説明

半導体装置の製造方法、半導体装置、及び電気光学装置

【課題】暫定基板に形成した素子チップをフレキシブル基板上に転写して半導体装置を製造する方法において、暫定基板上の素子チップの転写効率を向上させる。
【解決手段】複数個の駆動回路50(素子チップ)を概略L字状に配列形成して素子チップ群T1、T2、…とし、L字の方向を揃えた状態で暫定基板22の一方の長辺から他方の長辺へ向かって、暫定基板22の周縁角部22cを先頭として帯状に配列して素子チップ列Wとし、この素子チップ列Wを複数列、暫定基板22に形成する。この暫定基板22から各素子チップ群T1、T2、…を一単位として剥離し、フレキシブル基板表面へ転写する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法、半導体装置、及び電気光学装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、自由に折り曲げられる電子機器が注目されている。例えば、電子ペーパーに代表されるフレキシブルディスプレイは、携帯時の軽さに加え、衝撃に対する吸収や、手に馴染む柔軟性など、ユビキタス社会の一役を担う電子機器となり得るものである。このような電子機器においては、可撓性を有するプラスチック基板上に屈曲可能な有機薄膜トランジスタ(以下、有機TFTと略記する。)を積載した電子デバイスが提案されている(例えば特許文献1参照)。有機TFTは、トランジスタ素子を常温常圧下で作成できるので、製造コストを低くできるばかりでなく、インクジェット法やスピンコート法などの汎用の印刷技術の適用も可能なことから、製造コストの大幅な低減が見込めるという利点がある。
【0003】
ところが、有機TFTの電界効果移動速度は他のTFTに比べて数桁低いので、電子デバイス中の総てのTFTを有機TFTにすると、デバイスの駆動能力が低下してしまうという問題があった。そこで、デバイス中の一部分のみを有機TFTとして、駆動回路は電界効果移動速度の高い他の半導体素子にすることが考えられる。
【0004】
なかでも低温ポリシリコン薄膜トランジスタ(以下、LTPS−TFTと略記する。)は大きな電界効果移動速度を有するので、電子デバイス中における占有面積を小さくしても駆動能力が低下しないので、軽量化、薄型化に適しており、上記課題の解決に合致している。しかしながら、このLTPS−TFTの製造には、600℃近くの高温が必要であり、フレキシブルデバイス用のプラスチック基板上に作成することが困難であるという問題があった。
【0005】
上記問題は、予めLTPS−TFTをガラス基板上に作成しておいた後に、このLTPS−TFTをプラスチック基板上に転写する、SUFTLA(Surface-Free Technology by Laser Ablaion/Annealing)(セイコーエプソン社登録商標)と称される実装技術で解決される(例えば特許文献2参照。)。
【特許文献1】特表2003−518756号公報
【特許文献2】特開2003−297974号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記SUFTLAの転写工程に先立っては、図10に示すように、転写する素子チップ4を、プラスチック基板上での配列順になるように予めガラス基板22に形成しておく。図10は、素子チップ4が形成されたガラス基板22の概略平面図であるが、図中、破線で示した領域Rは1回のSUTFLA工程によってプラスチック基板に転写される領域である。一般に、領域Rにおいて、その中央部には画素が形成されて表示領域となるので、領域Rの周縁部に素子チップ4が配列されることとなり、素子チップ4が配置されていない部分がデッドスペースとなる。よって、ガラス基板22の面積に対して、非常に限られた数しか素子チップ4を配置することができず、製造コストの上昇を招くばかりでなく、材料やエネルギーを多量に消費し、環境へ多大な負荷をかけるという問題があった。
【0007】
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑み成されたものであって、SUFTLAの転写工程で用いられる転写元となる基板上に形成する素子チップの配列を工夫することで、転写元の基板を無駄なく有効に利用できるようにして、製造コストの低減が可能な半導体装置の製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の半導体装置の製造方法は、フレキシブル基板の互いに隣り合う2辺の周縁部に概略L字状に整列配置された複数個の素子チップと、該素子チップに接続された回路と、を備えてなる半導体装置の製造方法であって、暫定基板上に、上記フレキシブル基板表面での配置状態となるように上記複数個の素子チップを概略L字状に整列させて素子チップ群とし、前記素子チップ群で形成されたL字の方向を揃えた状態で、複数個の前記素子チップ群を、前記暫定基板の一方の長辺から他方の長辺へ向かって、暫定基板の周縁角部を先頭として帯状に配列して素子チップ列とし、前記素子チップ列を複数列、上記暫定基板上に形成する工程と、前記暫定基板から前記素子チップ群を一単位として剥離し、前記フレキシブル基板表面へ転写する工程と、前記素子チップ群の各素子チップと前記フレキシブル基板上の回路とを接続する工程とを有することを特徴とする。
【0009】
本発明の半導体装置の製造方法によれば、予め暫定基板上に、転写先の配列状態にして素子チップを配列させて素子チップ群とするとともに、各素子チップ群が形成するL字の方向を揃えるので、各素子チップ群の間にデッドスペースが発生しなくなる。さらに、素子チップ群を暫定基板表面で周縁角部を先頭として帯状の素子チップ列とし、この素子チップ列を複数本、互いに重なり合わないように、配列することにより、暫定基板表面に、非常に多くの素子チップを形成しつつ、これら素子チップ群をそれぞれ1単位として、剥離して転写できるので、1枚の暫定基板から多くの素子チップ群を採ることができ、材料やエネルギーの使用を最小限に抑えることができるわけである。よって、製造コストの低減が可能となる。
【0010】
本発明の半導体装置の製造方法にあっては、フレキシブル基板の互いに隣り合う2辺の周縁部に概略L字状に整列配置された複数個の素子チップと、該素子チップに接続された回路と、を備えてなる半導体装置の製造方法であって、暫定基板上に、複数個の素子チップを整列させて形成する工程と、前記素子チップの中から、その配列状態が概略L字状をなすように一群の素子チップ群を選択し、該素子チップ群を一単位として剥離して、前記フレキシブル基板上に転写する工程と、転写された前記各素子チップと上記回路とを接続する工程とを有することを特徴とする。
【0011】
本発明の半導体装置の製造方法によれば、暫定基板表面に多数の素子チップを形成し、これらの素子チップの中から、転写先での配列形状、すなわち概略L字状となるように素子チップ群を選択するので、暫定基板上での素子チップ群の配列に関わらず、所望配列の素子チップ群を転写することができる。また、暫定基板により多くの素子チップを暫定基板に形成でき、一枚の暫定基板での転写回数を増加させることができる。よって材料やエネルギーの使用を抑えることができ、製造コストの低減が実現できる。また、かかる方法にあっては、暫定基板に予め素子チップを転写先での配列状態となるようにレイアウトして形成する必要がなく、単純に複数個の素子チップを整列状態で形成すれば良いので、素子チップの形成時のマスク形成が単純化されてよいという利点もある。
