説明

半導体装置の製造方法およびそれに用いるウェハ識別補助装置

【課題】半導体装置の製造工程において、複数枚の半導体ウェハを短時間に一括して識別する。
【解決手段】ウェハ治具3に収容された複数枚の半導体ウェハ1をウェハ識別補助装置2によって識別する工程であって、ウェハ治具載置領域7に複数枚の半導体ウェハ1が収容されたウェハ治具3を載置する工程と、載置面4aと鋭角をなして第一方向Aに延在するように備えられた接触箇所6aを有するウェハ押し出し部6によって複数枚の半導体ウェハ1を押し出す工程と、前記工程によって、各々が第一方向Aに所望の長さだけずれた状態となるように、ウェハガイド部8に押し出された複数枚の半導体ウェハ1において、識別子IDを識別する工程とを含むものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法およびそれに用いるウェハ識別補助装置に関し、特に、半導体ウェハを識別する技術に適用して有効な技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造工程において、単結晶シリコンなどに代表される半導体材料に素子を作り込んでいくプロセスでは、その半導体材料を、半導体ウェハと称する平面略円形状の半導体の薄板の状態で扱い、その半導体ウェハを同等の領域に分け、各領域間で同じ構造の素子を形成し、後にそれらをチップ状に切断する。
【0003】
各工程は、洗浄プロセス、薄膜形成プロセス、不純物注入プロセス、フォトリソグラフィプロセスなど様々な要素工程で構成され、それらの組み合わせにより多種多様な性質の素子を備える半導体装置を製造することができる。
【0004】
上記のような製造工程中における半導体ウェハの保管、運搬には、一般的に、複数枚の半導体ウェハを重ねて収容することができる治具(以下、ウェハ治具と称する)が用いられている。
【0005】
また、要求される半導体装置の種類によって対象となる製造工程は異なる。従って、それぞれの半導体ウェハには番号や記号などの識別子が付されており、個々の半導体ウェハにおける処理工程の履歴や、以後の処理条件などを特定できるようになっている。半導体ウェハをウェハ治具から取り出し、識別子を確認するという半導体ウェハの識別工程は、各工程間で頻繁に行われる。
【0006】
各要素工程間で行われる半導体ウェハの識別には、真空ピンセットによりウェハ治具の中から半導体ウェハを取り出して識別する方法が一般的である。しかし、取り出し時に半導体ウェハに損傷を与えてしまうことがある。この対策として、半導体ウェハをウェハ治具から取り出し、個々に識別し、またウェハ治具へ戻すという一連の作業を自動化する技術が開発されている。例えば、機械により半導体ウェハを取り出し、識別子が付してある領域を光により検出し、撮像して認識する自動機が、特開2000−30991号公報(特許文献1)などで公示されている。
【特許文献1】特開2000−30991号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、本発明者は、前述のような自動機を用いた手法により半導体ウェハを識別する過程で、以下の課題を見出した。
【0008】
即ち、機械的な動作を必要とし、かつ個別枚数ずつの作業となる自動機では、相当分の時間を要するのである。本発明者が検討した手法によれば、自動機による識別には約7分を要する。より高性能な半導体装置が要求されるに従い、製造工程が複雑化している背景から、その都度半導体ウェハの確認に時間がかかることは、全体のスループットを低下させる原因となっている。
【0009】
そこで本発明者は、短時間に一括して半導体ウェハを識別できるような補助部材を用いた手法を検討した。以下に、図5,6を用いて説明する。
【0010】
図5には、複数枚の半導体ウェハ1に付された識別子IDを一括して識別するためのウェハ識別補助部材10、および、複数枚の半導体ウェハ1を収容したウェハ治具3の斜視図を示している。一般的なウェハ治具3は、複数枚の半導体ウェハ1を個々に受ける溝3aを備えている。また、複数枚の半導体ウェハ1を出し入れする第一開口部3bと、その対面に複数枚の半導体ウェハ1が通り抜けない程度の第二開口部3cが備えられている。
