半導体装置の製造方法
【課題】 格子定数が異なる複数種類の半導体素子を同一の基板上に混載することが可能な半導体装置の製造方法を提供する。
【解決手段】 半導体装置の製造方法は、シリコン基板21の一部に絶縁膜22を形成し、シリコン基板21と絶縁膜22上にアモルファスSiGe層23を形成し、シリコン基板を熱処理し、アモルファスSiGe層23を絶縁膜22上に横方向に固相若しくは液相成長させて結晶化し、シリコン基板22と絶縁膜22上に格子定数が後に形成される材料層の格子定数に整合されたSiGe層23bを形成する。
【解決手段】 半導体装置の製造方法は、シリコン基板21の一部に絶縁膜22を形成し、シリコン基板21と絶縁膜22上にアモルファスSiGe層23を形成し、シリコン基板を熱処理し、アモルファスSiGe層23を絶縁膜22上に横方向に固相若しくは液相成長させて結晶化し、シリコン基板22と絶縁膜22上に格子定数が後に形成される材料層の格子定数に整合されたSiGe層23bを形成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコン基板上に複数の異なる機能素子、例えば光機能を有する半導体素子や、スピン機能を有する半導体素子を具備する半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ユビキタス情報化社会の実現を目指して、例えば携帯電話をはじめとする各種の情報通信機器や情報端末に対して小型化、高機能化、多機能化、あるいはパーソナル化といった様々な要求が強まりつつある。また、これと並行して、情報通信機器や情報端末に対しては、例えば情報処理速度の高速化、取り扱い可能な情報の多様化および大容量化、あるいは低消費電力化等の要求も強まっている。
【0003】
このような要求に応じて、半導体素子の微細化や集積回路の高集積化は、Si−LSI技術と称されるシリコン(Si)を材料の中核とする半導体製造技術において、いわゆるスケーリングを主たる指導原理として実現されている。しかし、スケーリングにも限界があり、スケーリングを超えた新たな指導原理が求められている。
【0004】
その一つとして、Siに比べて、キャリアの移動度が高い新材料、例えばGe、SiGeや、歪みSi、歪みSiGe、歪みGeが注目されている。これらの新材料を用いてLSIの動作速度を向上させたり、Si基板上にバッファ層としてのGe層を形成し、このGe層を介してSi基板上に光機能を有するGaAs層を結晶成長させる研究も行われている(例えば非特許文献1〜4参照)。
【0005】
しかし、SiGe結晶やGaAs結晶は、それらの格子定数がSi基板の格子定数とは異なっている。このため、それらの材料をSi基板上に直接設けた場合、各材料に好ましくない応力や負荷が掛かり、欠陥が発生し、それら材料が本来有している優れた機能を十分に発揮できなくなるおそれがある。また、歪みSiや歪みGeは、SiやGeとは格子定数の異なるバッファ層上に形成するが、このとき、これらの格子定数差を精密に調整する必要がある。また、これらのSiGe結晶や歪みSi結晶や歪みGe結晶あるいはGaAs結晶は、格子定数がそれぞれ異なっている。このため、たとえGe層がGaAs結晶の下地層としては適していても、Ge層の上にSiGe結晶や歪みSi結晶を直接設けた場合、上記と同様の不具合が発生するおそれがある。したがって、SiGe結晶、歪みSi結晶、およびGaAs結晶等をSi基板やGe層上に単純に混載することが困難である。
【0006】
なお、電界効果トランジスタを代表とする電子機能素子や、例えば発光素子や受光素子を代表とする光機能素子、あるいはスピントランジスタを代表とするスピン機能素子等の互いに機能が異なる複数種類の素子を、それぞれの形成材料の格子定数に合った材料からなる複数種類の基板上に個別に設けた後、それら素子が設けられた基板同士を貼り合わせる技術も研究されている。この技術によれば、機能や形成材料の格子定数がそれぞれ異なる複数種類の素子が実質的に1枚の基板上に混載された半導体装置や集積回路を実現することが可能である。しかし、この技術では半導体装置のさらなる小型化、微細化、あるいは高集積化を図ることは実質的に不可能である。
【0007】
このため、半導体集積回路の性能を革新的に向上させ、且つ高集積化を可能とするため、電子機能素子、光機能素子、スピン機能素子を一つの基板上に混載させる技術の開発が必要である。したがって、これらの機能や形成材料の格子定数が異なる複数種類の半導体素子を同一の基板上に混載することができる技術の開発が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【非特許文献1】「Siへテロ超構造とそのデバイス応用」:宮尾正信、中川清和、応用物理第61巻、第11号、p.1104、1992年
【非特許文献2】「Si系高移動度MOSトランジスタ技術」:高木信一、応用物理第74巻、第9号、p.1158−1170、2005年
【非特許文献3】“Gallium Aresenide Layers Grown by Molecular Beam Epitaxy on Single Crystalline Germanium Island on Insulator”: M. Takai, T. Tanigawa, T. Minamisono, K. Gamo, and S. Namba, Jpn. J. Appl. Phys. 23, L308, (1984)
【非特許文献4】“Low-dislocation-density GaAs epilayers grown on Ge-coated Si substrates by means of lateral epitaxial overgrowth”: Appl. Phys. Lett. 41, 347, (1982)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、格子定数が異なる複数種類の半導体素子やスピン機能素子を同一の基板上に混載することが可能な半導体装置の製造方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の半導体装置の製造方法の態様は、シリコン基板の一部に絶縁膜を形成し、前記シリコン基板と絶縁膜上にアモルファスSiGe層を形成し、前記シリコン基板を熱処理し、前記アモルファスSiGe層を前記絶縁膜上に横方向に固相若しくは液相成長させて結晶化し、前記シリコン基板と絶縁膜上に格子定数が後に形成される材料層の格子定数に整合されたSiGe層を形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、格子定数が異なる複数種類の半導体素子やスピン機能素子を同一の基板上に混載することが可能な半導体装置の製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の概略構成を示す図。
【図2】SiGe層の混晶比と格子定数の関係を示す図。
【図3】本発明の第2の実施形態に係る半導体装置の概略構成を示す断面図。
【図4】SiGe層を横方向に液相エピタキシャル成長させる方法を示す図。
【図5】SiGeの混晶比と液相線及び固相線の関係を示す図。
【図6】SiGe層の製造方法を示すものであり、SiGeのインプリント/インデント成長を示す図。
【図7】SiGe層の製造方法を示すものであり、SiGe/Si多層構造のインプリント/インデント成長を示す図。
【図8】SiGe層の製造方法を示すものであり、インプリント/インデント成長したシリコン上で、SiGe層をエピタキシャル成長させる場合を示す図。
【図9】SiGe層の製造方法を示すものであり、縁膜上で単結晶化する結晶性絶縁膜MgOを用いたSiGe層の結晶化方法を示す図。
【図10】SiGe層の製造方法を示すものであり、金属誘起結晶化法を用いて絶縁膜上にSiGe層を形成する方法を示す図。
【図11】図1に示す第1の実施形態に係るモノリシック型の半導体装置の製造方法を概略的に示す断面図。
【図12】第2の実施形態に係る三次元構造の半導体装置の製造方法を概略的に示す断面図。
【図13】バッファ層としてのSiGe層に新材料を形成した場合を示す電子顕微鏡写真。
【図14】本発明をディスプレイ装置に適用した場合を示す図。
【図15】図14に示すディスプレイ装置を携帯機器に適用した場合を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0014】
先ず、先ず、第1、第2の実施形態により、本発明によって実現される半導体装置の構成について説明する。
【0015】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の概略構成を示している。図1は、電子機能素子や、光機能素子及びスピン機能素子を1つのシリコン基板上にモノリシックに形成する場合を示している。
【0016】
電子機能素子は、例えばGeやSiGeを用いたトランジスタであり、光機能素子は、例えばGaAsやFeSi2を用いた発光素子や受光素子であり、スピン機能素子は、例えばFe3Siを用いたスピントランジスタである。しかし、各機能素子は、これらに限定されるものではない。
【0017】
