半導体装置および半導体装置の製造方法
【課題】基板を実装する際の温度負荷によって絶縁層と下地金属層の側面との接点領域に加わる応力を緩和させ、応力に起因した絶縁層のクラックの発生を抑えるように構成された半導体装置を提供する。
【解決手段】半導体基板101の一面101aに、絶縁層102、下地金属層103、金属端子が設けられるためのランド部104を順に積層してなる半導体装置109であって、ランド部104は、絶縁層102と対向する面の中央部において、下地金属層103と接合する接合領域と、絶縁層102と対向する面において、接合領域を除いた非接合領域と、を有し、下地金属層103は、ランド部104側から絶縁層102側にかけて外向きに傾斜した側面を有していること、を特徴とする半導体装置109。
【解決手段】半導体基板101の一面101aに、絶縁層102、下地金属層103、金属端子が設けられるためのランド部104を順に積層してなる半導体装置109であって、ランド部104は、絶縁層102と対向する面の中央部において、下地金属層103と接合する接合領域と、絶縁層102と対向する面において、接合領域を除いた非接合領域と、を有し、下地金属層103は、ランド部104側から絶縁層102側にかけて外向きに傾斜した側面を有していること、を特徴とする半導体装置109。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置および半導体装置の製造方法に係り、より詳細には、半導体基板の主面に積層された、絶縁層と下地金属層との間に加わる応力を低減させる、半導体装置および半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図14は、従来の構成による、半導体装置509の断面図である。半導体装置509は、半導体基板501の一方の主面501aに、絶縁層502と、下地金属層503と、外部との電気的接続部をなす金属端子が設けられるためのランド部504と、を順に積層し、絶縁層502、下地金属層503、ランド部504を覆い、かつランド部504の一部が露出するように開口部を有する配線保護層508を配し、開口部に金属端子(半田バンプ)507を載置してなる(特許文献1参照)。
【0003】
従来の構成によれば、下地金属層503はランド部504の中央域直下に設けられ、外周域直下には設けられない。すなわち、ランド部504の外周域は、下地金属層503により固定されていない。したがって、ランド部504は、半田バンプ507に加わる応力に追従して変形することにより、下層(下地金属層、絶縁層)に及ぶ応力の一部を緩和させる機能を有し、半導体パッケージ500としての接続信頼性を向上させる構成を備えている。
【0004】
ところで、従来の構成による半導体装置509は、半導体装置509をプリント基板に実装する際、または半導体装置509に半田バンプ507を形成する際の温度負荷により、ランド部504やランド部504の下層に応力が加わることが知られている。詳細には、図14の断面図において、半田バンプ507の側面とランド部504の表面との接点近傍と、下地金属層503の側面と絶縁層502の接点近傍とに応力が集中することが知られている。特に、下地金属層503の側面と絶縁層502との接点近傍に集中する応力は、半導体基板501の一方の主面501aに設けられるデバイス素子の直上を覆う絶縁層502に、クラックを発生させる。そして、このクラックが、半導体基板501の内部に形成されたデバイス素子領域に達して、デバイス素子が露出してしまうことが問題となっている。従来の構成では、下地金属層503の側面は、絶縁層502と直角をなしているため、下地金属層503の側面と絶縁層502の接点近傍に応力が最も強く加わり、この接点近傍を起点とした絶縁層502のクラックが発生しやすくなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−26301号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は以上のような点を考慮してなされたものであり、絶縁層と下地金属層の側面との接点近傍に加わる応力を緩和させ、応力に起因した絶縁層のクラックの発生を抑えることが可能な構成を備える半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の請求項1に係る半導体装置は、半導体基板の一面に、絶縁層、下地金属層、金属端子が設けられるためのランド部を順に積層してなる半導体装置であって、前記ランド部は、前記絶縁層と対向する面の中央部において、前記下地金属層と接合する接合領域と、前記絶縁層と対向する面において、前記接合領域を除いた非接合領域と、を有し、前記下地金属層は、前記ランド部側から前記絶縁層側にかけて外向きに傾斜した側面を有していること、を特徴とする。
【0008】
請求項1の構成によれば、下地金属層の側面が、ランド部から絶縁層にかけて外向きに傾斜している。そのため、ランド部に加わった応力が、絶縁層とランド部との間で分散され、前記下地金属層の側面と絶縁層との接点近傍に集中するのを防ぐことができる。したがって、前記下地金属層の側面近傍において、絶縁層のクラックの発生を抑えることができる。
【0009】
本発明の請求項2に係る半導体装置は、請求項1において、前記下地金属層の側面は、傾斜方向において平坦な形状であり、前記下地金属層の側面と前記絶縁層とがなす前記第一傾斜角度は30.0[°]以上66.9[°]以下である、ことを特徴とする。
【0010】
第一傾斜角度を30.0[°]以上とすることにより、下地金属層の側面が傾斜した形状は、薬液を用いたウェットエッチングを行って、実現することが可能な形状となる。また、第一傾斜角度を66.9[°]以下とすることにより、絶縁層とランド部との間における、ランド部に加わった応力の分散効果を高めることができ、下地金属層の側面近傍において、絶縁層のクラックの発生を確実に抑えることができる。
【0011】
本発明の請求項3に係る半導体装置は、請求項1または2において、前記ランド部は、第一金属層と第二金属層を順に積層した2層からなり、前記第二金属層の端部においては、前記第二金属層の直下に第一金属層が形成されていないことを特徴とする。
【0012】
請求項3の構成によれば、前記第二金属層の外周域においては、前記第二金属層の直下に第一金属層が形成されていない。すなわち、第二金属層の外周域は、第一金属層によって固定されていない。したがって、第二金属層は、加わる応力に追従して変形することにより、下地金属層に及ぶ応力の一部を緩和させることができる。したがって、絶縁層と下地金属層の側面との接点領域において、絶縁層にクラックが発生するのを抑えることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る半導体装置の構成によれば、下地金属層の端部の形状が、ランド部側から絶縁層側に向けて、外向きに傾斜している。そのため、ランド部から下地金属層へ伝わる応力が、絶縁層とランド部との間で分散され、絶縁層と下地金属層の側面との接点近傍に集中するのを防ぐことができる。これにより、絶縁層と下地金属層の側面との接点近傍に加わる応力に起因する絶縁層のクラックを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】(a)第一実施形態に係る半導体装置の断面図である。(b)第一実施形態に係る、配線保護層を備えた半導体装置の断面図である。
【図2】第一実施形態に係る半導体装置を備えた、半導体パッケージの断面図である。
【図3】(a)〜(c)半導体装置を構成する下地金属層の端部近傍の領域を拡大した図である。(d)〜(f)下地金属層の側面と絶縁層とのなす角について、説明する図である。
【図4】下地金属層側面のテーパー角と、絶縁層に加わる応力との関係を示すグラフである。
【図5】下地金属層側面のテーパー角と、絶縁層の耐久温度との関係を示した図である。
【図6】(a)〜(c)第一実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す工程図である。
【図7】(a)〜(c)第一実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す工程図である。
【図8】(a)第二実施形態に係る半導体装置の断面図である。(b)第二実施形態に係る、配線保護層を備えた半導体装置の断面図である。
【図9】(a)第二実施形態に係る半導体装置を備えた、半導体パッケージの断面図である。(b)半導体装置を構成する下地金属層の端部近傍を拡大した図である。
【図10】(a)〜(c)第二実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す工程図である。
【図11】(a)〜(c)第二実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す工程図である。
【図12】(a)〜(c)第二実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す工程図である。