【0012】
本発明の製造方法にあっては、フレキシブル基板の互いに隣り合う2辺の周縁部に概略L字状に整列配置された複数個の素子チップと、該素子チップに接続された回路と、を備えてなる半導体装置の製造方法であって、暫定基板上に、複数個の素子チップを整列させて形成する工程と、前記素子チップの中から、その配列状態がそれぞれに直線をなす2列の素子チップ群を選択し、該素子チップ群の一方を剥離して前記フレキシブル基板表面に転写することで前記フレキシブル基板上に第1の素子チップ列を形成する第1の転写工程と、前記第1の素子チップ列と概略L字状を成す位置に前記素子チップを配置可能な位置に前記暫定基板若しくは前記フレキシブル基板を移動させる工程と、前記素子チップ群の他方を剥離して前記フレキシブル基板表面に転写することで前記フレキシブル基板上に第2の素子チップ列を形成する第2の転写工程と、前記第1及び第2の素子チップ列の各素子チップと前記フレキシブル基板上の回路とを接続する工程とを有することを特徴とする。
【0013】
このように転写工程を2工程に分けることで、それぞれの転写すべき素子チップ群が直線となる。これにより、転写すべき素子チップを暫定基板から選択する際の自由度が高くなるので、暫定基板上に形成された素子チップをより一層、無駄なく利用することができる。また、暫定基板若しくはフレキシブル基板を移動させることで、転写工程で用いるレーザのスキャン方向を一方向にできる。
【0014】
本発明の半導体装置の製造方法にあっては、前記素子チップ群を前記フレキシブル基板表面に転写するに先立って、前記フレキシブル基板の裏面に支持基板を貼着する工程を有することが好ましい。
このようにすると、製造の各工程において、フレキシブル基板の反りやうねりを低減させることができ、アライメントの精度を向上させることができるばかりでなく、取り扱い性も向上するので好適である。特に、駆動回路を暫定基板からフレキシブル基板表面に転写する工程におけるアライメント、なかでも接着剤滴下の際のアライメントに関して非常に有用である。
【0015】
本発明の半導体装置は、先に記載の製造方法によって製造されたことを特徴とする。本発明によれば、低コストの屈曲性と駆動特性とに優れた半導体装置となる。
【0016】
本発明の電気光学装置は、先に記載の半導体装置を備えることを特徴とする。このようにれば、低コストの屈曲性と駆動特性とに優れた電気光学装置となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
次に、図1〜図9を参照し、本発明の半導体装置の製造方法、半導体装置、及び電気光学装置の実施の形態について説明する。
なお、本実施形態は、本発明の一態様を示すものであり、本発明を限定するものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。また、以下に示す各図においては、各層や各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各層や各部材ごとに縮尺を異ならせてある。
【0018】
(半導体装置)
まず、図1を参照し、半導体装置の構成について説明する。
図1aは、本発明の製造方法によって得られた半導体装置10を用いたフレキシブルディスプレイの一実施例を示した概略平面図である。このフレキシブルディスプレイは、フレキシブル基板20の上に、アクティブ素子として有機TFT(図示せず)を備えてなる表示領域Gが形成されており、表示領域Gの周辺部には、有機TFTを駆動するための複数の駆動回路50a、50bと、これらの駆動回路50a、50bに接続されたCPC6と、RAM7と、アナログ/RF8と、太陽電池9とが配置されている。
【0019】
駆動回路50a、50bは、低温ポリシリコン薄膜トランジスタ(LTPS−TFT)を含む素子チップであり、フレキシブル基板20の互いに隣り合う2辺の周縁部に集合して、図中のX方向およびY方向に沿って列(素子チップ列)をなして配置されている。駆動回路50a、50bは、接着剤によってフレキシブル基板20上に固定されている。駆動回路50a、50bの具体的構成は特に限定されるものではないが、LTPS−TFTを用いたものであれば高い電界効果速度が得られ、高速駆動が可能であるとともにフレキシブル基板20上での占有面積が小さくて済むので好適である。
【0020】
フレキシブル基板20は、透明性、非透過性に限定することなく、各種材料によって構成されるものである。本実施形態では、特に可撓性に優れたものとして、プラスチック基板を採用している。具体的には、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリカーボネート(PC)、芳香族ポリエステル(液晶ポリマー)、ポリイミド(PI)等で構成されるプラスチック基板(樹脂基板)を例示することができる。また、この他にも可撓性のあるものであれば、ガラス基板、シリコン基板、金属基板、ガリウム砒素基板等を採用してもよい。
【0021】
データ線34aは、表示領域G中で図1中のY方向に延在する配線であり、表示領域G内で有機TFTのソースに接続されるとともに、表示領域Gから+Y方向に延出された位置で駆動回路50aと電気的に接続されている。走査線34bは、表示領域G中でX方向に延在する配線であり、表示領域G内の有機TFTのゲートと電気的に接続されるとともに、表示領域Gから−X方向に延出された位置で駆動回路50bと電気的に接続されている。駆動回路50aは、有機TFTのデータ線34aに電力を供給し、駆動回路50bは走査線34bに駆動信号を供給することによって、有機TFTをアクティブ駆動するようになっている。
【0022】
次に、図1bを参照して有機トランジスタ10aについて説明する。図1bは、図1aのA−A’線に沿う位置における要部断面図である。有機TFT10aは、後述するように主として湿式成膜法を用いて形成されるスイッチング素子であり、フレキシブル基板20側からソース電極及びドレイン電極30、有機半導体層31、絶縁層32、ゲート電極40とが積層形成された、いわゆるトップゲート構造のトランジスタである。また、有機TFT10aに対応して図示略の画素電極が設けられており、画素電極はコンタクトホールを介してドレイン電極30と電気的に接続されている。
なお、本実施形態では、トップゲート構造について説明するが、当該構造を限定するものではなく、ボトムゲート構造であってもよい。
【0023】
有機TFT10aのゲート電極40は、直接又は他の配線を介してフレキシブル基板20のY方向に延びる走査線34bと電気的に接続されており、フレキシブル基板20の周縁部に形成された接続部55を介して駆動回路50bの端子部56と電気的に接続されている。有機TFT10aは、図1bに示すように、その外周部において絶縁層32が段差部32aをなしているので、絶縁層32上に形成された走査線34bは、この段差部32aに沿うように絶縁層32の表面を覆って接続部55に達するように形成されている。接続部55はフレキシブル基板20上に形成された金属パッド等であって、各配線上に設けられており、駆動回路50bは、接着剤51によってフレキシブル基板20に固定されている。また駆動回路50bのフレキシブル基板20と対向する側の面に形成された端子部56が、フレキシブル基板20上の接続部55と当接して電気的に接続されている。
