以下となる。酸化物半導体の一つである酸化インジウム亜鉛ガリウム(非特許文献1参照)では、バンドギャップが3.2電子ボルトであるので、理論上のオフ電流は、10−31A以下となる。
【0003】
また、そこまでオフ電流を低くすることはできないが、シリコンの極めて薄い膜を用いたトランジスタでは通常のトランジスタのオフ電流より3桁低いオフ電流が実現できる(特許文献1参照)。
【0004】
このことを利用して、メモリ回路を構成し、不揮発なメモリとして利用することが提唱されている(特許文献1乃至特許文献3参照)。特許文献1乃至特許文献3に記載されている半導体メモリ装置のメモリセルの回路図は図1に示される。メモリセルは、書き込みトランジスタWT、読み出しトランジスタRT、保持容量SCを有する。そのため、2Tr1C型半導体メモリ装置とも呼ばれる。書き込みトランジスタWTのソースと読み出しトランジスタRTのゲートと保持容量SCの電極の一は互いに接続する。この部分を保持ノードSNと呼ぶ。
【0005】
さらに、書き込みトランジスタWTのゲートは書き込みワード線WWLに、ドレインはビット線BLに接続し、読み出しトランジスタRTのドレインはビット線BLに、ソースはソース線SLに接続し、保持容量SCの電極の他は読み出しワード線RWLに接続する。
【0006】
書き込みトランジスタWTにオフ電流が非常に低い酸化物半導体を用いると保持容量SCに蓄積された電荷は十分な長期にわたって保持される。また、読み出しの際に保持容量SCに蓄積された電荷が流出することがなく、読み出しに伴ってデータが破壊されることはない。
【0007】
読み出しトランジスタRTには、通常のシリコンを使用したトランジスタが用いられる。そのため、一般に読み出しトランジスタRTのしきい値の絶対値は1V未満である。なお、本明細書では、トランジスタはNチャネル型であればしきい値は正の値であり、Pチャネル型であればしきい値は負の値であるとする。したがって、しきい値として正の値が記載されているトランジスタはNチャネル型であり、負の値が記載されているトランジスタはPチャネル型である。
【0008】
このような構造のメモリセルの動作を図3および図4を用いて説明する。ここでは、保持容量SCの電位を0Vあるいは+1Vにすることでデータを記憶するとする。そのためには、ビット線BLの電位を0Vまたは+1Vとすることが求められる。このようなビット線BLの電位をデータ電位という。また、書き込みトランジスタWTのしきい値を+1V、読み出しトランジスタRTのしきい値を+0.5Vとする。
【0009】
データの書き込みに際して、例えば、ソース線SLの電位を0V、ビット線BLの電位を+1とし、書き込みワード線WWLの電位を+2Vとすると、書き込みトランジスタWTはオンとなるが、保持ノードSNの電位が+1Vなので、読み出しトランジスタRTもオンとなり、ビット線BLとソース線SLの間に電流が流れ、電力消費が増加する(図3(A)参照)。
【0010】
このような電流を発生させないようにするには、ソース線SLの電位を0Vより高い値とするとよい。例えば、+1Vとすると図3(A)で発生したような電流は抑制できる(図3(B)参照)。
【0011】
ソース線SLの電位を+1Vとすると、ビット線BLの電位が+1Vのときには、読み出しトランジスタRTのドレインとソースとゲートの電位が+1Vであるので、読み出しトランジスタRTはオフである。また、ビット線BLの電位が0Vのときには、読み出しトランジスタRTのソースおよびゲートの電位が0Vであるので、読み出しトランジスタRTはオフである。このようにして、消費電力を抑制できる。
【0012】
書き込みが終了すると、書き込みワード線WWLの電位を−2Vとし、書き込みトランジスタWTをオフとする(図3(C)参照)。書き込みトランジスタWTのオフ電流を十分に小さくするには、ゲートの電位をソースあるいはドレインのいずれか低い方の電位より0.5V以上、好ましくは1V以上低くすることが望まれる。
【0013】
書き込みトランジスタWTのソースの電位が0V以上であれば、書き込みワード線WWLの電位は−1Vでもよい。しかしながら、後述するように書き込みトランジスタWTのソースの最低電位は−1Vであるので、オフ電流を十分に低くするには、書き込みワード線WWLの電位は−2Vとすることが求められる。
【0014】
続いて、読み出しワード線RWLの電位を+1Vから0Vに低下させる(図3(D)参照)。これは読み出しトランジスタRTを常にオフとするためである。保持ノードSNの電位は−1Vあるいは0Vとなる。この状態はスタンバイ状態であり、メモリセルにデータを書き込まない時間やデータを読み出さない時間には、この状態を保つことで消費電力を削減できる。
【0015】
データを読み出す際には、ソース線SLの電位を0Vとし、また、ビット線BLの電位を+1Vに充電した後、浮遊状態とする(図4(A)参照)。さらに、読み出しワード線RWLの電位を+1Vとすると、保持容量SCを介した容量結合により、保持ノードSNの電位は0Vあるいは+1Vとなる(図4(B)参照)。
【0016】
保持ノードSNの電位が0Vであれば、読み出しトランジスタRTはオフであるので、ビット線BLの電位は+1Vのままである。一方、保持ノードSNの電位が+1Vであれば、ビット線BLの電位は0Vとなる。このように、記憶されているデータに応じてビット線BLの電位が異なることを利用し、データを読み出すことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】米国特許第7772053号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2011/0101351号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2011/0182110号明細書
