説明

半導体装置の製造方法、電子機器の製造方法および半導体製造装置

【課題】基板に対する熱負荷が軽減でき、大面積の基板の熱処理を行うことが可能な半導体装置の製造方法を提供する。特に、熱処理特性を向上させ、形成される半導体装置の特性を向上させる。
【解決手段】基板100上にシリコン膜を形成し、このシリコン膜に対し、水素及び酸素の混合ガスを燃料とするガスバーナー部22の火炎を基板100とガスバーナー(22a)との間に配置された遮蔽器22bの開口部22dを介して照射することにより熱処理を施す。その結果、火炎の広がりを抑えることができ、より高温でかつ均一性の高い熱処理を行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体装置の製造方法、電子機器の製造方法および半導体製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
CVD(chemical vapor deposition、化学気相成長)法などによって基板上に成膜したシリコンの再結晶化を図る結晶化方法には、600〜1000℃の高温熱処理による固相成長法、エキシマレーザ照射を行うレーザアニール法、熱プラズマを熱源とする熱プラズマジェット法(特許文献1、非特許文献1)等がある。
【特許文献1】特開平11−145148号公報
【非特許文献1】Crystallization of Si Thin Film Using Thermal Plasma Jet and Its Application to Thin-Film Transistor Fabrication, S.Higashi, AM-LCD '04 Technical Digest Papers, p.179
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述した熱処理による固相成長法では、基板が600〜1000℃の高温に加熱されるため、基板に対する熱負荷が大きく、基板の歪みや割れが生じやすい。また、結晶化に長時間を必要とし、生産性に乏しい。また、レーザアニール法によれば、耐熱性の低いガラス基板を用いることができるものの、高価な設備が必要とされるとともに、素子特性のばらつきが大きくなる傾向がある。
【0004】
そこで、本発明者らは、基板に対する熱負荷が軽減でき、大面積の基板の熱処理を行うことが可能な半導体装置の製造方法として、水素及び酸素の混合ガスを燃料とするガスバーナーの火炎を施すことによる熱処理を研究対象とし(例えば、特願2005−329205等参照)、当該処理特性を向上させるべく鋭意検討している。
【0005】
そこで、本発明は、基板に対する熱負荷が軽減でき、大面積の基板の熱処理を行うことが可能な半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。また、本発明は、火炎の照射面積を制御することにより、熱処理特性の向上を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明に係る半導体装置の製造方法は、基板上に第1膜を形成する工程と、上記第1膜に対し、水素及び酸素の混合ガスを燃料とするガスバーナーの火炎を、上記基板と上記ガスバーナーとの間に配置された遮蔽板の開口部を介して照射することにより熱処理を施す工程と、を有する。
【0007】
このように、遮蔽板の開口部を介して火炎を照射することにより、火炎の広がりを抑えることができ(照射面積が小さくなり)、火炎温度の均一性を図ることができる。
【0008】
例えば、上記遮蔽板の開口部の近傍に排気口が設けられており、上記熱処理は、上記排気口から排気を行ないながら行われる。かかる方法によれば、火炎の広がりをさらに抑えることができる。
【0009】
例えば、上記開口部からは火炎の外炎もしくは外炎と内炎の境界部が放射される。かかる方法によれば、開口部から放射される火炎の温度を高くすることができる。
【0010】
例えば、上記基板と上記開口部までの距離は、上記開口部から上記ガスバーナーまでの距離より小さい。かかる方法によれば、火炎の広がりを抑えることができる。
【0011】
例えば、上記第1膜は、半導体膜であり、上記熱処理によって、上記半導体膜の再結晶化が行なわれる。かかる方法によれば、半導体膜の再結晶化を行なうことができる。
【0012】