【図13】第三実施形態に係る半導体装置の断面図である。
【図14】従来の半導体装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、好適な実施形態に基づき、図面を参照して本発明を説明する。
【0016】
<第一実施形態>
【0017】
図1(a)は、本発明の第一実施形態に係る半導体装置109の断面図である。半導体装置109は、半導体基板101の一方の主面(一面)101aに、絶縁層102と、下地金属層103と、配線層の一部であって、外部との電気的接続部をなす金属端子が設けられるためのランド部104と、を順に積層し、ランド部104に金属端子(半田バンプ)107を載置してなる。
【0018】
なお、図1(b)示すように、半導体装置109は、絶縁層102、下地金属層103、ランド部104を覆い、かつランド部104の一部が露出するように開口部を有する配線保護層108を配し、その開口部に半田バンプ107を載置してもよい。配線保護層108を配することにより、配線層が外部に露出しない構造となる。そのため、配線層が外部から電気的、機械的なダメージを受けるのを防ぐことができる。したがって、半導体装置としての動作の信頼性を高めることができる。
【0019】
半導体基板101は、シリコン等で構成される半導体ウェハでもよく、半導体ウェハをチップ寸法に切断(ダイシング)した半導体チップであってもよい。
【0020】
絶縁層102は、パッシベーション膜からなる単層膜、またはパッシベーション膜と樹脂層を積層してなる複層膜である。パッシベーション膜としては、例えば、SiO2、SiN等により形成したものが用いられる。樹脂層としては、例えば、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、PBO、BCB、ポリイミド樹脂等により形成したものが用いられる。
【0021】
下地金属層103は、ランド部104に含まれる金属元素が絶縁層102に拡散するのを防ぐバリア膜であり、スパッタ、CVD等により形成される。下地金属層103の厚さは、0.1〜2[μm]程度であることが望ましい。下地金属層103を構成する材料としては、例えば、Ti、TiN、TaN、Cr、Ni、TiW等が挙げられる。
【0022】
ランド部104は、例えば、Al、Cu、Cr、Ti、Au、Si等の導電性を有する金属により構成され、半導体基板101が備えた半導体素子や集積回路を、半田バンプ107を介して外部端子(回路)と電気的に接続する端子をなす。ランド部104は、電解めっき、無電解めっき等により形成され、厚さは、5〜20[μm]程度であることが望ましい。
【0023】
半田バンプ107を構成する材料としては、電気抵抗が低く、配線層との接合が容易であり、機械的特性に優れていることが望ましく、例えば、錫、銀、銅、金、鉛、ビスマス、亜鉛、アルミニウムのうち、少なくとも2種類を含むはんだが好適である。
【0024】
図2は、図1(a)の半導体装置109を実装した、半導体パッケージ100の断面図である。半導体装置109とプリント基板105とは、半田バンプ107およびプリント基板の一方の主面105aに配された配線部106を介して、電気的に接続されている。
【0025】
図3(a)は、図2に示した下地金属層103およびランド部104の端部近傍の領域Aを、拡大した図である。図3(d)は、図3(a)に示した領域Aのうち、下地金属層103の端部Bのみを拡大した図である。ランド部104は、絶縁層102と対向する面の中央部において、下地金属層103と接合する接合領域と、絶縁層102と対向する面において、接合領域を除いた非接合領域とを有する。この非接合領域の直下において、下地金属層103の側面の断面に相当する直線S1aは、ランド部104側から絶縁層102側に向けて、外向きに傾斜している。下地金属層103の側面は、絶縁層102と第一傾斜角度(テーパー角度)θ1aをなし、θ1aの角度で絶縁層102と接している。ランド部104と絶縁層102とで挟まれた、接合領域の直下の領域には、厚さt1の下地金属層103が配されている。そして、ランド部104と下地金属層103の側面とで挟まれた、非接合領域直下の領域Daには、下地金属層103は配されていない。
【0026】
なお、下地金属層103の側面は、図3(a)に示すように、その傾斜方向において平坦な形状でなくてもよい。すなわち、下地金属層103の側面は、その傾斜方向において、内向きに凸となるように反っていてもよいし、外向きに凸となるように反っていてもよい。
【0027】
図3(b)は、下地金属層103の側面が、その傾斜方向において、内向きに凸となるように反っている場合について、図2に示した下地金属層103およびランド部104の端部近傍の領域Aを、拡大した図である。図3(e)は、図3(b)に示した領域Aのうち、下地金属層103の端部Bのみを拡大した図である。図3(d)と同様に、ランド部104と下地金属層103の側面とで挟まれた、非接合領域直下の領域Dbには、下地金属層103は配されていない。下地金属層103の側面の断面に相当する曲線S1bは、図3(a)に示した直線S1aに対して、内向きに凹む形状となっている。この場合の第一傾斜角度θ1bは、絶縁層102の表面と、曲線S1bの絶縁層102側の端部における接線T1bとのなす角度として定義される。
【0028】
図3(c)は、下地金属層103の側面が、その傾斜方向において、外向きに凸となるように反っている場合について、図2に示した下地金属層103およびランド部104の端部近傍の領域Aを、拡大した図である。図3(f)は、図3(c)に示した領域Aのうち、下地金属層103の端部Bのみを拡大した図である。図3(d)と同様に、ランド部104と下地金属層103の側面とで挟まれた、非接合領域直下の領域Dcには、下地金属層103は配されていない。下地金属層103の側面の断面に相当する曲線S1cは、図3(a)に示した直線S1aに対して、外向きに膨らむ形状となっている。この場合の第一傾斜角度θ1cは、絶縁層102の表面と、曲線S1cの絶縁層102側の端部における接線とのなす角度として定義される。
【0029】
図4は、シミュレーションにより得られた実験結果であり、本願発明の半導体装置を半田リフロー等のように熱処理を加えた場合において、図3(a)に示した第一傾斜角度θ1aに対応して、絶縁層102と下地金属層103の側面との接点近傍に生じる応力の変化を示すグラフである。横軸は、第一傾斜角度(テーパー角度)θ1a[°]を示している。縦軸は、θ1a=90とした場合(従来構造)を基準とした、θ1a<90とした場合における、絶縁層102と下地金属層103の側面との接点近傍に生じる応力の比を示している。
【0030】
図4のグラフに示されるように、絶縁層102と下地金属層103の側面との接点近傍に生じる応力は、第一傾斜角度θ1aと比例関係にあり、第一傾斜角度θ1aを小さくするほど、減少する傾向にある。そして、第一傾斜角度θ1aは、少なくとも20〜90[°]の場合においては、応力と一次の比例関係にあることが分かる。第一傾斜角度θ1aを小さくするほど、絶縁層102と下地金属層103の側面との接点近傍との間に生じる応力を小さくでき、応力に起因した絶縁層102のクラックの発生を抑える効果が高められる。
【0031】
表1は、本発明の半導体装置109に半田リフローによる加熱処理(260[℃])を行い、様々な第一傾斜角度θ1aのサンプルを作製し、作製したサンプルにおいて、下地金属層103の側面が傾斜した形状の実現可否、および絶縁層102におけるクラック発生の有無について、調べた結果をまとめたものである。
サンプルとして用いた半導体装置109では、絶縁層102に厚さ1[μm]のSiO2膜を、下地金属層103に厚さ0.3[μm]のTi膜を、ランド部104に厚さ10[μm]のCuを、それぞれ採用した。そして、ランド部104の上には半田バンプ107を形成した。下地金属層103の側面が傾斜した形状は、薬液を用いたウェットエッチングを行って形成した。
【0032】
【表1】
【0033】
表1に示されているように、第一傾斜角度θ1aが30.0[°]以上であるサンプルにおいて、下地金属層103の側面が傾斜した形状を実現することができている。
また、第一傾斜角度θ1aが66.9[°]以下であるサンプルにおいては、絶縁層102のクラック不良が発生していない。
第一傾斜角度を66.9[°]以下とした場合、絶縁層102とランド部104との間における、ランド部104に加わった応力の分散効果が高まり、下地金属層103の側面近傍において、絶縁層102のクラックの発生が確実に抑えられている。
したがって、本発明に係る半導体装置109を構成する第一傾斜角度θ1aとしては、30.0[°]以上66.9[°]以下の範囲にあることが望ましい。
【0034】
図5は、絶縁層102と下地金属層103の側面との接点近傍において、絶縁層102のクラック発生を抑えて熱処理できる最大の温度(以下、耐久温度という)と、第一傾斜角度θ1aとの関係を示す3つのグラフからなる。横軸は第一傾斜角度θ1a[°]を示し、縦軸は、耐久温度[℃]を示している。