図1において、シリコン基板10の第1の領域Aは、周知のCMOSトランジスタ11の形成領域であり、このCMOSトランジスタ11等により、例えばメモリセル、論理演算回路や液晶表示部等が形成されている。シリコン基板10の第2の領域Bは、複数の機能素子の形成領域である。第2の領域Bにおいて、シリコン基板10上には、例えばシリコン酸化膜により絶縁膜13が形成されている。この絶縁膜13上に、ユニバーサルバッファ層14(以下、単にバッファ層と称す)が形成されている。このバッファ層14は、格子定数の異なる例えばSiGe層14a、14b、14cより構成されている。すなわち、これらSiGe層14a、14b、14cの格子定数は、これらの上に形成される電子機能素子を構成する例えばSiGe層又はGe層15、光機能素子を構成する例えばGaAs層又はFeSi2層16、及びスピン機能素子を構成する例えばFe3Si層17の格子定数とそれぞれ等しく設定されている。これらSiGe層14a、14b、14c、及びSiGe層又はGe層15、GaAs層又はFeSi2層16、Fe3Si層17は、図示せぬ絶縁膜により分離されている。
【0018】
図2は、SiGe層の混晶比と格子定数の関係を示している。図2に示すように、光やスピン等の新機能を有する材料群の格子定数は、例えばGaAs:0.565nm、FeSi2:0.554nm、Fe3Si:0.564nmであり、シリコンの格子定数0.543nmと大きく異なっている。このため、これらの材料をシリコン基板上に混載する場合、結晶成長のテンプレートが必要となる。Si1−xGex(0≦x≦1)混晶は、全率固溶の半導体であり、混晶比(x)を変化することにより、格子定数を0.543nmから0.565nmの範囲で自由に変化させることができる。上記新機能を有する材料群の格子定数は、Si1−xGexの格子定数の範囲内にあるため、図1に示すように、混晶比が異なるSi1−xGex層14a、14b、14cを絶縁膜13上に結晶成長させ、このSi1−xGex層14a、14b、14cをバッファ層(テンプレート)として上記材料群を、Si1−xGex層14a、14b、14c上に結晶成長させることにより、歪を制御した格子欠陥が少ない良質な膜を形成することができる。このようにして形成されたSiGe層又はGe層15、GaAs層又はFeSi2層16、Fe3Si層17を用いて、電子機能、光機能、スピン機能を有する所望の素子が形成される。
【0019】
上記絶縁膜13上における結晶方位の制御は、後述するSiGe層の製造方法において説明するが、例えば次のような方法が考えられる。
【0020】
(1)SiGeの液相又は固相エピタキシャル成長法
(2)SiGeの表面又は下方の層に触媒金属をインプリントし、触媒金属によりSiGeの成長を誘起させる固相成長法、SiGeの表面又は下方の層に局所的に応力を印加し、この応力印加箇所からSiGeを成長させる固相成長法
(3)絶縁膜上で単結晶化する例えばMgO等の結晶性絶縁膜をテンプレートとしてSiGeを結晶化させる方法
(4)金属誘起結晶化法(MIC : Metal Induced Crystallization)を用いて絶縁膜上にSiGe層を形成する方法
上記第1の実施形態によれば、シリコン基板10上に形成された絶縁膜13の上に、混晶比が異なるバッファ層としてのSi1−xGex層14a、14b、14cを設け、このSi1−xGex層14a、14b、14cをテンプレートとしてSiGe層又はGe層15、GaAs層又はFeSi2層16、Fe3Si層17を設けている。このため、シリコン基板10と格子定数が異なる複数の半導体層を1つの基板上に設けることができる。したがって、高機能の半導体装置をチップ面積の増大を抑制して形成することができる。
【0021】
(第2の実施形態)
図3は、本発明の第2の実施形態に係る半導体装置の概略構成を示しており、図3において図1と同一部分には同一符号を付している。図3は、電子機能素子や、光機能素子及びスピン機能素子を1つのシリコン基板上に三次元に形成する場合を示している。
【0022】
図3において、シリコン基板10の表面領域には、周知のトランジスタやCMOSトランジスタ11が形成されている。基板10の上には、層間絶縁膜13aが形成されている。この層間絶縁膜13aは、例えば500℃以下の温度により形成されたシリコン酸化膜(例えばTEOS膜)により構成されている。この層間絶縁膜13a上には、バッファ層として、例えばSi1−xGex(0≦x≦1)層14cが形成されている。このSi1−xGex層14c上に例えばFe3Si層17が形成されている。Si1−xGex層14cの格子定数は、Fe3Si層17の格子定数にチューニングされている。このため、Si1−xGex層14c上に良好な膜質のFe3Si層17を形成できる。このFe3Si層17を用いてスピン機能素子が形成されている。
【0023】
また、Fe3Si層17は、層間絶縁膜13bにより覆われている。この層間絶縁膜13bは、例えばTEOS膜により構成されている。層間絶縁膜13bの上には、バッファ層として、例えばSi1−xGex層14bが形成されている。このSi1−xGex層14b上に例えば複数のFeSi2層16が形成されている。Si1−xGex層14bの格子定数は、FeSi2層16の格子定数にチューニングされている。このため、Si1−xGex層14b上に良好な膜質のFeSi2層16を形成できる。これらFeSi2層16を用いて光機能素子が形成されている。これらFeSi2層16の間に絶縁膜13cが形成されている。この絶縁膜13cは、例えばTEOS膜が適用される。
【0024】
上記光機能素子、スピン機能素子、CMOSトランジスタは、配線層及びビアを介して接続されている。
【0025】
上記構成において、Si1−xGex層14c、14bは、絶縁膜13a、13bの表面全面に形成した。しかし、これに限定されるものではなく、各機能素子が形成される領域にのみに形成してもよい。
【0026】
上記第2の実施形態によれば、トランジスタやCMOSトランジスタ11が形成されたシリコン基板10上に絶縁膜13aを設け、この絶縁膜13a上にバッファ層としてのSi1−xGex層14cを介在してFe3Si層17を設け、さらに、絶縁膜13b上にバッファ層としてのSi1−xGex層14bを介在してFeSi2層16を設けている。このため、シリコンと格子定数の異なる複数の材料を順次積層して、1つの基板上に、スピン機能素子と光機能素子を有する三次元半導体装置を実現することができる。
【0027】
(SiGe層の製造方法)
次に、上記第1、第2の実施形態に適用されるバッファ層としてのSi1−xGex層の製造方法について説明する。
【0028】
(SiGe層の第1の製造方法)
図4は、SiGe層を絶縁膜上で横方向に固相若しくは液相エピタキシャル成長させる方法を示している。
【0029】
図4(a)に示すように、表面が(100)面のシリコン基板21に例えばリング状のトレンチ、又は2つの平行するトレンチを形成し、このトレンチ内にシリコン酸化膜22が埋め込まれる。シリコン酸化膜22の表面は、例えばエッチバック又はCMP(Chemical Mechanical Polishing)を用いて平坦化される。この結果、シリコン酸化膜22により囲まれた基板21の表面領域21aが形成される。
【0030】
図4(b)に示すように、表面領域21a及びシリコン酸化膜22上にアモルファスSiGe層23が形成され、さらに、このアモルファスSiGe層23上にキャップ層又は蓄熱層としてのシリコン酸化膜24が形成される。
【0031】
次に、図4(c)に示すように、熱処理が行われる。この熱処理は、温度が例えば940℃以上のRTA(Rapid Thermal Anneal)である。RTAの温度は、Si1−xGexの混晶比により異なる。
【0032】
図5は、SiGeの混晶比と液相線及び固相線の関係を示している。SiGeの液相エピタキシャル成長を生じさせる温度と、固相エピタキシャル成長を生じさせる温度は、混晶比によって異なり、液相エピタキシャル成長を行う場合、SiGeを図5に示す液相線以上の温度とする必要があり、固相エピタキシャル成長を行う場合、固相線以下の温度とする必要がある。このため、上記RTAでは、Si1−xGexの混晶比に応じた温度が設定され、固相及び液相エピタキシャル成長が行われる。
【0033】
すなわち、図4(c)に示すように、RTAにおいて、アモルファスSiGe層23が液相エピタキシャル成長を生じさせる温度に達すると、基板21に接している部分で、基板SiとアモルファスSiGe層がミキシングする。SiGe層の融点は、Ge濃度と共に低温化するから、Si濃度の高い基板Si側から結晶化が始まり、次第に膜厚方向に結晶化が進み、この後、横方向に結晶化が進行する。横方向の結晶化の距離は、RTAの処理時間により規定される。RTAが終了した際、アモルファスSiGe層23のうち結晶化されたSiGe層23a以外の部分はpoly−SiGe層23bとなる。
【0034】
尚、上記熱処理は、RTAに限定されるものではなく、レーザービームをSiGe層の形成領域に照射し、走査することにより加熱することも可能である。
【0035】
上記SiGeの液相エピタキシャル成長法によれば、所望の格子定数を有するSiGe層を形成することができる。しかも、熱処理時間を調整することにより、所望の表面積を有するSiGe層を形成することができるため、各種デバイスの製造に有効である。