【0011】
ウェハ識別補助部材10には、一定の傾斜面11aを有する突出部11が形成されている。本発明者が検討した手法では、突出部11がウェハ治具3の第二開口部3cを通過するように、複数枚の半導体ウェハ1を収容したウェハ治具3を載置する。このときの様子を図6に示す。図6(a)は、複数枚の半導体ウェハ1の面に対面する向き(正面)から、また、図6(b)は複数枚の半導体ウェハ1の面に平行な向き(側面)から見た様子を示している。傾斜面11aが複数枚の半導体ウェハ1を上部に押し出し、かつ、それらは傾斜面11aを受けて同様の段差を生じている。この段差の差分の領域では複数枚の半導体ウェハ1の表面がそれぞれ露出し、ここで識別子IDを識別しようとする手法である。
【0012】
しかし、図6(a)に示すように、複数枚の半導体ウェハ1は外周が略円形状であり、傾斜面11aで押し出されると、それぞれ若干の回転を生じてしまう。これにより、識別子IDが前方の半導体ウェハ1と重なってしまい、正常に識別することができない。また、この問題を回避するために、複数枚の半導体ウェハ1を押し出す突出部11の傾斜面11aをより急峻にし、各半導体ウェハ1の露出面積を広くすると、図6(b)に示すように、より高く押し出された半導体ウェハ1が、ウェハ治具3から落下してしまうという課題を本発明者は見出した。
【0013】
更に、この手法で押し出された複数枚の半導体ウェハ1は、自重により、ウェハ治具3の溝3aに噛み込んでしまうことで取り出し難くなり、結果としてピンセットなどにより傷をつけてしまう原因となるという課題を本発明者は見出した。
【0014】
そこで、本発明の目的は、半導体装置の製造工程において、複数枚の半導体ウェハを短時間に一括して識別する技術を提供することにある。
【0015】
本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0017】
即ち、ウェハ治具に収容された複数枚の半導体ウェハをウェハ識別補助装置によって識別する工程であって、前記ウェハ識別補助装置はその載置面の第一方向に沿ってウェハ押し出し部、ウェハ治具載置領域およびウェハガイド部を有しており、ウェハ治具載置領域に複数枚の半導体ウェハが収容されたウェハ治具を載置する工程と、載置面と鋭角をなして第一方向に延在するように備えられた接触箇所を有するウェハ押し出し部によって複数枚の半導体ウェハを押し出す工程と、前記工程によって、各々が第一方向に所望の長さだけずれた状態となるように、ウェハガイド部に押し出された複数枚の半導体ウェハにおいて、識別子を識別する工程とを含むものである。
【発明の効果】
【0018】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば以下のとおりである。
【0019】
即ち、半導体装置の製造工程において、複数枚の半導体ウェハを短時間に一括して識別することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下の実施の形態においては便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらはお互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細、補足説明等の関係にある。また、以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でも良い。さらに、以下の実施の形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数値および範囲についても同様である。また、本実施の形態を説明するための全図において同一機能を有するものは同一の符号を付すようにし、その繰り返しの説明は可能な限り省略するようにしている。以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0021】