【0035】
図5の3つのグラフは、下地金属層103の厚さt1を、それぞれ0.12[μm]、0.34[μm]、0.58[μm]とした場合に対応する。3つのグラフがそれぞれ示すように、耐久温度は、第一傾斜角度θ1aと比例関係にあり、第一傾斜角度θ1aを小さくするほど、上昇する傾向にある。そして、下地金属層103が厚いほど、グラフの傾きが急峻になり、第一傾斜角度θ1aを小さくすることによる耐久温度を上昇させる効果が高まる。
【0036】
なお、下地金属層103の厚さt1を0.1[μm]以上とすると、ランド部104を構成する金属原子が拡散する距離を上回る。したがって、ランド部104から拡散した金属原子が、下地金属層103を通り抜けて絶縁層102に到達するのを防ぎ、絶縁層102が金属原子によって汚染されることを防止できる。そして、下地金属層103を厚くするほど、第一傾斜角度θ1aを小さく形成しやすくなる。また、下地金属層103の厚さt1を2[μm]以下とすると、下地金属層103自身がもつ内部応力を小さくすることができる。そして、下地金属層103の内部応力により絶縁層102がダメージをうけることを防ぐことができる。したがって、下地金属層の厚さt1としては、0.1[μm]以上2[μm]以下の範囲にあることが望ましい。
【0037】
基板を実装する際には、半田バンプ107の形成および半田バンプ107の根元を補強する樹脂形成にともなって、高温の熱処理が必要となる。鉛を含まない半田バンプを形成する場合、一般に260[℃]以下の熱処理が行われるため、図4のグラフから、少なくとも、第一傾斜角度θ1aを50[°]以下とし、下地金属層の厚さt1は0.34[μm]以上とすればよい。また、鉛を含む半田バンプを形成する場合、一般に220[℃]以下の熱処理が行われるため、図5のグラフから、少なくとも、下地金属層の厚さt1は0.34[μm]以上とすればよい。また、半田バンプの根元に樹脂を形成する場合、170[℃]以下の熱処理が行われるため、図5のグラフから、少なくとも、下地金属層の厚さt1は0.12[μm]以上とすればよい。
【0038】
第一実施形態に係る半導体装置109の構成によれば、下地金属層103の端部の形状が、ランド部104側から絶縁層102側に向けて、外向きに傾斜している。そのため、ランド部から下地金属層へ伝わる応力が、絶縁層102とランド部104との間で分散され、絶縁層102と下地金属層103の側面との接点近傍に集中するのを防ぐことができる。これにより、絶縁層102と下地金属層103の側面との接点近傍に加わる応力に起因する絶縁層102のクラックを抑えることができる。
【0039】
[製造方法1−1]
第一実施形態に係る半導体装置109の製造方法1−1について、図6(a)〜(c)、図7(a)〜(c)に示す工程図を用いて説明する。
【0040】
まず、図6(a)に示すように、半導体基板101の一方の主面101aに、CVD、熱酸化等により、パッシベーション膜102aと樹脂層102bからなる絶縁層102を形成する。次に、図6(b)に示すように、絶縁層102上に、スパッタ、CVD等により、下地金属層103を形成する。次に、図6(c)に示すように、下地金属層103上に、スパッタ、CVD等により、ランド部104を形成する。
【0041】
次に、図7(a)に示すように、下地金属層103の外周域の一部を、ランド部104をマスクとしてエッチングする。下地金属層103のエッチング液としては、例えばアンモニア過水を用いることができる。このエッチング処理の条件を制御することによって、側面が傾斜した下地金属層103を形成することができる。例えば、エッチングの時間を長くするほど下地金属層103の側面の傾斜角は大きくなり、エッチング時間を短くするほど下地金属層103の側面の傾斜角は小さくなる傾向がある。
【0042】
次に、図7(b)に示すように、絶縁層102、下地金属層103、ランド部104を覆い、かつランド部104の一部が露出するように開口部108aを有する配線保護層108を形成する。配線保護層108は、樹脂(シリコーン樹脂,エポキシ樹脂、PBO、BCB、ポリイミド樹脂等)で構成され、スピンコート、印刷法等により形成することができる。
【0043】
そして、図7(c)に示すように、開口部108aに半田バンプ107を形成することにより、第一実施形態に係る半導体装置109が得られる。
【0044】
第一実施形態に係る半導体装置109の製造方法1−1では、下地金属層103の端部の除去を、ランド部104を積層した後に行う。これにより、ランド部104の外周域が、下地金属層103に支持されていない構造、すなわちランド部104側から絶縁層102側に向けて、外向きに傾斜した構造を実現することができる。そして、基板を実装する際に、温度負荷によって絶縁層102と下地金属層103の側面との接点近傍に加わる応力を緩和させ、応力に起因したクラックの発生を抑えることが可能な、半導体装置109の製造方法を提供することができる。
【0045】
なお、製造方法1−1によれば、図1(b)に示した半導体装置109を製造することができるが、配線保護層108の形成(図7(b))を行わない場合には、図1(a)に示した半導体装置109を製造することができる。
【0046】
<第二実施形態>
図8(a)は、本発明の第二実施形態に係る半導体装置209の断面図である。半導体装置209は、半導体基板201の一方の主面201aに、絶縁層202と、下地金属層203と、配線層の一部であって、外部との電気的接続部をなす金属端子が設けられるためのランド部204と、を順に積層し、ランド部204に金属端子(半田バンプ)207を載置してなる。
【0047】
なお、図8(b)示すように、半導体装置209は、絶縁層202、下地金属層203、ランド部204を覆い、かつランド部204の一部が露出するように開口部を有する配線保護層208を配し、その開口部に半田バンプ207を載置してもよい。配線保護層208を配することにより、配線層が外部に露出しない構造となる。そのため、配線層が外部から電気的、機械的なダメージを受けるのを防ぐことができる。したがって、半導体装置としての動作の信頼性を高めることができる。
【0048】
第二実施形態では、ランド部204は、めっき給電用のシード層をなす第一金属層204aと、めっき層をなす第二金属層204bとを順に積層した2層からなり、第一金属層204aのみが下地金属層203と接触している。そして、第二金属層204bの端部においては、直下に第一金属層204aが形成されていない。ランド部204以外の構成は、第一実施形態の構成と同様である。
【0049】
第一金属層204aは、スパッタ、CVD等により形成され、その厚さt2は、0.1〜2[μm]程度であることが望ましい。第一金属層204aを構成する材料としては、例えば、Cuが挙げられる。
【0050】
第二金属層204bは、例えば、Al、Cu、Cr、Ti、Au、Si等の導電性を有する金属により構成され、半導体基板201が備えた半導体素子や集積回路を、半田バンプ207を介して外部端子(回路)と電気的に接続する端子をなす。第二金属層204bは、電解めっき、無電解めっき等により形成され、厚さは、5〜20[μm]程度であることが望ましい。
【0051】
図9(a)は、図8(a)の半導体装置209を実装した、半導体パッケージ200の断面図である。半導体装置209とプリント基板205とは、半田バンプ207およびプリント基板の一方の主面205aに配された配線部206を介して、電気的に接続されている。
【0052】
図9(b)は、図9(a)に示した第一金属層204aおよび第二金属層204bの端部近傍の領域Cを、拡大した図である。
【0053】
第一金属層204aは、絶縁層202と対向する面の中央部において、下地金属層203と接合する接合領域と、絶縁層202と対向する面において、接合領域を除いた非接合領域とを有する。この非接合領域の直下において、下地金属層203の側面の断面に相当する直線S2は、第一金属層204a側から絶縁層202側に向けて、外向きに傾斜している。直線S2は、絶縁層202と第一傾斜角度(テーパー角度)θ2をなしている。第一金属層204aと絶縁層202とで挟まれた、接合領域の直下の領域には、厚さt3の下地金属層203が配されている。そして、第一金属層204aと下地金属層203の側面とで挟まれた、非接合領域直下の領域には、下地金属層203は配されていない。なお、下地金属層203の側面は、その傾斜方向において平坦な形状でなくてもよい。すなわち、下地金属層203の側面は、その傾斜方向において、内向きに凸となるように反っていてもよいし、外向きに凸となるように反っていてもよい。
【0054】