【0036】
また、SiGe層の上面にキャップ層が形成されているため、結晶化されたSiGe層の表面の平坦性が良好であり、SiGe層の上に他の材料層を形成する場合に有利である。
【0037】
尚、図4に示す製造工程において、熱処理温度を固相線の領域とすれば、固相エピタキシャル成長によりアモルファスSiGe層を結晶化することも可能である。
【0038】
アモルファスSiの固相エピタキシャル成長の場合、熱処理温度が高くなると、アモルファスSi層の中にランダムな多結晶核が発生し、固相エピタキシャル成長を阻害する。したがって、固相成長距離は、加熱温度が低く、処理時間が長いほど長くなる。
【0039】
一方、液相エピタキシャル成長では、熱処理時間が数分以下と短く多結晶核の発生は無視できる。したがって、液相エピタキシャル成長と固相エピタキシャル成長を比較した場合、液相エピタキシャル成長の方が、成長距離を大きくすることができる。このため、液相エピタキシャル成長は、大きなSiGe層の形成に適している。
【0040】
(SiGe層の第2の製造方法)
図6は、SiGe層のインプリント/インデント成長の原理を示すものである。図6(a)に示すように、図示せぬシリコン基板上に例えばシリコン酸化膜31が形成され、このシリコン酸化膜31上にアモルファスSiGe層32が形成される。アモルファスSiGe層32は、この上に形成される材料に応じて、予め混晶比が調整されている。このアモルファスSiGe層32の表面に、例えばシリコンで形成されたインデント33を用いて触媒金属をインプリントしたり、インデント33を用いて応力が付加される。インプリントは、具体的には、インデント33を構成する針の先端に触媒金属を蒸着し、この触媒金属がアモルファスSiGe層32の表面に圧着して転写される。尚、触媒金属としては、例えばNi、Cu、Pd、Co等のSiGeと表面反応を生じる金属が適用される。
【0041】
後述する製造方法においても同様であるが、触媒金属の形成法としては、インプリントに限定されるものではなく、例えばリソグラフィ法、インクジェット法を用いることも可能である。リソグラフィ法は、半導体装置のリソグラフィと同様にして、触媒金属をアモルファスSiGe層32の表面に形成するものである。インクジェット法は、触媒金属をアモルファスSiGe層32の表面に吹き付けて形成するものである。
【0042】
この後、図6(b)に示すように、ヒータ34により基板を加熱する。この加熱温度は、図5に示す固相エピタキシャル成長領域の温度であり、SiGeの混晶比に依存する温度である。この加熱により、アモルファスSiGe層32の触媒金属が形成された部分、又は応力が付加された部分から結晶化され、所定の格子定数を有するSiGe層32aが形成される。
【0043】
この製造方法によれば、結晶方位が(111)面に揃ったSiGe層を形成することができる。
【0044】
図7は、SiGe/Si多層構造のインプリント/インデント成長を示している。
【0045】
この例の場合、図7(a)に示すように、図示せぬシリコン基板上に形成されたシリコン酸化膜31の表面に、シリコンのインデント33を用いて触媒金属をインプリントしたり、インデント33を用いてシリコン酸化膜31の表面に応力が付加される。
【0046】
この後、図7(b)に示すように、シリコン酸化膜31上にアモルファスシリコン層41、アモルファスSiGe層32が順次形成される。アモルファスSiGe層32は、この上に形成される材料に応じて、予め混晶比が調整されている。
【0047】
次いで、図7(c)に示すように、基板が熱処理される。この処理温度は、アモルファスSiGe層32の混晶比に応じた固相エピタキシャル成長領域の温度である。熱処理に応じて、シリコン酸化膜31にインプリントされた触媒金属、又はシリコン酸化膜31に付加された応力部分よりアモルファスシリコン層41が結晶化され、その結晶を種として、アモルファスSiGe層32が結晶化される。これにより、所定の格子定数を有するSiGe層32aが形成される。
【0048】
上記製造方法によっても、結晶方位が(111)面に揃ったSiGe層32aを形成することができる。
【0049】
図8は、インプリント/インデント成長したシリコン上で、SiGe層をエピタキシャル成長させる場合を示している。
【0050】
この例の場合、図8(a)に示すように、図示せぬシリコン基板上に形成されたシリコン酸化膜31の表面に、アモルファスシリコン層41が形成される。このアモルファスシリコン層41の表面にインデント33を用いて触媒金属をインプリントしたり、インデント33を用いてアモルファスシリコン層41の表面に応力が付加される。
【0051】
この後、図8(b)に示すように、アモルファスシリコン層41上にアモルファスSiGe層32が形成される。アモルファスSiGe層32は、この上に形成される材料に応じて、予め混晶比が調整されている。このアモルファスSiGe層32の形成に伴い、アモルファスシリコン層41が、触媒金属をインプリントされた部分又は応力が付加された部分から結晶化される。
【0052】
次いで、図8(c)に示すように、基板が熱処理される。この処理温度は、アモルファスSiGe層32の混晶比に応じた固相エピタキシャル成長領域の温度である。熱処理に応じて、アモルファスSiGe層32がその下の結晶化されたシリコン層に従って結晶化される。このようにして、所定の格子定数を有するSiGe層32aが形成される。
【0053】
上記製造方法によっても、結晶方位が(111)面に揃ったSiGe層32aを形成することができる。
【0054】
(SiGe層の第3の製造方法)
図9は、絶縁膜上で単結晶化する結晶性絶縁膜、例えばMgOを用いたSiGe層の結晶化方法を示している。
【0055】
図9(a)に示すように、図示せぬ基板上のシリコン酸化膜31の上にアモルファスMgO層51が形成される。さらに、アモルファスMgO層51上にアモルファスSiGe層32が形成され、ヘテロ構造とされる。
【0056】
この後、図9(b)に示すように、例えばヒータ34により基板を熱処理する。熱処理温度は、例えば500℃程度である。すると、アモルファスMgO層51が結晶化してMgO層51aとなる。アモルファスSiGe層32は、MgO層51aをテンプレートとして結晶化され、SiGe層32aとなる。
【0057】
MgO層51aの格子定数と、SiGe層32aの格子定数は完全に整合していない。このため、SiGe層32aにおいて、MgO層51aとの界面には欠陥が形成される。しかし、SiGe層32aの膜厚を比較的厚くすることにより、SiGe層32表面の結晶欠陥を低減することができる。具体的には、SiGe層32aの膜厚は、例えば数1000オングストロームであればよい。このSiGe層32aをテンプレートとして、GaAs層、又はFe3Si層が形成される。
【0058】
SiGe層32a上に形成されるデバイスは、薄膜デバイスであるため、SiGe層32aとGaAs層の格子定数、又はSiGe層32aとFe3Si層の格子定数が正確に一致している必要がある。上記のように、SiGe層32aの膜厚を厚くすることにより、SiGe層32a表面の結晶欠陥を低減でき、デバイスの性能劣化を防止することができる。
【0059】
尚、結晶性絶縁膜としては、MgOに限定されるものではなく、例えばZnO、YZrO2、(YSZ)など、SiGe層の格子定数と類似する格子定数を有する材料を適用することができる。
【0060】
(SiGe層の第4の製造方法)
図10は、金属誘起結晶化法(MIC : Metal Induced Crystallization)を用いて絶縁膜上にSiGe層を形成する方法を示している。
【0061】
図10(a)に示すように、図示せぬ基板上にはシリコン酸化膜31が形成されている。このシリコン酸化膜31上に触媒金属としての例えばアルミニウム層61が形成される。アルミニウム層61上には、アモルファスSi層41が形成され、このアモルファスSi層41上にアモルファスSiGe層32が形成される。
【0062】
この後、図10(b)に示すように、基板が例えばヒータ34により熱処理される。この熱処理温度は例えば500℃以下である。この熱処理により、アルミニウム層61とアモルファスSi層41及びアモルファスSiGe層32とが入れ替わる。この入り替わりと同時に、アモルファスSi層41とアモルファスSiGe層32がミキシングすると共に結晶化され、シリコン酸化膜31上にSiGe層32aが形成される。アモルファスSi層41が無い場合、SiGeとAlが反応初期の過程で不均一に反応する。すなわち、アモルファスSi層41を用いることで反応初期過程が均一化されることとなる。
【0063】
次いで、図10(c)に示すように、SiGe層32a上のアルミニウム層61が、例えばリン酸を用いたウェットエッチングにより除去される。
【0064】
上記金属誘起結晶化法によっても良好な膜質のSiGe層を形成することができる。
【0065】
(半導体装置の製造方法)