(実施の形態1)
本実施の形態1では、半導体ウェハに所望の素子を形成することで半導体装置を製造する工程のうち、特に複数枚の半導体ウェハに付された識別子を、短時間で一括して読み取る手法、および、それを補助する補助装置を例示する。
【0022】
図1には、本実施の形態1において説明する、半導体ウェハ1の識別に用いるウェハ識別補助装置2、および、複数枚の半導体ウェハ1を収容するウェハ治具3の斜視図を示している。以下に、ウェハ識別補助装置2の構成に関して詳細を説明する。
【0023】
まず、ウェハ識別補助装置2は、複数枚の半導体ウェハ1を収容したウェハ治具3を載置するためのウェハ治具載置台4を有している。更に、ウェハ治具載置台4は、ウェハ識別補助装置2の設置面5に沿う載置面4aを有している。即ち、載置面4aは設置面5に対して傾斜を有しておらず、平行である。そして、この載置面4a上には、第一方向Aに沿って、ウェハ押し出し部6、ウェハ治具載置領域7およびウェハガイド部8が順に配置されている。
【0024】
ウェハ押し出し部6は、第一方向Aに沿って可動であり、半導体ウェハ1の個々と二点で接する形状の接触箇所6aを備えている。この、接触箇所6aは、載置面4aと鋭角をなして第一方向Aに延在するように備えられている。以下、接触箇所6aが載置面4aに対してなす角を傾斜角6bと表記する。本実施の形態1では、ウェハ押し出し部6に備えられた接触箇所6aの形状として、例えば二本一対のレール形状であるとする。即ち、第一方向A上に複数枚の半導体ウェハ1がある場合、上記のウェハ押し出し部6が第一方向Aに動くことで、接触箇所6aによって複数枚の半導体ウェハ1の縁を二点で押し、第一方向Aに沿って移動させることができる。本実施の形態1では、ウェハ押し出し部6を、例えば塩化ビニル樹脂材料などからなる、いわゆる制電プレートを用いて形成する。
【0025】
ウェハ治具載置領域7は、ウェハ押し出し部6とウェハガイド部8との間に設けられた、ウェハ治具3を載置するための領域である。載置面4a上の他の領域と区別するために、図中では、ウェハ治具載置領域7に斜線を付している。
【0026】
ウェハガイド部8は、一対の側板8aを有している。一対の側板8aは、第一方向Aに直行する方向に、所定の幅Wを隔てた位置に向かい合うようにして設置されている。また、一対の側板8aの対向面には、第一方向Aに向かって延びる溝8bが、載置面4aに対して鉛直方向に沿って複数形成されている。即ち、複数枚の半導体ウェハ1が載置面4aに沿って移動した場合、ウェハガイド部8に備えられた溝8bによってガイドする。本実施の形態1では、ウェハガイド部8を、例えば塩化ビニル樹脂材料などからなる、いわゆる制電プレートを用いて形成する。
【0027】
次に、半導体装置の製造工程に対し、上記のウェハ識別補助装置2を用いて半導体ウェハ1を識別する工程を取り入れた一例を説明する。
【0028】
まず、厚さ方向に沿って互いに反対側に位置する第一主面1aおよび第二主面1bを有する複数枚の半導体ウェハ1を用意する。複数枚の半導体ウェハ1のオリエンテーションフラット9付近には、例えば数字と文字からなる識別子IDが付してあるものとする。この識別子IDは、数字や文字に限らず、他の記号やバーコードでも良い。本実施の形態1において、複数枚の半導体ウェハ1は単結晶シリコンを母材とする半導体材料からなるものとし、識別子IDは複数枚の半導体ウェハ1の第一主面1aに付してあるものとする。また、オリエンテーションフラット9とは、一般的に結晶方位を示唆しており、単結晶ウェハ中の結晶方位を特定できるように設けられているものである。このような複数枚の半導体ウェハ1に対して所望の処理を施す。ここで所望の処理とは、例えば、半導体ウェハ1の第一主面1aや第二主面1bに対し、薄膜堆積、イオン注入、エッチング加工工程などにより素子を形成する処理や、表面を研磨する処理などである。
【0029】