【0024】
図1bでは図示を省略しているが、有機TFT10aのソース電極30は、フレキシブル基板20のY方向に沿って延びるデータ線34aと直接又は他の配線を介して接続されており、データ線34aの端部は駆動回路50aに設けられた端子部に接続されている。ここで、ソース電極30及びデータ線34aは絶縁層32の下層に形成されているので、駆動回路50a側の絶縁層32の端部において、データ線34aはフレキシブル基板20と絶縁層32との間から図1aの−X方向に延出され、当該延出部が駆動回路50aとの接続端子となる。
【0025】
(半導体装置の製造方法)
(第1の実施形態)
次に、図2を参照して半導体装置10の製造方法の第1の実施形態を説明する。図2a〜図2gは半導体装置10の製造の工程図であって、図1に示した半導体装置10の断面図に対応している。
まず、図2aに示すように、フレキシブル基板20上に第1層配線としての金属膜パターン3を形成する。金属膜パターン3とは、図1bに示した有機TFT10aのソース電極及びドレイン電極30、データ線34a、接続部55となる導電配線等である。フレキシブル基板20の直上に配置される上記の各配線を総て一括してパターン形成する。
なお、走査線34bの一定部分は最下層ではなく、他の層の上に積層されるべきものであるので、この工程において一括して形成せずにブランク部としておき、走査線34bと接続される接続部55のみを当該工程では形成する。
【0026】
金属膜パターン3の形成方法は特に限定されるものではないが、液相プロセスを用いることが好ましい。液相プロセスは、フレキシブル基板20上に液体材料を選択的に配置し、これを乾燥、固化させて金属膜パターン3を形成する方法である。液体材料は、例えば、導電性粒子と溶媒とを混合した分散液である。導電性粒子としては、例えばCr、Al、Ta、Mo、Nd、Cu、Ag、Au、Pd、In、Ni、Co等やそれらの金属を用いた合金、公知のあらゆる金属材料、及びその合金、及びその金属酸化物等を採用することができる。また、公知の導電性有機材料、たとえばPEDOT(ポリエチレンジオキシチオフェン)や金属コロイド等を利用できる。分散液としては水を主成分とするが、アルコールを添加した液体を分散媒に用いてもよい。
【0027】
液滴の塗布方法としては、スピンコート法、スリットコート法、ディップコート法、スプレー法、ロールコート法、カーテンコート法、印刷法、液滴吐出法等を利用できる。なかでも液滴吐出法すなわちインクジェット法を採用することが好ましい。インクジェット法によれば、フレキシブル基板20上にパターンを直接形成することが可能であり、必要部分のみの成膜が可能なので、製造工程が非常に簡略化できるうえに、温和な条件(大気圧下)で成膜できる。
フレキシブル基板20の表面には、下地絶縁膜として酸化シリコン膜(SiO)等を形成してもよい。本実施形態においては、配線パターンが1層のみ形成された構造について説明しているが、2層や3層構造であってもよい。
【0028】
インクジェット法においては、インクジェットヘッド(図示せず。)とフレキシブル基板20とを相対移動させる移動機構によって、フレキシブル基板20の所定位置に液体材料を吐出する。液体材料が吐出されるパターンは、液滴吐出装置に記憶されたビットマップパターン等の電子データに基づいて形成されるので、電子データを作製するだけで、所望の位置に液体材料を塗布することができる。インクジェットヘッドには、圧電素子でインクキャビティの体積を変化させて液滴を吐出する圧電方式と、インクキャビティ内でインクを加熱して気泡を発生させて液滴を吐出するサーマル方式とが用いられるが、熱の影響のない圧電方式が好ましい。
【0029】
次に、図2bに示すように、フレキシブル基板20の裏面側、すなわち金属膜パターン3が形成されていない側の面に支持基板21を貼着する。これにより、後述する各製造工程においてフレキシブル基板20を剛直な基板として取り扱うことができるようになる。また、フレキシブル基板20の反りやうねりを低減させることができるので、各工程でのアライメント精度を高くすることができる。後述するSUFTLA(Surface-Free Technology by Laser Ablaion/Annealing)(登録商標)工程において駆動回路を暫定基板からフレキシブル基板表面に転写する際のアライメント、なかでも接着剤滴下の際のアライメントに関して非常に有用である。
【0030】
図2cから図2fは、フレキシブル基板20上に駆動回路50(駆動回路50a、50bを総括して駆動回路50と称する。)を転写する工程を示したものである。この転写工程には公知の技術が採用されるが、本実施形態では、特にSUFTLA(登録商標)を用いる。
まず、図2cに示すように、フレキシブル基板20の表面に接着剤51を滴下する。この接着剤51はフレキシブル基板20に駆動回路50を固定するものであり、駆動回路50の端子部56を金属膜パターン3の接続部55に電気的に接続する機能を具備したものであってもよい。すなわち、接着剤51として、導電粒子を含有する異方性導電性ペースト(ACP)を用いることができる。この際に、フレキシブル基板20の裏面には支持基板21が貼着されているので、フレキシブル基板20の表面は反りやうねりのない平滑なものとなっている。さらに、支持基板21によって剛直性を与えられているので、接着剤51を塗布する際の位置あわせを正確かつ迅速に行うことができる。
【0031】
上記のフレキシブル基板20とは別に、図2dに示すように、転写すべき駆動回路50を高温プロセスを含む公知の技術によって暫定基板22上に形成する。暫定基板22上には剥離層23が形成されており、この剥離層23上に駆動回路50を形成する。
【0032】
暫定基板22は、半導体装置10の構成要素ではなく、駆動回路50の製造工程と、フレキシブル基板20への転写工程にのみに用いられる部材である。具体的には、1000℃程度に耐える石英ガラス等の透光性耐熱基板が好ましい。また、石英ガラスの他、ソーダガラス、コーニング7059、日本電気ガラスOA−2等の耐熱性ガラス等が使用可能である。この暫定基板22の厚さには、大きな制限要素はないが、0.1mm〜0.5mm程度であることが好ましく、0.5mm〜1.5mm程度であることがより好ましい。暫定基板22の厚さが薄すぎると強度の低下を招き、逆に厚すぎると基台の透過率が低い場合に照射光の減衰を招くからである。ただし、照射光に対する透過率が高い基材を用いる場合には、前記上限値を超えてその厚みを厚くすることができる。
【0033】
剥離層23は、レーザ光等の照射光により当該層内や界面において剥離(「層内剥離」又は「界面剥離」ともいう)が生ずる材料からなる。すなわち、一定の強度の光を照射することにより、構成物質を構成する原子又は分子における原子間又は分子間の結合力が消失し又は減少し、アブレーション(ablation)等を生じ、剥離を起こすものである。また、照射光の照射により、剥離層23に含有されていた成分が気体となって放出され分離に至る場合と、剥離層23が光を吸収して気体になり、その蒸気が放出されて分離に至る場合とがある。