図11は、図1に示す第1の実施形態に係るモノリシック型の半導体装置の製造方法を概略的に示している。第1の実施形態の場合、トランジスタあるいはCMOSトランジスタ11の形成領域としての第1の領域Aと、機能素子の形成領域としての第2の領域Bがシリコン基板10の平面内に形成される。第2の領域Bに形成される機能素子を形成する際、バッファ層としてのSiGe層の製造方法は、上述したように種々の方法がある。ここでは、例えば液相エピタキシャル成長法を用いる場合について説明する。
【0066】
第2の領域Bに形成される機能素子を上述した液相エピタキシャル成長法を用いて形成する場合、第1の領域に形成されるCMOSトランジスタを形成する場合の熱処理温度に比べて高い熱処理温度を必要とする。このため、機能素子をCMOSトランジスタより後に形成した場合、CMOSトランジスタに与えるダメージが大きい。このため、第1の実施形態に係る半導体装置を、液相エピタキシャル成長を用いて製造する場合、第2の領域Bの機能素子を先に形成する必要がある。
【0067】
具体的には、先ず、図11(a)に示すように、シリコン基板10の第2の領域B上に、絶縁膜13としての例えばシリコン酸化膜が形成される。
【0068】
この後、図11(b)に示すように、絶縁膜13上に、ユニバーサルバッファ層14としての例えばSiGe層14a、14b、14dcが形成される。これらSiGe層14a、14b、14dcは、例えば上記第1の製造方法に示す液相エピタキシャル成長を用いて形成される。これらSiGe層14a、14b、14dcの格子定数は、これらの上に形成される機能素子の格子定数に整合されている。また、これらSiGe層14a、14b、14dcは、図示せぬ絶縁膜により分離されている。
【0069】
次いで、図11(c)に示すように、各SiGe層14a、14b、14dcの上に例えば電子機能素子の形成層としてのSiGe層又はGe層15、光機能素子の形成層としての例えばGaAs層又はFeSi2層16、或いはスピン機能素子の形成層としての例えばFe3Si層17が、例えば熱処理温度の高い材料から順次形成される。さらに、これらSiGe層又はGe層15、GaAs層又はFeSi2層16、Fe3Si層17の形成とともに、所要の機能素子が形成される。このようにして、第2の領域Bに各機能素子が形成される。
【0070】
この後、図11(d)に示すように、第1の領域Aに、周知の技術を用いてCMOSトランジスタ11が形成される。
【0071】
上記製造方法により、1つのシリコン基板内にCMOSトランジスタ、電子機能素子、光機能素子、スピン機能素子を有する高機能半導体装置を形成することができる。
【0072】
また、バッファ層としてのSiGe層の製造方法は液相エピタキシャル成長に限定されるものではなく、上述した第1乃至第4の製造方法のいずれか1つを用いて、又は複数を組み合わせて製造することができる。さらに、これらの製造方法の選択に応じて、第1の領域Aと第2の領域Bの製造順序を適宜変更すればよい。
【0073】
図12は、上記第2の実施形態に係る三次元構造の半導体装置の製造方法を概略的に示している。
【0074】
先ず、図12(a)に示すように、シリコン基板10の表面領域に周知の技術によりCMOSトランジスタ11が形成される。
【0075】
この後、図12(b)に示すように、基板10の上に層間絶縁膜13aが形成される。この層間絶縁膜13aは、例えば500℃以下の温度により形成されたシリコン酸化膜(例えばTEOS膜)である。
【0076】
次いで、図12(c)に示すように、層間絶縁膜13a上に、バッファ層となる例えばアモルファスSi1−xGex層14が形成される。このアモルファスSi1−xGex層14の格子定数は、この上に形成されるFe3Si層17の格子定数にチューニングされている。アモルファスSi1−xGex層14を結晶化させる方法は、上記第1乃至第4の製造方法のいずれか1つが適用される。ここでは、例えば触媒金属を用いた場合について示す。すなわち、アモルファスSi1−xGex層14上に、例えば触媒金属71が複数箇所インプリントされる。この触媒金属としては、例えばNi、Cu,Pd、Coのうちの1つを適用できる。
【0077】
この後、図12(d)に示すように、基板10が熱処理される。この熱処理温度は、例えば200℃以上で、CMOSトランジスタ11にダメージを与えることが無い500℃以下であることが好ましい。この熱処理により、触媒金属71の部分からアモルファスSi1−xGex層14が結晶化され、Si1−xGex層14cが形成される。
【0078】
続いて、図12(e)に示すように、Si1−xGex層14c上に、Si1−xGex層14cの格子定数と等しい例えばFe3Si層17が形成され、このFe3Si層17を用いてスピン機能素子が形成される。
【0079】
この後、図12(b)に示したと同様に、Si1−xGex層14cの上にスピン機能素子を覆う絶縁膜13bが形成される。この絶縁膜13b上に、図12(c)に示したと同様に、光機能素子を形成するために混晶比が調整されたアモルファスSi1−xGex層が形成され、このアモルファスSi1−xGex層上に触媒金属が形成される。次いで、基板が、図12(d)に示したと同様にして熱処理され、アモルファスSi1−xGex層が結晶化されて、Si1−xGex層14bが形成される。この後、図12(e)に示したと同様に、Si1−xGex層14b上に例えばFeSi2層が形成され、このFeSi2層に光機能素子が形成される。
【0080】
上記製造方法によれば、CMOSトランジスタ11が形成されたシリコン基板10上に絶縁膜13aを形成し、この絶縁膜13a上にバッファ層としてのSi1−xGex層14cを介在してFe3Si層17を形成し、さらに、絶縁膜13b上にバッファ層としてのSi1−xGex層14bを介在してFeSi2層16を形成している。このため、シリコンと格子定数の異なる複数の材料を順次積層して、1つの基板上に、スピン機能素子と光機能素子を有する三次元半導体装置を実現することができる。
【0081】
図13は、バッファ層としてのSiGe層に新材料を形成した電子顕微鏡写真を示すものである。SiGe層上に良好なFe3Si層が形成されていることが分かる。
【0082】
図14は、本発明の応用例を示すものであり、本発明を例えばディスプレイ装置に適用した場合を示している。ディスプレイ装置81において、ガラス基板81aの表面に複数の画素82がマトリクス状に配置された表示部81bが形成されている。各画素は、薄膜トランジスタ(TFT)83により構成された駆動回路により駆動される。また、表示部81bの例えば周辺回路84には、演算装置としてのCPUやメモリが含まれている。この演算装置は、高速動作が必要である。このため、例えばSiGeのチャネル領域を有する薄膜トランジスタ85により演算装置が構成される。
【0083】
この薄膜トランジスタ85の形成方法は、上記各実施形態と同様であり、例えば絶縁膜としてのガラス基板81a上にバッファ層としてのSiGe層及びこのSiGe層と結晶方位が揃ったSiGe層を形成し、このSiGe層にSiGeのチャネル領域を有する薄膜トランジスタ85を形成する。
【0084】
この応用例によれば、表示部81bと高速な演算装置とを一体化したディスプレイ装置を構成することができる。
【0085】
また、図15に示すように、このディスプレイ装置81を例えば携帯電話機91等の携帯端末装置に適用することにより、これらの装置の性能を飛躍的向上させることが可能である。
【0086】
このように、絶縁膜上に、格子定数がその上に形成される材料の格子定数と整合されたユニバーサルバッファ層としてのSiGe層を形成することにより、シリコン基板上に、電子機能、光機能、スピン機能を有する複数の素子を集積化することができる。このため、複数の機能素子を有する半導体装置を1チップ内に混載することができる。したがって、半導体装置のさらなる小型化、微細化、及び高機能化を図ることが可能である。
【0087】
尚、本発明は、上記各実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を変えない範囲において種々変形実施可能なことは勿論である。
【符号の説明】
【0088】
10…シリコン基板、13…絶縁膜、14…ユニバーサルバッファ層、14a、14b、14dc…SiGe層、15…SiGe層又はGe層、16…GaAs層又はFeSi2層、17…Fe3Si層。
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコン基板上に複数の異なる機能素子、例えば光機能を有する半導体素子や、スピン機能を有する半導体素子を具備する半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ユビキタス情報化社会の実現を目指して、例えば携帯電話をはじめとする各種の情報通信機器や情報端末に対して小型化、高機能化、多機能化、あるいはパーソナル化といった様々な要求が強まりつつある。また、これと並行して、情報通信機器や情報端末に対しては、例えば情報処理速度の高速化、取り扱い可能な情報の多様化および大容量化、あるいは低消費電力化等の要求も強まっている。
【0003】
このような要求に応じて、半導体素子の微細化や集積回路の高集積化は、Si−LSI技術と称されるシリコン(Si)を材料の中核とする半導体製造技術において、いわゆるスケーリングを主たる指導原理として実現されている。しかし、スケーリングにも限界があり、スケーリングを超えた新たな指導原理が求められている。
