説明

半導体装置の製造方法

【課題】GaN基板表面の窒素抜けを抑制し、耐圧の高い半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の半導体装置の製造方法は、窒化ガリウムを含む半導体層を準備する工程と、半導体層の表面を水素ガスにより処理する表面処理工程と、表面処理工程後の上記表面を酸化する酸化工程とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
窒化ガリウム(GaN)は、そのバンドギャップがシリコン(Si)の約3倍であり、絶縁破壊電界強度はシリコンの約10倍と高く、また、飽和電子速度もシリコンよりも大きいなど、様々な優れた特性を有している。このような特性から、GaNを用いることにより、従来のSiパワーデバイスでは困難であった高耐圧化と、低損失化、すなわち低オン抵抗化との両立が期待できるため、パワーデバイス(電力用半導体素子)への応用が期待されている。そして、上記のようなGaNを用いたデバイスの製造工程においては、GaNを含む半導体層の表面に、Ga23を形成する酸化工程を施す場合がある(たとえば、非特許文献1参照)。
【非特許文献1】Nakano et al.、“Characteristics of SiO2/n-GaN interfaces with β-Ga2O3 interlayers”、Applied Physics Letters、2003年11月、第83巻、p.4336−4338
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ここで、上述のような酸化工程を施す場合、当該酸化工程での導入酸素によりGaN表面には部分的に窒素抜けが発生する。このように窒素抜けが発生した部分は、化学的に非常に不安定であり、また、表面にドナーライクな部分が残るため、当該部分において電流パスが形成されてしまうという問題があった。このような電流パスの形成により、Ga23からなる絶縁膜におけるリーク電流が増大し、当該半導体層を含むデバイスの耐圧が低下することになっていた。
【0004】
本発明は、上記GaN基板表面の窒素抜けを抑制し、耐圧の高い半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の半導体装置の製造方法は、窒化ガリウム(GaN)を含む半導体層を準備する工程と、半導体層の表面を水素ガスにより処理する表面処理工程と、表面処理工程後の上記表面を酸化する酸化工程とを備える。このようにすれば、表面処理工程によりGaNを含む半導体層の表面層から窒素が除去されることで半導体層の表面がGa表面となる。この状態で、酸化工程を実施することにより、半導体層の表面においてGaからなる均一な絶縁膜を形成することができる。つまり、表面処理工程によりあらかじめ半導体層の表面層から窒素が十分に除去されているため、当該表面処理工程を実施せずに酸化工程を実施した場合に起こる、半導体層の表面における局所的な窒素抜けの発生を抑制できる。この結果、局所的な窒素抜けに起因するリーク電流の増大などを抑制できるので、当該絶縁膜を含む半導体装置の耐圧を向上させることができる。
【0006】
表面処理工程における水素ガス(H2ガス)は、プラズマ法または熱フィラメント法により活性化されることが好ましい。この場合、水素ガスを十分に活性化することにより、表面処理工程において半導体層の表面から窒素を確実に除去することができる。また、熱フィラメント法を用いて水素ガスを活性化する場合、プラズマ法を用いる場合に比べて半導体層表面に対するダメージ(プラズマダメージ)の発生を防止できる。この結果、半導体層の表面がダメージを受けることに起因する半導体層の表面欠陥を抑制できる。
【0007】
上記酸化工程は、酸化炉を用いて上記表面を酸化する工程であってもよい。この場合、熱酸化によって高品質な絶縁膜(酸化膜)を形成することができる。
【0008】
上記半導体装置の製造方法では、酸化工程が過酸化水素を含む溶液により上記表面を酸化する工程であってもよい。この場合、絶縁膜(酸化膜)を形成する酸化工程の処理時間を、半導体層の上記溶液に対する浸漬および取出しのタイミングを制御することにより正確に制御することができる。この結果、酸化膜の膜厚を正確に制御することができる。
【0009】