【非特許文献】
【0018】
【非特許文献1】M. Nakamura , N. Kimizuka, and T. Mohri, ”The Phase Relations in the In2O3−Ga2ZnO4−ZnO System at 1350℃”、J. Solid State Chem.,Vol.93, p. 298 (1991).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明の一態様は、消費電力の低減できる半導体装置(あるいは半導体メモリ装置)あるいはその駆動方法を提供することを課題とする。また、本発明の一態様は、新規な構造の半導体装置(あるいは半導体メモリ装置)あるいはその駆動方法を提供することを課題とする。特に消費電力を低減できる新規な半導体装置(あるいは半導体メモリ装置)あるいはその駆動方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
以下、本発明の説明をおこなうが、本明細書で用いる用語について簡単に説明する。まず、トランジスタのソースとドレインについては、本明細書においては、一方をドレインと呼ぶとき他方をソースとする。すなわち、電位の高低によって、それらを区別しない。したがって、本明細書において、ソースとされている部分をドレインと読み替えることもできる。
【0021】
さらに、本明細書においては、「接続する」と表現される場合であっても、現実の回路においては、物理的な接続部分がなく、配線が延在しているだけのこともある。例えば、一本の配線が複数のトランジスタのゲートを兼ねている場合もある。その場合、回路図では、一本の配線からゲートに何本もの分岐が生じるように書かれることもある。本明細書では、そのような場合でも、「配線がゲートに接続する」という表現を用いることがある。
【0022】
本発明の一態様は、1以上の書き込みワード線と、1以上の読み出しワード線と、1以上のビット線と、1以上のソース線と、書き込みトランジスタと、読み出しトランジスタと、キャパシタを有し、書き込みトランジスタのソースと読み出しトランジスタのゲートとキャパシタの電極の一とが接続し、書き込みトランジスタのゲートは書き込みワード線に接続し、書き込みトランジスタのドレインと読み出しトランジスタのドレインはビット線に接続し、読み出しトランジスタのソースはソース線に接続し、読み出しトランジスタのしきい値の絶対値は、ビット線のデータ電位の変動幅よりも大きいことを特徴とする半導体装置である。
【0023】
また、本発明の一態様は、1以上の書き込みワード線と、1以上の読み出しワード線と、1以上のビット線と、1以上のソース線と、Nチャネル型の書き込みトランジスタと、読み出しトランジスタと、キャパシタを有し、書き込みトランジスタのソースと読み出しトランジスタのゲートとキャパシタの電極の一とが接続し、書き込みトランジスタのゲートは書き込みワード線に接続し、書き込みトランジスタのドレインと読み出しトランジスタのドレインはビット線に接続し、読み出しトランジスタのソースはソース線に接続し、読み出しトランジスタのゲートには仕事関数が5.2電子ボルト以上の材料を用いることを特徴とする半導体装置である。
【0024】
また、本発明の一態様は、1以上の書き込みワード線と、1以上の読み出しワード線と、1以上のビット線と、1以上のソース線と、書き込みトランジスタと、読み出しトランジスタと、キャパシタを有し、書き込みトランジスタのソースと読み出しトランジスタのゲートとキャパシタの電極の一とが接続し、書き込みトランジスタのゲートは書き込みワード線に接続し、書き込みトランジスタのドレインと読み出しトランジスタのドレインはビット線に接続し、読み出しトランジスタのソースはソース線に接続する半導体装置において、ビット線のデータ電位の変動幅を読み出しトランジスタのしきい値の絶対値よりも小さくすることを特徴とする半導体装置の駆動方法である。
【0025】
上記において、読み出しトランジスタのゲートにはインジウムあるいは亜鉛の少なくとも一つと窒素とを有する化合物が用いられてもよい。また、上記において、ビット線の最低電位から書き込みワード線の最低電位を差し引いた値は0.5V以上であってもよい。また、上記において、ソース線の電位は固定されてもよい。
【0026】
また、上記において、書き込みトランジスタは酸化物半導体を用いて形成されてもよい。また、上記において、書き込みトランジスタはバンドギャップが2.5電子ボルト以上の半導体を用いて形成されてもよい。また、上記において、書き込みトランジスタは、厚さが5nm以下、好ましくは1nm以下のシリコンあるいはその他の半導体を用いて形成されてもよい。また、上記において、読み出しトランジスタは単結晶シリコンを用いて形成されてもよい。
【発明の効果】
【0027】
図3および図4に関して説明した半導体メモリ装置の動作をまとめると、以下の特徴が見出せる。第1は、ソース線SLの電位は書き込み時と読み出し時で異なる必要がある。上記の例では、書き込み時には+1Vであったが、読み出し時には0Vとする。第2は、書き込みワード線の変動は−2Vから+2Vまでの4Vである。第3に、読み出しワード線RWLは、書き込みの際と読み出しの際にそれぞれ電位を変動させる必要がある。上記の例では、書き込み時および読み出し時にいずれも+1Vとし、それ以外の時には0Vとする。