【0004】
その一つとして、Siに比べて、キャリアの移動度が高い新材料、例えばGe、SiGeや、歪みSi、歪みSiGe、歪みGeが注目されている。これらの新材料を用いてLSIの動作速度を向上させたり、Si基板上にバッファ層としてのGe層を形成し、このGe層を介してSi基板上に光機能を有するGaAs層を結晶成長させる研究も行われている(例えば非特許文献1〜4参照)。
【0005】
しかし、SiGe結晶やGaAs結晶は、それらの格子定数がSi基板の格子定数とは異なっている。このため、それらの材料をSi基板上に直接設けた場合、各材料に好ましくない応力や負荷が掛かり、欠陥が発生し、それら材料が本来有している優れた機能を十分に発揮できなくなるおそれがある。また、歪みSiや歪みGeは、SiやGeとは格子定数の異なるバッファ層上に形成するが、このとき、これらの格子定数差を精密に調整する必要がある。また、これらのSiGe結晶や歪みSi結晶や歪みGe結晶あるいはGaAs結晶は、格子定数がそれぞれ異なっている。このため、たとえGe層がGaAs結晶の下地層としては適していても、Ge層の上にSiGe結晶や歪みSi結晶を直接設けた場合、上記と同様の不具合が発生するおそれがある。したがって、SiGe結晶、歪みSi結晶、およびGaAs結晶等をSi基板やGe層上に単純に混載することが困難である。
【0006】
なお、電界効果トランジスタを代表とする電子機能素子や、例えば発光素子や受光素子を代表とする光機能素子、あるいはスピントランジスタを代表とするスピン機能素子等の互いに機能が異なる複数種類の素子を、それぞれの形成材料の格子定数に合った材料からなる複数種類の基板上に個別に設けた後、それら素子が設けられた基板同士を貼り合わせる技術も研究されている。この技術によれば、機能や形成材料の格子定数がそれぞれ異なる複数種類の素子が実質的に1枚の基板上に混載された半導体装置や集積回路を実現することが可能である。しかし、この技術では半導体装置のさらなる小型化、微細化、あるいは高集積化を図ることは実質的に不可能である。
【0007】
このため、半導体集積回路の性能を革新的に向上させ、且つ高集積化を可能とするため、電子機能素子、光機能素子、スピン機能素子を一つの基板上に混載させる技術の開発が必要である。したがって、これらの機能や形成材料の格子定数が異なる複数種類の半導体素子を同一の基板上に混載することができる技術の開発が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【非特許文献1】「Siへテロ超構造とそのデバイス応用」:宮尾正信、中川清和、応用物理第61巻、第11号、p.1104、1992年
【非特許文献2】「Si系高移動度MOSトランジスタ技術」:高木信一、応用物理第74巻、第9号、p.1158−1170、2005年
【非特許文献3】“Gallium Aresenide Layers Grown by Molecular Beam Epitaxy on Single Crystalline Germanium Island on Insulator”: M. Takai, T. Tanigawa, T. Minamisono, K. Gamo, and S. Namba, Jpn. J. Appl. Phys. 23, L308, (1984)
【非特許文献4】“Low-dislocation-density GaAs epilayers grown on Ge-coated Si substrates by means of lateral epitaxial overgrowth”: Appl. Phys. Lett. 41, 347, (1982)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、格子定数が異なる複数種類の半導体素子やスピン機能素子を同一の基板上に混載することが可能な半導体装置の製造方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の半導体装置の製造方法の態様は、シリコン基板の一部に絶縁膜を形成し、前記シリコン基板と絶縁膜上にアモルファスSiGe層を形成し、前記シリコン基板を熱処理し、前記アモルファスSiGe層を前記絶縁膜上に横方向に固相若しくは液相成長させて結晶化し、前記シリコン基板と絶縁膜上に格子定数が後に形成される材料層の格子定数に整合されたSiGe層を形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、格子定数が異なる複数種類の半導体素子やスピン機能素子を同一の基板上に混載することが可能な半導体装置の製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の概略構成を示す図。
【図2】SiGe層の混晶比と格子定数の関係を示す図。
【図3】本発明の第2の実施形態に係る半導体装置の概略構成を示す断面図。
【図4】SiGe層を横方向に液相エピタキシャル成長させる方法を示す図。
【図5】SiGeの混晶比と液相線及び固相線の関係を示す図。
【図6】SiGe層の製造方法を示すものであり、SiGeのインプリント/インデント成長を示す図。
【図7】SiGe層の製造方法を示すものであり、SiGe/Si多層構造のインプリント/インデント成長を示す図。
【図8】SiGe層の製造方法を示すものであり、インプリント/インデント成長したシリコン上で、SiGe層をエピタキシャル成長させる場合を示す図。
【図9】SiGe層の製造方法を示すものであり、縁膜上で単結晶化する結晶性絶縁膜MgOを用いたSiGe層の結晶化方法を示す図。
【図10】SiGe層の製造方法を示すものであり、金属誘起結晶化法を用いて絶縁膜上にSiGe層を形成する方法を示す図。
【図11】図1に示す第1の実施形態に係るモノリシック型の半導体装置の製造方法を概略的に示す断面図。
【図12】第2の実施形態に係る三次元構造の半導体装置の製造方法を概略的に示す断面図。
【図13】バッファ層としてのSiGe層に新材料を形成した場合を示す電子顕微鏡写真。
【図14】本発明をディスプレイ装置に適用した場合を示す図。
【図15】図14に示すディスプレイ装置を携帯機器に適用した場合を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0014】
先ず、先ず、第1、第2の実施形態により、本発明によって実現される半導体装置の構成について説明する。
【0015】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の概略構成を示している。図1は、電子機能素子や、光機能素子及びスピン機能素子を1つのシリコン基板上にモノリシックに形成する場合を示している。
【0016】
電子機能素子は、例えばGeやSiGeを用いたトランジスタであり、光機能素子は、例えばGaAsやFeSi2を用いた発光素子や受光素子であり、スピン機能素子は、例えばFe3Siを用いたスピントランジスタである。しかし、各機能素子は、これらに限定されるものではない。
【0017】
図1において、シリコン基板10の第1の領域Aは、周知のCMOSトランジスタ11の形成領域であり、このCMOSトランジスタ11等により、例えばメモリセル、論理演算回路や液晶表示部等が形成されている。シリコン基板10の第2の領域Bは、複数の機能素子の形成領域である。第2の領域Bにおいて、シリコン基板10上には、例えばシリコン酸化膜により絶縁膜13が形成されている。この絶縁膜13上に、ユニバーサルバッファ層14(以下、単にバッファ層と称す)が形成されている。このバッファ層14は、格子定数の異なる例えばSiGe層14a、14b、14cより構成されている。すなわち、これらSiGe層14a、14b、14cの格子定数は、これらの上に形成される電子機能素子を構成する例えばSiGe層又はGe層15、光機能素子を構成する例えばGaAs層又はFeSi2層16、及びスピン機能素子を構成する例えばFe3Si層17の格子定数とそれぞれ等しく設定されている。これらSiGe層14a、14b、14c、及びSiGe層又はGe層15、GaAs層又はFeSi2層16、Fe3Si層17は、図示せぬ絶縁膜により分離されている。
【0018】
図2は、SiGe層の混晶比と格子定数の関係を示している。図2に示すように、光やスピン等の新機能を有する材料群の格子定数は、例えばGaAs:0.565nm、FeSi2:0.554nm、Fe3Si:0.564nmであり、シリコンの格子定数0.543nmと大きく異なっている。このため、これらの材料をシリコン基板上に混載する場合、結晶成長のテンプレートが必要となる。Si1−xGex(0≦x≦1)混晶は、全率固溶の半導体であり、混晶比(x)を変化することにより、格子定数を0.543nmから0.565nmの範囲で自由に変化させることができる。上記新機能を有する材料群の格子定数は、Si1−xGexの格子定数の範囲内にあるため、図1に示すように、混晶比が異なるSi1−xGex層14a、14b、14cを絶縁膜13上に結晶成長させ、このSi1−xGex層14a、14b、14cをバッファ層(テンプレート)として上記材料群を、Si1−xGex層14a、14b、14c上に結晶成長させることにより、歪を制御した格子欠陥が少ない良質な膜を形成することができる。このようにして形成されたSiGe層又はGe層15、GaAs層又はFeSi2層16、Fe3Si層17を用いて、電子機能、光機能、スピン機能を有する所望の素子が形成される。