上記表面処理工程と上記酸化工程とは、同一の反応室において行なうことが好ましい。この場合、同一の反応室において表面処理工程と酸化工程とを連続して実施することができる。したがって、半導体装置の製造工程に要する時間を短縮することができる。また、表面処理工程において処理された半導体層の表面が外気に触れることなく酸化処理を受けるため、表面処理工程により窒素が除去された(脱窒化処理された)半導体層の表面を維持したまま酸化工程を容易に実施できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の半導体装置の製造方法によれば、GaNを含む半導体層を酸化する前にその表面を水素ガスにより処理するので、GaNを含む半導体層表面に形成される絶縁膜と半導体層との界面のリーク電流を抑制することができる。その結果、当該絶縁膜を含む半導体装置の耐圧を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明についてさらに詳細に説明する。なお、以下の実施の形態の説明では、図面を用いて説明しているが、本願の図面において同一の参照符号を付したものは、同一部分または相当部分を示し、その説明は繰返さない。
【0012】
<半導体装置の製造方法>
本発明による半導体装置の製造方法は、GaNを含む半導体層を準備する工程と、半導体層の表面を水素(H2)ガスにより処理する表面処理工程と、表面処理工程後の上記表面を酸化する酸化工程とを含む。本発明の製造方法には、上記工程を含む限り、たとえば、公知の半導体装置の製造におけるゲート電極の形成などその他の工程を含めることができる。
【0013】
<半導体層を準備する工程>
本発明による半導体層を準備する工程は、処理対象物としてのGaNを含む半導体層を準備する工程である。準備する半導体層としては、たとえばGaNあるいはGaNとは異なる材料からなる基板の表面上に形成された、GaNを主成分とするエピタキシャル層を用いることができる。また、GaNからなる基板を上述した半導体層として準備してもよい。
【0014】
<表面処理工程>
本発明における表面処理工程は、GaNを含む半導体層の表面をH2ガスにより処理する工程である。この表面処理工程において表面処理の施される領域は、たとえば、半導体層の最表面から1nm〜1μm程度の深さであり、より好ましくは半導体層の最表面から1nm〜100nmの領域を表面処理することが好ましい。本発明の表面処理工程により、上記範囲に含まれるGaNの窒素を除去することができ、半導体層の最表面をGaにより形成されたものとすることができる。そのため、半導体層表面の部分的な窒素抜けの問題を著しく改善できる。なお、表面処理に用いるガスとしては、H2ガスのように、還元作用のあるガスであって、ガリウム(Ga)よりも窒素(N)との結合性の強いガスであれば、本発明と同様の効果を期待できる。
【0015】
<H2ガス>
半導体層表面を処理するH2ガスについては、半導体層表面の窒素を確実に除去するために、プラズマ法または熱フィラメント法により活性化されることが好ましい。
【0016】
<プラズマ法>
上記H2ガスを活性化させるプラズマ法としては、平行平板を用いる方法などの従来公知の方法を適用することができる。半導体層表面の窒素除去を確実にするために、プラズマ発生条件は、たとえば、H2ガス流量を20sccm以上40sccm以下(25℃)、ガス圧を2Pa以上10Pa以下とし、電源により100W〜200Wの電流を平行平板に印加することが望ましい。
【0017】
上記のような条件で発生させたプラズマ雰囲気下にGaNを含む半導体層を設置する。半導体層を上記H2ガスによるプラズマに曝す時間は、対象とする半導体層の形状(平面形状や厚み)および窒素を除去する表面層の深さにもよるが、たとえば1時間〜4時間程度であれば、上記のように半導体層表面の窒素を除去することができる。
【0018】
プラズマ法においては、半導体層表面にプラズマダメージによる損傷発生部(たとえば絶縁破壊される電圧が低い部分(耐圧が低い部分))が形成されたり、ダングリングボンドなどが発生したりする可能性もある。そのため、半導体装置としてより高い耐圧が求められる場合は、表面処理工程において後述の熱フィラメント法を適用することが望ましい。
【0019】
<熱フィラメント法>
2ガスを活性化させる方法としては、触媒化学気相成長(Cat−CVD)装置を用いる熱フィラメント法を適用することもできる。Cat−CVD法は、一般に、原料ガスを加熱した触媒体に接触させて、その表面において接触分解反応を起こさせてガスを分解し、この分解により生成した分解種を反応雰囲気よりも低温に保持された基板に接触させて基板表面に目的とする絶縁膜を堆積させる方法であるが、本発明においては原料ガスとしてH2を用いることで、半導体層の表面処理を行なう。このような熱フィラメント法を用いた場合は、プラズマダメージは発生しないので、耐圧が低い部分の形成が十分に抑制され、またダングリングボンドの発生がほとんどない状態で、半導体層表面を処理することができる。この結果、酸化工程により半導体層表面に優れた膜質の絶縁膜を形成できる。
【0020】