第二金属層204bは、絶縁層202と対向する面の中央部において、第一金属層204aと接合する接合領域と、絶縁層202と対向する面において、接合領域を除いた非接合領域とを有する。この非接合領域の直下において、第一金属層204aの側面の断面に相当する直線は、第二金属層204b側から絶縁層202側に向けて、外向きに傾斜している。第二金属層204bと下地金属層203とで挟まれた、接合領域の直下の領域には、厚さt4の第一金属層204aが配されている。そして、第二金属層204bと下地金属層203の側面とで挟まれた、非接合領域直下の領域には、下地金属層203は配されていない。なお、第一金属層204aの側面は、その傾斜方向において平坦な形状でなくてもよい。すなわち、第一金属層204aの側面は、その傾斜方向において、内向きに凸となるように反っていてもよいし、外向きに凸となるように反っていてもよい。
【0055】
第二実施形態に係る半導体装置209の構成によれば、下地金属層203の端部の形状が、ランド部204側から絶縁層202側に向けて、外向きに傾斜している。そのため、ランド部204から下地金属層203へ伝わる応力が、絶縁層202とランド部204との間で分散され、絶縁層202と下地金属層203の側面との接点領域に集中するのを防ぐことができる。これにより、絶縁層202と下地金属層203の側面との接点領域に加わる応力に起因する絶縁層202のクラックを抑えることができる。
【0056】
また、第二実施形態の構成では、ランド部204が2つの層204a、204bからなる。したがって、基板を実装した際に、ランド部204が1つの層からなる場合に比べて、プリント基板205側から絶縁層202に向けて生じる応力が緩和される。これにより、基板を実装する際の温度負荷による、絶縁層202とランド部204との間でのクラックの発生を抑えることができる。
【0057】
[製造方法2−1]
第二実施形態に係る半導体装置209の製造方法2−1について、図10(a)〜(c)、図11(a)〜(c)、図12(a)〜(c)に示す工程図を用いて説明する。
【0058】
まず、図10(a)に示すように、半導体基板201の一方の主面201aに、パッシベーション膜202aと樹脂層202bからなる絶縁層202を形成する。次に、図10(b)に示すように、絶縁層202上に、スパッタまたはCVDにより、下地金属層203を形成する。次に、図10(c)に示すように、下地金属層203の上に、スパッタまたはCVDにより、第一金属層204aを形成する。
【0059】
次に、図11(a)に示すように、第一金属層204a上にレジストRを載置する。そして、載置されたレジストRのうち、第二金属層204bが形成される領域にある部分を露光して除去する。露光は、露光された部分を除去した後に、レジストRの側面のうち、第一金属層204aと接する部位Raが裾状をなすように行う。
【0060】
ここでの露光方法について説明する。使用するレジストがネガ型である場合には、露光して除去する領域をマスクで覆い、光源から平行に照射する光の一部を、マスクの下に回り込ませる。これにより、マスク直下の領域のうち、回り込んだ光が通過する領域が露光されるため、図11(a)に示すような、第一金属層204aと接する部位が裾状をなすようなレジストRを形成することができる。
【0061】
一方、使用するレジストがポジ型である場合には、露光して除去しない領域をマスクで覆い、光源から光を平行に照射する。このとき、光源の位置をレジストRから遠ざけることにより第一金属層204a近傍に光が届きにくくする。これにより、マスクの近傍を通過する光の一部は散乱により失われるため、マスクに覆われていない領域のうち、端部が露光されない。したがって、図11(a)に示すような、第一金属層204aと接する部位が裾状をなすようなレジストRを形成することができる。
【0062】
次に、図11(b)に示すように、露光された領域のレジストRを除去した領域に、第二金属層204bを形成する。次に、図11(c)に示すように、載置されたレジストを全て除去する。
【0063】
次に、図12(a)に示すように、レジストRと、第一金属層204aおよび第二金属層204bの側面のうち両者が接して重なる部位と、下地金属層203のうち第一金属層204aを支持していない部位と、を順に除去する。第一金属層204aの除去は、ジャストエッチングにより行うことが望ましい。
【0064】
次に、図12(b)に示すように、絶縁層202、下地金属層203、第一金属層204a、第二金属層204bを覆い、かつ第二金属層204bの一部が露出するように開口部208aを有する配線保護層208を形成する。
【0065】
次に、図12(c)に示すように、開口部208aに半田バンプ207を形成することにより、第二実施形態に係る半導体装置209が得られる。
【0066】
また、第二実施形態に係る半導体装置209の製造方法2−1により形成される第二金属層204bは、その端部が、実装面側から第一金属層204a側に向けて内向きに傾斜した形状となり、第一金属層204aの外周域において、第二金属層204b側の表面が露出した状態となる。これにより、第一金属層204aの外周域の一部を除去する際のエッチング処理を、第一金属層204aの側面からだけでなく、第二金属層204b側の表面からも行うことができる。したがって、エッチングの進行を制御しやすくなり、第一金属層204aの側面を、第二金属層204b側から絶縁層202側に向けて、外向きに傾斜した形状に加工するのが容易になる。そして、配線層をめっきにて形成し、基板を実装した際に、温度負荷によって絶縁層202と下地金属層203の側面との接点領域に加わる応力を緩和させ、応力に起因した絶縁層202のクラックの発生を抑えることが可能な、半導体装置の製造方法を提供することができる。
【0067】
なお、製造方法2−1によれば、図8(b)に示した半導体装置209を製造することができるが、配線保護層208の形成(図12(b))を行わない場合には、図8(a)に示した半導体装置209を製造することができる。
【0068】
<第三実施形態>
図13は、本発明の第三実施形態に係る半導体装置309の断面図である。半導体装置309は、少なくとも、半導体基板301の一方の主面301aに、絶縁層302、下地金属層303a、下地金属層303b、下地金属層303c、下地金属層303d、下地金属層303e、配線層の一部であって、外部との電気的接続部をなす金属端子が設けられるためのランド部304を順に積層し、ランド部304に金属端子(半田バンプ)307を載置してなる。
【0069】
そして、図13に示すように、半導体装置309は、絶縁層302、下地金属層303a、下地金属層303b、下地金属層303c、下地金属層303d、下地金属層303e、ランド部304を覆い、かつランド部304の一部が露出するように開口部を有する配線保護層308を配し、その開口部に半田バンプ307を載置してもよい。
【0070】
第三実施形態に係る半導体装置は、五つの下地金属層303a、303b、303c、303d、303eを備えており、各下地金属層の端部が、ランド部304側から絶縁層302側に向けて外向きに傾斜した形状をなしている。その他の構成は、第一実施形態の構成と同様である。
【0071】
第三実施形態の構成によれば、基板を実装する際の温度負荷による応力は、絶縁層とランド部との間で複数層に分散され、絶縁層と下地金属層の側面との接点領域に集中するのを防ぐことができる。したがって、絶縁層と下地金属層の側面との接点領域に加わる応力に起因する絶縁層のクラックを抑えることができる。
【0072】
また、第三実施形態においては、五つの下地金属層が備えられた例を示したが、下地金属層の総数が限定されることはない。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明は、例えば携帯電話やデジタルカメラ、ノートパソコン等、小型で高密度な電子部品を必要とする電子装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0074】
101・・・半導体基板、101a・・・一面、102・・・絶縁層、
103・・・下地金属層、104・・・ランド部、204a・・・第一金属層、
204b・・・第二金属層、109、209・・・半導体装置、
204a・・・第一金属層、204b・・・第二金属層、Da・・・領域、
S1a・・・直線、S1b、S1c・・・曲線、
θ1a、θ1b、θ1c・・・第一傾斜角度。
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置および半導体装置の製造方法に係り、より詳細には、半導体基板の主面に積層された、絶縁層と下地金属層との間に加わる応力を低減させる、半導体装置および半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図14は、従来の構成による、半導体装置509の断面図である。半導体装置509は、半導体基板501の一方の主面501aに、絶縁層502と、下地金属層503と、外部との電気的接続部をなす金属端子が設けられるためのランド部504と、を順に積層し、絶縁層502、下地金属層503、ランド部504を覆い、かつランド部504の一部が露出するように開口部を有する配線保護層508を配し、開口部に金属端子(半田バンプ)507を載置してなる(特許文献1参照)。
【0003】