【0019】
上記絶縁膜13上における結晶方位の制御は、後述するSiGe層の製造方法において説明するが、例えば次のような方法が考えられる。
【0020】
(1)SiGeの液相又は固相エピタキシャル成長法
(2)SiGeの表面又は下方の層に触媒金属をインプリントし、触媒金属によりSiGeの成長を誘起させる固相成長法、SiGeの表面又は下方の層に局所的に応力を印加し、この応力印加箇所からSiGeを成長させる固相成長法
(3)絶縁膜上で単結晶化する例えばMgO等の結晶性絶縁膜をテンプレートとしてSiGeを結晶化させる方法
(4)金属誘起結晶化法(MIC : Metal Induced Crystallization)を用いて絶縁膜上にSiGe層を形成する方法
上記第1の実施形態によれば、シリコン基板10上に形成された絶縁膜13の上に、混晶比が異なるバッファ層としてのSi1−xGex層14a、14b、14cを設け、このSi1−xGex層14a、14b、14cをテンプレートとしてSiGe層又はGe層15、GaAs層又はFeSi2層16、Fe3Si層17を設けている。このため、シリコン基板10と格子定数が異なる複数の半導体層を1つの基板上に設けることができる。したがって、高機能の半導体装置をチップ面積の増大を抑制して形成することができる。
【0021】
(第2の実施形態)
図3は、本発明の第2の実施形態に係る半導体装置の概略構成を示しており、図3において図1と同一部分には同一符号を付している。図3は、電子機能素子や、光機能素子及びスピン機能素子を1つのシリコン基板上に三次元に形成する場合を示している。
【0022】
図3において、シリコン基板10の表面領域には、周知のトランジスタやCMOSトランジスタ11が形成されている。基板10の上には、層間絶縁膜13aが形成されている。この層間絶縁膜13aは、例えば500℃以下の温度により形成されたシリコン酸化膜(例えばTEOS膜)により構成されている。この層間絶縁膜13a上には、バッファ層として、例えばSi1−xGex(0≦x≦1)層14cが形成されている。このSi1−xGex層14c上に例えばFe3Si層17が形成されている。Si1−xGex層14cの格子定数は、Fe3Si層17の格子定数にチューニングされている。このため、Si1−xGex層14c上に良好な膜質のFe3Si層17を形成できる。このFe3Si層17を用いてスピン機能素子が形成されている。
【0023】
また、Fe3Si層17は、層間絶縁膜13bにより覆われている。この層間絶縁膜13bは、例えばTEOS膜により構成されている。層間絶縁膜13bの上には、バッファ層として、例えばSi1−xGex層14bが形成されている。このSi1−xGex層14b上に例えば複数のFeSi2層16が形成されている。Si1−xGex層14bの格子定数は、FeSi2層16の格子定数にチューニングされている。このため、Si1−xGex層14b上に良好な膜質のFeSi2層16を形成できる。これらFeSi2層16を用いて光機能素子が形成されている。これらFeSi2層16の間に絶縁膜13cが形成されている。この絶縁膜13cは、例えばTEOS膜が適用される。
【0024】
上記光機能素子、スピン機能素子、CMOSトランジスタは、配線層及びビアを介して接続されている。
【0025】
上記構成において、Si1−xGex層14c、14bは、絶縁膜13a、13bの表面全面に形成した。しかし、これに限定されるものではなく、各機能素子が形成される領域にのみに形成してもよい。
【0026】
上記第2の実施形態によれば、トランジスタやCMOSトランジスタ11が形成されたシリコン基板10上に絶縁膜13aを設け、この絶縁膜13a上にバッファ層としてのSi1−xGex層14cを介在してFe3Si層17を設け、さらに、絶縁膜13b上にバッファ層としてのSi1−xGex層14bを介在してFeSi2層16を設けている。このため、シリコンと格子定数の異なる複数の材料を順次積層して、1つの基板上に、スピン機能素子と光機能素子を有する三次元半導体装置を実現することができる。
【0027】
(SiGe層の製造方法)
次に、上記第1、第2の実施形態に適用されるバッファ層としてのSi1−xGex層の製造方法について説明する。
【0028】
(SiGe層の第1の製造方法)
図4は、SiGe層を絶縁膜上で横方向に固相若しくは液相エピタキシャル成長させる方法を示している。
【0029】
図4(a)に示すように、表面が(100)面のシリコン基板21に例えばリング状のトレンチ、又は2つの平行するトレンチを形成し、このトレンチ内にシリコン酸化膜22が埋め込まれる。シリコン酸化膜22の表面は、例えばエッチバック又はCMP(Chemical Mechanical Polishing)を用いて平坦化される。この結果、シリコン酸化膜22により囲まれた基板21の表面領域21aが形成される。
【0030】
図4(b)に示すように、表面領域21a及びシリコン酸化膜22上にアモルファスSiGe層23が形成され、さらに、このアモルファスSiGe層23上にキャップ層又は蓄熱層としてのシリコン酸化膜24が形成される。
【0031】
次に、図4(c)に示すように、熱処理が行われる。この熱処理は、温度が例えば940℃以上のRTA(Rapid Thermal Anneal)である。RTAの温度は、Si1−xGexの混晶比により異なる。
【0032】
図5は、SiGeの混晶比と液相線及び固相線の関係を示している。SiGeの液相エピタキシャル成長を生じさせる温度と、固相エピタキシャル成長を生じさせる温度は、混晶比によって異なり、液相エピタキシャル成長を行う場合、SiGeを図5に示す液相線以上の温度とする必要があり、固相エピタキシャル成長を行う場合、固相線以下の温度とする必要がある。このため、上記RTAでは、Si1−xGexの混晶比に応じた温度が設定され、固相及び液相エピタキシャル成長が行われる。
【0033】
すなわち、図4(c)に示すように、RTAにおいて、アモルファスSiGe層23が液相エピタキシャル成長を生じさせる温度に達すると、基板21に接している部分で、基板SiとアモルファスSiGe層がミキシングする。SiGe層の融点は、Ge濃度と共に低温化するから、Si濃度の高い基板Si側から結晶化が始まり、次第に膜厚方向に結晶化が進み、この後、横方向に結晶化が進行する。横方向の結晶化の距離は、RTAの処理時間により規定される。RTAが終了した際、アモルファスSiGe層23のうち結晶化されたSiGe層23a以外の部分はpoly−SiGe層23bとなる。
【0034】
尚、上記熱処理は、RTAに限定されるものではなく、レーザービームをSiGe層の形成領域に照射し、走査することにより加熱することも可能である。
【0035】
上記SiGeの液相エピタキシャル成長法によれば、所望の格子定数を有するSiGe層を形成することができる。しかも、熱処理時間を調整することにより、所望の表面積を有するSiGe層を形成することができるため、各種デバイスの製造に有効である。
【0036】
また、SiGe層の上面にキャップ層が形成されているため、結晶化されたSiGe層の表面の平坦性が良好であり、SiGe層の上に他の材料層を形成する場合に有利である。
【0037】
尚、図4に示す製造工程において、熱処理温度を固相線の領域とすれば、固相エピタキシャル成長によりアモルファスSiGe層を結晶化することも可能である。
【0038】
アモルファスSiの固相エピタキシャル成長の場合、熱処理温度が高くなると、アモルファスSi層の中にランダムな多結晶核が発生し、固相エピタキシャル成長を阻害する。したがって、固相成長距離は、加熱温度が低く、処理時間が長いほど長くなる。
【0039】
一方、液相エピタキシャル成長では、熱処理時間が数分以下と短く多結晶核の発生は無視できる。したがって、液相エピタキシャル成長と固相エピタキシャル成長を比較した場合、液相エピタキシャル成長の方が、成長距離を大きくすることができる。このため、液相エピタキシャル成長は、大きなSiGe層の形成に適している。
【0040】
(SiGe層の第2の製造方法)
図6は、SiGe層のインプリント/インデント成長の原理を示すものである。図6(a)に示すように、図示せぬシリコン基板上に例えばシリコン酸化膜31が形成され、このシリコン酸化膜31上にアモルファスSiGe層32が形成される。アモルファスSiGe層32は、この上に形成される材料に応じて、予め混晶比が調整されている。このアモルファスSiGe層32の表面に、例えばシリコンで形成されたインデント33を用いて触媒金属をインプリントしたり、インデント33を用いて応力が付加される。インプリントは、具体的には、インデント33を構成する針の先端に触媒金属を蒸着し、この触媒金属がアモルファスSiGe層32の表面に圧着して転写される。尚、触媒金属としては、例えばNi、Cu、Pd、Co等のSiGeと表面反応を生じる金属が適用される。
【0041】