【0028】
半導体メモリ装置の消費電力を削減するにはワード線等の配線の電位の変動をなくすか、変動を小さくすることが望まれる。本発明者は、読み出しトランジスタRTのしきい値の絶対値をビット線のデータ電位の変動幅より大きくすることにより、ソース線SLの電位を固定することが可能であること、書き込みワード線の電位の変動をより小さくできること、および、読み出しワード線の電位を、読み出し時にのみ変動させればよいことを発見した。
【0029】
通常、ビット線のデータ電位の変動幅は0.7V以上であり、通常は1V以上である。読み出しトランジスタRTのしきい値の絶対値をこれより大きくするには、いくつか方法がある。第1の方法は、チャネルの形成される領域のフェルミレベルを変えることであり、読み出しトランジスタRTがNチャネル型であればチャネルの形成される領域のP型の程度を強くし、フェルミレベルと真空準位の差(仕事関数)を大きくする。この方法では、チャネルの形成される領域がシリコンであれば、最大でしきい値を+1.1ボルトとできる。
【0030】
しかしながら、この方法では、チャネルの不純物濃度が高いため、読み出しトランジスタRTの移動度が低下してしまう。また、ドレインもチャネルも不純物濃度が高いため、ドレインとチャネル間にトンネル効果による接合リーク電流が生じてしまう。
【0031】
第2の方法は、ゲートの仕事関数を変えることであり、読み出しトランジスタRTがNチャネル型であれば、仕事関数の大きな材料を用いることである。例えば、縮退したP型シリコンの仕事関数は5.2電子ボルトであり、縮退したP型シリコンをゲートとして用いると、しきい値は+1.1ボルトとなる。
【0032】
この場合、原理的には、データ電位の変動幅が1Vでも、上記の条件を満たし、限られた条件では上記のモードで動作することができる。しかしながら、実際には、ばらつきや動作の安定性を考慮すると、読み出しトランジスタRTのしきい値の絶対値とデータ電位の変動幅の差が駆動回路等に使用されている他のトランジスタのしきい値の絶対値より大きいことが好ましい。
【0033】
例えば、駆動回路等に使用されている他のトランジスタのしきい値の絶対値が0.5Vでデータ電位の変動幅が1Vであれば、読み出しトランジスタRTのしきい値の絶対値を1.5V以上とすることが好ましい。一方、駆動回路等に使用されている他のトランジスタのしきい値の絶対値が0.3Vでデータ電位の変動幅が0.7Vであれば、読み出しトランジスタRTのしきい値の絶対値を1V以上とすることが好ましい。この条件であれば、しきい値の絶対値が1.1Vのトランジスタであっても読み出しトランジスタRTとして用いることができる。
【0034】
すなわち、縮退したP型シリコンをゲートとして用いるには、駆動回路等に使用されている他のトランジスタのしきい値の絶対値を下げるか、データ電位の変動幅を小さくする必要がある。ただし、駆動回路等に使用されている他のトランジスタのしきい値の絶対値を下げると、回路全体としてのリーク電流が格段に増加する(しきい値の絶対値が0,1V低下するとリーク電流が10倍以上増加する)というデメリットがある。また、データ電位の変動幅を小さくするとノイズによるエラーが発生する確率が高まる。
【0035】
他の仕事関数の大きな材料として、インジウムあるいは亜鉛の少なくとも一つと窒素とを有する仕事関数が5.3電子ボルト以上のN型半導体(以下、高仕事関数化合物半導体ともいう)がある。このような材料のいくつかは仕事関数が5.5電子ボルト以上であるため、それらをゲートとして用いると、しきい値は+1.4ボルト以上となる。なお、高仕事関数化合物半導体のキャリア濃度は1×1019cm−3以上であることが好ましい。
【0036】
ここで、高仕事関数化合物半導体は、5原子%以上50原子%以下の濃度の窒素を有する。また、高仕事関数化合物半導体は、5原子%以上66.7原子%以下の濃度の亜鉛あるいは、5原子%以上50原子%以下の濃度のインジウムを有することが望ましい。
【0037】
また、高仕事関数化合物半導体では、原子番号が20以下の金属元素の濃度を1原子%以下、好ましくは0.01原子%以下とするとよい。また、高仕事関数化合物半導体は、酸素や他の原子番号21以上の金属元素を有していてもよい。また、高仕事関数化合物半導体は水素を0.01原子%乃至10原子%含有していてもよい。
【0038】
また、好ましくは、高仕事関数化合物半導体は、ウルツ鉱型の結晶構造を有する単結晶もしくは多結晶体であってもよい。なお、高仕事関数化合物半導体はウルツ鉱型以外の六方晶あるいは立方晶の構造を有してもよい。
【0039】
上述の高仕事関数化合物半導体の電子親和力は5.3電子ボルト以上である。そのため、真空準位から4電子ボルト乃至5電子ボルト下の準位(典型的には真空準位から4.9電子ボルト下の準位)に形成される多くの欠陥準位がドナーとなり、特にドーピング処理を施さずとも、1×1019cm−3以上、好ましくは1×1020cm−3以上の電子濃度を有するN型の半導体となる(詳しくは、W. Walukiewicz, ” Intrinsic limitations to the doping of wide−gap semiconductors”, Physica B 302−303, p123 (2001).参照)。
【0040】