従来の構成によれば、下地金属層503はランド部504の中央域直下に設けられ、外周域直下には設けられない。すなわち、ランド部504の外周域は、下地金属層503により固定されていない。したがって、ランド部504は、半田バンプ507に加わる応力に追従して変形することにより、下層(下地金属層、絶縁層)に及ぶ応力の一部を緩和させる機能を有し、半導体パッケージ500としての接続信頼性を向上させる構成を備えている。
【0004】
ところで、従来の構成による半導体装置509は、半導体装置509をプリント基板に実装する際、または半導体装置509に半田バンプ507を形成する際の温度負荷により、ランド部504やランド部504の下層に応力が加わることが知られている。詳細には、図14の断面図において、半田バンプ507の側面とランド部504の表面との接点近傍と、下地金属層503の側面と絶縁層502の接点近傍とに応力が集中することが知られている。特に、下地金属層503の側面と絶縁層502との接点近傍に集中する応力は、半導体基板501の一方の主面501aに設けられるデバイス素子の直上を覆う絶縁層502に、クラックを発生させる。そして、このクラックが、半導体基板501の内部に形成されたデバイス素子領域に達して、デバイス素子が露出してしまうことが問題となっている。従来の構成では、下地金属層503の側面は、絶縁層502と直角をなしているため、下地金属層503の側面と絶縁層502の接点近傍に応力が最も強く加わり、この接点近傍を起点とした絶縁層502のクラックが発生しやすくなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−26301号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は以上のような点を考慮してなされたものであり、絶縁層と下地金属層の側面との接点近傍に加わる応力を緩和させ、応力に起因した絶縁層のクラックの発生を抑えることが可能な構成を備える半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の請求項1に係る半導体装置は、半導体基板の一面に、絶縁層、下地金属層、金属端子が設けられるためのランド部を順に積層してなる半導体装置であって、前記ランド部は、前記絶縁層と対向する面の中央部において、前記下地金属層と接合する接合領域と、前記絶縁層と対向する面において、前記接合領域を除いた非接合領域と、を有し、前記下地金属層は、前記ランド部側から前記絶縁層側にかけて外向きに傾斜した側面を有していること、を特徴とする。
【0008】
請求項1の構成によれば、下地金属層の側面が、ランド部から絶縁層にかけて外向きに傾斜している。そのため、ランド部に加わった応力が、絶縁層とランド部との間で分散され、前記下地金属層の側面と絶縁層との接点近傍に集中するのを防ぐことができる。したがって、前記下地金属層の側面近傍において、絶縁層のクラックの発生を抑えることができる。
【0009】
本発明の請求項2に係る半導体装置は、請求項1において、前記下地金属層の側面は、傾斜方向において平坦な形状であり、前記下地金属層の側面と前記絶縁層とがなす前記第一傾斜角度は30.0[°]以上66.9[°]以下である、ことを特徴とする。
【0010】
第一傾斜角度を30.0[°]以上とすることにより、下地金属層の側面が傾斜した形状は、薬液を用いたウェットエッチングを行って、実現することが可能な形状となる。また、第一傾斜角度を66.9[°]以下とすることにより、絶縁層とランド部との間における、ランド部に加わった応力の分散効果を高めることができ、下地金属層の側面近傍において、絶縁層のクラックの発生を確実に抑えることができる。
【0011】
本発明の請求項3に係る半導体装置は、請求項1または2において、前記ランド部は、第一金属層と第二金属層を順に積層した2層からなり、前記第二金属層の端部においては、前記第二金属層の直下に第一金属層が形成されていないことを特徴とする。
【0012】
請求項3の構成によれば、前記第二金属層の外周域においては、前記第二金属層の直下に第一金属層が形成されていない。すなわち、第二金属層の外周域は、第一金属層によって固定されていない。したがって、第二金属層は、加わる応力に追従して変形することにより、下地金属層に及ぶ応力の一部を緩和させることができる。したがって、絶縁層と下地金属層の側面との接点領域において、絶縁層にクラックが発生するのを抑えることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る半導体装置の構成によれば、下地金属層の端部の形状が、ランド部側から絶縁層側に向けて、外向きに傾斜している。そのため、ランド部から下地金属層へ伝わる応力が、絶縁層とランド部との間で分散され、絶縁層と下地金属層の側面との接点近傍に集中するのを防ぐことができる。これにより、絶縁層と下地金属層の側面との接点近傍に加わる応力に起因する絶縁層のクラックを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】(a)第一実施形態に係る半導体装置の断面図である。(b)第一実施形態に係る、配線保護層を備えた半導体装置の断面図である。
【図2】第一実施形態に係る半導体装置を備えた、半導体パッケージの断面図である。
【図3】(a)〜(c)半導体装置を構成する下地金属層の端部近傍の領域を拡大した図である。(d)〜(f)下地金属層の側面と絶縁層とのなす角について、説明する図である。
【図4】下地金属層側面のテーパー角と、絶縁層に加わる応力との関係を示すグラフである。
【図5】下地金属層側面のテーパー角と、絶縁層の耐久温度との関係を示した図である。
【図6】(a)〜(c)第一実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す工程図である。
【図7】(a)〜(c)第一実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す工程図である。
【図8】(a)第二実施形態に係る半導体装置の断面図である。(b)第二実施形態に係る、配線保護層を備えた半導体装置の断面図である。
【図9】(a)第二実施形態に係る半導体装置を備えた、半導体パッケージの断面図である。(b)半導体装置を構成する下地金属層の端部近傍を拡大した図である。
【図10】(a)〜(c)第二実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す工程図である。
【図11】(a)〜(c)第二実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す工程図である。
【図12】(a)〜(c)第二実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す工程図である。
【図13】第三実施形態に係る半導体装置の断面図である。
【図14】従来の半導体装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、好適な実施形態に基づき、図面を参照して本発明を説明する。
【0016】
<第一実施形態>
【0017】
図1(a)は、本発明の第一実施形態に係る半導体装置109の断面図である。半導体装置109は、半導体基板101の一方の主面(一面)101aに、絶縁層102と、下地金属層103と、配線層の一部であって、外部との電気的接続部をなす金属端子が設けられるためのランド部104と、を順に積層し、ランド部104に金属端子(半田バンプ)107を載置してなる。
【0018】
なお、図1(b)示すように、半導体装置109は、絶縁層102、下地金属層103、ランド部104を覆い、かつランド部104の一部が露出するように開口部を有する配線保護層108を配し、その開口部に半田バンプ107を載置してもよい。配線保護層108を配することにより、配線層が外部に露出しない構造となる。そのため、配線層が外部から電気的、機械的なダメージを受けるのを防ぐことができる。したがって、半導体装置としての動作の信頼性を高めることができる。
【0019】
半導体基板101は、シリコン等で構成される半導体ウェハでもよく、半導体ウェハをチップ寸法に切断(ダイシング)した半導体チップであってもよい。
【0020】
絶縁層102は、パッシベーション膜からなる単層膜、またはパッシベーション膜と樹脂層を積層してなる複層膜である。パッシベーション膜としては、例えば、SiO2、SiN等により形成したものが用いられる。樹脂層としては、例えば、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、PBO、BCB、ポリイミド樹脂等により形成したものが用いられる。
【0021】
下地金属層103は、ランド部104に含まれる金属元素が絶縁層102に拡散するのを防ぐバリア膜であり、スパッタ、CVD等により形成される。下地金属層103の厚さは、0.1〜2[μm]程度であることが望ましい。下地金属層103を構成する材料としては、例えば、Ti、TiN、TaN、Cr、Ni、TiW等が挙げられる。