後述する製造方法においても同様であるが、触媒金属の形成法としては、インプリントに限定されるものではなく、例えばリソグラフィ法、インクジェット法を用いることも可能である。リソグラフィ法は、半導体装置のリソグラフィと同様にして、触媒金属をアモルファスSiGe層32の表面に形成するものである。インクジェット法は、触媒金属をアモルファスSiGe層32の表面に吹き付けて形成するものである。
【0042】
この後、図6(b)に示すように、ヒータ34により基板を加熱する。この加熱温度は、図5に示す固相エピタキシャル成長領域の温度であり、SiGeの混晶比に依存する温度である。この加熱により、アモルファスSiGe層32の触媒金属が形成された部分、又は応力が付加された部分から結晶化され、所定の格子定数を有するSiGe層32aが形成される。
【0043】
この製造方法によれば、結晶方位が(111)面に揃ったSiGe層を形成することができる。
【0044】
図7は、SiGe/Si多層構造のインプリント/インデント成長を示している。
【0045】
この例の場合、図7(a)に示すように、図示せぬシリコン基板上に形成されたシリコン酸化膜31の表面に、シリコンのインデント33を用いて触媒金属をインプリントしたり、インデント33を用いてシリコン酸化膜31の表面に応力が付加される。
【0046】
この後、図7(b)に示すように、シリコン酸化膜31上にアモルファスシリコン層41、アモルファスSiGe層32が順次形成される。アモルファスSiGe層32は、この上に形成される材料に応じて、予め混晶比が調整されている。
【0047】
次いで、図7(c)に示すように、基板が熱処理される。この処理温度は、アモルファスSiGe層32の混晶比に応じた固相エピタキシャル成長領域の温度である。熱処理に応じて、シリコン酸化膜31にインプリントされた触媒金属、又はシリコン酸化膜31に付加された応力部分よりアモルファスシリコン層41が結晶化され、その結晶を種として、アモルファスSiGe層32が結晶化される。これにより、所定の格子定数を有するSiGe層32aが形成される。
【0048】
上記製造方法によっても、結晶方位が(111)面に揃ったSiGe層32aを形成することができる。
【0049】
図8は、インプリント/インデント成長したシリコン上で、SiGe層をエピタキシャル成長させる場合を示している。
【0050】
この例の場合、図8(a)に示すように、図示せぬシリコン基板上に形成されたシリコン酸化膜31の表面に、アモルファスシリコン層41が形成される。このアモルファスシリコン層41の表面にインデント33を用いて触媒金属をインプリントしたり、インデント33を用いてアモルファスシリコン層41の表面に応力が付加される。
【0051】
この後、図8(b)に示すように、アモルファスシリコン層41上にアモルファスSiGe層32が形成される。アモルファスSiGe層32は、この上に形成される材料に応じて、予め混晶比が調整されている。このアモルファスSiGe層32の形成に伴い、アモルファスシリコン層41が、触媒金属をインプリントされた部分又は応力が付加された部分から結晶化される。
【0052】
次いで、図8(c)に示すように、基板が熱処理される。この処理温度は、アモルファスSiGe層32の混晶比に応じた固相エピタキシャル成長領域の温度である。熱処理に応じて、アモルファスSiGe層32がその下の結晶化されたシリコン層に従って結晶化される。このようにして、所定の格子定数を有するSiGe層32aが形成される。
【0053】
上記製造方法によっても、結晶方位が(111)面に揃ったSiGe層32aを形成することができる。
【0054】
(SiGe層の第3の製造方法)
図9は、絶縁膜上で単結晶化する結晶性絶縁膜、例えばMgOを用いたSiGe層の結晶化方法を示している。
【0055】
図9(a)に示すように、図示せぬ基板上のシリコン酸化膜31の上にアモルファスMgO層51が形成される。さらに、アモルファスMgO層51上にアモルファスSiGe層32が形成され、ヘテロ構造とされる。
【0056】
この後、図9(b)に示すように、例えばヒータ34により基板を熱処理する。熱処理温度は、例えば500℃程度である。すると、アモルファスMgO層51が結晶化してMgO層51aとなる。アモルファスSiGe層32は、MgO層51aをテンプレートとして結晶化され、SiGe層32aとなる。
【0057】
MgO層51aの格子定数と、SiGe層32aの格子定数は完全に整合していない。このため、SiGe層32aにおいて、MgO層51aとの界面には欠陥が形成される。しかし、SiGe層32aの膜厚を比較的厚くすることにより、SiGe層32表面の結晶欠陥を低減することができる。具体的には、SiGe層32aの膜厚は、例えば数1000オングストロームであればよい。このSiGe層32aをテンプレートとして、GaAs層、又はFe3Si層が形成される。
【0058】
SiGe層32a上に形成されるデバイスは、薄膜デバイスであるため、SiGe層32aとGaAs層の格子定数、又はSiGe層32aとFe3Si層の格子定数が正確に一致している必要がある。上記のように、SiGe層32aの膜厚を厚くすることにより、SiGe層32a表面の結晶欠陥を低減でき、デバイスの性能劣化を防止することができる。
【0059】
尚、結晶性絶縁膜としては、MgOに限定されるものではなく、例えばZnO、YZrO2、(YSZ)など、SiGe層の格子定数と類似する格子定数を有する材料を適用することができる。
【0060】
(SiGe層の第4の製造方法)
図10は、金属誘起結晶化法(MIC : Metal Induced Crystallization)を用いて絶縁膜上にSiGe層を形成する方法を示している。
【0061】
図10(a)に示すように、図示せぬ基板上にはシリコン酸化膜31が形成されている。このシリコン酸化膜31上に触媒金属としての例えばアルミニウム層61が形成される。アルミニウム層61上には、アモルファスSi層41が形成され、このアモルファスSi層41上にアモルファスSiGe層32が形成される。
【0062】
この後、図10(b)に示すように、基板が例えばヒータ34により熱処理される。この熱処理温度は例えば500℃以下である。この熱処理により、アルミニウム層61とアモルファスSi層41及びアモルファスSiGe層32とが入れ替わる。この入り替わりと同時に、アモルファスSi層41とアモルファスSiGe層32がミキシングすると共に結晶化され、シリコン酸化膜31上にSiGe層32aが形成される。アモルファスSi層41が無い場合、SiGeとAlが反応初期の過程で不均一に反応する。すなわち、アモルファスSi層41を用いることで反応初期過程が均一化されることとなる。
【0063】
次いで、図10(c)に示すように、SiGe層32a上のアルミニウム層61が、例えばリン酸を用いたウェットエッチングにより除去される。
【0064】
上記金属誘起結晶化法によっても良好な膜質のSiGe層を形成することができる。
【0065】
(半導体装置の製造方法)
図11は、図1に示す第1の実施形態に係るモノリシック型の半導体装置の製造方法を概略的に示している。第1の実施形態の場合、トランジスタあるいはCMOSトランジスタ11の形成領域としての第1の領域Aと、機能素子の形成領域としての第2の領域Bがシリコン基板10の平面内に形成される。第2の領域Bに形成される機能素子を形成する際、バッファ層としてのSiGe層の製造方法は、上述したように種々の方法がある。ここでは、例えば液相エピタキシャル成長法を用いる場合について説明する。
【0066】
第2の領域Bに形成される機能素子を上述した液相エピタキシャル成長法を用いて形成する場合、第1の領域に形成されるCMOSトランジスタを形成する場合の熱処理温度に比べて高い熱処理温度を必要とする。このため、機能素子をCMOSトランジスタより後に形成した場合、CMOSトランジスタに与えるダメージが大きい。このため、第1の実施形態に係る半導体装置を、液相エピタキシャル成長を用いて製造する場合、第2の領域Bの機能素子を先に形成する必要がある。
【0067】
具体的には、先ず、図11(a)に示すように、シリコン基板10の第2の領域B上に、絶縁膜13としての例えばシリコン酸化膜が形成される。
【0068】
この後、図11(b)に示すように、絶縁膜13上に、ユニバーサルバッファ層14としての例えばSiGe層14a、14b、14dcが形成される。これらSiGe層14a、14b、14dcは、例えば上記第1の製造方法に示す液相エピタキシャル成長を用いて形成される。これらSiGe層14a、14b、14dcの格子定数は、これらの上に形成される機能素子の格子定数に整合されている。また、これらSiGe層14a、14b、14dcは、図示せぬ絶縁膜により分離されている。
【0069】
次いで、図11(c)に示すように、各SiGe層14a、14b、14dcの上に例えば電子機能素子の形成層としてのSiGe層又はGe層15、光機能素子の形成層としての例えばGaAs層又はFeSi2層16、或いはスピン機能素子の形成層としての例えばFe3Si層17が、例えば熱処理温度の高い材料から順次形成される。さらに、これらSiGe層又はGe層15、GaAs層又はFeSi2層16、Fe3Si層17の形成とともに、所要の機能素子が形成される。このようにして、第2の領域Bに各機能素子が形成される。