上述の高仕事関数化合物半導体の一例として化学式InNとして知られる窒化インジウムがある。窒化インジウムはバンドギャップが0.7電子ボルト以下の半導体であるが、その電子親和力は5.6電子ボルト以上である。窒化インジウムはウルツ鉱型構造であることが知られている。
【0041】
他の例として化学式Znとして知られる窒化亜鉛がある。窒化亜鉛についてはその物性値についての詳細は知られていないが、電子親和力は5.5電子ボルト以上であることが明らかとなった。窒化亜鉛は立方晶であることが知られている。
【0042】
このような高仕事関数化合物半導体の作製には、公知のスパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法、MBE(molecular beam epitaxy)法、CVD法(MOCVD(metal organic CVD)法やALD(atomic layer deposition)法)等を用いればよい。
【0043】
例えば、窒化ガリウムインジウム(In1−aGaN)をMOCVD法で作製するのであれば、原料ガスとして、トリメチルインジウム((CHIn)とトリメチルガリウム((CHGa)とアンモニアを用い、基板温度は350℃乃至550℃とすればよい。
【0044】
上記のように、高仕事関数化合物半導体のいくつかの仕事関数は5.5電子ボルト以上である。そのため、これに酸化シリコンを接合した場合、酸化シリコンの伝導帯下端と高仕事関数化合物半導体のフェルミ準位との差は4.6電子ボルトとなる。これは、酸化シリコンの伝導帯下端とN型シリコンのフェルミ準位との差の3.2電子ボルトや酸化シリコンの伝導帯下端とP型シリコンのフェルミ準位との差の4.3電子ボルトよりも大きい。そのため、ゲートの材料とした場合には、ゲート絶縁物がより大きなポテンシャル障壁となる。
【0045】
したがって、ゲート絶縁物をより薄くしても、トンネル効果によるゲートからの電荷の流出を防止できる。図1に示すメモリセルは保持ノードSNに電荷を長期間保持することが必要である。読み出しトランジスタRTのゲート絶縁物を薄くすると、トンネル効果により電荷が流出しやすくなる。しかし、微細化に伴う短チャネル効果を抑制するためには、ゲート絶縁物を薄くすることが求められる。
【0046】
仕事関数のより大きな材料をゲートに用いると、ゲート絶縁物のポテンシャル障壁がより大きくなり、トンネル効果を抑制することが可能である。そのため、よりゲート絶縁物を薄くすることができる。例えば、ゲート絶縁物の厚さを5nmとすると、チャネル長17nmの読み出しトランジスタRTも作製できる。なお、上記では、ゲート絶縁物として酸化シリコンを例に説明したが、他の絶縁材料であっても同様である。
【0047】
図5(A)はゲートGE、ゲート絶縁物GI、チャネルの形成される領域CH、ソースSR、ドレインDRを有するNチャネル型トランジスタの模式図である。このトランジスタの中央部の線分ABにおけるエネルギーバンドの状態の例を図5(B)および図5(C)に示す。なお、ここでは、ゲートGE、ソースSR、ドレインDRの電位は等しいものとする。また、Efはフェルミ準位、Ecは伝導帯下端、Evは価電子帯上端を意味する。
【0048】
図5(B)は、ゲートがN型シリコン(仕事関数が4.1電子ボルト)のトランジスタ(チャネルの形成される領域CHはP型にドープされている)のエネルギーバンドを示す。また、図5(C)は、ゲートが窒化インジウム(仕事関数が5.6電子ボルト)のトランジスタ(チャネルの形成される領域CHの不純物濃度は極めて低い)のエネルギーバンドを示す。ゲート絶縁物GIは、いずれも酸化シリコンとする。
【0049】
チャネルの形成される領域CHはP型にドープされているが、ゲートがN型シリコンの場合には、表面付近ではゲートGEの影響を受けて、正孔濃度が低くなる。このため、しきい値は低下し、短チャネル効果が生じやすくなる。一方、ゲートが窒化インジウムの場合には、チャネルの形成される領域CHは不純物濃度が極めて低いが、表面付近では、ゲートGEの影響を受けて正孔濃度が高くなる。このため、しきい値が上昇し、短チャネル効果は十分に抑制できる。
【0050】
なお、上述のとおり、窒化インジウムはN型となるので、そのフェルミ準位Efは伝導帯下端Ecと同程度か伝導帯下端Ecより上となる。図5(C)では窒化インジウムはそのキャリア濃度が1×1021cm−3程度の縮退した状態である場合を示している。また、図5(B)に示すN型シリコンもキャリア濃度が1×1021cm−3程度の縮退した状態である場合を示している。
【0051】
また、図5(B)と図5(C)を比較すると明らかであるが、ゲートGEとチャネルの形成される領域CHとの間にあるゲート絶縁物GIのポテンシャル障壁の高さが異なる。
【0052】
例えば、図5(B)のゲートGEのフェルミ準位Efにある電子が、熱励起によって、チャネルの形成される領域CHに到達するには、シリコンの伝導帯下端Ecとフェルミ準位Efの差とE2の和の高さの障壁を超える必要がある。
【0053】
図5(B)のE2はシリコンの電子親和力と酸化シリコンの電子親和力の差であり、3.2電子ボルトであり、シリコンの伝導帯下端Ecとフェルミ準位Efの差は約0.5電子ボルトである。したがって、障壁の高さは3.7電子ボルトである。
【0054】
一方、図5(C)のゲートGEのフェルミ準位Efにある電子がチャネルの形成される領域CHに到達するには、高さE1の障壁を超える必要がある。E1は、窒化インジウムの仕事関数と酸化シリコンの電子親和力の差であり、4.7電子ボルトである。これは、図5(B)の障壁よりも1電子ボルト大きい。
【0055】