その後、複数枚の半導体ウェハ1を、第一主面1aおよび第二主面1bが全て同一方向を向くように、かつ、厚さ方向に重ねた状態で、ウェハ治具3に収容する。本実施の形態1においては、複数枚の半導体ウェハ1を、オリエンテーションフラット9の位置を揃えてウェハ治具3に収容する。これにより、ウェハ治具3の中で、複数枚の半導体ウェハ1に付された識別子IDが、同方向かつ同位置に配列される。
【0030】
一般的なウェハ治具3には、複数枚の半導体ウェハ1を個々に受ける溝3aが備えられている。また、複数枚の半導体ウェハ1を出し入れする第一開口部3bと、その対面に複数枚の半導体ウェハ1が通り抜けない程度の第二開口部3cが備えられている。本実施の形態1において用いるウェハ治具3もこれと同様である。
【0031】
次に、複数枚の半導体ウェハ1を収容したウェハ治具3をウェハ識別補助装置2に載置する。このとき、図2に示すように、複数枚の半導体ウェハ1の第一主面1aおよび第二主面1bがウェハ治具載置台4の載置面4aに沿うように、ウェハ治具載置領域7にウェハ治具3を載置する。上記のようにウェハ治具3を載置することで、半導体ウェハ1にかかる自重の方向とその出し入れの方向が平行ではなくなり、半導体ウェハ1はウェハ治具3の溝3aに噛み込み難くなる。その結果、複数枚の半導体ウェハ1を取り出す必要がある場合でも、ピンセットなどにより傷をつける可能性が低減される。
【0032】
更に、本実施の形態1では、ウェハ治具3に収容されている複数枚の半導体ウェハ1の第二主面1bが載置面4aと対向するように、ウェハ治具載置領域7に載置する。この状態で、複数枚の半導体ウェハ1をウェハ治具3の第一開口部3bから押し出すと、第一主面1aをウェハ識別補助装置2の上から、即ち、載置面4aの対向方向から見ることができる。
【0033】
また、本実施の形態1では、半導体ウェハ1を出し入れするための第一開口部3bがウェハガイド部8の設置された方向を向き、更に、ウェハ治具3の溝3aがウェハガイド部8の溝8bに一致するように、ウェハ治具載置領域7にウェハ治具3を載置する。これによって、複数枚の半導体ウェハ1がウェハ治具3の第一開口部3bから押し出された場合でも、落下せずにウェハガイド部8によって保持される。
【0034】
次に、図3(a)に示すように、ウェハ押し出し部6を第一方向Aに移動させ、接触箇所6aで複数枚の半導体ウェハ1をウェハ治具3の中から押し出す。図3(b)には、ウェハ識別補助装置2を上から、即ち、載置面4aの対向方向から見た平面図を示す。ここで、上記のように、複数枚の半導体ウェハ1を押し出す接触箇所6aは、載置面4aと鋭角である傾斜角6bをなして第一方向Aに延在するように形成されている。従って、この接触箇所6aに押し出された複数枚の半導体ウェハ1は、各々が第一方向Aに差分Lwだけずれた状態で、ウェハガイド部8側に移動することになる。
【0035】
このとき、押し出された各々の半導体ウェハ1の差分Lwの長さは、ウェハ押し出し部6に備えられた接触箇所6aの傾斜角6bによって決まる。即ち、前記傾斜角6bを低角にするほど、押し出された各々の半導体ウェハ1の差分Lwは長くなる。そして、この差分Lwだけ各々の半導体ウェハ1は露出することになる。従って、本実施の形態1においては、識別したい識別子IDが完全に露出できる長さが、各々の半導体ウェハ1を第一方向にずらす所望の長さとなる。
【0036】
ここで、押し出された各々の半導体ウェハ1の差分Lwを、識別子IDが識別できる程度に長くしても(即ち、ウェハ押し出し部6に備えられた接触箇所6aの傾斜角6bをより低角にしても)、ウェハガイド部8を設けていること、および、複数枚の半導体ウェハ1が設置面5に対して水平に押し出されるようにウェハ治具3を載置していることにより、半導体ウェハ1が落下することは無い。
【0037】
また、接触箇所6aは複数枚の半導体ウェハ1と二点で接するように、二本一対のレール状となっていることから、複数枚の半導体ウェハ1は、回転することなく押し出される。従って、識別子IDがウェハガイド部8や、他のウェハとの重なり部分などに隠れてしまうことなく、複数枚の半導体ウェハ1を押し出すことができる。
【0038】