【0070】
この後、図11(d)に示すように、第1の領域Aに、周知の技術を用いてCMOSトランジスタ11が形成される。
【0071】
上記製造方法により、1つのシリコン基板内にCMOSトランジスタ、電子機能素子、光機能素子、スピン機能素子を有する高機能半導体装置を形成することができる。
【0072】
また、バッファ層としてのSiGe層の製造方法は液相エピタキシャル成長に限定されるものではなく、上述した第1乃至第4の製造方法のいずれか1つを用いて、又は複数を組み合わせて製造することができる。さらに、これらの製造方法の選択に応じて、第1の領域Aと第2の領域Bの製造順序を適宜変更すればよい。
【0073】
図12は、上記第2の実施形態に係る三次元構造の半導体装置の製造方法を概略的に示している。
【0074】
先ず、図12(a)に示すように、シリコン基板10の表面領域に周知の技術によりCMOSトランジスタ11が形成される。
【0075】
この後、図12(b)に示すように、基板10の上に層間絶縁膜13aが形成される。この層間絶縁膜13aは、例えば500℃以下の温度により形成されたシリコン酸化膜(例えばTEOS膜)である。
【0076】
次いで、図12(c)に示すように、層間絶縁膜13a上に、バッファ層となる例えばアモルファスSi1−xGex層14が形成される。このアモルファスSi1−xGex層14の格子定数は、この上に形成されるFe3Si層17の格子定数にチューニングされている。アモルファスSi1−xGex層14を結晶化させる方法は、上記第1乃至第4の製造方法のいずれか1つが適用される。ここでは、例えば触媒金属を用いた場合について示す。すなわち、アモルファスSi1−xGex層14上に、例えば触媒金属71が複数箇所インプリントされる。この触媒金属としては、例えばNi、Cu,Pd、Coのうちの1つを適用できる。
【0077】
この後、図12(d)に示すように、基板10が熱処理される。この熱処理温度は、例えば200℃以上で、CMOSトランジスタ11にダメージを与えることが無い500℃以下であることが好ましい。この熱処理により、触媒金属71の部分からアモルファスSi1−xGex層14が結晶化され、Si1−xGex層14cが形成される。
【0078】
続いて、図12(e)に示すように、Si1−xGex層14c上に、Si1−xGex層14cの格子定数と等しい例えばFe3Si層17が形成され、このFe3Si層17を用いてスピン機能素子が形成される。
【0079】
この後、図12(b)に示したと同様に、Si1−xGex層14cの上にスピン機能素子を覆う絶縁膜13bが形成される。この絶縁膜13b上に、図12(c)に示したと同様に、光機能素子を形成するために混晶比が調整されたアモルファスSi1−xGex層が形成され、このアモルファスSi1−xGex層上に触媒金属が形成される。次いで、基板が、図12(d)に示したと同様にして熱処理され、アモルファスSi1−xGex層が結晶化されて、Si1−xGex層14bが形成される。この後、図12(e)に示したと同様に、Si1−xGex層14b上に例えばFeSi2層が形成され、このFeSi2層に光機能素子が形成される。
【0080】
上記製造方法によれば、CMOSトランジスタ11が形成されたシリコン基板10上に絶縁膜13aを形成し、この絶縁膜13a上にバッファ層としてのSi1−xGex層14cを介在してFe3Si層17を形成し、さらに、絶縁膜13b上にバッファ層としてのSi1−xGex層14bを介在してFeSi2層16を形成している。このため、シリコンと格子定数の異なる複数の材料を順次積層して、1つの基板上に、スピン機能素子と光機能素子を有する三次元半導体装置を実現することができる。
【0081】
図13は、バッファ層としてのSiGe層に新材料を形成した電子顕微鏡写真を示すものである。SiGe層上に良好なFe3Si層が形成されていることが分かる。
【0082】
図14は、本発明の応用例を示すものであり、本発明を例えばディスプレイ装置に適用した場合を示している。ディスプレイ装置81において、ガラス基板81aの表面に複数の画素82がマトリクス状に配置された表示部81bが形成されている。各画素は、薄膜トランジスタ(TFT)83により構成された駆動回路により駆動される。また、表示部81bの例えば周辺回路84には、演算装置としてのCPUやメモリが含まれている。この演算装置は、高速動作が必要である。このため、例えばSiGeのチャネル領域を有する薄膜トランジスタ85により演算装置が構成される。
【0083】
この薄膜トランジスタ85の形成方法は、上記各実施形態と同様であり、例えば絶縁膜としてのガラス基板81a上にバッファ層としてのSiGe層及びこのSiGe層と結晶方位が揃ったSiGe層を形成し、このSiGe層にSiGeのチャネル領域を有する薄膜トランジスタ85を形成する。
【0084】
この応用例によれば、表示部81bと高速な演算装置とを一体化したディスプレイ装置を構成することができる。
【0085】
また、図15に示すように、このディスプレイ装置81を例えば携帯電話機91等の携帯端末装置に適用することにより、これらの装置の性能を飛躍的向上させることが可能である。
【0086】
このように、絶縁膜上に、格子定数がその上に形成される材料の格子定数と整合されたユニバーサルバッファ層としてのSiGe層を形成することにより、シリコン基板上に、電子機能、光機能、スピン機能を有する複数の素子を集積化することができる。このため、複数の機能素子を有する半導体装置を1チップ内に混載することができる。したがって、半導体装置のさらなる小型化、微細化、及び高機能化を図ることが可能である。
【0087】
尚、本発明は、上記各実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を変えない範囲において種々変形実施可能なことは勿論である。
【符号の説明】
【0088】
10…シリコン基板、13…絶縁膜、14…ユニバーサルバッファ層、14a、14b、14dc…SiGe層、15…SiGe層又はGe層、16…GaAs層又はFeSi2層、17…Fe3Si層。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコン基板の一部に絶縁膜を形成し、
前記シリコン基板と絶縁膜上にアモルファスSiGe層を形成し、
前記シリコン基板を熱処理し、前記アモルファスSiGe層を前記絶縁膜上に横方向に固相若しくは液相成長させて結晶化し、前記シリコン基板と絶縁膜上に格子定数が後に形成される材料層の格子定数に整合されたSiGe層を形成することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記シリコン基板を熱処理する前に、前記アモルファスSiGe層上に絶縁層が形成されることを特徴とする請求項1記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記アモルファスSiGe層を前記絶縁膜上に横方向に液相成長させる温度は、Si1−xGexの混晶比と温度の関係を示す液相線以上であることを特徴とする請求項1記載の半導体装置の製造方法。
【請求項1】
シリコン基板の一部に絶縁膜を形成し、
前記シリコン基板と絶縁膜上にアモルファスSiGe層を形成し、
前記シリコン基板を熱処理し、前記アモルファスSiGe層を前記絶縁膜上に横方向に固相若しくは液相成長させて結晶化し、前記シリコン基板と絶縁膜上に格子定数が後に形成される材料層の格子定数に整合されたSiGe層を形成することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記シリコン基板を熱処理する前に、前記アモルファスSiGe層上に絶縁層が形成されることを特徴とする請求項1記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記アモルファスSiGe層を前記絶縁膜上に横方向に液相成長させる温度は、Si1−xGexの混晶比と温度の関係を示す液相線以上であることを特徴とする請求項1記載の半導体装置の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2010−258481(P2010−258481A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−182513(P2010−182513)
【出願日】平成22年8月17日(2010.8.17)
【分割の表示】特願2008−70403(P2008−70403)の分割
【原出願日】平成20年3月18日(2008.3.18)
【出願人】(396023993)株式会社半導体理工学研究センター (150)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月17日(2010.8.17)
【分割の表示】特願2008−70403(P2008−70403)の分割
【原出願日】平成20年3月18日(2008.3.18)
【出願人】(396023993)株式会社半導体理工学研究センター (150)
【Fターム(参考)】
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