(2)本発明に係る電子機器の製造方法は、上記半導体装置の製造方法を有する。かかる方法によれば、特性の良好な電子機器を製造することができる。電子機器は、上述した半導体装置の製造方法を使用して製作した表示器等を含むものであり、電子機器には、ビデオカメラ、テレビ、大型スクリーン、携帯電話、パーソナルコンピュータ、携帯型情報機器(いわゆるPDA)、その他各種のものが含まれる。
【0013】
(3)本発明に係る半導体製造装置は、水素及び酸素の混合ガス供給部と、上記水素及び酸素の混合ガスを燃焼して火炎を形成するガスバーナーと、基板を上記ガスバーナーの火炎に対して直交する方向に相対的に移動する移動手段と、上記基板と上記ガスバーナーとの間に配置され、開口部を有する遮蔽板とを有し、上記ガスバーナーの火炎を上記開口部を介して上記基板に放射する。
【0014】
かかる構成によれば、遮蔽板の開口部を介して火炎を照射することにより、火炎の広がりを抑えることができ、火炎温度の均一性を図ることができる。
【0015】
例えば、上記ガスバーナーは、上記水素及び酸素の混合ガスを導出し、略直線状の開口部からライン状の火炎を放射する。かかる構成によれば、ライン状の火炎を放射することにより基板上の膜に対し効率的に熱処理を行うことができる。
【0016】
例えば、上記ガスバーナーは、上記水素及び酸素の混合ガスを導出し、略直線状に一定のピッチで形成された複数の開口部から複数の火炎を放射する。かかる構成によれば、略直線状に一定のピッチで形成された複数の開口部から複数の火炎を放射することにより基板上の膜に対し効率的に熱処理を行うことができる。
【0017】
例えば、上記遮蔽板の開口部は、略直線状である。かかる構成によれば、ガスバーナーからの火炎の広がりを抑え、ライン状とすることができる。
【0018】
例えば、上記遮蔽板は、上記開口部の外周に排気口を有する。かかる構成によれば、排気口からの排気により火炎の広がりをさらに抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本実施の形態では、水素及び酸素の混合ガスを燃料とするガスバーナーを用いて、基板上の膜に対し、熱処理を行なう。以下、この熱処理を「水素火炎処理」と言うことがある。また、上記ガスバーナーの火炎を「水素火炎」と言うことがある。この熱処理には、例えば、シリコン膜(半導体膜、半導体層)の再結晶化の際の熱処理がある。
【0020】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しながら詳細に説明する。なお、同一の機能を有するものには同一もしくは関連の符号を付し、その繰り返しの説明を省略する。
【0021】
(半導体製造装置)
まず、本実施の形態の半導体装置の製造に用いられる半導体製造装置について図1〜図7を参照しながら説明する。
【0022】
図1は、本実施の形態の半導体装置の製造に用いられる半導体製造装置(半導体素子製造装置)の構成例を示す図である。図1において、水タンク11には純水が蓄えられおり、電気分解槽(電気分解装置)12に水を供給する。水は電気分解槽12によって電気分解されて水素ガス及び酸素ガスに分離される。分離された水素ガス及び酸素ガスはガスコントローラ15に供給される。ガスコントローラ15はコンピュータシステムと調圧弁、流量調整弁、各種センサ等によって構成されており、予め設定されたプログラムに従って下流のガスバーナー22に供給する各種ガス(水素ガスや酸素ガス)の供給量、供給圧力、各種ガスの混合比等を調整する。
【0023】
また、ガスコントローラ15は図示しないガス貯蔵タンクから供給される、水素ガス(H2)、酸素ガス(O2)を更に前述の混合ガスに導入し、ガスバーナー22に供給する。これにより、混合ガスの水素および酸素の混合比(混合比率)を水(H2O)の化学量論組成比(H2:O2=2mol:1mol)からずらし、水素過剰(水素リッチ)あるいは酸素過剰(酸素リッチ)な混合ガスを得ることができる。
【0024】
また、ガスコントローラ15は、図示しないガス貯蔵タンクから供給される、アルゴン(Ar)、ヘリウム(He)、窒素(N2)等の不活性ガスを更に上記混合ガスに導入することができる。これにより、ガスバーナー22の火炎温度(燃焼温度)や火炎状態の制御を行うことができる。
【0025】
上述した水タンク11、電気分解槽12およびガスコントローラ15は燃料(原料)供給部を構成する。
【0026】