熱フィラメント法としては、Cat−CVD法など従来公知の装置による方法を用いることができる。図1にCat−CVD法に用いられる装置(以下、Cat−CVD装置という)の一例の概略図を示す。図1に示すようにCat−CVD装置1は、処理対象であるGaNを含むエピタキシャル層などの半導体層が表面に形成された基板2を保持するための基板ホルダ3と、処理ガスを装置内に供給するためのガス供給部4と、供給されたガスを活性化するための加熱触媒体5(熱フィラメント)と、ガスを排気するためのガス排気部8とを備える。加熱触媒体5には、ガスを活性化するために加熱触媒体5を所望の温度に加熱できるよう電源6が接続されている。ガス供給部4の底面は、多数の孔が設けられているなど、供給されたガス7がCat−CVD装置1内に十分拡散する構造を有する。また、基板ホルダ3は、基板2を加熱する加熱機構と、ガス7の活性化に用いる加熱触媒体5からの輻射熱による基板2の温度上昇を抑制する冷却機構などの温度制御機構が設けられており、基板2を所望の温度条件に維持できるよう設定されている。ガス供給部4から供給されたガス7は、加熱触媒体5により活性化され、基板2表面の処理に供される。なお、基板2は図1の両矢印の経路を介して基板ホルダ3上に搬送される。
【0021】
熱フィラメント法による表面処理条件は特に限定されるものではないが、上記プラズマ法と同様に、半導体層表面の窒素除去を確実に行なうために、H2ガスの流量を50sccm以上100sccm以下(25℃)とし、ガス圧10Pa以上30Pa以下の条件でガスを供給し、加熱触媒体5の温度を1200℃以上1700℃以下に設定し、基板ホルダ3の温度を200℃以上400℃以下に設定した条件で行なうことが望ましい。
【0022】
<酸化工程>
酸化工程は、上記のような表面処理工程により表面の窒素が除去された半導体層の表面を酸化する工程である。この酸化工程は、従来公知の密閉可能な酸化炉を用いて行なうことができる。酸化炉を用いた場合の酸化工程は大気圧下で行なうことができる。また、加圧条件とする場合は、大気圧下に比べて半導体層側面部分などからの不必要な窒素抜けを抑制できる。具体的には、大気圧の1倍〜1.1倍程度の圧力雰囲気下とすることが好ましい。
【0023】
酸化炉を用いる場合の酸化条件は、たとえば、酸素(O2)ガス流量を1slm以上2slm以下とし、酸化炉内の雰囲気温度を900℃に設定して、上記半導体層(たとえば半導体層が表面に形成された基板)を5時間、O2ガスで酸化処理する。なお、酸化条件は酸化炉の規模などに合わせて適宜変更すればよい。このような酸化処理により、半導体層の表面側にGa23を形成することができる。
【0024】
また、本発明における酸化工程としては、過酸化水素を含む溶液により半導体層の表面を酸化する工程とすることもできる。この場合、上記表面処理工程によりその表面が脱窒素処理されGaとなった半導体層を、過酸化水素を含む溶液に浸漬することにより、半導体層表面にGa23を形成することができる。浸漬時間は特に限定されず、1時間〜2時間浸漬すればよいが、これ以上の時間浸漬してもよい。過酸化水素を含む溶液は、たとえば市販の30%過酸化水素水や、SPM(sulfuric acid hydrogen peroxide mixture)(たとえば過酸化水素(濃度30%)と硫酸(含有率96%)とを体積比で1:5として調整した溶液)などを例示することができる。このように、過酸化水素を含む溶液により半導体層の表面を酸化する場合は、常温または加熱条件下での処理が可能となる。このような過酸化水素を含む溶液により酸化工程を実施すれば、半導体層の当該溶液に対する浸漬時間や温度条件を制御することで、半導体層の表面に形成される酸化膜(絶縁膜)の膜厚を正確に制御することができる。
【0025】
このような酸化工程は、上記表面処理工程と連続する工程であり、表面処理工程終了後、酸化工程を開始するまでの時間は数時間以内とすることが好ましく、より好ましくは1時間以内である。酸化工程を表面処理工程に連続させて行なうことで、表面処理工程により脱窒化処理された表面を維持したまま半導体層を酸化工程に供することができる。
【0026】
また、酸化工程は、上記表面処理工程と同一の反応室において行なわれることが好ましい。本発明において、同一の反応室において行なわれるとは、表面処理工程においてH2ガスにより表面を処理した半導体層を外気に接触させることなく、次いで酸化工程を行なうことをいう。このように同一の反応室において表面処理工程と酸化工程とを行なう場合は、表面処理工程により脱窒化処理された表面を維持しやすく、また、製造効率を向上させることができる。さらに、表面処理工程と酸化工程とを同一の反応室において行なう場合、装置の構成を簡略化できる。
【0027】
<半導体装置>
上記酸化工程により表面にGa23が形成された半導体層を用いて、従来公知の方法により半導体装置を提供することができる。上記本発明における表面処理工程および酸化工程を施した半導体層を用いた場合は、半導体層と絶縁膜との界面のリーク電流が十分に抑制され、耐圧の高い半導体装置とすることができる。以下、図面を参照しながら本発明による半導体装置の製造方法の一実施形態であるショットキーバリアダイオードの製造方法を説明する。