【0034】
剥離層23の組成としては、例えば、非晶質シリコン(a−Si)が採用され、また、当該非晶質シリコン中に水素(H)が含有されていてもよい。水素が含有されていると、光の照射により、水素が放出されることにより剥離層23に内圧が発生し、これが剥離を促進するので好ましい。この場合の水素の含有量は、2at%程度以上であることが好ましく、2〜20%at%であることが更に好ましい。水素の含有量は、成膜条件、例えば、CVD法を用いる場合には、そのガス組成、ガス圧力、ガス雰囲気、ガス流量、ガス温度、基板温度、投入するパワー等の条件を適宜設定することによって調整する。
この他の剥離層23の材料としては、酸化ケイ素もしくはケイ酸化合物、窒化ケイ素、窒化アルミ、窒化チタン等の窒化セラミックス、有機高分子材料(光の照射によりこれらの原子間結合が切断されるもの)、金属、例えば、Al、Li、Ti、Mn、In、Sn、Y、La、Ce、Nd、Pr、Gd若しくはSm、又はこれらのうち少なくとも一種を含む合金が挙げられる。
【0035】
剥離層23の厚さとしては、1nm〜20μm程度であるのが好ましく、10nm〜2μm程度であるのがより好ましく、20nm〜1μm程度であるのがさらに好ましい。剥離層23の厚みが薄すぎると、形成された膜厚の均一性が失われて剥離にむらが生じるからであり、剥離層23の厚みが厚すぎると、剥離に必要とされる照射光のパワー(光量)を大きくする必要があったり、また、剥離後に残された剥離層23の残渣を除去するのに時間を要する場合がある。
【0036】
剥離層23の形成方法は、均一な厚みで剥離層23を形成可能な方法であればよく、剥離層23の組成や厚み等の諸条件に応じて適宜選択することが可能である。例えば、CVD(MOCCVD、低圧CVD、ECR−CVD含む)法、蒸着、分子線蒸着(MB)、スパッタリング法、イオンドーピング法、PVD法等の各種気相成膜法、電気メッキ、浸漬メッキ(ディッピング)、無電解メッキ法等の各種メッキ法、ラングミュア・プロジェット(LB)法、スピンコート法、スプレーコート法、ロールコート法等の塗布法、各種印刷法、転写法、インクジェット法、粉末ジェット法等に適用できる。これらのうち2種以上の方法を組み合わせてもよい。
【0037】
特に剥離層23の組成が非晶質シリコン(a−Si)の場合には、CVD法、特に低圧CVDやプラズマCVDにより成膜するのが好ましい。また、剥離層23をゾルゲル法によりセラミックを用いて成膜する場合や有機高分子材料で構成する場合には、塗布法、特にスピンコートにより成膜するのが好ましい。
【0038】
駆動回路50は、暫定基板22側から順次、半導体層52と、ゲート電極57と、ソース電極及びドレイン電極54とが積層されてなるものである。これらの各層間は層間絶縁膜58によって隔離され、その最表面には保護層59が被覆されている。また外部との端子部56は保護層59上の最上層に形成されたバンプであり、接着剤51によりデータ線34a若しくは走査線34bの接続部55に接続される。
【0039】
剥離層23の上に、駆動回路50を形成する。駆動回路50の製造は公知技術で製造可能であり、たとえば以下の工程による。
まず、剥離層23が形成された暫定基板22上に、層間絶縁膜58の一部を構成し、剥離層23の保護層となる下地絶縁層を形成する。この下地絶縁層としては、例えばSiOを用いることができ、プラズマCVD等の公知の成膜方法により形成することができる。
次に、上述した下地絶縁層上に、SiHを用いたPECVDやSiを用いたLPCVDによって、非晶質シリコン膜を形成する。これにレーザを照射すると、非晶質シリコンが結晶化して多結晶シリコン膜となるので、これを半導体層52とする。次いで、この多結晶シリコン膜をパターニングした後、ゲート絶縁膜を成膜し、ゲート電極57を成膜してパターニングする。そしてリンやボロンなどの不純物をゲート電極を用いて自己整合的に多結晶シリコン膜に打ち込み、活性化し、CMOS構造のソース領域及びドレイン領域を形成する。層間絶縁膜58を成膜し、コンタクトホール53を開口し、ソース電極54及びドレイン電極54をパターン形成する。さらにこれを被覆するように保護層59を形成して、LTPS−TFTを備えた駆動回路50を得る。
【0040】
暫定基板22上には、なるべく多くの駆動回路50を形成することが好ましい。1枚の暫定基板から多くの転写を行うことにより、材料と製造工程との無駄を省き、省エネルギーで半導体装置を製造できるためである。暫定基板22上の駆動回路50a、50bの配列パターンの一実施の形態を図3に示した。図3は駆動回路50a、50bが形成された側からの暫定基板22の概略平面図である。
【0041】
本実施の形態においては、駆動回路50a、50bは、転写先のフレキシブル基板20上での配列状態に対応させて暫定基板22上に配列形成する。すなわち、駆動回路50aと駆動回路50bとは、すでに説明したように、フレキシブル基板20上において、互いに隣り合う2辺の周縁部に概略L字をなすように配列されるので、駆動回路50a、50bを概略L字状に整列させて1群の素子チップ群Tとし、複数の素子チップ群Tを暫定基板22に配列する。図3において素子チップ群Tのなす領域を破線で示した。
【0042】
暫定基板22に、より多くの素子チップ群Tを配置するためには、素子チップ群T同士の間に空隙をなるべく設けずに、素子チップ群TのL字型の外形状の方向を揃えた状態で配置する。すなわち、隣り合った素子チップ群T1、T2に注目すると、それらのL字の長辺同士と、短辺同士とがそれぞれ平行となるように配置する。さらに暫定基板22の長辺と素子チップ群TのL字の長辺とを平行にし、かつ、暫定基板22の一方の長辺L1から他方の長辺L2へ向かって、素子チップ群T1、T2、…を帯状に配列して素子チップ列Wを形成する。図3中、この素子チップ列Wを一点破線で示した。
【0043】
一群の素子チップ群Tからなる素子チップ列Wにおいては、暫定基板22の角部22cと、各素子チップ群TのL字の屈曲部Tcとが同じ方向になるようにし、角部22cに最も近い素子チップ群T1を先頭として、互いの素子チップ群Tが重なり合わないように、できるだけ多くの素子チップ群Tを帯状に配列する。そして、暫定基板22上にこのような素子チップ列Wを複数列配置する。このようにすると、暫定基板22に非常に多数の素子チップ群Tを形成することができ、1枚の暫定基板から多数回の転写を行うことができるようになる。
【0044】
図2eに示すように、暫定基板22を反転して、駆動回路50の端子部56が金属膜パターン3に対向するようにして、暫定基板22とフレキシブル基板20とを配置する。この際に、本発明の製造方法にあっては、フレキシブル基板20に支持基板21が貼着されているので、フレキシブル基板20と暫定基板22とに十分な押圧力を加えることができる。また、このような押圧力を加えても、フレキシブル基板20に反りや撓みが発生することがない。この際に、接着剤51を硬化させる目的で、熱を加えてもよい。
【0045】