すなわち、熱励起によって電子がポテンシャル障壁を乗り越える確率は、ポテンシャル障壁の高さに依存し、ゲートが窒化インジウムである場合(図5(C)の場合)は、ゲートがN型シリコンである場合(図5(B)の場合)よりもはるかに小さい。また、電子はポテンシャル障壁をトンネル効果によってすり抜けることもできるが、その確率(トンネル確率)もポテンシャル障壁の高さによって決定され、やはり、ゲートが窒化インジウムである場合(図5(C)の場合)は、ゲートがN型シリコンである場合(図5(B)の場合)よりも小さい。
【0056】
このように、ゲートに窒化インジウム(あるいは同様に仕事関数の高い材料)を用いた場合には、ゲート絶縁物GIのポテンシャル障壁が高くなるためゲートGEからの電荷の漏洩を低減できる。加えて、上記で説明したように、チャネルの形成される領域表面付近の正孔濃度が高くなるので短チャネル効果を抑制しやすく、ゲート絶縁物GIをより薄くできる。
【0057】
なお、上述のようにチャネルの形成される領域CH(特に表面付近)の不純物濃度を低減できるということは、不純物原子の統計的なゆらぎによるしきい値のばらつき(例えば、K.Takeuchi et al., ”Channel Engineering for the Reduction of Random−Voltage−Induced Threshold Voltage Variation”, p. 841, IEDM (1997).)を抑制する上でも好適である。
【0058】
上記は、チャネルを形成する半導体として、シリコンを例にとって説明したが、その他の半導体、例えば、ガリウム砒素、ガリウム燐、インジウム燐、炭化シリコン、ゲルマニウム、ゲルマニウムシリコン等の公知の半導体でも同様である。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の半導体メモリ装置の回路の例を示す図である。
【図2】本発明の半導体メモリ装置の動作例を示す図である。
【図3】従来の半導体メモリ装置の動作例を示す図である。
【図4】従来の半導体メモリ装置の動作例を示す図である。
【図5】トランジスタの構造とそのバンド図である。
【図6】本発明の半導体メモリ装置の作製工程の例を示す図である。
【図7】本発明の半導体メモリ装置の作製工程の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0060】
以下、実施の形態について図面を参照しながら説明する。但し、実施の形態は多くの異なる態様で実施することが可能であり、趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は、以下の実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0061】
また、以下の記載では、理解を助けるために具体的な数値を例示するが、これらは回路構成や素子特性、実施する者の都合等さまざまな理由で変更できるものであり、本発明がこれらの数値に限定されるものではない。
【0062】
(実施の形態1)
図2を用いて、本発明の一態様の半導体メモリ装置の駆動方法の例を説明する。用いるメモリセルの回路は図1に示されるものと同じものである。図3および図4で説明した場合と同様に、ビット線BLの電位をデータに応じて0Vあるいは+1Vとする。本実施の形態では、書き込みトランジスタWTのしきい値を+1V、読み出しトランジスタRTのしきい値を+1.5Vとする。また、以下では、ソース線SLの電位を0Vに固定する。このような高いしきい値を実現するためには、読み出しトランジスタRTのゲートに高仕事関数化合物半導体を用いればよい。
【0063】
データの書き込みに際して、例えば、書き込みワード線WWLの電位を+2Vとすると書き込みトランジスタWTはオンとなる。ここで、読み出しワード線RWLの電位は0Vとする。ビット線BLの電位を+1Vとした場合、保持ノードSNの電位が+1Vとなる。しかしながら、読み出しトランジスタRTは、そのしきい値が+1.5Vであるのでオフである。もちろん、ビット線BLの電位を0Vとした場合(保持ノードSNの電位が0V)も、読み出しトランジスタRTはオフである。(図2(A)参照)。
【0064】
書き込みが終了すると、書き込みワード線WWLの電位を−1Vとし、書き込みトランジスタWTをオフとする(図2(B)参照)。この状態はスタンバイ状態である。本実施の形態では、読み出しワード線RWLの電位を書き込み時と書き込み終了後(スタンバイ状態)とで変動させる必要がない。したがって、保持ノードSNの電位は、データに応じた電位(0Vあるいは+1V)である。すなわち、書き込みトランジスタWTのソースの電位が0V以上であるので書き込みワード線WWLの電位を−1Vとできる。
【0065】
データを読み出す際には、ビット線BLの電位を+1Vに充電した後、浮遊状態とする(図2(C)参照)。さらに、読み出しワード線RWLの電位を+1Vとする(図2(D)参照)。この結果、保持ノードSNの電位は+1Vあるいは+2Vとなる。
【0066】
保持ノードSNの電位が+1Vであれば、読み出しトランジスタRTはオフであるので、ビット線BLの電位は+1Vのままである。一方、保持ノードSNの電位が+2Vであれば、読み出しトランジスタRTはオンとなり、ビット線BLの電位は0Vとなる。このようにして、記憶されているデータに応じてビット線BLの電位が異なることを利用し、データを読み出すことができる。
【0067】