【0028】
(実施の形態1)
図2〜図8は、本発明による半導体装置の製造方法の実施の形態1を説明するための模式図である。図2〜図8には、半導体装置としてのショットキーバリアダイオードの製造方法の一例が示されている。以下、図2〜図8を参照して、本発明による半導体装置の製造方法の実施の形態1を説明する。
【0029】
まず、GaN基板2を準備する。このGaN基板2としては、任意の製造方法で形成された基板を用いることができるが、たとえばHVPE法で作製された(0001)面のGaN基板2を準備する。なお、このGaN基板2における平均転位密度は1×10cm-2以下とすることが好ましい。なお、転位密度は、たとえばエッチングにより形成されるピットの個数を、エッチングを行なった基板の面積で割るという方法によって測定することができる。エッチングはたとえば溶融KOHを用いて行なえばよい。
【0030】
次に、GaNを含む半導体層を準備する工程として、GaN基板2の主表面上にGaNエピタキシャル層9を任意の方法で形成する。この結果、図2に示すような構造を得る。GaNエピタキシャル層9の形成方法としては、任意の方法を用いることができ、たとえば有機金属気相成長法(Organo-Metallic Vapor Phase Epitaxy:OMVPE法)を例示することができる。
【0031】
次に、表面処理工程として、このように形成したGaNエピタキシャル層9の表面について、上記本発明の方法によりH2ガスによる表面処理を行なう。具体的には、GaN基板2上に形成されたGaNエピタキシャル層9表面に上述のようなCat−CVD装置を用いて、熱フィラメント法により活性化されたHガスにより脱窒素処理を行なう。処理の条件としては、たとえば、H2ガス流量50sccm以上100sccm以下(25℃)、加熱触媒体温度を1200℃以上1700℃以下とし、基板ホルダの温度を200℃以上400℃以下に保ち、10Pa〜30Paの圧力下で、処理時間を1時間とした条件を用いることができる。この結果、GaNエピタキシャル層9の表面から窒素が除去される。
【0032】
次に、酸化工程として、図3に示すようにGaNエピタキシャル層9の表面上に酸化膜10を形成する。酸化膜10の製造方法としては上記のように酸化炉による酸化または過酸化水素を含む溶液を用いて酸化することが好ましい。具体的には、酸化炉による酸化工程として、O2ガス流量を1sml以上2sml以下とし、900℃に設定された酸化炉内に上記表面処理を行なったGaNエピタキシャル層9を備えるGaN基板2を5時間放置し、GaNエピタキシャル層9表面にGa23膜を形成させる。この結果、図3に示すような構造を得る。
【0033】
次に、図4に示すように、GaN基板2の裏面(GaN基板2においてGaNエピタキシャル層9が形成された表面と反対側の表面)上にオーミック電極11を形成する。なお、このオーミック電極11を形成する工程に先立って、GaN基板2の少なくとも裏面を洗浄することが好ましい。この洗浄方法としては、たとえば有機洗浄と塩酸洗浄とを組み合わせて実施してもよい。
【0034】
オーミック電極11としては、単一の材料からなる電極を形成してもよいが、複数の導電体を積層した積層構造を有するオーミック電極11を形成してもよい。たとえば、オーミック電極11として、GaN基板2側からチタン/アルミニウム/チタン/金というように導電体としての金属層を積層した構造としてもよい。これらの金属層は電子線蒸着法(EB蒸着法)など任意の方法を用いて形成することができる。この結果、図4に示すような構造を得る。
【0035】
次に、ショットキー電極を形成する。具体的には、酸化膜10上にフォトリソグラフィ法を用いてパターンを有するレジスト膜を形成する(図示せず)。レジスト膜には、酸化膜10においてショットキー電極13(図8参照)が配置されるべき開口部を形成する領域上に開口パターンが形成されている膜を用いる。
【0036】
そして、レジスト膜をマスクとして用いて、酸化膜10をエッチングにより部分的に除去する。この結果、図5に示すように、酸化膜10において開口部が形成される。
【0037】
図5に示した構造においては、酸化膜10における開口部の側壁がGaNエピタキシャル層9の上部表面に対して傾斜している。この傾斜はその傾斜角θ(酸化膜10の開口部の側壁とGaNエピタキシャル層9の上部表面とのなす角)は、たとえば0.1°以上60°以下とすることが好ましく、より好ましくは1°以上45°以下である。また、当該傾斜角θを1°以上22°以下とすることがさらに好ましく、特に好ましくは1°以上11°以下である。このように傾斜角θを有する構造とすることにより、酸化膜10における開口部の底壁端部における電極の角部の角度を鈍角となるので、電界集中を緩和することができる。