ガスコントローラ15の下流には閉空間を形成するチャンバ(処理室)21が配置されている。チャンバ21には、熱処理の火炎を発生するガスバーナー22、処理対象の基板(半導体基板やガラス基板等)100を載置してガスバーナー22に対して相対的に移動可能とするステージ部(載置台)51等が配置されている。
【0027】
チャンバ21内の雰囲気は、これに限定されないが、例えば、内部圧力が大気圧〜0.5MPa程度、内部温度が室温〜100℃程度に設定可能なよう構成されている。チャンバ21内の気圧を所望状態に保つために、前述のアルゴンなどの不活性ガスをチャンバ21内に導入することができる。
【0028】
ステージ部51は、基板を載置した台を一定速度で移動する機構が設けられている。また、急激な温度差等による基板100のヒートショックを防止するため、基板100の載置台に加熱(予熱)や冷却を行う機構が設けられており、外部の温度調節部52によってこの温度制御がなされる。加熱には電気ヒーター機構、冷却には冷却ガスや冷却水を用いる冷却機構などが用いられる。
【0029】
図2は、半導体製造装置のガスバーナー部の構成例を示す平面図である。図2に示すように、図1の半導体製造装置のガスバーナー部22はステージ部51の幅(図示の上下方向)よりも大きい長手部材によって形成され、ステージ部51の幅より広い幅の火炎を放射できる。ガスバーナー22の長手方向と直交する方向(図中の矢印方向)にステージ部51を移動することにより、あるいはガスバーナー部22を移動することによって、ガスバーナー部22が基板100を走査するように構成されている。
【0030】
図3は、半導体製造装置のガスバーナー部22の第1構成例を示す断面図である。図示すように、ガスバーナー部22は、混合ガスを導出し、火炎の出口穴(放射口、第1ノズル)22eが設けられた導気管(ガスバーナー)22aを有し、この導気管22aは遮蔽器22bによって囲まれ、導気管から照射された火炎は、遮蔽器22bのノズル開口部(第2ノズル)22dから噴出す。例えば、導気管22aは、SUS等の金属合金よりなり、遮蔽器は、石英よりなる。なお、導気管を石英としても良い。また、これらをセラミック製としても良い。
【0031】
このように、本実施の形態においては、遮蔽器22bのノズル開口部22dを介して火炎を照射したので、火炎の広がりを抑えることができる。図3中の基板100の下に示す斜線領域は、基板100中の熱分布を示す。この場合、熱分布幅はW1となる。なお、ここでは熱分布幅の端部は、基板のバルク温度と規定する。また、基板100と火炎の出口穴(ガスバーナーの端部)22eまでの距離(高さ)をH2と、基板100と遮蔽器22bのノズル開口部22dまでの距離(高さ)をH1(<H2)とする。ここでは、バルク温度を、基板表面(火炎照射部を除く)の平均温度と定義する。
【0032】
これに対し、図4に示すように、導気管22aから直接火炎を照射した場合には、基板100上において火炎が広がり、熱分布幅がWa(Wa>W1)となる。図4は、本実施の形態の効果を説明するための比較例を示す断面図である。
【0033】
図5は、半導体製造装置のガスバーナー部の具体的な構成例を示す図である。図5(A)はガスバーナー部の短手方向における断面図、図5(B)はガスバーナー部の長手方向における部分断面図を示し、図5(C)はガスバーナー部を模式的に示した斜視図であり、図5(D)は、遮蔽器22bの底面の一部を示す平面図である。
【0034】
図示すように、この場合も、ガスバーナー部22は、混合ガスを導出し、火炎の出口穴(放射口)22eが設けられた導気管22a、導気管22aを囲む遮蔽器22b、火炎が遮蔽器22bから外方に出る出口となるノズル開口部22dなどによって構成されている。導気管22aの下方には、略直線状(スリット状、略矩形状)の出口穴22eが設けられている。よって、導気管22aはラインバーナーとなり、ライン状の火炎が放射される。この出口穴22eに対応する位置に遮蔽器22bのノズル開口部22dが形成されている。このノズル開口部22dは、図5(D)に示すようにスリット(略矩形)である。例えば、スリット幅は1mm以下である。
【0035】
図6は、半導体製造装置のガスバーナー部の具体的な他の構成例を示す図である。図6(A)はガスバーナー部の短手方向における断面図、図6(B)はガスバーナー部の長手方向における部分断面図を示し、図6(C)はガスバーナー部を模式的に示した斜視図であり、図6(D)は、遮蔽器22bの底面の一部を示す平面図である。
【0036】