【0022】
ランド部104は、例えば、Al、Cu、Cr、Ti、Au、Si等の導電性を有する金属により構成され、半導体基板101が備えた半導体素子や集積回路を、半田バンプ107を介して外部端子(回路)と電気的に接続する端子をなす。ランド部104は、電解めっき、無電解めっき等により形成され、厚さは、5〜20[μm]程度であることが望ましい。
【0023】
半田バンプ107を構成する材料としては、電気抵抗が低く、配線層との接合が容易であり、機械的特性に優れていることが望ましく、例えば、錫、銀、銅、金、鉛、ビスマス、亜鉛、アルミニウムのうち、少なくとも2種類を含むはんだが好適である。
【0024】
図2は、図1(a)の半導体装置109を実装した、半導体パッケージ100の断面図である。半導体装置109とプリント基板105とは、半田バンプ107およびプリント基板の一方の主面105aに配された配線部106を介して、電気的に接続されている。
【0025】
図3(a)は、図2に示した下地金属層103およびランド部104の端部近傍の領域Aを、拡大した図である。図3(d)は、図3(a)に示した領域Aのうち、下地金属層103の端部Bのみを拡大した図である。ランド部104は、絶縁層102と対向する面の中央部において、下地金属層103と接合する接合領域と、絶縁層102と対向する面において、接合領域を除いた非接合領域とを有する。この非接合領域の直下において、下地金属層103の側面の断面に相当する直線S1aは、ランド部104側から絶縁層102側に向けて、外向きに傾斜している。下地金属層103の側面は、絶縁層102と第一傾斜角度(テーパー角度)θ1aをなし、θ1aの角度で絶縁層102と接している。ランド部104と絶縁層102とで挟まれた、接合領域の直下の領域には、厚さt1の下地金属層103が配されている。そして、ランド部104と下地金属層103の側面とで挟まれた、非接合領域直下の領域Daには、下地金属層103は配されていない。
【0026】
なお、下地金属層103の側面は、図3(a)に示すように、その傾斜方向において平坦な形状でなくてもよい。すなわち、下地金属層103の側面は、その傾斜方向において、内向きに凸となるように反っていてもよいし、外向きに凸となるように反っていてもよい。
【0027】
図3(b)は、下地金属層103の側面が、その傾斜方向において、内向きに凸となるように反っている場合について、図2に示した下地金属層103およびランド部104の端部近傍の領域Aを、拡大した図である。図3(e)は、図3(b)に示した領域Aのうち、下地金属層103の端部Bのみを拡大した図である。図3(d)と同様に、ランド部104と下地金属層103の側面とで挟まれた、非接合領域直下の領域Dbには、下地金属層103は配されていない。下地金属層103の側面の断面に相当する曲線S1bは、図3(a)に示した直線S1aに対して、内向きに凹む形状となっている。この場合の第一傾斜角度θ1bは、絶縁層102の表面と、曲線S1bの絶縁層102側の端部における接線T1bとのなす角度として定義される。
【0028】
図3(c)は、下地金属層103の側面が、その傾斜方向において、外向きに凸となるように反っている場合について、図2に示した下地金属層103およびランド部104の端部近傍の領域Aを、拡大した図である。図3(f)は、図3(c)に示した領域Aのうち、下地金属層103の端部Bのみを拡大した図である。図3(d)と同様に、ランド部104と下地金属層103の側面とで挟まれた、非接合領域直下の領域Dcには、下地金属層103は配されていない。下地金属層103の側面の断面に相当する曲線S1cは、図3(a)に示した直線S1aに対して、外向きに膨らむ形状となっている。この場合の第一傾斜角度θ1cは、絶縁層102の表面と、曲線S1cの絶縁層102側の端部における接線とのなす角度として定義される。
【0029】
図4は、シミュレーションにより得られた実験結果であり、本願発明の半導体装置を半田リフロー等のように熱処理を加えた場合において、図3(a)に示した第一傾斜角度θ1aに対応して、絶縁層102と下地金属層103の側面との接点近傍に生じる応力の変化を示すグラフである。横軸は、第一傾斜角度(テーパー角度)θ1a[°]を示している。縦軸は、θ1a=90とした場合(従来構造)を基準とした、θ1a<90とした場合における、絶縁層102と下地金属層103の側面との接点近傍に生じる応力の比を示している。
【0030】
図4のグラフに示されるように、絶縁層102と下地金属層103の側面との接点近傍に生じる応力は、第一傾斜角度θ1aと比例関係にあり、第一傾斜角度θ1aを小さくするほど、減少する傾向にある。そして、第一傾斜角度θ1aは、少なくとも20〜90[°]の場合においては、応力と一次の比例関係にあることが分かる。第一傾斜角度θ1aを小さくするほど、絶縁層102と下地金属層103の側面との接点近傍との間に生じる応力を小さくでき、応力に起因した絶縁層102のクラックの発生を抑える効果が高められる。
【0031】
表1は、本発明の半導体装置109に半田リフローによる加熱処理(260[℃])を行い、様々な第一傾斜角度θ1aのサンプルを作製し、作製したサンプルにおいて、下地金属層103の側面が傾斜した形状の実現可否、および絶縁層102におけるクラック発生の有無について、調べた結果をまとめたものである。
サンプルとして用いた半導体装置109では、絶縁層102に厚さ1[μm]のSiO2膜を、下地金属層103に厚さ0.3[μm]のTi膜を、ランド部104に厚さ10[μm]のCuを、それぞれ採用した。そして、ランド部104の上には半田バンプ107を形成した。下地金属層103の側面が傾斜した形状は、薬液を用いたウェットエッチングを行って形成した。
【0032】
【表1】
【0033】
表1に示されているように、第一傾斜角度θ1aが30.0[°]以上であるサンプルにおいて、下地金属層103の側面が傾斜した形状を実現することができている。
また、第一傾斜角度θ1aが66.9[°]以下であるサンプルにおいては、絶縁層102のクラック不良が発生していない。
第一傾斜角度を66.9[°]以下とした場合、絶縁層102とランド部104との間における、ランド部104に加わった応力の分散効果が高まり、下地金属層103の側面近傍において、絶縁層102のクラックの発生が確実に抑えられている。
したがって、本発明に係る半導体装置109を構成する第一傾斜角度θ1aとしては、30.0[°]以上66.9[°]以下の範囲にあることが望ましい。
【0034】
図5は、絶縁層102と下地金属層103の側面との接点近傍において、絶縁層102のクラック発生を抑えて熱処理できる最大の温度(以下、耐久温度という)と、第一傾斜角度θ1aとの関係を示す3つのグラフからなる。横軸は第一傾斜角度θ1a[°]を示し、縦軸は、耐久温度[℃]を示している。
【0035】
図5の3つのグラフは、下地金属層103の厚さt1を、それぞれ0.12[μm]、0.34[μm]、0.58[μm]とした場合に対応する。3つのグラフがそれぞれ示すように、耐久温度は、第一傾斜角度θ1aと比例関係にあり、第一傾斜角度θ1aを小さくするほど、上昇する傾向にある。そして、下地金属層103が厚いほど、グラフの傾きが急峻になり、第一傾斜角度θ1aを小さくすることによる耐久温度を上昇させる効果が高まる。
【0036】
なお、下地金属層103の厚さt1を0.1[μm]以上とすると、ランド部104を構成する金属原子が拡散する距離を上回る。したがって、ランド部104から拡散した金属原子が、下地金属層103を通り抜けて絶縁層102に到達するのを防ぎ、絶縁層102が金属原子によって汚染されることを防止できる。そして、下地金属層103を厚くするほど、第一傾斜角度θ1aを小さく形成しやすくなる。また、下地金属層103の厚さt1を2[μm]以下とすると、下地金属層103自身がもつ内部応力を小さくすることができる。そして、下地金属層103の内部応力により絶縁層102がダメージをうけることを防ぐことができる。したがって、下地金属層の厚さt1としては、0.1[μm]以上2[μm]以下の範囲にあることが望ましい。
【0037】
基板を実装する際には、半田バンプ107の形成および半田バンプ107の根元を補強する樹脂形成にともなって、高温の熱処理が必要となる。鉛を含まない半田バンプを形成する場合、一般に260[℃]以下の熱処理が行われるため、図4のグラフから、少なくとも、第一傾斜角度θ1aを50[°]以下とし、下地金属層の厚さt1は0.34[μm]以上とすればよい。また、鉛を含む半田バンプを形成する場合、一般に220[℃]以下の熱処理が行われるため、図5のグラフから、少なくとも、下地金属層の厚さt1は0.34[μm]以上とすればよい。また、半田バンプの根元に樹脂を形成する場合、170[℃]以下の熱処理が行われるため、図5のグラフから、少なくとも、下地金属層の厚さt1は0.12[μm]以上とすればよい。
【0038】