1回の転写工程では、1つの素子チップ群Tを一単位として転写する。素子チップ群Tの転写順は特に限定されるものではないが、列暫定基板22上における素子チップ群Tの屈曲部Tcが指す向きと反対側に位置する素子チップ群Tzを最初とすることが好ましい。素子チップ群Tzは、最初の素子チップ列Wの先頭に位置する素子チップ群T1から最も遠い位置に配置された素子チップ群Tzである。転写先であるフレキシブル基板20には、すでに金属膜パターン3が形成されているので、素子チップ列Wの先頭(角部22c側)から転写を行うと、列の後ろに配置された素子チップ群Tとフレキシブル基板20上の金属膜パターン3とが接触する恐れがあるためである。
【0046】
次に、接着剤51が塗布された領域に位置する駆動回路50の一面側に、暫定基板22の裏面側(TFT非形成面)から、レーザ光を照射する。すると、剥離層23の原子や分子の結合が弱まり、また、剥離層23内の水素が分子化し、結晶の結合から分離され、すなわち、素子チップ群Tと暫定基板22との結合力が完全になくなり、レーザ光が照射された部分の素子チップ群Tを容易に取り外すことが可能となる。この後、暫定基板22とフレキシブル基板20とを引き離すと、図2fに示したように、暫定基板22上から素子チップ群Tが除去されるとともに、当該素子チップ群Tに属する駆動回路50a、50bがフレキシブル基板20上の所定位置に転写される。
ここでのレーザ光照射は、素子チップ群TのなすL字に沿って移動させる。またレーザ光の照射スポットの径は、高精度での照射が可能なように、各駆動回路50a、50bの短径よりも小さいことが好ましい。
【0047】
この後、有機TFT10aを形成する。すでに、有機TFT10aのソース電極及びドレイン電極30は、フレキシブル基板20上に形成してあるので、ここに有機半導体層31を積層する。本発明の製造方法においては、素子チップ群Tを転写した後に、有機TFT10aをフレキシブル基板20上に形成することで、一連の工程において、有機TFT10aの半導体層に対して熱負荷を与える工程数が最小で済むことになる。特に有機半導体層31の成膜後に、洗浄や加熱を伴う工程がないので、有機半導体層31が水分や熱によって劣化する恐れがなくなる。
【0048】
有機半導体層31は液相プロセスによって塗布形成されるので、当該液相プロセスの前処理として、ソース電極及びドレイン電極30の表面を分子レベルで清浄化する必要がある。したがって、ソース電極及びドレイン電極30が形成されたフレキシブル基板20を水、有機溶剤で洗浄した後、酸素プラズマによって表面処理を施す。このようなプラズマ処理においては、チャンバ内を真空ポンプによって減圧し、酸素、窒素、アルゴン、水素、等のガスを導入して生成したプラズマに対して基板を曝すことが標準的な方法である。プラズマ処理は大気圧プラズマを用いる方法でもよい。
【0049】
酸素プラズマ処理を施した後に、インクジェット法(液滴吐出法)に代表される液相プロセスによって有機半導体層31を形成する。有機半導体層31の材料としては、低分子系有機半導体材料、ポリマー有機半導体材料のいずれも使用することができる。
ポリマー有機半導体材料としては、ポリ(3−アルキルチオフェン)(ポリ(3−ヘキシルチオフェン)(P3HT)、ポリ(3−オクチルチオフェン)、ポリ(2,5−チエニレンビニレン)(PTV)、ポリ(パラ−フェニレンビニレン)(PPV)、ポリ(9,9−ジオクチルフルオレン−コ−ビス−N,N’−(4−メトキシフェニル)−ビス−N,N’−フェニル−1,4−フェニレンジアミン)(PFMO)、ポリ(9,9ジオクチルフルオレン−コ−ベンゾチアジアゾール)(BT)、フルオレン−トリアリルアミン共重合体、トリアリルアミン系ポリマー、フルオレンビチオフェン共重合体等が挙げられる。
【0050】
低分子系有機半導体としては、例えば、C60、あるいは、金属フタロシアニン、あるいは、それらの置換誘導体、あるいは、アントラセン、テトラセン、ペンタセン、ヘキサセン等のアセン分子材料、あるいは、α−オリゴチオフェン類、具体的にはクォーターチオフェン(4T)、セキシチオフェン(6T)、オクチチオフェン(8T)、ジヘキシルクォーターチオフェン(DH4T)、ジヘキルセキシチオフェン(DH6T)、等が挙げられる。
【0051】
これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができるが、特に、高分子の有機半導体材料を用いるのが好ましい。高分子の有機半導体材料は、簡易な方法で成膜することができるとともに、比較的容易に配向させることができる。また、このうち、空気中で酸化され難く、安定であること等の理由から、フルオレン−ビチオフェン共重合体、あるいは、ポリアリールアミンを用いるのが特に好ましい。
【0052】
このようにして形成された有機半導体層31上に、絶縁性のポリマーをスピンコートで塗布し、絶縁層32を形成する。絶縁層32としては、公知のゲート絶縁体材料であれば、種類は特に限定されるものではない。ここでは、有機材料を用いるのが良く、ポリビニルフェノール、ポリイミド、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセテート、あるいはポリイソブチレンに代表されるポリオレフィン系ポリマー等が挙げられる。形成方法としては、例えば、スピンコート法、インクジェット法等の湿式法を用いて形成することができる。
【0053】
ここで、溶液の塗布によって絶縁層32を作製する場合、絶縁層32の溶液の溶媒が、有機半導体層31や基板20を膨潤させたり、溶解させたりしないことが必要である。有機半導体層31自体が溶媒に可溶である場合は特に注意が必要である。有機半導体層31が芳香環を含む共役性分子、又は、共役性高分子であるため芳香系炭化水素には溶けやすい。したがって、絶縁層32の塗布には芳香系炭化水素以外の炭化水素、或いは、ケトン系、エーテル系、エステル系の有機溶媒を使うことが望ましい。また、絶縁層32は、後述するゲート電極40の液体材料に対して非溶解性の特性を有していることが好ましい。
【0054】
次に、ゲート電極40(走査線34b)の材料である液体材料を絶縁層32に向けて液滴として滴下する。
液体材料の吐出は、インクジェット法によって行われる。インクジェット法においては、金属膜パターン3の形成と全く同様にして、インクジェットヘッドとフレキシブル基板20とを相対移動させる移動機構が作動することにより、絶縁層32の所定位置に液体材料を吐出することが可能となる。液体材料としては、金属膜パターン3の形成と全く同様に低抵抗の金属微粒子と溶媒とを混合させた分散液を材料液体として採用するほか、PEDOT(ポリエチレンジオキシチオフェン)や金属コロイドの水分散液が採用される。
【0055】
また、ゲート電極40とともに走査線34bを形成する。これにより、有機TFT10aのゲート電極40から駆動回路50との接続部55(駆動回路50の端子部56)までが走査線34bで配線される。ここで、走査線34bは、図1aにおいてY方向に延在する配線であるので、インクジェット法によって形成するには、インクジェットヘッドとフレキシブル基板20を単一方向に走査させながら吐出することで行われる。したがって、最低限の走査(移動量)によって走査線34bを形成できる。
【0056】