図5と異なる箇所は、導気管22aの下方には、直線状に複数の出口穴22eが設けられている点である。この出口穴22eの間隔は一定である。よって、導気管22aからは複数のスポット火炎が直線状に放射される。この「スポット火炎」とは、1の開口部から放射される火炎をいう。
【0037】
図5および図6に示す構成の装置(ガスバーナー)においても、ガスバーナー部22の走査方向(図2においては、x方向)における火炎が広がりを抑えることができる。より勢い良く火炎を放射するラインガンとすることができる。言い換えれば、照射部位端部における温度勾配を急峻なものとすることができる。
【0038】
また、図5に示す構成においては、火炎の出口穴(放射口)22eをスリット状としたので、ガスバーナー部22の走査方向と直交する方向(図2においては、y方向)における火炎温度の均一性を向上させることができる。図6に示す構成においても、火炎の出口穴(放射口)22eの間隔を狭く設定することで、ガスバーナー部22の走査方向と直交する方向(図2においては、y方向)における火炎温度の均一性を向上させることができる。また、スリットを形成する場合と比較し、略円形の開口(22e)を複数形成する方が、導気管の加工が容易である。また、基板の大面積化に伴い、導気管22aが長くなっても、開口数を増やすだけで容易に対応することができる。
【0039】
図7は、半導体製造装置のガスバーナー部の他の構成例を示す図である。図7(A)はガスバーナー部の短手方向における断面図、図7(B)は、遮蔽器22bの底面の一部を示す平面図である。図5と異なる箇所は、遮蔽器22bの底面に排気口22gを設けた点にある。排気口22gから遮蔽器22bの側壁を通る排気管が設けられている。例えば、導気管への混合ガスの供給速度は100m/s以上であり、排気速度は50m/s以上である。
【0040】
このように、本構成によれば、ノズル開口部22dの外周に排気口22gを設けたので、火炎が広がりをさらに抑えることができる。熱分布幅W2を小さくすることができる(W2<W1<Wa)。また、ノズル開口部22dの幅や高さを調整することで、火炎の照射面積を制御することができる。よって、急速な昇温が必要な熱処理においては、火炎の照射面積を小さくすることで、小面積に熱を集中して加えることが可能となる。つまり、加える熱の制御性を向上させることができる。
【0041】
また、火炎は、還元性の強い内炎(還元炎)と酸化性の強い外炎(酸化炎)とを有し、いずれを基板に接触させるかによって、処理条件に応じた設定をすることができる。内炎は比較的低温(500℃程度)であり、外炎は、高温(1400〜1500℃程度)である。内炎と外炎との間は、さらに高温で1800℃程度となる。
【0042】
よって、上記構成においては、基板100と火炎の出口穴22eまでの距離H2、基板100とノズル開口部22dまでの距離H1を適宜調整することが可能であり、火炎の広がりを抑えつつ、所望の火炎部位(内炎、外炎、これらの境界部)を基板100に照射することができる。
【0043】
これに対し、火炎の出口穴22e自身を小さくすることも考えられるが、この場合、火炎自身が小さくなってしまう。よって、上記のように、出口穴22eの下部にノズル開口部22dを設ける構成(ツインノズル構造)とすることで上記効果を奏することができる。
【0044】
以上説明した半導体製造装置においては、上記の他、次のような効果を奏する。まず、基板を横切るような長尺のガスバーナーを備えるので、窓ガラスのような大面積の基板の熱処理を行うことができる。また、燃料となる水素と酸素を水の電気分解によって得ることができるので、ガス材料の入手が容易でランニングコストが安価である。
【0045】
また、熱処理工程において、水素と酸素の混合比及び供給量を適宜に設定することによって還元雰囲気(水素リッチ)あるいは酸化雰囲気(酸素リッチ)を容易に設定できる。
【0046】
また、燃料となる水素と酸素を水の電気分解によって得るので、水(H2O)の化学量論組成比である2mol:1molの水素及び酸素の混合ガスを容易に得ることができ、この混合ガスに別途酸素もしくは水素を添加することで、還元雰囲気(水素リッチ)あるいは酸化雰囲気(酸素リッチ)を容易に設定できる。
【0047】
また、火炎温度の調整も容易である。更に、必要により不活性ガスを導入し、もしくは原料ガスの流量を調整して火炎状態(温度、ガス圧力など)を調整することができる。
【0048】