更に、接触箇所6aを二箇所に分け、半導体ウェハ1との接触面積を小さくすることで、半導体ウェハ1の損傷の可能性を小さくしている。
【0039】
次に、上記の工程でウェハガイド部8側に移動した複数枚の半導体ウェハ1において、第一主面1aに付された識別子IDを識別する。その後、識別した複数枚の半導体ウェハ1を再度ウェハ治具3に収容し、次工程の対象となる装置へ搬送する。
【0040】
このとき、複数枚の半導体ウェハ1が押し出された第一方向Aの延長上に、ウェハ押し出し部6と同様に第一方向Aに可動であり、例えば接触箇所6aが載置面4aに対し鉛直(即ち傾斜角6bが直角)であるような部材を設け(図示しない)、これを押し出された複数枚の半導体ウェハ1の方に移動させることで、複数枚の半導体ウェハ1をウェハ治具3の中に押し戻しても良い。
【0041】
以上に示した本実施の形態1の一連の工程において、複数枚の半導体ウェハ1を収容したウェハ治具3をウェハ識別補助装置2に載置し、複数枚の半導体ウェハ1の識別を終えるまでの工程を、1分以内で行うことができる。
【0042】
また、本実施の形態1において、ウェハ識別補助装置2全体を設置面5に対して傾かせるために、ウェハ治具載置台4の載置面4aに傾斜を設けても良い。例えば、ウェハ識別補助装置2を机上に設置し、識別のために目視する方向が図3(b)における第二方向Bの向きである場合を想定する。この場合、載置面4aが第二方向Bに進むに従って設置面5に対して高くなっていくような傾斜を与えることで、目視による識別子IDの識別をより容易にすることができる。
【0043】
以上のように、本実施の形態1において例示したウェハ識別補助装置2を用いることによって、複数枚の半導体ウェハ1に付された識別子IDを、短時間で一括して識別することができる。
【0044】
(実施の形態2)
上記実施の形態1では、複数枚の半導体ウェハ1に付された識別子IDを短時間で一括して識別する手法として、ウェハ識別補助装置2を用いた工程を例示した。
【0045】
一方、半導体装置の製造工程において、複数枚の半導体ウェハ1に対して識別する対象は識別子IDだけではなく、ウェハ外観、例えば物理的欠陥などもある。なぜなら、半導体装置の製造工程中、複数枚の半導体ウェハ1の外観を識別し、少なくとも目視で発見できる程の物理的欠陥が生じているウェハは区別して扱う必要があるからである。そこで本実施の形態2では、上記のウェハ識別補助装置2を用いて複数枚の半導体ウェハ1の物理的欠陥の有無を識別する工程を例示する。
【0046】
識別したい複数枚の半導体ウェハ1を用意する工程や、識別に用いるウェハ識別補助装置2の構成、および、識別工程などは、上記実施の形態1において図1〜図3を用いて説明した工程と同様である。
【0047】
図4には、本実施の形態2において用いるウェハ識別補助装置2を上から、即ち、載置面4aの対向方向から見た平面図を示す。
【0048】
本実施の形態2において、複数枚の半導体ウェハ1の物理的欠陥の有無を一括して識別するためには、複数枚の半導体ウェハ1が押し出される長さの差分Lwを、上記実施の形態1で示した、識別子IDが露出する程度の長さよりも長くし、半導体ウェハ1の露出面積を広くすることが効果的である。そのためには、ウェハ押し出し部6に備えられた接触箇所6aの載置面4aとの傾斜角6bを、上記実施の形態1の場合よりも低角にすれば良い。これは同時に、複数枚の半導体ウェハ1が、より長い距離にわたってウェハ治具3の外に押し出されることを意味する。
【0049】
そこで、ウェハガイド部8の一対の側板8aにおける第一方向Aに沿った長さ(側板の長さ)Lgを長くする。このときの側板の長さLgとしては、各々の半導体ウェハ1が押し出された長さの差分Lwに、ウェハ治具3に収容されている半導体ウェハ1の枚数を乗じた長さ以上であれば良い。
【0050】
以上の条件で側板の長さLgを長くすることで、押し出された複数枚の半導体ウェハ1を落下させることなく、複数枚の半導体ウェハ1各々においてより広い面積を露出させることができる。その結果、複数枚の半導体ウェハ1の物理的欠陥の有無を、より広い範囲で識別できるようになる。
【0051】