上記より、本実施の形態の駆動方法では、以下の特色が見出せる。第1は、ソース線SLは電位を固定することができる。上記の例では0Vに固定する。第2は、書き込みワード線WWLの変動は−1Vから+2Vまでの3Vである。第3に、読み出しワード線RWLは、読み出しの際にのみ電位を変動させればよい。上記の例では、読み出しの際にのみ+1Vとし、その他の期間は0Vとする。
【0068】
すなわち、本実施の形態の駆動方法では、図3および図4に示される方法に比べて、ソース線SL、書き込みワード線WWL、読み出しワード線RWLの電位変動の幅を小さく、あるいは電位変動の回数を少なくすることができ、消費電力を削減できる。
【0069】
(実施の形態2)
図6および図7を用いて、本発明の一態様の半導体メモリ装置の作製工程について簡単に説明する。詳細は公知の半導体集積回路作製技術あるいは特許文献2あるいは特許文献3を参照するとよい。なお、図6および図7は、作製工程を概念的に説明するもので、特定の断面を表すものではない。
【0070】
また、本実施の形態は、読み出しトランジスタに用いる半導体としてシリコンを例にとって説明するが、その他の半導体、例えば、ガリウム砒素、ガリウム燐、インジウム燐、炭化シリコン、ゲルマニウム、ゲルマニウムシリコン等の公知の半導体でも同様に実施できる。
【0071】
<図6(A)>
最初に、公知の半導体集積回路作製技術を用いて、半導体の基板101表面に、素子分離絶縁物102、P型ウェル103a、N型ウェル103b、P型ウェル103c、N型不純物領域104a、N型不純物領域104b、P型不純物領域104c、P型不純物領域104d、N型不純物領域104e、N型不純物領域104f、ダミーゲート105a、ダミーゲート105b、ダミーゲート105c、第1層間絶縁物106を形成する。
【0072】
さらに、第1層間絶縁物106を化学的機械的研磨法等で研磨して、ダミーゲート105a、ダミーゲート105b、ダミーゲート105cを露出させる。
【0073】
なお、P型ウェル103a、N型ウェル103b、N型不純物領域104a、N型不純物領域104b、P型不純物領域104c、P型不純物領域104d、ダミーゲート105a、ダミーゲート105bの存在する領域は、メモリセルを駆動するための回路(ドライバー回路)の領域を示し、P型ウェル103c、N型不純物領域104e、N型不純物領域104f、ダミーゲート105cの存在する領域は、メモリセルの領域を示す。
【0074】
また、N型不純物領域104a、N型不純物領域104bは、ドライバー回路のNチャネル型トランジスタのソース、ドレインとなり、P型不純物領域104c、P型不純物領域104dは、ドライバー回路のPチャネル型トランジスタのドレイン、ソースとなり、N型不純物領域104e、N型不純物領域104fは、メモリセルの読み出しトランジスタのソース、ドレインとなる。なお、N型不純物領域104eは、紙面の手前から奥行きの方向(すなわち、後述する書き込みワード線に平行な方向)に延在している。
【0075】
<図6(B)>
ダミーゲート105a、ダミーゲート105b、ダミーゲート105cを除去し、空孔107a、空孔107b、空孔107cを形成する。そして、メモリセルの領域にのみ、高仕事関数化合物半導体膜108を形成する。
【0076】
高仕事関数化合物半導体膜108の形成には、スパッタリング法、ALD法、CVD法(MOCVD法等)を用いることができる。特に、ゲート絶縁物の厚さが5nm以下の場合には、基板へのダメージの少ないALD法やCVD法を用いることが好ましい。
【0077】
高仕事関数化合物半導体膜108の厚さは5nm乃至100nmとすればよい。厚さ5nm未満では、仕事関数の影響が基板101表面に及ばず、また、厚さが100nmを超えると、高仕事関数化合物半導体膜108の抵抗が大きくなり、回路の特性に好ましくない。
【0078】
なお、高仕事関数化合物半導体膜108は、メモリセルの読み出しトランジスタのゲート絶縁物に接する部分にのみ存在すればよく、側面には存在する必要がない。したがって、空孔107cでの段差被覆性は特に問題とされない。
【0079】
また、上述のように、高仕事関数化合物半導体膜108では界面近傍の欠陥準位がドナーとなるため、界面から遠い部分ではドナー濃度が低下し、導電性が著しく悪化することがある。導電性を十分なものとするには、別にドナーをドーピングする必要がある。
【0080】
ところで、酸化インジウム亜鉛ガリウムのうち、組成式InGaZnOで表されるものは、YbFe構造と呼ばれる結晶構造を取ることが知られている(非特許文献1参照)。しかしながら、例えば、InGaZnOに5原子%以上の窒素が添加されるとウルツ鉱型構造が安定相となり、それにともなって電子状態も劇的に変化する。また、YbFe構造に比べるとウルツ鉱型構造は結晶化が容易であるため、比較的低温で結晶化する。
【0081】
電子状態に関しては、例えば、バンドギャップはYbFe構造のものが3.2電子ボルト程度であるが、ウルツ鉱型構造のものでは2.2電子ボルト以下となり、また、電子親和力も、前者が4.6電子ボルト程度のものが、後者では5.5電子ボルト以上となる。電子親和力が4.9電子ボルト以上となるため、欠陥準位によりN型の導電性を呈することとなる。なお、水素はドナーとして機能するため、水素を添加することによってもキャリア濃度を高めることもできる。
【0082】