【0038】
このような傾斜角θを形成させるためには、上記酸化膜10のエッチングとしてウエットエッチングを用い、当該ウエットエッチングの条件を調整することによって実施することができる。このようなウエットエッチング条件の調整を含むエッチングの一例としては、以下のような工程を用いることができる。まず、酸化膜10の上部表面をアセトンとイソプロピルアルコールの混合溶液により洗浄する。次に、GaNエピタキシャル層9および酸化膜10が形成されたGaN基板2に対して、加熱温度120℃で2分間の脱水ベーク処理を行なう。その後、酸化膜10の表面にレジスト(ポジレジスト)を塗布する。さらに、レジストに対して、加熱温度110℃で2分のプリベーク処理を行なう。その後、公知の方法により露光・現像処理を行ない、開口部を有するレジスト膜を形成する。さらに、このレジスト膜に対して、加熱温度130℃で2分間のポストベーク処理を行ない、レジスト膜をマスクとして、緩衝フッ酸(BHF)を用いたウエットエッチングにより酸化膜10を部分的に除去する。このBHFとしては、たとえば10%のBHF(BHF110、ダイキン工業(株)製)を用いることができる。このようにして、酸化膜10に側壁が傾斜した開口部を形成することができる(図5参照)。
【0039】
なお、上述した開口部を形成する工程において、現像処理後のポストベーク処理を行なわず、そのままウエットエッチングを行なう場合には、傾斜角θをより小さくする(たとえば傾斜角θを11°以下にする)ことができる。これは、ポストベーク処理を省略した場合、レジスト膜と酸化膜との密着性が向上しないので、ウエットエッチングにおける開口部の側壁のエッチングが、ポストベーク処理を行なう場合に比べてより促進されるためである。
【0040】
次に、図6に示すように、エッチングした酸化膜10上にレジスト膜12を形成する。このレジスト膜12は、後述のショットキー電極を除去(リフトオフ)するために設ける膜である。レジスト膜12の形成方法は、レジストを塗布した後に、公知の方法により露光・現像処理を行ない図6に示すような形状を有するレジスト膜12を形成する。レジスト膜12の形状はショットキー電極の形状に合わせて任意のものとすることができる。
【0041】
次に、図7に示すように、ショットキー電極となるべき導電膜13を形成する。この導電膜13としては、金などのショットキー特性の良好な材料を用いることができる。導電膜13の形成方法としては、任意の方法を用いることができ、たとえばEB蒸着法などを例示することができる。なお、上述した導電膜13を形成する工程に先立って、上記開口部において露出しているGaNエピタキシャル層9の表面を、塩酸などを用いて洗浄する工程を実施してもよい。
【0042】
次に、レジスト膜12を除去することにより、レジスト膜12上に形成されていた導電膜13を同時に除去する(リフトオフ)。この結果、図8に示すように、開口部の内部に導電膜13が残り、該導電膜13がショットキー電極として機能する。このような工程により半導体装置を製造することができる。
【0043】
(実施の形態2)
本実施の形態2においては、上述した表面処理工程において、プラズマ法によりH2ガスの活性化を行なう場合の半導体装置の製造方法について説明する。
【0044】
上記実施の形態1と同様の工程により、GaNエピタキシャル層9が形成されたGaN基板2を準備し、このGaNエピタキシャル層9の表面に本発明における表面処理を施す。たとえば、平行平板を用いたプラズマ発生装置において、H2ガス流量を20sccm以上40sccm以下(25℃)、ガス圧を2Pa以上10Pa以下とし、電源により100〜200Wの電流を平行平板に印加してH2ガスを活性化し、GaNエピタキシャル層9の表面処理を行なう。表面処理の時間はたとえば1時間とすればよい。
【0045】
次に、酸化工程として、上記表面処理したGaNエピタキシャル層9の表面を上記実施の形態1と同様の工程により酸化してGa23膜を形成する。このとき、上記表面処理工程を行なった処理室において、引き続き上記酸化工程を行なうようにしてもよい。この場合、上記表面処理工程と上記酸化工程とを別の装置により行なう場合より、半導体装置の製造工程に要する時間を短縮することができる。その後、図4〜図8を参照して説明した上記実施の形態1の工程と同様の工程を実施することにより、図8に示すような半導体装置を得ることができる。
【0046】
(実施の形態3)
本実施の形態3においては、実施の形態1または実施の形態2と同様の方法により表面処理工程を行なった後、上述した酸化工程において、過酸化水素を含む溶液により酸化処理を行なう場合の半導体の製造方法について説明する。