以上のように、本実施の形態2において例示したウェハ識別補助装置2を用いることによって、複数枚の半導体ウェハ1の物理的欠陥の有無を、短時間で一括して識別することができる。
【0052】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【0053】
例えば、上記実施の形態1においては、複数枚の半導体ウェハ1の第一主面1aに識別子IDが付してあるものとし、上記実施の形態2においては、複数枚の半導体ウェハ1の第一主面1aのみ物理的欠陥の有無を識別する工程を例示したが、第一主面1aと第二主面1bとの間に有意な相違は無く、例えば第二主面1bに識別したい要素を備える場合であれば、上記工程中の第一主面1aと第二主面1bを逆に捉えることで、同様の効果が得られる。
【0054】
また、上記実施の形態1,2において、複数枚の半導体ウェハ1を目視によって識別することとしたが、撮像機などを用いても良い。
【0055】
また、上記実施の形態1,2において、識別する複数枚の半導体ウェハ1はオリエンテーションフラット9を備えるものとしたが、例えばノッチ式など、結晶方位を示す他の形状を有するものであっても、略円形状のウェハであれば同様の効果を得ることができる。
【0056】
また、上記実施の形態1,2において、ウェハガイド部8を構成する一対の側板8aの幅Wを可変にすることで、多様な口径の半導体ウェハ1に対応でき、同様の効果を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明は、例えばパーソナルコンピュータやモバイル機器等において、情報処理を行うために必要な半導体産業に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の一実施の形態である半導体装置の製造工程中におけるウェハ識別補助装置および複数枚の半導体ウェハを収容したウェハ治具の斜視図である。
【図2】図1に続く半導体装置の製造工程中におけるウェハ識別補助装置および複数枚の半導体ウェハを収容したウェハ治具の斜視図である。
【図3】(a)は図2に続く半導体装置の製造工程中におけるウェハ識別補助装置および複数枚の半導体ウェハを収容したウェハ治具の斜視図であり、(b)はその平面図である。
【図4】本発明の他の実施の形態である半導体装置の製造工程中におけるウェハ識別補助装置および複数枚の半導体ウェハを収容したウェハ治具の平面図である。
【図5】本発明者が検討した半導体装置の製造工程中におけるウェハ識別補助部材および複数枚の半導体ウェハを収容したウェハ治具の斜視図である。
【図6】(a)は図5に続く半導体装置の製造工程中におけるウェハ識別補助部材および複数枚の半導体ウェハを収容したウェハ治具の正面図であり、(b)はその側面図である。
【符号の説明】
【0059】
1 半導体ウェハ
1a 第一主面
1b 第二主面
2 ウェハ識別補助装置
3 ウェハ治具
3a 溝
3b 第一開口部
3c 第二開口部
4 ウェハ治具載置台
4a 載置面
5 設置面
6 ウェハ押し出し部
6a 接触箇所
6b 傾斜角
7 ウェハ治具載置領域
8 ウェハガイド部
8a 一対の側板
8b 溝
9 オリエンテーションフラット
ID 識別子
A 第一方向
B 第二方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)厚さ方向に沿って互いに反対側に位置する第一主面および第二主面を有する複数枚の半導体ウェハを用意する工程と、
(b)前記複数枚の半導体ウェハに対して所望の処理を施す工程と、
(c)前記(b)工程後の前記複数枚の半導体ウェハを、前記複数枚の半導体ウェハの前記第一主面および前記第二主面がそれぞれ同一方向を向くように、かつ、厚さ方向に重ねた状態で、ウェハ治具に収容する工程と、
(d)前記複数枚の半導体ウェハを収容した前記ウェハ治具をウェハ識別補助装置に載置して、前記複数枚の半導体ウェハを識別する工程とを有し、
前記ウェハ識別補助装置は、
前記ウェハ治具を載置するためのウェハ治具載置台を有し、