なお、高仕事関数化合物半導体膜108は、窒素や亜鉛、錫、インジウム以外に酸素を窒素の2乃至5倍含有していると、ゲート絶縁物との界面でのトラップ準位の発生を抑制する上で好ましい。また、高仕事関数化合物半導体膜108は、水素を1原子%乃至10原子%含有していると、界面の状況が改善され、かつ、キャリアが増加して導電率が向上するため好ましい。高仕事関数化合物半導体膜108への水素の添加は成膜時以外に、ドーピング工程の終了後の水素化処理でもおこなえる。
【0083】
なお、酸化インジウム亜鉛ガリウム(In−Ga−Zn−O)の代わりに、二元系金属酸化物である、In−Sn−O、Sn−Zn−O、Al−Zn−O、In−Ga−Oや、三元系金属酸化物であるIn−Sn−Zn−O、In−Al−Zn−O、Sn−Ga−Zn−O、Al−Ga−Zn−O、Sn−Al−Zn−Oや、四元系金属酸化物であるIn−Sn−Ga−Zn−Oなどを用いてもよい。
【0084】
ここで、例えば、In−Ga−Zn−Oとは、インジウム(In)、ガリウム(Ga)、亜鉛(Zn)を有する酸化物という意味である。これらは窒素濃度が十分に低ければ(1原子%以下、好ましくは0.01原子%以下であれば)、後述する酸化物半導体としても用いることができる。
【0085】
<図6(C)>
図6(B)で示した方法と同様にPチャネル型トランジスタを形成する空孔107bには、適切な仕事関数を有する材料により形成された第1金属膜109を形成する。さらに、空孔107a、空孔107b、空孔107cに、Nチャネル型トランジスタに適切で、導電性の高い材料の膜を形成する。
【0086】
そして、表面を研磨して平坦化する。この結果、空孔107a、空孔107b、空孔107cに第2金属膜110a、第2金属膜110b、第2金属膜110cを埋め込むことができる。この際、空孔107b、空孔107cの側面と底面には、高仕事関数化合物半導体膜108や第1金属膜109が残る。さらに、第2層間絶縁物111を形成する。
【0087】
<図6(D)>
第2層間絶縁物111と、必要によっては第1層間絶縁物106をエッチングして、N型不純物領域104a、N型不純物領域104b、P型不純物領域104c、P型不純物領域104d、第2金属膜110c、N型不純物領域104fに達するコンタクトホールを形成する。
【0088】
そして、これらのコンタクトホールに第1コンタクトプラグ112a、第1コンタクトプラグ112b、第1コンタクトプラグ112c、第1コンタクトプラグ112d、第1コンタクトプラグ112e、第1コンタクトプラグ112fを形成する。
【0089】
<図7(A)>
第1層配線113a、第1層配線113b、第1層配線113c、第1層配線113d、第1層配線113eを形成し、これを第1埋め込み絶縁物114に埋め込んだ形状とする。なお、図に示されるように、第1層配線113bは、第1コンタクトプラグ112bと第1コンタクトプラグ112cを接続する。また、第1層配線113d、第1層配線113eは、メモリセルの書き込みトランジスタのソースとドレインとなる。
【0090】
なお、第1層配線113a、第1層配線113b、第1層配線113c、第1層配線113d、第1層配線113eと第1コンタクトプラグ112a、第1コンタクトプラグ112b、第1コンタクトプラグ112c、第1コンタクトプラグ112d、第1コンタクトプラグ112e、第1コンタクトプラグ112fの間に1層以上の別の配線やコンタクトプラグ等を有してもよい。
【0091】
<図7(B)>
半導体層115を形成し、これを覆って、ゲート絶縁物116を形成する。半導体層115には、厚さが5nm以下、好ましくは2nm以下のシリコンや、酸化物半導体を用いることもできる。この際、ゲート絶縁物116の物理的な厚さが、半導体層115の物理的な厚さの2倍以上あると、半導体層115をゲート絶縁物116で確実に覆うことができ、配線間ショートを防止できるので好ましい。
【0092】
一方、ゲート絶縁物の実効的な厚さ(例えば酸化シリコン換算の厚さ)は半導体層115の実効的な厚さの1倍以下であることが好ましい。したがって、ゲート絶縁物116には、その誘電率が半導体層115の誘電率の2倍の材料を用いることが好ましい。
【0093】
例えば、ゲート絶縁物116には、酸化ハフニウム、酸化タンタル、酸化ジルコニウム等の高誘電率材料を用いるとよい。なお、半導体層115として、酸化物半導体を用いる場合には、酸化バリウム、酸化ストロンチウム、酸化カルシウム、酸化リチウム等を用いることができる。これらは、シリコンとシリサイドを形成する材料であるため、シリコン半導体では使用することが避けられてきた材料である。しかし、酸化物半導体との間では問題が生じないこともあり、誘電率の高い材料であればゲート絶縁物116に用いることができる。
【0094】
なお、半導体層115に上記の厚さのシリコンを用いる場合には、オフ電流が比較的大きいので、適切な周期でデータの読み込みと再書き込み(リフレッシュ)をおこなうことが好ましい。また、半導体層115に酸化物半導体を用いる場合であっても、適切な周期でリフレッシュをおこなってもよい。
【0095】
さらに、第2層配線117a、第2層配線117b、第2層配線117cを形成する。ここで、第2層配線117aは読み出しワード線に、第2層配線117bは書き込みワード線に、第2層配線117cは隣のメモリセルの書き込みワード線である。
【0096】
<図7(C)>
第3層間絶縁物118、第2コンタクトプラグ119a、第2コンタクトプラグ119bを形成し、その上に第3層配線120、第4層間絶縁物121を形成する。第3層配線120はビット線である。このようにして半導体メモリ装置を作製できる。
【符号の説明】
【0097】
101 基板
102 素子分離絶縁物
103a P型ウェル