このようなガスバーナーを用いた処理は、生産性が高く、また、安価に処理を行うことができる。また、火炎の原料ガスが水素や酸素など、クリーンなエネルギーであり、主生成物が水であるため、環境負荷(環境破壊)を低減できる。
【0049】
なお、上記構成においては、導気管22aは遮蔽器22bによって囲む構成としたが、ガスバーナーから照射された火炎の下部に開口部を有する遮蔽板を配置してもよい。この場合も、導気管22aと遮蔽板22dが連動して動作可能に構成することが好ましい。また、遮蔽板(遮蔽器)と排気管を別部材として設けてもよい。
【0050】
(半導体装置の製造方法)
本発明の実施例では、上述した半導体製造装置を使用して、水素火炎処理を行なう。ここでは、水素及び酸素の混合ガスを燃料とするガスバーナーを用いて、シリコン膜(半導体膜、半導体層)の加熱処理による再結晶化を例に説明する。
(製造方法1)
本発明にかかる半導体装置の製造方法を、TFT(薄膜トランジスタ、Thin Film Transistor)の製造工程を例に、図8および図9を参照しながら説明する。図8および図9は、製造方法1における半導体装置の製造工程を示す工程断面図である。
【0051】
まず、図8(A)に示すように、ガラス基板(基板、石英基板、透明基板、絶縁性基板)100を準備する。ガラス基板は、液晶表示装置等に用いられ、装置によっては大面積の基板が用いられる。このガラス基板の形状は、例えば、略矩形である。この基板100上に、下地保護膜(下地酸化膜、下地絶縁膜)101として例えば酸化シリコン膜を形成する。この酸化シリコン膜は、TEOS(tetra ethyl ortho silicate、テトラエトキシシラン)および酸素ガスなどを原料ガスとして、例えばプラズマCVD(chemical vapor deposition、化学気相成長)法を用いて形成する。
【0052】
次いで、下地保護膜101上に半導体膜として例えばアモルファス状のシリコン膜102を形成する。このシリコン膜102は、例えば、SiH4(モノシラン)ガスを用いたCVD法で形成する。
【0053】
次に、シリコン膜102上に、図示しないフォトレジスト膜(以下、単に「レジスト膜」という)を形成し、露光および現像(フォトリソグラフィー)することにより、島状にレジスト膜(マスク膜、レジストマスク)を残存させる。次いで、かかるレジスト膜をマスクに、シリコン膜102をエッチングし、半導体素子領域(島状領域)を形成する。次いで、レジスト膜を除去する。以下、このフォトリソグラフィー、エッチングおよびレジスト膜の除去の処理をパターニングと言う。
【0054】
次いで、図8(B)に示すように、シリコン膜102に水素火炎処理を施し、シリコンを再結晶化する。即ち、基板100をステージ部51(図1等参照)に搭載し、ガスバーナー部22を基板100(シリコン膜102)上に走査することによって熱処理を施しシリコン膜102を再結晶化する。この際、水素火炎の走査に伴って、シリコン膜102が多結晶シリコン102aに変化するとともに、その表面に酸化シリコン膜102bが形成される(図8(C))。
【0055】
ここで、ガスバーナー部22として、図1〜図7を参照しながら詳細に説明した上記構成のものを使用する。その結果、火炎の広がりを抑えることができ、より高温でかつ均一性の高い熱処理を図ることができる。よって、多結晶シリコン膜102bの特性を向上させることができる。
【0056】
具体的には、多結晶シリコン膜102bの膜厚の均一性を向上させることができる。また、単結晶シリコン粒の粒径を大きくすることができる。また、単結晶シリコン粒の粒径のばらつきを低減することができる。
【0057】
次いで、酸化シリコン膜102bを除去し、図9(A)に示すように、ゲート絶縁膜103として例えば熱酸化もしくはCVD法により酸化シリコン膜を形成する。上記熱酸化を水素火炎処理により行ってもよい。また、酸化シリコン膜102bを残存させ、ゲート絶縁膜もしくはその一部として用いてもよい。
【0058】
次いでゲート絶縁膜103上に、導電性膜として例えばAl(アルミニウム)等の金属材料を例えばスパッタ法により形成する。次に、導電性膜を所望の形状にパターニングし、ゲート電極(ゲート電極配線)Gを形成する。導電性膜としては、Alの他、Ta(タンタル)等の高融点金属を用いてもよい。また、ゾルゲル法やMOD(Metal-organic decomposition 、有機金属堆積法)法を用いて導電性膜を形成してもよい。即ち、金属化合物溶液を塗布および焼成することで、導電性膜を形成してもよい。この際、液滴吐出法により、ゲート電極のパターンに応じて上記溶液を塗布し、焼成することができる。この場合、パターニング工程を省略できる。