次に、ゲート電極40と絶縁層32とを覆うように層間絶縁膜(図示せず)を最上層に形成した後に、フレキシブル基板20の裏面に貼着していた支持基板21を剥離すれば、本実施形態の半導体装置10が完成する。層間絶縁膜としては、前述の絶縁層32と同様の材料を用い、同様のスピンコート法、インクジェット法等の湿式法(液相プロセス)を採用することができる。
なお、上記の実施形態は、トップゲート構造の有機トランジスタの製造方法について説明したが、ボトムゲート構造の有機トランジスタの製造方法においても適用可能である。ボトムゲート構造では、下部電極としてゲート電極が採用され、当該ゲート電極上に絶縁層を介してソース電極及びドレイン電極が形成される。
【0057】
(第2の実施形態)
次に、本発明の半導体装置の製造方法の第2の実施の形態を説明する。
本実施形態が上記第1の実施形態と異なるところは、SUFTLA工程での暫定基板22に形成する駆動回路50aの配列である。この配列パターンを図4に示した。図4は、駆動回路50aが形成された側から見た暫定基板22の概略平面図である。
暫定基板22上には、同一種類の駆動回路50aが、すべて同じ方向を向いて、互いに等間隔となるように縦横に整列状態で形成されている。ここで、駆動回路50aを同方向に配置するとは、以下のようにすることである。駆動回路50aは、その構造上、他の部品と接続するための接続部の配設構造や、トランジスタ構造を有するために、長径方向と短径方向では異なる構造をしている。このため、例えば端子部に着目した場合、この端子部が同じ方向になるように暫定基板22上に駆動回路50aを配置する。
【0058】
暫定基板22上に形成された駆動回路50aの中から、図4中に破線で示したように、その配列状態が概略L字状をなすように一群の素子チップ群Tを選択し、この素子チップ群Tを一単位として剥離して、フレキシブル基板20上に転写する。ここで素子チップ群Tをなす駆動回路50aの選択は、フレキシブル基板20での駆動回路50aと同じになるようにし、これらの駆動回路50aの端子部を接着剤でフレキシブル基板20に接着した後、レーザ光照射によって素子チップ群Tをフレキシブル基板20上に転写する。この転写工程は、上記第1の実施形態と全く同様の工程によって行う。
【0059】
本実施の形態によって得られた半導体装置10の概略構成図を図5に示した。
本実施形態に係る半導体装置10は、フレキシブル基板20をなす2辺の周縁部に駆動回路50aが集合して配列されている点においては、上記第1の実施形態と全く同様であるが、データ線に接続されるデータ線ドライバ50Dと、走査線に接続される走査線ドライバ50Gとが、いずれもその長手方向をX方向に向けて配置されているという点において異なる。
さらに、第1の実施形態においては、いずれの配線も最短距離となるように、各駆動回路50a、50bの端子部が表示領域Gに対面する方向で配置されているのに対し、本実施形態においては、総ての駆動回路50aの端子部が、フレキシブル基板20上で同じ向きに配置されている点においても異なる。本実施形態においては、図5中のY方向に沿って配置された走査線ドライバ50Gにおいては、その端子部が表示領域Gに対面せずに、90度傾いた方向(図面、下方)で配置されているので、これに接続される走査線34bは、走査線ドライバ50Gの周囲を引き回されて接続されている。
【0060】
本実施形態の製造方法によれば、暫定基板22には同じ方向を向いた駆動回路50aを単純な縦横の整列状態で形成すればよいので、暫定基板22の製造工程におけるパターニングが非常に簡単であるという利点がある。また、暫定基板22に非常に多くの駆動回路50aが形成できる上に、転写すべき素子チップ群Tの配列を転写回毎に変化させることも可能であり、暫定基板22に種々の配列パターンで素子チップ群Tを形成することなく、少ない材料とエネルギーで多品種の半導体装置を製造できるようになる点において優れている。
【0061】
(第3の実施形態)
さらに、本発明の半導体装置の製造方法の第3の実施の形態を説明する。
この実施形態が上記第2の実施形態と異なるところは、転写工程を2工程にしたところである。暫定基板22は第2の実施形態で形成したと全く同様に、図4に示したものとする。本実施形態においては、2つの素子チップ群T1、T2を選択して、これらの素子チップ群T1、T2を別々にフレキシブル基板20に転写するものである。図6は本実施の形態の転写工程を概略的に示したものである。
【0062】
図6(a)に示すように、暫定基板22上には複数個の駆動回路50aを形成する。これらの駆動回路50aはいずれも同じ方向に配置されており、縦横に整列して、等間隔にて配置されている。
【0063】
図6(b)は第1の転写工程で転写する素子チップ群T1とフレキシブル基板20とを示したものである。
暫定基板22の最も外側に配置された2個の駆動回路50aを選択して、直線をなす素子チップ群T1とし、この素子チップ群T1の各接続部がフレキシブル基板20に用意された接続部に接続されるように転写を行う。図6(b)に示した例にあっては、第1の転写工程で、フレキシブル基板20の短辺に対して素子チップ群T1の列が平行となるように転写を行う。
【0064】
第1の転写工程で選択する素子チップ群T1は、暫定基板22の最も外側に配置された列の中から選び、かつ暫定基板22の角部Cに近い方から先に選ぶ。無駄なく駆動回路50aを利用できるためと、暫定基板22上に残る駆動回路50aをフレキシブル基板20と接触させないためである。また、フレキシブル基板20の一辺と、駆動回路50aの長径とが平行になるように配置することで、転写された素子チップ群T1がフレキシブル基板20の周縁部で占める面積を小さくすることができる。
【0065】
第2の転写工程で選択する素子チップ群T2は、素子チップ群T1に次いで外側に配置された列の中から選ぶ。つまり、図6(a)中、駆動回路50aの横並び列の上から順に1列目、2列目とすれば、2列目の左側から選択するわけである。本実施形態においては、1列目に3個の駆動回路50aしか配置されていないので、さらに1列目から素子チップ群T2を選択することができないが、1列に多数の駆動回路50aが形成されている場合には、素子チップ群T2を1列目から選択してもよい。
【0066】
第2の転写工程では、第1の転写工程と全く同様に、駆動回路50aの各接続部が表示領域に対面し、かつ、先に転写された素子チップ群T1の列と概略L字状をなすように配置して転写を行う。この際に、フレキシブル基板20を、その平面方向で90度回転させて転写を行う。図6(c)に示したように、フレキシブル基板20の長径に対して、素子チップ群T2の列が平行となるように転写すると、表示領域Gを囲むように、概略L字状に駆動回路を配置することができる。
【0067】
このように転写工程を2工程に分けることで、転写すべき素子チップ群T1、T2は直線列となり、素子チップ群がL字状をなす場合に比べて、素子チップ群Tを暫定基板22から選択する際の自由度が大きくなるので、暫定基板22上に形成された駆動回路50aをいっそう無駄なく転写することができるようになる。さらに、本実施の形態によれば、転写された素子チップ群Tは、いずれもその長辺側で表示領域Gに対面するように配置できるので、表示領域Gから延出されて素子チップ群Tに接続される配線を短距離で直線的に延ばし、駆動回路50aと接続することができる。よって、半導体装置10の周辺回路部分での配線が占める面積をより小さくすることができ、小型で軽量の半導体装置を製造できる。