第一実施形態に係る半導体装置109の構成によれば、下地金属層103の端部の形状が、ランド部104側から絶縁層102側に向けて、外向きに傾斜している。そのため、ランド部から下地金属層へ伝わる応力が、絶縁層102とランド部104との間で分散され、絶縁層102と下地金属層103の側面との接点近傍に集中するのを防ぐことができる。これにより、絶縁層102と下地金属層103の側面との接点近傍に加わる応力に起因する絶縁層102のクラックを抑えることができる。
【0039】
[製造方法1−1]
第一実施形態に係る半導体装置109の製造方法1−1について、図6(a)〜(c)、図7(a)〜(c)に示す工程図を用いて説明する。
【0040】
まず、図6(a)に示すように、半導体基板101の一方の主面101aに、CVD、熱酸化等により、パッシベーション膜102aと樹脂層102bからなる絶縁層102を形成する。次に、図6(b)に示すように、絶縁層102上に、スパッタ、CVD等により、下地金属層103を形成する。次に、図6(c)に示すように、下地金属層103上に、スパッタ、CVD等により、ランド部104を形成する。
【0041】
次に、図7(a)に示すように、下地金属層103の外周域の一部を、ランド部104をマスクとしてエッチングする。下地金属層103のエッチング液としては、例えばアンモニア過水を用いることができる。このエッチング処理の条件を制御することによって、側面が傾斜した下地金属層103を形成することができる。例えば、エッチングの時間を長くするほど下地金属層103の側面の傾斜角は大きくなり、エッチング時間を短くするほど下地金属層103の側面の傾斜角は小さくなる傾向がある。
【0042】
次に、図7(b)に示すように、絶縁層102、下地金属層103、ランド部104を覆い、かつランド部104の一部が露出するように開口部108aを有する配線保護層108を形成する。配線保護層108は、樹脂(シリコーン樹脂,エポキシ樹脂、PBO、BCB、ポリイミド樹脂等)で構成され、スピンコート、印刷法等により形成することができる。
【0043】
そして、図7(c)に示すように、開口部108aに半田バンプ107を形成することにより、第一実施形態に係る半導体装置109が得られる。
【0044】
第一実施形態に係る半導体装置109の製造方法1−1では、下地金属層103の端部の除去を、ランド部104を積層した後に行う。これにより、ランド部104の外周域が、下地金属層103に支持されていない構造、すなわちランド部104側から絶縁層102側に向けて、外向きに傾斜した構造を実現することができる。そして、基板を実装する際に、温度負荷によって絶縁層102と下地金属層103の側面との接点近傍に加わる応力を緩和させ、応力に起因したクラックの発生を抑えることが可能な、半導体装置109の製造方法を提供することができる。
【0045】
なお、製造方法1−1によれば、図1(b)に示した半導体装置109を製造することができるが、配線保護層108の形成(図7(b))を行わない場合には、図1(a)に示した半導体装置109を製造することができる。
【0046】
<第二実施形態>
図8(a)は、本発明の第二実施形態に係る半導体装置209の断面図である。半導体装置209は、半導体基板201の一方の主面201aに、絶縁層202と、下地金属層203と、配線層の一部であって、外部との電気的接続部をなす金属端子が設けられるためのランド部204と、を順に積層し、ランド部204に金属端子(半田バンプ)207を載置してなる。
【0047】
なお、図8(b)示すように、半導体装置209は、絶縁層202、下地金属層203、ランド部204を覆い、かつランド部204の一部が露出するように開口部を有する配線保護層208を配し、その開口部に半田バンプ207を載置してもよい。配線保護層208を配することにより、配線層が外部に露出しない構造となる。そのため、配線層が外部から電気的、機械的なダメージを受けるのを防ぐことができる。したがって、半導体装置としての動作の信頼性を高めることができる。
【0048】
第二実施形態では、ランド部204は、めっき給電用のシード層をなす第一金属層204aと、めっき層をなす第二金属層204bとを順に積層した2層からなり、第一金属層204aのみが下地金属層203と接触している。そして、第二金属層204bの端部においては、直下に第一金属層204aが形成されていない。ランド部204以外の構成は、第一実施形態の構成と同様である。
【0049】
第一金属層204aは、スパッタ、CVD等により形成され、その厚さt2は、0.1〜2[μm]程度であることが望ましい。第一金属層204aを構成する材料としては、例えば、Cuが挙げられる。
【0050】
第二金属層204bは、例えば、Al、Cu、Cr、Ti、Au、Si等の導電性を有する金属により構成され、半導体基板201が備えた半導体素子や集積回路を、半田バンプ207を介して外部端子(回路)と電気的に接続する端子をなす。第二金属層204bは、電解めっき、無電解めっき等により形成され、厚さは、5〜20[μm]程度であることが望ましい。
【0051】
図9(a)は、図8(a)の半導体装置209を実装した、半導体パッケージ200の断面図である。半導体装置209とプリント基板205とは、半田バンプ207およびプリント基板の一方の主面205aに配された配線部206を介して、電気的に接続されている。
【0052】
図9(b)は、図9(a)に示した第一金属層204aおよび第二金属層204bの端部近傍の領域Cを、拡大した図である。
【0053】
第一金属層204aは、絶縁層202と対向する面の中央部において、下地金属層203と接合する接合領域と、絶縁層202と対向する面において、接合領域を除いた非接合領域とを有する。この非接合領域の直下において、下地金属層203の側面の断面に相当する直線S2は、第一金属層204a側から絶縁層202側に向けて、外向きに傾斜している。直線S2は、絶縁層202と第一傾斜角度(テーパー角度)θ2をなしている。第一金属層204aと絶縁層202とで挟まれた、接合領域の直下の領域には、厚さt3の下地金属層203が配されている。そして、第一金属層204aと下地金属層203の側面とで挟まれた、非接合領域直下の領域には、下地金属層203は配されていない。なお、下地金属層203の側面は、その傾斜方向において平坦な形状でなくてもよい。すなわち、下地金属層203の側面は、その傾斜方向において、内向きに凸となるように反っていてもよいし、外向きに凸となるように反っていてもよい。
【0054】
第二金属層204bは、絶縁層202と対向する面の中央部において、第一金属層204aと接合する接合領域と、絶縁層202と対向する面において、接合領域を除いた非接合領域とを有する。この非接合領域の直下において、第一金属層204aの側面の断面に相当する直線は、第二金属層204b側から絶縁層202側に向けて、外向きに傾斜している。第二金属層204bと下地金属層203とで挟まれた、接合領域の直下の領域には、厚さt4の第一金属層204aが配されている。そして、第二金属層204bと下地金属層203の側面とで挟まれた、非接合領域直下の領域には、下地金属層203は配されていない。なお、第一金属層204aの側面は、その傾斜方向において平坦な形状でなくてもよい。すなわち、第一金属層204aの側面は、その傾斜方向において、内向きに凸となるように反っていてもよいし、外向きに凸となるように反っていてもよい。
【0055】
第二実施形態に係る半導体装置209の構成によれば、下地金属層203の端部の形状が、ランド部204側から絶縁層202側に向けて、外向きに傾斜している。そのため、ランド部204から下地金属層203へ伝わる応力が、絶縁層202とランド部204との間で分散され、絶縁層202と下地金属層203の側面との接点領域に集中するのを防ぐことができる。これにより、絶縁層202と下地金属層203の側面との接点領域に加わる応力に起因する絶縁層202のクラックを抑えることができる。
【0056】
また、第二実施形態の構成では、ランド部204が2つの層204a、204bからなる。したがって、基板を実装した際に、ランド部204が1つの層からなる場合に比べて、プリント基板205側から絶縁層202に向けて生じる応力が緩和される。これにより、基板を実装する際の温度負荷による、絶縁層202とランド部204との間でのクラックの発生を抑えることができる。
【0057】
[製造方法2−1]
第二実施形態に係る半導体装置209の製造方法2−1について、図10(a)〜(c)、図11(a)〜(c)、図12(a)〜(c)に示す工程図を用いて説明する。
【0058】
まず、図10(a)に示すように、半導体基板201の一方の主面201aに、パッシベーション膜202aと樹脂層202bからなる絶縁層202を形成する。次に、図10(b)に示すように、絶縁層202上に、スパッタまたはCVDにより、下地金属層203を形成する。次に、図10(c)に示すように、下地金属層203の上に、スパッタまたはCVDにより、第一金属層204aを形成する。
【0059】