【0059】
次いで、ゲート電極Gをマスクとして多結晶シリコン膜102a中に、不純物イオンを打ち込む(ドープする、注入する)ことにより、ソース、ドレイン領域104a、104bを形成する。なお、104a、104bのうち、いずれか一方がソース領域となり、他方がドレイン領域となる。また、不純物イオンは、n型半導体層を形成する場合には、例えば、PH3(リン化水素、Phosphine)を、p型半導体層を形成する場合には、例えば、B26(ジボラン)をイオン打ち込みする。その後、熱処理を行ない、不純物イオンを活性化する。
【0060】
次いで、図9(B)に示すように、ゲート電極G上に、層間絶縁膜105を形成する。この層間絶縁膜105は、例えば、TEOSおよび酸素ガスなどを原料ガスとしたプラズマCVDにより形成することができる。また、ポリシラザン溶液などの絶縁性の液体材料を塗布し、熱処理を施す(焼成する)ことにより形成してもよい。ポリシラザン溶液を用いた場合、その焼成により酸化シリコン膜が形成される。ポリシラザン溶液とは、ポリシラザンを有機溶媒(例えばキシレン溶液)に溶かしたものである。
【0061】
次いで、層間絶縁膜105をパターニングすることにより、ソース、ドレイン領域104a、104b上にコンタクトホールを形成する。
【0062】
次いで、このコンタクトホールの内部を含む層間絶縁膜105上に、導電性膜106として例えばITO(インジウム・スズ酸化膜)をスパッタリング法を用いて形成する。導電性膜106としては、ITOの他、例えばAl、Mo(モリブデン)もしくはCu(銅)等の金属材料を用いてもよい。また、ゾルゲル法やMOD法を用いて導電性膜106を形成してもよい。
【0063】
次いで、導電性膜106を所望の形状にパターニングし、ソース、ドレイン電極(ソース、ドレイン引き出し電極、引き出し配線)106a、106bを形成する。なお、106a、106bのうち、いずれか一方がソース電極となり、他方がドレイン電極となる。
【0064】
以上の工程によって、TFTがほぼ完成する。当該TFTは、例えば、液晶表示装置、電気泳動装置や有機EL装置などの画素電極の駆動素子、また、画素領域周辺の論理回路として使用される。また、メモリを構成する素子として、また、メモリを駆動する論理回路等として使用される。
【0065】
なお、本製造方法においては、シリコン膜102をパターニングした後、水素火炎処理を行ったが、水素火炎処理を行った後、多結晶シリコン膜102aのパターニングを行なってもよい。
【0066】
このように、上記製造方法によれば、火炎の広がりを抑制することができるので、処理膜(ここでは、多結晶シリコン膜102b)の特性を向上させることができる。
(製造方法2)
製造方法1においては、火炎の広がりを抑えることで熱の集中を図ったが、製造方法2においては、火炎の走査速度を調整することにより火炎の照射部位およびその近傍の熱勾配(熱分布、温度分布)を制御する。
【0067】
なお、本製造方法においては、火炎の走査工程以外は、製造方法1と同様であるためその詳細な説明を省略する。
【0068】
図10は、ガスバーナー部122の走査方向と走査軌跡の温度分布を示す図である。図10(A)は、ガスバーナー部122の走査方向を示す図であり、図10(B)は、走査速度2.0m/sの場合の基板100の温度分布を示す図であり、図10(C)は、走査速度1.0m/sの場合の基板100の温度分布を示す図である。図10(B)および(C)において色の濃い部分ほど基板温度が高いことを示す。例えば、ノズル幅は2.8mm、走査軌跡の幅は2.8mm、ノズルと基板との距離は100mmとして検討した。
【0069】
図示するように、走査速度が大きい方(図10(B))が、基板100が急激に冷えている、言い換えれば、走査部位の熱集中が高いことが分かる。
【0070】
図11は、走査軌跡(走査部位からの距離=基板の長さL〔mm〕)と基板温度〔℃〕の関係を示すグラフである。図11からも、走査速度が大きいほど、急冷却となることがわかる。
【0071】
よって、走査速度を大きくすることで、熱を走査部位に集中させることができる。その結果、基板のバルク温度を低く維持しつつ、走査部位の温度を維持することができる。
【0072】