さらに、本発明の実施の形態によれば、転写工程でのレーザ光のスキャン方向を一方向にできるので、転写対象の素子チップ群Tに対して一枚のレーザマスクで照射ができるという利点もある。
なお、図6に示した例にあっては、フレキシブル基板20を回転させたが、本発明の製造方法はこれに限定されるものではなく、暫定基板22を回転させてもよいのはいうまでもない。また、フレキシブル基板20の裏面には、支持基板21が貼着されているので、基板の回転の際、また総ての転写工程においても、非常に取り扱い易いものとなっている。
【0068】
以上説明したように、本発明の製造方法においては、一枚の暫定基板22に多くの素子チップ群Tを形成することができるので、低コストで半導体装置を製造することができる。また、製造に使用する暫定基板22の枚数を少なくすることができ、材料やエネルギーの使用量を最小限に抑えることができる。例えば、一枚の暫定基板22に形成可能な素子チップ群Tの数が10倍になれば、暫定基板22の必要枚数は1/10で済むので、材料やエネルギーを最大1/10に抑えることができる。
【0069】
また、フレキシブル基板20に支持基板21を貼り付けておくので、各製造工程においてフレキシブル基板20を剛直な基板として取り扱いでき、ハンドリングが容易となる。また、支持基板によってフレキシブル基板20の反りやうねりが無くなるので、各工程での位置あわせが非常に容易となる。
なお、本実施形態においては、有機半導体層を備えるスイッチング素子として有機TFTを用いており、駆動回路としてLTPS−TFTを含むものを用いているが、本発明の半導体装置の製造方法はこれに限定されるものではない。
【0070】
(電気光学装置)
次に、図7を参照して本発明の一実施形態に相当する電気光学装置を説明する。ここでは電気光学装置として、上述した半導体装置を用いて構成した電気泳動表示装置について説明する。この電気泳動表示装置EPDは、半導体装置10をTFT基板として用い、これに対向するように対向基板60を配置し、これら両基板10、60の間に電気泳動層(電気光学層)70を配置することによって構成される。
【0071】
ここで、電気泳動層70は、マイクロカプセル70aを複数備えた構成となっている。このマイクロカプセル70aは樹脂皮膜によって形成されており、マイクロカプセル70aの大きさは1画素の大きさと同程度とされ、表示領域全域を覆うように複数配置されている。また、マイクロカプセル70aは、実際には隣接するマイクロカプセル70a同士が密着するため、表示領域はマイクロカプセル70aによって隙間なく覆われている。マイクロカプセル70aには、分散媒71、電気泳動粒子72等を有する電気泳動分散液73が封入されている。
【0072】
次に、分散媒71、電気泳動粒子72を有する電気泳動分散液73について説明する。
電気泳動分散液73は、染料によって染色された分散媒71中に電気泳動粒子72を分散させた構成となっている。電気泳動粒子72は、無機酸化物又は無機水酸化物からなる直径0.01μm〜10μm程度の略球状の微粒子であり、上記分散媒71と異なる色相(白色及び黒色を含む)を有している。このように酸化物又は水酸化物からなる電気泳動粒子72には固有の表面等電点が存在し、分散媒71の水素イオン指数pHによってその表面電荷密度(帯電量)が変化する。
【0073】
ここで、表面等電点とは、水溶液中における両性電解質の電荷の代数和がゼロとなる状態を水素イオン指数pHによって示したものである。例えば、分散媒71のpHが電気泳動粒子72の表面等電点に等しい場合には、粒子の実効電荷はゼロとなり、粒子は外部電界に対して無反応な状態となる。また、分散媒71のpHが粒子の表面等電点よりも低い場合には、粒子の表面は下式(1)によりプラスの電荷を帯びる。逆に、分散媒71のpHが粒子の表面等電点よりも高い場合には、粒子の表面は下式(2)によりマイナスの電荷を帯びる。
pH低:M−OH+H(過剰)+OH→M−OH+OH ・・・(1)
pH高:M−OH+H+OH(過剰)→M−OH+H ・・・(2)
【0074】
なお、分散媒71のpHと粒子の表面等電点との差を大きくしていった場合、反応式(1)又は(2)に従って粒子の帯電量は増加していくが、この差が所定値以上となると略飽和し、pHをそれ以上変化させても帯電量は変化しない。この差の値は、粒子の種類、大きさ、形状等によって異なるものの、概ね1以上であればどのような粒子においても帯電量は略飽和すると考えられる。
【0075】
上述の電気泳動粒子72としては、例えば、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、ベンガラ、酸化アルミニウム、黒色低次酸化チタン、酸化クロム、ベーマイト、FeOOH、二酸化珪素、水酸化マグネシウム、水酸化ニッケル、酸化ジルコニウム、酸化銅等が用いられている。
【0076】
また、このような電気泳動粒子72は、単独の微粒子としてだけでなく、各種表面改質を施した状態でも用いることが可能である。このような表面改質の方法としては、例えば、粒子表面をアクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂等のポリマーでコーティング処理する方法や、シラン系、チタネート系、アルミニウム系、弗素系等のカップリング剤でカップリング処理する方法や、アクリル系モノマー、スチレンモノマー、エポキシ系モノマー、イソシアネート系モノマー等とグラフト重合処理する方法等があり、これらの処理を単独又は二種類以上組み合わせて行うことができる。
分散媒71には、炭化水素、ハロゲン化炭化水素、エーテル等の非水系有機溶媒が用いられており、スピリトブラック、オイルイエロー、オイルブルー、オイルグリーン、バリファーストブルー、マクロレックスブルー、オイルブラウン、スーダンブラック、ファーストオレンジ等の染料によって染色されて、電気泳動粒子72と異なる色相を呈している。
【0077】
このように構成された電気泳動表示装置においては、先に記載した半導体装置10を備えた構成となっているので、低コスト、低温、低エネルギーで製造された電気泳動表示装置となる。また、フレキシブルな表示装置となる。
なお、本発明の半導体装置を利用した電気光学装置は、本実施の形態に限定されるものではなく、有機ELディスプレイ等にも好適に用いることができるのは勿論である。
【0078】
(電子機器)
上述した電気泳動表示装置は、表示部を備えた様々な電子機器に適用される。以下、上述の電気泳動表示装置を備えた電子機器の例について説明する。
まず、電気泳動表示装置をフレキシブルな電子ペーパーに適用した例について説明する。図8はこの電子ペーパーの構成を示す斜視図であり、電子ペーパー1400は、本発明の電気泳動表示装置を表示部1401として備える。電子ペーパー1400は、従来の紙と同様の質感及び柔軟性を有する書き換え可能なシートからなる本体1402を備えて構成されている。
【0079】