前記ウェハ治具載置台は、前記ウェハ識別補助装置の設置面に沿う載置面を有し、
前記載置面の第一方向に沿って、ウェハ押し出し部、ウェハ治具載置領域およびウェハガイド部が順に配置され、
前記ウェハ押し出し部は、前記第一方向に沿って可動であり、前記複数枚の半導体ウェハの個々と二点で接する形状の接触箇所を備え、
前記接触箇所は、前記載置面と鋭角をなして前記第一方向に延在するように備えられ、
前記ウェハ治具載置領域は、前記ウェハ押し出し部と前記ウェハガイド部との間に設けられた、前記ウェハ治具を載置するための領域であり、
前記ウェハガイド部は、前記複数枚の半導体ウェハが、前記載置面に沿って移動するのをガイドする溝が内面に形成された一対の側板を備え、
前記ウェハガイド部に備えられた前記一対の側板は、前記第一方向に沿って形成されており、
前記(d)工程においては、
(d1)前記ウェハ治具を、前記複数枚の半導体ウェハの前記第一主面および前記第二主面が前記ウェハ治具載置台の前記載置面に沿うように、前記ウェハ治具載置領域に載置する工程と、
(d2)前記(d1)工程後、前記ウェハ押し出し部を前記第一方向に移動させることによって、前記接触箇所が前記複数枚の半導体ウェハを前記ウェハ治具の中から押し出し、各々が前記第一方向に所望の長さだけずれた状態となるように、前記ウェハガイド部側に前記複数枚の半導体ウェハを移動させる工程と、
(d3)前記(d2)工程で前記ウェハガイド部側に移動した前記複数枚の半導体ウェハの前記第一主面または前記第二主面を識別する工程と、
を有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の半導体装置の製造方法において、
前記(d)工程において、前記ウェハ識別補助装置全体を設置面に対して傾かせるために、前記ウェハ治具載置台の前記載置面に傾斜を設けることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2記載の半導体装置の製造方法において、
前記(d)工程において、前記複数枚の半導体ウェハの前記第一主面または前記第二主面に形成された識別子を識別することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項4】
請求項1または2記載の半導体装置の製造方法において、
前記(d)工程において、前記複数枚の半導体ウェハの物理的欠陥の有無を識別することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項5】
ウェハ治具に収容された複数枚の半導体ウェハを識別するためのウェハ識別補助装置であって、
(a)前記ウェハ治具を載置するためのウェハ治具載置台を有し、
前記ウェハ治具載置台は、前記ウェハ識別補助装置の設置面に沿う載置面を有し、
(b)前記載置面の第一方向に沿って、ウェハ押し出し部、ウェハ治具載置領域およびウェハガイド部が順に配置され、
前記ウェハ押し出し部は、前記第一方向に沿って可動であり、前記複数枚の半導体ウェハの個々と二点で接する形状の接触箇所を備え、
前記接触箇所は、前記載置面と鋭角をなして前記第一方向に延在するように備えられ、
前記ウェハ治具載置領域は、前記ウェハ押し出し部と前記ウェハガイド部との間に設けられた、前記ウェハ治具を載置するための領域であり、
前記ウェハガイド部は、前記複数枚の半導体ウェハが、前記載置面に沿って移動するのをガイドする溝が内面に形成された一対の側板を備え、
前記ウェハガイド部に備えられた前記一対の側板は、前記第一方向に沿って形成されていることを特徴とするウェハ識別補助装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−198963(P2008−198963A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−35751(P2007−35751)
【出願日】平成19年2月16日(2007.2.16)
【出願人】(503121103)株式会社ルネサステクノロジ (4,790)
【Fターム(参考)】