【0047】
上記実施の形態1と同様の工程により、GaNエピタキシャル層9が形成されたGaN基板2を準備し、このGaNエピタキシャル層9の表面に実施の形態1または実施の形態2と同様の方法により表面処理を施した。さらに、反応室が室温になった後で、過酸化水素を含む溶液にGaNエピタキシャル層9が形成されたGaN基板2を浸漬し、GaNエピタキシャル層9の表面に絶縁膜としてのGa23膜を形成する。この結果、図3に示すような構造を得る。このとき、たとえば、互いに連結された2つの反応室を備えた装置を用いることによって、表面処理工程と酸化工程との反応条件をそれぞれ任意に設定することができる。また、そのような構成の装置を用いる場合は、表面処理を行なったGaNエピタキシャル層9を外気に触れさせることなく酸化工程に供することが可能となる。
【0048】
なお、GaNエピタキシャル層9の表面のみにGa23膜を形成するため、たとえばGaNエピタキシャル層9の表面以外の部分(GaN基板2においてGaNエピタキシャル層9が形成された表面と反対側の裏面など)に被覆膜を形成しておいてもよい。当該被覆膜の材料としては、過酸化水素を含む溶液に対する耐性を有していれば、任意の材料を用いることができる。
【0049】
上述した酸化工程の後、図4〜図8を参照して説明した上記実施の形態1の工程と同様の工程を実施することにより、図8に示すような半導体装置を得ることができる。
【0050】
以上のように本発明の実施の形態について説明を行なったが、上述の各実施の形態の構成を適宜組み合わせることも当初から予定している。また、上述した実施の形態では半導体装置としてショットキーバリアダイオードを例にして説明したが、本発明は、半導体層の表面に絶縁膜(酸化膜)が形成された構成を備える半導体装置であれば任意の半導体装置に適用することができる。たとえば、本発明をMIS−FETの製造方法などに適用することができる。
【0051】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】Cat−CVD装置の一例の概略を示す図である。
【図2】半導体装置の製造工程において、GaN基板上にGaNエピタキシャル層が形成された状態を示す模式図である。
【図3】半導体装置の製造工程において、GaNエピタキシャル層上に酸化膜が形成された状態を示す模式図である。
【図4】半導体装置の製造工程において、GaN基板裏面にオーミック電極が形成された状態を示す模式図である。
【図5】半導体装置の製造工程において、酸化膜上に開口部が形成された状態を示す模式図である。
【図6】半導体装置の製造工程において、酸化膜上にレジスト膜が形成された状態を示す模式図である。
【図7】半導体装置の製造工程において、レジスト膜上に導電膜が形成された状態を示す模式図である。
【図8】半導体装置の製造工程において、レジスト膜がリフトオフされた状態を示す模式図である。
【符号の説明】
【0053】
1 Cat−CVD装置、2 GaN基板、3 基板ホルダ、4 ガス供給部、5 加熱触媒体、6 電源、7 ガス、8 ガス排気部、9 GaNエピタキシャル層、10 酸化膜、11 オーミック電極、12 レジスト膜、13 導電膜。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
GaNを含む半導体層を準備する工程と、
前記半導体層の表面を水素ガスにより処理する表面処理工程と、
前記表面処理工程後の前記表面を酸化する酸化工程と、
を備える半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記表面処理工程における水素ガスは、プラズマ法または熱フィラメント法により活性化される請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記酸化工程は、酸化炉を用いて前記表面を酸化する工程である請求項1または2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記酸化工程は、過酸化水素を含む溶液により前記表面を酸化する工程である請求項1または2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記表面処理工程と前記酸化工程とは、同一の反応室において行なわれる請求項1〜4のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−267019(P2009−267019A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−113800(P2008−113800)
【出願日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】