次に、図11(a)に示すように、第一金属層204a上にレジストRを載置する。そして、載置されたレジストRのうち、第二金属層204bが形成される領域にある部分を露光して除去する。露光は、露光された部分を除去した後に、レジストRの側面のうち、第一金属層204aと接する部位Raが裾状をなすように行う。
【0060】
ここでの露光方法について説明する。使用するレジストがネガ型である場合には、露光して除去する領域をマスクで覆い、光源から平行に照射する光の一部を、マスクの下に回り込ませる。これにより、マスク直下の領域のうち、回り込んだ光が通過する領域が露光されるため、図11(a)に示すような、第一金属層204aと接する部位が裾状をなすようなレジストRを形成することができる。
【0061】
一方、使用するレジストがポジ型である場合には、露光して除去しない領域をマスクで覆い、光源から光を平行に照射する。このとき、光源の位置をレジストRから遠ざけることにより第一金属層204a近傍に光が届きにくくする。これにより、マスクの近傍を通過する光の一部は散乱により失われるため、マスクに覆われていない領域のうち、端部が露光されない。したがって、図11(a)に示すような、第一金属層204aと接する部位が裾状をなすようなレジストRを形成することができる。
【0062】
次に、図11(b)に示すように、露光された領域のレジストRを除去した領域に、第二金属層204bを形成する。次に、図11(c)に示すように、載置されたレジストを全て除去する。
【0063】
次に、図12(a)に示すように、レジストRと、第一金属層204aおよび第二金属層204bの側面のうち両者が接して重なる部位と、下地金属層203のうち第一金属層204aを支持していない部位と、を順に除去する。第一金属層204aの除去は、ジャストエッチングにより行うことが望ましい。
【0064】
次に、図12(b)に示すように、絶縁層202、下地金属層203、第一金属層204a、第二金属層204bを覆い、かつ第二金属層204bの一部が露出するように開口部208aを有する配線保護層208を形成する。
【0065】
次に、図12(c)に示すように、開口部208aに半田バンプ207を形成することにより、第二実施形態に係る半導体装置209が得られる。
【0066】
また、第二実施形態に係る半導体装置209の製造方法2−1により形成される第二金属層204bは、その端部が、実装面側から第一金属層204a側に向けて内向きに傾斜した形状となり、第一金属層204aの外周域において、第二金属層204b側の表面が露出した状態となる。これにより、第一金属層204aの外周域の一部を除去する際のエッチング処理を、第一金属層204aの側面からだけでなく、第二金属層204b側の表面からも行うことができる。したがって、エッチングの進行を制御しやすくなり、第一金属層204aの側面を、第二金属層204b側から絶縁層202側に向けて、外向きに傾斜した形状に加工するのが容易になる。そして、配線層をめっきにて形成し、基板を実装した際に、温度負荷によって絶縁層202と下地金属層203の側面との接点領域に加わる応力を緩和させ、応力に起因した絶縁層202のクラックの発生を抑えることが可能な、半導体装置の製造方法を提供することができる。
【0067】
なお、製造方法2−1によれば、図8(b)に示した半導体装置209を製造することができるが、配線保護層208の形成(図12(b))を行わない場合には、図8(a)に示した半導体装置209を製造することができる。
【0068】
<第三実施形態>
図13は、本発明の第三実施形態に係る半導体装置309の断面図である。半導体装置309は、少なくとも、半導体基板301の一方の主面301aに、絶縁層302、下地金属層303a、下地金属層303b、下地金属層303c、下地金属層303d、下地金属層303e、配線層の一部であって、外部との電気的接続部をなす金属端子が設けられるためのランド部304を順に積層し、ランド部304に金属端子(半田バンプ)307を載置してなる。
【0069】
そして、図13に示すように、半導体装置309は、絶縁層302、下地金属層303a、下地金属層303b、下地金属層303c、下地金属層303d、下地金属層303e、ランド部304を覆い、かつランド部304の一部が露出するように開口部を有する配線保護層308を配し、その開口部に半田バンプ307を載置してもよい。
【0070】
第三実施形態に係る半導体装置は、五つの下地金属層303a、303b、303c、303d、303eを備えており、各下地金属層の端部が、ランド部304側から絶縁層302側に向けて外向きに傾斜した形状をなしている。その他の構成は、第一実施形態の構成と同様である。
【0071】
第三実施形態の構成によれば、基板を実装する際の温度負荷による応力は、絶縁層とランド部との間で複数層に分散され、絶縁層と下地金属層の側面との接点領域に集中するのを防ぐことができる。したがって、絶縁層と下地金属層の側面との接点領域に加わる応力に起因する絶縁層のクラックを抑えることができる。
【0072】
また、第三実施形態においては、五つの下地金属層が備えられた例を示したが、下地金属層の総数が限定されることはない。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明は、例えば携帯電話やデジタルカメラ、ノートパソコン等、小型で高密度な電子部品を必要とする電子装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0074】
101・・・半導体基板、101a・・・一面、102・・・絶縁層、
103・・・下地金属層、104・・・ランド部、204a・・・第一金属層、
204b・・・第二金属層、109、209・・・半導体装置、
204a・・・第一金属層、204b・・・第二金属層、Da・・・領域、
S1a・・・直線、S1b、S1c・・・曲線、
θ1a、θ1b、θ1c・・・第一傾斜角度。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板の一面に、絶縁層、下地金属層、金属端子が設けられるためのランド部を順に積層してなる半導体装置であって、
前記ランド部は、
前記絶縁層と対向する面の中央部において、前記下地金属層と接合する接合領域と、
前記絶縁層と対向する面において、前記接合領域を除いた非接合領域と、
を有し、
前記下地金属層は、前記ランド部側から前記絶縁層側にかけて外向きに傾斜した側面を有していること、を特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記下地金属層の側面は、傾斜方向において平坦な形状であり、
前記下地金属層の側面と前記絶縁層とがなす第一傾斜角度は、30.0[°]以上66.9[°]以下であること、を特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記ランド部は、第一金属層と第二金属層を順に積層した2層からなり、前記第二金属層の端部においては、前記第二金属層の直下に第一金属層が形成されていないこと、を特徴とする請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項1】
半導体基板の一面に、絶縁層、下地金属層、金属端子が設けられるためのランド部を順に積層してなる半導体装置であって、
前記ランド部は、
前記絶縁層と対向する面の中央部において、前記下地金属層と接合する接合領域と、
前記絶縁層と対向する面において、前記接合領域を除いた非接合領域と、
を有し、
前記下地金属層は、前記ランド部側から前記絶縁層側にかけて外向きに傾斜した側面を有していること、を特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記下地金属層の側面は、傾斜方向において平坦な形状であり、
前記下地金属層の側面と前記絶縁層とがなす第一傾斜角度は、30.0[°]以上66.9[°]以下であること、を特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記ランド部は、第一金属層と第二金属層を順に積層した2層からなり、前記第二金属層の端部においては、前記第二金属層の直下に第一金属層が形成されていないこと、を特徴とする請求項1または2に記載の半導体装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−243984(P2012−243984A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−113389(P2011−113389)
【出願日】平成23年5月20日(2011.5.20)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月20日(2011.5.20)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】
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