なお、図10においては、説明を容易にするため、スポット火炎を例に説明したが、ラインバーナーの走査速度を大きくしてもよい。もちろん、図4〜図7を参照しながら説明したように、ツインノズル構成とすることで、火炎の広がりを抑えつつ、基板の走査速度を大きくしてもよい。
【0073】
この場合、小面積に熱を集中させることができるため、あたかも擬似レーザー照射のような熱処理が可能となる。レーザーをライン状に照射することは困難であるが、本実施の形態では、容易に高熱源のラインバーナーを照射することができる。
【0074】
なお、上記製造方法1および2においては、シリコン膜102の再結晶化の際の熱処理(水素火炎処理)を例に説明したが、本発明は、当該工程に限定されず、種々の熱処理に対し広く適用可能である。
【0075】
例えば、製造方法1で説明した、ゲート絶縁膜を形成する際の熱酸化、不純物イオンの活性化熱処理、また、層間絶縁膜(ポリシラザン)の焼成、ゾルゲル法もしくはMOD法の際の熱処理など、を水素火炎処理により行なうことができる。かかる処理に対し、上記製造方法もしくはガスバーナー(半導体製造装置)を適用することにより、被処理膜の特性を向上させることができる。また、高温短時間の処理が可能となる。
【0076】
また、上記発明の実施の形態を通じて説明された実施例や応用例は、用途に応じて適宜に組み合わせて、又は変更若しくは改良を加えて用いることができ、本発明は上述した実施の形態の記載に限定されるものではない。
【0077】
(電気光学装置および電子機器の説明)
次に、前述の実施の形態で説明した方法で形成される半導体装置(例えばTFT)が使用される電気光学装置(電子機器)について説明する。
【0078】
前述の半導体装置(例えばTFT)は、例えば、電気光学装置(表示装置)の駆動素子として用いられる。図12に、電気光学装置を用いた電子機器の例を示す。図12(A)は携帯電話への適用例であり、図12(B)は、ビデオカメラへの適用例である。また、図12(C)は、テレビジョンへ(TV)の適用例であり、図12(D)は、ロールアップ式テレビジョンへの適用例である。
【0079】
図12(A)に示すように、携帯電話530には、アンテナ部531、音声出力部532、音声入力部533、操作部534および電気光学装置(表示部)500を備えている。この電気光学装置に、本発明により形成された半導体装置を使用する(組み込む)ことができる。
【0080】
図12(B)に示すように、ビデオカメラ540には、受像部541、操作部542、音声入力部543および電気光学装置(表示部)500を備えている。この電気光学装置に、本発明により形成された半導体装置を使用する(組み込む)ことができる。
【0081】
図12(C)に示すように、テレビジョン550は、電気光学装置(表示部)500を備えている。この電気光学装置に、本発明により形成された半導体装置を使用する(組み込む)ことができる。なお、パーソナルコンピュータ等に用いられるモニタ装置(電気光学装置)にも、本発明により形成された半導体装置を使用する(組み込む)ことができる。
【0082】
図12(D)に示すように、ロールアップ式テレビジョン560は、電気光学装置(表示部)500を備えている。この電気光学装置に、本発明により形成された半導体装置を使用する(組み込む)ことができる。
【0083】
なお、電気光学装置を有する電子機器には、上記の他、大型スクリーン、パーソナルコンピュータ、携帯型情報機器(いわゆるPDA、電子手帳)等、さらには、表示機能付きファックス装置、デジタルカメラのファインダ、携帯型TV、電光掲示板、宣伝広告用ディスプレイなど、各種のものが含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本実施の形態の半導体装置の製造に用いられる半導体製造装置の構成例を示す図である。
【図2】半導体製造装置のガスバーナー部の構成例を示す平面図である。
【図3】半導体製造装置のガスバーナー部の第1構成例を示す断面図である。
【図4】本実施の形態の効果を説明するための比較例を示す断面図である。
【図5】半導体製造装置のガスバーナー部の具体的な構成例を示す図である。
【図6】半導体製造装置のガスバーナー部の具体的な他の構成例を示す図である。
【図7】半導体製造装置のガスバーナー部の具体的な他の構成例を示す図である。
【図8】製造方法1における半導体装置の製造工程を示す工程断面図である。
【図9】製造方法1における半導体装置の製造工程を示す工程断面図である。