また、図9は、電子ノートの構成を示す斜視図であり、電子ノート1500は、図8で示した電子ペーパー1400が複数枚束ねられ、カバー1501に挟まれているものである。カバー1501は、例えば外部の装置から送られる表示データを入力する不図示の表示データ入力手段を備える。これにより、その表示データに応じて、電子ペーパーが束ねられた状態のまま、表示内容を変更したり更新したりできる。
【0080】
また、上述した例に加えて、他の例として、液晶テレビ、ビューファインダ型やモニタ直視型のビデオテープレコーダ、カーナビゲーション装置、ページャ、電子手帳、電卓、ワードプロセッサ、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、タッチパネルを備えた機器等が挙げられる。本発明に係るの電気光学装置は、こうした電子機器の表示部としても適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1a】本発明の製造方法によって得られた半導体装置の一実施形態の概略平面図。
【図1b】は本発明の製造方法によって得られた半導体装置の一実施形態のA−A´線概略断面図。
【図2a】本発明の製造方法を説明するための工程図。
【図2b】本発明の製造方法を説明するための工程図。
【図2c】本発明の製造方法を説明するための工程図。
【図2d】本発明の製造方法を説明するための工程図。
【図2e】本発明の製造方法を説明するための工程図。
【図2f】本発明の製造方法を説明するための工程図。
【図2g】本発明の製造方法を説明するための工程図。
【図3】は本発明の製造方法の第1実施形態で用いる暫定基板の概略構成図。
【図4】は本発明の製造方法の第2実施形態で用いる暫定基板の概略構成図。
【図5】は本発明の製造方法によって得られる半導体装置の一実施形態の概略平面図。
【図6】は本発明の製造方法を説明するための工程図。
【図7】は本発明の電気光学装置の一例を示す図。
【図8】は本発明の電子機器の一例を示す図。
【図9】は本発明の電子機器の他の一例を示す図。
【図10】は半導体装置の製造に用いられる暫定基板の構成の一例を示す概略図。
【符号の説明】
【0082】
10…半導体装置、10a…有機トランジスタ(有機TFT)、20…フレキシブル基板、21…支持基板、22…暫定基板、50,50a,50b…駆動回路、T,T1,T2,Tz…素子チップ群、W…素子チップ列、EPD…電気泳動表示装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレキシブル基板の互いに隣り合う2辺の周縁部に概略L字状に整列配置された複数個の素子チップと、該素子チップに接続された回路と、を備えてなる半導体装置の製造方法であって、
暫定基板上に、上記フレキシブル基板表面での配置状態となるように上記複数個の素子チップを概略L字状に整列させて素子チップ群とし、前記素子チップ群で形成されたL字の方向を揃えた状態で、複数個の前記素子チップ群を、前記暫定基板の一方の長辺から他方の長辺へ向かって、暫定基板の周縁角部を先頭として帯状に配列して素子チップ列とし、前記素子チップ列を複数列、上記暫定基板上に形成する工程と、
前記暫定基板から前記素子チップ群を一単位として剥離し、前記フレキシブル基板表面へ転写する工程と、
前記素子チップ群の各素子チップと前記フレキシブル基板上の回路とを接続する工程と
を有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
フレキシブル基板の互いに隣り合う2辺の周縁部に概略L字状に整列配置された複数個の素子チップと、該素子チップに接続された回路と、を備えてなる半導体装置の製造方法であって、
暫定基板上に、複数個の素子チップを整列させて形成する工程と、
前記素子チップの中から、その配列状態が概略L字状をなすように一群の素子チップ群を選択し、該素子チップ群を一単位として剥離して、前記フレキシブル基板上に転写する工程と、
転写された前記各素子チップと上記回路とを接続する工程と
を有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項3】
フレキシブル基板の互いに隣り合う2辺の周縁部に概略L字状に整列配置された複数個の素子チップと、該素子チップに接続された回路と、を備えてなる半導体装置の製造方法であって、
暫定基板上に、複数個の素子チップを整列させて形成する工程と、
前記素子チップの中から、その配列状態がそれぞれに直線をなす2列の素子チップ群を選択し、該素子チップ群の一方を剥離して前記フレキシブル基板表面に転写することで前記フレキシブル基板上に第1の素子チップ列を形成する第1の転写工程と、
前記第1の素子チップ列と概略L字状を成す位置に前記素子チップを配置可能な位置に前記暫定基板若しくは前記フレキシブル基板を移動させる工程と、
前記素子チップ群の他方を剥離して前記フレキシブル基板表面に転写することで前記フレキシブル基板上に第2の素子チップ列を形成する第2の転写工程と、
前記第1及び第2の素子チップ列の各素子チップと前記フレキシブル基板上の回路とを接続する工程と
を有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記素子チップ群を前記フレキシブル基板表面に転写するに先立って、前記フレキシブル基板の裏面に支持基板を貼着する工程を有することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の製造方法によって製造されたことを特徴とする半導体装置。
【請求項6】
請求項5に記載の半導体装置を備えたことを特徴とする電気光学装置。

【図1a】
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【図1b】
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【図2a】
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【図2b】
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【図2c】
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【図2d】
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【図2e】
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【図2f】
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【図2g】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−21939(P2008−21939A)
【公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−194734(P2006−194734)
【出願日】平成18年7月14日(2006.7.14)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】