103b N型ウェル
103c P型ウェル
104a N型不純物領域
104b N型不純物領域
104c P型不純物領域
104d P型不純物領域
104e N型不純物領域
104f N型不純物領域
105a ダミーゲート
105b ダミーゲート
105c ダミーゲート
106 第1層間絶縁物
107a 空孔
107b 空孔
107c 空孔
108 高仕事関数化合物半導体膜
109 第1金属膜
110a 第2金属膜
110b 第2金属膜
110c 第2金属膜
111 第2層間絶縁物
112a 第1コンタクトプラグ
112b 第1コンタクトプラグ
112c 第1コンタクトプラグ
112d 第1コンタクトプラグ
112e 第1コンタクトプラグ
112f 第1コンタクトプラグ
113a 第1層配線
113b 第1層配線
113c 第1層配線
113d 第1層配線
113e 第1層配線
114 第1埋め込み絶縁物
115 半導体層
116 ゲート絶縁物
117a 第2層配線
117b 第2層配線
117c 第2層配線
118 第3層間絶縁物
119a 第2コンタクトプラグ
119b 第2コンタクトプラグ
120 第3層配線
121 第4層間絶縁物
BL ビット線
RWL 読み出しワード線
WWL 書き込みワード線
SL ソース線
WT 書き込みトランジスタ
RT 読み出しトランジスタ
SC 保持容量
SN 保持ノード
GE ゲート
GI ゲート絶縁物
CH チャネルの形成される領域
SR ソース
DR ドレイン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
書き込みワード線と、読み出しワード線と、ビット線と、ソース線と、書き込みトランジスタと、読み出しトランジスタと、キャパシタを有し、
前記書き込みトランジスタのソースと前記読み出しトランジスタのゲートと前記キャパシタの電極の一とが接続し、
前記書き込みトランジスタのゲートは前記書き込みワード線に接続し、
前記書き込みトランジスタのドレインと前記読み出しトランジスタのドレインは前記ビット線に接続し、
前記読み出しトランジスタのソースは前記ソース線に接続し、
前記読み出しトランジスタのしきい値の絶対値は、前記ビット線のデータ電位の変動幅よりも大きいことを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
書き込みワード線と、読み出しワード線と、ビット線と、
ソース線と、Nチャネル型の書き込みトランジスタと、読み出しトランジスタと、キャパシタを有し、
前記書き込みトランジスタのソースと前記読み出しトランジスタのゲートと前記キャパシタの電極の一とが接続し、
前記書き込みトランジスタのゲートは前記書き込みワード線に接続し、
前記書き込みトランジスタのドレインと前記読み出しトランジスタのドレインは前記ビット線に接続し、
前記読み出しトランジスタのソースは前記ソース線に接続し、
前記読み出しトランジスタのゲートには仕事関数が5.2電子ボルト以上の材料を用いることを特徴とする半導体装置。
【請求項3】
請求項1あるいは請求項2において、前記読み出しトランジスタのゲートにはインジウムあるいは亜鉛の少なくとも一つと窒素を有する化合物が用いられることを特徴とする半導体装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれかにおいて、前記ビット線の最低電位から前記書き込みワード線の最低電位を差し引いた値は0.5V以上であることを特徴とする半導体装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれかにおいて、前記書き込みトランジスタは酸化物半導体を用いて形成されることを特徴とする半導体装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれかにおいて、前記書き込みトランジスタはバンドギャップが2.5電子ボルト以上の半導体を用いて形成されることを特徴とする半導体装置。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれかにおいて、前記読み出しトランジスタは単結晶シリコンを用いて形成されることを特徴とする半導体装置。
【請求項8】
書き込みワード線と、読み出しワード線と、ビット線と、ソース線と、書き込みトランジスタと、読み出しトランジスタと、キャパシタを有し、
前記書き込みトランジスタのソースと前記読み出しトランジスタのゲートと前記キャパシタの電極の一とが接続し、
前記書き込みトランジスタのゲートは前記書き込みワード線に接続し、
前記書き込みトランジスタのドレインと前記読み出しトランジスタのドレインは前記ビット線に接続し、
前記読み出しトランジスタのソースは前記ソース線に接続する半導体装置において、
前記ビット線のデータ電位の変動幅を前記読み出しトランジスタのしきい値の絶対値よりも小さくすることを特徴とする半導体装置の駆動方法。
【請求項9】
請求項8において、前記ソース線の電位を固定することを特徴とする半導体装置の駆動方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−33951(P2013−33951A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−145472(P2012−145472)
【出願日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】