【図10】ガスバーナー部の走査方向と走査軌跡の温度分布を示す図である。
【図11】走査軌跡と基板温度の関係を示すグラフである。
【図12】電気光学装置を用いた電子機器の例を示す図である。
【符号の説明】
【0085】
11…水タンク、12…電気分解槽、15…ガスコントローラ、21…チャンバ(処理室)、22…ガスバーナー部、22a…導気管、22b…遮蔽器、22d…ノズル開口部、22g…排気口、51…ステージ部、100…ガラス基板(基板)、101…下地保護膜、102…シリコン膜、102a…多結晶シリコン膜、102b…酸化シリコン膜、103…ゲート絶縁膜、104a、104b…ソース、ドレイン領域、105…層間絶縁膜、106a、106b…ソース、ドレイン電極、122…ガスバーナー、500…電気光学装置、530…携帯電話、531…アンテナ部、532…音声出力部、533…音声入力部、534…操作部、540…ビデオカメラ、541…受像部、542…操作部、543…音声入力部、550…テレビジョン、560…ロールアップ式テレビジョン、F…火炎、G…ゲート電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に第1膜を形成する工程と、
前記第1膜に対し、水素及び酸素の混合ガスを燃料とするガスバーナーの火炎を、前記基板と前記ガスバーナーとの間に配置された遮蔽板の開口部を介して照射することにより熱処理を施す工程と、
を有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記遮蔽板の開口部の近傍に排気口が設けられており、
前記熱処理は、前記排気口から排気を行ないながら行われることを特徴とする請求項1記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記開口部からは火炎の外炎もしくは外炎と内炎の境界部が放射されることを特徴とする請求項1又は2記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記基板と前記開口部までの距離は、前記開口部から前記ガスバーナーまでの距離より小さいことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記第1膜は、半導体膜であり、前記熱処理によって、前記半導体膜の再結晶化が行なわれることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法を有することを特徴とする電子機器の製造方法。
【請求項7】
水素及び酸素の混合ガス供給部と、
前記水素及び酸素の混合ガスを燃焼して火炎を形成するガスバーナーと、
基板を前記ガスバーナーの火炎に対して直交する方向に相対的に移動する移動手段と、
前記基板と前記ガスバーナーとの間に配置され、開口部を有する遮蔽板とを有し、
前記ガスバーナーの火炎を前記開口部を介して前記基板に放射することを特徴とする半導体製造装置。
【請求項8】
前記ガスバーナーは、前記水素及び酸素の混合ガスを導出し、略直線状の開口部からライン状の火炎を放射することを特徴とする請求項7記載の半導体製造装置。
【請求項9】
前記ガスバーナーは、前記水素及び酸素の混合ガスを導出し、略直線状に一定のピッチで形成された複数の開口部から複数の火炎を放射することを特徴とする請求項7記載の半導体製造装置。
【請求項10】
前記遮蔽板の開口部は、略直線状であることを特徴とする請求項7乃至9のいずれか一項記載の半導体製造装置。
【請求項11】
前記遮蔽板は、前記開口部の外周に排気口を有することを特徴とする請求項7乃至10のいずれか一項記載の半導体製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図11】
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【図12】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−98374(P2008−98374A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−277945(P2006−277945)
【出願日】平成18年10月11日(2006.10.11)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】